説明

サンルーフ構造

【課題】車両の側面衝突時にリインフォースメントの車室内への侵入を防止し、且つ、インフレータの長さに拘わらず、カーテンシールドエアバッグの展開を妨げることのないサンルーフ構造を提供する。
【解決手段】ルーフ部に開口部を有する車両において、車両の左右両側に設けられた一対のルーフサイドレール10が、前記開口部の後側に配置されたリインフォースメント11を介して連結されるサンルーフ構造であって、前記ルーフサイドレール10に対し、一端が結合されるブラケット部1,2と、前記リインフォースメントの両端に設けられ、前記ブラケット部よりも剛性が低く形成されると共に、前記ブラケット部の他端が結合される脆弱部3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーフサイド部分に搭載されたカーテンシールドエアバッグを車両の側面衝突時に展開させるサンルーフ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、所謂サンルーフと呼ばれる、車両のルーフ部に開口部を設けたルーフ構造の自動車が普及している。そのようなルーフ構造においては、図5に一部フレーム構造(車両の一側面側のみを図示)を示すように開口部50の後側(Bピラー付近)に左右のルーフサイドレール51を互いに連結するセンターリインフォースメント52を備えている。
【0003】
図6(図5のA−A矢視断面)に示すように、前記センターリインフォースメント52とルーフサイドレール51とは、両者よりも剛性の低いブラケット53を介して接続され、これにより、車両の側面衝突時において、センターリインフォースメント52、或いはルーフサイドレール51の変形が抑制され、それらの車室内への侵入が防がれる。即ち、図7に示すように、側方からの衝突により力Fが加わると、ブラケット53が変形して潰れ、衝撃を吸収するようになされている(特許文献1)。
【0004】
ところで、このようなルーフ構造において、ルーフサイドレール51には、所謂カーテンシールドエアバッグ(以下、CSAと呼ぶ)が多く搭載されている。このCSAは、側面衝突時等に、ルーフサイド部分から膨らみ、搭乗者の頭部、頚部を保護するエアバッグである。
従来、図6に示すように、センターリインフォースメント52とルーフサイドレール51とを連結するブラケット53は、図示するように断面凸形状に形成されているため、その内側に形成された空間を利用して前記CSA54が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−230408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ブラケット53の内側にCSA54が配置されている場合、図7のようにブラケット53と共にCSA54が潰され、図8に示すようにエアバッグ展開が規制される虞があった。
そのような問題を避けるには、CSA54をブラケット53から離して配置すればよいが、車種によっては、離して配置するスペースが無く、その場合には、図9に示すように、CSA54のバッグ部分54aを膨らますためのインフレータ54b(火薬が詰められた鉄筒)のみをブラケット53の内側に配置し、バッグ部分54aをブラケット53から離して配置する方法が採られていた。
【0007】
しかしながら、インフレータ54b(鉄筒)が短いタイプのCSA54の場合、インフレータ54bの長さがブラケット53の幅(長さ寸法)より短いために、インフレータ54bに接続されたバッグ部分54aの一部がブラケット53の内側に位置(配置)することがあった。その場合、側面衝突によりブラケット53が潰れると、そのブラケット53の内側に位置するバッグ部分54aの一部が潰されるため、エアバッグの配置が困難となるという課題があった。
【0008】
本発明は、前記した点に着目してなされたものであり、ルーフサイド部分に搭載されたカーテンシールドエアバッグを車両の側面衝突時に展開させるサンルーフ構造において、車両の側面衝突時にリインフォースメントの車室内への侵入を防止し、且つ、インフレータの長さに拘わらず、カーテンシールドエアバッグの展開を妨げることのないサンルーフ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した課題を解決するために、本発明に係るサンルーフ構造は、ルーフ部に開口部を有する車両において、車両の左右両側に設けられた一対のルーフサイドレールが、前記開口部の後側に配置されたリインフォースメントを介して連結されるサンルーフ構造であって、前記ルーフサイドレールに対し、一端が結合されるブラケット部と、前記リインフォースメントの両端に設けられ、前記ブラケット部よりも剛性が低く形成されると共に、前記ブラケット部の他端が結合される脆弱部とを備えることに特徴を有する。
尚、前記ブラケット部よりも剛性が低く形成されると共に、少なくとも一端が前記ブラケット部と結合される連結板を備え、前記連結板により前記脆弱部が形成されていることが望ましい。或いは、前記センターリインフォースメントの両端部の剛性が、前記ブラケット部の剛性よりも低く形成されることにより前記脆弱部が形成されていてもよい。
また、前記ブラケット部は、前記ルーフサイドレールに対し、一端が結合される第一のブラケットと、前記第一のブラケットに重ねて配置される第二のブラケットとを備え、前記第一のブラケットの他端は、前記第二のブラケットと共に、前記脆弱部に結合されることが望ましい。
【0010】
このように構成されたサンルーフ構造によれば、車両側方からの衝突により力が加わると、先ず、連結板とリインフォースメントとの結合領域(脆弱部)が衝撃を吸収して破断する、或いは、ブラケット部よりも剛性の低い連結板(脆弱部)が変形する。
このため、剛性の高いブラケット部は、殆ど変形することなく、その内側にカーテンシールドエアバッグを配置した場合には、それが潰されることがない。
従って、カーテンシールドエアバッグのバッグ部分を車室側に確実に展開させることができ、搭乗者の頭部及び頸部を保護することができる。
また、ブラケット部が変形して潰されることがないため、インフレータ(図示せず)が短い安価なタイプのカーテンシールドエアバッグを搭載することが可能となり、コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ルーフサイド部分に搭載されたカーテンシールドエアバッグを車両の側面衝突時に展開させるサンルーフ構造において、車両の側面衝突時にリインフォースメントの車室内への侵入を防止し、且つ、インフレータの長さに拘わらず、カーテンシールドエアバッグの展開を妨げることのないサンルーフ構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、この発明に係るサンルーフ構造の構成を示す図であって、車両の一側面側のみを示す平面図である。
【図2】図2は、図1のサンルーフ構造において、ルーフサイドレールとセンターリインフォースメントとの連結部の構成部材を示す分解斜視図である。
【図3】図3は、図1のB−B矢視断面図であって、図3(a)は通常の状態、図3(b)は側面衝突後の状態を示している。
【図4】図4は、図1のサンルーフ構造において、車両の側面衝突により展開するエアバッグの状態を示す車両正面から見た断面図である。
【図5】図5は、従来のサンルーフ構造の構成を示す図であって、車両の一側面側のみを示す平面図である。
【図6】図6は、図5のA−A矢視断面図である。
【図7】図7は、図5のA−A矢視断面図であって、側面衝突後の状態を示している。
【図8】図8は、従来のサンルーフ構造において、車両の側面衝突により展開するエアバッグの状態を示す車両正面から見た断面図である。
【図9】図9は、従来のカーテンシールドエアバッグの配置例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明にかかる実施の形態につき、図面に基づいて説明する。図1は、この発明に係るサンルーフ構造の構成を示す平面図である(車両の一側面側のみを図示)。図2は、ルーフサイドレールとセンターリインフォースメントとの連結部の構成部材を示す分解斜視図である。また、図3は、図1のB−B矢視断面図であって、図3(a)は通常の状態、図3(b)は側面衝突後の状態を示している。
【0014】
本発明のサンルーフ構造は、図1に示すようにルーフサイドレール10と、センターリインフォースメント11とを連結する構成に特徴を有する。センターリインフォースメント11は、開口部の後側においてルーフサイドレール10に略直交して配置される。
図2に示すように、ルーフサイドレール10と、センターリインフォースメント11とを連結する部材として、2枚のブラケット1,2(ブラケット部)と、1枚の連結板3とを備える。
連結板3は、2枚重ねにされたブラケット1,2と、センターリインフォースメント11とを連結するための鋼板であって、重ねられて高剛性となされたブラケット1,2よりも剛性が低く形成されている(即ち、連結板3により脆弱部が構成される)。
【0015】
ブラケット1(第一のブラケット)の一端には、ルーフサイドレール10に固定するためのボルト穴4が形成され、他端には、連結板3に接続するためのボルト穴5が設けられている。また、ブラケット2(第二のブラケット)にも、連結板3に接続するためのボルト穴5が設けられている。尚、ブラケット1のボルト穴5とブラケット2のボルト穴5は、ブラケット1,2が位置合わせされた状態で、互いに同じ位置となるように形成されている。
【0016】
図3(a)に示すように、一端にボルト穴4が形成されたブラケット1のみがルーフサイドレール10に対しボルトネジ12により螺合される。このような構成とすることにより、ブラケット1は、従来用いられている部材を用いることができる。
一方、連結板3には、前記ブラケット1,2のボルト穴5に対応するボルト穴6が設けられ、ブラケット1,2が重ねられ、ボルト穴5,6の位置合わせがなされた状態で、それらボルト穴5,6にボルトネジ7が挿入され、螺合される構成となっている。
【0017】
また、連結板3とセンターリインフォースメント11とは、連結板3における複数の箇所8(図では6箇所)と、センターリインフォースメント11における複数の対応箇所9とが、それぞれスポット溶接され、相互に結合される構成となっている。
また、図3(a)に示すように、カーテンシールドエアバッグ(CSAと呼ぶ)15は、ブラケット1,2の内側に配置されている。
【0018】
このように構成されたサンルーフ構造によれば、図3(b)に示すように、車両側方からの衝突により力Fが加わると、先ず、ブラケット1,2よりも剛性の低い連結板3(脆弱部)が衝撃を吸収して変形する。
また、図3(b)に示すように、2枚重ねで剛性の高いブラケット1,2は変形が抑制されるため、その内側に配置されたCSA15は潰されることが抑制される。
従って、図4に示すように、CSA15のバッグ部分15aを車室側に確実に展開させることができ、搭乗者30の頭部及び頸部を保護することができる。
また、ブラケット1,2が変形して潰されることがないため、インフレータ(図示せず)が短い(安価な)タイプのCSAを搭載することが可能となり、コストを低減することができる。
【0019】
尚、本実施の形態においては、ブラケット部を、2枚のブラケット1,2により構成するものとして説明したが、その数は限定されるものではなく、1枚のブラケットにより構成する、或いは3枚以上のブラケットにより構成してもよい。
また、センターリインフォースメント11の両端における脆弱部を、連結板3により構成するものとしたが、それに限定しなくてもよい。例えば、連結板3に代えて、センターリインフォースメント11の両端部の厚さ寸法、幅寸法、或いは形状等により、ブラケット部(ブラケット1,2)よりも剛性の低い脆弱部を形成してもよい。
また、連結板3とセンターリインフォースメント11とは、複数箇所のスポット溶接により結合されるものとしたが、その溶接箇所の数を調整する等により、脆弱部を形成してもよい。
【符号の説明】
【0020】
1 ブラケット(第一のブラケット、ブラケット部)
2 ブラケット(第二のブラケット、ブラケット部)
3 連結板(脆弱部)
10 ルーフサイドレール
11 センターリインフォースメント(リインフォースメント)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーフ部に開口部を有する車両において、車両の左右両側に設けられた一対のルーフサイドレールが、前記開口部の後側に配置されたリインフォースメントを介して連結されるサンルーフ構造であって、
前記ルーフサイドレールの側部に対し、一端が結合されるブラケット部と、
前記リインフォースメントの両端に設けられ、前記ブラケット部よりも剛性が低く形成されると共に、前記ブラケット部の他端が結合される脆弱部とを備えることを特徴とするサンルーフ構造。
【請求項2】
前記ブラケット部よりも剛性が低く形成されると共に、少なくとも一端が前記ブラケット部と結合される連結板を備え、
前記連結板により前記脆弱部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載されたサンルーフ構造。
【請求項3】
前記センターリインフォースメントの両端部の剛性が、前記ブラケット部の剛性よりも低く形成されることにより前記脆弱部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載されたサンルーフ構造。
【請求項4】
前記ブラケット部は、
前記ルーフサイドレールに対し、一端が結合される第一のブラケットと、
前記第一のブラケットに重ねて配置される第二のブラケットとを備え、
前記第一のブラケットの他端は、前記第二のブラケットと共に、前記脆弱部に結合されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載されたサンルーフ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−101664(P2012−101664A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251448(P2010−251448)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】