サーモスポロスリックス・ハザケンシスに由来する新規セルラーゼ
【課題】サーモスポロスリックス・ハザケンシス(Thermosporothrix hazakensis)に由来する新規セルラーゼを提供する。
【解決手段】少なくともβ−グルカン、可溶性セルロース、結晶性セルロース、リン酸膨張セルロース、およびキシランに対して酵素活性を有する、サーモスポロスリックス・ハザケンシス(Thermosporothrix hazakensis)に由来するセルラーゼ。
【解決手段】少なくともβ−グルカン、可溶性セルロース、結晶性セルロース、リン酸膨張セルロース、およびキシランに対して酵素活性を有する、サーモスポロスリックス・ハザケンシス(Thermosporothrix hazakensis)に由来するセルラーゼ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーモスポロスリックス・ハザケンシス(Thermosporothrix hazakensis)に由来する新規セルラーゼに関する。より詳細には、本発明は、サーモスポロスリックス・ハザケンシス(Thermosporothrix hazakensis)SK20−1T株(JCM 16142T=ATCC BAA−1881T)に由来する新規セルラーゼに関する。
【背景技術】
【0002】
セルラーゼとは、セルロースを、グルコース、セロビオースおよびセロオリゴ糖に加水分解する酵素反応系を触媒する酵素群の総称であり、その作用様式により、エキソ−β−グルカナーゼ、エンド−β−グルカナーゼおよびβ−グルコシダーゼなどに分類される。セルラーゼのこれら酵素の相互作用により、セルロースが最終的にグルコースまで分解される。
【0003】
一方、近年、セルラーゼを用いて、バイオマス資源を酵素分解、糖化することによって構成単位であるグルコース、キシロースにし、更にこれを発酵することによって得られるエタノールや乳酸などを液体燃料もしくは化学原料として利用することが検討・注目されている。
【0004】
しかしながら、従来的に利用されているセルラーゼによるセルロース分解の速度は充分ではなく、特にエタノール、塩などの存在下においては、セルラーゼの活性は低下するために、効率的且つ経済的にバイオマス資源を酵素分解、糖化することが可能なセルラーゼが求められていた。
【0005】
サーモスポロスリックス・ハザケンシス(Thermosporothrix hazakensis)は、クロロフレクサス門クテドノバクテリア綱クテドノバクテル目に属する細菌であり、好気性のグラム陽性細菌である。本発明者らにより、サーモスポロスリックス・ハザケンシス(Thermosporothrix hazakensis)SK20−1T株(JCM 16142T=ATCC BAA−1881T)が単離され、セルロース、キシラン、キチンを分解する能力を有することが示されている(非特許文献1)。しかしながらこれまでに、サーモスポロスリックス・ハザケンシス(Thermosporothrix hazakensis)に由来するセルラーゼが取得されたという報告はない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Shuhei Y.et.al.,International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology(2010),60,1794−1801
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、サーモスポロスリックス・ハザケンシス(Thermosporothrix hazakensis)に由来する新規セルラーゼを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、サーモスポロスリックス・ハザケンシス(Thermosporothrix hazakensis)SK20−1T株(JCM 16142T=ATCC BAA−1881T)より、新規セルラーゼを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は以下を包含する。
[1] 少なくともβ−グルカン、可溶性セルロース、結晶性セルロース、リン酸膨張セルロース、およびキシランに対して酵素活性を有する、サーモスポロスリックス・ハザケンシス(Thermosporothrix hazakensis)に由来するセルラーゼ。
[2] サーモスポロスリックス・ハザケンシスが、サーモスポロスリックス・ハザケンシスSK20−1T株(JCM 16142T=ATCC BAA−1881T)である、[1]のセルラーゼ。
[3] 少なくとも10〜80℃の温度条件下において、酵素活性を保持する、[1]または[2]のセルラーゼ。
[4] 少なくともpH2〜11のpH条件下において、酵素活性を保持する、[1]または[2]のセルラーゼ。
[5] 少なくとも0〜25%(v/v)の有機溶媒の存在下において、酵素活性を保持する、[1]または[2]のセルラーゼ。
[6] 有機溶媒がトルエン、アセトン、クロロホルム、ブタノール、ヘキサンおよびDMSOからなる群から選択される、[5]のセルラーゼ。
[7] 少なくとも0〜50%(v/v)のエタノールの存在下において、酵素活性を保持する、[1]または[2]のセルラーゼ。
[8] 少なくとも0〜25%(v/v)の塩存在下において、酵素活性を保持する、[1]または[2]のセルラーゼ。
[9] 以下のアミノ酸配列で示されるポリペプチドを含む加水分解酵素からなる群から選択される一または複数の加水分解酵素を含む、[1]〜[8]のいずれかのセルラーゼ:
(I)配列番号1に示すアミノ酸配列を含むポリペプチド、または配列番号1に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド;
(II)配列番号2に示すアミノ酸配列を含むポリペプチドまたは配列番号2に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号2に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド;
(III)配列番号3に示すアミノ酸配列を含むポリペプチドまたは配列番号3に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号3に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド;
(IV)配列番号4に示すアミノ酸配列を含むポリペプチドまたは配列番号4に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号4に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド;
(V)配列番号5に示すアミノ酸配列を含むポリペプチドまたは配列番号5に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号5に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド;ならびに
(VI)配列番号6に示すアミノ酸配列を含むポリペプチドまたは配列番号6に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号6に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド。
【0010】
[10] [1]〜[9]のいずれかのセルラーゼをコードするポリヌクレオチド。
[11] [10]のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
[12] [11]の発現ベクターにより形質転換された形質転換体。
[13] [11]の形質転換体の培養によって得られる培養物。
[14] [1]〜[9]のいずれかのセルラーゼまたは[13]の培養物を含む、洗剤組成物。
[15] 炭水化物含有原料を[1]〜[9]のいずれかのセルラーゼ、[12]の形質転換体または[13]の培養物で処理することを含む、炭水化物含有原料の糖化方法。
[16] 炭水化物含有原料を[1]〜[9]のいずれかのセルラーゼ、[12]の形質転換体または[13]の培養物で処理することを含む、食品または飼料の製造方法。
[17] (i)炭水化物含有原料を[1]〜[9]のいずれかのセルラーゼ、[12]の形質転換体または[13]の培養物で処理すること;ならびに
(ii)工程(i)で得られた処理物を発酵することを含む、エタノールの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、サーモスポロスリックス・ハザケンシス(Thermosporothrix hazakensis)、特にサーモスポロスリックス・ハザケンシスSK20−1T株(JCM 16142T=ATCC BAA−1881T)に由来する新規セルラーゼを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1はGH5−1のアミノ酸配列および当該アミノ酸配列をコードする塩基配列を示す。
【図2】図2はGH5−2のアミノ酸配列および当該アミノ酸配列をコードする塩基配列を示す。
【図3】図3はGH5−3のアミノ酸配列および当該アミノ酸配列をコードする塩基配列を示す。
【図4−1】図4−1はGH9のアミノ酸配列を示す。
【図4−2】図4−2はGH9のアミノ酸配列をコードする塩基配列を示す。
【図5】図5はGH12−1のアミノ酸配列および当該アミノ酸配列をコードする塩基配列を示す。
【図6】図6はGH12−2のアミノ酸配列および当該アミノ酸配列をコードする塩基配列を示す。
【図7】図7は、各種基質に対するGH5−1、GH9およびGH12−2の酵素活性を示す特性図である。表中、NDは未検出を示し、酵素処理後の基質溶液の黄色が濃い場合を「++」、薄い場合を「+」として相対的に評価した。なお、1分間あたりに還元糖(DRS)を1μmol生成させる酵素量を1ユニット(U)とする。
【図8】図8は、反応温度によるGH5−1、GH9およびGH12−2の酵素活性の影響を示す特性図である。各酵素について、最も高い活性値を100%とする相対活性値(%)を示す。
【図9】図9は、pHによるGH5−1、GH9およびGH12−2の酵素活性の影響を示す特性図である。各酵素について、最も高い活性値を100%とする相対活性値(%)を示す。
【図10】図10は、GH5−1、GH9およびGH12−2の温度安定性を示す特性図である。各酵素について、最も高い活性値を100%とする相対活性値(%)を示す。
【図11】図11は、GH5−1、GH9およびGH12−2の有機溶媒耐性を示す特性図である。各酵素について、最も高い活性値を100%とする相対活性値(%)を示す。
【図12】図12は、GH5−1、GH9およびGH12−2のエタノール耐性を示す特性図である。各酵素について、最も高い活性値を100%とする相対活性値(%)を示す。
【図13】図13は、GH5−1、GH9およびGH12−2のNaCl耐性を示す特性図である。各酵素について、最も高い活性値を100%とする相対活性値(%)を示す。
【図14】図14は、GH5−1、GH9およびGH12−2の組み合わせによる酵素活性の相乗効果を示す特性図である。
【図15−1】図15−1は、GH5−1、GH9およびGH12−2の薄層クロマトグラフィー(TLC)による基質分解特性試験の結果を示す特性図である。各レーンは、それぞれ以下の基質を処理したサンプルを示す。C1:グルコース;C2:セロビオース;C3:セロトリオース;C4:セロテトラオース;C5:セロペンタオース;酸:リン酸膨張セルロース;結:結晶性セルロース;グ:βグルカン;紙:ろ紙;cmc:CMセルロース。M:マーカー。縦軸は糖の炭素数を示す。
【図15−2】図15−2は、GH5−1、GH9およびGH12−2の薄層クロマトグラフィー(TLC)による基質分解特性試験の結果を示す特性図である。各基質を各酵素で処理した際に見出される分解産物の炭素数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、サーモスポロスリックス・ハザケンシス(Thermosporothrix hazakensis)に由来する新規セルラーゼに関する。特に、本発明は、サーモスポロスリックス・ハザケンシスSK20−1T株(JCM 16142T=ATCC BAA−1881T)(以下、「SK20−1T株」と記載する)に由来する新規セルラーゼに関する。
【0014】
SK20−1T株は、完熟堆肥より単離され(Shuhei Y. et. al.,上掲)、Japan Collection of Microorganisms(JCM)に16142Tとして、またAmerican Type Culture Collection(ATCC)にBAA−1881Tとして登録されている。
【0015】
本発明におけるセルラーゼは、少なくともβ−グルカン、可溶性セルロース、結晶性セルロース、リン酸膨張セルロース、およびキシランを基質とする。基質特異性については、下記「(1)基質特異性」にて詳述する。
【0016】
本発明におけるセルラーゼは、少なくとも以下より選択される一または複数の加水分解酵素を含む。これらの加水分解酵素は、セルロースの非晶性領域をランダムに切断することができ、エンド型加水分解酵素活性を有する。
【0017】
(I)配列番号1に示すアミノ酸配列を含むポリペプチド、または配列番号1に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド;
(II)配列番号2に示すアミノ酸配列を含むポリペプチド、または配列番号2に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号2に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド;
(III)配列番号3に示すアミノ酸配列を含むポリペプチド、または配列番号3に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号3に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド;
(IV)配列番号4に示すアミノ酸配列を含むポリペプチド、または配列番号4に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号4に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド;
(V)配列番号5に示すアミノ酸配列を含むポリペプチド、または配列番号5に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号5に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド;ならびに
(VI)配列番号6に示すアミノ酸配列を含むポリペプチド、または配列番号6に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号6に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド。
【0018】
なお、上記ポリペプチドについて記載される「1もしくは数個」とは、特には限定されないが、例えば、20個以内、好ましくは10個以内、さらに好ましくは5個以内、特に好ましくは4個以内、あるいは1個又は2個である。
【0019】
また、上記ポリペプチドについて記載される「同一性」とは、2つのアミノ酸配列にギャップを導入して、またはギャップを導入しないで整列させた場合の、最適なアライメントにおいて、オーバーラップする全アミノ酸残基に対する同一アミノ酸および類似アミノ酸残基の割合(パーセンテージ)を意味する。同一性は、当業者に周知の方法、配列解析ソフトウェア等(例えばBLAST(Basic Local Alignment Search Tool at the National Center for Biological Information(米国国立生物学情報センターの基本ローカルアラインメント検索ツール))等(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータ))を使用して求めることができる。「少なくとも90%の同一性」とは、90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上の同一性を示す。
【0020】
さらに、上記ポリペプチドについて記載される「セルラーゼ活性」とは、セルロースを、グルコース、セロビオースおよびセロオリゴ糖に加水分解する活性を示す。なお、本明細書において、「セルラーゼ活性」を「酵素活性」および単に「活性」という場合がある。セルラーゼ活性は、公知の手法によって測定することが可能であり、例えば、上記ポリペプチドにセルラーゼの公知の基質(例えば、濾紙、カルボキシメチルセルロース(CMC)、微結晶セルロース(Avicel)、サリシン、キシラン、セロビオースなど、特にこれらに限定されない)を加えて、一定時間酵素反応を行わせた後に、生じた還元糖をSomogy−Nelson法およびDinitrosaliylic acid(DNS)法などにより発色させ所定の波長で比色定量して測定することができる。すなわち、Somogy−Nelson法においては、一定時間反応させた上記反応溶液にSomogy銅試薬(和光純薬)を加えて反応を停止する。その後およそ20分間煮沸し、煮沸終了後急速に水道水にて冷却する。冷却後、Nelson試薬を注入して還元銅沈殿を溶解し発色させ、およそ30分静置した後蒸留水を加え、吸光度を測定する。DNS法を用いる場合は、1%CMC基質液に酵素液を加え、一定時間酵素反応を行わせたのち、煮沸などによって酵素反応を停止する。この反応液にジニトロサリチル酸を加えて、5分間煮沸し、冷却後吸光度を測定する。
【0021】
本発明において特に好ましいセルラーゼは、以下より選択される一または複数の加水分解酵素を含む。
【0022】
(I)配列番号1に示すアミノ酸配列を含むポリペプチド、または配列番号1に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド;
(IV)配列番号4に示すアミノ酸配列を含むポリペプチド、または配列番号4に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号4に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド;ならびに
(VI)配列番号6に示すアミノ酸配列を含むポリペプチド、または配列番号6に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号6に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド。
【0023】
本発明においてさらに好ましいセルラーゼは、以下より選択される一または複数の加水分解酵素を含む。
【0024】
(Ia)配列番号1に示すアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(IVa)配列番号4に示すアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
(VIa)配列番号6に示すアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0025】
なお、本明細書において、上記(I)〜(VI)に示される一または複数の加水分解酵素を「セルラーゼ」と呼ぶ場合がある。
【0026】
本発明のセルラーゼは、以下の特性を有する。
(1)基質特異性
本発明のセルラーゼは、β−グルカン、可溶性セルロース(CMセルロース)、リン酸膨張セルロース、結晶性セルロース、キシラン、マンナン、ラミナリン、パラニトロフェニルセロビオシド、パラニトロフェニルグルコシド、カードラン、デキストラン、ムタン、アラビノキシラン、キチン、ガラクタン、ガラクトマンナン、プルラン、キシログルカン、ろ紙を基質とするが、これらに限定されない。好ましくは、少なくともβ−グルカン、可溶性セルロース、結晶性セルロース、リン酸膨張セルロース、およびキシランに対して酵素活性を有するに対して活性を有する。
【0027】
特に、上記(I)の加水分解酵素は、β−グルカン、可溶性セルロース(CMセルロース)、リン酸膨張セルロース、結晶性セルロース、キシラン、パラニトロフェニルセロビオシド、パラニトロフェニルグルコシドなどの基質に対して活性を有する。
【0028】
また、上記(IV)の加水分解酵素は、β−グルカン、可溶性セルロース(CMセルロース)、リン酸膨張セルロース、結晶性セルロース、キシラン、パラニトロフェニルセロビオシドなどの基質に対して活性を有する。
【0029】
さらに、上記(VI)の加水分解酵素は、β−グルカン、可溶性セルロース(CMセルロース)、リン酸膨張セルロース、結晶性セルロース、キシランなどの基質に対して活性を有する。
【0030】
通常、細菌由来のエンド型セルラーゼは、結晶性セルロースやリン酸膨張セルロースに対して活性を示さない。したがって、本発明のセルラーゼが備える基質特異性はユニークな性質であるといえる。
【0031】
下記実施例にて詳述するように、これらのセルラーゼのCMセルロースに対する活性は、今日工業利用されている一般的なセルラーゼ(例えば、Trichoderma virideのエンド型セルラーゼ)(Kayoko Hirayama et al.,Biosci.Biotechnol.Biochem.,74(8),1690−1686,2010)の1.5〜6倍、好ましくは2〜4倍である。
【0032】
(2)反応温度範囲
本発明のセルラーゼは、5〜90℃、好ましくは10〜80℃の範囲に、最適活性温度を有する。
【0033】
特に、下記実施例にて詳述するとおり、上記(I)および(VI)の加水分解酵素は、5〜90℃、好ましくは10〜80℃の範囲に最適活性温度を有し、上記(IV)の加水分解酵素は、45〜65℃、好ましくはおよそ60℃に最適活性温度を有する。
【0034】
(3)pH範囲
本発明のセルラーゼは、pH2〜11、好ましくはpH3〜10の範囲に、最適活性pHを有する。
【0035】
特に、下記実施例にて詳述するとおり、上記(I)の加水分解酵素は、pH3以上、好ましくはpH4〜11の範囲に最適活性pHを有する。また、上記(IV)の加水分解酵素は、pH3.5〜9の範囲、好ましくはおよそpH4に最適活性pHを有する。さらに、上記(VI)の加水分解酵素は、pH2〜10.5、好ましくはpH3〜9の範囲に最適活性pHを有する。
【0036】
(4)耐熱性
本発明のセルラーゼは、50〜80℃、好ましくは50〜70℃の温度範囲の熱処理に対して、安定性を有する。「安定性」とは、熱処理に対して活性を完全に消失しないことを意味し、必ずしも、熱処理に対して、処理前の活性の100%を維持することを意味しない。
【0037】
特に、下記実施例にて詳述するとおり、上記(I)の加水分解酵素は、70℃、30分間以内の熱処理に対してほとんど活性を失うことなく、安定である。また、上記(VI)の加水分解酵素は、70℃、10分間未満の熱処理に対して高い活性を保持し、安定である。
【0038】
(5)有機溶媒耐性
本発明のセルラーゼは、0〜80%(v/v)、好ましくは0〜50%(v/v)、さらに好ましくは0〜25%(v/v)の有機溶媒の存在下にて、活性を維持しうる。ここで「有機溶媒」とは、トルエン、アセトン、クロロホルム、ブタノール、ヘキサン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタジオール、1−ヘキサノール、メタノール、2−プロパノール、トリエチレングリコール、ジメチルホルムアミド、1,4−ジオキサン(これらに限定されない)から選択される一または複数の有機溶媒を意味する。
【0039】
特に、下記実施例にて詳述するとおり、上記(I)の加水分解酵素は、トルエン、クロロホルム、ヘキサンまたはDMSOの存在下にて、高い活性を維持する。また、上記(IV)の加水分解酵素は、ヘキサンの存在下にて、高い活性を維持する。さらに、上記(VI)の加水分解酵素は、トルエン、アセトン、クロロホルム、またはヘキサンの存在下にて、高い活性を維持する。
【0040】
本発明のセルラーゼは、有機溶媒の存在下において高い活性を維持することができ、有機溶媒存在下でセルラーゼ処理が必要な状況(例えば、糖脂肪酸エステルの合成などのファインケミカルへの応用など)において極めて有用である。
【0041】
(6)エタノール耐性
本発明のセルラーゼは、0〜70%(v/v)、0〜60%(v/v)、好ましくは、0〜50%(v/v)、さらに好ましくは、0〜30%(v/v)のエタノールの存在下において、活性を維持しうる。
【0042】
特に、下記実施例にて詳述するとおり、上記(I)の加水分解酵素は、50%(v/v)のエタノールの存在下においても、高い活性を維持する。また、上記(VI)の加水分解酵素は、およそ30%(v/v)以下のエタノールの存在下において、高い活性を維持する。さらに、上記(IV)の加水分解酵素は、およそ15%(v/v)以下のエタノールの存在下において、高い活性を維持する。
【0043】
本発明のセルラーゼは、エタノールの存在下において高い活性を維持することができ、バイオマスの糖化処理とアルコール発酵処理を同時に行うことができ、極めて有用である。
【0044】
(7)NaCl耐性
本発明のセルラーゼは、0〜25%(v/v)の塩存在下にて、活性を維持しうる。
特に、下記実施例にて詳述するとおり、上記(IV)および(VI)の加水分解酵素は、25%(v/v)以下の塩存在下にて、高い活性を維持する。
【0045】
本発明のセルラーゼは、塩存在下において高い活性を維持することができ、塩濃度が高い状況下でセルラーゼ処理が必要な状況(例えば、酸やアルカリ処理した木質系バイオマスを中和処理した後の糖化処理など)において極めて有用である。
【0046】
(8)組み合わせによる相乗効果
上記(I)〜(VI)の加水分解酵素は、二種以上を組み合わせて用いることによって、セルラーゼ活性を相乗的に増強させることができる。「二種以上」とは、上記(I)〜(VI)の加水分解酵素から選択される2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、および6つを意味する。加水分解酵素を組み合わせて用いることによって、単独で加水分解酵素を用いた場合と比べて、およそ2〜50倍のセルラーゼ活性を得ることができる。
【0047】
(9)基質の分解様式
本発明のセルラーゼは、基質をグルコースやオリゴ糖に分解することできる。
特に、下記実施例にて詳述するとおり、上記(I)および(VI)の加水分解酵素は、セロトリオース(C3)を分解できる最少単位(分解最小単位)とする。また、上記(IV)の加水分解酵素は、セロテトラオース(C4)を分解最小単位とする。
【0048】
さらに、本発明のセルラーゼは、トランスグリコレーション活性を有する。特に、下記実施例にて詳述するとおり、上記(I)および(VI)の加水分解酵素は、そのトランスグリコレーション活性により、3糖や4糖と反応させた場合に、それ以上の鎖長のオリゴ糖を生産する事ができる。
【0049】
本発明において、上記ポリペプチドはSK20−1T株の培養物または培養上清より精製または粗精製された形態であっても良いし、下記で詳述する上記ポリペプチドを発現する遺伝子組換え形質転換体の培養物または培養上清より精製または粗精製された形態であっても良い。培養物または培養上清からの上記ポリペプチドの精製または粗精製は、タンパク質精製に一般的に用いられる手法、例えば、硫酸アンモニウムもしくはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンもしくは陽イオン交換クロマトグラフィー、逆相高速液体クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、電気泳動などの技術を適宜用いて行うことができる。あるいは、上記ポリペプチドは化学合成(ペプチド合成)されたものであっても良い。
【0050】
本発明において、上記ポリペプチドは、固相に固定化されていても良い。固相としては例えば、ポリアクリルアミドゲル、ポリスチレン樹脂、多孔性ガラス、金属酸化物などが挙げられる(特にこれらに限定されない)。上記ポリペプチドを固相に固定することによって、連続反復使用が可能となる点において有利である。
【0051】
なお、上記(I)〜(III)の加水分解酵素は、アミノ酸配列の類似性および疎水性クラスター分析より同じ酵素ファミリーに属する。また、上記(V)および(VI)の加水分解酵素は、アミノ酸配列の類似性および疎水性クラスター分析より上記ファミリーとは別の酵素ファミリーに属する。同じ酵素ファミリーに属する加水分解酵素は、基質特異性、反応温度範囲、pH範囲、耐熱性、有機溶媒耐性、エタノール耐性、NaCl耐性、組み合わせによる相乗効果、基質の分解様式などの特性において、相互に類似する特性を有し得る。したがって、上記(II)および(III)の加水分解酵素の特性は、上記(I)の加水分解酵素の特性と類似または同一であり得る。また、上記(V)の加水分解酵素の特性は、上記(VI)の加水分解酵素の特性と類似または同一であり得る。
【0052】
また本発明は、上記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。上記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、それぞれ以下の(i)〜(vi)塩基配列より選択される。
【0053】
上記(I)のポリペプチドをコードする塩基配列:
(i)配列番号7で表される塩基配列;配列番号7で表される塩基配列において1から数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつセルラーゼ活性を有するポリペプチドコードする塩基配列;配列番号7で表される塩基配列に相補的な配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなり、かつセルラーゼ活性を有するポリペプチドコードする塩基配列;または配列番号7で表される塩基配列と少なくとも90%の同一性を有する塩基配列。
【0054】
上記(II)のポリペプチドをコードする塩基配列:
(ii)配列番号8で表される塩基配列;配列番号8で表される塩基配列において1から数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつセルラーゼ活性を有するポリペプチドコードする塩基配列;配列番号8で表される塩基配列に相補的な配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなり、かつセルラーゼ活性を有するポリペプチドコードする塩基配列;または配列番号8で表される塩基配列と少なくとも90%の同一性を有する塩基配列。
【0055】
上記(III)のポリペプチドをコードする塩基配列:
(iii)配列番号9で表される塩基配列;配列番号9で表される塩基配列において1から数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつセルラーゼ活性を有するポリペプチドコードする塩基配列;配列番号9で表される塩基配列に相補的な配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなり、かつセルラーゼ活性を有するポリペプチドコードする塩基配列;または配列番号9で表される塩基配列と少なくとも90%の同一性を有する塩基配列。
【0056】
上記(IV)のポリペプチドをコードする塩基配列:
(iv)配列番号10で表される塩基配列;配列番号10で表される塩基配列において1から数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつセルラーゼ活性を有するポリペプチドコードする塩基配列;配列番号10で表される塩基配列に相補的な配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなり、かつセルラーゼ活性を有するポリペプチドコードする塩基配列;または配列番号10で表される塩基配列と少なくとも90%の同一性を有する塩基配列。
【0057】
上記(V)のポリペプチドをコードする塩基配列:
(v)配列番号11で表される塩基配列;配列番号11で表される塩基配列において1から数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつセルラーゼ活性を有するポリペプチドコードする塩基配列;配列番号11で表される塩基配列に相補的な配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなり、かつセルラーゼ活性を有するポリペプチドコードする塩基配列;または配列番号11で表される塩基配列と少なくとも90%の同一性を有する塩基配列。
【0058】
上記(VI)のポリペプチドをコードする塩基配列:
(vi)配列番号12で表される塩基配列;配列番号12で表される塩基配列において1から数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつセルラーゼ活性を有するポリペプチドコードする塩基配列;配列番号12で表される塩基配列に相補的な配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなり、かつセルラーゼ活性を有するポリペプチドコードする塩基配列;または配列番号12で表される塩基配列と少なくとも90%の同一性を有する塩基配列。
【0059】
なお、上記塩基配列について記載される「1もしくは数個」とは、特には限定されないが、例えば、50個以内、好ましくは20個以内、さらに好ましくは10個以内である。
【0060】
また、「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいい、例えば、2〜6×SSC(1×SSCの組成:0.15M NaCl,0.015M クエン酸ナトリウム,pH7.0)および0.1〜0.5%SDSを含有する溶液中42〜55℃にてハイブリダイズを行い、0.1〜0.2×SSCおよび0.1〜0.5%SDSを含有する溶液中55〜65℃にて洗浄を行う条件をいう。
【0061】
さらに、上記塩基配列について記載される「少なくとも90%の同一性」とは、当業者に周知の方法、配列解析ソフトウェア等(例えばBLAST(Basic Local Alignment Search Tool at the National Center for Biological Information(米国国立生物学情報センターの基本ローカルアラインメント検索ツール))等(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータ))を用いて計算したときに、90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上の同一性を示すことを意味する。
【0062】
「セルラーゼ活性」とは、上に定義するとおりである。
上記塩基配列には、天然変異体も含まれる。天然変異体の具体例としては、SNP(一塩基多型)等の多型に基づく変異体、スプライス変異体、遺伝暗号の縮重に基づく変異体等が挙げられる。
【0063】
また上記塩基配列は、下記で詳述する形質転換される宿主生物のコドン頻度に従って、改変されていても良い。
【0064】
また本発明は、上記ポリヌクレオチドを含む発現ベクターに関する。
本発明の発現ベクターを適当な宿主細胞に導入することによって、上記ポリヌクレオチドにコードされる加水分解酵素を発現させることが可能である。
【0065】
本発明の発現ベクターは、当業者に周知である遺伝子工学的手法を用いて作製することができる。すなわち、当業者に公知である一般的な遺伝子導入および発現用のベクターに、上記ポリヌクレオチドを組み込んで作製することができる。本発明の発現ベクターに用いることができるベクターとしては、プラスミド、ファージ、ウイルス等、宿主細胞において複製可能である限り特に限定されないが、例えば、pBR322、pBR325、pUC118、pUC119、pKC30、pCFM536などの大腸菌プラスミド、pUB110などの枯草菌プラスミド、pG−1、YEp13、YCp50などの酵母プラスミド、λgt110、λZAPIIなどのファージのDNA、およびレトロウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンビスウイルス、センダイウイルス、SV40、免疫不全症ウイルス(HIV)などのDNAウイルスまたはRNAウイルスが挙げられる。ベクターには、上記ポリヌクレオチドより選択される1種または複数種(例えば、2種、3種、4種またはそれ以上)を含めることができる。
【0066】
また、ベクターには、上記ポリヌクレオチドの他に、宿主細胞における複製を可能とする複製起点、および形質転換体を同定する選択マーカー、さらに、好ましくは、宿主細胞由来の適切な転写または翻訳制御配列が、所望により上記ポリヌクレオチドに連結されて含まれ得る。制御配列の例には、転写プロモーター、オペレーター、またはエンハンサー、mRNAリボソーム結合部位、ならびに転写および翻訳開始および終結を調節する適切な配列が含まれる。用いることができるプロモーターとしては、宿主細胞内にて遺伝子発現を駆動できる限り、特に限定されず、例えばT3プロモーター、T7プロモーター、U6プロモーター、H1プロモーターなどのPolIIIプロモーターなど、当業者に公知であるプロモーターを適宜使用することができる。選択マーカーとしては、通常使用されるものを常法により用いることができ、例えばアンピシリン、ブレオマイシン、ハイグロマイシン、ネオマイシン、ピューロマイシンなどの耐性遺伝子やウリジンやアルギニンなどの生合成遺伝子などが挙げられる。
【0067】
本発明はまた、上記発現ベクターを含む形質転換体に関する。
本発明の形質転換体は上記発現ベクターを宿主細胞に導入して形質転換することによって作製することができる。本発明の形質転換体は、上記ポリヌクレオチドを含む限り、特に限定されるものではなく、例えば、上記ポリヌクレオチドが、宿主細胞の染色体に組み込まれた形質転換体であることもできるし、あるいは、上記ポリヌクレオチドを含むベクターの形で含有する形質転換体であることもできる。また、上記ポリペプチドを発現している形質転換体であることもできるし、あるいは、上記ポリペプチドを発現していない形質転換体であることもできる。
【0068】
上記発現ベクターを宿主細胞に導入する方法としては、リン酸カルシウム法または塩化カルシウム/塩化ルビジウム法、エレクトロポレーション法、エレクトロインジェクション法、PEGなどの化学的な処理による方法、遺伝子銃などを用いる方法などが挙げられる。
【0069】
宿主細胞として用いることができるものとしては、E.coli、酵母(Saccharomyces cerevisiae)、SF9、SF21、COS1、COS7、CHO、HEK293など周知の細胞が挙げられる。
【0070】
上記発現ベクターが導入された形質転換体は、上記加水分解酵素を発現し得る。形質転換体の培養物を上記加水分解酵素として直接利用しても良いし、発現された加水分解酵素を、形質転換体の培養物より、タンパク質精製に用いられる公知の方法、例えば、遠心分離、硫安塩析、有機溶媒(エタノール、メタノール、アセトン等)による沈殿分離、イオン交換クロマトグラフィー、等電点クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、吸着カラムクロマトグラフィー、基質または抗体などを利用したアフィニティークロマトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー、精密ろ過、限外ろ過、逆浸透ろ過等の濾過処理など、を1つまたは複数組み合わせて用いて精製または粗精製して、利用することもできる。
【0071】
「培養物」には、培養上清、細胞破砕物、形質転換体ならびにそれらの凍結乾燥物およびそれらを固相(上に定義されるもの)に固定したものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
本発明はまた、上記ポリペプチドまたは上記形質転換体の培養物を洗剤成分として含む洗剤組成物に関する。当該洗剤組成物は固体または液体のどちらであっても良く、好ましくは液体である。
【0073】
本発明の洗剤組成物には、上記ポリペプチドまたは上記形質転換体の培養物を約0.001〜約10重量%の範囲で含めることができる。当該洗剤組成物には上記ポリペプチドまたは上記形質転換体の培養物に加えて、界面活性剤を含めることができる。当該洗剤組成物中、界面活性剤は約1〜約55重量%の範囲で含めることができる。界面活性剤はアニオン性、ノニオン性、カチオン性、両性または双性イオン性あるいはそれらの混合物を利用することができる。本発明において利用可能な界面活性剤としては、直鎖状アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルファーオレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル塩、天然脂肪酸のアルカリ金属塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルポリエチレングリコールエーテル、ノニルフェノールポリエチレングリコールエーテル、脂肪酸メチルエステルエトキシレート、スクロースまたはグルコースの脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、ポリエトキシル化アルキルグルコシドのエステルが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の洗剤組成物はさらに、当該分野で既知の他の洗剤成分、例えば、ビルダー、漂白剤、漂白活性剤、腐食防止剤、金属イオン封鎖剤、汚れ解離ポリマー、香料、他の酵素(プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼなど)、酵素安定剤、製剤化補助剤、蛍光増白剤、発泡促進剤等を含めることもできる。
【0074】
本発明はまた、上記ポリペプチド、上記形質転換体の培養物、または上記形質転換体の培養物を用いた、炭水化物含有原料の糖化方法に関する。
【0075】
「炭水化物含有原料」とは、単糖、オリゴ糖、または多糖などの任意の炭水化物、またはそれを含む生物由来材料である。炭水化物含有原料としては、特に限定されないが、植物や藻類が生産するセルロース系および/またはリグノセルロース系バイオマスが挙げられ、例えば、古紙、製材残材、木材、ふすま、麦わら、稲わら、もみがら、バガス、大豆粕、大豆おから、コーヒー粕、米ぬか、麦藁、コーンストーバー、コーンコブなどが挙げられる(これらに限定されない)。
【0076】
炭水化物含有原料の糖化は、公知の方法を用いて行うことができる。例えば、粗粉砕もしくは細断処理した、または酸もしくはアルカリ処理した炭水化物含有原料を、水性媒体中に懸濁し上記ポリペプチド、上記形質転換体、または上記形質転換体の培養物を加え、撹拌または振とうしながら加温することによって行うことができる。この方法において、反応液のpHおよび温度は、上記ポリペプチドが失活しない範囲内で適宜選択することができる。また、当該反応は、バッチ式で行っても、連続式で行ってもよい。上記方法により得られた炭水化物含有原料の糖化物には、グルコース、フルクトース、スクロースなどの糖類を含む。
【0077】
上記方法により得られた炭水化物含有原料の糖化物は、食品または飼料の原料として用いることができる。
【0078】
本発明はさらに、上記方法により得られた炭水化物含有原料の糖化物を発酵させることを含む、エタノールの製造方法に関する。糖化物の発酵は、公知の方法を用いて行うことができる。すなわち、上記方法により得られた炭水化物含有原料の糖化物を含めた培地中にて、アルコール発酵が可能な公知の微生物(例えば、酵母(Saccharomyces cerevisiaeなど)、細菌(Lactobacillus brevis,Clostridium,Thermoanaerobium brockii,Zymomonasなど))を培養することによって行うことができる。培地のpHおよび温度、培養時間は用いる微生物に応じて適宜選択することができる。培養終了後、培地を回収してエタノールを分離する。培地よりエタノールを分離する方法は、蒸留、浸透気化膜等の公知の方法が用いられるが、蒸留による方法が好ましい。次いで、分離したエタノールをさらに精製(エタノール精製法としては、公知の方法、例えば蒸留等を用いることができる)することによって、エタノールを得ることができる。上記のとおり、本発明のポリペプチドは、エタノールの存在下において高い活性を維持することができるために、本発明のエタノールの製造方法において、上記炭水化物含有原料を糖化する工程と、糖化物を発酵する工程は同時に行うことができる。
【実施例】
【0079】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【0080】
実施例1:新規セルラーゼのクローニング
<染色体DNAの調製とゲノムの解読>
サーモスポロスリックス・ハザケンシスSK20−1株(Thermosporothrix hazakensis)(JCM 16142T=ATCC BAA−1811T)をトリプトン・イーストエキス・ブロス(ISP1)培地(DIFCO社製)で50℃にて3日間振とう培養し、集菌したものに、TE緩衝液にて3回洗浄し、Tris−HCl緩衝液5mlに懸濁させ、アクロモペプチダーゼ(シグマ社製)2.5mg、ニワトリ卵白リゾチーム(シグマ社製)2.5mgを添加し、37℃で3時間放置した。その後、プロティナーゼK(シグマ社製)10Uと10%SDS溶液250μl添加して37℃で1日間放置した。フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール溶液(25:24:1)(ニッポンジーン社製)を等量添加し、攪拌後、遠心分離し、水層を回収した。この操作を中間層が無くなるまで繰り返し、得られた水層にRNase処理を行いエタノール沈殿させて、染色体DNAを40μg回収した。
【0081】
GS FLX 454 titanium(ロシュ社製)を用いて1/4プレート、4kbライブラリーのペアエンド法にてゲノム配列を解読した。ゲノム解読は株式会社マクロジェンに依頼した。その結果、総リードが227,774,565bpで100bp以上のコンティグが131個、スキャフォルドが11個、冗長度が32であり、ゲノムの99%以上が解読できた。
【0082】
<新規セルラーゼの検出とクローニング>
得られたゲノム配列をMiGAP(Microbial Genome Annotation Pipeline)(http://www.migap.org/)にて自動注釈を行った。ORFの検索はGlimmerを使用し、参照したデータベースはTrEMBL(2010.7.13)とNCBI RefSeq (2010.7.21)を選択し、Identityは30%以上、Coverageは50%以上に注釈を付加させた。また糖質加水分解酵素ファイリー(GH)の検索はCAZY (Carbohydrate−Active Enzymes database)(http://www.cazy.org/Glycoside−Hydrolases.html)にて行った。結果、6つのセルラーゼ(GH5−1,5−2,5−3,9,12−1,12−2)遺伝子の翻訳領域情報を得た。各セルラーゼ遺伝子の塩基配列および当該塩基配列のコードされるアミノ酸配列を図1〜6に示す。GH5−1,9および12−2遺伝子の翻訳領域情報を基に以下のプライマーを設計した。
【0083】
上記のプライマーのペアーを用いて、染色体DNAを鋳型にそれぞれ以下の組成とプログラムでPCRを行った。
【0084】
PCR反応カクテル
染色体DNA:0.5μl
0.2mMフォワードプライマー: 1μl
0.2mMリバースプライマー: 1μl
10×Taq緩衝液(タカラ社製):5μl
2.5mM dNTPs (タカラ社製):4μl
Taq (タカラ社製)1μl
イオン交換水 35.7μl
【0085】
PCR条件
95℃で2分間加熱後、95℃で30秒、55℃で30秒、72℃で2分間のサイクルを30回繰り返した。反応終了後、一度72℃で10分間加温後に、4℃に温度を下げた。
【0086】
得られた各PCR産物を1.5%アガロースゲル電気泳動に供し、それぞれのバンドをゲルから切り出し、QIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)を用いて切り出したDNAを、定法により精製した。各精製DNAをpBAD TOPO TA Expression Kit(インビトロジェン社製)を用いて、大腸菌(E.coli TOP10)に形質転換した。獲得した形質転換体それぞれ1株は0.5%CMセルロースを含むLBプレートにて画線培養して、37℃で18時間培養した。その後、0.2%コンゴーレッド溶液を寒天表面に薄く展開し、15分静置し、コンゴーレッド溶液を捨て、1MNaCl溶液を同様に展開して、20分間静置後、コロニーの周りに形成されるクリアゾーンによって、セルラーゼの発現を確認した。同様の作業をセルラーゼ遺伝子を組み込んでいないベクターを形質転換させた大腸菌についても行い、クリアゾーンを形成しない事を確認した。
【0087】
セルラーゼの発現が確認された各形質転換体を1mlLB培地(100mg/lアンピシリン含む)に接種して、37℃にて18時間前振とう培養を行った後、その培養液1mlを100mlLB培地(100mg/lアンピシリン含む)に添加し、濁度(OD660)が0.5になるまで振とう培養し、そこに20%L−アラビノース溶液を0.1ml添加し、再び4時間発現誘導培養した。培養後、集菌して、0.7%生理食塩水で3回洗浄した。この洗浄菌体を用いてNi−NTA Purification System(インビトロジェン社製)を用いて、そのマニュアルに従って発現させたそれぞれのセルラーゼを精製した。即ち洗浄菌体を8mlのNative Binding緩衝液に懸濁させ、8mgのニワトリ卵白リゾチーム(シグマ社製)を添加し、30分氷上で放置した。その後、超音波10秒し、10秒氷冷させる破砕処理を6回繰り返した。その後、15分、3000Gで遠心分離して上澄みを回収した。1.5mのNi−NTA Agaroseを付属のカラムに添加して、5分間自然沈降させて上澄みを取り除き、6mlの蒸留水で1回、6mlのNative Binding緩衝液で2回担体を洗浄した。その担体に8mlの細胞破砕液を添加して、60分間ゆっくりと振とうさせ、目的タンパク質を吸着させた。その後自然沈降によって上澄みを取り除き、8mlのNative Wash緩衝液にて4回洗浄した。そして、Native Elution緩衝液を8ml添加して最初の3mlを回収し、各精製セルラーゼ溶液を得た。
【0088】
実施例2:新規セルラーゼの特性解析
<基質特異性>
CMセルロース、微結晶性セルロース(wako社製)小麦β−グルカン(シグマ社製)、マンナン(シグマ社製)、ラミナリン(シグマ社製)、リン酸膨張セルロースをそれぞれ終濃度1%(w/v)になるように0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解した基質溶液0.9mLに適当な濃度に希釈した酵素溶液0.1mLを加え、50℃で60分間静置反応(結晶性セルロースは50℃で18時間振とうさせて反応させた。)した後、酵素活性を測定した。酵素活性の測定は以下の手法で行った。反応液にDNS(3,5−ジニトロサリチル酸)溶液1mLを加えて沸騰湯浴中で5分間熱処理した。熱処理後氷水中で冷却し、脱イオン水4mLを加え攪拌後、U1500スペクトロフォトメーター(日立社製)を用いて、535nmでの吸光度を測定した。なお、酵素1ユニットとは、1分間に1μmolのグルコースを遊離する量とした。
【0089】
使用したリン酸膨張セルロースは以下のようにして調整した。TOYOろ紙社製セルロースパウダー(100−200mesh)5gを85%リン酸(関東化学)100mlに懸濁し、室温で12時間膨潤させた後、遠心分離(10,000×g、15min)により上清を得た。この上清を500mlの蒸留水に加え非結晶性セルロース繊維を沈殿させ、遠心分離で集めた後0.05%の炭酸ナトリウム500mlに懸濁・中和し、遠心分離によって再び沈殿を集めた。この沈殿を500mlの蒸留水でさらに3回懸濁・洗浄し、最後に沈殿を100mlの10mMリン酸ナトリウム(pH7.0)に懸濁した。
【0090】
各種基質に対する酵素活性を図7に示す。
GH5−1,GH9およびGH12−2はいずれも、β−グルカン、CMセルロース、微結晶性セルロース、キシランに対して活性を示した。また、GH5−1は、パラニトロフェニルセロビオシドおよびパラニトロフェニルグルコシドに対しても活性を示し、GH9もパラニトロフェニルセロビオシドに対しても活性を示した。
【0091】
一般的な細菌由来エンド型のセルラーゼは結晶性セルロースやそれを酸により膨張させたリン酸膨張セルロースに対してはほとんど活性を示さないのに対して、GH5−1,GH9およびGH12−2はいずれも、両基質に対して活性を示した(TCLの結果も参照)。
【0092】
また、今日、一般的に工業利用されているTrichoderma virideのエンド型セルラーゼのCMセルロースに対する活性が約50U/mgであることが知られている。GH5−1,GH9およびGH12−2では、その2〜4倍の活性が確認された。
【0093】
<最適反応温度>
基質1%(w/v)CMセルロースおよび適当な濃度に希釈した酵素溶液0.1mLを0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)に加えて、反応温度を10−90℃(10℃間隔)で反応させた後、上記<基質特異性>に記載した通り酵素活性を測定した。それぞれの最高活性を示した温度での値を100%とした相対活性で示した。(それぞれの100%活性はGH5−1:210U/mg;GH9:88U/mg;GH12−2:193U/mg)。
【0094】
結果を図8に示す。
GH5−1は10〜80℃にて50%以上の活性を示し、活性温度範囲が非常に広いことが示された。GH12−2もGH5−1と同様に、非常に広い活性温度範囲を示した。一方、GH9は60℃付近に至適温度を有することが明らかとなった。
【0095】
<最適反応pH>
基質1%(w/v)CMセルロースおよび適当な濃度に希釈した酵素溶液0.1mLを、各0.1Mの緩衝液(グリシン-塩酸緩衝液pH2.0、pH3、クエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液pH4、pH5、リン酸緩衝液pH6.0、pH7.0、トリス塩酸緩衝液pH8.0、pH9.0、グリシン水酸化ナトリウムpH10、及びリン酸水酸化ナトリウム緩衝液pH11)に加えて、50℃、60分間の反応させた後、上記<基質特異性>に記載した通り酵素活性を測定した。それぞれの最大活性時を示したpHの値を100%とした相対活性で示した(それぞれの100%活性はGH5−1:212U/mg;GH9:110U/mg;GH12−2:177U/mg)。
【0096】
結果を図9に示す。
GH5−1およびGH12−2はpH2〜11にて活性が観察され、非常に広い活性pH範囲を有することが明らかとなった。一方、GH9はpH4に至適pHを有することが明らかとなった。
【0097】
<温度安定性>
適当な濃度に希釈した各酵素液を0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)中30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃及び90℃の各温度下で、10−30分間熱処理した後、残存活性を1%(w/v)CMセルロースを用いて測定した。熱に対して未処理の活性を100%とした残存活性で示した。(それぞれの100%活性はGH5−1:252U/mg;GH9:103U/mg;GH12−2:222U/mg)。
【0098】
結果を図10に示す。
GH5−1は70℃、30分間の熱処理によっても、ほとんど失活せず、優れた耐熱性を有することが明らかとなった。一方、GH9は70℃、10分間の熱処理によって失活し、耐熱性をほとんど有さないことが明らかとなった。GH12−2もGH5−1と同様に、非常に広い活性温度範囲を示した。一方、GH9は60℃付近に至適温度を有することが明らかとなった。
【0099】
<各種有機溶媒耐性>
0.1%(w/v)CMセルロースを含む25%(v/v)トルエン(関東化学社製)、アセトン(関東化学社製)、クロロホルム(関東化学社製)、ブタノール(関東化学社製)、TE飽和フェノール(ニッポンジーン社製)、ヘキサン(関東化学社製)、DMSO(Wako社製)をそれぞれ含む0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)を基質溶液とし、適当な濃度に希釈した各酵素液と50℃にて60分間反応させ、上記<基質特異性>に記載した通り酵素活性を測定した。有機溶媒を含まない基質溶液を用いた測定値を100%とした相対活性で示した。(それぞれの100%活性はGH5−1:218U/mg;GH9:80U/mg;GH12−2:201U/mg)。
【0100】
結果を図11に示す。
GH5−1およびGH12−2は、多くの有機溶媒中で活性を維持していた。一方、GH9はヘキサンを除き、高い活性は見られなかった。
【0101】
<エタノール耐性>
0.1%(w/v)CMセルロースと1,3,5,10,20,30,50%(v/v)エタノール(関東化学社製)をそれぞれ含む0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)を基質溶液とし、適当な濃度に希釈した各酵素液と50℃にて60分間反応させ、上記<基質特異性>に記載した通り酵素活性を測定した。エタノールを含まない基質溶液を用いた測定値を100%とした相対活性で示した。(それぞれの100%活性はGH5−1:202U/mg;GH9:75U/mg;GH12−2:180U/mg)。
【0102】
結果を図12に示す。
GH5−1およびGH12−2は、エタノール高濃度存在下でも活性を維持した。
【0103】
<NaCl耐性>
0.1%(w/v)CMセルロースと1,2,3,4,5M NaClをそれぞれ含む0.1Mリン酸緩衝液を基質溶液(pH7.0)とし、適当な濃度に希釈した各酵素液と50℃にて60分間反応させ、上記<基質特異性>に記載した通り酵素活性を測定した。NaClを含まない基質溶液を用いた測定値を100%とした相対活性で示した。(それぞれの100%活性はGH5−1:198U/mg;GH9:83U/mg;GH12−2:180U/mg)。
【0104】
結果を図13に示す。
GH9およびGH12−2は、5M NaCl(約25%(w/v))の存在下にて50%以上の相対活性を示し、非常に耐塩性の強いセルラーゼであることが明らかとなった。
【0105】
<組み合わせによる相乗効果>
ワットマンNo.1ろ紙を0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解した基質溶液を用意し、そこに各精製セルラーゼのタンパク質濃度を107μg/mlになるように調整したものを単一酵素試験においてはそれぞれ0.03ml、2種混合試験(GH5−1+GH9;GH5−1+GH12−2;GH9+GH12−2の組み合わせ)においては各酵素を0.015ml(合計0.03ml)、3種混合試験(GH5−1+GH9+GH12−2)においては各酵素を0.01ml(合計0.03ml)を添加して、50℃にて60分間反応させ、上記<基質特異性>に記載した通り酵素活性を測定した。なお、混合酵素の理論値は、それぞれの単一酵素の実測値の和を組み合わせた酵素の数で除した値である。また、混合酵素の相乗効果の値は、混合酵素の実測値を理論値で除した値である。
【0106】
結果を図14に示す。
GH5−1、GH9およびGH12−2の各酵素は、2種および3種と組み合わせて用いることによって、酵素活性が相乗的に向上することが明らかとなった。
【0107】
<TLCによる分解特性試験>
CMセルロース、微結晶性セルロース(wako社製)、ろ紙(ワットマンNo.1)小麦β−グルカン、リン酸膨張セルロース、セロビオース(焼津水産工業社製)、セロトリオース(焼津水産工業社製)、セロテトラオース(焼津水産工業社製)、セロペンタオース(焼津水産工業社製)をそれぞれ終濃度1%(w/v)になるように0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解した基質溶液0.9mLに適当な濃度に希釈した酵素溶液0.1mLを加え、50℃で60分間静置反応(結晶性セルロース及びろ紙は50℃で18時間振とうさせて反応させた。)した後、その上澄み20μlを薄層プレート;TLC Silica gel 60(メルク社製)にスポットして展開溶液クロロホルム:酢酸:水(6:7:1)に浸して分解産物を解析した。
【0108】
結果を図15−1および図15−2に示す。
GH5−1およびGH12−2はともにセロトリオース(C3)が分解最少単位であった。結晶性、酸膨張セルロース、ろ紙及びグルカンの分解産物はともにセロビオースがメインで検出された。GH5−1のみグルコースが検出されなかった。
一方、GH9はセロテトラオースが分解最少単位であり、酸膨張セルロース、ろ紙及びグルカンの分解産物はともにセロテトラオースがメインで検出された。
【0109】
また、GH5−1およびGH12−2はともにトランスグリコレーション活性も示した。3糖や4糖と反応させた場合に、トランスグリコレーション活性によって、それ以上の鎖長のオリゴ糖を生産する事ができた。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明により、サーモスポロスリックス・ハザケンシス(Thermosporothrix hazakensis)SK20−1T株(JCM 16142T=ATCC BAA−1881T)に由来する新規セルラーゼを提供することができる。当該セルラーゼは、各種有機溶媒耐性、エタノール耐性、NaCl耐性などユニークな特性を備え、糖脂肪酸エステルの合成などのファインケミカルへの応用やバイオマスの糖化・アルコール発酵処理などの分野において貢献することが期待される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーモスポロスリックス・ハザケンシス(Thermosporothrix hazakensis)に由来する新規セルラーゼに関する。より詳細には、本発明は、サーモスポロスリックス・ハザケンシス(Thermosporothrix hazakensis)SK20−1T株(JCM 16142T=ATCC BAA−1881T)に由来する新規セルラーゼに関する。
【背景技術】
【0002】
セルラーゼとは、セルロースを、グルコース、セロビオースおよびセロオリゴ糖に加水分解する酵素反応系を触媒する酵素群の総称であり、その作用様式により、エキソ−β−グルカナーゼ、エンド−β−グルカナーゼおよびβ−グルコシダーゼなどに分類される。セルラーゼのこれら酵素の相互作用により、セルロースが最終的にグルコースまで分解される。
【0003】
一方、近年、セルラーゼを用いて、バイオマス資源を酵素分解、糖化することによって構成単位であるグルコース、キシロースにし、更にこれを発酵することによって得られるエタノールや乳酸などを液体燃料もしくは化学原料として利用することが検討・注目されている。
【0004】
しかしながら、従来的に利用されているセルラーゼによるセルロース分解の速度は充分ではなく、特にエタノール、塩などの存在下においては、セルラーゼの活性は低下するために、効率的且つ経済的にバイオマス資源を酵素分解、糖化することが可能なセルラーゼが求められていた。
【0005】
サーモスポロスリックス・ハザケンシス(Thermosporothrix hazakensis)は、クロロフレクサス門クテドノバクテリア綱クテドノバクテル目に属する細菌であり、好気性のグラム陽性細菌である。本発明者らにより、サーモスポロスリックス・ハザケンシス(Thermosporothrix hazakensis)SK20−1T株(JCM 16142T=ATCC BAA−1881T)が単離され、セルロース、キシラン、キチンを分解する能力を有することが示されている(非特許文献1)。しかしながらこれまでに、サーモスポロスリックス・ハザケンシス(Thermosporothrix hazakensis)に由来するセルラーゼが取得されたという報告はない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Shuhei Y.et.al.,International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology(2010),60,1794−1801
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、サーモスポロスリックス・ハザケンシス(Thermosporothrix hazakensis)に由来する新規セルラーゼを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、サーモスポロスリックス・ハザケンシス(Thermosporothrix hazakensis)SK20−1T株(JCM 16142T=ATCC BAA−1881T)より、新規セルラーゼを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は以下を包含する。
[1] 少なくともβ−グルカン、可溶性セルロース、結晶性セルロース、リン酸膨張セルロース、およびキシランに対して酵素活性を有する、サーモスポロスリックス・ハザケンシス(Thermosporothrix hazakensis)に由来するセルラーゼ。
[2] サーモスポロスリックス・ハザケンシスが、サーモスポロスリックス・ハザケンシスSK20−1T株(JCM 16142T=ATCC BAA−1881T)である、[1]のセルラーゼ。
[3] 少なくとも10〜80℃の温度条件下において、酵素活性を保持する、[1]または[2]のセルラーゼ。
[4] 少なくともpH2〜11のpH条件下において、酵素活性を保持する、[1]または[2]のセルラーゼ。
[5] 少なくとも0〜25%(v/v)の有機溶媒の存在下において、酵素活性を保持する、[1]または[2]のセルラーゼ。
[6] 有機溶媒がトルエン、アセトン、クロロホルム、ブタノール、ヘキサンおよびDMSOからなる群から選択される、[5]のセルラーゼ。
[7] 少なくとも0〜50%(v/v)のエタノールの存在下において、酵素活性を保持する、[1]または[2]のセルラーゼ。
[8] 少なくとも0〜25%(v/v)の塩存在下において、酵素活性を保持する、[1]または[2]のセルラーゼ。
[9] 以下のアミノ酸配列で示されるポリペプチドを含む加水分解酵素からなる群から選択される一または複数の加水分解酵素を含む、[1]〜[8]のいずれかのセルラーゼ:
(I)配列番号1に示すアミノ酸配列を含むポリペプチド、または配列番号1に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド;
(II)配列番号2に示すアミノ酸配列を含むポリペプチドまたは配列番号2に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号2に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド;
(III)配列番号3に示すアミノ酸配列を含むポリペプチドまたは配列番号3に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号3に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド;
(IV)配列番号4に示すアミノ酸配列を含むポリペプチドまたは配列番号4に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号4に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド;
(V)配列番号5に示すアミノ酸配列を含むポリペプチドまたは配列番号5に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号5に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド;ならびに
(VI)配列番号6に示すアミノ酸配列を含むポリペプチドまたは配列番号6に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号6に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド。
【0010】
[10] [1]〜[9]のいずれかのセルラーゼをコードするポリヌクレオチド。
[11] [10]のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
[12] [11]の発現ベクターにより形質転換された形質転換体。
[13] [11]の形質転換体の培養によって得られる培養物。
[14] [1]〜[9]のいずれかのセルラーゼまたは[13]の培養物を含む、洗剤組成物。
[15] 炭水化物含有原料を[1]〜[9]のいずれかのセルラーゼ、[12]の形質転換体または[13]の培養物で処理することを含む、炭水化物含有原料の糖化方法。
[16] 炭水化物含有原料を[1]〜[9]のいずれかのセルラーゼ、[12]の形質転換体または[13]の培養物で処理することを含む、食品または飼料の製造方法。
[17] (i)炭水化物含有原料を[1]〜[9]のいずれかのセルラーゼ、[12]の形質転換体または[13]の培養物で処理すること;ならびに
(ii)工程(i)で得られた処理物を発酵することを含む、エタノールの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、サーモスポロスリックス・ハザケンシス(Thermosporothrix hazakensis)、特にサーモスポロスリックス・ハザケンシスSK20−1T株(JCM 16142T=ATCC BAA−1881T)に由来する新規セルラーゼを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1はGH5−1のアミノ酸配列および当該アミノ酸配列をコードする塩基配列を示す。
【図2】図2はGH5−2のアミノ酸配列および当該アミノ酸配列をコードする塩基配列を示す。
【図3】図3はGH5−3のアミノ酸配列および当該アミノ酸配列をコードする塩基配列を示す。
【図4−1】図4−1はGH9のアミノ酸配列を示す。
【図4−2】図4−2はGH9のアミノ酸配列をコードする塩基配列を示す。
【図5】図5はGH12−1のアミノ酸配列および当該アミノ酸配列をコードする塩基配列を示す。
【図6】図6はGH12−2のアミノ酸配列および当該アミノ酸配列をコードする塩基配列を示す。
【図7】図7は、各種基質に対するGH5−1、GH9およびGH12−2の酵素活性を示す特性図である。表中、NDは未検出を示し、酵素処理後の基質溶液の黄色が濃い場合を「++」、薄い場合を「+」として相対的に評価した。なお、1分間あたりに還元糖(DRS)を1μmol生成させる酵素量を1ユニット(U)とする。
【図8】図8は、反応温度によるGH5−1、GH9およびGH12−2の酵素活性の影響を示す特性図である。各酵素について、最も高い活性値を100%とする相対活性値(%)を示す。
【図9】図9は、pHによるGH5−1、GH9およびGH12−2の酵素活性の影響を示す特性図である。各酵素について、最も高い活性値を100%とする相対活性値(%)を示す。
【図10】図10は、GH5−1、GH9およびGH12−2の温度安定性を示す特性図である。各酵素について、最も高い活性値を100%とする相対活性値(%)を示す。
【図11】図11は、GH5−1、GH9およびGH12−2の有機溶媒耐性を示す特性図である。各酵素について、最も高い活性値を100%とする相対活性値(%)を示す。
【図12】図12は、GH5−1、GH9およびGH12−2のエタノール耐性を示す特性図である。各酵素について、最も高い活性値を100%とする相対活性値(%)を示す。
【図13】図13は、GH5−1、GH9およびGH12−2のNaCl耐性を示す特性図である。各酵素について、最も高い活性値を100%とする相対活性値(%)を示す。
【図14】図14は、GH5−1、GH9およびGH12−2の組み合わせによる酵素活性の相乗効果を示す特性図である。
【図15−1】図15−1は、GH5−1、GH9およびGH12−2の薄層クロマトグラフィー(TLC)による基質分解特性試験の結果を示す特性図である。各レーンは、それぞれ以下の基質を処理したサンプルを示す。C1:グルコース;C2:セロビオース;C3:セロトリオース;C4:セロテトラオース;C5:セロペンタオース;酸:リン酸膨張セルロース;結:結晶性セルロース;グ:βグルカン;紙:ろ紙;cmc:CMセルロース。M:マーカー。縦軸は糖の炭素数を示す。
【図15−2】図15−2は、GH5−1、GH9およびGH12−2の薄層クロマトグラフィー(TLC)による基質分解特性試験の結果を示す特性図である。各基質を各酵素で処理した際に見出される分解産物の炭素数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、サーモスポロスリックス・ハザケンシス(Thermosporothrix hazakensis)に由来する新規セルラーゼに関する。特に、本発明は、サーモスポロスリックス・ハザケンシスSK20−1T株(JCM 16142T=ATCC BAA−1881T)(以下、「SK20−1T株」と記載する)に由来する新規セルラーゼに関する。
【0014】
SK20−1T株は、完熟堆肥より単離され(Shuhei Y. et. al.,上掲)、Japan Collection of Microorganisms(JCM)に16142Tとして、またAmerican Type Culture Collection(ATCC)にBAA−1881Tとして登録されている。
【0015】
本発明におけるセルラーゼは、少なくともβ−グルカン、可溶性セルロース、結晶性セルロース、リン酸膨張セルロース、およびキシランを基質とする。基質特異性については、下記「(1)基質特異性」にて詳述する。
【0016】
本発明におけるセルラーゼは、少なくとも以下より選択される一または複数の加水分解酵素を含む。これらの加水分解酵素は、セルロースの非晶性領域をランダムに切断することができ、エンド型加水分解酵素活性を有する。
【0017】
(I)配列番号1に示すアミノ酸配列を含むポリペプチド、または配列番号1に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド;
(II)配列番号2に示すアミノ酸配列を含むポリペプチド、または配列番号2に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号2に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド;
(III)配列番号3に示すアミノ酸配列を含むポリペプチド、または配列番号3に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号3に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド;
(IV)配列番号4に示すアミノ酸配列を含むポリペプチド、または配列番号4に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号4に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド;
(V)配列番号5に示すアミノ酸配列を含むポリペプチド、または配列番号5に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号5に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド;ならびに
(VI)配列番号6に示すアミノ酸配列を含むポリペプチド、または配列番号6に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号6に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド。
【0018】
なお、上記ポリペプチドについて記載される「1もしくは数個」とは、特には限定されないが、例えば、20個以内、好ましくは10個以内、さらに好ましくは5個以内、特に好ましくは4個以内、あるいは1個又は2個である。
【0019】
また、上記ポリペプチドについて記載される「同一性」とは、2つのアミノ酸配列にギャップを導入して、またはギャップを導入しないで整列させた場合の、最適なアライメントにおいて、オーバーラップする全アミノ酸残基に対する同一アミノ酸および類似アミノ酸残基の割合(パーセンテージ)を意味する。同一性は、当業者に周知の方法、配列解析ソフトウェア等(例えばBLAST(Basic Local Alignment Search Tool at the National Center for Biological Information(米国国立生物学情報センターの基本ローカルアラインメント検索ツール))等(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータ))を使用して求めることができる。「少なくとも90%の同一性」とは、90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上の同一性を示す。
【0020】
さらに、上記ポリペプチドについて記載される「セルラーゼ活性」とは、セルロースを、グルコース、セロビオースおよびセロオリゴ糖に加水分解する活性を示す。なお、本明細書において、「セルラーゼ活性」を「酵素活性」および単に「活性」という場合がある。セルラーゼ活性は、公知の手法によって測定することが可能であり、例えば、上記ポリペプチドにセルラーゼの公知の基質(例えば、濾紙、カルボキシメチルセルロース(CMC)、微結晶セルロース(Avicel)、サリシン、キシラン、セロビオースなど、特にこれらに限定されない)を加えて、一定時間酵素反応を行わせた後に、生じた還元糖をSomogy−Nelson法およびDinitrosaliylic acid(DNS)法などにより発色させ所定の波長で比色定量して測定することができる。すなわち、Somogy−Nelson法においては、一定時間反応させた上記反応溶液にSomogy銅試薬(和光純薬)を加えて反応を停止する。その後およそ20分間煮沸し、煮沸終了後急速に水道水にて冷却する。冷却後、Nelson試薬を注入して還元銅沈殿を溶解し発色させ、およそ30分静置した後蒸留水を加え、吸光度を測定する。DNS法を用いる場合は、1%CMC基質液に酵素液を加え、一定時間酵素反応を行わせたのち、煮沸などによって酵素反応を停止する。この反応液にジニトロサリチル酸を加えて、5分間煮沸し、冷却後吸光度を測定する。
【0021】
本発明において特に好ましいセルラーゼは、以下より選択される一または複数の加水分解酵素を含む。
【0022】
(I)配列番号1に示すアミノ酸配列を含むポリペプチド、または配列番号1に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド;
(IV)配列番号4に示すアミノ酸配列を含むポリペプチド、または配列番号4に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号4に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド;ならびに
(VI)配列番号6に示すアミノ酸配列を含むポリペプチド、または配列番号6に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号6に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド。
【0023】
本発明においてさらに好ましいセルラーゼは、以下より選択される一または複数の加水分解酵素を含む。
【0024】
(Ia)配列番号1に示すアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(IVa)配列番号4に示すアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
(VIa)配列番号6に示すアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【0025】
なお、本明細書において、上記(I)〜(VI)に示される一または複数の加水分解酵素を「セルラーゼ」と呼ぶ場合がある。
【0026】
本発明のセルラーゼは、以下の特性を有する。
(1)基質特異性
本発明のセルラーゼは、β−グルカン、可溶性セルロース(CMセルロース)、リン酸膨張セルロース、結晶性セルロース、キシラン、マンナン、ラミナリン、パラニトロフェニルセロビオシド、パラニトロフェニルグルコシド、カードラン、デキストラン、ムタン、アラビノキシラン、キチン、ガラクタン、ガラクトマンナン、プルラン、キシログルカン、ろ紙を基質とするが、これらに限定されない。好ましくは、少なくともβ−グルカン、可溶性セルロース、結晶性セルロース、リン酸膨張セルロース、およびキシランに対して酵素活性を有するに対して活性を有する。
【0027】
特に、上記(I)の加水分解酵素は、β−グルカン、可溶性セルロース(CMセルロース)、リン酸膨張セルロース、結晶性セルロース、キシラン、パラニトロフェニルセロビオシド、パラニトロフェニルグルコシドなどの基質に対して活性を有する。
【0028】
また、上記(IV)の加水分解酵素は、β−グルカン、可溶性セルロース(CMセルロース)、リン酸膨張セルロース、結晶性セルロース、キシラン、パラニトロフェニルセロビオシドなどの基質に対して活性を有する。
【0029】
さらに、上記(VI)の加水分解酵素は、β−グルカン、可溶性セルロース(CMセルロース)、リン酸膨張セルロース、結晶性セルロース、キシランなどの基質に対して活性を有する。
【0030】
通常、細菌由来のエンド型セルラーゼは、結晶性セルロースやリン酸膨張セルロースに対して活性を示さない。したがって、本発明のセルラーゼが備える基質特異性はユニークな性質であるといえる。
【0031】
下記実施例にて詳述するように、これらのセルラーゼのCMセルロースに対する活性は、今日工業利用されている一般的なセルラーゼ(例えば、Trichoderma virideのエンド型セルラーゼ)(Kayoko Hirayama et al.,Biosci.Biotechnol.Biochem.,74(8),1690−1686,2010)の1.5〜6倍、好ましくは2〜4倍である。
【0032】
(2)反応温度範囲
本発明のセルラーゼは、5〜90℃、好ましくは10〜80℃の範囲に、最適活性温度を有する。
【0033】
特に、下記実施例にて詳述するとおり、上記(I)および(VI)の加水分解酵素は、5〜90℃、好ましくは10〜80℃の範囲に最適活性温度を有し、上記(IV)の加水分解酵素は、45〜65℃、好ましくはおよそ60℃に最適活性温度を有する。
【0034】
(3)pH範囲
本発明のセルラーゼは、pH2〜11、好ましくはpH3〜10の範囲に、最適活性pHを有する。
【0035】
特に、下記実施例にて詳述するとおり、上記(I)の加水分解酵素は、pH3以上、好ましくはpH4〜11の範囲に最適活性pHを有する。また、上記(IV)の加水分解酵素は、pH3.5〜9の範囲、好ましくはおよそpH4に最適活性pHを有する。さらに、上記(VI)の加水分解酵素は、pH2〜10.5、好ましくはpH3〜9の範囲に最適活性pHを有する。
【0036】
(4)耐熱性
本発明のセルラーゼは、50〜80℃、好ましくは50〜70℃の温度範囲の熱処理に対して、安定性を有する。「安定性」とは、熱処理に対して活性を完全に消失しないことを意味し、必ずしも、熱処理に対して、処理前の活性の100%を維持することを意味しない。
【0037】
特に、下記実施例にて詳述するとおり、上記(I)の加水分解酵素は、70℃、30分間以内の熱処理に対してほとんど活性を失うことなく、安定である。また、上記(VI)の加水分解酵素は、70℃、10分間未満の熱処理に対して高い活性を保持し、安定である。
【0038】
(5)有機溶媒耐性
本発明のセルラーゼは、0〜80%(v/v)、好ましくは0〜50%(v/v)、さらに好ましくは0〜25%(v/v)の有機溶媒の存在下にて、活性を維持しうる。ここで「有機溶媒」とは、トルエン、アセトン、クロロホルム、ブタノール、ヘキサン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタジオール、1−ヘキサノール、メタノール、2−プロパノール、トリエチレングリコール、ジメチルホルムアミド、1,4−ジオキサン(これらに限定されない)から選択される一または複数の有機溶媒を意味する。
【0039】
特に、下記実施例にて詳述するとおり、上記(I)の加水分解酵素は、トルエン、クロロホルム、ヘキサンまたはDMSOの存在下にて、高い活性を維持する。また、上記(IV)の加水分解酵素は、ヘキサンの存在下にて、高い活性を維持する。さらに、上記(VI)の加水分解酵素は、トルエン、アセトン、クロロホルム、またはヘキサンの存在下にて、高い活性を維持する。
【0040】
本発明のセルラーゼは、有機溶媒の存在下において高い活性を維持することができ、有機溶媒存在下でセルラーゼ処理が必要な状況(例えば、糖脂肪酸エステルの合成などのファインケミカルへの応用など)において極めて有用である。
【0041】
(6)エタノール耐性
本発明のセルラーゼは、0〜70%(v/v)、0〜60%(v/v)、好ましくは、0〜50%(v/v)、さらに好ましくは、0〜30%(v/v)のエタノールの存在下において、活性を維持しうる。
【0042】
特に、下記実施例にて詳述するとおり、上記(I)の加水分解酵素は、50%(v/v)のエタノールの存在下においても、高い活性を維持する。また、上記(VI)の加水分解酵素は、およそ30%(v/v)以下のエタノールの存在下において、高い活性を維持する。さらに、上記(IV)の加水分解酵素は、およそ15%(v/v)以下のエタノールの存在下において、高い活性を維持する。
【0043】
本発明のセルラーゼは、エタノールの存在下において高い活性を維持することができ、バイオマスの糖化処理とアルコール発酵処理を同時に行うことができ、極めて有用である。
【0044】
(7)NaCl耐性
本発明のセルラーゼは、0〜25%(v/v)の塩存在下にて、活性を維持しうる。
特に、下記実施例にて詳述するとおり、上記(IV)および(VI)の加水分解酵素は、25%(v/v)以下の塩存在下にて、高い活性を維持する。
【0045】
本発明のセルラーゼは、塩存在下において高い活性を維持することができ、塩濃度が高い状況下でセルラーゼ処理が必要な状況(例えば、酸やアルカリ処理した木質系バイオマスを中和処理した後の糖化処理など)において極めて有用である。
【0046】
(8)組み合わせによる相乗効果
上記(I)〜(VI)の加水分解酵素は、二種以上を組み合わせて用いることによって、セルラーゼ活性を相乗的に増強させることができる。「二種以上」とは、上記(I)〜(VI)の加水分解酵素から選択される2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、および6つを意味する。加水分解酵素を組み合わせて用いることによって、単独で加水分解酵素を用いた場合と比べて、およそ2〜50倍のセルラーゼ活性を得ることができる。
【0047】
(9)基質の分解様式
本発明のセルラーゼは、基質をグルコースやオリゴ糖に分解することできる。
特に、下記実施例にて詳述するとおり、上記(I)および(VI)の加水分解酵素は、セロトリオース(C3)を分解できる最少単位(分解最小単位)とする。また、上記(IV)の加水分解酵素は、セロテトラオース(C4)を分解最小単位とする。
【0048】
さらに、本発明のセルラーゼは、トランスグリコレーション活性を有する。特に、下記実施例にて詳述するとおり、上記(I)および(VI)の加水分解酵素は、そのトランスグリコレーション活性により、3糖や4糖と反応させた場合に、それ以上の鎖長のオリゴ糖を生産する事ができる。
【0049】
本発明において、上記ポリペプチドはSK20−1T株の培養物または培養上清より精製または粗精製された形態であっても良いし、下記で詳述する上記ポリペプチドを発現する遺伝子組換え形質転換体の培養物または培養上清より精製または粗精製された形態であっても良い。培養物または培養上清からの上記ポリペプチドの精製または粗精製は、タンパク質精製に一般的に用いられる手法、例えば、硫酸アンモニウムもしくはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンもしくは陽イオン交換クロマトグラフィー、逆相高速液体クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、電気泳動などの技術を適宜用いて行うことができる。あるいは、上記ポリペプチドは化学合成(ペプチド合成)されたものであっても良い。
【0050】
本発明において、上記ポリペプチドは、固相に固定化されていても良い。固相としては例えば、ポリアクリルアミドゲル、ポリスチレン樹脂、多孔性ガラス、金属酸化物などが挙げられる(特にこれらに限定されない)。上記ポリペプチドを固相に固定することによって、連続反復使用が可能となる点において有利である。
【0051】
なお、上記(I)〜(III)の加水分解酵素は、アミノ酸配列の類似性および疎水性クラスター分析より同じ酵素ファミリーに属する。また、上記(V)および(VI)の加水分解酵素は、アミノ酸配列の類似性および疎水性クラスター分析より上記ファミリーとは別の酵素ファミリーに属する。同じ酵素ファミリーに属する加水分解酵素は、基質特異性、反応温度範囲、pH範囲、耐熱性、有機溶媒耐性、エタノール耐性、NaCl耐性、組み合わせによる相乗効果、基質の分解様式などの特性において、相互に類似する特性を有し得る。したがって、上記(II)および(III)の加水分解酵素の特性は、上記(I)の加水分解酵素の特性と類似または同一であり得る。また、上記(V)の加水分解酵素の特性は、上記(VI)の加水分解酵素の特性と類似または同一であり得る。
【0052】
また本発明は、上記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。上記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、それぞれ以下の(i)〜(vi)塩基配列より選択される。
【0053】
上記(I)のポリペプチドをコードする塩基配列:
(i)配列番号7で表される塩基配列;配列番号7で表される塩基配列において1から数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつセルラーゼ活性を有するポリペプチドコードする塩基配列;配列番号7で表される塩基配列に相補的な配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなり、かつセルラーゼ活性を有するポリペプチドコードする塩基配列;または配列番号7で表される塩基配列と少なくとも90%の同一性を有する塩基配列。
【0054】
上記(II)のポリペプチドをコードする塩基配列:
(ii)配列番号8で表される塩基配列;配列番号8で表される塩基配列において1から数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつセルラーゼ活性を有するポリペプチドコードする塩基配列;配列番号8で表される塩基配列に相補的な配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなり、かつセルラーゼ活性を有するポリペプチドコードする塩基配列;または配列番号8で表される塩基配列と少なくとも90%の同一性を有する塩基配列。
【0055】
上記(III)のポリペプチドをコードする塩基配列:
(iii)配列番号9で表される塩基配列;配列番号9で表される塩基配列において1から数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつセルラーゼ活性を有するポリペプチドコードする塩基配列;配列番号9で表される塩基配列に相補的な配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなり、かつセルラーゼ活性を有するポリペプチドコードする塩基配列;または配列番号9で表される塩基配列と少なくとも90%の同一性を有する塩基配列。
【0056】
上記(IV)のポリペプチドをコードする塩基配列:
(iv)配列番号10で表される塩基配列;配列番号10で表される塩基配列において1から数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつセルラーゼ活性を有するポリペプチドコードする塩基配列;配列番号10で表される塩基配列に相補的な配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなり、かつセルラーゼ活性を有するポリペプチドコードする塩基配列;または配列番号10で表される塩基配列と少なくとも90%の同一性を有する塩基配列。
【0057】
上記(V)のポリペプチドをコードする塩基配列:
(v)配列番号11で表される塩基配列;配列番号11で表される塩基配列において1から数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつセルラーゼ活性を有するポリペプチドコードする塩基配列;配列番号11で表される塩基配列に相補的な配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなり、かつセルラーゼ活性を有するポリペプチドコードする塩基配列;または配列番号11で表される塩基配列と少なくとも90%の同一性を有する塩基配列。
【0058】
上記(VI)のポリペプチドをコードする塩基配列:
(vi)配列番号12で表される塩基配列;配列番号12で表される塩基配列において1から数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつセルラーゼ活性を有するポリペプチドコードする塩基配列;配列番号12で表される塩基配列に相補的な配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなり、かつセルラーゼ活性を有するポリペプチドコードする塩基配列;または配列番号12で表される塩基配列と少なくとも90%の同一性を有する塩基配列。
【0059】
なお、上記塩基配列について記載される「1もしくは数個」とは、特には限定されないが、例えば、50個以内、好ましくは20個以内、さらに好ましくは10個以内である。
【0060】
また、「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいい、例えば、2〜6×SSC(1×SSCの組成:0.15M NaCl,0.015M クエン酸ナトリウム,pH7.0)および0.1〜0.5%SDSを含有する溶液中42〜55℃にてハイブリダイズを行い、0.1〜0.2×SSCおよび0.1〜0.5%SDSを含有する溶液中55〜65℃にて洗浄を行う条件をいう。
【0061】
さらに、上記塩基配列について記載される「少なくとも90%の同一性」とは、当業者に周知の方法、配列解析ソフトウェア等(例えばBLAST(Basic Local Alignment Search Tool at the National Center for Biological Information(米国国立生物学情報センターの基本ローカルアラインメント検索ツール))等(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータ))を用いて計算したときに、90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上の同一性を示すことを意味する。
【0062】
「セルラーゼ活性」とは、上に定義するとおりである。
上記塩基配列には、天然変異体も含まれる。天然変異体の具体例としては、SNP(一塩基多型)等の多型に基づく変異体、スプライス変異体、遺伝暗号の縮重に基づく変異体等が挙げられる。
【0063】
また上記塩基配列は、下記で詳述する形質転換される宿主生物のコドン頻度に従って、改変されていても良い。
【0064】
また本発明は、上記ポリヌクレオチドを含む発現ベクターに関する。
本発明の発現ベクターを適当な宿主細胞に導入することによって、上記ポリヌクレオチドにコードされる加水分解酵素を発現させることが可能である。
【0065】
本発明の発現ベクターは、当業者に周知である遺伝子工学的手法を用いて作製することができる。すなわち、当業者に公知である一般的な遺伝子導入および発現用のベクターに、上記ポリヌクレオチドを組み込んで作製することができる。本発明の発現ベクターに用いることができるベクターとしては、プラスミド、ファージ、ウイルス等、宿主細胞において複製可能である限り特に限定されないが、例えば、pBR322、pBR325、pUC118、pUC119、pKC30、pCFM536などの大腸菌プラスミド、pUB110などの枯草菌プラスミド、pG−1、YEp13、YCp50などの酵母プラスミド、λgt110、λZAPIIなどのファージのDNA、およびレトロウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンビスウイルス、センダイウイルス、SV40、免疫不全症ウイルス(HIV)などのDNAウイルスまたはRNAウイルスが挙げられる。ベクターには、上記ポリヌクレオチドより選択される1種または複数種(例えば、2種、3種、4種またはそれ以上)を含めることができる。
【0066】
また、ベクターには、上記ポリヌクレオチドの他に、宿主細胞における複製を可能とする複製起点、および形質転換体を同定する選択マーカー、さらに、好ましくは、宿主細胞由来の適切な転写または翻訳制御配列が、所望により上記ポリヌクレオチドに連結されて含まれ得る。制御配列の例には、転写プロモーター、オペレーター、またはエンハンサー、mRNAリボソーム結合部位、ならびに転写および翻訳開始および終結を調節する適切な配列が含まれる。用いることができるプロモーターとしては、宿主細胞内にて遺伝子発現を駆動できる限り、特に限定されず、例えばT3プロモーター、T7プロモーター、U6プロモーター、H1プロモーターなどのPolIIIプロモーターなど、当業者に公知であるプロモーターを適宜使用することができる。選択マーカーとしては、通常使用されるものを常法により用いることができ、例えばアンピシリン、ブレオマイシン、ハイグロマイシン、ネオマイシン、ピューロマイシンなどの耐性遺伝子やウリジンやアルギニンなどの生合成遺伝子などが挙げられる。
【0067】
本発明はまた、上記発現ベクターを含む形質転換体に関する。
本発明の形質転換体は上記発現ベクターを宿主細胞に導入して形質転換することによって作製することができる。本発明の形質転換体は、上記ポリヌクレオチドを含む限り、特に限定されるものではなく、例えば、上記ポリヌクレオチドが、宿主細胞の染色体に組み込まれた形質転換体であることもできるし、あるいは、上記ポリヌクレオチドを含むベクターの形で含有する形質転換体であることもできる。また、上記ポリペプチドを発現している形質転換体であることもできるし、あるいは、上記ポリペプチドを発現していない形質転換体であることもできる。
【0068】
上記発現ベクターを宿主細胞に導入する方法としては、リン酸カルシウム法または塩化カルシウム/塩化ルビジウム法、エレクトロポレーション法、エレクトロインジェクション法、PEGなどの化学的な処理による方法、遺伝子銃などを用いる方法などが挙げられる。
【0069】
宿主細胞として用いることができるものとしては、E.coli、酵母(Saccharomyces cerevisiae)、SF9、SF21、COS1、COS7、CHO、HEK293など周知の細胞が挙げられる。
【0070】
上記発現ベクターが導入された形質転換体は、上記加水分解酵素を発現し得る。形質転換体の培養物を上記加水分解酵素として直接利用しても良いし、発現された加水分解酵素を、形質転換体の培養物より、タンパク質精製に用いられる公知の方法、例えば、遠心分離、硫安塩析、有機溶媒(エタノール、メタノール、アセトン等)による沈殿分離、イオン交換クロマトグラフィー、等電点クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、吸着カラムクロマトグラフィー、基質または抗体などを利用したアフィニティークロマトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー、精密ろ過、限外ろ過、逆浸透ろ過等の濾過処理など、を1つまたは複数組み合わせて用いて精製または粗精製して、利用することもできる。
【0071】
「培養物」には、培養上清、細胞破砕物、形質転換体ならびにそれらの凍結乾燥物およびそれらを固相(上に定義されるもの)に固定したものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
本発明はまた、上記ポリペプチドまたは上記形質転換体の培養物を洗剤成分として含む洗剤組成物に関する。当該洗剤組成物は固体または液体のどちらであっても良く、好ましくは液体である。
【0073】
本発明の洗剤組成物には、上記ポリペプチドまたは上記形質転換体の培養物を約0.001〜約10重量%の範囲で含めることができる。当該洗剤組成物には上記ポリペプチドまたは上記形質転換体の培養物に加えて、界面活性剤を含めることができる。当該洗剤組成物中、界面活性剤は約1〜約55重量%の範囲で含めることができる。界面活性剤はアニオン性、ノニオン性、カチオン性、両性または双性イオン性あるいはそれらの混合物を利用することができる。本発明において利用可能な界面活性剤としては、直鎖状アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルファーオレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル塩、天然脂肪酸のアルカリ金属塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルポリエチレングリコールエーテル、ノニルフェノールポリエチレングリコールエーテル、脂肪酸メチルエステルエトキシレート、スクロースまたはグルコースの脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、ポリエトキシル化アルキルグルコシドのエステルが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の洗剤組成物はさらに、当該分野で既知の他の洗剤成分、例えば、ビルダー、漂白剤、漂白活性剤、腐食防止剤、金属イオン封鎖剤、汚れ解離ポリマー、香料、他の酵素(プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼなど)、酵素安定剤、製剤化補助剤、蛍光増白剤、発泡促進剤等を含めることもできる。
【0074】
本発明はまた、上記ポリペプチド、上記形質転換体の培養物、または上記形質転換体の培養物を用いた、炭水化物含有原料の糖化方法に関する。
【0075】
「炭水化物含有原料」とは、単糖、オリゴ糖、または多糖などの任意の炭水化物、またはそれを含む生物由来材料である。炭水化物含有原料としては、特に限定されないが、植物や藻類が生産するセルロース系および/またはリグノセルロース系バイオマスが挙げられ、例えば、古紙、製材残材、木材、ふすま、麦わら、稲わら、もみがら、バガス、大豆粕、大豆おから、コーヒー粕、米ぬか、麦藁、コーンストーバー、コーンコブなどが挙げられる(これらに限定されない)。
【0076】
炭水化物含有原料の糖化は、公知の方法を用いて行うことができる。例えば、粗粉砕もしくは細断処理した、または酸もしくはアルカリ処理した炭水化物含有原料を、水性媒体中に懸濁し上記ポリペプチド、上記形質転換体、または上記形質転換体の培養物を加え、撹拌または振とうしながら加温することによって行うことができる。この方法において、反応液のpHおよび温度は、上記ポリペプチドが失活しない範囲内で適宜選択することができる。また、当該反応は、バッチ式で行っても、連続式で行ってもよい。上記方法により得られた炭水化物含有原料の糖化物には、グルコース、フルクトース、スクロースなどの糖類を含む。
【0077】
上記方法により得られた炭水化物含有原料の糖化物は、食品または飼料の原料として用いることができる。
【0078】
本発明はさらに、上記方法により得られた炭水化物含有原料の糖化物を発酵させることを含む、エタノールの製造方法に関する。糖化物の発酵は、公知の方法を用いて行うことができる。すなわち、上記方法により得られた炭水化物含有原料の糖化物を含めた培地中にて、アルコール発酵が可能な公知の微生物(例えば、酵母(Saccharomyces cerevisiaeなど)、細菌(Lactobacillus brevis,Clostridium,Thermoanaerobium brockii,Zymomonasなど))を培養することによって行うことができる。培地のpHおよび温度、培養時間は用いる微生物に応じて適宜選択することができる。培養終了後、培地を回収してエタノールを分離する。培地よりエタノールを分離する方法は、蒸留、浸透気化膜等の公知の方法が用いられるが、蒸留による方法が好ましい。次いで、分離したエタノールをさらに精製(エタノール精製法としては、公知の方法、例えば蒸留等を用いることができる)することによって、エタノールを得ることができる。上記のとおり、本発明のポリペプチドは、エタノールの存在下において高い活性を維持することができるために、本発明のエタノールの製造方法において、上記炭水化物含有原料を糖化する工程と、糖化物を発酵する工程は同時に行うことができる。
【実施例】
【0079】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【0080】
実施例1:新規セルラーゼのクローニング
<染色体DNAの調製とゲノムの解読>
サーモスポロスリックス・ハザケンシスSK20−1株(Thermosporothrix hazakensis)(JCM 16142T=ATCC BAA−1811T)をトリプトン・イーストエキス・ブロス(ISP1)培地(DIFCO社製)で50℃にて3日間振とう培養し、集菌したものに、TE緩衝液にて3回洗浄し、Tris−HCl緩衝液5mlに懸濁させ、アクロモペプチダーゼ(シグマ社製)2.5mg、ニワトリ卵白リゾチーム(シグマ社製)2.5mgを添加し、37℃で3時間放置した。その後、プロティナーゼK(シグマ社製)10Uと10%SDS溶液250μl添加して37℃で1日間放置した。フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール溶液(25:24:1)(ニッポンジーン社製)を等量添加し、攪拌後、遠心分離し、水層を回収した。この操作を中間層が無くなるまで繰り返し、得られた水層にRNase処理を行いエタノール沈殿させて、染色体DNAを40μg回収した。
【0081】
GS FLX 454 titanium(ロシュ社製)を用いて1/4プレート、4kbライブラリーのペアエンド法にてゲノム配列を解読した。ゲノム解読は株式会社マクロジェンに依頼した。その結果、総リードが227,774,565bpで100bp以上のコンティグが131個、スキャフォルドが11個、冗長度が32であり、ゲノムの99%以上が解読できた。
【0082】
<新規セルラーゼの検出とクローニング>
得られたゲノム配列をMiGAP(Microbial Genome Annotation Pipeline)(http://www.migap.org/)にて自動注釈を行った。ORFの検索はGlimmerを使用し、参照したデータベースはTrEMBL(2010.7.13)とNCBI RefSeq (2010.7.21)を選択し、Identityは30%以上、Coverageは50%以上に注釈を付加させた。また糖質加水分解酵素ファイリー(GH)の検索はCAZY (Carbohydrate−Active Enzymes database)(http://www.cazy.org/Glycoside−Hydrolases.html)にて行った。結果、6つのセルラーゼ(GH5−1,5−2,5−3,9,12−1,12−2)遺伝子の翻訳領域情報を得た。各セルラーゼ遺伝子の塩基配列および当該塩基配列のコードされるアミノ酸配列を図1〜6に示す。GH5−1,9および12−2遺伝子の翻訳領域情報を基に以下のプライマーを設計した。
【0083】
上記のプライマーのペアーを用いて、染色体DNAを鋳型にそれぞれ以下の組成とプログラムでPCRを行った。
【0084】
PCR反応カクテル
染色体DNA:0.5μl
0.2mMフォワードプライマー: 1μl
0.2mMリバースプライマー: 1μl
10×Taq緩衝液(タカラ社製):5μl
2.5mM dNTPs (タカラ社製):4μl
Taq (タカラ社製)1μl
イオン交換水 35.7μl
【0085】
PCR条件
95℃で2分間加熱後、95℃で30秒、55℃で30秒、72℃で2分間のサイクルを30回繰り返した。反応終了後、一度72℃で10分間加温後に、4℃に温度を下げた。
【0086】
得られた各PCR産物を1.5%アガロースゲル電気泳動に供し、それぞれのバンドをゲルから切り出し、QIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)を用いて切り出したDNAを、定法により精製した。各精製DNAをpBAD TOPO TA Expression Kit(インビトロジェン社製)を用いて、大腸菌(E.coli TOP10)に形質転換した。獲得した形質転換体それぞれ1株は0.5%CMセルロースを含むLBプレートにて画線培養して、37℃で18時間培養した。その後、0.2%コンゴーレッド溶液を寒天表面に薄く展開し、15分静置し、コンゴーレッド溶液を捨て、1MNaCl溶液を同様に展開して、20分間静置後、コロニーの周りに形成されるクリアゾーンによって、セルラーゼの発現を確認した。同様の作業をセルラーゼ遺伝子を組み込んでいないベクターを形質転換させた大腸菌についても行い、クリアゾーンを形成しない事を確認した。
【0087】
セルラーゼの発現が確認された各形質転換体を1mlLB培地(100mg/lアンピシリン含む)に接種して、37℃にて18時間前振とう培養を行った後、その培養液1mlを100mlLB培地(100mg/lアンピシリン含む)に添加し、濁度(OD660)が0.5になるまで振とう培養し、そこに20%L−アラビノース溶液を0.1ml添加し、再び4時間発現誘導培養した。培養後、集菌して、0.7%生理食塩水で3回洗浄した。この洗浄菌体を用いてNi−NTA Purification System(インビトロジェン社製)を用いて、そのマニュアルに従って発現させたそれぞれのセルラーゼを精製した。即ち洗浄菌体を8mlのNative Binding緩衝液に懸濁させ、8mgのニワトリ卵白リゾチーム(シグマ社製)を添加し、30分氷上で放置した。その後、超音波10秒し、10秒氷冷させる破砕処理を6回繰り返した。その後、15分、3000Gで遠心分離して上澄みを回収した。1.5mのNi−NTA Agaroseを付属のカラムに添加して、5分間自然沈降させて上澄みを取り除き、6mlの蒸留水で1回、6mlのNative Binding緩衝液で2回担体を洗浄した。その担体に8mlの細胞破砕液を添加して、60分間ゆっくりと振とうさせ、目的タンパク質を吸着させた。その後自然沈降によって上澄みを取り除き、8mlのNative Wash緩衝液にて4回洗浄した。そして、Native Elution緩衝液を8ml添加して最初の3mlを回収し、各精製セルラーゼ溶液を得た。
【0088】
実施例2:新規セルラーゼの特性解析
<基質特異性>
CMセルロース、微結晶性セルロース(wako社製)小麦β−グルカン(シグマ社製)、マンナン(シグマ社製)、ラミナリン(シグマ社製)、リン酸膨張セルロースをそれぞれ終濃度1%(w/v)になるように0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解した基質溶液0.9mLに適当な濃度に希釈した酵素溶液0.1mLを加え、50℃で60分間静置反応(結晶性セルロースは50℃で18時間振とうさせて反応させた。)した後、酵素活性を測定した。酵素活性の測定は以下の手法で行った。反応液にDNS(3,5−ジニトロサリチル酸)溶液1mLを加えて沸騰湯浴中で5分間熱処理した。熱処理後氷水中で冷却し、脱イオン水4mLを加え攪拌後、U1500スペクトロフォトメーター(日立社製)を用いて、535nmでの吸光度を測定した。なお、酵素1ユニットとは、1分間に1μmolのグルコースを遊離する量とした。
【0089】
使用したリン酸膨張セルロースは以下のようにして調整した。TOYOろ紙社製セルロースパウダー(100−200mesh)5gを85%リン酸(関東化学)100mlに懸濁し、室温で12時間膨潤させた後、遠心分離(10,000×g、15min)により上清を得た。この上清を500mlの蒸留水に加え非結晶性セルロース繊維を沈殿させ、遠心分離で集めた後0.05%の炭酸ナトリウム500mlに懸濁・中和し、遠心分離によって再び沈殿を集めた。この沈殿を500mlの蒸留水でさらに3回懸濁・洗浄し、最後に沈殿を100mlの10mMリン酸ナトリウム(pH7.0)に懸濁した。
【0090】
各種基質に対する酵素活性を図7に示す。
GH5−1,GH9およびGH12−2はいずれも、β−グルカン、CMセルロース、微結晶性セルロース、キシランに対して活性を示した。また、GH5−1は、パラニトロフェニルセロビオシドおよびパラニトロフェニルグルコシドに対しても活性を示し、GH9もパラニトロフェニルセロビオシドに対しても活性を示した。
【0091】
一般的な細菌由来エンド型のセルラーゼは結晶性セルロースやそれを酸により膨張させたリン酸膨張セルロースに対してはほとんど活性を示さないのに対して、GH5−1,GH9およびGH12−2はいずれも、両基質に対して活性を示した(TCLの結果も参照)。
【0092】
また、今日、一般的に工業利用されているTrichoderma virideのエンド型セルラーゼのCMセルロースに対する活性が約50U/mgであることが知られている。GH5−1,GH9およびGH12−2では、その2〜4倍の活性が確認された。
【0093】
<最適反応温度>
基質1%(w/v)CMセルロースおよび適当な濃度に希釈した酵素溶液0.1mLを0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)に加えて、反応温度を10−90℃(10℃間隔)で反応させた後、上記<基質特異性>に記載した通り酵素活性を測定した。それぞれの最高活性を示した温度での値を100%とした相対活性で示した。(それぞれの100%活性はGH5−1:210U/mg;GH9:88U/mg;GH12−2:193U/mg)。
【0094】
結果を図8に示す。
GH5−1は10〜80℃にて50%以上の活性を示し、活性温度範囲が非常に広いことが示された。GH12−2もGH5−1と同様に、非常に広い活性温度範囲を示した。一方、GH9は60℃付近に至適温度を有することが明らかとなった。
【0095】
<最適反応pH>
基質1%(w/v)CMセルロースおよび適当な濃度に希釈した酵素溶液0.1mLを、各0.1Mの緩衝液(グリシン-塩酸緩衝液pH2.0、pH3、クエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液pH4、pH5、リン酸緩衝液pH6.0、pH7.0、トリス塩酸緩衝液pH8.0、pH9.0、グリシン水酸化ナトリウムpH10、及びリン酸水酸化ナトリウム緩衝液pH11)に加えて、50℃、60分間の反応させた後、上記<基質特異性>に記載した通り酵素活性を測定した。それぞれの最大活性時を示したpHの値を100%とした相対活性で示した(それぞれの100%活性はGH5−1:212U/mg;GH9:110U/mg;GH12−2:177U/mg)。
【0096】
結果を図9に示す。
GH5−1およびGH12−2はpH2〜11にて活性が観察され、非常に広い活性pH範囲を有することが明らかとなった。一方、GH9はpH4に至適pHを有することが明らかとなった。
【0097】
<温度安定性>
適当な濃度に希釈した各酵素液を0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)中30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃及び90℃の各温度下で、10−30分間熱処理した後、残存活性を1%(w/v)CMセルロースを用いて測定した。熱に対して未処理の活性を100%とした残存活性で示した。(それぞれの100%活性はGH5−1:252U/mg;GH9:103U/mg;GH12−2:222U/mg)。
【0098】
結果を図10に示す。
GH5−1は70℃、30分間の熱処理によっても、ほとんど失活せず、優れた耐熱性を有することが明らかとなった。一方、GH9は70℃、10分間の熱処理によって失活し、耐熱性をほとんど有さないことが明らかとなった。GH12−2もGH5−1と同様に、非常に広い活性温度範囲を示した。一方、GH9は60℃付近に至適温度を有することが明らかとなった。
【0099】
<各種有機溶媒耐性>
0.1%(w/v)CMセルロースを含む25%(v/v)トルエン(関東化学社製)、アセトン(関東化学社製)、クロロホルム(関東化学社製)、ブタノール(関東化学社製)、TE飽和フェノール(ニッポンジーン社製)、ヘキサン(関東化学社製)、DMSO(Wako社製)をそれぞれ含む0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)を基質溶液とし、適当な濃度に希釈した各酵素液と50℃にて60分間反応させ、上記<基質特異性>に記載した通り酵素活性を測定した。有機溶媒を含まない基質溶液を用いた測定値を100%とした相対活性で示した。(それぞれの100%活性はGH5−1:218U/mg;GH9:80U/mg;GH12−2:201U/mg)。
【0100】
結果を図11に示す。
GH5−1およびGH12−2は、多くの有機溶媒中で活性を維持していた。一方、GH9はヘキサンを除き、高い活性は見られなかった。
【0101】
<エタノール耐性>
0.1%(w/v)CMセルロースと1,3,5,10,20,30,50%(v/v)エタノール(関東化学社製)をそれぞれ含む0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)を基質溶液とし、適当な濃度に希釈した各酵素液と50℃にて60分間反応させ、上記<基質特異性>に記載した通り酵素活性を測定した。エタノールを含まない基質溶液を用いた測定値を100%とした相対活性で示した。(それぞれの100%活性はGH5−1:202U/mg;GH9:75U/mg;GH12−2:180U/mg)。
【0102】
結果を図12に示す。
GH5−1およびGH12−2は、エタノール高濃度存在下でも活性を維持した。
【0103】
<NaCl耐性>
0.1%(w/v)CMセルロースと1,2,3,4,5M NaClをそれぞれ含む0.1Mリン酸緩衝液を基質溶液(pH7.0)とし、適当な濃度に希釈した各酵素液と50℃にて60分間反応させ、上記<基質特異性>に記載した通り酵素活性を測定した。NaClを含まない基質溶液を用いた測定値を100%とした相対活性で示した。(それぞれの100%活性はGH5−1:198U/mg;GH9:83U/mg;GH12−2:180U/mg)。
【0104】
結果を図13に示す。
GH9およびGH12−2は、5M NaCl(約25%(w/v))の存在下にて50%以上の相対活性を示し、非常に耐塩性の強いセルラーゼであることが明らかとなった。
【0105】
<組み合わせによる相乗効果>
ワットマンNo.1ろ紙を0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解した基質溶液を用意し、そこに各精製セルラーゼのタンパク質濃度を107μg/mlになるように調整したものを単一酵素試験においてはそれぞれ0.03ml、2種混合試験(GH5−1+GH9;GH5−1+GH12−2;GH9+GH12−2の組み合わせ)においては各酵素を0.015ml(合計0.03ml)、3種混合試験(GH5−1+GH9+GH12−2)においては各酵素を0.01ml(合計0.03ml)を添加して、50℃にて60分間反応させ、上記<基質特異性>に記載した通り酵素活性を測定した。なお、混合酵素の理論値は、それぞれの単一酵素の実測値の和を組み合わせた酵素の数で除した値である。また、混合酵素の相乗効果の値は、混合酵素の実測値を理論値で除した値である。
【0106】
結果を図14に示す。
GH5−1、GH9およびGH12−2の各酵素は、2種および3種と組み合わせて用いることによって、酵素活性が相乗的に向上することが明らかとなった。
【0107】
<TLCによる分解特性試験>
CMセルロース、微結晶性セルロース(wako社製)、ろ紙(ワットマンNo.1)小麦β−グルカン、リン酸膨張セルロース、セロビオース(焼津水産工業社製)、セロトリオース(焼津水産工業社製)、セロテトラオース(焼津水産工業社製)、セロペンタオース(焼津水産工業社製)をそれぞれ終濃度1%(w/v)になるように0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解した基質溶液0.9mLに適当な濃度に希釈した酵素溶液0.1mLを加え、50℃で60分間静置反応(結晶性セルロース及びろ紙は50℃で18時間振とうさせて反応させた。)した後、その上澄み20μlを薄層プレート;TLC Silica gel 60(メルク社製)にスポットして展開溶液クロロホルム:酢酸:水(6:7:1)に浸して分解産物を解析した。
【0108】
結果を図15−1および図15−2に示す。
GH5−1およびGH12−2はともにセロトリオース(C3)が分解最少単位であった。結晶性、酸膨張セルロース、ろ紙及びグルカンの分解産物はともにセロビオースがメインで検出された。GH5−1のみグルコースが検出されなかった。
一方、GH9はセロテトラオースが分解最少単位であり、酸膨張セルロース、ろ紙及びグルカンの分解産物はともにセロテトラオースがメインで検出された。
【0109】
また、GH5−1およびGH12−2はともにトランスグリコレーション活性も示した。3糖や4糖と反応させた場合に、トランスグリコレーション活性によって、それ以上の鎖長のオリゴ糖を生産する事ができた。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明により、サーモスポロスリックス・ハザケンシス(Thermosporothrix hazakensis)SK20−1T株(JCM 16142T=ATCC BAA−1881T)に由来する新規セルラーゼを提供することができる。当該セルラーゼは、各種有機溶媒耐性、エタノール耐性、NaCl耐性などユニークな特性を備え、糖脂肪酸エステルの合成などのファインケミカルへの応用やバイオマスの糖化・アルコール発酵処理などの分野において貢献することが期待される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともβ−グルカン、可溶性セルロース、結晶性セルロース、リン酸膨張セルロース、およびキシランに対して酵素活性を有する、サーモスポロスリックス・ハザケンシス(Thermosporothrix hazakensis)に由来するセルラーゼ。
【請求項2】
サーモスポロスリックス・ハザケンシスが、サーモスポロスリックス・ハザケンシスSK20−1T株(JCM 16142T=ATCC BAA−1881T)である、請求項1に記載のセルラーゼ。
【請求項3】
少なくとも10〜80℃の温度条件下において、酵素活性を保持する、請求項1または2に記載のセルラーゼ。
【請求項4】
少なくともpH2〜11のpH条件下において、酵素活性を保持する、請求項1または2に記載のセルラーゼ。
【請求項5】
少なくとも0〜25%(v/v)の有機溶媒の存在下において、酵素活性を保持する、請求項1または2に記載のセルラーゼ。
【請求項6】
有機溶媒がトルエン、アセトン、クロロホルム、ブタノール、ヘキサンおよびDMSOからなる群から選択される、請求項5に記載のセルラーゼ。
【請求項7】
少なくとも0〜50%(v/v)のエタノールの存在下において、酵素活性を保持する、請求項1または2に記載のセルラーゼ。
【請求項8】
少なくとも0〜25%(v/v)の塩存在下において、酵素活性を保持する、請求項1または2に記載のセルラーゼ。
【請求項9】
以下のアミノ酸配列で示されるポリペプチドを含む加水分解酵素からなる群から選択される一または複数の加水分解酵素を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のセルラーゼ:
(I)配列番号1に示すアミノ酸配列を含むポリペプチド、または配列番号1に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド;
(II)配列番号2に示すアミノ酸配列を含むポリペプチドまたは配列番号2に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号2に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド;
(III)配列番号3に示すアミノ酸配列を含むポリペプチドまたは配列番号3に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号3に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド;
(IV)配列番号4に示すアミノ酸配列を含むポリペプチドまたは配列番号4に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号4に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド;
(V)配列番号5に示すアミノ酸配列を含むポリペプチドまたは配列番号5に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号5に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド;ならびに
(VI)配列番号6に示すアミノ酸配列を含むポリペプチドまたは配列番号6に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号6に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のセルラーゼをコードするポリヌクレオチド。
【請求項11】
請求項10に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項12】
請求項11に記載の発現ベクターにより形質転換された形質転換体。
【請求項13】
請求項11に記載の形質転換体の培養によって得られる培養物。
【請求項14】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のセルラーゼまたは請求項13に記載の培養物を含む、洗剤組成物。
【請求項15】
炭水化物含有原料を請求項1〜9のいずれか1項に記載のセルラーゼ、請求項12に記載の形質転換体または請求項13に記載の培養物で処理することを含む、炭水化物含有原料の糖化方法。
【請求項16】
炭水化物含有原料を請求項1〜9のいずれか1項に記載のセルラーゼ、請求項12に記載の形質転換体または請求項13に記載の培養物で処理することを含む、食品または飼料の製造方法。
【請求項17】
(i)炭水化物含有原料を請求項1〜9のいずれか1項に記載のセルラーゼ、請求項12に記載の形質転換体または請求項13に記載の培養物で処理すること;ならびに
(ii)工程(i)で得られた処理物を発酵することを含む、エタノールの製造方法。
【請求項1】
少なくともβ−グルカン、可溶性セルロース、結晶性セルロース、リン酸膨張セルロース、およびキシランに対して酵素活性を有する、サーモスポロスリックス・ハザケンシス(Thermosporothrix hazakensis)に由来するセルラーゼ。
【請求項2】
サーモスポロスリックス・ハザケンシスが、サーモスポロスリックス・ハザケンシスSK20−1T株(JCM 16142T=ATCC BAA−1881T)である、請求項1に記載のセルラーゼ。
【請求項3】
少なくとも10〜80℃の温度条件下において、酵素活性を保持する、請求項1または2に記載のセルラーゼ。
【請求項4】
少なくともpH2〜11のpH条件下において、酵素活性を保持する、請求項1または2に記載のセルラーゼ。
【請求項5】
少なくとも0〜25%(v/v)の有機溶媒の存在下において、酵素活性を保持する、請求項1または2に記載のセルラーゼ。
【請求項6】
有機溶媒がトルエン、アセトン、クロロホルム、ブタノール、ヘキサンおよびDMSOからなる群から選択される、請求項5に記載のセルラーゼ。
【請求項7】
少なくとも0〜50%(v/v)のエタノールの存在下において、酵素活性を保持する、請求項1または2に記載のセルラーゼ。
【請求項8】
少なくとも0〜25%(v/v)の塩存在下において、酵素活性を保持する、請求項1または2に記載のセルラーゼ。
【請求項9】
以下のアミノ酸配列で示されるポリペプチドを含む加水分解酵素からなる群から選択される一または複数の加水分解酵素を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のセルラーゼ:
(I)配列番号1に示すアミノ酸配列を含むポリペプチド、または配列番号1に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号1に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド;
(II)配列番号2に示すアミノ酸配列を含むポリペプチドまたは配列番号2に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号2に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド;
(III)配列番号3に示すアミノ酸配列を含むポリペプチドまたは配列番号3に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号3に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド;
(IV)配列番号4に示すアミノ酸配列を含むポリペプチドまたは配列番号4に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号4に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド;
(V)配列番号5に示すアミノ酸配列を含むポリペプチドまたは配列番号5に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号5に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド;ならびに
(VI)配列番号6に示すアミノ酸配列を含むポリペプチドまたは配列番号6に示すアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド、または配列番号6に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、セルラーゼ活性を有するポリペプチド。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のセルラーゼをコードするポリヌクレオチド。
【請求項11】
請求項10に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項12】
請求項11に記載の発現ベクターにより形質転換された形質転換体。
【請求項13】
請求項11に記載の形質転換体の培養によって得られる培養物。
【請求項14】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のセルラーゼまたは請求項13に記載の培養物を含む、洗剤組成物。
【請求項15】
炭水化物含有原料を請求項1〜9のいずれか1項に記載のセルラーゼ、請求項12に記載の形質転換体または請求項13に記載の培養物で処理することを含む、炭水化物含有原料の糖化方法。
【請求項16】
炭水化物含有原料を請求項1〜9のいずれか1項に記載のセルラーゼ、請求項12に記載の形質転換体または請求項13に記載の培養物で処理することを含む、食品または飼料の製造方法。
【請求項17】
(i)炭水化物含有原料を請求項1〜9のいずれか1項に記載のセルラーゼ、請求項12に記載の形質転換体または請求項13に記載の培養物で処理すること;ならびに
(ii)工程(i)で得られた処理物を発酵することを含む、エタノールの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4−1】
【図4−2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15−1】
【図15−2】
【図2】
【図3】
【図4−1】
【図4−2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15−1】
【図15−2】
【公開番号】特開2012−249561(P2012−249561A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123754(P2011−123754)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(503040413)株式会社県南衛生工業 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(503040413)株式会社県南衛生工業 (1)
【Fターム(参考)】
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