説明

シクレン誘導体の合成

【課題】 DO3A−トリ−t−ブチルエステル(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸トリ−t−ブチルエステル)のような保護DO3Aの改良製造方法を提供する。
【解決手段】 上記化合物を塩として製造する。この方法は、DO3A−トリ−t−ブチルエステルを高純度の塩として得る仕上げ処理を含む。具体的には、(1)シクレンを活性化酢酸エステルからなるアルキル化剤と反応させて、保護DO3Aを含む混合物を形成し、(2)上記混合物のpHを9.0±0.5に調節し、(3)上記混合物に塩を添加し、(4)沈殿した生成物を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DO3A−トリ−t−ブチルエステルの塩のような保護DO3Aの塩の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴画像法(MRI)は人体の内部構造を観察するための定評のある強力な技術である。MRIの分野では、様々なシクレン系大環状キレート剤のランタニドキレートが造影剤として提案されている。かかる大環状キレート剤はガドリニウム又はジスプロシウムのようなコントラストを生成させる常磁性金属イオンと特に安定なキレート錯体を形成するので、適切な生体内分布及び排泄の確保に適した金属イオン担体である。
【0003】
こうした大環状キレートの多くの製造において、シクレン(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン)は重要な化合物である。トリ−N−アルキル化シクレン類は、かかる大環状キレート剤の製造のためのもう一つの重要な化合物群を構成する。DO3A(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N′,N″−三酢酸)は、このような磁気共鳴(MR)造影剤の基礎となるトリ−N−アルキル化シクレン化合物の一つである。関連する一群の化合物は、DO3A−トリ−t−ブチルエステル(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸トリ−t−ブチルエステル)のようなDO3A化合物の保護形であり、3つのカルボキシル基が保護されている。
【0004】
DO3A−トリ−t−ブチルエステル及びその塩のような保護DO3A化合物は、例えばGd(HP−DO3A)(ProHance(商標))及びGd(DO3A−ブトロール)(Gadovist(商標))のようなDO3A系MR造影剤の製造に有用な中間体である。
【0005】
DO3A−トリ−t−ブチルエステルは市販品であるが、市販品は高価なだけでなく、ジアルキル化シクレンとテトラアルキル化シクレンを共に不純物として含有している。この化合物の製造方法は幾つか従来技術で知られている。
【0006】
米国特許第5419893号は、シクレン系化合物のようなキレート剤及びその製造法に関する。シクレンとブロモ酢酸t−ブチルからのDO3A−トリ−t−ブチルエステルの製造法が開示されている。その製造法は、フラッシュクロマトグラフィーによる精製を伴う。生成物は遊離塩基として製造される。
【0007】
国際公開第2005/003105号には、シクレンと適当な求電子物質の反応によるトリアルキル化1,4,7,10−テトラアザシクロドデカンの製造法が開示されている。反応はクロロホルムのような非プロトン性溶媒中で行われる。生成物はカラムクロマトグラフィーで精製される。生成物は遊離塩基として製造される。
【特許文献1】米国特許第5419893号明細書
【特許文献2】国際公開第2005/003105号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の通り、DO3A−トリ−t−ブチルエステルは大環状キレート剤及びMR造影剤の製造のための重要な出発物質である。市販のDO3A−トリ−t−ブチルエステルは高価でしかも不純物を含んでいる。現存の合成経路では、クロマトグラフィーのような経費と時間のかかる精製が必要とされ、大規模生産では大きな短所となる。そこで、経費がかからず、高純度の生成物が得られるDO3A−トリ−tert−ブチルエステルの新規製造法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
当技術分野のニーズに鑑みて、本発明は、DO3A−トリ−t−ブチルエステル(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸トリ−t−ブチルエステル)のような保護DO3Aの改良製造法を提供する。化合物は塩として製造される。本方法は、DO3A−トリ−t−ブチルエステルを高純度の塩として得る仕上げ処理を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、一つの態様では、次の式Iの保護DO3A塩の製造方法を提供する。
【0011】
【化1】

式中、Rはカルボキシル保護基を表し、例えばC1〜C6アルキルのようなアルキル、アリール及び置換アリールからなる群から選択される。メチル、プロピル、ベンジル及びt−ブチルが好ましいR基である。最も好ましくは、Rはt−ブチルである。Xは塩素、臭素若しくはヨウ素陰イオン又はスルホン酸若しくはリン酸含有基を表し、好ましくは臭素陰イオンである。yは1〜4の整数を表し、好ましくは1である。
【0012】
Xがリン酸基を含む場合、形成される塩はリン酸(H3PO4)、ホスホン酸(R′PO32)又はホスフィン酸(R′R″PO2H)系のものであり、R′及びR″はC1〜C6アルキルのような低級アルキル基である。Xがスルホン酸基を含む場合、この基はさらにC1〜C6アルキルのような低級アルキル基を含んでいてもよく、例えばメチル−SO3H塩を形成し得る。
【0013】
好ましい実施形態では、本発明は、次の式IIのDO3A−トリ−t−ブチルエステルを塩として製造する方法を提供する。
【0014】
【化2】

さらに好ましくは、本発明は、DO3A−トリ−t−ブチルエステルのHBr塩(4,7−ビス−tert−ブトキシカルボニルメチル−1,4,7,10−テトラアザ−シクロドデカ−1−イル)−酢酸tert−ブチルエステル臭化水素塩)のような式Iの化合物のモノ塩の製造方法を提供する。
【0015】
本発明による式(I)の化合物の製造方法では、高純度の物質を高収率で与える最適化された沈殿を伴う新規な仕上げ処理を提供する。この新規な仕上げ処理によって、高い収量のトリ−N−アルキル化生成物が塩として選択的に得られる。今回、DO3A−トリ−t−ブチルエステルのような式Iの保護DO3Aを高純度で製造するには、遊離塩基として製造するよりは、塩として製造した方が格段に簡単であることが判明した。生成物を塩として沈殿させると、純粋な形態のトリ−N−アルキル化生成物の収量が大幅に増すことが判明した。本発明の方法の顕著な利点は、トリアルキル化生成物の塩を沈殿によって副生物から分離でき、沈殿した塩からなる最終生成物をそれ以上精製する必要が全くないか、最小限ですむことである。この簡単な方法は、生成物の大量生産の際に特に有益である。
【0016】
出発物質、溶媒、及び塩基のような助剤はすべて市販されている。この方法は実施が容易であり、特殊な試薬も過酷な反応条件も必要としない。
【0017】
第一の実施形態では、本発明は、式Iの化合物の製造方法であって、
(1)シクレンを活性化酢酸エステルからなるアルキル化剤と反応させて、保護DO3Aを含む混合物を形成し、
(2)上記混合物のpHを9.0±0.5に調節し、
(3)上記混合物に塩を添加し、
(4)沈殿した生成物を回収する
段階を含む方法を提供する。
【0018】
これらの段階は上記の順序で実施してもよいし、或いは、段階(2)と(3)の順序を変えて、塩の添加(3)をpHの調節(2)の前に実施してもよい。これらの段階は好ましくは上記の順序で実施される。以下、全段階についてさらに概説する。
【0019】
pH調節と塩の添加後、結晶性物質が沈殿し始める。本方法は、さらに、式(I)の保護DO3Aの塩を高純度・高収率で得るため、沈殿を回収して乾燥する段階に加えて、沈殿を促進して完遂させる段階を適宜含んでいてもよい。式(I)のトリアルキル化生成物の選択的沈殿は、段階(1)のアルキル化の最適化と段階(2)のpHの調節との組合せの結果である。
【0020】
段階(1)は、以下の式(III)の1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン(シクレン)を、アルキル化剤として作用する以下の式(IV)の活性化酢酸エステルと反応させることを含む。
【0021】
【化3】

【0022】
【化4】

式中、X′は塩素、臭素、ヨウ素、スルホン酸及びリン酸からなる群から選択される易置換性基である。好ましくはX′は臭素である。RはC1〜C6アルキルのようなアルキル、アリール及び置換アリールからなる群から選択されるカルボキシル保護基である。メチル、プロピル、ベンジル及びt−ブチルが好ましいR基である。さらに好ましくは、Rはt−ブチルである。最も好ましくは、式IVのアルキル化剤は次の式(V)のブロモ酢酸tert−ブチルである。
【0023】
【化5】

段階(1)の反応は溶媒の存在下で実施される。アルキル化段階を最適化するため、アルキル化剤を水混和性の極性溶媒、例えばアミド、ニトリル、ケトン又はアルコール基を有する極性溶媒に溶解させる。好ましくは、溶媒はN,N−ジメチルアセトアミドである。水混和性極性溶媒中でシクレン及び助剤としての弱塩基の懸濁液を製造する。シクレン用の溶媒は、好ましくは、アルキル化剤に用いたものと同じ溶媒であり、好ましくはN,N−ジメチルアセトアミドである。弱塩基は例えばトリエチルアミン又は酢酸ナトリウムである。塩基の役割はシクレンのプロトンを除去することである。アルキル化剤の溶液をシクレンの懸濁液に、好ましくは撹拌しながら滴下して加える。
【0024】
成分の量は、シクレンをトリアルキル化するのに充分な量で選択される。段階(1)の反応成分の量比は、好ましくは、シクレン1モル当量に対してアルキル化剤約3モル当量、弱塩基3モル当量である。反応体、溶媒及び助剤の適量に関する詳細については実施例1及び実施例2を参照されたい。
【0025】
アルキル化剤の添加後、段階(1)の反応混合物を含む反応容器を密閉し、懸濁液を好ましくは反応が完了するまで、通常は数日間、例えば1〜8日(3〜5日など)放置する。DO3A−トリ−t−ブチルエステルの塩の製造には3日で充分であることが判明した。反応懸濁液はこの期間撹拌した状態に保つ。
【0026】
段階(1)の反応は、広範な温度範囲、例えば0〜30℃の温度で実施できる。アルキル化剤をシクレンに添加する際、温度は好ましくは0〜10℃、例えば0〜5℃に保たれる。アルキル化剤の添加が完了したら、反応懸濁液の温度を好ましくは略周囲温度、例えば18〜30℃の温度、さらに好ましくは20〜25℃の温度に上げ、反応が完結するまでこの温度レベルに保つ。温度がこのレベルを大幅に超えると、過アルキル化が起こりやすくなって、テトラアルキル化生成物のような不純物が生成しやすくなる。本発明の方法を用いると、段階(1)で生成するテトラアルキル化生成物の量は最小限に保たれる。特に大規模生産では、不純物のテトラアルキル化生成物を避けるため、アルキル化剤の初期添加を行う際の温度を下げることが推奨される。アルキル化段階(1)の主要生成物は、式(I)のトリアルキル化シクレンの非塩形態である。主な副生物はジアルキル化生成物である。ただし、この副生物は段階(1)の混合物中での溶解性がトリアルキル化生成物よりも高く、後段でのpH調節及び塩の添加の際に沈殿しない。
【0027】
段階(1)の混合物は、懸濁液又はスラリーであり、製造する式(I)の非塩形態の生成物の種類に応じて、上記で概説したものとは異なる溶媒と助剤を用いた他の条件下で調製してもよい。例えば、使用するカルボキシル保護基の種類に基づいて別の溶媒を選択してもよい。
【0028】
段階(1)の後、段階(1)の反応混合物を適宜水中に注ぎ込む。水の添加は、均一で透明な溶液が得られるので好ましい。水の量は、例えば反応懸濁液の体積の1〜10倍、さらに好ましくは反応懸濁液の体積の3〜8倍である。主な目的は均一溶液を得ることにあるので、大量生産の場合、水の量は上述の範囲の低い方に保つのが有利であろう。水の温度は略周囲温度、例えば18〜30℃又は20〜25℃である。
【0029】
段階(2)では、塩基を添加してpHを9.0±0.5、好ましくは8.7〜9.3、さらに好ましくは8.9〜9.1、最も好ましくは約9.0に調節する。モノ−、ジ−、トリ−及びテトラ−アルキル化生成物の窒素分子のpKa値は各々異なる。pHを上記範囲に至適化すると、モノ−、ジ−、トリ−及びテトラ−アルキル化生成物は所与のpHにおける沈殿の程度に差を生じるので、段階(1)の反応混合物中に存在する低級又は高級アルキル化副生物からトリアルキル化生成物を確実に分離できることが判明した。その結果、溶解性の高いジアルキル化生成物の不純物(これが主な副生物である可能性が高い)は上記の好ましいpHで溶液中に残り、最終生成物の塩の製造の際に沈殿しない。使用される塩基は好ましくは固体として加えられ、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、アルカリ水酸化物又はリン酸ナトリウムからなる群から選択される。さらに好ましいのは固体の形態のNaHCO3の添加である。
【0030】
段階(3)では、陰イオンXを含む塩を、混合物、例えば段階(2)の溶液に添加する。Xは塩素、臭素及びヨウ素陰イオン又はスルホン酸若しくはリン酸含有基からなる群から選択され、好ましくは臭素陰イオンである。スルホン酸基及びリン酸基はC1〜C6アルキル鎖のような低級アルキル基を含んでいてもよい。Xは好ましくは式IVの活性化酢酸エステルのX′と同じ基である。添加される塩は例えばカリウム塩(KX)であるが、これはカリウム塩が概して良好な安定性を有しているからである。最も好ましくは段階(3)においてKBrを添加し、好ましくはブロモ酢酸tert−ブチルを段階(1)で用いる。
【0031】
本発明の一実施形態では、段階(3)は、pH調節(段階(2))に先だって段階(1)の混合物に塩を添加することを含む。この実施形態では、段階(1)の反応混合物を好ましくは塩を含んだ水中に注ぎ込む。水温は、塩の溶解又はオストワルド熟成が起こる温度である。水の温度は例えば26〜100℃、さらに好ましくは40〜100℃、最も好ましくは45〜55℃である。好ましくは透明溶液を得る。この実施形態のプロセスの利点は、大きな粒子が生成するので、濾過工程が簡単になり、生成物の回収を含む段階(4)が迅速化されることである。
【0032】
段階(3)における塩の添加量は、例えば段階(1)のアルキル化剤のモル量の0.3〜4倍であり、好ましくはアルキル化剤のモル量の0.6〜3倍である。
【0033】
塩は、好ましくは撹拌下で混合物に添加される。pHの調節と塩の添加がなされたら、結晶性沈殿が生成し始める。迅速で完全な沈殿を達成するため、段階(4)は好ましくは、段階(3)の塩溶液にエーテルのような非極性溶媒を加えるという追加段階を適宜含む。エーテル化合物は好ましくは、段階(3)で添加した塩が完全に溶解したときに加える。エーテルは、例えば低級アルキルエーテル、ジメトキシエタン、ジグライム、トリグライム、THF、t−BuOMe、イソプロピルエーテル及びジエチルエーテルのような一般的なエーテルから選択される。さらに好ましいのはジエチルエーテルの添加である。全溶媒体積の約10〜20体積%の量が適当である。エーテルを添加すると、大規模合成での収率が向上するとともに極性塩の沈殿速度が増すことが判明した。
【0034】
段階(4)は、沈殿した塩を、例えば0.5〜4時間後、例えば約2時間後に、濾過又は遠心分離などによって回収する段階を含む。次いで、回収した生成物から使用した溶媒を、好ましくは蒸発、例えば高温及び/又は減圧(例えば真空)下での蒸発などによって、除去して乾燥形態の生成物を得る。
【0035】
市販のDO3A−トリ−t−ブチルエステルは、テトラアルキル化シクレン(1,4,7,10−テトラアザ−シクロドデカン−四酢酸テトラ−t−ブチル)及び若干のジアルキル化シクレン(1,4,7,10−テトラアザ−シクロドデカン−二酢酸ジ−t−ブチル)などの不純物を含んでいる。本発明の仕上げ処理は、高純度のDO3A−トリ−t−ブチルエステルの塩を与える。上述の仕上げ処理によって、一置換、二置換及び四置換誘導体も含んでいるおそれのある反応混合物から所望の三置換生成物が確実に分離される。得られる生成物は、市販のDO3A−トリ−t−ブチルエステル中に好ましからざる量で含まれているジアルキル化生成物を通常の検出レベルでは含まない。段階(1)のテトラアルキル化生成物の不純物はいずれも塩として沈殿しない。得られた生成物の純度は、例えば、生成物の構造を確認しその純度を決定するためのNMR、純度を決定するためのHPLC及び残留溶媒を測定するためのGCのような各種の分析法で制御することができる。上述のプロセスで製造されるDO3A−トリ−t−ブチルエステルHBr塩のような生成物は95%以上、さらに好ましくは99%以上、最も好ましくは99.9%以上の純度を有する。
【0036】
本発明の製造方法によって、式(I)の保護DO3A塩が良好な収率で、好ましくはシクレンのモル量を基準にして60%超、さらに好ましくは70%超、最も好ましくは80%超の収率で得られる。HBr塩としてのDO3A−トリ−t−ブチルエステルでは81.5%もの高い収率が達成された。典型的な結果は収率73%である。
【0037】
本発明のもう一つの態様は塩としての式Iの化合物であり、好ましい化合物はDO3A−トリ−t−ブチルエステルの塩、好ましくはHBrモノ塩である。
【0038】
本発明のさらに別の態様は、上述の方法によって製造される式Iの化合物である。
【0039】
保護DO3A又はその塩は、酢酸基を脱保護することによってDO3Aの製造に用いることができる。保護基は、例えば加水分解、水素化分解などの常法で除去することができ、例えばトリフルオロ酢酸又はギ酸で処理すれば遊離酸が得られる。DO3A及び誘導体は、常磁性金属原子と錯体を形成し、磁気共鳴画像法の緩和促進剤として使用することができる。或いは、市販品ProHance(商標)のようなMR造影剤をDO3A−トリ−t−ブチルエステルの塩(例えばHBr塩)から、塩基存在下でのDO3A−トリ−t−ブチルエステル塩のアルキル化又はエポキシド開環段階、又は別の段階でDO3A−トリ−t−ブチルエステルの遊離塩基を遊離させることによって製造することができる。アルキル化は例えばヒドロキシプロピル基を反応性第二アミンに結合させることを含む。これに続いて脱保護し、最後にGd3+又は別の常磁性金属イオンと錯形成すればよい。
【実施例】
【0040】
以下の非限定的な実施例によって、本発明をさらに例証する。
【0041】
実施例1:DO3A−トリ−t−ブチルエステルのHBr塩の調製
【0042】
【化6】

N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)(150ml)中のブロモ酢酸tert−ブチル(77.1ml、522mmol)を、N,N−ジメチルアセトアミド(400ml)中の1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン(30g、174mmol)と酢酸ナトリウム(NaAc)(42.9g、522mmol)の攪拌懸濁液に0℃で25分かけて滴下した。最後の1滴が添加し終わったら、反応スラリーを室温まで自然昇温した。反応容器をガラス栓で密閉し、白色の懸濁液を5日間攪拌し続けた。反応スラリーを水(2000ml)中に注ぎ込んで透明な黄色溶液を得た。
【0043】
固体NaHCO3を添加してpHを9に調節した。機械的に撹拌しながらKBr(30.0g、252mmol)を加え、塩が完全に溶解した時点で、ジエチルエーテル(10ml)を添加した。数分後に白色の結晶性物質が析出した。1時間後に沈殿を濾取し、真空乾燥して(4,7−ビス−tert−ブトキシカルボニルメチル−1,4,7,10−テトラアザ−シクロドデカ−1−イル)−酢酸tert−ブチルエステル臭化水素塩を白色粉末として得た(77.3g、73%)。
【0044】
元素分析計算値C2653BrN46:C,52.25%;H,8.94;N,9.37;O16.06.実測値C,52.2;H,8.7;N,9.0;O,16.6。
【0045】
実施例2:DO3A−トリ−t−ブチルエステルのHBr塩の別の調製
【0046】
【化7】

N,N−ジメチルアセトアミド(150ml)中のブロモ酢酸tert−ブチル(77.1ml、522mmol)を、N,N−ジメチルアセトアミド(400ml)中の1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン(30g、174mmol)と酢酸ナトリウム(42.9g、522mmol)の攪拌懸濁液に0℃で25分かけて滴下した。最後の1滴が添加し終わったら、反応スラリーを室温まで自然昇温した。反応容器をガラス栓で密閉し、白色の懸濁液を5日間攪拌し続けた。
【0047】
反応スラリーを、KBr(30.0g、252mmol)の溶解した温水(50℃、2000ml)に注ぎ込んで透明な黄色溶液を得た。
【0048】
固体NaHCO3を添加してpHを9に調節した。数分後に白色の結晶性物質が析出した。スラリーをゆっくり撹拌しながら室温まで放冷した後、撹拌せずに4時間沈殿を沈降させた。沈殿を濾取し、真空乾燥して(4,7−ビス−tert−ブトキシカルボニルメチル−1,4,7,10−テトラアザ−シクロドデカ−1−イル)−酢酸tert−ブチルエステル臭化水素塩を白色粉末として得た(77.3g、73%)。
【0049】
NMRの結果:DMSO−D6(400ΜΗz);8.92(2Η),3.41(4Η),3.35(2Η),2.98(4Η),2.84(4Η),[2.71(4H) 2.67(4Η)]非分離AB系,1.42(27Η)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I)の化合物の製造方法であって、
(1)シクレンを活性化酢酸エステルと反応させて混合物を調製し、
(2)上記混合物のpHを9.0±0.5に調節し、
(3)上記混合物に塩を添加し、
(4)沈殿した生成物を回収する
段階を含んでなり、段階(3)が段階(2)の前又は後に実施される、方法。
【化1】

式中、Rはアルキル、アリール及び置換アリールからなる群から選択されるカルボキシル保護基を表し、Xは塩素、臭素又はヨウ素陰イオン又はスルホン酸若しくはリン酸含有基を表し、yは1〜4の整数を表す。
【請求項2】
段階(2)が段階(3)の前に実施される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
段階(3)が段階(2)の前に実施される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
段階(1)の活性化酢酸エステルが次の式(IV)のアルキル化剤である、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の方法。
【化2】

式中、X′は塩素、臭素、ヨウ素、スルホン酸及びリン酸からなる群から選択される易置換性基であり、Rはアルキル、アリール及び置換アリールから選択されるカルボキシル保護基である。
【請求項5】
Rがt−ブチルを表し、Xが臭素を表し、yが1である式(I)の化合物を製造するための、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
段階(1)が水混和性の極性溶媒の存在下で実施される、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記溶媒がN,N−ジメチルアセトアミドである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
段階(2)が、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、アルカリ水酸化物又はリン酸ナトリウムの添加によってpHを調節することを含む、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
段階(3)で添加される塩が、塩素、臭素、ヨウ素及びスルホン酸又はリン酸含有基からなる群から選択される陰イオンXを含む、請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
段階(3)で添加される塩がKBrである、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
段階(4)が、段階(3)の混合物に非極性溶媒を加えることを含む、請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
段階(4)が、濾過又は遠心分離後に生成物を乾燥することによって生成物を回収することを含む、請求項1乃至請求項11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
得られる式(I)の化合物の収率が、シクレン出発物質のモル量を基準にして60%を超える、請求項1乃至請求項12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
式(I)の化合物が95%以上の純度で得られる、請求項1乃至請求項12のいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2008−538371(P2008−538371A)
【公表日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507582(P2008−507582)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【国際出願番号】PCT/NO2006/000141
【国際公開番号】WO2006/112723
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(396019387)ジーイー・ヘルスケア・アクスイェ・セルスカプ (82)