説明

シェルター付建物

【課題】既存建物の一部の部屋をシェルターとすることにより、場所およびコストを削減して、多くの個人でも津波対策強度を自己の家に施すことが可能なシェルター付建物を提供する。
【解決手段】既存建物10の一部の部屋の柱・壁・床等開口以外は当該既存建物において所要の津波対策強度と気密性を有するものであり、これらを利用するか、既存建物10の一部の部屋で、柱・壁・床等躯体部分が所要の津波対策強度と気密性を有しない場合は、当該躯体に補強を施して津波対策強度と気密性を有するようにするものであり、災害非常時において、当該部屋の出入り口や窓等部屋の開口を、金属製の強度のある枠と、この枠内の開口面を閉鎖する強度のある金属製の止水板からなり、止水板は強度のある枠に対して引き圧により止水材を介在させて圧接させる閉鎖装置で気密に閉塞し、シェルター11とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、津波発生時においては、極めて短時間で内部に避難することができ、逃げ遅れて津波にまきこまれる危険性を解消することが可能であり、通常時には家屋の一部として利用することができるシェルターを有するシェルター付建物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2011年3月11日、宮城県牡鹿半島沖を震源として発生した東日本大地震は、日本の観測史上最大のマグニチュード(Mw)9.0を記録し、この地震により、場所によっては波高10m以上、最大遡上高40.5mにも上る大津波が発生し、東北地方と関東地方の太平洋沿岸部に壊滅的な被害をもたらした。
【0003】
この地震による被害者の中には、建物の倒壊など地震そのものに起因して生命をおとす被害者も多いが、この東日本大地震の例に見られるように、地震により発生した津波にのまれて生命を失う被害者も数多い。
【0004】
東日本大地震で大きな被害をもたらした津波について、専門家は、防潮堤などの対策の限界をはるかに超える大きさだったと分析している。しかし、想定外であろうと、なかろうと、災害から身の安全を守るすべは、必要不可欠である。
【0005】
現在、津波が発生したときには、自治体が予め指定した高台にある学校や公民館等の避難施設へと避難するのが一般的である。しかし、常に防災を心がけ避難に神経を尖らせることを求められ、避難警告の度に避難場所に避難する…などでは、一生に一度遭遇するかしないかの災害に対してはマンネリ化して現実に災害に遭遇した時に実行力は期待できない。
【0006】
また、津波の進行速度は非常に早いため、避難施設が海岸から離れている場合、海岸近くの住民の避難が間に合わず、津波にのまれてしまうおそれがあった。ところが、それにも拘らず、我が国においては、海岸近くに津波専用の避難所は殆ど存在していないのが実情である。
【0007】
しかも、避難施設は、避難施設周辺の多数の住民を避難させる目的で設けられているものではあるが、全ての住民の家屋から近い場所に設置するということは物理的に不可能である。そのため、家屋から避難施設が遠くなって、短時間で避難施設に到達できない住民が発生することは避けられない。特に、少ない住民が比較的広い範囲に点在している過疎地においては、短時間で避難施設に到達できない住民が多く発生し、住民が避難中に津波にのまれる危険性が高くなってしまう。
【0008】
更に、公共的避難施設は、多人数が避難する避難所であるために大掛かりな設備となって設置コストが嵩む上に、津波が発生しない通常時においては使用されないため、必要ではあるものの無駄が多い施設であることは否めない。
【0009】
下記特許文献1は、津波発生時においては、極めて短時間で内部に避難することができ、逃げ遅れて津波にまきこまれる危険性を解消することが可能であり、通常時には家屋の一部として利用することができる家屋付設式津波避難用シェルターとして提案されたもので、家屋に対して一体に付設されて該家屋内からの出入りが可能とされてなるシェルターであって、津波来襲時において、家屋からシェルターを分離させるための分離手段と、家屋から分離されたシェルターを密閉する密閉手段とを具備し、家屋から分離された状態において水に浮くことを特徴とするものである。
【特許文献1】特開2007−277998号公報
【0010】
この特許文献1では、津波来襲時において、家屋からシェルターを分離させるための分離手段は、家屋とシェルターとの間に介装された圧縮ばねと、通常時においては圧縮ばねとシェルターとの間に介装されて圧縮ばねの付勢力がシェルターに伝達されるのを防ぎ、津波来襲時においては圧縮ばねとシェルターとの間から外されて圧縮ばねの付勢力がシェルターに伝達されるようにするストッパーとから構成されているとする。
【0011】
また、シェルターの下方の地面にコンクリート基礎が設けられ、該コンクリート基礎とシェルターの間にはコンクリート基礎に係止されるアンカー部を有するベースが設けられ、該ベース内に前記圧縮ばねが収容されている。
【0012】
さらに、外部の空気を取り入れるためのパイプを上方に向けて出没可能に備えている。水に浮いた状態で推進するための推進力を付与する推進機構を有する。
【0013】
すなわち、前記特許文献1は、シェルターは外観形状は船のような形状となって水上を走行するのに適した形状となっており、シェルター内部は、キャンピングカーのように、コンパクトな空間内に生活に必要な多種の用品を機能的に配置していて、キャンピングカーの内部と同様の仕様とすることにより、狭い空間であっても便利で快適な避難生活をおくることができるとする。
【0014】
下記特許文献2は、迅速かつ容易に避難することができると共に、津波が引くまでの時間の呼吸に必要な空気を確実に確保することが可能で、且つ簡易、安価な津波シェルターとして提案されたものであり、地上に固定され一定の空間を取り囲む気密壁によって構成され、上記気密壁上に、人が上記気密壁により囲まれた空間内に出入り可能な開口部が設けられてなる津波シェルターにおいて、上記空間内に、津波によって内部に浸水しても空気が保たれる空気室が設けられてなる。
【特許文献2】特開平10−159388号公報
【0015】
図20、図21に示すように、特許文献2では、津波シェルターA1は、側面及び天井部を津波に呑まれても潰れたり破損したりすることのない程度に十分な強度を持たせた鉄製の気密壁1によって一体的に形成されている。上記気密壁1の側面1a上には、出入口2(開口部に相当)が設けられており、該出入口2には、人が出入りする際の安全性を考えて断面円形のパイプ状の開口枠3が取り付けられている。
【0016】
また、上記気密壁1の上記出入口2の対面である側面1b上には、換気窓、及び非常用出口としての窓4が設けられており、窓枠4aに沿って開閉可能となっている。また、上記出入口2の上端高さと上記窓4の上端高さは同じ高さに揃えられており、またその高さは上記気密壁1の天井部1cから十分下がった位置に設定されている。上記気密壁1は、その下端部の周囲を、地面に埋め込まれた基礎コンクリート6上に、津波に呑まれても流されることのないように固定部材5によって確実に固定されている。上記気密壁1の内部空間の内、上記出入口2の上端、及び上記窓4の上端よりも上の空間は、津波によって気密壁1の内部に浸水しても、内部に避難した所定の定員の人が数分間呼吸できるだけの空気が確実に保たれる空気室7を形成している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
前記特許文献1は、シェルターとしては、家屋に対して一体に付設されて該家屋内からの出入りが可能とされてなるものであって、このようなシェルターを設置する場所を必要とする。また、居住者が家屋とシェルターの間を行き来する際に通行するための通路としての連結空間を必要とする。
【0018】
さらに、特許文献1では、家屋からシェルターを分離させるための分離手段を設けなければならず、また、家屋から分離されたシェルターを密閉する密閉手段とを具備し、家屋から分離された状態において水に浮くことを特徴とするものであるが、どのようにして水に浮くことができる浮力を有するように設計されているかの具体的説明がなされていない。実現性が乏しいものである。
【0019】
前記特許文献2は、シェルター専用の施設を新たに場所を確保して、新規に設けるものであり、防空壕と同じく、小型の避難施設を庭等の近辺に設けるものにすぎない。日常において、住居として利用することは考えられていない。
【0020】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、既存建物を利用することで、既存建物の一部の部屋を比較的安価な工事費でシェルターとすることができ、これにより、場所およびコストを削減して、多くの個人でも津波対策強度を自己の家に施すことが可能なシェルター付建物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記目的を達成するため、請求項1記載の本発明は、既存建物の一部の部屋の柱・壁・床等開口以外は当該既存建物において所要の津波対策強度と気密性を有するものであり、これらを利用するともに災害非常時において、当該部屋の出入り口や窓等部屋の開口を、強度のある枠と、この枠内の開口面を閉鎖する強度のある止水板からなり、止水板は強度のある枠に対して引き圧により止水材を介在させて圧接させる閉鎖装置で気密に閉塞することを要旨とするものである。
【0022】
請求項2記載の本発明は、既存建物の一部の部屋で、柱・壁・床等躯体部分が所要の津波対策強度と気密性を有しない場合は、当該躯体に補強を施して津波対策強度と気密性を有するようにするものであり、災害非常時において、出入り口や窓等部屋の開口を、強度のある枠と、この枠内の開口面を閉鎖する強度のある止水板からなり、止水板は強度のある枠に対して引き圧により止水材を介在させて圧接させる閉鎖装置で気密に閉塞することを要旨とするものである。
【0023】
請求項1および請求項2記載の本発明によれば、既存建物の一部の部屋を当該部屋の出入り口や窓等部屋の開口を止水板により閉塞して、強度のある気密なシェルターとすることができ、シェルター内は、津波によって内部に浸水しても空気が保たれる空気室として、津波によって内部に浸水しても、内部に避難した所定の定員の人が数分間呼吸できるだけの空気が確実に保たれるように形成される。従って、津波が引くまでの間に必要な空気をシェルター内に確実に確保することができる。すなわち、瓶のふたをするように、当該部屋の出入り口や窓等部屋の開口を止水板により気密に閉塞して、強度のある気密空間を作り出すものである。
【0024】
請求項3記載の本発明は、引き圧は、強度のある枠と止水板とをパッチン錠にて締め付けて得ることを要旨とするものである。
【0025】
請求項3記載の本発明によれば、簡易かつ迅速に引き圧をかけて、精度の高い気密を得ることができるものとして、パッチン錠を選択したものであり、クレセント錠などとは異なり、しっかりとした止封を得ることができる。
【0026】
請求項4記載の本発明は、強度のある枠は、これに強度のある金属製の戸袋を一体形成することを要旨とするものである。
【0027】
請求項4記載の本発明によれば、開口はここから壊れ易いものであるが、そこに強度のある枠を施すことで、開口の補強が実現でき、しかも、この強度のある枠に強度のある金属製の戸袋を一体形成することで、より、開口の補強を高めることができる。また、強度のある枠は既存の窓や出入口の外側(若しくは内側)に設ける場合に、戸袋は既存の窓や出入口の空間の一部を占めるように設置することができ、これにより別途戸袋設置のスペースを確保しなくても、本発明の実現が可能となる。なお、既存の窓や出入口の空間の一部は戸袋設置のために常時閉鎖されてしまうこともあるが、日常の使用にはさほど支障を来さない。
【0028】
請求項5記載の本発明は、躯体に施す補強は、壁部分は、補強柱、補強梁、補強桟等を配設し、これに金属製の壁パネルを気密に貼設することを要旨とするものである。
【0029】
請求項5記載の本発明によれば、補強により壁部分を強度のある、かつ、気密性のものとすることができる。
【0030】
請求項6記載の本発明は、躯体に施す補強は、床もしくは天井部分は、補強大引き、補強根太を配設し、補強根太に金属製の床板を溶接で気密に貼設することを要旨とするものである。
【0031】
請求項6記載の本発明によれば、補強により床もしくは天井部分を強度のある、かつ、気密性のものとすることができる。
【0032】
請求項7記載の本発明は、止水板は、ハンガーレールに可動吊金物を介して該ハンガーレールの直交方向に変位可能に吊下げた引き戸タイプのものであることを要旨とするものである。
【0033】
請求項7記載の本発明によれば、引き戸タイプのものでもハンガーレールの直交方向に変位可能にしたので、止水板は強度のある枠に対して引き圧により止水材を介在させて圧接させる閉鎖装置で気密に閉塞することが可能となる。
【発明の効果】
【0034】
以上述べたように本発明のシェルター付建物は、既存建物を利用することで、既存建物の一部の部屋を比較的安価な工事費でシェルターとすることができ、これにより、場所およびコストを削減して、多くの個人でも津波対策強度を自己の家に施すことが可能なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明は、図1、図2に示すように、既存建物10の一部の部屋をシェルター11として構成するものである。
【0036】
既存建物10は、住居用、オフィス用、その他を問わず、その内部に区画された部屋を有するものであればよく、鉄筋コンクリート(RC)造、鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造、鉄骨(S)造、木造を問わず、また、階高も平屋の場合から高層の場合のすべてが対象となる。ただし、40m以上の階層部分を有する大型の高層建物で、津波に耐える強度を有する強度を有するものについては、その上部階自体が津波の避難場所として有効であるので、本発明の対象からは除く。
【0037】
前記既存建物10は、耐震構造と非耐震構造に分類され、また、津波に対する必要強度・崩壊状況は下記のようなものを想定して基準とする。
(建築物に対する津波の影響の想定)
・津波そのものの衝撃による崩壊
・水圧・水流による崩壊
・水流による基礎部の崩壊
・水流・水圧による建物の転倒
・浮力による建物の転倒・漂流
・水圧による浸水
・漂流物の衝突による崩壊
【0038】
前記既存建物10を下記A〜Cの3つの基準に分け、
A 津波に対して建物自体(壁を含む)が崩壊しない。
B 津波に対して床・天井・壁が崩壊する恐れがある。
C 津波に対して基礎・柱を含む建物自体が崩壊する恐れがある。
【0039】
Cは本発明の対象外とするが、既存建物10がAの場合は、既存建物10の躯体はそのまま利用できるので、出入り口や窓等部屋の開口の補強のみを行い、この補強は津波圧・浮遊物の衝撃に耐える強度を想定して行う。開口の補強は浸水に対して気密性を有するものとする。
【0040】
既存建物10がBの場合は、シェルター11として構成する既存建物10の一部の部屋の躯体に施す補強を行う。かかる躯体に施す補強は、図3〜図5に示すように、壁部分は、補強柱12、補強間柱12a、補強梁13、補強桟14等で構成し、これに鉄、ステンレス、若しくはアルミ合金の金属製の壁パネル15を気密に貼設する。壁パネル15は溶接により取付け、もしくは止水材を介在させてボルト止めで締結する。壁パネル15相互の接合も同様である。
【0041】
また、床もしくは天井部分は、図6〜図8に示すように、補強大引き16、補強根太17を配設し、補強根太17に鉄、ステンレス、若しくはアルミ合金の金属製の床板18を溶接で気密に貼設する。
【0042】
既存建物10のシェルター11とする部屋には、開口部としては、戸を有する窓A、出入口B、窓、雑排水口、下水口、換気口等がある。本発明はこれらの開口部を災害非常時において、気密に閉塞して、当該部屋を気密室として形成できるようにするが、出入口Bや窓A等部屋の比較的は大きな開口部は、既存の設備の機能を損なわないようにして、かつ、後述の止水板を収納できる戸袋等を設けるスペースを確保できるので、窓を例に取ると、図9、図10に示すような、既設の窓19の外側に設ける引き戸タイプのもので、鉄、ステンレス、若しくはアルミ合金の金属製で強度のある枠20と、この枠20内の開口面を閉鎖する止水板22からなり、枠20は戸袋21を一体的に形成した。なお、図示の例は既設の窓19は引き違い窓の場合であるが、開き戸タイプの窓でもよい。止水板22も鉄、ステンレス、若しくはアルミ合金の金属製として、強度のあるものとした。
【0043】
図18、図19はこの強度のある枠20を示すもので、強度のある枠20は外枠として存在し、内部に内枠20aがあり、その面には止水材30を貼設した。止水材30はガスケットタイプでもよいが、完全な気密性を発揮できるように、合成ゴム等の無垢の索条もしくは帯条タイプのものが好ましい。
【0044】
戸袋21も強度のある枠20内に配設され、鉄、ステンレス、若しくはアルミ合金の金属製で強度のある面板により形成される。
【0045】
前記戸袋21を一体的に形成した枠20は図示は省略するが、止水材を介在させるなどして、躯体の開口部に気密・水密に取り付けるものである。
【0046】
図11〜図13は前記引き戸タイプの補強窓の詳細を示すもので、強度のある枠20はその上部辺を吊枠23として、そこにハンガーレール24を添わせ、このハンガーレール24で可動吊金物25を介して止水板22を戸袋21から引出して、横移動可能に吊支する。
【0047】
可動吊金物25は、ハンガーレール24内を滑動または転動するスライダー34の下に、屈曲または摺動する掛合部として、図示の例では横長4角輪の吊り輪26を設けた。この吊り輪26はシャックルタイプで、シャックルピンとしてのネジピン26aを有する。なお、吊り輪26は図示の横長4角輪に限定されるものではなく、三角形や蒲鉾形等でもよく、ネジピン26aが吊るものを横スライドさせる支持バーとなればよい。
【0048】
止水板22は、図14、図15に示すように、鉄、ステンレス、若しくはアルミ合金の金属製の戸枠27に鉄、ステンレス、若しくはアルミ合金の金属製の面板28を嵌め込んだもので、戸枠27は上辺に矩形フックの吊具29を面板28の面方向に向けて適宜間隔を存して複数突設した。
【0049】
前記可動吊金物25の吊り輪26は、ハンガーレール24の幅方向に向くものであり、この吊り輪26に止水板22の吊具29を掛止めることで、止水板22はハンガーレール24の直交方向に変位可能に吊下げられる。
【0050】
前記は可動吊金物25の一例であるが、図示は省略するが、他の実施形態として、吊り輪26の代わりの屈曲可能なワイヤーまたはチェーンにより、止水板22の吊具29をハンガーレール24の直交方向に変位可能に吊下げるようにすることもできる。
【0051】
図16の例では、止水板22の下部にはその厚さ分だけ幅のあるガイド溝32を形成し、これに枠20から立ち上げたガイド片33を係合させた。
【0052】
前記閉鎖装置の第1例としては、キャッチクリップ装置いわゆるパッチン錠31を利用する。図17にも示すが、パッチン錠31は周知のように、受け金31aと、掛け金31bを有する操作レバー31cからなり、操作レバー31cは支軸31eで梃子杆として取り付け座31dに軸支され、操作レバー31cを回転させたときに、受け金31aに掛止めた掛け金31を引っ張るものである。
【0053】
このパッチン錠31の本体である部取り付け座31dに軸支された操作レバー31cは枠20の内フレーム20bに設けて室内側から操作可能とし、受け金31aは止水板22に取り付ける。止水板22に対して、パッチン錠31は少なくとも4隅に、計4個は設ける。
【0054】
以上が窓を例であるが、出入口の戸の場合も同様であり、補強戸として、強度のある枠20と、この枠20内の開口面を閉鎖する止水板22からなり、枠20は戸袋21を一体的に形成する。前記窓と同様に、ハンガーレール24を添わせ、このハンガーレール24で可動吊金物25を介して止水板22を戸袋21から引出して、横移動可能に吊支する。
【0055】
このようにして、災災害非常時には、止水板22を戸袋21から引出し、ハンガーレール24を移動させ、窓や出入口の開口を止水板22で閉塞する。
【0056】
戸袋21から引出された止水板22はハンガーレール24を移動して、開口閉鎖位置にまで来たならば、図16に示すように、パッチン錠31により締め付ければ、止水板22はハンガーレール24の直交方向に変位し、枠20の内フレーム20bに貼設した止水材30を間に介在させて枠20に押し付けられ、開口を気密(水密)に塞ぐことができる。
【0057】
なお、既存建物10シェルター11として構成する部屋には、窓や出入口以外の例えば、換気口や排水口などの開口がある場合があるが、雑排水・下水口には逆止弁を設けるとか、換気扇等がある換気口については、横にスペースがある場合は前記と同じく引き戸タイプの止水板により閉塞可能とし、スペースが無い場合には補強枠を設けて開戸タイプの止水板により閉塞可能とする。そのいずれにおいても、止水材を介在させ、パッチン錠31により締め付け可能とする。
【0058】
このようにして、瓶のふたをするように、当該部屋の出入り口や窓等部屋の開口を止水板により気密に閉塞して、強度のある気密空間を作り出すものである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明のシェルター付建物の説明図である。
【図2】本発明のシェルター付建物の外観斜視図である。
【図3】本発明のシェルター付建物の補強の前段工程を示す斜視図である。
【図4】本発明のシェルター付建物の補強の一例を示す窓側の斜視図である。
【図5】本発明のシェルター付建物の補強の一例を示す出入口側の斜視図である。
【図6】本発明のシェルター付建物の補強の一例を示す根太部分の斜視図である。
【図7】本発明のシェルター付建物の補強の一例を示す床板部分の斜視図である。
【図8】本発明のシェルター付建物の補強の一例を示す大引き部分の説明図である。
【図9】本発明のシェルター付建物の窓の一例を示す平面図である。
【図10】本発明のシェルター付建物の窓の他例を示す平面図である。
【図11】本発明のシェルター付建物の窓の詳細を示す斜視図である。
【図12】本発明のシェルター付建物の窓に設けるハンガーレールの斜視図である。
【図13】本発明のシェルター付建物の窓に設けるハンガーレールの斜視図である。
【図14】本発明のシェルター付建物の窓に設ける止水板の正面図である。
【図15】本発明のシェルター付建物の窓に設ける止水板の側面図である。
【図16】本発明のシェルター付建物の窓の1実施形態を示す縦断側面図である。
【図17】本発明のシェルター付建物で使用するパッチン錠の一例を示す説明図である。
【図18】本発明のシェルター付建物で使用する強度のある枠の裏面図である。
【図19】図18のA−A線断面図である。
【図20】従来例を示す横断平面図である。
【図21】従来例を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
【0060】
1…気密壁 1a、1b…側面
1c…天井部 2…出入口
3…開口枠 4…窓
4a…窓枠 5…固定部材
6…基礎コンクリート 7…空気室
10…既存建物 11…シェルター
12…補強柱 12a…補強間柱
13…補強梁 14…補強桟
15…壁パネル 16…補強大引き
17…補強根太 18…床板
19…窓 20…枠
20a…内枠 20b…内フレーム
21…戸袋
22…止水板 23…吊枠
24…ハンガーレール 25…可動吊金物
26…吊り輪 26a…ネジピン
27…戸枠 28…面板
29…吊具 30…止水材
31…パッチン錠 31a…受け金
31b…掛け金 31c…操作レバー
31d…取り付け座 31e…支軸
32…ガイド溝 34…スライダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存建物の一部の部屋の柱・壁・床等開口以外は当該既存建物において所要の津波対策強度と気密性を有するものであり、これらを利用するともに災害非常時において、当該部屋の出入り口や窓等部屋の開口を、強度のある金属製の枠と、この枠内の開口面を閉鎖する強度のある金属製の止水板からなり、止水板は強度のある枠に対して引き圧により止水材を介在させて圧接させる閉鎖装置で気密に閉塞することを特徴とするシェルター付建物。
【請求項2】
既存建物の一部の部屋で、柱・壁・床等躯体部分が所要の津波対策強度と気密性を有しない場合は、当該躯体に補強を施して津波対策強度と気密性を有するようにするものであり、災害非常時において、出入り口や窓等部屋の開口を、強度のある金属製の枠と、この枠内の開口面を閉鎖する強度のある金属製の止水板からなり、止水板は強度のある枠に対して引き圧により止水材を介在させて圧接させる閉鎖装置で気密に閉塞することを特徴とするシェルター付建物。
【請求項3】
引き圧は、強度のある枠と止水板とをパッチン錠にて締め付けて得る請求項1または請求項2記載のシェルター付建物。
【請求項4】
強度のある枠は、これに強度のある金属製の戸袋を一体形成する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のシェルター付建物。
【請求項5】
躯体に施す補強は、壁部分は、補強柱、補強梁、補強桟等を配設し、これに金属製の壁パネルを気密に貼設する請求項2記載のシェルター付建物。
【請求項6】
躯体に施す補強は、床もしくは天井部分は、補強大引き、補強根太を配設し、補強根太に金属製の床板を溶接で気密に貼設する請求項2記載のシェルター付建物。
【請求項7】
止水板は、ハンガーレールに可動吊金物を介して該ハンガーレールの直交方向に変位可能に吊下げた引き戸タイプのものである請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のシェルター付建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−28907(P2013−28907A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164014(P2011−164014)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(511182390)
【出願人】(511182404)
【出願人】(511182600)
【Fターム(参考)】