説明

サーマルヘッドおよびサーマルプリンター

【課題】ドライバーICのビット数を有効に活用できる高印刷品位のサーマルヘッドを提供する。
【解決手段】複数の発熱素子145が列状に配置されたヘッド基板110と、前記ヘッド基板110に列状に実装され、所定数の前記発熱素子145を担当して選択的に発熱させる複数のドライバーIC130と、を備えるサーマルヘッド1であって、前記複数のドライバーIC130は、異なるビット数の前記ドライバーIC130からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱素子を選択的に駆動するドライバーICを備えるサーマルヘッドおよびそのサーマルヘッドを備えるサーマルプリンターに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置の1つとしてサーマルプリンターが知られている。サーマルプリンターは、発熱素子が直線的に配置されたサーマルヘッドを有している。サーマルヘッドに配置された発熱素子は、通電により選択的に発熱する。そして、この熱エネルギーが感熱紙に含まれる発色剤と選択的に反応することにより、感熱紙上に種々の情報を印刷する。この印刷方式は、感熱発色方式と呼ばれている。
【0003】
このようなサーマルヘッドは、長矩形形状のヘッド基板(サーマルヘッド基板)と、基板の長辺の一端部に長辺に沿って配列される多数の発熱素子(発熱抵抗体)と、多数の発熱素子に平行して配置されるとともに発熱素子を選択的に発熱駆動する複数のドライバーICとを備えている。サーマルヘッド基板は、発熱素子とドライバーICとの間には、それぞれを接続する出力信号配線パターンが形成され、ドライバーICを挟んで発熱素子と対向する側には、ドライバーIC用の入力信号配線パターンが形成される。
【0004】
発熱素子は、個別電極とコモン電極とに導通しており、個別電極は、出力信号配線パターンを介してドライバーICの出力パッドにワイヤーボンディング等によって接続されている。ドライバーICは、出力パッド数と対応した所定ビット数のシフトレジスターが内蔵され、入力信号配線パターンを介して入力される印刷データをシフトレジスターに保持する。そして、ドライバーICに入力されるストローブ信号のタイミングで所定の出力パッドをオンとする。このオンとなった出力パッドに対応する個別電極とコモン電極間に電流が流れ、所定の発熱素子が発熱駆動される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−81114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のヘッド基板に搭載されるドライバーICの出力パッド数は、ドライバーIC間のデータ転送の都合等から、基本的に8ビットの倍数であることが好ましく、例えば64ビット、128ビット、144ビット、160ビット等とされている。そのため、ヘッド基板が例えば512個の発熱素子を有している場合は、128ビットのドライバーICが4個配列される。ところが、サーマルプリンターにおいて、使用される感熱紙の幅、感熱紙に印刷される印刷幅、および発熱素子の配列ピッチは、そのサーマルプリンターが用いられる市場および用途により多岐にわたる。そのため、サーマルヘッドに設けられた発熱素子の総数が、ドライバーICのビット数の整数倍にならない場合が発生する。この場合、ドライバーICの余ったビット数が有効に活用されず無駄になってしまうという課題があった。
【0007】
また、複数のドライバーICを長矩形形状のヘッド基板に列状に配置すると、ヘッド基板の入力端子部からドライバーICの入力パッドまで、コモン電極パターン、ロジック電源線等の電源線や、クロック信号線、ラッチ信号線等の信号線を含む入力配線パターンが形成される。このとき、入力信号配線パターンの長さがドライバーICごとに異なってしまう。長い配線パターンを有するドライバーICに対しては、配線パターンの内部抵抗により電圧ドロップが発生する虞がある。ドライバーICに対して、電圧ドロップが発生すると、そのドライバーICが駆動する発熱素子の熱エネルギーが低下して、感熱紙に含まれる発色剤との反応が低下して発色が薄くなる虞がある。すなわち、印刷濃淡等が発生して印刷品位の低下が生ずる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0009】
(適用例1)複数の発熱素子が列状に配置された基板と、前記基板に実装され、所定数の前記発熱素子を担当して選択的に発熱させる複数のドライバーICと、を備えるサーマルヘッドであって、前記複数のドライバーICは、異なるビット数の前記ドライバーICからなることを特徴とするサーマルヘッド。
【0010】
この構成によれば、異なるビット数のドライバーICを組み合わせることにより、基板に設けられた発熱素子の総数と、ドライバーICの合計ビット数とを合わせることができる。そのため、ドライバーICのビット数を有効に活用することができる。従って、無駄を低減させ、コスト低減に寄与することができる。
【0011】
(適用例2)前記複数のドライバーICは、少なくとも、第1ドライバーICおよび第2ドライバーICからなり、少なくとも1つ以上の前記第1ドライバーICと少なくとも1つ以上の前記第2ドライバーICとのビット数の合計数は、前記基板に配置された前記発熱素子の総数と等しいことを特徴とする上記のサーマルヘッド。
【0012】
この構成によれば、ビット数の異なる第1ドライバーICと第2ドライバーICとを組み合わせることにより、基板に設けられた発熱素子の総数と、ドライバーICの合計ビット数とを合わせることができる。
【0013】
(適用例3)前記基板は、前記複数のドライバーICの入力パッドに入力信号を供給する入力端子部を有し、前記第2ドライバーICのビット数より多いビット数を有する前記第1ドライバーICは、前記第2ドライバーICが前記基板に実装される位置よりも、前記入力端子部に近い位置に実装されていることを特徴とする上記のサーマルヘッド。
【0014】
一般に、大きいビット数のドライバーICほど電流容量が必要となる。この構成によれば、ビット数の多い第1ドライバーICを、ビット数の少ない第2ドライバーICと比較して、基板の入力端子部の近くに配置することができる。そのため、第1ドライバーICに入力信号を供給する入力信号配線パターンの長さを、第2ドライバーICと比較して、短くすることができる。その結果、第1ドライバーICの入力信号配線パターンにおいて、配線パターンの内部抵抗による電圧ドロップを低減することができ、第1ドライバーICに供給される電圧を安定させることができる。従って、各ドライバーICが駆動する発熱素子に関して、発生させる熱エネルギーを安定させることができ、印刷品位の低下を防ぐことができる。
【0015】
(適用例4)上記のサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドが押圧状態で当接するプラテンと、を備えることを特徴とするサーマルプリンター。
【0016】
この構成によれば、ドライバーICの有効活用を図ることができるサーマルヘッドを有するサーマルプリンターを提供することができる。また、印字濃淡等の不具合を低減させた印刷品位の高いサーマルプリンターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】サーマルプリンターの外観構成を示す斜視図。
【図2】カバーフレームが開いた状態のプリンター機構部の斜視図。
【図3】カバーフレームが閉じた状態のプリンター機構部の斜視図。
【図4】プリンター機構部の側断面を示す側断面図。
【図5】サーマルヘッドの取付を説明する側面図。
【図6】サーマルヘッドの外観斜視図。
【図7】サーマルヘッドのヘッド基板を説明する図。
【図8】第3変形例のヘッド基板を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本実施形態を、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で参照する図面では、説明および図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺を実際のものとは異なるように表す場合がある。
【0019】
(サーマルプリンターの全体構成について)
本実施形態のサーマルプリンターを、図1〜3を参照して説明する。図1は、サーマルプリンターの外観構成を示す斜視図である。図2および図3は、プリンター機構部の外観を示す斜視図であり、図2は、カバーフレームが開いた状態のプリンター機構部の斜視図であり、図3は、カバーフレームが閉じた状態のプリンター機構部の斜視図である。
【0020】
このサーマルプリンターは、POSシステム等に用いられ、レシートやクーポン等を印刷して発行することに適用される。なお、本実施形態では、例えば、80mmの紙幅のロール状の感熱紙に対して、203dpi(約8dot/mm)の解像度で72mmの印字幅、すなわち576ドットラインで情報を印刷する場合を例にとり説明する。なお、図1〜図3に示すX方向は、印刷される感熱紙の幅方向を示し、Z方向は、サーマルヘッド部での感熱紙の紙送り方向を示し、Y方向は、X方向およびZ方向と直交する方向を示す。
【0021】
図1〜3に示すように、サーマルプリンター100は、外装ケース部200と、プリンター機構部300と、図示しない制御部を有している。
図2および図3に示すプリンター機構部300は、回路基板等からなる制御部とともに図1に示す外装ケース部200に収容される。詳しくは、プリンター機構部300は、樹脂等からなる下ケース205に固定され、側面部および後方部は、上ケース210に覆われており、そのY方向の前方部分は、パネル215により覆われている。さらに、プリンター機構部300の上面は、上部カバー220に覆われている。
【0022】
図2に示すように、プリンター機構部300は、印刷された感熱紙を切断するための紙カット部20およびロール状の感熱紙を収納保持するためのロール紙ホルダー30を備えている。図1に示すパネル215の上部にはこの紙カット部20が配置され、紙カット部20はカッターカバー225で覆われている。このカッターカバー225は、図1中矢印A方向にスライドさせて引き出すことができる。
【0023】
図1に示すように、上ケース210の上面のX方向の一方の側には、オープンボタン230が設けられている。オープンボタン230は、図1中矢印B方向に押し下げられることによって、プリンター機構部300に設けられたカバーオープンレバー235を、支点240を中心に回転させることができる。カバーオープンレバー235は、図2に示すプリンター機構部300のカバーフレーム10のロック機構と係合しており、時計方向に回転されることにより、ロック機構が解除される。さらに、カバーフレーム10は、上部カバー220と結合されている。
【0024】
そのため、矢印B方向にオープンボタン230を押し下げると、カバーオープンレバー235が時計方向に回転されてロック機構が外され、上部カバー220が矢印C方向に開き、ロール紙ホルダー30が露出する。すなわち、この状態が、図2に示すプリンター機構部300のカバーフレーム10が開いた状態である。このようにすることにより、ロール状の感熱紙のセットもしくは取り出しができる。
【0025】
なお、本実施形態で使用する感熱紙は、発色剤がバインダー等により保持されている発色層からなる印刷面を有し、この印刷面を外面に順次積層され構成されているロール状の感熱紙である。以降、このロール状の感熱紙をロール紙と呼ぶ。
【0026】
(プリンター機構部について)
次いで、プリンター機構部の詳細を図2〜5を参照して説明する。図4は、プリンター機構部の側断面を示す側断面図である。図5はサーマルヘッドの取付を説明する側面図であり、(a)はサーマルヘッドが本体フレームに取り付けられた状態を示す部分側面図、(b)はサーマルヘッドを本体フレームに取り付ける過程を示す部分側面図である。なお、図4および図5に示すY方向およびZ方向は、図1〜3に示すY方向およびZ方向と同一方向である。
【0027】
図2〜4に示すように、プリンター機構部300は、本体フレーム60とカバーフレーム10と、ロール紙ホルダー30と、紙カット部20と、印刷部70と、を備えている。図2に示すように、本体フレーム60は、板金等からなり、Z方向上方およびY方向前方に開口を有する略箱型に形成されている。カバーフレーム10は、本体フレーム60の上部後方に設けられている。カバーフレーム10は、本体フレーム60の後部両側の上端部に設けられた支軸68を中心として開閉自在に取り付けられている。カバーフレーム10には、カバーフレーム10を閉じた際にロール紙との接触を避けるための円弧状の蓋部15が設けられている。また、本サーマルプリンター100の設置角度を変える場合、すなわち、例えば縦置きにする場合、この蓋部15は、ロール紙を受ける保持部材としても機能する。
【0028】
図2に示すように、ロール紙ホルダー30は、本体フレーム60の箱状に形成された内部の後方に、上記カバーフレーム10に覆われて設けられている。ロール紙ホルダー30は、樹脂等により形成され、中央部にロール紙の最大径に相当する略円弧状のくぼみを有し、本体フレーム60の底部に、円弧状のくぼみの側面開口が本体フレーム60の両側面側に向くように取り付けられている。本体フレーム60の内側の両側面部分は、ロール紙の側面ガイド部として機能する。そのため、ロール紙は、側面を本体フレーム60の内側の両側面部分に幅方向の動きを規制され、ロール紙ホルダー30の略円弧状のくぼみに回転自在に保持される。
【0029】
図3に示すように、紙カット部20は、本体フレーム60の前方すなわちカバーフレーム10の支軸68とは相対する位置に設けられている。紙カット部20は、可動刃21およびその駆動手段が収納されている。可動刃21は駆動手段により、支点22を中心に矢印E方向に回動する。図4に示すように、この可動刃21とハサミ状に交叉する固定刃24は、紙カット部20に対向するようにカバーフレーム10に配置される。
【0030】
この固定刃24と可動刃21との隙間は感熱紙が通過する紙出口Gに連結している。そのため、駆動手段により回動される可動刃21の刃部と固定刃24の刃部とがハサミ状に交叉することによって、感熱紙は紙出口G近傍でカットされる。なお、固定刃24の上部には、固定刃カバー25が設けられている。また、感熱紙を切断しない時は、可動刃21は紙カット部20の内部に収納されており、可動刃21の刃部は露出しない。
【0031】
図4に示すように、印刷部70は、ロール紙ホルダー30を始点として紙カット部20の紙出口Gを終点とする感熱紙Sの搬送経路D上の紙カット部20側に設けられている。図4および図5に示すように、印刷部70は、プラテン71とサーマルヘッド1とヘッド保持機構77とを備えている。サーマルヘッド1は、両側面にヘッド支持軸102が設けられている。このサーマルヘッド1の詳細については後述する。ヘッド保持機構77は、本体フレーム60に形成された溝部としての切り欠き部62とヘッド押圧板72とヘッド押圧板72に取り付けられるバネ75とから構成されている。
【0032】
図5(b)に示すように、切り欠き部62は、本体フレーム60の上方に開口を有し、プラテン側に溝62aが形成され、溝62aと対向する位置の上下に溝62b,62cが形成されている。サーマルヘッド1は、ヘッド支持軸102が本体フレーム60の切り欠き部62に挿入され、ヘッド支持軸102が切り欠き部62の溝62aに係合することによって、本体フレーム60に取り付けられる。ヘッド押圧板72は、上下に曲げ部72b,72cが形成され、圧縮コイルバネであるバネ75が固定されている。このヘッド押圧板72は、切り欠き部62に挿入され、曲げ部72b,72cがそれぞれ切り欠き部62の溝62b,62cに係合する。
【0033】
このようにすることによって、サーマルヘッド1とヘッド押圧板72とは、切り欠き部62の両側に、互いに略平行状態で支持される。ヘッド押圧板72に固定されるバネ75は、サーマルヘッド1の背面に当接する。このバネ75によりサーマルヘッド1はプラテン71方向に付勢される。
【0034】
上述のヘッド保持機構77は、ヘッド押圧板72に固定されたバネ75をサーマルヘッド1の背面からずらすことによって、切り欠き部62から取り外すことができる。サーマルヘッド1もバネ75からの付勢力がなくなることによって、切り欠き部62から取り外すことができる。このようにして、サーマルヘッド1は本体フレーム60に対して、着脱可能に支持される。
【0035】
図2に示すように、プラテン71は、ゴム等の弾性部材により円筒形のローラー状に形成され、プラテン軸受73を介してカバーフレーム10に回転可能に支持されている。プラテン71の一方の軸には、プラテン歯車74が圧入されている。本体フレーム60には、溝部64が設けられており、カバーフレーム10を閉じると、プラテン71が、サーマルヘッド1の案内斜面部104(図4参照)に案内された後、プラテン軸受73が溝部64と当接する。さらに、サーマルヘッド1によるプラテン71への加圧力で、カバーフレーム10には下向きの力が作用し、プラテン71の位置が定められる。
【0036】
以上の構成により、図5(a)に示すように、プラテン71は、感熱紙Sの内面S2の側から感熱紙Sをサーマルヘッド1の方向に押圧し、プラテン71と対向するサーマルヘッド1は、感熱紙Sの外面S1の側から感熱紙Sをプラテン71の方向に押圧して、感熱紙Sを挟持する。なお、このとき感熱紙Sの外面S1の表面に、前述の発色層が形成されている。
【0037】
また、図2に示すように、本体フレーム60の側面には、プラテン71を回転駆動させるための紙送りモーター66と紙送り伝達歯車67とが設けられている。上述のように、プラテン71が本体フレーム60の溝部64に位置決めされることによって、プラテン歯車74と紙送り伝達歯車67とが噛み合い、紙送りモーター66からの動力がプラテン71へ伝達される。
【0038】
上述の構造を有するサーマルプリンター100は、上部カバー220と連結するカバーフレーム10を開き感熱紙Sからなるロール紙Rをセットして、感熱紙Sを紙出口Gまで引き出し、上部カバー220と連結するカバーフレーム10を閉じることによって、感熱紙Sはプラテン71とサーマルヘッド1との間にセットされる。そして、紙送りモーター66を起動しプラテン71を回転させて感熱紙Sを送りながら、サーマルヘッド1の直線状に配置された発熱素子に選択的に通電して発熱素子を発熱させることによって、感熱紙Sに所定の情報を印刷することができる。
【0039】
(サーマルヘッドについて)
次いで、サーマルヘッド1について、図6および7を参照して説明する。図6はサーマルヘッドの外観斜視図である。図7は、サーマルヘッドのヘッド基板の平面図であり、(a)は、ヘッド基板全体図、(b)は、(a)の部分拡大図である。なお、図6および図7に示すX方向およびZ方向は、図1〜3に示すX方向およびZ方向と同一方向である。
【0040】
図6に示すように、サーマルヘッド1は、放熱板106とヘッド支持軸102と基板としてのヘッド基板110とドライバーIC130とFFC108とを有している。ヘッド基板110は、長矩形形状を呈しており、複数の発熱素子145からなる発熱素子列145aが長手方向に沿って図中Z方向上方に形成されている。本実施形態のサーマルヘッド1は、例えば、80mmの紙幅の感熱紙Sに対して203dpi(約8dot/mm)の解像度で72mmの印字幅に情報を印刷する。発熱素子列145aは、576ドット、すなわち、576個の発熱素子145から構成されている。
【0041】
ドライバーIC130は、発熱素子145を選択的に発熱駆動させる制御回路を単一のICチップとして構成したものであり、2つの第1ドライバーIC132および2つの第2ドライバーIC134からなる。ここで、第1ドライバーIC132は、出力ビット数が160ビットに構成され、第2ドライバーIC134は、出力ビット数が128ビットに構成されている。すなわち、2つの第1ドライバーIC132および2つの第2ドライバーIC134で合計ビット数は、576ビットとなり、発熱素子145の総数576個と一対一に対応する。
【0042】
2つの第1ドライバーIC132および2つの第2ドライバーIC134は、ヘッド基板110に発熱素子列145aと平行して、列状に配設されている。放熱板106は、アルミニウム等の引き抜き材で形成され、ヘッド基板110が放熱板106の係止面106aに両面粘着テープ等で貼り付けられている。
【0043】
放熱板106のヘッド基板110のZ方向上方には、案内斜面部104が放熱板106の長手方向にわたって形成されている。この案内斜面部104は、図4に示すカバーフレーム10を閉じる際に、プラテン71を滑動させて所定の位置まで案内する。この際、案内斜面部104の傾斜は、プラテン71がヘッド基板110と衝突しないような所定の角度を有している。また、案内斜面部104の斜面は、この案内斜面部104に近接して付設されたヘッド基板110と略同じ高さになるように設定されている。ヘッド支持軸102は円柱状の丸ピンであり、放熱板106の左右の側面部に設けられた穴部に圧入されている。
【0044】
ここで、ヘッド基板110について図7を参照して説明する。図7(a),(b)に示すように、ヘッド基板110は、アルミナセラミック等からなり、一側縁110aに近い位置に長手方向に沿って、通電された電流を熱に変換する線状の発熱体140が保護膜に保護された状態で直線状に設けられている。ヘッド基板110の他側縁110bには、外部との電気的接続に供せられる入力端子部112が設けられている。発熱体140とヘッド基板110の一側縁110aとの間の帯状領域には、コモン配線パターン114が形成されている。このコモン配線パターン114の両端部は、入力端子部112にいたるまでに延ばされている。
【0045】
ヘッド基板110のX方向略中央には、第1ドライバーIC132を実装するIC実装部132aが2つ並んで設けられ、これらIC実装部132aを挟んでX方向左右に第2ドライバーIC134を実装するIC実装部134aが1つずつ設けられている。つまり、2つのIC実装部132aおよび2つのIC実装部134aは、線状の発熱体140と並列した列状に配置されている。
【0046】
図7(b)に示すように、上記コモン配線パターン114から、櫛歯状のコモン電極114aが延ばされており、一方、この櫛歯状のコモン電極114a間に入り込むようにして、個別電極118の一端が延出されている。各個別電極118の他端部は、ヘッド基板110上に設けられたIC実装部132a,134aまで延びており、その端部には、電極パッド124が列状に形成されている。IC実装部132a,134aのヘッド基板110の他側縁110b側には、電極パッド126が列状に設けられている。この電極パッド126は、配線パターン128により、図7(a)に示す入力端子部112に接続されている。
【0047】
図7(a)に示すように、2つのIC実装部132aは、ヘッド基板110のX方向略中央に設けられ、2つのIC実装部134aは、IC実装部132aを挟んでX方向左右に設けられている。また、入力端子部112は、ヘッド基板110の他側縁110bのX方向略中央に設けられている。そのため、IC実装部132aに位置する電極パッド126と入力端子部112とを接続する配線パターン128は、IC実装部134aに位置する電極パッド126と入力端子部112とを接続する配線パターン128より短い長さに形成される。なお、この入力端子部112は、FFC108が取り付けられ、FFC108を介してサーマルプリンター100を制御する制御部を構成する主回路基板(図示せず)と接続されている。
【0048】
上記発熱体140は、図7(b)に二点鎖線で示すように、上記櫛歯状のコモン電極114aおよびこれらの間に入り込む個別電極118に重なるようにして形成されている。そのため、隣合う櫛歯状のコモン電極114aと個別電極118とによって、発熱素子145が規定される。すなわち、選択された個別電極118がオン駆動されると、この個別電極118と櫛歯状のコモン電極114aとに囲まれる領域の発熱体140に電流が流れ、その部分が発熱素子145として機能する。
【0049】
すなわち、それぞれの領域の発熱体140が選択的に通電されることで、通電された領域の発熱体140のみが瞬時に発熱するとともに、通電が休止された場合は、速やかに放熱板106に放熱されるように構成されている。さらに、発熱体140は、感熱紙Sを挟持搬送するプラテン71とサーマルヘッド1との接点近傍に配置されている。そのため、発熱体140から発熱された熱エネルギーは感熱紙Sの発熱素子145に対応する領域に伝わり、感熱紙Sに所定の情報を印刷することができる。
【0050】
以下、本実施形態の効果を記載する。
(1)従来の方法であれば、576個の発熱素子145を有するサーマルヘッド1を駆動するためには、128ビットの第2ドライバーIC134が5つ必要になる。すなわち、128ビット×5となり、ビット数は640ビットとなる。そのため、64ビットが無駄になってしまう。上述のサーマルプリンター100に搭載されているサーマルヘッド1は、ビット数の異なる2つの第1ドライバーIC132および2つの第2ドライバーIC134を有している。そして、搭載される第1ドライバーIC132および第2ドライバーIC134のビット数の合計の値(576ビット:160ビット×2つ+128ビット×2つ)は、サーマルヘッド1に設けられた発熱素子145の総数(576個)と同数である。そのため、ドライバーIC130のビット数を有効に活用することができる。従って、無駄を低減させ、コスト低減に寄与することが可能となる。
【0051】
(2)上述のサーマルプリンター100に搭載されているサーマルヘッド1は、大きい電流容量が必要な多ビット数の第1ドライバーIC132をヘッド基板110の入力端子部112に近い位置に配置して、低ビット数の第2ドライバーIC134をヘッド基板110の入力端子部112から遠い位置に配置している。そのため、第1ドライバーIC132に入力信号を供給する配線パターン128の長さを、第2ドライバーIC134と比較して、短くすることができる。その結果、第1ドライバーIC132の配線パターン128において、配線パターン128の内部抵抗による電圧ドロップを低減することができ、第1ドライバーIC132に供給される電圧を安定させることができる。従って、各ドライバーIC130が駆動する発熱素子145に関して、発生させる熱エネルギーを安定させることができ、印刷品位の低下が防ぐことができる。
【0052】
(3)通常、サーマルヘッド1の発熱素子列145aの駆動は、一時に行うのではなく時分割して行うのが一般的である。その理由は、多数の発熱素子145を同時に発熱させると、コモン配線パターン114に流れる電流量が多くなりこれに伴なうコモン配線パターン114の電圧ドロップが著しくなり、印字濃淡等の不具合が生ずる虞があるからである。そのため、128ビットの第2ドライバーIC134を5個必要とする従来のサーマルヘッド1は、5つの第2ドライバーIC134を、例えば2分割して、それぞれタイミングをずらせて駆動する。2分割駆動で制御する場合は、5つの第2ドライバーIC134を、2つの第2ドライバーIC134の組と3つの第2ドライバーIC134の組とに分けざるを得ず、分割される発熱素子145の数が左右異なることになる。その結果、左右の濃淡ムラの原因になり得るし、3つの第2ドライバーIC134に対応した大容量の電源が必要になってしまう。
【0053】
上述のサーマルプリンター100に搭載されているサーマルヘッド1は、ビット数の異なる2つの第1ドライバーIC132および2つの第2ドライバーIC134の計4つのドライバーIC130を搭載することができる。そのため、時分割で発熱素子列145aを駆動する場合、2つずつのドライバーIC130の組(1つの第1ドライバーIC132と1つの第2ドライバーIC134の組)に分割することができ、分割される発熱素子145の数を左右同じにすることができる。その結果、左右の濃淡ムラを低減させることができるとともに、電源容量の無駄を少なくすることができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。例えば上記実施例以外の変形例は、以下の通りである。
【0055】
(第1変形例)上述の実施形態では、サーマルヘッド1が576個の発熱素子145を有し、80mmの紙幅の感熱紙Sに対して203dpi(約8dot/mm)の解像度で72mmの印字幅に情報を印刷する場合について説明したが、これは一実施例であってこれに限定されない。以下、448個の発熱素子145を有するサーマルヘッド1aを用い、58mmの紙幅の感熱紙Sに対して203dpi(約8dot/mm)の解像度で56mmの印字幅に情報を印刷する場合について説明する。なお、上述の実施形態と同様な構成および内容については、符号を等しくして説明を省略する。
【0056】
従来の方法であれば、448個の発熱素子145を有するサーマルヘッド1aを駆動するためには、128ビットの第2ドライバーIC134が4つ必要になる。すなわち、128ビット×4となり、ビット数は512ビットとなる。そのため、64ビットが無駄になってしまう。または、144ビットのドライバーIC130を適用する場合は、144ビットのドライバーIC130が4つ必要になる。すなわち、144ビット×4となり、ビット数は576ビットとなる。そのため、128ビットが無駄になってしまう。
【0057】
第1変形例のサーマルヘッド1aは、160ビットの第1ドライバーIC132を2つ、および128ビットの第2ドライバーIC134を1つ有している。そのため、搭載される第1ドライバーIC132および第2ドライバーIC134のビット数の合計の値(448ビット:160ビット×2つ+128ビット×1つ)は、サーマルヘッド1aに設けられた発熱素子145の総数(448個)と同数になる。その結果、ドライバーIC130のビット数を有効に活用することができる。従って、無駄を低減させ、コスト低減に寄与することが可能となる。
【0058】
(第2変形例)次いで、864個の発熱素子145を有するサーマルヘッド1bを用い、112mmの紙幅の感熱紙Sに対して203dpi(約8dot/mm)の解像度で108mmの印字幅に情報を印刷する場合について説明する。なお、上述の実施形態と同様な構成および内容については、符号を等しくして説明を省略する。
従来の方法であれば、864個の発熱素子145を有するサーマルヘッド1bを駆動するためには、128ビットの第2ドライバーIC134が7つ必要になる。すなわち、128ビット×7となり、ビット数は896ビットとなる。そのため、32ビットが無駄になってしまう。
【0059】
第2変形例のサーマルヘッド1bは、160ビットの第1ドライバーIC132を3つ、および128ビットの第2ドライバーIC134を3つ有している。そのため、搭載される第1ドライバーIC132および第2ドライバーIC134のビット数の合計の値(864ビット:160ビット×3つ+128ビット×3つ)は、サーマルヘッド1bに設けられた発熱素子145の総数(864個)と同数になる。その結果、ドライバーIC130のビット数を有効に活用することができる。従って、無駄を低減させ、コスト低減に寄与することが可能となる。
【0060】
(第3変形例)上述の実施形態では、図7(a)に示すように、ヘッド基板110の他側縁110bのX方向略中央に入力端子部112が設けられ、入力端子部112の近傍にビット数の多い第1ドライバーIC132が設けられている場合について説明したが、これに限定されない。第3変形例のヘッド基板110Aを説明する図である図8に示すように、ヘッド基板110Aの他側縁110bのX方向両端に、入力端子部112が入力端子部112aおよび入力端子部112bの2つに分割されそれぞれ配置されていてもよい。この場合は、図8に示すビット数の大きい第1ドライバーIC132を実装するIC実装部132aがヘッド基板110AのX方向両端側に設けられ、ビット数の小さい第2ドライバーIC134を実装するIC実装部134aがヘッド基板110AのX方向略中央に設けられている。
【0061】
そのため、第1ドライバーIC132に入力信号を供給する配線パターン128(図7(b)参照)の長さを、第2ドライバーIC134と比較して、短くすることができる。その結果、第1ドライバーIC132の配線パターン128において、配線パターン128の内部抵抗による電圧ドロップを低減することができ、第1ドライバーIC132に供給される電圧を安定させることができる。従って、各ドライバーIC130が駆動する発熱素子145に関して、発生させる熱エネルギーを安定させることができ、印刷品位の低下を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0062】
1,1a,1b…サーマルヘッド、70…印刷部、71…プラテン、100…サーマルプリンター、108…FFC、110,110A…ヘッド基板、112,112a,112b…入力端子部、124,126…電極パッド、128…配線パターン、130…ドライバーIC、132…第1ドライバーIC、132a…IC実装部、134…第2ドライバーIC、134a…IC実装部、140…発熱体、145…発熱素子、145a…発熱素子列、300…プリンター機構部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発熱素子が列状に配置された基板と、前記基板に実装され、所定数の前記発熱素子を担当して選択的に発熱させる複数のドライバーICと、を備えるサーマルヘッドであって、
前記複数のドライバーICは、異なるビット数の前記ドライバーICからなることを特徴とするサーマルヘッド。
【請求項2】
前記複数のドライバーICは、少なくとも、第1ドライバーICおよび第2ドライバーICからなり、
少なくとも1つ以上の前記第1ドライバーICと、少なくとも1つ以上の前記第2ドライバーICとのビット数の合計数は、前記基板に配置された前記発熱素子の総数と等しいことを特徴とする請求項1に記載のサーマルヘッド。
【請求項3】
前記基板は、前記複数のドライバーICの入力パッドに入力信号を供給する入力端子部を有し、
前記第2ドライバーICのビット数より多いビット数を有する前記第1ドライバーICは、前記第2ドライバーICが前記基板に実装される位置よりも、前記入力端子部に近い位置に実装されていることを特徴とする請求項1または2に記載のサーマルヘッド。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドが押圧状態で当接するプラテンと、を備えることを特徴とするサーマルプリンター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−253788(P2010−253788A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106046(P2009−106046)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】