サーチュイン1(SIRT1)遺伝子活性化剤及びテロメラーゼ逆転写酵素(TERT)遺伝子活性化剤

【課題】 サーチュイン1(SIRT1)遺伝子活性化剤及びテロメラーゼ逆転写酵素(TERT)遺伝子活性化剤を提供すること。
【解決手段】 松かさリグニン配糖体を有効成分として含有するサーチュイン1(SIRT1)遺伝子活性化剤及びテロメラーゼ逆転写酵素(TERT)遺伝子活性化剤とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーチュイン1(SIRT1)遺伝子活性化剤及びテロメラーゼ逆転写酵素(TERT)遺伝子活性化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
サーチュインは、SIRT1〜7からなる脱アセチル化酵素である。近年、サーチュインの機能に関する研究が盛んになり、特に、サーチュイン1(SIRT1)は、抗老化作用、糖尿病改善作用、心血管保護作用、腎疾患改善作用、炎症性サイトカイン産生の抑制作用、神経保護作用等、様々な機能を有することが明らかになった。
これらのSIRT1脱アセチル化活性を増強する因子として、レスベラトロールやケルセチンなどの化合物が開発され、抗老化剤(アンチ・エージング剤)、糖尿病治療薬、心血管疾患治療薬、神経系疾患治療薬、抗炎症剤などに利用すべく、活発な研究が行われている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】実験医学 2010年28巻19号 3068−3076頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、サーチュイン1(SIRT1)遺伝子活性化剤及びテロメラーゼ逆転写酵素(TERT)遺伝子活性化剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態は、リグニン配糖体を有効成分として含有するサーチュイン1(SIRT1)遺伝子活性化剤であって、前記リグニン配糖体は、以下の性質を有する。
(1)リグニン及び多糖類が結合
(2)分子量は8000から10000
(3)リグニンと多糖類の結合比は1:1〜2:1(分子比)
(4)多糖類はウロン酸10〜20%、中性糖80〜90%で構成されている。
【0006】
前記リグニン配糖体は、以下の工程で単離される。
【0007】
(1)ゴヨウマツの松かさを熱水処理する工程
(2)前記熱水処理した松かさをエタノール処理する工程
(3)前記エタノール処理した松かさを乾燥させる工程
(4)前記乾燥させた松かさを水酸化ナトリウムで処理して抽出液を得る工程
(5)前記抽出液を中和する工程
(6)(3)で中和した前記抽出液にエタノールを添加し、沈殿物を回収する工程
(7)沈殿物を精製して、サーチュイン1(SIRT1)遺伝子活性化画分を得る工程。
【0008】
前記リグニン配糖体は、部分構造として下記構造式を有すると推定される。
【化1】

【0009】
本発明の他の一実施形態は、アンチ・エージング剤、糖尿病治療剤及び予防剤、心血管疾患治療剤及び予防剤、神経系疾患治療剤及び予防剤、腎疾患治療剤及び予防剤、並びに抗炎症剤のうちのいずれか1つ以上として用いられる医薬であって、上記リグニン配糖体を有効成分として含有する。前記糖尿病が2型糖尿病であってもよく、前記心血管疾患が心筋梗塞または動脈硬化であってもよく、前記神経系疾患が、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、または認知症であってもよく。前記腎疾患が、ネフローゼまたは腎機能障害であってもよく、前記炎症が、肺炎、肝炎、または膵炎であってもよい。
【0010】
本発明の他の一実施形態は、NF-kappaB阻害剤であって、上記リグニン配糖体を有効成分として含有する。
【0011】
本発明の他の一実施形態は、化粧品組成物であって、上記リグニン配糖体を有効成分として含有する。
【0012】
本発明の他の一実施形態は、テロメラーゼ逆転写酵素(TERT)遺伝子活性化剤であって、上記リグニン配糖体を有効成分として含有する。
【0013】
本発明の他の一実施形態は、サーチュイン1(SIRT1)遺伝子活性化剤であって、上記リグニン配糖体、レスベラトロールまたはケルセチンを有効成分として含有し、他のサーチュイン1(SIRT1)活性化剤と併用されてもよい。また、上記リグニン配糖体、レスベラトロールまたはケルセチンを有効成分として含有し、他のサーチュイン1(SIRT1)活性化剤及び/またはサーチュイン1(SIRT1)遺伝子活性化剤と併用されてもよい。
【0014】
なお、本明細書で、SIRT1活性と称する場合、SIRT1脱アセチル化活性を意味するものとする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によって、サーチュイン1(SIRT1)遺伝子活性化剤及びテロメラーゼ逆転写酵素(TERT)遺伝子活性化剤を提供することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例において、松かさリグニン配糖体のSIRT1遺伝子プロモーター活性化能を、レスベラトロールまたはケルセチンのプロモーター活性化能と比較したグラフ、及び松かさリグニン配糖体の培養液中の濃度とSIRT1遺伝子のプロモーター活性化との相関関係を示したグラフである。
【図2】本発明の一実施例において、松かさリグニン配糖体のTERT遺伝子プロモーター活性化能を、レスベラトロールまたはケルセチンのプロモーター活性化能と比較したグラフ、及び松かさリグニン配糖体の培養液中の濃度とTERT遺伝子のプロモーター活性化との相関関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的に実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【0018】
(1)松かさリグニン配糖体
本発明のサーチュイン1(SIRT1)遺伝子活性化剤に含まれる化合物は、マツ科植物に含まれるリグニン配糖体の一種であって、以下の性質を有する。
(I)リグニン及び多糖類が結合
(II)分子量は8000から10000
(III)リグニンと多糖類の結合比は1:1〜2:1(分子比)
(IV)多糖類はウロン酸10〜20%、中性糖80〜90%で構成されている。中性糖としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、アラビノースが例示できる。
【0019】
このリグニン配糖体は、以下のようなゴヨウマツの松かさからの抽出方法によって特定できる。
【0020】
(I)熱水処理
まず、ゴヨウマツの松かさを熱水処理する。水の量は、松かさの量に応じて、適宜決めれば良い。水の温度は特に限定されないが、90℃以上が好ましく、100℃がより好ましい。処理時間は特に限定されず、1時間〜1昼夜で、数回処理しても良いが、2時間、3回処理することが好ましい。
(II)エタノール処理
次に、熱水処理した松かさをエタノール処理する。エタノールの量は、松かさの量に応じて、適宜決めれば良い。松かさは乾燥状態のまま、100%エタノールに浸すことが好ましく、1時間〜1昼夜静置すればよいが、2時間室温に静置することが好ましい。
(III)乾燥処理
エタノール処理した松かさをアセトン洗浄し、エタノールを除去する。アセトンの量は、松かさの量に応じて、適宜決めれば良い。その後、放置して、松かさを乾燥させる。
(IV)水酸化ナトリウム処理
乾燥させた松かさを水酸化ナトリウムで処理して抽出液を得る。水酸化ナトリウムの量は、松かさの量に応じて、適宜決めれば良い。水酸化ナトリウムの濃度は特に限定されないが、0.1N〜1Nであることが好ましく、0.3Nであることがより好ましい。処理時間は、1時間〜1昼夜静置すればよいが、1昼夜室温に静置することが好ましい。その後、松かさを除去して、抽出液を回収する。
(V)中和処理
こうして得られた抽出液を中和する。用いる酸は、特に限定されないが、塩酸または酢酸が好ましい。最終pHは、5〜6であることが好ましく、5.5であることがより好ましい。
(VI)エタノール沈殿
中和した前記抽出液にエタノールを添加し、好ましくは4℃で、1時間〜1昼夜静置し、リグニン配糖体を沈殿させ、吸引濾過して上清を除去する。
(VII)精製
最後に、沈殿物を精製する。例えば、ゲル濾過で分画して、各画分に対し、SIRT1遺伝子のプロモーターを用いたルシフェラーゼアッセイによって、SIRT1遺伝子のプロモーター活性化作用を評価し、活性フラクションサーチュイン1(SIRT1)遺伝子活性化画分を得ることができる。
【0021】
こうして抽出されたリグニン配糖体(本明細書では、松かさリグニン配糖体と称する)は、部分構造として以下の構造式を有すると推定される。
【化2】

【0022】
上記の松かさリグニン配糖体の製法は、本発明で用いる松かさリグニン配糖体の特定方法であって、実際にこの松かさリグニン配糖体を用いる場合の抽出方法は特に限定されず、公知の方法を用いれば良い。例えば、日本国特許公報第278260号や日本国特許公報第2784605号に記載されている抽出方法を用いることができる。
【0023】
(2)サーチュイン1(SIRT1)遺伝子活性化剤
松かさリグニン配糖体は、サーチュイン1(SIRT1)遺伝子の発現を活性化することができるので、薬品組成物(医薬品組成物及び試薬品組成物)、食品組成物、または化粧品組成物として利用することができ、これら組成物を剤形化することにより、サーチュイン1(SIRT1)遺伝子活性化剤として使用することができる。なお、本明細書で「遺伝子活性化」というのは、「遺伝子発現増強」と同義であるとする。ここで、SIRT1遺伝子の由来は、ヒトであっても、ヒト以外のほ乳類であっても良い。
【0024】
SIRT1は、老化予防(アンチ・エージング)作用、糖尿病改善作用、心血管保護作用、腎疾患改善作用、炎症性サイトカイン産生の抑制作用、神経保護作用等、様々な機能を有するため、生体内で、SIRT1遺伝子を活性化し、SIRT1の体内濃度を上げることによって、抗老化作用、糖尿病改善作用、心血管保護作用、炎症性サイトカインの抑制作用、神経保護作用等を発揮させることができる。従って、松かさリグニン配糖体を有効成分として含有するSIRT1遺伝子活性化剤は、アンチ・エージング(老化予防)剤、糖尿病治療剤及び予防剤、心血管疾患治療剤及び予防剤、神経系疾患治療剤及び予防剤、腎疾患治療剤及び予防剤、並びに抗炎症剤などに使用することができる。具体的な対象疾患としては、例えば、2型糖尿病などの糖尿病、動脈硬化、心筋梗塞などの心血管疾患、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、または認知症などの神経系疾患、ネフローゼまたは腎機能障害などの腎疾患、肺炎、肝炎、膵炎などの様々な炎症性疾患などを挙げることができる。特に、これらの対象疾患が、同時に複数生じるような、多臓器(心臓、肝臓、膵臓、腎臓など)の機能低下による全身性の疾患である「老年病」に対して有効に作用し、複数の疾患を一元的に治療または予防できるという点で、極めて有効である。このように、松かさリグニン配糖体を有効成分として含有するSIRT1遺伝子活性化剤は、高齢者医療のあり方を根本的に変えることが期待される。
【0025】
なお、SIRT1は、NF-kappaB抑制作用を有するため、松かさリグニン配糖体は、NF-kappaB抑制剤としても用いることができる。松かさリグニン配糖体は、NF-kappaB抑制を通じて、NOシグナルを活性化し、TNFalfa、ICAM-1、IL-6、IL-1などの炎症性サイトカインや誘導型NOS(i-NOS)を抑制することができるので、心血管保護作用や抗炎症作用の少なくとも一部は、このNF-kappaB抑制作用によるものと考えられる。
【0026】
(3)テロメラーゼ逆転写酵素(TERT)遺伝子活性化剤
テロメラーゼは、テロメア配列の鋳型となるTERC (Telomere RNA Component)、逆転写酵素(TERT)、及びジスケリンやTEP1などの制御サブユニットからなる複合体である。
【0027】
松かさリグニン配糖体は、TERT遺伝子の発現を活性化することができるので、薬品組成物(医薬品組成物及び試薬品組成物)、食品組成物、または化粧品組成物として利用することができ、これら組成物を剤形化することにより、テロメラーゼ遺伝子活性化剤として使用することができる。ここで、TERT遺伝子の由来は、ヒトであっても、ヒト以外のほ乳類であっても良い。
【0028】
細胞及び生体は、老化に伴ってテロメアが短くなることが知られており、テロメラーゼ遺伝子の発現を活性化することにより、老化予防(アンチ・エージング)効果が得られる(JAMA. 1998 Jun 3;279(21):1732-5)。また、早老症では、テロメアの短縮が早くなることが知られており、テロメラーゼ遺伝子の発現を活性化することにより、早老症の治療が可能になる。従って、松かさリグニン配糖体を有効成分として含有するテロメラーゼ遺伝子活性化剤は、アンチ・エージング(老化予防)剤及び早老症治療剤として有効である。
【0029】
(4)松かさリグニン配糖体の用途
松かさリグニン配糖体は、薬品組成物(医薬品組成物及び試薬品組成物)、飲食品組成物、または化粧品組成物などに用いることができ、それぞれ、当業者に周知の方法を用いて、飲食品、薬品(医薬及び試薬)、化粧品を製造するのに使用することができる。これらの組成物の原料として、事実上純化された松かさリグニン配糖体を用いても良いが、不純物が混入した松かさなどの抽出物を用いても良く、例えば、上記精製方法において、(VI)のエタノール沈殿までを行った抽出物を用いても良い。ここで、松かさの由来とする松は、松かさリグニン配糖体を含有する松であれば特に限定されないが、特に松かさリグニン配糖体を多量に含有するゴヨウマツが好ましい。
【0030】
松かさリグニン配糖体を含有する飲食品としては、特に制限はないが、簡便性からは、添加物として、既存の飲食品に添加するのが好ましい。なお、松かさリグニン配糖体を含有する飲食品を製造するに当たって、通常用いられる他の添加物などを使用してもよい。
【0031】
飲食品としての松かさリグニン配糖体は、サプリメント、栄養補助食品、健康補助食品、機能性食品、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品などとして用いることも可能であるが、特に、サプリメントや補助食品として用いることが好ましい。飲食品としては、例えば、チョコレート、ビスケット、ガム、キャンディー、クッキー、グミ、打錠菓子等の菓子類、シリアル、粉末飲料、清涼飲料、乳飲料、栄養飲料、炭酸飲料、ゼリー飲料等の飲料、アイスクリーム、シャーベットなどの冷菓が挙げられる。また、特定保健用食品や栄養補助食品等の場合であれば、粉末、顆粒、カプセル、シロップ、タブレット、糖衣錠等いずれの形態であってもよい。
【0032】
松かさリグニン配糖体を含有する医薬としては、(2)(3)に記載した疾患のいずれをも対象にすることができる。医薬の製造は、当業者に周知の方法を用いればよく、形状は特に限定されず、錠剤、カプセル、袋詰め、シロップ、坐薬、瓶詰め、および軟膏等であってもよい。
【0033】
松かさリグニン配糖体を含有する試薬は、in vitroまたはin vivoにおける、様々な研究用試薬として用いることもできる。その目的は限定されず、例えば、医薬開発であってもよく、基礎研究であってもよい。また、用いる対象も限定されず、例えば、細胞から抽出したものであっても、細胞であっても、生体であってもよい。
【0034】
また、松かさリグニン配糖体を含有する化粧品を製造することもできるが、その形状は特に制限されず、乳化剤、ゲル、ローションまたは粉末等が挙げられる。その化粧料には、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で、化粧料の製造に通常使用される各種主剤及び助剤、その他の成分を使用することができる。
【0035】
(5)その他のサーチュイン1(SIRT1)遺伝子活性化剤及びテロメラーゼ逆転写酵素(TERT)遺伝子活性化剤
本発明のSIRT1遺伝子活性化剤及びTERT遺伝子活性化剤は、レスベラトロールまたはケルセチンを含有してもよい。従って、レスベラトロール及びケルセチンは、薬品組成物(医薬品組成物及び試薬品組成物)、飲食品組成物、または化粧品組成物などに用いることができ、それぞれ、当業者に周知の方法を用いて、飲食品、薬品、化粧品を製造するのに使用することができる。それらの具体的な実施態様は、(4)に記載したものと同様である。
【0036】
(6)SIRT1活性化剤とSIRT1遺伝子活性化剤の併用
従来知られているように、レスベラトロール及びケルセチンは、SIRT1活性化能を有し、本明細書で明らかにしたように、松かさリグニン配糖体、レスベラトロール、及びケルセチンは、SIRT1遺伝子活性化能を有する。
【0037】
SIRT1のより強い活性を得るためには、SIRT1活性化剤とSIRT1遺伝子活性化剤を併用すればよい。メカニズムの異なる薬剤を併用することによって、SIRT1の効果は相乗的に増強されるからである。例えば、SIRT1遺伝子活性化剤である、松かさリグニン配糖体と、SIRT1活性化剤である、レスベラトロール、ケルセチン、プテイン、ピロロキノザリン、オキサゾロピリジン、またはSRT1720との併用、SIRT1遺伝子活性化剤であるレスベラトロールと、SIRT1活性化剤である、ケルセチン、プテイン、ピロロキノザリン、オキサゾロピリジン、またはSRT1720との併用、SIRT1遺伝子活性化剤であるケルセチンと、SIRT1活性化剤である、レスベラトロール、プテイン、ピロロキノザリン、オキサゾロピリジン、またはSRT1720との併用などが考えられる。
【0038】
ここで、SIRT1活性化剤とSIRT1遺伝子活性化剤は、単剤として併用してもよく、複合剤として併用しても良い。単剤として併用する場合、SIRT1活性化剤とSIRT1遺伝子活性化剤を同時に投与するのが好ましいが、「同時」とは、時間的に全く同じであっても同じでなくてもよく、一方の効果がある間に、他方を投与することを意味する。
【0039】
(7)TERT遺伝子活性化剤とSIRT1活性化剤及び/又はSIRT1遺伝子活性化剤の併用
松かさリグニン配糖体、レスベラトロール、及びケルセチンは、SIRT1遺伝子活性化能を有する一方、TERT遺伝子活性化能を有する。これらの作用は、両方とも、老化予防(アンチ・エージング)効果をもたらすが、そのメカニズムは異なる。従って、TERT遺伝子活性化剤とSIRT1活性化剤またはSIRT1遺伝子活性化剤の併用によって、その効果は、相乗的に増強される。例えば、TERT遺伝子活性化剤である松かさリグニン配糖体と、SIRT1活性化剤であるレスベラトロール、ケルセチン、プテイン、ピロロキノザリン、オキサゾロピリジン、またはSRT1720、またはSIRT1遺伝子活性化剤であるレスベラトロール、またはケルセチンとの併用、TERT遺伝子活性化剤であるレスベラトロールと、SIRT1活性化剤であるケルセチン、プテイン、ピロロキノザリン、オキサゾロピリジン、またはSRT1720、またはSIRT1遺伝子活性化剤である松かさリグニン配糖体、またはケルセチンとの併用、TERT遺伝子活性化剤であるケルセチンと、SIRT1活性化剤であるレスベラトロール、プテイン、ピロロキノザリン、オキサゾロピリジン、またはSRT1720、またはSIRT1遺伝子活性化剤である松かさリグニン配糖体、またはレスベラトロールの併用などが考えられる。
【0040】
さらに、TERT遺伝子活性化剤とSIRT1遺伝子活性化剤とSIRT1活性化剤の三者を併用してもよい。例えば、TERT遺伝子活性化剤である松かさリグニン配糖体と、SIRT1遺伝子活性化剤であるレスベラトロールと、SIRT1活性化剤であるケルセチン、プテイン、ピロロキノザリン、オキサゾロピリジン、またはSRT1720との併用、TERT遺伝子活性化剤である松かさリグニン配糖体と、SIRT1遺伝子活性化剤であるケルセチンと、SIRT1活性化剤であるレスベラトロール、プテイン、ピロロキノザリン、オキサゾロピリジン、またはSRT1720との併用、TERT遺伝子活性化剤であるレスベラトロールと、SIRT1遺伝子活性化剤である松かさリグニン配糖体と、SIRT1活性化剤であるケルセチン、プテイン、ピロロキノザリン、オキサゾロピリジン、またはSRT1720との併用、TERT遺伝子活性化剤であるレスベラトロールと、SIRT1遺伝子活性化剤であるケルセチンと、SIRT1活性化剤であるプテイン、ピロロキノザリン、オキサゾロピリジン、またはSRT1720との併用、TERT遺伝子活性化剤であるケルセチンと、SIRT1遺伝子活性化剤である松かさリグニン配糖体、と、SIRT1活性化剤であるレスベラトロール、プテイン、ピロロキノザリン、オキサゾロピリジン、またはSRT1720との併用、またはTERT遺伝子活性化剤であるケルセチンと、SIRT1遺伝子活性化剤であるレスベラトロールと、SIRT1活性化剤であるプテイン、ピロロキノザリン、オキサゾロピリジン、またはSRT1720との併用などが考えられる。
【0041】
ここで、TERT遺伝子活性化剤とSIRT1活性化剤及び/又はSIRT1遺伝子活性化剤は、単剤として併用してもよく、複合剤として併用しても良い。単剤として併用する場合、TERT遺伝子活性化剤とSIRT1活性化剤及び/又はSIRT1遺伝子活性化剤を同時に投与するのが好ましいが、「同時」とは、時間的に全く同じであっても同じでなくてもよく、一つの効果がある間に他を投与すること、または二つの効果がある間に他を投与することを意味する。
【0042】
(7)飲食品、薬品(医薬及び試薬)、及び化粧品の使用方法
松かさリグニン配糖体を含有する飲食品は、ヒトの食事またはヒト以外の哺乳類のための食餌であって、通常の食事や食餌と同様に、飲んだり食べたりすることができる。補助食品としては、通常の食事や食餌以外に、定期的に適量を摂取しても良い。なお、飲食するヒトやヒト以外の哺乳類は、健常であっても、(2)や(3)に記載の疾患に罹患していてもよい。
松かさリグニン配糖体を含有する医薬品の投与対象は、(2)や(3)に記載の疾患に罹患したヒトまたはヒト以外の哺乳類である。投与方法は限定されず、経口であっても非経口であっても、全身投与であっても局部投与であってもよい。
松かさリグニン配糖体を含有する試薬品は、ヒト以外の哺乳類生体内などのin vivoでも、培養細胞や培養組織などのin vitroでも用いることができる。
松かさリグニン配糖体を含有する化粧品は、通常の化粧品と同様に使用できる。使用するヒトは、健常であっても、(2)や(3)に記載の疾患に罹患していてもよい。
【実施例】
【0043】
(1)松かさリグニン配糖体の調製
ゴヨウマツの松かさ100gを1Lの熱湯に入れ、2時間放置し、熱湯を交換して、同様の処理を2回繰り返した。半乾燥状態のまま、1Lの100%エタノールに浸し、2時間室温に静置した。その後、300mLのアセトンで洗浄し、一昼夜室温に静置して乾燥させた。
このように前処理した松かさを0.3N水酸化ナトリウム1Lに浸して一昼夜室温に静置した後、松かさを濾過して除去した。得られた抽出液に2N塩酸を滴下して、pHを5.5に調整した。この溶液に等量の100%エタノールを加えて、4℃で一昼夜静置した。生成した沈殿物を吸引濾過にて回収した後、重量/容量比で等量の水に溶解し、多量の水に対して一昼夜透析した後、得られた溶液を凍結乾燥させ、粉末を得た。
【0044】
この粉末を1mLの水に溶解し、カラムクロマトグラフィー(セファロースCL−4B)で精製した。得られた各画分に対し、SIRT1遺伝子のプロモーターを用いたルシフェラーゼアッセイによって、SIRT1遺伝子のプロモーター活性化作用を評価し、活性フラクションを回収し、水に対して透析後、得られた溶液を再度凍結乾燥させ、粉末を得た。
この粉末を1mLの10%エタノールに溶解し、カラムクロマトグラフィー(トヨパールHW40−F)で精製した。上記と同様にして特定した活性フラクションを回収し、水に対して透析した後、得られた溶液を再度凍結乾燥させ、松かさリグニン配糖体を含んだ粉末を0.18gを得た。
【0045】
(2)SIRT1遺伝子及びTERT遺伝子のプロモーターを用いたルシフェラーゼアッセイ
まず、ホタルルシフェラーゼレポータープラスミドpGL4.10[Luc2](Promega社)を制限酵素Kpn Iと制限酵素Xho Iで消化し、そのサイトに、NT_030059.13中の20448573番から20448961番までのヒトSIRT1遺伝子プロモーターに相当する塩基配列または、NT_006576.16中の1285126番から1285385番までのヒトTERT遺伝子プロモーターに相当する塩基配列を挿入することによって、SIRT1遺伝子プロモーターまたはTERT遺伝子プロモーターの下流にルシフェラーゼ遺伝子を挿入したレポータープラスミドを作成した。
【0046】
次に、培養液に10%FCS含有DMEM(低グルコース)を用いて、HeLa S3細胞を10cmディッシュに2x106個播種し、5%CO、37℃の条件で、24時間培養した。この細胞に、各レポータープラスミドを4μg、「FuGENE HDトランスフェクション試薬」(Roche社)を用いてトランスフェクトした。さらに、24時間培養した後、細胞を回収し、1x10個/mLになるように同じ培養液に懸濁し、100μL/ウェルで96穴ディッシュに播種した。その後24時間培養した後、松かさリグニン配糖体を最終濃度0(コントロール)、1、3、10、30,100μg/mLで含有した培養液に置換し、さらに24時間培養した。そして、培養液を除去した後、溶解用試薬「Passive Lysis Buffer」(Promega社)を30μL/ウェル添加し、3回凍結融解を繰り返した後、細胞溶解液を回収し、遠心分離で残渣を除去し、上清を回収した。得られた上清20μLに対し、「ルシフェラーゼアッセイ試薬(II)」(Promega社)を100μL加え、発光強度を測定した。その結果を図1及び図2に示す(右図)。なお、コントロール実験として、松かさリグニン配糖体(最終濃度:100μg/mL)の代わりに、レスベラトロール(最終濃度:100μM)またはケルセチン(最終濃度:100μM)を添加した培養液で実験を行った(左図)。
【0047】
(3)結果
図1及び図2(左図)に示すように、従来知られているSIRT1活性化剤レスベラトロールまたはケルセチンは、SIRT1遺伝子及びTERT遺伝子の転写活性を増強するが、松かさリグニン配糖体は、さらに強力に、それらの転写活性を増強した。
また、図1及び図2(右図)に示すように、培地中の松かさリグニン配糖体の濃度が上がるにつれて、各プロモーター活性が上昇し、濃度と活性化の関係を表すグラフがシグモイドカーブを描いた。このように、松かさリグニン配糖体は、SIRT1遺伝子及びTERT遺伝子のプロモーターに対し、濃度依存的な活性化作用を有する。
このように、松かさリグニン配糖体は、SIRT1遺伝子及びTERT遺伝子の転写活性化剤として有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグニン配糖体を有効成分として含有するサーチュイン1(SIRT1)遺伝子活性化剤であって、
前記リグニン配糖体は、以下の性質を有することを特徴とするサーチュイン1(SIRT1)遺伝子活性化剤。
(1)リグニン及び多糖類が結合
(2)分子量は8000から10000
(3)リグニンと多糖類の結合比は1:1〜2:1(分子比)
(4)多糖類はウロン酸10〜20%、中性糖80〜90%で構成されている。
【請求項2】
前記リグニン配糖体は、以下の工程で単離されることを特徴とする請求項1に記載のサーチュイン1(SIRT1)遺伝子活性化剤。
(1)ゴヨウマツの松かさを熱水処理する工程
(2)前記熱水処理した松かさをエタノール処理する工程
(3)前記エタノール処理した松かさを乾燥させる工程
(4)前記乾燥させた松かさを水酸化ナトリウムで処理して抽出液を得る工程
(5)前記抽出液を中和する工程
(6)(3)で中和した前記抽出液にエタノールを添加し、沈殿物を回収する工程
(7)沈殿物を精製して、サーチュイン1(SIRT1)遺伝子活性化画分を得る工程。
【請求項3】
前記リグニン配糖体は、部分構造として下記構造式を有することを特徴とする請求項1または2に記載のサーチュイン1(SIRT1)遺伝子活性化剤。
【化1】

【請求項4】
アンチ・エージング剤、糖尿病治療剤及び予防剤、心血管疾患治療剤及び予防剤、神経系疾患治療剤及び予防剤、腎疾患治療剤及び予防剤、並びに抗炎症剤のうちのいずれか1つ以上として用いられる医薬であって、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のリグニン配糖体を有効成分として含有する医薬。
【請求項5】
前記糖尿病が2型糖尿病である、請求項4に記載の医薬。
【請求項6】
前記心血管疾患が心筋梗塞または動脈硬化であることを特徴とする、請求項4に記載の医薬。
【請求項7】
前記神経系疾患が、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、または認知症であることを特徴とする、請求項4に記載の医薬。
【請求項8】
前記腎疾患が、ネフローゼまたは腎機能障害であることを特徴とする、請求項4に記載の医薬。
【請求項9】
前記炎症が、肺炎、肝炎、または膵炎であることを特徴とする、請求項4に記載の医薬。
【請求項10】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のリグニン配糖体を有効成分として含有するNF-kappaB阻害剤。
【請求項11】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のリグニン配糖体を有効成分として含有する化粧品組成物。
【請求項12】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のリグニン配糖体を有効成分として含有するテロメラーゼ逆転写酵素(TERT)遺伝子活性化剤。
【請求項13】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のリグニン配糖体、レスベラトロールまたはケルセチンを有効成分として含有し、他のサーチュイン1(SIRT1)活性化剤と併用されることを特徴とするサーチュイン1(SIRT1)遺伝子活性化剤。
【請求項14】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のリグニン配糖体、レスベラトロールまたはケルセチンを有効成分として含有し、他のサーチュイン1(SIRT1)活性化剤及び/またはサーチュイン1(SIRT1)遺伝子活性化剤と併用されることを特徴とするテロメラーゼ逆転写酵素(TERT)遺伝子活性化剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−112636(P2013−112636A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259573(P2011−259573)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(500571550)アピオン・ジャパン有限会社 (1)
【Fターム(参考)】