説明

シアノベンゾチアゾール化合物を用いる生物発光アッセイ

本発明は、例えば生物発光反応において、2-シアノ-6-ヒドロキシ-ベンゾチアゾールまたは2-シアノ-6-アミノ-ベンゾチアゾールの誘導体を用いる方法を提供する。本方法に用いることができる新規化合物もまた提供される。本発明はさらに、分子および/または酵素の存在、このような分子のモジュレーター活性および/またはこのような酵素の活性を検出または測定する方法を提供する。本方法は、ハイスループットフォーマットに適合させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、35USC119(e)に基づき,米国仮特許出願第61/095,514号(出願日:2008年9月9日)による優先権を主張する(これは参照により本願に組み込まれる)。
【背景技術】
【0002】
特定の生物においては、ルシフェラーゼ媒介酸化反応の結果として発光が生じる。さまざまな、大きく異なる種からのルシフェラーゼ遺伝子、特にフォチナス・ピラリス(Photinus pyralis)およびフォツリス・ペンシルバニカ(Photuris pennsylvanica)(北アメリカのホタル)、ピロフォラス・プラギオフタラマス(Pyrophorus plagiophthalamus)(ジャマイカコメツキムシ)、レニラ・レニホルミス(Renilla reniformis)(ウミシイタケ)ならびにいくつかの細菌(例えば、ゼノラブダス・ルミネッセンス(Xenorhabdus luminescens)およびビブリオ種(Vibrio spp))のルシフェラーゼ遺伝子は、大変一般的な発光レポーター遺伝子である。ホタルルシフェラーゼは、ATP濃度を測定するための一般的なレポーターでもあり、その役割で、バイオマスを検出するために広く使用されている。特定の合成基質と他の酵素が混合される場合、例えば、アルカリホスファターゼがアダマンチルジオキセタンホスファートと、または西洋ワサビペルオキシダーゼがルミノールと混合される場合、これらの酵素によっても発光が生じる。
【0003】
ルシフェラーゼ遺伝子は、その発光アッセイの非放射線性、感度および大変広い直線範囲の理由から、レポーター遺伝子として広く使用されている。例えば、わずか10-20モルのホタルルシフェラーゼも検出できる。その結果として、原核および真核細胞培養物、トランスジェニック植物および動物ならびに無細胞発現系を含む、事実上あらゆる生物実験系において、遺伝子活性のルシフェラーゼアッセイが用いられる。同じく、ATP濃度測定に用いられるルシフェラーゼアッセイは高感度であり、10-16モル未満まで検出できる。
【0004】
ルシフェラーゼは、酵素特異的基質、例えば、ルシフェリンの酸化によって光を生成することができる。ホタルルシフェラーゼおよび全ての他の甲虫ルシフェラーゼ(beetle luciferase)に関しては、ルシフェリン、マグネシウムイオン、酸素、およびATPの存在下で光が生成される。レニラルシフェラーゼを含む花虫綱ルシフェラーゼに関しては、基質セレンテラジンに加えて酸素のみを必要とする。一般に、遺伝子活性を測定するための発光アッセイにおいて、レポーター酵素の発現が推測される生物系に反応基質および他の発光活性化剤が導入される。次いで、結果として生じた発光がもしあれば、ルミノメーターまたは任意の適切な放射エネルギー測定装置を用いて測定される。本アッセイは、大変迅速で高感度であり、放射性試薬を必要とせずに、迅速かつ容易に遺伝子発現データを提供する。
【0005】
大部分の酵素反応は、ルシフェラーゼほど理想的にはアウトプットを生成しないので、細胞分析およびハイスループットスクリーニング用途に有用な酵素反応のためのルシフェラーゼ媒介アッセイの可用性が望ましいと考えられる。ルシフェラーゼ媒介反応は、多数の他の分子、例えばATPまたは乳酸脱水素酵素を検出するために用いられてきた。これらの反応の一部には、天然に存在する基質の誘導体が用いられている。天然ホタルルシフェリンであるポリ複素環式有機酸のD-(-)-2-(6'-ヒドロキシ-2'-ベンゾチアゾリル)-Δ2-チアゾリン-4-カルボン酸を図1に示す。例えば、プロ基質(prosubstrate)として、プロテアーゼなどの酵素の認識部位を有するルシフェリン誘導体を用いる方法がMiskaら (Journal of Clinical Chemistry and Clinical Biochemistry, 25:23 (1987))によって記載された。ルシフェリン誘導体を適切な酵素、例えばプロテアーゼと一定期間インキュベートし、次いで混合物のアリコートをルシフェラーゼ含有溶液に移すことによってヘテロジニアスアッセイが行われた。Masuda-Nishimuraら(Letters in Applied Microbio.、30:130 (2000)) は、ガラクトシダーゼ基質-修飾ルシフェリンを用いるシングルチューブ(ホモジニアス)アッセイを報告した。これらのルシフェリン誘導体において、非ルシフェラーゼ酵素活性の反応性基として機能する誘導体部分がD-ルシフェリンまたはアミノルシフェリン骨格に連結され、それによって、非ルシフェラーゼ酵素の作用によって、反応の直接産物としてD-ルシフェリンまたはアミノルシフェリン分子が生じ、ルシフェラーゼの基質として役立つ。
【0006】
他の酵素アッセイにルシフェラーゼ媒介反応を広く応用する上での主な障害は、非ルシフェラーゼ酵素の基質として機能するようにルシフェリン分子を修飾するためには、非ルシフェラーゼ酵素の活性により、D-ルシフェリンまたはアミノルシフェリン分子を直接に生じ、ルシフェラーゼの基質としてその機能を保持しなくてはならないと考えられることであった。さらに、対象とする酵素の多くは、誘導体のサイズおよび、ルシフェリンのカルボキシル基における修飾に対する相互作用または活性の欠如を含む種々の理由から、適切な基質を含むように修飾されたルシフェリン誘導体を認識しない。さらにまた、特定の細胞アッセイは、ルシフェリン誘導体の低浸透性および、カルボン酸がエステル化されているルシフェリン誘導体の不安定性によって限定される恐れがある。
【0007】
従って、ルシフェリン誘導体以外の基質を用いる生物発光アッセイが求められている。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、2-シアノ-6-ヒドロキシベンゾチアゾールまたは2-シアノ-6-アミノベンゾチアゾールの誘導体(以下"2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾール"の誘導体と呼ぶ)を用いて対象とする酵素のアッセイを行う方法を提供する。本発明はまた、酵素モジュレーター活性を測定するためのアッセイを行う方法を提供する。本発明はさらに、酵素アッセイに用いることができる新規化合物および組成物を提供する。
【0009】
一実施形態において、本発明は、2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体および、酵素活性アッセイまたは非酵素的生物学的アッセイにおけるこのような誘導体の使用方法を提供する。前記誘導体は所望の酵素または反応の基質として役立ち、D-システインの存在下でルシフェラーゼの生物発光基質を提供する生成物を生じる。従って、2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾール骨格、例えばその6'-ヒドロキシ部位または6'-アミノ部位に結合された、所望の非ルシフェラーゼ酵素の特定の酵素認識部位を有する2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体(基質)を提供することによって、多数の非ルシフェラーゼ酵素を生物発光アッセイにおいて検出でき、かつ/またはそれらの活性を生物発光アッセイにおいて測定できる。本発明はまた、本発明のアッセイと、非ルシフェラーゼ酵素および/またはその活性を検出する対照とを比較する方法を提供する。
【0010】
従って、本発明は、試料中の非ルシフェラーゼ酵素の存在または活性を検出または測定する方法であって、
a)試料、非ルシフェラーゼ酵素媒介反応のための第1反応混合物および、非ルシフェラーゼ酵素基質を含む2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体を含む第1混合物であって、この誘導体が、D-システイン存在下で、甲虫ルシフェラーゼの生物発光基質である生成物を生じる前記第1混合物を提供し;
b)第1混合物の少なくとも一部と甲虫ルシフェラーゼ媒介反応のための第2反応混合物とを接触させて、第2混合物を産出し;
c)第2混合物における発光を検出または測定し、それによって試料における非ルシフェラーゼ酵素の存在または量を検出または測定すること;
を含む前記方法を提供する。一実施形態において、第1混合物中にD-システインを存在させることができる。他の実施形態において、第2混合物中にD-システインを存在させることができる。
【0011】
本発明はまた、試料中の非ルシフェラーゼ酵素の存在または活性を検出または測定する方法であって、
a)試料、非ルシフェラーゼ酵素媒介反応のための第1反応混合物および、非ルシフェラーゼ酵素基質を含む2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体を含む第1混合物であって、第1混合物が非ルシフェラーゼ酵素の活性に特異的な補因子を含まず、この誘導体および非ルシフェラーゼ酵素が、D-システイン存在下で、補因子の非存在下で甲虫ルシフェラーゼの生物発光基質である生成物を生じるであろう前記第1混合物を提供し;
b)第1混合物の少なくとも一部と、D-システインを含む、甲虫ルシフェラーゼ媒介反応のための第2反応混合物とを接触させて、第2混合物を産出し;
c)第2混合物における発光と、試料、非ルシフェラーゼ酵素媒介反応のための第1反応混合物、2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体および、非ルシフェラーゼ酵素に必要な補因子を有する第3混合物が、D-システインを含む甲虫ルシフェラーゼ媒介反応のための反応混合物と接触される対照混合物における発光とを比較し、それによって試料における非ルシフェラーゼ酵素の存在または量を検出または測定すること;
を含む前記方法を提供する。
【0012】
非ルシフェラーゼ酵素は、例えばその活性のために補因子を必要とする任意の酵素であり得る。酵素は、限定するものではないが、UGT、GST、CYP450、FMO、HDACおよび/またはプロテアーゼなどの、本明細書記載の種々の酵素を含む。非ルシフェラーゼ酵素媒介反応のための第1反応混合物は、非ルシフェラーゼ酵素媒介反応のための試験モジュレーターを含むことができる。モジュレーターは、例えば、非ルシフェラーゼ酵素インヒビター、競合的非ルシフェラーゼ酵素基質および/または非ルシフェラーゼ酵素アクチベーターであることができる。
【0013】
試料は組織抽出物または組換えミクロソームを含むことができる。ミクロソームは特定のアイソザイムを発現することができる。ミクロソームは例えば、組換えミクロソームまたは哺乳動物ミクロソームであり得る。
【0014】
他の実施形態において、本発明は、試料中のUGTの存在または量を検出または測定する方法であって、a)試料、UGT媒介反応のための第1反応混合物および、UGTの基質である2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体を含む第1混合物であって、第1混合物がUDPGAを含まず、この誘導体およびUGTが、D-システインの存在下で、甲虫ルシフェラーゼの生物発光基質である生成物を生じるであろう前記第1混合物を提供すること;を含む前記方法を提供する。種々の実施形態において、反応混合物はUGTの補因子であるUDPGAを欠くため、UGTは誘導体とは反応しない。
【0015】
本方法はさらに、b)第1混合物の少なくとも一部と、D-システインを含む、甲虫ルシフェラーゼ媒介反応のための第2反応混合物とを接触させて、第2混合物を産出し;c)第2混合物における発光と、試料、UGT媒介反応のための第1反応混合物、2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体およびUDPGAを有する第3混合物が、D-システインを含む甲虫ルシフェラーゼ媒介反応のための反応混合物と接触される対照混合物における発光とを比較し、それによって試料におけるUGTの存在または量を検出または測定すること;を含む。UGTは、2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールをルシフェリン酵素の基質ではない誘導体に変換できるので、対照反応と試験反応との間の差異が可能である。
【0016】
UGT媒介反応のための第1反応混合物は、評価される薬物または生体異物などの、UGT媒介反応の試験モジュレーターを含むことができる。モジュレーターは、例えば、UGTのインヒビターまたはUGTの競合的基質であることができる。試料は、組織抽出物または組換えミクロソームを含むことができる。抽出物またはミクロソームは、1以上のアイソザイムを発現することができる。
【0017】
本発明はさらに、試料中の非ルシフェラーゼ酵素モジュレーター活性を検出または測定する方法であって、
a)非ルシフェラーゼ酵素を発現するミクロソームを含む試料、非ルシフェラーゼ酵素媒介反応のための第1反応混合物、非ルシフェラーゼ酵素に対するモジュレーター活性が評価される化合物および、非ルシフェラーゼ酵素基質である2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体を含む第1混合物であって、第1混合物が、非ルシフェラーゼ酵素の活性に特異的な補因子を含まず、この誘導体が、D-システインおよび非ルシフェラーゼ酵素の存在下で、甲虫ルシフェラーゼの生物発光基質である生成物を生じるであろう前記第1混合物を提供し;
b)第1混合物の少なくとも一部と、D-システインを含む、甲虫ルシフェラーゼ媒介反応のための第2反応混合物とを接触させて、第2混合物を産出し;
c)第2混合物における発光と、非ルシフェラーゼ酵素を発現するミクロソームを含む試料、非ルシフェラーゼ酵素媒介反応のための第1反応混合物、非ルシフェラーゼ酵素に対するモジュレーター活性が評価される化合物、2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体および、非ルシフェラーゼ酵素に必要な補因子を有する第3混合物が、D-システインを含む、甲虫ルシフェラーゼ媒介反応のための反応混合物と接触される対照混合物における発光とを比較し、それによって試料中の評価される化合物の非ルシフェラーゼ酵素モジュレーション活性を検出または測定すること;
を含む前記方法を提供する。
【0018】
非ルシフェラーゼ酵素は、例えば、UGT、GST、CYP450、FMO、HDACおよび/またはプロテアーゼであることができる。モジュレーター活性が評価される化合物は、非ルシフェラーゼ酵素インヒビター、競合的非ルシフェラーゼ酵素基質または非ルシフェラーゼ酵素アクチベーターである。ミクロソームは組換えミクロソームであることができ、ミクロソームは特定のアイソザイムを発現することができる。
【0019】
本発明は、さらに、試料中のUGTモジュレーター活性を検出または測定する方法を提供する。本方法は、
a)UGTを発現するミクロソームを含む試料、UGT媒介反応のための第1反応混合物、UGTモジュレーター活性が評価される化合物および、UGTの基質である2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体を含む第1混合物であって、第1混合物がUDPGAを含まず、この誘導体が、D-システインおよびUGTの存在下で、甲虫ルシフェラーゼの生物発光基質である生成物を生じるであろう前記第1混合物を提供し;
b)第1混合物の少なくとも一部と、D-システインを含む、甲虫ルシフェラーゼ媒介反応のための第2反応混合物とを接触させて、第2混合物を産出し;
c)第2混合物における発光と、UGTを発現するミクロソームを含む試料、UGT媒介反応のための第1反応混合物、UGTモジュレーター活性が評価される化合物、2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体およびUDPGAを有する第3混合物が、D-システインを含む甲虫ルシフェラーゼ媒介反応のための反応混合物と接触される対照混合物における発光とを比較し、それによって試料中の評価される化合物のUGTモジュレーション活性を検出または測定すること;
を含むことができる。
【0020】
UGTを発現するミクロソームは、特定のUGTアイソザイムを発現することができる。ミクロソームは、例えば、組換えミクロソームまたは哺乳動物ミクロソームであることができる。2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体は、式Iの化合物:
【化1】

[式中、R1はOHまたはNHRxであり;
R2は(C1-C3)アルキル、トリフルオロメチル、アミノ、ニトロまたはハロであり;
nは0、1、2または3であり;
Rxはアリールまたは(C1-C3)アルキルアリールであって、アリールが、任意に1〜5のハロ、ヒドロキシ、ニトロまたはアミノ基で置換されるアリールまたは(C1-C3)アルキルアリールである]であり得る。他の実施形態において、2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体は、本明細書記載の式I〜XVのいずれか1つの化合物でもあり得る。一実施形態において、式Iの化合物は:
【化2】

であることができる。他の実施形態において、2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体は、本明細書記載の式I〜XVのいずれか1つの化合物であることができる。
【0021】
他の実施形態において、本発明は、試料中の対象とする酵素、例えばUGTの存在または量を検出または測定する方法であって:
a)試料、非ルシフェラーゼ酵素媒介反応のための第1反応混合物および、非ルシフェラーゼ酵素基質である2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体を含む混合物であって、非ルシフェラーゼ酵素(例えば、UGTまたは他の酵素)と、誘導体およびD-システインとを接触させることにより、甲虫ルシフェラーゼの生物発光基質である生成物を生じることができる前記混合物を提供し;
b)第1混合物の少なくとも一部と、D-システインを含む、甲虫ルシフェラーゼ媒介反応のための第2反応混合物とを接触させて、第2混合物を産出し;
c)第2混合物における発光を検出または測定し;
d)試料、非ルシフェラーゼ酵素媒介反応のための第1反応混合物、UGTの基質である2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体およびUDPGAを含む混合物を提供して、第3混合物を産出し、ここでUDPGAの存在下でUGTと誘導体との反応により、D-システインの存在下で甲虫ルシフェラーゼの生物発光基質ではない生成物を生じ;
e)第3混合物の少なくとも一部と、D-システインを含む、甲虫ルシフェラーゼ媒介反応のための第2反応混合物とを接触させて、第4混合物を産出し;
f)第4混合物における発光を検出または測定し;
g)第2混合物と第4混合物における発光量を比較し、それによって試料におけるUGTの存在または量を検出または測定すること;
を含む前記方法を提供する。
【0022】
本発明は、さらに、試料中のUGTモジュレーター活性を検出または測定する方法であって:
a)UGTを発現するミクロソームを含む試料、非ルシフェラーゼ酵素媒介反応のための第1反応混合物、UGTモジュレーター活性が評価される化合物および、非ルシフェラーゼ酵素基質である2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体を含む第1混合物であって、非ルシフェラーゼ酵素と誘導体との反応(例えば、UDPGAの非存在下で)により、D-システインの存在下で、甲虫ルシフェラーゼの生物発光基質である生成物を生じることができる前記第1混合物を提供し;
b)第1混合物の少なくとも一部と、D-システインを含む、甲虫ルシフェラーゼ媒介反応のための第2反応混合物を接触させて、第2混合物を産出し;
c)第2混合物における発光を検出または測定し;
d)UGTを発現するミクロソームを含む試料、非ルシフェラーゼ酵素媒介反応のための第1反応混合物、UGTモジュレーター活性が評価される化合物、UGTの基質である2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体およびUDPGAを含む混合物を提供して、第3混合物を作成し、ここでUGT、UDPGAと誘導体との反応により、D-システインの存在下で、甲虫ルシフェラーゼの生物発光基質ではない生成物を生じると考えられ;
e)第3混合物の少なくとも一部と、D-システインを含む、甲虫ルシフェラーゼ媒介反応のための第2反応混合物とを接触させて、第4混合物を産出し;
f)第4混合物における発光を検出または測定し;
g)第2混合物と第4混合物における発光量を比較し、それによって、試料中の評価される化合物のUGTモジュレーション活性を検出または測定すること;
を含む前記方法を提供する。
【0023】
本発明の方法の利点は、タンパク質沈殿および/またはクロマト精製ステップの必要性が除去されることを含む。本方法は、マルチウェルプレートで容易に実施することができ、従って、ハイスループットフォーマットで実施することができる。よって、本方法は、酵素モジュレーター活性に関して多数の化合物ライブラリーをスクリーニングするために用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】天然ホタルルシフェリンにおける環原子(6員の"ベンゾ"環("A環")、5員のチアゾール環("B環")および5員のチアゾリル環("C環"))の番号付けを示す図である。
【図2】2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの環原子(6員の"ベンゾ"環("A環")およびこのベンゾ環に縮合した5員のチアゾール環("B環"))を示す図である。
【図3】本発明の実施形態によるUDPグルクロノシルトランスフェラーゼ(UGT)活性の検出の概略図である。
【図4】実施形態による、化合物3138および3478の利用に関する12アイソザイムの活性データを示す図である。
【図5】実施形態による、化合物3165の利用に関する、12アイソザイムの活性データを示す図である。
【図6】哺乳動物ミクロソームによる、化合物3138の利用を示す図である。
【図7】哺乳動物ミクロソームによる、化合物3165の利用を示す図である。
【図8】本明細書記載の方法による、化合物3138を用いる、リトナビルによる種々のアイソザイムの阻害を示す図である。
【図9】本明細書記載の方法による、化合物3165を用いる、リトナビルによる種々のアイソザイムの阻害を示す図である。
【図10】実施形態による、それぞれのIC50値を有する、UGT 1A1(上部)およびUGT 2B7(下部)の滴定曲線を示す図である。
【図11】実施形態による、60μMのEC50を有する、ジクロフェナクによる化合物3138のHLM利用の阻害を示す図である。
【図12】実施形態による、アッセイ変動を測定するためのUGT 1A1のデータを示す図である。
【図13】実施形態による、種々の化合物による、HLMにおけるUGT活性の阻害を示す図である。
【図14】実施形態による、実施例9の記載に従った、ベンゾチアゾール誘導体化合物3016に対する光のアウトプット(Veritas(登録商標)ルミノメーターによる記録)でのCYP450酵素活性の選択的検出を示す図である。x軸は相対発光量(RLU)を示す。
【図15】実施形態による、実施例9の記載に従った、ベンゾチアゾール誘導体化合物3019に対する光のアウトプット(Veritas(登録商標)ルミノメーターによる記録)でのCYP450酵素活性の選択的検出を示す図である。x軸は相対発光量(RLU)を示す。
【図16】実施形態による、実施例9の記載に従った、ベンゾチアゾール誘導体化合物3026に対する光のアウトプット(Veritas(登録商標)ルミノメーターによる記録)でのCYP450酵素活性の選択的検出を示す図である。x軸は相対発光量(RLU)を示す。
【図17】実施形態による、実施例9の記載に従った、ベンゾチアゾール誘導体化合物3806に対する光のアウトプット(Veritas(登録商標)ルミノメーターによる記録)でのCYP450酵素活性の選択的検出を示す図である。x軸は相対発光量(RLU)を示す。
【図18】実施形態による、実施例9の記載に従った、ベンゾチアゾール誘導体化合物3814に対する光のアウトプット(Veritas(登録商標)ルミノメーターによる記録)でのCYP450酵素活性の選択的検出を示す図である。x軸は相対発光量(RLU)を示す。
【図19】実施形態による、実施例9の記載に従った、ベンゾチアゾール誘導体化合物3820に対する光のアウトプット(Veritas(登録商標)ルミノメーターによる記録)でのCYP450酵素活性の選択的検出を示す図である。x軸は相対発光量(RLU)を示す。
【図20】実施形態による、実施例9の記載に従った、ベンゾチアゾール誘導体化合物3833に対する光のアウトプット(Veritas(登録商標)ルミノメーターによる記録)でのCYP450酵素活性の選択的検出を示す図である。x軸は相対発光量(RLU)を示す。
【図21】実施形態による、実施例9の記載に従った、ベンゾチアゾール誘導体化合物3821に対する光のアウトプット(Veritas(登録商標)ルミノメーターによる記録)でのCYP450酵素活性の選択的検出を示す図である。x軸は相対発光量(RLU)を示す。
【図22】実施形態による、実施例9の記載に従った、ベンゾチアゾール誘導体化合物3835に対する光のアウトプット(Veritas(登録商標)ルミノメーターによる記録)でのCYP450酵素活性の選択的検出を示す図である。x軸は相対発光量(RLU)を示す。
【図23】実施形態による、実施例9の記載に従った、ベンゾチアゾール誘導体化合物3866に対する光のアウトプット(Veritas(登録商標)ルミノメーターによる記録)でのCYP450酵素活性の選択的検出を示す図である。x軸は相対発光量(RLU)を示す。
【図24】実施形態による、実施例9の記載に従った、ベンゾチアゾール誘導体化合物3868に対する光のアウトプット(Veritas(登録商標)ルミノメーターによる記録)でのCYP450酵素活性の選択的検出を示す図である。x軸は相対発光量(RLU)を示す。
【図25】実施形態による、実施例9の記載に従った、ベンゾチアゾール誘導体化合物3883に対する光のアウトプット(Veritas(登録商標)ルミノメーターによる記録)でのCYP450酵素活性の選択的検出を示す図である。x軸は相対発光量(RLU)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(発明の詳細な説明)
定義
本明細書において、以下の用語および表現は示された意味を有する。本発明の化合物が不斉置換炭素原子を含み、光学活性体またはラセミ体で単離されうることは明らかであろう。光学活性体の製造方法、例えばラセミ体の分割または光学活性出発物質からの合成による製造方法は当該分野で公知である。構造のすべてのキラル体、ジアステレオマー体、ラセミ体および幾何異性体は本発明の一部である。
【0026】
ラジカル、置換基および範囲に関して以下に記載した特定の値は、例示のためだけのものであって、ラジカルおよび置換基に関する他の定義値または、定義範囲内の他の値を排除するものではない。
【0027】
本明細書において、用語"置換された"は、“置換された”を用いる表現で示される基の1以上の(例えば、1、2、3、4または5の;いくつかの実施形態において1、2または3の;他の実施形態において1または2の)水素が、表示原子の通常の原子価を超えず、その置換が安定な化合物を生じるという条件で、表示基(単数または複数)から選択される基または当業者に公知の適切な基で置換されていることを示すものとする。適切な表示基は、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環、シクロアルキル、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリフルオロメチルチオ、ジフルオロメチル、アシルアミノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、カルボキシ、カルボキシアルキル、ケト、チオキソ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールスルフィニル、アリールスルホニル、ヘテロアリールスルフィニル、ヘテロアリールスルホニル、複素環スルフィニル、複素環スルホニル、ホスファート、スルファート、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシル(アルキル)アミンおよびシアノを含む。さらに、適切な表示基は、例えば、-X、-R、-O-、-OR、-SR、-S-、-NR2、-NR3、=NR、-CX3、-CN、-OCN、-SCN、-N=C=O、-NCS、-NO、-NO2、=N2、-N3、NC(=O)R、-C(=O)R、-C(=O)NRR-S(=O)2O-、-S(=O)2OH、-S(=O)2R、-OS(=O)2OR、-S(=O)2NR、-S(=O)R、OP(=O)O2RR、-P(=O)O2RR-P(=O)(O-)2、-P(=O)(OH)2、-C(=O)R、-C(=O)X、-C(S)R、-C(O)OR、-C(O)O-、-C(S)OR、-C(O)SR、-C(S)SR、-C(O)NRR、-C(S)NRR、-C(NR)NRR[式中、各Xは、独立してハロゲン("ハロ"):F、Cl、BrまたはIであり;各Rは、独立してH、アルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環、保護基またはプロドラッグ部分である)を含むことができる。当業者には明らかなように、置換基がケト(=O)またはチオキソ(=S)などである場合、置換された原子の2つの水素原子は置換されている。
【0028】
本発明において、安定な化合物のみが考えられ、請求される。しかしながら、特定の不安定な化合物、例えば容易には単離されない化合物は、本明細書記載の方法に用いることができる。“安定な化合物”および“安定な構造”は、反応混合物から有用な純度で単離されるのに十分堅固な化合物を示すものとする。
【0029】
あるジアステレオマーが、他のジアステレオマーと比較してより優れた特性または活性を示す場合がある。必要に応じて、キラルカラムを用いるHPLCによって、または、Thomas J. Tucker, et al., J. Med. Chem. 1994, 37, 2437-2444 の記載によるカンホン酸クロリド(camphonic chloride)などの分割剤を用いる分割により、ラセミ物質の分離を行うことができる。キラル化合物はまた、キラル触媒またはキラルリガンド(例えば Mark A. Huffman, et al., J. Org. Chem. 1995, 60, 1590-1594)を用いて直接に合成することもできる。
【0030】
本明細書において、用語"アルキル"は、例えば、1〜30炭素原子を有し、多くの場合1〜12、または1〜約6炭素原子を有する分枝鎖、非分枝鎖または環式炭化水素のことを言う。例は、限定するものではないが、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-メチル-1-プロピル、2-ブチル、2-メチル-2-プロピル(t-ブチル)、1-ペンチル、2-ペンチル、3-ペンチル、2-メチル-2-ブチル、3-メチル-2-ブチル、3-メチル-1-ブチル、2-メチル-1-ブチル、1-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、2-メチル-2-ペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3-メチル-3-ペンチル、2-メチル-3-ペンチル、2,3-ジメチル-2-ブチル、3,3-ジメチル-2-ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシルなどを含む。アルキルは置換されていなくてもよく、置換されていてもよい。アルキルはまた、場合により、部分的にまたは完全に不飽和であってもよい。そのようなものとして、アルキル基の列挙は、アルケニル基およびアルキニル基を共に含む。アルキルは、上記で説明かつ例示したように、一価の炭化水素ラジカルであることもでき、二価の炭化水素ラジカル(すなわち、アルキレン)であることもできる。
【0031】
用語"アルケニル"とは、モノラジカル分枝鎖または非分枝鎖部分不飽和炭化水素鎖(すなわち炭素-炭素sp2二重結合)のことを言う。一実施形態において、アルケニル基は、2〜10炭素原子を有することもでき、2〜6炭素原子を有することもできる。他の実施形態において、アルケニル基は2〜4炭素原子を有する。例は、限定するものではないが、エチレンまたはビニル、アリル、シクロペンテニル、5-ヘキセニルなどを含む。アルケニルは、置換されていなくてもよく、置換されていてもよい。
【0032】
用語"アルキニル"は、完全に不飽和である箇所(すなわち炭素-炭素sp三重結合)を有するモノラジカル分枝鎖または非分枝鎖炭化水素鎖のことを言う。一実施形態において、アルキニル基は2〜10炭素原子を有することもでき、2〜6炭素原子を有することもできる。他の実施形態において、アルキニル基は2〜4炭素原子を有することができる。本用語は、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、1-オクチニルなどの基により例示される。アルキニルは、置換されていなくてもよく、置換されていてもよい。
【0033】
用語"シクロアルキル"は、単環式環または多縮合環を有する3〜10炭素原子の環式アルキル基のことを言う。このようなシクロアルキル基は、例として、単環構造、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチルなど、または多環構造、例えばアダマンタニルなどを含む。シクロアルキルは置換されていなくてもよく、置換されていてもよい。シクロアルキル基は一価または二価であることができ、アルキル基に関して前述したように、置換されていてもよい。シクロアルキル基は、場合により1以上の不飽和部位を含むことができる。例えば、シクロアルキル基は1以上の炭素-炭素二重結合を含むことができ、このようなものとしては、例えばシクロヘキセン、1,3-シクロヘキサジエン、1,4-シクロヘキサジエンなどがある。
【0034】
用語"アルコキシ"は、基アルキル-O-(アルキルは本明細書で定義されるものである)のことを言う。一実施形態において、アルコキシ基は、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、iso-プロポキシ、n-ブトキシ、tert-ブトキシ、sec-ブトキシ、n-ペントキシ、n-ヘキソキシ、1,2-ジメチルブトキシなどを含む。アルコキシは、置換されていなくてもよく、置換されていてもよい。
【0035】
本明細書において、"アリール"は、親芳香環系の1つの炭素原子から1つの水素原子を除去して誘導される芳香族炭化水素基のことを言う。ラジカルは、親環系の飽和炭素原子上にあることもでき、不飽和炭素原子上にあることもできる。アリール基は6〜30炭素原子を有することができる。アリール基は、少なくとも1つの環が芳香族である単環式環(例えば、フェニル)または多縮合(縮合)環(例えば、ナフチル、ジヒドロフェナントレニル、フルオレニルまたはアントリル)を有することができる。典型的なアリール基は、限定するものではないが、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニルなどに由来する基を含む。アリールは、アルキル基に関して前述したように、置換されていなくてもよく、置換されていてもよい。
【0036】
用語"ハロ"は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードのことを言う。同様に、用語"ハロゲン"は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素のことを言う。
【0037】
用語"ハロアルキル"は、同一であっても異なっていてもよい、本明細書で定義された1以上のハロ基によって置換された、本明細書で定義されたアルキルのことを言う。一実施形態において、ハロアルキルは、1、2、3、4または5つのハロ基によって置換されていることができる。他の実施形態において、ハロアルキルは、1、2または3つのハロ基によって置換されていることができる。用語ハロアルキルはまた、ぺルフルオロアルキル基も含む。典型的なハロアルキル基は、例として、トリフルオロメチル、3-フルオロドデシル、12,12,12-トリフルオロドデシル、2-ブロモオクチル、3-ブロモ-6-クロロヘプチル、1H,1H-ペルフルオロオクチルなどを含む。ハロアルキルは、アルキル基に関して前述したように、置換されていてもよい。
【0038】
本明細書において、用語"ヘテロアリール"は、1、2または3つの芳香環を含み、芳香環中に少なくとも1つの窒素、酸素または硫黄原子を含み、"置換された"の定義において前述した、例えば1以上の、特に1〜3の置換基で置換されていなくてもよく、置換されていてもよい単環式、二環式または三環式環系と定義される。典型的なヘテロアリール基は、1以上のヘテロ原子に加えて2〜20炭素原子を含む。ヘテロアリール基の例は、限定するものではないが、2H-ピロリル、3H-インドリル、4H-キノリジニル、アクリジニル、ベンゾ[b]チエニル、ベンゾチアゾリル、β-カルボリニル、カルバゾリル、クロメニル、シンノリニル、ジベンゾ[b,d]フラニル、フラザニル、フリル、イミダゾリル、イミジゾリル(imidizolyl)、インダゾリル、インドリシニル(indolisinyl)、インドリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ナフチリジニル、オキサゾリル、ペリミジニル(perimidinyl)、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナルサジニル(phenarsazinyl)、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェニキサジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピリミジニル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、テトラゾリルおよびキサンテニルを含む。一実施形態において、用語"ヘテロアリール"は、5〜6環原子を含み、炭素ならびに、過酸化物ではない酸素、硫黄およびN(Z)(Zは、存在しないかあるいはH、O、アルキル、アリールまたは(C1-C6)アルキルアリールである)から独立して選択される1、2、3または4つのヘテロ原子を含む単環式芳香環を意味する。他の実施形態において、ヘテロアリールは、ヘテロアリールから誘導された約8〜10環原子のオルト縮合二環式複素環、特に、ベンゾ誘導体または、プロピレン、トリメチレンもしくはテトラメチレンジラジカルをそれに縮合させることにより誘導した誘導体を意味する。
【0039】
用語"複素環"は、酸素、窒素および硫黄の群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含み、本明細書において用語"置換された"で定義された1以上の基で置換されていてもよい飽和または部分不飽和環系のことを言う。複素環は、1以上のヘテロ原子を含む単環式、二環式または三環式基であることができる。複素環基は、該環に結合されたオキソ基(=O)またはチオキソ(=S)基を含むこともできる。複素環基の限定するものではない例は、1,3-ジヒドロベンゾフラン、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン、1,4-ジチアン、2H-ピラン、2-ピラゾリン、4H-ピラン、クロマニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、インドリニル、イソクロマニル、イソインドリニル、モルホリン、ピペラジニル、ピペリジン、ピペリジル、ピラゾリジン、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピロリジン、ピロリン、キヌクリジンおよびチオモルホリンを含む。
【0040】
用語"複素環"は、限定するものではないが、例として、Paquette, Leo A.; Principles of Modern Heterocyclic Chemistry (W.A. Benjamin, New York, 1968)、特に1、3、4、6、7および9章; The Chemistry of Heterocyclic Compounds, A Series of Monographs” (John Wiley & Sons, New York、1950年から現在まで)特に13、14、16、19および28巻;およびJ. Am. Chem. Soc. 1960, 82, 5566 に記載の複素環のモノラジカルを含むことができる。一実施形態において、“複素環”は、1以上の(例えば1、2、3または4つの)炭素原子がヘテロ原子(例えばO、NまたはS)で置換された、本明細書において定義された“炭素環”を含む。
【0041】
複素環の例は、限定するものではないが、例として、ジヒドロピリジル、テトラヒドロピリジル(ピペリジル)、チアゾリル、テトラヒドロチオフェニル、硫黄酸化テトラヒドロチオフェニル、ピリミジニル、フラニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、ピペリジニル、4-ピペリドニル、ピロリジニル、2-ピロリドニル、ピロリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オクタヒドロイソキノリニル、アゾシニル、トリアジニル、6H-1,2,5-チアジアジニル、2H,6H-1,5,2-ジチアジニル、チエニル、チアントレニル、ピラニル、イソベンゾフラニル、クロメニル、キサンテニル、フェノキサンチニル、2H-ピロリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、3H-インドリル、1H-インダゾリル(indazoly)、プリニル、4H-キノリジニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、カルバゾリル、β-カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ピリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フラザニル、フェニキサジニル、イソクロマニル、クロマニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピペラジニル、インドリニル、イソインドリニル、キヌクリジニル、モルホリニル、オキサゾリジニル、べンゾトリアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、オキシインドリル、ベンゾオキサゾリニル、イサチノイルおよびビス-テトラヒドロフラニルを含む。
【0042】
限定するものではないが、例として、炭素結合複素環は、ピリジンの2、3、4、5または6位、ピリダジンの3、4、5または6位、ピリミジンの2、4、5または6位、ピラジンの2、3、5または6位、フラン、テトラヒドロフラン、チオフラン、チオフェン、ピロールまたはテトラヒドロピロールの2、3、4または5位、オキサゾール、イミダゾールまたはチアゾールの2、4または5位、イソオキサゾール、ピラゾールまたはイソチアゾールの3、4または5位、アジリジンの2または3位、アゼチジンの2、3または4位、キノリンの2、3、4、5、6、7または8位、あるいはイソキノリンの1、3、4、5、6、7または8位に結合されている。炭素結合複素環は、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、5-ピリジル、6-ピリジル、3-ピリダジニル、4-ピリダジニル、5-ピリダジニル、6-ピリダジニル、2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル、6-ピリミジニル、2-ピラジニル、3-ピラジニル、5-ピラジニル、6-ピラジニル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリルなどを含む。
【0043】
限定するものではないが、例として、窒素結合複素環は、アジリジン、アゼチジン、ピロール、ピロリジン、2-ピロリン、3-ピロリン、イミダゾール、イミダゾリジン、2-イミダゾリン、3-イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、2-ピラゾリン、3-ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドール、インドリン、1H-インダゾールの1位、イソインドールまたはイソインドリンの2位、モルホリンの4位および、カルバゾールまたはβ-カルボリンの9位に結合されていることができる。一実施形態において、窒素結合複素環は、1-アジリジル、1-アゼテジル、1-ピロリル、1-イミダゾリル、1-ピラゾリルおよび1-ピペリジニルを含む。
【0044】
用語"炭素環"は、単環式では3〜8炭素原子、二環式では7〜12炭素原子、多環式では最大約30炭素原子を有する飽和、不飽和または芳香環のことを言う。単環式炭素環は、一般的には3〜6環原子、より一般的には5〜6環原子を有する。二環式炭素環は、例えば、ビシクロ[4,5]、[5,5]、[5,6]または[6,6]系で配置された7〜12環原子、あるいはビシクロ[5,6]または[6,6]系で配置された9または10環原子を有する。炭素環の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、1-シクロペント-1-エニル、1-シクロペント-2-エニル、1-シクロペント-3-エニル、シクロヘキシル、1-シクロヘキサ-1-エニル、1-シクロヘキサ-2-エニル、1-シクロヘキサ-3-エニル、フェニル、スピリルおよびナフチルを含む。炭素環は、アルキル基に関して前述したように、置換されていてもよい。
【0045】
用語"アルカノイル"または"アルキルカルボニル"は、-C(=O)R(Rは、以前に定義したアルキル基である]のことを言う。
【0046】
用語"アシルオキシ"または"アルキルカルボキシ"は、-O-C(=O)R(Rは、以前に定義したアルキル基である)のことを言う。アシルオキシ基の例は、限定するものではないが、アセトキシ、プロパノイルオキシ、ブタノイルオキシおよびペンタノイルオキシを含む。アシルオキシ基の形成には、上記で定義した任意のアルキル基を用いることができる。
【0047】
用語"アルコキシカルボニル"は、-C(=O)OR(または"COOR")(Rは、以前に定義したアルキル基である)のことを言う。
【0048】
用語"アミノ"は、-NH2のことを言う。アミノ基は、用語"置換された"に関して本明細書で定義したように置換されていてもよい。用語"アルキルアミノ"は、-NR2(少なくとも1つのRはアルキルであり、2番目のRはアルキルまたは水素である)のことを言う。用語"アシルアミノ"は、N(R)C(=O)R(各Rは、独立して水素、アルキルまたはアリールである)のことを言う。
【0049】
用語"アミノ酸"は、D型またはL型の天然アミノ酸(例えばAla、Arg、Asn、Asp、Cys、Glu、Gln、Gly、His、Hyl、Hyp、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、TyrおよびVal)に加えて、非天然アミノ酸(例えばホスホセリン、ホスホスレオニン、ホスホチロシン、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタマート;馬尿酸、オクタヒドロインドール-2-カルボン酸、スタチン、1,2,3,4,-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、ペニシラミン、オルニチン、シトルリン、α-メチル-アラニン、p-ベンゾイルフェニルアラニン、フェニルグリシン、プロパルギルグリシン、サルコシンおよびtert-ブチルグリシン)の残基を含む。本用語はまた、従来のアミノ保護基(例えばアセチルまたはベンジルオキシカルボニル)を有する天然および非天然アミノ酸に加えて、カルボキシ末端が保護された天然および非天然アミノ酸(例えば(C1-C6)アルキル、フェニルもしくはベンジルエステルまたはアミドとして;あるいはα-メチルベンジルアミドとして)を含む。他の適切なアミノおよびカルボキシ保護基は当業者に公知である(例えば、Greene, T.W.; Wutz, P.G.M., Protecting Groups In Organic Synthesis, 2nd edition, John Wiley & Sons, Inc., New York (1991) およびその引用文献を参照のこと)。
【0050】
用語"ペプチド"は、2〜35のアミノ酸(例えば上で定義した)またはペプチジル残基の配列を示す。配列は、線状または環状であることができる。例えば、環状ペプチドは製造することもできるし、配列内の2つのシステイン残基間のジスルフィド架橋の形成によって生じる場合もある。好ましくは、ペプチドは3〜20アミノ酸または5〜15アミノ酸を含む。ペプチド誘導体は、米国特許第4,612,302号;第4,853,371号;および第4,684,620号に開示されているように製造できるし、以下の実施例に記載されているようにしても製造できる。本明細書に具体的に記されたペプチド配列は、左側がアミノ末端であり、右側がカルボキシ末端であるように書かれている。
【0051】
用語"糖質"は、糖または炭水化物のことを言い、特に単糖のことを言う。糖質は、C6-ポリヒドロキシ化合物であり、一般的にはC6-ペンタヒドロキシであり、多くの場合環状グリカールであることができる。本用語は、既知の単純糖類およびその誘導体に加えて、2以上の単糖類残基を有する多糖も含む。糖質は、アミノ酸の定義において前述したように、ヒドロキシル基上に保護基を含むことができる。糖質のヒドロキシル基は、1以上のハロまたはアミノ基によって置換されることができる。さらに、炭素原子の1以上は、例えばケトまたはカルボキシル基に酸化されることができる。
【0052】
用語"中断される"は、示された原子のそれぞれの通常原子価を超えず、中断が安定な化合物をもたらすことを条件にして、用語"中断される"を用いる表現において言及される特定の炭素鎖の2つの隣接炭素原子間(および、それらに結合されている水素原子との間(例えば、メチル(CH3)、メチレン(CH2)またはメチン(CH)))に他の基が挿入されることを示す。炭素鎖を中断できる適切な基は、例えば、1以上の、過酸化物ではないオキシ(-O-)、チオ(-S-)、イミノ(-N(H)-)、メチレンジオキシ(-OCH2O-)、カルボニル(-C(=O)-)、カルボキシ(-C(=O)O-)、カルボニルジオキシ(-OC(=O)O-)、カルボキシラト(-OC(=O)-)、イミン(C=NH)、スルフィニル(SO)およびスルホニル(SO2)を含む。アルキル基は、前述の適切な基の1以上(例えば、1、2、3、4、5または約6)によって中断されることができる。中断部位は、アルキル基の炭素原子と、アルキル基が結合されている炭素原子との間であることもできる。
【0053】
1以上の置換基を含む、上記の基のいずれに関しても、当然ながら、このような基は、立体的に実行不可能な、かつ/または合成的に実行不可能な任意の置換または置換パターンを含まない事は言うまでもない。加えて、本発明の化合物は、これらの化合物の置換によって生じるすべての立体化学的異性体を含む。
【0054】
本明細書記載の化合物内の選択された置換基は、再帰的な程度に応じて存在する。ここでは、“再帰的置換基”は、置換基が、それ自体の他の例を列挙できることを意味する。このような置換基の再帰的性質によって、理論上は、任意の所定の請求項中に、多数が存在できる。医薬化学および有機化学の当業者には、このような置換基の総数が、意図する化合物の所望の特性によって合理的に制限されることは明らかであろう。例であって、限定ではないが、このような特性は、分子量、溶解性またはlog Pなどの物理的特性、対象とする標的に対する活性などの適用特性および合成の容易さなどの実用特性を含む。
【0055】
再帰的置換基は、本発明の対象とする側面である。医薬化学および有機化学の当業者には、このような置換基の多機能性は明らかであろう。本発明の請求項に再帰的置換基が存在する程度に応じて、上で示したように総数が決定されると考えられる。
【0056】
本明細書において、用語"リンカー"は、2つの化学基を共有結合で連結させる炭素鎖であり、場合により自己切断でき、あるいは酵素に対する基質が共有結合されている場合、その酵素または他の分子によって切断でき、その鎖は、場合により、1以上の窒素原子、酸素原子、カルボニル基、(置換)芳香環またはペプチド結合によって中断されている。
【0057】
用語"ルシフェラーゼ"は、特記しない限り、天然に存在するルシフェラーゼまたは変異体ルシフェラーゼのことを言う。天然に存在するルシフェラーゼである場合、当業者はそれを生物体から容易に得ることができる。ルシフェラーゼが、天然に存在するルシフェラーゼの、ルシフェラーゼ-ルシフェリン反応における活性を保持する、天然に存在するルシフェラーゼまたはその変異体である場合、ルシフェラーゼをコードするcDNAを発現するように形質転換された細菌、酵母、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞などの培養物から、またはルシフェラーゼをコードする核酸からルシフェラーゼを製造するためのin vitro無細胞系からそれを容易に得ることができる。ルシフェラーゼは、Promega社(ウィスコンシン州マディソン)から入手できる。
【0058】
本明細書において、“生物発光アッセイ”または"生物発光反応"は、D-システインの存在下での、非ルシフェラーゼ酵素と2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体との反応の生成物がルシフェラーゼの基質であるか、またはD-システインの存在下での、2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体を有する非酵素反応の生成物がルシフェラーゼの基質であり、それが測定可能な量の光を生じる反応を含む。
【0059】
本明細書において、"生物発光"は、光が生じる酵素と基質との反応の結果として生じる光である。このような酵素(生物発光酵素)の例は、ホタルルシフェラーゼ、コメツキムシルシフェラーゼ、レニラルシフェラーゼ、ウミホタルルシフェラーゼ、イクオリン発光タンパク質、オベリン発光タンパク質などを含む。
【0060】
本明細書において、“生物発光アッセイ試薬”は、基質に加えて、補因子(単数または複数)または他の分子(単数または複数)、例えば生物発光反応のための酵素などのタンパク質を含むことができる。
【0061】
"反応混合物"は、特定の反応のためのすべての試薬を含むこともでき、その反応のための試薬の少なくとも1つを欠くこともできる。例えば、ルシフェラーゼ反応混合物は、ルシフェラーゼの基質を除いた反応のための試薬(例えば、試験試料がルシフェラーゼ基質を有するかどうかを測定するのに有用な反応混合物)を含むことができる。非ルシフェラーゼ酵素のための反応混合物は、その反応のためのすべての試薬を、検出される分子を除いて含むことができる。例えば該混合物は、非ルシフェラーゼ酵素の補因子を除くすべての試薬を含み、それによって、該混合物は試験試料における補因子の存在を検出するのに有用である。
【0062】
例えば、ルシフェラーゼ媒介反応のための反応混合物は、ルシフェリン検出試薬(LDR)などの試薬および、場合により種々のインヒビターおよび/または界面活性剤を含むことができる。LDRは、アッセイ混合物中に存在するルシフェリンまたはルシフェリン誘導体の量に比例した安定な光シグナルを提供できる。反応混合物は、例えば、種々の緩衝液などの、反応混合物のpHを調節する試薬および/または、特定の酵素活性のインヒビターである試薬を含むことができる。LDRを含有する反応混合物は、例えば、米国公開第2004/0171099号(Caliら)に記載されている試薬を含むことができる(参照によりその全体が本願に組み込まれる)。米国公開第2004/0171099号に記載の種々の方法および該方法の種々の側面は、本明細書記載の方法に使用できる一方で、米国公開第2004/0171099号に記載の他の方法または該方法の側面および試薬は本明細書記載の方法から除外されうることは、当業者には明らかであろう。
【0063】
本明細書において、"2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体"は、非ルシフェラーゼ酵素の基質であり、D-システインの存在下でルシフェラーゼの生物発光基質であるか、または非酵素反応で生成された分子を検出するのに有用な生成物を生じる分子である。本発明の誘導体は、2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの環の1以上における1以上の修飾および/または2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの環の1以上に結合した置換基を有することができる。例は、ルシフェラーゼまたは非ルシフェラーゼ酵素の基質を提供するための、6-OHを有する2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールまたは、6-Oまたは6-N原子がルシフェラーゼまたは非ルシフェラーゼ酵素の基質である置換基を有するものを含む。2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールのさらなる例は、本明細書記載の式の化合物を含む。他の実施形態において、4、5または7位で置換されている2-シアノ-ベンゾチアゾール誘導体が提供され、本発明の方法に使用することができる。
【0064】
II.本発明の方法
本発明は、2-シアノ-6-ヒドロキシベンゾチアゾールまたは2-シアノ-6-アミノベンゾチアゾールの誘導体(本明細書においては、"2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾール"の誘導体と呼ぶ)を用いる、対象とする酵素のアッセイを行う方法を提供する。本発明はまた、酵素アッセイに使用できる新規化合物および組成物を提供する。
【0065】
一実施形態において、本発明は、2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体および、酵素活性アッセイまたは非酵素的生物学的アッセイにおけるこのような誘導体の使用方法を提供する。前記誘導体は所望の酵素または反応の基質として役立ち、D-システインの存在下でルシフェラーゼの生物発光基質を提供する生成物を生じる。従って、2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾール骨格、例えばその6'-ヒドロキシ部位または6'-アミノ部位に結合された、所望の非ルシフェラーゼ酵素の特定の酵素認識部位を有する2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体(基質)を提供することによって、多数の非ルシフェラーゼ酵素を生物発光アッセイにおいて検出でき、かつ/またはそれらの活性を生物発光アッセイにおいて測定できる。
【0066】
本発明の方法の一部(例えば、上記のステップb)は、ある量のD-システインを必要とするが、D-システインは、必ずしもエナンチオマー的に純粋である必要はないことに留意することが重要である。一部の実施形態において、システインのラセミ混合物を使用することができる。他の実施形態において、D-およびL-システインの他の混合物を使用できるが、試験反応および対照反応の両方において、実質的に同じ割合のD-およびL-システインを用いることが有利である。例えば、システインのラセミ混合物は、もっぱらD-システインのみを用いて得られるであろう対照反応における光量の約50%を提供できる。最大シグナルの50%であっても容易に検出およ測定され、十分にアッセイの有用な範囲内である。
【0067】
本発明の誘導体の範囲内の2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの修飾は、環原子の1以上の置換、環原子に結合した置換基(原子または基)の1以上の置換および/または環への1以上の原子の付加、例えば環拡大もしくは環の付加またはそれらの組み合わせを含む。2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールにおける環原子の一部の番号付けを図2に示す。2-シアノ-6-ヒドロキシベンゾチアゾールは、2つの縮合環、すなわち6位にOH基を有する6員環(以後"A環"と呼ぶ)およびこの6員環に縮合させた5員環(以後、"B環"と呼ぶ)を有し、2位にシアノ基を有する。
【0068】
例えば、A環修飾を有する2-シアノ-6-ヒドロキシベンゾチアゾール誘導体は、A環における炭素原子の他の原子による置換、A環への付加、環原子に結合している置換基の他の原子または基による置換またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。B環修飾を有する2-シアノ-6-ヒドロキシ-ベンゾチアゾール誘導体は、この5員環における原子への付加またはその置換、例えば1以上の原子の挿入(それによって、環が例えば6員環に拡大される)、環におけるNまたはSの、他の原子、例えばCまたはOによる置換、置換基原子または環原子に結合した基の置換またはそれらの任意の組み合わせを有することができる。一実施形態において、本発明の誘導体は、2以上の位置で修飾された誘導体である。例えば、本誘導体は、2つの(もしくはそれ以上の)A環修飾、2つの(もしくはそれ以上の)B環修飾またはそれらの任意の組み合わせを有する。一実施形態において、修飾は、2-シアノ-6-ヒドロキシベンゾチアゾールの環の1つへの置換基の付加を含むことができ、ここで置換基は、非ルシフェラーゼ酵素の基質であるか、または非ルシフェラーゼ酵素基質のリンカーである。
【0069】
一実施形態において、2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体は、P450酵素もしくはモノアミン酸化酵素(MAO)または他の酵素、例えばN-アセチルトランスフェラーゼ(NAT)、フラビンモノアミン酸化酵素(FMO)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、ホスファターゼ(例えば、アルカリホスファターゼ(AP))、スルファターゼもしくはUDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ(UGT)を含む非ルシフェラーゼ酵素を検出するのに有用である。例えば、A環修飾を有する典型的な誘導体は、レダクターゼ、例えばシトクロムP450レダクターゼ、MAO、FMO、GST、デアルキラーゼ、デアセチラーゼ、デホルミラーゼ、ホスファターゼ、例えばAP、スルファターゼ、ベータラクタマーゼ、アルコール脱水素酵素、プロテアーゼ、例えばプロテアソーム、カテプシン、カルパイン、βセクレターゼ、トロンビンもしくはグランザイム、ルシフェラーゼもしくは反応性酸素種(ROS)の検出に有用なもの、ペルオキシダーゼ、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)の基質および/または酸化還元条件であることができる。少なくともB環の修飾を有する誘導体で検出される典型的な分子または条件は、限定するものではないが、デアルキラーゼ、GSTもしくはルシフェラーゼ、酸化還元条件またはUGT酵素もしくはそれらの活性のモジュレーション(例えば、阻害または活性化)を含む。それらの誘導体で検出される典型的な分子は、シトクロムP450酵素、エステラーゼ、例えばアセチルコリンエステラーゼ、OHラジカル、デメチラーゼ、デアセチラーゼ、デホルミラーゼ、またはマイコプラズマカルボキシペプチダーゼを含む。
【0070】
一実施形態において、本発明の誘導体は、次の構造:L-X-M[式中、Lは酵素の基質または酵素と相互作用する他の分子であることができ;XはO、NRであることができ、ここでRは置換されていてもよいアルキル基もしくは窒素保護基、NHまたはリンカー、例えば、L-X-MからLが除去された後に自発的に分解されてMを生じる自己分解型リンカーであることができ、Mは、1以上の置換基で置換されていてもよい2-シアノ-ベンゾチアゾール、例えば本明細書記載のものであることができる)を有する。
【0071】
本明細書記載の2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾール誘導体の使用により、非ルシフェラーゼ分子との相互作用により光学特性における測定可能な変化を生じるアッセイを構築することができる。本明細書に記載されるように、2-シアノ-6-ヒドロキシベンゾチアゾール誘導体は、化学リンカーによって2-シアノ-6-ヒドロキシベンゾチアゾールに結合される、非ルシフェラーゼ酵素の反応性化学基を含む基質を含むことができる。非ルシフェラーゼ酵素による誘導体の反応性化学基の変換により、基質の一部、化学リンカーの一部、化学リンカーまたは基質および化学リンカーの一部を含む(保持する)生成物を生じることができ、その生成物は、D-システインの存在下で、ルシフェラーゼの生物発光基質を提供する。このように、本発明の2-シアノ-6-ヒドロキシベンゾチアゾール誘導体を用いる生物発光方法は、1以上の分子、例えば酵素、ATPなどの酵素反応の補因子、酵素基質、酵素インヒビター、酵素アクチベーターまたはOH基、あるいは1以上の条件、例えば酸化還元条件を検出するために用いることができる。
【0072】
一実施形態において、1以上の非ルシフェラーゼ酵素を検出するための生物発光アッセイ法が提供される。本方法は、1以上の非ルシフェラーゼ酵素、基質または反応のための補因子を有することが推測される試料と、非ルシフェラーゼ酵素基質を有する2-シアノ-置換ベンゾチアゾールの誘導体を含む対応する反応混合物を接触させることを含む。一実施形態において、誘導体は、非ルシフェラーゼ酵素基質、例えばシトクロムP450酵素の非ルシフェラーゼ酵素基質を含むA環における修飾を有する誘導体である。他の実施形態において、誘導体は、対象とする酵素の基質を含む環の1つへの修飾および、その環または他の環の1以上へのさらなる修飾を有する誘導体である。
【0073】
本発明の誘導体が、D-システインの存在下で、ルシフェラーゼの基質として直接に機能しないで、誘導体と非ルシフェラーゼ酵素との反応の生成物が、D-システインの存在下で、ルシフェラーゼの基質として機能する場合、非ルシフェラーゼ酵素とルシフェラーゼの遂次または同時反応を行うことができる。例えば、非ルシフェラーゼ酵素基質を有する2-シアノ-6-ヒドロキシベンゾチアゾール誘導体を含み、その反応の生成物が、D-システインの存在下でルシフェラーゼの生物発光基質を提供する非ルシフェラーゼ酵素のアッセイは、単一の反応器において、その器に甲虫ルシフェラーゼ反応混合物を加えて行うことができる。D-システインは、非ルシフェラーゼ反応混合物中に、ルシフェラーゼ反応混合物中に、別々に加えて、またはそれらの任意の組み合わせで存在させることができる。
【0074】
他の実施形態において、非ルシフェラーゼ酵素基質を有する2-シアノ-6-ヒドロキシベンゾチアゾール誘導体を含み、その反応の生成物が、D-システインの存在下でルシフェラーゼの生物発光基質を提供する非ルシフェラーゼ酵素は、単一の反応器において、かつその反応物の一部を、甲虫ルシフェラーゼ反応混合物を有する別の反応器に加えて行うことができる。D-システインは、第1反応器、第2反応器のいずれかまたはその両方に存在させることができる。あるいは、非ルシフェラーゼとルシフェラーゼ反応とを、同一反応器において同時に行うこともできる。
【0075】
このように、一実施形態において、本発明は、試料中の非ルシフェラーゼ酵素媒介反応のための分子の存在または量を検出または測定する方法を提供する。本方法は、試料、非ルシフェラーゼ酵素媒介反応のための第1反応混合物および、非ルシフェラーゼ酵素基質を含む2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体を接触させて第1混合物を作成することを含む。第1混合物は、非ルシフェラーゼ酵素と誘導体との反応によって生成する生成物を含む。D-システインの存在下での生成物は、ルシフェラーゼの生物発光基質である。一実施形態において、誘導体は式Iの化合物である。他の実施形態において、誘導体は式IIの化合物である。さらに他の実施形態において、誘導体は、本明細書記載の他の式の化合物である。第1混合物の少なくとも一部と、ルシフェラーゼ媒介反応のための第2反応混合物とを接触させて、第2混合物を作成する。第1混合物、第2混合物のいずれかまたはその両方は、D-システインを含むことができる。次いで、第2反応における発光を検出または測定し(例えば定量し)、それによって、例えば対照と比較して、試料において非ルシフェラーゼ酵素媒介反応のための分子の存在または量を検出または測定する。
【0076】
別の実施形態において、試料中の第1非ルシフェラーゼ酵素媒介反応のための分子の存在または量を検出または測定する方法が提供される。本方法は、試料、非ルシフェラーゼ媒介酵素反応およびルシフェラーゼ媒介反応のための反応混合物および、非ルシフェラーゼ酵素基質を有する2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体を接触させて、混合物を作成することを含む。試料、非ルシフェラーゼ酵素のための反応混合物、ルシフェラーゼのための反応混合物またはそれらの任意の組み合わせ中にD-システインを存在させることができる。非ルシフェラーゼ酵素と誘導体との反応により、D-システインの存在下で、ルシフェラーゼの発光基質である生成物を生じる。混合物における発光を検出または測定し、それによって、試料における非ルシフェラーゼ媒介反応のための分子の存在または量を検出または測定する。
【0077】
一実施形態において、本発明は、試料、非ルシフェラーゼ酵素媒介反応のための第1反応混合物および、非ルシフェラーゼ酵素基質を含む2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体を有する混合物を作成することを含む。非ルシフェラーゼ酵素と誘導体との反応によって、D-システインの存在下で甲虫ルシフェラーゼの生物発光基質である生成物を生じる。第1混合物の少なくとも一部と、D-システインを含む甲虫ルシフェラーゼ媒介反応のための第2反応混合物とを接触させて、第2混合物を作成する。第2混合物における発光を検出または測定し、それによって、試料における非ルシフェラーゼ酵素媒介反応のための分子の存在または量を検出または測定する。
【0078】
他の実施形態において、本方法は、試料、D-システインを含む、非ルシフェラーゼ酵素媒介反応および甲虫ルシフェラーゼ媒介反応のための反応混合物および、非ルシフェラーゼ酵素基質を含む2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体を有する混合物を作成することを含む。非ルシフェラーゼ酵素と誘導体との反応により、D-システインの存在下で甲虫ルシフェラーゼの生物発光基質である生成物を生じる。混合物における発光を検出または測定し、それによって、試料における非ルシフェラーゼ酵素媒介反応のための分子の存在または量を検出または測定する。
【0079】
さらに他の実施形態において、本方法は、D-システインを含む試料、非ルシフェラーゼ酵素媒介反応および甲虫ルシフェラーゼ媒介反応のための反応混合物および、非ルシフェラーゼ酵素基質を含む2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体を有する混合物を作成することを含む。非ルシフェラーゼ酵素と誘導体との反応により、D-システインの存在下で甲虫ルシフェラーゼの生物発光基質である生成物を生じる。混合物における発光を検出または測定し、それによって、試料における非ルシフェラーゼ酵素媒介反応のための分子の存在または量を検出または測定する。
【0080】
本発明はまた、試料中の非酵素分子の存在または量を検出する方法に関する実施形態を提供する。本方法は、試料、非酵素媒介反応のための第1反応混合物および、該分子の存在下で生成物を生じる2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体を接触させることを含む。D-システインの存在下での生成物はルシフェラーゼの生物発光基質である。第1反応混合物の少なくとも一部と、ルシフェラーゼ媒介反応のための第2反応混合物とを接触させて第2反応物を作成する。次いで、第2反応物における発光を検出または測定し、それによって、該分子の存在または量を検出または測定する。
【0081】
非ルシフェラーゼ酵素媒介反応のモジュレーターを同定するための方法もまた提供される。本方法は、1以上の薬剤、非ルシフェラーゼ酵素媒介反応のための第1反応混合物および、非ルシフェラーゼ酵素基質を有する2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体を接触させて第1混合物を作成するか、またはこのような混合物を提供することを含む。第1混合物は、1以上の薬剤の非存在下で、非ルシフェラーゼ酵素と誘導体との反応によって生成する生成物であって、D-システインの存在下で甲虫ルシフェラーゼの生物発光基質である前記生成物を含む。第1混合物の少なくとも一部および、甲虫ルシフェラーゼ媒介反応のための第2反応混合物を混合し、第2混合物を作成する。1以上の薬剤、第1反応混合物、第2反応混合物、またはそれらの任意の組み合わせ中にD-システインを存在させることができる。第2混合物における発光を対照混合物と比較し、それによって、薬剤の1以上が、非ルシフェラーゼ酵素媒介反応をモジュレートするかどうかを同定する。
【0082】
従って、本発明は、1以上の分子、例えば酵素、ATPなどの酵素反応の補因子、酵素基質、酵素インヒビター、酵素アクチベーターまたはOH基、あるいは1以上の条件、例えば酸化還元条件を検出するための2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体を用いる生物発光方法を提供する。従って、本発明は、試料中の分子の量、活性または存在を検出する生物発光アッセイを提供する。
【0083】
本方法は、例えば、少なくとも1つの分子、例えば非ルシフェラーゼ酵素、非ルシフェラーゼ酵素の調節因子、非ルシフェラーゼ酵素基質、および/または反応の補因子の存在または量あるいは、動物、例えば脊椎動物、生理液、例えば、血液、血漿、尿、粘液分泌物など、細胞、細胞溶解物、細胞上清または細胞の精製分画(例えば、細胞下分画)を含むがそれに限定されない試料における条件を測定するために使用できる。一実施形態において、本発明の方法は、細胞のアリコートまたはその溶解物などの単一の試料において、1以上の分子を迅速に検出する方法を提供する。一実施形態において、本方法は、生物発光アッセイにおいて、酵素、基質または補因子などの分子の存在、量または比活性を定量することを含む。生物発光シグナルの強度は、それぞれの分子の存在または量の関数である。加えて、反応物は、1以上の試験薬剤、例えば酵素インヒビターもしくはアクチベーター、および/または異なる濃度のインヒビターもしくはアクチベーターを含むことができる。一実施形態において、本方法は、第1反応が非ルシフェラーゼ酵素媒介反応および第2反応が甲虫ルシフェラーゼ媒介反応である少なくとも2つの異なる反応を用いる。他の実施形態において、第1反応は非酵素反応であり、第2反応は甲虫ルシフェラーゼ媒介反応である。さらに他の実施形態において、本方法は、単一の反応、例えば甲虫ルシフェラーゼ媒介反応または蛍光反応を用いる。
【0084】
このように、生物発光アッセイは、例えば酵素媒介反応の補因子、酵素、酵素基質、酵素インヒビター、酵素アクチベーターの量、存在または比活性あるいは条件を、直接または間接に検出(例えば測定)することができる。例えば、一実施形態において、非ルシフェラーゼ酵素の基質である2-シアノ-6-ヒドロキシベンゾチアゾールの誘導体、例えば、モノアミン酸化酵素の基質である誘導体は、D-システインの存在下で、甲虫ルシフェラーゼの基質である生成物を生じ、それによって、このオキシダーゼを検出するための生物発光アッセイにおいて用いることができる。いくつかの実施形態において、誘導体は非ルシフェラーゼ酵素の基質を含むかまたは他の分子の検出に有用であり、D-システインの存在下で、実質的な光量を生じるルシフェラーゼの基質である。
【0085】
一実施形態において、本発明は、1以上の非ルシフェラーゼ酵素を検出するための生物発光アッセイ法を提供する。本方法は、非ルシフェラーゼ媒介反応の1以上の非ルシフェラーゼ酵素または基質または補因子を有することが推測される試料と、非ルシフェラーゼ酵素基質である2-シアノ-6-ヒドロキシベンゾチアゾールの誘導体を含む対応する反応混合物とを接触させることを含む。一実施形態において、誘導体は、非ルシフェラーゼ酵素、例えばホスファターゼの認識部位を含むA環における修飾を有する誘導体である。他の実施形態において、誘導体は、非ルシフェラーゼ酵素の基質を含むB環における修飾を有する誘導体である。他の実施形態において、誘導体は、対象とする酵素の認識部位を含む環の1つへの修飾および、その環または他の環の1以上へのさらなる修飾を有する誘導体である。
【0086】
このように、本発明は、試料中の非ルシフェラーゼ酵素媒介反応のための分子の存在または量を検出または測定する方法を提供する。本方法は、試料、非ルシフェラーゼ酵素媒介反応のための第1反応混合物および、非ルシフェラーゼ酵素基質を含む2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体を、D-システインの存在下で接触させて、D-システインの存在下での、ルシフェラーゼの基質である生物発光生成物を含む第1混合物を作成するかまたはこのような第1混合物を提供する。一実施形態において、誘導体は式Iの化合物である。他の実施形態において、誘導体は、式IIの化合物、式XVの化合物または、本明細書記載の任意の他の式の化合物である。第1混合物の少なくとも一部を、甲虫ルシフェラーゼ媒介反応のための第2反応混合物と接触させて、第2混合物を作成する。次いで、第2混合物における発光を検出または測定し、それによって、試料における非ルシフェラーゼ酵素媒介反応のための分子の存在または量を検出または測定する。
【0087】
試料中の非ルシフェラーゼ酵素媒介反応のための分子の存在または量を検出または測定する方法がさらに提供される。本方法は、試料、非ルシフェラーゼ媒介酵素反応およびルシフェラーゼ媒介反応のための反応混合物ならびに、非ルシフェラーゼ酵素基質である2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体を接触させて、混合物を作成することを含む。非ルシフェラーゼ酵素と誘導体との反応により、D-システインの存在下でルシフェラーゼの基質である発光生成物を生じる。一実施形態において、誘導体は式Iの化合物である。他の実施形態において、誘導体は、式IIの化合物、式XVの化合物または本明細書記載の任意の他の式の化合物である。混合物における発光を検出または測定し、それによって、試料における非ルシフェラーゼ媒介反応のための分子の存在または量を検出または測定する。
【0088】
本発明はまた、試料中の分子の存在または量を検出する方法を提供する。本方法は、試料、非酵素媒介反応のための第1反応混合物および、該分子の存在下でD-システインの存在下でルシフェラーゼの基質である発光生成物を生じる2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体を接触させ、次いで、第1反応物の少なくとも一部とルシフェラーゼ媒介反応のための第2反応混合物を接触させて第2反応物を作成することを含む。第2反応物における発光を検出または測定し、それによって、該分子の存在または量を検出または測定する。例えば、試料、非酵素媒介反応のための第1反応混合物および、D-システインの存在下で甲虫ルシフェラーゼの基質である、該分子の存在下で発光生成物を生じる2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体を有する混合物が提供される。第1混合物の少なくとも一部と、甲虫ルシフェラーゼ媒介反応のための第2反応混合物を混合して、第2混合物を作成し、次いで、第2混合物における発光を検出または測定し、それによって、該分子の存在または量を検出または測定する。
【0089】
低いバックグラウンドを有する誘導体を用いる本明細書記載の生物発光アッセイに関しては、これらのアッセイは低い(高い)量の誘導体を用いることができ、これらの誘導体は、例えば非ルシフェラーゼ酵素との改善された反応性を有することができる。加えて、本明細書記載の生物発光アッセイのいずれに対しても、ルシフェラーゼの不活化を阻害または抑制する試薬またはそうではなくて発光シグナルを増強または増大する試薬を含むが限定されない他の試薬を反応混合物に添加することができる。
【0090】
非ルシフェラーゼ酵素媒介反応のモジュレーターの効力を同定または測定する方法もまた提供される。本方法は、1以上の薬剤、非ルシフェラーゼ酵素媒介反応のための第1反応混合物および、非ルシフェラーゼ酵素基質を有する2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体を接触させて第1混合物を作成するかまたはこのような混合物を提供することを含み、ここで誘導体は、2-シアノ-6-ヒドロキシベンゾチアゾールに対するA環またはB環修飾を含む。1以上の薬剤の非存在下での第1混合物は、D-システインの存在下で甲虫ルシフェラーゼの基質である発光生成物を含む。第1混合物の少なくとも一部と甲虫ルシフェラーゼ媒介反応のための第2反応混合物を混合し、第2混合物を作成する。第2混合物における発光と対照混合物とを比較し、それによって、薬剤の1以上が非ルシフェラーゼ酵素媒介反応をモジュレートするかどうか、および/またはどの程度まで、どのような効力でを同定する。
【0091】
本発明の一実施形態において、本発明の2-アミノ-6-置換ベンゾチアゾール誘導体を用いることによって、試験化合物の、酵素または非酵素反応のインヒビターまたはアクチベーターのいずれかの、基質または補因子または調節因子としての活性をスクリーニングし、評価することができる。試験化合物の非存在下で、生物発光または生物発光生成物を生じると考えられる条件下で、反応混合物と誘導体および試験化合物を接触させることによって、候補化合物が調節因子であるか、または反応の基質であるかを測定できる。
【0092】
本発明の一側面において、基質と反応のインヒビターとを区別する方法が提供される。例えば、インヒビターまたは酵素の基質の非存在下で、誘導体と酵素との相互作用に適すると考えられる条件下で、2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾール誘導体を提供する前に、化合物の代謝を可能にする条件下で、化合物を少なくとも1つの酵素と共にインキュベートする。一実施形態において、D-システインの存在下で、その反応の生成物はルシフェラーゼの基質であり、ルシフェラーゼの存在下で発光第2反応を生じる。生じた発光反応を、酵素のインヒビターの非存在下で、誘導体と酵素との相互作用に適すると考えられる条件下で、酵素と化合物および誘導体とを接触させることにより生じる発光反応と比較する。酵素による化合物の代謝によってアッセイ培地中のその濃度は減少し、化合物の代謝のない条件と比較して、阻害活性のみかけの損失をもたらすことができ、それによって、化合物が酵素の基質であることが示されるであろう。代謝されなかった阻害化合物は、基質の添加の時間にかかわらず、等しい効力を示すと考えられる。
【0093】
本発明の一側面において、好ましくは、最初に第1所定期間、化合物と酵素を接触させる。その後、混合物を2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾール誘導体および生物発光酵素、例えば、ルシフェラーゼと同時または同時期に接触させ、その混合物を第2所定期間インキュベートする。
【0094】
本発明の他の側面において、化合物を酵素と共に第1所定期間インキュベートして、第1混合物を作成する。その後、第1混合物を2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾール誘導体と接触させて第2混合物を作成し、これを第2所定期間インキュベートする。次いで、第2混合物を生物発光酵素、例えばルシフェラーゼと接触させて第3混合物を作成し、これを第3所定期間インキュベートする。その後、D-システインの存在下で、酵素と化合物の相互作用によって得られる活性を、対照(例えば、化合物なし)反応と比較して、第3所定期間中および/または後の発光を測定することによって測定する。このようにして、例えば、機構に基づく第1酵素のインヒビターを、機構に基づかないインヒビターから区別し同定することができる。なぜなら、ルシフェリン誘導体を含まない試験化合物を用いる第1インキュベーションは、第1反応の基質の第1インキュベーションなしに観察される場合に示される阻害抑制と比較して、機構に基づくインヒビターによってより強い阻害がもたらされると考えられるからである。
【0095】
本発明の他の実施形態において、化合物をスクリーニングして、細胞の酵素活性に対する化合物の効果を測定する、細胞に基づく方法が提供される。天然の酵素または組換え発現による酵素、2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾール誘導体および生物発光酵素、例えばルシフェラーゼを有する細胞または、酵素およびルシフェラーゼならびに2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾール誘導体を有する細胞と試験化合物とを所定の期間接触させる。このように、一実施形態において、生物発光酵素、例えばルシフェラーゼなどの組換え酵素を一過性または安定に発現する細胞を用いることができる。一過性にまたは安定にトランスフェクトされた細胞を作成するための任意の慣用法を用いることができる。一実施形態において、2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾール誘導体を細胞と接触させ、それを細胞内に拡散させる。次いで、適切な分子が存在する場合、ルシフェラーゼの基質である生成物が生じる。ルシフェラーゼが細胞内に存在する場合、発光を検出できる。あるいは、ルシフェラーゼを欠く細胞において、生成物は細胞から培地中に出ていき、それから培地にルシフェラーゼ反応混合物を加える。その後、対照(試験化合物なし)反応混合物に対する反応混合物の発光を測定することによって、細胞と化合物の相互作用によって得られた活性を測定する。
【0096】
本発明の一側面において、好ましくは、最初に化合物と細胞を所定期間接触させる。その後、細胞を2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾール誘導体およびルシフェラーゼと同時または同時期に接触させ、その混合物を第2所定期間インキュベートする。対照反応混合物(例えば試験化合物なし)と比較して、該反応混合物によって生成される発光量を測定することによって酵素活性を測定する。本発明の他の側面において、好ましくは、最初に試験化合物と細胞を所定期間接触させる。その後、暴露された細胞を2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾール誘導体と接触させ、第2所定期間インキュベートする。次いで、細胞をルシフェラーゼと接触させて第3混合物を作成し、これを第3所定期間インキュベートする。その後、対照反応混合物(例えば、試験化合物なし)に対する反応混合物の発光を測定することによって、細胞と試験化合物(単数または複数)の相互作用によって得られた細胞の活性を測定する。界面活性剤の添加によって、細胞を破壊し、細胞内容物を放出させることができる。
【0097】
細胞培地に存在する分子、例えば、能動的または受動的な機構によって細胞培地中に存在する分子の、細胞に基づく発光検出アッセイは、2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾール誘導体を有する反応混合物を細胞培地に加えるかまたは2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾール誘導体を有する反応混合物に細胞培地を加え、次いで発光を検出することを含むことができる。
【0098】
本発明の細胞アッセイのさらに他の実施形態において、細胞を適切な溶解緩衝液に溶解することができる。動物細胞のためには、一般的には、トリトンX100またはTergitolなどの、0.1〜1.0%の非イオン性界面活性剤を含む緩衝液で十分である。細菌、植物、真菌または酵母細胞は、通例、溶解するのがより困難である。界面活性剤、凍結融解サイクル、低張緩衝液、超音波処理、キャビテーションまたはこれらの方法の組み合わせを用いることができる。溶解物を生じるための溶解方法は、ルシフェラーゼもしくは他の酵素活性、または他の分子もしくは条件の検出と適合する。
【0099】
培地中で増殖した細胞または動物、例えば生きている動物内の細胞において、非ルシフェラーゼ酵素の存在または活性を測定できる。動物内の細胞における測定のために、例えば、動物への注入により、あるいは水溶液、例えば水または食物に添加して動物に摂食させることにより、2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾール誘導体を動物に投与することができる。ルシフェラーゼ基質である生成物への誘導体の変換は、例えば、動物への注入によって動物に投与したルシフェラーゼによって、あるいは生理液、例えば、血液、血漿、尿などもしくは組織試料を採取し、これらをルシフェラーゼ試薬と混合することによって、動物における細胞、例えばトランスジェニック細胞において発現されたルシフェラーゼによって媒介される発光を用いて検出できる。
【0100】
タンパク質(ペプチドもしくはポリペプチド)、例えば酵素、基質、補因子、酵素反応のインヒビターもしくはアクチベーターを含む1以上の部分または条件、例えば酸化還元条件を検出するために、2つの反応を用いるアッセイを同時に(1ステップで)または順次に(2ステップで)行うことができる。同一容器中、例えばマルチウェルプレートのウェル中で、遂次反応を行うことができる。2ステップアッセイのために、第1反応混合物は、非ルシフェラーゼ酵素媒介反応のためのすべての試薬またはすべてに満たない試薬を含むことができ、ここで、欠けている試薬の1つは、試料、例えば細胞溶解物中で検出される試薬である。例えば、非ルシフェラーゼの基質を有する2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾール誘導体を、D-システインの存在下でルシフェラーゼの基質である生成物に変換するのに有効な条件下で、非ルシフェラーゼ酵素媒介反応を行う。ルシフェラーゼ反応混合物の添加時またはその前に、第1反応をクエンチすることができる。例えば、ルシフェラーゼ反応混合物中に、第1反応のクエンチャーを存在させることができる。ルシフェラーゼ反応混合物は、好ましくは、ルシフェラーゼの基質を実質的に欠く。例えば、ルシフェラーゼの基質の唯一の供給源は、非ルシフェラーゼ酵素と誘導体との反応によって提供される。第1反応混合物中に第1反応の試薬が存在する場合、このアッセイは、反応を変える部分、例えば反応のインヒビターまたはエンハンサーを同定するために用いることができる。同時または順次に反応を行った後、1以上の分子または反応の1以上のインヒビターもしくはアクチベーター(単数または複数)の存在または量を検出または測定する、および/またはどの程度まで、どのような効力でを同定する。
【0101】
1ステップアッセイのために、反応混合物は、非ルシフェラーゼ酵素媒介反応およびルシフェラーゼ媒介反応のための試薬または非酵素反応およびルシフェラーゼ媒介反応のための試薬などの2つの反応のための試薬あるいは、1つの反応のための反応混合物を含むことができる。
【0102】
2つの反応を用いるアッセイのために、アッセイのための分子を加える順序を変えることができる。順次に開始および実施する場合(同一容器であってもなくても)、反応条件、例えば、試薬濃度、温度または追加の試薬の調節を行うことができる。例えば、反応中にクエンチング剤または促進剤を添加することができる(例えば、米国特許第5,744,320号(Sherfら)および第6,586,196号(Bronsteinら)(これらの開示は参照により本願に組み込まれる)。一実施形態において、単一の反応混合物中で2以上の反応を同時に行う。場合により、本アッセイは均一アッセイであり、例えば、試料に混合物を添加する前に、成分を混合する。さらなる試薬の移動なしに、結果を読み取ることができる。
【0103】
このように、試料、例えば真核細胞、例えば酵母、鳥、植物、昆虫または、ヒト、サル、マウス、イヌ、ウシ、ウマ、ネコ、羊、ヤギもしくはブタ細胞を含むが限定されな哺乳動物細胞、または原核細胞、または2以上の異なる生物からの細胞またはそれらの細胞溶解物もしくは上清を含む試料、あるいは、分子の精製物、例えば検量線を作成するのに有用な精製非ルシフェラーゼ酵素を含む試料中の1以上の分子または条件の検出を本発明のアッセイは可能にする。細胞は、組換え技術による遺伝子改変を受けたものでなくてもよく(非組換え細胞)、組換えDNAで安定に増殖された組換えDNAおよび/またはゲノムで一過性にトランスフェクトされた組換え細胞であることもでき、あるいはそのゲノムを修飾して遺伝子を破壊した、例えばプロモーター、イントロンまたはオープンリーディングフレームを破壊した、あるいはあるDNAフラグメントを他のDNAフラグメントに置換した組換え細胞であることができる。組換えDNAまたは置換DNAフラグメントは、本発明の方法によって検出される分子、検出される分子のレベルまたは活性を変える部分および/または分子のレベルまたは活性を変える分子または部分に関連しない遺伝子産物をコードすることができる。
【0104】
本方法は、酵素媒介反応、非酵素的媒介反応のための分子または条件を検出するために用いることができる。例えば、本方法によって検出される分子または条件は、限定するものではないが、酵素、例えば、デメチラーゼ、オキシダーゼ(例えば、MAO)、デアセチラーゼ、デホルミラーゼ、プロテアーゼ(プロテアソーム、カルパイン、βセクレターゼ、カテプシン、カルパイン、トロンビン、グランザイムB)、ホスファターゼ、キナーゼ、ペルオキシダーゼ、トランスフェラーゼ、例えばGSTもしくはUGT、スルファターゼ、ベータラクタマーゼ、シトクロムP450酵素、エステラーゼ、例えばアセチルコリンエステラーゼ、脱水素酵素、ルシフェラーゼ、基質、インヒビター、補因子、酵素媒介反応のアクチベーター、反応性酸素種、還元条件ならびに遺伝子の転写の転写調節因子もしくは調節因子を含む。本方法に用いられる酵素は、検出される酵素または基質もしくは補因子を検出するのに有用な酵素のいずれであっても、組換え酵素および内因性(天然)酵素を含む酵素の任意の組み合わせから選択することができる。一実施形態において、検出される酵素は内因性酵素である。他の実施形態において、酵素は組換え酵素である。本アッセイおよび本明細書記載の方法において、当業者に公知の他の組み合わせを用いることができる。酵素は、限定するものではないが、プロテアーゼ、ホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、スルファターゼ、ペプチダーゼ、オキシダーゼ、デアルキラーゼ、デホルミラーゼ、トランスフェラーゼおよびグリコシダーゼを含む。酵素は、加水分解酵素、オキシドレダクターゼ、リアーゼ、トランスフェラーゼ、例えば、グルタチオンS-トランスフェラーゼもしくはUDPグルクロノシルトランスフェラーゼ、異性化酵素、リガーゼまたはシンターゼであることができる。生理学的有意性を有する酵素のクラスに特に興味が持たれる。これらの酵素は、プロテインペプチダーゼ、エステラーゼ、プロテインホスファターゼ、グリコシラーゼ、プロテアーゼ、脱水素酵素、オキシダーゼ、オキシゲナーゼ、レダクターゼ、メチラーゼ、トランスフェラーゼなどを含む。対象とする酵素は、有機および無機エステルの製造および加水分解、グリコシル化ならびにアミドの加水分解に関与する酵素を含む。全てのクラスにおいて、さらに下位分類が存在することができる。
【0105】
特に、本発明に有用な酵素は、酵素活性を示す任意のタンパク質、例えば、酸性ホスファターゼ、グルコシダーゼ、グルクロニダーゼ、ガラクトシダーゼ、カルボキシエステラーゼおよびルシフェラーゼを含むリパーゼ、ホスホリパーゼ、スルファターゼ、ウレアーゼ、ペプチダーゼ、プロテアーゼおよびエステラーゼを含む。一実施形態において、酵素は加水分解酵素である。加水分解酵素の例は、アルカリ性および酸性ホスファターゼ、エステラーゼ、デカルボキシラーゼ、ホスホリパーゼD、P-キシロシダーゼ、β-D-フコシダーゼ、チオグルコシダーゼ、β-D-ガラクトシダーゼ、α-D-ガラクトシダーゼ、α-D-グルコシダーゼ、β-D-グルコシダーゼ、α-D-グルクロニダーゼ、α-D-マンノシダーゼ、β-D-マンノシダーゼ、β-D-フルクトフラノシダーゼおよびβ-D-グルコシドウロナーゼを含む。
【0106】
前述の方法に関して、一部の実施形態は、非ルシフェラーゼ酵素と誘導体の反応によって生成される生成物を含む第1混合物であって、D-システインの存在下での生成物がルシフェラーゼの生物発光基質である前記第1混合物を提供する。本発明はまた、第1混合物が、非ルシフェラーゼ酵素と誘導体の反応によって生成される生成物を含み、D-システインの存在下で、生成物がルシフェラーゼの生物発光基質ではない相反法を提供する。例えば、種々の実施形態において、非ルシフェラーゼ酵素は、ルシフェラーゼ基質を生成せずに、ルシフェラーゼプロ基質(例えば、誘導体)を消費できる。試験反応と対照を比較することによって、本方法は、酵素活性を検出または測定する能力、あるいは酵素活性のモジュレーターの活性を測定する能力を提供する。
【0107】
III.誘導体の例
一実施形態において、本発明は、式IAの化合物:
【化3】

[式中、YはN、N-オキシド、N-(C1-C6)アルキルまたはCHであり;
XはS、O、CH=CH、N=CHまたはCH=Nであり;
ZおよびZ'は、独立してH、OR、NHRまたはNRRであり;
W1およびZは共に環Aのケト基であり、環Aにおける任意の二重結合を示す破線の少なくとも1つは存在せず;
K1、K2、K3およびK4のそれぞれは、独立してCH、N、N-オキシドまたはN-(C1-C6)アルキルであり、K1とK2の間およびK3とK4の間の破線は、任意の二重結合を意味し;
A'とB'は環Aに縮合させた任意の芳香環であり、そのうち1つのみが化合物中に存在し、それにより縮合三環式系を形成し;
B'が存在する場合、基Zは存在し、A'が存在する場合、基Zは存在せず;
環Bにおける破線は任意の二重結合であり;
各Rは、独立してH、(C1-C20)アルキル、(C2-C20)アルケニル、(C2-C20)アルキニル、(C3-C20)シクロアルキル、(C1-C12)アルコキシ、(C6-C30)アリール、ヘテロアリール、複素環、(C1-C20)アルキルスルホキシ、(C6-C30)アリールスルホキシ、ヘテロアリールスルホキシ、(C1-C20)アルキルスルホニル、(C6-C30)アリールスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、(C1-C20)アルキルスルフィニル、(C6-C30)アリールスルフィニル、ヘテロアリールスルフィニル、(C1-C20)アルコキシカルボニル、アミノ、NH(C1-C6)アルキル、N((C1-C6)アルキル)2、トリ(C1-C20)アンモニウム(C1-C20)アルキル、ヘテロアリール(C1-C20)アルキル、第四級窒素を有するヘテロアリール、第四級窒素を有するヘテロアリールカルボニル、(C6-C30)アリールチオ、(C1-C20)アルキルホスファート、(C1-C20)アルキルホスホナート、(C6-C30)アリールホスファート、(C6-C30)アリールホスホナート、ホスファート、スルファート、糖質、またはM+であり、ここでMはアルカリ金属であり;
あるいはZまたはZ'がNR1R1である場合、R1R1はそれらが結合しているNと一緒になってヘテロアリールまたは複素環基を形成し;
ここでいずれのアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、アリール、ヘテロアリールまたは複素環基は、(C1-C20)アルキル、(C2-C20)アルケニル、(C2-C20)アルキニル、(C3-C20)シクロアルキル、(C1-C20)アルコキシル、(C1-C20)アルキルカルボニル、(C1-C20)アルキルカルボキシル、ハロ、ヒドロキシル、-COORx、-SO2Rx、-SO3Rx、ニトロ、アミノ、(C1-C20)アルキル-S(O)-、(C1-C20)アルキル-SO2-、ホスファート、(C1-C20)アルキルホスファート、(C1-C20)アルキルホスホナート、NH(C1-C6)アルキル、NH(C1-C6)アルキニル、N((C1-C6)アルキル)2、N((C1-C6)アルキニル)2、メルカプト、(C1-C20)アルキルチオ、(C6-C30)アリール、(C6-C30)アリールチオ、トリフルオロメチル、=O、ヘテロアリールおよび複素環から選択される1、2、3、4または5置換基で任意に置換されていてもよく、各置換基は1〜3のR基で任意に置換されていてもよく;
RxはH、(C1-C6)アルキルまたは(C6-C30)アリールであり;
ZまたはZ'が窒素部分を含む場合、ZまたはZ'の窒素部分の水素の1つまたは両方は(C1-C20)アルキルまたは基Lで置換されていてもよく、ここでLはアミノ酸ラジカル、最大20アミノ酸部分を有するペプチドラジカル、または非ルシフェラーゼの基質である任意の他の小分子であり;
Zがヒドロキシル基または窒素部分である場合、ヒドロキシルまたは窒素部分のHは(HO)2P(O)-OCH2-、スルホ、-PO3H2で置換されていてもよく、または1〜約12炭素原子の炭素鎖によって基Zにセファロスポラン酸を結合させてもよく;
ZまたはZ'がヒドロキシル基または窒素部分である場合、ヒドロキシルまたは窒素部分の1つのHは、基L'-リンカーで置換されていてもよく、ここでL'は酵素によって除去されてリンカーを遊離しうる基であり、リンカーは、場合により1以上の窒素原子、酸素原子、カルボニル基、置換されていてもよい芳香環またはペプチド結合によって中断される、自己切断可能な炭素鎖であり、リンカーはリンカーの1つの末端で酸素原子またはNH基によってL'に結合され、リンカーの他の末端は基ZまたはZ'とエーテル、エステルまたはアミド結合を形成し;
ZがORである場合、式Iは、場合により、1〜4のO原子、N原子、または置換されていてもよいアリール、ヘテロアリールもしくは複素環基によって場合により中断され、式Iの二量体間のブリッジを形成する(C1-C12)アルキルジラジカルを含むリンカーによって2つのA環が連結される二量体であり、式Iの二量体を連結する各Z基のR基はブリッジによって置換され;
A-はアニオンであり、第四級窒素が存在する場合に存在する]
またはその塩を提供する。
【0108】
他の実施形態において、本発明は、式IAAの化合物である式Iの化合物:
【化4】

[式中、YはN、N-オキシド、N-(C1-C6)アルキルまたはCHであり;
XはS、O、CH=CH、N=CHまたはCH=Nであり;
ZはH、OR、NHRまたはNRRであり;
W1はH、ハロ、ヒドロキシル、(C1-C6)アルキルまたは(C1-C6)アルコキシであり;
環Bにおける破線は任意の二重結合であり;
各Rは、独立してH、(C1-C20)アルキル、(C2-C20)アルケニル、(C2-C20)アルキニル、(C3-C20)シクロアルキル、(C1-C12)アルコキシ、(C6-C30)アリール、ヘテロアリール、複素環、(C1-C20)アルキルスルホキシ、(C6-C30)アリールスルホキシ、ヘテロアリールスルホキシ、(C1-C20)アルキルスルホニル、(C6-C30)アリールスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、(C1-C20)アルキルスルフィニル、(C6-C30)アリールスルフィニル、ヘテロアリールスルフィニル、(C1-C20)アルコキシカルボニル、アミノ、NH(C1-C6)アルキル、N((C1-C6)アルキル)2、トリ(C1-C20)アンモニウム(C1-C20)アルキル、ヘテロアリール(C1-C20)アルキル、第四級窒素を有するヘテロアリール、第四級窒素を有するヘテロアリールカルボニル、(C6-C30)アリールチオ、(C1-C20)アルキルホスファート、(C1-C20)アルキルホスホナート、(C6-C30)アリールホスファート、(C6-C30)アリールホスホナート、ホスファート、スルファート、糖質、またはM+であり、ここでMはアルカリ金属であり;
あるいはZがNR1R1である場合、R1R1はそれらが結合しているNと一緒になってヘテロアリールまたは複素環基を形成し;
ここで任意のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、アリール、ヘテロアリールまたは複素環基は、(C1-C20)アルキル、(C2-C20)アルケニル、(C2-C20)アルキニル、(C3-C20)シクロアルキル、(C1-C20)アルコキシル、(C1-C20)アルキルカルボニル、(C1-C20)アルキルカルボキシル、ハロ、ヒドロキシル、-COORx、-SO2Rx、-SO3Rx、ニトロ、アミノ、(C1-C20)アルキル-S(O)-、(C1-C20)アルキル-SO2-、ホスファート、(C1-C20)アルキルホスファート、(C1-C20)アルキルホスホナート、NH(C1-C6)アルキル、NH(C1-C6)アルキニル、N((C1-C6)アルキル)2、N((C1-C6)アルキニル)2、メルカプト、(C1-C20)アルキルチオ、(C6-C30)アリール、(C6-C30)アリールチオ、トリフルオロメチル、=O、ヘテロアリールおよび複素環から選択される1、2、3、4または5置換基で置換されていてもよく、各置換基は1〜3R基で置換されていてもよく;
RxはH、(C1-C6)アルキルまたは(C6-C30)アリールであり;
A-はアニオンであり、第四級窒素が存在する場合に存在する]
またはその塩を提供する。
【0109】
他の実施形態において、本発明は、式IIの化合物:
【化5】

[式中、ZおよびZ'は独立してOR1、NHR1またはNR1R1であり;
W1はH、ハロ、(C1-C6)アルキル、(C2-C20)アルケニル、ヒドロキシルまたは(C1-C6)アルコキシであるか;または
W1およびZは共に環Aのケト基であり、環Aにおける任意の二重結合を示す破線の少なくとも1つは存在せず;
K1、K2、K3およびK4のそれぞれは、独立してCH、N、N-オキシドまたはN-(C1-C6)アルキルであり、K1とK2の間およびK3とK4の間の破線は、任意の二重結合を意味し;
A'とB'は環Aに縮合させた任意の芳香環であり、そのうち1つのみが化合物中に存在し、それにより縮合三環式系を形成し;
B'が存在する場合、基Zは存在し、A'が存在する場合、基Zは存在せず;
RはH、(C1-C20)アルキル、(C2-C20)アルケニル、(C2-C20)アルキニル、(C3-C20)シクロアルキル、(C1-C12)アルコキシ、(C6-C30)アリール、ヘテロアリール、複素環、(C1-C20)アルキルスルホキシ、(C6-C30)アリールスルホキシ、ヘテロアリールスルホキシ、(C1-C20)アルコキシカルボニル、アミノ、NH(C1-C6)アルキル、N((C1-C6)アルキル)2、トリ(C1-C20)アンモニウム(C1-C20)アルキル、ヘテロアリール(C1-C20)アルキル、第四級窒素を有するヘテロアリール、第四級窒素を有するヘテロアリールカルボニル、糖質またはM+であり、ここでMはアルカリ金属であり;
R1は(C6-C30)アリール、ヘテロアリール、複素環、(C1-C20)アルキルチオ、(C1-C20)アルキル-S(O)-、(C1-C20)アルキル-SO2、-SO3(C1-C20)アルキル、糖質、(C1-C20)アルキルホスファート、(C1-C20)アルキルホスホナート、(C6-C30)アリールチオ、(C6-C30)アリール-S(O)-、(C6-C30)アリール-SO2、-SO3(C6-C30)アリール、(C6-C30)アリールホスファート、(C6-C30)アリールホスホナートであるか、あるいはR1はR2で置換された(C1-C20)アルキルであり;
R2は(C2-C20)アルケニル、(C2-C20)アルキニル、(C3-C20)シクロアルキル、(C1-C20)アルコキシル、(C1-C20)アルキルカルボニル、(C1-C20)アルキルカルボキシル、ヒドロキシル、-COORx、-SO3Rx、(C1-C20)アルキルチオ、(C6-C30)アリールチオ、(C1-C20)アルキル-S(O)-、(C1-C20)アルキル-SO2-、ニトロ、アミノ、NH(C1-C6)アルキル、NH(C1-C6)アルキニル、N((C1-C6)アルキル)2もしくはN((C1-C6)アルキニル)2、メルカプト、糖質またはトリフルオロメチルであり;
あるいはZまたはZ'がNR1R1である場合、R1R1はそれらが結合しているNと一緒になってヘテロアリールまたは複素環基を形成し;
ここで任意のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、アリール、ヘテロアリールまたは複素環基は(C1-C20)アルキル、(C2-C20)アルケニル、(C2-C20)アルキニル、(C3-C20)シクロアルキル、(C1-C20)アルコキシル、(C1-C20)アルキルカルボニル、(C1-C20)アルキルカルボキシル、ハロ、ヒドロキシル、-COORx、-SO2Rx、-SO3Rx、(C1-C20)アルキル-S(O)-、(C1-C20)アルキル-SO2-、ホスファート、(C1-C20)アルキルホスファート、(C1-C20)アルキルホスホナート、ニトロ、アミノ、NH(C1-C6)アルキル、NH(C1-C6)アルキニル、N((C1-C6)アルキル)2、N((C1-C6)アルキニル)2、メルカプト、(C1-C20)アルキルチオ、(C6-C30)アリール、(C6-C30)アリールチオ、トリフルオロメチル、=O、ヘテロアリールおよび複素環から選択される1、2、3、4または5置換基で置換されていてもよく、各置換基は1〜3R基で置換されていてもよく;
RxはHまたは(C1-C6)アルキルであり;
ZまたはZ'が窒素部分を含む場合、ZまたはZ'の窒素部分の水素は基Lで置換されていてもよく、ここでLはアミノ酸ラジカル、最大20アミノ酸部分を有するペプチドラジカル、または非ルシフェラーゼの基質である任意の他の小分子であり;
Zがヒドロキシル基または窒素部分である場合、ヒドロキシルまたは窒素部分のHは(HO)2P(O)-OCH2-、スルホ、-PO3H2で置換されていてもよく、または1〜約12炭素原子の炭素鎖によって基Zにセファロスポラン酸を結合させてもよく;
ZまたはZ'がヒドロキシル基または窒素部分である場合、ヒドロキシルまたは窒素部分の1つのHは、基L'-リンカーで置換されていてもよく、ここでL'は酵素によって除去されてリンカーを遊離しうる基であり、リンカーは、場合により1以上の窒素原子、酸素原子、カルボニル基、置換されていてもよい芳香環またはペプチド結合によって中断される、自己切断可能な炭素鎖であり、リンカーはリンカーの1つの末端で酸素原子またはNH基によってL'に結合され、リンカーの他の末端は基ZまたはZ'とエーテル、エステルまたはアミド結合を形成し;
ZがOR1である場合、式IIは、場合により、1〜4のO原子、N原子、または置換されていてもよいアリール、ヘテロアリールもしくは複素環基によって場合により中断され、式IIの二量体間のブリッジを形成する(C1-C12)アルキルジラジカルを含むリンカーによって2つのA環が連結される二量体であり、式IIの二量体を連結する各Z基のR1基はブリッジによって置換され;
A-はアニオンであり、第四級窒素が存在する場合に存在する]
またはその塩を提供する。
【0110】
さらに他の実施形態において、本発明は、式IIAの化合物である式IIの化合物
【化6】

[式中、ZはOR1、NHR1またはNR1R1であり;
W1はH、ハロ、ヒドロキシル、(C1-C6)アルキルまたは(C1-C6)アルコキシであり;
R1は、(C6-C30)アリール、ヘテロアリール、複素環、(C1-C20)アルキルチオ、(C1-C20)アルキル-S(O)-、(C1-C20)アルキル-SO2、-SO3(C1-C20)アルキル、糖質、(C1-C20)アルキルホスファート、(C1-C20)アルキルホスホナート、(C6-C30)アリールチオ、(C6-C30)アリール-S(O)-、(C6-C30)アリール-SO2、-SO3(C6-C30)アリール、(C6-C30)アリールホスファート、(C6-C30)アリールホスホナートであるか、あるいはR1はR2によって置換された(C1-C20)アルキルであり;
R2は(C2-C20)アルケニル、(C2-C20)アルキニル、(C3-C20)シクロアルキル、(C1-C20)アルコキシル、(C1-C20)アルキルカルボニル、(C1-C20)アルキルカルボキシル、ヒドロキシル、-COORx、-SO3Rx、(C1-C20)アルキルチオ、(C6-C30)アリールチオ、(C1-C20)アルキル-S(O)-、(C1-C20)アルキル-SO2-、ニトロ、アミノ、NH(C1-C6)アルキル、NH(C1-C6)アルキニル、N((C1-C6)アルキル)2、もしくはN((C1-C6)アルキニル)2、メルカプト、糖質またはトリフルオロメチルであり;
あるいはZがNR1R1である場合、R1R1はそれらが結合しているNと一緒になってヘテロアリールまたは複素環基を形成し;
ここで任意のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、アリール、ヘテロアリールまたは複素環基は(C1-C20)アルキル、(C2-C20)アルケニル、(C2-C20)アルキニル、(C3-C20)シクロアルキル、(C1-C20)アルコキシル、(C1-C20)アルキルカルボニル、(C1-C20)アルキルカルボキシル、ハロ、ヒドロキシル、-COORx、-SO2Rx、-SO3Rx、(C1-C20)アルキル-S(O)-、(C1-C20)アルキル-SO2-、ホスファート、(C1-C20)アルキルホスファート、(C1-C20)アルキルホスホナート、ニトロ、アミノ、NH(C1-C6)アルキル、NH(C1-C6)アルキニル、N((C1-C6)アルキル)2、N((C1-C6)アルキニル)2、メルカプト、(C1-C20)アルキルチオ、(C6-C30)アリール、(C6-C30)アリールチオ、トリフルオロメチル、=O、ヘテロアリールおよび複素環から選択される1、2、3、4または5置換基で置換されていてもよく、各置換基は1〜3R基で置換されていてもよく;
RxはHまたは(C1-C6)アルキルであり;
ZがOR1である場合、式IIAは、場合により、1〜4のO原子、N原子、または置換されていてもよいアリール、ヘテロアリールもしくは複素環基によって場合により中断され、式IIAの二量体間のブリッジを形成する(C1-C12)アルキルジラジカルを含むリンカーによって2つのA環が連結される二量体であり、式IIの二量体を連結する各Z基のR1基はブリッジによって置換され;
A-はアニオンであり、第四級窒素が存在する場合に存在する]
またはその塩を提供する。
【0111】
一実施形態において、本発明は、式IIIの化合物
【化7】

[式中、YはN、N-オキシド、N-(C1-C6)アルキルまたはCHであり;
XはS、O、CH=CH、N=CHまたはCH=Nであり;
ZおよびZ'は、独立してH、OR、NHRまたはNRRであり;
W1はH、ハロ、(C1-C6)アルキル、(C2-C20)アルケニル、ヒドロキシルまたは(C1-C6)アルコキシであるか;または
W1およびZは共に環Aのケト基であり、環Aにおける任意の二重結合を示す破線の少なくとも1つは存在せず;
K1、K2、K3およびK4のそれぞれは、独立してCH、N、N-オキシドまたはN-(C1-C6)アルキルであり、K1とK2の間およびK3とK4の間の破線は、任意の二重結合を意味し;
A'とB'は環Aに縮合させた任意の芳香環であり、そのうち1つのみが化合物中に存在し、それにより縮合三環式系を形成し;
B'が存在する場合、基Zは存在し、A'が存在する場合、基Zは存在せず;
環Bにおける破線は任意の二重結合であり;
各Rは、独立してH、(C1-C20)アルキル、(C2-C20)アルケニル、(C2-C20)アルキニル、(C3-C20)シクロアルキル、(C1-C12)アルコキシ、(C6-C30)アリール、ヘテロアリール、複素環、(C1-C20)アルキルスルホキシ、(C6-C30)アリールスルホキシ、ヘテロアリールスルホキシ、(C1-C20)アルキルスルホニル、(C6-C30)アリールスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、(C1-C20)アルキルスルフィニル、(C6-C30)アリールスルフィニル、ヘテロアリールスルフィニル、(C1-C20)アルコキシカルボニル、アミノ、NH(C1-C6)アルキル、N((C1-C6)アルキル)2、トリ(C1-C20)アンモニウム(C1-C20)アルキル、ヘテロアリール(C1-C20)アルキル、第四級窒素を有するヘテロアリール、第四級窒素を有するヘテロアリールカルボニル、(C6-C30)アリールチオ、(C1-C20)アルキルホスファート、(C1-C20)アルキルホスホナート、(C6-C30)アリールホスファート、(C6-C30)アリールホスホナート、ホスファート、スルファート、糖質、またはM+であり、ここでMはアルカリ金属であり;
あるいはZまたはZ'がNR1R1である場合、R1R1はそれらが結合しているNと一緒になってヘテロアリールまたは複素環基を形成し;
ここで任意のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、アリール、ヘテロアリールまたは複素環基は(C1-C20)アルキル、(C2-C20)アルケニル、(C2-C20)アルキニル、(C3-C20)シクロアルキル、(C1-C20)アルコキシル、(C1-C20)アルキルカルボニル、(C1-C20)アルキルカルボキシル、ハロ、ヒドロキシル、-COORx、-SO2Rx、-SO3Rx、ニトロ、アミノ、(C1-C20)アルキル-S(O)-、(C1-C20)アルキル-SO2-、ホスファート、(C1-C20)アルキルホスファート、(C1-C20)アルキルホスホナート、NH(C1-C6)アルキル、NH(C1-C6)アルキニル、N((C1-C6)アルキル)2、N((C1-C6)アルキニル)2、メルカプト、(C1-C20)アルキルチオ、(C6-C30)アリール、(C6-C30)アリールチオ、トリフルオロメチル、=O、ヘテロアリールおよび複素環から選択される1、2、3、4または5置換基で置換されていてもよく、各置換基は1〜3R基で置換されていてもよく;
RxはH、(C1-C6)アルキルまたは(C6-C30)アリールであり;
ZまたはZ'が窒素部分を含む場合、ZまたはZ'の窒素部分の水素の1つまたは両方は(C1-C20)アルキルまたは基Lで置換されていてもよく、ここでLはアミノ酸ラジカル、最大20アミノ酸部分を有するペプチドラジカル、または非ルシフェラーゼの基質である任意の他の小分子であり;
Zがヒドロキシル基または窒素部分である場合、ヒドロキシルまたは窒素部分のHは(HO)2P(O)-OCH2-、スルホ、-PO3H2で置換されていてもよく、または1〜約12炭素原子の炭素鎖によって基Zにセファロスポラン酸を結合させてもよく;
ZまたはZ'がヒドロキシル基または窒素部分である場合、ヒドロキシルまたは窒素部分の1つのHは、基L'-リンカーで置換されていてもよく、ここでL'は酵素によって除去されてリンカーを遊離しうる基であり、リンカーは、場合により1以上の窒素原子、酸素原子、カルボニル基、置換されていてもよい芳香環またはペプチド結合によって中断される、自己切断可能な炭素鎖であり、リンカーはリンカーの1つの末端で酸素原子またはNH基によってL'に結合され、リンカーの他の末端は基ZまたはZ'とエーテル、エステルまたはアミド結合を形成し;
ZがORである場合、式IIIは、場合により、1〜4のO原子、N原子、または置換されていてもよいアリール、ヘテロアリールもしくは複素環基によって場合により中断され、式IIIの二量体間のブリッジを形成する(C1-C12)アルキルジラジカルを含むリンカーによって2つのA環が連結される二量体であり、式IIIの二量体を連結する各Z基のR基はブリッジによって置換され;
A-はアニオンであり、第四級窒素が存在する場合に存在する]
またはその塩を提供する。
【0112】
一実施形態において、本発明は、式IIIAの化合物である式IIIの化合物:
【化8】

[式中、YはN、N-オキシド、N-(C1-C6)アルキルまたはCHであり;
XはS、O、CH=CH、N=CHまたはCH=Nであり;
ZはH、OR、NHRまたはNRRであり;
W1はH、ハロ、ヒドロキシル、(C1-C6)アルキル、(C2-C10)アルケニルまたは(C1-C6)アルコキシであり;
環Bにおける破線は任意の二重結合であり;
各Rは、独立してH、(C1-C20)アルキル、(C2-C20)アルケニル、(C2-C20)アルキニル、(C3-C20)シクロアルキル、(C1-C12)アルコキシ、(C6-C30)アリール、ヘテロアリール、複素環、(C1-C20)アルキルスルホキシ、(C6-C30)アリールスルホキシ、ヘテロアリールスルホキシ、(C1-C20)アルキルスルホニル、(C6-C30)アリールスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、(C1-C20)アルキルスルフィニル、(C6-C30)アリールスルフィニル、ヘテロアリールスルフィニル、(C1-C20)アルコキシカルボニル、アミノ、NH(C1-C6)アルキル、N((C1-C6)アルキル)2、トリ(C1-C20)アンモニウム(C1-C20)アルキル、ヘテロアリール(C1-C20)アルキル、第四級窒素を有するヘテロアリール、第四級窒素を有するヘテロアリールカルボニル、(C6-C30)アリールチオ、(C1-C20)アルキルホスファート、(C1-C20)アルキルホスホナート、(C6-C30)アリールホスファート、(C6-C30)アリールホスホナート、ホスファート、スルファート、糖質またはM+であり、ここでMはアルカリ金属であり;
あるいはZがNR1R1である場合、R1R1はそれらが結合しているNと一緒になってヘテロアリールまたは複素環基を形成し;
ここで任意のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、アリール、ヘテロアリールまたは複素環基は、(C1-C20)アルキル、(C2-C20)アルケニル、(C2-C20)アルキニル、(C3-C20)シクロアルキル、(C1-C20)アルコキシル、(C1-C20)アルキルカルボニル、(C1-C20)アルキルカルボキシル、ハロ、ヒドロキシル、-COORx、-SO2Rx、-SO3Rx、ニトロ、アミノ、(C1-C20)アルキル-S(O)-、(C1-C20)アルキル-SO2-、ホスファート、(C1-C20)アルキルホスファート、(C1-C20)アルキルホスホナート、NH(C1-C6)アルキル、NH(C1-C6)アルキニル、N((C1-C6)アルキル)2、N((C1-C6)アルキニル)2、メルカプト、(C1-C20)アルキルチオ、(C6-C30)アリール、(C6-C30)アリールチオ、トリフルオロメチル、=O、ヘテロアリールおよび複素環から選択される1、2、3、4または5置換基で置換されていてもよく各置換基は1〜3R基で置換されていてもよく;
RxはH、(C1-C6)アルキルまたは(C6-C30)アリールであり;
ZがORである場合、式IIIは、場合により、1〜4のO原子、N原子、または置換されていてもよいアリール、ヘテロアリールもしくは複素環基またはそれらの組み合わせによって場合により中断され、式IIIの二量体間のブリッジを形成する(C1-C12)アルキルジラジカルを含むリンカーによって2つのA環が連結される二量体であり、式IIIの二量体を連結する各Z基のR基はブリッジによって置換され;
A-はアニオンであり、第四級窒素が存在する場合に存在する]
またはその塩を提供する。
【0113】
一実施形態において、本発明は式Vの化合物:
【化9】

[式中、YはN、N-オキシド、N-低級アルキルまたはCHであり;
XはS、CH=CHまたはN=Cであり、
ZおよびZ'はH、OR、NHRまたはNRRであり;
WはH、ハロ、C1-6アルキル、C2-20アルケニル、ヒドロキシルまたはC1-6アルコキシであるか;あるいは
環AのWおよびZは共にケト基であり;
K1、K2、K3およびK4のそれぞれは、独立してCH、N、N-オキシドまたはN-低級アルキルであり;
Rは、H、C1-20アルキル、置換C1-20アルキル、C2-20アルケニル、置換C2-20アルケニル、ハロゲン化C2-20アルケニル、置換ハロゲン化C2-20アルケニル、C3-20アルキニル、置換C3-20アルキニル、C2-20アルケニルC1-20アルキル、置換C2-20アルケニルC1-20アルキル、C3-20アルキニルC2-20アルケニル、置換C3-20アルキニルC2-20アルケニル、C3-20シクロアルキル、置換C3-20シクロアルキル、C6-30アリール、ヘテロアリール、C6-30アリールC1-20アルキル、置換C6-30アリール、置換ヘテロアリール、置換C6-30アリールC1-20アルキル、アルキルスルホキシC1-20アルキル、C1-20アルコキシカルボニル、C6-30アリールC1-20アルコキシカルボニル、C6-30アリールチオC1-20アルキル、ヒドロキシC1-20アルキル、トリC1-20アンモニウムC1-20アルキル、ヘテロアリールC1-20アルキル、置換ヘテロアリールC1-20アルキル、第四級窒素を有するヘテロアリール、第四級窒素を有するヘテロアリールカルボニルおよびN-メチル-テトラヒドロピリジニルであり;Z''が酸素である場合、M+であり、ここでMはアルカリ金属であり;ここでアルキル、シクロアルキル、アルケニル、および/またはアルキニル基は、もう1つのC1-20アルキル、ハロ、ヒドロキシル、アセチル、アミノ、低級アルキルアミノ、低級アルキニルアミノ、イミダゾリニルメチルアミノ、ジ低級アルキルアミノ、ジ低級アルキニルアミノ、ピペリジノ、ピロリジノ、アゼチジノ、アジリジノ、ジイミダゾリニルメチルアミノ、メルカプト、C1-20アルキルチオ、C6-30アリールチオ、またはトリフルオロメチル基置換C6-30アリールC1-20アルキルカルボニルで置換されていてもよく;各基Rは、1以上存在する場合、独立して定義され;
ここで、Zがアミノの場合、1つまたは両方の水素はC1-20アルキルまたは基Lで置換されていてもよく、ここでLはアミノ酸ラジカル、最大20アミノ酸部分を有するペプチドラジカルであるか、あるいは、非ルシフェラーゼの基質である任意の他の小分子であることができ;
Zがヒドロキシルまたはアミノである場合、Hは(HO)2P(O)-OCH2-、スルホまたは-PO3H2
で置換されていてもよく、または1以上の炭素原子の炭素鎖によって基Zにセファロスポラン酸を結合させてもよく;
Zがヒドロキシルまたはアミノの場合、Hは基L'-リンカーで置換されていてもよく、ここでL'は酵素によって除去されてリンカーを遊離しうる基であり、リンカーは、場合により1以上の窒素原子、酸素原子、カルボニル基、(置換)芳香環またはペプチド結合によって中断される、自己切断可能な炭素鎖であり、リンカーはリンカーの1つの末端で酸素原子またはNH基によってL'に結合され、リンカーの他の末端は基Zとエーテル、エステルまたはアミド結合を形成し;
Zがヒドロキシルの場合、式Vは-OCH2O-ブリッジによって2つのA環が連結される二量体を含み;ここで
A'とB'は環Aに縮合させた任意の芳香環であり、そのうち1つのみが同時に存在することが可能であり、それにより縮合三環式系を形成し;
B'が存在する場合、基Zは存在し、A'が存在する場合、基Zは存在せず;ここで
環Aの1つの炭素はN-オキシド部分で置換されていてもよく;
環Bにおける破線は任意の二重結合であり;
XがN=Cの場合、環CはN=C部分の炭素原子に結合し;
A-はアニオンであり、第四級窒素が存在する場合に存在する]
またはその塩を提供する。
【0114】
本明細書におけるさらなる誘導体は、一般式VII:
【化10】

[式中、YはN-オキシド、N-低級アルキルまたはCHであり;
XはSまたはCH=CHであるか;あるいは
YはNであり、XはN=CまたはCH=CHであり;
ZおよびZ'はH、OR、NHRまたはNRRであるか;あるいは
Zはホウ素原子を介して環Aに結合された環状ジエーテル化ジヒドロキシボラン基であり;
WはH、ハロ、C1-6アルキル、C2-20アルケニル、ヒドロキシルまたはC1-6アルコキシであり;
K1、K2、K3およびK4のそれぞれは、独立してCH、N、N-オキシドまたはN-低級アルキルであり;
RはH、C1-20アルキル、置換C1-20アルキル、C2-20アルケニル、置換C2-20アルケニル、ハロゲン化C2-20アルケニル、置換ハロゲン化C2-20アルケニル、C2-20アルケニルC1-20アルキル、置換C2-20アルケニルC1-20アルキル、C3-20アルキニル、置換C3-20アルキニル、C3-20アルキニルC2-20アルケニル、置換C3-20アルキニルC2-20アルケニル、C3-20シクロアルキル、置換C3-20シクロアルキル、C6-30アリール、ヘテロアリール、C6-30アリールC1-20アルキル、置換C6-30アリール、置換ヘテロアリール、置換C6-30アリールC1-20アルキル,C1-20アルコキシカルボニル、C6-30アリールC1-20アルコキシカルボニル、C6-30アリールチオC1-20アルキル、ヒドロキシC1-20アルキル、トリC1-20アンモニウムC1-20アルキル、ヘテロアリールC1-20アルキル、置換ヘテロアリールC1-20アルキル、第四級窒素を有するヘテロアリール、第四級窒素を有するヘテロアリールカルボニル、N-メチル-テトラヒドロピリジニル、ペンタフルオロフェニルスルホニルであり、Z''が酸素である場合、M+であり、ここでMはアルカリ金属であり;
ここでアルキル、シクロアルキル、アルケニル、および/またはアルキニル基は、もう1つのC1-20アルキル、ハロ、ヒドロキシル、アセチル、アミノ、低級アルキルアミノ、低級アルキニルアミノ、イミダゾリニルメチルアミノ、ジ低級アルキルアミノ、ジ低級アルキニルアミノ、ピペリジノ、ピロリジノ、アゼチジノ、アジリジノ、ジイミダゾリニルメチルアミノ、メルカプト、C1-20アルキルチオ、C6-30アリールチオまたはトリフルオロメチル基によって置換されていてもよく;
各基Rは、2以上存在する場合、独立して定義され;ここで
Zがアミノである場合、水素の1つまたは両方は、C1-20アルキルまたは基Lでで置換されていてもよく、ここで、Lはアミノ酸ラジカル、最大20アミノ酸部分を有するペプチドラジカルであるか、または非ルシフェラーゼの基質である任意の他の小分子であることもでき;
Zがヒドロキシルまたはアミノである場合、Hは(HO)2P(O)-OCH2-、スルホまたは-PO3H2で置換されていてもよく、または1以上の炭素原子の炭素鎖によって基Zにセファロスポラン酸を結合させてもよく;
Zがヒドロキシルまたはアミノである場合、Hは基L'-リンカーで置換されていてもよく、ここでL'は酵素によって除去されてリンカーを遊離しうる基であり、リンカーは、場合により1以上の窒素原子、酸素原子、カルボニル基、(置換)芳香環またはペプチド結合によって中断される、自己切断可能な炭素鎖であり、リンカーはリンカーの1つの末端で酸素原子またはNH基によってL'に結合され、リンカーの他の末端は基Zとエーテル、エステルまたはアミド結合を形成し;
Zがヒドロキシルである場合、式VIIは-OCH2O-ブリッジによって2つのA環が連結される二量体を含み;ここで
A'とB'は環Aに縮合させた任意の芳香環であり、そのうち1つのみが同時に存在することが可能であり、それにより縮合三環式系を形成し;、
B'が存在する場合、基Zは存在し、A'が存在する場合、基Zは存在せず;ここで
環Aの1つの炭素はN-オキシド部分で置換されていてもよく;
環Bにおける破線は任意の二重結合であり;
XがN=Cの場合、環Cは場合によりN=C部分の炭素原子に結合することができ;
A-はアニオンであり、第四級窒素が存在する場合に存在する]
またはその塩を有する。
【0115】
他の誘導体は式VIIIの化合物:
【化11】

[式中、n=0または1であり、n=0である場合、X=Sであり、----は単結合であるか;あるいは
n=1である場合、X=CHであり、----は二重結合であり;
R1=H、FまたはOHであり;
R3およびR4は、独立してH、メチル、エチル、プロピル、アリル、イミダゾリニルメチルであるか、あるいはR3およびR4は、それらが結合している窒素原子と一緒になってピペリジノ、ピロリジノ、アゼチジノまたはアジリジノ環を形成し;
R7はHまたはメチルであり;
R8はH、メチル、ヒドロキシルまたはアセチルであり;
R9はHまたはメチルである]
を含む。式VIIIの化合物は、MAO基質として有用であることができる。
【0116】
さらに他の誘導体は、式IXの化合物:
【化12】

[式中、R1はH、OR、NH-C(O)-O-ベンジルまたはNH-O-イソブチルであり;Rは低級アルキル、ベンジル、2,4,6-トリメチルベンジル、フェニルピペラジノベンジル、o-トリフルオロメチルベンジルまたは3-ピコリニルである]を含む。このような誘導体はP450基質として有用であることができる。
【0117】
式Xの化合物:
【化13】

[式中、YはN、N-オキシド、N-低級アルキルまたはCHであり;
XはS、CH=CH、またはN=Cであり、
ZおよびZ'は、独立してH、OR、NHRまたはNRRであり;
W1はH、ハロ、C1-6アルキル、C2-20アルケニル、ヒドロキシルまたはC1-6アルコキシであるか;あるいは
W1およびZは共に環Aのケト基であり、環Aにおける破線は存在せず;
K1、K2、K3およびK4のそれぞれは、独立してCH、N、N-オキシドまたはN-低級アルキルであり、K1とK2の間およびK3とK4の間の破線は、任意の二重結合を意味し;
RはH、アミノ、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、ハロゲン化C2-20アルケニル、C3-20アルキニル、C2-20アルケニルC1-20アルキル、C3-20アルキニルC2-20アルケニル、C3-20シクロアルキル、C6-30アリール、ヘテロアリール、C6-30アリールC1-20アルキル、C1-12アルコキシ、C1-20アルキルスルホキシ、C6-30アリールスルホキシ、C6-30アリールスルホキシC1-20アルキル、C1-20アルキルスルホキシC1-20アルキル、C1-20アルコキシカルボニル、C6-30アリールC1-20アルコキシカルボニル、C6-30アリールチオC1-20アルキル、ヒドロキシC1-20アルキル、トリC1-20アンモニウムC1-20アルキル、ヘテロアリールスルホキシ、ヘテロアリールC1-20アルキル、第四級窒素を有するヘテロアリール、第四級窒素を有するヘテロアリールカルボニル、N-メチル-テトラヒドロピリジニルであり;ここで
Rの任意のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アルコキシ、アリール、またはヘテロアリール基は、1以上の、例えば1、2、3、4または5のC1-20アルキル、ハロ、ヒドロキシル、アセチル、-COOR1、-SO3R1、アミノ、ニトロ、低級アルキルアミノ、低級アルキニルアミノ、イミダゾリニルメチルアミノ、ジ低級アルキルアミノ、ジ低級アルキニルアミノ、ピペリジノ、ピロリジノ、アゼチジノ、アジリジノ、ジイミダゾリニルメチルアミノ、メルカプト、C1-20アルキルチオ、C6-30アリールチオ、トリフルオロメチル、C1-20アルキルカルボキシル、C6-30アリール、置換C6-30アリール、C6-30アリールC1-20アルコキシル、複素環C1-20アルキル、置換C6-30アリールC1-20アルコキシル、C6-30アリールC1-20アルキルカルボニル、置換C6-30アリールC1-20アルキルカルボニルまたはさらなる非置換R基によって置換されていてもよく;ここで
各基Rは、2以上存在する場合、独立して定義され;ここで
複素環C1-20アルキルは、1以上の、例えば、1、2、3、4または5のR基によって置換されていてもよく;
R1は水素またはC1-6アルキルであり;ここで
Zがアミノの場合、アミノ基の水素の1つまたは両方は、C1-20アルキルまたは基Lで置換されていてもよく、ここでLはアミノ酸ラジカル、最大20アミノ酸部分を有するペプチドラジカル、または非ルシフェラーゼの基質である任意の他の小分子であり;ここで
Zがヒドロキシルまたはアミノである場合、ヒドロキシルまたはアミノのHは(HO)2P(O)-OCH2-、スルホ、-PO3H2で置換されていてもよく、または1以上の炭素原子の炭素鎖によって基Zにセファロスポラン酸を結合させてもよく;
ZまたはZ'がヒドロキシルまたはアミノである場合、ヒドロキシルまたはアミノの1つのHは、基L'-リンカーで置換されていてもよく、ここでL'は酵素によって除去されてリンカーを遊離しうる基であり、リンカーは、場合により1以上の窒素原子、酸素原子、カルボニル基、(置換)芳香環またはペプチド結合によって中断される、自己切断可能な炭素鎖であり、リンカーはリンカーの1つの末端で酸素原子またはNH基によってL'に結合され、リンカーの他の末端は基Z、Z'またはZ"-Rとエーテル、エステルまたはアミド結合を形成し;
ZがORである場合、式Xは、場合により、CH2またはCH2-C6H4-CH2ブリッジによって2つのA環が連結される二量体であることができ、式Xの二量体を連結する各Z基のR基はブリッジによって置換され;ここで
A'とB'は環Aに縮合させた任意の芳香環であり、そのうち1つのみが同時に存在して縮合三環式系を形成することができ;
B'が存在する場合、基Zは存在し、A'が存在する場合、基Zは存在せず;ここで
環Aの1つの炭素は、N-オキシド部分で置換されていてもよく;
環Bにおける破線は任意の二重結合であり;
XがN=Cである場合、環Cは場合によりN=C部分の炭素原子に結合することができ;
A-はアニオンであり、第四級窒素が存在する場合に存在する]
またはその塩もまた提供される。
【0118】
さらに、式XIの化合物:
【化14】

[式中、YはN-オキシド、N-低級アルキルまたはCHであり;
XはSまたはCH=CHであるか;あるいは
YはNであり、XはN=CまたはCH=CHであり;
ZおよびZ'はH、OR、NHRまたはNRRであるか;あるいは
Zは、ホウ素原子を介して環Aに結合された環状ジエーテル化ジヒドロキシボラン基であり;
W1はH、ハロ、C1-6アルキル、C2-20アルケニル、ヒドロキシルまたはC1-6アルコキシであり;
K1、K2、K3およびK4のそれぞれは、独立してCH、N、N-オキシドまたはN-低級アルキルであり、K1とK2の間およびK3とK4の間の破線は、任意の二重結合を意味し;
RはH、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、ハロゲン化C2-20アルケニル、C3-20アルキニル、C2-20アルケニルC1-20アルキル、C3-20アルキニルC2-20アルケニル、C3-20シクロアルキル、C6-30アリール、ヘテロアリール、C6-30アリールC1-20アルキル、C1-20アルキルスルホキシ、C6-30アリールスルホキシ、C6-30アリールスルホキシC1-20アルキル、C1-20アルキルスルホキシC1-20アルキル、C1-20アルコキシカルボニル、C6-30アリールC1-20アルコキシカルボニル、C6-30アリールチオC1-20アルキル、ヒドロキシC1-20アルキル、トリC1-20アンモニウムC1-20アルキル、ヘテロアリールスルホキシ、ヘテロアリールC1-20アルキル、第四級窒素を有するヘテロアリール、第四級窒素を有するヘテロアリールカルボニル、N-メチル-テトラヒドロピリジニルであり;ここで
Rのアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールおよびヘテロアリール基は、1以上の、例えば、1、2、3、4または5のC1-20アルキル、ハロ、ヒドロキシル、アセチル、-COOR1、-SO3R1、アミノ、ニトロ、低級アルキルアミノ、低級アルキニルアミノ、イミダゾリニルメチルアミノ、ジ低級アルキルアミノ、ジ低級アルキニルアミノ、ピペリジノ、ピロリジノ、アゼチジノ、アジリジノ、ジイミダゾリニルメチルアミノ、メルカプト、C1-20アルキルチオ、C6-30アリールチオ、トリフルオロメチル、置換C6-30アリール、C1-20アルキルカルボキシル、置換C6-30アリール、置換C6-30アリールC1-20アルコキシル、置換C6-30アリールC1-20アルキルカルボニルまたはさらなる非置換R基によって置換されていてもよく;
各Rは、2以上存在する場合、独立して定義され;
R1は水素またはC1-6アルキルであり;ここで
Zがアミノの場合、アミノ基の水素の1つまたは両方は、C1-20アルキルまたは基Lで置換されていてもよく、ここでLはアミノ酸ラジカル、最大20アミノ酸部分を有するペプチドラジカルであるか、あるいは非ルシフェラーゼの基質である任意の他の小分子であることができ;ここで
ZまたはZ'がヒドロキシルまたはアミノである場合、ヒドロキシルまたはアミノのHは、(HO)2P(O)-OCH2-、スルホ、-PO3H2で置換されていてもよく、または1以上の炭素原子の炭素鎖によって基Zにセファロスポラン酸を結合させてもよく;
Zがヒドロキシルまたはアミノである場合、ヒドロキシルまたはアミノの1つのHは、基L'-リンカー、で置換されていてもよく、ここでL'は酵素によって除去されてリンカーを遊離しうる基であり、リンカーは、場合により1以上の窒素原子、酸素原子、カルボニル基、(置換)芳香環またはペプチド結合によって中断される、自己切断可能な炭素鎖であり、リンカーはリンカーの1つの末端で酸素原子またはNH基によってL'に結合され、リンカーの他の末端は基ZまたはZ-Rとエーテル、エステルまたはアミド結合を形成し;
Zがヒドロキシルである場合、式XIは-OCH2O-ブリッジによって2つのA環が連結される二量体を含み;ここで
A'とB'は環Aに縮合させた任意の芳香環であり、そのうち1つのみが同時に存在することが可能であり、それにより縮合三環式系を形成し;
B'が存在する場合、基Zは存在し、A'が存在する場合、基Zは存在せず;ここで
環Bにおける破線は任意の二重結合であり;
XがN=Cの場合、環Cは、場合によりN=C部分の炭素原子に結合することができ;
A-はアニオンであり、第四級窒素が存在する場合に存在する]
またはその塩を提供する。
【0119】
式XIIの化合物:
【化15】

[式中、YはN、N-オキシド、N-低級アルキルまたはCHであり;
XはS、CH=CHまたはN=Cであり
ZおよびZ'は、独立してH、OR、NHRまたはNRRであり;
W1はH、ハロ、C1-6アルキル、C2-20アルケニル、ヒドロキシルまたはC1-6アルコキシであるか;あるいは
W1およびZは共に環Aのケト基であり、環Aにおける破線は存在せず;
K1、K2、K3およびK4のそれぞれは、独立してCH、N、N-オキシドまたはN-低級アルキルであり、K1とK2の間およびK3とK4の間の破線は、任意の二重結合を意味し;
RはH、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、ハロゲン化C2-20アルケニル、C3-20アルキニル、C2-20アルケニルC1-20アルキル、C3-20アルキニルC2-20アルケニル、C3-20シクロアルキル、C6-30アリール、ヘテロアリール、複素環、置換複素環、C6-30アリールC1-20アルキル、C1-20アルキルスルホキシ、C6-30アリールスルホキシ、C6-30アリールスルホキシC1-20アルキル、C1-20アルキルスルホキシC1-20アルキル、C1-20アルコキシカルボニル、C6-30アリールC1-20アルコキシカルボニル、C6-30アリールチオC1-20アルキル、ヒドロキシC1-20アルキル、トリC1-20アンモニウムC1-20アルキル、ヘテロアリールスルホキシ、ヘテロアリールC1-20アルキル、第四級窒素を有するヘテロアリール、第四級窒素を有するヘテロアリールカルボニル、N-メチル-テトラヒドロピリジニルであり;ここで
Rのアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールおよびヘテロアリール基は、1以上の、例えば、1、2、3、4または5のC1-20アルキル、ハロ、ヒドロキシル、アセチル、-COOR1、-SO3R1、アミノ、ニトロ、低級アルキルアミノ、低級アルキニルアミノ、イミダゾリニルメチルアミノ、ジ低級アルキルアミノ、ジ低級アルキニルアミノ、ピペリジノ、ピロリジノ、アゼチジノ、アジリジノ、ジイミダゾリニルメチルアミノ、メルカプト、C1-20アルキルチオ、C6-30アリールチオ、トリフルオロメチル、C1-20アルキルカルボキシル、C6-30アリール、置換C6-30アリール、C6-30アリールC1-20アルコキシル、置換C6-30アリールC1-20アルコキシル、C6-30アリールC1-20アルキルカルボニル、置換C6-30アリールC1-20アルキルカルボニルまたはさらなる非置換R基によって置換されていてもよく;ここで
各基Rは、2以上存在する場合、独立して定義され;ここで
置換アリール基は1以上のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、複素環、置換複素環で置換されており、Rのヘテロアリール基は、1以上のC1-20アルキル、C6-C10アリール、ハロ、ヒドロキシル、アセチル、-COOR1、アミノ、ニトロ、低級アルキルアミノ、低級アルキニルアミノ、イミダゾリニルメチルアミノ、ジ低級アルキルアミノ、ジ低級アルキニルアミノ、ピペリジノ、ピロリジノ、アゼチジノ、アジリジノ、ジイミダゾリニルメチルアミノ、メルカプト、C1-20アルキルチオ、C6-30アリールチオまたはトリフルオロメチル基によって置換されていてもよく;
R1は水素またはC1-6アルキルであり;ここで
Zがアミノの場合、アミノ基の水素の1つまたは両方は、C1-20アルキルまたは基Lで置換されていてもよく、ここでLはアミノ酸ラジカル、最大20アミノ酸部分を有するペプチドラジカル、または非ルシフェラーゼの基質である任意の他の小分子であり;ここで
Zがヒドロキシルまたはアミノの場合、Hは(HO)2P(O)-OCH2-、スルホまたは-PO3H2で置換されていてもよく、または1以上の炭素原子の炭素鎖によって基Zにセファロスポラン酸を結合させてもよく;ただし、環Bがチアゾール環である場合、スルホまたは-PO3H2基は低級アルキレン鎖によってヒドロキシル酸素に結合され;
ZまたはZ'がヒドロキシルまたはアミノである場合、1つのHは、基L'-リンカーで置換されていてもよく、ここでL'は酵素によって除去されてリンカーを遊離しうる基であり、リンカーは、場合により1以上の窒素原子、酸素原子、カルボニル基、(置換)芳香環またはペプチド結合によって中断される、自己切断可能な炭素鎖であり、リンカーはリンカーの1つの末端で酸素原子またはNH基によってL'に結合され、リンカーの他の末端は基ZまたはZ’-Rとエーテル、エステルまたはアミド結合を形成し;
Zがヒドロキシルである場合、式XIIは-OCH2O-ブリッジによって2つのA環が連結される二量体を含み;ここで
A'とB'は環Aに縮合させた任意の芳香環であり、そのうち1つのみが同時に存在することが可能であり、それにより縮合三環式系を形成し;
B'が存在する場合、基Zは存在し、A'が存在する場合、基Zは存在せず;ここで
環Bにおける破線は任意の二重結合であり;
XがN=Cの場合、環Cは場合によりN=C部分の炭素原子に結合することができ;
A-はアニオンであり、第四級窒素が存在する場合に存在する]またはその塩もまた提供される。
【0120】
式XVの化合物:
【化16】

[式中、Zは水素または保護基であり;
Lは、本明細書において以下に記載されるようなリンカーであり、例えばアミノ酸または2〜10アミノ酸鎖であり;
TはOまたはNHであり;
Xは水素またはフッ素であり、ただし、X=Hの場合、アミノ酸の少なくとも1つはR、N、D、C、Q、E、H、K、S、T、WまたはYである]もまた提供される。
【0121】
種々の実施形態において、Zは、ヘテロ原子の保護基、例えば窒素または酸素の保護基であることができる。保護基の例は上で述べた。特定の実施形態において、保護基はCbz、Boc、アセチルまたはスクシニル基であることができる。
【0122】
特定の実施形態において、式XVの化合物は、化合物
【化17】

であり得る。
【0123】
上記式の化合物の他の例は、以下の構造:
【化18】

を含む。これらの化合物のアルキルまたはアリール基は、これに加えて、あるいはこれに代えて、前述のように、かつ/または、例えば、用語'置換された'の定義に記載されているように、1以上の(例えば、1、2、3、4、5または6の)置換基で置換されていることができる。
【0124】
IV.リンカー
式IのL基(酵素の基質)を除去してリンカーを遊離し、D-システインの存在下でルシフェラーゼの基質である生成物を生じることができ、ここで残りのリンカーは場合により非酵素反応によって除去されうる、デアセチラーゼ、デホルミラーゼ、デメチラーゼまたは他の酵素などの対象とする酵素の基質を導入するリンカー戦略を、A環修飾2-アミノ-6-ヒドロキシ-ベンゾチアゾールに用いることができる。
【0125】
リンカーは、アルキル鎖またはアルコキシ鎖、たとえば(C1-C6)アルキル基または(C1-C6)アルコキシ基であることができる。これらの鎖は、1以上の電子吸引基である置換基R、例えばアルデヒド、アセチル、スルホキシド、スルホン、ニトロ、シアノ基またはそれらの組み合わせを有することができる。他のリンカーは、トリメチルロック、キニーネメチドおよびジケトピペラジンリンカーならびにそれらの誘導体を含む。トリメチルロックリンカーは、以下:
【化19】

(式中、Rは本明細書記載のローマ数字式のいずれか1つ、例えば、式I〜III、V、VII〜IX、XI-XIIおよびXVに関して定義したものであり、これらは酵素、例えばアッセイされる酵素によって除去できる基であり;トリメチルロックリンカーは、基ZまたはZ'-Rの1つの水素原子と置換し;'脱離基'は、式I〜III、V、VII〜IX、XI-XIIおよびXVの構造の残りの部分である)で示すことができる。トリメチルロックリンカーの使用に関しては、Wang et al.、J. Org. Chem.、62:1363 (1997) and Chandran et al.、J. Am. Chem. Soc.、127:1652 (2005) を参照のこと。
【0126】
キニーネメチドリンカーは、以下:
【化20】

(式中、Rは式I〜III、V、VII〜IX、XI〜XIIおよびXVのいずれか1つに関して定義したものであり、これらは酵素、例えばアッセイされる酵素によって除去できる基であり;キニーネメチドリンカーは基ZまたはZ'-Rの1つの水素原子と置換し;'脱離基'は、式I〜III、V、VII〜IX、XI〜XIIおよびXVの構造の残りの部分である)で示すことができる。キニーネメチドリンカーの使用に関しては、Greenwald et al., J. Med. Chem., 42:3657 (1999) and Greenwald et al., Bioconjugate Chem., 14:395 (2003) を参照のこと。
【0127】
ジケトピペラジンリンカーは、以下:
【化21】

(式中、Rは式I〜III、V、VII〜IX、XI〜XIIおよびXVのいずれか1つに関して定義したものであり、これらは酵素、例えばアッセイされる酵素によって除去できる基であり;ジケトピペラジンリンカーの各R'は、独立してHまたは、場合によりO、SまたはNHによって中断されるアルキル鎖、好ましくはメチル基であり;ジケトピペラジンリンカーは、基ZまたはZ'-Rの1つの水素原子と置換し;'脱離基'は、式I〜III、V、VII〜IX、XI〜XIIおよびXVの構造の残りの部分である)で示すことができる。ジケトピペラジンリンカーの使用に関しては、Wei et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 10: 1073 (2000) を参照のこと。
【0128】
誘導体を含む他のリンカーは:
【化22】

を含む。
【0129】
一般的合成方法
式I〜XVの化合物は、対応する2-ハロベンゾチアゾールから合成することもできるし、有機合成の分野で公知の技術に従って合成することもできる。2,6-二置換ベンゾチアゾールの多くは市販されており、当該技術分野で記載されているようにして合成することもできる。本明細書記載の化合物の合成に使用できる一般的な合成方法に関する情報は、Greg T. Hermanson, Bioconjugate Techniques, Academic Press, San Diego, CA (1996); March's Advanced Organic Chemistry Reactions, Mechanisms, and Structure, 5th Ed. by Michael B. Smith and Jerry March, John Wiley & Sons, Publishers;およびWuts et al. (1999), Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed., John Wiley & Sons, Publishers. において見出すことができる。
【0130】
特定の場合においては、本発明の化合物の製造方法によって異性体が生じる場合がある。本発明の方法は、これらの異性体の分離をいつも必要とするわけではないが、必要に応じて、当該技術分野で公知の方法によってこれらの分離を達成することができる。例えば、異性体精製のために、例えばキラル充填剤を有するカラムを使用する分取高速液体クロマトグラフィー法を用いることができる。
【0131】
以下の実施例は、上記発明の例示を目的とするものであり、本発明の範囲を限定するものであると解釈してはならない。本実施例が、本発明を実施しうる多くの他の方法を示唆するものであることは、当業者には明らかであろう。本発明の範囲を逸脱することなく、多くの変形および修飾をなしうることが理解されなければならない。
【実施例】
【0132】
実施例1〜7への緒言
本発明は、ウリジン5'-ジホスホ-グルクロノシルトランスフェラーゼ(UDP-グルクロノシルトランスフェラーゼまたはUGT)ファミリー酵素の活性をin vitroで測定する方法を含む。簡潔に言えば、過剰発現した昆虫ミクロソーム(Supersomes(登録商標)、BD Gentest社)または動物組織ミクロソーム(Xenotech、BD Gentest社)からのUGT酵素を、MgCl2およびアラメチシンを含む緩衝液中、37℃、生理学的なpHで(一般的には、50mM TES、pH7.5、8mM MgCl2、4mM UDPGA(Sigma社)および25μg/mLアラメチシン(Sigma社)で)、本発明のシアノベンゾチアゾール基質および補因子UDP-グルクロン酸(UDPGA)と共にインキュベートした。UGT酵素反応に続いて、15〜30mM D-システイン-HCl・H2O(Sigma社)を含むP450-Gloルシフェリン検出試薬(Promega社)を等容量加え、プレートを混合し、室温で、一般的には20〜30分間インキュベートした。Promegaルシフェリン検出試薬(Promega Part #V859B)のバイアル1つをPromega P450-Glo緩衝液(Promega Part #V865B)のバイアル1つで溶解することにより、P450-Gloルシフェリン検出試薬を調製できる。
【0133】
このインキュベーション中に、システインはシアノベンゾチアゾール基質と反応してD-ルシフェリン誘導体を生じる。未修飾基質から生成されるルシフェリン誘導体の存在により、P450-Gloルシフェリン検出試薬の存在下で光のアウトプットがもたらされるのに対し、UGTによってグルクロン酸抱合されたどの基質によっても光のアウトプットが開始されない。従って、同一条件下でUDPGA補因子を加えないで行った試料と比較して、グルクロン酸抱合が生じている試料の相対発光量(RLU)における差異(アウトプットの低下または欠落)を分析することによってUGT酵素の活性を測定できる。
【0134】
実施例1.化合物3138、3478、および3165を用いるUDPグルクロノシルトランスフェラーゼ(UGT)活性の検出
本実施例において、昆虫ミクロソームにおいて発現される1連の12組換えUGT(Supersomes(登録商標)、BD Gentest社)に加えて、UGT酵素を発現しない対照ミクロソームを、UDPGA補因子の有り無しで、基質としての化合物3138、化合物3478または化合物3165と共にインキュベートした。
【化23】

【0135】
D-システインを含むルシフェリン検出試薬(LDR)の添加後に、基質および生成物は、共にD-ルシフェリンに変換された(化合物3478は、LDRの添加前にすでにルシフェリン誘導体である)。図3に示すように、グルクロン酸抱合されなかった基質のみが光を生じた。酵素によってグルクロン酸抱合された基質はいずれも光を生じないで、その試料の相対発光量(RLU)は低下する。
【0136】
白色96ウェルプレートに反応物をアセンブルした。各ウェルには、100mM TES、pH7.5、16mM MgCl2、50μg/mLアラメチシン(Sigma社)、60μMの化合物3138または化合物3478および0.4mg/mLの対照または組換えUGT膜を含む反応混合物20μLを含有させた。各ウェルに、20μLの水または8mM UDPGA三アンモニウム塩(Sigma社)を添加することによって反応を開始させた。プレートを混合し、シールし、水浴中37℃で2時間インキュベートした。インキュベーション後、20mM D-システイン-HCl・H2O(Sigma社)を含むP450-glo LDR(Promega社)40μLを各ウェルに加え、プレートを混合し、室温で20分間インキュベートした。インキュベーション完了後、Veritas(登録商標)ルミノメーター(Turner BioSystems社;カリフォルニア州サニーヴェール)でプレートを読み取った。
【0137】
各アイソザイムに関して、UDPGA無添加RLU平均値からUDPGA添加反復試験値を差し引いた。次いで、得られたΔRLU平均値および反復試験の標準偏差値をUDPGA無添加RLU平均値で割って、各アイソザイムについての利用%を得る。次いで、対照ミクロソームから得た利用%を各アイソザイムから差し引いて、それらのアイソザイムについてのバックグラウンド補正利用データを得た。
【0138】
これら12アイソザイムの活性データを図4および5に示す。主要UGTアイソザイム1A1、1A8、1A9、1A10および2B7はすべて、2時間のインキュベーション中に化合物3138の50%以上を利用した。これら同じアイソザイムは、化合物3138のルシフェリンアナログである化合物3478の15%以下を利用し、このことにより、これらの酵素の測定のために、プレルシフェリンを使用することが必要であることが明らかとなった。化合物3138の利用は、UGT 1A3、1A6、1A7、2B15、および2B17に関しては低かったが、なおバックグラウンド以上の、検出可能レベルの利用が存在した。これらの化合物による化合物3138の利用は、反応時間、ミクロソーム酵素の濃度および/または化合物3138の濃度を調節することによりさらに最適化できた。アイソザイムのこの第2の組の中で、UGT 1A6のみが、相当程度まで化合物3478を利用することができた。UGT 1A4および2B4は、基質として化合物3138または3478をいずれも認めうるほどには利用しなかった。化合物3165は、ただUGT 1A4のみによって利用され、より低い程度でUGT 1A9によって利用された(図5)。
【0139】
実施例2.哺乳動物ミクロソームによる化合物3138および3165の利用
内因的に発現されたUGTアイソザイムの、基質として化合物3138および3165を利用する能力を、組換えミクロソームを用いるアッセイ(実施例1)と同様な方法で測定した。化合物3138を用い、37℃で50mM TES、pH7.5、8mM MgCl2、25μg/mLアラメチシン、0.1mg/mL哺乳動物ミクロソームまたは0.2mg/mL組換えSupersomesおよび50μM化合物3138中で、4mM UDPGAの添加または無添加(それぞれ試験反応物および対照)で15分間反応を行った。化合物3165を用い、37℃で50mM TES、pH7.5、8mM MgCl2、25μg/mLアラメチシン、0.2mg/mL哺乳動物ミクロソームまたは組換えSupersomesおよび50μM化合物3165中で、4mM UDPGAの添加または無添加(それぞれ試験反応物および対照)で2時間反応を行った。組織ミクロソームは、Xenotech社またはBD Gentest社から入手した。LDR+システインの添加およびデータ分析は、組換えSupersomeパネルスクリーニング(上記の実施例1)と同様に行った。
【0140】
化合物3138の利用は迅速であったので、異なる組織および動物間の差異を見るために、反応を15分間に短く切り上げる必要があった。試験したすべての組織は、対照1A1 Supersomesよりも化合物3138をずっと多く利用した(図6)。SupersomesにおけるUGT 1A1の濃度は、タンパク質を過剰発現する細胞由来ではあるが、組織試料において化合物3138を利用できるすべてのアイソザイムの相加的濃度よりも高くないと考えられたので、この結果は予期せぬものではなかった。加えて、1つの膜において同時に発現された場合、UGTアイソザイムは相加的活性よりも高い活性を有することができることを最近の報告は示している。
【0141】
化合物3165の利用はずっと遅かったが、このことは、主に1つのアイソザイムによりそれが利用されることと矛盾しない(UGT 1A4、あるいはラットまたはマウスからの同様な活性)(図7)。従って、反応は2時間行った。ヒト腎またはヒト消化管ミクロソームよりもヒト肝ミクロソームのほうがずっと活性は高かったが、このことは、UGT 1A4の発現は、肝外組織よりも肝臓においてより高いという報告と一致している。ラットおよびマウス肝ミクロソームの活性もまた見られた。
【0142】
実施例3.化合物3138および3165を用いる、リトナビルによる組換えUGTアイソザイムの阻害の測定
HIVプロテアーゼインヒビターであるリトナビルは、UGT 1A1および1A4を阻害するが、UGT 2B7にはほとんど効果がないことが文献で報告された。最新の系においてこの観察を試験するために、化合物3138を用いてUGT 1A1および2B7 Supersomesを調べ、化合物3165を用いてUGT 1A4 Supersomesを調べた。50mM TES、pH7.5、8mM MgCl2、25μg/mLアラメチシン、0.2mg/mL Supersomes、50μM化合物3138および0〜162μMリトナビル(AK Scientific社)中で、5mM UDPGAの添加または無添加で、化合物3138を用いる反応を行った。37℃で2時間後、各UGT反応物40μLに、200mM HEPESで希釈した50mM D-システイン-HCl・H2O(pH8.0)10μLを加えた。10分間のインキュベーション後、各ウェルにP450-glo(Promega社)50μLを加え、発光を測定した。25μMの3165を用い、37℃で70分間だけインキュベートし、40μMまでの濃度のリトナビルを用いて反応を行ったこと以外は同様にして、化合物3165を用いる反応を行った。
【0143】
化合物3138および3165での結果を、それぞれ図8および9に示す。リトナビルはUGT 1A1およびUGT 1A4を阻害するが、UGT 2B7を阻害せず、このことは文献と一致している。測定の結果、UGT 1A1のEC50値は60μMであり、UGT 1A4のEC50値は4μMであることが示された。この結果は、組換えSupersomesを用いる、特定のUGTアイソザイムインヒビターを同定する本アッセイ系の能力を示している。
【0144】
実施例4.ジクロフェナクを用いる、ヒト肝ミクロソームにおける組換えUGTアイソザイムおよびUGT活性の阻害
ジクロフェナクは非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)であり、多くのUGT酵素の基質であることが知られ、UGT 1A1、1A3、1A6、1A7、1A8、1A9、1A10、2B7、2B15および2B17を阻害することも報告されている。大部分のUGTアイソザイムに対するその広い阻害活性により、組換えUGT調製物およびヒト肝ミクロソーム(HLM)の両方において、UGT活性の阻害を調べるための理想的な候補であった。
【0145】
組換えUGTを阻害するジクロフェナクの能力を評価するために、UGT 1A1および2B7 supersomesを用いる反応を設定した。これらの反応物には、50mM TES、pH7.5、8mM MgCl2、25μg/mLアラメチシン、0.1mg/mL Supersomesおよび20μM化合物3138(4mM UDPGAの添加または無添加で)を含有させた。0〜10mMジクロフェナクに関して滴定を行った。37℃で90分後、各反応物40μLに40μLのLDR+20mM D-システインを加え、混合した。室温で20分後、ルミノメーターでRLUを読み取った。
【0146】
HLMにおいて、UGT活性を阻害するジクロフェナクの能力を評価するために、以下のように反応を設定した。すべての反応物には、50mM TES、pH7.5、8mM MgCl2、25μg/mLアラメチシン、0.1mg/mL HLMおよび50μM化合物3138(4mM UDPGAの添加または無添加で)を含有させた。0〜3.6mMジクロフェナクに関して滴定を行った。37℃で15分後、各反応物40μLに40μLのLDR+20mM D-システインを加え、混合した。室温で20分後、ルミノメーターでRLUを読み取った。
【0147】
滴定曲線を図10(組換えsupersomes)および11(HLM)に示す。ジクロフェナクは、232μMのIC50でUGT 1A1活性を阻害し、74μMのIC50でUGT 2B7活性を阻害した。基質として4-メチル-ウンベリフェロンを用いる場合、UGT 2B7は、UGT 1A1より強くジクロフェナクによって阻害されるという文献報告と一致している(Uchaipichat et al.Drug Metab.Disp.(2004).32:4,413-423を参照のこと)。ジクロフェナクは、化合物3138のHLM利用を60μMのEC50で阻害した。組換えUGTsupersome調製物および、より天然なヒト肝ミクロソーム環境を用いる、阻害をスクリーニングするためのアッセイの有用性を本実施例は示している。
【0148】
実施例5.ヒト肝ミクロソームにおけるUGT活性の阻害
特定のUGTアイソザイムの活性をモジュレートする多くの化合物が知られている。化合物3138を用いて測定する場合の、ヒト肝ミクロソーム(HLM)におけるUGT活性を阻害するそれらの能力を測定するために、本明細書記載のアッセイ系において、それらのいくつかを試験した。阻害化合物ならびに、化合物によってモジュレートされることが現在文献に報告されているアイソザイムのリストを以下の表に示す。
【表1】

【0149】
HLMにおいて、UGT活性を阻害するこれらの化合物の能力を評価するために、以下のように反応を設定した。すべての反応物には、50mM TES、pH7.5、8mM MgCl2、25μg/mLアラメチシン、0.1mg/mL HLMおよび50μM化合物3138(4mM UDPGAの添加または無添加で)を含有させた。リトナビルおよびロピナビルは、最終濃度0.25mMで用いた。スルフィンピラゾン、キニジンおよびアンドロステロンは、0.5mMで用いた。1-ナフトール、スコポレチン、ウンベリフェロンおよび7-ヒドロキシ-4-トリフルオロメチルクマリンは1mMで用いた。ジクロフェナクは5mMで用いた。バルプロ酸塩は10mMで用いた。すべての反応物は、水、DMSOまたはエタノールのいずれかを含む、それらの対応するビヒクル対照試料と比較した。37℃で15分後、各反応物40μLに40μLのLDR+20mM D-システインを加え、混合した。室温で20分後、ルミノメーターでRLUを読み取った。
【0150】
これらの化合物は、種々の程度にHLMにおけるUGT活性を阻害した(図13)。より天然のヒト肝ミクロソーム環境における、種々のUGTインヒビターをスクリーニングするためのアッセイの有用性を本実施例は示している。
【0151】
実施例6.UGT 1A1および2B7を用いるアッセイ変動の測定
12の異なるUDPGA無添加およびUDPGA添加試料の活性データおよび標準偏差値を用いて、アッセイ変動を測定した。すべての反応物には、50mM TES、pH7.5、8mM MgCl2、25μg/mLアラメチシン、0.2mg/mL UGT 1A1または2B7 Supersomesおよび30μM化合物3138(5mM UDPGAの添加または無添加で)を含有させた。37℃で120分後、各反応物40μLに40μLのLDR+20mM D-システインを加え、混合した。室温で20分後、ルミノメーターでRLUを読み取った。
【0152】
UGT 1A1のデータを図12に示す。以下に概略を示す方程式を用いてZ’値を算出した。
【数1】

ロバストなアッセイ系は、一般的には、0.5以上のZ’値を示す。UGT 1A1について算出されたZ’値は0.83であった。同一条件下で、UGT 2B7について算出されたZ’値は0.67であった。
【0153】
実施例7.GSTアイソザイムによるベンゾチアゾールの利用
少量の化合物934-37をDMSOに溶解しておおよそ1mg/mLの溶液を作成した。この溶液を、50mM HEPES緩衝液(pH7.5)中で1:100(v/v)に希釈して、基質溶液を作成した。この溶液20μLを、96ウェル白色ルミノメータープレート(Promega part Z3291)の10ウェルに入れ、次いでこの溶液を1:3.1に希釈し、希釈液20μLを、ルミノメータープレート中の他の10ウェルに入れた。
【0154】
D-システイン4mg(Sigma Chemical社;C8005-1g、017K1034)を、50mM HEPES緩衝液(pH7.5)1mLに溶解し、次いで、基質溶液を含むウェル4つおよび希釈基質溶液を含むウェル4つに4μLを加えて、化合物934-37を対応するルシフェリン誘導体に変換させた。これらの化合物の構造を以下に示す。
【化24】

【0155】
GST A1-1(1.2mg/mL)試料および100mMグルタチオン水溶液100μLを、50mM HEPES(pH7.5)5mLに希釈し、次いで25μLを、高濃度の未変換の化合物934-37を含むウェル2つ;高濃度の変換された化合物934-37を含むウェル2つ;ならびに希釈された未変換の化合物934-37を含むウェル2つ;および希釈された変換された化合物934-37ウェル2つ;に加えた。
【0156】
GST M1-1(1.2mg/mL)試料および100mMグルタチオン100μLを、50mM HEPES(pH7.5)5mLに希釈し、次いで25μLを、高濃度の未変換の化合物934-37を含むウェル2つ;高濃度の変換された化合物934-37を含むウェル2つ;ならびに希釈された未変換の化合物934-37を含むウェル2つ;および希釈された変換された合物934-37を含むウェル2つ;に加えた。
【0157】
グルタチオン(100mMグルタチオン100μL)を、50mM HEPES緩衝液(pH7.5)5mLに希釈し、次いで25μLを、変換されたおよび未変換の化合物934-37の高濃度および希釈溶液の残余ウェルに加えた。
【0158】
室温で55分後、前もってシステインを加えなかったすべてのウェルに上記のD-システイン溶液4μLを加え、次いで、P450 Gloルシフェリン検出試薬(Promegaルシフェリン検出試薬(Promega Part #V859B)のバイアル1つをPromega P450-Glo緩衝液(Promega Part #V865B)のバイアル1つで溶解することにより調製した)50μLを加えた。次いで、プレートをGlo Maxルミノメーター(Promega社)に入れて、15分間のインキュベーション後に光を読み取った。得られた値を平均し、次いで、酵素を加えなかったウェルから生じた光の平均値から酵素を加えたウェルからの生じた光の平均値を差し引いた。結果を以下の表に示す。
【表2】

GST A1-1は、基質の未変換状態で、大変速く基質を利用するが、D Cysの添加によってひとたび基質がルシフェリン誘導体に変換されれば、本質的にその物質を変換する能力を失うことをこれらのデータは明確に示している。しかしながら、GST M1-1は、物質の未変換状態でその物質を利用する能力がずっと低いが、基質の変換体を大変よく利用する。変換体および未変換体の利用におけるこの差異は、試料が、これらのアイソザイムの1つまたは両方を含むかどうかを測定するのに使用できる。
【0159】
実施例8.N-ペプチジル-6-アミノ-2-シアノベンゾチアゾールの合成
保護N-ペプチジル-6-アミノ-2-シアノベンゾチアゾールは、米国特許第7,384,758号(O'Brienら)の記載に従って合成できる。脱保護誘導体は、以下のように合成できる。
【化25】

トリフルオロ酢酸/ジクロロメタン/トリイソプロピルシラン(50/50/2)の無水溶液に、t-ブチル保護N-ペプチジル-6-アミノ-2-シアノベンゾチアゾール(米国特許第7,384,758号)を加える。2時間後、溶液を留去してシロップにする。ジエチルエーテルで沈殿させる。固体をエチルエーテルで2回洗浄する。真空下で乾燥する。逆相HPLCを用い、20mM NH4OAcで溶出して精製する。適切な分画を合わせ、凍結乾燥して、脱tBu-保護化合物を得る。Cbz基の除去は、水素化条件下(例えば、Pd/Cの存在下、水素ガスで)で達成できる。
【0160】
実施例9.シトクロムP450酵素パネルスクリーニング:シトクロムP450酵素によるベンゾチアゾールの利用
ベンゾチアゾール化合物3016、3019、3026、3806、3814、3820、3821、3833、3835、3866および3868の原液には、50mM DMSO溶液を調製した。KPO4緩衝液(pH7.4)(CYP2C9には25mM KPO4、CYP2B6、-2C8、-2C19、-4F2、-4F3Aおよび-4F3Bには50mM KPO4、CYP1A1、-1A2、-1B1、-2D6、-2E1、-3A5、-3A7、-2J2、-4F12、-19およびP450無添加対照には100mM KPO4、CYP3A4には200mM KPO4)または100mMトリス-HCl(pH7.5)(CYP2A6、-2C18および-4A11)での反応物50μL中で、50μMの各化合物と共に、各P450酵素(Supersomes(登録商標)、BD Bioscience社)1ピコモルをインキュベートした。NADPH再生系を加えて、反応を開始させた(本アッセイにおける再生系成分の最終濃度:1.3mM NADP+、3.3mMグルコース-6-リン酸、3.3mM MgCl2、0.4U/mLグルコース-6-リン酸脱水素酵素および0.05mMクエン酸ナトリウム)。反応物を37℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後、6.6mM D-システインを添加したP450-Glo(登録商標)ルシフェリン検出試薬(Promega社から入手可能)50μLを各反応物に加え、室温で20分間インキュベートし、Veritasルミノメーターで発光を検出した。本アッセイスキームにおいて、CYP450酵素活性を光のアウトプットとして検出するためにベンゾチアゾール化合物もまた使用できることを図14〜25は示している。各化合物は1以上のP450酵素に対して活性であったが、P450活性のプロフィールは、化合物構造に応じて、酵素のパネルにわたって変化した。所定のP450酵素に特異的な光のアウトプットは、P450酵素によりベンゾチアゾール化合物が酸化されて6-ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール-2-カルボニトリル(ベンゾチアゾール誘導体)を生じることによるものである可能性がある。次いで、6-ヒドロキシベンゾ-[d]チアゾール-2-カルボニトリルは、D-システインと反応してD-ルシフェリン誘導体を形成し、次いでそれがルシフェリン検出試薬中のルシフェラーゼと反応して、存在するD-ルシフェリンの量に比例して光を生じることができる。
【0161】
すべての公報、特許および特許文献は、個々に参照により組み込まれるようにして参照により本願に組み込まれる。種々の具体的な好ましい実施形態および技術を参照して本発明を説明してきた。しかしながら、本発明の精神と範囲を逸脱することなく、多くの変形および修飾を加えることが可能であることが理解されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の非ルシフェラーゼ酵素の存在または活性を検出または測定する方法であって、
a)試料と、非ルシフェラーゼ酵素媒介反応のための第1反応混合物と、前記非ルシフェラーゼ酵素の基質を含む2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体とを含む第1混合物であって、前記第1混合物が、前記非ルシフェラーゼ酵素の活性に特異的な補因子を含まず、前記誘導体が、D-システイン存在下、補因子の非存在下で甲虫ルシフェラーゼの生物発光基質である生成物を生じる、前記第1混合物を提供する工程;
b)前記第1混合物の少なくとも一部と、D-システインを含む、甲虫ルシフェラーゼ媒介反応のための第2反応混合物とを接触させて、第2混合物を産出する工程;及び
c)前記第2混合物における発光を、前記試料と、非ルシフェラーゼ酵素媒介反応のための第1反応混合物と、前記2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体と、前記非ルシフェラーゼ酵素に特異的な補因子とを有する第3混合物が、D-システインを含む前記甲虫ルシフェラーゼ媒介反応のための反応混合物と接触される対照混合物における発光と比較し、それによって前記試料中の前記非ルシフェラーゼ酵素の存在または量を検出または測定する工程;
を含む前記方法。
【請求項2】
前記非ルシフェラーゼ酵素が、UGT、GST、CYP450、FMO、HDACまたはプロテアーゼを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
非ルシフェラーゼ酵素媒介反応のための前記第1反応混合物が、さらに、非ルシフェラーゼ酵素媒介反応の試験モジュレーターを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記試験モジュレーターが、前記前記非ルシフェラーゼ酵素のインヒビターである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記試験モジュレーターが、前記誘導体と競合する前記非ルシフェラーゼ酵素の基質である、請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記試験モジュレーターが、前記非ルシフェラーゼ酵素のアクチベーターである、請求項3記載の方法。
【請求項7】
試料が組織抽出物または組換えミクロソームを含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記ミクロソームが特定のアイソザイムを発現する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記試料が組換えミクロソームを含む、請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記ミクロソームが哺乳動物ミクロソームである、請求項7記載の方法。
【請求項11】
試料中のUGTの存在または量を検出または測定する方法であって、
a)試料と、UGT媒介反応のための第1反応混合物と、UGTの基質である2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体とを含む第1混合物であって、前記第1混合物がUDPGAを含まず、前記誘導体が、D-システイン及びUGTの存在下で、甲虫ルシフェラーゼの生物発光基質である生成物を生じる、前記第1混合物を提供する工程;
b)前記第1混合物の少なくとも一部と、D-システインを含む、甲虫ルシフェラーゼ媒介反応のための第2反応混合物とを接触させて、第2混合物を産出する工程;及び
c)前記第2混合物における発光を、前記試料と、UGT媒介反応のための第1反応混合物と、前記2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体と、UDPGAとを有する第3混合物が、D-システインを含む前記甲虫ルシフェラーゼ媒介反応のための反応混合物と接触される対照混合物における発光と比較し、それによって前記試料中のUGTの存在または量を検出または測定する工程;
を含む前記方法。
【請求項12】
UGT媒介反応のための前記第1反応混合物が、さらに、UGT媒介反応の試験モジュレーターを含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記モジュレーターが、UGTのインヒビターである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記モジュレーターが、前記誘導体と競合するUGTの基質である、請求項12記載の方法。
【請求項15】
試料が組織抽出物または組換えミクロソームを含む、請求項11記載の方法。
【請求項16】
試料中の非ルシフェラーゼ酵素モジュレーターの活性を検出または測定する方法であって、
a)非ルシフェラーゼ酵素を発現するミクロソームを含む試料と、非ルシフェラーゼ酵素媒介反応のための第1反応混合物と、前記非ルシフェラーゼ酵素に対するモジュレーター活性が評価される化合物と、非ルシフェラーゼ酵素基質である2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体とを含む第1混合物であって、前記第1混合物が、前記非ルシフェラーゼ酵素の活性に特異的な補因子を含まず、前記誘導体が、D-システイン及び前記非ルシフェラーゼ酵素の存在下、甲虫ルシフェラーゼの生物発光基質である生成物を生じる、前記第1混合物を提供する工程;
b)前記第1混合物の少なくとも一部と、D-システインを含む、甲虫ルシフェラーゼ媒介反応のための第2反応混合物とを接触させて、第2混合物を産出する工程;及び
c)前記第2混合物における発光を、前記非ルシフェラーゼ酵素を発現するミクロソームを含む試料と、非ルシフェラーゼ酵素媒介反応のための第1反応混合物と、前記非ルシフェラーゼ酵素に対するモジュレーター活性が評価される化合物と、前記2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体と、前記非ルシフェラーゼ酵素に特異的な補因子を有する第3混合物が、D-システインを含む、甲虫ルシフェラーゼ媒介反応のための反応混合物と接触される対照混合物における発光と比較し、それによって前記化合物のモジュレーション活性を検出または測定する工程;
を含む前記方法。
【請求項17】
前記非ルシフェラーゼ酵素が、UGT、GST、CYP450、FMO、HDACまたはプロテアーゼを含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
モジュレーター活性が評価される前記化合物が、前記非ルシフェラーゼ酵素のインヒビター、非ルシフェラーゼ酵素の競合的基質または前記非ルシフェラーゼ酵素のアクチベーターである、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記ミクロソームが組換えミクロソームである、請求項16記載の方法。
【請求項20】
前記ミクロソームが特定のアイソザイムを発現する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
試料中のUGTモジュレーターの活性を検出または測定する方法であって、
a)UGTを発現するミクロソームを含む試料と、UGT媒介反応のための第1反応混合物と、UGTモジュレーター活性が評価される化合物と、UGTの基質である2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体とを含む第1混合物であって、前記第1混合物がUDPGAを含まず、前記誘導体が、D-システイン及びUGTの存在下、甲虫ルシフェラーゼの生物発光基質である生成物を生じる、前記第1混合物を提供する工程;
b)前記第1混合物の少なくとも一部と、D-システインを含む、甲虫ルシフェラーゼ媒介反応のための第2反応混合物とを接触させて、第2混合物を産出する工程;及び
c)前記第2混合物における発光を、UGTを発現するミクロソームを含む前記試料と、UGT媒介反応のための第1反応混合物と、UGTモジュレーター活性が評価される化合物と、前記2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体と、UDPGAとを有する第3混合物が、D-システインを含む甲虫ルシフェラーゼ媒介反応のための反応混合物と接触される対照混合物における発光と比較し、それによって前記試料中の評価される化合物のUGTモジュレーション活性を検出または測定する工程;
を含む前記方法。
【請求項22】
UGTを発現する前記ミクロソームが、特定のUGTアイソザイムを発現する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記ミクロソームが組換えミクロソームである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記ミクロソームが哺乳動物ミクロソームである、請求項22記載の方法。
【請求項25】
前記2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体が、式Iの化合物:

であって、
式中、R1はOH、ORx、OSO2RxまたはNHRxであり;
R2は(C1-C3)アルキル、トリフルオロメチル、アミノ、ニトロまたはハロであり;
nは0、1、2または3であり;
Rxはアリールまたは(C1-C3)アルキルアリールであって、アリールが、任意に1〜5のハロ、ヒドロキシ、ニトロまたはアミノ基で置換されるアリールまたは(C1-C3)アルキルアリールである、
請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記式Iの化合物が、

である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記2-シアノ-6-置換ベンゾチアゾールの誘導体が、式XVの化合物:

であって、
式中、Zは水素または保護基であり;
Lはアミノ酸または2〜10アミノ酸鎖であり;
TはOまたはNHであり;
Xは水素またはフッ素であり、ただしXがHである場合、アミノ酸の少なくとも1つはR、N、D、C、Q、E、H、K、S、T、WまたはYである、
請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
Zが保護基であり、前記保護基が窒素保護基または酸素保護基である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
ZがCbz、Boc、アセチルまたはスクシニルである、請求項27記載の方法。
【請求項30】
前記式XVの化合物が:

である、請求項27記載の方法。
【請求項31】
式XVの化合物:

であって、
式中、Zは水素または保護基であり;
Lはアミノ酸または2〜10アミノ酸鎖であり;
TはOまたはNHであり;
Xは水素またはフッ素であり、ただしXがHである場合、アミノ酸の少なくとも1つはR、N、D、C、Q、E、H、K、S、T、WまたはYである化合物。
【請求項32】
Zが保護基であり、前記保護基が窒素保護基または酸素保護基である、請求項31記載の化合物。
【請求項33】
ZがCbz、Boc、アセチルまたはスクシニルである、請求項31記載の化合物。
【請求項34】
前記式XVの化合物が:

である、請求項31記載の化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公表番号】特表2012−501677(P2012−501677A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526854(P2011−526854)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/005052
【国際公開番号】WO2010/030343
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(593089149)プロメガ コーポレイション (57)
【氏名又は名称原語表記】Promega Corporation
【Fターム(参考)】