説明

サーモスタット制御なしに凝固時間を計測するためのシステムおよび方法

使い捨て式検査素子(2)と、その評価を行うための器具(1)とを備えた、凝固パラメータを決定するためのシステムおよび方法であって、凝固時間が、各凝固パラメータについて、標準温度とは異なり、かつ器具に含まれる温度測定装置(7)により測定される非標準温度にて測定され、その器具(1)が、血液が調べられている患者それぞれに応じて変化することのない凝固時間と温度との数学的関係を定めるデータを含む不揮発性メモリ(18)を有し、標準温度に対する凝固パラメータが、その数学的関係を用いて、非標準温度にて測定された凝固時間から算出されるシステムおよび方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーモスタット制御なしに凝固時間を計測するためのシステムおよび方法サーモスタット制御なしに凝固時間を計測するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
数多くの医学的問題が、血液の凝固に関連している。特に抗凝固薬を用いた治療中、患者の凝固パラメータは絶えず変動しており、こうした変動から重大な問題が発生するおそれがある。例えば、患者をヘパリンまたはマーキュマー(Marcumar)などの抗凝固薬で治療する場合、その患者の凝固パラメータを規定値域内に抑えて合併症を回避することが重要である。パラメータを規定値域内に抑えることが、血餅数を効果的に低下させると同時に出血性合併症を回避する唯一の方法である。したがって、治療上の要件すべてを満たす血液凝固パラメータを連続的にモニタするための迅速かつ正確な方法が必要である。
【0003】
現在、凝固パラメータの中でも3種類のパラメータ、すなわち、プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)および活性化凝固時間(ACT)が医学上重要となっている。PTは主に、凝固に対するビタミンK拮抗剤(凝固カスケードの第II因子、第V因子、第VII因子、第X因子に影響する)の効果をモニタする役割を果たす。このPTによる検査では、組織トロンボプラスチンを添加することにより外因系経路の活性を測定する。
【0004】
APTTは主に、ヘパリン療法をモニタするために用いられる。この検査では、内因系凝固カスケードにおける因子変化(第VIII因子、第IX因子、第XI因子、第XII因子および他の酵素および因子)を検出する。この検査タイプ用検査試薬はまだ標準化されていないため、さまざまな製造業者からの試薬を用いることによるヘパリン感度の差はかなり大きい。
【0005】
ACTは、その患者が大量にヘパリンを投与されていたためにAPTT検査を実施できない状況においてヘパリン化をモニタするために決定される。
【0006】
従来、凝固パラメータは、「ウェットケミストリ」検査により決定されている。血液検体のアリコットに液体試薬を混合し、血餅が検出される時点を検出するのである。その結果は、直接的に(秒単位)、または各正常値に対する比率(パーセント単位)などの導出量としてのいずれかで示される。PTについて、この検査結果を表すさらに一般的な数量が、Quick一段法による値(%)およびINR値(国際標準化比)である。
【0007】
近年、凝固パラメータに対するいわゆる「ドライケミストリ」検査が利用可能となってきている。この検査は、使い捨て可能な試薬坦持素子(多くの場合「検査素子」と称される)と、特定製造業者による特定タイプの検査素子の評価ができるように一般にされている評価器具とを含む検査システムにより行われる。この検査素子は、その特定検査に必要な試薬系と、好ましくは、検査タイプ、ロット番号および使用期限など、その検査の評価に適した情報とを含んでいる。
【0008】
本発明は、こうしたドライケミストリ検査に関する。各検査素子は、与えられた血液検体または血漿検体(検査の種類に応じて、具体的には予備抗凝固剤と反応させて、予備処理を施してもよい)を滴下して、その検査素子に含まれており、かつ血液凝固経路の一連の反応を開始するのに適した試薬系(通常、複数種類の試薬を含む)に接触させ、それを溶解させられるように設計されたものである。この検体と試薬とを混合すると、検査素子の凝固検出ゾーンに凝固液が得られる。この凝固検出液は、凝固経路のうちのある一定反応段階が起こると特徴的に変化するため、その測定可能な特性を観察することにより、凝固処理をモニタすることができる。本システムは、器具の測定評価電子機器によりこうした変化を検出して対応信号を出力する手段を含むものである。この測定評価電子機器はまた、その変化が起こるために必要な凝固時間を測定する時間測定電子機器を含んでいる。測定された時間は、所望の凝固パラメータ(適切な単位で)に変換される。この変換を目的として、器具および/または検査素子に保存された評価データを使用することができる。その結果は、器具のディスプレイに表示される、かつ/または、別のコンピュータシステムによる評価などのさらなる評価に向けて送信される。
【0009】
こうしたシステムは、コアグチェック(CoaguChek)(登録商標)として本出願人より市販されている。その詳細については、米国特許第5,789,664号および国際特許出願第01/11356号をはじめとするしかるべき文献で参照可能である。検体としては、全血または血漿を使用可能である。以下では、血液を一例として記載する。ただし、以下の例を、本発明の一般的利用性を制限するものとして解釈してはならない。
【0010】
既知の凝固検査システムの異なる点は、とりわけ、凝固時間の測定に用いる凝固検出液の測定可能な特性、および検体が試薬と接触する構造ならびに検出ゾーンの設計構造である。
【0011】
− 検査によっては、検出液の測定可能な特性は、試薬系に磁石粉を含有させることなどにより検出可能なその粘性である。この粉末の移動性を、交流磁場により検出することができる。このシステムでは、凝固の開始による粘性増加が、凝固時間の終了を区切る変化となる。
【0012】
− 別法として、凝固経路のある一定ポイントにて濃度が変化する化学成分を用いて、凝固時間の終了を区切ることができる。具体的には、双方の血漿凝固経路に対する最終段階のプロテアーゼである酵素トロンビンを、既知の手段でモニタすることができる。この手段の例として、評価器具で測定可能な電気信号または光学信号の出力に適した、検査素子の試薬系に含有された試薬を挙げられる(例えば、国際特許出願第01/63271号を参照)。
【0013】
− この検査素子の物理的構造については、単一透過性多孔膜を、従来型検査片と同様にプラスチック製ハンドルに固定して用いることがこれまで提案されてきた(米国特許第5,580,744号)。こうした検査素子の場合、検体は、試薬系が含有されているこの膜に直接適用される。
【0014】
− 別の構造では、検査素子の検体適用地点が凝固検出ゾーンから一定距離離れて配置されており、検体適用地点から凝固検出ゾーンまでの検体液の運搬は、毛管チャネルを介して行われる(米国特許第5,789,664号参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
凝固パラメータに関する検査は、特にドライケミストリ式検査が導入されたことにより比較的単純になってきているが、この設計をさらに単純化して、精度を損なうことなくそのコストを削減することはいまだに重要な課題である。例えば、ある人が交換心臓弁を入れた場合、その人の長期的健康は、凝固状態が確実に特定範囲内にあるかどうかによってほぼ決まる。凝固状態を特定範囲内に保つには、患者自身が自分の血液凝固状態のモニタに使用できるように、安価な小型電池操作型器具を利用できなければならない。同様の要件が、医師による「診療現場(POC)」検査にも当てはまる。
【0016】
したがって、本発明は、必要とされる程度の精度を維持しつつ、凝固パラメータを決定するシステムの設計を単純化する課題に対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この課題は、患者の血液検体または血漿検体の凝固パラメータを決定するシステムであって、その検体と混合されて凝固検出液を形成する試薬系、および凝固中に変化する凝固検出液の測定可能な特性をモニタするためにその凝固検出液が含有される凝固検出ゾーンを含む使い捨て式検査素子と、その使い捨て式検査素子を中に挿入して保持するためのホルダ、および凝固検出液の測定可能な特性に対応する信号を検出し、かつ所望の凝固パラメータを導出するための変化発生に必要な凝固時間を測定するようにされた時間測定電子機器を含む測定評価電子機器を備えた器具とを含み、その凝固時間が、前記凝固パラメータそれぞれについて、標準温度とは異なり、温度測定装置で測定される前記凝固検出液の非標準温度で決定され、その器具が、血液を調べられている患者それぞれに依存しない関係にある凝固時間と温度との数学的関係を定めるデータを含む不揮発性メモリを備え、標準温度に関する凝固パラメータが、その数学的関係を用いて、非標準温度にて測定された凝固時間から算出されるシステムにより解決される。
【0018】
凝固パラメータを決定するシステムとして既知のものは一般に、凝固測定中、通常37℃である一定の標準温度を維持するように設計された、何らかの温度自動調節装置を備えている。この装置には電気ヒータおよび電子温度制御システムが必要である。ところが、本発明によると、こうした温度自動調節装置が不要となるだけでなく、凝固測定を好都合な温度(例えば室温)で行うことができる。それでも尚且つ、標準温度にて決定された値に全く遜色のない、正確な所望凝固パラメータ値を決定可能である。このため、以下のように複数の利点が得られる。
【0019】
− 小型携帯型電池操作式凝固器具の場合、加熱システムは高価である上、内蔵された素子のどれよりも電池エネルギを消費する。加熱システムがなく、必要な電池がより小型となれば、器具全体の体積、重量およびコストを実質的に削減することができる。
【0020】
− 所望標準温度の厳密な制御を確実にするため、既知のドライケミストリシステムの検査素子にはよく、検体適用地点(器具外部)から温度自動調節装置が位置する器具内部にまで検体液を案内するための長い毛管が設けられている。こうした長い毛管が不要となれば、検体容積を削減できる。
【0021】
− 検査前に既知の器具では必要であった予熱時間が不要となる、または短縮される。これにより、特に自宅でモニタする場合またはPOCが適用されている場合に、このシステムの使用が簡単となる。
【0022】
− INRの較正はたいてい手動による処理方式で行われるため、標準(37℃)温度の調節が難しい。この方式が室温でできれば、温度のずれによる誤差を減らすことができる。
【0023】
本発明の基礎となる実験作業を進めていたところ、温度に対する凝固時間パラメータの変化を、特定の器具および特定の試薬系に特異であるが、驚くべきことに、その検体に応じて変化することのない関数関係により説明できることがわかった。したがって、同一関数関係f(T)(線形関数や多項式などが考えられる)は、誰の血液が調べられていようと、温度依存であることを示している。一例としてPTをとると、これは数学的に以下のように表わされる。
【0024】
(1)PT37=f(T)*PTT
このとき、PT37は、標準温度37℃に対するPT値であり、PTTは、非標準温度(標準温度より低い)に対するPT値である。
【0025】
一般に、臨床化学の分野では、検査が温度依存型であり、かつ実際の検査温度が所望の標準検査温度と異なれば、温度補正計算の実施も珍しいことではない。例えば、血中グルコース濃度を特定する検査は温度依存型であるため、温度のばらつきにより生じる誤差を適切な補正計算によりなくすことがこれまでにも提案されてきた(例えば、米国特許第5,405,511号および同第5,972,715号参照)。
【0026】
しかし、凝固の検出は基本的に、グルコースなどの分析物の濃度を検出することとは違う。グルコース検査は、検査する個々の検体に応じて変化することのない影響要因により温度依存型となっている。具体的に言うと、この検査の基本となる酵素反応が、温度に応じて変化するのである。ところが凝固検査は本質的に、周知のように、特定患者の血液内に含まれる10種類以上の因子および酵素の極めて複雑な反応を伴う本来の凝固過程に対する実験モデルであることから、グルコース検査とは基本的に異なるのである。血液の凝固作用が個人それぞれに異なるということは、必要となる投薬量(ヘパリンやマーキュマーなど)を個々に調節しなければならないことからも明らかである。
【0027】
したがって、凝固検査では、測定される量は、特定の個人的検体、すなわち血液が検査されている個人と、その個人の凝固系の状態とに応じて変化する。温度依存に関しても、同じことを想定しなければならなかった。したがって、限定数の患者の血液を異なる温度にて同一検査システム(好ましくは同じ製造ロットの同タイプの器具および同一試薬系)で調べても、大きく異なる血液を有する別の患者について、非標準温度で決定したPTT値からPT37を算出できる普遍的なf(T)曲線が得られるとは考えられなかった。
【0028】
従来技術において、PTおよびAPTT検査は一般に、37℃前後である標準範囲外の温度では行われてこなかった。ただし、1つの例外がA.Uldall著「Prothrombin time standardization and temperature problems」、Clinica Chimica ACTa、1980年、39から44ページに記載されている。
【0029】
この出版物には、温度を厳密に制御するために水浴に浸されたガラス管で実施されるPT検査が記載されており、この著者は、例えばそのガラス管が十分に浸漬されなかった場合に37℃などの標準温度からずれることにより生ずる問題、および凝固状態をチェックするために水浴から何度も引き出されなければならないことにより生ずる問題に触れている。こうした問題を減らすには、一般に許容されている標準温度を37℃から30℃に引き下げることが考えられる。
【0030】
米国特許第5,031,619号には、出血時間検査について記載されている。この検査では、患者の皮膚を予め定められた寸法だけ切開し、その切開部分からの出血が始まった瞬間から凝固が生じたと見られる瞬間までの時間を測定する。こうした出血時間測定は、血小板の数および機能によって変化する、血小板の止血程度を評価するスクリーニング検査として用いられる。この検査は、特定の疾患(例えばグランツマン血小板無力症)についてスクリーニングできる定量(またはせいぜい半定量)検査である。上記特許には、外出血が起こる割合は被験者の皮膚の温度におよそ反比例するという、この特許以前の既知の事実に言及した上で、被験者の皮膚温度のばらつきを補償するために1度当たり0.05の固定係数を用いることが提案されている。
【0031】
前述した米国特許第5,580,744号には、一定の標準温度ですべて実施される大量の実験が記載されている。理論上の代替案として、室温などの標準温度からずれた温度で凝固検出反応を実施する可能性が述べられており、考えうる補正計算式も挙げられているが、これを実際にどのように実行するかについての説明はない。凝固経路が個人ごとに異なることにより生じる問題については何も述べられていない。この特許によるシステムがただ一人に使用されるように特に設計されているという事実から見れば、上記特許作成者が、この問題に対処しなかったのは明らかである。
【0032】
以下、図を参照しながら本発明をさらに説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
図1は、評価器具1と使い捨て式検査素子2とを含む凝固検査システムの概略断面図である。この検査素子は、検体適用開口部3と、毛管チャネル4と、反応チャンバとして機能する空間5と、凝固検出ゾーン6とを有する。チャネル4は大変短いものであり、本発明によるシステムを用いた場合には、凝固検出ゾーン6は、温度調節が不要である上、検査素子2を器具1のホルダ8内に挿入すると、好ましくは検体適用開口部3に近接して器具1の筐体外部に位置するため、省くことも可能である。
【0034】
従来技術による装置の場合、検体を適用しやすくするために、検体適用開口部は器具の外側になければならないが、同時に、温度調節するために、検査素子の凝固検出ゾーンは器具筐体内になければならなかった。適用された検体は、その開口部から検出ゾーンまで長い毛管路を運搬されていた。したがってさらに、毛管路が長いだけでなく、液体の運搬を十分な速度で行うためにその断面積も十分に広くしなければならなかったため、大量の検体が必要であった。これに対して、本発明では、運搬距離を大幅に短縮することができる(好ましくは1cm未満、または0.5cm未満)ため、極めて少量の検体(好ましくは5μl未満、最も好ましくは2μl未満)ですむ。
【0035】
空間5は、検体適用領域3に適用された検体と試薬系(図示せず)とを混合して形成される凝固検出液を収容する。空間5内に入ったこの液の凝固関連測定数量に生じた変化を検出することにより、凝固検出ゾーン6で凝固検出が行われる。検出により信号が得られると、これがライン9を介して、器具の操作を制御する測定評価ユニット13に転送される。凝固検出を実施する方法は、具体的に言えば、光学手段または電気化学手段など、従来技術で既知であるいずれを用いてもよい。米国特許第5,789,664号および国際特許出願第01/11356号などを参照されたい。以下に好適な実施形態の詳細を記載する。
【0036】
本発明によるシステムは、凝固検出ゾーン6の温度測定に適した温度測定装置7を含む。例えば、国際特許出願第01/33214号に記載されているように、赤外線温度検出を利用してもよい。しかし好ましくは、温度測定センサ、具体的にはサーミスタを素子側温度センサ14として検査素子2に組み合わせ、差込式接触部により器具の電子機器に接続する。さらに器具側温度センサ15を設けて、以下に詳述するように使用してもよい。
【0037】
検査素子2は、素子用情報読取り装置11により評価される、検査タイプおよび試薬ロットに関連する情報を情報フィールド10内に備えている。検出された情報信号は、ライン(図示せず)を介して測定評価ユニット13に転送される。情報フィールド10および情報読取り装置11については、概略のみ図示している。好適な例として、バーコードおよび適切なバーコード検出器を使用してもよい。
【0038】
ROMキー16は、ROMキーホルダ17内に交換自在に配置されて、中央の測定評価ユニット13にこれとデータ交換できるように接続される。ROMキー16は、検査の評価に必要なデータを格納するメモリ18を備えている。格納されているデータは、検査素子の製造ロットに応じて異なるものである。好ましくは、情報フィールド10に、特定検査素子2の製造ロットに特異な識別データを含める。この情報は、器具内に挿入されたROMキーが検査素子2の製造ロットに対応していることを確認するために、情報読取り装置11に読み取られ、ROMキー16に格納されているロット識別データと比較される。
【0039】
ROMキー16のメモリ18にはまた、非標準温度で測定された凝固時間から、標準温度に対する所望の凝固パラメータを算出するために用いられる凝固時間と温度との数学的関係を示すデータが含まれている。別法として、このデータを、器具1の永久メモリ内に入れてもよい。
【0040】
中央の測定評価ユニット13を、ASIC20および回路板21などの従来型電子回路部品で構成することができる。このユニットは、器具機能を制御し、かつ必要な計算を実施するためのプログラム可能マイクロプロセッサを含む。具体的に言えば、このマイクロプロセッサが、凝固検出装置6、要素情報装置11、不揮発性メモリ18および温度測定装置7から受信した信号情報を組み合わせて、所望の凝固パラメータを導出する。導出された結果は、器具1のディスプレイ(図示せず)に転送される。器具を動作させる電力は、電池22から供給される。
【0041】
図1に示したシステムに含まれる部品の大半は従来型であるため、さらなる詳細な説明は不要である。ただし、従来技術からはずれて、器具1に、ヒータおよび電気的加熱制御などの温度調節システムを装備してはならない。その代わりに、このシステムでは、凝固検出領域内の凝固検出液の温度を測定する(直接的または間接的に)温度測定装置7と、標準温度に対する凝固パラメータを算出するためにメモリ18に格納されている数学的関係とを使用する。
【0042】
本発明の実験評価を進めるうちに、凝固検出液が含まれている空間に隣接する部分の温度を測定すれば、各検体によって変化することがないために器具の不揮発性メモリ内に格納されてさまざまな個人(患者)に対して繰り返し使用可能な数学的関係を用いて、偏位した(一般に実質的に低くなっている)温度にて実施された測定値から、所望の標準凝固パラメータ(およそ37℃という調節温度にて得られるはずだったパラメータ)を正確に算出できることが十分に実証された。測定評価ユニット13は、必要な計算を実施するようにされている。
【0043】
図2および図3は、凝固検査システムの好適な一実施形態における設計上の重要な特徴を、一部は検査素子層の好適なレイアウトを示す上面図として、また別の一部は電子機器のブロック図として示している。この好適な実施形態は具体的に、以下の2つの態様により特徴付けられるものである。
【0044】
− 凝固の検出は、図2の上方部分に示すように試薬および電極を配置して実施される。
【0045】
− 必要とされる凝固検出ゾーンの温度の正確な測定は、検査素子に組み入れられた素子側温度センサ14と、器具に(凝固検出ゾーン6から比較的離れて)配置された器具側温度センサ15とを組み合わせて使用することで行われる。
【0046】
これらの態様を組み合わせることができる。その場合、検査素子に好ましくは、図2に示す層Aおよび層Bなどの電気リードの2層を設ける。この2層を、非導電性(プラスチック製)キャリア箔上に既知の方法で適用し、絶縁層を隔てて配置することができる。このリード層と器具とによる電極構造間の電気的接触は、素子側接触パッド25および26により行われる。この接触パッドがそれぞれ、対応する器具側接触部27に電気的接続を提供する(図1)。検体液を検体適用開口部3から凝固検出ゾーン6に輸送するため、毛管チャネル4が層Aの上面上に設けられている。こうした設計要素にはすべて既知の手段を使用できるため、その詳細な説明は不要である。
【0047】
図2に示した電極構造Aは、第1の対極30、滴下検出電極31、作用極32、その作用極32を囲む2本の指状突起34を備える第2の対極33、および鐙形状の充填検出電極35を含む5つの電極を含む。この電極構造は、約50μm厚さの金層からレーザアブレーション技術などにより製造可能である。
【0048】
対極30は、充填開口部3に近接して位置し、例えばAg/AgClを含む基準試薬層37で被覆されている。作用極32および第2の対極33は、凝固経路の反応を開始するために必要な試薬系を含む凝固検出試薬38で被覆されている。試薬層38には、目的にかなった測定可能な特性の検出に必要な試薬であればいずれを含有してもよい。具体的に言えば、凝固の酵素検出という好適な場合、酵素トロンビンに対する基質エレクトロザイム(electrozyme)THなど、各酵素に対する基質である。
【0049】
図2に示したシステムで実施する検査プロトコルには、以下のステップを含めることができる。
【0050】
− 検査素子を挿入することにより器具の電源を自動的に入れ、通常の操作点検を行う。
【0051】
− 毛管チャネル4の検体開口部3に検体を滴下し、この液体により第1の対極30と滴下検出電極31とが橋絡された時点で、双方の電極がこの液体により接触した状態になると、これらの電極に適当なAC電位を印加し、インピーダンスの急落を検出することにより、この橋絡を検出することができる。
【0052】
− 血液検体がさらに毛管チャネル4内に引き込まれると(毛管作用により)、作用極32および第2の対極33に検体が到達したことを、この場合も、これらの電極に適当なAC電位を印加することにより検出することができる。作用極32がこのように濡れることはまた、凝固時間測定に適した開始点となる。というのもこれが、試薬層38の溶解、つまり一連の凝固反応開始と一致するからである。
【0053】
− 毛管4が完全に充填されたことを、充填検出電極34と第2の対極33との間に流れる電流により検出する。
【0054】
− 酵素の活動を、電気化学手段により凝固検出液の測定可能な特性として検出する。この活動を検出するため、毛管4が完全に充填された後、適当な一定DC電位を、第1の対極30に準拠して作用極32に印加する。その後、適当な間隔(例えば0.1秒毎)で電流測定を行う。凝固経路の最後で酵素トロンビンが形成されると、この酵素が、試薬層38に含まれる基質から電気化学的に活動状態にあるグループを解裂し、これによりこの酵素形成の特徴である電流増加を生じさせる。この変化発生により、凝固時間の終了が区切られ、この時間から、既知の方法で所望の凝固パラメータが導出される。
【0055】
図2に示した層Bは、素子側温度センサ14として適した電気リードの例である。この層の感温範囲40は、図3により詳細に示すように通常は曲折させて、極めて薄くかつ細い電気的サーミスタ導体を施した領域により規定される。導体41は、温度に比較して抵抗に大きく依存する典型的サーミスタ材料で製造することができる。ただし、十分に薄い(100μm未満)金層をはじめとする、検査素子製造により一般に使用されている材料もこれに適していることがわかっている。
【0056】
サーミスタ導体41の抵抗を、4端子構造により測定する。そのうち2つの端子42、43は、一定電流をサーミスタ導体41に供給するために使用され、残りの2つの端子44、45は、電流を通さずにその抵抗を測定するために使用される。
【0057】
このシステムの操作中、素子側温度センサ14が生成する温度信号は、器具側センサ15が生成する信号と組み合わせて使用されて、非標準温度(標準温度より低い温度)にて実施された測定値から標準温度に対する凝固パラメータを算出するために使用される、高精度で信頼のおける温度値を決定する。
【0058】
− 素子側温度センサ14は、凝固検出ゾーン6近傍における温度変化に関する情報の取得のみに使用される。したがって、このセンサおよび温度測定電子機器46(測定評価電子機器13の一部)で絶対量における温度測定ができる必要はない。
【0059】
− 器具側温度センサ15は、標準温度に対する温度情報を得る。この温度情報は、標準温度との測定差がすべての器具について(高い精度で)同一であるという意味で絶対でなければならない。これは、温度に対する凝固時間の同一の数学的関係を、あらゆる器具の温度変換に用いるために必要な条件である。
【0060】
検査素子2を器具1に挿入した後に実際に使用する段階では、素子側温度センサ14の温度をモニタして、時間に対する素子温度の変化について、言い換えれば、素子温度変化の速度についての情報を導出する。この変化速度が許容値を下回った時点でのみ(言い換えれば、素子2の温度が十分に一定になった時点でのみ)、凝固パラメータの決定を行うために検体を検査素子に滴下してもよいという信号が出力される。この条件が満たされたら、器具側温度センサ15の温度値を変換用「真の」温度として使用する。
【0061】
好ましくは、素子側温度センサ14の温度変化のみならず、器具側温度センサ15の温度変化もモニタする。両方の温度センサの変化速度が、かなり一定の温度環境になったことを示す適した制限値(この値はセンサそれぞれについて異なる場合もある)を下回った時点でのみ凝固の決定を行うと、さらに良好な結果が得られる。
【0062】
本発明の実験評価を進めるうちに、上記手段により温度測定が可能であり、この測定は凝固検査に対する極めて高い要件さえも満たすことがわかった。同時に、検査素子側温度センサにより絶対温度値を得る必要がないことから、このセンサを使い捨て式検査素子内に比較的安価に組み入れられる。器具側温度センサ15を検査素子内に配置する必要はなく、このセンサ15を、器具外部で環境温度を測定する位置に配置できることは利点にさえなり得る。
【0063】
図4は、以下のように行われた実験結果を表している。
【0064】
− 27人の患者からの検体と4人分の標準液(「正常」)をとり、それぞれを複数のアリコットに分けた。
【0065】
− 各検体につき、16℃〜32℃の4種類の非標準温度で(4つのアリコットを使用)PTT値を4回測定した。この測定には、温度調節システムを不能にして改造した、本願出願人製造のコアグチェック(登録商標)器具で行った。この器具を温度チャンバ内に配置することにより、温度のばらつきを発生させた。
【0066】
− 精度を高め、データベースを増強するため、測定のそれぞれを4種類の異なる器具で行った。
【0067】
− 同時に、温度調節システムを備えた従来型コアグチェック(登録商標)システムを用いて、各検体についてPT37値を決定した。
【0068】
以上の結果から、PT比Y=PT37/PTTを算出した。このPT比を、各測定温度T(単位℃)を37で割った算出した温度比Xに対応させて図4に示している。
【0069】
図4から、データすべてが、その回帰分析から決定された曲線Y=f(X)に極めて近似値であることがわかる。この場合、図4に示すように、この曲線は二次多項式である。このことから、使用した検体源によって変化することのない単一の関数関係でこの温度依存を説明できるという驚くべき事実がわかる。
【0070】
この温度を踏まえて、実際の実験では温度比(絶対温度の代わりに示したように)を用いると便利であった。明らかに、Y=f(X)をY=PT37/PTT=f(T)と変換するのは簡単である。さらに、PT37を算出するための式は、この式をPT37について解くと簡単に得られる。
【0071】
PT37=f(T)*PTT
図5は、本発明により決定されたINR値(INRINVとして示す)と基準方法(INRCKS)により決定された対応データとの比較を示している。INR値は、当技術分野で周知であるように、PTと正常PT中央値(MNPT)との比率を出して算出される値である。この図からは、どちらの方法による結果も、3.74%の平均相対偏差(MRD)と極めて一致していることがわかる。INRINV値は周囲温度約16℃〜32℃での測定により決定され、基準値INRCKSは標準温度37℃で決定されたことに留意されたい。
【0072】
図6〜図10は、検体の数としては少ないがさまざまな方法で行った実験結果を示すものである。各場合において、標準温度での凝固パラメータ比と非標準温度での同パラメータとが(YがPT比、ZがINR比、VがAPTT比を表す)、温度比Xに対するグラフとして示されている。各図は、以下の凝固検査システムを用いた実験に基づくものである。
【0073】
図6:コアグチェック(登録商標)の低ISI PTストリップ。この検査では、未凝固状態である静脈または毛細血管からの新鮮血を必要とする、組換ヒト組織因子由来乾燥型低ISIトロンボプラスチンを使用。検体は、口腔内抗凝固治療を受けている患者からのものであった。
【0074】
図7:コアグチェック(登録商標)の低容量PTストリップ。このストリップは、未凝固状態である静脈または毛細血管からの新鮮血を必要とする、ウサギ脳由来組織高ISIトロンボプラスチンを含有していた。
【0075】
図8:低ISI実験室用試薬を備えたアメルング(Amelung)社製4チャネル式実験室用分析装置。この試薬は、クエン酸塩添加血漿を必要とする、組換ヒト組織因子由来のオルト(Ortho)社製Recombiplastin PTを含有していた。
【0076】
図9:高ISI実験室用試薬を備えたアメルング社製4チャネル式実験室用分析装置。この試薬は、クエン酸塩添加血漿を必要とする、ウサギ脳由来のデイド(Dade)社製C Plus PTを含有していた。
【0077】
図10:アメルング社製4チャネル式実験室用分析装置に、クエン酸塩添加血漿を必要とするオルト社製Auto APTT実験室用試薬を使用。
【0078】
これらの図に示すようにいずれの場合も、すべての検体について、得られたデータを単一の関数関係で説明することができる。したがって本発明は、「ドライケミストリ」および「ウェットケミストリ」検査の双方を含む、さまざまな種類の凝固検査に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】検査素子を評価器具内に挿入した状態の凝固検査システムを示す断面図である。
【図2】本発明による好適なシステムを示す概略設計図である。
【図3】図2に示した素子側温度センサを示す拡大図である。
【図4】本発明に照らして実施した一連の実験について、T(℃)/37と比率PT37/PTTとの関係を示すグラフ図である。
【図5】本発明を従来のINR値決定方法と比較した実験結果を示すグラフ図である。
【図6】さまざまな凝固パラメータ検査を実施して得られた、図4に対応する結果を示す図である。
【図7】さまざまな凝固パラメータ検査を実施して得られた、図4に対応する結果を示す図である。
【図8】さまざまな凝固パラメータ検査を実施して得られた、図4に対応する結果を示す図である。
【図9】さまざまな凝固パラメータ検査を実施して得られた、図4に対応する結果を示す図である。
【図10】さまざまな凝固パラメータ検査を実施して得られた、図4に対応する結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血液検体または血漿検体の凝固パラメータを決定するシステムであって、
前記検体と混合されて凝固検出液を形成する試薬系(38)、および凝固中に変化する凝固検出液の測定可能な特性をモニタするために前記凝固検出液が含有される凝固検出ゾーン(5)を含む使い捨て式検査素子(2)と、
前記使い捨て式検査素子(2)を中に挿入して保持するためのホルダ(8)と、および前記凝固検出液の測定可能な特性に対応する信号を検出し、かつ所望する前記凝固パラメータを導出するための前記変化発生に必要な凝固時間を測定するようにされた時間測定電子機器を含む測定評価電子機器(13)を備えた器具(1)と
を含み、
前記凝固時間が、前記凝固パラメータそれぞれについて、標準温度とは異なり、かつ温度測定装置(7)で測定される前記凝固検出液の非標準温度で決定され、
前記器具(1)が、血液を調べられている前記患者それぞれに依存しない関係である凝固時間と温度との数学的関係を定めるデータを含む不揮発性メモリ(18)を備え、
前記標準温度に関する前記凝固パラメータを、前記数学的関係を用いて前記非標準温度にて測定された前記凝固時間から算出するシステム。
【請求項2】
前記器具には、前記凝固検出液が含有されている前記検査素子の温度調節を行う装置が備えられておらず、前記検査素子および前記凝固検出液の前記温度が、前記測定が行われる環境の温度に依存する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記器具が電池式である、上記請求項のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項4】
前記使い捨て式検査素子が、素子側温度センサ(14)を組み入れて備え、
前記器具が、器具側温度センサ(15)を備え、
前記測定評価電子機器(13)が、
前記器具側温度センサ(15)の前記信号から、前記標準温度に対する温度値と、
前記素子側温度センサ(14)の前記信号から、前記時間に対する前記素子温度の変化速度に関する情報と
を導出するようにされており、
前記測定評価電子機器(13)が、前記器具側温度センサから導出された前記温度値を用いて、前記時間に対する素子温度の変化速度が制限値を下回った時点でのみ、前記非標準温度にて測定された前記凝固時間から、前記標準温度に対する前記凝固パラメータを算出する、上記請求項のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記検査素子(2)を前記ホルダ内に挿入したときに、前記凝固検出ゾーン(6)が前記器具筐体の外側に位置する、上記請求項のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記器具(1)が、前記凝固時間と温度との数学的関係を定める前記データを含む前記メモリ(18)を有する、交換可能な機械可読データ格納素子、具体的にはROMキー(16)を含む、上記請求項のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記検査素子が、前記検査素子(2)の製造ロットに特異な識別データを含む機械可読コード(10)を含み、前記器具が、前記器具に挿入されたROMキー(16)が前記検査素子(2)の前記製造ロットに対応しているかどうかを前記測定評価電子機器(13)によりチェックするため、前記機械可読識別コード(10)を読む読取り装置(11)を有する、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のシステムに適用されるにされた使い捨て式検査素子。
【請求項9】
温度測定センサ(14)、具体的にはサーミスタと、器具に挿入されている前記温度センサの温度信号をその器具に送信できるようにする差込式接触部とを含む、請求項8に記載の検査素子。
【請求項10】
患者の血液検体または血漿検体の凝固パラメータを決定する方法であって、
試薬系(38)を使い捨て式検査素子(2)内で前記検体と混合して、前記素子(2)の反応検出ゾーン(6)内に凝固検出液を形成し、凝固中に変化する前記凝固検出液の測定可能な特性をモニタし、
前記凝固検出液の測定可能な特性に対応した信号を検出し、前記所望の凝固パラメータを導出するために前記変化の発生に必要な時間を測定し、
前記凝固時間が、前記凝固パラメータそれぞれについて、標準温度とは異なり、測定される前記凝固検出液の非標準温度で決定され、
血液を調べられている前記患者それぞれに依存しない関係である凝固時間と温度との数学的関係を定めるデータが、前記器具(1)の不揮発性メモリ(18)から抽出され、
前記標準温度に対する前記凝固パラメータが、血液を調べられている前記患者それぞれに依存しない関係である凝固時間と温度との数学的関係を用いて、前記非標準温度にて測定された前記凝固時間から算出される方法。
【請求項11】
前記測定可能な特性が、前記凝固検出液の前記凝固経路に関与している酵素の活動である、請求項1に記載のシステムまたは請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記酵素の前記活動が、電気化学手段により検出される、請求項11に記載のシステムまたは方法。
【請求項13】
前記器具で行われる、所定の凝固パラメータに対する決定すべてについて、前記試薬のロットに依存せずに、前記同一の数学的関係が用いられる、請求項1に記載のシステムまたは請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記数学的関係が、前記同種の器具および試薬を用いて、複数の異なる検体について異なる温度にて前記凝固時間を測定することにより決定される、請求項1に記載のシステムまたは請求項10に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血液検体または血漿検体の凝固パラメータを決定するシステムであって、
前記検体と混合されて凝固検出液を形成する試薬系(38)、および凝固中に変化する凝固検出液の測定可能な特性をモニタするために前記凝固検出液が含有される凝固検出ゾーン(5)を含む使い捨て式検査素子(2)と、
前記使い捨て式検査素子(2)を中に挿入して保持するためのホルダ(8)、および前記凝固検出液の測定可能な特性に対応する信号を検出し、かつ所望する前記凝固パラメータを導出するための前記変化発生に必要な凝固時間を測定するようにされた時間測定電子機器を含む測定評価電子機器(13)を備えた器具(1)と
を含み、
前記凝固時間が、前記凝固パラメータそれぞれについて、標準温度とは異なり、かつ温度測定装置(7)で測定される前記凝固検出液の非標準温度で決定され、
前記器具(1)が、血液を調べられている前記患者それぞれに依存しない関係である凝固時間と温度との数学的関係を定めるデータを含む不揮発性メモリ(18)を備え、
前記標準温度に関する前記凝固パラメータを、前記数学的関係を用いて前記非標準温度にて測定された前記凝固時間から算出するシステム。
【請求項2】
前記使い捨て式検査素子が、素子側温度センサ(14)を組み入れて備え、
前記器具が、器具側温度センサ(15)を備え、
前記測定評価電子機器(13)が、
前記器具側温度センサ(15)の前記信号から、前記標準温度に対する温度値と、
前記素子側温度センサ(14)の前記信号から、時間に対する素子温度の変化速度に関する情報と
を導出するようにされており、
前記測定評価電子機器(13)が、前記器具側温度センサから導出された前記温度値を用いて、前記時間に対する素子温度の変化速度が制限値を下回った時点でのみ、前記非標準温度にて測定された前記凝固時間から、前記標準温度に対する前記凝固パラメータを算出する、請求項に記載のシステム。
【請求項3】
前記検査素子(2)を前記ホルダ内に挿入したときに、前記凝固検出ゾーン(6)が前記器具筐体の外側に位置する、上記請求項のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項4】
前記器具(1)が、前記凝固時間と温度との数学的関係を定める前記データを含む前記メモリ(18)を有する、交換可能な機械可読データ格納素子、具体的にはROMキー(16)を含む、上記請求項のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載のシステムに適用される使い捨て式検査素子であって、温度測定センサ(14)、具体的にはサーミスタと、器具に挿入されている前記温度センサの温度信号をその器具に送信できるようにする差込式接触部とを含む、使い捨て式検査素子
【請求項6】
患者の血液検体または血漿検体の凝固パラメータを決定する方法であって、
試薬系(38)を使い捨て式検査素子(2)内で前記検体と混合して、前記素子(2)の反応検出ゾーン(6)内に凝固検出液を形成し、凝固中に変化する前記凝固検出液の測定可能な特性をモニタし、
前記凝固検出液の測定可能な特性に対応した信号を検出し、前記所望の凝固パラメータを導出するために前記変化の発生に必要な時間を測定し、
前記凝固時間が、前記凝固パラメータそれぞれについて、標準温度とは異なり、測定される前記凝固検出液の非標準温度で決定され、
血液を調べられている前記患者それぞれに依存しない関係である凝固時間と温度との数学的関係を定めるデータが、器具(1)の不揮発性メモリ(18)から抽出され、
前記標準温度に対する前記凝固パラメータが、血液を調べられている前記患者それぞれに依存しない関係である凝固時間と温度との数学的関係を用いて、前記非標準温度にて測定された前記凝固時間から算出される方法。
【請求項7】
前記測定可能な特性が、前記凝固検出液の凝固経路に関与している酵素の活であ前記酵素の前記活性が、電気化学手段により検出される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記測定可能な特性が、前記凝固検出液の凝固経路に関与している酵素の活性であり、前記酵素の前記活性が、電気化学手段により検出される、請求項6に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2006−516720(P2006−516720A)
【公表日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−518648(P2005−518648)
【出願日】平成16年1月24日(2004.1.24)
【国際出願番号】PCT/EP2004/000595
【国際公開番号】WO2004/068138
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】