説明

サーマルプリンタ

【課題】モータをフレームに組み付けて固定及び位置決めする作業を簡易化し、且つ、モータを確実に固定することができるサーマルプリンタを提供すること。
【解決手段】モータがフレームに接する面の端部にフランジ部と、シャフトの周囲にボス部とを備え、フレームにはモータのボス部がシャフトの軸方向に直交する方向から挿入できるU字状の溝と、モータのフランジ部に嵌合する嵌合部と、が形成されており、モータのボス部をフレームのU字状の溝に挿入し、モータのフランジ部がフレームの嵌合部に嵌合することにより位置決め及び固定を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルヘッドとプラテンローラとを有する感熱式印字部を備えたサーマルプリンタは、キャッシュレジスター、携帯型端末装置、ATM(現金自動預払機)等の併設プリンタとして広く採用されている。
【0003】
このサーマルプリンタでは、プラテンローラが感熱紙の搬送を行い、ヘッドバネによりプラテンローラに押圧されるサーマルヘッドとプラテンローラとの間で感熱紙に印字するのが一般的である。
【0004】
プラテンローラは、軸の端部にギヤを備えてフレームに回転可能に支持され、減速ギヤ等を介してフレームに組み付けられたモータからの動力を受けて回転する様に設けられる。
【0005】
フレームにはモータシャフトの挿入口と、モータを固定するためのネジ穴等が設けられており、モータはシャフトをフレームに挿入した状態でネジ止め等により固定及び位置決めされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−237324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、モータをフレームに組み付けるには、シャフトをフレームに挿入してネジ穴の位置合わせを行なってネジを締めて固定するまでに目視による調整等を含む一定の作業量を要するため、生産性を低下させる原因となる場合がある。
【0008】
そこで本発明では、モータをフレームに組み付けて固定及び位置決めする作業を簡易化し、且つ、モータを確実に固定することができるサーマルプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、上記課題に鑑み、回転駆動するプラテンローラと、前記プラテンローラを回転させるモータと、前記プラテンローラを回転可能に支持し、前記モータが組み付けられるフレームと、を有するサーマルプリンタであって、前記モータは、前記フレームに接する面の端部にフランジ部と、シャフトの周囲にボス部とを備え、前記フレームは、前記モータのボス部が前記シャフトの軸方向に直交する方向から挿入できるU字状の溝と、前記モータの前記フランジ部に嵌合する嵌合部と、が形成されており、前記モータは、前記ボス部が前記フレームの前記U字状の溝に挿入され、前記フランジ部が前記嵌合部に嵌合することにより位置決め及び固定されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記フレームの前記U字状の溝の側面に、前記モータが前記フレームに組み付けられた状態で前記ボス部に接する突起部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記フレームに組み付けられ、前記プラテンローラのギヤ及び前記モータのギヤを覆うギヤカバーを有し、前記ギヤカバーには、前記フレームに組み付けられる際に前記U字状の溝に挿入され、前記モータの前記ボス部に接触するモータ押え部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、サーマルヘッドと、前記サーマルヘッドを前記プラテンローラに押圧する金属性のヘッドバネと、を有し、前記ヘッドバネが前記モータに接触する様に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施形態によれば、モータをフレームに形成されたU字状の溝に挿入するだけで位置決め出来るためモータの組み付け作業を簡易化して生産性を向上させることが可能で、且つ、モータを確実に固定することが出来るサーマルプリンタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係るサーマルプリンタの斜視図
【図2】実施形態に係るモータの斜視図及び側面図
【図3】実施形態に係るフレームの斜視図
【図4】実施形態に係るフレームのモータ組み付け部周辺の拡大図
【図5】実施形態に係るモータをフレームに組み付ける様子を示す図
【図6】実施形態に係るギヤカバーを説明する図
【図7】実施形態に係るモータ及びギヤカバーが組み付けられたフレームの要部拡大図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施の形態(以下「実施形態」という)について、図面を用いて詳細に説明する。
【0016】
図1に、本実施形態に係るサーマルプリンタ100の斜視図を示す。図1(a)、(b)はそれぞれ異なる方向からのサーマルプリンタ100の斜視図である。
【0017】
フレーム50は、2つの側板でプラテンローラ1、サーマルヘッド4を支持し、一方の側板がモータ20を備えている。また、フレームの中央部には、サーマルヘッド4をプラテンローラ1に押圧するためのヘッドバネ5が設けられている。フレーム50は、本体と側板とが樹脂材料を用いて一体にモールド形成されている。
【0018】
プラテンローラ1は、軸端部に設けられた軸受2及びギヤ3がフレーム50の側板に回転可能に支持されており、モータ20の駆動を受けて回転することで不図示の感熱紙を巻き付けて搬送する。
【0019】
サーマルヘッド4は、端部がフレーム50の側板に支持され、フレーム50の中央部に取り付けられたヘッドバネ5によりプラテンローラ1の方向に押圧されている。プラテンローラ1によって搬送される感熱紙は、サーマルヘッド4とプラテンローラ1との間を通過する際にサーマルヘッド4により表面に印字される。
【0020】
サーマルヘッド4には、図示しない制御基板からフレキシブルプリント基板10を通じて印字データが送信され、この印字データに基づいて感熱紙に印字が行なわれる。
【0021】
サーマルヘッド4をプラテンローラ1に押圧するヘッドバネ5は、金属性の材料で形成される板状の部材であり、フレーム50の中央部に形成された凸部40,41に嵌め込まれることで固定されている。
【0022】
フレーム50の一方の側板の内側にはモータ20が組み付けられており、モータ20の駆動力がギヤカバー51内に設けられた不図示の減速ギヤを介してギヤ3に伝達され、プラテンローラ1が回転する。
【0023】
図2に、モータ20の斜視図及び側面図を示す。
【0024】
モータ20は、ロータを内包するハウジング27と、フレーム50に接して組み付けられる取付面26を有し、取付面26には中央部から露出するシャフトの周囲にボス部23が形成されている。また、シャフトの端部にはギヤ24が設けられている。
【0025】
フレーム50への取付面26の端部には、ハウジング27から突出するフランジ部22と、フランジ部22の対角に同様にハウジング27から突出するネジ穴21が形成されている。ハウジング27の側面には接続部25が設けられており、フレキシブルプリント基板10の一端に接続する。
【0026】
モータ20がフレーム50に組み付けられる際には、モータ20のフランジ部22が後述するフレーム50に設けられた嵌合部に嵌ることで、モータ20が位置決め及び固定される。
【0027】
モータ20は、ギヤ24が外側に露出する様にヘッドバネ5等を備える内側からフレーム50に挿入され、取付面26がフレーム50の側板に密接した状態で固定される。
【0028】
図3に、フレーム50の斜視図を示す。
【0029】
フレーム50は、ヘッドバネ5を固定する凸部40,41が中央上部に形成されている。凸部40,41の両側には、ロール状の感熱紙を収納する筐体ケースにヘッドバネ5を挟んで固定するためのネジ穴42,43を備えている。
【0030】
また、フレーム50の側板には、プラテンローラ1を支持するためのプラテンローラ受け部56,57が設けられており、プラテンローラ1を回転可能に支持することができる。
【0031】
フレーム50のモータ20が組み付けられる側の側板には、モータ20の駆動をプラテンローラ1に伝達するためのギヤを支持する軸33,34,35が設けられている。
【0032】
フレーム50の側板は、プラテンローラ1のギヤ3及びモータ20のギヤ24を覆うギヤカバーを取り付けて固定するために、ギヤカバーの爪部が挿入される引掛穴55,58,59を有している。
【0033】
またフレーム50の側板には、モータ20のボス部23が、シャフトの軸方向に直交する方向から挿入できるU字状の溝30と、モータ20のフランジ部22と嵌合する嵌合部32が形成されている。
【0034】
図4に、フレーム50のモータ20の組み付け部周辺の拡大図を示す。図4(a)はモータ20の組み付け部周辺の斜視図、図4(b)は正面図、図4(c)はフレーム50の内側からの側面図である。
【0035】
フレーム50のモータ20が挿入されるU字状の溝30は、モータ20のボス部23の直径に等しい幅で、底部がボス部23に沿う形状に設けられている(図4(c))。
【0036】
また、U字状の溝30の側面には、モータ20がフレーム50に組み付けられた状態でボス部23に接触する位置に突起部31が形成されている。突起部31は、フレーム50に組み付けられたモータ20のボス部23を固定する。
【0037】
U字状の溝30には、後述するギヤカバーのモータ押え部が挿入される溝81,82が形成されており、モータ20を押えるギヤカバーのモータ押え部を固定することができる。
【0038】
フレーム50の側板のモータ20が組み付けられる側には、モータ20のフランジ部22に対応する位置に嵌合部32、モータ20のネジ穴21に対応する位置にネジ穴35が設けられている(図4(a)、(b))。
【0039】
フレーム50の嵌合部32は、フレーム50の側板との間でモータ20のフランジ部22を挟み込んで保持する挟持部32aと、挿入されるモータ20のフランジ部22が突き当たることでモータ20の回転方向の位置決めをする底部32bで構成されている。
【0040】
挟持部32aはモータ20のフランジ部22が挿入される先端部の幅が小さくなっており、フランジ部22を容易に挿入することができる様に設けられている。また、挟持部32aがフレーム50の側板との間でモータ20のフランジ部22を挟持して固定することで、組み付けられたモータ20がフレーム50の内側に抜けるのを防止している。
【0041】
嵌合部32の底部32bは、モータ20がU字状の溝30に挿入され、フランジ部22が底部32bに突き当たることでモータ20のシャフト回転方向に位置決め及び固定される。
【0042】
図5に、モータ20がフレーム50に組み付けられた状態を示す。
【0043】
図5(a)は、モータ20の取付面26がフレーム50の側板に接した状態でモータ20のボス部23がフレーム50の側板のU字状の溝30に挿入された状態を示している。
【0044】
図5(b)は、モータ20がフレーム50に組み付けられた状態で、モータ20のフランジ部22がフレーム50の嵌合部32に嵌合することで位置決め及び固定されている様子を示している。また、モータ20のボス部23は、フレーム50のU字状の溝30の側面に形成された突起部31により固定されている。
【0045】
この様に、モータ20は、ボス部23をフレーム50に形成されたU字状の溝30に沿って挿入するだけで、フランジ部22がフレーム50の嵌合部32に嵌合することで、シャフトの回転方向に位置決めされると共に、シャフトの回転軸方向に抜けない様に固定される。
【0046】
したがって、モータ20をフレーム50に取り付ける際に位置合わせに係る作業を必要としないため、モータ20の組み付け作業を簡易化することで生産性を向上させることができる。また、モータ20をフレーム50に挿入するだけで確実に固定することが可能になる。
【0047】
図6に、プラテンローラ1のギヤ3及びモータ20のギヤ24を覆うギヤカバー51の説明図を示す。図6(a)、(b)は、サーマルプリンタ100からギヤカバー51を外した状態の、異なる方向からの斜視図である。
【0048】
フレーム50の側板には、支持軸33,34,35にモータ20のギヤ24からプラテンローラ1のギヤ3まで動力を伝達するギヤ61,62,63が設けられており、これらのギヤを覆うギヤカバー51が組み付けられる(図6(b))。
【0049】
ギヤカバー51は、フレーム50に設けられた引掛部55,58,59に対応する位置に爪部52,53,54が設けられており、プラテンローラ1のギヤ3及びモータ20のギヤ24を覆って爪部及び引掛部によってフレーム50に固定される。
【0050】
また、ギヤカバー51には、フレーム50のU字状の溝30に挿入され、モータ20のボス部23に接触するモータ押え部80が形成されている。
【0051】
モータ押え部80は、ギヤカバー51がフレーム50に固定された状態で、モータ20のボス部23に接触してフレーム50のU字状の溝30を埋める様な形状を有しており、フレーム50のU字状の溝30に挿入されたモータ20のボス部23を押さえつけて固定する。
【0052】
図7に、フレーム50にモータ20及びギヤカバー51が組み付けられたモータ20周辺部の説明図を示す。
【0053】
フレーム50の側板に形成されたU字状の溝30にモータ20のボス部23が挿入され、モータ20のフランジ部22がフレーム50の嵌合部32に嵌合することでモータ20が位置決め及び固定されている(図7(a))。
【0054】
また、フレーム50のU字状の溝30の側面にはモータ20のボス部23に接する突起部31が、モータ20がU字状の溝30から外れるのを防止している。
【0055】
さらに、フレーム50のU字状の溝30にはギヤカバー51のモータ押え部80が挿入され、モータ20を押え付けて固定している(図7(b))。
【0056】
この様に、モータ20は、モータ20のフランジ部22、フレーム50の嵌合部32、突起部31及びギヤカバー51のモータ押え部80を設けることで、フレーム50に確実に固定されている。
【0057】
したがって、フレーム50にU字状の溝30及び嵌合部32を形成することでモータ20の組み付けを容易にして生産性を向上させると共に、モータ20を確実に固定することが可能になる。
【0058】
また、図1及び図6に示す様に、ヘッドバネ5は端部に設けられた接触部11がモータ20に接触する様に設けられている。ヘッドバネ5は、金属性の板状部材で形成されており、ロール状の感熱紙等を収納する筐体ケースに取付孔8,9を介して組み付けられるため、モータ20が帯電した静電気をフレームグランドに落とすことができる。
【0059】
さらに、モータ20が駆動することによって発生する熱を、モータ20に接触するヘッドバネ5から筐体ケースに放熱することで、モータ20が過熱するのを防止することができる。
【0060】
したがって、ヘッドバネ5の接触部11がモータ20に接触することで、モータ20が故障する原因となる静電気を放電し、また、熱を放熱する効果が得られるため、安定したプリントを継続して行なうことが可能となる。
【0061】
以上説明した様に、本発明の実施形態によれば、フレーム50にモータ20のボス部23を挿入するU字状の溝30及びモータ20のフランジ部22に嵌合する嵌合部32を形成することで、モータ20のフレーム50への組み付けを簡易化することが可能になる。
【0062】
また、フレーム50に形成されたU字状の溝30の側面の突起部31、嵌合部23及びギヤカバー51のモータ押え部80によってモータ20をフレーム50に確実に固定することができる。
【0063】
さらに、モータ20がヘッドバネ5に接触することによって、ヘッドバネ5を介してモータ20の静電気及び熱を逃がすことができるため、安定したプリントを継続して行なうことが可能となる。
【0064】
なお、上記実施形態に挙げた構成等に、その他の要素との組み合わせなど、ここで示した構成に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0065】
1 プラテンローラ
5 ヘッドバネ
20 モータ
22 フランジ部
23 ボス部
30 U字状の溝
31 突起部
32 嵌合部
50 フレーム
51 ギヤカバー
80 モータ押え部
100 サーマルプリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動するプラテンローラと、
前記プラテンローラを回転させるモータと、
前記プラテンローラを回転可能に支持し、前記モータが組み付けられるフレームと、
を有するサーマルプリンタであって、
前記モータは、前記フレームに接する面の端部にフランジ部と、シャフトの周囲にボス部とを備え、
前記フレームは、前記モータのボス部が前記シャフトの軸方向に直交する方向から挿入できるU字状の溝と、前記モータの前記フランジ部に嵌合する嵌合部と、が形成されており、
前記モータは、前記ボス部が前記フレームの前記U字状の溝に挿入され、前記フランジ部が前記嵌合部に嵌合することにより位置決め及び固定される
ことを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項2】
前記フレームの前記U字状の溝の側面に、前記モータが前記フレームに組み付けられた状態で前記ボス部に接する突起部が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項3】
前記フレームに組み付けられ、前記プラテンローラのギヤ及び前記モータのギヤを覆うギヤカバーを有し、
前記ギヤカバーには、前記フレームに組み付けられる際に前記U字状の溝に挿入され、前記モータの前記ボス部に接触するモータ押え部が形成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のサーマルプリンタ。
【請求項4】
サーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドを前記プラテンローラに押圧する金属製のヘッドバネと、を有し、
前記ヘッドバネが、前記モータに接触する様に設けられている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のサーマルプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−6288(P2013−6288A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138863(P2011−138863)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(501398606)富士通コンポーネント株式会社 (848)
【Fターム(参考)】