説明

シクロデキストリンと会合させたプロゲステロンの舌下発泡性錠剤

プロゲステロンの生物学的利用能をより大きく促進できる、急速崩壊錠の形態である、プロゲステロンの舌下投与のための医薬組成物を記載し;前記医薬組成物を製造する方法もまた記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
プロゲステロンの舌下投与のための医薬組成物、およびその製造方法
説明
本発明は、プロゲステロンの舌下投与のための新規な医薬組成物、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロゲステロンは、出産年齢の妊娠可能な女性の月経周期の後半の卵巣によって自然に分泌されるステロイドホルモンである;それは治療目的、たとえば、閉経期の女性のためのホルモン補充療法において、経口避妊薬において、および月経周期を制御するための、治療目的に使用される。
プロゲステロンを投与する様々な方法、つまり、非経口から経膣までの方法、経口の方法が知られており、このうち最後の方法は、特に患者が長い治療期間を経験しなければならない場合、該患者にとって断然に容易に受け入れ可能でありかつ快適である。
しかしながら、プロゲステロンを経口投与する場合、プロゲステロンの治療効率は厳密に減少し、これはその水に対する溶解度および肝臓によるその急速分解に由来する、より限られた生物学的利用能による;これらの2つの要因は、胃腸管における活性成分の非常に貧弱な吸収に寄与する。
これらの問題を克服するために、プロゲステロンを口腔内の吸収により投与することが提案されており、この場合プロゲステロンは、プロゲステロンが胃腸管内で吸収されるときよりも、肝臓中での急速な代謝の影響は小さい。前記投与形態は、一般的に、プロゲステロンを水可溶性の誘導体の形態で投与しない限り、プロゲステロンの最適な血液レベルのみを生じさせる。
特許文献1は、たとえば、プロゲステロンを特定のベータ−シクロデキストリンと組み合わせて、口腔中でプロゲステロンを頬側にまたは舌下に投与するための錠剤の処方設計を記載する。実際に、これらの化合物と組み合わせると、プロゲステロンは水性環境において可溶である包接錯体を形成し、その結果、その生物学的利用能に有利に働く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4,596,795号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、舌下投与の場合には、崩壊すべき錠剤についての必要性を示し、それは数分間かかる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、現在、特定の賦形剤をプロゲステロンおよびシクロデキストリンを含む組成物に加えることにより、圧縮して包装するのに十分にコンパクトであるが、それにもかかわらず舌下に投与されたとき急速に崩壊する錠剤を得ることができる粉沫が得られること、および前記急速崩壊性錠剤は、舌下に投与された場合、前記賦形剤を欠く錠剤よりプロゲステロンの生物学的利用能をより大きく促進できることを見出したことは驚くべきことであった。
急速崩壊は、好ましくはわずか2分間におよぶ時間を意味する。
したがって、本発明の要旨は、舌下部位内にCOを放出できる賦形剤を含む、急速崩壊錠の形態をしていることを特徴とする、シクロデキストリンと会合させたプロゲステロンの舌下投与のための医薬組成物である。
前記目的のために、それは、好ましくは、重炭酸ナトリウムのような重炭酸塩、およびクエン酸のような適当な酸を含む。
本発明によれば、シクロデキストリンと会合させたまたは組み合わせたプロゲステロンは、特許文献1に記載のものなどの錯化誘導体を意味する。
本発明の別の側面は、上記の医薬組成物を製造するために使用される方法であり、次工程によって達成され得る:
a)賦形剤および原料を篩過すること;
b)混合すること;
c)混合物を圧縮し、前記最終錠剤を作製すること。
本発明に係る医薬組成物の特性および利点をより詳細に下記の記載において例証する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、例1(発明)および例2(参照)において製造された錠剤を使用した、20mgの活性成分の舌下投与後の時間に対する血清中のプロゲステロンの濃度(ng/ml)を比較したダイアグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、舌下部位内にCOを放出できる前記賦形剤がクエン酸および重炭酸ナトリウムである、非制限的な態様について言及する。
本発明の組成物に含まれるクエン酸の量は、たとえば、該組成物の全質量の5〜20%w/wであり、好ましくは10%w/wに達する。
本発明の組成物に含まれる重炭酸塩の量は、たとえば、該組成物の全質量の5〜20%w/wであり、好ましくは12%w/wに達する。
本発明の組成物に含まれる重炭酸塩は、好ましくは、重炭酸ナトリウムである。
本発明の好ましい態様によれば、シクロデキストリンに対するプロゲステロンのモル比は1〜2である。
本組成物において使用に適したシクロデキストリンは、たとえば、β−シクロデキストリンまたは2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンのいずれかであってもよく;本発明の組成物は好ましくは2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを含む。
該組成物に含まれるシクロデキストリンの量は、好ましくは、該組成物の全質量の27〜40%w/wであり得る。
活性成分(プロゲステロン)シクロデキストリンおよび発泡(effervescent)活性を有する賦形剤の組み合わせ(クエン酸および重炭酸塩)に加えて、本発明に係る医薬組成物は、急速崩壊錠剤の形態にある組成物を得るために、医薬品において慣例上使用されているものの中から選ばれる、薬理学的に適した賦形剤をさらに含んでもよい。
錠剤形態にある本医薬組成物は、その形状を保持し得る、かつ、完全な状態を維持し得るのに十分な堅さがあり、その生成物を包装および保存し得ることができるけれども、該組成物を舌下に置いたとき、それにもかかわらず該組成物は急速に崩壊し、概して60〜120秒の時間内で完全に崩壊する。
さらに、薬物動態研究(例3により詳細に述べられている)により、クエン酸および重炭酸ナトリウムのような発泡性賦形剤の組み合わせを欠く舌下投与用の類似の組成物と比較して、本発明に係る組成物中のプロゲステロンの生物学的利用能は、およそ30%増加することが実証されている。
本発明に係る組成物は、プロゲステロンの種々の単位投与、たとえば、5〜30mgのプロゲステロン、好ましくは20mgに達するプロゲステロンを含有することによって製造され得る。
本発明の非制限的な実施態様として、以下の例が挙げられる。
【実施例】
【0008】
製造方法1の例
処方設計
1)ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、クレプトース(Kleptose)(HPBCD)バッチE0033 13.5kg
2)プロゲステロン ミクロン.バッチL00025494 1.35kg
3)13.06.05の蒸留水 55.4625kg
溶液を作製し凍結乾燥する方法:
1)42.2625kgの蒸留水を200Lの容量の溶解剤(A)へ転送する;
2)第1の半製品を別個のステンレス鋼容器(B)の中で製造する;
蒸留水 6.6kg
ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、クレプトース(HPBCD) 6.75kg
および環境温度にて20分間攪拌する;
脱気した溶液は透明であり、および、残留物を含まない;
3)プロゲステロン ミクロン. 0.675kgを工程2によって製造された溶液に加える;
該混合物を環境温度にて45分間攪拌する;
生じた溶液を、工程1によって製造された溶解剤に転送する;
4)第2の半製品をステンレス鋼容器(B)中で工程2および3によって製造し、および工程1および3によって製造した溶解剤(A)に転送する;
5)最終溶液を200Lの溶解剤において10分間混合する;
生じた溶液は透明であり、および、空気泡を含んでいない;およそ40mLの溶液を、分析のために取り置きする;
該溶液を凍結乾燥装置に置く;
6)2barの無水空気圧下で、該溶液を0.46μmカラムフィルターに押し通す;
7)該溶液を連続フローにおける使い捨て高密度ポリエチレンマット(1cmの厚さのバルクを16−維持する)上に置く;
8)該生成物を凍結乾燥する;
9)生じたバルク生成物を、転動造粒機中で粉砕し、および1mmの篩に圧し通す;
13.9kgの最終生成物を得る;
10)該生成物を3つのアルミニウム容器に置き、次いで密閉する。
生じた粉沫は以下の特性を有する:
該マットから取り外したときのバルク湿度 0.9%
粉砕後の湿度 1.5%
注入後のバルク密度=0.26g/ml
圧縮後のバルク密度=0.32g/ml
粒度分布:
50〜800μmにおいて95%
平均=260μm
例1
本発明に係るプロゲステロンの舌下投与用錠剤を製造する方法
以下の通りに、各成分を別々に計量および標識付けした:
【0009】
【表1】

【0010】
成分1)、2)、3)、4)、5)、6)および9)を前もって混合し、1mmのネットメッシュ穴を有する網篩に通して篩過し、および混合機にかける。
成分8)を、別途0.5mmの網篩に通して篩過し、および混合機にかける。
該成分を、20rpm/60”の速度で25分間混合する。
成分9)を、0.2mmの網篩に通して篩過し、および混合機にかける。
混合は20rpm/60”の速度にて5分間他の成分とともに続ける。
粉沫を取り除き、665mg±3%の平均質量および35N±3Nの平均堅さに設定した直径16mmの丸ポンチで圧縮する。
錠剤を適当な形態でブリスター包装し、およびダンボール箱に置く。
得られた錠剤は以下の特性を有する:
平均質量=660.4、平均力価=103.1%d.d.、堅さ=33Nおよび崩壊時間=100秒
例2(比較)
クエン酸および重炭酸塩を含まないプロゲステロンの舌下投与用錠剤を製造する方法
以下の通りに、各成分を別々に計量および標識付けした:
【0011】
【表2】

【0012】
成分1)、2)、3)、4)および7)を前もって混合し、1mmのネットメッシュ穴を有する網篩に通して篩過し、および混合機にかける。
成分6)を、別途0.5mmの網篩に通して篩過し、および混合機にかける。
該成分を、20rpm/60”の速度で25分間混合する。
成分5)を、0.2mmの網篩に通して篩過し、および混合機にかける。
混合は20rpm/60”の速度にて5分間他の成分とともに続ける。
粉沫を取り除き、665mg±3%の平均質量および35N±3Nの平均堅さに設定した直径16mmの丸ポンチで圧縮する。
錠剤を適当な形態でブリスター包装し、およびダンボール箱に置く。
得られた錠剤は以下の特性を有する:
平均質量=664、平均力価=101.1%d.d.、堅さ=32Nおよび崩壊時間=90秒
例3
薬物動態研究
例1において記載されている通りに得られた本発明に係る錠剤の投与を、例2において記載されている比較のために製造されたものの投与と比較することにより、予備薬物動態研究を実施した。
添付の図(図1)中のダイアグラムは、例1(発明)および例2(参照)において製造された錠剤を使用した、20mgの活性成分の舌下投与後の時間に対する血清中のプロゲステロンの濃度(ng/ml)を比較している。
該ダイアグラム中でプロットされた2本の曲線は、上記した通りに投与された3被験体において得られた値の平均(+SD)を表わす。
明らかに、例1に関する曲線は、例2に関する曲線よりも、およそ30%のより大きな平均生物学的利用能を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
舌下部位内にCOを放出できる賦形剤を含む、急速崩壊錠の形態をしていることを特徴とする、シクロデキストリンと組み合わせたプロゲステロンの舌下投与のための医薬組成物。
【請求項2】
舌下部位内にCOを放出できる前記賦形剤がクエン酸および重炭酸塩であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
舌下部位内にCOを放出できる前記賦形剤がクエン酸および重炭酸ナトリウムであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、前記組成物の全質量の5〜20%w/wのクエン酸、好ましくは10%w/wに達するクエン酸を含むことを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、前記組成物の全質量の5〜20%w/wの重炭酸塩、好ましくは12%w/wに達する重炭酸塩を含むことを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記シクロデキストリンがβ−シクロデキストリンまたは2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンのいずれかから選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記シクロデキストリンに対する前記プロゲステロンのモル比が1〜2であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
シクロデキストリンの含有量が組成物の全質量の27〜40%w/wであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
舌下に置かれる、前記錠剤は約60〜120秒の時間内で完全に崩壊することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
従前の請求項の1項以上に記載の医薬組成物を製造する方法であって、a)成分を篩過する工程;b)該成分をともに混合する工程;および、c)該混合物を圧縮して、前記錠剤を作製する工程を含むことを特徴とする、前記方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−500534(P2011−500534A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528409(P2010−528409)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【国際出願番号】PCT/EP2008/063595
【国際公開番号】WO2009/047321
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(593096077)アルテルゴン エス.エイ. (4)
【Fターム(参考)】