説明

サーバベース・コンピューティング・システム及びプログラム

【課題】サーバ装置に再接続する際に、ユーザは認証情報を入力する必要が無いサーバベース・コンピューティング・システム及びプログラムを提供すること。
【解決手段】サーバ装置とクライアント装置からなるサーバベース・コンピューティング・システムであって、クライアント装置は、サーバ装置より送信された画面情報を識別可能な識別情報を記憶し、サーバ装置との接続が切断されたと検知された後に、クライアント装置に記憶される識別情報をサーバ装置に送信する。一方サーバ装置は、クライアント装置に送信する画面情報を識別可能な識別情報を記憶しておき、クライアント装置から識別情報を受信した場合に、受信された識別情報とサーバ装置に記憶している識別情報とを比較することでクライアント装置を認証する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LAN(Local Area Network)等のネットワークを介して相互に接続可能に構成されたサーバベース・コンピューティング・システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
サーバベース・コンピューティング・システム(Server Based Computing System)とは、全てのアプリケーションの実行等の各種処理をサーバ装置上で行い、クライアント装置を入力及び出力の端末として使用するコンピューティング・システムである。このサーバベース・コンピューティング・システムでは、クライアント装置からサーバ装置に対してキーボードやマウス等の入力情報を送信し、この入力情報に基づいてサーバ装置からクライアント装置に対してはクライアント装置で表示される画面情報を生成し、送信する。
【0003】
このサーバベース・コンピューティング・システムでは、クライアント装置からサーバ装置に接続して、ユーザがクライアント装置を操作中に、ネットワーク障害等によりサーバ装置との接続が切断されることがあるが、このような場合でも継続してクライアント装置での操作が可能な技術が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−34687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ネットワーク障害等によりサーバ装置との接続が切断された後にサーバ装置に再接続する際には、サーバ装置によるユーザ認証を受けるため、ユーザID、パスワードといったユーザ認証情報をユーザは再入力する必要があった。
【0005】
本発明の課題は、サーバ装置に再接続する際に、ユーザは認証情報を入力する必要が無いサーバベース・コンピューティング・システム及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明は、サーバ装置とクライアント装置からなるサーバベース・コンピューティング・システムであって、前記クライアント装置は、前記サーバ装置より送信された画面情報に対応する識別情報を記憶する記憶手段と、前記サーバ装置との接続が切断されたか否かを検知する検知手段と、この検知手段により、前記サーバ装置との接続が切断されたと検知された後に、前記記憶手段に記憶される識別情報を前記サーバ装置に送信する識別情報送信手段、を有し、前記サーバ装置は、前記クライアント装置に送信する画面情報に対応する識別情報を記憶する第二の記憶手段と、前記識別情報送信手段により送信された識別情報を受信する受信手段と、この受信手段により受信された識別情報と前記第二の記憶手段に記憶される識別情報とを比較して前記クライアント装置を認証する認証手段、を有することを特徴とする。
【0007】
更に、コンピュータを上述した請求項1記載の発明に示した各手段として機能させるためのプログラムを提供する(請求項10記載の発明)。
【0008】
請求項2記載の本発明は、請求項1記載のサーバベース・コンピューティング・システムにおいて、前記サーバ装置は、前記画面情報に対応する識別情報を生成する識別情報生成手段と、この識別情報を前記クライアント装置に送信する送信手段、を有し、前記クライアント装置は、前記送信手段により送信された識別情報を受信する受信手段、を有し、前記記憶手段は、前記受信手段により受信された識別情報を記憶することを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の本発明は、請求項2記載のサーバベース・コンピューティング・システムにおいて、前記識別情報生成手段は、識別情報としての乱数を生成することを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の本発明は、請求項1記載のサーバベース・コンピューティング・システムにおいて、前記サーバ装置は、前記画面情報を識別する識別情報を生成する識別情報生成手段、を有し、前記クライアント装置は、前記サーバ装置より送信された画面情報を識別する識別情報を生成する第二の識別情報生成手段、を有し、前記記憶手段は、前記第二の識別情報生成手段により生成された識別情報を記憶することを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の本発明は、請求項4記載のサーバベース・コンピューティング・システムにおいて、前記識別情報生成手段及び前記第二の識別情報生成手段は、前記画面情報をハッシュ演算式により演算することにより前記識別情報としてのハッシュ値を生成する
ことを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の本発明は、請求項1乃至5記載のサーバベース・コンピューティング・システムにおいて、前記サーバ装置の第二の記憶手段は、前記クライアント装置に送信する画面情報と前記識別情報を対応付けて記憶することを特徴とし、前記サーバ装置は、前記受信手段により受信された識別情報と前記第二の記憶手段に記憶される識別情報を比較することで、前記クライアント装置が受信済みの画面情報を特定する特定手段と、この特定手段により特定された画面情報の後に生成された画面情報であって、前記クライアント装置が受信していない未受信画面情報を送信する未受信画面情報送信手段、を有することを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の本発明は、請求項1乃至5記載のサーバベース・コンピューティング・システムにおいて、前記サーバ装置の第二の記憶手段は、複数の画面情報と複数の識別情報を対応付けて記憶することを特徴とし、前記クライアント装置の記憶手段は、複数の識別情報が記憶されることを特徴とし、前記クライアント装置の識別情報送信手段は、前記記憶手段に記憶される複数の識別情報を前記サーバ装置に送信することを特徴とし、前記サーバ装置の認証手段は、前記クライアント装置の識別情報送信手段により送信された複数の識別情報と前記第二の記憶手段に記憶される複数の識別情報を比較することで前記クライアント装置を認証することを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の本発明は、請求項1乃至6記載のサーバベース・コンピューティング・システムにおいて、前記サーバ装置は、前回クライアント装置に送信した画面情報との差分である差分画面情報を算出する差分画面情報算出手段、を有し、前記画面情報は、前記差分画面情報算出手段により算出された差分画面情報であることを特徴とする。
【0015】
請求項9記載の本発明は、請求項1乃至7記載のサーバベース・コンピューティング・システムにおいて、前記サーバ装置は、前記クライアント装置で出力される全体画面情報を記憶する全体画面情報記憶手段と、前記認証手段において認証に失敗した場合に、ユーザ認証のための識別情報の送信を前記クライアント装置に要求する要求手段と、この要求手段に基づき前記クライアント装置から送信された前記ユーザ認証のための識別情報によりユーザ認証に成功した場合に、前記全体画面情報記憶手段に記憶される全体画面情報を前記クライアント装置に送信する全体画面情報送信手段、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、サーバ装置に再接続する際に、ユーザは認証情報を入力する必要が無いサーバベース・コンピューティング・システム及びプログラムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下図面により本発明の実施の形態について説明する。
図1に、本発明の実施形態に係るサーバベース・コンピューティング・システムの全体構成図を示す。
【0018】
このサーバベース・コンピューティング・システムは、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等からなるネットワークN上に接続されたサーバ装置10及び複数のクライアント装置20,…から構成される。
【0019】
サーバ装置10は、文書作成処理プログラム、表計算処理プログラムなど、各種アプリケーション・プログラムを記憶し、クライアント装置20,…からの入力(操作)信号に応じて前記各種アプリケーション・プログラムを起動し実行し、この実行結果として生成されるクライアント装置で表示される画面情報を画像情報として、クライアント装置に送信する。
【0020】
なお、ネットワークNは無線通信ネットワーク等を含めてもよく、また、クライアント装置20は、無線通信可能なノート型PC、携帯電話等でもよく、その種類、台数等は、図1の例に限定されない。
【0021】
(第一の実施例)
図2に、このサーバベース・コンピューティング・システムにおけるサーバ装置10の電子回路のブロック図を示す。
サーバ装置10は、各種制御を行うCPU11に、メモリ12、記憶部13、通信部14、表示部15、入力部16、差分画面演算器17が、バスライン18を介して接続される。
【0022】
CPU11は、記憶部13に記憶されているシステムプログラムや各種アプリケーション・プログラムに従って各種動作を制御し、通信部14にて受信されるクライアント装置20,…からの入力(操作)信号に応じて前記各種アプリケーション・プログラムを起動し実行する。
【0023】
メモリ12は、実行される各種プログラムを展開し、これら各種プログラムに係るデータ等を格納するワークエリアを有する。メモリ12には、乱数記憶領域12Aと全画面情報記憶領域12Bが記憶される。乱数記憶領域12Aは、識別情報生成手段である乱数生成プログラム13Aにより生成される識別情報であって、クライアント装置に送信される画面情報を特定可能な識別情報を記憶する領域である。また、全画面情報記憶領域12Bは、クライアント装置20の表示部25で表示される画面全体の画面情報を記憶する領域である。
【0024】
記憶部13は、磁気記録媒体を備えたHDD(Hard Disk Drive)等により構成され、乱数生成プログラム13Aが記憶される。乱数生成プログラム13Aは、識別情報生成手段であり、クライアント装置20に送信される画面情報を特定可能な識別情報としての乱数を生成する。
【0025】
通信部14は、接続される通信ネットワークN上のクライアント装置20,…等の外部機器と情報を通信する。表示部15は、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)等で構成され、CPU11からの表示制御信号に従って画面表示を行う。入力部16は、文字、数字入力キー及び各種機能キーなどを備えたキーボードを含み、ユーザにより各キーが押下された操作信号をCPU11に出力する。
【0026】
差分画面演算器17は、クライアント装置20へ送信する画面情報において、前回送信した画面情報と今回送信する画面情報との画面変化(差分)を演算する装置である。この差分画面演算器17により演算された差分画面情報が通信部14からクライアント装置20に送信される。なお、この差分画面情報をクライアント装置20に送信することにより、毎回全画面情報を送信する場合に比べてネットワークの負荷が軽減される。
【0027】
図3に、サーバ装置10のメモリ12の乱数記憶領域12Aの具体例を示す。乱数記憶領域12Aは例えばリングバッファであり、クライアント装置20を識別可能なクライアント装置識別子、NO、差分画面情報、この差分画面情報を識別可能な識別情報である乱数、送信フラグから構成される。送信フラグは、クライアント装置20に最後に送信した差分画面情報を特定するためのフラグであり、図3の例では、差分画面情報「D」の送信フラグに「1」が記憶されているので、サーバ装置10からクライアント装置20に対して差分画面情報「D」まで送信されたことを示している。
【0028】
具体的に、サーバ装置10からクライアント装置20に差分画面情報を送信するが、ネットワーク障害等により、サーバ装置10が送信した差分画面情報全てが常にクライアント装置20に受信されるとは限らない。そのため、クライアント装置20は、サーバ装置10との接続が切れた後にサーバ装置10に再接続をする際に、最後に受信された差分画面情報の識別情報である乱数をサーバ装置10に送信し、サーバ装置10は、受信した乱数からクライアント装置20が最後に受信した差分画面情報を特定する。そして、送信フラグが「1」の差分画面情報までがクライアント装置20が未受信の差分画面情報であるので、これら未受信の差分画面情報をクライアント装置20に再送する。
【0029】
図4に、サーバ装置10のメモリ12の全画面情報記憶領域12Bの具体例を示す。全画面情報記憶領域12Bは、クライアント装置20を識別するクライアント装置識別子と、当該クライアント装置20の表示部25で表示される画面全体の全画面情報を記憶する。
【0030】
図5に、このサーバベース・コンピューティング・システムにおけるクライアント装置20,…の電子回路のブロック図を示す。
クライアント装置20は、各種制御を行うCPU21に、メモリ22、記憶部23、通信部24、表示部25、FB(フレームバッファ)メモリ26、入力部27が、バスライン28を介して接続される。
【0031】
メモリ22は、乱数記憶領域22Aを有する。乱数記憶領域22Aは、サーバ装置10から送信された差分画面情報を識別可能な識別情報としての乱数を記憶する領域である。
【0032】
記憶部23は、フラッシュメモリ等により構成される。表示部25は、LCD、ELD等から構成され、FBメモリ26に描画される画面情報に基づいて画面表示を行う。入力部27は、各種文字の入力キー及び各種機能キー等を備え、ユーザによるキー入力は、通信部24を介してサーバ装置10に送信される。
【0033】
図6に、クライアント装置20のメモリ22の乱数記憶領域22Aの具体例を示す。乱数記憶領域22Aは、サーバ装置10から差分画面情報が送信され、この差分画面情報が受信されるごとに、この差分画面情報を識別可能な識別情報としての乱数を記憶する。
【0034】
次に、図7〜図10を参照して、本第一の実施例におけるサーバベース・コンピューティング・システムの動作を説明する。図7を参照して、クライアント装置20からサーバ装置10へ接続する接続処理、図8を参照して、クライアント装置20が差分画面情報を受信する処理、図9〜図10を参照して、ネットワーク障害等によりサーバ装置10との接続が切れた後に、クライアント装置20がサーバ装置10に対して再接続を行う再接続処理を説明する。なお、以下に示す各フローチャートで示す処理は、各装置のCPUが記憶部に記憶されているプログラムを読み取り、実行する処理動作を示すものである。
【0035】
図7に、サーバ装置10及びクライアント装置20において実行される接続処理のフローチャートを示す。
図7(B)ステップCA1にて、サーバ装置10によるクライアント装置20を認証するためのユーザ認証情報の入力画面であるlogin画面をクライアント装置20の表示部25に表示する。そして、ユーザによって入力されたユーザID、パスワードといったユーザ認証情報をクライアント装置識別子と共に接続・認証要求としてサーバ装置10に送信する(ステップCA2)。
【0036】
サーバ装置10は、ユーザによって入力されたユーザ認証情報に基づき、認証確認・login処理を行う(図7(A)ステップSA1)。そして、認証に成功した場合に認証成功をクライアント装置20に通知し(ステップSA2)、クライアント装置20に送信する全画面情報を生成する(ステップSA3)。例えばこの全画面情報は、クライアント装置20の表示部25に表示するデスクトップ画面情報である。そしてステップSA4にて、クライアント装置識別子と全画面情報とを対応付けて、全画面情報記憶領域12Bに記憶し、全画面情報をクライアント装置に通信部14から送信する(ステップSA5)。
【0037】
クライアント装置20は、サーバ装置10から送信された全画面情報を通信部24から受信した後に(図7(B)ステップCA3;YES)、受信した全画面情報を表示部25に表示する(ステップCA4)。
【0038】
図8に、サーバ装置10及びクライアント装置20において実行される画面更新処理のフローチャートを示す。
クライアント装置20は、入力部27から入力されたイベントを検出した場合(図8(B)ステップCB1)、検出されたイベントをサーバ装置10に送信する(ステップCB2)。
【0039】
サーバ装置10は、クライアント装置20から送信されたイベントを通信部14から受信した場合(図8(A)ステップSB1;YES)、ステップSB2にて、クライアント装置20の表示部25で表示される画面情報が更新されているか否かを判別する。例えば、ポップアップ画面等の表示を指定するアイコンがクリックされた際のイベントを受信した場合は、サーバ装置はクライアント装置20用のポップアップ画面等の新たな画面を生成して記憶し、この画面情報が前回に生成して全画面情報記憶領域12Bに記憶されていた画面情報と比較して、異なる場合は画面情報が更新されると判別される。そして、更新されていると判別された場合(ステップSB2;YES)、前回に生成して記憶されていた全画面情報記憶領域12B内の全画面情報と前記更新された全画面情報とを差分画面演算器17により比較演算して、差分画面情報を生成する(ステップSB3)。そして全画面情報記憶領域12Bに前記更新された新たな全画面情報を更新記憶する(ステップSB4)。更に、識別情報生成手段としての乱数生成プログラム13Aにより乱数を生成する(ステップSB5)。
【0040】
そして、ステップSB6にて、クライアント装置識別子と対応付けて、生成された差分画面情報と乱数を乱数記憶領域12Aに記憶する。その後、前回送信した送信フラグ「1」の差分画面情報の送信フラグに「0」を設定し、前記生成された差分画面情報と乱数が記憶された乱数記憶領域12Aに対応する送信フラグに「1」を設定する(ステップSB7)。そして、送信フラグに「1」が設定された乱数記憶領域12A内の差分画面情報と乱数をクライアント装置20に通信部14から送信する(ステップSB8)。
【0041】
クライアント装置20は、サーバ装置10から送信された差分情報と乱数を受信した場合は(図8(B)ステップCB3;YES)、受信された乱数を乱数記憶領域22Aに記憶し(ステップSB4)、受信された差分画面情報をFBメモリ26に描画して、表示部25に表示する(ステップCB5)。
【0042】
図9に、クライアント装置20において実行される再接続処理のフローチャートを示し、図10に、サーバ装置10において実行される再接続処理のフローチャートを示す。
図9のステップC20にて、サーバ装置10との接続状態を検知する検知手段がサーバ装置10との接続が切断されたことを検知した場合、乱数記憶領域22Aの最後に記憶され、クライアント装置20に最後に受信された差分画面情報を識別可能な乱数を読みだす(ステップC21)。そして、サーバ装置10に再接続を要求するために、クライアント装置識別子とステップC21で読みだされた乱数をユーザ認証情報として、サーバ装置10に対し通信部24から識別情報送信手段が送信する(ステップC22)。
【0043】
すなわち、ユーザ認証情報として、クライアント装置20からサーバ装置10に対し送信されるクライアント装置識別子とステップC21で読みだされた乱数を利用するので、サーバ装置に再接続する際に、ユーザは、認証情報を再入力する必要が無い。
【0044】
(第一の実施例の変形例)
なお、本第一の実施例では、ユーザ認証情報として、乱数記憶領域22Aの最後に記憶される乱数を送信しているが、最後に記憶される乱数に加えて、その一つ前に記憶される乱数を合わせて送信する等して、これら複数の乱数をユーザ認証情報として使用すれば、よりセキュアなシステムが実現できる。また、複数の乱数の組み合わせは、適宜組み合わせ可能である。
【0045】
サーバ装置10は、クライアント装置20から送信されたクライアント装置識別子と乱数を受信した場合(図10のステップS20;YES)、受信されたクライアント装置識別子と乱数とで、サーバ装置10の乱数記憶領域12Aに記憶される乱数と突合させる(ステップS21)。そして突合した結果、一致する乱数(識別情報)が存在する場合は(ステップS22;YES)、再送開始通知をクライアント装置20に送信する(ステップS23)。そして、乱数記憶領域12Aの送信フラグが「1」になるまで差分画面情報の送信を繰り返す(ステップS25からステップS27)。
【0046】
従来、このサーバベース・コンピューティング・システムにおいて、ネットワーク障害等によりサーバ装置との接続が切断され、サーバ装置に再接続をして、サーバ装置によるユーザ認証に成功した後には、サーバ装置はクライアント装置で表示される全画面情報を送信していたが、本発明では、クライアント装置20が最後に受信した差分画面情報をサーバ装置10が特定することができるので、クライアント装置20が最後に受信した差分画面情報がサーバ装置10で生成された後に生成され、乱数記憶領域12Aに記憶される差分画面情報のみをクライアント装置20に送信するだけでよいので、ネットワーク負荷も軽減できる。
【0047】
さらに、より高いセキュリティを確保するため、再送する差分画面情報を識別する識別情報である乱数を再生成し(ステップS25)、クライアント装置20に送信する差分画面情報に対応付けて、この再生成された乱数を乱数記憶領域12Aに記憶する(ステップS26)。そして未受信画面送信手段として、差分画面情報と再生成された乱数をクライアント装置20に通信部14を介し送信する(ステップS27)。
【0048】
図9のステップC24にて、クライアント装置20は、ステップS27で送信された差分画面情報と乱数を受信した場合(ステップC24;YES)、受信した差分画面情報をFBメモリ26に描画して表示部25に表示し(ステップC25)、受信した乱数を乱数記憶領域22Aに記憶する(ステップC26)。このステップC24からステップC26までの処理は、サーバ装置10から再送終了通知を受信するまで繰り返される(ステップC27)。
【0049】
なお、図10のステップS24にて、送信フラグが「1」と判別された場合(ステップS24;YES)、すなわち、クライアント装置20が未受信の差分画面情報全てを再送信した場合、或いは、クライアント装置20が未受信の差分画像が初めから無かった場合に、再送信終了通知がクライアント装置20に送信され(ステップS28)、その後、サーバ装置画面更新処理SB(図8)が実行される。
【0050】
サーバ装置10が、ステップS21にて、受信したクライアント装置識別子と乱数に基づいて乱数記憶領域12Aに記憶される乱数を検索した結果、同一の乱数が存在しなかった場合は(ステップS22;NO)、サーバ装置10はクライアント装置20に対し、認証情報要求を送信し(ステップS29)、サーバ装置接続処理SA(図7)が実行される。
【0051】
クライアント装置20は、図9のステップC28にて、サーバ装置10より認証情報要求を受信した場合(ステップC28;YES)、クライアント装置接続処理CA(図7)が実行され、ユーザ認証情報としてのユーザID、パスワード等の入力が求められる(図7のステップCA1)。
【0052】
本発明の本第一の実施例では、特に、クライアント装置20に送信する差分画面情報が生成されるごとにこの差分画面情報を識別可能な識別情報である乱数を生成し、クライアント装置20に対しては、この差分画面情報と共にこの乱数を送信し、クライアント装置は、受信した差分画面情報を識別可能な乱数を記憶していることが特徴である。
【0053】
(第二の実施例)
本発明の第二の実施例について、第一の実施例とは異なる点について説明する。
この第二の実施例では、サーバ装置10の記憶部13とクライアント装置20の記憶部23には、差分画面情報をハッシュ演算する同一の演算式が記憶される。
サーバ装置10は、記憶部13に記憶されるハッシュ演算式によりクライアント装置20に送信する差分画面情報のハッシュ演算を行い、この差分画面情報を識別可能な識別情報としてのハッシュ値を生成する。そしてサーバ装置10は差分画面情報のみクライアント装置20に送信し、識別情報であるハッシュ値はクライアント装置20には送信しない。
【0054】
一方、クライアント装置20は、サーバ装置10より差分画面情報を受信し、この差分画面情報を記憶部23に記憶されるハッシュ演算式により差分画面情報のハッシュ演算を行い、この差分画面情報を識別可能なハッシュ値を生成し、このハッシュ値を記憶する。
【0055】
ここで、サーバ装置10とクライアント装置20では、同一の演算式を用いて同一の差分画面情報の演算を行っているため、サーバ装置10で生成されるハッシュ値とクライアント装置20で生成されるハッシュ値は同一になる。もっとも、サーバ装置10とクライアント装置20で使用される演算式は同一でなくとも、差分画面情報を特定可能な識別情報がサーバ装置10とクライアント装置20で生成されていればよい。
【0056】
そして、クライアント装置20の検知手段がサーバ装置10との接続断を検知し、サーバ装置10に再接続を行う際に、差分画面情報を識別可能なハッシュ値をクライアント装置20はサーバ装置10に対して送信し、サーバ装置10は、受信された識別情報であるハッシュ値に基づきユーザ認証を行う。
【0057】
本発明の本第二の実施例では、特に、クライアント装置20に送信する差分画面情報にハッシュ演算を行い、この差分画面情報を識別可能な識別情報であるハッシュ値を生成し、クライアント装置20に対しては、この差分画面情報のみを送信し、クライアント装置は、受信した差分画面情報にハッシュ演算を行い、生成されたハッシュ値を記憶していることが特徴である。
【0058】
本第二の実施例によれば、サーバ装置10からクライアント装置20に差分画面情報を送信する際に、第一の実施例のように識別情報である乱数を送信していないので、ネットワークの負荷を軽減できるという効果がある。
【0059】
第一の実施例の変形例と同様に、本第二の実施例でもクライアント装置20からサーバ装置に識別情報であるハッシュ値を複数組み合わせて送信することで、よりセキュアなシステムが実現できる。無論この複数のハッシュ値の組み合わせは、適宜組み合わせ可能である。
【0060】
以上、前記実施形態にて説明した通り、本発明によれば、サーバ装置に再接続する際に、ユーザは認証情報を入力する必要が無いサーバベース・コンピューティング・システム及びプログラムを提供できる。
【0061】
なお、前記実施形態において記載したサーバベース・コンピューティング・システムの処理、すなわち図7〜図10のフローチャートに示す各処理は、何れもコンピュータが読み取り可能なプログラムとして、記憶部13、記憶部23に記憶されているが、その他に、メモリカード(ROMカード、RAMカード等)、半導体メモリ等の記録媒体に記憶してもよい。
【0062】
また、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。さらに、前記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。
【0063】
例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されたり、幾つかの構成要件が組み合わされても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、これらの構成要件が削除されたり組み合わされた構成が発明として抽出され得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態に係るサーバベース・コンピューティング・システムの全体構成図。
【図2】サーバ装置10の電子回路のブロック図。
【図3】サーバ装置10のメモリ12の乱数記憶領域12Aの具体例を示す図。
【図4】サーバ装置10のメモリ12の全画面情報記憶領域12Bの具体例を示す図。
【図5】クライアント装置20の電子回路のブロック図。
【図6】クライアント装置20のメモリ22の乱数記憶領域22Aの具体例を示す図。
【図7】サーバ装置10及びクライアント装置20において実行される接続処理のフローチャートを示す図。
【図8】サーバ装置10及びクライアント装置20において実行される画面更新処理のフローチャートを示す図。
【図9】クライアント装置20において実行される再接続処理のフローチャートを示す図。
【図10】サーバ装置10において実行される再接続処理のフローチャートを示す図。
【符号の説明】
【0065】
11、21…CPU
12、22…メモリ
12A、22A…乱数記憶領域
12B…全画面情報記憶領域
13、23…記憶部
13A…乱数生成プログラム
14、24…通信部
15、25…表示部
16、27…入力部
17…差分画面演算器
18、28…バスライン
26…フレームバッファメモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバ装置とクライアント装置からなるサーバベース・コンピューティング・システムであって、
前記クライアント装置は、
前記サーバ装置より送信された画面情報に対応する識別情報を記憶する記憶手段と、
前記サーバ装置との接続が切断されたか否かを検知する検知手段と、
この検知手段により、前記サーバ装置との接続が切断されたと検知された後に、前記記憶手段に記憶される識別情報を前記サーバ装置に送信する識別情報送信手段、
を有し、
前記サーバ装置は、
前記クライアント装置に送信する画面情報に対応する識別情報を記憶する第二の記憶手段と、
前記識別情報送信手段により送信された識別情報を受信する受信手段と、
この受信手段により受信された識別情報と前記第二の記憶手段に記憶される識別情報とを比較して前記クライアント装置を認証する認証手段、
を有することを特徴とするサーバベース・コンピューティング・システム。
【請求項2】
前記サーバ装置は、
前記画面情報に対応する識別情報を生成する識別情報生成手段と、
この識別情報を前記クライアント装置に送信する送信手段、
を有し、
前記クライアント装置は、
前記送信手段により送信された識別情報を受信する受信手段、
を有し、
前記記憶手段は、前記受信手段により受信された識別情報を記憶することを特徴とする請求項1記載のサーバベース・コンピューティング・システム。
【請求項3】
前記識別情報生成手段は、識別情報としての乱数を生成することを特徴とする請求項2記載のサーバベース・コンピューティング・システム。
【請求項4】
前記サーバ装置は、
前記画面情報を識別する識別情報を生成する識別情報生成手段、
を有し、
前記クライアント装置は、
前記サーバ装置より送信された画面情報を識別する識別情報を生成する第二の識別情報生成手段、
を有し、
前記記憶手段は、前記第二の識別情報生成手段により生成された識別情報を記憶する
ことを特徴とする請求項1記載のサーバベース・コンピューティング・システム。
【請求項5】
前記識別情報生成手段及び前記第二の識別情報生成手段は、前記画面情報をハッシュ演算式により演算することにより前記識別情報としてのハッシュ値を生成する
ことを特徴とする請求項4記載のサーバベース・コンピューティング・システム。
【請求項6】
前記サーバ装置の第二の記憶手段は、
前記クライアント装置に送信する画面情報と前記識別情報を対応付けて記憶する
ことを特徴とし、
前記サーバ装置は、
前記受信手段により受信された識別情報と前記第二の記憶手段に記憶される識別情報を比較することで、前記クライアント装置が受信済みの画面情報を特定する特定手段と、
この特定手段により特定された画面情報の後に生成された画面情報であって、前記クライアント装置が受信していない未受信画面情報を送信する未受信画面情報送信手段、
を有することを特徴とする請求項1乃至5記載のサーバベース・コンピューティング・システム。
【請求項7】
前記サーバ装置の第二の記憶手段は、
複数の画面情報と複数の識別情報を対応付けて記憶する
ことを特徴とし、
前記クライアント装置の記憶手段は、複数の識別情報が記憶される
ことを特徴とし、
前記クライアント装置の識別情報送信手段は、前記記憶手段に記憶される複数の識別情報を前記サーバ装置に送信する
ことを特徴とし、
前記サーバ装置の認証手段は、
前記クライアント装置の識別情報送信手段により送信された複数の識別情報と前記第二の記憶手段に記憶される複数の識別情報を比較することで前記クライアント装置を認証する
ことを特徴とする請求項1乃至5記載のサーバベース・コンピューティング・システム。
【請求項8】
前記サーバ装置は、
前回クライアント装置に送信した画面情報との差分である差分画面情報を算出する差分画面情報算出手段、
を有し、
前記画面情報は、
前記差分画面情報算出手段により算出された差分画面情報である
ことを特徴とする請求項1乃至6記載のサーバベース・コンピューティング・システム。
【請求項9】
前記サーバ装置は、
前記クライアント装置で出力される全体画面情報を記憶する全体画面情報記憶手段と、
前記認証手段において認証に失敗した場合に、ユーザ認証のための識別情報の送信を前記クライアント装置に要求する要求手段と、
この要求手段に基づき前記クライアント装置から送信された前記ユーザ認証のための識別情報によりユーザ認証に成功した場合に、前記全体画面情報記憶手段に記憶される全体画面情報を前記クライアント装置に送信する全体画面情報送信手段、
を有することを特徴とする請求項1乃至7記載のサーバベース・コンピューティング・システム。
【請求項10】
サーバ装置とクライアント装置からなるサーバベース・コンピューティング・システムであって、
前記クライアント装置のコンピュータを、
前記サーバ装置より送信された画面情報に対応する識別情報を記憶する記憶手段、
前記サーバ装置との接続が切断されたか否かを検知する検知手段、
この検知手段により、前記サーバ装置との接続が切断されたと検知された後に、前記記憶手段に記憶される識別情報を前記サーバ装置に送信する識別情報送信手段、
として、
前記サーバ装置のコンピュータを、
前記クライアント装置に送信する画面情報に対応する識別情報を記憶する第二の記憶手段、
前記識別情報送信手段により送信された識別情報を受信する受信手段、
この受信手段により受信された識別情報と前記第二の記憶手段に記憶される識別情報とを比較して前記クライアント装置を認証する認証手段、
として機能させるプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−146319(P2009−146319A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−325380(P2007−325380)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】