説明

サーマルプリンタ

【課題】操作性を向上させた上で、フレームの軸受部にプラテンローラの両端部を確実にセットすることができ、記録紙への印字を正確に行うこと。
【解決手段】フレームに設けられ、カバー8の閉状態においてプラテンローラ13のローラシャフト13eの両端部を収容する一対の凹部10dと、カバー8の閉動作に伴って凹部との間でプラテンローラ13のローラシャフト13eを自動的に係合する一対のロックアームと、プラテンローラ13をカバー8に対して回動可能に連結する連結機構30と、を備え、連結機構30におけるプラテンローラ13の回動軸は、一対の凹部10dの中間点を通り凹部10dの軸方向に垂直な面内に含まれ、カバー8と平行に配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリンタは、熱を加えると変色する特殊な記録紙に熱したサーマルヘッドを押し付けることで印刷を行うものであり、現在様々な種類のものが数多く提供されている。特に、トナーやインク等を使用せずに、滑らかな文字の印刷や多彩なグラフィック印字が可能なため、各種ラベル、レシートやチケットの印刷等に好適に使用されている。
このサーマルプリンタは、一般的に多数の発熱素子を有するサーマルヘッドと、サーマルヘッドとの間に記録紙を挟むプラテンローラと、歯車を介してプラテンローラを回転させて記録紙を送り出すモータと、サーマルヘッドを記録紙及びプラテンローラ側に押し付ける付勢体(コイルバネや板バネ等)とを備えている。また、サーマルプリンタで使用される記録紙は、中空孔を有するように巻回され、ロール紙となった状態で通常使用されている。
【0003】
上述したサーマルプリンタで印刷を行う際には、モータによりプラテンローラを回転させて記録紙を送り出しながら、サーマルヘッドを記録紙に押し付ける。そして、印刷する情報に基づいてサーマルヘッドの発熱素子を作動させることで、情報に応じた文字や図形がサーマルヘッドとプラテンローラとの間を通過する記録紙に印刷される。これにより、上述したような各種の印刷を行うことができる。
【0004】
ところで、上述したサーマルプリンタを携帯型の情報端末等に組み込んだ場合、ロール紙をセットする際にロール紙から引き出された記録紙を容易にサーマルヘッドとプラテンローラとの間に介在させるために、ロール紙が収納される筐体側にサーマルヘッドを、筐体の開口部を開閉可能にするカバー(蓋部材)側にプラテンローラを設ける構成が一般的である(いわゆる、プラテンオープンタイプ)。そして、例えば特許文献1に示すように、フレームの側壁部に、プラテンローラを回転可能且つ着脱自在に軸支するロックアームが設けられている構成が知られている。
【特許文献1】特開2003−200624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、カバー側に設けられたプラテンローラをフレーム側にロックするには、カバーを閉める際にプラテンローラのシャフトの両端部がともにロックアームにロックされてなければならない。ところが、カバーを閉じる際、カバーの幅方向一端側若しくは他端側、すなわちプラテンローラの軸方向片側のみにおいてカバーを押下すると、その押下力がプラテンローラの片側のみにしか作用せず、プラテンローラの片側のみがロックされる、いわゆる片ロック状態となる。この状態でサーマルプリンタを作動させると、プラテンローラとサーマルヘッドとが均等に接触していないため、プラテンローラにより記録紙を送り出すことができない。その結果、記録紙に正確な印字をすることができないまま、印字処理が実行されるため、印字情報が消滅して記録紙への印字ができなくなる。
【0006】
これに対して、プラテンローラの軸方向中央付近またはプラテンローラの軸方向両端側において蓋部材を押下すれば、プラテンローラの両端がほぼ同時にロックアームにロックされ、プラテンローラをフレーム側に確実にロックできる。しかしながら、カバーの開閉動作の度に、意識的にプラテンローラの軸方向中央付近またはプラテンローラの軸方向両端側において蓋部材を押下するのでは操作性が悪く、またカバーを閉じた後にプラテンローラの両端が確実にロックされているか否かが判断し難い。具体的には、ロックアームがプラテンローラのシャフトに係合する際にカチッという係合音がするが、片ロックでも両ロックでも同様に音がするので判別し難い。また、実際にカバーの開閉動作を行うのはエンドユーザーであり、これらエンドユーザー側まで注意を促すことが困難である。
【0007】
そこで、本発明は、このような事情に考慮してなされたものであって、操作性を向上させた上で、フレームの軸受部にプラテンローラの両端部を確実にセットすることができ、記録紙への印字を正確に行うことができるサーマルプリンタを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明に係るサーマルプリンタは、記録紙が収納される開口部を有する筐体と、前記記録紙に印刷を行うサーマルヘッドと、前記筐体の前記開口部を開閉可能な蓋部材と、前記蓋部材に設けられ、前記蓋部材の閉状態において前記サーマルヘッドとの間に前記記録紙を挟んだ状態で回転することで前記記録紙を送り出すプラテンローラと、前記筐体内に設けられ、前記サーマルヘッドを支持するフレームと、前記フレームに設けられ、前記蓋部材の閉状態において前記プラテンローラのシャフトの両端部を収容する一対の軸受部と、前記蓋部材の閉動作に伴って前記軸受部との間で前記プラテンローラの前記シャフトを自動的に係合する一対のロックアームと、前記プラテンローラを前記蓋部材に対して回動可能に連結する連結機構と、を備え、前記連結機構における前記プラテンローラの回動軸は、前記一対の軸受部の中間点を通り前記軸受部の軸方向に垂直な面内に含まれ、前記蓋部材と平行に配置されていることを特徴としている。
【0009】
この構成によれば、プラテンローラが一対の軸受部の中間点において連結機構により蓋部材に対して回動可能に連結されているため、蓋部材を幅方向片側において下方(閉方向)に向けて押下した場合に、蓋部材を押下する押下力が必ず連結機構を介して伝達される。これにより、蓋部材を幅方向中央部以外の部位において押下した場合でも、プラテンローラの軸方向中央部において下方に向けて押下力が作用する。そのため、プラテンローラは、シャフトの両端部から下方に向けて均等に押下されることになり、蓋部材の閉動作に伴ってプラテンローラの両端部をほぼ同時にロックすることができる。つまり、カチッという係合音がした場合には、常に両ロックされていると判断することができる。
したがって、プラテンローラの両端部を確実にロックすることで、プラテンローラとサーマルヘッドとを均等に接触させることができるため、プラテンローラにより記録紙を連続的に送り出すことができ、記録紙に正確、かつ高精度な印字を行うことができる。また、蓋部材を幅方向片側において押下した場合であっても、従来のように片ロック状態になることを防ぐことができるため、蓋部材の幅方向中央部を意識的に押下したり、閉動作後にロック状態を確認したりすることもない。よって、操作性を向上させた上で、フレームの軸受部にプラテンローラの両端部を確実にロックすることができる。
【0010】
また、本発明に係るサーマルプリンタは、前記連結機構は、前記プラテンローラを前記回動軸の軸方向に沿って移動可能に支持していることを特徴としている。
この構成によれば、連結機構がプラテンローラを回動軸の軸方向に沿って移動可能に支持しているため、連結機構とフレームとの間の寸法誤差を許容することができる。すなわち、蓋部材の閉動作時にプラテンローラのシャフトとフレーム軸受部とが軸受部の幅方向にずれている場合であっても、連結機構が軸方向にスライドして確実に軸受部内に入り込むことになる。これにより、連結機構とフレームとの間の寸法誤差が生じた場合であっても、フレームの軸受部内にプラテンローラの両端部を確実にロックすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るサーマルプリンタによれば、プラテンローラが一対の軸受部の中間点において連結機構により蓋部材に対して回動可能に連結されているため、蓋部材を幅方向片側において下方(閉方向)に向けて押下した場合に、蓋部材を押下する押下力が必ず連結機構を介して伝達される。これにより、蓋部材を幅方向中央部以外の部位において押下した場合でも、プラテンローラの軸方向中央部から下方に向けて押下力が作用する。そのため、プラテンローラは、シャフトの両端部から下方に向けて均等に押下されることになり、蓋部材の閉動作に伴ってプラテンローラの両端部をほぼ同時にロックすることができる。つまり、カチッという係合音がした場合には、常に両ロックされていると判断することができる。
したがって、プラテンローラの両端部を確実にロックすることで、プラテンローラとサーマルヘッドとを均等に接触させることができるため、プラテンローラにより記録紙を連続的に送り出すことができ、記録紙に正確、かつ高精度な印字を行うことができる。また、蓋部材を幅方向片側において押下した場合であっても、従来のように片ロック状態になることを防ぐことができるため、蓋部材の幅方向中央部を意識的に押下したり、閉動作後にロック状態を確認したりすることもない。よって、操作性を向上させた上で、フレームの軸受部にプラテンローラの両端部を確実にロックすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(サーマルプリンタ)
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係るサーマルプリンタを備えた情報端末の外観斜視図である。なお、本実施形態では、サーマルプリンタを、宅配業者が顧客先でカード決済することが可能な携帯型の情報端末に搭載した場合を例に挙げて説明する。
図1に示すように、本実施形態の情報端末1は、ケース本体(筐体)2と、該ケース本体2の内部に収納されたサーマルプリンタ3と、ケース本体2の表面に設けられて、複数のキーボタンで構成される入力部4及び各種の情報を表示する液晶表示部5と、図示しない磁気カードを挿し込んだ際に該磁気カードの磁気記録部からデータを読み取る読取部6と、ロール状に巻回された記録紙Pを収納する記録紙収納部7と、サーマルプリンタ3のプラテンローラ13が後述する連結機構30を介して設けられ、プラテンローラ13と共に記録紙収納部7を開閉可能なカバー(蓋部材)8とを備えている。
【0013】
図2はプラテンローラの取り付け時(カバーの閉状態)を示すサーマルプリンタの外観斜視図であり、図3は図2のA−A’線に沿う断面図である。なお、図2においては、説明を分かり易くするため、記録紙収納部7やカバー8等の部材を省略する。
図2,3に示すように、サーマルプリンタ3は、記録紙Pの幅方向に対向配置された一対の側壁部10aを有するフレーム10と、表面に多数の発熱素子を有し、記録紙Pの幅方向に沿って配置されたサーマルヘッド11と、このサーマルヘッド11を支持する導電性のヘッド支持体12と、カバー8の閉状態においてサーマルヘッド11との間に記録紙Pを挟んだ状態で回転することで記録紙Pを送り出すプラテンローラ13と、プラテンローラ13を回転させて、記録紙Pを送り出す駆動手段14と、フレーム10とヘッド支持体12との間に設けられ、ヘッド支持体12をプラテンローラ13に向けて付勢した状態で支持するコイルバネ等の弾性部材15と、表面に図示しない配線パターンが設けられ、サーマルヘッド11に電気的に接続されて信号を送るフレキシブル基板16とを備えている。
【0014】
フレーム10は、ポリカーボネート等のプラスチックの射出成型品等からなり、略直方体状に形成されているとともに、その上面側にはプラテンローラ13を収納する収納部10bが形成されている。また、フレーム10は、記録紙収納部7(図1参照)内であって、ロール状に巻回された記録紙Pの上方に位置するように取り付けられている。つまり記録紙Pは、フレーム10の下面側(図3中下側)から上面側(図3中上側)に送り出されるようになっている。そして、この収納部10bを間にして上記一対の側壁部10aが対向した形で形成されている。
各側壁部10aには、その上部周縁から高さ方向に切り込まれた凹部(軸受部)10dが形成されており、ここにプラテンローラ13の両端部が収容される。側壁部10aの内面側には、プラテンローラ13の両端部が係合される一対のロックアーム17が設けられている。
【0015】
これらロックアーム17は、側面視略C字状のものであり、プラテンローラ13の両端部に係合してプラテンローラ13をサーマルヘッド11に向けて引き寄せるフック部17aを備えている。フック部17aには、プラテンローラ13の両端部の外周面を支持する凹状の支持部17b(図3参照)が形成されており、この支持部17bと凹部10dの周縁との間にプラテンローラ13の両端部が挟み込まれるようになっている。フック部17aの後端側(図3における左側)には、フック部17aから後方に向けて延出するアーム部17c(図3参照)が形成されている。このアーム部17cは、ヘッド支持体12の両側方に配置されたフック部17aからヘッド支持体12の両側を挟み込むようにヘッド支持体12の裏側まで延出している。そして、アーム部17cの後端側(図3における左側)には、ヘッド支持体12の裏側で一対のアーム部17c間を架け渡す弾性部材支持部17dが形成されている。この弾性部材支持部17dは、ヘッド支持部12との間で上述した弾性部材15を支持するものであり、ヘッド支持体12と略平行に延出している。弾性部材15は、ヘッド支持体12と弾性部材支持部17dとを離間させる方向、つまりフック部17aが起き上がる方向に付勢しており、これによりロックアーム17のフック部17aが凹部10dの周縁との間にプラテンローラ13の両端部をロックできるようになっている。なお、ロックアーム17は、回動シャフト20により側壁部10aに回動可能に支持されている。
【0016】
また、一対のロックアーム17のうち、一方のロックアーム17におけるフック部17aの前端側には、ロックアーム17を操作するレバー部17eが形成されている。このレバー部17eは、フック部17aの前端における上部から下方に向けて垂れ下がるように延出する部材であり、レバー部17eの先端はレバー部17eから直角に屈曲された操作片17fが形成されている。そして、この操作片17fを下方に向けて押下することにより、弾性部材支持部17dが回動シャフト20を中心にしてヘッド支持体12に接近する方向に回動するため、フック部17aと凹部10dとの間が拡大されてプラテンローラ13とフック部17aとの係合が解除されるように構成されている。なお、操作片17fは、上述した情報端末1のケース本体2に設けられたロック解除手段(不図示)によりカバー8の開動作に追従して押下可能に構成されている。
【0017】
プラテンローラ13は、ローラシャフト13eにゴム等からなるローラ本体13cが外装されたものである。ローラシャフト13eの両端部が、図示しない軸受部材を介してカバー8を閉じたときに、上述したように側壁部10aの凹部10dとロックアーム17のフック部17aとの間に嵌って回転可能に支持されるようになっている。また、プラテンローラ13の一端側の端部には従動ギア13dが固定されており、一対の側壁部10aに支持されたときに、フレーム10側に取り付けられた図示しない歯車伝達機構に噛合するようになっている。この歯車伝達機構は、モータ21に接続されており、該モータ21からの回転駆動力を従動ギア13dに伝達している。これによりプラテンローラ13は、一対の側壁部10aに支持された状態で回転し、記録紙Pをフレーム10の下面側から上面側に送り出すことができるようになっている。これら歯車伝達機構及びモータ21は、上記駆動手段14を構成している。
【0018】
サーマルヘッド11は、プラテンローラ13に対向するように配置された状態でヘッド支持体12に支持されており、上述したように記録紙Pを間に挟んだ状態でプラテンローラ13の周面がサーマルヘッド11に対して接触するようになっている。また、ヘッド支持体12と上述したロックアーム17の弾性部材支持部17dとの間には、上述した弾性部材15が介在しており、弾性部材支持部17dとヘッド支持体12とを離間させる方向に向けて付勢している。すなわち、弾性部材15は、ヘッド支持体12をプラテンローラ13側に向けて常に付勢するように構成されている。
【0019】
フレキシブル基板16は、その表面に配線パターンが形成されており、この配線パターンがサーマルヘッド11やモータ21等に適宜電気的に接続されている。また、フレキシブル基板16の基端側は、配線パターンの端子部16aとなっており、情報端末1の図示しない制御部に接続されている。これによりサーマルヘッド11やモータ21は、配線パターンを介して電力や制御信号等が入力されて作動するようになっている。
【0020】
図4はカバーの開状態におけるサーマルプリンタの側面図であり、図5は正面図である。
ここで、図1,4,5に示すように、上述したように情報端末1のカバー8は、上述したフレーム10と同様にポリカーボネート等のプラスチックの射出成型品や金属の板金加工等により形成され、記録紙収納部7を開閉可能に構成されている。カバー8の一端側にはカバー8の厚さ方向に向けて突出するヒンジ部24が形成されている。このヒンジ部24には、シャフト23が挿通されており、このシャフト23を介してカバー8がケース本体2に対して回動可能に支持されている。一方、カバー8の他端側(先端側)には、上述したプラテンローラ13が連結機構30を介して設けられている。そして、プラテンローラ13は、カバー8の閉動作に伴ってロックアーム17にロックされるようになっている。
【0021】
連結機構30は、プラテンローラ13を回転可能に支持するローラブラケット31と、カバー8の他端側に設けられ、ローラブラケット31を回動可能に支持するカバーブラケット32と、これらローラブラケット31とカバーブラケット32とを連結する連結ピン33とで構成されている。
まずカバーブラケット32は、カバー8の下面(閉状態における記録紙収納部7との対向面)において、カバー8の幅方向に沿って設けられた支持プレート34を備えている。この支持プレート34は、平板状の部材であり、その長手方向とカバー8との幅方向とを一致させた状態で配置されている。支持プレート34の長手方向中央部には、支持プレート34の幅方向両側から厚さ方向に沿って延出する一対の連結部35が形成されている。
【0022】
連結部35は、先端側の外周縁に湾曲部35aを有する半円形状のものであり、支持プレート34の両側から対向して、かつ互いに平行な状態で延出している。したがって、カバーブラケット32は、側面視でC字形状(図4参照)に形成されている。また、一対の連結部35には、互いに重なる位置に連結部35の厚さ方向に貫通する貫通孔36が形成されている。
【0023】
図6は、プラテンローラ及びローラブラケットの斜視図である。
図6に示すように、ローラブラケット31は、プラテンローラ13と間隙を空けた状態で対向配置されたベース部40を備えている。このベース部40は、プラテンローラ13の軸方向に沿って延出する平板状のものであり、上述したカバーブラケット32の支持プレート34の幅より大きく形成されている。ベース部40の長手方向両端部には、プラテンローラ13のローラシャフト13eを支持する一対の軸受部41が形成されている。軸受部41は、ベース部40の長手方向の両端部における外周縁から厚さ方向に沿って延出する部材であり、プラテンローラ13の軸方向両端を囲むように対向配置されている。また、軸受部41は、基端から先端に向かうにつれ漸次先細る側面視三角形状に形成されており、その基端(底辺)とベース部40の短辺とが一致している。各軸受部41の先端側には、互いに重なる位置に軸受部41の厚さ方向に沿って貫通する貫通孔42が形成されている。各貫通孔42には、プラテンローラ13のローラシャフト13eの両端が挿通されており、これによりプラテンローラ13が回転可能に支持されている。
【0024】
ベース部40の幅方向両端部には、カバーブラケット32の連結部35に連結される一対の背面プレート43が形成されている。この背面プレート43は、ベース部40の幅方向の両端部における外周縁から軸受部41とは反対側に厚さ方向に沿って延出する部材であり、互いに平行な状態でベース部40を幅方向両側から挟むように対向配置されている。背面プレート43は、その基端から先端に向かうにつれ漸次先細る側面視三角形状に形成されており、背面プレート43の基端(底辺)とベース部40の長辺とが一致しているとともに、ベース部40の長手方向両端から先端に向けて傾斜する傾斜面44が形成されている。そして、傾斜面44は、ベース部40の長手方向中央部で交わっており、この交点が背面プレート43の先端(頂点)を構成している。背面プレート43の先端側には、背面プレート43の厚さ方向に沿って貫通する貫通孔45が形成されている。この貫通孔45は、一対の背面プレート43間において重なるように形成された丸孔である。
【0025】
ここで、ローラブラケット31とカバーブラケット32とは、ローラブラケット31の背面プレート43が、カバーブラケット32の連結部35の外側を覆うようにして組み付けられている。具体的には、ローラブラケット31とカバーブラケット32とは、背面プレート43及び連結部35の各貫通孔36,45を重ね合わせた状態で組み付けられており、これら貫通孔36,45内にローラブラケット31とカバーブラケット32とを回動可能に連結する円柱形状の連結ピン33が設けられている。この連結ピン33は、プラテンローラ13の軸方向に直交するように貫通孔36,45内に設けられており、その両端が背面プレート43の貫通孔45内に固定されるとともに、連結部35の貫通孔36内に遊挿されている。これにより、ローラブラケット31は、連結ピン33を中心としてカバー8の面方向に直交する面内に沿って回動可能に支持される。言い換えると、ローラブラケット31は、プラテンローラ13の軸方向に直交する方向に設けられた連結ピン33によりカバーブラケット32に連結されており、プラテンローラ13の軸方向に直交する方向に回動可能に支持される。つまり、連結機構30におけるローラブラケット31の回動軸は、一対の凹部10d間の中間点を通り凹部10dの軸方向に垂直な面内に含まれ、カバー8と平行に配置されていることになる。
【0026】
また、カバーブラケット32の連結部35とローラブラケット31の背面プレート43との間には間隙を有しており、連結ピン33は連結部35の貫通孔36内を摺動するようになっている(図4中矢印参照)。つまり、カバーブラケット32とローラブラケット31とは連結ピン33の軸方向に沿って「あそび」を有しており、ローラブラケット31は連結ピン33の軸方向にも移動(スライド)可能となっている。そのため、プラテンローラ13の位置が、サーマルヘッド11が固定されているフレーム10の位置に容易に合うため、無理な応力が残らない状態でプラテンローラ13とサーマルヘッド11とを均等に接触させることができ、印字精度を向上させることができる。
【0027】
(作用)
次に、本実施形態の連結機構の作用について説明する。以下の説明では、カバー8を閉じる際に幅方向片側においてカバー8を押下した場合におけるプラテンローラ13のロック方法について説明する。
図7は、カバーの閉動作時におけるプラテンローラと側壁部とを示す正面図である。
まず、記録紙収納部7内に記録紙Pをセットした後、記録紙Pの先端をサーマルヘッド11より下流側へ引き出した状態でカバー8を幅方向片側において押下して閉方向に回動させる。すると、カバー8に設けられたプラテンローラ13の両端部が側壁部10a及びロックアーム17の上縁に当接した状態で保持される。
【0028】
ここで、カバー8を幅方向片側において下方(閉方向)に向けてさらに押下すると、この押下力によりカバー8は面方向においてシャフト23に直交する方向を軸として捩れた(回動)状態となる(例えば、図7中鎖線D1,D2参照)。つまり、プラテンローラ13とカバー8とは、連結機構30を介して回動可能に連結されているため、プラテンローラ13の両端部が側壁部10a及びロックアーム17の上縁に当接した状態で、カバー8がプラテンローラ13に対してカバー8の面方向に直交する面内に沿って相対的に回動する。そして、カバー8を押下する際の押下力は、カバーブラケット32から連結ピン33を介してローラブラケット31へと伝達される。ローラブラケット31に伝達された力(上述した押下力)は、軸受部41を介してローラシャフト13eを軸方向に直交する方向に作用する。これにより、プラテンローラ13は、ローラシャフト13eの両端部から下方に向けて均等に押下されることになる。
【0029】
そして、押下されたプラテンローラ13は、ローラ本体13cの外周面がサーマルヘッド11におけるプラテンローラ13との対向面上を摺動しながら凹部10d内へと嵌まり込んでいく。具体的には、カバー8を下方へ押し込むと、凹部10dとロックアーム17との間にローラシャフト13eの両端部が入り込んでいくことで、ロックアーム17が回動シャフト20を中心にして回動して凹部10dとロックアーム17との間が開いていく。この時、ロックアーム17が回動すると、弾性部材支持部17dとヘッド支持体12との間に介在された弾性部材15が短縮し、弾性部材15に弾性力(復元力)が生じることになる。そして、ローラシャフト13eの両端部が凹部10d内に完全に入り込むと、短縮された弾性部材15が伸長してロックアーム17がローラシャフト13eの両端部を挟みこむ方向に回動する。この回動時にロックアーム17の支持部17bとローラシャフト13eの外周面とが接触することで、カチッという係合音が発生する。本実施形態では、ローラシャフト13eの両端部がほぼ同時に係合されるため、一対のロックアーム17とローラシャフト13eの両端部とのそれぞれの係合音が同時に発生する。つまり、係合音が発生した際には、ローラシャフト13eの両端部がロックされて両ロック状態であると判断することができる。
【0030】
また、これに伴いカバー8が完全に閉じて記録紙収納部7が閉塞される。これにより、プラテンローラ13の両端部は、サーマルヘッド11との間に記録紙Pを挟んだ状態で、側壁部10aの凹部10d内に完全に収容され、凹部10dの外周縁とロックアーム17のフック部17aとの間で嵌まり込んだ状態で保持される。これにより、カバー8の閉動作に伴ってプラテンローラ13の両端部がほぼ同時にロックされる。
【0031】
(サーマルプリンタの作動方法)
次に、サーマルプリンタの作動方法について説明する。
カバー8を閉じてプラテンローラ13がロックされた後、サーマルプリンタ3を作動させ、プラテンローラ13を回転させる。すると、ロール紙が回転しながらロール紙から引き出された記録紙Pが、プラテンローラ13の周面とサーマルヘッド11との間に挟まれた状態で下流側に送り出される。これと同時に、多数の発熱素子が適宜熱を発したサーマルヘッド11によって、送り出された記録紙Pに対して各種の文字や図形等を明瞭に印刷することができる。その結果、記録紙Pを、レシートやチケット等として使用することができる。
【0032】
なお、カバー8を開く際には、ケース本体2に設けられたロック解除手段を操作する。具体的には、ロック解除手段を操作すると、ロックアーム17の操作片17fが下方に向けて押下され、フック部17aによりプラテンローラ13の両端部13a,13bのロックが解除される。この時、ロックアーム17に設けられた弾性部材支持部17dがサーマルヘッド11に接近することで、弾性部材15が短縮されて弾性部材15に弾性力が生じる。そして、この弾性力がサーマルヘッド11を介してプラテンローラ13に伝達され、プラテンローラ13が凹部10d内から押し出される。よって、カバー8がシャフト23を中心に回動してカバー8を開くことができる。
【0033】
このように、本実施形態では、プラテンローラ13とカバー8との間に、プラテンローラ13の軸方向中央部において両者間を連結する連結機構30が設けられ、連結機構30が連結ピン33を中心としてカバー8の面方向に直交する面内に沿って回動する構成とした。
この構成によれば、カバー8を幅方向片側において下方(閉方向)に向けて押下した場合であっても、カバー8を押下する際の押下力が、カバーブラケット32から連結ピン33を介してローラブラケット31へと伝達される。つまり、カバー8を押下する力が必ず連結ピン33を介して伝達されるため、カバー8を幅方向中央部以外の部位において押下した場合でも、プラテンローラ13の軸方向中央部から下方に向けて押下力が作用する。そして、連結ピン33を介してローラブラケット31に伝達された力(上述した押下力及び復元力)が、軸受部41を介してローラシャフト13eを軸方向に直交する方向に向けて作用することになる。これにより、プラテンローラ13には、ローラシャフト13eの両端部が下方に向けて均等に押下されることになり、カバー8の閉動作に伴ってプラテンローラ13の両端部をほぼ同時にロックすることができる。つまり、カチッという係合音がした場合には、常に両ロックされていると判断することができる。
したがって、プラテンローラ13とサーマルヘッド11とを均等に接触させることができるため、プラテンローラ13により記録紙Pを連続的に送り出すことができ、記録紙Pに正確、かつ高精度な印字を行うことができる。また、カバー8を幅方向片側において押下した場合であっても、従来のように片ロック状態になることを防ぐことができるため、カバー8の幅方向中央部を意識的に押下したり、閉動作後にロック状態を確認したりすることもない。よって、操作性を向上させた上で、フレーム10の凹部10d内にプラテンローラ13の両端部を確実にロックすることができる。
【0034】
また、ローラブラケット31は連結ピン33の軸方向にスライド可能に構成されているため、連結機構30とフレーム10との間の寸法誤差を許容することができる。すなわち、カバー8の閉動作時にプラテンローラ13のローラシャフト13eと側壁部10aの凹部10dとが、凹部10dの幅方向にずれている場合であっても、ローラブラケット31が連結ピン33の軸方向にスライドして確実に凹部10d内に入り込ませることができる。これにより、連結機構30とフレーム10との間の寸法誤差が生じた場合であっても、プラテンローラ13とサーマルヘッド11とを均等に接触させた状態で、フレーム10の凹部10d内にプラテンローラ13の両端部を確実にロックすることができる。
【0035】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、本実施形態では中空孔を有するように巻回されたロール紙を用いて説明したが、芯管に記録紙が巻回されたロール紙を用いてもよい。
また、本実施形態では、サーマルプリンタ3を情報端末1に採用した場合について説明したが、これに限らず、例えば駐車場或いはセルフ式のガソリンスタンドにおける給油機の精算機や、各種の飲食店舗内等に設置される券売機等に採用することも可能である。
また、本実施形態では、ローラブラケット31とカバーブラケットとを連結ピン33を用いて回動可能に連結した場合について説明したが、両者間をボール等によって連結するような構成にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係るサーマルプリンタを備えた情報端末の外観斜視図である。
【図2】プラテンローラの取り付け時を示すサーマルプリンタの外観斜視図である。
【図3】図2のA−A’線に沿う断面図である。
【図4】カバーの開状態におけるサーマルプリンタの側面図である。
【図5】カバーの開状態におけるサーマルプリンタの正面図である。
【図6】プラテンローラ及びローラブラケットの斜視図である。
【図7】カバーの閉動作時におけるプラテンローラと側壁部とを示す正面図である。である。
【符号の説明】
【0037】
2…ケース本体(筐体) 3…サーマルプリンタ 7…記録紙収納部 8…カバー(蓋部材) 10…フレーム 10d…凹部 11…サーマルヘッド 13…プラテンローラ 13e…ローラシャフト 30…連結機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録紙が収納される開口部を有する筐体と、
前記記録紙に印刷を行うサーマルヘッドと、
前記筐体の前記開口部を開閉可能な蓋部材と、
前記蓋部材に設けられ、前記蓋部材の閉状態において前記サーマルヘッドとの間に前記記録紙を挟んだ状態で回転することで前記記録紙を送り出すプラテンローラと、
前記筐体内に設けられ、前記サーマルヘッドを支持するフレームと、
前記フレームに設けられ、前記蓋部材の閉状態において前記プラテンローラのシャフトの両端部を収容する一対の軸受部と、
前記蓋部材の閉動作に伴って前記軸受部との間で前記プラテンローラの前記シャフトを自動的に係合する一対のロックアームと、
前記プラテンローラを前記蓋部材に対して回動可能に連結する連結機構と、を備え、
前記連結機構における前記プラテンローラの回動軸は、前記一対の軸受部の中間点を通り前記軸受部の軸方向に垂直な面内に含まれ、前記蓋部材と平行に配置されていることを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項2】
前記連結機構は、前記プラテンローラを前記回動軸の軸方向に沿って移動可能に支持していることを特徴とする請求項1記載のサーマルプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−52278(P2010−52278A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−219800(P2008−219800)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】