説明

サーマルプリンター

【課題】本発明は、保護層表面の凹凸を平滑化し、印刷物の光沢性を高めることができるサーマルプリンターの提供を目的とする。
【解決手段】本発明にかかるサーマルプリンターは、少なくとも色層11y、色層11m、色層11cと保護層11pとを有するインクリボン3と、インクリボン3を用いて印画紙であるペーパー4に印画を行うサーマルヘッド1と、サーマルヘッド1の動作を制御する制御部としての制御回路9とを備え、色層11y、色層11m、色層11cを転写したペーパー4上に保護層11pを転写し、さらに保護層11p表面にインクリボン3の所定領域を用いて熱を印加するように、制御回路9がサーマルヘッド1を動作させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサーマルプリンターに関し、特に、保護層を有するインクリボンを使用したサーマルプリンターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリンターにおいては、サーマルヘッドに熱が加わると、インクリボンの染料がペーパーに転写されて1ライン分の画像が形成される。指定のライン数だけ転写されると、サーマルヘッドとプラテンローラーとの圧接が解除され、インクリボンが巻き取られて次の色の頭出しが行われる。同様に複数の色層を順次転写して画像を形成した後、最後に、印画物の退色や傷付きを低減させる保護層を転写する。
【0003】
保護層の転写は上記動作で行われるが、転写時にサーマルヘッドの熱量が足りないと接着層が十分に接着しない。また逆に、サーマルヘッドからの熱量が多すぎると接着層とペーパーとが融着して、剥離層が剥離した時にペーパー表面の凹凸が大きくなり、表面の光沢性が失われる。
【0004】
剥離層表面の凹凸は基材の表面性にも影響されるため、安価で表面精度の低い基材を使用すると、剥離層の凹凸も大きくなりやすい。また、保護層を剥離する際のインクリボンの巻取りムラやサーマルヘッドの熱量の分布ムラに起因して、剥離層表面の凹凸が発生することもある。いずれも、光沢性低下の一因となる。
【0005】
サーマルプリンターは近年写真分野での使用が広がっているが、写真分野では表面の光沢性が求められることが多く、その目的のために様々な工夫がなされている。
【0006】
例えば特許文献1には、サーマルヘッドの表面段差を0.01μm未満にすることで、表面の熱拡散の不連続性が生じないようにして、保護層に与える熱量を均一にする技術が提案されている。
【0007】
また特許文献2には、熱溶融インク層を転写した後の凹凸を均一にするために、インク層が形成されていない樹脂層を設けたインクリボンを用いて再加熱及び再溶融することにより、インク層の凹凸を平滑化する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−224992号公報(第6−7頁)
【特許文献2】特開平10−315632号公報(第4−5頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
保護層を設けたインクリボンを用いたサーマルプリンターにおいて、ペーパー表面の光沢性は保護層表面の凹凸に影響されるため、光沢性を向上させるためには保護層表面の凹凸を平滑化する必要がある。しかし従来は、基材の表面性や剥離ムラに起因して生じる、保護層表面の凹凸の平滑化については考慮されていなかった。
【0010】
例えば特許文献1においては、サーマルヘッドの熱量分布は均一化されるが、基材の表面性や剥離ムラに起因して生じる保護層表面の凹凸を平滑化するには十分でなかった。
【0011】
また特許文献2においては、熱溶融インク層の凹凸を平滑にするため、再加熱及び再溶融を行っているが、基材の表面性や剥離ムラに起因して生じる保護層表面の凹凸を平滑化するには十分でなかった。
【0012】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、保護層表面の凹凸を平滑化し、印刷物の光沢性を高めることができるサーマルプリンターの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明にかかるサーマルプリンターは、少なくとも色層と保護層とを有するインクリボンと、前記インクリボンを用いて、印画紙に印画を行うサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドの動作を制御する制御部とを備え、前記色層を転写した前記印画紙上に前記保護層を転写し、さらに前記保護層表面に前記インクリボンの所定領域を用いて熱を印加するように、前記制御部が前記サーマルヘッドを動作させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかるサーマルプリンターによれば、少なくとも色層と保護層とを有するインクリボンと、前記インクリボンを用いて、印画紙に印画を行うサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドの動作を制御する制御部とを備え、前記色層を転写した前記印画紙上に前記保護層を転写し、さらに前記保護層表面に前記インクリボンの所定領域を用いて熱を印加するように、前記制御部が前記サーマルヘッドを動作させることにより、保護層表面の凹凸を平滑化し、印刷物の光沢性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1にかかるサーマルプリンターの概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1にかかるインクリボンの構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1にかかるサーマルプリンターの動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態1にかかる光沢度に対する熱量の影響を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1にかかる光沢度に対する繰り返し回数の影響を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態2にかかるサーマルプリンターの動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態2にかかるインクリボンの構成を示す図である。
【図8】前提技術にかかるインクリボンを示す図である。
【図9】前提技術にかかるサーマルプリンターの概略構成を示す図である。
【図10】前提技術にかかるインクリボンの、保護層の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図8は、本発明の前提技術となるサーマルプリンターで使用する、インクリボンを示したものである。図8に示すインクリボンは、3色以上の色層21a、色層21b、色層21c及び保護層21dの領域が繰り返される構成であり、各色層の先頭に形成された頭出しマーク22を、サーマルプリンターに設けられた検知センサーで検知することで各色層の頭出しを行う。
【0017】
図9は、本発明の前提技術となるサーマルプリンターの概略機構を示したものである。印画動作を行う時には、駆動モーター35aが巻取り部35を駆動して、供給部36からインクリボン33を巻き取る。
【0018】
インクリボン33上の頭出しマーク22を、サーマルプリンターに設けた検知センサー37で検知すると、サーマルヘッド31とプラテンローラー32とが圧接して、インクリボン33とペーパー34とを挟持する。
【0019】
サーマルヘッド31に熱が加わると、インクリボン33の染料がペーパー34に転写されて1ライン分の画像が形成される。指定のライン数だけ転写されると、サーマルヘッド31とプラテンローラー32との圧接が解除され、インクリボン33が巻取り部35に巻き取られて次の色の頭出しが行われる。
【0020】
同様に3色以上の色層21a、色層21b、色層21cを順次転写して画像を形成した後、最後に保護層21dを転写する。
【0021】
図10は、保護層21dの構成の一例を示したインクリボン33の断面図である。図10に示すように、基材42上においてサーマルヘッド31と接触する側に、背面41が塗布されている。背面41は、サーマルヘッド31と基材42との融着を防ぎ、潤滑にインクリボン33を搬送させる役割をもつ。
【0022】
ペーパー34と接触する側には保護層21dが塗布されており、保護層21dは印画物の退色や傷付きを低減させる効果がある。さらに保護層21dは、ペーパー34と接触する側の接着層44と、接着層44と基材42とに挟まれた剥離層43とで構成されており、一定の熱量を与えることで接着層44がペーパー34に接着する。十分接着した後にインクリボン33を巻き取ると、剥離層43が基材42から剥離し、ペーパー34の上に保護層21dが形成される仕組みとなっている。
【0023】
保護層21dの転写は上記動作で行われるが、転写時にサーマルヘッド31の熱量が足りないと接着層44が十分に接着しない。また逆に、サーマルヘッド31からの熱量が多すぎると接着層44とペーパー34とが融着して、剥離層43が剥離した時にペーパー34表面の凹凸が大きくなり、表面の光沢性が失われる。
【0024】
剥離層43表面の凹凸は基材42の表面性にも影響されるため、安価で表面精度の低い基材42を使用すると、剥離層43の凹凸も大きくなりやすい。また、保護層21dを剥離する際のインクリボン33の巻取りムラやサーマルヘッド31の熱量の分布ムラに起因して、剥離層43の凹凸が発生することもある。いずれも、光沢性低下の一因となる。
【0025】
以上のような問題を解決し、印画表面の光沢性を向上させることができるサーマルプリンターを、以下の実施の形態に示す。
【0026】
<A.実施の形態1>
<A−1.構成>
本発明の実施の形態1にかかるサーマルプリンターについて説明する。図1は本発明の実施の形態1によるサーマルプリンターの概略構成を示す図である。
【0027】
図1に示すようにサーマルプリンターは、印画動作を行う時には、駆動モーター5aが巻取り部5を駆動して、供給部6からインクリボン3を巻き取る。
【0028】
インクリボン3上の頭出しマークを、サーマルプリンターに設けた検知センサー7で検知すると、サーマルヘッド1とプラテンローラー2とが圧接して、インクリボン3とペーパー4とを挟持する。
【0029】
サーマルヘッド1に熱が加わると、インクリボン3の染料がペーパー4に転写されて1ライン分の画像が形成される。指定のライン数だけ転写されると、サーマルヘッド1とプラテンローラー2との圧接が解除され、インクリボン3が巻取り部5に巻き取られて次の色の頭出しが行われる。また、供給部6を逆回転させインクリボン3を巻き取るための駆動モーター6aが備えられる。
【0030】
駆動モーター5a及び駆動モーター6aに加えてサーマルヘッド1は、制御回路9によってそれぞれ制御することができる。制御回路については、図に示すような統一されたものであってもよいし、それぞれが別の制御回路をもっていてもよい。
【0031】
インクリボン3の構成を図2について説明する。インクリボン3にはイエローの色層11y、マゼンタの色層11m、シアンの色層11c、印刷物の耐久性を高めるための保護層11pが順次塗布されている。ただし、塗布される順序については、当該順序に限られるものではない。また、色層の数も当該記載に限られるものではない。さらに、保護層11pの後には平滑化領域11hを設けることができる。
【0032】
各層及び領域の先頭部分には、それぞれ頭出しマーク12y、頭出しマーク12m、頭出しマーク12c、頭出しマーク12p、頭出しマーク12hが、図に示すように設けられている。
【0033】
ここで平滑化領域11hは、保護層11pと融着しない成分で構成されることが望ましい。またインクリボン3の基材42(図10参照)が保護層11pと融着しなければ、何も塗布しない構成としてもよい。
【0034】
<A−2.動作>
本実施の形態1によるサーマルプリンターの動作を、図3について以下に説明する。
【0035】
印画データがサーマルプリンターに送られる(ステップS1)と、制御回路9が駆動モーター5aを動作させ、巻取り部5にインクリボン3を巻き取らせる(ステップS2)。
【0036】
イエローの頭出しマーク12yを検知センサー7で検知する(ステップS3)と、制御回路9が駆動モーター5aを停止させインクリボン3の巻取りを停止し、サーマルヘッド1とプラテンローラー2とを圧接させる。
【0037】
インクリボン3とペーパー4とを1ラインずつ駆動させながら、サーマルヘッド1で画像データに応じた熱をインクリボン3に与えて、イエロー染料をペーパー4に熱転写することで、イエローのデータを印画する(ステップS4)。
【0038】
イエローの印画が終了する(ステップS5)と、ペーパー4の巻き戻し(ステップS6)を行うとともにインクリボン3を巻取り(ステップS7)、インクリボン3においてマゼンタの色層11mの頭出しを行う。
【0039】
マゼンタの頭出しマーク12mを検知センサー7で検知する(ステップS8)と、制御回路9が駆動モーター5aを停止させインクリボン3の巻取りを停止し、サーマルヘッド1とプラテンローラー2とを圧接させ、イエローの印画と同様にマゼンタのデータを印画する(ステップS9)。マゼンタの印画が終了したら(ステップS10)、シアンの印画及び保護層11pの印画についても、同様の動作を行う(ステップS11)。
【0040】
保護層11pの印画が終了すると、ペーパー4の巻き戻し(ステップS12)を行うとともにインクリボン3を巻取り(ステップS13)、インクリボン3において平滑化領域11hの頭出しを行う。
【0041】
平滑化領域11hの頭出しマーク12hを検知センサー7で検知する(ステップS14)と、制御回路9が駆動モーター5aを停止させインクリボン3の巻取りを停止し、サーマルヘッド1とプラテンローラー2とを圧接させる。
【0042】
インクリボン3とペーパー4とを1ラインずつ駆動させながら、サーマルヘッド1で、予め試験で求められた適度な熱量をインクリボン3に与えることで、ペーパー4の表面に転写された保護層11pの凹凸を平滑化する(ステップS15)。
【0043】
平滑化領域11hの長さが印画長さよりも長い場合は、インクリボン3とペーパー4とを印画長さまで駆動させることで、1回の平滑化動作を終了する(ステップS16)。
【0044】
1回の平滑化動作で所定の光沢性が得られる場合(ステップS17)は、ペーパー4を排出して印画動作を終了する(ステップS18)。
【0045】
1回の平滑化動作で所定の光沢性が得られない場合(ステップS17)は、ペーパー4の巻き戻し(ステップS19)を行うとともに、駆動モーター6aを動作させてインクリボン3を巻き戻す(ステップS20)。
【0046】
そして平滑化領域11hの頭出しマーク12hを検知センサー7で検知する(ステップS14)と、制御回路9が駆動モーター6aを停止させインクリボン3の巻取りを停止し、サーマルヘッド1とプラテンローラー2とを圧接して平滑化動作を再び行う(ステップS15)。平滑化動作を、予め試験等で求められた所定の回数、又は所定の光沢性が得られるまで繰り返し行った後、ペーパー4を排出して印画動作を終了する(ステップS18)。
【0047】
平滑化領域11hの長さが印画長さよりも短い場合は、平滑化領域11hの長さだけ駆動させた後に、サーマルヘッド1とプラテンローラー2との圧接を解除する。そして、ペーパー4は動作させずに駆動モーター6aを動作させて、インクリボン3のみの巻き戻しを行う。
【0048】
平滑化領域11hの頭出しマーク12hを検知センサー7で検知すると、インクリボン3を停止させてサーマルヘッド1とプラテンローラー2とを圧接し、平滑化動作を行う。ペーパー4が印画長さ分送られるまで本動作を繰り返し、1回の動作とすればよい。
【0049】
平滑化動作時のサーマルヘッド1の熱量について試験した一例を図4に示す。図4における横軸は熱量で、縦軸は光沢度を示している。熱量が大きすぎると表面の凹凸が大きくなるため、光沢度が低下することが分かる。よって、熱量を適度な量に設定することが必要であることが分かる。
【0050】
また、平滑化動作の繰り返し回数について試験した一例を図5に示す。図5において横軸は動作回数で、縦軸は光沢度を示している。繰り返し回数が多くなるにつれて平滑化が進み、印刷物の光沢性が向上していることが分かる。
【0051】
本実施の形態1によれば、保護層11pを印画した後に繰り返し適度な熱量をかける平滑化動作を行うことで、印刷物の光沢性を向上することが可能になる。
【0052】
<A−3.効果>
本発明にかかる実施の形態によれば、サーマルプリンターにおいて、少なくとも色層11y、色層11m、色層11cと保護層11pとを有するインクリボン3と、インクリボン3を用いて印画紙であるペーパー4に印画を行うサーマルヘッド1と、サーマルヘッド1の動作を制御する制御部としての制御回路9とを備え、色層11y、色層11m、色層11cを転写したペーパー4上に保護層11pを転写し、さらに保護層11p表面にインクリボン3の所定領域を用いて熱を印加するように、制御回路9がサーマルヘッド1を動作させることで、基材42の表面性や剥離ムラに起因して生じる保護層11p表面の凹凸を平滑化し、印刷物の光沢性を高めることができる。
【0053】
また、保護層11p表面の平滑化を行うので、保護層11pによって印刷物の退色や傷つき等を防ぎつつ、光沢性を高めることができる。
【0054】
また、本発明にかかる実施の形態によれば、サーマルプリンターにおいて、インクリボン3は、平滑化領域11hをさらに有することで、保護層11pを平滑化するために当該領域を利用することができる。
【0055】
また、本発明にかかる実施の形態によれば、サーマルプリンターにおいて、平滑化領域11hが、保護層11pと融着しない成分で構成されることで、保護層11p上を適切に平滑化することができる。
【0056】
また、本発明にかかる実施の形態によれば、サーマルプリンターにおいて、保護層11p上に熱を印加する動作を、予め定められた回数繰り返すように、制御回路9がサーマルヘッド1を動作させることで、光沢度が高まる所定の回数まで平滑化動作を繰り返し、効果的に平滑化を行うことができる。
【0057】
<B.実施の形態2>
<B−1.構成>
本実施の形態2によるサーマルプリンターの概略構成は実施の形態1と同様であるため、詳細な説明は省略し、インクリボン30の構成における相違点のみを説明する。
【0058】
インクリボン30の構成を図7について説明する。インクリボン30にはイエローの色層11y、マゼンタの色層11m、シアンの色層11c、印刷物の耐久性を高めるための保護層11pが順次塗布されている。ただし、塗布される順序については、当該順序に限られるものではない。また、色層の数も当該記載に限られるものではない。
【0059】
各層及び領域の先頭部分には、それぞれ頭出しマーク12y、頭出しマーク12m、頭出しマーク12c、頭出しマーク12pが、図に示すように設けられている。
【0060】
<B−2.動作>
本実施の形態2によるサーマルプリンターの動作を、図6について以下に説明する。
【0061】
イエローの印画動作から保護層の印画動作までは、実施の形態1のサーマルプリンターと同様であるので、詳細な説明を省略する(ステップS1〜ステップS11)。
【0062】
保護層11pの印画が終了すると、ペーパー4の巻き戻し(ステップS21)を行うとともに駆動モーター6aを動作させてインクリボン30を巻き戻す(ステップS22)。
【0063】
既に印画を終了している保護層11pの頭出しマーク12pを検知センサー7で再び検知する(ステップS23)と、制御回路9が駆動モーター6aを停止させインクリボン30の巻取りを停止し、サーマルヘッド1とプラテンローラー2とを圧接する。
【0064】
インクリボン30とペーパー4とを1ラインずつ駆動させながら、サーマルヘッド1で適度な熱をインクリボン30に与えることで、ペーパー4の表面に転写された保護層11pの凹凸を平滑化する(ステップS24)。すなわち、平滑化領域を別途設けることなく、インクリボン30における保護層11pが転写された後の領域を、平滑化動作に用いることができる。ここで保護層11pが転写された後の領域は、例えば図9に示す基材42であるが、当該領域は、剥離した保護層11pと再び融着しない成分で構成されることが望ましい。インクリボン30とペーパー4とを印画長さまで駆動させることで、1回の平滑化動作を終了する(ステップS25)。
【0065】
1回の平滑化動作で所定の光沢性が得られる場合(ステップS26)は、ペーパー4を排出して印画動作を終了する(ステップS27)。
【0066】
1回の平滑化動作で所定の光沢性が得られない場合(ステップS26)は、ペーパー4の巻き戻し(ステップS21)を行うとともに、駆動モーター6aを動作させてインクリボン30を巻き戻す(ステップS22)。
【0067】
そして保護層11pの頭出しマーク12pを検知センサー7で検知する(ステップS23)と、制御回路9が駆動モーター6aを停止させインクリボン30の巻取りを停止し、サーマルヘッド1とプラテンローラー2とを圧接して平滑化動作を再び行う(ステップS24)。平滑化動作を、予め試験等で求められた所定の回数、又は所定の光沢性が得られるまで繰り返し行った後、ペーパー4を排出して印画動作を終了する(ステップS27)。
【0068】
本実施の形態2によれば、保護層11pの後に平滑化領域11h(図2参照)を設ける必要がなく、安価なインクリボンを用いて光沢性を向上することが可能になる。
【0069】
実施の形態1及び2においては、頭出しマークを設けたインクリボンについて説明したが、例えばイエロー以外の領域には頭出しマークを設けずに、駆動モーターにステッピングモーターを使用する構成や、駆動モーターにエンコーダーを設ける構成とすることも可能である。このような場合、駆動パルスを制御することにより各領域の頭出しを行うことができる。また、各色層の先頭をカラーセンサーで検知する構成としてもよい。
【0070】
また、印画物の一部だけ光沢性を向上したい場合には、印画長さに応じた長さを平滑化せずに、必要な領域だけに対して上記の平滑化動作をさせてもよい。
【0071】
また実施の形態1及び2においては、予め試験で求められた回数、又は所定の光沢性が得られるまで繰り返し動作させる構成としたが、プリンター内部に測定部としての光沢度測定装置をつけることで、所定の光沢度に到達したかを判断させ、その所定の光沢度となるまで平滑化動作を繰り返すように制御することもできる。本構成によれば、確実に所定の光沢度を得ることが可能となる。
【0072】
<B−3.効果>
本発明にかかる実施の形態によれば、サーマルプリンターにおいて、保護層11pを転写した後の領域で平滑化を行うことで、インクリボンに別途、平滑化動作に用いる領域を設ける必要がないため、通常のインクリボンを使用して、より安価な構成とすることができる。
【0073】
また、本発明にかかる実施の形態によれば、サーマルプリンターにおいて、ペーパー4表面の光沢度を測定する測定部としての光沢度測定装置をさらに備え、光沢度が所定値以上となるまで、保護層11p上に熱を印加する動作を繰り返すように、制御回路9がサーマルヘッド1を動作させることで、光沢度を測定しながら平滑化動作を繰り返すことができ、確実に所定の光沢度を達成することが可能となる。
【符号の説明】
【0074】
1,31 サーマルヘッド、2,32 プラテンローラー、3,30,33 インクリボン、4,34 ペーパー、5,35 巻取り部、5a,6a,35a 駆動モーター、6,36 供給部、7,37 検知センサー、9 制御回路、11c,11m,11y,21a〜21c 色層、11p,21d 保護層、11h 平滑化領域、12c,12h,12m,12p,12y,22 頭出しマーク、41 背面、42 基材、43 剥離層、44 接着層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも色層と保護層とを有するインクリボンと、
前記インクリボンを用いて、印画紙に印画を行うサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドの動作を制御する制御部とを備え、
前記色層を転写した前記印画紙上に前記保護層を転写し、さらに前記保護層表面に前記インクリボンの所定領域を用いて熱を印加するように、前記制御部が前記サーマルヘッドを動作させることを特徴とする、
サーマルプリンター。
【請求項2】
前記所定領域が、前記保護層を転写した後の領域であることを特徴とする、
請求項1に記載のサーマルプリンター。
【請求項3】
前記インクリボンは、平滑化領域をさらに有し、
前記所定領域が、前記平滑化領域であることを特徴とする、
請求項1に記載のサーマルプリンター。
【請求項4】
前記所定領域が、前記保護層と融着しない成分で構成されることを特徴とする、
請求項1〜3のいずれかに記載のサーマルプリンター。
【請求項5】
前記印画紙表面の光沢度を測定する測定部をさらに備え、
前記光沢度が所定値以上となるまで、前記保護層上に熱を印加する動作を繰り返すように、前記制御部が前記サーマルヘッドを動作させることを特徴とする、
請求項1〜4のいずれかに記載のサーマルプリンター。
【請求項6】
前記インクリボンが、3色以上の前記色層を有することを特徴とする、
請求項1〜5のいずれかに記載のサーマルプリンター。
【請求項7】
前記保護層上に熱を印加する動作を、予め定められた回数繰り返すように、前記制御部が前記サーマルヘッドを動作させることを特徴とする、
請求項1〜6のいずれかに記載のサーマルプリンター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−224054(P2012−224054A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95872(P2011−95872)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】