説明

サーマルプリンタ

【課題】サーマルプリンタにおいて、サーマルプリントヘッドとプラテンローラとが分離された構造を有しつつ、これらを簡単に着脱可能とし、しかも、用いられる用紙の厚さに応じて、用紙と発熱素子列との適正な密着を得る。
【解決手段】カバーフレーム(17)に着脱可能のサーマルプリントヘッドユニット40を備え、本体フレーム(18)に着脱可能のプラテンローラユニット(20)を備えて、サーマルプリントヘッドユニット(40)とプラテンローラユニット(20)とが分離された構造を有しつつ、段付きピン調整部70が段付きピン60の位置を変位させることで、段付きピン60に引っ掛けられているサーマルプリントヘッドユニット40の姿勢(傾き)を変化させて、感熱紙200(用紙)の厚さに応じた、感熱紙200と発熱素子列42との適正な密着を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサーマルプリンタに関し、詳細には、サーマルプリントヘッドユニットとプラテンローラユニットとの構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリンタは、サーマルプリントヘッドによって感熱用紙に情報を印刷するものであるが、高品位な印刷を実現するためには、用紙をサーマルプリントヘッドの発熱素子列に適切に密着させることが重要であり、そのため用紙は、プラテンローラにより発熱素子列に押しつけられて、発熱素子列との密着が確保されている。
【0003】
一方、このようなサーマルプリンタに用いられる用紙には、その厚さが種々異なるものがあるが、厚さの薄いものと厚いものとでは、発熱素子列との密着性に差が生じることが知られている。
【0004】
つまり、例えば、厚さの薄い用紙を用いた場合には、用紙が発熱素子列の適切な位置に密着して適正な印刷を実現できるのに対して、厚さの厚い用紙を用いた場合には、サーマルプリントヘッドの変位分に加えて、厚さの増大に伴う用紙の剛性増大(腰が強くなる)により、発熱素子列の適切な位置で適正な密着が得られなくなる。
【0005】
そこで、用いられる用紙の厚さに応じてサーマルプリントヘッドの位置を変位可能にして、用紙の厚さに応じて発熱素子列と用紙との位置関係を調整可能とし、用紙の厚さが厚くなった場合にも発熱素子列と用紙との適正な密着を得るようにした技術が提案されている(特許文献1,2)。
【0006】
すなわち、この技術は、プラテンローラに対するサーマルプリントヘッドを、そのプラテンローラの周方向に沿った異なる2つの位置間で変位可能とするものであり、これにより、用いられる用紙の厚さに応じて、サーマルプリントヘッドを、用紙の進行方向に沿って前後させて、用紙の厚さの差異に拘わらず、用紙に接する発熱素子列の位置(用紙の進行方向(前後方向)に沿った位置)を一定に保つ(プラテンローラの回転軸中心と)ものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−315285号公報
【特許文献2】特開2009−101524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、この先行技術文献に開示された技術は、用紙に接する発熱素子列の位置を一定に保つことで、用紙の厚さの差異に拘わらず、用紙と発熱素子列との適正な密着を得ようとするものであるが、実際には、用紙の厚さが厚くなるにしたがって強くなる用紙の剛性(腰)の影響により、用紙が密着する発熱素子列の位置は、用紙の厚さが薄い場合において用紙が密着する発熱素子列の位置とは異なる位置になっている。
【0009】
このため、先行技術文献による技術によっては実際には、用紙の厚さが厚い場合に、用紙と発熱素子列との適正な密着を得ることができない、という問題がある。
【0010】
また、サーマルプリントヘッドやプラテンローラは必要に応じて交換することが求められているため、その着脱作業に要する労力を軽減するために、工具等を用いずに手作業のみで着脱を行える構造であることが望ましい。
【0011】
さらに、サーマルプリンタは、用紙を補充・交換するために、サーマルプリンタの本体に、開閉する蓋体が設けられていて、蓋体を開けた状態で、本体内に設けられた用紙収容部に用紙をセットするように構成されている。
【0012】
そして、プラテンローラはサーマルプリンタの本体側に、サーマルプリントヘッドは蓋体側に設けられ、蓋を閉じるだけの簡単な操作によって、本体側のプラテンローラと蓋体側のサーマルプリントヘッドとの間に用紙の先端部が挟まれて、用紙のセッティングを完了することができるのが好ましい。
【0013】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、サーマルプリントヘッドとプラテンローラとが分離された構造を有しつつ、これらを簡単に着脱可能とし、しかも、用いられる用紙の厚さに応じて、用紙と発熱素子列との適正な密着を得ることができるサーマルプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るサーマルプリンタは、蓋体にサーマルプリントヘッドユニットを、本体にプラテンローラユニットを備えて、サーマルプリントヘッドとプラテンローラとが分離された構造を有しつつ、両者をそれぞれ蓋体または本体から、工具無しの手作業で簡単に着脱可能とし、段付きピン調整部が段付きピンの位置を変位させることで、段付きピンに引っ掛けられているサーマルプリントヘッドユニットの姿勢を変化させて、用いられる用紙の厚さに応じた、用紙と発熱素子列との適正な密着を得るものである。
【0015】
すなわち、本発明に係るサーマルプリンタは、本体に対して開位置と閉位置との間で移動可能の蓋体を備え、前記蓋体を前記閉位置に移動させた状態においてサーマルプリントヘッドユニットの発熱素子列がプラテンローラユニットのプラテンローラに接し、前記蓋体を前記閉位置から移動させた状態において前記発熱素子列と前記プラテンローラとが離れるように、前記プラテンローラユニットが前記本体に、前記サーマルプリントヘッドユニットが前記蓋体にそれぞれ設けられ、前記サーマルプリントヘッドユニットと前記プラテンローラユニットとには、前記蓋体を前記閉位置に移動させた状態において、互いに係合することにより前記発熱素子列と前記プラテンローラとの相対的な動きを規制する位置決め部がそれぞれ形成され、前記サーマルプリントヘッドユニットは、前記発熱素子列よりも前方に位置する前端に、前記蓋体に形成された、後方に突出する爪に引っ掛けられる引掛け部が形成され、前記発熱素子列よりも後方の部分のうち幅方向の略中央に、前記蓋体から下方に延びた段付きピンの下端部に形成された段付き部に引っ掛けられるピン係合切欠き部が形成され、前記蓋体には、前記段付きピンを、その軸方向に変位させて前記段付き部の位置を変化させる段付きピン調整部が設けられ、前記プラテンローラユニットは、前記蓋体の前記閉位置から移動方向に一致する方向に沿って、前記本体に対して着脱可能に設けられていることを特徴とする。
【0016】
ここで、蓋体の開閉方式は、例えば、クラムシェル方式と称される軸回り回動によるものの他、直線的に移動するものや本体から分離可能なものなど種々のものを適用することができる。
【0017】
サーマルプリントヘッドユニットは、発熱素子列(発熱素子が、印刷される用紙の幅に沿って並べられたもの)が形成されたサーマルプリントヘッドを少なくとも含む構成であって、このサーマルプリントヘッドに付加されたブラケットやフレームなどのヘッドフレームを含むものであってもよい。
【0018】
同様に、プラテンローラユニットは、プラテンローラを少なくとも含む構成であって、このプラテンローラに付加されたブラケットやフレームなどを含むものであってもよい。
【0019】
また、蓋体を閉位置に移動させた状態において発熱素子列とプラテンローラとは接するが、この両者が接した状態においては、例えば蓋体のフレームを構成するカバーフレームと、このカバーフレームに対して着脱可能に設けられたサーマルプリントヘッドユニットとの間に、コイルバネや板バネ、その他の弾性部材などによる付勢手段を設けて、この付勢手段による付勢力により、発熱素子列をプラテンローラに押しつけた状態とするのが好ましい。
【0020】
サーマルプリントヘッドユニットとプラテンローラユニットとに設けられた位置決め部は、蓋体を閉位置に移動させた状態において、互いに係合し、発熱素子列とプラテンローラとの相対的な動きを規制するものであるが、サーマルプリントヘッドユニットは、その前端の引掛け部が蓋体の爪に乗り上げて引っ掛けられ、後方のピン係合切欠き部が段付きピンの段付き部に乗り上げて引っ掛けられているため、サーマルプリントヘッドユニット単体は下方への移動が規制されている状態である。
【0021】
このため、位置決め部は、例えば発熱素子列とプラテンローラとが相対的に、用紙の進行方向(用紙の送り方向)に沿って動くのを規制する一方、両者の相対的な回転や上下方向(プラテンローラの回転軸と発熱素子列・プラテンローラの接触部分とを結んだ直線方向)への動きについては規制しないことができる。
【0022】
すなわち、発熱素子列がプラテンローラに対して、用紙の進行方向については動かされることなく、傾く動きは許容されるものであればよい。
【0023】
蓋体に形成された爪は、蓋体のフレームであるカバーフレームに形成されていてもよい。また、その数は1つに限らずに、複数形成されていることが好ましく、特に、サーマルプリントヘッドユニットの幅方向の中央部を挟んで両側に少なくとも1つずつ形成されていることが、引っ掛けられた状態の安定性の観点から好ましい。
【0024】
蓋体に設けられた段付きピン調整部も、蓋体のフレームであるカバーフレームに形成されていてもよい。
【0025】
また、この段付きピン調整部によって変化させられる段付き部の位置は、使用が想定される複数種類の感熱用紙の厚みの差に対応して予め設定されている。
【0026】
プラテンローラユニットがサーマルプリンタの本体から着脱される移動方向は、蓋体の閉位置からの移動方向に一致する方向であるが、この「移動方向に一致する方向」とは、例えば蓋体が本体に対して回動しながら開くように動くものの場合に、その回動の軌跡となる「円弧状に沿った方向」を意味するものではなく、蓋体が閉位置から移動する瞬間における移動方向(接線方向)を意味する。
【0027】
以上のように構成された本発明に係るサーマルプリンタによれば、サーマルプリントヘッドとプラテンローラとが分離された構造を有しているため、蓋体を閉じるだけの簡単な操作によって、用紙のセッティングを完了することができる。
【0028】
また、サーマルプリントヘッドユニットは、その前端に形成された引掛け部が蓋体の爪から外されるとともに、その後方部分に形成されたピン係合切欠き部が、段付きピンの下端部から外されるだけの簡単な手作業により、サーマルプリントヘッドユニットが蓋体から取り外され、一方、これとは反対の順序で、ピン係合切欠き部が段付きピンの段付き部に引っ掛けられ、引掛け部が蓋体の爪に引っ掛けられるだけの簡単な手作業により、サーマルプリントヘッドユニットが蓋体に取り付けられ、サーマルプリントヘッドユニットの簡単な交換作業を実現している。
【0029】
一方、プラテンローラユニットも、蓋体の閉位置から移動方向に一致する方向に沿って引き出されるだけの簡単な操作で本体から取り外され、これとは反対方向に押し込まれるだけの簡単な操作で本体に取り付けられるため、簡単な交換作業を実現している。
【0030】
また、蓋体が閉位置にある状態では、サーマルプリントヘッドユニットとプラテンローラユニットとは、互いの位置決め部が係合することで、両者間の動きが特定の方向だけに規制されるが、この結果、プラテンローラと発熱素子列との位置関係を特定の範囲に維持することができる。
【0031】
ここで、サーマルプリントヘッドユニットは、引掛け部である前端とピン係合切欠き部が形成された後端とがそれぞれ、蓋体(カバーフレーム)の爪、段付きピンの下端部の段付き部に乗り上げて係止されるため、前後方向に関して上下に傾き可能となっているところ、その傾きの中心は、互いに係合している位置決め部であり、この位置決め部は、プラテンローラと発熱素子列との接触部分とは異なる位置であるため、傾きの程度に応じて、プラテンローラに接触する発熱素子列の前後方向における位置が変化する。
【0032】
そして、段付きピン調整部によって段付き部の位置(上下方向に沿った位置)が調整されることにより、この段付き部に乗り上げて引っ掛けられているサーマルプリントヘッドユニットの後方の部分であるピン係合切欠き部が上下に変位させられて、サーマルプリントヘッドユニットの傾き(前後方向に対する)が変化する。
【0033】
ここで、具体的には、用いられる用紙(感熱紙)の厚さが厚いものであるときは、段付きピン調整部によって、サーマルプリントヘッドユニットの後部側の高さ位置を低くするようにサーマルプリントヘッドユニットの傾きを変化させ、用いられる用紙の厚さが薄いものであるときは、サーマルプリントヘッドユニットの後部側の高さ位置を高くするようにサーマルプリントヘッドユニットの傾きを変化させることができる。
【0034】
このとき、サーマルプリントヘッドユニットの傾き変化の中心は、ピン係合切欠き部よりも前方にある位置決め部であるため、サーマルプリントヘッドユニットの後部側の高さ位置が低くなると、プラテンローラに接する発熱素子列の部分は、サーマルプリントヘッドユニットの後部側の位置が高い場合におけるプラテンローラに接する発熱素子列の部分よりも、後方の部分となる。
【0035】
さらに、プラテンローラと発熱素子列との間に上述した厚さの厚い用紙が進入してくると、サーマルプリントヘッドユニットは、その用紙の厚さ分だけ上方に持ち上げられる。この動きは位置決め部により許容された動きであるが、このときの上方への動きは、サーマルプリントヘッドユニットの後端側(ピン係合切欠き部)を中心とした動きによるものであるため、サーマルプリントヘッドユニットの前上がりの傾き程度はさらに強くなり、用紙が接する発熱素子列の部分の位置は後方の部分となる。
【0036】
一方、用いられる用紙の厚さが薄いものであるときは、段付きピン調整部によってサーマルプリントヘッドユニットの後部側の高さ位置を高くするようにサーマルプリントヘッドユニットの傾きを変化させ、この状態でプラテンローラと発熱素子列との間に上述した厚さの薄い用紙が進入し、サーマルプリントヘッドユニットが、その用紙の厚さ分だけ上方に持ち上げられても、用紙が接する発熱素子列の部分の位置が後方に移動することはほとんどない。
【0037】
したがって、本発明のサーマルプリンタによれば、厚さの厚い用紙を用いた場合は、厚さの薄い用紙を用いた場合に比べて、用紙が接する発熱素子列の部分が後方に移動することになる。
【0038】
ここで、厚さの厚い用紙は、薄い用紙に比べてその剛性(腰)が強いため、相対的に撓みにくいという特性を有する。このため、用紙が接するであろうと狙って設定した発熱素子列の部分での接触圧は目論見よりも小さくなる傾向にあり、その目論んだ接触部分では高品位の印刷を行い得ない。
【0039】
しかし、本発明に係るサーマルプリンタは、厚さの厚い用紙を用いたときは、用紙が最初に接触する発熱素子列の部分を、薄い用紙を用いたときに用紙が最初に接触する発熱素子列の部分よりも後方に移動させているため、厚い用紙の剛性によりその最初に接触する発熱素子列の部分よりも前方の部分で適正な接触を得ることができ、この適正な接触を得る部分において高品位の印刷を実現することができる。
【0040】
そして、この適正な接触を得る部分は、薄い用紙を用いたときに用紙が最初に接触する発熱素子列の部分と略同一の位置であり、これにより、用いる用紙の厚さが厚いものであっても、薄いものであっても、高品位の印刷を実現することができる。
【0041】
また、本発明に係るサーマルプリンタにおけるサーマルプリントヘッドユニットは、その後方の部分が幅方向の略中央1箇所のみで引っ掛けられて支持されているため、この支持されている部分(段付き部に乗り上げている幅方向の略中央部)を中心として幅方向に関して上下に揺動する自由度を有している。
【0042】
したがって、サーマルプリントヘッドユニットの発熱素子列が接触するプラテンローラが幅方向において、その摩耗程度に差が生じる等して例えば円錐台状に摩耗しても、サーマルプリントヘッドユニットの幅方向に関して傾くことで、その幅方向の摩耗の差を吸収し、発熱素子列とプラテンローラとの幅方向における接触を略均一なものとすることができる。
【0043】
また、プラテンローラユニットは、蓋体の閉位置からの移動方向に一致する方向に沿って本体から着脱可能に設けられているが、プラテンローラユニットを本体から取り外す際には、蓋体の閉位置からの移動方向に一致する方向に引き出さなければばらないため、蓋体が閉じている状態で、誤って外れるのを有効に防止することができ、また蓋体が閉じている状態では、サーマルプリントヘッドユニットの位置決め部とプラテンローラユニットの位置決め部とが互いに係合して、しかも、この位置決め部での係合力は、プラテンローラユニットを本体から取り外す方向とは反対の方向に向けての押圧力となるため、蓋体が閉じた状態においては、プラテンローラユニットを本体に強固に固定しておくことができる。
【0044】
本発明に係るサーマルプリンタにおいては、前記段付きピン調整部に、前記段付きピンが通過する長孔が形成されて、前記段付きピンが通過した状態で、前記長孔の延びた方向に沿って相対的に変位可能に設けられた可動調整部材であって、前記長孔の縁部は、前記変位可能の範囲で、その厚さが異なるように形成されたカムであり、前記段付きピンの、前記長孔から突出した上端部には、前記段付きピンの外径よりも大きな径の、前記長孔の縁部に乗り上がる大径部が形成されていることが好ましい。
【0045】
このように好ましい構成のサーマルプリンタによれば、長孔に沿って可動調整部材を変位させるだけの簡単な操作で、段付きピンの下端部である段付き部の上下位置を調整することができ、これによりサーマルプリントヘッドの傾きを簡単に調整することができる。そして、長孔に沿って可動調整部材を変位させる操作は、工具等を用いることなく手作業で簡単に行うことができる。
【0046】
本発明に係るサーマルプリンタにおいては、前記ピン係合切欠き部は、後端縁から前方に向けて、前記爪と前記引掛け部との前後方向に沿った引掛かり代よりも長く切り欠かれているものであることが好ましい。
【0047】
このように好ましい構成のサーマルプリンタによれば、ピン係合切欠き部は、サーマルプリントヘッドユニットの後端縁から前方に向けて、爪と引掛け部との前後方向に沿った引掛かり代よりも長く切り欠かれているため、サーマルプリントヘッドユニットを蓋体に取り付ける際は、まず、ピン係合切欠き部を段付きピンの段付き部に乗り上げさせて引っ掛け、ピン係合切欠き部に段付きピンを通した(引っ掛けた)ままの状態で、段付きピンがピン係合切欠き部の切り欠かれた根本に位置するようにサーマルプリントヘッドユニットを後方に移動させ、その後にサーマルプリントヘッドユニットの前端を、蓋体の爪の背面側に移動させ、サーマルプリントヘッドユニットを、爪との引掛かり代分だけ前方に移動させることで、サーマルプリントヘッドユニットを、前端で爪に引っ掛け、後部を段付きピンに引っ掛けた状態で、サーマルプリントヘッドユニットを簡単に蓋体に取り付けることができる。
【0048】
また、上記操作と反対の操作により、サーマルプリントヘッドユニットを簡単に蓋体から取り外すことができる。
【0049】
本発明に係るサーマルプリンタにおいては、前記プラテンローラの両端から、前記プラテンローラの回転軸がそれぞれ突出し、前記突出した回転軸の部分には、前記プラテンローラの回転軸を回転自在に支持する軸受が設けられ、前記本体の両側部には、前記軸受の外径と同一か、または前記回転軸の直径よりもわずかに大きい幅で、上端が開口し下方に延びたローラ係合切欠きが形成され、前記ローラ係合切欠きに前記軸受が嵌合することにより、前記プラテンローラが前記本体に取り付けられていることが好ましい。
【0050】
このように好ましい構成のサーマルプリンタによれば、プラテンローラの両端から突出した回転軸を軸受が支持し、本体に形成されたローラ係合切欠きは、その幅が軸受の外径と等しいか、またはわずかに大きいため、このローラ係合切欠きに軸受を嵌合させることができ、このローラ係合切欠きに軸受を嵌合させて、プラテンローラを本体に取り付けた構造とすることにより、プラテンローラを本体に着脱する操作を簡単化することができるとともに、本体に取り付けられた状態での本体に対するプラテンローラのがたつきを抑制することができる。
【0051】
本発明に係るサーマルプリンタにおいては、前記プラテンローラユニットは、前記プラテンローラと、前記プラテンローラの両側方にそれぞれ、前記回転軸が貫通して設けられたローラ支持部材とを備え、前記ローラ支持部材は、前記回転軸が前記ローラ係合切欠きに係合した状態において、前記本体の、前記ローラ係合切欠きの直下に形成されたボスを、弾性力でその両側から挟持する脚部と、前記ボスの外周面に接するように前記ボスの外径と同一か、または前記ボスの外径よりわずかに大きい幅で形成された上下方向に延びたボス係合切欠き部とを有し、前記ボスを前記ボス係合切欠き部に配置させつつ前記脚部で前記ボスを挟持することが好ましい。
【0052】
このように好ましい構成のサーマルプリンタによれば、プラテンローラユニットは、その軸受がローラ係合切欠きに係合することで、本体に取り付けられるが、この軸受とローラ係合切欠きとの係合だけでは、プラテンローラユニット全体の回転を規制することはできない。
【0053】
しかし、プラテンローラユニットが、プラテンローラの両側方にそれぞれ、ボス係合切欠き部と脚部とを有するローラ支持部材を備え、このローラ支持部材のボス係合切欠き部に、本体のローラ係合切欠きの直下に形成されたボスを配置させつつ、脚部でボスを挟持することにより、上述したプラテンローラユニット全体の回転を規制し、プラテンローラユニット全体の姿勢を安定させることができる。
【0054】
本発明に係るサーマルプリンタにおいては、前記脚部は、弾性力を有する樹脂部材により形成されたものであり、前記ボス係合切欠き部は樹脂部材よりも剛性の高い金属部材により形成されていることが好ましい。
【0055】
このように好ましい構成のサーマルプリンタによれば、ボスが配置されるボス係合切欠き部は、剛性の高い金属部材で形成されているため、ボス係合切欠き部とボスの外径との間の隙間を精度良く管理することができ、一方、ボスを挟持する脚部については弾性力を有する樹脂部材によって形成することにより、挟持状態と弾性力に抗しての挟持状態からの離脱とを容易に切り替えることができる。
【発明の効果】
【0056】
本発明に係るサーマルプリンタによれば、サーマルプリントヘッドユニットとプラテンローラユニットとが分離された構造を有しつつ、これらを簡単に着脱可能とし、しかも、用いられる用紙の厚さに応じて、用紙と発熱素子列との適正な密着を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態としてのサーマルプリンタを示す外観図(通常の使用時の状態)である。
【図2】図1に示したサーマルプリンタの蓋体を開位置に移動した状態を示す図である。
【図3】図2の状態から感熱紙を除去した状態を示す図である。
【図4】蓋体のカバーフレームにサーマルプリントヘッドユニットおよびヘッドカバーダンパーユニットが取り付けられている状態を示す図である。
【図5】(a)はカバーフレームからヘッドカバーダンパーユニットを取り外した状態を示す図、(b)は取り外されたヘッドカバーダンパーユニットを示す図である。
【図6】ヘッドカバーダンパーユニットの詳細構造を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は矢視Aによる側面図であってバネが伸びた状態を示す図、(c)は矢視Aによる側面図であってバネが縮んだ状態を示す図である。
【図7】(a)はカバーフレームからさらサーマルプリントヘッドユニットを取り外した状態を示す図、(b)は取り外されたサーマルプリントヘッドユニットを示す図である。
【図8】図7のB−B線に沿った要部断面を示す図であり、(a),(b),(c),(d)の順に、カバーフレームにサーマルプリントヘッドユニットを取り付ける過程を示す。
【図9】カバーフレームに取り付けられたサーマルプリントヘッドユニットの幅方向について上下に傾く様子を示す図であり、(a)は図5(a)相当の図、(b)は(a)の矢視Cによる図であって上下に傾いていない状態、(c)および(d)は(a)の矢視Cによる図であって幅方向のいずれか一方が上下した状態をそれぞれ示す。
【図10】図1において蓋体の外装(樹脂製)が取り外された状態を示す斜視図である。
【図11】段付きピン調整部を示す図であり、(a)は図10に示したカバーフレームよりも外方から臨んだ図であり、(b)は蓋体を開位置に移動した状態でカバーフレームよりも内方から臨んだ図である。
【図12】段付きピン調整部の位置(厚さの薄い感熱紙に対応した位置)に応じたサーマルプリントヘッドユニットの傾きを示す図であり、(a)は図11(a)相当の図、(b)は図11(b)相当の図、(c)は図8相当の図である。
【図13】段付きピン調整部の位置(厚さの厚い感熱紙に対応した位置)に応じたサーマルプリントヘッドユニットの傾きを示す図であり、(a)は図11(a)相当の図、(b)は図11(b)相当の図、(c)は図8相当の図である。
【図14】プラテンローラユニットが取り付けられる本体フレームを示す斜視図である。
【図15】本体フレームから取り外されたプラテンローラユニットを示す斜視図である。
【図16】プラテンローラユニットの支持部材の詳細を示す図であり、(a)は図15の矢視Dによる図、(b)は図15の矢視Eによる図である。
【図17】プラテンローラユニットの支持部材の詳細を示す図であり、(a)は図15の矢視Fによる図、(b)は(a)のG部詳細を示す図である。
【図18】プラテンローラユニットを本体フレームに取り付ける経過を示す図(その1)であり、(a)は図16(a)相当の図、(b)は図16(b)相当の図である。
【図19】プラテンローラユニットを本体フレームに取り付ける経過を示す図(その2)であり、(a)は図16(a)相当の図、(b)は図16(b)相当の図である。
【図20】プラテンローラユニットの位置決め切欠きにサーマルプリントヘッドユニットの突起が係合した状態を示す要部透視図である。
【図21】サーマルプリントヘッドユニットとプラテンローラユニットとが互いに係合して位置決めされている状態におけるサーマルプリントヘッドユニットの傾きを示す図であり、(a)は厚さの厚い感熱紙に対応したサーマルプリントヘッドユニットの傾きを示す図であり、(b)は厚さの薄い感熱紙に対応したサーマルプリントヘッドユニットの傾きを示す図である。
【図22】発熱素子列とプラテンローラとの接点の間に感熱紙が進入してくる状態を示す図であり、(a)は厚さの厚い感熱紙に対応したサーマルプリントヘッドユニットの傾きと厚さの厚い感熱紙との組み合わせ状態を示す図であり、(b)は厚さの薄い感熱紙に対応したサーマルプリントヘッドユニットの傾きと厚さの薄い感熱紙との組み合わせ状態を示す図である。
【図23】感熱紙とサーマルプリントヘッドユニットの発熱素子列との接点を示す詳細図であり、(a)は厚さの厚い感熱紙に対応したサーマルプリントヘッドユニットの傾きと厚さの厚い感熱紙との組み合わせ状態を示す図であり、(b)は厚さの薄い感熱紙に対応したサーマルプリントヘッドユニットの傾きと厚さの薄い感熱紙との組み合わせ状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、本発明に係るサーマルプリンタの具体的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0059】
図1は、本発明の一実施形態としてのサーマルプリンタ100を示す外観図であり、通常の使用時の状態を示すものである。このサーマルプリンタ100は、図2に示すように、本体11の後端部を回転中心として上方から後方に回動して開放される蓋体12を備えている。
【0060】
この蓋体12は、図示を略したコイルバネにより図2に示す開位置に付勢されており、図示を略した本体11のフックが蓋体12に引っ掛けられることによって、蓋体12はコイルバネによる付勢力に抗して、図1に示した閉位置に保持される。
【0061】
この本体11のフックは、蓋体に設けられたレバー13を図1の矢印方向(図1において上方向)に押すことにより、蓋体12から外れ、これにより蓋体12はコイルバネの付勢力で図2の開位置に変位する。
【0062】
蓋体12が開位置に移動した図2に示すように、このサーマルプリンタ100の用紙収容部14には、このサーマルプリンタ100によって印刷される媒体である、ロール状に巻回された感熱紙200(用紙)が収容されている。図3は、この感熱紙200を取り除いた状態を示す図である。
【0063】
用紙収容部14の幅方向の所定位置には、着脱可能の略半円板状の仕切り板16(図3において二点鎖線で表示)を配設保持する仕切り板保持溝15が形成されている。
【0064】
この仕切り板保持溝15に仕切り板16を配設保持させた状態においては、用紙収容部14は、一方の側壁面から仕切り板16の面までの狭い幅W2(図3参照)となって、この狭い幅W2の感熱紙200を用いることができ、一方、仕切り板保持溝15に仕切り板16を配設保持させない状態においては、用紙収容部14は、一方の側壁面から他方の側壁面までの広い幅W1(図3参照)となって、この広い幅W1の感熱紙200を用いることができる。
【0065】
すなわち、仕切り板16の着脱に応じて、使用する感熱紙200の幅を選択することができる。
【0066】
また、本体11には、プラテンローラユニット20とカッターユニット30とが、それぞれ本体11に対して着脱可能に設けられている。
【0067】
これらプラテンローラユニット20およびカッターユニット30は、いずれも矢印方向(図3において上方(蓋体12の閉位置からの移動方向に一致する方向))に引き上げられることにより、本体11から取り外される。なお、プラテンローラユニット20の詳細な取り付け状態については後述する。
【0068】
一方、蓋体12には、サーマルプリントヘッドユニット40とヘッドカバーダンパーユニット50とが、蓋体12に対して着脱可能に設けられている。
【0069】
そして、蓋体12を閉位置に移動させた状態において、サーマルプリントヘッドユニット40の発熱素子列42(後述)がプラテンローラユニット20のプラテンローラ21(後述)に接し、蓋体12を閉位置から開位置方向に移動させた状態において発熱素子列42とプラテンローラ21とが離れるように構成されている。
【0070】
ここで、本実施形態のサーマルプリンタ100は、その外装が樹脂によって形成されているが、その骨格部は金属のフレームで形成されており、サーマルプリントヘッドユニット40およびヘッドカバーダンパーユニット50は、蓋体12の骨格部であるカバーフレーム17に、工具無しの手作業で着脱可能に取り付けられている。
【0071】
すなわち、図4に示すように、カバーフレーム17にサーマルプリントヘッドユニット40が取り付けられて、そのサーマルプリントヘッドユニット40の一部を覆うように、ヘッドカバーダンパーユニット50がカバーフレーム17に取り付けられている。
【0072】
ヘッドカバーダンパーユニット50は、サーマルプリントヘッドユニット40のサーマルプリントヘッド41の一部を覆って保護するヘッドカバー部51と、感熱紙200にテンションを与えるダンパー部52とが一体的に構成されたものであり、ヘッドカバー部51両側部にそれぞれ形成された弾性腕部51a,51aの各突起51b,51bが、カバーフレーム17の所定位置にそれぞれ形成された係止孔17a,17aにそれぞれ嵌ることにより、ヘッドカバーダンパーユニット50はカバーフレーム17に取り付けられている。
【0073】
ここで、両弾性腕部51a,51aをヘッドカバーダンパーユニット50の幅方向内側に向けて弾性変形されると、各係止孔17a,17aから各突起51b,51bが離脱し、これにより、ヘッドカバーダンパーユニット50はカバーフレーム17から取り外され(図5参照)、工具無しの手作業だけでの取り外しが可能となっている。
【0074】
取り外されたヘッドカバーダンパーユニット50は、図6に示すように、ダンパー部52のダンパー板52aと支持板52cとの間にバネ52bが介装されていて、このバネ52bにプレロードがかけられている状態(図6(b)参照)からバネ52bが縮められた状態(図6(c))までの間の状態に応じた弾性復元力が付勢力としてダンパー板52aを図示下方に押圧している。
【0075】
そして、この下方に押圧される付勢力が、ダンパー部52の下面側に接する感熱紙200(図6において図示省略)にテンションを付与している。
【0076】
なお、バネ52bの中心部に設けられている円弧状の芯柱52dは、バネ52bが意図しない方向に屈曲するのを防止するガイド棒である。
【0077】
一方、ヘッドカバーダンパーユニット50のヘッドカバー部51には、光を検出するフォトセンサ51cと用紙検出レバー逃がし孔51d (図5(b)参照)とが設けられている。
【0078】
ここで、本体11には、蓋体12が閉じられた状態のとき、フォトセンサ51cに対向する部分に光源11aが設けられ、用紙検出レバー逃がし孔51dに対向する部分に用紙検出レバー11bが設けられている。
【0079】
用紙検出レバー11bは、図3に示すように突出した状態に付勢されているが、その付勢力に抗した、上方から下方に向けた荷重が作用すると、下方に回動変位し、この回動変位の有無に応じて感熱紙200の有無を判定するものである。
【0080】
すなわち、蓋体12が閉じられた状態のとき、この用紙検出レバー11bの上に感熱紙200が存在するときは、用紙検出レバー11bが、その感熱紙200によって下方に向け押圧され、この押圧による荷重が付勢力に抗して用紙検出レバー11bを下方に回動変位させ、これにより、感熱紙200が存在することを検出することができる。
【0081】
一方、この用紙検出レバー11bの上に感熱紙200が存在しないときは、用紙検出レバー11bは、これに対向して形成された用紙検出レバー逃がし孔51dに突入した状態となっていて、付勢力に抗する荷重を受けないため、下方に回動変位されず、これにより、感熱紙200が存在しないことを検出することができる。
【0082】
また、光源11aとフォトセンサ51cとは、両者(光源11a、フォトセンサ51c)の間を進行する用紙が、台紙の一部に印刷対象となるラベル(感熱紙)が貼り付けられたような用紙である場合に、その両者の間に位置している用紙の部分が、台紙の部分であるのか、またはラベルの部分であるのか、を識別するための機能部である。
【0083】
すなわち、光源11aから出射された光の一部は用紙を透過してフォトセンサ51cに達し、フォトセンサ51cが検出した透過光の強度が予め設定された閾値(台紙を透過したときの光強度とラベルを透過したときの光強度とを峻別しうる値)以上であれば、両者の間に位置している用紙の部分は、台紙の部分であると判定し、フォトセンサ51cが検出した透過光の強度が予め設定された閾値未満であれば、両者の間に位置している用紙の部分は、ラベルの部分であると判定することができる。
【0084】
したがって、台紙にラベルが貼り付けられている用紙を用いて、ラベルの部分に感熱印刷を行う場合に、これら光源11bとフォトセンサ51cとによって得られた情報に基づいて、台紙の部分ではなくラベルの部分に確実に印刷をおこなうことができる。
【0085】
なお、上述したようにカバーフレーム17から取り外されるヘッドカバーダンパーユニット50は、両弾性腕部51a,51aをヘッドカバーダンパーユニット50の幅方向内側に向けて弾性変形させ、各突起51b,51bをカバーフレーム17の各係止孔17a,17aに嵌め合わせることにより、カバーフレーム17に取り付けられ(図4参照)、工具無しの手作業だけでの取り付けが可能となっている。
【0086】
しかも、このヘッドカバーダンパーユニット50は、感熱紙200にテンションを付与するダンパー部52が、サーマルプリントヘッド41の一部を覆うヘッドカバー部51と一体的に構成されたものであるため、サーマルプリントヘッド41の至近の位置で感熱紙200にテンションを付与することができ、サーマルプリントヘッド41から遠く離れた位置で感熱紙200にテンションを付与するものに比べて、サーマルプリントヘッド41を通過する感熱紙200に対して、適切にテンションを付与することができる。
【0087】
また、図5に示すように、サーマルプリントヘッドユニット40は、発熱素子列42よりも前方に位置する前端に、カバーフレーム17に形成された、後方に突出する3つの爪17b,17c,17dに引っ掛けられる引掛け部44が形成され、発熱素子列42よりも後方の部分のうち幅方向の略中央に、カバーフレーム17から下方(蓋体12が閉位置にあるとき)に延びた段付きピン60の下端部に形成された段付き部61に引っ掛けられるピン係合切欠き部45が形成されている。
【0088】
すなわち、サーマルプリントヘッドユニット40は、図7に示すように、その引掛け部44が各爪17b,17c,17dから取り外され、そのピン係合切欠き部45が段付きピン60の段付き部61から取り外される、という工具無しの手作業だけで、カバーフレーム17から取り外される。なお、サーマルプリントヘッドユニット40の左右2箇所に設けられた端子47a,47b(同図(b))には、電気信号等を供給する電気コネクタ48a,48b(同図(a))がそれぞれ接続されているが、これら端子47a,47bと電気コネクタ48a,48bとの接続も、手作業だけで取り外すことができる。
【0089】
ここで、サーマルプリントヘッドユニット40は、詳しくは図7(b)に示すように、サーマルプリントヘッド41に、支持するヘッドフレーム43が取り付けられたものであり、引掛け部44およびピン係合切欠き部45は、いずれもヘッドフレーム43に形成されている。
【0090】
このヘッドフレーム43に形成されているピン係合切欠き部45は、その切欠きの幅W3が、段付きピン60のピン部62の直径よりもわずかに大きく、かつ段付きピン60の段付き部61の直径よりも小さい。したがって、段付きピン60のピン部62はピン係合切欠き部45を通過するが、段付き部61は通過しないため、ピン係合切欠き部45の周囲の部分が段付き部61に乗り上げた状態で引っ掛けられる。
【0091】
また、爪17b,17c,17dに引っ掛けられる引掛け部44も、これらの爪17b,17c,17d乗り上げた状態で引っ掛けられており、ヘッドフレーム43とカバーフレーム17との間には、引掛け部44を爪17b,17c,17dに押し付け、ピン係合切欠き部45の周囲の部分を段付き部61に押し付ける方向に付勢力を作用させる4つのバネ19a,19b,19c,19dが介装されている。
【0092】
これら4つのバネ19a,19b,19c,19dは、カバーフレーム17にサーマルプリントヘッドユニット40が取り付けられている状態において、発熱素子列42の背部に位置するように配設されていて、発熱素子列42を、後述するプラテンローラ21に適切に密着させている。
【0093】
しかも、これら4つのバネ19a,19b,19c,19dは、感熱紙200の幅方向に沿って等間隔L1に配置されている。そして、この間隔L1は、前述した幅の異なる感熱紙200を用いた場合にも、発熱素子列42が幅方向に沿って略均一な密着力を実現するような間隔として設定されている。
【0094】
すなわち、広い幅W1の感熱紙200を用いた場合は、均等配置された上記4つのバネ19a,19b,19c,19dによって、発熱素子列42は幅方向に沿って略均一な付勢力で感熱紙200に密着し、狭い幅W2の感熱紙200を用いた場合は、均等配置された上記4つのバネ19a,19b,19c,19dのうち、図示右端のバネ19dを取り外すことで、3つの均等配置された3つのバネ19a,19b,19cによって、発熱素子列42は幅方向に沿って略均一な付勢力で感熱紙200に密着する。
【0095】
なお、上述した2つの幅W1,W2に対応する場合の間隔L1としては、W1とW2との略最大公約数となる値を設定すればよい。具体的には、広い幅W1として3[インチ](約80[mm])、狭い幅W2として2[インチ](約60[mm])の感熱紙200を利用できるものでは、最大公約数である1[インチ](約20[mm])を間隔L1として設定し、両端のバネ19a,19d乃至19a,19cの位置を、感熱紙200の両側端縁から略等距離となるように調整しておけばよい。
【0096】
また、ヘッドフレーム43の両側面であって発熱素子列42の略延長線上には、後述するプラテンローラユニット20と係合する位置決め部としての突起46,46がそれぞれ形成されている。
【0097】
次に、カバーフレーム17へのサーマルプリントヘッドユニット40の着脱の構造について図8を用いて説明する。
【0098】
図7(b)に示したサーマルプリントヘッドユニット40を同図(b)に示したカバーフレーム17に取り付ける構造は、図8(a),(b)に示すように、ピン係合切欠き部45を段付きピン60のピン部62に通して、ピン係合切欠き部45の周囲の部分を段付き部61に引っ掛け、この状態から同図(b),(c)に示すように、ヘッドフレーム43の背面(発熱素子列42の背部)に接するバネ19a,19b,19c,19dを押し縮めつつ、引掛け部44を爪17b,17c,17dの背面側まで移動させ、その後、同図(d)に示すように、サーマルプリントヘッドユニット40の全体を爪17b,17c,17dの付け根側まで移動させて、引掛け部44を爪17b,17c,17dに引っ掛ける。
【0099】
これにより、サーマルプリントヘッドユニット40は、引掛け部44を爪17b,17c,17dに引っ掛けられ、ピン係合切欠き部45が段付きピン60の段付き部61に引っ掛けられて、カバーフレーム17に取り付けられる。
【0100】
一方、カバーフレーム17からサーマルプリントヘッドユニット40を取り外す場合は、上記取り付けの手順と反対の手順を行えばよい。
【0101】
このように、本実施形態のサーマルプリンタ100は、サーマルプリントヘッドユニット40を、工具無しの手作業でカバーフレーム17に着脱することができる。
【0102】
また、カバーフレーム17に取り付けられているサーマルプリントヘッドユニット40は、バネ19a,19b,19c,19dにより、図8において図示左方向(蓋体12が閉位置にあるとき、プラテンローラ21に近づく方向)に付勢されているが、発熱素子列42よりも上方の部分(前端の部分)も下方の部分(後端の部分)も、図示右方向(蓋体12が閉位置にあるとき、プラテンローラ21から離れる方向)には移動可能であるため、蓋体12が閉位置にあって通常の使用状態にあるとき、サーマルプリントヘッドユニット40は感熱紙200の進行方向に沿って上下に傾き可能である。
【0103】
なお、ピン係合切欠き部45は、 ヘッドフレーム43の後端縁から前方に向けて、爪17b,17c,17dと引掛け部44との前後方向(図8においては上下方向)に沿った引掛かり代よりも長く切り欠かれているため、サーマルプリントヘッドユニット40をカバーフレーム17に取り付ける際は、まず、ピン係合切欠き部45を段付きピン60の段付き部61に乗り上げさせて引っ掛け、ピン係合切欠き部45に段付きピン60を通した(引っ掛けた)ままの状態で、段付きピン60がピン係合切欠き部45の切り欠かれた根本に位置するようにサーマルプリントヘッドユニット40を後方(図8において下方)に移動させ、その後にサーマルプリントヘッドユニット40の前端(図8において上端)を、カバーフレーム17の爪17b,17c,17dの背面側(図8において右側)に移動させ、サーマルプリントヘッドユニット40を、爪17b,17c,17dとの引掛かり代分だけ前方(図8において上方)に移動させることで、サーマルプリントヘッドユニット40を、前端で爪17b,17c,17dに引っ掛け、後部を段付きピン60に引っ掛けた状態で、サーマルプリントヘッドユニット40を、工具を用いない手作業だけで簡単にカバーフレーム17に取り付けることができる。
【0104】
また、上記操作と反対の操作により、サーマルプリントヘッドユニット40を、工具を用いない手作業だけで簡単にカバーフレーム17から取り外すことができる。
【0105】
さらに、このサーマルプリントヘッドユニット40は、図9(a),(b)に示すように、その後方の部分が幅方向の略中央1箇所(ピン係合切欠き部45)のみで引っ掛けられて支持されているため、この支持されている部分(段付き部に乗り上げている幅方向の略中央部)を中心として、同図(c),(d)に示すように、サーマルプリントヘッドユニット40の幅方向に関して上下に揺動する自由度を有している。
【0106】
したがって、サーマルプリントヘッドユニット40の発熱素子列42が接触するプラテンローラ21が幅方向において、その摩耗程度に差が生じる等して例えば円錐台状に摩耗しても、サーマルプリントヘッドユニット40が幅方向に関して傾くことで、その幅方向の不均一な摩耗による差を吸収し、発熱素子列42とプラテンローラ21との幅方向における接触を略均一なものとすることができる。
【0107】
図10は、蓋体12が閉位置にある状態で、蓋体12の外装カバーをカバーフレーム17から除去した状態を示す図である。
【0108】
このカバーフレーム17には、サーマルプリントヘッドユニット40のピン係合切欠き部45が引っ掛けられている段付きピン60を、その軸方向に変位させて段付き部61の位置を上下に変位させる段付きピン調整部70が設けられている。
【0109】
この段付きピン調整部70は、図11に示すように、概略五角形の形状を呈し、ピン72により軸支された一頂部回りに回動可能に設けられた可動板71(可動調整部材)であって、この可動板71には、その回動方向に沿って延びた、段付きピン60が通過する長孔73が形成されており、段付きピン60が通過した状態で長孔73の延びた方向に沿って変位可能とされている。
【0110】
そして、この長孔73の縁部には、長孔73の中央から一方の可動範囲の部分(図11(a)において右側の範囲)において、可動板71の厚さよりも厚い縁取り73aが形成され、長孔73の中央を含む他方の可動範囲の部分(図11(a)において左側の範囲)において、可動板71の厚さのままとされており、この厚さの違いによるカムを構成している。
【0111】
なお、説明の便宜のために、長孔73の縁部のうち可動板71の厚さのままとされている部分を薄い縁取り73bと称するものとする。
【0112】
また、可動板71の長孔73の近傍には、裏面(カバーフレーム17に向いた面)に突起75が形成された舌片が形成されており、長孔73を段付きピン60が通った状態で可動板71を可動範囲(回動範囲)で変位させたとき、可動範囲の両端において、カバーフレーム17に形成された凹部17f,17gに突起75が嵌り、これにより可動板71を回動させる操作を行ったときの、両端に達した感触(操作の節度感)を与えるとともに、突起75がいずれかの凹部17f,17gに嵌った状態から、可動板71が不用意に動くのを防止している。
【0113】
さらに、図7および図11(a)の裏面からの図である同図(b)に示すように、カバーフレーム17の可動板71の外周部分に相当する部分には、この可動板71の外周部分の裏面をカバーフレーム17の内側に露出させる、可動板71の回動範囲に沿って延びた操作窓17eが開口されていて、この操作窓17eから露出した可動板71の外周部分の裏面には、この操作窓17eを介して露出した可動板71をピン72回りに回動させる操作の際に指が掛けられる操作突起74が形成されている。
【0114】
一方、段付きピン60の、長孔73から突出した上端部には、段付きピン60の外径よりも大きな径の、長孔73の縁取り73a,73b(縁部)すなわちカムに乗り上がる平ワッシャ63(大径部)が設けられていて、可動板71が回動して平ワッシャ63が薄い縁取り73bに乗り上げたときは変化がないのに対して、平ワッシャ63が厚い縁取り73aに乗り上げたときは、その厚い縁取り73aと薄い縁取り73bとの厚さの差分だけ、平ワッシャ63が図12(a)の紙面手前側に引き上げられ、これにより、平ワッシャ63が連結された段付きピン60も紙面手前側すなわち段付きピン60の軸方向に沿って変位する。
【0115】
この作用を図12,13を参照して説明すると、まず、図12(b)に示すように、操作窓17eからカバーフレーム17の内側に露出した操作突起74に指を掛けて、操作突起74を操作窓17eの図示右端側に変位させると、同図(a)に示すように、可動板71はピン72を中心にして図示左側に回動し、このとき、長孔73を貫通している段付きピン60の平ワッシャ63は、長孔73の厚い縁取り73aに乗り上げる。
【0116】
同時に、カバーフレーム17に形成された凹部17fに突起75が嵌り、これにより可動板71を回動させる操作を行ったときの操作の節度感が与えられるとともに、可動板71が、その位置から不用意に変位するのを抑制する。
【0117】
このとき、厚い縁取り73aと薄い縁取り73bとの厚さの差分だけ、平ワッシャ63が図12(c)(蓋体12が閉位置にある状態を示す図)の上方向に移動され、これにより、平ワッシャ63が連結された段付きピン60も上方向に移動される。
【0118】
すると、段付きピン60の下端部(図12(c)において下端部)に形成された段付き部61も上方向に移動し、これにより、段付き部61に引っ掛けられているサーマルプリントヘッドユニット40のピン係合切欠き部45が上方向に移動し、サーマルプリントヘッドユニット40は、ピン係合切欠き部45が上方向に移動した分だけ、その姿勢が図示の反時計回り方向に傾斜する。
【0119】
一方、図13(b)に示すように、操作窓17eからカバーフレーム17の内側に露出した操作突起74に指を掛けて、操作突起74を操作窓17eの図示左端側に変位させると、同図(a)に示すように、可動板71はピン72を中心にして図示右側に回動し、このとき、長孔73を貫通している段付きピン60の平ワッシャ63は、長孔73の薄い縁取り73bに乗り上げる。
【0120】
同時に、カバーフレーム17に形成された凹部17gに突起75が嵌り、これにより可動板71を回動させる操作を行ったときの操作の節度感が与えられるとともに、可動板71が、その位置から不用意に変位するのを抑制する。
【0121】
このとき、厚い縁取り73aと薄い縁取り73bとの厚さの差分だけ、平ワッシャ63が図13(c)(蓋体12が閉位置にある状態を示す図)の下方向に移動され(図12(c)を基準としたとき)、これにより、平ワッシャ63が連結された段付きピン60も下方向に移動される。
【0122】
すると、段付きピン60の下端部(図13(c)において下端部)に形成された段付き部61も下方向に移動し、これにより、段付き部61に引っ掛けられているサーマルプリントヘッドユニット40のピン係合切欠き部45が下方向に移動し、サーマルプリントヘッドユニット40は、ピン係合切欠き部45が下方向に移動した分だけ、その姿勢が図示の時計回り方向に傾斜する。
【0123】
この後のサーマルプリントヘッドユニット40の姿勢の変化については、次に説明するプラテンローラユニット20と連携したものとなるため、プラテンローラユニット20の説明の後に詳述する。
【0124】
プラテンローラユニット20は、図3に示したように本体11に配設されているが、図14に示す本体11の骨格部である本体フレーム18に取り付けられている。
【0125】
そして、本体フレーム18から取り外された状態のプラテンローラユニット20は、図15に示すように、プラテンローラ21と、プラテンローラ21の両端から突出した回転軸21aをそれぞれ回転自在に支持する支持部材22,23と、プラテンローラ21の両端から突出した回転軸21aと支持部材22,23に取り付けられ、このプラテンローラ21の、感熱紙200の送り方向上流側および下流側に、回転軸と平行に延びた用紙分離枠24とを備えた構成である。
【0126】
用紙分離枠24は、プラテンローラ21とサーマルプリントヘッド41との間を上流側から送られた感熱紙200が、プラテンローラ21の周面に巻き付いたまま予期しない方向に送られないように、感熱紙200をプラテンローラ21から引き剥がして下流側に送るガイドの機能を果たす。
【0127】
2つの支持部材22,23は互いに同じものであり、それぞれ樹脂部材22a,23aと金属板22h,23hとから構成されている。
【0128】
ここで、各支持部材22,23の樹脂部材22a,23aには、図16に示すように、プラテンローラ21よりも上方の部分に、本体フレーム18に組み付けられている状態(図3参照)からプラテンローラユニット20の全体を上方(蓋体12の閉位置からの移動方向に一致する方向)に引き上げて本体11からプラテンローラユニット20を取り外す際の手がかりとなる指掛け部22b,23bが形成されている。
【0129】
また、樹脂部材22a,23aは、その指掛け部22b,23bの下方がプラテンローラ21の幅方向について二股に分岐して形成されている。
【0130】
そして、図16(b)に示すように、これら二股に分岐して形成された2つの脚部23c(22c),23d(22d)のうち幅方向の内側に位置する脚部23d(22d)は、幅方向の外側に位置する脚部23c(22c)よりも長く形成されているとともに、さらに図16(a)に示すように、二股に分岐して2つの脚23e(22e),23f(22f)を形成している。
【0131】
プラテンローラ21の回転軸21aは、プラテンローラ21の両端から突出して、その突出した部分は、それぞれ幅方向の外内2つの脚部23c(22c),23d(22d)を貫通しており、その回転軸21aの、両脚部23c(22c),23d(22d)の間の空間を通過する範囲の部分には、プラテンローラ21の回転軸21aを回転自在に支持する軸受26(25)が配設されている。
【0132】
一方、本体フレーム18の幅方向の両側壁には、図14,16(a)に示すように、切欠き幅D1の切欠き18b(18a)(ローラ係合切欠き)が形成されており、この切欠き幅D1は、軸受26(25)の直径(外径)D2(図17(b)参照)と同じか、またはわずかに大きい(D2≦D1)。
【0133】
また、両脚部23c(22c),23d(22d)の間の幅は、本体フレーム18の厚さよりもわずかに広く、しかも、一方の脚部23c,23dの間の空間から他方の脚部22c,22dの間の長さM2(図17(a)参照)は、図14に示した本体フレーム18の幅方向の両側壁間の距離M1と略等しく、これにより、プラテンローラユニット20は、一方の脚部23c,23d間の空間に本体フレーム18の幅方向の一方の側壁が、他方の脚部22c,22d間の空間に本体フレーム18の幅方向の他方の側壁が、それぞれ挿通されて、プラテンローラユニット20は本体フレーム18に取り付けられている。
【0134】
このとき、脚部23c,23d間の空間を通過する回転軸21aの軸受26が、本体フレーム18の側壁の切欠き18bに係合し、脚部22c,22d間の空間を通過する回転軸21aの軸受25が、本体フレーム18の側壁の切欠き18aに係合することで、本体フレーム18に対するプラテンローラユニット20の前後方向の位置および上下方向の位置が固定される。
【0135】
また、幅方向内側に位置する脚部23d(22d)の、二股に分岐した2つの脚23e(22e),23f(22f)は、図16(a)に示すように、その間に、最下部において幅d3の隙間を有し、最下部よりも上方の部分において幅d3よりも広い幅d4(d3<d4)の隙間を有している。
【0136】
さらに、支持部材22,23の各金属板22h,23hは、図16(b)に示すように、内側の脚部23d(22d)の、幅方向内側の面に密着して設けられていて、この各金属板22h,23hは、回転軸21aが貫通した部分よりも下方の部分において、脚部23d(22d)と同様に二股に分岐されており、この二股の間の隙間の幅d2は、幅d3より大きく、かつ幅d4より小さい(d3<d2<d4)。
【0137】
なお、金属板23h(22h)の二股間の隙間の中心と脚23e(22e),23f(22f)間の隙間の中心とは一致し、これらの中心の上方への延長線上に、回転軸21a(あるいは軸受26(25))の中心が位置するように構成されている。
【0138】
一方、本体フレーム18の両側壁の、各切欠き18a,18bの下方であって、各切欠き18a,18bの下縁から、プラテンローラユニット20の軸受25,26の下面から脚23e(22e),23f(22f)間の隙間が幅d4となる位置までの距離に相当する部分には、これら本体フレームの各側壁から幅方向内側に向けて突出した、直径d1のボス18c,18dが形成されている。
【0139】
そして、これらボス18c,18dの直径d1は、支持部材22,23の金属板22h,23hの二股の間の幅d2と同じか、わずかに小さく設定されており、また、これらボス18c,18dの中心の鉛直線上に切欠き18a,18bの中心が位置するように形成されている。
【0140】
このように構成されている支持部材22,23と本体フレーム18とによると、プラテンローラユニット20の軸受26が本体フレーム18の側壁の切欠き18bに係合するように、かつ、軸受25が本体フレーム18の側壁の切欠き18aに係合するように、プラテンローラユニット20を本体フレーム18に対して鉛直下方に移動させて、プラテンローラユニット20が本体フレーム18に取り付けられるが、この下方への移動の際に、図18に示すように、支持部材23(22)の両脚23e(22e),23f(22f)の間の隙間にボス18d(18c)が割り込む。
【0141】
ここで、ボス18d(18c)の直径d1は、支持部材23(22)の両脚23e(22e),23f(22f)間の最下部における隙間の幅d2より大きいため、この隙間へのボス18d(18c)の進入が進むにしたがって、両脚23e(22e),23f(22f)は、これら両脚23e(22e),23f(22f)間の隙間が拡げられるように、それぞれ外側に弾性変形する。これは、脚23e(22e),23f(22f)が弾性変形しやすい樹脂製であることによるが、本発明においては樹脂製に限定されるものではなく、厚さの薄い金属製であってもよい。
【0142】
一方、支持部材23(22)のうち金属板23h(22h)が二股に分岐した間の隙間の幅d2は、ボス18d(18c)の直径d1と等しいか、わずかに大きいため、ボス18d(18c)は金属板23h(22h)間の隙間を拡げることなく、この隙間に案内されるように進行する。
【0143】
プラテンローラユニット20がさらに下方に移動されると、図19に示すように、プラテンローラユニット20の軸受26が本体フレーム18の側壁の切欠き18bに嵌合し、かつ、軸受25が本体フレーム18の側壁の切欠き18aに係合して、下方への移動は停止する。
【0144】
このとき、本体フレーム18の側壁の切欠き18bはプラテンローラユニット20の軸受26の外径と等しいか、またはわずかに大きいだけであり、また、本体フレーム18の側壁の切欠き18aはプラテンローラユニット20の軸受25の外径と等しいか、またはわずかに大きいだけであるため、本体フレーム18に取り付けられた状態での本体フレーム18に対するプラテンローラ21のがたつきを抑制することができる。
【0145】
さらに、支持部材23(22)の両脚23e(22e),23f(22f)の間の隙間を進んだボス18d(18c)は、両脚23e(22e),23f(22f)間の隙間のうち、幅d2(≒d1)の金属板23h(22h)間の隙間よりも広い幅d4に形成された部分に到達する。
【0146】
そして、この幅d4の隙間部分は、ボス18d(18c)の直径d1よりも大きいため、両脚23e(22e),23f(22f)が外側に拡げられた弾性変形は解消する。この結果、ボス18d(18c)の下方は、ボス18d(18c)の直径d1よりも狭い幅d2の隙間(両脚23e(22e),23f(22f)間の隙間)で閉じられた状態となり、プラテンローラユニット20を上方に移動させる際には、ボス18d(18c)によって、この狭い幅d2の隙間を押し拡げる必要があり、この押し拡げるのに必要な荷重が、プラテンローラユニット20を上方に移動させるのに対向する抵抗力となり、プラテンローラユニット20が本体フレーム18から不用意に脱落するのを防止する。
【0147】
しかも、プラテンローラユニット20が本体フレーム18に取り付けられている状態(軸受25,26がそれぞれ本体フレーム18の切欠き18a,18に係合している状態)で、支持部材22,23が軸受25,26を中心にして回動するのを防止することもできる。
【0148】
もちろん、使用者が、プラテンローラユニット20の指掛け部22b,23bに指を掛けて、この抵抗力に逆らって上方に引き上げることにより、プラテンローラユニット20を本体フレーム18から取り外すことは可能であり、このプラテンローラユニット20着脱操作にも、工具を必要とせずに、手作業だけで行うことができる。
【0149】
なお、ボス18d(18c)が配置される金属板23h(22h)間の隙間(ボス係合切欠き部)は、剛性の高い金属部材である金属板23h(22h)によってその両縁部が規定されて形成されているため、この隙間とボス18d(18c)の外径との間の隙間を精度良く管理することができ、一方、ボス18d(18c)を挟持する両脚23e(22e),23f(22f)(脚部)については弾性力を有する樹脂部材23aによって形成されていることにより、ボス18d(18c)を挟持した状態と弾性力に抗しての挟持状態からの離脱とを容易に切り替えることができる。
【0150】
また、このプラテンローラユニット20には、上述した本体フレーム18との係合を実現する構造の他、蓋体12に取り付けられたサーマルプリントヘッドユニット40との位置関係を規定する位置決め部も形成されている。
【0151】
すなわち、図15に示すように、プラテンローラユニット20の支持部材22の金属板22hの上部に位置決め切欠き22i(位置決め部)が形成されている。他方の金属板23hにも、金属板22hと同様の位置決め切欠き23i(位置決め部)が、その上部に形成されている。
【0152】
これらの位置決め切欠き22i,23iは、蓋体12を閉位置に移動させた状態(図1、図10参照)において、図4および図7(b)に示すサーマルプリントヘッドユニット40のヘッドフレーム43の両側面に形成された突起46,46とそれぞれ係合して、サーマルプリントヘッドユニット40の発熱素子列42とプラテンローラ21との相対的な動きを規制している。
【0153】
ここで、各金属板22h,23hに形成された位置決め切欠き22i,23iは、図20の要部透視図に示すように、回転軸21aの中心と金属板22h,23hの二股に分岐した間の隙間の中心とを結んだ直線上に、その中心が位置するように形成されている。
【0154】
したがって、蓋体12が閉位置にあるとき、本体フレーム18の一方の側壁側では、サーマルプリントヘッドユニット40の突起46と回転軸21aの中心と本体フレーム18のボス18cとが一直線上に並び(図20)、本体フレーム18の他方の側壁側では、サーマルプリントヘッドユニット40の突起46と回転軸21aの中心と本体フレーム18のボス18dとが一直線上に並ぶ。
【0155】
プラテンローラユニット20は、蓋体12の閉位置から移動方向に一致する方向(図示上方)に沿って引き上げることで、本体11から取り外すことができるが、蓋体12が閉位置にあるとき、プラテンローラユニット20の位置決め切欠き22i,23iには、蓋体12に取り付けられたサーマルプリントヘッドユニット40の突起46,46が上方から下方に向けて係合しているため、蓋体12が閉じている状態では、プラテンローラユニット20が誤って外れることがなく、プラテンローラユニット20を本体11に強固に固定しておくことができる。
【0156】
ここで、サーマルプリントヘッドユニット40は、図12,13に示したように、段付きピン調整部70の可動板71を操作して段付きピン60の段付き部61の位置を変化させることにより、サーマルプリントヘッド41の傾き(前後方向(感熱紙200の送り方向)に対する姿勢)を変更することができる。
【0157】
ただし、図12,13における説明では、サーマルプリントヘッドユニット40の動きは、カバーフレーム17による拘束(爪17b,17c,17dと段付きピン60とバネ19a,19b,19c,19dとによる拘束)条件下での動きであったが、蓋体12が閉位置にある状態においては、サーマルプリントヘッドユニット40の突起46,46がプラテンローラユニット20の位置決め切欠き22i,23iに係合して拘束されるとともに、発熱素子列42とプラテンローラ21とが接触することで、サーマルプリントヘッドユニット40の発熱素子列42がバネ19a,19b,19c,19dの付勢力に抗して上方(バネ19a,19b,19c,19dを縮める方向)に変位する。
【0158】
このときのサーマルプリントヘッドユニット40の変位の中心は、段付き部61に乗り上がっているピン係合切欠き部45の周囲の部分であるが、さらに、サーマルプリントヘッドユニット40の突起46,46とプラテンローラユニット20の位置決め切欠き22i,23iとの係合により、サーマルプリントヘッドユニット40は、この突起46,46回りの回転と位置決め切欠き22i,23iの延びた上方への動きに規制された動きとなる。
【0159】
したがって、サーマルプリントヘッドユニット40全体としては、後部の上下方向の位置(ピン係合切欠き部45の周囲の部分の位置)が段付きピン調整部70による段付き部61の位置により規定されつつ、突起46,46回りでの回転変位として規定された姿勢(傾き)となる。
【0160】
図21は、プラテンローラ21とサーマルプリントヘッドユニット40と爪17b,17c,17dと段付きピン60と段付きピン調整部70との関係を示す要部透視図であり、同図(a)は図13相当の図、すなわち段付きピン調整部70によってサーマルプリントヘッドユニット40の図示右側(感熱紙200の送り方向の上流側)が下げられた傾きとなった状態を示す図であり、同図(b)は図12相当の図、すなわち段付きピン調整部70によってサーマルプリントヘッドユニット40の図示右側(感熱紙200の送り方向の上流側)が引き上げられた傾きとなった状態を示す図である。
【0161】
ここで、図21(a)におけるプラテンローラ21とサーマルプリントヘッド41の発熱素子列42との詳しい位置関係を図22(a)に示し、図21(b)におけるプラテンローラ21とサーマルプリントヘッド41の発熱素子列42との詳しい位置関係を図22(b)に示す。
【0162】
前述したように、サーマルプリントヘッドユニットの突起46,46は発熱素子列42の略延長線上に設けられていて、この突起46,46に係合する位置決め切欠き22i,23iは、プラテンローラ21の中心を通る鉛直線K上に形成されているため、プラテンローラ21と発熱素子列42とが接触する点Pは、サーマルプリントヘッド41の傾きの如何に拘わらず、常に前述した鉛直線K上に位置する。
【0163】
ここで、図22(a)の状態は、厚さの厚い感熱紙200(例えば、厚さN1)に対応した状態であり、この厚さN1の感熱紙200がプラテンローラ21と発熱素子列42との間に送られて来ると、サーマルプリントヘッドユニット40が、バネ19a,19b,19c,19dの付勢力に抗して、感熱紙200の厚さN1分だけ図示上方に持ち上げられるが、このときのサーマルプリントヘッドユニット40の変位は、ピン係合切欠き部45の周囲の部分を中心とした回動と鉛直線K上での平行移動となり、図示の二点鎖線から実線で示す状態となる。
【0164】
そして、感熱紙200と発熱素子列42との接点は図23(a)に示す点P2となる。
【0165】
一方、図22(b)の状態は、厚さの薄い感熱紙200(例えば、厚さN2(<N1))に対応した状態であり、この厚さN2の感熱紙200がプラテンローラ21と発熱素子列42との間に送られて来ると、サーマルプリントヘッドユニット40が、バネ19a,19b,19c,19dの付勢力に抗して、感熱紙200の厚さN2分だけ図示上方に持ち上げられるが、このときのサーマルプリントヘッドユニット40の変位も、ピン係合切欠き部45の周囲の部分を中心とした回動と鉛直線K上での平行移動となり、図示の二点鎖線から実線で示す状態となる。
【0166】
そして、感熱紙200と発熱素子列42との接点は図23(b)に示す点P1となる。
【0167】
つまり、厚さの厚い感熱紙200が接する発熱素子列42の点P2は、厚さの薄い感熱紙200が接する発熱素子列42の点P1よりも、感熱紙200の送り方向に沿った上流側となる。
【0168】
ここで、厚さの厚い感熱紙200は厚さの薄い感熱紙200よりも剛性(腰)が強い。そして、図23(a)に示すように、感熱紙200は一見、点Pの直上である点P2において発熱素子列42と密着するはずであるが、実際は、上述した剛性の強さの影響で、接しているプラテンローラ21の周表面(弾性を有する)を、本来の円弧状から直線状に変形させるため、点P2における密着性は弱いか、あるいは密着せず、点P2よりも下流側の点P1において、より適正な強さの密着が得られている。
【0169】
一方、厚さの薄い感熱紙200は厚さの厚い感熱紙200よりも剛性(腰)が弱く、図23(b)に示すように、感熱紙200は、点P2よりも下流側である点P1において、その見た目通り、発熱素子列42と適正な密着が得られている。
【0170】
このように、本実施形態に係るサーマルプリンタ100によれば、感熱紙200の厚さが厚いものであっても薄いものであっても、発熱素子列42の同一の部分(点P1)で良好な密着を得ることができ、感熱紙200の厚さの如何に関わらず高品位な印刷を実現することができる。
【0171】
なお、本実施形態のサーマルプリンタ100は、サーマルプリントヘッド41とプラテンローラ21とが分離された構造を有しているため、蓋体12を閉じる(閉位置に移動させる)だけの簡単な操作によって、感熱紙200のセッティングを完了することができる。
【0172】
また、このサーマルプリンタ100は、工具無しの簡単な手作業により、サーマルプリントヘッドユニット40をカバーフレーム17に着脱することができ、サーマルプリントヘッドユニット40の簡単な交換作業を実現している。
【0173】
一方、プラテンローラユニット20も、工具無しの簡単な手作業により、本体フレーム18に着脱することができ、プラテンローラユニット20の簡単な交換作業を実現している。
【符号の説明】
【0174】
11 本体
12 蓋体
17 カバーフレーム
18 本体フレーム
40 サーマルプリントヘッドユニット
41 サーマルプリントヘッド
42 発熱素子列
44 引掛け部
45 ピン係合切欠き部
60 段付きピン
61 段付き部
62 ピン部
63 平ワッシャ
70 段付きピン調整部
71 可動板
73a 縁取り
100 サーマルプリンタ
200 感熱紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体に対して開位置と閉位置との間で移動可能の蓋体を備え、
前記蓋体を前記閉位置に移動させた状態においてサーマルプリントヘッドユニットの発熱素子列がプラテンローラユニットのプラテンローラに接し、前記蓋体を前記閉位置から移動させた状態において前記発熱素子列と前記プラテンローラとが離れるように、前記プラテンローラユニットが前記本体に、前記サーマルプリントヘッドユニットが前記蓋体にそれぞれ設けられ、
前記サーマルプリントヘッドユニットと前記プラテンローラユニットとには、前記蓋体を前記閉位置に移動させた状態において、互いに係合することにより前記発熱素子列と前記プラテンローラとの相対的な動きを規制する位置決め部がそれぞれ形成され、
前記サーマルプリントヘッドユニットは、前記発熱素子列よりも前方に位置する前端に、前記蓋体に形成された、後方に突出する爪に引っ掛けられる引掛け部が形成され、前記発熱素子列よりも後方の部分のうち幅方向の略中央に、前記蓋体から下方に延びた段付きピンの下端部に形成された段付き部に引っ掛けられるピン係合切欠き部が形成され、
前記蓋体には、前記段付きピンを、その軸方向に変位させて前記段付き部の位置を変化させる段付きピン調整部が設けられ、
前記プラテンローラユニットは、前記蓋体の前記閉位置からの移動方向に一致する方向に沿って、前記本体に対して着脱可能に設けられていることを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項2】
前記段付きピン調整部は、前記段付きピンが通過する長孔が形成されて、前記段付きピンが通過した状態で、前記長孔の延びた方向に沿って相対的に変位可能に設けられた可動調整部材であって、前記長孔の縁部は、前記変位可能の範囲で、その厚さが異なるように形成されたカムであり、
前記段付きピンの、前記長孔から突出した上端部には、前記段付きピンの外径よりも大きな径の、前記長孔の縁部に乗り上がる大径部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項3】
前記ピン係合切欠き部は、後端縁から前方に向けて、前記爪と前記引掛け部との前後方向に沿った引掛かり代よりも長く切り欠かれているものであることを特徴とする請求項1または2に記載のサーマルプリンタ。
【請求項4】
前記プラテンローラの両端から、前記プラテンローラの回転軸がそれぞれ突出し、
前記突出した回転軸の部分には、前記プラテンローラの回転軸を回転自在に支持する軸受が設けられ、
前記本体の両側部には、前記軸受の外径と同一か、または前記回転軸の直径よりもわずかに大きい幅で、上端が開口し下方に延びたローラ係合切欠きが形成され、
前記ローラ係合切欠きに前記軸受が嵌合することにより、前記プラテンローラが前記本体に取り付けられていることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項に記載のサーマルプリンタ。
【請求項5】
前記プラテンローラユニットは、前記プラテンローラと、前記プラテンローラの両側方にそれぞれ、前記回転軸が貫通して設けられたローラ支持部材とを備え、
前記ローラ支持部材は、前記回転軸が前記ローラ係合切欠きに係合した状態において、前記本体の、前記ローラ係合切欠きの直下に形成されたボスを、弾性力でその両側から挟持する脚部と、前記ボスの外周面に接するように前記ボスの外径と同一か、または前記ボスの外径よりわずかに大きい幅で形成された上下方向に延びたボス係合切欠き部とを有し、前記ボスを前記ボス係合切欠き部に配置させつつ前記脚部で前記ボスを挟持することを特徴とする請求項4に記載のサーマルプリンタ。
【請求項6】
前記脚部は、弾性力を有する樹脂部材により形成されたものであり、前記ボス係合切欠き部は樹脂部材よりも剛性の高い金属部材により形成されていることを特徴とする請求項5に記載のサーマルプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−161815(P2011−161815A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27828(P2010−27828)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(507351883)シチズン・システムズ株式会社 (82)
【Fターム(参考)】