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サンプル液濃縮用容器、サンプル液供給容器セット、マイクロチップセット及びサンプル液濃縮方法
説明

サンプル液濃縮用容器、サンプル液供給容器セット、マイクロチップセット及びサンプル液濃縮方法

【課題】安全性及び簡便性を確保したサンプル液の濃縮方法に関する技術を提供すること。
【解決手段】
内部が減圧されて気密に封止された第一の領域11と、内部に液体を収容可能な第二の領域12と、を有し、前記液体を加熱する加熱部18と、前記第二の領域12を封止し、前記加熱部18により融解されて前記第一の領域11及び前記第二の領域12を連通することで前記液体を前記第二の領域12から前記第一の領域11に注入させる封止部と、が設けられたサンプル液濃縮用容器1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプル液濃縮用容器、サンプル液供給容器セット、マイクロチップセット及びサンプル液濃縮方法に関する。より詳しくは、マイクロチップに形成された領域内への液体の注入を簡便に行うためのサンプル液濃縮用容器等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体産業における微細加工技術を応用し、シリコンやガラス製の基板上に化学的及び生物学的分析を行うためのウェルや流路を設けたマイクロチップが開発されてきている(例えば、特許文献1、2参照)。
これらのマイクロチップは、例えば、液体クロマトグラフィーの電気化学検出器や医療現場における小型の電気化学センサなどに利用され始めている。
【0003】
このようなマイクロチップを用いた分析システムは、μ−TAS(micro-Total-Analysis System)やラボ・オン・チップ、バイオチップ等と称され、化学的及び生物学的分析の高速化や高効率化、集積化あるいは分析装置の小型化を可能にする技術として注目されている。
【0004】
μ−TASは、少量の試料で分析が可能なことや、マイクロチップのディスポーザブルユーズ(使い捨て)が可能なことから、特に貴重な微量試料や多数の検体を扱う生物学的分析への応用が期待されている。
【0005】
μ−TASの応用例として、マイクロチップ上に配設された複数の領域内に物質を導入し、該物質を光学的に検出する光学検出装置がある。このような光学検出装置としては、マイクロチップ上の流路内で複数の物質を電気泳動により分離し、分離された各物質を光学的に検出する電気泳動装置や、マイクロチップ上のウェル内で複数の物質間の反応を進行させ、生成する物質を光学的に検出する反応装置(例えば、リアルタイムPCR装置)などがある。
【0006】
μ−TASでは、分析精度の向上等を目的にして、分析前に試料溶液の濃縮をしておくことが好ましい場合がある。この点、これまでに行われてきた試料溶液の濃縮としては、以下の方法が挙げられる。
【0007】
(1)エタノール沈澱法
例えば、核酸増幅反応において、フェノール/クロロホルム抽出法により阻害物質等(酵素、タンパク質、多糖類、脂質等)を除去した後、精製された核酸溶液から核酸の回収又は濃縮をする方法として、エタノール沈澱法が用いられている。しかしながら、かかる方法は、例えば、遠心分離作業(例えば、高速遠心分離装置を用いた操作)といった煩雑な操作を要したり、使用する試薬数が多かったりする点で、簡便性が十分とはいえなかった。
【0008】
(2)ドットブロット法又はサザンブロット法
当該方法は、ニトロセルロース膜やナイロン膜上に核酸溶液を滴下又は転移させて膜上に核酸を固定化させることで濃縮が行われている。しかしながら、かかる方法は、試料溶液の濃度の自由度が十分なものではなかった。
【0009】
(3)その他
また、アガロースゲル中の核酸を精製する方法として、カオトロピックイオンを有する高濃度過塩素酸溶液で溶解させたゲル中のDNAをガラスフィルターに吸着させてから、低濃度の緩衝液でDNAをフィルターから溶出させる方法等もある。この点、かかる方法に対しては、過塩素酸等を使用せずに簡便に行うことができる方法が希求されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−219199号公報
【特許文献2】特開2009−284769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように、試料溶液の濃縮方法としては、多様な方法が知られているものの、何れも試料溶液の調整や、濃縮方法そのものの操作等が煩雑であった。また、かかる煩雑さのため、人による手作業を要することも多く、安全性を考慮した試料溶液の濃縮方法が希求されていた。
【0012】
そこで、本発明は、安全性及び簡便性を確保したサンプル液の濃縮方法に関する技術を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題解決のため、本発明は、内部が減圧されて気密に封止された第一の領域と、内部に液体を収容可能な第二の領域と、を有し、前記第二の領域を加熱する加熱部と、前記第二の領域を封止し、前記加熱部により融解されて前記第一の領域及び前記第二の領域を連通することで前記液体を前記第二の領域から前記第一の領域に注入させる封止部と、が設けられたサンプル液濃縮用容器を提供する。
このサンプル液濃縮用容器では、外部から前記第一の領域の内部に対して中空針が穿刺される穿通部を設けることも可能である。
このサンプル液濃縮用容器は、前記第二の領域を内空に構成する内筒体と、当該内筒体の少なくとも一部を内空に収容する外筒体と、を含んでなり、前記内筒体の外表面と前記外筒体の内表面とが形成する空間が気密に封止されて前記第一の領域を構成し、前記封止部は、前記内筒体の一部として形成されていてもよい。
このサンプル液濃縮用容器では、前記封止部と前記穿通部とが、前記内筒体と前記外筒体との同一側端をそれぞれ封止するように形成することも可能である。
前記封止部の封止部材は、加熱部による加熱温度よりも低い融点を有する疎水性の材質で形成されていてもよい。また、前記封止部には、前記液体を前記第二の領域から前記第一の領域に流入させる際に、所定の粒子径以下の物質を透過させる選択透過部が形成されていてもよい。前記加熱部は、例えば、電流で加温可能な金属ロッドを有していてもよい。
また、本発明は、液体の注入対象となる注入領域に穿刺される中空針と、内部が減圧されて気密に封止された第一の領域と、内部に液体を収容可能な第二の領域と、を有し、前記第二の領域を加熱する加熱部と、前記第二の領域を封止し、前記加熱部により融解されて前記第一の領域及び前記第二の領域を連通することで前記液体を前記第二の領域から前記第一の領域に注入させる封止部と、が設けられたサンプル液濃縮用容器と、を含むサンプル液供給容器セットを提供する。
また、本発明は、液体の注入対象となる注入領域が形成されたマイクロチップと、外部から前記注入領域の内部に穿刺される中空針と、内部が減圧されて気密に封止された第一の領域と、内部に液体を収容可能な第二の領域と、を有し、前記第二の領域を加熱する加熱部と、前記第二の領域を封止し、前記加熱部により融解されて前記第一の領域及び前記第二の領域を連通することで前記液体を前記第二の領域から前記第一の領域に注入させる封止部と、が設けられたサンプル液濃縮用容器と、を含むマイクロチップセットを提供する。
また、本発明は、液体を収容した領域を加熱する手順と、前記液体を収容した領域を封止する封止部を加熱融解することで、前記液体を収容した領域から内部が減圧されて気密に封止された領域に前記液体を注入させる手順と、を含むサンプル液濃縮方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、安全性及び簡便性を確保したサンプル液の濃縮方法に関する技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るサンプル液供給容器の構成を概念的に説明する模式図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係るサンプル液濃縮用容器を説明する断面模式図である。
【図3】本発明の第二実施形態に係るサンプル液濃縮用容器を説明する断面模式図である。
【図4】本発明の第三実施形態に係るサンプル液濃縮用容器を説明する断面模式図である。
【図5】本発明の実施形態に係るマイクロチップセットのマイクロチップの上面模式図である。
【図6】本実施形態に係るマイクロチップセットのマイクロチップの断面模式図(図5、P−P断面)である。
【図7】本実施形態に係るマイクロチップセットのマイクロチップの断面模式図(図5、Q−Q断面)である。
【図8−1】本実施形態に係るマイクロチップセットを用いてサンプル液をマイクロチップに導入する方法を説明する断面模式図である。
【図8−2】本実施形態に係るマイクロチップセットを用いてサンプル液をマイクロチップに導入する方法を説明する断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。なお、説明は以下の順序により行う。

1.サンプル液濃縮用容器及びサンプル液供給容器セット
(1−1)構成概略
(1−2)サンプル液濃縮用容器の第一実施形態
(1−3)サンプル液濃縮用容器の第二実施形態
(1−4)サンプル液濃縮用容器の第三実施形態
2.マイクロチップセット
(2−1)マイクロチップの構成と成形方法
(2−2)マイクロチップへのサンプル溶液の導入

【0017】
1.サンプル液濃縮用容器及びサンプル液供給容器セット
(1−1)構成概略
図1は、本発明に係るサンプル液濃縮用容器の構成を概念的に説明する模式図である。
【0018】
図中、符号1で示すサンプル液濃縮用容器は、内部が減圧されて気密に封止された第一領域11と、内部に液体(サンプル液)を収容可能な第二領域12と、第二の領域12を加熱する加熱部18を有している(図1(A)参照)。符号13は、第二の領域12を封止し、加熱部18により融解されて第一の領域11及び第二の領域12を連通することでサンプル液を第二の領域12から第一の領域11に注入させる封止部を示す(図1(B)、(C)参照)。また、符号14は、外部から第一領域11の内部に対して中空針2が穿刺される穿通部を示す(図1(D)参照)。本発明に係るサンプル液供給容器セットは、これらサンプル液濃縮用容器1と中空針2とを含んで構成されるものである。
【0019】
封止部13は、気密性を有する封止部材により形成されている。また、当該封止部材は、所定の融点以下である疎水性の材質で形成されている。ここでいう、所定の融点とは、加熱部18が第二領域12を加熱する温度である。例えば、加熱部18が第二領域12を100℃で加熱することで、100℃以下の融点を有する上記封止部材は融解される。これにより、第一領域11と第二領域12とが連通されることで、加熱部18による加熱前は第二領域12内に収容されたサンプル液は第二領域12から第一領域11に注入される(図1(B)参照)。また、封止部13は、疎水性であるために、上述の融解後においてもサンプル液中に溶解してしまうことなく、容易に分離することが可能である。封止部材の材質は、ステアリン酸、パラフィンワックス、シリコンゴムのような各種ゴムや熱可塑性エラストマー等とできる。また、封止部13は、加熱による融解し易さ等を鑑み、薄膜で形成されていてもよい。
【0020】
加熱部18は、第二領域12を加熱可能なものであれば、形状や材質等については特に限定されるものではないが、例えば、電熱線が入っており、電流で加温可能な金属ロッドを含んでなるものである。
【0021】
また、穿通部14も、封止部13と同様に気密性を有する封止部材により形成されている。これにより、第一領域11は、内部の陰圧(好ましくは真空)を維持できるようにされている。穿通部14の形成する封止部材は、気密性に加えて、中空針2が穿通可能な弾性をも有するものである。封止部材の材質は、シリコンゴムのような各種ゴムや熱可塑性エラストマー等とできる。
【0022】
サンプル液供給容器セットを用いて、サンプル液の注入対象となる注入領域31にサンプル液を注入する場合、まず、第二領域12内にサンプル液を充填する(図1(A)参照)。次に、第二領域12は、加熱部18により加熱され、封止部13が融解される。この際、サンプル液と、封止部13との比重差によっては、封止部13がサンプル液中を浮上する。そして、第一の領域及び前記第二の領域は連通されるため、第二領域12内のサンプル液は第一領域11に注入される(図1(B)参照)。そして、図1(C)に示すように、第一領域11内に注入されたサンプル液は加熱されており、且つ第一領域11内が減圧されているために、サンプル液は突沸し、蒸発する。これにより、サンプル液は濃縮される。また、サンプル液は減圧下の沸点まで急速に冷却されうる。そして、次に、中空針2が穿通部14に穿刺されることで、注入領域31内にサンプル液が導入される(図1(D)参照)。この際、注入領域31の内部が減圧されている場合には、上記サンプル液を短時間かつスムーズに注入領域31内に注入できる。
【0023】
また、封止部13については、サンプル液の液面の低下と共に第二領域12から第一領域11に移動して液表面を覆うようにして広がりうる。また、サンプル液は、加熱部18と接触しない状態になることで、当該液の加熱は抑制されて冷却される。かかる冷却により、液表面にコーティングされた封止部13は硬化してサンプル液を被覆することで、第一領域11で結露した水滴等が濃縮されたサンプル液に還流することを防ぐことができる。
【0024】
このように、本発明に係るサンプル液供給容器セットでは、第二領域12内で加熱されたサンプル液を容易に減圧された第一領域11に注入し、注入領域31内にサンプル液を導入することが可能である。従って、本発明に係るサンプル液供給容器セットでは、サンプル液を一連の動作で短時間かつスムーズに濃縮することができ、容易に濃縮したサンプル液を注入領域31内に導入することができる。また、本発明に係るサンプル液供給容器セットでは、サンプル液を加熱するために、例えば、サンプル液を注入領域31内に導入後、分析においては不要な夾雑物等を死滅させることができる。そのため、本発明に係るサンプル液供給容器セットを用いることで、高度な分析精度を確保することもできる。
【0025】
(1−2)サンプル液濃縮用容器の第一実施形態
図2は、本発明に係るサンプル液濃縮用容器の第一実施形態を説明する模式図である。
【0026】
本実施形態に係るサンプル液濃縮用容器1は、注射器のシリンジを用いて構成されていることを特徴とする。すなわち、このサンプル液濃縮用容器1は、図2(A)に示すように、第二領域12を内空に構成するシリンジ(内筒体)16と、ピペットチップ16の少なくとも一部を内空に収容するシリンジ(外筒体)15と、によって構成されている。そして、シリンジの外表面とシリンジ15の内表面とが形成する空間が気密に封止されて第一領域11として構成されている。また、シリンジ15の先端が封止部材によって封止されて穿通部14が形成され、シリンジ16の先端も封止部材によって封止されて封止部13が形成されている。また、シリンジ16内には、加熱部18が設けられている。
【0027】
本実施形態に係るサンプル液供給容器1は、シリコンゴム等で先端を封止した大小のシリンジ15,16を用意し、減圧チャンバー内でシリンジ15の内部にシリンジ16を挿入してシールすることにより得られる。シリンジ15とシリンジ16のシーリングは、シリンジ16の外表面とシリンジ15の内表面との間にシリコンゴム等のゴムリングを配置して圧着し、栓17を形成することにより行い得る。また、図2に示すように、加熱部18が金属ロッドを含んでなるものである場合、加熱部18をシリンジ16内に挿入してシールすることにより、加熱部18はシリンジ16内に固定される。加熱部18とシリンジ16のシーリングは、シリンジ16の内表面と加熱部18の外表面との間にシリコンゴム等のゴムリングを配置して圧着し、封止部19を形成することにより得られる。
【0028】
本実施形態に係るサンプル液供給容器1を用いて、注入領域31にサンプル液を注入する場合、まず、シリンジ16内(第二領域12)にサンプル液を充填する(図2(A)参照)。次に、シリンジ16内は加熱部18により加熱され、封止部13が融解される。サンプル液と、封止部13との比重差によっては、封止部13がサンプル液中を浮上する。そして、シリンジ15の内部(第一領域11)とシリンジ16の内部(第二領域12)とは連通されるので、シリンジ16内のサンプル液はシリンジ15内に注入される(図2(B)参照)。そして、図2(C)に示すように、シリンジ15内に注入されたサンプル液は加熱されており、且つシリンジ15内が減圧されているために、サンプル液は突沸し、蒸発する。これにより、サンプル液は濃縮される。また、サンプル液は減圧下の沸点まで急速に冷却されうる。そして、次に、中空針2が穿通部14に穿刺されることで、注入領域31内にサンプル液が導入される(図2(D)参照)。この際、注入領域31の内部が減圧されている場合には、上記サンプル液を短時間かつスムーズに注入領域31内に注入できる。
【0029】
また、封止部13については、サンプル液の液面の低下と共にシリンジ16の先端部からシリンジ15内部に移動して液表面を覆うようにして広がりうる。また、サンプル液は、加熱部18と接触しない状態になることで、当該液の加熱は抑制されて冷却される。かかる冷却により、液表面にコーティングされた封止部13は硬化してサンプル液を被覆することで、シリンジ15の内壁に結露した水滴等が濃縮されたサンプル液に還流することを防ぐことができる。
【0030】
(1−3)サンプル液濃縮用容器の第二実施形態
図3は、本発明に係るサンプル液濃縮用容器の第一実施形態を説明する模式図である。
【0031】
本実施形態に係るサンプル液濃縮用容器1は、注射器のシリンジを用いて構成されていることを特徴とする。すなわち、このサンプル液濃縮用容器1は、図3(A)に示すように、第二領域12を内空に構成するシリンジ(内筒体)16と、ピペットチップ16の少なくとも一部を内空に収容するシリンジ(外筒体)15と、によって構成されている。そして、シリンジ16の外表面とシリンジ15の内表面とが形成する空間が気密に封止されて第一領域11として構成されている。また、シリンジ15の先端が封止部材によって封止されて穿通部14が形成され、シリンジ16の先端も封止部材によって封止されて封止部13が形成されている。また、第二領域12内には、加熱部18が設けられている。更に、封止部13には、第二領域12側に、サンプル液をシリンジ16内からシリンジ15内に注入させる際に、所定物質を透過させる選択透過部20が形成されている。本実施形態に係るサンプル液濃縮用容器1では、選択透過部20が設けられている点以外は、上述した第一の実施形態に係るサンプル液濃縮用容器と実質的に同一である(図2(A)参照)。そのため、本実施形態では、選択透過部20に関する機能構成について主に説明する。
【0032】
図2(A)においては、選択透過部20は、サンプル液をシリンジ16内からシリンジ15内に注入させる際に、所定の物質のみを透過させる。例えば、選択透過部20は、所定の粒子径以下の物質のみを透過させる。ここでいう、所定の粒子径とは、サンプル液に含まれており、当該サンプル液の分析において阻害物質、夾雑物等となりうる物質の粒子径に応じて、適宜設定しうるものである。
【0033】
サンプル液濃縮用容器1では、選択透過部20が設けられているために、サンプル液中の所望の物質のみをシリンジ16内からシリンジ15内に注入させることが可能となる。選択透過部20は、所定の粒子径以下の物質のみを透過させることが可能であれば、特に形状、材質等は限定されるものではなく、任意のフィルターやメンブレン等とすることができる。また、選択透過部20は、所定のイオンや所定の官能基等を有する物質のみを選択的に透過するように構成されていてもよい。
【0034】
また、本実施形態に係るサンプル液濃縮用容器1は、封止部13の第二領域12側に選択透過部20を設ける点以外は、上述した第一の実施形態に係るサンプル液濃縮用容器と同様にして得られる。なお、本実施形態においては、図3(A)に示すように、選択透過部20は、封止部13の第二領域12側に設けた場合についてのみ説明するが、かかる例に限定されるものではない。例えば、選択透過部20は、封止部13の第一領域11側に設けられていてもよく、また、封止部13と一体に形成されていてもよい。
【0035】
本実施形態に係るサンプル液供給容器1を用いて、注入領域31にサンプル液を注入する場合、まず、シリンジ16内(第二領域12)にサンプル液を充填する(図3(A)参照)。そして、以後の工程(図3(A)〜(D)参照)については、図2(A)〜(D)を参照しながら説明した、上記本発明の第一の実施形態に係るサンプル液濃縮用容器を用いて注入領域31にサンプル液を注入する場合と同様にして行われる。すなわち、本実施形態に係るサンプル液濃縮用容器1では、シリンジ16内からシリンジ15内にサンプル液が注入される際、サンプル液の分析において阻害物質等となりうる物質が取り除かれ、その後サンプル液が濃縮される。そのため、サンプル液濃縮用容器1を有するサンプル液供給容器セットを用いることで、より高度な分析精度を確保することができる。
【0036】
ここで、本実施形態に係るサンプル液濃縮用容器1において、簡便にサンプル液を濃縮することができる点について、以下に一例を挙げて更に詳述する。
【0037】
例えば、サンプル液として全血試料を用いる場合、当該全血試料から直接核酸を抽出する際には、まず赤血球の除去さらに血清又は血漿成分からの白血球の単離・溶解、所望の核酸抽出等の操作が必要となる。PCR法では、赤血球由来のヘム誘導体が、反応混合物中に少量しか存在しない場合においても、反応を阻害する可能性があるため、特に核酸含有量が微量の場合には、反応阻害物質をなるべく除去することが求められる。
【0038】
この点、本発明の関連技術においては、全血と適量のアルカリ化剤を混合して得られたアルカリ化試料を加熱処理することによって核酸を抽出する。上記関連技術では、全血を用いた場合、加熱処理後のアルカリ化試料を酸性にして抽出することで、澄明化した核酸を含む試料を核酸増幅反応に利用している。ただし、この手法では酸とアルカリ溶液で中和するために、溶液内で核酸の濃度が低くなり、更に夾雑物が混在した状態で核酸増幅反応が行われる。また、上記関連技術を実行するには、複数の装置を必要とする。
【0039】
一方で、本実施形態に係るサンプル液濃縮用容器1では、上述したようにシリンジの内部でサンプル液の濃縮が行われ、且つサンプル液から不要な物質については除去される。このように、本実施形態に係るサンプル液濃縮用容器1を用いることで、安全性及び簡便性を確保したサンプル液の濃縮方法を実現することができる。
【0040】
(1−4)サンプル液濃縮用容器の第三実施形態
図3は、本発明に係るサンプル液濃縮用容器の第三実施形態を説明する模式図である。
【0041】
本実施形態に係るサンプル液濃縮用容器1は、マイクロピペット用のピペットチップを用いて構成されていることを特徴とする。すなわち、このサンプル液濃縮用容器1は、図に示すように、第二領域12を内空に構成するピペットチップ(内筒体)16と、ピペットチップ16の少なくとも一部を内空に収容するピペットチップ(外筒体)15と、によって構成されている。そして、ピペットチップ16の外表面とピペットチップ15の内表面とが形成する空間が気密に封止されて第一領域11として構成されている。また、ピペットチップ15の先端が封止部材によって封止されて穿通部14が形成され、ピペットチップ16の先端も封止部材によって封止されて封止部13が形成されている。また、ピペットチップ16内には、加熱部18が設けられている。更に、図示しないが、本実施形態に係るサンプル液濃縮用容器1では、上述した本発明の第二実施形態に係るサンプル液濃縮用容器に設けられた選択透過部が封止部13に設けられていてもよい。
【0042】
本実施形態に係るサンプル液供給容器1は、シリコンゴム等で先端を封止したピペットチップ15,16を用意し、減圧チャンバー内でピペットチップ15の先端側にピペットチップ16を被せるように重ね合わせてシールすることにより得られる。ピペットチップ15とピペットチップ16のシーリングは、ピペットチップ16の外表面とピペットチップ15の内表面との間にシリコンゴム等のゴムリングを配置して圧着することにより行い得る。また、図4に示すように、加熱部18が金属ロッドを含んでなるものである場合、加熱部18をピペットチップ16内に挿入してシールすることにより、加熱部18はピペットチップ16内に固定される。加熱部18とピペットチップ16のシーリングは、シリンジ16の内表面と加熱部18の外表面との間にシリコンゴム等のゴムリング(図示せず)を配置して圧着することにより得られる。
【0043】
本実施形態に係るサンプル液供給容器1を用いて、注入領域31にサンプル液を注入する場合、まず、ピペットチップ16内(第二領域12)にサンプル液を充填する(図4(A)参照)。そして、以後の工程(図4(A)〜(D)参照)については、シリンジ15、16を用いることに代えて、ピペットチップ15、16を用いる点以外は、図2(A)〜(D)を参照しながら説明した、上記本発明の第一の実施形態に係るサンプル液濃縮用容器を用いて注入領域31にサンプル液を注入する場合と同様にして行われる。
【0044】
2.マイクロチップセット
次に、本発明に係るマイクロチップセットについて説明する。このマイクロチップセットは、上述のサンプル液濃縮用容器と中空針に加えて、サンプル液の注入対象となる気密に封止された領域が形成されたマイクロチップとを含んで構成されるものである。
【0045】
(2−1)マイクロチップの構成と成形方法
本発明の第一実施形態に係るマイクロチップの上面模式図を図5に、断面模式図を図6及び図7に示す。図6は図5中P−P断面、図7は図5中Q−Q断面に対応する。
【0046】
符号Aで示すマイクロチップには、外部からサンプル溶液が穿刺注入される注入領域31と、サンプル溶液に含まれる物質あるいは該物質の反応生成物の分析場となる複数のウェル34と、一端において注入領域31に連通する主流路32と、この主流路32から分岐する分岐流路33が配設されている。主流路32の他端は終端部35として構成されており、分岐流路33は、主流路32の注入領域31への連通部と終端部35への連通部との間において主流路32から分岐し、各ウェル34に接続されている。
【0047】
注入領域31、主流路32、分岐流路33、ウェル34及び終端部35は、サンプル溶液が注入され、導入される注入領域である。
【0048】
マイクロチップAは、注入領域31、主流路32、分岐流路33、ウェル34及び終端部35を形成した基板層aに基板層aを貼り合わせ、注入領域31等の注入領域を気密に封止して構成されている。
【0049】
基板層a,aの材質は、ガラスや各種プラスチック(ポリプロピレン、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリジメチルシロキサン)とすることができるが、基板層a,aの少なくとも一方は、弾性を有する材質とすることが好ましい。弾性を有する材料としては、ポリジメチルシロキサン(PDMS)等のシリコーン系エラストマーの他、アクリル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、フッ素系エラストマー、スチレン系エラストマー、エポキシ系エラストマー、天然ゴムなどが挙げられる。基板層a,aの少なくとも一方をこれらの弾性を有する材料により形成することで、マイクロチップAに、中空針が穿通可能な弾性と弾性変形による自己封止性を付与することができる(「自己封止性」については詳しく後述する)。
【0050】
ウェル34内に導入された物質の分析を光学的に行う場合には、基板層a,aの材質は、光透過性を有し、自家蛍光が少なく、波長分散が小さいために光学誤差の少ない材料を選択することが好ましい。
【0051】
基板層aへの注入領域31、主流路32、分岐流路33、ウェル34及び終端部35の成形は、例えば、ガラス製基板層のウェットエッチングやドライエッチングによって、あるいはプラスチック製基板層のナノインプリントや射出成型、切削加工によって行うことができる。注入領域31等は、基板層aに成形されてもよく、あるいは基板層aに一部を基板層aに残りの部分を成形されてもよい。また、基板層aと基板層aの貼り合わせは、例えば、熱融着、接着剤、陽極接合、粘着シートを用いた接合、プラズマ活性化結合、超音波接合等の公知の手法により行うことができる。
【0052】
(2−2)マイクロチップへのサンプル溶液の導入
次に、図8−1、図8−2も参照して、本実施形態に係るマイクロチップへのサンプル溶液の導入方法を説明する。図8−1、図8−2は、マイクロチップ及びサンプル液濃縮用容器、中空針の断面模式図であり、図5中Q−Q断面に対応する。ここでは、サンプル液濃縮用容器として、上述の第一実施形態に係る容器を用いる場合を例に説明する。
【0053】
始めに、図8−1(A)に示すように、中空針2を注入領域31に穿刺する。中空針2は、基板層aの表面から、先端部が注入領域31内空に到達するように、基板層aを貫通して穿刺される。
【0054】
次に、中空針2の一端を、第一領域11内にサンプル液を充填したサンプル液濃縮用容器1の穿通部14から第一領域11の内部に対して穿刺する(図8−1(B)参照)。第一領域11内部に充填されたサンプル液は、図2を参照しながら説明したように、サンプル液濃縮用容器1によって濃縮されたサンプル液である。
【0055】
続いて、サンプル液は注入領域31の内部に導入される(図8−2(C)中、ブロック矢印参照)。この際、注入領域31の内部が減圧されている場合には、上記サンプル液を短時間かつスムーズに注入領域31内に注入できる。
【0056】
このようにして注入領域31から導入されたサンプル溶液は、主流路32を終端部35に向かって送液される(図8−2(C)中、ブロック矢印参照)。この際、送液方向上流に配設された分岐流路33及びウェル34から順に、終端部35まで内部に濃縮且つ滅菌されたサンプル溶液が導入される(図5も参照)。
【0057】
このように、本発明に係るマイクロチップセットでは、サンプル液濃縮用容器1で濃縮されたサンプル液が注入領域31内に導入できる。従って、サンプル液の分析の目的に応じて、サンプル液の濃縮を安全且つ簡便に行うことができ、高度な分析精度を確保することができる。
【0058】
また、サンプル溶液の導入後は、図8−2(D)に示すように、中空針2を引き抜き、基板層aの穿刺箇所を封止する。使用後のサンプル液濃縮用容器1及び中空針2は、使い捨てが可能である。
【0059】
また、このとき、基板層aをPDMS等の弾性を有する材料により形成しておくことにより、中空針2の抜去後に、基板層aの弾性変形による復元力で穿刺箇所が自然に封止されるようにできる。本発明においては、この基板層の弾性変形によるニードル穿刺箇所の自然封止を、基板層の「自己封止性」と定義するものとする。
【0060】
基板層aの自己封止性を高めるため、穿刺箇所における基板層a表面から注入領域31内空表面までの厚さ(図8−2(D)中、符号d参照)は、基板層aの材質や中空針2の径に応じて適切な範囲に設定される必要がある。また、分析時にマイクロチップAを加熱する場合には、加温に伴う内圧の上昇によって自己封止性が失われないように、厚さdを設定することが必要である。
【0061】
基板層aの弾性変形による自己封止を確実とするため、中空針2には、サンプル溶液の注入が可能であることを条件に、径の細いものを使用することが望ましい。具体的には、インスリン用注射針として用いられる、先端外径が0.2mm程度の無痛針が好適に使用される。
【0062】
中空針2として、先端外径0.2mmの無痛針を用いる場合、PDMSにより形成された基板層aの厚みdは0.5mm以上、加熱が行われる場合には0.7mm以上とされることが好適となる。
【0063】
本実施形態では、マイクロチップAに縦横3例で合計9つのウェル34を均等間隔で配設する場合を例に説明したが、ウェルの数や配設位置は任意とでき、ウェル34の形状も図に示す円柱形状に限定されない。また、注入領域31に導入されたサンプル溶液を各ウェル34に送液するための主流路32及び分岐流路33の配設位置も図に示す態様に限定されないものとする。さらに、ここでは、基板層aを弾性材料により形成し、中空針2を基板層aの表面から穿刺する場合を説明した。しかし、中空針2は基板層aの表面から穿刺してもよく、この場合には、基板層aを弾性材料により形成し、自己封止性を付与すればよい。
【0064】
上述してきた各実施形態におけるサンプル液は、特に限定されるものではないが、例えば、インフルエンザ感染の疑いのある患者由来の鼻腔拭い液等、核酸を含有する多様な試料が挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明に係るマイクロチップセットによれば、高い分析精度及び操作時の安全性を確保することができる。そのため、本発明に係るマイクロチップは、マイクロチップ上の流路内で複数の物質を電気泳動により分離し、分離された各物質を光学的に検出する電気泳動装置や、マイクロチップ上のウェル内で複数の物質間の反応を進行させ、生成する物質を光学的に検出する反応装置(例えば、リアルタイムPCR装置)などに好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0066】
1:サンプル液濃縮用容器、11:第一領域(第一の領域)、12:第二領域(第二の領域)、13:封止部、14:穿通部、15:外筒体(ピペットチップ・シリンジ)、16:内筒体(ピペットチップ・シリンジ)、17:栓、18:加熱部、19:栓、2:中空針、A:マイクロチップ、31:注入領域(注入部)、32:主流路、33:分岐流路、34:ウェル、35:終端部、36:穿刺孔、a,a,b,b,b:基板層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が減圧されて気密に封止された第一の領域と、
内部に液体を収容可能な第二の領域と、を有し、
前記液体を加熱する加熱部と、
前記第二の領域を封止し、前記加熱部により融解されて前記第一の領域及び前記第二の領域を連通することで前記液体を前記第二の領域から前記第一の領域に注入させる封止部と、
が設けられたサンプル液濃縮用容器。
【請求項2】
外部から前記第一の領域の内部に対して中空針が穿刺される穿通部が設けられる、請求項1記載のサンプル液濃縮用容器。
【請求項3】
前記第二の領域を内空に構成する内筒体と、当該内筒体の少なくとも一部を内空に収容する外筒体と、を含んでなり、
前記内筒体の外表面と前記外筒体の内表面とが形成する空間が気密に封止されて前記第一の領域を構成し、
前記封止部は、前記内筒体の開口領域を封止するように形成された、請求項2記載のサンプル液濃縮用容器。
【請求項4】
前記封止部と前記穿通部とが、前記内筒体と前記外筒体との同一側端をそれぞれ封止するように形成された、請求項2または3に記載のサンプル液濃縮用容器。
【請求項5】
前記封止部を形成する封止部材は、前記加熱部による加熱温度よりも低い融点を有する疎水性の材質で形成された、請求項4記載のサンプル液濃縮用容器。
【請求項6】
前記封止部には、前記液体を前記第二の領域から前記第一の領域に注入させる際に、所定の物質を透過させる選択透過部が形成されている、請求項1記載のサンプル液濃縮用容器。
【請求項7】
前記加熱部は、電流で加温可能な金属ロッドを有する、請求項1記載のサンプル液濃縮用容器。
【請求項8】
液体の注入対象となる注入領域に穿刺される中空針と、
内部が減圧されて気密に封止された第一の領域と、内部に液体を収容可能な第二の領域と、を有し、前記液体を加熱する加熱部と、前記第二の領域を封止し、前記加熱部により融解されて前記第一の領域及び前記第二の領域を連通することで前記液体を前記第二の領域から前記第一の領域に注入させる封止部と、が設けられたサンプル液濃縮用容器と、
を備えるサンプル液供給容器セット。
【請求項9】
液体の注入対象となる注入領域が形成されたマイクロチップと、
外部から前記注入領域の内部に穿刺される中空針と、
内部が減圧されて気密に封止された第一の領域と、内部に液体を収容可能な第二の領域と、を有し、前記液体を加熱する加熱部と、前記第二の領域を封止し、前記加熱部により融解されて前記第一の領域及び前記第二の領域を連通することで前記液体を前記第二の領域から前記第一の領域に注入させる封止部と、が設けられたサンプル液濃縮用容器と、
を備えるマイクロチップセット。
【請求項10】
所定の領域に収容した液体を加熱する手順と、
前記液体を収容した領域を封止する封止部を加熱融解することで、前記液体を収容した領域から内部が減圧されて気密に封止された領域に前記液体を注入させる手順と、を含むサンプル液濃縮方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【公開番号】特開2012−145501(P2012−145501A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5246(P2011−5246)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】