説明

ザルトプロフェン含有徐放性錠剤およびその製造方法

本発明は、ザルトプロフェンおよび結合剤を含有する顆粒が、親水性重合体を含むマトリックス中に散布されており、希釈剤が前記顆粒またはマトリックス中に存在するザルトプロフェン含有徐放性錠剤、およびその製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、ザルトプロフェン含有徐放性錠剤およびその製造方法に係り、より具体的には、体内で安定的に徐放性を維持することが可能な、親水性重合体を含むマトリックス状のザルトプロフェン含有徐放性錠剤に関する。
【0002】
〔背景技術〕
ザルトプロフェン(Zaltoprofen)は、非ステロイド性消炎鎮痛剤であって、手術または外傷後の慢性炎症にも卓越した効果を持つ。ザルトプロフェンは、成人を基準として通常約80mgの用量で1日3回服用することを必要とする。したがって、患者の便利性と服薬順応度を改善し且つ胃腸管の副作用を減少させるために、1日只1回の服用が可能な1日1回投与剤形が好ましい。
【0003】
活性成分の薬物を1日1回の投与ができるように放出制御するための経口用徐放性伝達システムは、高分子重合体からなるマトリックス状に製造することができる。活性成分は、マトリックスの分解およびマトリックス中の活性成分の拡散によって胃腸管内で徐々に放出される。このようなマトリックスシステムを含む徐放性薬物投薬形態は、通常、圧縮錠剤として製造される。
【0004】
薬物の徐放化のために、高分子重合体の中でも親水性重合体のマトリックスを使用する技術は公知になっている。特に、親水性重合体の中でもヒドロキシプロピルメチルセルロースマトリックスを含む徐放性錠剤が、当該技術分野に広く知られている。
【0005】
米国特許第3,065,143号には、徐放性錠剤の製造において、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む特定の親水性ゴムを使用することが開示されている。
【0006】
一方、米国特許第3,458,622号には、ポビドンおよびカルボマーの組み合わせを使用する徐放性錠剤の製造法が開示されている。米国特許第4,389,393号には、高分子量ヒドロキシプロピルメチルセルロースマトリックスを基本とする徐放性治療学的組成物が開示されている。
【0007】
ところが、従来ではザルトプロフェンの1日1回投与を可能にする徐放性錠剤については全く報告されたことがない。
【0008】
〔発明の開示〕
〔技術的課題〕
そこで、本発明の目的は、ザルトプロフェンの徐放性錠剤を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、ザルトプロフェンの徐放性錠剤の製造方法を提供することにある。
【0010】
〔技術的解決方法〕
上記目的を達成するために、本発明のある観点によれば、ザルトプロフェンおよび結合剤を含有する顆粒が、親水性重合体を含むマトリックス中に散布されており、希釈剤が前記顆粒またはマトリックス中に存在するザルトプロフェン含有徐放性錠剤を提供する。
【0011】
前記徐放性錠剤中に含有される親水性中和体、結合剤および希釈剤は、前記ザルトプロフェン100重量部に対して親水性重合体5〜60重量部、結合剤1〜30重量部、希釈剤5〜60重量部で存在してもよい。
【0012】
前記マトリックスの構成成分である親水性重合体は、5〜100,000cpsの粘度を持つことが好ましい。
【0013】
前記親水性重合体としては、例えばアカシアゴム、トラガカントゴム、ローカストビーンガム、グアーガム、カラヤゴム、寒天、ペクチン、カラギーナン、可溶性または不溶性アルギン酸塩類、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシポリメチレン、ゼラチン、カゼイン、ゼイン、ベントナイト、天然または合成陰イオン系または非イオン系親水性ゴム、改質されたセルロース系物質、およびタンパク質系物質よりなる群から選択できるが、本発明がこれに限定されない。
【0014】
前記顆粒を形成する結合剤は、ポビドン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、および腸溶性重合体よりなる群から選択できる。
【0015】
前記徐放性錠剤中の顆粒またはマトリックス中に分布する希釈剤は、ラクトース、デキストリン、澱粉、結晶セルロース、腸溶性重合体、リン酸一水素カルシウム、炭酸カルシウム、糖類、および二酸化ケイ素よりなる群から選択できる。
【0016】
前記結合剤または前記希釈剤として使用できる腸溶性重合体は、Eudragit L、Eudragit S、Eudragit L−100−55−Rohm Pharma、Eudragit L30D−Rohm Pharma、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートよりなる群から選択できる。
【0017】
本発明の他の観点によれば、ザルトプロフェンおよび結合剤を含有する顆粒を製造する段階と、前記顆粒に親水性重合体および薬学的に許容される添加剤を付加し、混合して混合物を打錠する段階とを含み、前記顆粒を製造する段階または打錠する段階で希釈剤を付加して顆粒を製造し或いは打錠することを特徴とする、ザルトプロフェン含有徐放性錠剤の製造方法を提供する。
【0018】
〔発明を実施するための最善の様態〕
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0019】
本発明は、優れた消炎作用および鎮痛作用を示すザルトプロフェンを1日1回投与ができるようにして、患者の服薬順応度および便利性を増加させることが可能なザルトプロフェン含有徐放性錠剤に関する。本発明者らは、従来の徐放性錠剤の製造に主に用いられた親水性重合体のみでは溶出率を期待することができないなど、所望の一定の速度のザルトプロフェン放出を獲得することが可能な徐放性錠剤を確認することができなくてザルトプロフェンの放出制御を容易にするために、結合剤および希釈剤を徐放性錠剤に導入することになった。また、ザルトプロフェンは、難溶性薬物であって、微細粉末状の性状に打錠するときにキャッピングなどの打錠障害が発生するので、薬物の顆粒を製造して流れ性を改善することにより打錠を容易にした。
【0020】
したがって、本発明によって提供されるザルトプロフェン含有徐放性錠剤は、ザルトプロフェンおよび結合剤を含有する顆粒が、親水性重合体を含むマトリックス中に散布されており、希釈剤が前記顆粒またはマトリックス中に均質に存在することを特徴とする。このような徐放性錠剤は、親水性重合体の他に、顆粒中に存在する結合剤、および顆粒またはマトリックス中に存在する希釈剤によって所望の速度の徐放性が安定的に得られる。
【0021】
前記徐放性錠剤のそれぞれの構成成分は、ザルトプロフェン100重量部に対して親水性重合体5〜60重量部、結合剤1〜30重量部、希釈剤5〜60重量部で存在することが好ましい。親水性重合体および結合剤の含量が前記範囲より大きい場合には、活性成分の放出があまり遅くて所望の血中濃度に到達し難しい。親水性重合体および結合剤の含量が前記範囲より少ない場合には、1日1回の投与を可能にする徐放性の効果を期待することが難しい。また、希釈剤の場合は、希釈剤の含量が前記範囲より高い場合、所望の徐放性より迅速に活性成分が放出されるという問題点がある。
【0022】
前記親水性重合体としては、5〜100,000cpsの粘度を持つ親水性重合体が使用できる。前記粘度が前記範囲より高ければ、薬物の放出があまり遅くなって所望の速度で薬物の放出が行われることが不可能である。
【0023】
本発明の徐放性錠剤のマトリックスを構成する親水性重合体として使用することに適した親水性重合体は、例えば、アカシアゴム、トラガカントゴム、ローカストビーンガム、グアーガム、カラヤゴム、寒天、ペクチン、カラギーナン、可溶性または不溶性アルギン酸塩類、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシポリメチレン、ゼラチン、カゼイン、ゼイン、ベントナイト、天然または合成陰イオン系または非イオン系親水性ゴム、改質されたセルロース系物質、およびタンパク質系物質よりなる群から選択できるが、本発明がこれに限定されない。
【0024】
前記親水性重合体の中でも、好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、MethocelTM、Dow Chemical)またはカルボマー(例えば、CarbopolTM、Noveon、Inc.)が使用できる。
【0025】
前記親水性重合体は、活性成分100重量部に対して5〜60重量部、好ましくは15〜40重量部で含有できる。
【0026】
前記徐放性錠剤において、ザルトプロフェンは、結合剤と共に顆粒の形態で徐放性錠剤中に存在し、ザルトプロフェンを結合剤と共に顆粒化して含有させることは打錠工程の容易性だけでなく、薬物の溶解を容易にする役割を果たすことにより、活性成分の放出制御を容易にするためのものである。顆粒化に使用される結合剤は、経口用固形製剤の製剤化に通常用いられる結合剤が使用でき、例えばポビドン、ゼラチン、またはヒドロキシプロピルセルロースが使用できるが、これに限定されない。
【0027】
このような結合剤は、活性成分100重量部に対して1〜30重量部、好ましくは2〜15重量部で含有できる。
【0028】
本発明の徐放性錠剤において、親水性重合体および結合剤の他に必須的に含まれる希釈剤は、活性成分を含有する顆粒に含まれてもよく、親水性重合体マトリックス中に均質に分散して存在してもよい。本発明において、希釈剤は、薬物の拡散または親水性重合体の分解に影響を与えながら希釈剤の物性に応じて薬物の徐放性が安定的に制御できる。
【0029】
前記希釈剤としては、薬学分野で一般に使用されるものはいずれも使用可能であり、例えばラクトース、デキストリン、澱粉、結晶セルロース(例えば、AvicelTM)、リン酸一水素カルシウム、炭酸カルシウム、糖類、および二酸化ケイ素よりなる群から選択されたものを使用することができるが、これに限定されない。
【0030】
このような希釈剤は、活性成分100重量部に対して5〜60重量部、好ましくは10〜30重量部で含有できる。
【0031】
また、前記徐放性錠剤は、結合剤または希釈剤して腸溶重合体を含有することができる。腸溶性重合体を結合剤または希釈剤として使用することにより、活性成分の放出時間および時間による放出率の制御が可能である。これらの腸溶性重合体は、活性成分100重量部に対して3〜30重量部、好ましくは5〜20重量部の濃度で本発明の徐放性錠剤中に存在できる。前記腸溶性重合体としては、pH約5.0以下では不溶性であり、pH5.0〜7.4の範囲で溶解する物質が使用される。このような腸溶性重合体は、pHによる溶解度の差異によって本発明の徐放性錠剤の放出時間および放出速度を制御することができる。
【0032】
前記腸溶重合体の例としては、例えばEudragit L、Eudragit S、Eudragit L−100−55−Rohm Pharma、Eudragit L30D−Rohm Pharmaを含んだアクリルラテックス分散系などのアクリル樹脂、例えばセルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレートおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートなどの他の重合体などが使用できる。その中で好ましい腸溶性重合体は、Eudragit L−100−55である。Eudragit L−100−55は、微細粉末または水溶性分散Eudragit L30Dであって、両方ともが有用である。この樹脂は、約pH5.5以上で溶解し易い。このような理由によって、小腸の主要部位における薬剤放出を増進させることに有利である。
【0033】
本発明の徐放性錠剤は、前記結合剤、親水性重合体、および希釈剤の他に、通常薬学的に適した添加剤を前記顆粒内またはマトリックス内に含むことができ、そのような添加剤としては、充填剤、潤滑剤、滑沢剤、および圧縮補助剤などがある。例えば、前記滑沢剤としてはステアリン酸の亜鉛またはマグネシウム塩などが使用できる。
【0034】
本発明の徐放性錠剤は、必要に応じて、購入し易い多数のコーティングシステムのいずれか一つを用いて被覆させることができる。錠剤をコートさせることにより、薬剤の味を遮蔽させ、呑め易くなり、ある場合には投与剤形の外観を改善させる。このようなコーティングは、当該技術分野で既に公知になっている糖衣、または時々剤形化に使用される数多くの重合体性フィルムコーティング剤のいずれか一つからなる。
【0035】
フィルムコーティング剤の代表的な例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、アクリル樹脂、ポビドン、ポリビニルジエチルアミノアセテート、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、アクリルラテックス乳剤、エチルセルロースラテックス乳剤、ファルマコート(信越化学社)、またはOpadry(カラーコン社)などがある。
【0036】
本発明の徐放性錠剤は、徐放性錠剤に含有される親水性重合体、結合剤、希釈剤の選択および含量などによって活性成分の放出特性を制御することができる。例えば、親水性重合体の粘度が増加すると、薬物の放出速度が低下し、希釈剤が顆粒に含まれる場合、初期放出速度が増加するおそれがあり、腸溶性重合体を希釈剤または結合剤として使用する場合、薬物の放出時間をさらに長時間維持させることが容易であり、希釈剤の含量が増加すると放出速度がさらに速くなる。したがって、本発明の徐放性錠剤は、使用される親水性重合体、結合剤および希釈剤の種類および含量などによって薬物の放出特性を具体的に変化させることができる。
【0037】
前記本発明の徐放性錠剤は、ザルトプロフェンおよび結合剤を含有する顆粒を製造する段階と、前記顆粒に親水性重合体および薬学的に許容される添加剤を付加し、混合して混合物を打錠する段階とを含み、前記顆粒を製造する段階または打錠する段階で希釈剤を付加して顆粒を製造または打錠することを特徴とする方法によって製造できる。
【0038】
前記方法で顆粒を製造する段階は、活性成分であるザルトプロフェン、結合剤、選択的には希釈剤、および薬学分野で顆粒の製造に使用される通常の添加剤を用いて、薬学分野に公知になっている通常の顆粒の製造方法によって製造することができる。こうして生成された顆粒は、親水性重合体、選択的に希釈剤、および滑沢剤などの薬学分野で顆粒の製造に使用される添加剤を加えて混合し打錠することにより、マトリックス状の徐放性錠剤を製造することができる。
【0039】
〔発明の様態〕
以下、本発明を実施例によってさらに詳しく説明する。ところが、これらの実施例は本発明を説明するためのもので、本発明を制限するものではない。
【0040】
〔実施例1〜2〕
ポビドンを20%エタノール水溶液に溶解させて作った結合剤溶液を、活性成分であるザルトプロフェン粉末に加えて30メッシュを用いて顆粒化した後、40℃で2時間乾燥させた。獲得された顆粒を親水性重合体であるヒドロキシプロピルメチルセルロース、結晶セルロース、二酸化ケイ素、およびステアリン酸マグネシウムと共に混合し打錠して徐放性錠剤を製造した。徐放性錠剤を構成するそれぞれの成分の含量を表1に示した。
【0041】
〔実施例3〕
顆粒の製造後に使用した結晶セルロースを活性成分の顆粒の製造時に含ませる以外は実施例2と同一の方法で徐放性錠剤を製造した。徐放性錠剤を構成するそれぞれの成分の含量を表1に示した。
【0042】
【表1】

【0043】
〔実施例4〕
ザルトプロフェンと結晶セルロースとを混合した後、Eudragit S100をエタノール溶液に完全に溶解させた結合剤を用いて実施例1と同一の方式で顆粒を製造した。獲得された顆粒をヒドロキシプロピルメチルセルロース(100cps)、結晶セルロース、二酸化ケイ素、およびステアリン酸マグネシウムを混合し、混合物を打錠して徐放性錠剤を製造した。徐放性錠剤を構成するそれぞれの成分の含量を表2に示した。
【0044】
【表2】

【0045】
〔実施例5〕
ザルトプロフェンと結晶セルロースとを混合した後、ポビドン結合剤にポリエチレングリコール400を添加した結合剤を用いて、実施例1と同一の方式で顆粒を製造した。製造された顆粒をカルボマー、結晶セルロース、二酸化ケイ素、およびステアリン酸マグネシウムと共に混合し、混合物を打錠して徐放性錠剤を製造した。徐放性錠剤を構成するそれぞれの成分の含量を表3に示した。
【0046】
〔実施例6〕
ザルトプロフェンと腸溶性重合体としてのEudragit L100−55と混合した後、ポビドン結合剤にポリエチレングリコール400を添加した結合剤を用いて、実施例1と同一の方式で顆粒を製造した。製造された顆粒をカルボマー、結晶セルロース、二酸化ケイ素、およびステアリン酸マグネシウムと共に混合し、混合物を打錠して徐放性錠剤を製造した。徐放性錠剤を構成するそれぞれの成分の含量を表3に示した。
【0047】
〔実施例7〕
実施例6とは異なり、活性成分であるザルトプロフェンと結晶セルロースとを混合し、結合剤としてEudragit L30Dの水溶性分散液を用いて、実施例1と同一の方式で顆粒を製造した。製造された顆粒をカルボマー、二酸化ケイ素およびステアリン酸マグネシウムと共に混合し、混合物を打錠して徐放性錠剤を製造した。徐放性錠剤を構成するそれぞれの成分の含量を表3に示した。
【0048】
【表3】

【0049】
〔実施例8〜10〕
活性成分であるザルトプロフェンおよび結晶セルロースと、腸溶重合体であるEudragit L100とを混合した後、ポビドン結合剤を用いて実施例1と同一の方式で顆粒を製造した。製造された顆粒をカルボマー、結晶セルロース、二酸化ケイ素、およびステアリン酸マグネシウムと共に混合し、混合物を打錠して実施例8〜10の徐放性錠剤を製造した。それぞれの徐放性錠剤を構成するそれぞれの成分の含量を表4に示した。
【0050】
【表4】

【0051】
〔実験例〕
1)試験方法
実施例1〜10で製造した徐放性錠剤に対して溶出試験を行った。
【0052】
実施例1〜10で製造されたそれぞれの徐放性錠剤を次の条件下でパドル法に従って溶出試験を行った。これらの徐放性製剤からの活性成分であるザルトプロフェンの溶出率を時間の経過に応じて測定した。
【0053】
溶出試験に用いられた試験条件は次の通りである。
【0054】
溶出液:pH6.5リン酸塩緩衝溶液(0.05Mリン酸2水素カリウム、0.05Mリン酸1水素ナトリウム溶液、およびリン酸でpH6.5に調整して製造)
溶出液の温度:37℃±0.5℃
溶出液量:900mL
攪拌速度:100rpm
サンプル採取:サンプル採取時間毎に溶出液を取ってフィルターで濾過して検液とし、溶出液を取った後には新規の溶出液を同量補正した。
【0055】
前記溶出試験から時間毎に獲得された検液から活性成分の溶出率を分析した。溶出率の分析は下記の条件で液体クロマトグラフィー法によって行った。
【0056】
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:240nm)
カラム:Capcell Pak(ODS、5μm、4×150mm、資生堂)
移動相:アセトニトリル:水:氷酢酸(300:200:1)
流量:1mL/分
2)試験結果
時間経過に伴う溶出率を試験した結果を、図1(実施例1〜3)、図2(実施例4)、図3(実施例5〜7)、および図4(実施例8〜10)に示した。
【0057】
図1〜4の時間による溶出率を考察すると、全般的に全ての徐放性錠剤が12時間〜24時間活性成分を持続的に放出する特性を示し、本発明の徐放性錠剤が所望の1日1回投与に適した徐放性錠剤であることを確認することができた。
【0058】
また、実施例によって異なる具体的な成分の差異による溶出パターンを分析すると、次の通りであった。
【0059】
図1によれば、溶出試験の結果、4000cps粘度のヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いて製造された実施例1の錠剤、および100cps粘度のヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いて製造された実施例2の錠剤は、粘度の差によって24時間に40%の溶出率と80%の溶出率との差異を確認することができた。また、希釈剤としての結晶セルロースを活性成分の顆粒の製造時に混合して製造した以外は実施例2と同一の方法で製造した実施例3の錠剤は、実施例2の錠剤に比べて初期溶出率が増加した。
【0060】
したがって、図1に示した試験結果より、親水性重合体の粘度が高くなると、活性成分の放出速度がさらに遅くなり、希釈剤が顆粒中に存在する場合、初期溶出率が増加するおそれがあることが分かる。また、同一の徐放性錠剤であっても、工程段階に応じて溶出速度が制御可能なザルトプロフェン徐放性錠剤を製造することができることが分かる。
【0061】
図3によれば、実施例5〜7で製造されたザルトプロフェン徐放性錠剤の溶出試験結果、活性成分の顆粒化段階で希釈剤として結晶セルロースを用いた実施例5では12時間に90%以上の溶出率を示し、腸溶性重合剤を希釈剤として用いた実施例6では24時間に100%溶出率を示すことが確認された。実施例7の徐放性錠剤は、水溶性分散液として提供されるEudragit L30Dを結合剤として使用するにつれて、18時間に100%溶出率を示した。よって、それぞれの結合剤および希釈剤の種類に応じて放出の遅延および制御が容易であることを確認することができた。
【0062】
実施例8〜10の溶出試験結果を示した図4によれば、親水性重合体の含量が減少し且つ希釈剤の含量が増加するにつれて、薬物の放出速度が増加するということを確認することができた。
【0063】
前記試験結果より、本発明の徐放性錠剤は、含有される親水性重合体、結合剤および希釈剤の種類の選択および含量に応じて溶出特性が容易に調節できることが分かる。
【0064】
〔産業上の利用可能性〕
上述したように、本発明によれば、活性成分として1日1回投与できるように持続的な放出が可能であるうえ、含有される親水性重合体、結合剤および希釈剤の種類の選択および含量に応じて溶出特性が容易に調節できるザルトプロフェン含有徐放性製剤、およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は本発明の実施例1〜3で製造した徐放性錠剤の溶出試験を行い、時間経過に伴う溶出率を測定して示すグラフである。
【図2】図2は本発明の実施例4で製造した徐放性錠剤の溶出試験を行い、時間経過に伴う溶出率を測定して示すグラフである。
【図3】図3は本発明の実施例5〜7で製造した徐放性錠剤の溶出試験を行い、時間経過に伴う溶出率を測定して示すグラフである。
【図4】図4は本発明の実施例8〜10で製造した徐放性錠剤の溶出試験を行い、時間経過に伴う溶出率を測定して示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ザルトプロフェンおよび結合剤を含有する顆粒が、親水性重合体を含むマトリックス中に散布されており、希釈剤が前記顆粒またはマトリックス中に存在することを特徴とする、ザルトプロフェン含有徐放性錠剤。
【請求項2】
前記ザルトプロフェン100重量部に対して親水性重合体5〜60重量部、結合剤1〜30重量部、および希釈剤5〜60重量部が含有されることを特徴とする、請求項1に記載の徐放性錠剤。
【請求項3】
前記親水性重合体は、5〜100,000cpsの粘度を持つことを特徴とする、請求項1に記載の徐放性錠剤。
【請求項4】
前記親水性重合体としては、アカシアゴム、トラガカントゴム、ローカストビーンガム、グアーガム、カラヤゴム、寒天、ペクチン、カラギーナン、可溶性または不溶性アルギン酸塩類、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシポリメチレン、ゼラチン、カゼイン、ゼイン、ベントナイト、天然または合成陰イオン系または非イオン系親水性ゴム、改質されたセルロース系物質、およびタンパク質系物質よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の徐放性錠剤。
【請求項5】
前記結合剤は、ポビドン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、および腸溶性重合体よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の徐放性錠剤。
【請求項6】
前記希釈剤は、ラクトース、デキストリン、澱粉、結晶セルロース、腸溶性重合体、リン酸一水素カルシウム、炭酸カルシウム、糖類、および二酸化ケイ素よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の徐放性錠剤。
【請求項7】
前記腸溶性重合体は、Eudragit L、Eudragit S、Eudragit L−100−55−Rohm Pharma、Eudragit L30D−Rohm Pharma、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートよりなる群から選択されることを特徴とする、請求項4または5に記載の徐放性錠剤。
【請求項8】
ザルトプロフェンおよび結合剤を含有する顆粒を製造する段階と、
前記顆粒に親水性中和体および薬学的に許容される添加剤を付加し、混合して打錠する段階とを含み、
前記顆粒を製造する段階または打錠する段階で希釈剤を付加して顆粒を製造し或いは打錠することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のザルトプロフェン含有徐放性錠剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−524652(P2009−524652A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552235(P2008−552235)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際出願番号】PCT/KR2007/000441
【国際公開番号】WO2007/086694
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(508064724)シージェイ チェイルジェダン コーポレイション (32)
【Fターム(参考)】