シアン化物イオンを蛍光により検出するためのキット
【課題】少ない種類の試薬で、少ない工程を経てシアン化物イオンを蛍光により検出することのできるキットを提供する。
【解決手段】一般式(I)または一般式(II)で表される化合物もしくはその塩を含む、シアン化物イオンを蛍光により検出するためのキット。式中のR1は、炭素数1〜6の低級アルキル基、または−OH、−COOH、−SO3Hおよびハロゲン原子からなる群から選択される。
【解決手段】一般式(I)または一般式(II)で表される化合物もしくはその塩を含む、シアン化物イオンを蛍光により検出するためのキット。式中のR1は、炭素数1〜6の低級アルキル基、または−OH、−COOH、−SO3Hおよびハロゲン原子からなる群から選択される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シアン化物イオンを蛍光により検出するためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
シアン化物は、金属めっき、金銀精錬、ストレッカー反応(アミノ酸合成)等において工業的に有用に用いられている。一方、シアン化物イオンは、電子伝達系の阻害、酵素活性の阻害、ヘモグロビンの機能低下等の作用を有するため、生体に極めて有害であることが知られている。シアン化物イオンは、その致死量が生体の体重1kg当たり0.5mg〜3.5mgであることが知られており、そのため、シアン化物イオンの飲料水における基準値は1.9μM以下と非常に厳しい。
【0003】
このようなシアン化物イオンは、JIS K0101工業用水試験方法により定められた、ピリジンカルボン酸−ピラゾロン吸光度度法により定量されている。この定量方法の検出限界は、0.65μMである。しかしながら、この方法は、フェノールフタレイン溶液、酢酸水溶液、リン酸塩緩衝液、クロラミンT水溶液、ピリジンカルボン酸−ピラゾロン溶液等のように多くの試薬を準備する必要がある。また、多くの工程を経て最終的に吸光度を測定するため、操作が煩雑である。
【0004】
少ない種類の試薬で、少ない工程を経てシアン化物イオンを検出する方法としては、例えば、スピロピランを用いて、シアン化物イオンを検出する方法が、知られている(例えば、非特許文献1参照)。この方法においては、特定のスピロピラン化合物(X)を用いる。特定のスピロピラン化合物(X)は、安定時にはSPフォーム(XI)をとり、発色しない。このスピロピラン化合物に対して紫外線照射をすると、このスピロピラン化合物は分子内環の一部が切断され、MCフォーム(XII)をとる。このとき、440〜600nmの波長の範囲でピンク色を発色する。このMCフォームの化合物(XII)は、シアン化物イオンが存在すると反応して、シアン化物付加体(XIII)を形成する。このシアン化物付加体(XIII)が400〜500nmの波長の範囲で黄色を発色するので、その強度を吸収スペクトルにより測定する、すなわち、特定のスピロピラン化合物(X)を用いて、紫外線照射という簡便な操作のみで、シアン化物イオンを検出することができる(スキーム1参照)。
【0005】
【化1】
【0006】
このスピロピラン化合物(X)を用いる方法の検出限界は、1.7μM程度であり、飲料水の基準値1.9μMを測定するのには感度が不十分である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Yasuhiro Shiraishiら, Organic Letters, 2009年、第11巻、p.3482-3485
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、少ない種類の試薬で、少ない工程を経てシアン化物イオンを検出するためのキットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、一般式(I)で表される化合物(以下、「式(I)の化合物」と呼ぶ場合もある)もしくはその塩、または、一般式(II)の化合物(以下、「式(II)の化合物」と呼ぶ場合もある)もしくはその塩を含む、シアン化物イオンを蛍光により検出するためのキットである。
【0010】
【化2】
【0011】
前記式(I)中、
R1は、炭素数1〜6の低級アルキル基、または−OH、−COOH、−SO3Hおよびハロゲン原子からなる群から選択される1以上で置換された炭素数1〜6の低級アルキル基であり、
R2およびR3は、印aの炭素原子と印bの炭素原子と一緒になって下記式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環は、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R4およびR5は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基であるか、
または、
R3およびR4は、印bの炭素原子と印cの炭素原子と一緒になって下記式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環は、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R2およびR5は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基であるか、
または、
R4およびR5は、印cの炭素原子と印dの炭素原子と一緒になって下記式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環は、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R2およびR3は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基である。
【0012】
前記式(II)中、
R11およびR12は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜6の低級アルキル基であり、
X1およびX2は、互いに独立して、OまたはNHを意味し、
nは、2〜6の整数であり、
R13は、炭素数1〜6の低級アルキル基であり、
xは、0.1〜9であり、
yは、91〜99.9であり、
R2およびR3は、印aの炭素原子と印bの炭素原子と一緒になって下記式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環は、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R4およびR5は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基であるか、
または、
R3およびR4は、印bの炭素原子と印cの炭素原子と一緒になって下記式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環は、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R2およびR5は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基であるか、
または、
R4およびR5は、印cの炭素原子と印dの炭素原子と一緒になって下記式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環は、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R2およびR3は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基である。
【0013】
【化3】
【発明の効果】
【0014】
本発明により、少ない種類の試薬で、少ない工程を経てシアン化物イオンを検出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、式(1)の化合物の溶液の写真と化合物の状態を示す。
【図2(a)】図2(a)は実施例3において得られた蛍光スペクトルを示す。
【図2(b)】図2(b)は実施例3において得られた蛍光スペクトルのFI/FI0をアニオン別に示す。
【図2(c)】図2(c)は実施例3において得られたセルの画像を示す。
【図3(a)】図3(a)は、実施例4において得られた蛍光スペクトルを示す。
【図3(b)】図3(b)は、実施例4において得られた蛍光スペクトルの強度FIを示す。
【図4(a)】図4(a)は、実施例5において得られた蛍光スペクトルを示す。
【図4(b)】図4(b)は、実施例5において得られた蛍光スペクトルの強度FIとシアン化物イオン/式(1)の化合物の比とを示す。
【図4(c)】図4(c)は、実施例5において得られた、シアン化物イオンの濃度と、FIとの関係を示すグラフである。
【図4(d)】図4(d)は、実施例5において得られた、シアン化物イオンの濃度と、FIとの関係を示すグラフである。
【図5(a)】図5(a)は実施例6において得られた蛍光スペクトルを示す。
【図5(b)】図5(b)は実施例6において得られた蛍光スペクトルのFI/FI0をアニオン別に示す。
【図5(c)】図5(c)は実施例6において得られたセルの画像を示す。
【図6(a)】図6(a)は、実施例7において得られた蛍光スペクトルを示す。
【図6(b)】図6(b)は、実施例7において得られた蛍光スペクトルの強度FIを示す。
【図7(a)】図7(a)は、実施例8において得られた、シアン化物イオンの濃度と、FIとの関係を示すグラフである。
【図7(b)】図7(d)は、実施例8において得られた、シアン化物イオンの濃度と、FIとの関係を示すグラフである。
【図8(a)】図8(a)は、実施例9において得られた、蛍光スペクトルを示す。
【図8(b)】図8(b)は、実施例9において得られたセルの画像を示す。
【図8(c)】図8(c)は、実施例9において得られた、回収後の蛍光スペクトルを示す。
【図8(d)】図8(d)は、実施例9において得られた、加熱時のセルの画像を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
前記のように、本発明は、一般式(I)の化合物もしくはその塩、または、一般式(II)の化合物もしくはその塩を含む、シアン化物イオンを蛍光により検出するためのキットである。
【0017】
また、本発明は、前記キットに紫外線を照射し、その後、シアン化物イオンを含む検体を混合して、生じる蛍光を測定することによりシアン化物イオンを検出する方法である。この方法は、試薬として一般式(I)の化合物もしくはその塩、または、一般式(II)の化合物もしくはその塩のみを必要とするため、少ない試薬でシアン化物イオンを検出することができ、好ましい。また、この方法は、紫外線照射により蛍光を測定するため、少ない工程でシアン化物イオンを検出することができ、好ましい。
【0018】
また、本発明は、前記キットとシアン化物イオンを含む検体とを混合し、その後、紫外線を照射して、生じる蛍光を測定することによりシアン化物イオンを検出する方法である。この方法は、試薬として一般式(I)の化合物もしくはその塩、または、一般式(II)の化合物もしくはその塩のみを必要とするため、少ない試薬でシアン化物イオンを検出することができ、好ましい。また、この方法は、紫外線照射により蛍光を測定するため、少ない工程でシアン化物イオンを検出することができ、好ましい。
【0019】
また、本発明は、一般式(II)で表される化合物またはその塩である。
【0020】
【化4】
【0021】
前記式(II)中、
R11およびR12は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜6の低級アルキル基であり、
X1およびX2は、互いに独立して、OまたはNHを意味し、
nは、2〜6の整数であり、
R13は、炭素数1〜6の低級アルキル基であり、
xは、0.1〜9であり、
yは、91〜99.9であり、
R2およびR3は、印aの炭素原子と印bの炭素原子と一緒になって式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環は、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R4およびR5は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基であるか、
または、
R3およびR4は、印bの炭素原子と印cの炭素原子と一緒になって式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環は、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R2およびR5は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基であるか、
または、
R4およびR5は、印cの炭素原子と印dの炭素原子と一緒になって式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環は、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R2およびR3は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基である。
【0022】
【化5】
【0023】
本発明において、「炭素数1〜6の低級アルキル基」ならびに「炭素数1〜6の低級アルコキシ基」および「炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基」における「炭素数1〜6の低級アルキル」部分としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル等のような直鎖状もしくは分岐鎖状の炭素数1〜6のアルカンの残基を意味する。低級アルキル基および低級アルキル部分の好ましい例としては、炭素数1〜5のアルキルが挙げられる。好ましい炭素数1〜5のアルキルとしては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第三級ブチル、ペンチル、ネオペンチル等が挙げられる。
【0024】
「ハロゲン」としては、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素が挙げられる。
【0025】
「炭素数1〜6の低級アルコキシ基」としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、第三級ブトキシ、ペンチルオキシ、第三級ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等が挙げられる。
【0026】
「炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基」としては、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、ブチルアミノ、イソブチルアミノ、t−ブチルアミノ、ペンチルアミノ、ネオペンチルアミノ、ヘキシルアミノ等が挙げられる。
【0027】
本発明のキットにおいて、式(I)の化合物は、R2およびR3が、印aの炭素原子と印bの炭素原子と一緒になって式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環が、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R4およびR5が、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基である化合物が好ましく、式(II)の化合物は、R2およびR3が、印aの炭素原子と印bの炭素原子と一緒になって式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環が、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R4およびR5が、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基である化合物が好ましい。また、本発明のキットにおいて、式(I)の化合物は、R2およびR3が、印aの炭素原子と印bの炭素原子と一緒になって式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環が、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R4およびR5が、水素原子である化合物がより好ましく、式(II)の化合物は、R2およびR3が、印aの炭素原子と印bの炭素原子と一緒になって式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環が、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R4およびR5が、水素原子である化合物がより好ましい。また、本発明のキットにおいて、式(I)の化合物は、R2およびR3が、印aの炭素原子と印bの炭素原子と一緒になって式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環が、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R4およびR5が、水素原子であり、R1が、炭素数1〜6の低級アルキル基である化合物がさらに好ましい。また、本発明のキットにおいて、式(I)の化合物は、R2およびR3が、印aの炭素原子と印bの炭素原子と一緒になって式(v)または(vi)で表される環を形成し、前記環が、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R4およびR5が、水素原子であり、R1が、炭素数1〜6の低級アルキル基である化合物がさらに好ましく、式(II)の化合物は、R2およびR3が、印aの炭素原子と印bの炭素原子と一緒になって式(v)または(vi)で表される環を形成し、前記環が、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R4およびR5が、水素原子である化合物がさらに好ましい。
【0028】
また、本発明のキットにおいて、式(I)の化合物としては、下記式(1)で表される化合物(以下、「式(1)の化合物」と呼ぶ)がさらに好ましく、式(II)の化合物としては、下記式(P1)で表される化合物(以下、「式(P1)の化合物」と呼ぶ)がさらに好ましい。下記式(1)の化合物は、V. F. Travenら、Russian Chemical Bulletin, International Edition, 2005年、54巻、p.2417-2424等の文献により既知であり、この文献に記載の方法に従い製造することができる。
【0029】
【化6】
【0030】
式(I)の化合物は、従来公知の方法に従い、製造することができる。または、式(I)の化合物は、従来公知の方法と技術常識を用いて、製造することもできる。例えば、式(I)の化合物は、以下のスキーム2に従い製造することができる。
【0031】
【化7】
【0032】
前記式中、R1、R2、R3、R4、R5は、前記で定義したとおりである。
【0033】
具体的には、式(XX)の化合物を、ヘキサメチレンテトラミン等と反応させることによりホルミル化して、式(XXI)の化合物を得ることができる。このホルミル化は、酸性条件下、例えば酢酸、リン酸等中で、50〜200℃の温度で加熱することにより行うことができる。
【0034】
次いで、式(XXI)の化合物と、式(XXII)の化合物とを反応させることにより、式(I)の化合物を得ることができる。この反応は、メタノール、エタノール等の溶媒中、50〜150℃の温度で加熱することにより行うことができる。
【0035】
また、式(II)の化合物は、以下のスキーム3に従い製造することができる。
【0036】
【化8】
【0037】
前記式中、R11、R12、R13、X1、X2、R2、R3、R4、R5、n、x、yは前記のとおりである。
【0038】
具体的には、式(XXIII)の化合物と、式(XXIV)の化合物とを、重合開始剤(例えば、AIBN等)の存在下、t−BuOH等の溶媒中、50〜150℃の温度でN2、アルゴン等の不活性雰囲気下に加熱することにより、式(II)の化合物を得ることができる。
【0039】
前記式(XX)の化合物、式(XXII)の化合物、式(XXIII)の化合物、および式(XXIV)の化合物は、市販のものを入手してもよいし、従来公知の方法と技術常識を用いて、製造することもできる。
【0040】
本発明において、式(I)の化合物の塩とは、例えばナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属と式(I)の化合物との塩、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属と式(I)の化合物との塩、アンモニアなどと式(I)の化合物との塩、及びトリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンアミンなどの有機アミンと式(I)の化合物との塩、及び塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸などの無機酸と式(I)の化合物との塩が挙げられる。同様に、式(II)の化合物の塩とは、例えばナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属と式(II)の化合物との塩、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属と式(II)の化合物との塩、アンモニアなどと式(II)の化合物との塩、及びトリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンアミンなどの有機アミンと式(II)の化合物との塩、及び塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸などの無機酸と式(I)の化合物との塩が挙げられる。
【0041】
本発明において、式(I)の化合物は、4級炭素原子を含む。そのため、式(I)の化合物は、下記の2種類の異性体を含む。
【0042】
【化9】
【0043】
同様に、本発明において、式(II)の化合物は、4級炭素原子を含む。そのため、式(II)の化合物は、下記の2種類の異性体を含む。
【0044】
【化10】
【0045】
本発明のキットを用いてシアン化物イオンを検出する方法は、前記のように、本発明のキットに紫外線を照射し、その後、シアン化物イオンを含む検体とを混合して、生じる蛍光を測定することによりシアン化物イオンを検出する。または、本発明のキットと、シアン化物イオンを含む検体とを混合し、その後、紫外線を照射して、生じる蛍光を測定することによりシアン化物イオンを検出する。これらの検出する方法において、検体に含まれると予想されるシアン化物イオンの量と同等以上の量の式(I)の化合物もしくはその塩、または式(II)の化合物もしくはその塩を含むキットを用いるのが好ましい。
【0046】
まず、本発明のキットに含まれる式(I)の化合物は、安定時にはSPフォーム(III)をとり、蛍光は発生しない。この式(I)の化合物に対して紫外線照射すると、化合物の分子内環の一部が切断され、MCフォーム(IV)をとる。このMCフォーム(IV)も蛍光は発生しない。このMCフォームの化合物(IV)は、シアン化物イオンが存在すると反応して、シアン化物付加体(V)を形成する。このシアン化物付加体(V)が蛍光を発するので、式(I)の化合物を用いて、紫外線照射という簡便な操作のみで、シアン化物イオンを検出することができる(スキーム4参照)。
【0047】
【化11】
【0048】
なお、式(I)の化合物は、SPフォーム(III)およびシアン化物付加体(V)のいずれにおいても、発色しない。例えば、式(I)の化合物として、前記式(1)の化合物を用いた場合の溶液の色は図1参照。発色を測定する方法、すなわち、吸光度を測定する方法では、シアン化物イオン以外に共存する物質の影響を受けた発色の影響を考慮に入れる必要がある。その場合、シアン化物イオン以外に共存する物質の性質によっては、シアン化物イオンを正確に検出することが困難である。これに対して本発明のシアン化物イオンの検出方法は蛍光を測定するため、シアン化物イオン以外に共存する物質の影響を受けず、その結果、シアン化物イオンを正確に検出することができる。具体的には、シアン化物イオン以外に共存しうる物質として、F-、Cl-、Br-、I-、CH3CO-、HPO3-、HSO4-、ClO4-、NO3-、SCN-などが挙げられる。
【0049】
式(II)の化合物は、水に溶解することができるという性質を有する。従って、このような化合物を含む本発明のキットを用いてシアン化物イオンを検出する場合、溶媒として水のみ、すなわち、有機溶媒を用いずに行うことができる。さらに、式(II)の化合物は、ポリマー部分が加熱により凝集するという性質を有する。従って、このような化合物を含む溶液を加熱すると、式(II)の化合物は凝集する。この凝集物はろ取により単離することができるため、溶液から、式(II)の化合物を容易に回収できる。
【0050】
また、本発明のキットに含まれる式(II)の化合物も式(I)の化合物と同様、安定時にはSPフォーム(VI)をとり、蛍光は発生しない。この式(VI)の化合物に対して紫外線照射すると、化合物の分子内環の一部が切断され、MCフォーム(VII)をとる。このMCフォームも蛍光は発生しない。このMCフォームの化合物(VII)は、シアン化物イオンが存在すると反応して、シアン化物付加体(VIII)を形成する。このシアン化物付加体(VIII)が蛍光を発するので、式(II)の化合物を用いて、紫外線照射という簡便な操作のみで、シアン化物イオンを検出することができる(スキーム5参照)。なお、式(VIII)の化合物は酸性水溶液中で加熱して再生することが可能である。これは、前記スキーム5中のシアン化物付加体(VIII)が、酸性条件下で式(VI)の化合物へ戻るためと考えられる。式(II)の化合物の場合の前記メカニズムを以下のスキーム5に示す。
【0051】
【化12】
【0052】
式(II)の化合物は、SPフォーム(VI)およびシアン化物付加体(VIII)のいずれにおいても、発色しない。発色を測定する方法、すなわち、吸光度を測定する方法では、シアン化物イオン以外に共存する物質の影響を受けた発色の影響を考慮に入れる必要がある。その場合、シアン化物イオン以外に共存する物質の性質によっては、シアン化物イオンを正確に検出することが困難である。これに対して本発明のシアン化物イオンの検出方法は蛍光を測定するため、シアン化物イオン以外に共存する物質の影響を受けず、その結果、シアン化物イオンを正確に検出することができる。具体的には、シアン化物イオン以外に共存しうる物質として、F-、Cl-、Br-、I-、CH3CO-、HPO3-、HSO4-、ClO4-、NO3-、SCN-などが挙げられる。
【0053】
本発明のシアン化物イオンを検出する方法の検出限界は、0.5μM〜0.8μMであり、JIS K0101工業用水試験方法の0.6μMと同等である。
【0054】
本発明のシアン化物イオンを検出する方法は、さらに、シアン化物イオンと蛍光強度との検量線に基づき、測定した蛍光の強度から、検体中のシアン化物イオンの濃度を知る工程を含む。前記シアン化物イオンと蛍光強度との検量線は、例えば、既知濃度のシアン化物イオンを含む検体を用いて生じる蛍光の強度との関係を調べて予め作成することができる。
【0055】
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、以下の実施例により限定されない。
【0056】
本明細書において、測定機器は以下の機器を用いた。
1H−NMRおよび13C−NMRは、JNM-GSX270 Excalibur(日本電子株式会社製)を用いて、TMS(テトラメチルシラン)(0ppm)を内部標準物質として、測定した。
EI−MSは、JMS 700 Mass Spectrometer(日本電子株式会社製)を用いて測定した。
【0057】
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、GPCシステムを用いて以下の条件により測定した。
装置:GPCシステム(日本分光株式会社製)
カラム:KF-806 Lカラム(昭和電工株式会社製)、1本直列。
ポンプ:PU−980型ポンプ(日本分光株式会社製)
展開溶媒:LiBr(0.01M)を含むジメチルホルムアミド
流速:0.6mL/分
カラム温度:40℃
検出器:RI検出器(RI−930、日本分光株式会社製)
分子量標準物質:ポリスチレン
【実施例1】
【0058】
式(1)の化合物の製造
式(1)の化合物は、以下のスキーム6に従い製造した。
【0059】
【化13】
【0060】
(a)式(2)の化合物の製造
7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン(0.88g,5.00mmol)およびヘキサメチレンテトラミン(6.6g,46.4mmol)を、酢酸(20mL)中において373Kで9時間攪拌した。20%のHCl(25mL)を添加し、さらに15分間攪拌した。生じた混合物を蒸発させて濃縮した。水(50mL)を残渣に添加し、得られた溶液をジエチルエーテル(3×50mL)で抽出した。有機相を水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、溶媒を蒸発させて濃縮した。得られた残渣をエタノールから再結晶して、淡黄色固体の式(2)の化合物を得た。収量:96mg,9%。
【0061】
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6, TMS): δ = 11.88 (bs, 1H), 10.44 (s, 1H), 7.94 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 6.97 (d, J = 8.9Hz, 1H), 6.30-6.29 (m, 1H), 2.41 (t, J = 0.9 Hz, 3H);
13C NMR (100 MHz, CD3CN, TMS): δ = 194.6, 165.6, 159.8, 157.1, 154.5, 134.7, 114.5, 113.1, 112.4, 109.5, 19.0.
EI-MS: m/z: C11H8O4としての計算値: 204.2;測定値: 240.0 [M+]。
【0062】
(b)式(1)の化合物の製造
式(2)の化合物(207mg,1.01mmol)および1,3,3−トリメチル−2−メチリデンインドール(161mg,0.93mmol)をCH3OH(5mL)中で3時間還流加熱した。生じた混合物を蒸発させて濃縮した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーによりCH2Cl2で精製した。溶出液を蒸発させて濃縮し、真空下で乾燥させ、白色固体の式(1)の化合物を得た。収量45mg,13%。
【0063】
1H NMR (270 MHz, アセトン-d6, TMS): δ = 7.53 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.42 (dd, J = 0.7, 9.9 Hz, 1H), 7.18-7.10 (m, 2H), 6.82 (dt, J = 0.9, 7.4 Hz, 1H), 6.68 (dd, J = 0.7, 8.1 Hz, 1H), 6.60 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 2.80 (s, 3H), 2.42 (d, J = 1.3 Hz, 3H), 1.30 (s, 3H), 1.19 ppm (s, 3H);
13C NMR (100 MHz, CDCl3, TMS): δ = 160.6, 157.3, 152.7, 149.6, 147.7, 136.2, 127.5, 124.9, 122.4, 121.3, 119.5, 119.3, 112.8, 111.7, 111.3, 107.1, 106.8, 105.4, 51.98, 28.78, 25.83, 20.0, 18.7 ppm;
EI-MS: m/z: C23H21NO3としての計算値:359.4; 測定値 359.1 [M+]。
【実施例2】
【0064】
式(P1)の化合物の製造
式(P1)の化合物は、以下のスキーム7に従い製造した。
【0065】
【化14】
【0066】
(a)式(4)の化合物の製造
式(4)の化合物を文献記載の方法(F. M. Raymo, S. Giordani, J. Am. Chem. Soc. 2001年、123巻、p.4651−4652)に従い、2,3,3,−トリメチルインドールから製造した。
【0067】
(b)式(2)の化合物の製造
7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン(0.88g,5.0mmol)およびヘキサメチレンテトラミン(6.6g,46mmol)を、酢酸(20mL)中において100℃で7時間攪拌した。20%のHCl(25mL)を添加し、さらに45分間攪拌した。生じた混合物を蒸発させて濃縮した。水(50mL)を残渣に添加し、得られた溶液をジエチルエーテル(3×50mL)で抽出した。有機相を水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、溶媒を蒸発させて濃縮した。得られた残渣をエタノールから再結晶して、淡黄色固体の式(2)の化合物を得た。収量:96mg,9%。得られた化合物の1H−NMRおよび13H−NMR,FAB−MS分析により、実施例1で得られた式(2)の化合物と同定した。
【0068】
(c)式(5)の化合物の製造
式(2)の化合物(46.3mg,0.227mmol)および式(4)の化合物(45.7mg,0.225mmol)をCH3OH(3ml)中で3時間還流加熱し、室温まで冷却した。水(100ml)をその混合物に添加し、生成した固体をろ取した。その固体を真空下に乾燥し、紫色固体の式(5)の化合物(43.3mg,0.111mmol,49.3%)を得た。
【0069】
1H-NMR (270 MHz, アセトン-d6, TMS) δ (ppm): 7.53 (1H, d, J = 8.74 Hz), 7.38 (1H, dd, J = 10.55, 0.82 Hz), 7.13 (2H, dt, J = 11.16, 3.96 Hz), 6.80 (1H, td, J = 7.38, 0.93 Hz), 6.67 (2H, dt, J = 8.35, 2.27 Hz), 6.14 (1H, d, J = 1.15 Hz), 6.03 (1H, d, J = 10.55 Hz), 3.69 (2H, dq, J = 21.27, 4.81 Hz), 3.48-3.22 (2H, m), 2.42 (3H, d, J = 1.32 Hz), 1.29 (3H, s), 1.19 (3H, s).
13C NMR (270 MHz, CDCl3, TMS)δ(ppm): 160.43, 156.71, 152.53, 149.68, 146.94, 135.87, 127.54, 125.15, 122.43, 121.66, 119.84, 119.52, 113.12, 111.71,111.50, 106.98, 106.64, 105.77, 60.94, 52.58, 46.03, 25.89, 20.13, 18.61.
EI-MS: C24H23NO4としての計算値: 389.15; 測定値 389.2 [M+]。
【0070】
(d)式(6)の化合物の製造
式(5)の化合物(40.0mg,0.103mmol)をCH2Cl2(30mL)中に溶解させた。CH2Cl2(100mL)中に溶解したアクリロイルクロリド(0.05g,0.11mol)をその溶液に0℃で乾燥N2雰囲気下に滴下し、その後、40℃で2時間攪拌した。溶液を0.1MのHCl、次いで飽和NaHCO3水溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、蒸発させて濃縮し、黄色固体として式(6)の化合物を得た(32.4mg,71%)。
【0071】
1H-NMR (270 MHz, アセトン-d6, TMS) δ: 7.54 (1H, d, J = 8.74 Hz), 7.41 (1H, dd, J = 10.55, 0.66 Hz), 7.16-7.12 (2H, m), 6.84 (1H, td, J = 7.38, 0.88 Hz), 6.77 (1H, d, J = 7.75 Hz), 6.67 (1H, dd, J = 8.74, 0.66 Hz), 6.33 (1H, dd, J = 17.23, 1.73 Hz), 6.17-6.11 (2H, m), 6.03 (1H, t, J = 9.32 Hz), 5.86 (1H, dd, J = 10.30, 1.73 Hz), 4.42-4.26 (2H, m), 3.68-3.42 (2H, m), 2.42 (3H, d, J = 1.32 Hz), 1.30 (3H, s), 1.17 (3H, s).
13C NMR (270 MHz, CDCl3, TMS)δ(ppm): 170.47, 165.61, 160.45, 156.82, 152.53, 146.60, 135.83, 130.70, 128.05, 127.54, 125.11, 122.48, 121.63, 121.60, 119.66, 119.53, 113.01, 111.78, 111.44, 106.86, 106.47, 105.59, 62.43, 52.55, 42.44, 25.84, 19.89, 18.55.
EI-MS: C27H25NO5としての計算値: 443.19; 測定値 443.3 [M+]。
【0072】
(e)式(P1)の化合物の製造
式(6)の化合物(18.1mg,0.041mmol)、イソプロピルアクリルアミド(NIPAM、0.504g,4.1mmol)およびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN、15mg,91mmol)をt−BuOH(2ml)中に溶解させた。この溶液を2回、凍結脱気により脱気させ、70℃で乾燥N2雰囲気下に15時間攪拌した。生成したポリマーを蒸発により濃縮させ、2回、メタノール(1mL)およびジエチルエーテル(100mL)を用いる析出法により精製した。真空下に乾燥した後、ポリ(NIPAM−co−CSP)(P1)を淡桃色固体として得た(0.378g,75%)。
【0073】
1H-NMR (270 MHz, アセトン-d6, TMS) δ: 3.99 (1H, s), 2.05 (3H, dt, J = 174.99, 68.49 Hz), 1.24 (6H, d, J = 80.26 Hz).
分子量:Mn = 198100、 Mw = 649000、Mw/Mn = 2.28。
【実施例3】
【0074】
実施例1で製造した式(1)の化合物のアセトニトリル溶液(10μM、3mL)を1cm角の石英セルに入れた。そのセル内に攪拌子を入れ、セルを紫外可視吸光光度計(株式会社島津製作所製、Multispec-1500、温度コントローラ−S−1700を備える)にセットした。そのセル上部から300Wキセノンランプ(朝日分光株式会社製、MAX−302)により紫外線照射した。この紫外線照射の際、334nmの波長だけを透過させるバンドパスフィルター(朝日分光株式会社製、LX334)を透過させて光照射した。なお、この際の光強度は69.1mWm-2であった。セル内の溶液をマグネティックスターラーを用いて攪拌しながら、シアン化物イオンを含む溶液(n−Bu4N+塩として、式(1)の化合物に対して50当量、溶媒はアセトニトリルと水の混合物(v/v)=2/8にN−シクロヘキシル−2−アミノエタンスルホン酸(CHES)を100mM添加したもの、pH9.3)を添加し、30分間25℃で攪拌した。その後、蛍光スペクトルを測定した。得られた蛍光スペクトルを図2(a)に示す。
【0075】
また、シアン化物イオンを含む溶液の代わりに、F-、Cl-、Br-、I-、CH3COO-、HPO3-、HSO4-、ClO4-、NO3-、またはSCN-を含む溶液(n−Bu4N+塩として、式(1)の化合物に対して50当量、溶媒はアセトニトリルと水の混合物(v/v)=2/8にN−シクロヘキシル−2−アミノエタンスルホン酸(CHES)を100mM添加したもの、pH9.3)を用い、同様に蛍光スペクトルを測定した。得られた蛍光スペクトルを図2(a)に示す。また、453nmにおける蛍光スペクトル強度の比(FI/FI0)をイオンごとに図2(b)に示した。FI0は、アニオン無しで測定した蛍光強度であり、FIはアニオン存在下で測定した蛍光強度である。また、式(1)の化合物に334nmの波長の紫外線を照射した際の溶液の写真を図2(c)の(i)に、シアン化物イオンを加えた後の溶液の写真を図2(c)の(ii)に示す。
【0076】
図2(a)および図2(b)に示すように、式(1)の化合物はシアン化物イオンの存在下に蛍光を発するのに対し、シアン化物イオン以外のイオンの存在下では蛍光を発しないことが確認できた。また、図2(c)に示すように、シアン化物イオン不在の式(1)の化合物は、紫外線照射されても蛍光を発生していないが、シアン化物イオン存在の際には、蛍光を発していることが確認できた。
【実施例4】
【0077】
シアン化物イオンを含む溶液の代わりに、シアン化物イオン(n−Bu4N+塩として、式(1)の化合物に対して50当量)と、他のイオン(F-、Cl-、Br-、I-、CH3COO-、HPO3-、HSO4-、ClO4-、NO3-、またはSCN-)を含む溶液(n−Bu4N+塩として、式(1)の化合物に対して50当量)とを含む溶液(溶媒はアセトニトリルと水の混合物(v/v)=2/8にN−シクロヘキシル−2−アミノエタンスルホン酸(CHES)を100mM添加したもの、pH9.3)を用いた以外は、実施例3と同様にして行った。得られた蛍光スペクトルを図3(a)に示す。なお、図3(a)には、実施例3で得られた図3(a)のシアン化物イオンのみを含む溶液を用いた蛍光スペクトルも重ねて示している。また、イオンごとの蛍光強度を図3(b)に示す。
【0078】
図3(a)および図3(b)に示すように、シアン化物イオンのみにより得られた蛍光スペクトルと、シアン化物イオンと他のイオンとから得られた蛍光スペクトルは、ほぼ、同一であった。従って、式(1)の化合物とシアン化物イオンとの反応により発生する蛍光は、シアン化物イオン以外のほかのイオンにより変動しないことが確認できた。
【実施例5】
【0079】
シアン化物イオンを含む溶液におけるシアン化物イオンの量を、50当量の代わりに種々異ならせた以外は実施例3と同様にして行った。得られた蛍光スペクトルを図4(a)に示す。また、シアン化物イオンの濃度と式(1)の化合物に対するFIを図4(b)に示す。図4(a)に示すように、シアン化物イオンの当量が多くなるほど、蛍光スペクトルの強度は増加することが確認できた。また、図4(b)に示すように、最小自乗フィッティングにより、シアン化物イオンの量が式(1)の化合物とほぼ1:1の関係で平衡に達することが確認できた。
【0080】
また、シアン化物イオンの濃度と、FIとの関係を図4(c)に示す。図4(c)の拡大図が図4(d)である。図4(d)から、式(1)の化合物を用いてシアン化物イオンを検出する限界が0.5μMであることが確認できた。
【実施例6】
【0081】
実施例2で製造した式(P1)の化合物の水溶液(0.17g/L、3mL)を1cm角の石英セルに入れた。そのセル内に攪拌子を入れ、セルを紫外可視吸光光度計(株式会社島津製作所製、Multispec-1500、温度コントローラ−S−1700を備える)にセットした。そのセル上部から300Wキセノンランプ(朝日分光株式会社製、MAX−302)により紫外線照射した。この紫外線照射の際、334nmの波長だけを透過させるバンドパスフィルター(朝日分光株式会社製、LX334)を透過させて光照射した。なお、この際の光強度は69.1mWm-2であった。セル内の溶液をマグネティックスターラーを用いて攪拌しながら、シアン化物イオンを含む溶液(n−Bu4N+塩として、式(P1)の化合物に対して50当量、溶媒は水にN−シクロヘキシル−2−アミノエタンスルホン酸(CHES)を100mM添加したもの、pH9.3)を添加し、30分間25℃で攪拌した。その後、蛍光スペクトルを測定した。得られた蛍光スペクトルを図5(a)に示す。
【0082】
また、シアン化物イオンを含む溶液の代わりに、F-、Cl-、Br-、I-、CH3COO-、HPO3-、HSO4-、ClO4-、NO3-、またはSCN-を含む溶液(n−Bu4N+塩として、式(P1)の化合物に対して50当量、溶媒は水にN−シクロヘキシル−2−アミノエタンスルホン酸(CHES)を100mM添加したもの、pH9.3)を用い、同様に蛍光スペクトルを測定した。得られた蛍光スペクトルを図5(a)に示す。また、451nmにおける蛍光スペクトル強度の比(FI/FI0)をイオンごとに図5(b)に示した。FI0は、アニオン無しで測定した蛍光強度であり、FIはアニオン存在下で測定した蛍光強度である。また、式(P1)の化合物に334nmの波長の紫外線を照射した際の溶液の写真を図5(c)の(i)に、シアン化物イオンを加えた後の溶液の写真を図5(c)の(ii)に示す。
【0083】
図5(a)および図5(b)に示すように、式(P1)の化合物はシアン化物イオンの存在下に蛍光を発するのに対し、シアン化物イオン以外のイオンの存在下では蛍光を発生しないことが確認できた。また、図5(c)に示すように、シアン化物イオン不在の式(P1)の化合物は、紫外線照射されても蛍光を発生していないが、シアン化物イオン存在の際には、蛍光を発していることが確認できた。
【実施例7】
【0084】
シアン化物イオンを含む溶液の代わりに、シアン化物イオン(n−Bu4N+塩として、式(1)の化合物に対して50当量)と、他のイオン(F-、Cl-、Br-、I-、CH3COO-、HPO3-、HSO4-、ClO4-、NO3-、またはSCN-)を含む溶液(n−Bu4N+塩として、式(P1)の化合物に対して50当量)とを含む溶液(溶媒は水にN−シクロヘキシル−2−アミノエタンスルホン酸(CHES)を100mM添加したもの、pH9.3)を用いた以外は、実施例6と同様にして行った。得られた蛍光スペクトルを図6(a)に示す。なお、図6(a)には、実施例6で得られた図5(a)のシアン化物イオンのみを含む溶液を用いた蛍光スペクトルも重ねて示している。また、イオンごとの蛍光強度を図6(b)に示す。
【0085】
図6(a)および図6(b)に示すように、シアン化物イオンのみにより得られた蛍光スペクトルと、シアン化物イオンと他のイオンとから得られた蛍光スペクトルは、ほぼ、同一であった。従って、式(P1)の化合物とシアン化物イオンとの反応により発生する蛍光は、シアン化物イオン以外のほかのイオンにより変動しないことが確認できた。
【実施例8】
【0086】
シアン化物イオンを含む溶液におけるシアン化物イオンの量を、50当量の代わりに種々異ならせた以外は実施例6と同様にして行った。シアン化物イオンの濃度と、FIとの関係を図7(a)に示す。図7(a)の拡大図が図7(b)である。図7(b)から、式(P1)の化合物を用いてシアン化物イオンを検出する限界が0.8μMであることが確認できた。
【実施例9】
【0087】
実施例2で製造した式(P1)の化合物(1mg)を緩衝溶液(溶媒は、N−シクロヘキシル−2−アミノエタンスルホン酸(CHES)を100mM添加したもの、pH9.3、5mL)に溶解させ、その溶液(0.17g/L)を1cm角の石英セルに入れた。そのセル内に攪拌子を入れ、セルを紫外可視吸光光度計(株式会社島津製作所製、Multispec-1500、温度コントローラ−S−1700を備える)にセットした。そのセル上部から300Wキセノンランプ(朝日分光株式会社製、MAX−302)により紫外線照射した。この紫外線照射の際、334nmの波長だけを透過させるバンドパスフィルター(朝日分光株式会社製、LX334)を透過させて光照射した。なお、この際の光強度は69.1mWm-2であった。セル内の溶液をマグネティックスターラーを用いて攪拌しながら、シアン化物イオンを含む溶液(n−Bu4N+塩として、式(P1)の化合物に対して50当量、溶媒は水にN−シクロヘキシル−2−アミノエタンスルホン酸(CHES)を100mM添加したもの、pH9.3)を添加し、30分間25℃で攪拌した。その後、蛍光スペクトルを測定した。得られた蛍光スペクトルを図8(a)に示す。また、このときの溶液の写真を図8(b)に示す。
【0088】
前記溶液を50℃で5分間攪拌した。このときの溶液の写真を図8(d)に示す。攪拌後、溶液を遠心分離してポリマーを回収した。回収したポリマーを過塩素酸水溶液(pH1.2、5mL)に溶解させ、室温で10分間、50℃で5分間攪拌した。その後、遠心分離により再度ポリマーを回収した。
【0089】
回収したポリマーを緩衝溶液(溶媒は、N−シクロヘキシル−2−アミノエタンスルホン酸(CHES)を100mM添加したもの、pH9.3、5mL)に加え、室温で攪拌し、50℃で5分間攪拌し、その後、遠心分離により再度ポリマーを回収した(0.98mg)。ポリマーの回収率は98%であった。このポリマーを緩衝溶液(溶媒は、N−シクロヘキシル−2−アミノエタンスルホン酸(CHES)を100mM添加したもの、pH9.3、5mL)に溶解させ、その溶液を前記と同様にして紫外線照射した。セル内の溶液をマグネティックスターラーを用いて攪拌しながら、シアン化物イオンを含む溶液(n−Bu4N+塩として、1mgの式(P1)の化合物に対して50当量、溶媒は水にN−シクロヘキシル−2−アミノエタンスルホン酸(CHES)を100mM添加したもの、pH9.3)を添加し、30分間25℃で攪拌した。その後、蛍光スペクトルを測定した。得られた蛍光スペクトルを図8(c)に示す。
【0090】
図8(a)および図8(c)に示すように、式(P1)の化合物は、シアン化物イオンを検出した後、酸性水溶液中で加熱することにより、式(P1)の化合物をほぼ定量的に回収することが可能であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のキットは、少ない種類の試薬で、少ない工程を経てシアン化物イオンを検出することが可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、シアン化物イオンを蛍光により検出するためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
シアン化物は、金属めっき、金銀精錬、ストレッカー反応(アミノ酸合成)等において工業的に有用に用いられている。一方、シアン化物イオンは、電子伝達系の阻害、酵素活性の阻害、ヘモグロビンの機能低下等の作用を有するため、生体に極めて有害であることが知られている。シアン化物イオンは、その致死量が生体の体重1kg当たり0.5mg〜3.5mgであることが知られており、そのため、シアン化物イオンの飲料水における基準値は1.9μM以下と非常に厳しい。
【0003】
このようなシアン化物イオンは、JIS K0101工業用水試験方法により定められた、ピリジンカルボン酸−ピラゾロン吸光度度法により定量されている。この定量方法の検出限界は、0.65μMである。しかしながら、この方法は、フェノールフタレイン溶液、酢酸水溶液、リン酸塩緩衝液、クロラミンT水溶液、ピリジンカルボン酸−ピラゾロン溶液等のように多くの試薬を準備する必要がある。また、多くの工程を経て最終的に吸光度を測定するため、操作が煩雑である。
【0004】
少ない種類の試薬で、少ない工程を経てシアン化物イオンを検出する方法としては、例えば、スピロピランを用いて、シアン化物イオンを検出する方法が、知られている(例えば、非特許文献1参照)。この方法においては、特定のスピロピラン化合物(X)を用いる。特定のスピロピラン化合物(X)は、安定時にはSPフォーム(XI)をとり、発色しない。このスピロピラン化合物に対して紫外線照射をすると、このスピロピラン化合物は分子内環の一部が切断され、MCフォーム(XII)をとる。このとき、440〜600nmの波長の範囲でピンク色を発色する。このMCフォームの化合物(XII)は、シアン化物イオンが存在すると反応して、シアン化物付加体(XIII)を形成する。このシアン化物付加体(XIII)が400〜500nmの波長の範囲で黄色を発色するので、その強度を吸収スペクトルにより測定する、すなわち、特定のスピロピラン化合物(X)を用いて、紫外線照射という簡便な操作のみで、シアン化物イオンを検出することができる(スキーム1参照)。
【0005】
【化1】
【0006】
このスピロピラン化合物(X)を用いる方法の検出限界は、1.7μM程度であり、飲料水の基準値1.9μMを測定するのには感度が不十分である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Yasuhiro Shiraishiら, Organic Letters, 2009年、第11巻、p.3482-3485
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、少ない種類の試薬で、少ない工程を経てシアン化物イオンを検出するためのキットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、一般式(I)で表される化合物(以下、「式(I)の化合物」と呼ぶ場合もある)もしくはその塩、または、一般式(II)の化合物(以下、「式(II)の化合物」と呼ぶ場合もある)もしくはその塩を含む、シアン化物イオンを蛍光により検出するためのキットである。
【0010】
【化2】
【0011】
前記式(I)中、
R1は、炭素数1〜6の低級アルキル基、または−OH、−COOH、−SO3Hおよびハロゲン原子からなる群から選択される1以上で置換された炭素数1〜6の低級アルキル基であり、
R2およびR3は、印aの炭素原子と印bの炭素原子と一緒になって下記式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環は、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R4およびR5は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基であるか、
または、
R3およびR4は、印bの炭素原子と印cの炭素原子と一緒になって下記式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環は、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R2およびR5は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基であるか、
または、
R4およびR5は、印cの炭素原子と印dの炭素原子と一緒になって下記式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環は、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R2およびR3は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基である。
【0012】
前記式(II)中、
R11およびR12は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜6の低級アルキル基であり、
X1およびX2は、互いに独立して、OまたはNHを意味し、
nは、2〜6の整数であり、
R13は、炭素数1〜6の低級アルキル基であり、
xは、0.1〜9であり、
yは、91〜99.9であり、
R2およびR3は、印aの炭素原子と印bの炭素原子と一緒になって下記式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環は、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R4およびR5は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基であるか、
または、
R3およびR4は、印bの炭素原子と印cの炭素原子と一緒になって下記式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環は、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R2およびR5は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基であるか、
または、
R4およびR5は、印cの炭素原子と印dの炭素原子と一緒になって下記式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環は、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R2およびR3は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基である。
【0013】
【化3】
【発明の効果】
【0014】
本発明により、少ない種類の試薬で、少ない工程を経てシアン化物イオンを検出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、式(1)の化合物の溶液の写真と化合物の状態を示す。
【図2(a)】図2(a)は実施例3において得られた蛍光スペクトルを示す。
【図2(b)】図2(b)は実施例3において得られた蛍光スペクトルのFI/FI0をアニオン別に示す。
【図2(c)】図2(c)は実施例3において得られたセルの画像を示す。
【図3(a)】図3(a)は、実施例4において得られた蛍光スペクトルを示す。
【図3(b)】図3(b)は、実施例4において得られた蛍光スペクトルの強度FIを示す。
【図4(a)】図4(a)は、実施例5において得られた蛍光スペクトルを示す。
【図4(b)】図4(b)は、実施例5において得られた蛍光スペクトルの強度FIとシアン化物イオン/式(1)の化合物の比とを示す。
【図4(c)】図4(c)は、実施例5において得られた、シアン化物イオンの濃度と、FIとの関係を示すグラフである。
【図4(d)】図4(d)は、実施例5において得られた、シアン化物イオンの濃度と、FIとの関係を示すグラフである。
【図5(a)】図5(a)は実施例6において得られた蛍光スペクトルを示す。
【図5(b)】図5(b)は実施例6において得られた蛍光スペクトルのFI/FI0をアニオン別に示す。
【図5(c)】図5(c)は実施例6において得られたセルの画像を示す。
【図6(a)】図6(a)は、実施例7において得られた蛍光スペクトルを示す。
【図6(b)】図6(b)は、実施例7において得られた蛍光スペクトルの強度FIを示す。
【図7(a)】図7(a)は、実施例8において得られた、シアン化物イオンの濃度と、FIとの関係を示すグラフである。
【図7(b)】図7(d)は、実施例8において得られた、シアン化物イオンの濃度と、FIとの関係を示すグラフである。
【図8(a)】図8(a)は、実施例9において得られた、蛍光スペクトルを示す。
【図8(b)】図8(b)は、実施例9において得られたセルの画像を示す。
【図8(c)】図8(c)は、実施例9において得られた、回収後の蛍光スペクトルを示す。
【図8(d)】図8(d)は、実施例9において得られた、加熱時のセルの画像を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
前記のように、本発明は、一般式(I)の化合物もしくはその塩、または、一般式(II)の化合物もしくはその塩を含む、シアン化物イオンを蛍光により検出するためのキットである。
【0017】
また、本発明は、前記キットに紫外線を照射し、その後、シアン化物イオンを含む検体を混合して、生じる蛍光を測定することによりシアン化物イオンを検出する方法である。この方法は、試薬として一般式(I)の化合物もしくはその塩、または、一般式(II)の化合物もしくはその塩のみを必要とするため、少ない試薬でシアン化物イオンを検出することができ、好ましい。また、この方法は、紫外線照射により蛍光を測定するため、少ない工程でシアン化物イオンを検出することができ、好ましい。
【0018】
また、本発明は、前記キットとシアン化物イオンを含む検体とを混合し、その後、紫外線を照射して、生じる蛍光を測定することによりシアン化物イオンを検出する方法である。この方法は、試薬として一般式(I)の化合物もしくはその塩、または、一般式(II)の化合物もしくはその塩のみを必要とするため、少ない試薬でシアン化物イオンを検出することができ、好ましい。また、この方法は、紫外線照射により蛍光を測定するため、少ない工程でシアン化物イオンを検出することができ、好ましい。
【0019】
また、本発明は、一般式(II)で表される化合物またはその塩である。
【0020】
【化4】
【0021】
前記式(II)中、
R11およびR12は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜6の低級アルキル基であり、
X1およびX2は、互いに独立して、OまたはNHを意味し、
nは、2〜6の整数であり、
R13は、炭素数1〜6の低級アルキル基であり、
xは、0.1〜9であり、
yは、91〜99.9であり、
R2およびR3は、印aの炭素原子と印bの炭素原子と一緒になって式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環は、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R4およびR5は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基であるか、
または、
R3およびR4は、印bの炭素原子と印cの炭素原子と一緒になって式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環は、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R2およびR5は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基であるか、
または、
R4およびR5は、印cの炭素原子と印dの炭素原子と一緒になって式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環は、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R2およびR3は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基である。
【0022】
【化5】
【0023】
本発明において、「炭素数1〜6の低級アルキル基」ならびに「炭素数1〜6の低級アルコキシ基」および「炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基」における「炭素数1〜6の低級アルキル」部分としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル等のような直鎖状もしくは分岐鎖状の炭素数1〜6のアルカンの残基を意味する。低級アルキル基および低級アルキル部分の好ましい例としては、炭素数1〜5のアルキルが挙げられる。好ましい炭素数1〜5のアルキルとしては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第三級ブチル、ペンチル、ネオペンチル等が挙げられる。
【0024】
「ハロゲン」としては、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素が挙げられる。
【0025】
「炭素数1〜6の低級アルコキシ基」としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、第三級ブトキシ、ペンチルオキシ、第三級ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等が挙げられる。
【0026】
「炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基」としては、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、ブチルアミノ、イソブチルアミノ、t−ブチルアミノ、ペンチルアミノ、ネオペンチルアミノ、ヘキシルアミノ等が挙げられる。
【0027】
本発明のキットにおいて、式(I)の化合物は、R2およびR3が、印aの炭素原子と印bの炭素原子と一緒になって式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環が、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R4およびR5が、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基である化合物が好ましく、式(II)の化合物は、R2およびR3が、印aの炭素原子と印bの炭素原子と一緒になって式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環が、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R4およびR5が、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基である化合物が好ましい。また、本発明のキットにおいて、式(I)の化合物は、R2およびR3が、印aの炭素原子と印bの炭素原子と一緒になって式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環が、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R4およびR5が、水素原子である化合物がより好ましく、式(II)の化合物は、R2およびR3が、印aの炭素原子と印bの炭素原子と一緒になって式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環が、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R4およびR5が、水素原子である化合物がより好ましい。また、本発明のキットにおいて、式(I)の化合物は、R2およびR3が、印aの炭素原子と印bの炭素原子と一緒になって式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環が、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R4およびR5が、水素原子であり、R1が、炭素数1〜6の低級アルキル基である化合物がさらに好ましい。また、本発明のキットにおいて、式(I)の化合物は、R2およびR3が、印aの炭素原子と印bの炭素原子と一緒になって式(v)または(vi)で表される環を形成し、前記環が、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R4およびR5が、水素原子であり、R1が、炭素数1〜6の低級アルキル基である化合物がさらに好ましく、式(II)の化合物は、R2およびR3が、印aの炭素原子と印bの炭素原子と一緒になって式(v)または(vi)で表される環を形成し、前記環が、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R4およびR5が、水素原子である化合物がさらに好ましい。
【0028】
また、本発明のキットにおいて、式(I)の化合物としては、下記式(1)で表される化合物(以下、「式(1)の化合物」と呼ぶ)がさらに好ましく、式(II)の化合物としては、下記式(P1)で表される化合物(以下、「式(P1)の化合物」と呼ぶ)がさらに好ましい。下記式(1)の化合物は、V. F. Travenら、Russian Chemical Bulletin, International Edition, 2005年、54巻、p.2417-2424等の文献により既知であり、この文献に記載の方法に従い製造することができる。
【0029】
【化6】
【0030】
式(I)の化合物は、従来公知の方法に従い、製造することができる。または、式(I)の化合物は、従来公知の方法と技術常識を用いて、製造することもできる。例えば、式(I)の化合物は、以下のスキーム2に従い製造することができる。
【0031】
【化7】
【0032】
前記式中、R1、R2、R3、R4、R5は、前記で定義したとおりである。
【0033】
具体的には、式(XX)の化合物を、ヘキサメチレンテトラミン等と反応させることによりホルミル化して、式(XXI)の化合物を得ることができる。このホルミル化は、酸性条件下、例えば酢酸、リン酸等中で、50〜200℃の温度で加熱することにより行うことができる。
【0034】
次いで、式(XXI)の化合物と、式(XXII)の化合物とを反応させることにより、式(I)の化合物を得ることができる。この反応は、メタノール、エタノール等の溶媒中、50〜150℃の温度で加熱することにより行うことができる。
【0035】
また、式(II)の化合物は、以下のスキーム3に従い製造することができる。
【0036】
【化8】
【0037】
前記式中、R11、R12、R13、X1、X2、R2、R3、R4、R5、n、x、yは前記のとおりである。
【0038】
具体的には、式(XXIII)の化合物と、式(XXIV)の化合物とを、重合開始剤(例えば、AIBN等)の存在下、t−BuOH等の溶媒中、50〜150℃の温度でN2、アルゴン等の不活性雰囲気下に加熱することにより、式(II)の化合物を得ることができる。
【0039】
前記式(XX)の化合物、式(XXII)の化合物、式(XXIII)の化合物、および式(XXIV)の化合物は、市販のものを入手してもよいし、従来公知の方法と技術常識を用いて、製造することもできる。
【0040】
本発明において、式(I)の化合物の塩とは、例えばナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属と式(I)の化合物との塩、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属と式(I)の化合物との塩、アンモニアなどと式(I)の化合物との塩、及びトリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンアミンなどの有機アミンと式(I)の化合物との塩、及び塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸などの無機酸と式(I)の化合物との塩が挙げられる。同様に、式(II)の化合物の塩とは、例えばナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属と式(II)の化合物との塩、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属と式(II)の化合物との塩、アンモニアなどと式(II)の化合物との塩、及びトリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンアミンなどの有機アミンと式(II)の化合物との塩、及び塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸などの無機酸と式(I)の化合物との塩が挙げられる。
【0041】
本発明において、式(I)の化合物は、4級炭素原子を含む。そのため、式(I)の化合物は、下記の2種類の異性体を含む。
【0042】
【化9】
【0043】
同様に、本発明において、式(II)の化合物は、4級炭素原子を含む。そのため、式(II)の化合物は、下記の2種類の異性体を含む。
【0044】
【化10】
【0045】
本発明のキットを用いてシアン化物イオンを検出する方法は、前記のように、本発明のキットに紫外線を照射し、その後、シアン化物イオンを含む検体とを混合して、生じる蛍光を測定することによりシアン化物イオンを検出する。または、本発明のキットと、シアン化物イオンを含む検体とを混合し、その後、紫外線を照射して、生じる蛍光を測定することによりシアン化物イオンを検出する。これらの検出する方法において、検体に含まれると予想されるシアン化物イオンの量と同等以上の量の式(I)の化合物もしくはその塩、または式(II)の化合物もしくはその塩を含むキットを用いるのが好ましい。
【0046】
まず、本発明のキットに含まれる式(I)の化合物は、安定時にはSPフォーム(III)をとり、蛍光は発生しない。この式(I)の化合物に対して紫外線照射すると、化合物の分子内環の一部が切断され、MCフォーム(IV)をとる。このMCフォーム(IV)も蛍光は発生しない。このMCフォームの化合物(IV)は、シアン化物イオンが存在すると反応して、シアン化物付加体(V)を形成する。このシアン化物付加体(V)が蛍光を発するので、式(I)の化合物を用いて、紫外線照射という簡便な操作のみで、シアン化物イオンを検出することができる(スキーム4参照)。
【0047】
【化11】
【0048】
なお、式(I)の化合物は、SPフォーム(III)およびシアン化物付加体(V)のいずれにおいても、発色しない。例えば、式(I)の化合物として、前記式(1)の化合物を用いた場合の溶液の色は図1参照。発色を測定する方法、すなわち、吸光度を測定する方法では、シアン化物イオン以外に共存する物質の影響を受けた発色の影響を考慮に入れる必要がある。その場合、シアン化物イオン以外に共存する物質の性質によっては、シアン化物イオンを正確に検出することが困難である。これに対して本発明のシアン化物イオンの検出方法は蛍光を測定するため、シアン化物イオン以外に共存する物質の影響を受けず、その結果、シアン化物イオンを正確に検出することができる。具体的には、シアン化物イオン以外に共存しうる物質として、F-、Cl-、Br-、I-、CH3CO-、HPO3-、HSO4-、ClO4-、NO3-、SCN-などが挙げられる。
【0049】
式(II)の化合物は、水に溶解することができるという性質を有する。従って、このような化合物を含む本発明のキットを用いてシアン化物イオンを検出する場合、溶媒として水のみ、すなわち、有機溶媒を用いずに行うことができる。さらに、式(II)の化合物は、ポリマー部分が加熱により凝集するという性質を有する。従って、このような化合物を含む溶液を加熱すると、式(II)の化合物は凝集する。この凝集物はろ取により単離することができるため、溶液から、式(II)の化合物を容易に回収できる。
【0050】
また、本発明のキットに含まれる式(II)の化合物も式(I)の化合物と同様、安定時にはSPフォーム(VI)をとり、蛍光は発生しない。この式(VI)の化合物に対して紫外線照射すると、化合物の分子内環の一部が切断され、MCフォーム(VII)をとる。このMCフォームも蛍光は発生しない。このMCフォームの化合物(VII)は、シアン化物イオンが存在すると反応して、シアン化物付加体(VIII)を形成する。このシアン化物付加体(VIII)が蛍光を発するので、式(II)の化合物を用いて、紫外線照射という簡便な操作のみで、シアン化物イオンを検出することができる(スキーム5参照)。なお、式(VIII)の化合物は酸性水溶液中で加熱して再生することが可能である。これは、前記スキーム5中のシアン化物付加体(VIII)が、酸性条件下で式(VI)の化合物へ戻るためと考えられる。式(II)の化合物の場合の前記メカニズムを以下のスキーム5に示す。
【0051】
【化12】
【0052】
式(II)の化合物は、SPフォーム(VI)およびシアン化物付加体(VIII)のいずれにおいても、発色しない。発色を測定する方法、すなわち、吸光度を測定する方法では、シアン化物イオン以外に共存する物質の影響を受けた発色の影響を考慮に入れる必要がある。その場合、シアン化物イオン以外に共存する物質の性質によっては、シアン化物イオンを正確に検出することが困難である。これに対して本発明のシアン化物イオンの検出方法は蛍光を測定するため、シアン化物イオン以外に共存する物質の影響を受けず、その結果、シアン化物イオンを正確に検出することができる。具体的には、シアン化物イオン以外に共存しうる物質として、F-、Cl-、Br-、I-、CH3CO-、HPO3-、HSO4-、ClO4-、NO3-、SCN-などが挙げられる。
【0053】
本発明のシアン化物イオンを検出する方法の検出限界は、0.5μM〜0.8μMであり、JIS K0101工業用水試験方法の0.6μMと同等である。
【0054】
本発明のシアン化物イオンを検出する方法は、さらに、シアン化物イオンと蛍光強度との検量線に基づき、測定した蛍光の強度から、検体中のシアン化物イオンの濃度を知る工程を含む。前記シアン化物イオンと蛍光強度との検量線は、例えば、既知濃度のシアン化物イオンを含む検体を用いて生じる蛍光の強度との関係を調べて予め作成することができる。
【0055】
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、以下の実施例により限定されない。
【0056】
本明細書において、測定機器は以下の機器を用いた。
1H−NMRおよび13C−NMRは、JNM-GSX270 Excalibur(日本電子株式会社製)を用いて、TMS(テトラメチルシラン)(0ppm)を内部標準物質として、測定した。
EI−MSは、JMS 700 Mass Spectrometer(日本電子株式会社製)を用いて測定した。
【0057】
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、GPCシステムを用いて以下の条件により測定した。
装置:GPCシステム(日本分光株式会社製)
カラム:KF-806 Lカラム(昭和電工株式会社製)、1本直列。
ポンプ:PU−980型ポンプ(日本分光株式会社製)
展開溶媒:LiBr(0.01M)を含むジメチルホルムアミド
流速:0.6mL/分
カラム温度:40℃
検出器:RI検出器(RI−930、日本分光株式会社製)
分子量標準物質:ポリスチレン
【実施例1】
【0058】
式(1)の化合物の製造
式(1)の化合物は、以下のスキーム6に従い製造した。
【0059】
【化13】
【0060】
(a)式(2)の化合物の製造
7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン(0.88g,5.00mmol)およびヘキサメチレンテトラミン(6.6g,46.4mmol)を、酢酸(20mL)中において373Kで9時間攪拌した。20%のHCl(25mL)を添加し、さらに15分間攪拌した。生じた混合物を蒸発させて濃縮した。水(50mL)を残渣に添加し、得られた溶液をジエチルエーテル(3×50mL)で抽出した。有機相を水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、溶媒を蒸発させて濃縮した。得られた残渣をエタノールから再結晶して、淡黄色固体の式(2)の化合物を得た。収量:96mg,9%。
【0061】
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6, TMS): δ = 11.88 (bs, 1H), 10.44 (s, 1H), 7.94 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 6.97 (d, J = 8.9Hz, 1H), 6.30-6.29 (m, 1H), 2.41 (t, J = 0.9 Hz, 3H);
13C NMR (100 MHz, CD3CN, TMS): δ = 194.6, 165.6, 159.8, 157.1, 154.5, 134.7, 114.5, 113.1, 112.4, 109.5, 19.0.
EI-MS: m/z: C11H8O4としての計算値: 204.2;測定値: 240.0 [M+]。
【0062】
(b)式(1)の化合物の製造
式(2)の化合物(207mg,1.01mmol)および1,3,3−トリメチル−2−メチリデンインドール(161mg,0.93mmol)をCH3OH(5mL)中で3時間還流加熱した。生じた混合物を蒸発させて濃縮した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーによりCH2Cl2で精製した。溶出液を蒸発させて濃縮し、真空下で乾燥させ、白色固体の式(1)の化合物を得た。収量45mg,13%。
【0063】
1H NMR (270 MHz, アセトン-d6, TMS): δ = 7.53 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.42 (dd, J = 0.7, 9.9 Hz, 1H), 7.18-7.10 (m, 2H), 6.82 (dt, J = 0.9, 7.4 Hz, 1H), 6.68 (dd, J = 0.7, 8.1 Hz, 1H), 6.60 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 2.80 (s, 3H), 2.42 (d, J = 1.3 Hz, 3H), 1.30 (s, 3H), 1.19 ppm (s, 3H);
13C NMR (100 MHz, CDCl3, TMS): δ = 160.6, 157.3, 152.7, 149.6, 147.7, 136.2, 127.5, 124.9, 122.4, 121.3, 119.5, 119.3, 112.8, 111.7, 111.3, 107.1, 106.8, 105.4, 51.98, 28.78, 25.83, 20.0, 18.7 ppm;
EI-MS: m/z: C23H21NO3としての計算値:359.4; 測定値 359.1 [M+]。
【実施例2】
【0064】
式(P1)の化合物の製造
式(P1)の化合物は、以下のスキーム7に従い製造した。
【0065】
【化14】
【0066】
(a)式(4)の化合物の製造
式(4)の化合物を文献記載の方法(F. M. Raymo, S. Giordani, J. Am. Chem. Soc. 2001年、123巻、p.4651−4652)に従い、2,3,3,−トリメチルインドールから製造した。
【0067】
(b)式(2)の化合物の製造
7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン(0.88g,5.0mmol)およびヘキサメチレンテトラミン(6.6g,46mmol)を、酢酸(20mL)中において100℃で7時間攪拌した。20%のHCl(25mL)を添加し、さらに45分間攪拌した。生じた混合物を蒸発させて濃縮した。水(50mL)を残渣に添加し、得られた溶液をジエチルエーテル(3×50mL)で抽出した。有機相を水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、溶媒を蒸発させて濃縮した。得られた残渣をエタノールから再結晶して、淡黄色固体の式(2)の化合物を得た。収量:96mg,9%。得られた化合物の1H−NMRおよび13H−NMR,FAB−MS分析により、実施例1で得られた式(2)の化合物と同定した。
【0068】
(c)式(5)の化合物の製造
式(2)の化合物(46.3mg,0.227mmol)および式(4)の化合物(45.7mg,0.225mmol)をCH3OH(3ml)中で3時間還流加熱し、室温まで冷却した。水(100ml)をその混合物に添加し、生成した固体をろ取した。その固体を真空下に乾燥し、紫色固体の式(5)の化合物(43.3mg,0.111mmol,49.3%)を得た。
【0069】
1H-NMR (270 MHz, アセトン-d6, TMS) δ (ppm): 7.53 (1H, d, J = 8.74 Hz), 7.38 (1H, dd, J = 10.55, 0.82 Hz), 7.13 (2H, dt, J = 11.16, 3.96 Hz), 6.80 (1H, td, J = 7.38, 0.93 Hz), 6.67 (2H, dt, J = 8.35, 2.27 Hz), 6.14 (1H, d, J = 1.15 Hz), 6.03 (1H, d, J = 10.55 Hz), 3.69 (2H, dq, J = 21.27, 4.81 Hz), 3.48-3.22 (2H, m), 2.42 (3H, d, J = 1.32 Hz), 1.29 (3H, s), 1.19 (3H, s).
13C NMR (270 MHz, CDCl3, TMS)δ(ppm): 160.43, 156.71, 152.53, 149.68, 146.94, 135.87, 127.54, 125.15, 122.43, 121.66, 119.84, 119.52, 113.12, 111.71,111.50, 106.98, 106.64, 105.77, 60.94, 52.58, 46.03, 25.89, 20.13, 18.61.
EI-MS: C24H23NO4としての計算値: 389.15; 測定値 389.2 [M+]。
【0070】
(d)式(6)の化合物の製造
式(5)の化合物(40.0mg,0.103mmol)をCH2Cl2(30mL)中に溶解させた。CH2Cl2(100mL)中に溶解したアクリロイルクロリド(0.05g,0.11mol)をその溶液に0℃で乾燥N2雰囲気下に滴下し、その後、40℃で2時間攪拌した。溶液を0.1MのHCl、次いで飽和NaHCO3水溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、蒸発させて濃縮し、黄色固体として式(6)の化合物を得た(32.4mg,71%)。
【0071】
1H-NMR (270 MHz, アセトン-d6, TMS) δ: 7.54 (1H, d, J = 8.74 Hz), 7.41 (1H, dd, J = 10.55, 0.66 Hz), 7.16-7.12 (2H, m), 6.84 (1H, td, J = 7.38, 0.88 Hz), 6.77 (1H, d, J = 7.75 Hz), 6.67 (1H, dd, J = 8.74, 0.66 Hz), 6.33 (1H, dd, J = 17.23, 1.73 Hz), 6.17-6.11 (2H, m), 6.03 (1H, t, J = 9.32 Hz), 5.86 (1H, dd, J = 10.30, 1.73 Hz), 4.42-4.26 (2H, m), 3.68-3.42 (2H, m), 2.42 (3H, d, J = 1.32 Hz), 1.30 (3H, s), 1.17 (3H, s).
13C NMR (270 MHz, CDCl3, TMS)δ(ppm): 170.47, 165.61, 160.45, 156.82, 152.53, 146.60, 135.83, 130.70, 128.05, 127.54, 125.11, 122.48, 121.63, 121.60, 119.66, 119.53, 113.01, 111.78, 111.44, 106.86, 106.47, 105.59, 62.43, 52.55, 42.44, 25.84, 19.89, 18.55.
EI-MS: C27H25NO5としての計算値: 443.19; 測定値 443.3 [M+]。
【0072】
(e)式(P1)の化合物の製造
式(6)の化合物(18.1mg,0.041mmol)、イソプロピルアクリルアミド(NIPAM、0.504g,4.1mmol)およびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN、15mg,91mmol)をt−BuOH(2ml)中に溶解させた。この溶液を2回、凍結脱気により脱気させ、70℃で乾燥N2雰囲気下に15時間攪拌した。生成したポリマーを蒸発により濃縮させ、2回、メタノール(1mL)およびジエチルエーテル(100mL)を用いる析出法により精製した。真空下に乾燥した後、ポリ(NIPAM−co−CSP)(P1)を淡桃色固体として得た(0.378g,75%)。
【0073】
1H-NMR (270 MHz, アセトン-d6, TMS) δ: 3.99 (1H, s), 2.05 (3H, dt, J = 174.99, 68.49 Hz), 1.24 (6H, d, J = 80.26 Hz).
分子量:Mn = 198100、 Mw = 649000、Mw/Mn = 2.28。
【実施例3】
【0074】
実施例1で製造した式(1)の化合物のアセトニトリル溶液(10μM、3mL)を1cm角の石英セルに入れた。そのセル内に攪拌子を入れ、セルを紫外可視吸光光度計(株式会社島津製作所製、Multispec-1500、温度コントローラ−S−1700を備える)にセットした。そのセル上部から300Wキセノンランプ(朝日分光株式会社製、MAX−302)により紫外線照射した。この紫外線照射の際、334nmの波長だけを透過させるバンドパスフィルター(朝日分光株式会社製、LX334)を透過させて光照射した。なお、この際の光強度は69.1mWm-2であった。セル内の溶液をマグネティックスターラーを用いて攪拌しながら、シアン化物イオンを含む溶液(n−Bu4N+塩として、式(1)の化合物に対して50当量、溶媒はアセトニトリルと水の混合物(v/v)=2/8にN−シクロヘキシル−2−アミノエタンスルホン酸(CHES)を100mM添加したもの、pH9.3)を添加し、30分間25℃で攪拌した。その後、蛍光スペクトルを測定した。得られた蛍光スペクトルを図2(a)に示す。
【0075】
また、シアン化物イオンを含む溶液の代わりに、F-、Cl-、Br-、I-、CH3COO-、HPO3-、HSO4-、ClO4-、NO3-、またはSCN-を含む溶液(n−Bu4N+塩として、式(1)の化合物に対して50当量、溶媒はアセトニトリルと水の混合物(v/v)=2/8にN−シクロヘキシル−2−アミノエタンスルホン酸(CHES)を100mM添加したもの、pH9.3)を用い、同様に蛍光スペクトルを測定した。得られた蛍光スペクトルを図2(a)に示す。また、453nmにおける蛍光スペクトル強度の比(FI/FI0)をイオンごとに図2(b)に示した。FI0は、アニオン無しで測定した蛍光強度であり、FIはアニオン存在下で測定した蛍光強度である。また、式(1)の化合物に334nmの波長の紫外線を照射した際の溶液の写真を図2(c)の(i)に、シアン化物イオンを加えた後の溶液の写真を図2(c)の(ii)に示す。
【0076】
図2(a)および図2(b)に示すように、式(1)の化合物はシアン化物イオンの存在下に蛍光を発するのに対し、シアン化物イオン以外のイオンの存在下では蛍光を発しないことが確認できた。また、図2(c)に示すように、シアン化物イオン不在の式(1)の化合物は、紫外線照射されても蛍光を発生していないが、シアン化物イオン存在の際には、蛍光を発していることが確認できた。
【実施例4】
【0077】
シアン化物イオンを含む溶液の代わりに、シアン化物イオン(n−Bu4N+塩として、式(1)の化合物に対して50当量)と、他のイオン(F-、Cl-、Br-、I-、CH3COO-、HPO3-、HSO4-、ClO4-、NO3-、またはSCN-)を含む溶液(n−Bu4N+塩として、式(1)の化合物に対して50当量)とを含む溶液(溶媒はアセトニトリルと水の混合物(v/v)=2/8にN−シクロヘキシル−2−アミノエタンスルホン酸(CHES)を100mM添加したもの、pH9.3)を用いた以外は、実施例3と同様にして行った。得られた蛍光スペクトルを図3(a)に示す。なお、図3(a)には、実施例3で得られた図3(a)のシアン化物イオンのみを含む溶液を用いた蛍光スペクトルも重ねて示している。また、イオンごとの蛍光強度を図3(b)に示す。
【0078】
図3(a)および図3(b)に示すように、シアン化物イオンのみにより得られた蛍光スペクトルと、シアン化物イオンと他のイオンとから得られた蛍光スペクトルは、ほぼ、同一であった。従って、式(1)の化合物とシアン化物イオンとの反応により発生する蛍光は、シアン化物イオン以外のほかのイオンにより変動しないことが確認できた。
【実施例5】
【0079】
シアン化物イオンを含む溶液におけるシアン化物イオンの量を、50当量の代わりに種々異ならせた以外は実施例3と同様にして行った。得られた蛍光スペクトルを図4(a)に示す。また、シアン化物イオンの濃度と式(1)の化合物に対するFIを図4(b)に示す。図4(a)に示すように、シアン化物イオンの当量が多くなるほど、蛍光スペクトルの強度は増加することが確認できた。また、図4(b)に示すように、最小自乗フィッティングにより、シアン化物イオンの量が式(1)の化合物とほぼ1:1の関係で平衡に達することが確認できた。
【0080】
また、シアン化物イオンの濃度と、FIとの関係を図4(c)に示す。図4(c)の拡大図が図4(d)である。図4(d)から、式(1)の化合物を用いてシアン化物イオンを検出する限界が0.5μMであることが確認できた。
【実施例6】
【0081】
実施例2で製造した式(P1)の化合物の水溶液(0.17g/L、3mL)を1cm角の石英セルに入れた。そのセル内に攪拌子を入れ、セルを紫外可視吸光光度計(株式会社島津製作所製、Multispec-1500、温度コントローラ−S−1700を備える)にセットした。そのセル上部から300Wキセノンランプ(朝日分光株式会社製、MAX−302)により紫外線照射した。この紫外線照射の際、334nmの波長だけを透過させるバンドパスフィルター(朝日分光株式会社製、LX334)を透過させて光照射した。なお、この際の光強度は69.1mWm-2であった。セル内の溶液をマグネティックスターラーを用いて攪拌しながら、シアン化物イオンを含む溶液(n−Bu4N+塩として、式(P1)の化合物に対して50当量、溶媒は水にN−シクロヘキシル−2−アミノエタンスルホン酸(CHES)を100mM添加したもの、pH9.3)を添加し、30分間25℃で攪拌した。その後、蛍光スペクトルを測定した。得られた蛍光スペクトルを図5(a)に示す。
【0082】
また、シアン化物イオンを含む溶液の代わりに、F-、Cl-、Br-、I-、CH3COO-、HPO3-、HSO4-、ClO4-、NO3-、またはSCN-を含む溶液(n−Bu4N+塩として、式(P1)の化合物に対して50当量、溶媒は水にN−シクロヘキシル−2−アミノエタンスルホン酸(CHES)を100mM添加したもの、pH9.3)を用い、同様に蛍光スペクトルを測定した。得られた蛍光スペクトルを図5(a)に示す。また、451nmにおける蛍光スペクトル強度の比(FI/FI0)をイオンごとに図5(b)に示した。FI0は、アニオン無しで測定した蛍光強度であり、FIはアニオン存在下で測定した蛍光強度である。また、式(P1)の化合物に334nmの波長の紫外線を照射した際の溶液の写真を図5(c)の(i)に、シアン化物イオンを加えた後の溶液の写真を図5(c)の(ii)に示す。
【0083】
図5(a)および図5(b)に示すように、式(P1)の化合物はシアン化物イオンの存在下に蛍光を発するのに対し、シアン化物イオン以外のイオンの存在下では蛍光を発生しないことが確認できた。また、図5(c)に示すように、シアン化物イオン不在の式(P1)の化合物は、紫外線照射されても蛍光を発生していないが、シアン化物イオン存在の際には、蛍光を発していることが確認できた。
【実施例7】
【0084】
シアン化物イオンを含む溶液の代わりに、シアン化物イオン(n−Bu4N+塩として、式(1)の化合物に対して50当量)と、他のイオン(F-、Cl-、Br-、I-、CH3COO-、HPO3-、HSO4-、ClO4-、NO3-、またはSCN-)を含む溶液(n−Bu4N+塩として、式(P1)の化合物に対して50当量)とを含む溶液(溶媒は水にN−シクロヘキシル−2−アミノエタンスルホン酸(CHES)を100mM添加したもの、pH9.3)を用いた以外は、実施例6と同様にして行った。得られた蛍光スペクトルを図6(a)に示す。なお、図6(a)には、実施例6で得られた図5(a)のシアン化物イオンのみを含む溶液を用いた蛍光スペクトルも重ねて示している。また、イオンごとの蛍光強度を図6(b)に示す。
【0085】
図6(a)および図6(b)に示すように、シアン化物イオンのみにより得られた蛍光スペクトルと、シアン化物イオンと他のイオンとから得られた蛍光スペクトルは、ほぼ、同一であった。従って、式(P1)の化合物とシアン化物イオンとの反応により発生する蛍光は、シアン化物イオン以外のほかのイオンにより変動しないことが確認できた。
【実施例8】
【0086】
シアン化物イオンを含む溶液におけるシアン化物イオンの量を、50当量の代わりに種々異ならせた以外は実施例6と同様にして行った。シアン化物イオンの濃度と、FIとの関係を図7(a)に示す。図7(a)の拡大図が図7(b)である。図7(b)から、式(P1)の化合物を用いてシアン化物イオンを検出する限界が0.8μMであることが確認できた。
【実施例9】
【0087】
実施例2で製造した式(P1)の化合物(1mg)を緩衝溶液(溶媒は、N−シクロヘキシル−2−アミノエタンスルホン酸(CHES)を100mM添加したもの、pH9.3、5mL)に溶解させ、その溶液(0.17g/L)を1cm角の石英セルに入れた。そのセル内に攪拌子を入れ、セルを紫外可視吸光光度計(株式会社島津製作所製、Multispec-1500、温度コントローラ−S−1700を備える)にセットした。そのセル上部から300Wキセノンランプ(朝日分光株式会社製、MAX−302)により紫外線照射した。この紫外線照射の際、334nmの波長だけを透過させるバンドパスフィルター(朝日分光株式会社製、LX334)を透過させて光照射した。なお、この際の光強度は69.1mWm-2であった。セル内の溶液をマグネティックスターラーを用いて攪拌しながら、シアン化物イオンを含む溶液(n−Bu4N+塩として、式(P1)の化合物に対して50当量、溶媒は水にN−シクロヘキシル−2−アミノエタンスルホン酸(CHES)を100mM添加したもの、pH9.3)を添加し、30分間25℃で攪拌した。その後、蛍光スペクトルを測定した。得られた蛍光スペクトルを図8(a)に示す。また、このときの溶液の写真を図8(b)に示す。
【0088】
前記溶液を50℃で5分間攪拌した。このときの溶液の写真を図8(d)に示す。攪拌後、溶液を遠心分離してポリマーを回収した。回収したポリマーを過塩素酸水溶液(pH1.2、5mL)に溶解させ、室温で10分間、50℃で5分間攪拌した。その後、遠心分離により再度ポリマーを回収した。
【0089】
回収したポリマーを緩衝溶液(溶媒は、N−シクロヘキシル−2−アミノエタンスルホン酸(CHES)を100mM添加したもの、pH9.3、5mL)に加え、室温で攪拌し、50℃で5分間攪拌し、その後、遠心分離により再度ポリマーを回収した(0.98mg)。ポリマーの回収率は98%であった。このポリマーを緩衝溶液(溶媒は、N−シクロヘキシル−2−アミノエタンスルホン酸(CHES)を100mM添加したもの、pH9.3、5mL)に溶解させ、その溶液を前記と同様にして紫外線照射した。セル内の溶液をマグネティックスターラーを用いて攪拌しながら、シアン化物イオンを含む溶液(n−Bu4N+塩として、1mgの式(P1)の化合物に対して50当量、溶媒は水にN−シクロヘキシル−2−アミノエタンスルホン酸(CHES)を100mM添加したもの、pH9.3)を添加し、30分間25℃で攪拌した。その後、蛍光スペクトルを測定した。得られた蛍光スペクトルを図8(c)に示す。
【0090】
図8(a)および図8(c)に示すように、式(P1)の化合物は、シアン化物イオンを検出した後、酸性水溶液中で加熱することにより、式(P1)の化合物をほぼ定量的に回収することが可能であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のキットは、少ない種類の試薬で、少ない工程を経てシアン化物イオンを検出することが可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)の化合物もしくはその塩、または、一般式(II)の化合物もしくはその塩を含む、シアン化物イオンを蛍光により検出するためのキット。
【化15】
前記式(I)中、
R1は、炭素数1〜6の低級アルキル基、または−OH、−COOH、−SO3Hおよびハロゲン原子からなる群から選択される1以上で置換された炭素数1〜6の低級アルキル基であり、
R2およびR3は、印aの炭素原子と印bの炭素原子と一緒になって下記式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環は、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R4およびR5は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基であるか、
または、
R3およびR4は、印bの炭素原子と印cの炭素原子と一緒になって下記式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環は、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R2およびR5は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基であるか、
または、
R4およびR5は、印cの炭素原子と印dの炭素原子と一緒になって下記式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環は、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R2およびR3は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基である。
前記式(II)中、
R11およびR12は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜6の低級アルキル基であり、
X1およびX2は、互いに独立して、OまたはNHを意味し、
nは、2〜6の整数であり、
R13は、炭素数1〜6の低級アルキル基であり、
xは、0.1〜9であり、
yは、91〜99.9であり、
R2およびR3は、印aの炭素原子と印bの炭素原子と一緒になって下記式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環は、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R4およびR5は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基であるか、
または、
R3およびR4は、印bの炭素原子と印cの炭素原子と一緒になって下記式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環は、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R2およびR5は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基であるか、
または、
R4およびR5は、印cの炭素原子と印dの炭素原子と一緒になって下記式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環は、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R2およびR3は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基である。
【化16】
【請求項2】
式(I)において、R2およびR3が、印aの炭素原子と印bの炭素原子と一緒になって式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環が、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R4およびR5が、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基であり、
式(II)において、R2およびR3が、印aの炭素原子と印bの炭素原子と一緒になって式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環が、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R4およびR5が、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基である請求項1に記載のキット。
【請求項3】
式(I)において、R1が、炭素数1〜6の低級アルキル基である請求項2に記載のキット。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のキットに紫外線を照射し、その後、シアン化物イオンを含む検体を混合して、生じる蛍光を測定することによりシアン化物イオンを検出する方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載のキットと、シアン化物イオンを含む検体とを混合して、その後、紫外線を照射し、生じる蛍光を測定することによりシアン化物イオンを検出する方法。
【請求項6】
一般式(II)で表される化合物またはその塩。
【化17】
前記式(II)中、
R11およびR12は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜6の低級アルキル基であり、
X1およびX2は、互いに独立して、OまたはNHを意味し、
nは、2〜6の整数であり、
R13は、炭素数1〜6の低級アルキル基であり、
xは、0.1〜9であり、
yは、91〜99.9であり、
R2およびR3は、印aの炭素原子と印bの炭素原子と一緒になって下記式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環は、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R4およびR5は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基であるか、
または、
R3およびR4は、印bの炭素原子と印cの炭素原子と一緒になって下記式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環は、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R2およびR5は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基であるか、
または、
R4およびR5は、印cの炭素原子と印dの炭素原子と一緒になって下記式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環は、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R2およびR3は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基である。
【化18】
【請求項1】
一般式(I)の化合物もしくはその塩、または、一般式(II)の化合物もしくはその塩を含む、シアン化物イオンを蛍光により検出するためのキット。
【化15】
前記式(I)中、
R1は、炭素数1〜6の低級アルキル基、または−OH、−COOH、−SO3Hおよびハロゲン原子からなる群から選択される1以上で置換された炭素数1〜6の低級アルキル基であり、
R2およびR3は、印aの炭素原子と印bの炭素原子と一緒になって下記式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環は、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R4およびR5は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基であるか、
または、
R3およびR4は、印bの炭素原子と印cの炭素原子と一緒になって下記式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環は、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R2およびR5は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基であるか、
または、
R4およびR5は、印cの炭素原子と印dの炭素原子と一緒になって下記式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環は、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R2およびR3は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基である。
前記式(II)中、
R11およびR12は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜6の低級アルキル基であり、
X1およびX2は、互いに独立して、OまたはNHを意味し、
nは、2〜6の整数であり、
R13は、炭素数1〜6の低級アルキル基であり、
xは、0.1〜9であり、
yは、91〜99.9であり、
R2およびR3は、印aの炭素原子と印bの炭素原子と一緒になって下記式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環は、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R4およびR5は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基であるか、
または、
R3およびR4は、印bの炭素原子と印cの炭素原子と一緒になって下記式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環は、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R2およびR5は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基であるか、
または、
R4およびR5は、印cの炭素原子と印dの炭素原子と一緒になって下記式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環は、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R2およびR3は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基である。
【化16】
【請求項2】
式(I)において、R2およびR3が、印aの炭素原子と印bの炭素原子と一緒になって式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環が、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R4およびR5が、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基であり、
式(II)において、R2およびR3が、印aの炭素原子と印bの炭素原子と一緒になって式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環が、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R4およびR5が、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基である請求項1に記載のキット。
【請求項3】
式(I)において、R1が、炭素数1〜6の低級アルキル基である請求項2に記載のキット。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のキットに紫外線を照射し、その後、シアン化物イオンを含む検体を混合して、生じる蛍光を測定することによりシアン化物イオンを検出する方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載のキットと、シアン化物イオンを含む検体とを混合して、その後、紫外線を照射し、生じる蛍光を測定することによりシアン化物イオンを検出する方法。
【請求項6】
一般式(II)で表される化合物またはその塩。
【化17】
前記式(II)中、
R11およびR12は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜6の低級アルキル基であり、
X1およびX2は、互いに独立して、OまたはNHを意味し、
nは、2〜6の整数であり、
R13は、炭素数1〜6の低級アルキル基であり、
xは、0.1〜9であり、
yは、91〜99.9であり、
R2およびR3は、印aの炭素原子と印bの炭素原子と一緒になって下記式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環は、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R4およびR5は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基であるか、
または、
R3およびR4は、印bの炭素原子と印cの炭素原子と一緒になって下記式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環は、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R2およびR5は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基であるか、
または、
R4およびR5は、印cの炭素原子と印dの炭素原子と一緒になって下記式(i)〜(ix)で表される環を形成し、前記環は、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基および炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1以上で置換されていてもよく、R2およびR3は、互いに独立して、水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基、炭素数1〜6の低級アルコキシ基、アミノ基または炭素数1〜6の低級アルキルアミノ基である。
【化18】
【図1】
【図2(a)】
【図2(b)】
【図2(c)】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図4(c)】
【図4(d)】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図5(c)】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図8(a)】
【図8(b)】
【図8(c)】
【図8(d)】
【図2(a)】
【図2(b)】
【図2(c)】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図4(c)】
【図4(d)】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図5(c)】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図8(a)】
【図8(b)】
【図8(c)】
【図8(d)】
【公開番号】特開2012−2658(P2012−2658A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137589(P2010−137589)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】
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