説明

サーマルプリンタ装置

【課題】
印刷手段の上流側、及び下流側の両方に記録用紙の搬送手段を配置して、記録用紙の端部に余白部のない印刷を可能とするサーマルプリンタ装置において、プリンタ装置を小型化すること。
【解決手段】
印刷手段23の上流側、及び下流側の両方に記録用紙3の搬送手段9、12を配置し、記録用紙3の印刷始端側の前半印刷領域を印刷する際には、上流側搬送手段9で用紙搬送を行い、記録用紙3の印刷終端側の後半印刷領域を印刷する際には、下流側搬送手段12で用紙搬送を行うことで、記録用紙3の全面に余白部のない印刷を可能とするサーマルプリンタ装置において、上流側紙搬送ローラ44、及び下流側紙搬送ローラ47の片端部に配置する上流側紙搬送ローラ歯車43、及び下流側紙搬送ローラ歯車46に、回転駆動源40から駆動伝達手段を介し、回転駆動を可能とする駆動伝達歯車B42が同時に噛合うように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルプリンタ装置に関し、特に、サーマルヘッドを印刷手段としてもつサーマルプリンタ装置の駆動歯車列に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のサーマルプリンタを、熱昇華型プリンタを例に説明する。
【0003】
まず、印刷手段について説明する。記録用紙の印刷面上に、インクリボン、サーマルヘッドが配置され、記録用紙背面側にプラテンローラが構成されている。記録用紙に所望の画像を印刷する際には、サーマルヘッドをプラテンローラに圧接し、サーマルヘッド上にライン状で並列された複数の発熱素子を、画像情報に基づき選択的に発熱させ、インクリボン上のインクを昇華させて記録用紙に転写する。
【0004】
記録用紙の搬送手段については、自駆動して記録用紙の搬送を行う紙搬送ローラと、この紙搬送ローラと並列して設けられ、あるテンションで紙搬送ローラを押圧する紙押えローラとの挟持搬送により紙送りされる。
【0005】
この搬送手段は、前記印刷手段の上流側か下流側のどちらかに配置され、記録用紙に印刷を行う際には、常に前記搬送手段に記録用紙が挟持された状態で印刷が行われる。カラー印刷を行う場合は、記録用紙1回の搬送で1色毎の印刷が行われ、紙搬送ローラの正逆回転駆動により、記録用紙に異なる色のインクを重ね印刷し、カラー画像を形成する。
【0006】
しかし、こういった従来のプリンタ方式では前述した通り、印刷を行なう際は常に記録用紙を搬送手段に挟持させておく必要があり、この為に、記録用紙の印刷始端部付近、もしくは印刷終端部付近を印刷することができず、余白部が発生する問題があった。
【0007】
こういった問題を解決するために、印刷手段の上流側、及び下流側の両方に記録用紙の搬送手段を配置し、記録用紙の印刷始端側の前半印刷領域を印刷する際には、記録用紙搬送方向の上流側に配置している搬送手段を用いて記録用紙の搬送を行い、記録用紙の印刷終端側の後半印刷領域を印刷する際には、記録用紙搬送方向の下流側に配置している搬送手段を用いて記録用紙の搬送を行うプリンタ方式をとることで、記録用紙に余白部のない印刷をすることが可能となる。
【0008】
以下、前述した余白部なしのプリンタ装置の印刷方法について添付の図面に沿って説明する。
【0009】
図1は、プリンタ装置の断面図である。図1において、コンピュータ、及びデジタルカメラ等のデジタル機器からプリンタ装置1に接続ケーブル等を介し画像情報が転送されると、プリンタ装置1側で印刷動作が開始する。まず、印画紙トレイ2内に収納される記録用紙3が、上下板軸4を中心に駆動する上下板5により、回転運動している給排紙ローラ6に圧接され、プリンタ装置1内に搬送される。
【0010】
搬送された記録用紙3は、回転駆動する上流側紙搬送ローラ7と、回転自由に支持される上流側紙押えローラ8で構成される上流側搬送手段9、及び、回転駆動する下流側紙搬送ローラ10と、回転自由に支持される下流側紙押えローラ11で構成される下流側搬送手段12による挟持搬送により、上流側へと搬送を続ける。
【0011】
記録用紙3の印刷始端部が、記録用紙先端検知センサ13まで搬送されると、プリンタ装置1の指令により上流側搬送手段9、下流側搬送手段12の搬送駆動は停止する。
【0012】
尚、記録用紙3がプリンタ装置1内に搬送されてからこれまでの過程で、サーマルヘッド14とプラテンローラ15間には、記録用紙3が搬送できる程度の隙間が確保されている。
【0013】
次に、プリンタ装置1の指令により、上流側搬送手段9、下流側搬送手段12は、これまで記録用紙3を搬送してきた方向とは逆向き(矢印D方向)に記録用紙3を搬送し始める。記録用紙3の印刷始端部が、サーマルヘッド14上の発熱素子列16まで搬送されると、記録用紙3は停止する。サーマルヘッド14が、ヘッドアーム軸17を支点としてプラテンローラ15寄りに移動を始め、インクリボン18及び記録用紙3をプラテンローラ15に圧接する。図2はこの圧接状態を示す。尚、プラテンローラ15は、プリンタ装置1に回転自由に支持されている。
【0014】
次に、記録用紙3への印刷動作が開始する。サーマルヘッド14上の発熱素子列16に、画像情報に基づいた通電を開始し、記録用紙3にインクリボン18上のインクを転写し始める。それと同時に、上流側搬送手段9による下流方向への記録用紙3の搬送が開始し、また、インクリボン巻取部19によるインク転写済みリボンの巻取動作が開始する(図2参照)。
【0015】
下流側に搬送を続ける記録用紙3の印刷始端部が、下流側搬送手段12に到達、上流側搬送手段9と下流側搬送手段12にて記録用紙3の搬送が行なわれるようになる。
【0016】
上流側及び下流側搬送手段9、12にて搬送された記録用紙3は、サーマルヘッド14上の発熱素子列16を通過するまで搬送され、その後、上流側、下流側搬送手段9、12の回転駆動、及びインクリボン18の巻取動作を停止し、1色目の印画動作が終了する。
【0017】
ここまでの動作を数回繰り返し行なう事で、記録用紙3に異なる色のインクを重ね印刷し、カラー画像を形成していく。カラー画像を形成した後、記録用紙3はフラップ21にて排出経路を辿り、回転運動する給排紙ローラ6と排紙押えローラ22の挟持搬送により、印画紙トレイ2上に排出され、一連の印刷動作を終了する。
【0018】
記録用紙の全面にカラー画像を形成するものは特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開平10−217516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
前述したような余白部なしのプリンタ方式は、上流側と下流側に配置した二つの紙搬送ローラを回転駆動させるために、単純に一駆動源から一列の歯車列を構成して二つの紙搬送ローラを駆動しようとすると、図3に示すような歯車配列になる。
【0020】
図3の歯車列について簡単に説明する。
【0021】
回転駆動源30から駆動伝達歯車A31、B32を介し、伝えられた駆動力は、上流側紙搬送ローラ歯車33に伝達され、上流側紙搬送ローラ歯車33と結合する上流側紙搬送ローラ34を回転させる。上流側紙搬送ローラ歯車33に伝達された駆動力は、さらに中継歯車39を介し、下流側紙搬送ローラ歯車36へと伝達され、下流側紙搬送ローラ歯車36と結合する下流側紙搬送ローラ37を回転させる。
【0022】
このような歯車列は、前述した通り回転駆動源30から下流側紙搬送ローラ歯車36まで一列の歯車列で構成されるため、使用する歯車数が多くなり、プリンタ装置自体の小型化を困難としていた。
【0023】
現在のサーマルプリンタ装置は、モバイル型のものが市場で多く存在し、より小型化することがユーザーから期待されているため、前述した歯車列に代わる、プリンタ装置の小型化に適した歯車構成が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0024】
前述した問題を解決するための手段として、印刷手段の上流側、及び下流側の両方に記録用紙の搬送手段を配置し、記録用紙の印刷始端側の前半印刷領域を印刷する際には、記録用紙搬送方向の上流側に配置している搬送手段を用いて記録用紙の搬送を行い、記録用紙の印刷終端側の後半印刷領域を印刷する際には、記録用紙搬送方向の下流側に配置している搬送手段を用いて記録用紙の搬送を行うプリンタ装置において、前述する各搬送手段の構成を、片端部に歯車を配置する紙搬送ローラと、並設する紙押えローラとの挟持搬送から成るようにし、記録用紙搬送方向の上流側及び下流側に配置する紙搬送ローラの片端部に設ける各歯車に、回転駆動源から駆動伝達手段を介し、回転駆動を可能とする駆動歯車が、同時に係合するように配置する構成とした。
【発明の効果】
【0025】
以上述べたように、本発明のプリンタ装置は、印刷手段の上流側、及び下流側の両方に記録用紙の搬送手段を配置し、記録用紙の印刷始端側の前半印刷領域を印刷する際には、記録用紙搬送方向の上流側に配置している搬送手段を用いて記録用紙の搬送を行い、記録用紙の印刷終端側の後半印刷領域を印刷する際には、記録用紙搬送方向の下流側に配置している搬送手段を用いて記録用紙の搬送を行うプリンタ装置において、前述する各搬送手段の構成を、片端部に歯車を配置する紙搬送ローラと、並設する紙押えローラとの挟持搬送から成るようにし、記録用紙搬送方向の上流側及び下流側に配置する紙搬送ローラの片端部に設ける各歯車に、回転駆動源から駆動伝達手段を介し、回転駆動を可能とする駆動歯車が、同時に係合するように配置することで、前述した図3に示す従来の歯車列よりも、配置する歯車数を減らすことができ、歯車列をコンパクト化できることから、プリンタ装置自体の小型化に効果的であり、また同時に歯車数が減ることによるコストダウン効果も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明のプリンタ装置の歯車配列を、図4に沿って説明する。
【0027】
回転駆動源40から駆動伝達歯車A41を介し、伝えられた駆動力は、回転自由に配置される駆動伝達歯車B42に伝達される。
【0028】
回転駆動する駆動伝達歯車B42は、上流側紙搬送ローラ歯車43、及び下流側紙搬送ローラ歯車46の二つの歯車に駆動力を伝達し、上流側紙搬送ローラ歯車43に結合する上流側紙搬送ローラ44、及び、下流側紙搬送ローラ歯車46に結合する下流側紙搬送ローラ47を同時に回転させる。
【0029】
このような歯車配列をとることで、図3に示す従来の歯車列に使用する中継歯車39が不要となり、歯車列をコンパクト化できることから、プリンタ装置自体の小型化に効果的であり、また同時に歯車数が減ることによるコストダウン効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、本発明に関するプリンタ装置の構成を説明する側面図である。
【図2】図2は、本発明に関するプリンタ装置の構成を説明する側面図である。
【図3】図3は、従来のプリンタ装置の駆動歯車列を説明する斜視図である。
【図4】図4は、本発明に関するプリンタ装置の駆動歯車列を説明する斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1 プリンタ装置
2 印画紙トレイ
3 記録用紙
4 上下板軸
5 上下板
6 給排紙ローラ
7 上流側紙搬送ローラ
8 上流側紙押えローラ
9 上流側搬送手段
10 下流側紙搬送ローラ
11 下流側紙押えローラ
12 下流側搬送手段
13 記録用紙先端検知センサ
14 サーマルヘッド
15 プラテンローラ
16 発熱素子列
17 ヘッドアーム軸
18 インクリボン
19 インクリボン巻取部
20 インクリボン供給部
21 フラップ
22 排紙押えローラ
23 印刷手段
30 回転駆動源
31 駆動伝達歯車A
32 駆動伝達歯車B
33 上流側紙搬送ローラ歯車
34 上流側紙搬送ローラ
35 上流側紙押えローラ
36 下流側紙搬送ローラ歯車
37 下流側紙搬送ローラ
38 下流側紙押えローラ
39 中継歯車
40 回転駆動源
41 駆動伝達歯車A
42 駆動伝達歯車B
43 上流側紙搬送ローラ歯車
44 上流側紙搬送ローラ
45 上流側紙押えローラ
46 下流側紙搬送ローラ歯車
47 下流側紙搬送ローラ
48 下流側紙押えローラ





【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーマルヘッドを印刷手段としてもつサーマルプリンタ装置において、前記印刷手段に記録用紙を搬送する搬送手段を、前記記録用紙が搬送可能なように二列並設し、その並設した前記搬送手段に挟まれた領域に、前記印刷手段を配置するものとし、前記記録用紙の印刷始端側の前半印刷領域を印刷する際には、前記記録用紙搬送方向の上流側に配置する前記搬送手段を用いて記録用紙の搬送を行い、前記記録用紙の印刷終端側の後半印刷領域を印刷する際には、前記記録用紙搬送方向の下流側に配置する前記搬送手段を用いて記録用紙の搬送を行うプリンタ装置において、前記各搬送手段の構成を、片端部に歯車を配置する紙搬送ローラと、並設する紙押えローラとの挟持搬送から成るようにし、前記記録用紙搬送方向の上流側及び下流側に配置する前記紙搬送ローラの片端部に設ける前記各歯車に、回転駆動源から駆動伝達手段を介し、回転駆動を可能とする駆動歯車が、同時に係合するように配置したことを特徴とするサーマルプリンタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−306542(P2006−306542A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−128965(P2005−128965)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】