説明

シクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンの製造方法

【課題】シクロアルカンを良好な転化率で酸化して、シクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンを良好な選択率で製造しうる方法を提供すること。
【解決手段】周期表5族〜10族から選ばれる少なくとも1つの金属を含有し、かつ有機ケイ素化合物で接触処理されているメソポーラスシリカの存在下に、シクロアルカンを酸素で酸化することによりシクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンを製造する。前記金属としては、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ルテニウム及びパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1つの金属が好ましく、前記メソポーラスシリカとしては、MCM−41型が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロアルカンを酸素で酸化して、シクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シクロアルカンを酸素で酸化してシクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンを製造する方法において、ある種の金属元素を含有するメソポーラスシリカを触媒として用いて、上記酸化反応を行う方法が検討されている。例えば、金を含有するメソポーラスシリカ(非特許文献1)や、コバルトを含有するメソポーラスシリカ(非特許文献2)、クロムやバナジウムを含有するメソポーラスシリカ(特許文献1)を用いる方法が知られている。
【0003】
【特許文献1】国際公開第00/03963号パンフレット
【非特許文献1】アプライド・キャタリシス・A:ジェネラル(Applied Catalysis A: General)、(オランダ)、2005年、第280巻、p.175−180
【非特許文献2】コリアン・ジャーナル・オブ・ケミカル・エンジニアリング(Korean Journal of Chemical Engineering)、(韓国)、1998年、第15巻、p.510−515
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法では、触媒の活性や選択性、すなわちシクロアルカンの転化率やシクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンの選択率の点で、満足できないことがある。そこで、本発明の目的は、シクロアルカンを良好な転化率で酸化して、シクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンを良好な選択率で製造しうる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は鋭意研究を行った結果、所定の金属を含有し、かつ有機ケイ素化合物で接触処理されているメソポーラスシリカの存在下で、上記酸化反応を行うことにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、周期表5族〜10族から選ばれる少なくとも1つの金属を含有し、かつ有機ケイ素化合物で接触処理されているメソポーラスシリカの存在下に、シクロアルカンを酸素で酸化することを特徴とするシクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シクロアルカンを良好な転化率で酸化して、シクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンを良好な選択率で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明ではシクロアルカンを原料に用い、これを所定のメソポーラスシリカの存在下に酸素(分子状酸素)で酸化して、対応するシクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンを製造する。
【0009】
原料のシクロアルカンとしては、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、シクロオクタデカンのような、単環式で環上に置換基を有しないシクロアルカンの他、デカリンやアダマンタンのような多環式のシクロアルカン、メチルシクロペンタンやメチルシクロヘキサンのような環上に置換基を有するシクロアルカン等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。
【0010】
酸素源には通常、酸素含有ガスが用いられる。この酸素含有ガスは、例えば、空気であってもよいし、純酸素であってもよいし、空気又は純酸素を、窒素、アルゴン、ヘリウムのような不活性ガスで希釈したものであってもよい。また、空気に純酸素を添加した酸素富化空気を使用することもできる。
【0011】
本発明では、周期表5族〜10族から選ばれる少なくとも1つの金属を含有し、かつ有機ケイ素化合物で接触処理されているメソポーラスシリカの存在下で上記酸化反応を行う。かかるメソポーラスシリカを用いることにより、シクロアルカンを良好な転化率で酸化して、シクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンを良好な選択率で製造することができる。
【0012】
メソポーラスシリカに含有される金属は、周期表5族〜10族の金属であり、好ましくは、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ルテニウム、パラジウムが挙げられる。中でもコバルトがより好ましい。これら金属は、必要に応じて2種類以上を使用してもよい。金属の含有率は、メソポーラスシリカに対する重量比で表して、通常0.01〜20%であり、好ましくは0.05〜10%であり、さらに好ましくは0.1〜5%である。
【0013】
本発明におけるメソポーラスシリカは、通常2〜50nmのほぼ均一な大きさの細孔を有する、所謂メソポーラス構造を有するものであり、その表面積は通常600〜1500m/g程度である。また、上記金属は、メソポーラス構造を構成するシリカ骨格中に組み込まれていてもよく、上記細孔中に組み込まれていてもよく、シリカ骨格表面に担持されていてもよい。かかるメソポーラスシリカの種類として、例えば、MCM−41型、MCM−48型、FSM−16型、SBA−15型、HMS型等が挙げられ、中でもMCM−41型が好ましい。尚、メソポーラス構造の有無は、銅Kα線によるXRD(X線回折)測定における2θ=0.2〜4.0°のピークの有無で確認することができる。
【0014】
また、本発明におけるメソポーラスシリカは、有機ケイ素化合物で接触処理されているものである。かかる有機ケイ素化合物は、メソポーラスシリカと反応してその表面に結合可能なものであるのが好ましく、典型的には次の式(1)で示すことができる。
【0015】
Si(R1)x(R2)4-x (1)
【0016】
(式中、R1はアルコキシ基、ヒドロキシ基又はハロゲン原子を表し、R2はアルコキシ基、アルキル基、アリル基、アリール基又はアラルキル基を表し、xは1〜3の数を表す。)
【0017】
ここで、R1及びR2で表されるアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられ、R2で表されるアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。また、R2で表されるアリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、トリル基等が挙げられ、R2で表されるアラルキル基の例としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0018】
式(1)で示される有機ケイ素化合物としては、中でもトリアルコキシアルキルシランや、テトラアルコキシシランがより好ましく用いられる。
【0019】
次に、本発明におけるメソポーラスシリカの調製法について説明する。メソポーラス構造を有するシリカについては、非特許文献2や、ネイチャー(Nature)、(米国)、1992年、第359巻、p.710−712等に記載された公知の方法に準じて調製することができる。例えば、テトラエトキシシラン(オルトケイ酸エチル)の如きテトラアルコキシシラン、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドの如き四級アンモニウム塩、水酸化ナトリウムの如きアルカリ金属水酸化物、及び水を混合し、該混合物を約80〜100℃で熱処理し、ろ過、乾燥後、約500〜600℃で焼成することにより調製することができる。
【0020】
メソポーラス構造を有するシリカに上記金属を含有させる方法としては、例えば、上述したメソポーラス構造を有するシリカの調製工程における混合物に、上記金属のハロゲン化物、硝酸塩、カルボン酸塩、オキソ酸塩の如き金属化合物を添加する方法や、上記メソポーラス構造を有するシリカに、上記金属化合物の溶液を含浸させる方法や、上記メソポーラス構造を有するシリカを、上記金属化合物の溶液に浸漬して、該金属化合物を該シリカに吸着させたり、該金属化合物の金属カチオンを該シリカのカチオンとイオン交換したりする方法等が挙げられる。該金属化合物の使用量は、上記金属の含有率となるように適宜調整される。
【0021】
有機ケイ素化合物による接触処理方法としては、例えば、有機ケイ素化合物を含む液体に、上記金属を含有し又は含有していないメソポーラス構造を有するシリカを、浸漬する方法や、上記金属を含有し又は含有していないメソポーラス構造を有するシリカに、有機ケイ素化合物を含む気体を接触させる方法等が挙げられる。
【0022】
また、上記金属を含有していないメソポーラス構造を有するシリカに上記接触処理を行った場合、該処理後のシリカに、上記金属化合物の溶液を含浸させたり、接触処理後のシリカを、上記金属化合物の溶液に浸漬したりして、上述と同様に、上記金属を含有させることができる。
【0023】
有機ケイ素化合物の使用量は、接触処理前のシリカ100重量部に対し、通常1〜10000重量部、好ましくは5〜2000重量部、さらに好ましくは10〜1500重量部である。
【0024】
接触処理の温度は、通常0〜300℃、好ましくは30〜250℃である。また、接触処理の時間は、通常0.1〜50時間、好ましくは1〜20時間である。
【0025】
かくして、上記金属が含有し、かつ有機ケイ素化合物で接触処理されているメソポーラスシリカを得ることができる。そして、このメソポーラスシリカの存在下に、シクロアルカンを酸素で酸化する。かかるメソポーラスシリカの使用量は、シクロアルカン100重量部に対し、通常0.01〜50重量部、好ましくは0.1〜10重量部である。
【0026】
反応温度は通常0〜200℃、好ましくは50〜170℃であり、反応圧力は通常0.01〜10MPa、好ましくは0.1〜2MPaである。反応溶媒は必要に応じて用いることができ、例えば、アセトニトリルやベンゾニトリルのようなニトリル溶媒、酢酸やプロピオン酸のようなカルボン酸溶媒等を用いることができる。
【0027】
酸化反応後の後処理操作については、特に限定されないが、例えば、反応混合物を濾過して触媒を分離した後、水洗し、次いで蒸留する方法等が挙げられる。反応混合物中に原料のシクロアルカンに対応するシクロアルキルヒドロペルオキシドが含まれる場合、アルカリ処理や還元処理等により、目的とするシクロアルカノールやシクロアルカノンに変換することができる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれによって限定されるものではない。尚、反応液中のシクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール及びシクロヘキシルヒドロペルオキシドの分析はガスクロマトグラフィーにより行い、この分析結果から、シクロヘキサンの転化率、並びにシクロヘキサノン、シクロヘキサノール及びシクロヘキシルヒドロペルオキシドの各選択率を算出した。
【0029】
参考例1
(コバルト含有メソポーラスシリカの調製)
ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(和光純薬株式会社製)8.08g、水107.44g、水酸化ナトリウム(和光純薬株式会社製)1.63g、テトラエトキシシラン(オルトケイ酸エチル、和光純薬株式会社製)30.48g、及び、酢酸コバルト(II)四水和物(和光純薬株式会社製)1.84gを200mlビーカーに入れ、室温で1時間攪拌した後、90℃で7日間水熱合成した。得られた混合物をろ過し、ろ残を水で洗浄した後、100℃で12時間乾燥した。得られた乾燥物を、空気流通下、550℃で7時間焼成した。焼成して得られた粉体について、銅Kα線によるXRD測定を行った結果、2θ=2.3°付近にメソポーラス構造特有のピークが見られ、コバルト含有メソポーラスシリカが生成していることを確認した。そのXRDパターンを図1に示す。また、このコバルト含有メソポーラスシリカの赤外線吸収スペクトルを次の方法で測定し、結果を図2に示した。
【0030】
(赤外線吸収スペクトルの測定)
参考例1で得られたコバルト含有メソポーラスシリカを触媒セル(SPECTRA−TECH社製のDiffuse Reflectance Heat Chamber/Model HC900)に入れ、赤外線吸収スペクトル測定装置(NICOLET社製のMagna 760−ESP)にセットし、0.1Torr(13Pa)にて200℃で1時間脱気した後、赤外線吸収スペクトルを測定した。測定条件は、測定温度が200℃、測定圧力が0.1Torr(13Pa)、測定範囲が400〜4000cm-1、分解能が4cm-1である。得られたデータは、臭化カリウムの赤外線吸収スペクトルを同様に測定して得られたデータをバックグラウンドとし、Kubelka−Munk補正した。
【0031】
参考例2
(コバルト含有メソポーラスシリカのトリエトキシエチルシラン接触処理)
参考例1で得られたコバルト含有メソポーラスシリカ0.3g及びトリエトキシエチルシラン(東京化成工業株式会社製)3.0gをフラスコに入れ、窒素雰囲気下、90℃で7.5時間攪拌した。得られた混合物を室温まで冷却した後、エタノールを加えて攪拌し、次いでろ過した。ろ残をエタノールで洗浄した後、0.1Torr(13Pa)にて40℃で1時間乾燥し、さらに100℃で乾燥した。こうして得られたコバルト含有メソポーラスシリカのトリエトキシエチルシラン接触処理品の赤外線吸収スペクトルを、参考例1と同様に測定し、結果を図3に示した。
【0032】
図2に示すように、参考例1で得られたコバルト含有メソポーラスシリカでは、3740cm-1付近にいわゆる末端(terminal)シラノール基に帰属されるピークが観察されるが、図3に示すように、参考例2で得られたコバルト含有メソポーラスシリカのトリエトキシエチルシラン接触処理品では、同ピークが観察されず、末端シラノール基がトリエトキシエチルシランでシリル化されていると考えられる。
【0033】
参考例3
(コバルト含有メソポーラスシリカのトリメトキシプロピルシラン接触処理)
参考例1で得られたコバルト含有メソポーラスシリカ0.3g及びトリメトキシプロピルシラン(東京化成工業株式会社製)3.0gをフラスコに入れ、窒素雰囲気下、90℃で7.5時間攪拌した。得られた混合物を室温まで冷却した後、エタノールを加えて攪拌し、次いでろ過した。ろ残をエタノールで洗浄した後、0.1Torr(13Pa)にて40℃で1時間乾燥し、さらに100℃で乾燥した。こうして得られたコバルト含有メソポーラスシリカのトリメトキシプロピルシラン接触処理品の赤外線吸収スペクトルを、参考例1と同様に測定し、結果を図4に示した。
【0034】
図2に示すように、参考例1で得られたコバルト含有メソポーラスシリカでは、3740cm-1付近にいわゆる末端(terminal)シラノール基に帰属されるピークが観察されるが、図4に示すように、参考例3で得られたコバルト含有メソポーラスシリカのトリメトキシプロピルシラン接触処理品では、同ピークが観察されず、末端シラノール基がトリメトキシプロピルシランでシリル化されていると考えられる。
【0035】
参考例4
(コバルト含有メソポーラスシリカのテトラエトキシシラン接触処理)
参考例1で得られたコバルト含有メソポーラスシリカ0.3g及びテトラエトキシシラン(オルトケイ酸エチル、和光純薬株式会社製)3.0gをフラスコに入れ、窒素雰囲気下、90℃で7.5時間攪拌した。得られた混合物を室温まで冷却した後、エタノールを加えて攪拌し、次いでろ過した。ろ残をエタノールで洗浄した後、0.1Torr(13Pa)にて40℃で1時間乾燥し、さらに100℃で乾燥した。こうして得られたコバルト含有メソポーラスシリカのテトラエトキシシラン接触処理品の赤外線吸収スペクトルを、参考例1と同様に測定し、結果を図5に示した。
【0036】
図2に示すように、参考例1で得られたコバルト含有メソポーラスシリカでは、3740cm-1付近にいわゆる末端(terminal)シラノール基に帰属されるピークが観察されるが、図5に示すように、参考例4で得られたコバルト含有メソポーラスシリカのテトラエトキシシラン接触処理品では、同ピークが観察されず、末端シラノール基がテトラエトキシシランでシリル化されていると考えられる。
【0037】
実施例1
300mlオートクレーブに、シクロヘキサン100g(1.2モル)及び参考例2で得られたコバルト含有メソポーラスシリカのトリエトキシエチルシラン接触処理品0.1gを入れ、室温にて系内を窒素で0.93MPaまで昇圧した後、130℃に昇温し、次いで、酸素濃度5容量%のガスの流通下、8時間反応を行った。
【0038】
反応開始から5時間の時点で、シクロヘキサンの転化率は7.5%であり、シクロヘキサノンの選択率は36.8%、シクロヘキサノールの選択率は47.9%、シクロヘキシルヒドロペルオキシド選択率は2.2%であった(合計選択率86.9%)。また、反応開始から8時間の時点(終了時)で、シクロヘキサンの転化率は10.6%であり、シクロヘキサノンの選択率は41.8%、シクロヘキサノールの選択率は41.1%、シクロヘキシルヒドロペルオキシド選択率は1.3%であった(合計選択率84.2%)。
【0039】
実施例2
参考例2で得られたコバルト含有メソポーラスシリカのトリエトキシエチルシラン接触処理品に代えて、参考例3で得られたコバルト含有メソポーラスシリカのトリメトキシプロピルシラン接触処理品を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0040】
反応開始から5時間の時点で、シクロヘキサンの転化率は7.6%であり、シクロヘキサノンの選択率は36.2%、シクロヘキサノールの選択率は48.1%、シクロヘキシルヒドロペルオキシド選択率は1.9%であった(合計選択率86.2%)。また、反応開始から8時間の時点(終了時)で、シクロヘキサンの転化率は10.8%であり、シクロヘキサノンの選択率は41.2%、シクロヘキサノールの選択率は41.7%、シクロヘキシルヒドロペルオキシド選択率は1.2%であった(合計選択率84.1%)。
【0041】
実施例3
参考例2で得られたコバルト含有メソポーラスシリカのトリエトキシエチルシラン接触処理品に代えて、参考例4で得られたコバルト含有メソポーラスシリカのテトラエトキシシラン接触処理品を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0042】
反応開始から5時間の時点で、シクロヘキサンの転化率は7.5%であり、シクロヘキサノンの選択率は36.5%、シクロヘキサノールの選択率は47.6%、シクロヘキシルヒドロペルオキシド選択率は1.4%であった(合計選択率85.5%)。また、反応開始から8時間の時点(終了時)で、シクロヘキサンの転化率は10.7%であり、シクロヘキサノンの選択率は41.8%、シクロヘキサノールの選択率は40.2%、シクロヘキシルヒドロペルオキシド選択率は0.9%であった(合計選択率82.9%)。
【0043】
比較例1
参考例2で得られたコバルト含有メソポーラスシリカのトリエトキシエチルシラン接触処理品に代えて、参考例1で得られたコバルト含有メソポーラスシリカを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0044】
反応開始から5時間の時点で、シクロヘキサンの転化率は7.4%であり、シクロヘキサノンの選択率は35.8%、シクロヘキサノールの選択率は47.2%、シクロヘキシルヒドロペルオキシド選択率は1.3%であった(合計選択率84.3%)。また、反応開始から8時間の時点(終了時)で、シクロヘキサンの転化率は10.6%であり、シクロヘキサノンの選択率は41.2%、シクロヘキサノールの選択率は39.6%、シクロヘキシルヒドロペルオキシド選択率は0.9%であった(合計選択率81.7%)。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】参考例1で得られたコバルト含有メソポーラスシリカのXRDパターンである。
【図2】参考例1で得られたコバルト含有メソポーラスシリカの赤外線吸収スペクトルである。
【図3】参考例2で得られたコバルト含有メソポーラスシリカのトリエトキシエチルシラン接触処理品の赤外線吸収スペクトルである。
【図4】参考例3で得られたコバルト含有メソポーラスシリカのトリメトキシプロピルシラン接触処理品の赤外線吸収スペクトルである。
【図5】参考例4で得られたコバルト含有メソポーラスシリカのテトラエトキシシラン接触処理品の赤外線吸収スペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期表5族〜10族から選ばれる少なくとも1つの金属を含有し、かつ有機ケイ素化合物で接触処理されているメソポーラスシリカの存在下に、シクロアルカンを酸素で酸化することを特徴とするシクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンの製造方法。
【請求項2】
前記金属が、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ルテニウム及びパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1つの金属である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属がコバルトである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記メソポーラスシリカがMCM−41型である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
有機ケイ素化合物が次の式(1)
Si(R1)x(R2)4-x (1)
(式中、R1はアルコキシ基、ヒドロキシ基又はハロゲン原子を表し、R2はアルコキシ基、アルキル基、アリル基、アリール基又はアラルキル基を表し、xは1〜3の数を表す。)
で示される請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
有機ケイ素化合物がトリアルコキシアルキルシラン又はテトラアルコキシシランである請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
シクロアルカンがシクロヘキサンである請求項1〜6のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−260746(P2008−260746A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−213417(P2007−213417)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】