説明

サンプル液用のサンプル採取システム

本発明は、支持体(12)と、前記支持体に配置された穿刺エレメント(14)と、サンプル液を前記穿刺エレメント(14)から支持体(12)上の捕集箇所(18)にまで毛管輸送するためのセミオープン式の通路(16)とを備えたサンプル液用のサンプル採取システムに関する。本発明の場合には、通路(16)から側方に流出する過剰量のサンプル液のための収容構造体(20)が提案される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体と、前記支持体に配置された穿刺エレメントと、サンプル液を前記穿刺エレメントから前記支持体上の捕集箇所にまで毛管輸送するための、半開放型の通路とを備えたサンプル液用のサンプル採取システム、特に血液用のマイクロサンプリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドイツ連邦共和国特許公開(DE−A)第10134650号明細書はわずかな体液量を採取するための使い捨て用の穿刺ユニットを開示していて、前記穿刺ユニットは保持領域を有し、前記保持領域によって、縦長の毛管構造体の近位端が体液輸送のための少なくとも1つの毛管通路と接続されていて、かつ前記毛管構造の遠位端は皮膚に突き刺すために適していて、この場合少なくとも1つの毛管通路がその長さの少なくとも一部分にわたり外側に開放している。この開放型の毛管構造体によって、製造時の利点の他に、小さな刺し傷でのサンプル採取に関して、穿刺した際の痛みの低減を目指すというような改善もなされる。この毛管によって生じる検出区域もしくは捕集箇所への血液の流れにより、サンプル採取、輸送およびたとえば血糖の検出が1つのシステムに統合することができる。測定の改善のために、メイン輸送毛管を介して平面的に広がる検出領域を使用することが既に提案されていた。しかしながら、この場合でも、通路の輸送能力と比較して捕集箇所での血液の流れが過剰である場合に、輸送区間での望ましくない血液の流れ出しによって、潜在的な危険性を有する生体液で前記システムが汚染されてしまうという問題が生じる。さらに、このような意図しない血液の流れは、この採取システムの機能性を損なってしまう。
【発明の開示】
【0003】
このようなことから出発して、本発明の根底をなす課題は、先行技術において生じていた欠点を克服し、かつ汚染の危険性の低減を達成することであった。
【0004】
前記課題を解決するために、請求項1に記載された特徴の組合せが提案される。本発明の有利な実施態様および実施形態は引用形式請求項に記載されている。
【0005】
本発明は、輸送区域で場合により生じる液体の過剰量を適切に分岐させるという着想から出発する。したがって、本発明の場合には、通路から側方に流出する過剰量のサンプル液のための収容構造体が提案される。それにより、この過剰量が支持体上で機能的に固定され、汚染を生じさせないことが達成される。このことは、通路の毛管現象または通路の流量が低い場合(これは、きわめて小さな毛管または小さなアスペクト比を有する毛管の場合が該当する)に特に重要である。本発明は、いわば、限界流量の達成時に自動的に有効となる弁機能が作成されている。それにより、特に糖尿病の場合の定期的な血糖値測定用のポータブル機器における使い捨て製品として、このようなシステムの取扱のために特別な利点が生じる。
【0006】
この収容構造体は、少なくとも通路に近い、サンプル液用の入口領域において毛管として作用するため、自動的な吸引効果が達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
特に好ましい実施態様において、通路方向のサンプル液用の毛管による輸送能力は、収容構造体の分岐方向よりも大きい。この調節された毛管力の差により、前記サンプル液は、捕集箇所の方向へ向かって流動することが妨害されない。
【0008】
前記収容構造体は、流動方向において穿刺エレメントの後方に配置されかつ捕集箇所の前方に配置された通路の中間区域で支持体上に設けられている。穿刺エレメントが支持体の胴部に先端として突き出している場合に、前記収容構造体は胴部の領域内に配置されているのが有利である。
【0009】
好ましい実施態様の場合において、前記収容構造体は、支持体の通路に対して毛管スリットを保持しながら配置されたカバーエレメントによって形成されている。それにより毛管スリット中に引き取られた液体量は同時に外側に向かって保護されている。この場合、前記毛管スリットは、それに隣接する通路部分よりもサンプル液に対してわずかな毛管吸引力を有し、前記通路中へ後から流れ戻ることができることが保証されているのが好ましい。
【0010】
製造も容易にするさらに好ましい実施態様は、前記収容構造体が支持体部分上で、前記通路の横側に配置された少なくとも1つの、半開放型のオーバーフロー毛管によって形成されていることを考慮している。2つのオーバーフロー毛管が通路の両側に相互に対称に配置されていることが好ましい。この収容能力を高めるために、少なくとも1つのオーバーフロー毛管は少なくとも1つの分岐部を有していることができる。
【0011】
通常のサンプル輸送に不必要な影響を及ぼさないために、前記通路が側壁によって少なくとも1つのオーバーフロー毛管から隔てられていて、過剰量のサンプル液が前記側壁を越えてオーバーフロー毛管中へオーバーフローすることが好ましい。それとは別に、前記通路は毛管の分岐部を介して少なくとも1つのオーバーフロー毛管と流体的に結合されていることもできる。この場合に、前記分岐部は引き続くオーバーフロー毛管よりも小さな流動横断面を有することが保証されるのが好ましい。
【0012】
更なる改善は、前記収容構造体が同時に通路の充填のための受入部を形成していることにより達成される。
【0013】
穿刺エレメントが支持体としての平面成形体と一体成形されていて、かつ通路が溝状に線状に構成されていることが製造技術的に好ましい。好ましい実施態様において、支持体と穿刺エレメントとは光化学的マスクエッチングにより一体的に1つの平面材料から形成される。
【0014】
更なる本発明の態様は、少なくとも1つの有利に使い捨て製品として構成された本発明によるサンプル採取システムを備えた血液分析装置を含む。
【0015】
次に、本発明を図面で示した実施例を用いて詳細に説明する。
【0016】
図面中に示されたマイクロサンプリング装置10(microsampler)は、主に支持体12と、前記支持体に一体成形された穿刺エレメント14と、前記穿刺エレメント14から捕集箇所18への血液輸送のためのセミオープン式の通路16と、場合により通路16から横側に流出する過剰量の血液用の収容構造体20とからなる。
【0017】
図1中に示された支持体12は、前記支持体に接するように構成された穿刺エレメント14と共に、公知のように薄い特殊鋼板からなる光化学的マスクエッチングにより形成される。穿刺エレメント14の針先端部22は微視的量(ナノリットル〜マイクロリットル)の獲得のために、たとえば被験者の指先に突き刺し、その際に血液が通路16の毛管力によって自動的に捕集箇所18にまで輸送される。不所望な汚染を防止するために、この収容構造体20は過剰量の血液の定義された収容のために構成されている。
【0018】
この目的で、図1および2による実施態様の場合には、カバーエレメント24が収容構造体20として設けられている。このカバーエレメント24は、穿刺エレメント14に隣接する支持体12の胴部領域26中の通路16の上に架設されている。前記カバーエレメントはスペーサー28により支持体12からわずかな距離が保たれているため、毛管スリット30はその下にある通路部分32の上方に設けられている。この毛管スリット30は血液に対して通路部分32よりもわずかな毛管吸引力を有する。このように、通路16中を流動する血液は、捕集箇所18への到達が妨害されることはない。穿刺箇所から流出する血液量が通路16の収容能力よりも多い場合にだけ、血液過剰量34は位置的に定義されてカバーエレメント24の下方の毛管スリット30に留められる。場合によっては、この過剰量34は、穿刺箇所からの流量が後になって減少する場合に通路16の充填のためにも利用することができる。
【0019】
半開放型の溝状の通路16は、針先端部22から捕集箇所18を超えて、その長さにわたり直線的に延在している。横方向に拡張された捕集箇所もしくは目標箇所18には、検出エレメント36が、前記箇所に集められた血液と流体的に接触している。前記検出エレメント36は、血液中のアナライト、たとえばグルコースに応答するため、図示されていない検出ユニットによって定量的な検出を行うことができる。
【0020】
図3および4に示された実施例の場合には、カバーエレメントの代わりに、オーバーフロー毛管38が過剰量の血液のための収容構造体20として設けられている。このオーバーフロー毛管38は、支持体部12の胴体領域26でそれぞれ対になって通路16の両側に互いに対称的に配置されている。収容能力を高めるために、分岐部40が設けられている。
【0021】
図3による実施態様の場合には、オーバーフロー毛管38は側壁42によって隣接する通路部分32から隔てられているため、この毛管現象は弱められていない。この場合でも、過剰量の血液が過度な流入の際にだけ前記側壁42を越えてオーバーフロー毛管38中へ侵入する。この過剰量は、オーバーフロー毛管38の少なくとも通路側面の入口領域44の毛管現象によって自動的に収容される。
【0022】
図4に示された実施態様の場合には、前記オーバーフロー毛管38はそれぞれ分岐部46を介して通路16と直接結合している。この場合、前記分岐部46はきわめて短くかつ細い結合毛管を形成している場合が有利である。この場合でも、通路16の方向の毛管輸送能力が分岐方向よりも大きいことが保証されるのが好ましい。
【0023】
前記マイクロサンプリング装置10は、携帯可能な血糖値測定器中のいわゆる使い捨て用の製品として患者に便利に使用され、わずかな取扱の煩雑さおよび穿刺の際の痛みで衛生的に問題なく血糖値測定を日常において実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】血液用のマイクロサンプリング装置を上から見た図である。
【図2a】異なる血液流の場合の図1の線2−2に沿った断面図である。
【図2b】異なる血液流の場合の図1の線2−2に沿った断面図である。
【図3】他の実施例を上から見た図である。
【図4】他の実施例を上から見た図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体(12)と、前記支持体に接して配置されている穿刺エレメント(14)と、サンプル液を前記穿刺エレメント(14)から前記支持体(12)上の捕集箇所(18)まで毛管輸送するための、半開放型の通路(16)とを有するサンプル液用のサンプル採取システム、特に血液用のマイクロサンプリング装置において、前記通路(16)から横方向へ流出する過剰量のサンプル液用の収容構造体(20)を有することを特徴とする、サンプル液用のサンプル採取システム。
【請求項2】
前記収容構造体(20)がサンプル液のための少なくとも通路側面の入口領域(44)で毛管として作用することを特徴とする請求項1記載のサンプル採取システム。
【請求項3】
サンプル液のための、通路(16)方向の毛管輸送能力が収容構造体(20)の分岐方向の毛管輸送能力よりも大きいことを特徴とする請求項1または2記載のサンプル採取システム。
【請求項4】
前記収容構造体(20)が、流動方向において穿刺エレメント(14)の後方に配置され、かつ支持体(12)上で捕集箇所(18)の前方に配置された通路(16)の部分(32)に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のサンプル採取システム。
【請求項5】
穿刺エレメント(14)が支持体(12)の胴部(26)に接する先端部(22)として突き出していて、かつ収容構造体(20)が胴部(26)の範囲内に配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のサンプル採取システム。
【請求項6】
前記収容構造体(20)は、通路(16)に対して毛管スリット(30)を保持しながら支持体(12)上に配置されたカバーエレメントによって形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のサンプル採取システム。
【請求項7】
毛管スリット(30)が、前記毛管スリットに隣接する通路部分(32)よりもサンプル液に対してわずかな毛管吸引力を有することを特徴とする請求項6記載のサンプル採取システム。
【請求項8】
収容構造体(20)が支持体部分上に通路(16)の横側に配置された、半開放型の、少なくとも1つのオーバーフロー毛管(38)により形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のサンプル採取システム。
【請求項9】
通路(16)の両側に2つのオーバーフロー毛管(38)が相互に対称に配置されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のサンプル採取システム。
【請求項10】
少なくとも1つのオーバーフロー毛管(38)が少なくとも1つの分岐部(40)を有することを特徴とする請求項8または9記載のサンプル採取システム。
【請求項11】
通路(16)は側壁(42)によって少なくとも1つのオーバーフロー毛管(38)から隔てられていて、その際、過剰量のサンプル液は前記側壁(42)を超えてオーバーフロー毛管(38)中へオーバーフローすることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載のサンプル採取システム。
【請求項12】
通路(16)は毛管分岐部(46)を介して少なくとも1つのオーバーフロー毛管(38)と流体的に結合していることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載のサンプル採取システム。
【請求項13】
前記分岐部(46)は、それに引き続くオーバーフロー毛管(38)よりも小さな流動横断面を有することを特徴とする請求項12記載のサンプル採取システム。
【請求項14】
前記収容構造体(20)は、同時に通路(16)の充填用の受入部を形成することを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載のサンプル採取システム。
【請求項15】
前記穿刺エレメント(14)が支持体(12)として平面成形体と一体成形されていて、かつ前記通路(16)が溝状で線状に構成されていることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載のサンプル採取システム。
【請求項16】
前記支持体(12)および前記穿刺エレメント(14)は、光化学的マスクエッチングによって平面材料から一体式に形成されていることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載のサンプル採取システム。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の、少なくとも1つの使い捨て用に構成されたサンプル採取システム(10)を備えた血液分析機器。

【図1】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2008−519271(P2008−519271A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539498(P2007−539498)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【国際出願番号】PCT/EP2005/011413
【国際公開番号】WO2006/050810
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(501205108)エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト (285)
【Fターム(参考)】