説明

サーバ側渋滞解消走行支援方法

【課題】渋滞予測の演算負荷を軽減すると共に、渋滞の抑制または解消を可能とし、車両が渋滞に巻き込まれることを回避するための走行支援の実行時の動作負荷を低減する。
【解決手段】サーバ側渋滞解消走行支援方法は、地図情報に基づき仮想ノードを設定するステップと、仮想ノード間に存在する車両2を代表する代表車両の加速度の周波数分析からパワースペクトルを算出するステップと、パワースペクトルの単回帰直線の傾きの変化量の極大値を傾き極大値として算出するステップと、代表車両と先行車両との車間距離から車間距離分布を推定し、共分散の最小値を算出するステップと、共分散の最小値と傾き極大値との相関関係から代表車両の前方の車群分布を推定するステップと、車群分布に基づきリアルタイム渋滞予測をおこなうステップと、仮想ノード間に存在する車両2に対してリアルタイム渋滞予測の情報を提供するステップと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーバ側渋滞解消走行支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば複数の車両から加速度を取得し、各車両と先行車両との車間距離を検出して、これらの加速度および車間距離を用いて渋滞予測の演算を行なうシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2011−175885号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に係るシステムによれば、車両が渋滞に巻き込まれる可能性を予測して、車両が渋滞に巻き込まれることを回避するための走行支援の実行時の動作負荷を軽減させることが望まれている。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、渋滞予測の演算負荷を軽減すると共に、渋滞の抑制または解消を可能とし、車両が渋滞に巻き込まれることを回避するための走行支援の実行時の動作負荷を軽減することが可能なサーバ側渋滞解消走行支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の請求項1に係るサーバ側渋滞解消走行支援方法は、予め記憶している地図情報に基づき演算対象区間を設定し、該演算対象区間内で所定条件に基づき複数の仮想ノードおよび隣り合う前記仮想ノード間を接続する仮想リンクを設定するステップ(例えば、実施の形態でのステップS12)と、隣り合う前記仮想ノード間に存在する少なくとも1台以上の車両(例えば、実施の形態での車両2)に基づいて前記仮想ノード間に存在する前記車両を代表する1台の代表車両を設定するステップ(例えば、実施の形態でのステップS14)と、前記代表車両の加速度を取得するステップ(例えば、実施の形態でのステップS16)と、取得した前記加速度の周波数分析から周波数に対応するパワースペクトルを算出するステップ(例えば、実施の形態でのステップS17)と、算出した前記パワースペクトルの単回帰直線を演算し、所定周波数範囲での当該単回帰直線の傾きの変化量の極大値を傾き極大値として算出するステップ(例えば、実施の形態でのステップS18)と、前記代表車両と先行車両との車間距離を取得するステップ(例えば、実施の形態でのステップS19)と、取得した前記車間距離から分布推定法を用いて、車間距離分布を推定するステップ(例えば、実施の形態でのステップS20)と、推定した前記車間距離分布から共分散の最小値を算出するステップ(例えば、実施の形態でのステップS21)と、前記共分散の最小値と前記傾き極大値との相関関係から前記代表車両の前方の車群分布を推定するステップ(例えば、実施の形態でのステップS22)と、推定した前記車群分布に基づきリアルタイム渋滞予測をおこなうステップ(例えば、実施の形態でのステップS24)と、前記仮想ノード間に存在する前記車両に対して前記リアルタイム渋滞予測の情報を提供するステップ(例えば、実施の形態でのステップS26)と、を含む。
【0007】
さらに、本発明の請求項2に係るサーバ側渋滞解消走行支援方法では、前記仮想ノードおよび前記仮想リンクを設定するステップは、前記演算対象区間に存在する前記車両の台数と、前記演算対象区間の距離と、前記演算対象区間の道路種別と、前記演算対象区間の道路形状とのうち、少なくとも何れか1つに基づいて前記仮想ノードを設定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1に係るサーバ側渋滞解消走行支援方法によれば、演算対象区間に複数の車両が存在する場合であっても、仮想ノード間の代表車両の加速度および代表車両と先行車両との車間距離を用いて渋滞予測の演算を行なうことから、例えば仮想ノードを設定せずに複数の車両に対して渋滞予測の演算を行なう場合に比べて、演算負荷を軽減することができ、リアルタイムでの渋滞予測を容易に行なうことができる。
そして、この代表車両に対して得られたリアルタイム渋滞予測の情報を、演算対象区間内の複数の車両に迅速に提供することができ、複数の車両で迅速かつ効率的に連動して渋滞発生の的確な抑制または迅速な解消を可能とすることができる。
【0009】
さらに、本発明の請求項2に係るサーバ側渋滞解消走行支援方法によれば、適正な渋滞予測および演算負荷の軽減が可能な仮想ノードを、適切かつ容易に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係るサーバ側渋滞解消走行支援方法を実現する情報提供システムの構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る加速度スペクトルの例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る確率密度分布の例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る共分散値の分布の例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る共分散最小値と傾き極大値との相間マップの例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る交通密度と交通量の関係の例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る車間距離分布についての共分散最小値の対数と加速度スペクトルについての傾き極大値の対数との相関マップの例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る車両の動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態に係るサーバ装置の動作、つまりサーバ側渋滞解消走行支援方法を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態に係る演算対象区間の各仮想ノード間の代表車両の加速度スペクトルと、渋滞予兆の有無との対応関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のサーバ側渋滞解消走行支援方法の一実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態によるサーバ側渋滞解消走行支援方法を実現する情報提供システム1は、例えば図1に示すように、情報提供対象である複数の車両2と、これらの複数の車両2と通信可能なサーバ装置3とを備えて構成されている。
【0012】
車両2は、例えば、車両通信装置11と、各種センサ12と、スイッチ13と、各種アクチュエータ14と、表示器15と、スピーカー16と、車両処理装置17とを備えて構成されている。
【0013】
車両通信装置11は、サーバ装置3の通信装置31と通信可能であって、サーバ装置3の通信装置31に対する直接的な無線通信接続または所定の通信網を介した通信接続によって、各種の情報を送受信する。
【0014】
例えば、所定の通信網は、無線通信用の基地局と、無線通信用の基地局とサーバ装置3とを有線接続するインターネットなどの公衆通信網とを備え、車両2の乗員の携帯電話機や車載通信端末などによって構成される車両通信装置11から無線通信により発信された情報は、基地局により受信され、この基地局から有線通信によりサーバ装置3へ転送される。
なお、車両2とサーバ装置3との間の通信の形態は、上記形態に限定されず、例えば通信衛星を経由する通信などの他の通信の形態が採用されてもよい。
【0015】
各種センサ12は、例えば、車両2の速度を検出する車速センサと、車両2のヨーレートを検出するヨーレートセンサとなどであって、車両2の走行状態に係る検出結果の信号を車両処理装置17に出力する。
【0016】
スイッチ13は、例えば車両2の走行制御に係る各種の信号を車両処理装置17に出力する。
スイッチ13から出力される各種の信号は、例えば、運転者によるブレーキペダルやアクセルペダルの操作状態(例えば、操作位置など)に係る信号と、運転者の入力操作に応じて自動的に車両2の走行状態を制御する自動走行制御に係る各種信号(例えば、制御開始や制御停止を指示する信号と、目標車速や先行車両に対する目標車間距離の増減を指示する信号となど)となどである。
【0017】
各種アクチュエータ14は、例えば、車両2の駆動力を制御するスロットルアクチュエータと、車両2の制動を制御するブレーキアクチュエータと、車両2の転舵を制御するステアリングアクチュエータとなどであって、車両処理装置17から出力される制御信号によって駆動制御される。
【0018】
表示器15は、例えば、液晶表示画面などの表示画面を備える各種のディスプレイや、フロントウィンドウ上を表示画面とした投影により表示を行なうヘッドアップディスプレイや、各種の灯体などであり、車両処理装置17から出力される制御信号に応じた表示や点灯または消灯をおこなう。
スピーカー16は、車両処理装置17から出力される制御信号に応じて、警報音や音声などを出力する。
なお、表示器15およびスピーカー16は、例えばナビゲーション装置などの各種の車載機器に具備されていてもよい。
【0019】
車両処理装置17は、例えば、現在位置検出部21と、車両通信制御部22と、走行制御部23と、報知制御部24とを備えて構成されている。
【0020】
現在位置検出部21は、例えば人工衛星を利用して車両2の位置を測定するためのGPS(Global Positioning System)信号などの測位信号を受信するアンテナ21aにより受信された測位信号によって車両2の現在位置を検出する。
なお、現在位置検出部21は、さらに、各種センサ12から出力される車両2の速度およびヨーレートなどに基づく自律航法の演算処理を併用して、車両2の現在位置を検出してもよい。
【0021】
車両通信制御部22は、車両通信装置11による各種の情報の送受信を制御する。
例えば、車両通信制御部22は、各種センサ12の車速センサにより検出された車両2の速度の情報および現在位置検出部21により検出された車両2の現在位置の情報を車両通信装置11からサーバ装置3の通信装置31に送信する。
また、例えば、車両通信制御部22は、サーバ装置3の通信装置31から送信されて車両通信装置11により受信されたリアルタイム渋滞予測の情報および走行目安情報を取得して、走行制御部23および報知制御部24に出力する。
【0022】
走行制御部23は、サーバ装置3において作成され、車両通信制御部22から出力されたリアルタイム渋滞予測の情報および走行目安情報と、スイッチ13から出力される各種の信号と、各種センサ12から出力される車両2の走行状態に係る検出結果の信号とに基づき、例えばスロットルアクチュエータとブレーキアクチュエータとステアリングアクチュエータとを駆動制御することによって、車両2の走行を制御する。
【0023】
例えば、走行制御部23は、スイッチ13から出力される信号に応じて、自動走行制御の実行を開始または停止したり、自動走行制御での目標車速や目標車間距離の設定や変更を行なう。
【0024】
また、例えば、走行制御部23は、サーバ装置3において作成されたリアルタイム渋滞予測の情報において車両2の進行方向前方に渋滞が発生する可能性が高いこと(あるいは、既に渋滞が発生していることなど)が示されている場合には、車両2が渋滞を回避するようにして、さらには車両2の後続車両が渋滞を起こし難いようにして、あるいは、車両2の周辺の渋滞を解消するようにして、必要とされる目標車速や目標車間距離を設定したり、車両2の走行状態を変更する。
そして、これらの目標車速や目標車間距離を維持するような自動走行制御(例えば、実際の車速を目標車速に一致させる定速走行制御や、他車両(例えば、先行車両など)に対する実際の車間距離を目標車間距離に一致させる車間距離制御(例えば、追従走行制御など)を行なう。
【0025】
また、例えば、走行制御部23は、サーバ装置3において走行目安情報が作成され、車両通信制御部22から出力された場合には、この走行目安情報に応じて、車両2が渋滞を回避するようにして、さらには車両2の後続車両が渋滞を起こし難いようにして、あるいは、車両2の周辺の渋滞を解消するようにして、必要とされる目標車速や目標車間距離を設定したり、車両2の走行状態を変更する。
【0026】
報知制御部24は、サーバ装置3において作成されたリアルタイム渋滞予測の情報および走行目安情報に基づき、表示器15とスピーカー16とを制御することによって、各種の報知動作を制御する。
【0027】
例えば、報知制御部24は、サーバ装置3において作成されたリアルタイム渋滞予測の情報において車両2の進行方向前方に渋滞が発生する可能性が高いこと(あるいは、既に渋滞が発生していることなど)が示されている場合には、例えば、表示器15の表示画面での表示や灯体の点灯または消灯などを制御して、また、スピーカー16からの警報音や音声などの出力を制御して、これらの渋滞に係る情報を報知する。
【0028】
また、例えば、報知制御部24は、サーバ装置3において作成されたリアルタイム渋滞予測の情報または走行目安情報に応じて、車両2が渋滞を回避するようにして、さらには車両2の後続車両が渋滞を起こし難いようにして、あるいは、車両2の周辺の渋滞を解消するようにして、必要とされる運転操作の指示(例えば、先行車両に対する車間距離の増大や加速動作の抑制など)を報知する。
【0029】
サーバ装置3は、例えば、通信装置31と、通信制御部32と、情報記憶部33と、地図データ記憶部34と、仮想ノード設定部35と、渋滞予兆演算部36とを備えて構成されている。
【0030】
通信装置31は、車両2の車両通信装置11と通信可能であって、車両2の車両通信装置11に対する直接的な無線通信接続または所定の通信網を介した通信接続によって、各種の情報を送受信する。
【0031】
例えば、所定の通信網は、無線通信用の基地局と、無線通信用の基地局とサーバ装置3とを有線接続するインターネットなどの公衆通信網とを備え、通信装置31から有線通信により発信されるリアルタイム渋滞予測の情報および走行目安情報は、基地局により受信され、この基地局から無線通信により車両2へ転送される。
【0032】
通信制御部32は、通信装置31による各種の情報の送受信を制御する。
例えば、通信制御部32は、後述する渋滞予測部50により作成されたリアルタイム渋滞予測の情報および走行目安情報を通信装置31から車両2の車両通信装置11に送信する。
また、例えば、通信制御部32は、車両2の車両通信装置11から送信されて通信装置31により受信された車両2の速度の情報および現在位置の情報を取得して、情報記憶部33に出力する。
【0033】
情報記憶部33は、通信装置31により受信された複数の車両2の速度の情報および現在位置の情報と、渋滞予測部50により作成された複数の仮想ノード間の代表車両に対するリアルタイム渋滞予測の情報および走行目安情報となどを記憶する。
【0034】
地図データ記憶部34は、地図データを記憶する。
地図データは、例えば、車両2の現在位置に基づくマップマッチングの処理に必要とされる道路上の位置座標を示す道路座標データと、経路探索や経路誘導などの処理に必要とされる道路データ(例えば、交差点および分岐点などの道路上の所定位置の緯度および経度からなる座標点であるノードおよび各ノード間を結ぶ線であるリンクと、道路形状および道路種別となど)とを備えている。
【0035】
仮想ノード設定部35は、地図データ記憶部34に記憶されている地図データに基づき所定の演算対象区間を設定し、該演算対象区間内で所定条件に基づき仮想ノードおよび隣り合う仮想ノード間を接続する仮想リンクを設定する。
なお、所定の演算対象区間は、例えば、統計的に渋滞が発生する可能性がある道路区間などである。
【0036】
また、所定条件は、例えば、演算対象区間に存在する車両2の台数と、演算対象区間の距離と、演算対象区間の道路種別と、演算対象区間の道路形状とのうち、少なくとも何れか1つに対する条件である。
例えば演算対象区間に存在する車両2の台数に対する所定条件は、隣り合う仮想ノード間に所定台数以上の車両2が存在するように規制することなどである。
例えば演算対象区間の距離に対する所定条件は、隣り合う仮想ノード間の距離を数百メートル程度以下に規制することなどである。
例えば演算対象区間の道路種別に対する所定条件は、高速道路における隣り合う仮想ノード間の距離を一般道路における隣り合う仮想ノード間の距離よりも長くすることなどである。
例えば演算対象区間の道路形状に対する所定条件は、統計的に渋滞が発生し易い道路形状の前後に仮想ノードを設定することなどである。
【0037】
渋滞予兆演算部36は、例えば、加速度算出部41と、周波数分析部42と、単回帰直線算出部43と、傾き極大値算出部44と、先行車両検知部45と、車間距離算出部46と、車間距離分布推定部47と、共分散最小値算出部48と、相間演算部49と、渋滞予測部50とを備えて構成されている。
【0038】
加速度算出部41は、例えば、仮想ノード設定部35により設定された各隣り合う仮想ノード間に対して、仮想ノード間に存在する少なくとも1台以上の車両2に基づいて仮想ノード間に存在する車両2を代表する1台の代表車両を設定することによって、複数の車両2を量子化する。
例えば、加速度算出部41は、仮想ノード間に最初に進入した車両2を代表車両としたり、仮想ノード間に存在する複数の車両2のそれぞれが有する状態量(例えば、速度や位置など)を平均化して得られる平均状態量を有する仮想的な車両を代表車両とする。
【0039】
そして、加速度算出部41は、例えば、情報記憶部33に記憶されている各車両2の速度の情報または現在位置の情報に基づき、速度の経時的な変化または現在位置の経時的な変化から各車両2の加速度を検出し、各車両2の加速度に基づき、代表車両の加速度を算出する。
【0040】
周波数分析部42は、加速度算出部41により算出された代表車両の加速度に対して周波数分析を行ない、周波数に対応するパワースペクトルを算出する。
例えば、2つの異なる適宜の走行状態において加速度算出部41により検出された代表車両の加速度に対して周波数分析が行なわれることで、図2(A),(B)に示すようなパワースペクトルとして周波数に対応した加速度スペクトル51,53が算出される。
【0041】
単回帰直線算出部43は、周波数分析部42により算出されたパワースペクトルにおいて単回帰直線を算出する。
例えば、図2(A),(B)に示す加速度スペクトル51,53に対して、単回帰直線52,54が算出される。
【0042】
傾き極大値算出部44は、単回帰直線算出部43により算出された単回帰直線に対して、所定周波数範囲での単回帰直線の傾きの変化量の極大値を傾き極大値として算出する。
【0043】
例えば、傾き極大値算出部44は、図2(A),(B)に示す単回帰直線52,54に対して、所定周波数範囲Y(例えば、数秒から数分の時間範囲に対応する周波数範囲であって、0〜0.5Hzなど)でのスペクトル値の変化Xに基づき、傾きα1,α2(=Y/X)を算出する。
【0044】
先行車両検知部45は、例えば、情報記憶部33に記憶された複数の車両2の現在位置の情報に基づき、代表車両の進行方向前方に存在する先行車両を検知する。
車間距離算出部46は、先行車両検知部45により検知された代表車両の各先行車両に対して車間距離を算出する。
【0045】
車間距離分布推定部47は、車間距離算出部46により算出された代表車両の各先行車両に対する車間距離と、先行車両の検知台数(例えば、通信制御部32により現在位置の情報が取得された複数の車両2のうち代表車両の先行車両となる車両2の台数など)とに基づき、車間距離分布を推定する。
【0046】
例えば、車間距離分布推定部47は、車間距離と車両台数の情報から代表車両の前方での車群(すなわち、車間距離が比較的緻密な複数の車両2の集合)が検知される場合、変分ベイズなどの分布推定法を用いて各車群に対してガウス分布(確率密度分布)を適用する。
例えば2つの車群が検知される場合は、2つの車群を2つのガウス分布を線形結合した分布として捉えることができ、例えば図3に示すように、2つのガウス分布を表わす確率関数P1(X)、P2(X)の和(重ね合わせ)として全体の分布を表す確率関数P(X)を得る。
【0047】
ここで、ガウス分布(確率関数)をN(x|μ,Σ)で表すと、図3に例示されるような複数のガウス分布の重ね合わせは、下記数式(1)に示すように記述される。
【0048】
【数1】

【0049】
なお、上記数式(1)において、例えば任意の自然数kに対して、期待値(平均値)μは密度が最も高い位置を表す。共分散値(行列)Σは、分布のゆがみ、すなわち期待値μからどの方向に離れると密度がどのように減るかを表す。ガウス分布の混合係数(混合比)π(0≦π≦1)は、各ガウス分布がどれだけ寄与しているかの割合を表し、いわゆる確率とされている。
【0050】
共分散最小値算出部48は、例えば上記した確率関数P(X)から得られる尤度関数が最大となるパラメータ(共分散)を求めるために変分ベイズなどを用いて算出処理をおこなう。
例えば、共分散最小値算出部48は、図3で例示されるような複数のガウス分布の重ね合わせとして得られる確率関数P(X)に対しては、各ガウス分布に対して共分散値Σを算出する。そして、各ガウス分布に対して得られた複数の共分散値Σの最小値を算出する。
【0051】
例えば図4(A)に示すような共分散値Σの分布のグラフ56は、共分散値Σに係る変数δ(例えば、共分散値Σそのものなど)に対して、変数δ=0においてシャープなグラフとなっており、車群の変動が無い、すなわち車間距離がほぼ一定の走行状態にあることを示唆している。
一方、図4(B)に示すような共分散値Σの分布は、共分散値Σに係る変数δの負の領域の値δ1でピークを持つグラフ57と正の領域の値δ2でピークを持つグラフ58の2つのグラフにより構成されている。各グラフ57、58は共分散値Σに係る変数δに対して所定の変動幅を有しており、車群の変動が有る、言い換えれば代表車両に対して車間距離が異なる車両2の集合が複数存在することを示唆している。
そして、例えば図4(A)において、共分散値Σの最小値(共分散最小値)はほぼゼロとなり、例えば図4(B)において、共分散値Σの最小値は2つの値δ1,δ2のうち小さいほうの値δ1となる。
【0052】
相関演算部49は、傾き極大値算出部44により算出された傾き極大値と、共分散最小値算出部48によって算出された共分散最小値との相関マップを作成する。
例えば図5に示す傾き極大値と共分散最小値との相関マップのイメージ(概念)図では、横(X)軸を共分散最小値Xとし、縦(Y)軸を傾き極大値Yとして、変数(X、Y)の相関をマッピングしている。
【0053】
例えば図5に示す相関マップでは、2つの領域59,60が示されており、2つの領域59,60が重なっている境界領域61が存在している。領域59は比較的共分散最小値が小さく、車群の変動が小さい状態、言い換えれば車間距離が比較的一定しているような状態に相当する。逆に領域60は比較的共分散最小値が大きく、車群の変動が大きい状態、言い換えれば車間距離が異なる車の集合が複数存在する状態に相当する。
境界領域61は、車群の変動が小さい状態から大きい状態へ遷移する領域であり、この境界領域61に相当する車群の状態を定量的に見出すことによって、渋滞予測をおこなうことができる。
【0054】
例えば図6に示すような交通密度と交通量の関係を示す図において、グラフの横(X)軸は、適宜の代表車両から所定距離内に存在する他の車両2の台数を意味する交通密度であり、この交通密度の逆数が車間距離に相当する。縦(Y)軸は所定位置を通過する車両数を意味する交通量である。
例えば図6に示すような交通密度と交通量の関係を示す図は、いわば車両2の流れを意味する交通流を表わしていると捉える事ができる。
【0055】
図6で例示される交通流は、大きく4つの状態(領域)に区分けすることができる。
第1の状態は、渋滞が発生する可能性が低い自由流の状態であって、ここでは一定以上の加速度および車間距離が確保可能である。
第2の状態は、車両2の制動状態と加速状態が混合する混合流の状態である。この混合流の状態は、渋滞流に移行する前の状態であって、運転者による運転の自由度が低下して、交通密度の増大(車間距離の縮小)によって渋滞流へと移行する確率が高い状態である。
第3の状態は、渋滞を示す渋滞流の状態である。
第4の状態は、自由流の状態から混合流の状態へ移行する間に存在する遷移状態である臨界領域である。この臨界領域は、自由流に比べて交通量および交通密度が高い状態であって、交通量の低下と交通密度の増大(車間距離の縮小)によって混合流へと移行する状態である。なお、臨界領域は、準安定流、メタ安定流と呼ばれることもある。
【0056】
そして、例えば図5に示される領域59は、例えば図6に示される自由流および臨界領域を含むことになり、例えば図5に示される領域60は、例えば図6に示される混合流および渋滞流の状態を含むことになる。
したがって、例えば図5に示される境界領域は、例えば図6に示される臨界領域と混合流の状態との双方を含む境界状態であり、例えば図6に示される臨界領域の境界とされる。
この臨界領域の境界を含む臨界領域を定量的に把握することによって、混合流の状態への移行を抑制して渋滞の発生を防ぐことが可能である。
【0057】
以下に、例えば車間距離分布についての共分散最小値の対数と加速度スペクトルについての傾き極大値の対数との相関マップを示す図7(A),(B)を参照しながら臨界領域の定量化について説明する。
図7(A)は図6に示される交通流のマップを簡略化して描いた図であり、図7(B)は共分散最小値の対数と傾き極大値の対数との相関マップを示す。
図7(B)に示される共分散最小値の対数と傾き極大値の対数は、傾き極大値算出部44により算出された傾き極大値と共分散最小値算出部48によって算出された共分散最小値との対数値として算出され、臨界領域における相転移状態のパラメータ化を描写したものである。
【0058】
例えば図7(B)において、領域62は図7(A)に示される臨界領域を含み、領域63は図7(A)に示される混合流の状態を含む。臨界線64は、これを越えて混合流の状態へ移行すると渋滞に至ってしまう可能性が高い臨界点を意味する。各領域62,63の境界領域65は臨界線64直前の臨界領域の境界に相当する。
なお、図7(B)に例示される相関マップは渋滞予兆演算部36内のメモリ(図示略)に格納される。
【0059】
渋滞予測部50は、相関演算部49によって作成された相関マップにおいて、臨界領域の境界の状態が存在するか否かを判定し、この判定結果に応じてリアルタイム渋滞予測の情報を作成する。さらに、相関マップにおいて、臨界領域の境界の状態が存在する場合には、渋滞への移行を阻止すべく、地図データ記憶部34に記憶されている地図データを参照して、走行目安情報を作成する。また、リアルタイム渋滞予測の情報および走行目安情報の作成時には、制御対象区間(例えば、演算対象区間の開始位置から、渋滞予兆度が所定の閾値よりも高い代表車両に対応付けられた仮想ノード間に到るまでの区間など)を設定する。そして、リアルタイム渋滞予測の情報および走行目安情報を情報記憶部33に記憶させる。
【0060】
リアルタイム渋滞予測の情報は、渋滞が発生する可能性あるいは既に渋滞が発生しているか否かに係る情報であって、例えば、相関マップにおいて臨界領域の境界の状態が存在する場合に対応して、渋滞が発生する可能性(渋滞予兆度)が所定の閾値よりも高いことを示し、相関マップにおいて臨界領域の境界の状態が存在しない場合に対応して、渋滞が発生する可能性(渋滞予兆度)が所定の閾値よりも低いことを示す。
【0061】
渋滞予兆度は、例えば傾き極大値算出部44により算出された傾き極大値に応じたパラメータであって、代表車両の進行方向前方において渋滞となる可能性が高い場合に大きくなり、可能性が低い場合に小さくなる。
また、渋滞予兆度の大小を判定する所定の閾値については、任意の値を定めることができるが、一般的に(1/f)ゆらぎ特性として知られている「−45度」を所定の閾値とすることができる。
【0062】
例えば、単回帰直線算出部43により算出された単回帰直線に対して、傾きαが小さい場合は、先行車両から受ける衝撃波(振動、ゆらぎ)が小さい場合に相当し、先行車両に対する反応遅れが小さく、車間距離が長くなって車群が形成され難い、すなわち渋滞に至る可能性が小さい場合に相当する。この場合、渋滞予兆度は小さな値をとる。
逆に、傾きαが大きい場合は、先行車両から受ける衝撃波(振動、ゆらぎ)が大きい場合に相当し、先行車両に対する反応遅れが大きく、車群が密になりやすく、すなわち渋滞に至る可能性が大きい場合に相当する。この場合、渋滞予兆度は大きな値をとる。
なお、ここで言う衝撃波(振動、ゆらぎ)とは、各車両2が加速および減速の動作を繰り返すことにより、この動作(前後の動き)を後方の車両2に一種の振動として伝播させることを意味する。
【0063】
したがって、渋滞予測部50は、単回帰直線算出部43により算出された単回帰直線の傾きαの大きさ、より具体的には、傾き極大値算出部44によって算出された傾き極大値に応じて渋滞予兆度を算出する。
例えば、渋滞予測部50は、傾き極大値(x)と渋滞予兆度(y)との関係を示す関数(例えば、y=ax+bなど)を予め求めておき、傾き極大値算出部44によって算出された傾き極大値(x)に対する渋滞予兆度(y)を算出する。
なお、渋滞予測部50は、傾き極大値と対応する渋滞予兆度の値との関係を予め作成してテーブルとしてメモリに格納しておき、算出された傾き極大値に対する渋滞予兆度をそのテーブルを参照して求めることもできる。
【0064】
そして、例えば渋滞が発生する可能性(渋滞予兆度)が所定の閾値よりも高いことを示すリアルタイム渋滞予測の情報が、通信制御部32によってサーバ装置3から車両2に送信されると、車両2の表示器15やスピーカー16において渋滞が発生する可能性が高いことを示す各種の報知動作が行なわれる。
例えば表示器15では、渋滞発生の有無を示す2色信号(青色と赤色など)の表示が切り替えられたり、渋滞発生を示す単色の灯体の点灯や点滅が行なわれたり、渋滞発生を示す警報メッセージの出力が行なわれる。
例えばスピーカー16では、渋滞発生を示す警報音や警報音声の出力が行なわれる。
【0065】
また、走行目安情報は、図7に例示される混合流への移行を未然に阻止することを可能とするために車両2の走行制御に用いられたり、車両2の表示器15やスピーカー16から運転者に報知される情報である。
例えば、走行目安情報は、車両2において渋滞回避さらには渋滞解消に必要とされる自動走行制御での目標車速や目標車間距離の情報や、先行車両に対する車間距離の増大や加速動作の抑制などの所定の運転操作の情報や、車両2に対する経路探索や経路誘導の情報などである。
そして、走行目安情報が、通信制御部32によってサーバ装置3から車両2に送信されると、走行目安情報の内容が表示器15やスピーカー16から運転者に報知されたり、走行目安情報の内容を実現するようにして自動走行制御に用いられる。
【0066】
情報記憶部33に記憶された各代表車両に対するリアルタイム渋滞予測の情報および走行目安情報は、通信制御部32によって、渋滞予測部50により設定された制御対象区間内において各代表車両に対応付けられた仮想ノード間に存在する車両2に送信される。
【0067】
なお、通信制御部32は、リアルタイム渋滞予測の情報および走行目安情報を制御対象区間内の各仮想ノード間に存在する車両2に送信する際に、全ての車両2に各情報を提供してもよいし、相互に渋滞形成に影響を及ぼすと考えられる一定範囲内の車両2の群(車群)に対して、一定の車両2にのみ各情報を提供してもよい。
例えば、通信制御部32は、1つの渋滞を形成しているとみなせる所定距離範囲(例えば、渋滞解消行動を採用して効果が生じる数百メートル程度など)内の車群のみを対象として、さらに、上記所定距離範囲内の所定割合(例えば、10%〜30%程度)の台数の車両2のみを対象として、あるいは、渋滞予兆度が所定の閾値よりも大きい車両2のうち渋滞予兆度が高いものを上位から優先的に対象として、各情報を提供する。
【0068】
本実施の形態による情報提供システム1は上記構成を備えており、次に、この情報提供システム1の動作について説明する。
【0069】
先ず、以下に、車両2の動作について説明する。
例えば図8に示すステップS01においては、各種センサ12の車速センサにより車両2の速度を検出し、現在位置検出部21により車両2の現在位置を検出する。
次に、ステップS02においては、車両2の速度および現在位置の情報をサーバ装置3に送信する。
【0070】
次に、ステップS03においては、リアルタイム渋滞予測の情報および走行目安情報をサーバ装置3から受信したか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS03の判定処理を繰り返し実行する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS04に進む。
そして、ステップS04においては、リアルタイム渋滞予測の情報および走行目安情報に応じて報知制御および走行制御を実行し、エンドに進む。
【0071】
以下に、サーバ装置3の動作、つまりサーバ側渋滞解消走行支援方法について説明する。
先ず、例えば図9に示すステップS11においては、地図データ記憶部34に記憶されている地図データに基づき所定の演算対象区間を設定する。
次に、ステップS12においては、演算対象区間内で所定条件に基づき仮想ノードおよび隣り合う仮想ノード間を接続する仮想リンクを設定する。
【0072】
次に、ステップS13においては、複数の車両2から速度および現在位置の情報を受信する。
次に、ステップS14においては、仮想ノード間に存在する少なくとも1台以上の車両2に基づいて仮想ノード間に存在する車両2を代表する1台の代表車両を設定する。
次に、ステップS15においては、仮想ノード間に代表車両が進入したか否かを判定する。
なお、この判定処理は、例えば仮想ノード間に最初に進入した車両2を代表車両とする場合には、仮想ノード間に最初に進入した車両2が存在するか否かを判定することに相当し、例えば仮想ノード間に存在する複数の車両2のそれぞれが有する状態量(例えば、速度や位置など)を平均化して得られる平均状態量を有する仮想的な車両を代表車両とする場合には、仮想ノード間に新たに進入した車両2が存在するか否かを判定することに相当する。
この判定結果が「NO」の場合には、上述したステップS13に戻る。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS16に進む。
【0073】
次に、ステップS16においては、情報記憶部33に記憶されている各車両2の速度の情報または現在位置の情報に基づき、速度の経時的な変化または現在位置の経時的な変化から、代表車両2の加速度を算出する。
次に、ステップS17においては、代表車両の加速度に対して周波数分析を行ない、周波数に対応するパワースペクトルを算出する。
【0074】
次に、ステップS18においては、パワースペクトルにおいて単回帰直線を算出し、所定周波数範囲での単回帰直線の傾きの変化量の極大値を傾き極大値として算出する。
次に、ステップS19においては、代表車両の進行方向前方に存在する先行車両を検知し、代表車両の各先行車両に対する車間距離を算出する。
次に、ステップS20においては、代表車両の各先行車両に対する車間距離と、複数の先行車両の検出台数とに基づき、車間距離分布を推定する。
【0075】
次に、ステップS21においては、車間距離分布から共分散の最小値を算出する。
次に、ステップS22においては、共分散の最小値と傾き極大値との相関関係から代表車両の進行方向前方の車群分布を推定する。
次に、ステップS23においては、共分散最小値と加速度スペクトルの傾き極大値との相関マップにおいて臨界領域の境界の状態が存在するか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、上述したステップS13に戻る。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS24に進む。
【0076】
次に、ステップS24においては、渋滞が発生する可能性(渋滞予兆度)が所定の閾値よりも高いことを示すリアルタイム渋滞予測の情報を作成し、制御対象区間(例えば、演算対象区間の開始位置から、渋滞予兆度が所定の閾値よりも高い代表車両に対応付けられた仮想ノード間に到るまでの区間など)を設定する。
次に、ステップS25においては、制御対象区間内の各仮想ノード間に存在する車両2において渋滞回避さらには渋滞解消を促すための走行目安情報を作成する。
次に、ステップS26においては、リアルタイム渋滞予測の情報および走行目安情報を制御対象区間内の各仮想ノード間に存在する車両2に送信し、エンドに進む。
【0077】
例えば図10(A),(B)に示すように、演算対象区間TA内で所定条件に基づいて各車両2の進行方向の前方に向かって順次設定された任意の自然数Nによる第N仮想ノード間,第N+1仮想ノード間,第N+2仮想ノード間に対しては、各仮想ノード間に車両2が進入することに伴って、各仮想ノード間において順次、第1の代表車両A,第2の代表車両B,第3の代表車両C,…が設定される。
【0078】
先ず、例えば図10(A)に示すように、演算対象区間TA内において各車両2の進行方向において最も手前側(進行方向の後方側)の第N仮想ノード間に最初の車両2が進入すると、この第N仮想ノード間において最初の第1の代表車両Aが設定され、この第1の代表車両Aに対して加速度スペクトルSAが算出される。そして、加速度スペクトルSAに基づいて渋滞予兆度が算出され、渋滞予兆度が所定の閾値よりも高いか否かに応じて渋滞予兆の有無が判定され、この判定結果が記憶される。
【0079】
次に、第N仮想ノード間に隣接する第N+1仮想ノード間に最初の車両2が進入すると、この第N+1仮想ノード間において最初の第1の代表車両Aが設定されると共に、第N仮想ノード間においては、第N仮想ノード間に存在する車両2に基づいて第2の代表車両Bが設定される。
そして、各代表車両A,Bに対して各加速度スペクトルSA,SBが算出され、各加速度スペクトルSA,SBに基づいて渋滞予兆の有無が判定され、この判定結果が記憶される。
【0080】
次に、例えば図10(B)に示すように、第N+1仮想ノード間に隣接する第N+2仮想ノード間に最初の車両2が進入すると、この第N+2仮想ノード間において最初の第1の代表車両Aが設定されると共に、第N+1仮想ノード間および第N仮想ノード間においては、第2および第3の代表車両B,Cが設定される。
そして、各代表車両A,B,Cに対して各加速度スペクトルSA,SB,SCが算出され、各加速度スペクトルSA,SB,SCに基づいて渋滞予兆の有無が判定され、この判定結果が記憶される。
【0081】
以後、同様の処理が繰り返されることに伴い、例えば図10(C)に示すように、演算対象区間TA内の適宜の仮想ノード間(例えば、第N+2仮想ノード間)で渋滞予兆が有ると判定されると、この仮想ノード間を含んで進行方向の後方側に存在する仮想ノード間(例えば、第N+2仮想ノード間および第N+1仮想ノード間および第N仮想ノード間)が制御対象区間として設定される。そして、制御対象区間内の各仮想ノード間に存在する車両2にリアルタイム渋滞予測の情報および走行目安情報が送信される。
【0082】
上述したように、本実施の形態による情報提供システム1によれば、演算対象区間に複数の車両2が存在する場合であっても、仮想ノード間の代表車両の加速度および代表車両と先行車両との車間距離を用いて渋滞予測の演算を行なうことから、例えば仮想ノードを設定しない場合に比べて、演算負荷を軽減することができ、リアルタイムでの渋滞予測を容易に行なうことができる。
そして、この代表車両に対して得られたリアルタイム渋滞予測の情報および作成した走行目安情報を、演算対象区間内の複数の車両2に迅速かつ同期的に提供することができ、複数の車両2で迅速かつ効率的に連動して渋滞発生の的確な抑制または迅速な解消を可能とすることができる。
【0083】
さらに、演算対象区間内で仮想ノードを設定する際の所定条件を、演算対象区間に存在する車両2の台数と、演算対象区間の距離と、演算対象区間の道路種別と、演算対象区間の道路形状とのうち、少なくとも何れか1つに対する条件とすることにより、適正な渋滞予測および演算負荷の軽減が可能な仮想ノードを、適切かつ容易に設定することができる。
【0084】
さらに、複数の車両2の加速度および各車両2と先行車両との車間距離という容易に取得可能な情報を用いることにより、特別な情報を必要とせずに、容易かつリアルタイムに渋滞予測の演算を行なうことができる。
【0085】
さらに、渋滞が発生する可能性あるいは既に渋滞が発生しているか否かに係るリアルタイム渋滞予測の情報に加えて、例えば渋滞の発生の抑制または解消、あるいは渋滞に巻き込まれることの回避を支援するための走行目安情報を車両2に提供することにより、適切な走行を支援することができる、
【0086】
なお、上述した実施の形態において、サーバ装置3は、例えば車両2に搭載されたレーダ装置などによって先行車両に対する車間距離が検知されている場合には、車両2から送信される先行車両に対する車間距離の情報を取得してもよい。
【0087】
なお、上述した実施の形態において、各車両2は、前述のサーバ装置3と同等の機能を備えてもよい。
この場合、各車両2は、その機能から得られた渋滞予測の情報をサーバ装置3へ送信し、サーバ装置3は、各車両2から送信された渋滞予測の情報をもとに走行目安情報を作成し、各車両2へ配信するようにして、情報提供システム1を構成してもよい。
この場合には、例えば、所定距離範囲内の仮想ノード間に存在する車両2などにより構成される車群のうちの適宜の車両2が高い渋滞予兆度を示したときに、この車群内に低い渋滞予兆度しか示していない他の車両2が存在したとしても、低い渋滞予兆度を示す車両2も含めて、この車群内の複数の車両2に一斉に渋滞回避のための走行制御をかけるようにサーバ装置3が管理する。
つまり、一定条件範囲内の車群の車両2は、近いうちに高い渋滞予兆度を示す車両2と同等の渋滞予兆度を示すように変化する可能性が高く、これらの車両2を含めて走行制御をかけることによって、渋滞車群の解消を効果的に実施することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 情報提供システム
2 車両
3 サーバ装置
32 通信制御部
33 情報記憶部
34 地図データ記憶部
35 仮想ノード設定部
36 渋滞予兆演算部
41 加速度算出部
42 周波数分析部
43 単回帰直線算出部
44 傾き極大値算出部
45 先行車両検知部
46 車間距離算出部
47 車間距離分布推定部
48 共分散最小値算出部
49 相間演算部
50 渋滞予測部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め記憶している地図情報に基づき演算対象区間を設定し、該演算対象区間内で所定条件に基づき複数の仮想ノードおよび隣り合う前記仮想ノード間を接続する仮想リンクを設定するステップと、
隣り合う前記仮想ノード間に存在する少なくとも1台以上の車両に基づいて前記仮想ノード間に存在する前記車両を代表する1台の代表車両を設定するステップと、
前記代表車両の加速度を取得するステップと、
取得した前記加速度の周波数分析から周波数に対応するパワースペクトルを算出するステップと、
算出した前記パワースペクトルの単回帰直線を演算し、所定周波数範囲での当該単回帰直線の傾きの変化量の極大値を傾き極大値として算出するステップと、
前記代表車両と先行車両との車間距離を取得するステップと、
取得した前記車間距離から分布推定法を用いて、車間距離分布を推定するステップと、
推定した前記車間距離分布から共分散の最小値を算出するステップと、
前記共分散の最小値と前記傾き極大値との相関関係から前記代表車両の前方の車群分布を推定するステップと、
推定した前記車群分布に基づきリアルタイム渋滞予測をおこなうステップと、
前記仮想ノード間に存在する前記車両に対して前記リアルタイム渋滞予測の情報を提供するステップと、
を含むことを特徴とするサーバ側渋滞解消走行支援方法。
【請求項2】
前記仮想ノードおよび前記仮想リンクを設定するステップは、前記演算対象区間に存在する前記車両の台数と、前記演算対象区間の距離と、前記演算対象区間の道路種別と、前記演算対象区間の道路形状とのうち、少なくとも何れか1つに基づいて前記仮想ノードを設定することを特徴とする請求項1に記載のサーバ側渋滞解消走行支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−105379(P2013−105379A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249739(P2011−249739)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】