説明

シクロアルキルアミノ酸化合物、その製造方法及び使用

本発明は薬剤学の分野に関連するものであり、より詳細にはシクロアルキルアミノ酸及びオキサゾリジオンの製造において有用な新規組成物及びシクロアルキルアミノ酸(必要により部分的に又はすべてがハロゲン化されていてもよく、また必要により1つ又は2つ以上のヒドロキシ、アミノ、スルホキシ、フェニル又はトリフルオロで置換されていてもよい)を製造するための方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(出願データ)
この出願は2004年8月27日に出願された米国仮出願番号60/498,559の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は薬剤学の分野に関連するものであり、より詳細にはシクロアルキルアミノ酸の製造において有用な組成物及びシクロアルキルアミノ酸を製造するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
シクロアルキルアミノ酸は医薬品の製造において有用な化合物である。例えば、シクロブタンアミノ酸はペプチド合成において有用であり、癌治療用ホウ素中性子捕獲療法(BNCT)で使用するのに有用である(参考文献 Kabalka, G. W.; Yao, M.-L., Tetrahedron Lett., 2003, 1879-1881. Srivastava, R. R.; Singhaus, R. R. and Kabalka, G. W. J. Org. Chem. 1999, 64, 8495-8500. Srivastava, R. R.; Kabalka, G. W. J. Org. Chem. 1997, 62, 8730-8734. Srivastava, R. R.; Singhaus, R. R. and Kabalka, G. W. J. Org. Chem. 1997, 62, 4476-4478.)。したがって、安価であり、扱いやすい材料を用いて、これらの生成物を製造するためのスケールの変更が可能な合成ルートが、技術的に必要とされている。
技術において、シクロアルキルアミノ酸の合成ルートがいくつか報告されている。1937年に、Demyanovは、シクロブタンジアミドからヒダントインへの転位、さらに塩基性加水分解によってスキームIに示される化合物の製造方法を報告し(Demyanov, N.A.; Tel'nov, S.M. Izv. Akad. Nauk. SSSR, Ser. Khim. 1937, 529)、
【化1】

1964年に再度記載した(Dvonch, W.; Fletcher, H.; Alburn, H.E. J. Org. Chem. 1964, 29, 2764)。異なるターゲットに対するこのスキームの最新の変化はTanaka, K.-I.; Iwabuchi, H.; Sawanishi, H. Tetrahedron: Asymmetry 1995, 6(9), 2271に見出すことができる。
【0004】
また、シュトレッカー反応はケトン及びアルデヒドからアミノ酸を製造する公知の方法である(Strecker, A. Ann. 1850, 75, 27)。レビューとして、Barrett, G.C., Chemistry and Biochemistry of the Aminoacids (Chapman and Hall, New York, 1985), pp 251-261を参照のこと。また、シュトレッカー反応はオキセタノンでも使用されている(Kozikowski, A.P.; Fauq, A.H. Synlett 1991, 783)。
シクロブタノンのヒダントインへの変換が報告されている(Goodman, M.; Tsang, J.W.; Schmied, B.; Nyfeler, R. J. Med. Chem. 1984, 27, 1663、Coomeyras, A.; Rousset, A.; Lasperas, M. Tetrahedron 1980, 36, 2649)。
シクロアルキルアミノ酸の別の製造ルートは下記スキームIIに示されるようなカーチス転位によるものである(Haefliger, W.; Kloppner, E. Helv. Chim. Acta 1982, 65, 1837)。
【0005】
【化2】

スキームII
【0006】
また、酸アミドのホフマン転位も報告されている(Huang, Lin and Li, J. Chin. Chem. Soc., 1947, 15, 33-50; Lin, Li and Huang, Sci. Technol. China, 1948, 1, 9; Huang, J. Chin. Chem. Soc., 1948, 15, 227: M. L., Izquierdo, I. Arenal, M. Bernabe, E. Alvearez, E. F., Tetrahedron, 1985, 41, 215-220: Zitsane, D. R.; Ravinya, I. T.; Riikure, I. A.; Tetere, Z. F.; Gudrinietse, E. Yu.; Kalei, U. O.; Russ.J.Org.Chem.; EN; 35; 10; 1999; 1457 - 1460; Zorkae; Zh.Org.Khim.; RU; 35; 10; 1999; 1489 - 1492)。NBS/DBUを用いるホフマン反応についても記載されている(X. Huang, M. Seid, J. W, Keillor, J. Org. Chem. 1997, 62, 7495-7496)。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の説明)
本発明の最も広い局面は式Iのシクロアルキルアミノ酸化合物及びその薬剤的に容認できる塩、塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、光学異性体、鏡像異性体、ジアステレオ異性体及びラセミ混合物、エステル、互変異性体、個々の異性体、及び異性体の混合物を提供する。
【化3】

(式中、
Aはシクロアルキル(随意に部分的に又はすべてがハロゲン化され、また随意に1つ又は2つ以上のOH、NH2、C1-6、SO2、フェニル又はCF3で置換される。)であり、
XはC0-8である。)
【0008】
また、本発明は式Iのシクロアルキルアミノ酸の製造方法に関するものであり、
【化4】

以下の工程を含む。
【0009】
工程a)アミノ化
【化5】

(式中、
Aは、随意に部分的に又はすべてがハロゲン化され、また随意に1つ又は2つ以上のOH、NH2、C1-6、SO2、フェニル又はCF3で置換され、
XはC0-8である。)
【0010】
工程b)酸処理
【化6】

(式中、Xは上述のとおり定義される。)
【0011】
本発明の別の実施態様において、Xは0又は1である。
本発明の別の実施態様において、メタノールはアルコール溶媒として使用される。
本発明の別の実施態様において、アルコールは無機塩の濾過前に除去される。
また、本発明は本明細書に記載される方法を用いて調製されるシクロアルキルアミノ酸の生成において有用である一般式IIのシクロアミノニトリル化合物を提供する。
【化7】

(式中、Aはシクロアルキル(随意に部分的に又はすべてがハロゲン化され、また随意に1つ又は2つ以上のOH、NH2、C1-6、SO2、フェニル又はCF3で置換される。)であり、Xは0〜8である。)
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(用語及び定義)
(使用される化学命名法及び決まりごと)
本明細書で具体的に定義されない用語は、開示及び文脈に照らして当業者によって与えられるであろう意味に理解されるべきである。しかしながら、それと反対の記載がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用されるように、以下の用語は示される意味を有し、以下の決まりごとに従う。
用語「本発明の化合物」及び同等の表現は本明細書に記載される一般式を包含することを意味し、文脈が許す場合、互変異性体、プロドラッグ、塩、特に薬剤的に容認できる塩、並びにその溶媒和物及び水和物などが挙げられる。一般に及び好ましくは、本発明の化合物及び本発明の化合物を表す式は、安定でない化合物が一般式によって文字通り包含されると考えられる場合であっても、その安定な化合物のみを含み、安定でない化合物を含まないと理解される。同様に、中間体への言及は、それら自体を特許請求の範囲に記載しているか否かに関わらず、文脈が許す場合、その塩及び溶媒和物を包含することを意味する。明確にするために、文脈が許す場合、特別な例がしばしば本明細書に示されるが、これらの例は一例に過ぎず、文脈が許す場合、他の例を排除することを意図しない。
【0013】
用語「随意の」又は「随意に」は、後に記載される事象又は情況が生じても、生じなくてもよいことを意味し、この記述は、事象又は情況が生じる場合の例及びそれが生じない例を含むことを意味する。例えば、「随意に置換されたシクロアルキル」はシクロアルキル基が置換されていても、されていなくてもよいことを意味し、この記述が置換されたシクロアルキル基及び置換基を持たないシクロアルキル基の両方を含むことを意味する。
用語「置換された」は、基又は部分の原子の任意の1つ又は2つ以上の水素が、具体的に指定されているか否かを問わず、置換基の指定されたグループからの選択物によって置換されることを意味するが、原子の通常の原子価を超えず、その置換によって安定な化合物が得られる事を条件とする。置換基への結合が環の2つの原子を結ぶ結合と交差して示される場合、その置換基は環の任意の原子に結合してもよい。置換基が列記されているが、該置換基がそれを介して化合物の残りの部分に結合される原子が示されていない場合、該置換基は該置換基の任意の原子を介して結合されてもよい。一般に、任意の置換基又は基が任意の構成成分又は化合物において1回よりも多く生じている場合、各置換基についてのその定義は、すべての他の置換基のその定義から独立である。しかしながら、前記置換基及び/又はその数の組合せは、安定な化合物が得られる場合にのみ許される。
本明細書に記載される各反応の収量は理論上の収率として表される。
【0014】
用語「薬剤的に容認できる塩」は、健全な医学上の判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを生じないでヒト及び下等動物の組織と接触して使用するのに適し、相応の利益/リスク比に見合っており、一般に水又は油溶性若しくは分散性を有し、その使用目的に有効である本発明の化合物の塩を意味する。この用語は薬剤的に容認できる酸付加塩及び薬剤的に容認できる塩基付加塩を含む。本発明の化合物はフリーベース及び塩の形態の両方で有用であるため、実際には、塩の形態の使用はベースの形態の使用に等しい。適した塩のリストは、例えばS.M. Birge et al., J. Pharm. Sci., 1977, 66, pp. 1-19に見出され、その全内容は参照によって本明細書に組み込まれるものとする。
用語「水和物」は溶媒分子がH2Oである場合の溶媒和物を意味する。
以下で考察するように本発明の化合物はそのフリーベース又は酸、その塩、溶媒和物及びプロドラッグを含み、その分子構造において酸化された硫黄原子又は4級化された窒素原子、明示的に記載又は示されていないが、特にその薬剤的に容認できる形態を含んでもよい。前記形態、特に薬剤的に容認できる形態は特許請求の範囲に包含されることを意図する。
【0015】
用語「異性体」は同じ数及び種類の原子を有し、したがって同じ分子量であるが、空間における原子の配列又は立体配置に関して異なっている化合物を意味する。この用語は立体異性体及び幾何異性体を含む。
用語「立体異性体」又は「光学異性体」は少なくとも1つのキラル原子又は垂直な非対称面を生じる制限された回転(例えば、特定のビフェニル、アレン及びスピロ化合物)を有する安定な異性体を意味し、平面偏光を回転できる。不斉中心及び他の化学構造が立体異性体を生じるかもしれない本発明の化合物中に存在するために、本発明は立体異性体及びその混合物を想定している。本発明の化合物及びその塩は不斉炭素原子を含み、したがって単一の立体異性体、ラセミ体並びに鏡像異性体及びジアステレオマーの混合物として存在してもよい。典型的には、前記化合物はラセミ混合物として調製される。しかしながら、必要に応じて、前記化合物は純粋な立体異性体、すなわち個々の鏡像異性体若しくはジアステレオマー又は立体異性体に富む混合物として調製又は単離することができる。以下でより詳細に考察するように、化合物の個々の立体異性体は、所望のキラル中心を含む随意に活性な出発材料から合成により、又は鏡像異性体生成物の混合物の調製、続く分離又は分割(例えば、鏡像異性体の混合物への変換、続く分離又は再結晶化、クロマトグラフィ技術、キラル分解剤の使用、又はキラルクロマトグラフィカラムでの鏡像異性体の直接分離)によって調製される。特定の立体化学の出発化合物は市販され、又は以下に記載される方法によって製造され、技術的によく知られた方法によって分離される。
【0016】
用語「鏡像異性体」は互いに重ね合わせることができない鏡像である立体異性体の対を意味する。
用語「ジアステレオ異性体」又は「ジアステレオマー」は互いに鏡像ではない光学異性体を意味する。
用語「ラセミ混合物」又は「ラセミ体」は等しい量の個々の鏡像異性体を含む混合物を意味する。
用語「非ラセミ混合物」は等しくない量の個々の鏡像異性体を含む混合物を意味する。
本発明のいくつかの化合物は1つよりも多い互変異性型で存在できる。上述のとおり、本発明の化合物はすべてのそのような互変異性体を含む。
化合物の生物活性及び薬理作用が化合物の立体化学に感受性があることは技術的に周知である。このように、例えば、鏡像異性体はしばしば薬物動態学的特性(例えば、代謝、タンパク質結合など)及び薬理学的特性(例えば、示される活性の種類、活性の程度、毒性など)における相違などの著しく異なる生物活性を示す。このように、当業者は、1つの鏡像異性体が、他の鏡像異性体に対して多く含まれている場合又は他の鏡像異性体から分離されている場合に、より活性であり、又は有益な効果を示す場合があることを理解している。さらに、当業者は本発明の化合物の鏡像異性体を分離、富化又は選択的に調製する方法を本明細書の開示及び従来技術の知識から理解するであろう。
【0017】
このように、薬剤のラセミ形態を使用してもよいが、それはしばしば等しい量の鏡像異性的に純粋な薬剤を投与するよりも効果が低く、場合によっては、1つの鏡像異性体は薬理学的に不活性であり、単に希釈剤として作用するのみであるかもしれない。例えば、イブプロフェンはラセミ体として以前から投与されているが、イブプロフェンのS-異性体のみが抗炎症剤として有効であることが知られている(しかしながら、イブプロフェンの場合、R-異性体は不活性であるが、それはインビボでS-異性体に変換され、したがって薬剤のラセミ形態の活性の速さは純粋なS-異性体よりも遅い)。さらに、鏡像異性体の薬理学的な活性は異なる生物活性を有する場合がある。例えば、S-ペニシラミンは慢性関節炎用治療剤であるが、R-ペニシラミンは有毒である。純粋な個々の異性体がラセミ混合物と比較してより速い径皮性浸透率を有することが報告されており(米国特許第5,114,946号及び第4,818,541号参照)、実際、いくつかの純粋な鏡像異性体はラセミ体に対して利点を有する。
このように、1つの鏡像異性体が他の鏡像異性体よりも薬理学的に高い活性、低い毒性であり、又は体内での好ましい処分を有する場合、その鏡像異性体が優先的に投与されることは治療上より大きな利点であろう。このように、治療を受けている患者が曝される薬剤の合計投与量はより少なくなり、おそらく毒性を有する又は他の鏡像異性体の阻害剤である鏡像異性体の投与量はより少なくなるであろう。
【0018】
純粋な鏡像異性体又は所望の鏡像体過剰率(ee)又は鏡像異性体の純度の混合物の調製は、(a)鏡像異性体の分離又は分割、又は(b)当業者に知られたエナンチオ選択性合成の多くの方法の1つ又は2つ以上、又はその組合せによって達成される。これらの分割方法は、一般に不斉認識を基にし、例えばキラル固定相を用いるクロマトグラフィ、エナンチオ選択性ホスト-ゲスト複合体形成、キラル補助基を用いる分割又は合成、エナンチオ選択性合成、酵素及び非酵素動力学的分割、又は自発的エナンチオ選択性結晶化などが挙げられる。前記方法はChiral Separation Techniques: A Practical Approach (2nd Ed.), G. Subramanian (ed.), Wiley-VCH, 2000; T.E. Beesley and R.P.W. Scott, Chiral Chromatography, John Wiley & Sons, 1999; 及びSatinder Ahuja, Chiral Separations by Chromatography, Am. Chem. Soc., 2000に一般に開示されている。さらに、同様に鏡像体過剰率又は純度の定量化のためのよく知られた方法、例えばGC、HPLC、CE又はNMRがあり、絶対配置及び高次構造の割り当てのためのよく知られた方法、例えばCD ORD、X線結晶学又はNMRがある。
一般に、個々の幾何異性体又は立体異性体又はラセミ若しくは非ラセミ混合物であるかに関わらず、特定の立体化学又は異性体形態が化合物名又は構造において特に示されていない限り、化学構造又は化合物のすべての互変異性形態及び異性体形態及び混合物が意図される。
【0019】
シクロアルカノン(Cycloalkyanones)−当然のことながら、シクロブタノンのような異なるシクロアルカノンを本発明で使用できる。シクロアルカノンは、ディークマン縮合によって古典的に調製されるシクロアルカノンに記載される一般的な方法に従って調製できる(Schaefer, J.P., and Bloomfield, J.J. Org. React. 1967, 15, 1-203)。また、それらは適したアルコールの酸化によっても調製できる。また、シクロアルカノンは市販されている。好ましいシクロアルカノン(cycloalkylalanone)はシクロブタノンである。
【0020】
溶媒−当然のことながら、多くの異なる溶媒を本発明で使用できる。容認できる溶媒としては、1〜5個の炭素を含む線状及び分岐アルコールなどが挙げられるが、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール及びイソプロパノール、sec-ブタノール、tert-ブタノールからなるリストに限定されない。無水アルコールは、ニトリルの早期の加水分解を防止し、アミノニトリルの形成を促進する。好ましい溶媒はメタノールである。
【0021】
シアン化物塩−当然のことながら、異なるシアン化物塩を本発明で使用できる。容認できるシアン化物塩としてはNaCN、KCN、LiCN、TMSCNなどが挙げられるが、これらからなるリストに限定されないが、。好ましいシアン化物塩はCaCNである。
【0022】
アミン−当然のことながら、その後の工程で第1級アミンに変換され得るNH3以外の試薬も本発明で利用できる。脂肪族第1級アミンを使用してもよい。好ましい試薬はNH3である。
【0023】
無機乾燥剤−無機乾燥剤を本発明で使用してもよい。適した無機乾燥剤としては、これに限定されないが、MgSO4、NaSO4及びモレキュラーシーブなどが挙げられる。好ましい乾燥剤はMgSO4である。
【0024】
加水分解剤−当然のことながら、多くの加水分解剤を本発明で使用できる。加水分解剤は、好ましくは水性剤、例えばリン酸、硫酸、スルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸及び塩酸である。最も好ましい加水分解剤は塩酸である。
【0025】
緩衝溶液−当然のことながら、緩衝溶液を本発明で使用でき、存在するNH3のような塩基及び弱酸(NH4Cl)を有することによって、より良い変換が達成できる。使用できる他の塩基及び弱酸としては、NH4OAc、NH4NO3及び(NH42SO4などが挙げられる。
【0026】
(一般的な合成方法)
本発明は一般式Iのシクロアルキルアミノ酸の組成物及びその調製方法を提供する。
【化8】

(式中、X及びAは本明細書で定義されるとおりである。)
【0027】
また、本発明は式(I)の化合物の製造方法を提供する。本発明の化合物の調製において使用される中間体は市販されており、また当業者に公知の方法によっても容易に調製される。
最適な反応条件及び反応時間は、使用される特定の反応物に応じて変わり得る。特別の定めのない限り、溶媒、温度、圧力及び他の反応条件は当業者によって容易に選択され得る。特別の手順は合成例セクションで与えられる。典型的には、反応の進行は、必要に応じて、HPLC又は薄層クロマトグラフィ(TLC)によってモニターしてもよく、中間体及び生成物はシリカゲルでクロマトグラフィによって及び/又は再結晶によって精製してもよい。







【0028】
工程a)アミノ化
【化9】

(式中、
Aはシクロアルキル(随意に部分的に又はすべてがハロゲン化され、また随意に1つ又は2つ以上のOH、NH2、C1-6、SO2、フェニル又はCF3で置換される。)であり、
XはC0-8である。)
【0029】
(手順)
フラスコ、反応器又は他の適した容器を不活性雰囲気下で機械式攪拌機を有する還流冷却器と組み合わせる。容器を排気し、不活性化し、次いで2〜100当量のMgSO4、NaSO4及びモレキュラーシーブのような無機乾燥剤及びシアン化物塩を入れる。次いで、NH4Cl又はNH4OAcのようなアンモニウム塩を加え、使用されるケトンに対して0.1〜10モル当量を用いる。次いで、容器を再度不活性化し、NH3の無水アルコール溶液を入れる。1〜5個の炭素原子を含む線状及び分岐アルコールを使用してもよく、NH3濃度は飽和(使用されるアルコールに依存するが、しばしば4〜5M)〜希釈した(0.25M程度)範囲で変えてもよい。NH3モル当量は使用されるケトンのモル当量を上回る必要がある。次いで、この十分に攪拌した混合物にケトン(そのまま、又は適したアルコールの溶液として)を加える。次いで、混合物を1〜48時間0℃〜60℃で、好ましくは25℃〜60℃で、分析によってケトンの消費が明らかとなるまで攪拌する。混合物を冷却し、溶媒を減圧下周囲温度で除去する。低又は高真空を使用してもよく、任意の非極性非プロトン性有機溶媒を任意の時間で添加してアルコールを共沸により除去してもよい。好ましい非プロトン剤としては、EtOAc、iPrOAc、Et2O、MTBE、ジブチルエーテル、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン及びトルエンなどが挙げられる。分析によりアルコール含量が5容量%未満であることが明らかとなったときに、得られるスラリーを0℃〜40℃に冷却し、不活性雰囲気下で濾過又は遠心分離してすべての無機不純物を除去する。次いで、アミノニトリルを含む濾液を無水酸溶液で処理してアミノニトリル酸塩を沈殿させる。
【0030】
極性アルコール溶媒の除去は無機塩の濾過前に行われる。無機塩はアルコール溶媒にいくらかの溶解性を有するために、濾過を最初に行うことは、生成物が無機不純物によって汚染されることを意味する。したがって、アルコールの除去後に濾過を行うことにより、無機不純物の無い生成物を得ることができる。最終生成物であるアミノ酸が、無機物が溶解する同じ溶媒すべてに溶解し、精製が非常に難しいために、このことは有利であると考えられる。
使用される酸は非極性有機溶媒に溶解する有機又は無機酸のいずれであってもよく、気体として加えられてもよい。酸の濃度は0.1M〜6Mの範囲であってもよく、酸の当量はモル基剤に対するケトン含有量の少なくとも75%でなければならない。次いで、得られるスラリーを0.1〜48時間-80℃〜25℃の温度で攪拌して塩の形成を完了する。次いで、得られるスラリーを不活性雰囲気下で濾過又は遠心分離して固体としてアミノニトリル酸塩を単離する。次いで、この塩を一定重量になるまで乾燥してもよく、又は随意に5〜500容量%のバッチ容量で洗浄し、次いで一定重量になるまで乾燥してもよい。温度を下げて濾液を放置し、後に再濾過又は遠心分離してアミノニトリル酸塩の第2生成物(second crop)を得てもよい。
また、アミノニトリルをその酸塩に変換する利点は有機溶媒において生じると考えられる。これは、存在してもよい有機不純物の除去を与える。ここで、無機不純物の除去及び有機不純物の除去の組合せにより、アミノニトリル酸塩は非常に高い純度で生成される。これにより、非常に高い収率及び純度で、加水分解工程でアミノ酸を生成できる。高純度は90%であり、最も好ましくは95%であると考えられる。
【0031】
工程b)酸処理
【化10】

(式中、A及びXはすぐ上で定義されている。)
【0032】
(手順)
アミノニトリル酸塩をフラスコ、反応器又は他の適した容器に入れる。次いで、強酸水溶液を加える。随意に、C1-5アルコールのような極性共溶媒又はグリムを加えてもよい。酸の選択は広範であり、HCl、H2SO4、HNO3、H3PO4、メタンスルホン酸及び他の無機及び有機強酸などが挙げられる。酸の濃度は2M〜20Mの範囲であってもよい。次いで、分析によりニトリルが加水分解したことが示されるまで、加水分解を行う。これは25℃〜溶媒の沸点で生じるであろう。反応の終了時に、溶媒を減圧して除去し、その酸塩としてアミノ酸生成物を得る。極性溶媒を添加して生成物溶液を共沸により乾燥させてもよい。両性イオンが所望される場合、pHをアミノ酸の等電点近くに任意の適した塩基によって調整し、生成物を固体の沈殿物として単離し、又は任意の適した有機溶媒によって水性混合物の抽出を行う。
【実施例】
【0033】
(合成例)
本発明をより完全に理解するために、以下の実施例を記載する。これらの実施例は本発明の実施態様を説明するためのものであり、決して本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではなく、当業者によって認識されるように、特定の試薬又は条件は個々の化合物について要求されるように修正される。
【0034】
(実施例1)
【化11】

【0035】
(アミノニトリルHCl 2)
機械式攪拌機及び還流冷却器を有する4つ口1L丸底フラスコを排気/N2充填(3回)し、次いで23.6gのMgSO4(過剰量)、6.71gのNaCN(137mmol、1.02eq.)及び3.53gのNH4Cl(67.4mmol、0.5eq.)を入れた。フラスコを再び排気/N2充填(3回)し、次いで168mLの4.9M NH3/MeOH(825mmol、6.1eq.)を加えた。攪拌機を作動させ、次いで10.0mLのシクロブタノン 1(134mmol、1eq.)をそのまま加えた。次いで、混合物を16時間周囲温度でN2雰囲気下で攪拌し、次いで5時間55℃で加熱した。混合物を冷却し、すべての溶媒を高真空下で周囲温度で除去した。次いで、残渣を300mLのMTBEに懸濁し、N2雰囲気下で丸底フラスコに濾過し、150mLのMTBEを用いて固体を洗浄した。次いで、濾液を直ちに0℃に冷却し、75mLの2.87M HCl/MTBE(215mmol、1.6eq.)を滴下して処理した。2時間0℃で攪拌した後、スラリーをN2雰囲気下で濾過し、固体を回収した。濾液を0℃に冷却し、再度濾過した。すべての固体を150mLのMTBEでN2雰囲気下で洗浄して無色の固体として9.5gのアミノニトリルHCl 2(54%)を得た。13C NMR(下記)は純粋な化合物であることを示した。13C NMR (100 MHz, DMSO)δ: 119.20 (s), 46.29 (s), 31.44 (t), 14.66 (t)。
【0036】
(アミノ酸HCl 3)
1.00gのアミノニトリルHCl(7.55mmol、1eq.)を10mLの6N HClに溶解し、加熱してN2雰囲気下で還流した。12時間後、混合物を周囲温度に冷却し、揮発性物質を高真空下で除去し、メタノールとともに共沸して最後に残った微量のH2Oを除去し、1.15gの無色固体のアミノ酸HCl 3(>99%)を得た。13C NMR(下記)は純粋な化合物であることを示した。13C NMR (100 MHz, DMSO)δ: 172.41 (s), 56.37 (s), 29.30 (t), 14.48 (t)。構造を確認したところ、市販のアミノ酸(Narchem Lot 45-34-D)のサンプルを6N HClによってそのHCl塩へ変換することによる問題はなく、13C NMRスペクトルが得られた。それは、上記合成サンプルと同一の13C NMR共鳴を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式Iのシクロアルキルアミノ酸化合物又はその薬剤的に容認できる塩、塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、光学異性体、鏡像異性体、ジアステレオ異性体、ラセミ混合物、エステル、互変異性体、個々の異性体、又は異性体の混合物。
【化1】

(式中、
Aはシクロアルキル(随意に部分的に又はすべてがハロゲン化され、また随意に1つ又は2つ以上のOH、NH2、C1-6、SO2、フェニル又はCF3で置換される。)であり、
XはC0-8である。)
【請求項2】
Xが0又は1である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
以下の工程を含む下記式Iのシクロアルキルアミノ酸の製造方法:
a)シクロアラノンのアミノ化をシアン化物塩、アミン及びアルコール溶媒によって行い、シクロアルキルアミノニトリルを得る工程、
b)工程Aの生成物を酸で処理してシクロアミノ酸を得る工程。
【化2】

(式中、
Aはシクロアルキル(随意に部分的に又はすべてがハロゲン化され、また随意に1つ又は2つ以上のOH、NH2、C1-6、SO2、フェニル又はCF3で置換される。)であり、
XはC0-8である。)
【請求項4】
塩がNaCN、KCN、LiCN又はTMSCNから選ばれる、請求項3記載の方法。
【請求項5】
塩がNaCNから選ばれる、請求項3記載の方法。
【請求項6】
アルコールがメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、sec-ブタノール又はtert-ブタノールから選ばれる、請求項3記載の方法。
【請求項7】
アルコールがメタノールである、請求項3記載の方法。
【請求項8】
アルコールが無機塩を濾過する前に除去される、請求項3記載の方法。
【請求項9】
以下の工程を含む請求項3記載の式Iの化合物の製造方法:
a)シクロアラノンのアミノ化をシアン化ナトリウム塩、アミン及びメタノールによって行い、シクロブチルアミノニトリルを得る工程、
b)工程Aの生成物をHClで処理してシクロアミノ酸を得る工程。
【化3】

(式中、
Aはシクロアルキル(随意に部分的に又はすべてがハロゲン化され、また随意に1つ又は2つ以上のOH、NH2、C1-6、SO2、フェニル又はCF3で置換される。)であり、
XはC0である。)
【請求項10】
下記一般式IIの化合物。
【化4】

(式中、Aはシクロアルキル(随意に部分的に又はすべてがハロゲン化され、また随意に1つ又は2つ以上のOH、NH2、C1-6、SO2、フェニル又はCF3で置換される。)であり、
Xは0〜8である。)

【公表番号】特表2007−503445(P2007−503445A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524785(P2006−524785)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/027423
【国際公開番号】WO2005/021485
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】