説明

シアヌル酸誘導体化合物、その製法、それを有効成分とする酸化防止剤、およびそれらを含有する樹脂組成物

【課題】 比較的高分子でかつ融点が低く、また低揮発性で樹脂に対しての相溶性に優れた酸化防止剤として有用な新規化合物、その製法、それらを有効成分とする酸化防止剤およびそれらを含有した樹脂組成物、それら新規酸化防止剤とフェノール系化合物とをともに含有した樹脂組成物の提供。
【解決手段】 下記一般式(1)
【化1】


(式中、Rは炭素数4〜24の直鎖または分岐したアルキル基からなる群よりそれぞれ独立して選択された基であり、n、n、nは1〜4の整数で相互に同一でも異なっていても良い)で示されるシアヌル酸誘導体化合物、その製法、それを有効成分とする酸化防止剤、およびそれらを含有する樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は新規シアヌル酸誘導体化合物、その製法、それらを有効成分として含有する酸化防止剤、それら酸化防止剤を配合した樹脂組成物、及び新規シアヌル酸誘導体化合物とフェノール系化合物とから成る酸化防止剤を含有する樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】今日に至るまで、プラスチックは、その軽量性、加工性、電気絶縁性、耐水耐薬品性、機械的強度などの優位性から、電気器具、自動車部品、機械部品、玩具、家庭用品など、様々な分野で広範囲に活用されており、また市場における樹脂への要求性能が高まるにつれ様々な樹脂が開発・製造され、工業資材としても、生活必需品としても現代社会では必要不可欠のものとなった。現在さかんに利用されている主なプラスチックは40種近く存在し、大別すると、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリイミド等の熱硬化性樹脂と、塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、AS樹脂、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、フッ素樹脂、ポリアミド、酢酸エステル樹脂等の熱可塑性樹脂とに分けられ、個々が他に無い特性を有していることから、その特性に合わせて多岐多様にわたり応用されている。
【0003】しかしながらこれらの樹脂類は、有機系材料を基盤として形成されている高分子材料であるため、空気中に放置しておくだけで酸素やオゾン、または熱や光などの外部因子の影響を受けて自動酸化され過酸化物を生じる。ここで生じた過酸化物が、樹脂自体の強度の低下、ひび割れなどの物理的特性の低下、着色、電気絶縁性の低下などを引き起こすことが知られており、樹脂の耐久寿命を縮める要因となる。特に、過酸化物の生成は、加工後実用時よりも加工時の熱、紫外線、水などによって促進され、ここで生成した過酸化物は、それ自身が分解して周辺部を変質させたり、活性に富んだラジカルを発生させ、更に他の部分に過酸化物をつくったり変質させたりする。
【0004】従ってこの連鎖的におこる樹脂の品質劣化を禁止・抑制するため、ラジカルを不活性化して作用が広がらないようにする物質を樹脂に添加する必要性が生じる。このラジカル連鎖禁止作用を有する添加剤として、アルキルフェノールなどのモノフェノール類、アルキレンビスフェノールなどの多価フェノール類などフェノール系酸化防止剤が用いられている。また、発生してしまった過酸化物に直接作用して分解させてしまう過酸化物分解作用を有する添加剤として、有機亜リン酸エステルなどのリン系酸化防止剤、またはアルキルフェノールチオエーテル、β,β′−チオプロピオン酸エステルなどの硫黄系酸化防止剤が使用されている。その他に、酸化作用を促進する樹脂内の重金属を捕捉するために、フェノール・ニッケル錯塩のようなキレート剤や、過酸化物分解作用も有する芳香族アミンなどが用いられているが、熱分解による着色が問題となるため、あまり利用されていない。
【0005】上述の酸化防止剤の使用方法は、それぞれ単独で使用するよりも二種類以上の使用により高い酸化防止効果が得られるため、通常ラジカル連鎖禁止剤と過酸化物分解剤とを併用して樹脂に配合される。また、カーボンブラックや紫外線吸収剤、光安定剤との併用によっても高い相乗効果が得られる。添加対象となる高分子は樹脂類に限らず、有機高分子からなるゴム類や繊維類も、天然、合成を問わずその効果に応じて混合併用して添加されている。これらの酸化防止剤を含む樹脂類やゴム類は、各種成形品、繊維類、塗料、接着剤などとして使用される。
【0006】これら酸化防止剤自体に要求される性能条件として、加工時における低揮発性や樹脂との高い相溶性が重要視されるが、酸化防止剤のうち低分子量の酸化防止剤は、比較的樹脂との相溶性には優れているものの、加工時における揮発性が高くその効果が大きく失われてしまう。例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)は良く用いられている酸化防止剤の一つであるが、揮発性が高いため酸化防止効果を十分示さない場合がある。一方、高分子量のものは融点が高いため揮発問題は生じないが、樹脂との相溶性に問題がある。高い酸化防止効果を有し、低揮発性及び樹脂に対する高相溶性の両条件を十分に満足させることが可能な酸化防止剤の開発検討が急務となっているのが現状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明の目的は、比較的高分子でかつ融点が低く、また低揮発性で樹脂に対しての相溶性に優れた酸化防止剤として有用な新規化合物、その製法、それらを有効成分とする酸化防止剤およびそれらを含有する樹脂組成物、それら新規酸化防止剤とフェノール系化合物とから成る酸化防止剤をともに含有した樹脂組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の第一は、下記一般式(1)
【化5】


(式中、Rは炭素数4〜24の直鎖または分岐したアルキル基からなる群よりそれぞれ独立して選択された基であり、n、n、nは1〜4の整数で相互に同一でも異なっていても良い)で示されるシアヌル酸誘導体化合物に関する。本発明の第二は、請求項1における一般式(1)において、n、n、nがともに1であることを特徴とする請求項1記載のシアヌル酸誘導体化合物に関する。本発明の第三は、下記一般式(2)
【化6】


(式中、n、n、nは1〜4の整数で相互に同一でも異なっていても良い)で示されるトリアリルシアヌレートと一般式(3)
【化7】


(式中、Rは炭素数4〜24の直鎖または分岐したアルキル基からなる群よりそれぞれ独立して選択された基である)で示されるアルキルチオールとを反応させることを特徴とする下記一般式(1)
【化8】


(式中、Rは炭素数4〜24の直鎖または分岐したアルキル基からなる群よりそれぞれ独立して選択された基であり、n、n、nは1〜4の整数で相互に同一でも異なっていても良い)で示されるシアヌル酸誘導体化合物の製造法に関する。本発明の第四は、請求項3において、一般式(2)のn、n、nがともに1であるトリアリルシアヌレートと一般式(3)で示されるアルキルチオールとを反応させることを特徴とする一般式(1)における、n、n、nがともに1であるシアヌル酸誘導体化合物の製造法に関する。本発明の第五は、請求項1記載のシアヌル酸誘導体化合物を有効成分として含有する酸化防止剤に関する。本発明の第六は、請求項2記載のシアヌル酸誘導体化合物を有効成分として含有する酸化防止剤に関する。本発明の第七は、請求項5記載の酸化防止剤を含有する樹脂組成物に関する。本発明の第八は、請求項6記載の酸化防止剤を含有する樹脂組成物に関する。本発明の第九は、請求項1記載のシアヌル酸誘導体化合物とフェノール系化合物とから成る酸化防止剤を含有する樹脂組成物に関する。本発明の第十は、請求項2記載のシアヌル酸誘導体化合物とフェノール系化合物とからなる酸化防止剤を含有する樹脂組成物に関する。
【0009】本発明における新規シアヌル酸誘導体化合物は、比較的高分子化合物であるが、融点及び揮発性が低いために、これら化合物が添加される様々な樹脂に対して相溶性に優れた酸化防止剤と成り得る。
【0010】前記一般式(1)のシアヌル酸誘導体化合物におけるRで示される炭素数4〜24のアルキル基は、直鎖状のものとしてn−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル、n−ノナデシル、n−イコシル、n−ヘニコシル、n−ドコシル、n−トリコシル、n−テトラコシルなどが挙げられ、分岐状のものとして1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、tert−ブチル、イソブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,1−ジメチルプロピル、3,3−ジメチルプロピル、tert−オクチル、tert−ノニル、tert−ドデシル、tert−テトラデシル、tert−ヘキサデシルなどが挙げられ、一般式(1)におけるn、n、nがともに1である化合物を具体的に例示すると、トリス(3−n−ブチルチオプロピル)シアヌレート、トリス(3−n−ペンチルチオプロピル)シアヌレート、トリス(3−n−ヘキシルチオプロピル)シアヌレート、トリス(3−n−ヘプチルチオプロピル)シアヌレート、トリス(3−n−オクチルチオプロピル)シアヌレート、トリス(3−n−ノニルチオプロピル)シアヌレート、トリス(3−n−デシルチオプロピル)シアヌレート、トリス(3−n−ウンデシルチオプロピル)シアヌレート、トリス(3−n−ドデシルチオプロピル)シアヌレート、トリス(3−n−トリデシルチオプロピル)シアヌレート、トリス(3−n−テトラデシルチオプロピル)シアヌレート、トリス(3−n−ペンタデシルチオプロピル)シアヌレート、トリス(3−n−ヘキサデシルチオプロピル)シアヌレート、トリス(3−n−ヘプタデシルチオプロピル)シアヌレート、トリス(3−n−オクタデシルチオプロピル)シアヌレート、トリス(3−n−ノナデシルチオプロピル)シアヌレート、トリス(3−n−イコシルチオプロピル)シアヌレート、トリス(3−n−ヘニコシルチオプロピル)シアヌレート、トリス(3−n−ドコシルチオプロピル)シアヌレート、トリス(3−n−トリコシルチオプロピル)シアヌレート、トリス(3−n−テトラコシルチオプロピル)シアヌレート、トリス〔3−(1−メチルプロピルチオ)プロピル〕シアヌレート、トリス〔3−(2−メチルプロピルチオ)プロピル〕シアヌレート、トリス(3−tert−ブチルチオプロピル)シアヌレート、トリス(3−イソブチルチオプロピル)シアヌレート、トリス〔3−(2−メチルブチルチオ)プロピル〕シアヌレート、トリス〔3−(3−メチルブチルチオ)プロピル〕シアヌレート、トリス〔3−(1,1−ジメチルプロピルチオ)プロピル〕シアヌレート、トリス〔3−(3,3−ジメチルプロピルチオ)プロピル〕シアヌレート、トリス(3−tert−オクチルチオプロピル)シアヌレート、トリス(3−tert−ノニルチオプロピル)シアヌレート、トリス(3−tert−ドデシルチオプロピル)シアヌレート、トリス(3−tert−テトラデシルチオプロピル)シアヌレート、トリス(3−tert−ヘキサデシルチオプロピル)シアヌレートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0011】前記一般式(2)のトリ不飽和低級脂肪族シアヌレートは、塩基性条件下公知の化合物である塩化シアヌルと不飽和低級脂肪族アルコールとの反応により合成される。特にトリアリルシアヌレートは、塩基性条件下塩化シアヌルとアリルアルコールとの反応により製造される。この方法によれば、反応条件の設定が容易であり、かつ均一化合物が容易に得られるので好ましい。また、このトリアリルシアヌレートは容易に市販品としても入手し得る。
【0012】前記一般式(3)のアルキルチオールとしてはn−ブタンチオール、n−ペンタンチオール、n−ヘキサンチオール、n−ヘプタンチオール、n−オクタンチオール、n−ノナンチオール、n−デカンチオール、n−ウンデカンチオール、n−ドデカンチオール、n−トリデカンチオール、n−テトラデカンチオール、n−ペンタデカンチオール、n−ヘキサデカンチオール、n−ヘプタデカンチオール、n−オクタデカンチオール、n−ノナデカンチオール、n−イコサンチオール、n−ヘニコサンチオール、n−ドコサンチオール、n−トリコサンチオール、n−テトラコサンチオール、1−メチル−1−プロパンチオール、2−メチル−1−プロパンチオール、tert−ブチルメルカプタン、2,2−ジメチル−1−エタンチオール、2−メチル−1−ブタンチオール、3−メチル−1−ブタンチオール、1,1−ジメチル−1−プロパンチオール、3,3−ジメチル−1−プロパンチオール、tert−オクチルメルカプタン、tert−ノニルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、tert−テトラデシルメルカプタン、tert−ヘキサデシルメルカプタンなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0013】請求項3および請求項4記載の反応は、溶媒中触媒存在下実施することが好ましいが、無溶媒で実施することもできる。反応温度は5〜120℃が好ましく、特に40〜80℃が好ましい。反応時間としては0.5〜48時間が好ましい。
【0014】上記反応溶媒としては、基質と反応しないものであればよく、例えばヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンまたはこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0015】上記触媒として、アゾ化合物や過酸化物が挙げられ、例えばアゾ化合物として2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2′−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2′−アゾビス(イソ酪酸)ジメチルエステル、4,4′−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、p−ブロムベンゼンジアゾニウムヒドロキシド、トリフェニルメチルアゾベンゼン;過酸化物としてm−クロロ過安息香酸、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、キュメンヒドロパーオキサイド、ジ−イソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、p−メンタンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジ−tert−ブチル−α−クミルパーオキサイド、ジ−α−クミルパーオキサイド、1,4−ビス〔(tert−ブチルパーオキシ)イソプロピル〕ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシオクトエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシネオデカエート、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ビス−(2−エチルヘキシル)パーオキシカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ビス(3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ビス(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルイソプロピルパーカーボネート、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、コハク酸パーオキサイド、その他テトラフェニルスクシノニトリルなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0016】請求項9および請求項10記載のフェノール系化合物として例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−n−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−イソブチルフェノール、2,6−ジシクロペンチル−4−メチルフェノール、2,6−ジオクタデシル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリシクロヘキシルフェノール、2,6−ジノニル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メトキシメチルフェノール、およびそれらの混合物;2,4−ジオクチルチオメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジドデシルチオメチル−4−ノニルフェノールおよびそれらの混合物;2,6−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシルオキシフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルステアレート、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)アジペートおよびそれらの混合物;2,4−ビス−オクチルメルカプト−6−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2−オクチルメルカプト−4,6−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2−オクチルメルカプト−4,6−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−1,2,3−トリアジン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルエチル)−1,3,5−トリアジン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)−ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン、1,3,5−トリス(3,5−ジシクロヘキシル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート等および2,2′−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)等ならびに1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,4−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,3,5,6−テトラメチルベンゼン、2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−フェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2−(α−メチルシクロヘキシル)−4,6−ジメチルフェノール、2,4−ジメチル−6−(1′−メチル−ウンデカ−1′−イル)−フェノール、2,4−ジメチル−6−(1′−メチル−トリデカ−1′−イル)−フェノール、2,4−ジオクチルチオメチル−6−メチルフェノール、2,4−ジオクチルチオメチル−6−エチルフェノール、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−アミルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−イソシアヌレート、2,2′−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−エチルフェノール)、2,2′−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2′−エチリデンビス(6−tert−ブチル−4−イソブチルフェノール)、4,4′−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4′−メチレンビス(6−tert−ブチル−2−メチルフェノール)、1,1−ビス(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、エチレングリコールビス〔3,3′−ビス(3′−tert−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)ブチレート〕、テトラキス〔メチレン−3−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタンなどが挙げられる。
【0017】本発明の一般式(1)のシアヌル酸誘導体化合物、または一般式(1)のシアヌル酸誘導体化合物とフェノール系化合物よりなる酸化防止剤を配合できる有機物質としては、各種天然樹脂、天然ゴム、合成樹脂、合成ゴム、石油類(鉱油、合成油、潤滑剤等)、紙などの固体状、油脂、石鹸などのワックス状、あるいは液状の有機物質を挙げることができる。合成樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリイミド等の熱硬化性樹脂、また塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、AS樹脂、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂、合成ゴムとしては、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ブタジエンブロック共重合体などが挙げられる。
【0018】本発明の一般式(1)のシアヌル酸誘導体化合物、または一般式(1)のシアヌル酸誘導体化合物とフェノール類とを樹脂等に添加することで有効な酸化防止効果が得られ品質劣化を防止できるが、従来公知の添加物をさらに含有しても良く、例えば、その他の酸化防止剤や光安定剤を併用することにより相乗的な効果が得られる。
【0019】本発明による酸化防止剤のほかに添加されても良い添加物としてりん系酸化防止剤、例えば、トリフェニルホスファイト、アルキルジフェニルホスファイト、ジアルキルフェニルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、トリ(ノニルフェニル)ホスファイト、トリ(ブトキシエチル)ホスファイト、トリ−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリドデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタンジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、3,9−ジ(2,4−ジ−tert−ブチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファ〔5,5〕ウンデカン、3,9−ジステアリルオキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファ〔5,5〕ウンデカン、3,9−ジ{2,6−ジ−tert−ブチル−4−〔2−(n−オクタデシルオキシカルボニル)エチル〕−フェノキシ}−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファ〔5,5〕ウンデカン、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4−ビス(ジフェニレン)ホスホナイトなどが挙げられる。
【0020】併用可能な光安定剤として例えば2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(5′−tert−ブチル−2′−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2′−ヒドロキシ−5′−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−2′−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3′−tert−ブチル−2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−4′−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3′,5′−ジ−tert−アミル−2′−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔3′−tert−ブチル−2′−ヒドロキシ−5′−(2′−オクチルオキシカルボニルエチルフェニル)〕−5−クロロベンゾトリアゾール等;4−ヒドロキシ−、4−メトキシ−、4−オクトキシ−、4−デシルオキシ−、4−ドデシルオキシ−、4−ベンジルオキシ−、4,2′,4′−トリヒドロキシ−、2′−ヒドロキシ−4,4′−ジメトキシ−または4−(2−エチルヘキシルオキシ)−2−ヒドロキシベンゾフェノン誘導体など;4−tert−ブチルフェニル サリシレート、フェニル サリシレート、オクチルフェニル サリシレート、ジベンゾイルレゾルシノール、ビス(4−tert−ブチルベンゾイルレゾルシノール)、2,4−ジ−tert−ブチルフェニルレゾルシノール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等;エチル α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、イソオクチル α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル α−カルボメトキシシンナメート、メチル α−シアノ−β−メチル−p−メトキシシンナメート等;ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)サクシネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アジペート等;4,4′−ジオクチルオキシオキザニリド、2,2′−ジエトキシオキシオキザニリド、2,2′−ジオクチルオキシ−5,5′−ジ−tert−ブチルオキザニリド、2,2′−ジドデシルオキシ−5,5′−ジ−tert−ブチルオキザニリド、2−エトキシ−2′−エチルオキザニリド、N,N′−ビス(3−ジメチルアミノプロピル)オキザニリド、2−エトキシ−5−tert−ブチル−2′−エトキシオキザニリド等;2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−プロピルオキシフェニル)−6−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0021】酸化防止剤の評価方法としては、ギヤー老化試験機(スガ試験機株式会社製、TG−216)による劣化時間(評価用サンプル全面の変色または落下)とした。
劣化時間測定条件;オーブン温度150℃ 空気置換回数5回/hr
【0022】
【実施例】以下実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はそれらによって限定されるものではない。
【0023】実施例1還流冷却器、還流脱水管、温度計、撹拌器を備えた500ml4口コルベンにn−ドデカンチオール64.2gと反応溶媒トルエン240mlを加え常圧で昇温し還流脱水を行った後、30℃まで冷却、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル1.0gを加え溶解させた。一方でトリアリルシアヌレート24.9gをトルエン40mlに溶解させた溶液を調整しておき、この溶液を前記コルベン内に2分間で滴下した。滴下終了後、50℃まで昇温させ、反応温度50℃を保持したまま常圧下で10時間攪拌した。反応終了後、トルエンを減圧留去し、再結晶精製により目的物であるトリス(3−n−ドデシルチオプロピル)シアヌレートの白色結晶80.9gを得た。この結晶の融点は47.6〜49.3℃であった。
赤外スペクトル:(KBr)cm−1 1577(−N=C=N−)
2955、2917、2849、 1468、1416(アルキル基)
【0024】実施例2実施例1で用いた反応触媒2,2′−アゾビスイソブチロニトリル1.0gをm−クロロ過安息香酸1.0gに代えて同様にn−ドデカンチオールとトリアリルシアヌレートを反応させた結果、目的物であるトリス(3−n−ドデシルチオプロピル)シアヌレートの白色結晶80.2gを得た。この結晶の融点は47.3〜49.5℃であった。
赤外スペクトル:(KBr)cm−1 1575(−N=C=N−)
2953、2920、2843 1465、1413(アルキル基)
【0025】実施例3実施例1で用いた反応触媒2,2′−アゾビスイソブチロニトリル1.0gをテトラフェニルスクシノニトリル1.0gに代えて同様にn−ドデカンチオールとトリアリルシアヌレートを反応させた結果、目的物であるトリス(3−n−ドデシルチオプロピル)シアヌレートの白色結晶80.3gを得た。この結晶の融点は47.2〜49.4℃であった。
赤外スペクトル:(KBr)cm−1 1576(−N=C=N−)
2953、2919、2846 1464、1415(アルキル基)
【0026】実施例4還流冷却器、還流脱水管、温度計、撹拌器を備えた500ml4口コルベンにn−オクタデカンチオール46.5gと反応溶媒トルエン135mlを加え常圧で昇温し還流脱水を行った後、30℃まで冷却、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル0.5gを加え溶解させた。一方でトリアリルシアヌレート12.5gをトルエン20mlに溶解させた溶液を調整しておき、この溶液を前記コルベン内に2分間で滴下した。滴下終了後、50℃まで昇温させ、反応温度50℃を保持したまま常圧下で15時間攪拌した。反応終了後、トルエンを減圧留去し、再結晶精製により目的物であるトリス(3−n−オクタデシルチオプロピル)シアヌレートの白色結晶53.0gを得た。この結晶の融点は69.1〜71.4℃であった。
赤外スペクトル:(KBr)cm−1 1578(−N=C=N−)
2957、2917、2846、 1466、1419(アルキル基)
【0027】実施例5実施例1で得られたシアヌル酸誘導体化合物トリス(3−n−ドデシルチオプロピル)シアヌレートをポリプロピレンに対して、0.094重量%添加したサンプルをA、実施例4で得られたシアヌル酸誘導体化合物トリス(3−n−オクタデシルチオプロピル)シアヌレートをポリプロピレンに対して、0.094重量%添加したサンプルをB;フェノール系酸化防止剤であるテトラキス〔メチレン−3−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタンをポリプロピレンに対して0.094重量%添加したサンプルをC(比較例);実施例1で得られたシアヌル酸誘導体化合物トリス(3−n−ドデシルチオプロピル)シアヌレートをポリプロピレンに対して0.060重量%と、フェノール系酸化防止剤としてテトラキス〔メチレン−3−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタンを0.034重量%混合添加したサンプルDをそれぞれ185℃で作製し、4種類の評価用サンプルを得、無添加ポリプロピレン品E(比較例)と比較評価した。以下に評価方法を示す。
【0028】実施例5で得られた評価用サンプルを150℃に保ったギヤー劣化試験機に置き、劣化時間(hr、評価用サンプル全面の変色または落下)によって評価した。その結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
サンプル 時間(hr)
A 216 B 216 C 120 D 600 E (無添加) 24
【0030】上記表1より、トリス(3−n−ドデシルチオプロピル)シアヌレートのみを添加したA及びテトラキス〔メチレン−3−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタンのみを添加したCよりも、トリス(3−n−ドデシルチオプロピル)シアヌレート、テトラキス〔メチレン−3−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン両者を添加したDのほうが、劣化速度が低下する結果になったことから、本発明であるシアヌル酸誘導体化合物は、フェノール系酸化防止剤テトラキス〔メチレン−3−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタンと混合併用すると、相乗効果があった。
【0031】
【発明の効果】本発明により新規なシアヌル酸誘導体化合物を提供できた。本発明により前記シアヌル酸誘導体化合物を含有する新規な酸化防止剤およびそれにより酸化防止された有機物質を提供できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記一般式(1)
【化1】


(式中、Rは炭素数4〜24の直鎖または分岐したアルキル基からなる群よりそれぞれ独立して選択された基であり、n、n、nは1〜4の整数で相互に同一でも異なっていても良い)で示されるシアヌル酸誘導体化合物。
【請求項2】 請求項1における一般式(1)において、n、n、nがともに1であることを特徴とする請求項1記載のシアヌル酸誘導体化合物。
【請求項3】 下記一般式(2)
【化2】


(式中、n、n、nは1〜4の整数で相互に同一でも異なっていても良い)で示されるトリアリルシアヌレートと一般式(3)
【化3】


(式中、Rは炭素数4〜24の直鎖または分岐したアルキル基からなる群よりそれぞれ独立して選択された基である)で示されるアルキルチオールとを反応させることを特徴とする下記一般式(1)
【化4】


(式中、Rは炭素数4〜24の直鎖または分岐したアルキル基からなる群よりそれぞれ独立して選択された基であり、n、n、nは1〜4の整数で相互に同一でも異なっていても良い)で示されるシアヌル酸誘導体化合物の製造法。
【請求項4】請求項3において、一般式(2)のn、n、nがともに1であるトリアリルシアヌレートと一般式(3)で示されるアルキルチオールとを反応させることを特徴とする一般式(1)における、n、n、nがともに1であるシアヌル酸誘導体化合物の製造法。
【請求項5】 請求項1記載のシアヌル酸誘導体化合物を有効成分として含有する酸化防止剤。
【請求項6】 請求項2記載のシアヌル酸誘導体化合物を有効成分として含有する酸化防止剤。
【請求項7】 請求項5記載の酸化防止剤を含有する樹脂組成物。
【請求項8】 請求項6記載の酸化防止剤を含有する樹脂組成物。
【請求項9】 請求項1記載のシアヌル酸誘導体化合物とフェノール系化合物とから成る酸化防止剤を含有する樹脂組成物。
【請求項10】 請求項2記載のシアヌル酸誘導体化合物とフェノール系化合物とからなる酸化防止剤を含有する樹脂組成物。

【公開番号】特開2003−55352(P2003−55352A)
【公開日】平成15年2月26日(2003.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−238359(P2001−238359)
【出願日】平成13年8月6日(2001.8.6)
【出願人】(394013644)ケミプロ化成株式会社 (63)
【Fターム(参考)】