説明

シクロオキシゲナーゼ2の選択的阻害を示す複雑な混合物

【課題】誘導性シクロオキシゲナーゼ2(COX−2)の選択的阻害を示す活性成分の複雑な混合物を含む組成物およびCOX−2媒介性のプロスタグランジン合成の選択的阻害のための方法を提供すること。
【解決手段】本質的に、α酸およびβ酸から構成される組成物であって、該α酸およびβ酸が、投与された場合、COX−1活性に対する最小の効果を有しつつ、誘導性COX−2活性を阻害し得る比で存在する、組成物。栄養補助食品を補充するための方法であって、該方法は、炎症の症状に罹患している動物に、上記組成物を投与する工程を包含し、該組成物は、0.01〜100mg/体重/日のα酸、0.01〜100mg/体重/日のβ酸を提供する用に処方される、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般に誘導性シクロオキシゲナーゼ2(COX−2)の選択的阻害を示す活性成分の複雑な混合物を含む組成物およびCOX−2媒介性のプロスタグランジン合成の選択的阻害のための方法に関する。より詳しくは、この組成物は、ホップ(Humulus lupulus)の抽出物から単離される活性成分の混合物を含有する。この組成物は、構成的なシクロオキシゲナーゼ(COX−1)に有意な影響がほとんどないかまたは全くなしで、誘導性シクロオキシゲナーゼ2(COX−2)の誘導性および/または活性を阻害するように機能する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
炎症性疾患は、5千万より多いアメリカ人が罹患する。この10〜15年にわたる分子免疫学および細胞免疫学における基礎研究の結果として、これらの免疫学的に基づく疾患を診断し、処置し、そして予防するアプローチは、劇的に変化した。この1例は、シクロオキシゲナーゼ酵素の誘導型の発見である。構成的シクロオキシゲナーゼ(COX)(最初に1976年に精製され、1988年にクローニングされた)は、アラキドン酸(AA)からのプロスタグランジン(PG)の合成において機能する。その精製の3年後、COX活性を有する誘導性酵素が同定され、名称COX−2を与えられ、一方、構成的COXは、COX−1と称された。
【0003】
COX−2遺伝子発現は、炎症誘発性のサイトカインおよび増殖因子の制御下にある。故に、推論として、COX−2は、炎症および細胞増殖の制御の両方において機能する。COX−2は、多くの組織で誘導性であるが、脳および脊髄(ここでCOX−2は、疼痛および発熱に関する神経伝達において機能し得る)では構成的に存在する。COXの2つのアイソフォームは、構造においてほとんど同一であるが、基質およびインヒビター選択性ならびに細胞内局在において重要な違いを有する。保護的PG(これは、胃の内面の完全性を保ち、易感染性の腎臓において正常な腎臓機能を維持する)は、COX−1によって合成される。一方、免疫細胞においてCOX−2によって合成されるPGは、炎症プロセスの中心に位置する。
【0004】
COX−2の発見は、COX−1によって産生される胃および腎臓中の保護的PGを除去することなく、炎症を低減する薬物の設計を可能にした。本発明の組合せは、被験体における炎症の処置、および炎症関連傷害の処置(例えば、疼痛および頭痛の処置における鎮痛剤として、または発熱の処置のための解熱剤として)に有用であるが、これらに限定されない。例えば、本発明の組合せは、関節炎(関節リウマチ、脊椎関節症(spondyloathopathies)、痛風性関節炎、変形性関節症、全身性エリテマトーデスおよび若年性関節炎を含むがこれらに限定されない)の処置に有用である。本発明のこのような組合せは、喘息、気管支炎、月経痙攣、腱炎、滑液包炎ならびに乾癬、湿疹、火傷および皮膚炎のような皮膚に関連した状態の処置において有用である。本発明の組合せはまた、炎症性腸疾患、クローン病、胃炎、過敏性腸症候群および潰瘍性結腸炎のような胃腸の状態を処置するために、ならびに結腸直腸癌のような癌の予防または処置のために有用である。本発明の組成物は、以下のような疾患における炎症の処置のために有用である:血管の疾患、偏頭痛、結節性動脈周囲炎、甲状腺炎、再生不良性貧血、ホジキン病、強皮症(sclerodma)、リウマチ熱、I型糖尿病、重症筋無力症、多発性硬化症、サルコイドーシス(sacoidosis)、ネフローゼ症候群、ベーチェット症候群(Behchet’s syndrome)、多発性筋炎、歯肉炎、過敏症、外傷後におこる腫脹、心筋虚血など。
【0005】
本発明の組成物はまた、網膜症、結膜炎、ブドウ膜炎、目の光恐怖症、目の組織への急性損傷のような眼の疾患の処置において有用である。この組成物はまた、ウイルス感染および嚢胞性線維症に関連するような肺の炎症の処置において有用である。この化合物はまた、皮質痴呆(アルツハイマー病を含む)のような特定の神経系障害の処置のために有用である。本発明の組合せは、有意に少ない有害な副作用を有するさらなる利点を備える(関節炎の処置のためのような)抗炎症剤として有用である。PGE2のCOX−2媒介性生合成のインヒビターとして、これらの組成物はまた、アレルギー性鼻炎、呼吸窮迫症候群、内毒素ショック症候群、アテローム性動脈硬化症、ならびに発作、虚血および外傷に起因する中枢神経系の損傷の処置において有用である。
【0006】
ヒトの処置に有用であること以外に、これらの化合物はまた、他の動物(ウマ、イヌ、ネコ、トリ、ヒツジ、ブタなどを含む)の処置のために有用である。炎症の処置のための理想的な処方物は、COX−1の活性に影響することなく、COX−2の誘導および活性を阻害する。歴史的には、炎症の処置のために使用される非ステロイド性およびステロイド性の抗炎症剤は、COX−1に影響することなくCOX−2を阻害する特異性を欠く。従って、ほとんどの抗炎症剤が長期の期間使用された場合、胃腸系を損傷する。故に、炎症および炎症に基づく疾患に対する新たなCOX−2特異的処置が緊急に必要とされる。
【0007】
一つの形態または別の形態中のホップ抽出は、水およびアルコール中の抽出が最初に試みられた、19世紀初頭まで150年以上遡る。今日でさえ、エタノール抽出は、ヨーロッパで利用可能であるが、圧倒的に優勢な抽出は、有機溶媒抽出物(ヘキサン)およびCO抽出(超臨界および液体)である。CO(代表的には60バール圧および5〜10℃)は、液体状態であり、そしてホップのやわらかい樹脂および油に対して非常に特異的な、比較的穏やかな、非極性の溶媒である。臨界点を超えると、代表的には、300バール圧および60℃において、COは、気体および液体の両方の特性を有し、かなりより強い溶媒である。種々の抽出物の組成が、表1において比較される。
【0008】
【表1】

【0009】
最も簡潔には、ホップ抽出は、製粉(milling)する工程、ペレット化する工程、およびリュープリンを広げるためのホップを再製粉する工程、樹脂成分を回収するために溶媒を充填カラムに通過させ、そして最後に全樹脂抽出物または「純粋な」樹脂抽出物を得るために溶媒を除去する工程を含む。
【0010】
主要な有機抽出溶媒は、強い溶媒であり、実質的に全てのリュ−プリン成分に加えて、植物色素、クチクラ蝋、水および水溶性物質を抽出する。
【0011】
超臨界COは、有機溶媒より選択的であり、より少ないタンニンおよび蝋ならびにより少ない水およびそれ故より少ない水溶性成分を抽出する。超臨界COは、クロロフィルのようないくつかの植物色素を抽出するが、有機溶媒が抽出するよりもかなり少ない。液体COは、ホップについて商業的に使用される最も選択的な溶媒であり、従って最も純粋な全樹脂および油抽出物を産生する。液体COは、硬い樹脂またはタンニンを全く抽出せず、植物蝋を非常に少量抽出し、植物色素を抽出せず、そしてより少ない水および水溶性成分しか抽出しない。
【0012】
この選択性および穏やかな溶媒の特性の結果として、ホップの単位重量あたりの液体CO抽出物の絶対的な収量は、他に言及された溶媒を使用する場合よりも少ない。さらに、液体COでのα酸の収量(89〜93%)は、超臨界COの収量(91〜94%)または有機溶媒の収量(93〜96%)よりも低い。抽出後、溶媒の除去の過程があり、これは有機溶媒については、揮発を起こすための加熱を含む。それにもかかわらず、微量の溶媒が、抽出物中に残る。しかしながら、COの除去は、COを揮発させるための圧力の解放を単に必要とする。
【0013】
ホップ抽出物由来のフムロンの骨吸収のインヒビターとしての同定は、非特許文献1に報告される。同じグループによる後の研究は、フムロンの作用のメカニズムをMC3T3−E1細胞のTNFα刺激後のCOX−2遺伝子転写の阻害として特徴づけている[非特許文献2]。
【0014】
従って、COX−1にほとんど影響がないかまたは全く影響なく、COX−2によるプロスタグランジンの合成を特異的に阻害または防止する化合物の天然処方物を同定することが有用である。関節組織の健康を維持し、関節炎または他の炎症性状態を処置するために有用である、このような処方物は、未だに発見されていない。用語「特異的または選択的なCOX−2インヒビター」は、COX−1よりもCOX−2を選択的に阻害する化合物または化合物の混合物を包含する。好ましくは、この化合物は、COX−1の阻害についての中央有効濃度より最小でも5倍高いCOX−2阻害についての中央有効濃度を有する。例えば、試験処方物のCOX−2についての中央阻害濃度が0.2μg/mLである場合、COX−1についての中央阻害濃度が1μg/mL以上でなければ、この処方物は、COX−2特異的とみなされない。
【0015】
グルコサミンは、変形性関節症の治療に効果的で安全であるとして一般的に認められているが、変性関節疾患の処置への医療的介入は、一般的に急性症状の軽減に制限される。医師は、一般的に、変形性関節症の処置に非ステロイド性およびステロイド性の抗炎症薬を利用する。しかし、これらの薬物は、長期の治療に十分適していない。なぜなら、これらの薬剤は、軟骨を増強および保護する能力を欠くだけでなく;軟骨の変性または軟骨の合成の低下を実際に導き得るからである。さらに、ほとんどの非ステロイド性の抗炎症薬は、長期間使用された場合、胃腸系を損傷する。従って、関節炎のための新たな処置が緊急に必要とされる。
【0016】
グルコサミンの関節保護特性は、以下の2つの欠点を除いて、グルコサミンを変形性関節症のための魅力的な治療薬にする:(1)グルコサミン処置に対する応答の速度は、抗炎症薬での処置よりも遅く、そして(2)グルコサミンは、変性の回復の予測を実行し損ない得る。グルコサミンを非ステロイド性抗炎症薬と比較する研究において、例えば、1日あたり1500mg硫酸グルコサミンを1200mgのイブプロフェンと比較する二重盲検は、最初の2週間の間に、イブプロフェン患者においてグルコサミン処置患者より早く、疼痛スコア(pain score)が減少したことを示した。しかし、疼痛スコアにおける減少は、グルコサミンを受けた患者において試験期間中続き、2群の間の差は、8週までにグルコサミンに有利に有意に変わった。非特許文献3。従って、グルコサミンは、利用可能な抗炎症薬より遅い速度で関節炎の疼痛および炎症を軽減し得る。
【0017】
軟骨の代謝の正常化または変形性関節症の処置のための理想的な処方物は、強力な抗炎症活性を有する適切な軟骨保護(chondroprotection)を提供する。変形性関節症のための最適な栄養補助食品は、グルコサミンによって提供される一般的な関節再構築特性を増強し、そして任意の有害な副作用を導入することなく炎症応答を弱めるべきである。これは、安価に製造されるべきであり、全ての政府の規制に従うべきである。
【0018】
しかし、現在利用可能なグルコサミン処方物は、変形性関節症および関節リウマチの根底の問題を最適に攻撃し、そして軽減するように処方されていない。さらに、多くの市販のハーブの補助食品および栄養補助食品のように、利用可能な処方物は、その安全性および有効性を確証し得る利用の歴史も制御された臨床試験も有さない。
【0019】
従って、COX−2酵素活性の発現を特異的に阻害するかまたは抑制するが、COX−1代謝にほとんどまたは全く影響を有ない組成物の同定が有用であり、その結果、これらは、有害な副作用がない十分に低い用量または現在の臨床用量で使用され得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Tobe,Hら、「Bone resorption Inhibitors from hop extract」Biosci.Biotech.Biochem,1997,61(1)158〜159
【非特許文献2】Yamamoto,K.「Suppression of cyclooxigenase−2 gene transcription by humulon of bee hop extract studied with reference to glucocorticoid」FEBS Letters,2000,465:103〜106
【非特許文献3】Lopes Vaz,A.,「Double−blind clinical evaluation of the relative efficacy of ibuprofen and glucosamine sulphate in the management of osteoarthritis of the knee in outpatients」,Curr.Med Res Opin.(1982)8,145〜149
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0021】
(本発明の要旨)
本発明は、成分IおよびIIは同じではないという条件で、α酸およびβ酸からなる群から選択される、有効量の成分I、ならびに、α酸、β酸、精油、脂肪およびワックスからなる群から選択される、少なくとも1つの有効量の成分IIを含む組成物提供する。好ましくは、この組成物は、α酸、β酸および精油からなる群から選択される、2つ以上の活性成分を含む。この本発明の活性成分は、好ましくは、ホップ抽出物から作られる。組成物は、COX−1に対して殆ど影響しないか、または全く影響しないで誘導性COX−2の活性を阻害するように、相乗的に機能する。
【0022】
本発明はさらに、結合運動を正常化するようグルコサミンまたはコンドロイチン硫酸の機能を増強するか、または変形性関節症の症状を軽減させる組成物を提供する。
【0023】
本発明の1つの特定の実施形態は、30重量%〜60重量%のα酸、15重量%〜45重量%のβ酸および3重量%〜6重量%の精油を含む組成物である。この組成物は、必要に応じて2重量%〜8重量%の脂肪およびワックスを含む。好ましくは、α酸、β酸、精油、脂肪およびワックスは、好ましくはCO抽出により調製された、ホップ抽出物由来である。
【0024】
本発明はさらに、食餌補助の方法、および動物における炎症または炎症に基く疾患の処置の方法を提供し、この方法は、炎症の徴候を有する患者にα酸、β酸および精油からなる群から選択される2つ以上の活性成分を含む本発明の組成物を投与する工程、および症状が消失するかまたは軽減するまで、この組成物のこのような食餌補助を継続する工程を包含する。
・本発明はさらに、以下を提供し得る:
・(項目1)
α酸およびβ酸から本質的になる組成物であって、
該α酸およびβ酸は、投与された場合、COX−1活性に対する最小の効果を有しつつ誘導性COX−2活性を阻害し得る比で存在する、
組成物。
・(項目2)
30〜60%のα酸、15〜45%のβ酸から本質的になる組成物であって、
該組成物は、投与された場合、COX−1活性に対する最小の効果を有しつつ誘導性COX−2活性を阻害し得る、
組成物。
・(項目3)
項目1または2に記載の組成物であって、前記α酸およびβ酸が、CO抽出により調製されたホップ抽出物から作製された、組成物。
・(項目4)
CO抽出によって調製されたホップ抽出物から作製された精油をさらに含む、項目3に記載の組成物。
・(項目5)
項目1または2に記載の組成物であって、前記α酸が、フムロン、コフムロン、イソフムロン、イソプレフムロン、ヒュールポン(hulupone、アドフムロン、キサントヒュモール(xanthohumol)Aおよびキサントヒュモール(xanthohumol)Bからなる群より選択される、組成物。
・(項目6)
項目1または2に記載の組成物であって、前記β酸が、リュープロン、コリュープロン、アドリュープロン、テトラヒドロイソフムロンおよびヘキサヒドロコリュープロンからなる群より選択される、組成物。
・(項目7)
項目1または2に記載の組成物であって、抗酸化剤、ビタミン、ミネラル、タンパク質、脂肪、炭水化物、グルコサミン、コンドロイチン硫酸およびアミノ糖からなる群より選択される1つ以上のメンバーをさらに含む、組成物。
・(項目8)
食餌補助の方法であって、該方法は、
炎症の症状に罹患している動物に、項目1または2に記載の組成物を投与する工程
を包含し、
該組成物は、0.01〜100mg/体重/日のα酸、0.01〜100mg/体重/日のβ酸を提供するように処方された、
方法。
・(項目9)
項目8に記載の方法であって、前記組成物が、α酸またはβ酸の活性成分の0.001〜10,000ng/mLの血清濃度または標的組織濃度を維持するのに十分な量で投与される、方法。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(本発明の詳細な説明)
本発明の組成物、ならびにその作成および使用の方法を開示および、記載する前に、本発明は、プロセス工程のような特定の構成に限定されず、物質は他のものに変えられ得ることが理解される。本発明の範囲は、添付の請求項およびその等価物によってのみ制限されるので、本明細書内で使われる専門用語は、特定の実施形態を記載する目的のみのために使用され、制限することを意図しないことがまた、理解されることを意図している。
【0026】
本発明明細書および添付の請求項で使用する場合、単数形「a」「an」および「the」は、文脈中で明らかに別の意味を示していない限りは、複数の対象を含むことに注意されたい。
【0027】
本発明は、COX−2の活性に対して選択的な阻害作用を有する組成物を提供し、この組成物は、成分Iと成分IIが同じ化合物ではないという条件付で、α酸およびβ酸からなる群から選択される有効量の成分I、およびα酸、β酸、精油、脂肪およびワックスからなる群から選択される、少なくとも1つの有効量の成分IIを含む。さらに特に、この組成物は、α酸、β酸および精油からなる群から選択される2つ以上の活性成分を含む。好ましくは、この本発明の活性成分はホップ抽出物から作られる。好ましくは、組成物は、30重量%〜60重量%のα酸、15重量%〜45重量%のβ酸および3重量%〜6重量%の精油を含む。この組成物は、必要に応じて2重量%〜8重量%の脂肪およびワックスを含む。好ましくは、α酸、β酸、精油、脂肪またはワックスはCO抽出により調製された、ホップ抽出物由来である。本発明により提供される組成物は、食餌補助食品または治療的成分として処方され得る。この成分は、COX−1にほとんど影響しないかまたは全く影響しないで、COX−2の誘導および/もしくは活性を阻害するように機能する。
【0028】
本明細書中で使用する場合、用語「食餌補助食品」は、消費されて、生理現象において構造的変化または機能的変化に影響する化合物をいう。用語「治療的成分」は、投与されて、疾患を処置するまたは疾患を予防する任意の化合物をいう。
【0029】
本明細書で使用する場合、用語「COXインヒビター」は、COX−2酵素の活性または発現を阻害し得る、または、痛みや腫脹を含む、深刻な炎症応答を阻害し得るかまたはその重症度を軽減し得る、天然化合物の組成物をいう。
【0030】
本明細書で使用する場合、用語「ホップ抽出物」は、(1)ホップ植物産物を溶媒にさらし、(2)ホップの植物体産物から溶媒を分離し、(3)溶媒を除去することで得られる固形の物質をいう。
【0031】
本明細書で使用する場合、用語「溶媒」は、ホップ植物産物から固体の物質を抽出するのに必要な性質を有する水溶性の液体または有機的性質をいう。溶媒の例としては、水、蒸気、加熱水、メタノール、エタノール、ヘキサン、クロロホルム、液体CO、液体窒素またはそれらの物質の組み合わせが挙げられる。
【0032】
本明細書で使用する場合、用語「CO抽出物」は、ホップ植物産物を液体または臨界超過のCO調製物にさらした後、COを除去して得られる固体の物質をいう。
【0033】
本明細書で使用する場合、用語「α酸分画」は、ホップ植物産物から単離された化合物(中でも、フムロン、コフムロン、イソフムロン、イソプレフムロン、フルポン(hulupone)、アドフムロン(adhumulone)、キサントフモールAおよびキサントフモールBを含む)をいう。
【0034】
本明細書で使用する場合、用語「β酸分画」は、一まとまりでルプロンとして公知の化合物(なかでも、ルプロン、コルプロン、アドルプロン、テトラヒドロイソフムロンおよびヘキサヒドロコルプロンを包含する)をいう。
【0035】
本明細書で使用する場合、用語「精油分画」は、主にミルセン、フムレン、β−カリオフィレン(beta−caryophyleen)、ウンデカン−2−オンおよび2−メチル−ブト−3−エン−オールからなる構成成分の複合混合物をいう。
【0036】
本明細書で使用する場合、用語「脂肪」は、脂肪酸のトリアシルグリセロールエステルをいう。
【0037】
本明細書で使用する場合、用語「ワックス」は、非常に長い鎖(>25 炭素)の脂肪アルコール鎖または脂肪酸鎖のトリアシルグリセロールエーテルまたはトリアシルグリセロールエステルをいう。
【0038】
従って、本発明のひとつの好ましい実施形態は、α酸、β酸および精油からなる群から選択される、2つ以上の有効量の活性成分の組合せを含む組成物である。本発明の組成物は、特に、COX−1に対してほとんど、または全く影響を示さないで、COX−2の誘導能の阻害または活性を阻害するよう機能する。従って、本発明の組成物は、本質的に、素早く、一切の有害な副作用を誘導することなく、痛みや腫脹を含む炎症応答を取り除く。
【0039】
薬学的等級の抽出物は、幅広い安全性および有効性の手続に合格しなければならない。薬学的等級のCOホップ抽出物は、本発明の実施において用いる場合、ホップ抽出物の濃度が、約10重量%〜95重量%のα酸含有量である調製をいう。好ましくは、α酸含有量は、45重量%より高い。薬学的等級のホップ抽出物における、β酸含有量の範囲は、約10重量%〜95重量%である。好ましくは、β酸含有量は45重量%より高い。薬学的等級の抽出物が、特に好ましい。本発明の食餌補助食品の1日当りの投与量(mg/kg−日)を、動物の体重の1kg当り、約0.001mg〜100mgのホップ抽出物のCO抽出物を送達するよう処方する。
【0040】
局所的適用のための、本発明の組成物は、約0.001wt%〜10wt%の薬学的等級のCOホップ抽出物、好ましくは0.01wt%〜1wt%の薬学的等級のCOホップ抽出物を含む。
【0041】
本発明の好ましい組成物は、約0.005ng/mL〜10,000ng/mLの範囲で、α酸成分またはβ酸成分のいずれかの血漿濃度または標的組織濃度を生じる。
【0042】
成分Iと成分IIが同じ化合物でないという条件での、α酸およびβ酸からなる群から選択される成分Iならびにα酸、β酸、精油、脂肪およびワックスからなる群から選択される成分IIの組み合わせに加えて、食餌適用のためのこの組成物は、多様な添加剤(例えば、代謝中間生成物の他の天然の成分、ビタミンおよびミネラル)、ならびに不活性成
分(例えば、タブレットおよびカプセルの製造において、標準的な賦形剤であるタルクおよびマグネシウムステアレート)を含み得る。
【0043】
本明細書中で使用する場合、「薬学的に受容可能なキャリア」は、任意のおよび全ての溶媒、分散媒体、コーティング剤、等張剤および吸収遅延剤、甘味料などを含む。これらの薬学的に受容可能なキャリアは、広い範囲の物質(希釈剤、結合剤、および接着剤、潤滑剤、崩壊剤、着色剤、バルキング剤、香味料、甘味料、および多種の物質(例えば、特定の治療的成分を調製するために必要となり得る緩衝剤および吸収剤)が挙げられるが、これらに限定されない)から調製され得る。薬学的に活性な物質に対する、それらの媒体および薬剤の使用は、当該分野において周知である。任意の習慣的な媒体または薬剤が活性物質と両立しない場合を除いては、本組成物における使用が意図される。1つの実施形態において、タルクおよびマグネシウムステアレートは、本発明の処方物に含まれる。ダイエットバーもしくは機能食のような、この組成物の製造に影響することが既知である他の成分としては、香味料、糖、アミノ糖、タンパク質および/または改良スターチ、ならびに脂肪および油が挙げられ得る。
【0044】
本発明の食餌補充食品、ローションまたは治療的成分は、当業者に公知の任意の方法で処方され得る。1つの実施形態において、この組成物は、当業者で利用で可能な技術を用いて、カプセルまたはタブレットの中に処方される。カプセル形態またはタブレット形態では、成人または動物に対する推奨の1日の用量は、好ましくは、1個〜6個のカプセルまたはタブレットに含まれ得る。しかし、本組成物はまた、他の便利な形態(例えば、注射溶液もしくは注射懸濁液、スプレー溶液もしくはスプレー懸濁液、ローション、ガム、トローチ剤、食物、または軽食の品目)で処方され得る。食品、軽食、ガムまたはトローチ剤の品目は、甘味料、香味料、油、スターチ、タンパク質、果物もしくは果物抽出物、野菜もしくは野菜抽出物、穀物、動物性脂肪または動物性タンパク質を含む、任意の摂取成分を含み得る。従って、本組成物は、シリアル、軽食品目(例えば、チップス、バー、噛むことのできるキャンディーまたはゆっくりと溶かすことのできるトローチ剤)の中に処方され得る。
【0045】
本発明は、炎症に基く、急性および慢性の両方の、あらゆる形態の疾患の処置を意図する。本組成物は、炎症応答を軽減し、それにより影響を受ける組織の治癒を促進するか、またはさらなる損傷を防ぐ。薬学的に受容可能なキャリアはまた、本組成物および本処方物において使用され得る。
【0046】
本発明に従って、動物は、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、鳥類、ウマ、反芻動物またはその他の動物などからなる群から選択されるメンバーであり得る。本発明は、主にヒトの処置を示す。投与は、当業者に利用可能な任意の方法(例えば、経口経路、局所的経路、経皮性経路、経粘膜性経路、または非経口経路)であり得る。
【0047】
以下の実施例は、例示目的であり、本発明についていかなる限定もなされない。
【実施例】
【0048】
(実施例1)
(ホップのCO抽出物によるシクロオキシゲナーゼ−2媒介プロスタグランジンE2の選択的阻害)
この実施例は、先行技術で記載された精製化合物フムロンと比較して、本発明のCOホップ抽出物の優れたCOX−2選択性を例証する。従って、本発明のCO2ホップ抽出物の有効性は、先行技術で記載された精製化合物フムロンより優れていることが推論される。
【0049】
(ホップのCO抽出物によるPEG2のCOX−2媒介生成の阻害)
装置 − 平衡器、分析用のOhaus Explorer(Ohaus Model #EO1140,Switzerland)、生物学的に安全なキャビネット(Forma Model #F1214,Marietta,Ohio)、100μL〜1000μLのピペッター(VWR Catalog #4000−208,Rochester,NY)、セルハンドタリーカウンター(cell hand tally counter)(VWR Catalog #23609−102,Rochester,NY)、COインキュベーター(Forma Model #F3210,Marietta,Ohio)、血球計算器(Hausser Model #1492,Horsham,PA)、倒立顕微鏡(Leica Model #DM IL,Wetzlar,Germany)、12チャンネルの多重チャンネルピペッター(VWR Catalog #53501−662,Rochester,NY)、Pipet Aid(VWR Catalog #53498−103,Rochester,NY)、0.5μL〜10μLのピペッター(VWR Catalog #4000−200,Rochester,NY)、100μL〜1000μLのピペッター(VWR Catalog #4000−208,Rochester,NY)、2μL〜20μLのピペッター(VWR Catalog #4000−202,Rochester,NY)、20μL〜200μLのピペッター(VWR Catalog #4000−204,Rochester,NY)、PURELAB Plus Water Polishing System(U.S. Filter,Lowell,MA)、4℃冷蔵庫(Forma Model #F3775,Marietta,Ohio)、ボルテックスミキサー(VWR Catalog #33994−306,Rochester,NY)、水浴(Shel Lab Model,#1203,Cornelius,OR)。
【0050】
細胞、化学物質、試薬および緩衝剤−細胞スクレーパー(Corning Catalog#3008,Corning,NY)、ジメチルスルホキシド(DMSO)(VWR Catalog #5507,Rochester,NY)、Dulbecco’s Modification of Eagle’s Medium(DMEM)(Mediatech Catalog#10−013−CV,Herndon,VA)、熱不活性化したウシ胎仔血清(FBS−HI)(Mediatech Catalog#35−011−CV,Herndon,VA)、リボポリサッカライド(LPS)(Sigma Catalog#L−2654,St.Louis,MO)、1.7mLの微量遠心管(VWR Catalog #20172−698,Rochester,NY)、ペニシリン/ストレプトマイシン(Mediatech Catalog#30−001−CI,Herndon,VA)、0.5μL〜10μLのピペッター用のピペッタ−チップ(VWR Catalog #53509−138,Rochester,NY)、100μL〜1000μLのピペッター用のピペッタ−チップ(VWR Catalog #53512−294,Rochester,NY)、2μL〜20μLおよび20μL〜200μLのピペッター用のピペッタ−チップ(VWR Catalog #53512−260,Rochester,NY)、10mLのピペット(Becton Dickson Catalog#7551,Marietta,OH)、2mLのピペット(Becton Dickson Catalog#7507,Marietta,OH)、5mLのピペット(Becton Dickinson Catalog#7543,Marietta,OH)、RAW 264.7細胞(American Type Culture Collection Catalog#TIB−71,Manassas,VA),試験化合物(Hopunion,Yakima,WA製の液体COホップ抽出物)、96ウェル組織培養プレート(Becton Dickinson Catalog#3075,Franklin Lanes,NJ)、超純水(抵抗=18メガΩ−cm 脱イオン水)。
【0051】
一般手順−RAW264.7細胞(ATCCから入手)を、DMEM培地中で増殖させ、そして対数期で維持した。このDMEM増殖培地を、以下のように作製した:50mLの熱不働化FMSおよび5mLのペニシリン/ストレプトマイシンを、DMEMの500mLのビンに添加し、そして4℃で貯蔵した。良好な結果を得るために、この培地を、3ヶ月以内に使用し、使用前に、水浴中で37℃まで加温するべきである。
【0052】
実験の1日目の朝に、対数期の264.7細胞を、96ウェル組織培養プレート中のウェル1つあたり0.2mLの増殖培地中に、8×10細胞/ウェルでプレーティングした。1日目の終わり(プレーティング後6〜8時間)に、各ウェルから100μLの増殖培地を、取り出し、そして100μLの新鮮な培地と交換した。1.0mg/mLのLPS溶液(これは、RAW 264.7細胞におけるCOX−2の発現を誘導するために使用される)を、1mLのDMSO中にLPS(1.0mg)を溶解することによって、調製した。これを、溶解するまで撹拌し、そして4℃で貯蔵した。使用前に、室温または37℃の水浴中で融解した。60日ごとに新しい溶液を作製する。
【0053】
実験の2日目に、液体COホップ抽出物を、DMSO中の1000倍ストックとして調製した。例えば、試験物質の最終濃度が、10μg/mLである場合、10mg/mLのストックを、10mgの試験物質を1mLのDMSOに溶解することによって、調製するべきである。最良の結果を得るために、新鮮な液体COホップ抽出物を、実験の日に調製するべきである。1.7mLの微小遠心管中に、FBSを含まない1mLのDMEMを、試験濃度0.05、0.10、0.5および1.0μg/mLで添加する。試験物質の1000×DMSOストック2μLを、FBSを含まない培地(1mL)に添加した。最終濃度の試験物質を含む管を、2倍に濃縮し、そしてこの管を、10分間平衡状態になるまでインキュベータに置いた。
【0054】
100μlの培地を、1日目に調製した細胞プレートの各ウェルから取り出した。100μlの平衡化した2×最終濃度の試験化合物を、細胞に添加し、90分間インキュベートした。1mg/mLのDMSOストック(44μL)を10mLの培地に添加することによって、FBSを含まないDMEM中のLPSを調製した。刺激される細胞の各ウェルごとに、20μLのLPS(LPSの最終濃度は、0.4μg/mL LPSである)を添加し、そして24時間インキュベートした。
【0055】
3日目に、この細胞の外観を観察した。培地中のPGE2の量を決定するために、各ウェルから100μlの上清培地を、清潔な微量遠心管に移した。
【0056】
(ホップ抽出物によるCOX−1酵素阻害の決定)
試験物質がPGE2のCOX−1合成を阻害する能力を、本質的にNoreen,Y.ら(J.Nat.Prod.61,2−7,1998)により記載されるようにして、決定した。
【0057】
装置−バランサー(2400g,Acculab VI−2400,VWR カタログ番号11237−300,Rochester,NY)、バランサー、分析用、Ohaus Explorer(Ohaus Model #EO1140,Switzerland)、バイオセイフティーキャビネット(Forma Model #F1214,Marietta,Ohio)、冷凍庫(−30℃)(Forma Model #F3797)、冷凍庫(−80℃超低温)(Forma Model #F8516,Marietta,HO)、加熱撹拌プレート(VWR カタログ番号33918−262,Rochester,NY)、製氷器(Scotsman Model #AFE400A−1A,Fairfax,SC)、マルチチャネルピペッター、12チャネル(VWRカタログ番号53501−662,Rochester,NY)、マルチチャネルピペッター、8チャネル(VWRカタログ番号53501−660,Rochester,NY)、オービタルシェーカープラットホーム(Scienceware #F37041−0000,Pequannock,NJ)、pHメーター(VWRカタログ番号33221−010,Rochester,NY)、ピペットエイド(VWRカタログ番号53498−103,Rochester,NY)、ピペッター、0.5〜10μL(VWRカタログ番号4000−200,Rochester,NY)、ピペッター、100〜1000μL(VWRカタログ番号4000−208,Rochester,NY)、ピペッター、2〜20μL(VWRカタログ番号4000−202,Rochester,NY)、ピペッター、20〜200μL(VWRカタログ番号4000−204,Rochester,NY)、PURELAB PLUS Water Polishing System(U.S.Filter,Lowell,MA)、冷蔵庫(4℃)(Forma Model #F3775,Marietta,Ohio)、真空チャンバ(Sigmaカタログ番号Z35,407−4,St.Louis,MO)、ボルテックスミキサー(VWRカタログ番号33994−306,Rochester,NY)。
【0058】
供給源および試薬−96ウェル丸底プレート(Nalge Nunc #267245,Rochester,NY)。アラキドン酸(Sigmaカタログ番号A−3925,St.Louis,MO)、遠心分離管(15mL、コニカル、滅菌)(VWRカタログ番号20171−008,Rochester,NY)、COX−1酵素(ヒツジ)40,000単位/mg(Cayman Chemicalカタログ番号60100,Ann Arbor,MI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)(VWRカタログ番号5507,Rochester,NY)、エタノール100%(VWRカタログ番号MK701908,Rochester,NY)、エピネフリン(Sigmaカタログ番号E−4250,St.Louis,MO)、グルタチオン(還元型)(Sigmaカタログ番号G−6529,St.Louis,MO)、メスシリンダー、1000mL(VWRカタログ番号24711−364,Rochester,NY)、ヘマチン(ブタ)(Sigmaカタログ番号H−3281,St.Louis,MO)、塩酸(HCl)(VWRカタログ番号VW3110−3,Rochester,NY)、キムワイプ(Kimberly Clarkカタログ番号34256,Roswell,GA)、微量遠心管、1.7mL(VWRカタログ番号20172−698,Rochester,NY)、NaOH(Sigmaカタログ番号S−5881,St.Louis,MO)、0.5〜10μLピペッター用のピペットチップ(VWRカタログ番号53509−138,Rochester,NY)、100〜1000μLピペッター用のピペットチップ(VWRカタログ番号53512−294,Rochester,NY)、2〜20μLピペッターおよび20〜200μLピペッター用のピペットチップ(VWRカタログ番号53512−260,Rochester,NY)、プロスタグランジンE2(Sigmaカタログ番号P−3640,St.Louis,MO)、プロスタグランジンF2α(Sigmaカタログ番号P−0424,St.Louis,MO)、スターラーバー(マグネティック)(VWRカタログ番号58948−193,Rochester,NY)、貯蔵ビン、1000mL(Corningカタログ番号1395−1L,Corning.NY)、貯蔵ビン、100mL(Corningカタログ番号1395−100,Corning.NY)、ホップのCO抽出物(Hopunion,Yakima,WA)、Tris−HCl(Sigmaカタログ番号T−5941,St.Louis,MO)、超純水(Resistance=18メガΩ−cm脱イオン水)。
【0059】
一般手順−酸素を含まない1.0MのTris−HCl緩衝液(pH8.0)を、以下のようにして調製した:1000mLのビーカー中で、12.11gのTrizma HClを900mLの超純水に溶解した。このビーカーにスターラーバーを入れて、撹拌プレート上に置いた。pHが8.0に達するまで、NaOHを添加した。容量を、1000mLの最終容量に調整し、そして1000mLの貯蔵ビン中で貯蔵した。
【0060】
Tris−HCl緩衝液を、ゆるく蓋をして真空チャンバに入れ、この緩衝液の泡立ちが止まるまで、空気ポンプをオンにした。この真空チャンバをオフにし、そして貯蔵ビンを密閉した。この工程を、酸素を含まないTris−HCl緩衝液を使用する場合ごとに繰り返した。
【0061】
1mLの酸素を含まないTris−HCl緩衝液に、1.3mgの(−)エピネフリン、0.3mgの還元グルタチオンおよび1.3mgのヘマチンを添加することによって、1mLの補因子溶液を調製した。試験物質の溶液を、必要に応じて調製した。すなわち、10mgのアスピリンを計量し、そして1mLのDMSOに溶解した。
【0062】
酵素を、以下のように、酸素を含まないTris−HCl緩衝液に溶解した。すなわち、氷上で、6.5μLの酵素を、40,000単位/mLで採取し、そして643.5μLの酸素を含まないTris−HCl緩衝液に添加した。この酵素溶液は、60回の反応に十分である。COX−1酵素溶液を、以下のように調製した。15mLの微量遠心管中で、10μLのCOX−1酵素(40,000単位/mL)を、酸素を含まないTris−HClに、1つの反応あたり50μLの補因子溶液と共に添加した。この混合物を、氷上で5分間インキュベートした(すなわち、60回の反応は、650μlの酵素を、酸素を含まないTris−HCl緩衝液に、3.25mLの補因子溶液と共に添加する)。
【0063】
60μlの酵素溶液を、96ウェルプレートの各ウェル中で、20μlの試験溶液と合わせた。試験溶液の最終濃度は、100、50、25、12.5、6.25および3.12μg/mLであった。これらのプレートを、氷上で10分間プレインキュベートした。20μLのアラキドン酸(30μM)を添加し、そして37℃で15分間インキュベートした。
【0064】
2MのHClを、12.1NのHClを希釈することによって調製した。100mLの貯蔵ビン中に、83.5mLの超純水を添加し、次いで、12.1N HCl(16.5mL)を添加した。これを、100mLの貯蔵ビン中で貯蔵し、そしてバイオセイフティーキャビネット中に置いた(常に最後に酸を加える)。この反応を、2M HCl(10μL)を添加することにより終結させた。この最終溶液を、PGEアッセイのための上清として使用した。
【0065】
(培地中のPGE2濃度の決定)
以下の手順は、本質的に、Hamberg,M.およびSamuelsson,B.(J.Biol.Chem.1971.246,6713−6721)により記載される手順である;しかし、市販の非放射性手順を使用した。
【0066】
装置−冷凍庫(−30℃)(Forma Model #F3797)、加熱撹拌プレート(VWR カタログ番号33918−262,Rochester,NY)、マルチチャネルピペッター、12チャネル(VWRカタログ番号53501−662,Rochester,NY)、オービタルシェーカープラットホーム(Scienceware #F37041−0000,Pequannock,NJ)、ピペットエイド(VWRカタログ番号53498−103,Rochester,NY)、ピペッター、0.5〜10μL(VWRカタログ番号4000−200,Rochester,NY)、ピペッター、100〜1000μL(VWRカタログ番号4000−208,Rochester,NY)、ピペッター、2〜20μL(VWRカタログ番号4000−202,Rochester,NY)、ピペッター、20〜200μL(VWRカタログ番号4000−204,Rochester,NY)、プレートリーダー(Bio−tek Instruments Model #Elx800,Winooski,VT)、PURELAB
PLUS Water Polishing System(U.S.Filter,Lowell,MA)、冷蔵庫(4℃)(Forma Model #f3775,Marietta,Ohio)。
【0067】
化学物質、試薬および緩衝液−プロスタグランジンE EIA Kit−Monoclonal480−ウェル(Cayman Chemicalカタログ番号514010,Anm Arbor,MI)、遠心分離管(50mL、コニカル、滅菌)(VWRカタログ番号20171−178,Rochester,NY)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Mediatechカタログ番号10−013−CV,Herndon,VA)、メスシリンダー、100mL(VWRカタログ番号24711−310,Rochester,NY)、キムワイプ(Kimberly Clarkカタログ番号34256,Roswell,GA)、微量遠心管、1.7mL(VWRカタログ番号20172−698,Rochester,NY)、ペニシリン/ストレプトマイシン(Mediatechカタログ番号30−001−CI,Herndon,VA)、0.5〜10μLピペッター用のピペットチップ(VWRカタログ番号53509−138,Rochester,NY)、100〜1000μLピペッター用のピペットチップ(VWRカタログ番号53512−294,Rochester,NY)、2〜20μLピペッターおよび20〜200μLピッペター用のピペットチップ(VWRカタログ番号53512−260,Rochester,NY)、ピペット、25mL(Becton Dickinsonカタログ番号7551,Marietta,OH)、貯蔵ビン、100mL(Corningカタログ番号1395−100,Corning.NY)、貯蔵ビン、1000mL(Corningカタログ番号1395−1L,Corning,NY)、超純水(Resistance=18メガΩ−cm脱イオン水)。
【0068】
一般手順−EIA緩衝液濃縮物(バイアル#4)の内容物を、90mlの超純水で希釈することにより、EIA緩衝液を調製した。このバイアル#4を、数回リンスし、全ての結晶が除去されたことを保証し、そして100mLの貯蔵ビンに入れ、そして4℃で貯蔵した。
【0069】
洗浄緩衝液濃縮物(バイアル#5)を、超純水で1:400で希釈することによって、洗浄緩衝液を調製した。次いで、0.5ml/lのTween 20(バイアル#5a)を添加した(正確な測定のためのシリンジを使用して)。すなわち、1lの洗浄緩衝液に対して、2.5mlの洗浄緩衝液濃縮物、0.5mlのTween−20および997mlの超純水を添加する。この溶液を、1lの貯蔵ビン中、4℃で貯蔵した。
【0070】
プロスタグランジンE標準を、以下のように再構築した。200μLのピペットチップを、繰返しこのチップにエタノールを満たしそしてそのエタノールを排出することによって、平衡化した。このチップを使用して、100μLのPGE標準(バイアル#3)を1.7mLの微量遠心管に移した。900μlの超純水を、この管に添加し、そして4℃で貯蔵した。これは、約6週間安定であった。
【0071】
プロスタグランジンEアセチルコリンステラーゼトレーサーを、以下のように再構築した。100μLのPGEトレーサー(バイアル#2)を取り、そして50mLの遠心分離管中で、30mLのEIA緩衝液と混合し、そして4℃で貯蔵した。この溶液は、5週間以内に使用されるべきである。
【0072】
プロスタグランジンEモノクローナル抗体を、以下のように再構築した。100μLのPGE抗体(バイアル#1)をとり、そして50mLの遠心管中で、30mLのEIAと混合し、そして4℃で貯蔵した。この溶液は、5週間以内に使用されるべきである。
【0073】
5mLのペニシリン/ストレプトマイシンを500mLのDMEMに添加することにより、ペニシリン/ストレプトマイシンを含むDMEMを調製し、そして4℃で貯蔵した。
【0074】
プレートを以下のように調製した。各プレートは、最低2つのブランク(B)、2つの非特異的結合ウェル(NSB)、2つの最大結合ウェル(B)および二重に走る8点の標準曲線(S1−S8)を含んだ。各サンプルを、最低2つの希釈でアッセイし、そして各希釈は、二重に行った。
【0075】
標準物を以下のように調製した:8個の1.7mL微量遠心管に、管1〜8とラベルを付けた。900μLのDMEMを、管1に入れ、そして500μLのDMEMを管2〜8に入れた。100μLのPGE標準を、管1に入れ、そして混合した。500μlの溶液を、管1から取り、そして管2に入れ、そしてこのプロセスを、管8まで繰り返した。
【0076】
50μlのEIA緩衝液および50μlのDMEMを、NSBウェルに添加した。50μlのDMEMを、Bウェルに添加した。50μlの溶液を、管#8から取り、そして最も低い標準ウェル(S8)の両方に添加した。50μlを、管#7から取り、そして次の2つのウェルの各々に添加した。これを、管#1まで続けた。(8個の標準全てに同じピペットチップを使用する。この標準中にピペットを上げ下げすることにより、必ず各新しい標準中でこのチップを平衡化すること。P200を使用して、各希釈で50μlの各サンプルを、サンプルウェルに添加する)。
【0077】
12チャネルピペッターを使用して、50μlのプロスタグランジンEアセチルコリンステラーゼトレーサーを、全活性(TA)ウェルおよびブランク(B)ウェル以外の各ウェルに添加した。12チャネルピペッターを使用して、50μlのプロスタグランジンEモノクローナル抗体を、全活性(TA)ウェル、(NSB)ウェルおよびブランク(B)ウェル以外の各ウェルに添加した。このプレートを、プラスチックフィルム(品目#7)で覆い、そして4℃で18時間インキュベートした。
【0078】
このプレートを、以下のように現像した:100μLバイアルのEllman試薬(バイアル#8)を、50mLの遠心管中で、50mlの超純水を用いて再構築した。これを、光から保護し、そして同じ日に使用した。これらのウェルを、12チャネルピペッターを使用して、洗浄乾燥液で5回リンスした。200μlのEllman試薬を、12チャネルピペッターを使用して、各ウェルに添加し、そして(TA)ウェルに対する5μlのトレーサーを、P10を使用して、各ウェルに添加した。このプレートを、プラスチックフィルムで覆い、そして60〜90分間、暗室中で、オービタルシェーカーに入れた。
【0079】
このプレートを、405nmと420nmとの間の単一の波長で、Bio−tekプレートリーダーを用いて読み取った。各プレートを読みとる前に、底部を、キムワイプで拭った。このプレートは、ウェルの吸光度が、0.3〜0.8A.U.の範囲にある場合に、読みとるべきである。このウェルの吸光度が、1.5を越える場合、洗浄し、新たなEllman試薬を添加し、そして再現像する。
【0080】
COX−2およびCOX−1の両方についてのCOホップ抽出物の培地阻害濃度を、CalcuSyn(BIOSOFT,biosoft.com)を使用して、評価した。この統計的パッケージは、T−C ChouおよびP.Talaly(Trends Pharmacol.Sci.4:450−454)に記載される50パーセント有効法(Median Effect method)を使用して、複数の薬物効果計算を実施する。簡単には、これは、「用量」および「効果」を最も単純な可能な形態:fa/fu=(C/Cm)で相関付け、ここで、Cは、化合物の濃度または化合物の用量であり、Cmは、50パーセント有効用量であり、これは抗力を表す。Cmは、50パーセント有効
プロットのx切片から決定される。試験物質の濃度により影響を受ける関数は、faであり、濃度に影響されない関数は、fuである(fu=1−fa)。指数mは、薬物有効曲線のS字曲線(sigmoidicity)または形状を表すパラメーターである。これは、50パーセント有効プロットの傾きにより見積もられる。
【0081】
50パーセント有効プロットは、x=log(C)対y=log(fa/fu)のプロットであり、そしてChouの50パーセント有効式の対数形態に基づく。50パーセント有効式に対するデータの適合の良さは、この50パーセント有効プロットの一次相関係数rによって表される。通常、酵素またはレセプター系からの実験データは、組織培養実験または酵素実験によると、r>0.96を有する。
【0082】
RAW 264.7細胞モデルにおけるホップのCO抽出物によるCOX−2阻害の50パーセント阻害濃度は、0.024μg/mL(95% CI=0.16−0.36)であった。同じホップのCO抽出物は、25.5μg/mLのPGE2のCOX−1産生の50パーセント阻害濃度を示した。従って、106のCOX−1/COX−2特異性が、観察される。このCOX−2特異性は、MC3T3−E1細胞のTNFα刺激における純水なフムロンについて示されるCOX−2特異性より2.7倍大きい[Yamamoto,K.2000.Suppression of cyclooxygenase−2 gene transcription by humulon of bee hop extract studied with reference to glucocorticoid.FEBS Letters 465:103−106]。純水な化合物と複雑な混合物との間のCOX−2特異性のこのような大きな差異は、予想外であり、新規な知見をなす。複雑な混合物が、ほとんどの活性な分子よりもより特異的な生物学的活性を含むことが、通常である。推論は、生体活性分子(フムロンを含む)間の根底にある相乗作用が、このような効果の原因であるということである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載されるような発明

【公開番号】特開2009−203244(P2009−203244A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144756(P2009−144756)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【分割の表示】特願2003−506631(P2003−506631)の分割
【原出願日】平成14年6月20日(2002.6.20)
【出願人】(503465937)メタプロテオミクス, エルエルシー (19)
【Fターム(参考)】