説明

サーボモータ

【課題】エンコーダの検査を高精度且つ容易に行うことが可能なサーボモータを提供する。
【解決手段】エンコーダ100は、シャフトSHに連結され、複数の反射スリット111からなるスリットアレイSAが円周方向に沿って形成された円板状のディスク110と、スリットアレイSAに光を照射する点光源121、及び、点光源121から照射されスリットアレイSAで反射された光を受光する受光アレイ122を備えた光学モジュール120と、光学モジュール120が設けられる基板130と、モータMのハウジング10に固定され、ディスク110を内部に収容しつつ、光学モジュール120がスリットアレイSAと対向するように基板130を支持する、円筒状の支持部材140と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、光学式のエンコーダを備えたサーボモータに関する。
【背景技術】
【0002】
モータシャフトの回転角度等を光学的に検出するエンコーダを備えたサーボモータが知られている。例えば、特許文献1に記載されたサーボモータは、モータシャフトに取り付けられたホローシャフトと、その端面に取り付けられた回転ディスクと、回転ディスクと所定の空隙を介して取り付けられる受光素子と、受光素子を搭載した基板と、受光素子に対向して取り付けられる発光素子と、発光素子を固定し、且つ、ホローシャフトにベアリングにて接続されるハウジングとを備えた、ロータリエンコーダを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4296458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術のロータリエンコーダは、ホローシャフトがハブを介してモータシャフトに固定されると共に、ハウジングが板バネを介してモータに固定されることで、モータに取り付けられる。このようにして製造されたサーボモータでは、光学系の高精度な位置合せが行われ、かつ、出荷前にエンコーダが正常に機能するか否かを検査される。この機能検査は、エンコーダの機能確保の上で重要な役割を担うが、検査時に様々な要因が作用しえるためこの検査を高精度に行うのは必ずしも容易ではない。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、エンコーダの検査を高精度且つ容易に行うことが可能なサーボモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、シャフトを回転させるモータと、
上記シャフトの位置を検出するエンコーダと、を備え、
上記エンコーダは、
上記シャフトに連結され、複数の反射スリットが円周方向に沿って形成された円板状のディスクと、
上記反射スリットに光を照射する点光源、及び、上記点光源から照射され上記反射スリットで反射された光を受光する受光素子を備えた光学モジュールと、
上記光学モジュールが設けられる基板と、
上記モータのハウジングに固定され、上記ディスクを内部に収容しつつ、上記光学モジュールが上記反射スリットと対向するように上記基板を支持する、円筒状の支持部材と、を有する、サーボモータが提供される。
【0007】
また、上記エンコーダは、
上記基板と上記支持部材の両方に挿入され、上記基板と上記支持部材の相対位置を位置決めする少なくとも2つの位置決めピンをさらに有し、
上記支持部材は、
上記位置決めピンが挿入される少なくとも2つのピン孔を、上記基板が載置される面に有してもよい。
【0008】
また、上記エンコーダは、
上記基板及び上記支持部材を上記シャフトの軸方向に貫通して上記ハウジングのネジ孔に螺合する少なくとも2つの固定ネジをさらに有し、
上記支持部材は、
上記固定ネジが貫通する少なくとも2つの貫通孔を有し、
上記貫通孔の内径は、上記固定ネジの外径よりも寸法が大きくなるように設定されてもよい。
【0009】
また、上記支持部材は、
上記基板が載置される面に、該支持部材の円筒形状内側において上記基板との間に隙間を形成させる段差を有してもよい。
【0010】
また、上記支持部材は、
円周方向に略均等な間隔で配置された少なくとも3つの平坦部を外周面に有してもよい。
【0011】
また、上記ハウジングは、
上記支持部材の外周面又は内周面と間隙を介して係合可能な円環状又は円弧状の突起部又は段差部を有してもよい。
【0012】
また、上記モータは、
中心部を上記シャフトが貫通し、外周部が上記ハウジングに固定されたオイルシールを有し、
上記オイルシールは、
少なくとも上記ディスクを間に挟んで上記点光源に対応する位置にまで形成され、該点光源からの照射された光の少なくとも一部を吸収してもよい。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明によれば、エンコーダの検査を高精度且つ容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係るサーボモータの概略構成について説明するための説明図である。
【図2】本実施形態に係るエンコーダの概略構成について説明するための断面図である。
【図3】本実施形態に係るエンコーダの概略構成について説明するための分解斜視図である。
【図4】光学モジュールとディスクとの位置合わせ手法の一例を説明するためのディスクの一部の平面図である。
【図5】光学モジュールとディスクとの位置合わせ手法の一例を説明するための光学モジュールの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
<1.サーボモータ>
まず、図1を参照しつつ、本実施形態に係るサーボモータの構成の概略について説明する。図1に示すように、サーボモータSMは、エンコーダ100と、モータMとを有する。モータMは、エンコーダ100を含まない動力発生源の一例である。このモータM単体をサーボモータという場合もあるが、本実施形態では、エンコーダ100を含む構成をサーボモータSMということにする。モータMは、シャフトSHを回転軸AX周りに回転させることにより、回転力を出力する。
【0017】
なお、モータMは、位置データに基づいて制御されるモータであれば特に限定されるものではない。すなわち、モータMは、動力源として電気を使用する電動式モータである場合に限られるものではなく、例えば、油圧式モータ、エア式モータ、蒸気式モータ等の他の動力源を使用したモータであってもよい。ただし、説明の便宜上、以下ではモータMが電動式モータである場合について説明する。
【0018】
エンコーダ100は、モータMのシャフトSHの回転力出力端とは反対側の端部に連結される。そして、このエンコーダ100は、シャフトSHの位置を検出することにより、モータMの回転対象(シャフトSH自体でもよい。)の位置を検出し、その位置を表す位置データを出力する。
【0019】
なお、エンコーダ100の配置位置は、本実施形態に示す例に特に限定されるものではない。例えば、エンコーダ100は、シャフトSHの出力端側に直接連結されるように配置されてもよく、また、減速機や回転方向変換機、ブレーキなどの他の機構を介してシャフトSH等に連結されてもよい。
【0020】
なお、本実施形態は、エンコーダ100が、図1及び図2に例示するような、モータMのシャフトSHにエンコーダ100のディスク110を直接的に連結させる、いわゆる「ビルトイン型」であり、且つ、光源に点光源が使用され、その点光源からの照射光が反射スリットで反射されて受光素子で受光される、いわゆる「反射型」である場合に特に有効である。これは次の理由による。すなわち、エンコーダ100が、例えばディスク110がエンコーダ専用のシャフトに連結され、そのシャフトがモータMのシャフトSHなどに連結可能に構成されるいわゆる「コンプリート型」である場合、ディスク110や光学モジュール120がエンコーダ専用のシャフトや軸受と共に予め位置決めされて一体的に組み上げられているため、サーボモータSMの製造時にディスク110と光学モジュール120との位置調整が特段に必要とならない。一方、本実施形態のように「ビルトイン型」のエンコーダ100である場合、ディスク110と光学モジュール120とが独立した支持構造となっているため、サーボモータSMの製造時にディスク110と光学モジュール120との位置調整が必要となる上、点光源からの照射光は拡散光となり、かつ、点光源からの光の直進性を利用することで、高精度な位置検出を可能とするため、平行光を使用するエンコーダや透過型のエンコーダに比べて、光学モジュールとディスクとの位置合わせを高精度に行う必要があるからである。本実施形態の構成とすることにより、光学モジュールとディスクとの位置合わせを高精度に行うことができる内容の詳細については後述する。
【0021】
<2.エンコーダ>
次に、図2及び図3を用いてエンコーダ100の概略構成について説明する。なお、図2は、図3に示したエンコーダ100をA−A線で切断した断面図である。
【0022】
図2に示すように、本実施形態に係るエンコーダ100は、モータMのハウジング10(例えば反負荷側ブラケット)に設けられ、エンコーダカバー101により覆われている。図2及び図3に示すように、エンコーダ100は、シャフトSHに連結された円板状のディスク110と、ディスク110と対向して配置された光学モジュール120と、光学モジュール120がディスク110側に実装された基板130と、基板130を支持する円筒状の支持部材140とを有している。
【0023】
(2−1.ディスク)
ディスク110は、シャフトSHの端部に連結される。なお、ディスク110を例えばハブ等を介してシャフトSHに連結してもよい。図3に示すように、ディスク110の光学モジュール120に対向する側の面には、円周方向に沿ってディスク110の全周に亘り並べられた複数の反射スリット111(後述の図4参照)を有するリング状のスリットアレイSAが形成されている。1つ1つの反射スリット111は、点光源121から照射された光を反射する。反射スリット111は、インクリメンタルパターンを有するように配置される。インクリメンタルパターンは、後述の図4に示すように、所定のピッチで規則的に繰り返されるパターンである。このインクリメンタルパターンは、少なくとも1以上の受光素子による検出信号の和により、1ピッチ毎又は1ピッチ内のモータMの回転対象の位置を表す。
【0024】
ディスク110は、本実施形態では例えばガラスにより形成される。そして、スリットアレイSAが有する反射スリット111は、ガラスのディスク110の面に、光を反射する部材が塗布されることにより、形成可能である。なお、ディスク110の材質は、ガラスに限られるものではなく、金属や樹脂等を使用することも可能である。また、反射スリットは、例えば、反射率の高い金属をディスク110として使用し、光を反射させない部分を、スパッタリング等により粗面としたり反射率の低い材質を塗布したりすることで、反射率を低下させて、形成されてもよい。ただし、ディスク110の材質や製造方法等については特に限定されるものではない。
【0025】
(2−2.光学モジュール)
光学モジュール120は、図2及び図3に示すように、ディスク110と平行な基板状に形成され、ディスク110のスリットアレイSAの一部に対向しつつ固定される。この光学モジュール120は、ディスク110に対向する側の面に、ディスク110の反射スリット111に光を照射する点光源121と、点光源121から照射され反射スリット111で反射された光を受光する受光アレイ122とを備えている。なお、本実施形態では、光学モジュール120がエンコーダ100を薄型化したり製造を容易にすることが可能な基板状に形成される場合について説明するが、光学モジュール120は必ずしも基板状に構成される必要はない。
【0026】
点光源121は、光学モジュール120の略中央位置に配置され、対向する位置を通過するスリットアレイSAに光を照射する。この点光源121としては、照射領域に光を照射可能な光源であれば特に限定されるものではないが、例えば、LED(Light Emitting Diode)が使用可能である。そして、この点光源121は、特に光学レンズ等が配置されない点光源として形成され、発光部から拡散光を照射する。なお、点光源という場合、厳密な点である必要はなく、設計上や動作原理上、略点状の位置から拡散光が発せられるものとみなせる光源であれば、有限な面から光が発せられてもよいことは言うまでもない。このように点光源を使用することにより、光学素子による集光・拡散を行わないため、光学素子による誤差等が生じにくく、スリットアレイSAへの照射光の直進性を高める事が可能である。
【0027】
受光アレイ122は、点光源121の周囲に配置され、対向するスリットアレイSAからの反射光を受光する。そのために、受光アレイ122は、複数の受光素子123(後述の図5参照)を有する。受光素子123には、例えば薄膜状に形成されたフォトダイオード等が用いられる。
【0028】
(2−3.基板)
基板130は、円板状のプリント配線基板であり、ディスク110と対向する側の面及びその反対側の面には、光学モジュール120を含む複数の回路素子等が搭載され、それらの間に複数の配線が形成されている。なお、図2及び図3において、光学モジュール120以外の素子や配線については図示を省略している。図2に示すように、基板130は、支持部材140とほぼ同じ直径となるように形成されており、その縁部が支持部材140の基板が載置される面141(以下適宜「基板載置面141」と記載する)に載置されている。基板130の縁部には、固定ネジ150が貫通する複数(本実施形態では3)の貫通孔131が設けられている。貫通孔131は、円周方向に略均等な間隔(本実施形態では120°間隔)で配置されている。また、基板130の縁部には、位置決めピン160が挿入される少なくとも2つ(本実施形態では2)のピン孔132が設けられている。ピン孔132は、基板130を貫通して設けられ、上記3つの貫通孔131のうちの2つに隣接して配置されている。また図2に示すように、光学モジュール120は、基板130の縁部近傍に搭載されている。
【0029】
(2−4.支持部材)
支持部材140は、図2及び図3に示すように円筒状に形成されており、ディスク110を内部に収容しつつ、光学モジュール120がディスク110の反射スリット111と対向するように基板130を支持する。支持部材140は、例えば金型を用いた樹脂モールド等により一体成型される。樹脂は、支持部材140の内部における光の散乱・反射を抑制できるように、黒色あるいは光を吸収し易い色彩の材質が好ましい。なお、それ以外の樹脂でも、成型後に内部を黒色あるいは光を吸収し易い色彩やパターンに塗装することで、使用することが可能である。
【0030】
支持部材140は、固定ネジ150が貫通する少なくとも2つ(本実施形態では3)の貫通孔142を有している。貫通孔142は、基板130の貫通孔131と対応するように、円周方向に略均等な間隔(本実施形態では120°間隔)で配置されている。少なくとも2つ(本実施形態では3)の固定ネジ150は、基板130の貫通孔131及び支持部材140の貫通孔142をシャフトSHの軸方向に貫通してハウジング10のネジ孔11に螺合する。これにより、基板130及び支持部材140がモータのハウジング10に固定される。なお、固定ネジ150の数は2以上であれば限定されるものではないが、2とすると固定安定性の点で十分でなく、4以上とすると部品点数の増加や基板130の有効面積(回路素子や配線を形成可能な面積)の減少等を招くため、本実施形態のように3とするのが好適である。
【0031】
なお、図2に示すように、基板130の貫通孔131及び支持部材140の貫通孔142の内径は、固定ネジ150の軸部151の外径よりも寸法が大きくなるように設定されている。すなわち、貫通孔131,142はバカ孔となっている。これにより、固定ネジ150を基板130及び支持部材140に貫通させてハウジング10のネジ孔11に螺合させた状態で、固定ネジ150の締め付け前に、貫通孔131,142の内径と固定ネジ150の外径との寸法差の範囲内において、基板130と支持部材140とを移動させて光学モジュール120をディスク110に対し相対移動させ、光学モジュール120とディスク110との位置合わせを行うことが可能となっている。そして、位置合わせ終了後に固定ネジ150を締め付けることで、基板130及び支持部材140を容易にハウジング10に固定することができる。このようにすることで、例えば光学モジュール120とディスク110との位置合わせが完了した後に固定ネジ150を挿通させる構成とした場合には、固定ネジ150を挿通させる際に接触等により位置ずれが生じるおそれがあるが、本実施形態によれば位置合わせ完了後に固定ネジ150の締め付けのみを行えばよいので、そのような位置ずれを防止できる。
【0032】
図3に示すように、支持部材140の基板載置面141には、位置決めピン160が挿入される少なくとも2つ(本実施形態では2)のピン孔143が設けられている。ピン孔143は、基板130のピン孔132と対応するように、3つの貫通孔142のうちの2つに隣接して配置されている。位置決めピン160は、まず支持部材140のピン孔143に差し込まれ、立設された状態で、基板130のピン孔132に挿入される。このようにして基板130と支持部材140の両方に位置決めピン160が挿入されることで、基板130と支持部材140との回転軸AXに垂直な面方向の相対位置が位置決めされる。なお、ピン孔132,143の内径は位置決めピン160の外径と略同等(あるいは若干小さめ)に設定されている。このため、位置決めピン160がピン孔132,143に挿入された際に、位置決めピン160の締まりばめ作用によって基板130と支持部材140とを仮固定することが可能となる。したがって、光学モジュール120とディスク110との位置合わせを行う際に、基板130と支持部材140とを一体的に扱う(移動させる)ことができる。その結果、基板130のみを移動させる場合に比べて光学モジュール120の移動操作が容易となり、位置調整を容易化できる。
【0033】
なお、支持部材140を樹脂モールド等により一体成型する場合、位置決めピンを基板載置面141から突出させて一体成型する構成も考えられるが、この場合には基板載置面141の後加工(平面出し加工等)を行うことができなくなる。これに対し、本実施形態では位置決めピン160を挿入可能なピン孔143を設ける構成とするため、基板載置面141の後加工を行うことが可能となり、支持部材140の加工精度を向上できる。
【0034】
なお、位置決めピン160の数は、2以上であれば基板130と支持部材140の位置決めが可能となるため限定されるものではないが、3以上とすると部品点数の増加や基板130の有効面積の減少等を招くため、本実施形態のように最小限である2とするのが好適である。また、ピン孔132,143を貫通孔131,142から離間させて設けてもよいが、本実施形態のようにピン孔132,143を貫通孔131,142に隣接して設けることで、離間して配置する場合よりも基板130の有効面積の減少を抑制できる。
【0035】
支持部材140の基板載置面141には、貫通孔142及びピン孔143の形成箇所以外の全周に亘って段差144が設けられている。段差144の深さや半径方向の幅は、基板130に搭載される素子等の配置や光学モジュール120の光路等を考慮して設定される。図2に示すように、段差144は、支持部材140の円筒形状内側において基板130との間に隙間Sを形成させる。これにより、当該隙間空間を利用して、基板130の外周端近傍まで光学モジュール120その他の素子等を配置することが可能となるので、基板130の有効面積を増大できる。また、隙間S内に素子等を位置させることができる結果、支持部材140の半径方向寸法を小型化することが可能となり、エンコーダ100ひいてはサーボモータSMを小型化できる。
【0036】
さらに、点光源121からの照射光は拡散光となるため、本実施形態のように光学モジュール120を支持部材140の内壁に近接して配置した場合、支持部材140の内壁が光路Lに干渉したり、内壁からの反射光や迷光等による受光アレイ123への影響が生じるおそれがあるが、本実施形態では段差144を設けることにより支持部材140の内壁と光学モジュール120とを離間させることができるので、上記干渉や影響を抑制し、検査精度や位置合わせ精度を向上することができる。
【0037】
支持部材140の外周面145は円筒状の曲面となっているが、この外周面145には少なくとも3つ(本実施形態では3)の平坦部146が設けられている。平坦部146は、その円周方向の両端が外周面145上に位置する長方形状の平面として構成されており、円周方向に略均等な間隔(本実施形態では120°間隔)で配置されている。この平坦部146は、支持部材140と図示しない固定治具との固定に用いられる。すなわち、本実施形態では、光学モジュール120とディスク110との位置合わせを行う際に、位置決めピン160により基板130と一体化された支持部材140を固定治具に固定し、当該固定治具を移動させつつ、光学モジュール120をディスク110に対し相対移動させる。位置合わせ終了後に固定ネジ150を締め付けて基板130及び支持部材140をハウジング10に固定し、その後、固定治具が取り外される。このように固定治具を用いることで、基板130及び支持部材140を押圧等により直接移動させる場合に比べて光学モジュール120の移動操作が容易となり、位置調整を容易化できる。このとき、支持部材140の外周面145に設けた3つの平坦部146に固定治具の固定部材(図示せず)を3方向から押し付けて固定することができる。これにより、支持部材140を固定治具に対し位置ずれしないように固定できる。また、支持部材140と固定部材との接触部分を曲面状でなく平面状とすることで、位置合わせ完了後の固定ネジ150の締め付けにより生じる、基板130及び支持部材140を回転させる方向に作用する力に抗することが可能となり、回転方向の位置ずれを防止できる。
【0038】
なお、平坦部146の数は、3以上であれば支持部材140の固定治具に対する位置ずれを防止できるため限定されるものではないが、4以上とすると平坦部146ひとつひとつの面積が減少すると共に支持部材140の肉厚が全体的に薄くなり、強度が十分でなくなるという問題がある。このため、本実施形態のように3とするのが好適であり、これにより各平坦部146の面積及び支持部材140の強度を確保できる。
【0039】
(2−5.オイルシール)
ディスク110とハウジング10との間には、ハウジング10を覆うようにオイルシール170が設けられている。図3に示すように、オイルシール170は、その中心部をシャフトSHが貫通しており、その外周部に半径方向外側に向けて突出した複数(本実施形態では3つ)の固定部171を有している。固定部171は、円周方向に略均等な間隔(本実施形態では120°間隔)で配置されており、各固定部171がビス161によりハウジング10に固定されている。オイルシール170とシャフトSHとは密着しており、ハウジング10に設けた軸受12のグリースがミスト化して飛散し、その一部がハウジング10とシャフトSHとの隙間からエンコーダ側に漏出しても、オイルシール170によりグリースの漏出を抑制し、エンコーダ100の信頼性を向上できる。
【0040】
また、オイルシール170は、図2に示すように、少なくともディスク110を間に挟んで点光源122に対応する位置にまで形成されている。そして、オイルシール170は、例えば黒色のゴムや樹脂等の光を吸収する材質で構成されている。なお、光を吸収する材質以外でも、例えば黒色あるいは光を吸収し易い彩色・パターンで塗装すれば、使用することが可能である。これにより、オイルシール170は、点光源122からの照射光(ディスク110を透過した透過光や散乱・反射光を含む)の少なくとも一部を吸収し、支持部材140の内部におけるハウジング10での光の散乱・反射を抑制することができる。その結果、散乱・反射光の受光アレイ122への影響を抑制できるので、エンコーダ100の検出精度を向上できる。
【0041】
<3.その他の構成>
図3に示すように、モータMのハウジング10のエンコーダ100が設けられる端面12には、支持部材140の外周面145と間隙Gを介して係合可能な複数(本実施形態では3つ。但し図3では2つのみ図示。)の円弧状の突起部13が設けられている。これにより、支持部材140をハウジング10に固定する際に支持部材140を突起部13に係合させることで、支持部材140を大まかに位置決めすることが可能となり、その後の位置調整を容易化できる。また、突起部13は支持部材140の外周面と間隙Gを介して係合するので、当該間隙Gの範囲内において、基板130と支持部材140とを例えば押圧により移動させて光学モジュール120をディスク110に対し相対移動させ、光学モジュール120とディスク110との位置合わせを行うことが可能である。このとき、突起部13は、支持部材140が移動し過ぎないようにストッパとしても機能する。
【0042】
なお、突起部13の数は3以外でもよく、また突起部13を円弧状でなく円環状に形成してもよい。また、突起部13を支持部材140の内周面と間隙を介して係合させるようにしてもよい。さらに、突起部13は、支持部材140の外周面又は内周面と係合可能であれば、本実施形態のように突起状でなくともよく、例えば段差部としてもよい。
【0043】
<4.光学モジュールとディスクとの位置合わせ手法の一例>
以上のような構成であるエンコーダ100をモータMに組み付けてサーボモータSMを製造する際には、前述したようにディスク110と光学モジュール120との高精度な位置調整が必要となる。ここでは、図4及び図5を用いて、この位置合わせを受光素子の受光信号を用いて行う手法の一例について説明する。
【0044】
なお、ここで説明するディスク110と光学モジュール120との位置合わせは、各固定ネジ150を基板130及び支持部材140に貫通させてハウジング10のネジ孔11に螺合させ、締め付けを行う前の状態で行われる。この状態では、前述したように、貫通孔131,142の内径と固定ネジ150の外径との寸法差の範囲内、且つ、突起部13と支持部材140の外周面との間隙Gの範囲内において、位置決めピン160により仮固定された基板130と支持部材140とを固定治具と共に一体的に移動させ、光学モジュール120をディスク110に対し相対移動させて光学モジュール120とディスク110との位置合わせを行うことが可能である。
【0045】
図4に示すように、ディスク110には、円周方向に沿って並べられた複数の反射スリット111を有するリング状のスリットアレイSAが形成されている。このスリットアレイSAの外周側及び内周側には、2本の同心円スリットCS1,CS2がディスク中心O周りに形成されている。この同心円スリットCS1,CS2は、後述する位置調整用受光素子124による出力を介して、ディスク110に対する光学モジュール120の位置調整に用いられる。同心円スリットCS1,CS2は、互いに同じ幅Wで、スリットアレイSAからの半径方向距離がほぼ等しくなるように形成されている。なお、同心円スリットCS1,CS2は、スリットアレイSAと同様に、光を透過又は吸収する材質のディスク110上に、例えば反射率の高い材質を蒸着するなどの方法により反射スリットが同心円状に形成されることにより、パターンニングされる。
【0046】
図5に示すように、光学モジュール120のディスク110に対向する側の面には、点光源121と、スリットアレイSAからの反射光を受光する複数の受光素子123を含む受光アレイ122L,122Rと、同心円スリットCS1からの反射光を受光する位置調整用受光素子124UL,124URと、同心円スリットCS2からの反射光を受光する位置調整用受光素子124Dとが設けられている。
【0047】
位置調整用受光素子124UL,124URは、ディスク110の半径方向において点光源121よりも外周側に配置され、位置調整用受光素子124Dは、点光源121よりも内周側に配置されている。位置調整用受光素子124UL,124URは、光学モジュール120の中心線Lcに対し軸対象となるように、配置されている。また、位置調整用受光素子124Dも同様に、中心線Lcを中心位置として軸対称となるように配置されている。なお、点光源121は中心線Lc上に配置されている。
【0048】
位置調整用受光素子124UL,124URは、ディスク110と光学モジュール120とが適正に位置決めされている場合において、点光源121より照射され同心円スリットCS1より反射された反射光の受光領域AR1(図5中ハッチングで示す)に半径方向の一部(この例では半径方向内側の一部)が重複し、残りの部分は重複しないように配置されている。また、位置調整用受光素子124Dも同様に、点光源121より照射され同心円スリットCS2より反射された反射光の受光領域AR2(図5中ハッチングで示す)に半径方向の一部(この例では半径方向外側の一部)が重複し、残りの部分は重複しないように配置されている。
【0049】
光学モジュール120がディスク110に対し適正に位置決めされた場合、図4に示すように、基板121の中心線Lcが、ディスク110の半径方向Lrに一致し(図5に示すθ方向の位置決め)、点光源121がスリットアレイSAの半径方向中央位置に対峙する(図5に示すR方向の位置決め)ように配置される。このときの位置調整用受光素子124UL,124UR,124Dは、各々の受光信号の出力が略等しくなるように設定されている。したがって、位置調整用受光素子124UL,124UR,124Dの出力が略等しくなるように固定治具を移動させることで、ディスク110と光学モジュール120とを高精度に位置合わせすることが可能である。
【0050】
<5.実施形態の効果の例>
以上説明した本実施形態のサーボモータSMによる効果を説明するために、比較例として、例えば基板130が複数の支柱により支持された構成を考える。この場合、出荷前のエンコーダ機能検査の際に外光が受光アレイ122で受光されてしまい、検査精度が低下するおそれがある。一方、外光を遮断するために、エンコーダを覆うエンコーダカバー101を取り付けた後に検査を行うことが考えられる。しかしながら、この場合にはカバーの取り付け作業が必要となる上に、異常が発見された場合には再度カバーを取り外して調整を行う等、カバーの着脱作業が生じてしまい、検査に手間を要することとなる。また、検査を暗室で行うことも考えられるが、この場合には暗室の用意やサーボモータの暗室への搬送等が必要となり、検査が大掛かりとなってしまう。
【0051】
これに対し、以上説明した本実施形態のサーボモータSMにおいては、光学モジュール120を設けた基板130が円筒状の支持部材140によって支持される。これにより、円筒状の支持部材140の両側の開口がモータMのハウジング10及び基板130によって閉塞された状態で、その内部において光学モジュール120をディスク110のスリットアレイSAと対向させることができる。その結果、エンコーダカバー101を取り付けたり、暗室を用いなくとも、受光アレイ122への外光の影響を抑制できるので、サーボモータSMの出荷前等に行われるエンコーダ100の機能検査を高精度且つ容易に行うことが可能となる。
【0052】
また、本実施形態では点光源121が使用され、その点光源121からの照射光がスリットアレイSAで反射されて受光アレイ122で受光される。そして、点光源121からの照射光は拡散光となり、かつ、点光源121からの光の直進性を利用することで、高精度な位置検出を可能とする。従って、平行光を使用するエンコーダや透過型のエンコーダに比べて、点光源121とスリットアレイSAと受光アレイ122との位置合わせ、すなわち、光学モジュール120とディスク110との位置合わせに高い精度が要求される。このような高精度な位置合わせは、図4及び図5を用いて説明したように、ディスク110に同心円スリットCS1,CS2を設けると共に光学モジュール120に位置調整用の受光素子124を設けておき、点光源121から照射され同心円スリットCS1,CS2で反射された光を位置調整用受光素子124で受光させて行う等、受光素子の受光信号を用いて行われる場合がある。このような反射型のエンコーダにおける点光源自らの発光を利用した位置合せは、透過型のエンコーダでは問題とならないような外光であったとしても影響を受け、その精度に影響を生じ得る。これに対して、本実施形態では、このような位置合わせを行う際に、位置調整用受光素子124への外光の影響を抑制できるので、光学モジュール120とディスク110との位置合わせを高精度に行うことが可能となる。
【0053】
また、本実施形態では点光源121と受光素子123をディスク110の一方側に配置した反射型のエンコーダとするので、光源と受光素子をディスクの両側に配置した透過型とする場合に比べてエンコーダ100を薄型化でき、サーボモータSMを小型化できる。さらに、本実施形態ではディスク110がシャフトSHに直接的に連結され、支持部材140がモータMのハウジング10に設けられた、いわゆるビルトイン型のエンコーダとするので、ディスク110がエンコーダ用シャフトに連結され、そのシャフトがカップリングを介してモータMのシャフトSHに連結される(この場合、支持部材はエンコーダのハウジングに設けられる)、いわゆるコンプリート型のエンコーダとする場合に比べ、部品点数の低減や小型化を図れ、且つ、カップリングによる共振等を防止できる効果もある。
【0054】
以上、添付図面を参照しながら本実施形態について詳細に説明した。しかしながら、これらの実施形態の例に限定されないことは言うまでもない。本実施形態の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内において、様々な変更や修正を行うことに想到できることは明らかである。従って、これらの変更後や修正後の技術も、当然に本実施形態の技術的範囲に属するものである。
【符号の説明】
【0055】
10 ハウジング
11 ネジ孔
13 突起部
100 エンコーダ
110 ディスク
111 反射スリット
120 光学モジュール
121 点光源
123 受光素子
130 基板
140 支持部材
141 基板載置面
142 貫通孔
143 ピン孔
144 段差
145 外周面
146 平坦部
150 固定ネジ
160 位置決めピン
170 オイルシール
M モータ
S 隙間
SH シャフト
SM サーボモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトを回転させるモータと、
前記シャフトの位置を検出するエンコーダと、を備え、
前記エンコーダは、
前記シャフトに連結され、複数の反射スリットが円周方向に沿って形成された円板状のディスクと、
前記反射スリットに光を照射する点光源、及び、前記点光源から照射され前記反射スリットで反射された光を受光する受光素子を備えた光学モジュールと、
前記光学モジュールが設けられる基板と、
前記モータのハウジングに固定され、前記ディスクを内部に収容しつつ、前記光学モジュールが前記反射スリットと対向するように前記基板を支持する、円筒状の支持部材と、を有する、サーボモータ。
【請求項2】
前記エンコーダは、
前記基板と前記支持部材の両方に挿入され、前記基板と前記支持部材の相対位置を位置決めする少なくとも2つの位置決めピンをさらに有し、
前記支持部材は、
前記位置決めピンが挿入される少なくとも2つのピン孔を、前記基板が載置される面に有する、請求項1に記載のサーボモータ。
【請求項3】
前記エンコーダは、
前記基板及び前記支持部材を前記シャフトの軸方向に貫通して前記ハウジングのネジ孔に螺合する少なくとも2つの固定ネジをさらに有し、
前記支持部材は、
前記固定ネジが貫通する少なくとも2つの貫通孔を有し、
前記貫通孔の内径は、前記固定ネジの外径よりも寸法が大きくなるように設定されている、請求項2に記載のサーボモータ。
【請求項4】
前記支持部材は、
前記基板が載置される面に、該支持部材の円筒形状内側において前記基板との間に隙間を形成させる段差を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のサーボモータ。
【請求項5】
前記支持部材は、
円周方向に略均等な間隔で配置された少なくとも3つの平坦部を外周面に有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のサーボモータ。
【請求項6】
前記ハウジングは、
前記支持部材の外周面又は内周面と間隙を介して係合可能な円環状又は円弧状の突起部又は段差部を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のサーボモータ。
【請求項7】
前記モータは、
中心部を前記シャフトが貫通し、外周部が前記ハウジングに固定されたオイルシールを有し、
前記オイルシールは、
少なくとも前記ディスクを間に挟んで前記点光源に対応する位置にまで形成され、該点光源からの照射された光の少なくとも一部を吸収する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のサーボモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−113660(P2013−113660A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258801(P2011−258801)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】