説明

シアン化物を含まない銀電気めっき液

【課題】光沢銀の高速堆積のための、シアン化物を含まない銀電気めっき液を提供する。
【解決手段】酸化銀及び1種以上の銀ヒダントイン錯体からなる銀イオン源などの銀イオン源、ヒダントイン、ヒダントイン誘導体、スクシンイミドおよびスクシンイミド誘導体から選択される1種以上の錯化剤、ジアルキルスルフィドおよびジアルキルジスルフィドから選択される1種以上の有機スルフィド、並びに1種以上のピリジルアクリル酸を含み、シアン化物を含まない溶液からなる銀の電気めっき液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2011年9月21日に出願された米国仮特許出願第61/385,066号に対する35U.S.C.119(e)の下での優先権の利益を主張し、その出願の全内容は参照によって本明細書に組み込まれる。
本発明はシアン化物を含まない銀電気めっき液に関する。より具体的には、本発明は、光沢銀の高速堆積のための、シアン化物を含まない銀電気めっき液に関する。
【背景技術】
【0002】
銀電気めっきは、装飾およびディナーウェアのために従来使用されてきた。その優れた電気的性質のせいで、銀電気めっきはエレクトロニクス産業において、例えば、光起電力素子のための電流トラック、コネクタおよびスイッチなどに幅広い有用性を有してきた。
【0003】
多くの従来の銀めっき液はシアン化化合物を含むので非常に毒性であった。多くの場合、その電気めっき液の銀イオン源は水溶性シアン化銀塩からである。銀電気めっき液からシアン化化合物を低減もしくは除去し、同時にその銀電気めっき液の所望のめっき性能および基体への銀の接着性を維持し、並びに光沢銀堆積物を達成するするための試みがなされてきた。例えば、硝酸銀−チオウレア溶液およびヨウ化銀−有機酸溶液が試みられてきたが、銀電気めっき液を容易に利用するという産業界に要求される成功を伴っていなかった。また、銀チオシアナート溶液に添加されたトリエタノールアミンを含む銀溶液、並びに銀の無機および有機酸塩に添加されたヨウ化カリウムおよびスルファニル酸誘導体のような他の銀電気めっき液が試みられてきた。しかし、このような銀電気めっき液はめっき産業界を満足させるように機能していなかった。
【0004】
シアン化物を含まない銀電気めっき液は、産業界の作業者に対して毒性が低く、かつその液からの廃水がシアン化物で環境を汚染しないので環境により優しい。しかし、一般に、このようなシアン化物を含まない銀電気めっき液は全く安定ではなかった。この液は典型的には電気めっき中に分解し、液中の銀イオンは多くの場合、基体上の堆積の前に低減し、よってこの液の寿命が短くなる。最大適用可能電流密度および銀堆積物の物理的特性の改良の余地もある。このようなシアン化物を含まない銀電気めっき液は均一な銀層を堆積させず、劣った表面外観を有していた。これらは一般に、光沢のない銀層を堆積させる。シアン化物を含まない多くの銀電気めっき液が電流密度が5A/dmを超える高速めっきにおける工業的使用に適することが見いだされているわけではない。
【0005】
米国特許出願公開第20050183961号はシアン化物を含まない銀電気めっき液および銀を堆積する方法を開示する。このシアン化物を含まない銀電気めっき液は銀イオンを錯化するためのヒダントインおよびヒダントイン誘導体の錯化剤と、ミラー光沢銀堆積物を提供するための2,2’−ジピリジルとを含む。この公開された特許出願は、銀電気めっき液への2,2’−ジピリジルの添加は、室温で1〜30mA/cmの電流密度での電気めっきを可能にし、かつミラー光沢銀堆積物を達成することを開示する。しかし、2,2’−ジピリジルは毒性化合物であって、特に高いめっき温度、すなわち50〜60℃以上において不快な臭気を伴う。よって、2,2’−ジピリジルを含む電気めっき液は高温が必要とされる高速電気めっきには適していない。適用可能な電流密度の増大を可能にする高速めっきに有利なめっき液中での実質的に均一な電解質拡散を可能にするために高い温度が望まれる。さらに、2,2’−ジピリジルはその液を使用する作業者に危険をもたらし、かつその銀電気めっき液からの廃水が処理される際に環境への危険ももたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第20050183961号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ミラー光沢堆積物を提供できるシアン化物を含まない銀電気めっき液が存在しているが、ミラー光沢銀堆積物を提供しかつ高温で高い電流密度範囲で電気めっきされうるシアン化物を含まない銀電気めっき液についての必要性が依然として存在している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
溶液は1種以上の銀イオン源、ヒダントイン、ヒダントイン誘導体、スクシンイミドおよびスクシンアミド誘導体から選択される1種以上の錯化剤、ジアルキルスルフィドおよびジアルキルジスルフィドから選択される1種以上の有機スルフィド、並びに1種以上のピリジルアクリル酸を含み、この溶液はシアン化物を含まない。
方法は、a)1種以上の銀イオン源、ヒダントイン、ヒダントイン誘導体、スクシンイミドおよびスクシンイミド誘導体から選択される1種以上の錯化剤、ジアルキルスルフィドおよびジアルキルジスルフィドから選択される1種以上の有機スルフィド、並びに1種以上のピリジルアクリル酸を含み、シアン化物を含まない溶液を提供し;b)基体を前記溶液と接触させ;並びにc)基体上に銀を電気めっきすることを含む。
【発明の効果】
【0009】
シアン化物を含まない銀電気めっき液中の有機スルフィドおよびピリジルアクリル酸の組み合わせは、高い電流密度で、高い電気めっき温度で電気めっきされることができ、かつリールツーリール(reel−to−reel)電気めっきにおいて使用されうるミラー光沢銀堆積物を提供する。さらに、このシアン化物を含まない銀電気めっき液は、シアン化物を含まずかつ2,2’−ジピリジルのような化合物も除いているので、環境に優しい。よって、このシアン化物を含まない銀電気めっき液は作業者に優しく、かつ操作および化学物質取り扱いの点で安全である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書を通じて使用される場合、用語「めっき」および「電気めっき」は交換可能に使用される。
【0011】
以下の略語は、文脈が明らかに他のことを示さない限りは、以下の意味を有する:℃=摂氏度;g=グラム;mL=ミリリットル;L=リットル;A=アンペア;dm=デシメートル;μm=ミクロン;およびnm=ナノメートル。全てのパーセンテージおよび比率は、他に示されない限りは重量基準である。全ての範囲は包括的であり、かつこのような数値範囲が合計で100%になると制約されることが論理的である場合を除いて、任意に組み合わせ可能である。
【0012】
銀電気めっき水溶液は1種以上の銀イオン源を含む。銀イオン源には、限定されないが、酸化銀、硝酸銀、チオ硫酸銀ナトリウム、グルコン酸銀;銀システイン錯体のような銀アミノ酸錯体;アルキルスルホン酸銀、例えばメタンスルホン酸銀、並びに銀ヒダントインおよび銀スクシンイミド化合物錯体が挙げられる。好ましくは、銀イオン源は酸化銀および1種以上の銀ヒダントイン錯体から選択される。銀電気めっき液はシアン化物を含まないので、銀シアン化化合物箱の溶液から除かれている。銀イオン源はこの水溶液中に5g/L〜100g/L、または例えば10g/L〜50g/Lの量で含まれる。
【0013】
ピリジルアクリル酸には、これに限定されないが、3−(2−ピリジル)アクリル酸、3−(3−ピリジル)アクリル酸、3−(4−ピリジル)アクリル酸、3−(6−フェニル−ピリジル)アクリル酸、トランス−3−(3−ピリジル)アクリル、トランス−3−(3−ピリジル)アクリル酸、およびz−2−フルオロ−3−(3−ピリジル)アクリル酸が挙げられる。好ましくは、ピリジルアクリル酸はシス−3−(3−ピリジル)アクリル酸、およびトランス−3−(3−ピリジル)アクリル酸である。ピリジルアクリル酸は1g/L〜10g/Lまたは例えば2g/L〜6g/Lの量で銀電気めっき液中に含まれる。
【0014】
ピリジルアクリル酸は有機スルフィドと共同してミラー光沢銀堆積物を提供し、このミラー光沢銀堆積物は高い電流密度、高い電気めっき温度で電気めっきされることができかつリールツーリール電気めっきに使用されうる。
【0015】
有機スルフィドはジアルキルスルフィドおよびジアルキルジスルフィドから選択され、より典型的には置換ジアルキルスルフィドおよび置換ジアルキルジスルフィドから選択される。典型的には、置換ジアルキルスルフィドおよび置換ジアルキルジスルフィドは以下の一般式を有するチオジアルカノールである:
【化1】

式中、RおよびRは独立して直鎖もしくは分岐の(C−C)アルキルであり、好ましくはRおよびRはそれぞれ−CHRCHR−であり、RおよびRは独立して水素、メチル基もしくはエチル基であり;並びにxは1〜2の整数である。xが2の場合には、有機スルフィドはジスルフィドである。より好ましくは、RおよびRは水素もしくはメチルであり、並びにxは1である。有機スルフィドは1g/L〜10g/L、または例えば2g/L〜8g/Lの量で銀電気めっき液中に含まれる。
【0016】
ヒダントイン、ヒダントイン誘導体、およびスクシンイミド誘導体から選択される1種以上の水溶性窒素含有錯化剤が銀電気めっき液中に含まれる。スクシンイミドおよびスクシンイミド誘導体、ヒダントインおよびヒダントイン誘導体は60g/L〜250g/L、または例えば50g/L〜100g/Lの量で銀電気めっき液中に含まれる。ヒダントイン誘導体には、これに限定されないが、1−メチルヒダントイン、1,3−ジメチルヒダントイン、5,5−ジメチルヒダントイン、1−メタノール−5,5−ジメチルヒダントイン、および5,5−ジフェニルヒダントインが挙げられる。スクシンイミド誘導体には、これに限定されないが、2,2−ジメチルスクシンイミド、2−メチル−2−エチルスクシンイミド、2−メチルスクシンイミド、2−エチルスクシンイミド、1,1,2,2−テトラメチルスクシンイミド、1,1,2−トリメチルスクシンイミドおよび2−ブチルスクシンイミドが挙げられる。
【0017】
酸および塩基をはじめとする様々な電解質が銀電気めっき液中に使用されることができる。電解質には、これに限定されないが、アルカンスルホン酸、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸およびプロパンスルホン酸;アルキロールスルホン酸;アリールスルホン酸、例えば、トルエンスルホン酸、フェニルスルホン酸およびフェノールスルホン酸;アミノ含有スルホン酸、例えば、アミドスルホン酸;スルファミン酸;並びに鉱酸、例えば、硫酸、塩酸、フッ化水素酸および硝酸が挙げられる。酸および塩基の塩も電解質として使用されうる。塩化アルカリ金属塩および硝酸アルカリ金属塩、例えば、塩化カリウムおよび硝酸カリウムのような導電性塩が含まれてもよい。さらに、電解質は酸の混合物、塩基の混合物、または1種以上の酸と1種以上の塩基との混合物を含むことができる。酸、塩基および塩の混合物も含まれうる。このような電解質は、一般に、アルドリッチケミカルカンパニー(ウィスコンシン州、ミルウォーキー)のような様々なソースから商業的に入手可能である。典型的には、このような電解質は、1g/L〜100g/L、または例えば10g/L〜50g/Lの量で銀ストライク液中に含まれる。
【0018】
銀電気めっき液は1種以上の緩衝剤を含むことができる。緩衝剤には、これに限定されないが、ホウ酸塩緩衝剤、例えば、ボラックス、リン酸塩緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤、炭酸塩緩衝剤およびスルファミン酸塩緩衝剤が挙げられる。使用される緩衝剤の量はめっき液のpHを8〜14、好ましくは9〜12に維持するのに充分な量である。
【0019】
場合によっては、1種以上の界面活性剤が銀溶液に含まれる。様々な従来の界面活性剤が使用されうる。銀めっきの性能を妨げない限りは、アニオン性、カチオン性、両性および非イオン性の従来の界面活性剤のいずれも使用されうる。界面活性剤は銀電気めっき液について当業者に知られている従来の量で含まれうる。市販の界面活性剤の例はAMPHOTERGE K、AMINOXID WS−35およびRALUFON EA−15−90である。
【0020】
場合によっては、銀電気めっき液は1種以上の追加の成分を含む。この追加の成分には、限定されないが、さび止め剤、レベラーおよび延性増強剤(ductility enhancer)が挙げられる。このような追加の成分は従来の量で使用され、これは当業者に知られている。
【0021】
従来の電気めっきスプレー装置を用いて銀溶液を基体の表面上にスプレーすることによって、または銀溶液に基体全体を浸漬することによって、基体は銀で電気めっきされうる。従来の電気めっき装置が使用されうる。電気めっきは室温から90℃までの範囲の温度で行われうるが、銀溶液は好ましくは30℃〜90℃、より好ましくは40℃〜70℃の温度で使用される。高い温度は高い電流密度で電気めっきするのを可能にするが、これはこのような高い温度で電解質イオンの拡散が電気めっき液全体にわたって増大されるからである。めっきされる基体は典型的にはカソードとして機能し、および銀電気めっきに好適な従来のアノードが使用されうる。アノードは可溶性電極、例えば、可溶性銀電極であることができ、または不溶性アノード、例えば、酸化イリジウムが使用されうる。電極は、電源を提供する従来の整流器に接続される。電流密度は0.1A/dm〜50A/dmの範囲であり得るが、典型的には電流密度は5A/dm以上、より典型的には6A/dm〜30A/dm、最も典型的には6A/dm〜15A/dmである。このような高い電流密度は、リールツーリール電気めっきにおけるように電気めっき時間を短くする。銀層が基体の表面に直接隣接するように銀が基体表面上にめっきされる。基体上にめっきされる銀層は厚さ0.5μm〜20μm、または例えば3μm〜6μmの範囲である。銀が電気めっきされる基体表面は、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、スズおよびスズ合金、銀および銀合金、金および金合金、並びにスチールのような金属を含む。この方法で製造される物品には、限定されないが、電子デバイスのためのスイッチ、および電気コネクタが挙げられる。
【0022】
銀上に電気めっきするためにこの銀電気めっき液が使用される場合には、典型的には銀ストライク層を積層するが、この場合銀ストライク層は、太陽電池素子の製造におけるようなニッケルもしくは銅のような下地金属との接着性を向上させるように機能する。銀ストライク層上にめっきされるこのような追加の銀層は厚さ0.5μm〜20μmの範囲であり得る。
【0023】
銀電気めっき液は、広い温度範囲および電流密度にわたってミラー光沢銀層を堆積させるために使用されうるが、銀電気めっき液は好ましくは、高い電流密度および高い温度が必要とされるリールツーリールめっき方法において銀をめっきするために使用される。リールツーリールめっきは金属の選択めっきを可能にする効果的かつ経済的な方法である。様々なリールツーリール装置が当業者に知られている。本方法は製造された製品のストリップもしくは部品に分けられる前の原料のリールをめっきすることができる。本方法はリールをリールほどき(de−reeling)ステーションに取り付けることにより始まる。このリールは金属からなることができ、この金属には、限定されないが、銅、銅合金、ニッケルもしくはニッケル合金、またはスズもしくはスズ合金が挙げられる。次いで、巻き上げシステムを使用して、その製品が様々なめっきプロセスに送り込まれる。このリールは1以上のベース金属でめっきされるが、このベース金属はそのリールを構成する金属とは異なる金属である。次いで、リールは銀溶液からの銀で電気めっきされて、ベース金属上にミラー光沢銀堆積物を形成する。このラインの終わりは、この物質を再び巻き取る巻き取りシステムである。複数のリールの間での滑らかな推移を容易にするアキュムレーターの使用を伴って、複数のリールが稼働させられうる。このようなリールツーリールめっき方法は、促進された電気めっき方法の効率を維持するために、高い温度および高い電流密度で操作されうる電気めっき液を要求した。リールツーリールめっきにおいては、銀電気めっき液は30℃以上、または例えば、50℃〜90℃の温度で使用される。電流密度は6A/dm〜15A/dmの範囲であり得る。
【0024】
ミラー光沢銀層が望まれるのであればどのような場合でも、ミラー光沢銀堆積物を提供するために銀電気めっき液が使用されうる。シアン化物を含まない銀電気めっき液中での有機スルフィドとピリジルアクリル酸との組み合わせは、高い電流密度で高い電気めっき温度で電気めっきされることができ、かつリールツーリール電気めっきに使用されうるミラー光沢銀堆積物を提供する。さらに、シアン化物を含まない銀電気めっき液はシアン化物を含まずかつ2,2’−ジピリジルのような化合物も除いているので、シアン化物を含まない銀電気めっき液は環境に優しい。よって、シアン化物を含まない銀電気めっき液は作業者にも優しい。
以下の実施例は本発明を例示するために含まれるが、本発明の範囲を限定することを意図していない。
【実施例】
【0025】
実施例1
以下の表に示されるように銀電気めっき水溶液が製造された。
【表1】

【0026】
2枚の真鍮クーポンが準備された。それぞれのクーポンは上記表1の銀溶液を含む別々のめっきセル内に配置された。このクーポンはカソードとして機能し、そして可溶性銀電極がアノードとして使用された。カソード、銀溶液およびアノードは従来の整流器に電気的に連絡するように接続された。それぞれの溶液の温度は60℃に維持された。1つのクーポンが2A/dmの電流密度で銀で電気めっきされ、別のものが12A/dmの電流密度で銀で電気めっきされた。双方のめっきセル内の溶液は攪拌された。各クーポン上に5μmの銀堆積物が得られるまで電気めっきが行われた。銀電気めっきされたクーポンは次いで、室温で脱イオン水ですすがれて、そして空気乾燥された。
【0027】
実施例2
以下の表に示されるように銀水溶液が製造された。
【表2】

【0028】
真鍮クーポンが準備された。このクーポンは上記表2の銀溶液を含むめっきセル内に配置された。このクーポンはカソードとして機能し、そして可溶性銀電極がアノードとして使用された。カソード、銀溶液およびアノードは従来の整流器に電気的に連絡するように接続された。溶液の温度は60℃に維持された。このクーポンは2A/dmの電流密度で銀で電気めっきされた。めっきセル内の溶液は攪拌された。クーポン上に5μmの銀堆積物が得られるまで電気めっきが行われた。銀電気めっきされたクーポンは次いで、室温で脱イオン水ですすがれて、そして空気乾燥された。
【0029】
実施例3
電流密度が12A/dmであったことを除いて、同じ銀電気めっき水溶液を用いて、同じ電気めっき条件で上記実施例2に開示される方法が繰り返された。得られた銀堆積物は、実施例2のミラー光沢クーポンとは対照的に、艶消しの外観であった。
【0030】
実施例4
以下の表に示されるように銀水溶液が調製された。
【表3】

【0031】
真鍮クーポンが準備された。このクーポンは上記表4の銀溶液を含むめっきセル内に配置された。このクーポンはカソードとして機能し、そして可溶性銀電極がアノードとして使用された。カソード、銀溶液およびアノードは従来の整流器に電気的に連絡するように接続された。溶液の温度は60℃に維持された。このクーポンは12A/dmの電流密度で銀で電気めっきされた。めっきセル内の溶液は攪拌された。クーポン上に5μmの銀堆積物が得られるまで電気めっきが行われた。銀電気めっきされたクーポンは次いで、室温で脱イオン水ですすがれて、そして空気乾燥された。銀電気めっきされたクーポンはミラー光沢に見えた。
【0032】
β−チオアルカノール、2,2−チオジエタノールおよび3−(3−ピリジル)アクリル酸の組み合わせは12A/dmの高い電流密度でミラー光沢銀堆積物を可能にした。これに対して、2,2−チオジエタノールを含まずに、3−(3−ピリジル)アクリル酸を含んでいた実施例1の銀電気めっき液は、2A/dmの低い電流密度および12A/dmの高い電流密度の双方においてミラー光沢銀堆積物を提供できなかった。3−(3−ピリジル)アクリル酸を含まずに、2,2−チオジエタノールを含んでいた実施例2は、2A/dmの低い電流密度でミラー光沢銀堆積物を可能にしたが、それは実施例3における12A/dmの高い電流密度において同様のミラー光沢銀堆積物を提供できなかった。よって、12A/dmの高い電流密度において所望のミラー光沢銀堆積物を達成するために、2,2−チオジエタノールおよび3−(3−ピリジル)アクリル酸の組み合わせが必要であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上の銀イオン源、ヒダントイン、ヒダントイン誘導体、スクシンイミドおよびスクシンイミド誘導体から選択される1種以上の錯化剤、ジアルキルスルフィドおよびジアルキルジスルフィドから選択される1種以上の有機スルフィド、並びに1種以上のピリジルアクリル酸を含み、シアン化物を含まない溶液。
【請求項2】
ピリジルアクリル酸が3−(2−ピリジル)アクリル酸、シス−3−(3−ピリジル)アクリル酸、3−(4−ピリジル)アクリル酸、3−(6−フェニル−ピリジル)アクリル酸、トランス−3−(3−ピリジル)アクリル酸およびz−2−フルオロ−3−(3−ピリジル)アクリル酸から選択される請求項1に記載の溶液。
【請求項3】
ヒダントイン誘導体がヒダントイン、1−メチルヒダントイン、1,3−ジメチルヒダントイン、5,5−ジメチルヒダントイン、1−メタノール−5,5−ジメチルヒダントイン、および5,5−ジフェニルヒダントインから選択される請求項1に記載の溶液。
【請求項4】
置換ジアルキルスルフィドがβ−チオジアルカノールである請求項1に記載の溶液。
【請求項5】
a)1種以上の銀イオン源、ヒダントイン、ヒダントイン誘導体、スクシンイミドおよびスクシンイミド誘導体から選択される1種以上の錯化剤、ジアルキルスルフィドおよびジアルキルジスルフィドから選択される1種以上の有機スルフィド、並びに1種以上のピリジルアクリル酸を含み、シアン化物を含まない溶液を提供し;
b)基体を前記溶液と接触させ;並びに
c)基体上に銀を電気めっきする;
ことを含む方法。
【請求項6】
電流密度が5A/dm以上である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
電流密度が6A/dm〜15A/dmである請求項6に記載の方法。
【請求項8】
溶液の温度が30℃以上である請求項5に記載の方法。