説明

シアン化物非含有銀系メッキ浴、メッキ体及びメッキ方法

【課題】 浴中での銀イオンの安定性が改善され、十分な錯化力が得られるとともに、生産コストを低減できる、実用性に優れたシアン化物非含有銀系メッキ浴を提供することにある。
【解決手段】 本発明のシアン化物非含有銀系メッキ浴は、銀塩を含む可溶性塩と、下記一般式(I)等でそれぞれ示される化合物からなる群より選ばれた1種以上のスルフィド
系化合物とを含有する。
一般式(I):
【化1】


(式中、nは2〜4の整数を表す。R1及びR2は同一又は異なって、C13アルキル又は水酸基が置換してもよいC26アルキレン基を表す。Mは、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アミンを表す。)で示される化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シアン化物非含有銀系メッキ浴、メッキ体及びメッキ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の銀系メッキ浴として、浴中に銀イオンが溶解した銀メッキ浴や、銀イオンの他に銀イオン以外の金属イオンをさらに含有した銀合金メッキ浴が知られている。銀合金メッキ浴は、一般に、銀イオンの相手方である金属イオンをキレートするための錯化剤を含有している。
【0003】
錯化剤を含有する従来の銀系メッキ浴として、シアン化物やチオ尿素を含有するメッキ浴が知られている。シアン化合物を含有するシアン浴は、銀−スズ合金メッキ浴をはじめとする銀合金メッキ浴として好ましく用いられている。
しかし、シアン浴は、毒性が強く、特別な廃水処理が必要な上に、アルカリ性領域でしか使えないために、相手金属の種類が限定される、或いは用途が限定される等のデメリットがある。
【0004】
そこで、強酸性領域をも含む広いpH領域でも、浴中で銀イオンが安定して溶解し得る銀系メッキ浴として、スルフィド基を有するスルフィド系化合物を錯化剤として含有するメッキ浴が既に提案されている(例えば、特許文献1乃至4参照)。
このうち、特許文献1及び4には、一分子中に複数のスルフィド基を有する化合物を錯化剤として用いることが示されている。また、特許文献2及び3には、2つのスルフィド基を有しかつ末端基としてスルホン酸基を有する化合物を置換型無電解メッキ液において錯化剤として用いることが示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−328286号公報
【特許文献2】特開2000−309876号公報
【特許文献3】特開2000−309875号公報
【特許文献4】特開平11−269691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来のスルフィド系化合物からなる錯化剤は、実用化は可能であるものの、浴中での銀イオンに対して十分な錯化力が得られない、水溶性が低いために高濃度の銀イオンを用いる場合に十分な量をメッキ液に添加できない、錯化剤の原料がコスト高である等の問題が生じる。
【0007】
本発明の目的は、浴中での銀イオンの安定性が改善され、十分な錯化力が得られるともに、生産コストを低減できる、実用性に優れたシアン化物非含有銀系メッキ浴を提供することにある。
また、本発明の目的は、これを用いたメッキ体及びメッキ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のシアン化物非含有銀系メッキ浴は、銀塩を含む可溶性塩と、下記一般式(I)
、(II)及び(III)でそれぞれ示される化合物からなる群より選ばれた1種以上のスルフ
ィド系化合物とを含有する。
一般式(I):
【0009】
【化1】

(式中、nは2〜4の整数を表す。R1及びR2は同一又は異なって、C13アルキル又は水酸基が置換してもよいC26アルキレン基を表す。Mは、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アミンを表す。)で示される化合物、
一般式(II):
【0010】
【化2】

(式中、R1、R2及びR3は同一又は異なって、C13アルキル又は水酸基が置換してもよいC26アルキレン基を表す。A、B及びCは同一又は異なって、水酸基、カルボン酸又はその塩、スルホン酸又はその塩、ホスホン酸又はその塩、或いは置換又は非置換アミン−N(R4)(R5)又は−N(R6)を表す。「塩は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アミンを表す。R4及びR5は同一又は異なって、水素又はC15アルキルを表し、R6は、水素又は1〜3個の水酸基が置換したC15アルキル基を表す。」)で示される化合物、及び、
一般式(III):
【0011】
【化3】

(式中、R1、R2、R3及びR4は同一又は異なって、C13アルキル又は水酸基が置換してもよいC26アルキレン基を表す。A、B、C及びDは同一又は異なって、水酸基、カルボン酸又はその塩、スルホン酸又はその塩、ホスホン酸又はその塩、或いは置換又は非置換アミン−N(R4)(R5)又は−N(R6)を表す。「塩は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アミンを表す。R4及びR5は同一又は異なって、水素又はC15アルキルを表し、R6は、水素又は1〜3個の水酸基が置換したC15アルキル基を表す。」)で示される化合物。
【0012】
また、本発明のシアン化物非含有銀系メッキ浴は、少なくとも一般式(I)の化合物を
含有するとともに、一般式(I)の化合物は、下記式(IV)及び(V)でそれぞれ示される化合物の少なくとも一方であっても良い。
式(IV):
【0013】
【化4】

で示される化合物、及び、
式(V):
【0014】
【化5】

で示される化合物。
【0015】
さらに、本発明のシアン化物非含有銀系メッキ浴は、可溶性塩が、銀以外の金属の金属塩をさらに含むとともに、前記金属塩が、スズ、ビスマス、インジウム、鉛、銅、亜鉛、ニッケル、金、パラジウム及び白金からなる群から選択された1種以上の金属であってもよい。
【0016】
また、本発明のシアン化物非含有銀系メッキ浴は、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤及び両性界面活性剤の少なくとも1種の界面活性剤をさらに含有してもよい。
さらに、本発明のシアン化物非含有銀系メッキ浴は、酸化防止剤をさらに含有してもよい。
【0017】
本発明のメッキ体は、被メッキ体が本発明のシアン化物非含有銀系メッキ浴を用いてメッキされてなる。被メッキ体は、銅系素材で構成された部分を有する電子部品であっても良い。
本発明のメッキ方法は、本発明のシアン化物非含有銀系メッキ浴を用いて、被メッキ体にメッキを施すステップを含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、一般式(I)、(II)及び(III)でそれぞれ示される化合物からなる群より選ばれた1種以上を錯化剤として含有した結果、浴中での銀イオンの安定性に優れたシアン化物非含有銀系メッキ浴が得られる。また、このような錯化剤を含有したことで、強酸性を含む広いpH領域においても十分な錯化力が得られるとともに、初期段階においてのみでなく比較的長期間経過した後においても優れた錯化力を保持できる。
【0019】
さらに、このような錯化剤は、従来のスルフィド系化合物に比べ安価に入手できるため、従来のスルフィド系化合物に比べ、不純物や分解物の混入が少なく高純度で入手することができ、メッキ浴の建浴において上述したような品質又は性能を確保することができるため、メッキ浴の生産コストを低減できる。
【0020】
また、本発明によれば、銀イオン安定性、錯化力に優れたシアン化物非含有銀系メッキ浴を用いることで、被メッキ体に対し効率的にメッキを施すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明のシアン化物非含有銀系メッキ浴は、シアン化物を含有しない銀系メッキ浴であって、可溶性塩と、錯化剤としてのスルフィド系化合物とを含有する。
可溶性塩は、浴中で1価の銀イオンを生成する可溶性の銀塩(以下、可溶性銀塩ともいう)を少なくとも含むが、難溶性塩を排除するものではない。
【0022】
可溶性銀塩としては、硫酸銀、亜硫酸銀、炭酸銀、硝酸銀、ホウフッ化銀、スルファミン酸銀、酸化銀等の無機酸銀塩や、スルホコハク酸銀、有機スルホン酸銀、クエン酸銀、酒石酸銀、グルコン酸銀、シュウ酸銀等の有機酸銀塩などが使用でき、また、本来難溶性塩であるが、スルフィド系化合物などの作用によりある程度の溶解性を確保できる塩化銀なども使用できる。
【0023】
有機スルホン酸銀としては、メタンスルホン酸銀、エタンスルホン酸銀、プロパンスルホン酸銀、2−プロパンスルホン酸銀、ブタンスルホン酸銀、2−ブタンスルホン酸銀、ペンタンスルホン酸銀、2−ヒドロキシエタン−1−スルホン酸銀、2−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸銀、2−ヒドロキシブタン−1−スルホン酸銀、2−ヒドロキシペンタンスルホン酸銀、p−トルエンスルホン酸銀、p−フェノールスルホン酸銀等を例示でき、なかでも、メタンスルホン酸銀、エタンスルホン酸銀、2−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸銀、フェノールスルホン酸銀、クエン酸銀などが好ましい。
【0024】
また、可溶性塩は、銀以外の金属の金属塩をさらに含むものであってもよい。銀以外の金属としては、スズ、ビスマス、インジウム、鉛、銅、亜鉛、ニッケル、金、パラジウム及び白金が挙げられ、これら銀以外の金属の銀塩は、単独又は組み合わせて用いてもよい。なお、銀以外の好ましい金属としては、スズ、銅、金、パラジウム、白金が挙げられ、より好ましい金属としては、スズ、銅が挙げられる。
【0025】
当該可溶性銀塩の金属塩換算の含有量は、0.0001〜200g/Lであり、好ましくは0.1〜80g/Lである。
【0026】
錯化剤としては、下記一般式(I)、(II)及び(III)でそれぞれ示される化合物からなる群より選ばれた1種以上が用いられる。
一般式(I):
【0027】
【化6】

(式中、nは1〜4の整数を表す(なお、n=1の場合は、電気メッキ浴としてのみ用られ、n=2〜4の場合は、電気メッキ浴及び無電解メッキ浴のいずれにも用いることができる)。R1及びR2は同一又は異なって、C13アルキル又は水酸基が置換してもよいC26アルキレン基を表す。Mは、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アミンを表す。)で示される化合物、
一般式(II):
【0028】
【化7】

(式中、R1、R2及びR3は同一又は異なって、C13アルキル又は水酸基が置換してもよいC26アルキレン基を表す。A、B及びCは同一又は異なって、水酸基、カルボン酸又はその塩、スルホン酸又はその塩、ホスホン酸又はその塩、或いは置換又は非置換アミン−N(R4)(R5)又は−N(R6)を表す。「塩は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アミンを表す。R4及びR5は同一又は異なって、水素又はC15アルキルを表し、R6は、水素又は1〜3個の水酸基が置換したC15アルキル基を表す。」)で示される化合物、及び、
一般式(III):
【0029】
【化8】

(式中、R1、R2、R3及びR4は同一又は異なって、C13アルキル又は水酸基が置換してもよいC26アルキレン基を表す。A、B、C及びDは同一又は異なって、水酸基、カルボン酸又はその塩、スルホン酸又はその塩、ホスホン酸又はその塩、或いは置換又は非置換アミン−N(R4)(R5)又は−N(R6)を表す。「塩は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アミンを表す。R4及びR5は同一又は異なって、水素又はC15アルキルを表し、R6は、水素又は1〜3個の水酸基が置換したC15アルキル基を表す。」)で示される化合物。
【0030】
これらの化合物において、C13アルキルとしては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピルが挙げられる。
【0031】
26アルキレン基としては、エチレン、トリメチレン、プロピレン、ブチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、3,3−ジメチルトリメチレン、ヘキサメチレン基などの直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基等を例示でき、特に、プロピレン、ブチレン基等のC34アルキレン基がより好ましい。
【0032】
有機アミンとしては、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等のアルキルアミン類を例示できる。
【0033】
15アルキルとしては、上記C13アルキルのほか、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基等を例示できる。
【0034】
15アルキル基としては、上記C15アルキルのほか、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等を例示できる。
【0035】
また、一般式(I)乃至(III)の化合物において、R14がプロピレン基である化合物は、特に銀系メッキ浴の安定化に優れる点で好ましい。
【0036】
一般式(I)乃至(III)の化合物は、塩基の存在下、メルカプタンとハロゲン化物を常法で反応させることにより得られる。例えば、式(I)においてn=2、R1〜2がプロピレン、MがNaである化合物は、1モルの2,2’−チオジエタンチオールと2モルの3−クロロプロパンスルホン酸ナトリウムを、2モルの水酸化ナトリウムの存在下、水、アルコール等の溶媒中で加熱することで得ることができる。
【0037】
また、本発明のシアン化物非含有銀系メッキ浴は、ベース酸をさらに含有するのが好ましい。
【0038】
ベース酸としては、有機酸、無機酸、又はこれらの塩が挙げられる。
有機酸としては、排水処理が比較的容易なアルカンスルホン酸、アルカノールスルホン酸、芳香族スルホン酸等の有機スルホン酸や、脂肪族カルボン酸が好ましい。
【0039】
無機酸としては、ホウフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸、スルファミン酸、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸等が挙げられる。
これらの酸又はそれらの塩は、単用又は併用でき、その含有量は、浴1Lを基準として、0.1〜400g/Lであり、好ましくは20〜250g/Lである。
【0040】
アルカンスルホン酸としては、化学式Cn2n+1SO3H(例えば、n=1〜5、好ましくは1〜3)で示されるものが使用でき、具体的には、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、2−プロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、2−ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸などの外、ヘキサンスルホン酸、デカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸などが挙げられる。
【0041】
アルカノールスルホン酸としては、化学式Cm2m+1-CH(OH)-Cp2p-SO3H(例えば、m=0〜6、p=1〜5)で示されるものが使用でき、具体的には、2−ヒドロキシエタン−1−スルホン酸、2−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸、2−ヒドロキシブタン−1−スルホン酸、2−ヒドロキシペンタン−1−スルホン酸などのほか、1−ヒドロキシプロパン−2−スルホン酸、3−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸、4−ヒドロキシブタン−1−スルホン酸、2−ヒドロキシヘキサン−1−スルホン酸、2−ヒドロキシデカン−1−スルホン酸、2−ヒドロキシドデカン−1−スルホン酸などが挙げられる。
【0042】
芳香族スルホン酸としては、ベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸などが挙げられ、より具体的には、1−ナフタレンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、p−フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、スルホサリチル酸、ニトロベンゼンスルホン酸、スルホ安息香酸、ジフェニルアミン−4−スルホン酸などが挙げられる。
【0043】
脂肪族カルボン酸としては、一般に、炭素数1〜6のカルボン酸が使用できる。具体的には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、スルホコハク酸、トリフルオロ酢酸などが挙げられる。
【0044】
本発明のシアン化物非含有銀系メッキ浴は、目的に応じて、公知の界面活性剤、酸化防止剤、平滑剤、光沢剤、半光沢剤、pH調整剤、緩衝剤、防腐剤などの各種添加剤をさらに含有してもよい。これらの添加濃度は、バレルメッキ、ラックメッキ、高速連続メッキ、ラックレスメッキ、無電解メッキ等に対応して、任意に調整、選択できる。本発明のシアン化物非含有銀系メッキ浴は、常法により調整することができる。
【0045】
界面活性剤は、主として析出する銀皮膜の緻密性、平滑性、密着性などを改善するために添加され、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン系界面活性剤及びアニオン系界面活性剤の1種以上を使用できる。
その添加量は0.01〜100g/L、好ましくは0.1〜50g/Lである。
【0046】
ノニオン系界面活性剤の具体例としては、C1〜C20アルカノール、フェノール、ナフトール、ビスフェノール類、(ポリ)C1〜C25アルキルフェノール、(ポリ)アリールアルキルフェノール、C1〜C25アルキルナフトール、C1〜C25アルコキシル化リン酸又はその塩、ソルビタンエステル、ポリアルキレングリコール、C1〜C22脂肪族アミン、C1〜C22脂肪族アミドなどにエチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を2〜300モル付加縮合させたものや、C1〜C25アルコキシル化リン酸又はその塩などが挙げられる。
【0047】
エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを付加縮合させるC1〜C20アルカノールとしては、メタノール、エタノール、n−ブタノール、t−ブタノール、n−ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ラウリルアルコール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、ステアリルアルコール、エイコサノール、オレイルアルコール、ドコサノールなどが挙げられる。ビスフェノール類としては、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールFなどが挙げられる。(ポリ)C1〜C25アルキルフェノールとしては、モノ、ジ、若しくはトリアルキル置換フェノール、例えば、p−メチルフェノール、p−ブチルフェノール、p−イソオクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−ヘキシルフェノール、2,4−ジブチルフェノール、2,4,6−トリブチルフェノール、ジノニルフェノール、p−ドデシルフェノール、p−ラウリルフェノール、p−ステアリルフェノールなどが挙げられる。アリールアルキルフェノールとしては、2−フェニルイソプロピルフェノール、クミルフェノール、(モノ、ジ又はトリ)スチレン化フェノール、(モノ、ジ又はトリ)ベンジルフェノールなどが挙げられる。C1〜C25アルキルナフトールのアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシルなどが挙げられ、ナフタレン核の任意の位置にあって良い。ポリアルキレングリコールとしては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン・コポリマーなどが挙げられる。
【0048】
C1〜C25アルコキシル化リン酸又はその塩は、下記の一般式(a)で表されるものである。
Ra・Rb・(MO)P=O (a)
(式(a)中、Ra及びRbは同一又は異なるC1〜C25アルキル基を表す。但し、一方が水素であっても良い。Mは、水素又はアルカリ金属を表す。)
【0049】
ソルビタンエステルとしては、モノ、ジ又はトリエステル化した1,4−、1,5−又は3,6−ソルビタン、例えばソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンジオレエート、ソルビタン混合脂肪酸エステルなどが挙げられる。C1〜C22脂肪族アミンとしては、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、牛脂アミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミンなどの飽和及び不飽和脂肪酸アミンなどが挙げられる。C1〜C22脂肪族アミドとしては、プロピオン酸、酪酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸、ヤシ油脂肪酸、牛脂脂肪酸などのアミドが挙げられる。
【0050】
さらに、ノニオン系界面活性剤としては、
R1N(R2)2=O
(式中、R1は、C5〜C25アルキル基又はRCONHR3(R3はC1〜C5アルキレン基を表す。R2は、同一又は互いに異なるC1〜C5アルキル基を表す。)などで示されるアミンオキシドを用いることができる。
【0051】
カチオン系界面活性剤としては、下記の一般式(b)で表される第4級アンモニウム塩
(R1・R2・R3・R4N)+・X− (b)
(式(b)中、Xは、ハロゲン基、ヒドロキシル基、C1〜C5アルカンスルホン酸基又は硫酸を表す。R1、R2、R3及びR4は、同一又はそれぞれ異なってもよく、C1〜C20アルキル、アリール又はベンジル基を表す。)又は下記一般式(c)で表されるピリジニウム塩などが挙げられる。
R6−(C5H4N−R5)+・X− (c)
(式(c)中、C5H4Nはピリジン環を表す。Xはハロゲン基、ヒドロキシル基、C1〜C5アルカンスルホン酸基又は硫酸を表す。R5はC1〜C20アルキル基を表す。R6は、水素又はC1〜C10アルキル基を表す。)
【0052】
塩の形態のカチオン系界面活性剤の例としては、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、ラウリルジメチルエチルアンモニウム塩、オクタデシルジメチルエチルアンモニウム塩、ジメチルベンジルラウリルアンモニウム塩、セチルジメチルベンジルアンモニウム塩、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム塩、トリメチルベンジルアンモニウム塩、トリエチルベンジルアンモニウム塩、ジメチルジフェニルアンモニウム塩、ベンジルジメチルフェニルアンモニウム塩、ヘキサデシルピリジニウム塩、ラウリルピリジニウム塩、ドデシルピリジニウム塩、ステアリルアミンアセテート、ラウリルアミンアセテート、オクタデシルアミンアセテートなどが挙げられる。
【0053】
アニオン系界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、{(モノ、ジ、トリ)アルキル}ナフタレンスルホン酸塩などが挙げられる。アルキル硫酸塩としては、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩としては、ポリオキシエチレン(EO5)ノニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(EO15)ドデシルエーテル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩としては、ポリオキシエチレン(EO15)ノニルフェニルエーテル硫酸塩などが挙げられる。アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。また、{(モノ、ジ、トリ)アルキル}ナフタレンスルホン酸塩としては、ナフタレンスルホン酸塩、ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物などが挙げられる。
【0054】
両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン、イミダゾリンベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸などが挙げられる。また、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドとアルキルアミン又はジアミンとの縮合生成物の硫酸化物、或いはスルホン酸化付加物も使用できる。
【0055】
代表的なカルボキシベタイン、或いはイミダゾリンベタインは、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ミリスチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−ウンデシル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、2−オクチル−1−カルボキシメチル−1−カルボキシエチルイミダゾリニウムベタインなどが挙げられ、硫酸化及びスルホン酸化付加物としてはエトキシル化アルキルアミンの硫酸付加物、スルホン酸化ラウリル酸誘導体ナトリウム塩などが挙げられる。
【0056】
スルホベタインとしては、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアンモニウム−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、N−ココイルメチルタウリンナトリウム、N−パルミトイルメチルタウリンナトリウムなどが挙げられる。アミノカルボン酸としては、ジオクチルアミノエチルグリシン、N−ラウリルアミノプロピオン酸、オクチルジ(アミノエチル)グリシンナトリウム塩などが挙げられる。
【0057】
酸化防止剤は、浴中の金属イオンの空気酸化を防止する目的で添加され、アスコルビン酸又はその塩、エリソルビン酸又はその塩、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノンスルホン酸又はその塩、カテコールスルホン酸又はその塩、フェノールスルホン酸又はその塩等が挙げられる。酸化防止剤は、特に、銀−スズ合金のような銀合金メッキ浴を得る場合に特に有効である。
【0058】
平滑剤としては、β−ナフトール、β−ナフトール−6−スルホン酸、β−ナフタレンスルホン酸、ベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−ニトロベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、(o−、p−)メトキシベンズアルデヒド、バニリン、(2,4−、2,6−)ジクロロベンズアルデヒド、(o−、p−)クロロベンズアルデヒド、1−ナフトアルデヒド、2−ナフトアルデヒド、2(4)−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、2(4)−クロロ−1−ナフトアルデヒド、2(3)−チオフェンカルボキシアルデヒド、2(3)−フルアルデヒド、3−インドールカルボキシアルデヒド、サリチルアルデヒド、o−フタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、パラアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−バレルアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、グリオキサール、アルドール、スクシンジアルデヒド、カプロンアルデヒド、イソバレルアルデヒド、アリルアルデヒド、グルタルアルデヒド、1−ベンジリデン−7−ヘプタナール、2,4−ヘキサジエナール、シンナムアルデヒド、ベンジルクロトンアルデヒド、アミン−アルデヒド縮合物、酸化メシチル、イソホロン、ジアセチル、ヘキサンジオン−3,4、アセチルアセトン、ベンジリデンアセトン、3−クロロベンジリデンアセトン、sub.ピリジリデンアセトン、sub.フルフリジンアセトン、sub.テニリデンアセトン、4−(1−ナフチル)−3−ブテン−2−オン、4−(2−フリル)−3−ブテン−2−オン、4−(2−チオフェニル)−3−ブテン−2−オン、クルクミン、ベンジリデンアセチルアセトン、ベンザルアセトン、アセトフェノン、(2,4−、3,4−)ジクロロアセトフェノン、ベンジリデンアセトフェノン、2−シンナミルチオフェン、2−(ω−ベンゾイル)ビニルフラン、ビニルフェニルケトン、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、クロトン酸、プロピレン−1,3−ジカルボン酸、ケイ皮酸、(o−、m−、p−)トルイジン、(o−、p−)アミノアニリン、アニリン、(o−、p−)クロロアニリン、(2,5−、3,4−)クロロメチルアニリン、N−モノメチルアニリン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、N−フェニル−(α−、β−)ナフチルアミン、メチルベンズトリアゾール、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,3−ベンズトリアジン、イミダゾール、2−ビニルピリジン、インドール、キノリン、アニリン、フェナントロリン、ネオクプロイン、ピコリン酸、モノエタノールアミンとo−バニリンの反応物、ポリビニルアルコール、カテコール、ハイドロキノン、レゾルシン、ポリエチレンイミン、エチレンジアミンテトラ酢酸二ナトリウム、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0059】
また、ゼラチン、ポリペプトン、N−(3−ヒドロキシブチリデン)−p−スルファニル酸、N−ブチリデンスルファニル酸、N−シンナモイリデンスルファニル酸、2,4−ジアミノ−6−(2′−メチルイミダゾリル(1′))エチル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2′−エチル−4−メチルイミダゾリル(1′))エチル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2′−ウンデシルイミダゾリル(1′))エチル−1,3,5−トリアジン、サリチル酸フェニル、或いは、ベンゾチアゾール類も平滑剤として有効である。
【0060】
ベンゾチアゾール類としては、ベンゾチアゾール、2-メチルベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(メチルメルカプト)ベンゾチアゾール、2-アミノベンゾチアゾール、2-アミノ-6-メトキシベンゾチアゾール、2-メチル-5-クロロベンゾチアゾール、2-ヒドロキシベンゾチアゾール、2-アミノ-6-メチルベンゾチアゾール、2-クロロベンゾチアゾール、2,5-ジメチルベンゾチアゾール、6-ニトロ-2-メルカプトベンゾチアゾール、5-ヒドロキシ-2-メチルベンゾチアゾール、2-ベンゾチアゾールチオ酢酸などが挙げられる。
【0061】
pH調整剤としては、塩酸、硫酸等の各種の酸、アンモニア水、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の各種の塩基などが挙げられる。
緩衝剤としては、ホウ酸類、ホスフィン酸やホスホン酸、リン酸、トリポリリン酸などのリン酸類、シュウ酸、コハク酸などのジカルボン酸類、乳酸、酒石酸などのオキシカルボン酸類など塩化アンモニウム、硫酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0062】
防腐剤としては、ホウ酸、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、塩化ベンザルコニウム、フェノール、フェノールポリエトキシレート、チモール、レゾルシン、イソプロピルアミン、グアヤコールなどが挙げられる。
消泡剤としては、プルロニック界面活性剤、高級脂肪族アルコール、アセチレンアルコール及びそれらのポリアルコキシレートなどが挙げられる。
【0063】
本発明のメッキ体は、上記本発明のシアン化物非含有銀系メッキ浴を用いて被メッキ体がメッキされてなるものであり、被メッキ体としては、銅系素材で構成された部分を有する電子部品が挙げられる。そのような電子部品としては、例えば、プリント回路基板、半導体集積回路、抵抗、可変抵抗、コンデンサ、フィルタ、インダクタ、サーミスタ、水晶振動子、スイッチ、リード線などが挙げられる。なお、銅系素材とは、銅又は銅合金を材質とする素材をいう。
【0064】
本発明のメッキ方法は、上記本発明のシアン化物非含有銀系メッキ浴を用いて、被メッキ体にメッキを施すステップを含む。このステップでは、具体的に、シアン化物非含有銀系メッキ浴中に、被メッキ体を適当な時間浸漬することにより、被メッキ体表面に銀又は銀合金皮膜を形成させる。
【0065】
例えば、電気メッキを行う場合は、浴温を、一般には70℃以下、好ましくは10〜50℃程度にする。陰極電流密度は、メッキ浴の種類により多少の差異はあるが、一般に0.01〜150A/dm2程度、好ましくは0.1〜50A/dm2程度である。陰極としては、銀、銀合金、不溶性陽極等を用いることができる。
【0066】
また、置換銀メッキ行う場合は、浴のpHを8.0以下に調整し、このような浴中に、被メッキ体を1秒〜30分間程度浸漬し、所望の膜厚が得られるまでメッキ皮膜を析出させる。この場合、浴温は10℃〜80℃程度であるのが好ましく、また、メッキ時間は膜厚に依存して決定される。さらに、必要に応じて浴の撹拌を行うのが好ましい。
【実施例】
【0067】
以下、本発明の実施例について、具体的に説明する。
(実施例1)
下記組成で銀−スズ合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 1g/l
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 40g/l
メタンスルホン酸(遊離酸として) 120g/l
メチルナフトールポリエトキシレート(EO21) 2g/l
式(I)の化合物(n=2、R1=R2=プロピレン、M=Na) 12.4g/l
【0068】
(実施例2)
下記組成で銀−スズ合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.7g/l
硫酸第一スズ(Sn2+として) 20g/l
96%硫酸(遊離酸として) 150g/l
オクチルフェノールポリエトキシレート(EO17.5) 5g/l
ヘキサデシルジメチルベンジルアンモニウムメタンスルホネート 1g/l
β−ナフトール−6−スルホン酸 0.2g/l
式(I)の化合物(n=3、R1=R2=エチレン、M=K) 10g/l
【0069】
(実施例3)
下記組成で銀−スズ合金メッキ浴を建浴した。
2−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸銀(Ag+として) 3g/l
2−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸第一スズ(Sn2+として) 60g/l
2−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸(遊離酸として) 70g/l
ドデシルジメチルアミノ酢酸ベタイン 1g/l
ヘキサデシルジメチルベンジルアンモニウムエタンスルホネート 1g/l
ハイドロキノン 1g/l
式(I)の化合物(n=2、R1=R2=プロピレン、M=NH4) 38g/l
【0070】
(実施例4)
下記組成で銀−スズ合金メッキ浴を建浴した。
エタンスルホン酸銀(Ag+として) 5g/l
エタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 30g/l
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/l
グルコン酸 0.7mol/l
ポリエチレンイミン(分子量1.6万) 5g/l
ジエチル−β−ナフトールポリエトキシレート(EO19) 1g/l
カテコール 0.5g/l
式(II)の化合物(R13=エチレン、A〜C=OH) 32g/l
pH4.0(NaOHにて調整)
【0071】
(実施例5)
下記組成で銀−スズ合金メッキ浴を建浴した。
ホウフッ化銀(Ag+として) 10g/l
ホウフッ化第一スズ(Sn2+として) 20g/l
ホウフッ酸(遊離酸として) 130g/l
ホウ酸 30g/l
2−ウンデシル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシ
エチルイミダゾリニウムベタイン 10g/l
ドデシルジメチルベンジルアンモニウムメタンスルホネート 1g/l
メチルナフトールポリエトキシレート(EO17) 1g/l
式(II)の化合物(R13=プロピレン、A〜C=OH) 120g/l
【0072】
(実施例6)
下記組成で銀−ビスマス合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 20g/l
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 10g/l
メタンスルホン酸(遊離酸として) 150g/l
ポリエトキシレート(EO25)ポリプロポキシレート(PO25)
ブロックコポリマー 10g/l
メチルナフトールポリエトキシレート(EO21) 3g/l
オルトクロロベンズアルデヒド 0.1g/l
式(II)の化合物(R14=エチレン、A〜D=SO3K) 276g/l
【0073】
(実施例7)
下記組成で銀−インジウム合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 20g/l
硫酸インジウム(In3+として) 20g/l
メタンスルホン酸(遊離酸として) 120g/l
ポリビニルアルコール 7g/l
ジブチル−β−ナフトールポリエトキシレート(EO15) 2g/l
テトラブチルアンモニウムメタンスルホネート 2g/l
式(II)の化合物(R14=2−ヒドロキシプロピレン、A〜D=SO3K) 320g/l
【0074】
(実施例8)
下記組成で銀−錫合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 20g/l
メタンスルホン酸錫(Sn2+として) 20g/l
メタンスルホン酸(遊離酸として) 70g/l
ジスチレン化フェノールポリエトキシレート(EO30) 8g/l
ベンジルジメチルドデシルアンモニウムメタンスルホネート 1g/l
2−メルカプトベンゾチアゾール 0.2g/l
式(I)の化合物(n=1、R1〜R2=プロピレン、M=Na) 275g/l
【0075】
(実施例9)
下記組成で銀−銅合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 20g/l
硫酸第二銅(Cu2+として) 20g/l
96%硫酸(遊離酸として) 100g/l
ビスフェノールFポリエトキシレート(EO23) 5g/l
ジブチルフェノールポリエトキシレート(EO16) 1g/l
2,2'−ビピリジル 0.03g/l
レゾルシン 0.3g/l
式(III)の化合物(R14=プロピレン、A〜D=SO3K) 300g/l
【0076】
(実施例10)
下記組成で銀−亜鉛合金メッキ浴を建浴した。
硝酸銀(Ag+として) 20g/l
硫酸亜鉛(Zn2+として) 20g/l
96%硫酸(遊離酸として) 100g/l
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン 2g/l
β−ナフトール 1g/l
式(II)の化合物(R13=2−ヒドロキシプロピレン、A〜C=SO3K)314g
/l
【0077】
(実施例11)
下記組成で銀−ニッケル合金メッキ浴を建浴した。
硝酸銀(Ag+として) 20g/l
硫酸ニッケル(Ni2+として) 5g/l
96%硫酸(遊離酸として) 100g/l
p−メトキシベンジルトリブチルアンモニウムヒドロキシド 1.5g/l
2,6−ジヒドロキシナフタレン 1g/l
式(III)の化合物(R14=プロピレン、A〜D=SO3Na) 273g/l
【0078】
(実施例12)
下記組成で銀−パラジウム合金メッキ浴を建浴した。
エタンスルホン酸銀(Ag+として) 10g/l
メタンスルホン酸パラジウム(Pb2+として) 1g/l
2−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸(遊離酸として) 100g/l
ポリビニルピロリドン 5g/l
ジベンジルフェノールポリエトキシレート(EO28) 8g/l
エチレンジアミンテトラ酢酸二ナトリウム 1g/l
式(III)の化合物(R14=2−ヒドロキシプロピレン、A〜D=OH)
128g/l
【0079】
(実施例13)
下記組成で銀−金合金メッキ浴を建浴した。
2−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸銀(Ag+として) 10g/l
2−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸金(Au+として) 1g/l
2−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸(遊離酸として) 100g/l
ジドデシルフェノールポリエトキシレート(EO32) 1g/l
オクチルジ(アミノエチル)グリシンナトリウム 1.5g/l
イミダゾール 0.5g/l
式(II)の化合物(R13=プロピレン、A〜C=SO3Na) 121g/l
【0080】
(実施例14)
下記組成で銀メッキ浴を建浴した。
酒石酸銀(Ag+として) 20g/l
酒石酸 100g/l
ヤシ油アミンポリエトキシレート(EO24) 1g/l
2−オクチル−1−カルボキシメチル−1−カルボキシエチル
イミダゾリニウムベタイン 5g/l
式(II)の化合物(R13=プロピレン、A〜C=SO3Na) 242g/l
pH=4.0(アンモニアにて調整)
【0081】
(実施例15)
下記組成で銀−スズ−銅合金メッキ浴を建浴した。
2−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸銀(Ag+として) 1g/l
エタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 50g/l
メタンスルホン酸銅(Cu2+) 0.2g/l
メタンスルホン酸(遊離酸として) 120g/l
ビスフェノールFポリエトキシレート(EO15) 5g/l
トリスチレン化フェノールポリエトキシレート(EO30) 3g/l
式(I)の化合物(n=2、R12=プロピレン、M=Na) 12g/l
【0082】
(実施例16)
下記組成で銀−鉛合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 10g/l
メタンスルホン酸鉛(Pb2+として) 10g/l
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/l
メチル−β−ナフトールポリエトキシレート(EO21) 12g/l
ポリペプトン 1g/l
式(II)の化合物(R13=2−ヒドロキシプロピレン、A〜C=OH) 85g/l
【0083】
(実施例17)
下記組成で銀メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 1g/l
メタンスルホン酸(遊離酸として) 50g/l
ジブチル−β−ナフトールポリエトキシレート(EO21) 1g/l
式(III)の化合物(R14=プロピレン、A〜D=N(CH32)15g/l
【0084】
(実施例18)
下記組成で銀−スズ合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.1g/l
硫酸第一スズ(Sn2+として) 30g/l
96%硫酸(遊離酸として) 70g/l
オクチルフェノールポリエトキシレート(EO15) 5g/l
ヘキサデシルジメチルベンジルアンモニウムメタンスルホネート 1g/l
ジブチルフェノールポリエトキシレート(EO17) 0.5g/l
β−ナフトール−6−スルホン酸 0.2g/l
式(II)の化合物(R13=プロピレン、A〜C=SO3Na) 1.5g/l
次亜リン酸 15g/l
【0085】
(比較例1)
下記組成で銀−スズ合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 1g/l
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 40g/l
メタンスルホン酸(遊離酸として) 120g/l
メチルナフトールポリエトキシレート(EO21) 2g/l
チオ尿素 2.2g/l
【0086】
(比較例2)
下記組成で銀−スズ合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 1g/l
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 40g/l
メタンスルホン酸(遊離酸として) 120g/l
メチルナフトールポリエトキシレート(EO21) 2g/l
HOCH2CH2-(S-CH2CH2)2-S-CH2CH2OH 7g/l
【0087】
(比較例3)
下記組成で銀−スズ合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 1g/l
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 40g/l
メタンスルホン酸(遊離酸として) 120g/l
メチルナフトールポリエトキシレート(EO21) 2g/l
HOCH2CH2CH2-S-CH2CH2-S-CH2CH2CH2OH 10g/l
【0088】
(比較例4)
下記組成で銀メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 1g/l
メタンスルホン酸(遊離酸として) 50g/l
ジブチル−β−ナフトールポリエトキシレート(EO21) 1g/l
チオ尿素 2.2g/l
【0089】
(比較例5)
下記組成で銀−スズ合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.1g/l
硫酸第一スズ(Sn2+として) 30g/l
96%硫酸 70g/l
オクチルフェノールポリエトキシレート(EO15) 5g/l
ヘキサデシルジメチルベンジルアンモニウムメタンスルホネート 1g/l
ジブチルフェノールポリエトキシレート(EO17) 0.5g/l
β−ナフトール−6−スルホン酸 0.2g/l
式(I)の化合物(n=1,R12=エチレン,M=Na) 1g/l
次亜リン酸 15g/l
【0090】
シアン化物を含まない銀系メッキ浴では、なによりも浴が分解して銀が析出し易いため、浴の安定性がきわめて重要である。したがって、下記試験では、第一に浴の経時変化を観察して浴が実用的な安定性を保持するか否かを調べた(メッキ浴の経時変化試験)。また、メッキ浴から得られる電着皮膜における銀の共析率を測定するとともに(銀共析率の測定試験)、当該電着皮膜の異常の有無(即ち、皮膜外観が実用レベルにあるか否か)の確認試験を行った(メッキ皮膜の外観試験)。
【0091】
《メッキ浴の経時変化試験》
上記実施例及び比較例の各メッキ浴を1Lビーカーに収容し、これらを50℃に恒温設定したウォーターバス中で1008時間に亘って加温保持し、各メッキ液の劣化(分解)状態の度合を観測することによって、経時安定性を目視評価した。表1にその結果を示す。
【0092】
なお、表1において、経時安定性の評価基準は下記の通りである。
○:1008時間経過時点でメッキ浴が安定であって、透明度が高く、初期建浴時に比 べて何ら変化がなかった。
△:168時間から504時間までの間に濁りや沈殿が発生し、メッキ浴が分解した。
×:168時間までに濁りや沈殿が発生し、メッキ浴が分解した。
【0093】
《銀共析率の測定試験及びメッキ皮膜の外観試験》
実施例1〜16及び比較例1〜3について、電流密度の条件を変えて電気メッキを行い、浴から得られた電着皮膜中の銀の共析率をICP発光分析装置(蛍光X線膜厚計でも可)を用いて測定した。また、得られた電着皮膜の外観を目視で観察して、ヤケ(コゲ)、デンドライト、或は粉末状化などの異常の有無を確認し、実用的なメッキ皮膜としての必要最低限のレベルを備えているか否かを評価した。
【0094】
また、実施例17〜18及び比較例4〜5については、各無電解メッキ浴を65℃に保持し、VLP(電解銅箔の一種)によりパターン形成したTAB(テープ自動ボンディング)のフィルムキャリアの試験片を10分間浸漬して、無電解銀又は銀−スズ合金メッキを施した。
【0095】
そして、得られた各メッキ皮膜について、皮膜中の銀の組成比(%)を測定するとともに、無電解メッキ皮膜については皮膜の膜厚(μm)を機器で測定した。また、その外観を目視観察してシミ、色ムラの有無を調べた。表1にその結果を示す。
【0096】
なお、表1において、外観試験の評価基準は下記の通りである。
○:皮膜外観に異状がなく、白色外観で、金属光沢を呈し実用レベルを保持していた。
△:粉末状化などが認められ、皮膜外観は実用レベルから劣った。
×:ヤケ、デンドライトなどが顕著に認められ、皮膜外観はきわめて劣った。又は茶色、褐色などのシミ、色ムラが見られた。
【0097】
表1から明らかなように、スルフィド系化合物として、式(I)でn=1の場合の化合
物を用いた場合において、実施例8のように電気メッキ浴として調製した場合は、浴の安定性及び電着皮膜の外観のいずれも良好な結果が得られたが、比較例5のように無電解メッキ浴として調製した場合は満足できる結果は得られなかった。
【0098】
【表1】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀塩を含む可溶性塩と、
一般式(I):
【化1】

(式中、nは2〜4の整数を表す。R1及びR2は同一又は異なって、C13アルキル又は水酸基が置換してもよいC26アルキレン基を表す。Mは、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アミンを表す。)で示される化合物、
一般式(II):
【化2】

(式中、R1、R2及びR3は同一又は異なって、C13アルキル又は水酸基が置換してもよいC26アルキレン基を表す。A、B及びCは同一又は異なって、水酸基、カルボン酸又はその塩、スルホン酸又はその塩、ホスホン酸又はその塩、或いは置換又は非置換アミン−N(R4)(R5)又は−N(R6)を表す。「塩は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アミンを表す。R4及びR5は同一又は異なって、水素又はC15アルキルを表し、R6は、水素又は1〜3個の水酸基が置換したC15アルキル基を表す。」)で示される化合物、及び、
一般式(III):
【化3】

(式中、R1、R2、R3及びR4は同一又は異なって、C13アルキル又は水酸基が置換してもよいC26アルキレン基を表す。A、B、C及びDは同一又は異なって、水酸基、カルボン酸又はその塩、スルホン酸又はその塩、ホスホン酸又はその塩、或いは置換又は非置換アミン−N(R4)(R5)又は−N(R6)を表す。「塩は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アミンを表す。R4及びR5は同一又は異なって、水素又はC15アルキルを表し、R6は、水素又は1〜3個の水酸基が置換したC15アルキル基を表す。」)で示される化合物からなる群より選ばれた1種以上のスルフィド系化合物と、
を含有するシアン化物非含有銀系メッキ浴。
【請求項2】
少なくとも一般式(I)の化合物を含有し、
一般式(I)の化合物は、
式(IV):
【化4】

で示される化合物、及び、
式(V):
【化5】

で示される化合物の少なくとも一方である、
請求項1に記載のシアン化物非含有銀系メッキ浴。
【請求項3】
可溶性塩は、銀以外の金属の金属塩をさらに含み、
前記金属塩は、スズ、ビスマス、インジウム、鉛、銅、亜鉛、ニッケル、金、パラジウム及び白金からなる群から選択された1種以上の金属である、
請求項1又は2に記載のシアン化物非含有銀系メッキ浴。
【請求項4】
ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤及び両性界面活性剤の少なくとも1種の界面活性剤をさらに含有する、請求項1から3のいずれか1項に記載のシアン化物非含有銀系メッキ浴。
【請求項5】
酸化防止剤をさらに含有する、請求項1から4のいずれか1項に記載のシアン化物非含有銀系メッキ浴。
【請求項6】
被メッキ体が請求項1から5のいずれか1項に記載のシアン化物非含有銀系メッキ浴を用いてメッキされてなる、メッキ体。
【請求項7】
被メッキ体は、銅系素材で構成された部分を有する電子部品である、請求項6に記載のメッキ体。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか1項に記載のシアン化物非含有銀系メッキ浴を用いて、被メッキ体にメッキを施すステップを含む、メッキ方法。




【公開番号】特開2007−46142(P2007−46142A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−234650(P2005−234650)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【出願人】(000197975)石原薬品株式会社 (83)
【出願人】(593002540)株式会社大和化成研究所 (29)
【Fターム(参考)】