説明

シアネート樹脂組成物、プリプレグ、積層板、プリント配線板、及び半導体装置

【課題】高いガラス転移温度、優れた耐半田耐熱性を維持しつつ、光遮蔽性に優れたシアネート樹脂組成物、及び、当該樹脂組成物を用いたプリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、並びに、半導体装置を提供する。
【解決手段】シアネート樹脂および下記式(1)で表される蛍光染料化合物を必須成分とすることを特徴とするシアネート樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シアネート樹脂組成物、プリプレグ、積層板、プリント配線板、及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高機能化等の要求に伴い、電子部品の高密度集積化、さらには高密度実装化が進んでおり、これらに使用される高密度実装対応のプリント配線板等は、従来にも増して小型化かつ高密度化が進んでいる。
しかし、プリント配線板を薄型化した場合には、実装信頼性の低下、プリント配線板の反りが大きくなるという問題が生じる。
そのため、プリント配線板の絶縁層に用いられる樹脂組成物の硬化物は、熱膨張率が低く、高いガラス転移温度を有するシアネート樹脂組成物を用いた検討がなされている(例えば、先行文献1)。
【0003】
一方、プリント配線板の最外層に用いられるソルダーレジストは、通常感光性樹脂(フォトレジスト)が用いられる(引用文献2)。
一般に、ソルダーレジストは、光硬化性の材料であるため、光透過性が高い。
そのため、プリント配線板製造時において、ソルダーレジストを積層体の両面に形成し、回路露出部と被覆部を形成するため、一方から光を照射する、光が透過して他方の面に形成されたソルダーレジストにまで光が照射され、他方の面のソルダーレジストの硬化が進む問題があった。このため他方の面のソルダーレジストは、写真法による、露光現像ができず、導体回路の露出部と被覆部を任意のパターンで形成することができない問題があった。
【0004】
上記問題を解決すべく、光遮蔽性物質をシアネート樹脂組成物に含有せしめて光の透過防止の役目をさせる方法が考えられている(例えば、引用文献3)。
【0005】
しかしながら、シアネート樹脂組成物は、光遮蔽物質を含むことによりプリント配線板材料としての性能低下が生じる問題があった。例えば、ジアミノスチルベン系染料、フルオレセイン、チオフラビン、エオシンを、シアネート樹脂組成物に添加した場合、シアネート樹脂組成物で、前記光遮蔽物質が、分離したり、構造が破壊され、光吸収能力が低下したりする問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−35728
【特許文献2】特開2009−258613
【特許文献3】特開2002−194226
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高いガラス転移温度、優れた耐半田耐熱性を維持しつつ、光遮蔽性に優れたシアネート樹脂組成物、及び、当該樹脂組成物を用いたプリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、並びに、半導体装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記[1]〜[8]項に記載の本発明により達成される。
[1]シアネート樹脂および下記式(1)で表される化合物を必須成分とすることを特徴とするシアネート樹脂組成物。
【化1】


(式中のR1、及びR2は、水素、又は、水酸基、エチル基、メチル基、ブチル基、ターシャリーブチル基、フェニル基、及びカルボキシル基よりなる群より選ばれる置換基を表し、RとRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
[2][1]項に記載のシアネート樹脂組成物を基材に含浸させてなるプリプレグ。
[3]基材中に[1]項に記載のシアネート樹脂組成物を含浸してなる樹脂含浸基材層の少なくとも片面に金属箔を有することを特徴とする金属張積層板。
[4][1]項に記載のプリプレグ又は当該プリプレグを2枚以上重ね合わせた積層体の少なくとも片面に金属箔を重ね、加熱加圧することにより得られる金属張積層板。
[5][1]項に記載のシアネート樹脂組成物よりなる樹脂層をフィルム上、又は金属箔上に形成してなる樹脂シート。
[6][3]又は[4]項に記載の金属張積層板を内層回路基板に用いてなることを特徴とするプリント配線板。
[7]前記内層回路基板に[2]項に記載のプリプレグを少なくとも1層積層してなる[6]項に記載のプリント配線板
[8][6]、または[7]に記載のプリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシアネート樹脂組成物は、高いガラス転移温度を有し、半田耐熱性に優れ、さらに光遮蔽性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のシアネート樹脂組成物、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置について説明する。
【0011】
本発明のシアネート樹脂組成物は、ガラス繊維基材等の基材に含浸させプリプレグ、前記プリプレグを用いた積層板に用いることができる。
或いは、シアネート樹脂組成物からなる樹脂層をフィルム、または金属箔上に積層してなる樹脂シートとして用いることができる。
また、本発明のシアネート樹脂組成物は、優れた絶縁性を有することから、例えばプリント配線板の絶縁層に用いることができる。
さらに本願発明のシアネート樹脂組成物は、低線膨張であり、耐熱性、及び導体回路との密着性に優れることから、半導体装置のインターポーザとして用いることができる。
【0012】
半導体装置のプリント配線板としては、マザーボード、及びインターポーザが知られている。インターポーザは、マザーボードと同様のプリント配線板であるが、半導体素子(ベアチップ)又は半導体パッケージとマザーボードの間に介在し、マザーボード上に搭載される。
インターポーザは、マザーボードと同様に、半導体パッケージを実装する基板として用いても良いが、マザーボードと異なる特有の使用方法としては、パッケージ基板又はモジュール基板として用いられる。
【0013】
パッケージ基板とは、半導体パッケージの基板としてインターポーザが用いられるという意味である。半導体パッケージには、半導体素子をリードフレーム上に搭載し、両者をワイアボンディングで接続し、樹脂で封止するタイプと、インターポーザをパッケージ基板として用い、半導体素子を当該インターポーザ上に搭載し、両者をワイアボンディング等の方法で接続し、樹脂で封止するタイプとがある。
【0014】
次に本発明のシアネート樹脂組成物について詳細を説明する。
尚、以下に説明する方法に、特に限定されるものではなく、公知の手法であれば用いることができる。
【0015】
本発明のシアネート樹脂組成物は、シアネート樹脂、及び下記一般式(1)で示される化合物を必須成分とする。このことにより、高いガラス転移温度を達成でき、優れた耐熱性、及び光遮蔽性に優れるものとなる。
【0016】
【化1】


(式中のR1、及びR2は、水素、又は、水酸基、エチル基、メチル基、ブチル基、ターシャリーブチル基、フェニル基、及びカルボキシル基よりなる群より選ばれる置換基を表し、RとRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0017】
前記シアネート樹脂としては、特に限定されないが、例えば、2,2’-ビス(4-シアネートフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-シアネートフェニル)エタン、2,2’-ビス(4-シアネート-3,5-メチルフェニル)エタン、その他、特開2009−35728に記載のシアネート樹脂等が挙げられ、1種もしくは2種以上を適宜混合して使用することも可能である。これらのシアネート化合物は、そのまま使用してもよく、あるいはプレポリマー化したものを使用することもできる。
尚、プレポリマー化する方法は、特に限定されないが、例えば、50〜200℃程度に加熱することにより得られる。また、触媒の存在下で、加熱することによりプレポリマー化することができる。
【0018】
前記触媒は、特に限定されないが、例えば、鉱酸、ルイス酸などの酸類;ナトリウムアルコラートなど、第三級アミン類などの塩基;炭酸ナトリウムなどの塩類など;ビスフェノール化合物およびモノフェノール化合物のような活性水素含有化合物などである。
【0019】
前記式(1)で表される化合物は、スチルベン構造を有することにより、紫外及び可視部の光を吸収し、更にピラゾリン環を有することによりすることにより、着色性、鮮明度に優れることに加えて、長波長領域の光を遮蔽することができる。また、芳香族環をゆすることで耐熱性も向上する。
また前述のジアミノスチルベン系染料、フルオレセイン、チオフラビン、エオシンを用いた場合に生じる、光吸収能力が低下する問題も生じない。
【0020】
前記式(1)式中のR、Rは、水素、又は、水酸基、エチル基、メチル基、ブチル基、ターシャリーブチル基、フェニル基、及びカルボキシル基よりなる群より選ばれる置換基を表し、R1とR2は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
、Rは、式(1)で表される化合物を合成する際に、従来の方法により容易に選択することができる。
、Rは、ターシャリーブチル基であることが好ましい。これにより十分な硬化性を発現し、高いガラス転移温度を有し、半田耐熱性に優れ、さらに光遮蔽性に優れる。
【0021】
前記式(1)で表される化合物の配合量は特に限定されないが、シアネート樹脂100重量部中0.01%〜1.0%が好ましい。配合量が前記下限値未満では、一方の面に照射された光が、ソルダーレジスト(フォトレジストと呼ばれる場合もある。)を透過し、さらに積層板内に透過し、他方のソルダーレジストが硬化する場合がある。また、前記上限値より大きい場合では、式(1)で表される化合物が、凝集し、十分な光遮蔽効果が発現しない場合がある。
【0022】
本発明のシアネート樹脂組成物は、耐熱性、耐湿性等の特性やコスト等のバランスを考慮するとエポキシ樹脂を併用することが好ましい。
前記エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等が好ましく用いられ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒドフェノールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂がより好ましく用いられる。耐熱性の向上の点から、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂またはサリチルアルデヒドフェノールノボラック型エポキシ樹脂を用いることが特に好ましい。これらの樹脂は、単独で使用してもよく、また2種類以上を併用することもできる。
【0023】
本発明のシアネート樹脂組成物は、硬化促進のため、促進剤を併用することも望ましい。促進剤の種類や配合量は特に限定するものではなく、例えばイミダゾール系化合物、有機リン系化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩、金属塩等が用いられ、2種類以上を併用してもよい。
【0024】
本発明のシアネート樹脂組成物は、必要に応じて、上記成分以外の添加物を、特性を損なわない範囲で添加することができる。上記成分以外の成分は、例えば、エポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーンオイル型カップリング剤等のカップリング剤、シリカ、水酸化アルミニウム、タルク等の無機充填材、アクリル系重合物等の表面調整剤、染料及び顔料等の着色剤等、難燃剤等を挙げることができる。
【0025】
次に、プリプレグについて説明する。
【0026】
本発明のプリプレグは、上述のシアネート樹脂組成物を基材に含浸させてなるものである。これにより、耐熱性等の各種特性に優れたプリプレグを得ることができる。
前記基材としては、例えば、ガラス繊布、ガラス不繊布等のガラス繊維基材、あるいはガラス以外の無機化合物を成分とする繊布又は不繊布等の無機繊維基材、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミド樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂等の有機繊維で構成される有機繊維基材等が挙げられる。これら基材の中でも強度、吸水率の点でガラス織布に代表されるガラス繊維基材が好ましい。
【0027】
前記シアネート樹脂組成物を前記基材に含浸させる方法は、例えば、溶剤を用いシアネート樹脂組成物を樹脂ワニスにし、基材を樹脂ワニスに浸漬する方法、各種コーターによる塗布する方法、スプレーによる吹き付ける方法等が挙げられる。これらの中でも、基材を樹脂ワニスに浸漬する方法が好ましい。これにより、基材に対する樹脂組成物の含浸性を向上することができる。なお、基材を樹脂ワニスに浸漬する場合、通常の含浸塗布設備を使用することができる。
【0028】
前記樹脂ワニスに用いられる溶媒は、前記シアネート樹脂組成物に対して良好な溶解性を示すことが望ましいが、悪影響を及ぼさない範囲で貧溶媒を使用しても構わない。良好な溶解性を示す溶媒としては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
前記樹脂ワニス中の固形分は、特に限定されないが、前記シアネート樹脂組成物の固形分40〜80重量%が好ましく、特に50〜65重量%が好ましい。これにより、樹脂ワニスの基材への含浸性を更に向上できる。
前記基材に前記シアネート樹脂組成物を含浸させ、所定温度、例えば80〜200℃で乾燥させることによりプリプレグを得ることができる。
【0029】
次に、樹脂シートについて説明する。
【0030】
前記シアネート樹脂組成物を用いた樹脂シートは、前記樹脂ワニスからなる絶縁層をフィルム上、又は金属箔上に形成することにより得られる。
【0031】
前記樹脂ワニス中のシアネート樹脂組成物の含有量は、特に限定されないが、45〜85重量%が好ましく、特に55〜75重量%が好ましい。
【0032】
次に前記樹脂ワニスを、各種塗工装置を用いて、フィルム上、または金属箔上に塗工した後、これを乾燥する。または、樹脂ワニスをスプレー装置によりキャリアフィルムまたは金属箔に噴霧塗工した後、これを乾燥する。これらの方法により樹脂シートを作製することができる。
【0033】
前記塗工装置は、特に限定されないが、例えば、ロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、グラビアコーター、ダイコーター、コンマコーターおよびカーテンコーターなどを用いることができる。これらの中でも、ダイコーター、ナイフコーター、およびコンマコーターを用いる方法が好ましい。これにより、ボイドがなく、均一な絶縁層の厚みを有する樹脂シートを効率よく製造することができる。
【0034】
前記フィルムは、フィルム上に絶縁層を形成するため、取扱いが容易であるものを選択することが好ましい。また、樹脂シートの絶縁層を内層回路基板面に積層後、キャリアフィルムを剥離することから、内層回路基板に積層後、剥離が容易であるものであることが好ましい。したがって、前記フィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂などの耐熱性を有した熱可塑性樹脂フィルムなどを用いることが好ましい。これらキャリアフィルムの中でも、ポリエステルで構成されるフィルムが最も好ましい。これにより、絶縁層から適度な強度で剥離することが容易となる。
【0035】
前記フィルムは、キャリアフィルムに絶縁層を形成するため、取扱いが容易であるものを選択することが好ましい。また、樹脂シートの絶縁層を内層回路基板面に積層後、フィルムを剥離することから、内層回路基板に積層後、剥離が容易であるものであることが好ましい。したがって、前記フィルムは、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂などの耐熱性を有した熱可塑性樹脂フィルムなどを用いることが好ましい。これらフィルムの中でも、ポリエステルで構成されるフィルムが最も好ましい。これにより、絶縁層から適度な強度で剥離することが容易となる。
【0036】
前記フィルムの厚さは、特に限定されないが、1〜100μmが好ましく、特に3〜50μmが好ましい。フィルムの厚さが前記範囲内であると、取扱いが容易で、また絶縁層表面の平坦性に優れる。
【0037】
前記金属箔は、前記フィルム同様、内層回路基板に樹脂シートを積層後、剥離して用いても良いし、また、金属箔をエッチングし導体回路として用いても良い。前記金属箔は、特に限定されないが、例えば、銅及び/又は銅系合金、アルミ及び/又はアルミ系合金、鉄及び/又は鉄系合金、銀及び/又は銀系合金、金及び金系合金、亜鉛及び亜鉛系合金、ニッケル及びニッケル系合金、錫及び錫系合金等の金属箔などを用いることができる。
【0038】
前記金属箔の厚さは、特に限定されないが、0.1μm以上70μm以下であることが好ましい。さらには1μm以上35μ以下が好ましく、さらに好ましくは1.5μm以上18μm以下が好ましい。前記金属箔の厚さが上記下限値未満であると、金属箔の傷つき、ピンホールの発生し、金属箔をエッチングし導体回路として用いて場合、回路パターン成形時のメッキバラツキ、回路断線、エッチング液やデスミア液等の薬液の染み込みなどが発生する怖れがあり、前記上限値を超えると、金属箔の厚みバラツキが大きくなったり、金属箔粗化面の表面粗さバラツキが大きくなったりする場合がある。
【0039】
また、前記金属箔は、キャリア箔付き極薄金属箔を用いることもできる。キャリア箔付き極薄金属箔とは、剥離可能なキャリア箔と極薄金属箔とを張り合わせた金属箔である。キャリア箔付き極薄金属箔を用いることで前記絶縁層の両面に極薄金属箔層を形成できることから、例えば、セミアディティブ法などで回路を形成する場合、無電解メッキを行うことなく、極薄金属箔を直接給電層として電解メッキすることで、回路を形成後、極薄銅箔をフラッシュエッチングすることができる。キャリア箔付き極薄金属箔を用いることによって、厚さ10μm以下の極薄金属箔でも、例えばプレス工程での極薄金属箔のハンドリング性の低下や、極薄銅箔の割れや切れを防ぐことができる。前記極薄金属箔の厚さは、0.1μm以上10μm以下が好ましい。さらに、0.5μm以上5μm以下が好ましく、さらに1μm以上3μm以下が好ましい。前記極薄金属箔の厚さが前記下限値未満であると、キャリア箔を剥離後の極薄金属箔の傷つき、極薄金属箔のピンホールの発生、ピンホールの発生による回路パターン成形時のメッキバラツキ、回路配線の断線、エッチング液やデスミア液等の薬液の染み込みなどが発生する怖れがあり、前記上限値を超えると、極薄金属箔の厚みバラツキが大きくなったり、極薄金属箔粗化面の表面粗さのバラツキが大きくなったりする場合がある。
通常、キャリア箔付き極薄金属箔は、プレス成形後の積層板に回路パターン形成する前にキャリア箔を剥離する。
【0040】
次に、積層板について説明する。
【0041】
本発明の積層板は、上述のプリプレグを少なくとも1枚成形してなるものである。これにより、優れた耐熱性と密着性とを有し、さらに電気特性に優れた積層板を得ることができる。
【0042】
プリプレグ1枚のときは、その上下両面もしくは片面に金属箔またはフィルムを重ねる。
また、プリプレグを2枚以上積層することもできる。プリプレグ2枚以上積層するときは、積層したプリプレグの最も外側の上下両面もしくは片面に金属箔またはフィルムを重ねる。尚、積層板に用いる金属箔またはフィルムは、前記樹脂シートに用いるものを用いることができる。
【0043】
次に、プリプレグと金属箔、及び/またはフィルムとを重ねたものを加熱、加圧して成形することで積層板を得ることができる。
前記加熱する温度は、特に限定されないが、150〜240℃が好ましく、特に180〜220℃が好ましい。
また、前記加圧する圧力は、特に限定されないが、2〜5MPaが好ましく、特に2.5〜4MPaが好ましい。
【0044】
次に、プリント配線板について説明する。プリント配線板の製造方法は、種々あるため以下に一例を説明するが、特に限定されるものでない。
【0045】
前記の両面に銅箔を有する積層板を用い、ドリル等によりスルーホールを形成し、メッキにより前記スルーホールを充填した後、積層板の両面に、エッチング等により所定の導体回路(内層回路)を形成し、導体回路を黒化処理等の粗化処理することにより内層回路基板を作製する。
【0046】
本発明のシアネート樹脂組成物を用いた場合、従来に比べ微細スルーホールを歩留まり良く形成することができ、また従来にスルーホール形成後の壁の凹凸が非常に小さなものとなる。特にレーザー加工によりスルーホールを形成する場合にスルーホール形成後の壁の凹凸が非常に小さなものとなる。
【0047】
次に前記内層回路基板の上面、及び/または下面に、前述した樹脂シート、または前述したプリプレグを形成し、加熱加圧成形する。
具体的には、前記樹脂シート、またはプリプレグと内層回路基板とを合わせて、真空加圧式ラミネーター装置などを用いて真空加熱加圧成形させる。その後、熱風乾燥装置等で加熱硬化させることにより内層回路基板上に絶縁層を形成することができる。
ここで加熱加圧成形する条件としては特に限定されないが、一例を挙げると、温度60〜160℃、圧力0.2〜3MPaで実施することができる。また、加熱硬化させる条件としては特に限定されないが、一例を挙げると、温度140〜240℃、時間30〜120分間で実施することができる。
【0048】
または、前記樹脂シート、またはプリプレグを内層回路基板に重ね合わせ、これを平板プレス装置などを用いて加熱加圧成形することにより内層回路基板上に絶縁層を形成することもできる。
ここで加熱加圧成形する条件としては、特に限定されないが、一例を挙げると、温度140〜240℃、圧力1〜4MPaで実施することができる。
【0049】
上述した方法にて得られた積層体は、絶縁層表面を過マンガン酸塩、重クロム酸塩等の酸化剤などにより粗化処理した後、金属メッキにより新たな導電配線回路を形成することができる。
【0050】
本発明のシアネート樹脂組成物を用いた場合、従来に比べ微細配線加工に優れ、導体回路を形成した際の導体幅(ライン)、及び導体間(スペース)が非常に狭い配線を歩留まり良く形成することができる。
【0051】
その後、前記絶縁層を加熱することにより硬化させる。硬化させる温度は、特に限定されないが、例えば、160℃〜240℃の範囲で硬化させることができる。好ましくは180℃〜200℃で硬化させることである。
次に、絶縁層に、炭酸レーザー装置を用いて開口部を設け、電解銅めっきにより絶縁層表面に外層回路形成を行い、外層回路と内層回路との導通を図る。なお、外層回路には、半導体素子を実装するための接続用電極部を設ける。
その後、最外層にソルダーレジストを形成し、露光・現像により半導体素子が実装できるよう接続用電極部を露出させ、ニッケル金メッキ処理を施し、所定の大きさに切断し、プリント配線板を得ることができる。
【0052】
本発明のシアネート樹脂組成物を用いた場合、ニッケル金メッキの際に従来のエポキシ樹脂組成物を用いた場合に比べ、絶縁層にニッケル等の金属原子が残らないため、電気信頼性に優れる。
【0053】
次に、半導体装置について説明する。
【0054】
半導体装置は、上述したプリント配線板に半導体素子を実装し、製造することができる。半導体素子の実装方法、封止方法は特に限定されない。例えば、半導体素子とプリント配線板とを、フリップチップボンダーなどを用いてプリント配線板上の接続用電極部と半導体素子の半田バンプの位置合わせを行う。その後、IRリフロー装置、熱板、その他加熱装置を用いて半田バンプを融点以上に加熱し、プリント配線配板上の接続用電極部と半田バンプとを溶融接合することにより接続する。そして、プリント配線板と半導体素子との間に液状封止樹脂を充填し、硬化させることで半導体装置を得ることができる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例および比較例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0056】
(実施例1)
1.樹脂ワニスの調製
ノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン株式会社製、プリマセットPT−30)22.0重量%、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製N−690)13.0重量%、式(1)で表される化合物(1-フェニル-3-(4-tert-ブチルスチリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)ピラゾリン)中央合成社製HR−50 0.05重量部、無機充填剤として球状シリカ(平均粒子径0.5μm)65.0重量%、ナフテン酸コバルト0.1重量%に固形分が70%となるようにN,N−ジメチルホルムアミドと混合し、樹脂ワニスを得た。
【0057】
2.プリプレグの作製
上記により調製した樹脂ワニスを基材に含浸して、150℃で5分間乾燥させて、0.1mmのプリプレグを得た。
【0058】
3.積層板の作製
上記により作成したプリプレグの両面に厚み12μmの銅箔(三井金属製3EC−M3VLP)を重ねあわせて、220℃、3MPaで加熱加圧成型し、0.1mmの銅箔を両面に有する積層板を得た。
積層板の厚みは、0.4mmであった。
【0059】
4.プリント配線板の作製
前記で得られた積層板に、0.1mmのドリルビットを用いてスルーホール加工を行った後、メッキによりスルーホールを充填した。さらに、両面をエッチングにより回路形成し、内層回路基板として用いた。前記内層回路基板の表裏に、前記で得られたプリプレグを重ね合わせ、これを、真空加圧式ラミネーター装置を用いて、温度100℃、圧力1MPaにて真空加熱加圧成形させた。これを、熱風乾燥装置にて170℃で60分間加熱し硬化させて、積層体を得た。
【0060】
次に、表面の電解銅箔層に黒化処理を施した後、炭酸ガスレーザーで、層間接続用のφ60μmのビアホールを形成した。次いで、70℃の膨潤液(アトテックジャパン社製、スウェリングディップ セキュリガント P)に5分間浸漬し、さらに80℃の過マンガン酸カリウム水溶液(アトテックジャパン社製、コンセントレート コンパクト CP)に15分浸漬後、中和してビアホール内のデスミア処理を行った。次に、フラッシュエッチングにより電解銅箔層表面を1μm程度エッチングした後、無電解銅メッキを厚さ0.5μmで行い、電解銅メッキ用レジスト層を厚さ18μm形成しパターン銅メッキし、温度200℃時間60分加熱してポストキュアした。次いで、メッキレジストを剥離し全面をフラッシュエッチングして、L/S=20/20μmのパターンを形成した。
最後に回路表面にソルダーレジスト(太陽インキ社製PSR4000/AUS308)を厚さ20μm形成しプリント配線板を得た。
【0061】
5.半導体装置の製造
半導体装置の製造に用いるプリント配線板は、前記で得られたプリント配線板であって、半導体素子の半田バンプ配列に相当するニッケル金メッキ処理が施された接続用電極部を配したものを50mm×50mmの大きさに切断し使用した。半導体素子(TEGチップ、サイズ15mm×15mm、厚み0.8mm)は、Sn/Pb組成の共晶で形成された半田バンプを有し、半導体素子の回路保護膜はポジ型感光性樹脂(住友ベークライト社製CRC−8300)で形成されたものを使用した。半導体装置の組み立ては、まず、半田バンプにフラックス材を転写法により均一に塗布し、次にフリップチップボンダー装置を用い、多層プリント配線板上に加熱圧着により搭載した。次に、IRリフロー炉で半田バンプを溶融接合した後、液状封止樹脂(住友ベークライト社製、CRP−4152S)を充填し、液状封止樹脂を硬化させることで半導体装置を得た。尚、液状封止樹脂の硬化条件は、温度150℃、120分の条件であった。
【0062】
(実施例2、比較例1、及び比較例2)
実施例2、比較例1、及び比較例2は、表1に記載の配合表に従い樹脂ワニスを調製した以外は、実施例1と同様に樹脂ワニス、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置を作製した。
尚、用いた原料を以下に示す。
(1)シアネート樹脂/ノボラック型シアネート樹脂:ロンザジャパン社製・「プリマセットPT−30」、シアネート当量124
(2)エポキシ樹脂/クレゾールノボラック型エポキシ樹脂:大日本インキ化学工業社製 「N−690」)、エポキシ当量220g/eq
(3)マレイミド樹脂/3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン:ケイアイ化成(株)製、「BMI−70」
(4)式(1)で表される化合物/1−フェニル−3−(4−ターシャリーブチルスチリル)−5−(4−ターシャリーブチルフェニル)ピラゾリン:中央合成社製・「品番HR−50」
(5)フルホレセイン:関東化学社製・「品番フルオレセイン」
(6)硬化促進剤/ナフテン酸コバルト:日本化学産業社製・「品番ナフテン酸Co」
(7)無機充填材/溶融シリカ;アドマテックス社製・「品番SO−25R」、平均粒子0.5μm
【0063】
実施例及び比較例の樹脂ワニスの配合表、及び配合表に従い調整した樹脂ワニス、当該樹脂ワニスを用いて作製したプリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置等について行った評価結果を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
(評価方法)
前記評価は、以下の方法により行った。
【0066】
(1)ガラス転移温度
前記で得られた両面に銅箔を有する積層板の銅箔を全面エッチングし、所定のサイズの試料を切り出し、DMA装置(TAインスツルメント社製DMA2980)を用いて5℃/分の割合で昇温しながら、周波数1Hzの歪みを与えて動的粘弾性の測定を行った。ガラス転移温度は、tanδが最大値を示す温度とした。
【0067】
(2)半田耐熱性
得られた積層板を50mm×50mmにグラインダーソーでカットした後、エッチングにより銅箔を1/4だけ残した試料を作製し、JISC 6481に準拠して測定した。測定は、121℃、100%、2時間、PCT吸湿処理を行った後に、288℃の半田槽に30秒間浸漬した後で外観の異常の有無を調べた。
【0068】
(3)光遮蔽性
得られた積層板を全面エッチングして銅を除去し、その基板の両面にソルダーレジスト(太陽インキ製「PSR−4000」)を50μmの厚さで塗布し、80℃で15分乾燥した。
その後、一方の面にネガフィルムを当て、他方の面より紫外線照射機(オーク製作所製)にて365nm、1.2J/cm2の紫外線を照射し、炭酸ナトリウム溶液にて現像し、ネガフィルムを当てた面のソルダーレジスト残存の有無を調べた。
ソルダーレジストが残存する場合は、ネガフィルムを当てた面のソルダーレジストまで光が透過し、ソルダーレジストの少なくとも一部が硬化したことを示す。これを表1中、「裏露光あり」とした。一方、ソルダーレジストの残存がない場合は、光が透過していないと判断できる。これを表1中、「裏露光なし」とした。
【0069】
表1から明らかなように、実施例1、2は、いずれもシアネート樹脂および一般式(1)で表される化合物を必須成分とする本発明のシアネート樹脂組成物を用いた結果であり、ガラス転移温度が高く、半田耐熱性、紫外線遮蔽性に優れていた。
【0070】
これに対し、比較例1は一般式(1)で表される化合物を含まなかったため裏露光が生じた。
また、比較例2はフルオレセインを用いたため、ガラス点移温度が低下した。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明のシアネート樹脂組成物は、ガラス点移転が高く、半田耐熱性に優れ、両面同時露光でも裏露光を生じないので薄型で高性能が要求されるインターポーザ、半導体装置に有用に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シアネート樹脂および下記式(1)で表される化合物を必須成分とすることを特徴とするシアネート樹脂組成物。
【化1】


(式中のR、及びRは、水素、又は、水酸基、エチル基、メチル基、ブチル基、ターシャリーブチル基、フェニル基、及びカルボキシル基よりなる群より選ばれる置換基を表し、RとRとは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
請求項1に記載のシアネート樹脂組成物を基材に含浸させてなるプリプレグ。
【請求項3】
基材中に請求項1に記載のシアネート樹脂組成物を含浸してなる樹脂含浸基材層の少なくとも片面に金属箔を有することを特徴とする金属張積層板。
【請求項4】
請求項1に記載のプリプレグ又は当該プリプレグを2枚以上重ね合わせた積層体の少なくとも片面に金属箔を重ね、加熱加圧することにより得られる金属張積層板。
【請求項5】
請求項1に記載のシアネート樹脂組成物よりなる樹脂層をフィルム上、又は金属箔上に形成してなる樹脂シート。
【請求項6】
請求項3又は4に記載の金属張積層板を内層回路基板に用いてなることを特徴とするプリント配線板。
【請求項7】
前記内層回路基板に請求項2に記載のプリプレグを少なくとも1層積層してなる請求項6に記載のプリント配線板
【請求項8】
請求項6、または7に記載のプリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体装置。

【公開番号】特開2011−144229(P2011−144229A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4533(P2010−4533)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】