説明

サーマルプリンタ

【課題】上述した事情に鑑みてなされたものであり、生産性の向上を図った上で、更なる小型化を実現することができるサーマルプリンタを提供する。
【解決手段】フレーム10は、プラテンローラ13の装着時において、プラテンローラ13の両端部を収容可能な凹部10dと、ヘッド支持体12をプラテンローラ13に向けて付勢するとともに、凹部10dに収容されたプラテンローラ13の軸受け18を押さえ付けてプラテンローラ13を保持する保持部材30とを備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録紙に各種の情報を印字するサーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリンタは、熱を加えると発色する特殊な記録紙(感熱紙)をプラテンローラとサーマルヘッドとで挟持し、プラテンローラの回転により記録紙を紙送りしながら記録紙の印字面(感熱面)をサーマルヘッドの発熱素子により加熱することで、印字面を発色させて印字を行うものであり、現在様々な種類のものが数多く提供されている(例えば、特許文献1参照)。特に、トナーやインク等を使用せずに、滑らかな文字の印字や多彩なグラフィック印字ができるため、各種ラベル、レシートやチケットの印字等に好適に使用されている。
【0003】
ここで、上述したサーマルプリンタの一般的な構成を図12に基づいて簡単に説明する。
サーマルプリンタ100は、図12に示すように、多数の発熱素子を有するサーマルヘッド102と、サーマルヘッド102を支持するとともに、図示しないシャフトに回動可能に支持されたヘッド支持体103と、サーマルヘッド102との間に記録紙を挟むプラテンローラ104と、図示しない収容部にセットされたプラテンローラ104の軸受け105を押さえ付けて、プラテンローラ104を保持する保持バネ106と、ヘッド支持体103とサーマルプリンタ100の後壁100aとの間に設けられた加圧バネ107とを備えている。加圧バネ107は、ヘッド支持体103を後壁100aから離間する方向に付勢することで、サーマルヘッド102をプラテンローラ104に向けて押し付けるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−345264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、上述したサーマルプリンタ100にあっては、装置の更なる小型化が求められている。装置の小型化を図るためには、例えばプラテンローラ104の小径化や、プラテンローラ104等を駆動させるモータの小型化、ヘッド支持体103やサーマルプリンタ100の壁面の薄型化等が考えられる。
しかしながら、各部品の小型化、薄型化は生産性、強度等の問題からほぼ限界まで達しており、これ以上の小型化、薄型化は難しいのが現状である。
【0006】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、生産性の向上を図った上で、更なる小型化を実現することができるサーマルプリンタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明のサーマルプリンタは、サーマルヘッドが主面に固定され、揺動可能に設けられたヘッド支持体を有する本体ユニットと、前記本体ユニットに着脱可能とされ、装着時において前記サーマルヘッドとの間に記録紙を挟んだ状態で、前記記録紙を送り出すプラテンローラとを備え、前記本体ユニットは、前記プラテンローラの装着時において、前記プラテンローラの両端部を収容可能な収容部と、前記ヘッド支持体を前記プラテンローラに向けて付勢するとともに、前記収容部に収容された前記プラテンローラの端部を押さえ付けて前記プラテンローラを保持する付勢手段とを備えていることを特徴としている。
【0008】
この構成によれば、プラテンローラを保持する機能と、ヘッド支持体を押圧する機能との双方の機能を付勢手段に持たせることができる。すなわち、従来のサーマルプリンタと異なり、プラテンローラの保持及びヘッド支持体の押圧のために、それぞれ独立した付勢手段(保持バネ及び加圧バネ)を用いる必要がない。
これにより、ヘッド支持体の背面とサーマルプリンタの後壁との間に設けていた従来の加圧バネそのものをなくすことができるので、ヘッド支持体よりも後側のスペースを縮小することができる。また、サーマルプリンタの後壁に加圧バネの付勢力が作用することもないので、付勢力を許容するための高い強度を確保する必要がない。そのため、サーマルプリンタの後壁に要求される機械的強度を減少することができ、後壁の薄型化を図ることができる。あるいは、後壁そのものをなくすことも可能である。したがって、加圧バネの設置スペース分及び後壁の薄型化を図った分の寸法を縮小することができ、さらなる小型化を図ることができる。
しかも、プラテンローラの保持及びヘッド支持体の押圧のために、それぞれ独立した付勢手段を組み付ける場合に比べて組付工数及び部品点数を削減することができるので、生産性の向上を図ることができる。
【0009】
また、前記付勢手段は、線材が屈曲形成されてなる一対の保持部材を備え、前記保持部材は、前記線材の一端側に形成され、前記ヘッド支持体を背面側から前記プラテンローラに向けて付勢する支持体付勢部と、前記線材の他端側に形成され、前記ヘッド支持体の主面側で前記収容部に収容された前記プラテンローラの端部を押さえ付けて、前記プラテンローラを保持するローラ付勢部と、前記ヘッド支持体の端部に係止されながら、前記ヘッド支持体の主面側から背面側に亘って配設され、前記支持体付勢部と前記ローラ付勢部とにそれぞれ接続された接続部とを備えていることを特徴としている。
この構成によれば、プラテンローラの装着動作時において、プラテンローラを収容部内に向けて押し込むと、ローラ付勢部が撓み変形し、ローラ付勢部にはプラテンローラの端部を収容部内に向けて付勢する付勢力(復元力)が発生する。そして、プラテンローラの両端部が収容部内に入り込んだ後、ローラ付勢部が復元することで、ローラ付勢部とプラテンローラの端部とが接触し、プラテンローラの端部を収容部内に向けて付勢することになる。すなわち、プラテンローラの端部は、ローラ付勢部によって押さえ付けられて、ローラ付勢部と収容部との間に挟み込まれる。これにより、プラテンローラは、保持された状態になる。
同時に、プラテンローラの両端部が収容部内に入り込んでいくことで、プラテンローラの周面がサーマルヘッドに押し付けられる。これにより、保持部材の支持体付勢部が撓み変形し、支持体付勢部にはヘッド支持体をプラテンローラに向けて付勢する付勢力(復元力)が発生する。
これにより、プラテンローラの保持及びヘッド支持体の押圧の双方の機能をそれぞれ確実に果たすことができる。特に、一本の線材を屈曲形成した保持部材を利用して、2つの機能を果たすことができるので、構成の簡素化及び低コスト化を図ることができる。
【0010】
また、前記一対の保持部材の前記支持体付勢部同士は、前記ヘッド支持体の背面に沿って配設された連結部により一体的に連結されていることを特徴としている。
この構成によれば、連結部及び支持体付勢部によりヘッド支持体をプラテンローラに向けて付勢することができるので、プラテンローラの軸方向の全域に亘ってヘッド支持体を均一に押圧することができる。これにより、ヘッド支持体をプラテンローラの周面に向けて均一に押し付けることができる。
また、連結部を介して一対の保持部材が一体的に連結されているので、部品点数の削減を図るとともに、部品管理が容易になり、生産性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、プラテンローラを保持する機能及びヘッド支持体を押圧する機能を付勢手段に持たせることができるので、従来の加圧バネが不要である上、後壁の薄型化を図ることができる。したがって、更なる小型化を図ることができるとともに、生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】サーマルプリンタを備えた情報端末の外観斜視図である。
【図2】第1実施形態におけるサーマルプリンタを前側から見た斜視図である。
【図3】第1実施形態におけるサーマルプリンタを後側から見た斜視図である。
【図4】第1実施形態におけるサーマルプリンタの側面図である。
【図5】第1実施形態における保持部材の側面図である。
【図6】プラテンローラの装着時における動作を説明するための説明図である。
【図7】プラテンローラの装着時における動作を説明するための説明図である。
【図8】プラテンローラの装着時における動作を説明するための説明図である。
【図9】第2実施形態におけるサーマルプリンタを後側から見た斜視図である。
【図10】第2実施形態におけるサーマルプリンタの側面図である。
【図11】本発明の他の構成を示すサーマルプリンタの側面図である。
【図12】従来のサーマルプリンタの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る第1実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係るサーマルプリンタを備えた情報端末の外観斜視図である。なお、本実施形態では、いわゆるプラテンオープンタイプのサーマルプリンタを、宅配業者が顧客先でカード決済することが可能な携帯型の情報端末に搭載した場合を例に挙げて説明する。
図1に示すように、本実施形態の情報端末1は、ケース本体2と、ケース本体2の内部に収納されたサーマルプリンタ3と、ケース本体2の表面に設けられて、複数のキーボタンで構成される入力部4及び各種の情報を表示する液晶表示部5と、図示しない磁気カードを挿し込んだ際に磁気カードの磁気記録部からデータを読み取る読取部6と、ロール状に巻回された記録紙P(図2参照)を収納する記録紙収納部7と、プラテンローラ13とともに記録紙収納部7を開閉可能なカバー8とを備えている。
【0014】
(サーマルプリンタ)
図2は、サーマルプリンタを前側から見た斜視図であり、図3は後側から見た斜視図である。また、図4はサーマルプリンタの側面図である。なお、図中UPは上方、FRは前方、RHは右方をそれぞれ示している。
図2〜図4に示すように、上述したサーマルプリンタ3は、記録紙P(図2参照)の幅方向(左右方向)に対向配置された一対の側壁部10aを有するフレーム(本体ユニット)10と、多数の発熱素子を有し、左右方向に延在するサーマルヘッド11(図2参照)と、サーマルヘッド11を支持するヘッド支持体12と、記録紙Pを間に挟んだ状態でヘッド支持体12に対して周面が接触可能とされ、一対の側壁部10aの間に回転自在に支持されたプラテンローラ13と、プラテンローラ13を回転させて、記録紙Pを送り出すモータ等の駆動手段14と、表面に図示しない配線パターンが設けられ、サーマルヘッド11に電気的に接続されて信号を送るフレキシブル基板16とを備えている。
【0015】
フレーム10は、略直方体状に形成されているとともに、その上面側には記録紙Pが搬送される用紙ガイド10bが形成されている。そして、この用紙ガイド10bの左右方向両端側で一対の側壁部10aが対向した形で形成されている。また、フレーム10は、記録紙収納部7(図1参照)内であって、ロール状に巻回された記録紙Pの上方に位置するように取り付けられている。つまり記録紙Pは、フレーム10の下方から上方に向かって送り出されるようになっている。
【0016】
各側壁部10aには、その上部周縁から高さ方向に切り込まれた凹部10dが形成されており、ここにプラテンローラ13の両端部に装着された軸受け18が収容される。凹部10dの内面には、凹部10d内の後方に向けて突出する突出部10f(図4参照)が形成されている。
一方、側壁部10aにおける後側の下部には、側壁部10aの厚さ方向に沿って貫通孔10cが形成されており、この貫通孔10c内には両側壁部10a間を架け渡すように回動シャフト20が挿通されている。
【0017】
プラテンローラ13は、ローラシャフト13aにゴム等からなるローラ本体13cが外装されたものである。ローラシャフト13aの両端部には、軸受け18が装着されており、この軸受部18が、カバー8を閉じたときに、一対の側壁部10aの凹部10d内に嵌ってプラテンローラ13が回転可能に支持されるようになっている。また、プラテンローラ13の一端側には従動ギア19が固定されており、プラテンローラ13が一対の側壁部10aに支持されたときに、フレーム10側に取り付けられた図示しない歯車伝達機構に噛合するようになっている。この歯車伝達機構は、駆動手段14に連結されており、駆動手段14からの回転駆動力を従動ギア19に伝達している。これによりプラテンローラ13は、一対の側壁部10aに支持された状態で回転し、記録紙Pを送り出すことができるようになっている。
【0018】
サーマルヘッド11は、プラテンローラ13に対向するように配置された状態でヘッド支持体12に貼付支持された平面視矩形状のものであり、その前面(主面)には左右方向に沿って発熱素子(不図示)が配列されている。
ヘッド支持体12は、ポリカーボネート等のプラスチックからなり、左右方向を長手方向とした平板状のものである。そして、ヘッド支持体12の左右両側における下部には、後方に向けて張り出した取付片22(図4参照)が形成されている。この取付片22には厚さ方向に貫通する貫通孔23が形成されており、この貫通孔23内に上述した回動シャフト20が挿通されている。したがって、ヘッド支持体12は、回動シャフト20の中心軸を回動中心として、プラテンローラ13に接近離間する方向に回動(揺動)可能に支持されている。よって上述したように、記録紙Pを間に挟んだ状態でプラテンローラ13の周面がサーマルヘッド11に対して接触するようになっている。
【0019】
なお、図示しないがヘッド支持体12の左右両端部における上部には、ヘッド支持体12の回動範囲を規制するためのストッパが形成されている。このストッパは、ヘッド支持体12から側方に向けて延出するものであり、フレーム10の側壁部10aに形成された図示しない収容部内に収容されている。そして、ストッパは、ヘッド支持体の回動に伴って収容部内を移動し、収容部の前面または後面に接触可能に構成されている。そして、ストッパと収容部の前面または後面とが接触することで、ヘッド支持体12のそれ以上の回動を規制するようになっている。
【0020】
フレキシブル基板16は、その表面に配線パターンが形成されており、この配線パターンがサーマルヘッド11や駆動手段14等に適宜電気的に接続されている。また、フレキシブル基板16の基端側は情報端末1の図示しない制御部に接続されている。これによりサーマルヘッド11や駆動手段14は、配線パターンを介して電力や制御信号等が入力されて作動するようになっている。
【0021】
(付勢手段)
ここで、各側壁部10aの内側には、ヘッド支持体12とプラテンローラ13との間において、凹部10d内に収容されたプラテンローラ13を押圧保持する一方で、ヘッド支持体12をプラテンローラ13に向けて押圧する付勢手段29が設けられている。付勢手段29は、ヘッド支持体12の左右方向両端部にそれぞれ支持された一対の保持部材30を備えている。なお、各保持部材30は、ともに同一の構成であるため、以下の説明では、1つの保持部材を例にして説明する。
【0022】
図5は保持部材の側面図である。なお、図中実線Aは保持部材がサーマルプリンタに組み付けられる前の無負荷状態、図中鎖線Bはカバー開放時(プラテンローラ13の非装着時)、鎖線Cはプラテンローラ13の着脱動作時を示している。
図1〜図5に示すように、保持部材30は、金属等の線材が屈曲形成されてなり、正面視(前後方向から見て)でU字状に形成されている。保持部材30は、ヘッド支持体12の貫通孔23の下部周縁が切り欠かれてなる収容部31内で支持されており、一端側がヘッド支持体12の後面(背面)まで回り込む一方、他端側がヘッド支持体12の外側からヘッド支持体12の前方に延在している。具体的に、保持部材30は、一端側に形成されてヘッド支持体12を後面側からプラテンローラ13に向けて付勢する支持体付勢部34と、他端側に形成されてヘッド支持体12の前面側で凹部10d内に収容されたプラテンローラ13の軸受け18を押圧保持するローラ付勢部33と、収容部31内に収容されながら、ヘッド支持体12の前面側から後面側に亘って配設され、ローラ付勢部33と支持体付勢部34との基端同士にそれぞれ接続された接続部35とを備えている。
【0023】
図4,図5に示すように、まずローラ付勢部33は、プラテンローラ13の装着時(図4参照)において、無負荷状態(図5中実線A参照)から後方に向けて僅かに押し倒されており、前方に向けて付勢力が作用するようになっている。具体的に、ローラ付勢部33は、接続部35から上方に向けて延出するアーム部36と、アーム部36の上端が斜め前方に向けて屈曲された前方屈曲部37と、前方屈曲部37の先端から斜め後方に向けて屈曲された後方屈曲部38と、後方屈曲部38の先端からさらに後方に向けて屈曲された延出部39とを備えている。
前方屈曲部37は、プラテンローラ13の軸受け18の周面に接触可能とされており、側壁部10aの凹部10dと前方屈曲部37との間にプラテンローラ13の軸受け18を挟み込むようになっている。
【0024】
アーム部36の下端は、後方に屈曲されて収容部31と側面視で重なる位置まで延出している。そして、アーム部36の下端には、左右方向に沿って延在する接続部35の一端側が接続されている。接続部35は、ヘッド支持体12の外側から収容部31内を通り、他端側がヘッド支持体12の後面側まで延在している。接続部35の他端側は、ヘッド支持体12の後面側で支持体付勢部34に接続されている。
【0025】
支持体付勢部34は、回動シャフト20の下部から上部まで回動シャフト20の前側を回り込むように屈曲された支点部41と、支点部41の先端が上方に向けて屈曲されてなる作用部42とを備えている。
保持部材30は、ローラ付勢部33と支持体付勢部34とが、無負荷状態から側面視で押し広げられた状態でサーマルプリンタ3に組み付けられている。したがって、作用部42は、保持部材30をサーマルプリンタ3に組み付けた際に、ヘッド支持体12の後面に当接してヘッド支持体12を前方に向けて常に付勢するようになっている。なお、保持部材30をヘッド支持体12に組み付ける場合には、ヘッド支持体12の貫通孔23内に回動シャフト20を挿通する前段で、支持体付勢部34の先端から保持部材30をヘッド支持体12の貫通孔23(収容部31)内に挿通する。その後、収容部31内に接続部35を収容した後、貫通孔23内に回動シャフト20を挿通することで、保持部材30をスムーズにサーマルプリンタ3に組み付けることができ、生産性を向上させることができる。
【0026】
(作用)
次に、上述したサーマルプリンタの作用について説明する。
まず、上述のサーマルプリンタにおけるプラテンローラの着脱時の動作について説明する。図6〜図8は、プラテンローラの着脱時における動作を説明するための説明図である。
図6に示すように、カバー8(図1参照)を閉方向に押し込むと、まずプラテンローラ13の軸受け18の周面が、保持部材30の後方屈曲部38に接触するとともに、ローラ本体13cの周面がサーマルヘッド11の前面に接触する。
【0027】
図7に示すように、さらにカバー8を押し込むと、プラテンローラ13の軸受け18が凹部10d内に入り込み、凹部10dとローラ付勢部33との間を押し広げるように移動する。具体的に、プラテンローラ13の軸受け18が後方屈曲部38上及び凹部10dの内面上を摺動することで、ローラ付勢部33が後方に向けて撓み変形する。これにより、ローラ付勢部33にはプラテンローラ13の軸受け18を凹部10d内に向けて付勢する付勢力(復元力)が発生する。
【0028】
同時に、ローラ本体13cの周面がサーマルヘッド11の前面上を下方に向けて摺動することで、サーマルヘッド11が後方に向けて起き上がるように回動する。これにより、保持部材30の支持体付勢部34は後方に向けて撓み変形するため、支持体付勢部34にはヘッド支持体12及びサーマルヘッド11を前方に向けて付勢する付勢力(復元力)が発生する。その結果、ローラ本体13cの周面とサーマルヘッド11の前面とは離間することなく、接触した状態でプラテンローラ13が凹部10d内に嵌まり込んでいく。
【0029】
その後、カバー8をさらに押し込むと、プラテンローラ13の軸受け18が後方屈曲部38と前方屈曲部37との境界部分及び凹部10dの突出部10fを乗り越え、軸受け18が凹部10d内の最下部まで落下する。
【0030】
すると、図8に示すように、保持部材30のローラ付勢部33が前方に向けて復元することで(図8中矢印F参照)、ローラ付勢部33の前方屈曲部37がプラテンローラ13の軸受け18の周面に接触する。これにより、プラテンローラ13の軸受け18は、ローラ付勢部33により凹部10d内で下方に向けて付勢されることになる。すなわち、プラテンローラ13の軸受け18は、ローラ付勢部33によって押さえ付けられて、ローラ付勢部33と凹部10dとの間に挟み込まれた状態で保持されることになる。また、支持体付勢部34には、前方に向けて付勢力が作用しているため、ヘッド支持体12は支持体付勢部34によりプラテンローラ13に向けて押圧された状態になる。
【0031】
以上により、プラテンローラ13のセットが完了する。なお、プラテンローラ13をフレームから取り外す際は、プラテンローラ13を上方に向けて引き抜くことで、上述した動作と逆の動作が行われ、プラテンローラ13を凹部10dから引き抜くことができる。
【0032】
次に、図1に示すように、情報端末1を利用して、宅配業者が顧客先でカード決済するとともに、サーマルプリンタ3を利用して決済情報を記録紙Pに印字する場合について説明する。
宅配先で顧客からカードを受け取った宅配業者は、磁気カードをカード読取部6に挿し込んで、磁気記録部内のデータを読み取る。また、液晶表示部5内に表示された各種の情報を確認しながら入力部4で適宜操作を行い、決済を完了させる。決済の完了後、その旨を記録紙Pに印字させる。
【0033】
まず、フレキシブル基板16の配線パターンを介して制御部からモータ21に信号が出力され、モータ21及び歯車駆動機構からなる駆動手段14を作動させる。この駆動手段14の作動により、従動ギア19を介してプラテンローラ13が回転し始める。これによって、プラテンローラ13の周面とサーマルヘッド11との間に挟まれた記録紙Pが、フレーム10の下面側から上面側、すなわち、情報端末1の上面側に向けて送り出される。
【0034】
また、これと同時にフレキシブル基板16の配線パターンを介して制御部からサーマルヘッド11に信号が出力されて、サーマルヘッド11を作動させる。これにより、多数の発熱素子が適宜熱を発する。この際、サーマルヘッド11は、ヘッド支持体12を介して保持部材30の支持体付勢部34によってプラテンローラ13に向けて付勢されているので、送り出された記録紙Pに対して各種の文字や図形等を明瞭に印字することができる。その結果、決済情報を記録紙Pに印字することができる。
【0035】
このように、本実施形態では、プラテンローラ13の装着時において、ヘッド支持体12をプラテンローラ13に向けて付勢するとともに、プラテンローラ13を凹部10d内に向けて付勢する付勢手段29を設ける構成とした。
この構成によれば、プラテンローラ13を保持する機能とヘッド支持体12を押圧する機能との双方の機能を保持部材30に持たせることができる。すなわち、図12に示す従来のサーマルプリンタ100と異なり、プラテンローラ13の保持及びヘッド支持体12の押圧のために、それぞれ独立した付勢手段(図12中保持バネ106及び加圧バネ107)を用いる必要がない。
これにより、ヘッド支持体103の後面とサーマルプリンタ100の後壁100aとの間に設けていた加圧バネ107そのものをなくすことができるので、ヘッド支持体12よりも後側のスペースを縮小することができる。また、フレーム10の後壁に加圧バネ107の付勢力が作用することもないので、付勢力を許容するための高い強度を確保する必要がない。そのため、フレーム10の後壁に要求される機械的強度を減少することができ、後壁の薄型化を図ることができる。あるいは、後壁そのものをなくすことも可能である。したがって、加圧バネ107の設置スペース分及び後壁の薄型化を図った分の寸法を縮小することで、特にサーマルプリンタ3の前後方向における厚みを縮小して、サーマルプリンタ3のさらなる小型化を図ることができる。
しかも、プラテンローラ13の保持及びヘッド支持体12の押圧のために、それぞれ独立した付勢手段を組み付ける場合に比べて組付工数及び部品点数を削減することができるので、生産性の向上を図ることができる。
【0036】
また、一本の線材を屈曲形成してなる保持部材30を利用して、プラテンローラ13の保持及びヘッド支持体12の押圧の双方の機能をそれぞれ確実に果たすことができるので、構成の簡素化及び低コスト化を図ることができる。
【0037】
したがって、プラテンローラ13を保持する機能及びヘッド支持体12を押圧する機能を保持部材30に持たせることができるので、従来の加圧バネ107が不要である上、後壁の薄型化を図ることができる。したがって、更なる小型化を図ることができるとともに、生産性の向上を図ることができる。これにより、サーマルプリンタ3が搭載される情報端末1の小型化も図ることができる。
【0038】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図9は第2実施形態のサーマルプリンタを後側から見た斜視図であり、図10はサーマルプリンタの側面図である。なお、図10においては、フレーム等の図示を省略する。上述した第1実施形態では、一対の保持部材がそれぞれ独立して設けられている場合について説明したが、本実施形態では各保持部材が一体的に連結されている点で第1実施形態と相違している。また、以下の説明では、上述した第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0039】
図9,図10に示すように、本実施形態のサーマルプリンタ70の付勢手段75は、ヘッド支持体12の両端側にそれぞれ配置された一対の保持部材30と、保持部材30の支持体付勢部34同士を連結する連結部71とが、一本の線材を屈曲形成して一体的に構成されている。
各保持部材30は、上述した第1実施形態の保持部材30と同様の構成であり、ローラ付勢部33及び支持体付勢部34を備えている。
連結部71は、各保持部材30における支持体付勢部34の先端から左右方向に沿って延在しており、その周面がヘッド支持体12における後面上部に当接している。
【0040】
ところで、本実施形態の付勢手段75では、保持部材30及び連結部71が一体形成されているので、保持部材30及び連結部71をヘッド支持体12に組み付ける際、第1実施形態のような貫通孔23(収容部31)に挿通して組み付けることが難しい。
【0041】
そこで、本実施形態では、ヘッド支持体12の裏面から貫通孔23に至る切欠き部73が形成されている。この切欠き部73は、ヘッド支持体12の後面側から前面側にかけて上下方向の幅が縮小するように形成されている。そして、貫通孔23の前側には、貫通孔23の内周縁から連続的に形成され、保持部材30の接続部35が収容される収容部31が形成されている。
本実施形態においてサーマルプリンタ70を組み付けるには、まず各保持部材30の接続部35をヘッド支持体12の裏面側に形成された切欠き部73から挿入し、収容部31内に収容させる。その後、貫通孔23内に回動シャフト20を挿通することで、ヘッド支持体12が回動シャフト20に組み付けられる。これにより、保持部材30同士を連結部71により連結した場合であっても、組み付けが困難になることはない。
【0042】
この構成によれば、各保持部材30が連結部71により連結されているため、ヘッド支持体12を連結部71により前方に向けて付勢することができる。すなわち、ヘッド支持体12に対して左右方向の全域から均一に付勢することができるため、ヘッド支持体12をプラテンローラ13の外周面に向けて均一に押し付けることができる。
また、連結部71を介して一対の保持部材30が一体的に連結されているので、部品点数の削減を図るとともに、部品管理が容易になり、生産性の更なる向上を図ることができる。
さらに、付勢手段75をヘッド支持体12に組み付けた後、保持部材30が収容された収容部31は回動シャフト20に塞がれることになるので、保持部材30が収容部31から抜けることを防止することができる。
【0043】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば本実施形態では、サーマルプリンタ3を情報端末1に採用した場合について説明したが、これに限らず、例えば駐車場或いはセルフ式のガソリンスタンドにおける給油機の精算機や、各種の飲食店舗内等に設置される券売機等、に採用することも可能である。
また、接続部35を収容する収容部31の配置位置等は、適宜設計変更が可能である。例えば、上述した実施形態では、貫通孔23の内周縁を切り欠いて収容部31を形成し、この収容部31内に保持部材30を組み付ける場合について説明したが、これに限らずヘッド支持体12において貫通孔23と別に形成してもよい。具体的には、図11に示すように、回動シャフト20が挿通された貫通孔23の上方において、ヘッド支持体12の後面から前方に向けて円形の切欠き部80を設け、この切欠き部80内に接続部35を嵌め込むような構成も可能である。
【0044】
また、上述した第2実施形態では、各保持部材30と連結部71とを一体的に形成する場合について説明したが、各保持部材30に対して連結部71を別体で設けても構わない。
さらに、上述した実施形態では、一本の線材を屈曲形成することで保持部材30を形成する場合について説明したが、ローラ付勢部33と支持体付勢部34との間がコイル状に巻回されたトーションスプリング等を採用しても構わない。
【符号の説明】
【0045】
3,70…サーマルプリンタ 10…フレーム(本体ユニット) 10d…凹部(収容部) 11…サーマルヘッド 12…ヘッド支持体 13…プラテンローラ 20…回動シャフト(回動軸) 29…保持部材 30…付勢手段 33…ローラ付勢部 34…支持体付勢部 71…連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーマルヘッドが主面に固定され、揺動可能に設けられたヘッド支持体を有する本体ユニットと、
前記本体ユニットに着脱可能とされ、装着時において前記サーマルヘッドとの間に記録紙を挟んだ状態で、前記記録紙を送り出すプラテンローラとを備え、
前記本体ユニットは、前記プラテンローラの装着時において、前記プラテンローラの両端部を収容可能な収容部と、
前記ヘッド支持体を前記プラテンローラに向けて付勢するとともに、前記収容部に収容された前記プラテンローラの端部を押さえ付けて前記プラテンローラを保持する付勢手段とを備えていることを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項2】
前記付勢手段は、線材が屈曲形成されてなる一対の保持部材を備え、
前記保持部材は、前記線材の一端側に形成され、前記ヘッド支持体を背面側から前記プラテンローラに向けて付勢する支持体付勢部と、
前記線材の他端側に形成され、前記ヘッド支持体の主面側で前記収容部に収容された前記プラテンローラの端部を押さえ付けて、前記プラテンローラを保持するローラ付勢部と、
前記ヘッド支持体の端部に係止されながら、前記ヘッド支持体の主面側から背面側に亘って配設され、前記支持体付勢部と前記ローラ付勢部とにそれぞれ接続された接続部とを備えていることを特徴とする請求項1記載のサーマルプリンタ。
【請求項3】
前記一対の保持部材の前記支持体付勢部同士は、前記ヘッド支持体の背面に沿って配設された連結部により一体的に連結されていることを特徴とする請求項2記載のサーマルプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−56691(P2011−56691A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206358(P2009−206358)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】