説明

サンプル液の濃縮方法、検出対象物質の検出方法及びバイオチップ

【課題】サンプル液がごく微量しかない場合でも効率的に濃縮し、ハンドリングによる誤差を低減する。
【解決手段】検出対象物質を含むサンプル液の濃縮方法であって、サンプル液と磁気ビーズ14とを接触させてサンプル液中の検出対象物質以外の媒質を吸着させる工程と、磁気ビーズ14に磁場を印加することにより、濃縮させたサンプル液から磁気ビーズ14を取り除く工程と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプル液の濃縮方法、検出対象物質の検出方法及びバイオチップに係り、特に、血液等の生体サンプル液に含まれるタンパク等の検出対象物質(生体関連物質)を抗原抗体反応により検出することで、生体関連情報を得る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
微小空間を利用した抗原抗体反応のバイオセンシングは、臨床検査や環境問題に関わる微量物質の分析方法の中でも、近年著しく開発が進められている。このような微量成分を高精度で検出するためには、検出感度を向上させる必要がある。
【0003】
検出感度を向上させる方法としては、サンプル液を濃縮し、検出対象となる物質の濃度を高くする方法が常套である。たとえば、自然乾燥は、サンプル液中の媒質を蒸発させることにより検出対象物質の濃度を高める方法としてシンプルかつ有効である。しかし、媒質の蒸発速度が極めて遅く、媒質を大量に含むサンプル液を濃縮する場合には、時間がかかりすぎることが問題であった。
【0004】
これに対して、例えば、特許文献1では、N−ビニルカルボン酸アミドを60モル%以上含むノニオン性水溶性モノマーと該ノニオン性水溶性モノマーに対して0.1〜10モル%の多価ビニル化合物を共重合させて得られるポリマーの乾燥物からなる生体液濃縮用吸水性樹脂を用いることが提案されている。この生体液濃縮用吸水性樹脂を被検液に投入することで、被検液を濃縮できるとともに、水素結合由来の吸着固定作用(たんぱく質との結合など)を排除できることが記載されている。なお、濃縮した生体液は、遠心濾過や吸引濾過により吸水性樹脂から分離回収し、分析している。
【特許文献1】特開2000−72822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の方法のように、分析装置とは別の場所で濃縮を行った場合、濾別により濃縮後のサンプル液を回収した後、ピペットや注射器を用いて分析装置に導入する必要があった。このとき、導入するサンプル液の分量に、ハンドリング等に起因する誤差があると、分析成分の量に及ぼす影響が大きく、分析データに誤差が生じ易くなる。特に、生体液のように、サンプル液がごく微量しか採取できない場合、上記の誤差の影響が大きくなるという問題があった。また、濃縮したサンプル液を分析装置に導入する手間が煩雑であり、前処理も含めた全体の分析時間が増大することもあった。
【0006】
また、サンプル液に含まれる検出対象物質が反応により生成される場合、たとえば、抗原を含む生体液を抗体と接触させて抗原抗体反応をさせ、これにより得られる生成物を検出する場合、短時間で上記の抗原抗体反応を生じさせるためにも、サンプル液中の抗原濃度を高くする必要がある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、サンプル液がごく微量しかない場合でも効率的に濃縮できると共に、ハンドリング等による誤差を低減できるサンプル液の濃縮方法、検出対象物質の検出方法及びバイオチップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、検出対象物質を含むサンプル液の濃縮方法であって、前記サンプル液と磁気ビーズとを接触させて前記サンプル液中の検出対象物質以外の媒質を吸着させる工程と、前記磁気ビーズに磁場を印加することにより、前記濃縮させたサンプル液から前記磁気ビーズを取り除く工程と、を備えたことを特徴とするサンプル液の濃縮方法を提供する。
【0009】
請求項1によれば、サンプル液に磁気ビーズを接触させてサンプル液中の検出対象物質以外の媒質を吸着させる工程を行うので、サンプル液に含まれる検出対象物質の濃度を高めることができる。また、濃縮させたサンプル液に対して、磁場の作用で磁気ビーズを相対的に移動させることによりサンプル液内から取り除く工程を行うので、濃縮後のサンプル液を濾別したり、注射器等で採取したりしなくても、濃縮したサンプル液のみを分離できる。したがって、サンプル液がごく微量しかない場合でも、検出対象物質を効率的に濃縮でき、ハンドリング等の誤差を低減できる。
【0010】
ここで、磁場の印加方法としては、特に限定されないが、例えば、磁石をサンプル液に近づける方法や、コイルを配置した基板上にサンプル液を滴下し、該コイルに電流を流す方法等、が挙げられる。
【0011】
なお、磁気ビーズとは、鉄やニッケル、コバルト、又はそれらの酸化物で作製された磁性を有するコア粒子の周囲に、検出対象物質以外の媒質成分を吸着するコート層を備えた粒子状のものをいう。コート層の材料としては、例えば、水溶性の高分子が挙げられる。サンプル液としては、特に限定されないが、例えば、血液、唾液、鼻咽頭液、母乳等の生体液が含まれる。媒質としては、サンプル液のうち、検出対象物質以外のものであれば特に限定されないが、たとえば、水などの溶媒が含まれる。
【0012】
請求項2は請求項1において、前記サンプル液の量は、20μL以下であることを特徴とする。
【0013】
このように、サンプル液がごく微量しかない場合でも、検出対象物質を高精度に検出できる範囲まで、サンプル液を濃縮できる。
【0014】
請求項3は請求項1又は2において、前記磁気ビーズは、磁性粒子と、該磁性粒子の周囲に前記媒質を吸着するコート層を備えた粒子であることを特徴とする。
【0015】
請求項3によれば、磁気ビーズが、磁性粒子と、該磁性粒子の周囲に検出対象物質以外の媒質を吸着するコート層とを備えているので、サンプル液中の検出対象物質以外の媒質を選択的に吸着除去できると共に、磁場の作用によりサンプル液に対して磁性ビーズを相対的に移動させることができる。これにより、サンプル液の液滴を検出エリアに配置した状態で濃縮し、分析することができる。したがって、サンプル液の分量にハンドリング等に起因する誤差が生じるのを抑制できる。
【0016】
請求項4は請求項1〜3の何れか1項において、前記サンプル液と接触させる磁気ビーズの量を変えることにより、前記サンプル液の濃縮量を調整することを特徴とする。
【0017】
請求項4によれば、自然乾燥のみで濃縮する場合よりも、濃縮する量を精度よく調節できる。このため、検出結果を再現性よく得ることができる。
【0018】
本発明の請求項5は前記目的を達成するために、請求項1〜4の何れか1項に記載のサンプル濃縮方法により前記サンプル液を濃縮する工程と、前記濃縮した後のサンプル液に含まれる検出対象物質を検出する工程と、を備えたことを特徴とする検出対象物質の検出方法を提供する。
【0019】
請求項5によれば、磁気ビーズをサンプル液に対して相対的に移動させて取り除くことにより、濃縮したサンプル液を取り出さなくても簡単に分離回収でき、更に濃縮したサンプル液中の検出対象物質を検出できる。したがって、サンプル液の分量にハンドリング等に起因する誤差が生じるのを抑制できる。
【0020】
請求項6は請求項5において、前記濃縮したサンプル液には抗原が含まれるとともに、前記検出工程においては、前記濃縮したサンプル液に更に抗体を接触させて抗原抗体反応させるとともに、該抗原抗体反応により得られる反応生成物を検出することを特徴とする。
【0021】
このように、ごく微量しか採取できない生体液中の生体関連情報を高感度で検出するような場合に、本発明が特に有効である。
【0022】
本発明の請求項7は前記目的を達成するために、基板表面に、磁気ビーズとサンプル液とを接触させる領域と、前記領域から前記磁気ビーズを退避させる退避部と、を備えたことを特徴とするバイオチップを提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、サンプル液がごく微量しかない場合でも効率的に濃縮でき、ハンドリングによる誤差を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付図面に従って、本発明に係るサンプル液の濃縮方法、検出対象物質の検出方法及びバイオチップの好ましい実施の形態について詳説する。
【0025】
まず、本発明に係るサンプル液の濃縮方法について図1を参照して説明する。図1は、本発明に係るサンプル液の濃縮方法の時系列的な流れを説明する説明図であり、図2は、磁気ビーズの概念を説明する概念図である。なお、本実施形態では、抗原を含む生体液を磁気ビーズを用いて濃縮した後、基板上に予め固着させた抗体と接触させて抗原抗体反応させる例について述べるが、これに限定されるものではない。
【0026】
まず、図1(A)に示すように、予め基板10上に所定の量だけ固着させた抗体12上に、濃縮する程度に応じた量の乾燥させた磁気ビーズ14を配置し、その上に抗原16を含むサンプル液Lを滴下する。本発明に使用される生体液としては、例えば、血液、唾液、鼻咽頭液、母乳等が含まれる。なお、磁気ビーズ14の詳細については後述する。
【0027】
次いで、図1(B)に示すように、滴下したサンプル液L中の媒質を磁気ビーズ14に吸着させ、例えば、自重と等量の媒質(水分等)を吸収させる。具体的には、サンプル液の液滴が10μLであるとき、5mgの磁気ビーズ14を投入することにより、サンプル液L中の5μLの媒質を吸収できる。このように、磁気ビーズ14は、検出対象となる抗原(たんぱく質等)以外の媒質のみを吸着することができる。
【0028】
次いで、図1(C)に示すように、サンプル液Lを所定の割合に濃縮した後、磁場印加手段18によりサンプル液Lに磁場を印加し、サンプル液L内から磁気ビーズ14を取り除く。取り除いた磁気ビーズ14は、検出エリア(サンプル液Lが配された位置)の外側に退避させる。
【0029】
そして、図1(D)に示すように、磁気ビーズ14を取り除いた濃縮後のサンプル液Lを、基板10上に予め固着させた抗体12と直接接触させる。これにより、サンプル液L中の抗原16と基板10の表面上の抗体12とにより抗原抗体反応させ、生成する凝集物や反応生成物等を光学的に分析することができる。なお、取り除いた磁気ビーズ14は、乾燥させることにより繰り返し使用できる。
【0030】
このように、サンプル液を磁気ビーズ14と接触させることによりサンプル液を濃縮できる。また、濃縮後は、サンプル液をピペット等で採取しなくても、磁気ビーズ14をサンプル液から取り除くことにより簡単に分離回収できる。したがって、サンプル液がごく微量しかない場合でも、ハンドリング等による誤差を低減できるとともに、抗原抗体反応を高効率で行わせることができる。
【0031】
また、上記の濃縮方法は、媒質を蒸発させるものとは異なり、サンプル液と接触させる磁気ビーズ14の量によって濃縮する量を調節できるので、定量的かつ再現性よく濃縮を行うことができる。
【0032】
なお、磁場を変化させることによりサンプル液の液滴内で磁気ビーズ14を小刻みに移動させることにより、サンプル液L内を攪拌することもできる。
【0033】
本実施形態において使用される磁気ビーズ14としては、図2に示すように、磁性粒子19aの表面に媒質を吸着する吸着層19bが形成されたものが挙げられる。
【0034】
磁性粒子19aとしては、常磁性を有し、磁場の作用を受けるものであれば特に限定されず、例えば、鉄やニッケル、コバルト、又はそれらの酸化物等が挙げられる。
【0035】
吸着層19bとしては、検出対象物質以外の媒質を吸着できるものであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、アクリルアミド系化合物等が挙げられる。なお、吸着層19bは、1種類に限らず、2種類以上でもよい。
【0036】
磁気ビーズ14の粒径は、サンプル液内でも磁場を作用させることで磁気ビーズ14を操作できる範囲であれば、特に限定されず、例えば、4.5μm程度のものが使用できる。
【0037】
磁気ビーズ14の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、媒質の吸着性を有するポリマー溶液に磁性粒子19aを浸漬した後、乾燥させる方法や、各種表面改質方法により磁性粒子19aの表面に官能基等を付与する方法等、が挙げられる。
【0038】
磁気ビーズ14の具体例としては、微細結晶化した酸化鉄粒子(Fe、Fe)を親水性又は疎水性のポリマーでコーティングされたものが挙げられる。この磁気ビーズ14は、エポキシ基が表面に露出したビーズ(Dynal社製)に、末端にアミノ基が付いたポリエチレングリコール(PEG)を反応させ、エポキシ基とアミノ基を共有結合させることにより作製できる。
【0039】
磁気ビーズ14は、超常磁性を有しつつも永久的磁性は示さないため、磁性は残留することなく再分散する。また、磁気ビーズ14内部の磁性粒子19aは、吸着層19bによって外部から保護されているため、液滴内の試薬等と余分に反応することはない。これにより、磁気ビーズ14は、サンプル液の媒質だけを選択的に取り除くことができる。
【0040】
なお、磁気ビーズ14は図2の態様に限らず、例えば、多孔質体の磁性粒子の表面に媒質を吸着する層又は部位を備えたものでもよい。
【0041】
また、磁場印加手段18としては、磁場を印加することができるものであれば、特に限定されないが、例えば、磁石や電磁コイル等が挙げられる。
【0042】
次に、本発明に係るサンプル液の濃縮方法が適用される例について説明する。
【0043】
図3は、本発明が適用されるバイオチップの一例を示す説明図である。このうち、図3(A)は、斜視図であり、図3(B)はA−A線断面図である。本実施形態は、抗原を含む生体液(サンプル液)をバイオチップ内に滴下し、該バイオチップ内に予め固着させた抗体と接触させることにより、抗原抗体反応させる方法である。
【0044】
図3に示すように、バイオチップ20は、サンプル液の液滴を保持するための凹部22が形成された透明な平板状の基板24と、基板24を覆うための透明な覆い板26と、を備えている。
【0045】
基板24上には、さらに上記凹部22に連通し、磁気ビーズ14を退避させるための凹状の退避部28、28が形成されている。退避部28は、凹部22内のサンプル液から取り除いた磁気ビーズ14を収納できる形状及びサイズであればよく、図3の形態に限定されない。
【0046】
凹部22と対向する覆い板26面には、凹部22にサンプル液を供給するための供給口30が形成されており、例えば、シール部材32により塞ぐことができるようになっている。
【0047】
図3(B)に示すように、基板24上に形成された凹部22の底面には、サンプル液に含まれる抗原と特異的に反応する抗体12が固着されている。抗体12の固着方法としては、特に限定はないが、例えば、抗体を含む試料を塗布することにより形成できる。抗体12上には、サンプル液を濃縮するための磁気ビーズ14が配置されている。このように、凹部22は、サンプル液を保持するだけでなく、濃縮や検出が行える領域となっている。
【0048】
基板24と覆い板26とは、図示しないねじ等により組み付けられたり、接着剤により密着されたりすることにより一体化される。
【0049】
基板24及び覆い板26のサイズは、特に限定しないが、携帯できるサイズ、たとえば80×50mm程度とすることができる。基板24及び覆い板26の厚さも、特に制限はないが、強度、経済性等より、たとえば、それぞれ5mm程度とすることができる。
【0050】
基板24及び覆い板26の材質としては、特に制限はないが、例えば、樹脂材料が好ましい。また、バイオチップ20内のサンプル液を視覚的、光学的に認識可能とすることより、透明であることが好ましい。このような材料として、各種樹脂板、より具体的には、ポリジメチルスルホキシド(PDMS)、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、紫外線硬化樹脂、ポリカーボネート(PC)等、各種樹脂膜、より具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、トリアセチルセルロース(TAC)等、各種ガラス(ソーダライムガラス、硼珪酸ガラス等)が採用できる。
【0051】
このように構成されたバイオチップ20は、例えば、磁場印加手段18を備えた光学的分析装置(不図示)にセットされ、磁場印加手段18がバイオチップ20の基板24面に対して相対的にスライドすることにより、バイオチップ20内の磁気ビーズ14がサンプル液の内部から取り除かれる。その後、濃縮された凹部22内のサンプル液は、図示しない光学的分析装置によって分析される。
【0052】
このように本実施形態によれば、サンプル液を磁気ビーズ14と接触させることで濃縮できる。また、濃縮後は、サンプル液をピペット等で採取しなくても、磁場を印加して磁気ビーズ14をサンプル液から取り除くことにより簡単に分離できる。したがって、サンプル液がごく微量しかない場合でも、ハンドリング等の誤差を低減でき、抗原抗体反応を高効率で行わせることができる。
【0053】
また、本実施形態の濃縮方法は、媒質を蒸発させるものとは異なり、サンプル液と接触させる磁気ビーズ14の量によって濃縮する量を調節できる。したがって、定量的かつ再現性よく分析を行うことができる。
【0054】
次に、本発明に係る第2の実施形態について説明する。本実施形態が上記第1の実施形態と異なる点は、主に、サンプル液の液滴を基板上に複数配置し、各液滴について濃縮及び検出を行う点である。
【0055】
図4は、本発明が適用される第2の実施形態を説明する斜視図である。このうち、図4(A)は、バイオチップ40の一部を示す斜視図であり、図4(B)はB−B線断面図である。
【0056】
図4に示すように、バイオチップ40は、サンプル液の液滴を複数配置するための基板42を備えている。
【0057】
基板42上には、抗体12が複数箇所に所定の間隔を設けて固着されている。さらに、各抗体12上には磁気ビーズ14が配されている。なお、磁気ビーズ14を安定に固定するために、抗体12が固着される部分が基板42に対して凹状に形成されたり、粘着性が付与されたりしてもよい。
【0058】
磁気ビーズ14の構成、該磁気ビーズ14の製造方法や抗体12の基板42への固着方法、その他については、上記第1の実施形態とほぼ同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0059】
図5は、本実施形態における時系列的な作用を説明する図である。
【0060】
図5(A)に示すように、同じ種類の抗体12が所定の間隔を設けて複数配された基板42上に、抗原を含む生体液のサンプル液Lを滴下する。そして、各サンプル液L・・・について磁気ビーズ14により媒質が吸着され、濃縮される。
【0061】
次いで、図5(B)に示すように、基板42の裏面(サンプル液が配置されていない側の面)において、各サンプル液Lに対応する位置に磁場印加手段18を配置し、例えば、矢印方向へ移動させることにより各サンプル液Lに磁場を印加する。これにより、各サンプル液L内から磁気ビーズ14を取り除く。
【0062】
そして、図5(C)に示すように、サンプル液Lに含まれる抗原16と、基板42上に予め固着された抗体12との間で抗原抗体反応がおこる。
【0063】
このように、本実施形態によれば、上記した第1の実施形態と同様の効果に加え、複数のサンプル液について同時に濃縮及び反応させることができるので、再現性を調べたり、異なる種類の分析を一度で実施したりすることが可能となる。
【0064】
以上、本発明に係るサンプル液の濃縮方法、検出対象物質の検出方法及びバイオチップの好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各種の態様が採り得る。
【0065】
たとえば、上記各実施形態では、サンプル液として、抗原又は抗体等の生体関連物質を含む液体試料を用いたが、これに限らず、各種分析用の液体試料の濃縮に適用できる。
【0066】
上記各実施形態では、基板上に予め抗体を固着させておき、その上から抗原を含むサンプル液を滴下することにより抗原抗体反応させる方法について述べたが、これに限定されず、サンプル液を基板上に滴下した後、その上から抗体を含む試料を添加することもできる。
【0067】
上記各実施形態では、水分等の媒質を主に吸着する磁気ビーズ14について述べたが、これに限定されず、分析に不要なたんぱく質等を選択的に吸着する部位を備えた磁気ビーズも使用できる。
【0068】
上記各実施形態では、磁気ビーズ14の駆動方法として、基板本体上にコイルを配設し、該コイルに電流を流すことにより磁場を印加する方法も採用できる。
【0069】
上記各実施形態では、媒質を吸着させてサンプル液を濃縮する目的で磁気ビーズ14を使用する例について説明したが、これに限定されず、例えば、磁気ビーズ14の表面に反応に関与する物質を形成し、サンプル液中の成分との接触効率を高めることにより反応を促進させる目的にも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係るサンプル液の濃縮方法の時系列的な流れについて説明する説明図である。
【図2】図1における磁気ビーズの概念を説明する概念図である
【図3】本発明が適用されるバイオチップの第1の実施形態を示す説明図である。
【図4】本発明が適用されるバイオチップの第2の実施形態を示す斜視図である。
【図5】第2の実施形態の作用を示す説明図である。
【符号の説明】
【0071】
10…基板、12…抗体、14…磁気ビーズ、16…抗原、18…磁場印加手段、19a…磁性粒子、19b…吸着層、20、40…バイオチップ、22…凹部、24、42…基板、26…覆い板、28…退避部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象物質を含むサンプル液の濃縮方法であって、
前記サンプル液と磁気ビーズとを接触させて前記サンプル液中の検出対象物質以外の媒質を吸着させる工程と、
前記磁気ビーズに磁場を印加することにより、前記サンプル液から前記磁気ビーズを取り除く工程と、
を備えたことを特徴とするサンプル液の濃縮方法。
【請求項2】
前記サンプル液の量は、20μL以下であることを特徴とする請求項1に記載のサンプル液の濃縮方法。
【請求項3】
前記磁気ビーズは、磁性粒子と、該磁性粒子の周囲に前記媒質を吸着するコート層を備えた粒子であることを特徴とする請求項1又は2に記載のサンプル液の濃縮方法。
【請求項4】
前記サンプル液と接触させる磁気ビーズの量を変えることにより、前記サンプル液の濃縮量を調整することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のサンプル液の濃縮方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載のサンプル濃縮方法により前記サンプル液を濃縮する工程と、
前記濃縮した後のサンプル液に含まれる検出対象物質を検出する工程と、
を備えたことを特徴とする検出対象物質の検出方法。
【請求項6】
前記濃縮したサンプル液には抗原が含まれるとともに、
前記検出工程においては、前記濃縮したサンプル液に更に抗体を接触させて抗原抗体反応させるとともに、該抗原抗体反応により得られる反応生成物を検出することを特徴とする請求項5に記載の検出対象物質の検出方法。
【請求項7】
基板表面に、
磁気ビーズとサンプル液とを接触させる領域と、
前記領域から前記磁気ビーズを退避させる退避部と、
を備えたことを特徴とするバイオチップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−249422(P2008−249422A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−89622(P2007−89622)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】