説明

サーベイメータ

【課題】コンパクトで操作性が良好なサーベイメータを構成する。
【解決手段】サーベイメータは可搬型の放射線測定装置であり、それは先端部10、中間部12及びグリップ部14を有する。中間部12の上面には表示部が設けられている。中間部12に対して屈曲部を介して先端部10が連なっており、先端部10が傾斜部を構成している。グリップ部14はくびれ形状を有している。先端部10内には放射線検出部が設けられ、それは左右方向に並んだ複数のセンサを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサーベイメータに関し、特に、対象物からの放射線、環境中の放射線等を測定するサーベイメータに関する。
【背景技術】
【0002】
サーべイメータは、対象物(建築物、自然物、人体、等)からの放射線、環境中に存在する放射線、等を測定する装置である。サーベイメータは、通常、可搬型の装置として構成され、それは、バッテリを内蔵し、バッテリからの電力によって動作する。特許文献1、2、3に記載されたサーベイメータは、箱状の形態を有する本体と、本体に対してケーブルを介して接続された検出部と、で構成されている。一方の手で本体の取っ手が保持され、他方の手で検出部が保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-004757号公報
【特許文献2】特開2005-077380号公報
【特許文献3】特開2009-025005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のサーベイメータを利用する場合、両手がふさがってしまうという問題がある。そこで片手だけで保持できるコンパクトなサーベイメータを実現することが望まれる。そのようなサーベイメータとして、単純な箱状のサーベイメータを構成した場合、操作性が良くない、あるいは、検出部の主測定方向を対象物へ向けると表示器が見にくくなる、という問題が指摘されている。また、操作性をよくするためには薄型のサーベイメータを構成することが望まれるが、その場合、検出部を設置するためのスペースが小さくなることから、大きなセンサをその有感面を対象物側へ向けて配置するのが困難となる。以上の問題の内で少なくとも1つを解決することが要請される。
【0005】
本発明の目的は、操作性が良好でコンパクトなサーベイメータを提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、片手で持って簡単に測定を行え、しかも測定中に表示器が見易いサーベイメータを提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、サーベイメータにおいて、良好な感度を確保しつつも対象物に向ける端部(検出部)の厚みを薄くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るサーベイメータは、前後方向及び左右方向に広がった平べったい形態を有し、上面に表示部が設けられた中間部と、前記左右方向に伸長した形態を有し、前記中間部の前側に屈曲部位を介して連なり、放射線検出部を収容した先端部と、前記前後方向及び前記左右方向に平べったい形態を有し、前記中間部の後側に連なるグリップ部と、を含み、前記先端部は前記屈曲部位から前記中間部の下側へ傾斜した部分である、ことを特徴とするものである。
【0009】
上記構成によれば、中間部が平べったい形態を有するので、その上面に表示面(表示部)を設けることが容易となる。あるいは、表示部の設置スペースとして大きなエリアを確保可能である。中間部の前側には屈曲部位を介して放射線検出部を収容した先端部が連結されており、その先端部は中間部の下側へ傾斜した部分である。よって、先端部を対象物へ向けた場合、サーベイメータを保持している操作者の方へ表示面が向くことになるから(多くのケースで先端部が傾斜していない場合よりも視線に対する表示面の角度を大きくできるから)、表示面が見易くなる。中間部の後側にはグリップ部が連結されており、そのグリップ部分が手で把持されることになる。よって、表示部が手で隠れてしまう問題を解消又は軽減できる。すなわち、片手でグリップ部分を持って、先端部を対象物へ向けると、自然に表示面がユーザー側を向くから、表示面の視認性を向上できる。つまり、測定中に視線を移すことなくあるいは大きな視線移動無くして線量情報を読み取れる。サーベイメータの上面に操作部を設ければ、更に操作部の視認性も向上できる。視野内に例えば対象物、先端部、表示面、操作部を入れ込むことが容易なので、非常に使い勝手がよくなる。
【0010】
望ましくは、前記中間部は、それを前後方向に貫通する仮想的な第1中心軸を有し、前記先端部は、主測定方向に一致する仮想的な第2中心軸を有し、前記第1中心軸と前記第2中心軸とが前記屈曲部位で交差し、前記第1中心軸と前記第2中心軸の交差角度が10−60度の範囲内に設定される。特に望ましくは、前記交差角度が15−45度の範囲内に設定される。これらの数値は実験、経験則等から求められるものである。用途に応じて適切な屈曲角度を選択するのが望ましい。屈曲角度を可変できるように構成してもよい。
【0011】
望ましくは、前記中間部と前記グリップ部が一体的に連なり、且つ、前記中間部と前記先端部が一体的に連なり、前記中間部と前記グリップ部は実質的に互いに同じ厚みを有し、それら全体として平板状の形態を構成し、前記先端部は、前記第2中心軸の方向及び前記左右方向に広がった形態を有し、且つ、前記第2中心軸に直交する先端面を有する。この構成によれば、各部が平べったい形態を有するから、それは、おおよそ、多数のスイッチを備えた一般的なリモコン(テレビ、オーディオ機器等のリモートコントロールユニット)のような形態であると言える。但し、主測定方向(校正対象となった正面方向あるいは主感度方向)が第1中心軸に対して交差しているから、つまり先端部が傾斜している点で、一般的なリモコン形態とは相違する。一般的なリモコンは、一般に、水平方向に向けて使用され、それは斜め上方45度の角度や床面に向けて使用するようなものではないからである。
【0012】
望ましくは、前記グリップ部は上方から見てくびれ形状を有する。くびれ形状が採用されていれば、持ちやすいし、持つ部分が明確となるから、表示面が手で隠れにくい。望ましくは、前記先端部は上方から見て先細の形状を有する。望ましくは、前記グリップ部の上面には操作部が設けられる。望ましくは、グリップ部分の一方側面に手の平をあて、親指を上面にあて、他の4本の指をグリップ部分の他方側面側に引っ掛けた状態で、グリップ部分が把持される。このような持ち方によれば、上面に形成された操作部を親指で操作できる。つまり把持、操作の両方を片手で行える。勿論、測定対象の高さや向き、そしてサーベイメータの測定姿勢に応じて、持ち方を変えるようにするのが望ましい。
【0013】
望ましくは、前記放射線検出部は、前記左右方向に並んだ複数のセンサを含む。先端部は左右方向に伸長した形態を有するから、それに合わせて左右方向に複数のセンサを配置するのが合理的である。つまりスペース効率を良好にできる。望ましくは、前記放射線検出部は、前記複数のセンサを包み込んだフィルタ部材を含む。フィルタ部材は、エネルギー感度特性を良好にする作用を発揮し、及び/又は、放射線検出部全体として主測定方向への感度を高める(感度特性を良好にする)作用を発揮する。好適な態様では、フィルタ部材が散乱体として作用し、半導体センサの有感面が主測定方向を向いていなくても、主測定方向の感度を引き上げられる。フィルタ部材は、主感度方向に向く面を正面とした場合、正面に加えて4つの側面に設けるのが望ましい。更に背面に設けてもよい。複数種類のフィルタ部材を利用するようにしてもよい。各面での厚みを異ならせることも可能である。更にコリメート作用を発揮する部材を設けるようにしてもよい。
【0014】
望ましくは、前記各センサは有感面を有する平板状の半導体センサであり、前記左右方向に直交する方向であって前記先端部が向く主測定方向と、前記左右方向及び前記主測定方向に直交する先端部厚み方向と、を定義した場合、前記各センサの有感面が前記左右方向又は前記先端部厚み方向を向く。
【0015】
望ましくは、前記複数のセンサが前記左右方向に積層される。この構成によれば積層体を構成して有感面積の増大を図れる。それらは同一形状のセンサによって構成されるのが望ましい。センサに表面と裏面とがある場合には向きが左右均等になるように配列してもよい。望ましくは、前記複数のセンサが、それらの有感面が前記先端部厚み方向を向くようにして、前記左右方向に並べられる。この構成によれば先端部の広がり方向と検出面の広がり方向とを合わせてスペース効率を高められる。サイズの異なる複数のセンサを配置するようにしてもよい。望ましくは、前記複数のセンサの内で線量に応じて検出動作を行わせるセンサを選択する制御部が設けられる。高線量下ではパルスが連なって飽和してしまう場合に稼働センサの個数を削減してそのような飽和を防止するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、操作性が良好でコンパクトなサーベイメータを提供できる。あるいは、片手で持って簡単に測定を行え、しかも測定中に表示器が見易いサーベイメータを提供できる。あるいは、良好な感度を確保しつつも対象物に向ける端部(検出部)の厚みを薄くできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るサーベイメータの好適な実施形態を示す上面図である。
【図2】図1に示したサーベイメータの斜視図である。
【図3】図1に示したサーベイメータの右側面図である。
【図4】図1に示したサーベイメータが有する構成を示すブロック図である。
【図5】放射線検出部の第1例を示す図である。
【図6】放射線検出部の第1例を示す図である。
【図7】放射線検出部の第2例を示す図である。
【図8】放射線検出部の第2例を示す図である。
【図9】第1表示例を示す図である。
【図10】第2表示例を示す図である。
【図11】第3表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1には、本発明に係るサーベイメータの好適な実施形態が示されており、図1はその上面図である。このサーベイメータは、建築物や人体等の対象物からの放射線を検出する放射線測定装置である。もちろん、環境中の放射線が測定されてもよい。本実施形態においては、放射線としてγ線が測定されているが、他の放射線が測定されてもよい。
【0020】
図1において、サーベイメータはバッテリを内蔵し、可搬型の装置として構成されている。本実施形態においては、サーベイメータを片手で把持をしながらその操作を行うことが可能なように当該サーベイメータが構成されている。サーベイメータは、先端側から後端側にかけて3つの区間を有し、具体的には先端部10、中間部12及びグリップ部14を有する。中間部12は、その上面に表示部18を有している。表示部18は液晶表示器等により構成されている。中間部12は、前後方向であるX方向及び左右方向であるY方向に広がった平べったい形態を有しており、すなわち平板型の形状を有している。その厚みは例えば17.5mmである。例えば、その厚さを10〜25mmの範囲内から選択することもできる。
【0021】
中間部12の前側には屈曲部11を介して先端部10が一体的に連結されている。先端部10は後に説明するように中間部12の下面側へ傾斜した傾斜部を構成している。先端部10は図示されるように左右方向に伸長した形態を有し、また後に説明する主測定方向と左右方向(Y方向)の両方向にわたって広がった平べったい形態を有している。先端部10の厚さ、すなわち左右方向と主測定方向の両方向に直交する方向の厚さは、例えば20mmである。その厚さを例えば15〜30mmの範囲内において選択することも可能である。
【0022】
先端部10の内部には検出部16が設けられている。本実施形態においては、検出部16は後に説明するように複数の半導体センサを含んで構成されている。先端部10の先端面10Aは検出面であり、それは主測定方向に対して直交した面を構成している。先端部10は図1に示されるように上方から見て若干ながら先細の形状を有している。
【0023】
グリップ部14はユーザーの手によって把持される部分であり、それは上方から見てくびれ形状を有している。グリップ部14は中間部12と同様にX方向及びY方向に広がった平べったい形態を有し、つまりそれは平板状の形態を有している。グリップ部14の前縁におけるY方向の幅W3が最も大きく、そこから後端方向にその幅を観察すると、中間部分において一旦その幅がW1となり、そこからまた広がって後縁においてその幅はW2となっている。すなわち上述したようにグリップ部14は上方から見てくびれた形状を有している。これによりグリップ部14が掴み易くなっており、またグリップ部14を掴んだ状態において表示部18が手によって隠蔽されてしまう問題を解消又は軽減することが可能である。
【0024】
グリップ部14の上面、より具体的には表示部18の後側には操作部20が設けられている。本実施形態において操作部20は3つのプッシュボタンによって構成されている。グリップ部14の握り方について説明すると、例えば、右手でそれを把持する場合、グリップ部14の右側面に手のひらが当てられ、親指がグリップ部14の上面に当てられ、残りの4つの指がグリップ部14の左側面に引っ掛けられる。このような状態で親指によって操作部20が操作される。もちろん、対象物の位置や対象物の傾きあるいはユーザーの好み等によって様々な持ち方を採用することが可能である。
【0025】
ちなみにサーベイメータの全体を包み込む弾性部材で構成されたジャケットを設けるようにするのが望ましい。このようなジャケットによれば、サーベイメータが誤って落下したような場合においてもサーベイメータの筐体及びその内部の電子部品を保護することが可能となる。そのようなジャケットは着脱自在なものとして構成するのが望ましい。ちなみに、図1にはX方向及びY方向が示されているが、それに直交する方向としてZ方向を定義することができ、そのZ方向は中間部12及びグリップ部14についての厚み方向である。
【0026】
図2には、サーベイメータの斜視図が示されている。上述したように、サーベイメータは先端から後端にかけて先端部10、中間部12及びグリップ部14を有している。先端部10の先端面は検出面10Aを構成し、それは主測定方向に対して交差した面である。ここで、主測定方向は例えば校正が行われた方向であり、あるいは最も感度が高い方向である。先端部10の向く方向が主測定方向である。符号22はUSBポートを示している。符号24はバッテリケースのカバーを示している。本実施形態においては、USBポートを介してバッテリの充電を行うことが可能である。
【0027】
図3には、サーベイメータの右側面図が示されている。符号100は中間部及びグリップ部の中心を通過する中心軸を示しており、符号102は先端部を通過する中心軸を示している。中心軸102は主測定方向26に合致している。中心軸100と中心軸102とがなす交差角度θは望ましくは10〜60度の範囲内に設定され、特に望ましくは15〜45度の範囲内に設定され、本実施形態においては30度に設定されている。上述したように、中間部及びグリップ部のZ方向の厚さは例えば17.5mmであり、先端部における中心軸102に直交する方向の厚さは例えば20mmである。もちろん本明細書に挙げられている各数値は一例に過ぎない。いずれにおいても片手で容易に把持でき、また片手だけで操作が可能なサーベイメータを構成するのが望ましい。
【0028】
図1乃至図3に示したサーベイメータの形態はテレビやオーディオ機器などに付属しているリモートコントローラの形態に類似している。しかし、そのようなリモートコントローラはフロア面に向けたり壁面上方へ向けたりするようなものではなく、概ね水平方向に向けられるものである。その一方、本実施形態のサーベイメータは、例えば床面の放射線汚染や壁面上部の放射線汚染等を測定するものであり、上述のような屈曲形態を有している。すなわち、例えば床面へ検出面を向けたような場合に表示部の表示面が自然にユーザー側に向くので、それがユーザー側に正対しないとしても表示面と視線との成す角度を比較的に大きくできるので、表示面の視認性を向上することが可能である。しかも、グリップ部をもった状態において表示面が露出されており、しかも先端部及び対象部を同じ視線の中に捉えることも容易であるから、測定をしながら対象部位を確認しつつ、更に表示面を観察できるという利点が得られる。このように本実施形態に係るサーベイメータはコンパクトであり、また使い勝手が非常に良い。ちなみに、図3に示されるようにストラップを引っ掛けるための凸部30を設けるようにしてもよい。またイヤホンジャック32を設けるようにし、放射線検出器のパルス音をイヤホンを用いて聞くようにしてもよい。
【0029】
図4にはサーベイメータにおける回路構成がブロック図として示されている。プロセッサ40は例えば1又は複数のマイコン等により構成され、信号処理及び動作制御を行っている。プロセッサ40に対しては検出部42が接続されている。この検出部42の構成については後に図5乃至図8を用いて説明する。プロセッサ40には操作部20及び表示部18が接続されている。操作部20は上述したように3つのボタンによって構成されている。表示部18は上述したように液晶パネルによって構成されている。表示部18と操作部20とが両者一体化されてタッチスクリーンを構成してもよい。また、プロセッサ40にはメモリ46が接続されている。外部メモリを設けるようにしてもよい。ブザー48はアラームを発生するためのものである。符号50はイヤホンへの出力信号を表しており、符号52はUSBポートを介した外部とのアクセス信号を表している。この構成に対して更にGPSシステム等を組み込むようにしてもよい。バッテリ42はサーベイメータが有する各構成に電力を供給するものであり、具体的にはバッテリ42からの電力が電源回路44を経由して各構成に供給されている。図4に示した構成は一例に過ぎないものである。
【0030】
図5及び図6には放射線検出部の第1例が示されている。
【0031】
図5において、積層体54は複数のセンサ56,58により構成され、具体的には、左右方向つまりY方向に積層された9個の半導体センサによって構成されている。各センサ56,58はそれぞれ平板型のセンサであり、具体的には、主測定方向60と先端部厚み方向の両方向に広がっている。各センサは有感面56A,58Aを有している。一般にセンサ56,58は一方面及び他方面のそれぞれの感度特性が異なり、それを考慮して、本実施形態においては9個の内で約半数の5個の半導体センサが図において右向きで配置されており、残りの約半数の4個のセンサ58が図において左向きで配置されている。これによって複数のセンサ56,58全体として左右方向にほぼ均等の感度が得られている。
【0032】
本実施形態において9個のセンサ56,58は3つのグループに区分されている。ここで1つのグループは3つのセンサにより構成されている。これにより第1グループ62、第2グループ64,第3グループ66が構成されている。第1グループ62からの3つの出力信号は加算されてその加算信号がアンプ68を経由してコンパレータ70に送られている。コンパレータ70においては所定の閾値を超える信号だけが取り出されており、これによって出力パルスが生じる。これは図4に示したプロセッサ40へ出力される。同様に第2グループ64からの信号もアンプ72及びコンパレータ74を介してプロセッサ40へ出力されている。更に第3グループ66についてもその出力信号がアンプ76及びコンパレータ78を介してプロセッサ40へ出力されている。このようなグルーピングにより電子回路の規模を削減できるとともに、線量に応じて動作させるグループ数を選択することが可能となっている。もちろんグループを構成することなく個別的に各センサのオンオフ切り替えを行えるように構成してもよい。
【0033】
本実施形態においては積層体56がフィルタ部材80によって包み込まれている。積層体54が有する6つの面の内で、主測定方向60に向く正面と4つの側面に対してフィルタ部材が設けられている。残りの背面については本実施形態においてフィルタ部材は設けられていないが、もちろんそこにフィルタ部材を設けることも可能である。フィルタ部材80はエネルギー感度特性を良好にするために設けられている。本実施形態において、このフィルタ部材は銅によって構成されている。もちろん他の材料あるいは複数の材料をもってフィルタ部材80を構成するようにしてもよい。本実施形態では、積層体54がフィルタ部材80によって包み込まれており、フィルタ部材80においてγ線が散乱した場合、その散乱したγ線が複数の有感面において検出される。実験によれば、図5に示す検出部の構成により、主測定方向60において主感度を構成することが可能となっている。もっとも、主感度方向に直交する周囲方向においてもある程度の感度が得られている。
【0034】
図6には上述した積層体54の斜視図が示されている。ここにおいてj方向は左右方向つまりY方向であり、それが積層方向となっている。i方向が主感度方向60に合致している。k方向はi方向及びj方向に直交する方向であり、そのk方向が先端部の厚み方向に一致している。各センサの有感面はi方向及びk方向に広がっている。一般的には、このような配置の場合、主感度方向60に対して感度があまりないことになるが、本実施形態においては上述した構成によって正面に対して十分な感度を持たせることが可能となっている。しかも個々のセンサの有感面の総和としてかなり大きなものが得られているので、それも感度向上の要因になっている。
【0035】
図7及び図8には放射線検出部の他の構成例が示されている。
【0036】
図7において、基板82上には2つのセンサ84,86が設けられている。センサ84は大面積型の半導体センサであり、その有感面84Aは例えば10×10mmの大きさを有している。一方、センサ86は比較的小型の半導体センサであり、その有感面86Aは3×3mmのサイズを有している。ちなみに、図5に示した各センサもそれと同一のサイズを有している。2つのセンサ84,86の有感面84A,86Aは先端部厚み方向上方を向いている。
【0037】
この構成例においても、2つのセンサ84,86の周囲にフィルタ部材80が設けられている。このフィルタ部材80は図5に示した構成と同様の形態を有している。すなわちそれによってエネルギー感度特性が高められている。また、散乱体としての機能も発揮されているものと理解される。実験によれば、このような検出部の構成によって主測定方向60において十分な感度が得られることが確認されている。ただし、この図7に示す構成によると、条件次第では左右方向において感度の上昇が生じることも確認されている。もちろんそのような感度の上昇を他の構成を用いて押さえ込むことも可能である。
【0038】
第1センサ84の出力信号はアンプ88及びコンパレータ90を介してプロセッサ40へ送られている。またセンサ86の出力信号はアンプ92及びコンパレータ94を介してプロセッサ40へ出力されている。プロセッサ40においては、2つのセンサ84,86の両方を動作させたりその内の一方だけを動作させたりすることが可能となっている。これにより線量に応じて動作させるセンサの個数あるいは種類を選択することが可能である。
【0039】
図8には、2つのセンサ84,86の斜視図が示されている。上述したように基板82上には2つのセンサ84,86が左右方向すなわちj方向に並んで配列されている。先端部は既に説明したようにi方向及びj方向に広がった平べったい形態を有しているため、このような2つのセンサの配置はスペース効率を高められるものである。いずれにしても、左右方向にセンサを並べることにより先端部におけるセンサ配置を極めて合理的なものにできるという利点が得られる。
【0040】
次に図9乃至図11を用いて幾つかの表示例について説明する。本実施形態におけるサーベイメータは幾つかの表示モードを有している。図9に示す表示モードにおいては、線量当量率が、数値100として表示されており、また仮想的なアナログメータ102として表示されている。線量当量率ではなく積算当量、線量率、積算線量等が表示されるようにしてもよい。符号104は現在から過去に遡ってみた場合における線量当量率の最大値を示している。すなわち、本実施形態のサーベイメータは過去に遡って最大値を特定する機能を有する。この場合において、過去に遡る期間をユーザーにより指定させるようにしてもよい。符号106は現在の時刻を示しており、符号108はバッテリにおける残量を示している。符号110はデータ演算で標準偏差を用いる場合におけるその条件を表しており、符号112はスピーカのオンオフ状態を示している。符号114はブザーのオンオフ状態を示している。符号116は装置の動作状態を示しており、例えばメモリへの記憶動作を行っている場合においては、所定の発光状態となる。
【0041】
図10に示す表示モードにおいては、符号100で示されるように数値によって現在の線量当量率が表示される他、符号118で示されるように、トレンドグラフが表示される。このトレンドグラフは現在から過去に遡って線量当量率の変動をグラフとして表したものである。それが積算線量を表すものであってもよい。図11には更に他の表示モードが示されており、この例においては符号100で示されるように数値によって線量当量率が示されている。
【0042】
上述したサーベイメータによれば、基本的に1つのケース内に全ての構成が収容されており(オールインワン構成)、それを片手で把持しつつ測定を行えるという利点が得られる。しかも、先端部が傾斜部を構成しており、グリップ部が後端側に設定されているから、サーベイメータを持った状態においてその検出面を対象物に対して自然に向けることが可能であり、その場合においても表示面を観察し易いようになっている。またグリップ部がくびれ形状を有しているため持つ部分を誤りなく認識でき、また持ち易いという利点が得られる。それを持った場合において親指等によって操作部を容易に操作でき、その場合においても表示部が手によって隠されることが防止されている。更に、検出部が平べったい形状を有しており、その形状に合わせて複数のセンサが左右方向に並べて配置されている。これによってスペース効率が高められ、ひいては検出感度が高められている。
【0043】
本実施形態において、図4に示したプロセッサ40は、線量の大小に応じて動作させるセンサの個数を切り替えるようにしている。具体的には、図5及び図6に示した構成例においては、低線量の場合においては3つのグループを動作させるようにし、高線量の場合においては中央のグループのみを動作させるようにしている。もちろんより細かく段階的にグループ数を変えるようにしてもよい。また図7及び図8に示した構成例においては、低線量の場合には、センサ84及びセンサ86の両方を動作させており、高線量においてはセンサ86のみを動作させるようにしている。もちろん更に中間的にセンサ84のみを動作させる等の変形を行うことも可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 先端部、11 屈曲部、12 中間部、14 グリップ部、16 検出部、18 表示部、20 操作部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向及び左右方向に広がった平べったい形態を有し、上面に表示部が設けられた中間部と、
前記左右方向に伸長した形態を有し、前記中間部の前側に屈曲部位を介して連なり、放射線検出部を収容した先端部と、
前記前後方向及び前記左右方向に平べったい形態を有し、前記中間部の後側に連なるグリップ部と、
を含み、
前記先端部は前記屈曲部位から前記中間部の下側へ傾斜した部分である、ことを特徴とするサーベイメータ。
【請求項2】
請求項1記載のサーベイメータにおいて、
前記中間部は、それを前後方向に貫通する仮想的な第1中心軸を有し、
前記先端部は、主測定方向に一致する仮想的な第2中心軸を有し、
前記第1中心軸と前記第2中心軸とが前記屈曲部位で交差し、
前記第1中心軸と前記第2中心軸の交差角度が10−60度の範囲内に設定された、ことを特徴とするサーベイメータ。
【請求項3】
請求項2記載のサーベイメータにおいて、
前記交差角度が15−45度の範囲内に設定された、ことを特徴とするサーベイメータ。
【請求項4】
請求項2記載のサーベイメータにおいて、
前記中間部と前記グリップ部が一体的に連なり、且つ、前記中間部と前記先端部が一体的に連なり、
前記中間部と前記グリップ部は実質的に互いに同じ厚みを有し、それら全体として平板状の形態を構成し、
前記先端部は、前記第2中心軸の方向及び前記左右方向に広がった形態を有し、且つ、前記第2中心軸に直交する先端面を有する、ことを特徴とするサーベイメータ。
【請求項5】
請求項4記載のサーベイメータにおいて、
前記グリップ部は上方から見てくびれ形状を有する、ことを特徴とするサーベイメータ。
【請求項6】
請求項4記載のサーベイメータにおいて、
前記先端部は上方から見て先細の形状を有する、ことを特徴とするサーベイメータ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のサーベイメータにおいて、
前記グリップ部の上面には操作部が設けられた、ことを特徴とするサーベイメータ。
【請求項8】
請求項1記載のサーベイメータにおいて、
前記放射線検出部は、前記左右方向に並んだ複数のセンサを含む、ことを特徴とするサーベイメータ。
【請求項9】
請求項7記載のサーベイメータにおいて、
前記放射線検出部は、前記複数のセンサを包み込んだフィルタ部材を含む、ことを特徴とするサーベイメータ。
【請求項10】
請求項8記載のサーベイメータにおいて、
前記各センサは有感面を有する平板状の半導体センサであり、
前記左右方向に直交する方向であって前記先端部が向く主測定方向と、前記左右方向及び前記主測定方向に直交する先端部厚み方向と、を定義した場合、前記各センサの有感面が前記左右方向又は前記先端部厚み方向を向く、ことを特徴とするサーベイメータ。
【請求項11】
請求項10記載のサーベイメータにおいて、
前記複数のセンサが前記左右方向に積層された、ことを特徴とするサーベイメータ。
【請求項12】
請求項10記載のサーベイメータにおいて、
前記複数のセンサが、それらの有感面が前記先端部厚み方向を向くようにして、前記左右方向に並べられた、ことを特徴とするサーベイメータ。
【請求項13】
請求項7乃至12のいずれか1項に記載のサーベイメータにおいて、
前記複数のセンサの内で線量に応じて検出動作を行わせるセンサを選択する制御部が設けられた、ことを特徴とするサーベイメータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−53881(P2013−53881A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191064(P2011−191064)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【特許番号】特許第5042383号(P5042383)
【特許公報発行日】平成24年10月3日(2012.10.3)
【出願人】(390029791)日立アロカメディカル株式会社 (899)
【Fターム(参考)】