説明

サーマルプリンタ

【課題】両面印字および片面印字を行うことのできるサーマルプリンタを提案すること。
【解決手段】両面サーマルプリンタ1は、ロール紙収納部4の開閉蓋3が取り付けられている第1アーム31と、これに一緒に開閉する第2アーム32を備えている。第1アーム31に第1プラテンローラ21が搭載され、第2アーム32に第2サーマルヘッド12が搭載され、プリンタ本体フレーム30に第1サーマルヘッド11と第2プラテンローラ22が搭載されている。開閉蓋3を閉じると、まず第2アーム32の第2サーマルヘッド12が第2プラテンローラ22に押し付けられ、次に、第1アーム31の第1プラテンローラ21が第1サーマルヘッド11に押し付けられ、両面サーマル紙6を弛みの無い状態でセットできる。第1アームの第1プラテンローラ21のみを第1サーマルヘッド11に押し付け可能であり、紙送り負荷を小さくして片面印字を高速で行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面サーマル紙の表面および裏面に印字を行うことができるように、サーマル紙搬送方向に沿って2組のサーマルヘッドおよびプラテンローラが配置されているサーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
両面に感熱面が形成された両面サーマル紙に印字を行うサーマルプリンタが特許文献1に開示されている。ここに開示のサーマルプリンタでは、第1アームに第1ヘッドおよび第1プラテンが搭載され、プリンタ本体側の第2アームに、第1ヘッドが対峙する第2プラテンと第1プラテンが対峙する第2ヘッドが搭載された構成となっている。両面サーマル紙を引き出し、第1アームを第2アームに対して閉じると、両面サーマル紙は、搬送方向の上流側の第1ヘッドおよび第2プラテンの間、および、搬送方向の下流側の第2ヘッドおよび第1プラテンの間に挟まれた状態にセットされ、第1ヘッドは両面サーマル紙の表面に対峙し、第2ヘッドは両面サーマル紙の裏面に対峙する。したがって、両面サーマル紙の表面および裏面に同時に印字を行うことができる。
【特許文献1】米国特許第6,784,906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示のサーマルプリンタにおいては次のような解決すべき課題がある。
【0004】
第1に、第1アームを第2アームに対して閉じると、第1アームに搭載されている第1ヘッドおよび第1プラテンが同時に第2プラテンおよび第2ヘッドに押しつけられる。このため、両面サーマル紙を弛みの無い状態に引張りながら第1アームを閉じた場合であっても、上流側の第1ヘッドおよび第2プラテンの間、並びに、下流側の第2ヘッドおよび第2プラテンの間に、同時に両面サーマル紙が挟まれ、このときに第1、第2プラテンの回転に起因して、これらの間に位置している両面サーマル紙に弛みができやすい。弛みができると、これを除去するための紙送り動作が必要になる。また、弛みができると、両面サーマル紙が斜行送り状態になるおそれもある。
【0005】
第2に、第1アームに搭載した第1ヘッドおよび第1プラテンを、それぞれ、第2アーム側の第2プラテンおよび第2ヘッドに位置決めする必要がある。このため、第1ヘッドを第2プラテンに単独で位置決めし、第1プラテンを第2ヘッドに単独で位置決めする場合に比べて、これらの位置決めが困難である。
【0006】
第3に、第1アームを閉じる際には、第1ヘッドを第2プラテンに押し付けるための押し付け力の反力、および第2ヘッドを第1プラテンに押し付けるための押し付け力の反力が作用する。単一のヘッドをプラテンに押し付ける場合に比べて倍の力が第1アームに作用する。このため、第1アームを閉じる際には大きな操作力を必要とし、第1アームの変形などに起因して、その幅方向の一方のみが閉じ位置に押し込まれ、他方が完全には閉じ位置に押し込まれていない状態、所謂、片閉まり状態に陥る可能性が高い。
【0007】
第4に、第1アームを閉じると常に2組のヘッドが対応するプラテンにそれぞれ押し付けられるので、これらの間を通って搬送されるサーマル紙の紙送り負荷が大きい。サーマル紙として片面に感熱面が形成されている通常のサーマル紙に印字を行う場合等のように、一方のヘッドのみを使用すればよい場合であっても、常に両面印字の場合と同様に2組のヘッドが搬送されるサーマル紙に押し付けられる。したがって、片面印字に対応した最適な形態で印字を行うことができないという問題点ある。
【0008】
本発明の課題は、従来における2組のヘッドおよびプラテンを備えた両面印字可能なサーマルプリンタの問題点を解消可能なサーマルプリンタを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明のサーマルプリンタは:第1サーマルヘッドと;第1プラテンローラと;第2サーマルヘッドと;第2プラテンローラと;前記第1サーマルヘッドおよび前記第2プラテンローラが搭載されているプリンタ本体フレームと;前記第1プラテンローラが搭載されており、当該第1プラテンローラが前記第1サーマルヘッドに押し付けられる第1閉じ位置、および、当該第1プラテンローラが当該第1サーマルヘッドから離れる第1開き位置の間を旋回可能な第1アームと;前記第2サーマルヘッドが搭載されており、当該第2サーマルヘッドが前記第2プラテンローラに押し付けられる第2閉じ位置と、当該第2サーマルヘッドが当該第2プラテンローラから離れる第2開き位置の間を旋回可能な第2アームと;を有していることを特徴としている。
【0010】
また、本発明のサーマルプリンタは:第1サーマルヘッドと;第1プラテンローラと;第2サーマルヘッドと;第2プラテンローラと;前記第1プラテンローラおよび前記第2サーマルヘッドが搭載されているプリンタ本体フレームと;前記第1サーマルヘッドが搭載されており、当該第1サーマルヘッドが前記第1プラテンローラに押し付けられる第1閉じ位置、および、当該第1サーマルヘッドが当該第1プラテンローラから離れる第1開き位置の間を旋回可能な第1アームと;前記第2プラテンローラが搭載されており、当該第2プラテンローラが前記第2サーマルヘッドに押し付けられる第2閉じ位置、および、当該第2プラテンローラが当該第2サーマルヘッドから離れる第2開き位置の間を旋回可能な第2アームと;を有していることを特徴としている。
【0011】
本発明のサーマルプリンタでは、第1アームに第1プラテンローラあるいは第1サーマルヘッドを搭載し、第2アームに第2サーマルヘッドあるいは第2プラテンローラを搭載してある。これら2本のアームを開閉することにより、2組のサーマルヘッドおよびプラテンローラを開閉することができる。したがって、単一のアームに、2組のサーマルヘッドおよびプラテンの一方の部品が搭載されている場合に比べて、各部品の位置決めを簡単かつ精度良く行うことができる。また、各アームを閉じる際に各アームに作用する力が小さくて済むので、各アームが片閉まり状態に陥るおそれも殆どない。
【0012】
ここで、本発明のサーマルプリンタにおいて、第1アームを第1開き位置から第1閉じ位置に旋回すると、第2アームが第2開き位置から第2閉じ位置に旋回し、第1アームを第1閉じ位置から第1開き位置に旋回すると、第2アームが第2閉じ位置から前記第2開き位置に旋回するようにすることができる。このように、第2アームを第1アームに連動させて開閉することにより、2本のアームを備えている場合においても1本のアームの場合と同様な操作性を維持できる。
【0013】
また、第1アームを第1開き位置から第1閉じ位置に旋回する際には、当該第1アームが第1閉じ位置に到達する前に、第2アームが第2閉じ位置に到達するように構成することが望ましい。サーマル紙の搬送方向における上流側に位置する第2サーマルヘッドあるいは第2プラテンローラが搭載されている第2アームが先に閉じ位置に到達すると、2組のサーマルヘッドおよびプラテンローラの間に、サーマル紙が弛みのできた状態で挟まれることを回避できる。例えば、サーマル紙を搬送方向の下流側に引張りながら第1アームを閉じると、まず、第2アームが閉じてサーマル紙が上流側のサーマルヘッドおよびプラテンローラの間に挟まされ、しかる後に、第2アームが閉じて、弛みの無い引張り状態にあるサーマル紙が下流側のサーマルヘッドおよびプラテンローラの間に挟まれる。よって、弛みの無い状態でサーマル紙をセットできる。したがって、弛みを除去するための紙送り動作が基本的に不要となり、また、弛みに起因するサーマル紙の斜行状態の発生も回避できる。
【0014】
次に、本発明のサーマルプリンタにおいては、第1アームを第1閉じ位置に旋回しても第2アームが第2閉じ位置に到達しない状態に切換可能としておくことが望ましい。この代わりに、第2プラテンローラを第2サーマルヘッドに当接しない退避位置に移動可能にしておいてもよい。
【0015】
第1アームおよびプリンタ本体フレームに搭載されている第1サーマルヘッドおよび第1プラテンローラのみを用いてサーマル紙に片面印字を行う場合には、第2アームが第2閉じ位置に到達しないように切り換えておくと、使用されない第2サーマルヘッドおよび第2プラテンローラの間にサーマル紙が所定の押圧力で挟まれた状態が形成されない。第2プラテンローラを退避位置に移動しておき第2サーマルヘッドに当たらないようにした場合においても、同様に、これらの間にサーマル紙が所定の押圧力で挟まれた状態が形成されない。したがって、不必要な紙送り負荷を低減でき、高速印字を行うことができる。
【0016】
また、本発明のサーマルプリンタにおいて、第2アームを、プリンタ本体フレームあるいは第1アームに対して着脱可能に取り付けておくことも可能である。この場合には、第2アームを取り外すことにより、サーマルプリンタを片面印字仕様の構造に切り換えることができる。
【0017】
ここで、本発明のサーマルプリンタにおいて、長尺状のサーマル紙がロール状に巻き付けられた構成のロール紙を収納するためのロール紙収納部と、このロール紙収納部を開閉するための開閉蓋とを有している場合には、第1アームに開閉蓋を取り付けておけばよい。
【0018】
次に、第1アームおよび第2アームは、プリンタ本体フレームに取り付けた同一の旋回中心軸を中心として旋回するようにしておくことができる。この代わりに、第1アームは、プリンタ本体フレームに取り付けた第1旋回中心軸を中心として旋回し、第2アームは、プリンタ本体フレームにおける第1旋回中心軸とは異なる位置において当該第1旋回中心軸に平行に取り付けた第2旋回中心軸を中心として旋回するようにしておくこともできる。さらには、第1アームは、プリンタ本体フレームに取り付けた第1旋回中心軸を中心として旋回し、第2アームは、第1旋回中心軸に平行となるように第1アームに取り付けられた第2旋回中心軸を中心として旋回するようにしておくこともできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のサーマルプリンタでは、第1サーマルヘッドおよび第1プラテンローラの一方を第1アームに搭載し、第2サーマルヘッドおよび第2プラテンローラの一方を第2アームに搭載してある。したがって、第1アームを閉じると、第1サーマルヘッドおよび第1プラテンローラが相互に押し付けた状態になり、第2アームを閉じると、第2サーマルヘッドおよび第2プラテンローラが相互に押し付けられた状態になる。このように2本のアームを用いて2組のサーマルヘッドおよびプラテンローラを開閉するようにしている。よって、単一のアームを閉じると2組のサーマルヘッドおよびプラテンローラが同時に閉じる従来の両面サーマルプリンタにおけるサーマル紙の弛みの発生、サーマルヘッドとプラテンローラの間の位置決めの困難性、アームの片閉まり状態の発生などの問題を解消可能である。また、両面印字および片面印字の双方に適した仕様での印字を行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したサーマルプリンタの実施の形態を説明する。
【0021】
図1は本実施の形態に係る両面サーマルプリンタを示す説明図であり、図2は両面サーマルプリンタの開閉蓋が僅かに開いた状態を示す説明図である。両面サーマルプリンタ1は、全体として直方体形状をしているプリンタ本体ケース2と、このプリンタ本体ケース2に開閉可能に取り付けた開閉蓋3とを備えている。開閉蓋3は略水平な閉じ位置3Aおよび図1において想像線で示すように起立した開き位置3Bの間で開閉可能である。
【0022】
開閉蓋3を開けると、プリンタ本体ケース2の内部に形成されているロール紙収納部4の上端部が開放状態になり、当該ロール紙収納部4に上側からロール紙5を投入可能である。ロール紙5は長尺状のサーマル紙6をロール状に巻き取った構成のものである。例えば、サーマル紙6は、その表面および裏面にそれぞれ感熱面6a、6bが形成されている両面サーマル紙である。
【0023】
ロール紙収納部4に収納したロール紙5から上方に繰り出されるサーマル紙6は、ガイドローラ7を経由して、プリンタ前方に向けて水平方向に案内された後に、裏面印字位置8および表面印字位置9を経由して排出口10から外部に引き出された状態にセットされる。表面印字位置9には、第1サーマルヘッド11および第1プラテンローラ21が配置されている。サーマル紙6はその表面側の感熱面6aが第1プラテンローラ21によって第1サーマルヘッド11の発熱面11aに押し付けられながら当該第1プラテンローラ21によって送り出され、この表面側の感熱面6aに印字が行われる。裏面印字位置8には、第2サーマルヘッド12および第2プラテンローラ22が配置されている。サーマル紙6はその裏面側の感熱面6bが第2プラテンローラ22によって第2サーマルヘッド12の発熱面12aに押し付けられながら当該第2プラテンローラ22によって送り出され、この裏面側の感熱面6bに印字が行われる。
【0024】
第1サーマルヘッド11および第2プラテンローラ22およびガイドローラ7はプリンタ本体フレーム30に搭載されている。これに対して、第1プラテンローラ21は、開閉蓋3が取り付けられている旋回式の第1アーム31に搭載されている。第2サーマルヘッド12は、第1アーム31に連動して旋回する第2アーム32に搭載されている。
【0025】
第1アーム31はその後端部が、プリンタ本体フレーム30に取り付けられているプリンタ幅方向に水平に延びる水平軸33に回転可能な状態で支持されており、この水平軸33を中心として、略水平の閉じ位置31A(第1閉じ位置)から図1において想像線で示す開き位置31B(第1開き位置)までの間を旋回可能である。第1アーム31の先端部の下側の部位には第1プラテンローラ21がプリンタ幅方向に水平に架け渡されている。
【0026】
第1アーム31を閉じた状態において、第1プラテンローラ21に対峙するプリンタ本体フレーム30の側の部位には、第1サーマルヘッド11が取り付けられている。第1サーマルヘッド11は、その発熱面11aが垂直となるように配置されており、第1アーム31を閉じると、当該発熱面11aに第1プラテンローラ21が所定の押圧力で押し付けられた状態が形成される。
【0027】
第2アーム32も、その後端部が水平軸33に回転可能な状態で支持されており、この水平軸33を中心として、略水平の閉じ位置32A(第2閉じ位置)から図1において想像線で示す開き位置32B(第2開き位置)までの間を旋回可能である。第2アーム32の先端部の下側の部位には、第2サーマルヘッド12がプリンタ幅方向に水平に搭載されており、当該第2サーマルヘッド12の発熱面12aは下向き状態となっている。
【0028】
第2アーム32を閉じた状態において、第2サーマルヘッド12の発熱面12aに対峙するプリンタ本体フレーム30の部位には、第2プラテンローラ22がプリンタ幅方向に水平に取り付けられている。第2アーム32を閉じると、第2サーマルヘッド12の発熱面12aが第2プラテンローラ22に対して所定の押圧力で押し付けられた状態が形成される。
【0029】
次に、第1アーム31とプリンタ本体フレーム30の間には、開閉蓋3を閉じ位置にロックするためのロック機構が配置されている。ロック機構は、左右のロックレバー34と左右のロックピン35を備えている。ロックレバー34は第1アーム31の先端部の両端面部分にばね力によって付勢された状態で取り付けられており、ロックピン35はプリンタ本体フレーム30の側に取り付けられている。第1アーム31を開いた状態から閉じ位置31Aに押し込むと、左右のロックレバー34が左右のロックピン35に当たり、これらロックピン35を乗り越えて下側から係合した状態になる。不図示のレバーを手動操作して開閉蓋ロックレバー34をロックピン35から外すことによりロック状態が解除される。
【0030】
第1アーム31および第2アーム32は、例えば、捻りコイルバネ36、37によって、常に、開き方向に付勢されている。ロックを解除すると、これらはバネ力によって図2に示すように所定量だけ開いた状態になり、開閉蓋3を開ける操作が容易となっている。また、第1アーム31および第2アーム32は、ロックが解除されてバネ力によって開いた後は、図2に示す開き角を保持したまま一緒に開閉するようになっている。
【0031】
ここで、第1アーム31には、第2アーム32を閉じ位置に付勢するための押さえバネ38が取り付けられている。図2に示す状態から第1アーム31を閉じる方向に押し込むと、押さえバネ38が第2アーム32に形成されているバネ受け板39に当たる。したがって、第2アーム32は、押さえバネ38のバネ力によって閉じ位置に保持される。本例の押さえバネ38は、バネ受け板39に当たる位置から図2において想像線で示す位置までスライド可能となっている。押さえバネ38をスライドさせると、第1アーム31を閉じても第2アーム32は押さえバネ38のバネ力によって閉じ位置に押し付けられずに、捻りコイルバネ37のバネ力によって開き方向に浮き上がった状態になる。このため、第2アーム32に搭載されている第2サーマルヘッド12が第2プラテンローラ22に押し付けられることなく、ここから浮き上がった状態に保持される。
【0032】
このように構成した両面サーマルプリンタ1の作用効果を説明する。開閉蓋3のロックを解除して開閉蓋を図1の実線で示す閉じ位置3Aから想像線で示す開き位置3Bまで開けると、開閉蓋3が取り付けられている第1アーム31も一緒に開き、これに連動して第2アーム32も開く。この結果、ロール紙収納部4の上端部が開放状態になり、ロール紙5の交換作業などを行うことができる。
【0033】
ロール紙5を交換する場合には、ロール紙収納部4に入れた新しいロール紙5から両面サーマル紙6を所定量だけ引き出し、引き出した両面サーマル紙6を引張りながら開閉蓋3を閉じる。開閉蓋3を閉じると、第1および第2アーム31、32も一緒に閉じる。第1および第2アーム31、32は、図2に示すように一定の開き角の状態で閉じ方向に旋回する。したがって、最初に、第2アーム32に搭載されている第2サーマルヘッド12がプリンタ本体フレーム30の側の第2プラテンローラ22に押し付けられ、これら第2サーマルヘッド12と第2プラテンローラ22の間に両面サーマル紙6が挟まれる。この後に、第1アーム31に搭載されている第1プラテンローラ21がプリンタ本体フレーム30の側の第1サーマルヘッド11に押し付けられ、これら第1サーマルヘッド11および第1プラテンローラ21の間に両面サーマル紙6が挟まれる。
【0034】
このように、開閉蓋3を閉じると、両面サーマル紙6は、まず、上流側の部位が第2サーマルヘッド12および第2プラテンローラ22の間に挟まれ、この後に、下流側の部位が第1サーマルヘッド11および第1プラテンローラ21の間に挟まれる。よって、両面サーマル紙6を引張り状態に保持しておけば、これらの裏面印字位置8および表面印字位置9の間において両面サーマル紙6に弛みが発生することがない。したがって、印字動作に先立って、両面サーマル紙6の弛みを除去するための紙送り動作に要する時間が短くて済む。また、弛みに起因して両面サーマル紙6が斜行状態で搬送されて印字品位が低下する等の弊害も発生しない。
【0035】
また、第1アーム31に搭載されている第1プラテンローラ21はプリンタ本体フレーム30の側の第1サーマルヘッド11に対して位置決めすればよく、第2アーム32に搭載されている第2サーマルヘッド12はプリンタ本体フレーム30の側の第2プラテンローラ22に対して位置決めすればよい。1本のアームに、それぞれ異なる部材に対して位置決めする必要のあるサーマルヘッドおよびプラテンローラを搭載しておく場合に比べて、各部材間の位置決め精度を上げることができ、また、位置決め作業も容易になる。
【0036】
さらに、第2アーム32が閉じ位置32Aに到達した後に第1アーム31が閉じ位置31Aに到達してロック機構による開閉蓋ロック状態が形成される。単一のアームを閉じて、第1サーマルヘッドと第2プラテンローラの押し付け状態と、第2サーマルヘッドと第2プラテローラの押し付け状態を同時に形成する場合には、ロック時に大きな力がアームに作用してアームが変形し易い。アームが変形すると、プリンタ幅方向の両側のロックレバー34の一方のみがロックピン35にロックされ、他方のロックレバー34がロックピン35にロックされないままの状態、所謂、片閉まり状態に陥る可能性が高くなる。本例では、2本のアームを用いており、段階的に第1アーム31に作用する力が増加するので、ロック時にのみ大きな力が作用して片閉まり状態に陥ることが殆どない。
【0037】
これに加えて、両面サーマルプリンタ1では、片面に感熱面が形成されている一般的なサーマル紙に印字を行う場合には、紙送り負荷を低減して高速印字が可能である。
【0038】
図3を参照して説明すると、片面印字を行う場合には、第1アーム31の押さえバネ38をスライドさせて、第2アーム32のバネ受け板39に当たらないようにしておく。この状態で開閉蓋3を閉じると、第1アーム31を閉じ位置31Aに閉じてロックしても、第2アーム32は捻りコイルバネ37によって開き方向に付勢されているので、閉じ位置32Aに至らず、浮き上がった状態になる。この結果、第2アーム32に搭載されている第2サーマルヘッド12はプリンタ本体フレーム30の側の第2プラテンローラ22に押し付けられることなく、ここから浮き上がった状態に保持される。
【0039】
したがって、ロール紙5Aから繰り出される片面サーマル紙6Aは、裏面印字位置8において第2サーマルヘッド12と第2プラテンローラ22の間に挟まれず、表面印字位置9においてのみ第1サーマルヘッド11と第1プラテンローラ21の間に挟まれた状態になる。よって、不要な押さえ力が作用しないので、片面サーマル紙6Aの送り負荷を小さくて済む。また、両面印字の場合に比べて高速で紙送りモータ(図示せず)を駆動して高速印字を行うことも可能である。
【0040】
なお、片面印字の際に、第2アーム32を閉じ位置32Aまで閉じないようにする機構としては各種の機構を採用可能である。また、第2アーム32を閉じ位置32Aまで閉じ、プリンタ本体フレーム30の側の第2プラテンローラ22を退避させるようにしてもよい。すなわち、第2アーム32の側の第2サーマルヘッド12に当接しない位置に第2プラテンローラ22を移動できるようにしておいてもよい。
【0041】
さらには、第2アーム32をプリンタ本体フレーム30の側の水平軸33に対して着脱可能なユニットとしておき、片面印字の場合には第2アームを取り外すようにすることも可能である。
【0042】
(その他の実施の形態)
図4(a)に示すように上記の両面サーマルプリンタ1では、第1および第2アーム31、32を共通の水平軸33を中心として旋回させるようにしている。第1および第2アーム31、32を異なる水平軸を中心として旋回させることも可能である。例えば、図4(b)に示すように、第1アーム31の旋回中心を、プリンタ本体フレーム30の側に取り付けた水平軸33によって規定し、第2アーム32の旋回中心を、第1アーム31に取り付けた水平軸33Aによって規定することができる。また、図4(c)に示すように、第1アーム31の旋回中心を、プリンタ本体フレーム30の側に取り付けた水平軸33によって規定し、第2アーム32の旋回中心を、プリンタ本体フレーム30の側に取り付けた水平軸33Bによって規定することもできる。
【0043】
次に、図5に示すように、第1アーム31に第1サーマルヘッド11を搭載し、プリンタ本体フレーム30の側に第1プラテンローラ21を搭載してもよい。この場合には、第2アーム32の側に第2プラテンローラ22を搭載し、プリンタ本体フレーム30の側に第2サーマルヘッド12を搭載すればよい。
【0044】
図1から図3では、ロール紙5から反時計回りにサーマル紙6が繰り出されるように示しているが、ロール紙5の向きを逆に配置し、時計回りにサーマル紙6が繰り出されるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明を適用した両面サーマルプリンタの説明図である。
【図2】図1の両面サーマルプリンタの開閉蓋を僅かに開けた状態の説明図である。
【図3】図1の両面サーマルプリンタの片面印字時の説明図である。
【図4】第1、第2アームの旋回中心位置の各例を示す説明図である。
【図5】サーマルヘッドとプラテンローラの取り付け位置を変えた例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0046】
1 両面サーマルプリンタ、2 プリンタ本体ケース、3 開閉蓋、3A 閉じ位置、3B 開き位置、4 ロール紙収納部、5,5A ロール紙、6 両面サーマル紙、6A 片面サーマル紙、6a,6b 感熱面、7 ガイドローラ、8 裏面印字位置、9 表面印字位置、10 排出口、11 第1サーマルヘッド、11a 発熱面、12 第2サーマルヘッド、12a 発熱面、21 第1プラテンローラ、22 第2プラテンローラ、30 プリンタ本体フレーム、31 第1アーム、31A 開き位置、31B 閉じ位置、32 第2アーム、32A 閉じ位置、32B 開き位置、33,33A,33B 水平軸、34 ロックレバー、35 ロックピン、36,37 捻りコイルバネ、38 押さえバネ、39 バネ受け板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1サーマルヘッドと、
第1プラテンローラと、
第2サーマルヘッドと、
第2プラテンローラと、
前記第1サーマルヘッドおよび前記第2プラテンローラが搭載されているプリンタ本体フレームと、
前記第1プラテンローラが搭載されており、当該第1プラテンローラが前記第1サーマルヘッドに押し付けられる第1閉じ位置、および、当該第1プラテンローラが当該第1サーマルヘッドから離れる第1開き位置の間を旋回可能な第1アームと、
前記第2サーマルヘッドが搭載されており、当該第2サーマルヘッドが前記第2プラテンローラに押し付けられる第2閉じ位置と、当該第2サーマルヘッドが当該第2プラテンローラから離れる第2開き位置の間を旋回可能な第2アームとを有しているサーマルプリンタ。
【請求項2】
第1サーマルヘッドと、
第1プラテンローラと、
第2サーマルヘッドと、
第2プラテンローラと、
前記第1プラテンローラおよび前記第2サーマルヘッドが搭載されているプリンタ本体フレームと、
前記第1サーマルヘッドが搭載されており、当該第1サーマルヘッドが前記第1プラテンローラに押し付けられる第1閉じ位置、および、当該第1サーマルヘッドが当該第1プラテンローラから離れる第1開き位置の間を旋回可能な第1アームと、
前記第2プラテンローラが搭載されており、当該第2プラテンローラが前記第2サーマルヘッドに押し付けられる第2閉じ位置、および、当該第2プラテンローラが当該第2サーマルヘッドから離れる第2開き位置の間を旋回可能な第2アームとを有しているサーマルプリンタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のサーマルプリンタにおいて、
前記第1アームを前記第1開き位置から前記第1閉じ位置に旋回すると、前記第2アームが前記第2開き位置から前記第2閉じ位置に旋回し、
前記第1アームを前記第1閉じ位置から前記第1開き位置に旋回すると、前記第2アームが前記第2閉じ位置から前記第2開き位置に旋回するサーマルプリンタ。
【請求項4】
請求項3に記載のサーマルプリンタにおいて、
前記第1アームを前記第1開き位置から前記第1閉じ位置に旋回する際には、当該第1アームが前記第1閉じ位置に到達する前に、前記第2アームが前記第2閉じ位置に到達するサーマルプリンタ。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちのいずれかの項に記載のサーマルプリンタにおいて、
前記第2アームが前記第2閉じ位置に到達しない状態に切換可能であるサーマルプリンタ。
【請求項6】
請求項1ないし4のうちのいずれかの項に記載のサーマルプリンタにおいて、
前記第2プラテンローラを前記第2サーマルヘッドに当接しない退避位置に移動可能であるサーマルプリンタ。
【請求項7】
請求項1ないし4のうちのいずれかの項に記載のサーマルプリンタにおいて、
前記第2アームは、前記プリンタ本体フレームあるいは前記第1アームに対して着脱可能に取り付けられているサーマルプリンタ。
【請求項8】
請求項1ないし7のうちのいずれかの項に記載のサーマルプリンタにおいて、
長尺状のサーマル紙がロール状に巻き付けられた構成のロール紙を収納するためのロール紙収納部と、
このロール紙収納部を開閉するための開閉蓋とを有し、
前記第1アームに前記開閉蓋が取り付けられているサーマルプリンタ。
【請求項9】
請求項1ないし8のうちのいずれかの項に記載のサーマルプリンタにおいて、
前記第1アームおよび前記第2アームは、前記プリンタ本体フレームに取り付けた同一の旋回中心軸を中心として旋回するサーマルプリンタ。
【請求項10】
請求項1ないし8のうちのいずれかの項に記載のサーマルプリンタにおいて、
前記第1アームは、前記プリンタ本体フレームに取り付けた第1旋回中心軸を中心として旋回し、
前記第2アームは、前記プリンタ本体フレームにおける前記第1旋回中心軸とは異なる位置において当該第1旋回中心軸に平行に取り付けた第2旋回中心軸を中心として旋回するサーマルプリンタ。
【請求項11】
請求項1ないし8のうちのいずれかの項に記載のサーマルプリンタにおいて、
前記第1アームは、前記プリンタ本体フレームに取り付けた第1旋回中心軸を中心として旋回し、
前記第2アームは、前記第1旋回中心軸に平行となるように前記第1アームに取り付けられた第2旋回中心軸を中心として旋回するサーマルプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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