説明

シクロデキストリン包接複合体及びその製造方法

シクロデキストリン包接複合体並びにシクロデキストリン包接複合体の製造及び使用方法。シクロデキストリン包接複合体の製造方法は、シクロデキストリン、乳化剤及び増粘剤を乾式混合して、乾式混合物を形成することと、溶媒及びゲストを乾式混合物と混合して、シクロデキストリン包接複合体を含む混合物を形成することとを含むことができる。幾つかの具体例においては、混合物を乾燥して、乾燥粉末を形成するか、または乳化して、エマルションを形成することができる。乾燥粉末またはエマルションを様々な用途(例えば、飲料、食品製品、チューインガム、歯磨き剤、キャンディー、香味料、芳香物質、薬剤、機能性食品、化粧品、農産物、写真乳剤、廃棄物流れ系、及びこれらの組合せ)において使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
2005年6月13日に出願され、全内容を本明細書において参考のために引用する米国仮特許出願第60/690,459号に対する優先権を本明細書により請求する。
【背景技術】
【0002】
以下の米国特許は、様々なゲスト分子を複合体にするためのシクロデキストリンの使用を開示し、本明細書において参考のために十分に引用される:Bordenに付与された米国特許第4,296,137号、同第4,296,138号、及び同第4,348,416号(チューインガム、歯磨き剤、化粧品等において使用するための香味料材料);Gandolfo et al.に付与された同第4,265,779号(洗剤組成物における泡抑制剤);Hyashi et al.に付与された同第3,816,393号及び同第4,054,736号(薬剤として使用するためのプロスタグランジン);Mifune et al.に付与された同第3,846,551号(殺虫及び殺ダニ組成物);Noda et al.に付与された同第4,024,223号(メントール、サリチル酸メチル、及びその他同様なもの);Akito et al.に付与された同第4,073,931号(ニトロ−グリセリン);Szjetli et al.に付与された同第4,228,160号(インドメタシン);Bernstein et al.に付与された同第4,247,535号(補体阻害剤);Kawamura et al.に付与された同第4,268,501号(抗ぜんそく活性物質);Szjetli et al.に付与された同第4,365,061号(強無機酸複合体);Pithaに付与された同第4,371,673号(レチノイド);Szjetli et al.に付与された同第4,380,626号(ホルモン性植物成長調節物質)、Wagu et al.に付与された同第4,438,106号(コレステロールを低減するために有用な長鎖脂肪酸);Sato et al.に付与された同第4,474,822号(茶エッセンス複合体);Szjetli et al.に付与された同第4,529,608号(蜂蜜芳香)、Kuno et al.に付与された同第4,547,365号(毛髪にウェーブをかける活性複合体);Pithaに付与された同第4,596,795号(性ホルモン);Hirai et al.に付与された同第4,616,008号(抗菌性複合体);Shibanaiに付与された同第4,636,343号(殺虫剤複合体)、Ninger et al.に付与された同第4,663,316号(抗生物質);Fukazawa et al.に付与された同第4,675,395号(ヒノキチオール);Shibanai et al.に付与された同第4,732,759号及び同第4,728,510号(風呂添加剤);Karl et al.に付与された同第4,751,095号(アスパルタマン);同第4,560,571号(コーヒー抽出物);Okonogi et al.に付与された同第4,632,832号(即席クリーミングパウダー);Trinh et al.に付与された同第5,571,782号、同第5,660,845号及び同第5,635,238号(香料、香味料、及び薬剤);Kubo et al.に付与された同第4,548,811号(ウェーブをかけるローション);Prasad et al.に付与された同第6,287,603号(香料、香味料、及び薬剤);Peraに付与された同第4,906,488号(嗅覚作用物(olfactant)、香味料、薬剤、及び殺虫剤);並びにQi et al.に付与された同第6,638,557号(魚油)。
【0003】
シクロデキストリンはさらに以下の刊行物において説明されており、これをまた本明細書において参考のために引用する:(1) Reineccius, T.A., et al. "Encapsulation of flavors using cyclodextrins: comparison of flavor retention in alpha, beta, and gamma types." Journal of Food Science. 2002; 67(9): 3271-3279; (2) Shiga, H., et al. "Flavor encapsulation and release characteristics of spray-dried powder by the blended encapsulant of cyclodextrin and gum arabic." Marcel Dekker, Incl., www.dekker.com. 2001; (3) Szente L., et al. "Molecular Encapsulation of Natural and Synthetic Coffee Flavor with β-cyclodextrin." Journal of Food Science. 1986; 51(4): 1024-1027; (4) Reineccius, G. A., et al. "Encapsulation of Artificial Flavors by β-cyclodextrin." Perfumer & Flavorist (ISSN 0272-2666) An Allured Publication. 1986: 11(4): 2-6; and (5) Bhandari, B.R., et al. "Encapsulation of lemon oil by paste method using β-cyclodextrin: encapsulation efficiency and profile of oil volatiles." J. Agric. Food Chem. 1999; 47: 5194-5197。
【発明の開示】
【0004】
本発明の幾つかの具体例は、シクロデキストリン包接複合体の製造方法を提供する。方法は、シクロデキストリン及び乳化剤を乾式混合して、乾式混合物を形成することと、溶媒及びゲストを乾式混合物と混合して、シクロデキストリン包接複合体を形成することとを含むことができる。
【0005】
本発明の幾つかの具体例においては、シクロデキストリン包接複合体の製造方法が提供される。方法は、シクロデキストリン及び乳化剤を混合して、第1の混合物を形成することと、第1の混合物を溶媒と混合して、第2の混合物を形成することと、ゲストを第2の混合物と混合して、第3の混合物を形成することとを含むことができる。
【0006】
本発明の幾つかの具体例は、シクロデキストリン包接複合体の製造方法を提供する。方法は、シクロデキストリン及びペクチンを乾式混合して、第1の混合物を形成することと、第1の混合物を水と混合して、第2の混合物を形成することと、ジアセチルを第2の混合物と混合して、第3の混合物を形成することとを含むことができる。
【0007】
本発明の幾つかの具体例においては、シクロデキストリン包接複合体の製造方法が提供される。方法は、シクロデキストリン、乳化剤及び増粘剤を乾式混合して、乾式混合物を形成することと、溶媒及びゲストを乾式混合物と混合して、シクロデキストリン包接複合体を含む混合物を形成することとを含むことができる。
【0008】
本発明の幾つかの具体例は、シクロデキストリン包接複合体の製造方法を提供する。方法は、シクロデキストリン、乳化剤及び増粘剤を混合して、第1の混合物を形成することを含むことができる。方法は、第1の混合物を溶媒と混合して、第2の混合物を形成することをさらに含むことができる。方法は、ゲストを第2の混合物と混合して、シクロデキストリン包接複合体を含む第3の混合物を形成することをさらに含むことができる。
【0009】
本発明の幾つかの具体例においては、シクロデキストリン包接複合体の製造方法が提供される。方法は、シクロデキストリン、乳化剤及び増粘剤を乾式混合して、乾式混合物を形成することを含むことができる。乾式混合物は、乳化剤対シクロデキストリンの重量%として少なくとも約0.5重量%及び増粘剤対シクロデキストリンの重量%として少なくとも約0.07重量%を含むことができる。方法は、溶媒及びゲストを乾式混合物と混合して、シクロデキストリン包接複合体を含む混合物を形成することをさらに含むことができる。
【0010】
本発明の他の特徴及び態様は、詳細な説明及び添付図面を検討することによって明瞭になろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の任意の具体例を詳細に説明する前に、本発明は、以下の説明において述べるかまたは以下の図面において示す構成要素の構成及び配置の詳細への適用に限定されないことは理解できるはずである。本発明は、他の具体例及び様々な様式で実施するかまたは実行することが可能である。また、本明細書において使用する語句及び用語は、説明のためであり、限定されるとみなすべきではないことは理解できるはずである。“含むこと(including)”、“含むこと(comprising)”または“有すること(having)”及び本明細書におけるこれらの変形の使用は、その後列記する項目及びその同等物並びに追加の項目を包含するためのものである。他に指定するかまたは限定しない限り、“取り付けた”、“接続した”、“支持した”、及び“結合した”という用語並びにこれらの変形を広く使用し、直接並びに間接的な取り付け、接続、支持、及び結合の両方を包含する。さらに、“接続した”及び“結合した”は、物理的または機械的接続若しくは結合に限定されない。
【0012】
また、本明細書において記載する任意の数値の範囲は、下方の値から上方の値まで全ての値を含むことは理解される。例えば、濃度範囲を1%〜50%として述べる場合、値の例えば2%〜40%、10%〜30%、または1%〜3%等は、本明細書において特に列挙されることを意図されている。こうしたものは、特に意図されたものの例であるのみであり、列挙された最低の値と最高の値との間の数値の全ての可能な組合せが本出願において特に述べられるとみなされるべきである。
【0013】
本発明は一般に、シクロデキストリン包接複合体及びその形成方法に関する。本発明の幾つかのシクロデキストリン包接複合体は、揮発性の及び反応性のゲスト分子の封じ込めに対処したものである。幾つかの具体例においては、ゲスト分子の封じ込めは、以下のもののうちの少なくとも1つを提供することができる:(1)市販の製品における香味料強度の欠如をもたらすかもしれない、揮発性のまたは反応性のゲストが市販の製品から逃げることの防止;(2)オフノート形成(off note formation)を引き起こすと思われる他の成分との相互作用及び反応からのゲスト分子の分離;(3)劣化(例えば、加水分解、酸化等)に対するゲスト分子の安定化;(4)他の生成物または化合物からのゲスト分子の選択的抽出;(5)ゲスト分子の水溶性の増強;(6)市販の製品の味または臭気の改良または増強;(7)マイクロ波及び従来のベーキング用途におけるゲストの熱保護;(8)香味または臭気の徐放及び/または持続性放出(例えば、シクロデキストリン包接複合体においてジアセチルをゲスト分子として用いる具体例においては、これは、溶けかかったバターの知覚を提供することができる);及び(9)ゲスト分子の安全な取り扱い。
【0014】
本明細書及び添付の請求の範囲において使用する“シクロデキストリン”という用語は、デンプンの酵素転換によって形成された環状デキストリン分子を指すことができる。特定の酵素、例えば、様々な形態のシクログリコシルトランスフェラーゼ(cycloglycosyltransferase)(CGTアーゼ)は、デンプン中に生じるらせん構造を分解して、例えば、6、7、または8個のグルコース分子を有する三次元ポリグルコース環を有する特定のシクロデキストリン分子を形成することができる。例えば、α−CGTアーゼは、デンプンを、6グルコース単位を有するα−シクロデキストリンに転換することができ、β−CGTアーゼは、デンプンを7グルコース単位を有するβ−シクロデキストリンに転換することができ、γ−CGTアーゼは、デンプンを、8グルコース単位を有するγ−シクロデキストリンに転換することができる。シクロデキストリンとしては、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つが挙げられるがこれらに限定されるものではない。β−シクロデキストリンは、何らかの有毒な影響を有することが知られておらず、世界的にGRAS(すなわち、一般に安全とみなされている)であり、天然であり、FDAにより承認されており、α−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンもまた天然物とみなされており、U.S、及びE.U.GRASである。
【0015】
シクロデキストリン分子10の三次元環状構造(すなわち、大環状構造)を図1に概略で示す。シクロデキストリン分子10は、第一級及び第二級ヒドロキシル基を含み、親水性の外部部分12を含む。シクロデキストリン分子10はまた、炭素原子、水素原子及びエーテル結合を含み、疎水性の三次元のくぼみ14を含む。シクロデキストリン分子の疎水性のくぼみ14はホストとして働き、疎水性部分を含む様々な分子、またはゲスト16を保持して、シクロデキストリン包接複合体を形成することができる。
【0016】
本明細書及び添付の請求の範囲において使用する“ゲスト”という用語は、その少なくとも一部分が、シクロデキストリン分子中に存在する三次元のくぼみ内部に保持されるかまたは捕捉されることができる任意の分子を指すことができ、こうしたものとしては、香味料、嗅覚作用物、薬剤、機能性食品(例えば、クレアチン)、抗酸化剤(例えば、アルファ−トコフェロール)、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0017】
香味料の例としては、アルデヒド、ケトンまたはアルコールに基づく香味料を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。アルデヒド香味料の例としては:アセトアルデヒド(りんご);ベンズアルデヒド(チェリー、アーモンド);アニシックアルデヒド(カンゾウ、アニス);シンナミックアルデヒド(シナモン);シトラール(例えば、ゲラニアール、アルファシトラール(レモン、ライム)及びネラール、ベータシトラール(レモン、ライム));デカナール(オレンジ、レモン);エチルバニリン(バニラ、クリーム);ヘリオトロピン、すなわちピペロナール(バニラ、クリーム);バニリン(バニラ、クリーム);a−アミルシンナムアルデヒド(スパイスのきいた果物のような香味料);ブチルアルデヒド(バター、チーズ);バレルアルデヒド(バター、チーズ);シトロネラール(変性物(modifies)、多くのタイプ);デセナール(柑橘類の果実);アルデヒドC−8(柑橘類の果実);アルデヒドC−9(柑橘類の果実);アルデヒドC−12(柑橘類の果実);2−エチルブチルアルデヒド(漿果);ヘキセナール、すなわちトランス−2(漿果);トリルアルデヒド(チェリー、アーモンド);ベラトルアルデヒド(バニラ);2−6−ジメチル−5−ヘプテナール、すなわちメロナールTM(MelonalTM)(メロン);2,6−ジメチルオクタナール(熟していない果実);2−ドデセナール(柑橘類、マンダリン);及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0018】
ケトン香味料の例としては:d−カルボン(キャラウエー);1−カルボン(スペアミント);ジアセチル(バター、チーズ、“クリーム”);ベンゾフェノン(果物のような及びスパイスのきいた香味料、バニラ);メチルエチルケトン(漿果);マルトール(漿果)メントン(ハッカ)、メチルアミルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、メチルヘキシルケトン、エチルアミルケトン(漿果、核果);ピルビン酸(煙のような、堅果のような香味料);アセトアニソール(サンザシヘリオトロープ);ジヒドロカルボン(スペアミント);2,4−ジメチルアセトフェノン(ハッカ);1,3−ジフェニル−2−プロパノン(アーモンド);アセトクメン(オリス及びバジル、スパイスのきいた);イソジャスモン(ジャスミン);d−イソメチルイオノン(オリス様、すみれ);イソブチルアセトアセテート(ブランデー様);ジンゲロン(ショウガ);プレゴン(ハッカ−ショウノウ);d−ピペリトン(ハッカのような);2−ノナノン(バラ及び茶様);及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0019】
アルコール香味料の例としては、アニシックアルコールまたはp−メトキシベンジルアルコール(果物のような、桃);ベンジルアルコール(果物のような);カルバクロールまたは2−p−シメノール(刺激性の暖かい臭気);カルベオール;ケイ皮アルコール(花のような臭気);シトロネロール(バラ様);デカノール;ジヒドロカルベオール(スパイスのきいた、こしょうのような);テトラヒドロゲラニオールまたは3,7−ジメチル−1−オクタノール(バラの臭気);オイゲノール(丁字);p−メンタ−1,8ジエン−7−Oλまたはペリリルアルコール(花のような−マツ);アルファテルピネオール;メンタ−1,5−ジエン−8−オール1;メンタ−1,5−ジエン−8−オール2;p−シメン−8−オール;及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0020】
嗅覚作用物の例としては、天然芳香物質、合成芳香物質、合成精油、天然精油、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0021】
合成芳香物質の例としては、テルペニック炭化水素、エステル、エーテル、アルコール、アルデヒド、フェノール、ケトン、アセタール、オキシム、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0022】
テルペニック炭化水素の例としては、ライムテルペン、レモンテルペン、リモネンダイマー、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0023】
エステルの例としては、γ−ウンデカラクトン、エチルメチルフェニルグリシデート、アリルカプロエート、アミルサリチレート、アミルベンゾアート、酢酸アミル、酢酸ベンジル、安息香酸ベンジル、ベンジルサリチレート、ベンジルプロピオナート、酢酸ブチル、ベンジルブチレート、ベンジルフェニルアセテート、セドリルアセテート、シトロネリルアセテート、シトロネリルフォーメート、p−クレシルアセテート、2−t−ペンチル−シクロヘキシルアセテート、酢酸シクロヘキシル、シス−3−ヘキセニルアセテート、シス−3−ヘキセニルサリチレート、ジメチルベンジルアセテート、フタル酸ジエチル、δ−デカ−ラクトンジブチルフタレート、酪酸エチル、酢酸エチル、安息香酸エチル、フェンキルアセテート、ゲラニルアセテート、γ−ドデカラトン、メチルジヒドロジャスモネート、酢酸イソボルニル、β−イソプロポキシエチルサリチレート、酢酸リナリル、安息香酸メチル、o−t−ブチルシロヘキシルアセテート、サリチル酸メチル、エチレンブラッシレート、エチレンドデカノエート、メチルフェニルアセテート、フェニルエチルイソブチレート、フェニルエチルフェニルアセテート、フェニルエチルアセテート、メチルフェニルカルビニルアセテート、3,5,5−トリメチルヘキシルアセテート、テルピニルアセテート、クエン酸トリエチル、p−t−ブチルシクロヘキシルアセテート、ベティバーアセテート、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0024】
エーテルの例としては、p−クレシルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−4,6,7,8,8−ヘキサメチルシクロペンタ−β−2−ベンゾピラン、フェニルイソアミルエーテル、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0025】
アルコールの例としては、n−オクチルアルコール、n−ノニルアルコール、β−フェニルエチルジメチルカルビノール、ジメチルベンジルカルビノール、カルビトールジヒドロミセノール、ジメチルオクタノール、ヘキシレングリコールリナロオール、リーフアルコール(leaf alcohol)、ネロール、フェノキシエタノール、γ−フェニル−プロピルアルコール、β−フェニルエチルアルコール、メチルフェニルカルビノール、テルピネオール、テトラフィドロアルオオシメノール、テトラヒドロリナロオール、9−デセン−1−オール、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0026】
アルデヒドの例としては、n−ノニルアルデヒド、ウンデシレンアルデヒド、メチルノニルアセトアルデヒド、アニスアルデヒド、ベンズアルデヒド、シクラメンアルデヒド、2−ヘキシルヘキサナール、アヘキシルシンナミックアルエヒド、フェニルアセトアルデヒド、4−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド、p−t−ブチル−a−メチルヒドロ−シンナミックアルデヒド、ヒドロキシシトロネラール、α−アミルシンナミックアルデヒド、3,5−ジメチル−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0027】
フェノールの例としては、メチルオイゲノールを挙げることができるがこれに限定されるものではない。
【0028】
ケトンの例としては、1−カルボン、α−ダマスコン、イオノン、4−t−ペンチルシクロヘキサノン、3−アミル−4−アセトキシテトラヒドロピラン、メントン、メチルイオノン、p−t−アミシクロヘキサノン、アセチルセドレン、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0029】
アセタールの例としては、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタールを挙げることができるがこれに限定されるものではない。
【0030】
オキシムの例としては、5−メチル−3−ヘプタノンオキシムを挙げることができるがこれに限定されるものではない。
【0031】
ゲストとしてはさらに、脂肪酸、ラクトン、テルペン、ジアセチル、硫化ジメチル、プロリン、フラネオール、リナロオール、アセチルプロピオニル、天然エッセンス(例えば、オレンジ、トマト、りんご、シナモン、ラズベリー等)、精油(例えば、オレンジ、レモン、ライム等)、甘味料(例えば、アスパルテーム、ネオテーム等)、サビネン、p−シメン、p,a−ジメチルスチレン、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0032】
図3は、ジアセチル−シクロデキストリン包接複合体の形成の略図を示し、図5は、シトラール−シクロデキストリン包接複合体の形成の略図を示す。
【0033】
本明細書及び添付の請求の範囲において使用する“log(P)”または“log(P)値”という用語は、標準的な参考文献の表において見い出すことができ、材料のオクタノール/水分配係数を指す材料の特性である。一般に、材料のlog(P)値は、その親水性/疎水性の表現である。Pは、オクタノール中の材料の濃度対水中の材料の濃度の比と定義される。従って、水中の材料の濃度がオクタノール中の材料の濃度よりも高い場合、考察の対象となっている材料のlog(P)は負である。濃度がオクタノール中でより高い場合、log(P)値は正であり、考察の対象となっている材料の濃度が水中でオクタノール中と同じである場合、log(P)値はゼロである。従って、ゲストはそのlog(P)値を特徴とすることができる。参考のために、表1Aは、幾つかは本発明のゲストとしてよい様々な材料のためのlog(P)値を列記する。
【表1】

【0034】
比較的に大きな正のlog(P)値(例えば、約2を超える)を有するゲストの例としては、シトラール、リナロオール、アルファテルピネオール、及びこれらの組合せが挙げられるがこれらに限定されるものではない。比較的に小さな正のlog(P)値(例えば、約1未満であるがゼロを超える)を有するゲストの例としては、硫化ジメチル、フラネオール、エチルマルトール、アスパルテーム、及びこれらの組合せが挙げられるがこれらに限定されるものではない。比較的に大きな負のlog(P)値(例えば、約−2未満)を有するゲストの例としては、クレアチン、プロリン、及びこれらの組合せが挙げられるがこれらに限定されるものではない。比較的に小さな負のlog(P)値(例えば、0未満であるが約−2を超える)を有するゲストの例としては、ジアセチル、アセトアルデヒド、マルトール、アスパルテーム、及びこれらの組合せが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0035】
log(P)値は、食品及び香味料化学の多くの面において重要である。log(P)値の表を上記に提供する。ゲストのlog(P)値は、最終製品(例えば、食品及び香味料)の多くの面にとって重要となり得る。一般に、正のlog(P)を有する有機ゲスト分子は、シクロデキストリン中に成功裏に封じ込めることができる。幾つかのゲストを含む混合物においては、競争が存在し得、log(P)値は、どのゲストが成功裏に封じ込められるためにより有望であるかを決定する際に有用であり得る。マルトール及びフラネオールは、同様の香味料特性(すなわち、甘い特性)を有するが、それらの異なるlog(P)値が理由となって、シクロデキストリン封じ込めにおける異なるレベルの成功を有すると思われる2つのゲストの例である。log(P)値は、高い水性含量または環境を有する食品製品において重要であることがある。かなりの及び正のlog(P)値を有する化合物は、定義により、最も可溶ではなく、従って最初に移動し、分離し、次に包装中での変化にさらされるものである。高いlog(P)値は、しかしながら、製品中にシクロデキストリンを加えることによってこれを有効に捕捉し、保護することがある。
【0036】
上記に言及したように、本発明と共に使用するシクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、及びこれらの組合せを含むことができる。より親水性のゲスト(すなわち、より小さなlog(P)値を有する)を使用する具体例においては、α−シクロデキストリンを使用して(すなわち、単独でまたは別のタイプのシクロデキストリンと組み合わせて)、シクロデキストリン中のゲストの封じ込めを改良してよい。例えば、α−シクロデキストリン及びβ−シクロデキストリンの組合せは、比較的に親水性のゲストを用いる具体例において使用して、シクロデキストリン包接複合体の形成を改良することできる。実施例26及び27は、α−シクロデキストリンとβ−シクロデキストリンとの50/50混合物を使用してアセトアルデヒドを封じ込める1例を示す。
【0037】
本明細書及び添付の請求の範囲において使用する“シクロデキストリン包接複合体”という用語は、ゲスト分子を三次元のくぼみ内部に捕捉し、保持することによって、1つ以上のシクロデキストリン分子を用いて1つ以上のゲスト分子の少なくとも一部分を封じ込めること(分子レベルの封じ込め)によって形成された複合体を指す。ゲストは、水素結合及び親水性−疎水性相互作用のうちの少なくとも1つによるくぼみ内部にワンデルワール力によって所定の位置に保持されることができる。シクロデキストリン包接複合体が水中に溶解した時に、ゲストはくぼみから放出されることができる。シクロデキストリン包接複合体をまた本明細書において、“ゲスト−シクロデキストリン複合体”と呼ぶ。シクロデキストリンのくぼみはその外面と比較して疎水性であるので、正のlog(P)値(特に、比較的に大きな正のlog(P)値)を有するゲストは、シクロデキストリン中に容易に封じ込められ、水性環境中で安定なシクロデキストリン包接複合体を形成しよう、というのは、ゲストは、水性環境よりもシクロデキストリンのくぼみの方を熱力学的に好むであろうからである。幾つかの具体例においては、1を超えるゲストを複合体にすることが望ましい場合、各ゲストを別個に封じ込めて、考察の対象となっているゲストを封じ込める効率を最大にすることができる。
【0038】
本明細書及び添付の請求の範囲において使用する“複合体になっていないシクロデキストリン”という用語は一般に、ゲストを実質的に含まず、シクロデキストリン包接複合体を形成していないシクロデキストリンを指す。“ゲストを実質的に含まない”シクロデキストリンは一般に、くぼみ中にゲストを含まないシクロデキストリンの大きな部分を含むシクロデキストリンの源を指す。
【0039】
本明細書及び添付の請求の範囲において使用する“ヒドロコロイド”という用語は一般に、水と共にゲルを形成する物質を指す。ヒドロコロイドとしては、キサンタンガム、ペクチン、アラビアゴム(またはガムアカシア)、トラガカント、グアー、カラギーナン、イナゴマメ、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0040】
本明細書及び添付の請求の範囲において使用する“ペクチン”という用語は、植物組織中(例えば、熟した果実及び野菜中)に生じ得るヒドロコロイド多糖を指す。ペクチンとしては、ビートペクチン、果実ペクチン(例えば、柑橘類の皮から)、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。用いられるペクチンは、様々な分子量を有することができる。
【0041】
本発明のシクロデキストリン包接複合体を様々な用途または最終製品において使用することができ、こうしたものとしては、食品(例えば、飲料、ソフトドリンク、サラダ用ドレッシング、ポップコーン、シリアル、コーヒー、クッキー、ブラウニー、他のデザート、他の焼いた品物、調味料等)、チューインガム、歯磨き剤、キャンディー、香味料、芳香物質、薬剤、機能性食品、化粧品、農産物または農業用途(例えば、除草剤、殺虫剤等)、写真乳剤、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つが挙げられるがこれらに限定されるものではない。幾つかの具体例においては、シクロデキストリン包接複合体を、さらに処理し、単離し、乾燥するための中間単離マトリックスとして使用できる(例えば、廃棄物流れと共に使用する時に)。
【0042】
シクロデキストリン包接複合体は、ゲストの安定性を増強するか、これを自由流れ粉末(free flowing powder)に転換するか、またはさもなければその溶解度、送達若しくは性能を修正するために使用することができる。封じ込めることができるゲスト分子の量は、ゲスト分子の分子量に直接に関係がある。幾つかの具体例においては、1モルのシクロデキストリンは1モルのゲストを封じ込める。このモル比に従って、また一例としてのみ、ゲストとしてのジアセチル(分子量86ドルトン)、及びβ−シクロデキストリン(分子量1135ドルトン)を用いる具体例においては、最大理論保持は(86/(86+1135))×100=7.04重量%である。
【0043】
幾つかの具体例においては、シクロデキストリンは、溶液中で自己集合して、3モルのゲスト分子対2モルのシクロデキストリン分子を取り入れることができるナノ構造、例えば図2に示すナノ構造20を形成することができる。例えば、ゲストとしてジアセチルを用いる具体例においては、ジアセチルの10.21重量%の保持が可能であり、ゲストとしてシトラールを用いる具体例においては、シトラールの重量%保持として少なくとも10重量%が可能である(例えば、10〜14重量%の保持)。図4は、3モルのジアセチル分子及び2モルのシクロデキストリン分子の間で形成することができるナノ構造の略図を示す。図6は、3モルのシトラール分子及び2モルのシクロデキストリン分子の間で形成することができるナノ構造の略図を示す。他の複合体増強剤、例えばペクチン、は、自己集合プロセスを助けることができ、乾燥の間中ゲスト:シクロデキストリンの3:2のモル比を維持することができる。幾つかの具体例においては、シクロデキストリン分子のナノ構造への自己集合が理由となって、ゲスト:シクロデキストリンの5:3のモル比が可能である。
【0044】
シクロデキストリン包接複合体は溶液中で形成される。乾燥プロセスは、ゲストの少なくとも一部分をシクロデキストリンのくぼみ中で一時的に動けなくし、シクロデキストリン包接複合体を含む乾燥した自由流れ粉末を製造することができる。
【0045】
シクロデキストリンのくぼみの疎水性(非水溶性)の性質は、より多くの水溶性(親水性)のゲストを犠牲にして、同様な(疎水性の)ゲストを最も容易に優先的に捕捉しよう。この現象は、典型的な噴霧乾燥と比較して成分の不均衡及び不満足な全収率をもたらし得る。
【0046】
本発明の幾つかの具体例においては、別個に封じ込めるための主要な成分を選択することによって、親水性及び疎水性の影響の間の競争を避ける。例えば、バター香味料の場合には、脂肪酸及びラクトンは、ジアセチルよりもシクロデキストリン包接複合体を容易に形成する。しかしながら、こうした化合物は、バターに関連した主要な特徴をもつ影響化合物(key character impact compound)ではなく、これらは、ジアセチル並びに他の水溶性及び揮発性成分の全収率を低減しよう。幾つかの具体例においては、バター香味料における主要な成分(すなわち、ジアセチル)を最大にして、高影響で、より安定、より経済的な製品を製造する。さらなる例として、レモン香味料の場合には、大部分のレモン香味料成分は、等しく申し分なくシクロデキストリン中に封じ込められるだろう。しかしながら、テルペン(レモン香味料の成分)は、香味料価値がほとんど無く、しかもなおレモン香味料混合物の約90%を構成するが、シトラールは、レモン香味料の主要な香味料成分である。幾つかの具体例においては、シトラールを単独で封じ込める。別個に封じ込めるための主要な成分(例えば、ジアセチル、シトラール等)を選択することによって、出発原料の複雑さが低減し、技術工程及びプロセスの経済性の最適化を可能にする。
【0047】
幾つかの具体例においては、シクロデキストリン包接複合体を形成するための包接プロセスを、モル過剰のゲストを加えることによって完了させる。例えば、幾つかの具体例においては(例えば、使用するゲストがジアセチルである場合)、ゲスト:シクロデキストリンの3:1のモル比で、ゲストをシクロデキストリンと組み合わせることができる。幾つかの具体例においては、複合体を形成する際にモル過剰のゲストを使用することは、シクロデキストリン包接複合体を形成させるのみならず、プロセスにおける、例えば、揮発性のゲストを用いる具体例におけるゲストの任意の損失を埋め合わせることができる。
【0048】
幾つかの具体例においては、シクロデキストリン及びゲスト分子を溶媒中で混合することによって形成された懸濁液、エマルションまたは混合物の粘度を制御し、他の調節、例えば固形物含有量を増大させること無しに、一般的な噴霧乾燥技術との適合性を維持する。乳化剤(例えば、増粘剤、ゲル化剤、多糖、ヒドロコロイド)を、シクロデキストリンとゲストとの間の密着を維持するために、及び包接プロセスを助けるために加えることができる。特に、低分子量ヒドロコロイドを使用できる。1つの好ましいヒドロコロイドはペクチンである。乳化剤は、溶解度を増大させるために高熱または共溶媒(例えば、エタノール、アセトン、イソプロパノール等)の使用を必要とすること無く、包接プロセスを助けることができる。
【0049】
幾つかの具体例においては、懸濁液、エマルションまたは混合物の水分を低減して、ゲストに疎水性化合物として振る舞うことを事実上強いる。このプロセスは、比較的に親水性のゲスト、例えばアセトアルデヒド、ジアセチル、硫化ジメチル等でさえも保持を増大させることができる。水分を低減することはまた、噴霧乾燥器を通るスループットを最大にすることができ、全収率を低減し得る、揮発性のゲストがプロセスにおいて吹き飛ばされる機会を低減できる。
【0050】
本発明の幾つかの具体例においては、以下の工程の幾つかまたは全てを含んでよい以下のプロセスによって、シクロデキストリン包接複合体を形成できる:
【0051】
(1)シクロデキストリン及び乳化剤(例えば、ペクチン)を乾式混合する;
【0052】
(2)反応器中で、シクロデキストリン及び乳化剤の乾式混合物を溶媒の例えば水と組み合わせ、撹拌する;
【0053】
(3)ゲストを加え、撹拌する(例えば、約5〜8時間);
【0054】
(4)反応器を冷却する(例えば、冷却ジャケットを作動させる);
【0055】
(5)混合物を撹拌する(例えば、約12〜36時間);
【0056】
(6)乳化する(例えば、インタンク急速ミキサー(in-tank lightning mixer)または高剪断ドロップインミキサー(high shear drop-in mixer)を用いる);
【0057】
(7)シクロデキストリン包接複合体を乾燥して、粉末を形成する。
【0058】
こうした工程は、必ずしも列記した順序で実行する必要はない。加えて、上記のプロセスは、プロセスを、温度、混合の時間、及び他のプロセスパラメータの変化を使用して実行できるという点で非常に強健であることが判明した。
【0059】
幾つかの具体例においては、上記に説明したプロセスにおける工程1は、反応器中のインタンクミキサーを使用して成し遂げることができ、工程2においてこれに熱水を加えるだろう。例えば、幾つかの具体例においては、上記のプロセスを、温度制御のためのジャケット及びインライン高剪断ミキサーを備えた1000ガロン反応器を使用して成し遂げ、反応器は噴霧乾燥器に直接に接続している。幾つかの具体例においては、シクロデキストリン及び乳化剤を別個の装置(例えば、リボンブレンダ等)中で乾式混合し、次に反応器に加え、ここで上記のプロセスの残りを完了することができる。
【0060】
様々な重量%の乳化剤対シクロデキストリンを使用でき、乳化剤:シクロデキストリン重量%少なくとも約0.5%、特に、少なくとも約1%、より詳細には、少なくとも約2%を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。加えて、乳化剤:シクロデキストリン重量%約10%未満を使用でき、特に、約6%未満、より詳細には、約4%未満である。
【0061】
1つ以上の増粘剤及び緩衝剤を含む追加の材料を、シクロデキストリン及び乳化剤と乾式混合することができる。本明細書及び添付の請求の範囲において使用する“増粘剤”という用語を使用して、混合物の粘度の増大を引き起こし、シクロデキストリン包接複合体の形成にかなり影響すること無く混合物の相分離を阻害する材料を指すことができる。増粘剤としては、様々なゲル化剤、多糖、ヒドロコロイド等、及びこれらの組合せを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。特に、低分子量ヒドロコロイドを使用できる。1つの好ましいヒドロコロイドはキサンタンガムである。
【0062】
本明細書及び添付の請求の範囲において使用する“緩衝剤”という用語は、溶液に加えて、混合物のpHを制御し、実質的に中性の混合物を維持することができる物質を指す。各用途のために適切な緩衝剤は変化しようし、少なくとも部分的には、使用するゲストに依存することがある。当分野において周知の様々な緩衝剤を、本発明と共に使用できる。例えば、アセトアルデヒドを使用する場合、混合物は酸性になり得、緩衝剤の例えばクエン酸カリウムを乾式混合物に加えて、混合物のpHを制御し、混合物が過度に酸性になるのを阻害することができる(すなわち、アセトアルデヒドを安定化でき、加水分解されるのを阻害することができる)。
【0063】
上記に説明したプロセスにおける工程2は、加熱、冷却、または両方のためにジャケットを備えた反応器中で成し遂げることができる。幾つかの具体例においては、組み合わせ、撹拌することは、室温で実行することができる。幾つかの具体例においては、組み合わせ、撹拌することは、室温を超える温度で実行することができる。反応器サイズは、製造サイズに依存し得る。例えば、100ガロン反応器を使用できる。反応器は、パドル撹拌機及び凝縮器ユニットを含むことができる。幾つかの具体例においては、工程1を反応器中で完了し、工程2において、同じ反応器中で高温の脱イオン水をシクロデキストリン及びペクチンの乾式混合物に加える。
【0064】
工程3は、密閉された反応器中で成し遂げることができ、または、ゲストを加える間反応器を一時的に環境にさらすことができ、ゲストを加えた後に反応器を再密閉することができる。工程3のゲストを加える時に及び撹拌の最中に、熱を加えることができる。例えば、幾つかの具体例においては、混合物を約55〜60℃に加熱する。
【0065】
工程4は、冷却ジャケットを含む冷却材系を使用して成し遂げることができる。例えば、反応器を、プロピレングリコール冷却材及び冷却ジャケットを用いて冷却することができる。
【0066】
工程2における撹拌、工程3における撹拌、及び工程5における撹拌を、振とう、撹拌、タンブリング、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つによって成し遂げることができる。
【0067】
工程6においては、シクロデキストリン、乳化剤、水及びゲストの混合物を、高剪断ミキサー(例えば、ロス−ブランドミキサー(ROSS-brand mixer)(例えば、10,000RPMで90秒間)、またはシルバーストン−ブランドミキサー(SILVERSTON-brand mixer)(例えば、10,000RPMで5分間))、急速ミキサー、または、単純な混合に続いて、噴霧乾燥器の一部分である均質化ポンプに移すこと、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つを使用して乳化することができる。
【0068】
上記に説明したプロセスにおける工程7を、空気乾燥、真空乾燥、噴霧乾燥(例えば、ノズル噴霧乾燥器、スピニングディスク噴霧乾燥器等を用いる)、オーブン乾燥、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つによって成し遂げることができる。
【0069】
上記に略述したプロセスを使用して、様々な用途または最終製品のための様々なゲストを有するシクロデキストリン包接複合体を提供することができる。例えば、本発明の具体例の幾つかは、バター香味として様々な食品製品のために使用できる(例えば、電子レンジ用ポップコーン、焼いた品物等において)、ジアセチルを含むゲストを有するシクロデキストリン包接複合体を提供する。加えて、幾つかの具体例は、酸安定な飲料(acid stable beverage)のために使用できる、シトラールを含むゲストを有するシクロデキストリン包接複合体を提供する。その上、幾つかの具体例は、ジアセチルのバター香味を模倣することができる、ゲストとして香味料分子の組合せを有するシクロデキストリン包接複合体を提供する。例えば、シクロデキストリン包接複合体は他に、ゲストとして硫化ジメチル(揮発性の硫黄化合物)、プロリン(アミノ酸)及びフラネオール(甘さ増強剤)のうちの少なくとも1つを含むことができる。このジアセチルを含まないシクロデキストリン包接複合体を使用して、食品製品、例えば上記に説明したものにバター香味を提供することができる。電子レンジで加熱できる製品において使用できるシクロデキストリン包接複合体の場合、ゲストの非常に近い会合は、例えば、メイラード及び褐変反応(browning reaction)を増強し、これは、新たな及び別個の芳香を生じることができる。
【0070】
本発明の幾つかの具体例においては、上記に説明したプロセスの工程1を、下記を含むように修正できる:
【0071】
(1)シクロデキストリン、乳化剤(例えば、ペクチン)、及び増粘剤(例えば、キサンタンガム)を乾式混合する。
【0072】
増粘剤をシクロデキストリン及び乳化剤と乾式混合することは、まず、3つの成分のうちの2つを乾式混合し、次に、第3の成分を加えることによって成し遂げることができ、または、3つの成分を同時に互いに乾式混合することができる。このような具体例においては、乳化剤を上記に説明したように使用して、シクロデキストリン包接複合体を形成する際にゲスト分子の包接を増強する。このような具体例においては、増粘剤を、乾燥工程(すなわち、上記に説明したプロセスの工程7)の前に混合物の粘度を増大させために、及びシクロデキストリン包接複合体及び混合物の残りの相分離を実質的に防ぐために主に使用する。増粘剤を、混合物の粘度を増大させるために及び混合物の残りからの複合体の相分離を低減するために使用できるので、増粘剤は、シクロデキストリン包接複合体の製造性(manufacturability)を改良することに寄与することができる。
【0073】
幾つかの具体例においては、少量(例えば、重量%)の1つ以上の増粘剤をシクロデキストリン及び乳化剤に加える。増粘剤は、シクロデキストリン包接複合体形成において実質的に不活性としてよい。すなわち、増粘剤を加えて、乾燥の前の最終混合物中のシクロデキストリン包接複合体の溶解度を増強し、シクロデキストリン包接複合体が溶液/スラリー/混合物から沈降することを実質的に防ぐ。しかしながら、増粘剤は、包接プロセスに関与しない。加えて、増粘剤は、シクロデキストリン包接複合体の形成に影響しない。特に、シクロデキストリン中のゲストの重量%保持は、増粘剤の存在によって実質的に影響されず、ゲスト−シクロデキストリン複合体が使用されるであろう最終製品の所望の効果も機能も実質的に影響されない。
【0074】
増粘剤は、乾燥の前の水中のシクロデキストリン包接複合体の得られた混合物/スラリーの相分離を低減するので、増粘剤は、エマルション適合性シクロデキストリン含有製品(例えば、香味料エマルション)の製造を増強する。エマルション適合性製品を、別の最終製品(例えば、飲料、サラダ用ドレッシング、デザート、及び/または調味料)に加えることができる。幾つかの具体例においては、エマルション適合性製品を、シロップまたはコーティング混合物の形態で提供するかまたはこれらに加えることができ、これを、安定なコーティングとして基体の上に噴霧できる(例えば、シリアル、デザート、調味料、栄養のある棒、及び/またはスナック食品の例えばプレッツェル、チップ等の上に噴霧される香味料エマルション)。従って、増粘剤は、乾燥粉末以外の他の形態でのシクロデキストリン包接複合体の使用を促進する。
【0075】
シクロデキストリン包接複合体を液体形態で提供することは、幾つかの利点を有することができるが、その必要は無い。第1に、液体形態は、香味料組成物を液体濃縮物の形態で飲料に加えることに慣れている飲料顧客にとってよりなじみがあり、使用者に便利であることができる。第2に、液体形態は、香味料組成物を含み、均一に分布し、安定なコーティングを実現するために、上記に列記したものを含む乾燥食品製品の上に容易に噴霧することができる。既存のスプレー−オン適用と異なり、シクロデキストリン包接複合体を含むスプレード−オン香味料組成物は、乾燥基体の表面に香味料組成物を維持するために、典型的な揮発性溶媒または追加のコーティングまたは保護層を必要としないと思われる。第3に、シクロデキストリンは、このような食品製品の貯蔵寿命を伸ばすことができ、というのは、シクロデキストリンは吸湿性ではなく、従って、ベース食品製品または飲料の品質の劣化、味のなさ、または低減された新鮮さを生じないだろうからである。第4に、乾燥プロセスは高価となり得、幾つかのゲスト(例えば、遊離ゲストまたはシクロデキストリン包接複合体中に存在するゲスト)は、乾燥の最中に失われ得、これは、乾燥工程を最適化し、経済的に実行するのを困難にし得る。こうした理由で及び本明細書において特に言及しない他の理由で、幾つかの具体例においてシクロデキストリン包接複合体を液体形態で提供することは、有益となり得る。シクロデキストリン包接複合体のエマルション形態を、最終製品(例えば、飲料または食品製品)に加えて、適切なゲストプロフィル(例えば、香味料プロフィル)を最終製品に与えることができ、同時に、最終製品中のシクロデキストリンが法律の制限の範囲内(例えば、最終製品の0.2重量%以下)にあることを確実にする。
【0076】
幾つかの具体例においては、増粘剤をシクロデキストリンと乾式混合し、乳化剤を使用しない。幾つかの具体例においては、同じ材料を乳化剤及び増粘剤として使用し(例えば、キサンタンガムを乳化剤及び増粘剤として使用する)、幾つかの具体例においては、乳化剤は増粘剤と異なる(例えば、ペクチンを乳化剤として使用し、キサンタンガムを増粘剤として使用する)。使用した乳化剤が使用した増粘剤と異なる材料である場合に、改良されたゲスト−シクロデキストリン複合体形成及び減少した相分離が観察された。例えば、ペクチンを乳化剤として使用し、キサンタンガムを増粘剤として使用した場合に、相乗作用が観察された。
【0077】
幾つかの具体例においては、増粘剤を加えることは、混合物のさらなる乳化の必要を無くす(すなわち、上記の工程6を無くす)。乳化工程を無くすことは、乾燥の前に、乳化のために混合物を任意の追加のタンクに移すことを軽減する。乳化工程を無くすことはさらに、プロセスにおいて必要な工程の数を低減し、スループットを増大させ、製造の全コストを低減する。加えて、これは、全プロセスを、混合物を乾燥する(例えば、噴霧乾燥器にポンプ送圧する)1つのタンク中で実行することを可能にして、全プロセスが閉じた系中で行われることを可能にする。プロセスを閉じた系中で実行することによって、ゲスト分子または他の化学薬品への労働者及び環境の暴露を低減する。
【0078】
幾つかの具体例においては、上記に説明した工程3と7との間のプロセスにおける幾つかの箇所で(例えば、工程7、乾燥工程、を無くした幾つかの具体例においては)、追加の量の増粘剤を加えることができる。幾つかの具体例においては、このもっと後の時点で加えられる増粘剤は、シクロデキストリン及び乳化剤と乾式混合した同じ増粘剤とすることができるか、これは、乾式混合物中に含まれた同じ乳化剤とすることができるか、または、これは、まだ使用していない新たな材料とすることができる。例えば、幾つかの具体例においては、1〜2重量%のガムアカシアを加えることによって、エマルションの懸濁を改良することができる。
【0079】
増粘剤を、増粘剤対全混合物(すなわち、シクロデキストリン、乳化剤、増粘剤、水、ゲスト)の重量%として少なくとも約0.02重量%、特に、少なくとも約0.05重量%、特に、少なくとも約0.06重量%、より詳細には、約0.10重量%で加えることができる。加えて、増粘剤:全混合物の重量%として約0.4重量%未満、特に、約0.2重量%未満、より詳細には、約0.13重量%未満を使用できる。
【0080】
その上、増粘剤:シクロデキストリンの重量%として少なくとも約0.07重量%、特に、少なくとも約0.19重量%、特に、少なくとも約0.22重量%、より詳細には、約0.375重量%を使用できる。加えて、増粘剤:シクロデキストリンの重量%として約1.5重量%未満、特に、約0.75重量%未満、より詳細には、約0.5重量%未満を使用できる。
【0081】
図7は、ゲスト−シクロデキストリン−溶媒系を表す三相モデルを示す。図7において使用するゲストはシトラールであり、使用する溶媒は水であるが、シトラール及び水を図7において説明のためにのみ示すことは理解できるはずである。当業者は、しかしながら、図7に示す三相モデルを使用して、広く様々なゲスト及び溶媒を表すことができることを理解しよう。図7に示すものと同様の三相モデルに関する追加の情報は、Lantz et al., "Use of the three-phase model and headspace analysis for the facile determination of all partition/association constants for highly volatile solute-cyclodextrin-water systems," Anal Bioanal Chem (2005) 383: 160-166において見い出すことができ、これを、本明細書において参考のために引用する。
【0082】
この三相モデルを使用して、(1)シクロデキストリン包接複合体の形成の最中に、(2)シクロデキストリン包接複合体の飲料適用において、及び/または(3)香味料エマルションにおいて起きる現象を説明することができる。香味料エマルションは、例えば、上記に説明したプロセスにおける工程5若しくは6において乾燥の前に若しくは乾燥無しで形成されたスラリー、または、シクロデキストリン包接複合体を含む乾燥粉末を溶媒中に再懸濁させることによって形成されたスラリーを含むことができる。このような香味料エマルションを、飲料用途に加えることができ(例えば、濃縮物として)、または上記に説明したように基体の上に噴霧することができる。
【0083】
図7に示すように、ゲストが存在することができる三相、すなわち、気相、水性相、及びシクロデキストリン相(また時々“擬似相”と呼ぶ)が存在する。3つの平衡、及びそれらの関連した平衡定数(すなわち、K、KP1及びKP2)を使用して、こうした三相におけるゲストの存在を説明する:
【0084】
【化1】

【0085】
【化2】

【0086】
【化3】

【0087】
【化4】

【0088】
[式中、“S”は、下つき文字で示される系の対応する相中の系の溶質(すなわち、ゲスト)を表し、“g”は気相を表し、“aq”は水性相を表し、“CD”はシクロデキストリン相を表し、“C”は、対応する相(すなわち、上付き文字で示されるaqまたはCD)中の溶質の濃度を表し、“P”は、気相中の溶質の分圧を表す。]
【0089】
図7に示す三相系中のゲストの全てを説明するために、当然、ゲストのモルの総数(ntotal)は以下の式によって表すことができる:
【0090】
【化5】

【0091】
定常状態での製品(例えば、飲料または香味料エマルション)中のゲストの任意の損失を説明するために、感覚のために利用できるゲストのモルの総数(ntaste;例えば、飲料または香味料エマルションにおける味のための)は以下の式によって表すことができる:
【0092】
【化6】

【0093】
[式中、f(P)は、例えば、障壁または香味料エマルションの飲料が含まれる容器(例えば、ポリエチレンまたはポリエチレンテレフタレート(PET)で形成されたプラスチック瓶)を通るゲストの任意の移動(または損失)を表す分配関数である。]
【0094】
大きな正のlog(P)値を有するゲストの場合、シクロデキストリン中のゲストの封じ込めは、熱力学的に有利であろうし(すなわち、KP1及びKP2は1を超えよう)、以下の関係が生じよう:
【0095】
【化7】

【0096】
その結果、系中に存在するゲストの大部分は、シクロデキストリン包接複合体の形態であろう。水性及び気相中の遊離ゲストの量が最小になるでろうのみならず、障壁または容器を通るゲストの移動が最小になるだろう。従って、感覚のために利用できるゲストの大部分は、シクロデキストリン相中に存在しようし、感覚のために利用できるゲストのモルの総数(ntaste)は次の通り近似できる:
【0097】
【化8】

【0098】
ゲスト及びシクロデキストリンの間の溶液中のシクロデキストリン包接複合体の形成は、以下の式によってより完全に表される:
【0099】
【化9】

【0100】
実験的に、本発明を支持するデータは、ゲストのlog(P)値は、シクロデキストリン包接複合体の形成及び安定性においてファクターとなることができることを示した。すなわち、実験データは、上記の式9に示した平衡は、溶液中の封じ込めプロセスを伴う正味のエネルギー損失によって右に駆動されることと、平衡は、考察の対象となっているゲストのlog(P)値によって少なくとも部分的に予測できることを示した。ゲストのlog(P)値は、高い水性含量または環境を有する最終製品においてファクターとなることができることが見い出された。例えば、比較的に大きな正のlog(P)値を有するゲストは、典型的に最も水溶性ではなく、最終製品から移動し、分離し得、包装内部の環境の変化を受けやすい。しかしながら、比較的に大きなlog(P)値は、シクロデキストリンを最終製品に加えることによって、このようなゲストを有効に捕捉し、保護することができる。すなわち、幾つかの具体例においては、従来安定化することが最も困難だったゲストは、本発明の方法を使用して安定化することが容易となり得る。
【0101】
ゲストのlog(P)値の影響を説明するために、系中のゲストの安定性を表す平衡定数(KP2’)は、以下の式によって表すことができる:
【0102】
【化10】

【0103】
[式中、log(P)は、系中の考察の対象となっているゲスト(S)のためのLog(P)値である。]式10は、ゲストのlog(P)値を考慮したモデルを確立する。式10は、いかにして熱力学的に安定な系が、比較的に大きな正のlog(P)値を有するゲストを用いてシクロデキストリン包接複合体を形成することから生じることができるかを示す。例えば、幾つかの具体例においては、安定な系は、正のlog(P)値を有するゲストを使用して形成できる。幾つかの具体例においては、安定な系は、log(P)値として少なくとも約+1を有するゲストを使用して形成できる。幾つかの具体例においては、安定な系は、log(P)値として少なくとも約+2を有するゲストを使用して形成できる。幾つかの具体例においては、安定な系は、log(P)値として少なくとも約+3を有するゲストを使用して形成できる。
【0104】
ゲストのlog(P)を考慮することによって、シクロデキストリン包接複合体を含む系中のゲストの安定性を予測することが可能である。溶液中の複合体形成反応の熱力学を利用することによって、ゲストのための保護のための及び安定な環境を形成できる。シロデキストリン(cylodextrin)からのゲストの放出特性は、K、ゲストの空気/水分配係数によって支配できる。シクロデキストリン包接複合体を含む系が、非平衡状態、例えば口中に置かれた場合、Kは、log(P)と比較して大きくなり得る。当業者は、1を超えるゲストが系中に存在でき、同様の式及び関係を系の各ゲストに適用できることを理解しよう。
【0105】
ゲストの安定性を改良すること及びゲストを劣化から保護することは、本明細書と同じ日に出願された同時係属の米国特許出願第 号の主題であり、その全内容を、本明細書において参考のために引用する。
【0106】
log(P)値は、良好な実験的指標となり得、幾つかの参考文献から入手可能であるが、別の重要な基準は、特定のゲストのための結合定数である(すなわち、一旦複合体が形成されると、いかに強くゲストがシクロデキストリンのくぼみ中で結合するか)。あいにく、ゲストのための結合定数は実験的に決定される。リモネン及びシトラールの場合には、例えば、たとえlog(P)値が同様でも、シトラールははるかに強い複合体を形成することができる。この結果、より高い結合定数が理由となって、高いリモネン濃度の存在下でさえも、シトラールは消費まで優先的に保護される。これは予想外の利益であり、現在の科学文献から直接に予測されない。
【0107】
本発明の様々な特徴及び態様を以下の実施例において述べ、これは、例示であることを意図されており、限定するものではない。特に断らない限り、実施例の全ては大気圧で実行された。実施例1〜31は実例である。実施例32は予言的な実施例である。
【実施例】
【0108】
実施例1:β−シクロデキストリン、ジアセチル及び乳化剤としてのペクチンを有するシクロデキストリン包接複合体及びその形成方法
大気圧で100ガロン反応器中、49895.1600g(110.02lb)のβ−シクロデキストリンを、997.9g(2.20lb)のビートペクチン(2重量%のペクチン:β−シクロデキストリン;デガッサ−フランス(Degussa-France)から入手可能なXPQ EMP 5ビートペクチン)と共に乾式混合して、乾式混合物を形成した。100ガロン反応器は加熱及び冷却のためにジャケットを備え、パドル撹拌機を含み、凝縮器ユニットを含んだ。反応器に、プロピレングリコール冷却材を約40°F(4.5℃)で供給した。プロピレングリコール冷却材系を最初停止させ、ジャケットはある程度反応器のための絶縁体として働く。124737.9g(275.05lb)の高温の脱イオン水を、β−シクロデキストリン及びペクチンの乾式混合物に加えた。水は温度約118°F(48℃)を有した。反応器のパドル撹拌機を使用して、混合物を約30分間撹拌した。反応器を次に一時的に開け、11226.4110g(24.75lb)のジアセチルを加えた(下文で使用するように、実施例における“ジアセチル”は、オールドリッチ・ケミカル、ミルウォーキー、WI(Aldrich Chemical, Milwaukee, WI)から購入したジアセチルを指す)。反応器を再密閉し、得られた混合物を、熱を加えずに8時間撹拌した。次に、反応器ジャケットをプロピレングリコール冷却材系に接続した。冷却材を約40°F(4.5℃)に作動させ、混合物を約36時間撹拌した。混合物を次に、高剪断タンクミキサー、例えば典型的に噴霧乾燥操作において使用されるものを使用して乳化した。混合物を次に、入口温度約410°F(210℃)及び出口温度約221°F(105℃)を有するノズル乾燥器上で噴霧乾燥した。シクロデキストリン包接複合体中の12.59重量%のジアセチルというパーセント保持を実現した。含水率を4.0%で測定した。シクロデキストリン包接複合体は0.3%未満の表面ジアセチルを含み、シクロデキストリン包接複合体の粒度を、80メッシュスクリーンを通して99.7%として測定した。当業者は、加熱及び冷却は他の手段によって制御できることを理解しよう。例えば、ジアセチルを室温スラリーに加えることができ、自動的に加熱及び冷却できる。
【0109】
実施例2:α−シクロデキストリン、ジアセチル及び乳化剤としてのペクチンを有するシクロデキストリン包接複合体及びその形成方法
【0110】
実施例1のβ−シクロデキストリンをα−シクロデキストリンで置き換え、1重量%のペクチン(すなわち、1重量%のペクチン:β−シクロデキストリン;デガッサ−フランスから入手可能なXPQ EMP 5ビートペクチン)と共に乾式混合した。混合物を、実施例1において述べた方法によって処理し、乾燥した。シクロデキストリン包接複合体中のジアセチルのパーセント保持は、11.4重量%だった。
実施例3:β−シクロデキストリン及びオレンジエッセンス、乳化剤としてのペクチンを有するシクロデキストリン包接複合体及びその形成方法
【0111】
オレンジエッセンス、ジュース製造からの水性廃棄物流れ、を、実施例1において述べたプロセスに従って形成したβ−シクロデキストリン及び2重量%のペクチンの乾式混合物に水性相として加えた。追加の水を加えず、固形物含有量は約28%だった。シクロデキストリン包接複合体を、実施例1において述べた方法によって形成した。乾燥した包接複合体は、約3〜4重量%のアセトアルデヒド、約5〜7重量%の酪酸エチル、約2〜3重量%のリナロオール及び他の柑橘類増強ノートを含んだ。得られたシクロデキストリン包接複合体は、トップノーティング飲料(top-noting beverage)において有用となり得る。
実施例4:β−シクロデキストリン及びアセチルプロピオニル、乳化剤としてのペクチンを有するシクロデキストリン包接複合体及びその形成方法
【0112】
モル過剰のアセチルプロピオニルを、水中でβ−シクロデキストリン及び2重量%のペクチンの乾式混合物に加え、実施例1において述べた方法に従った。シクロデキストリン包接複合体中のアセチルプロピオニルのパーセント保持は、9.27重量%だった。混合物は、トップノーティングでジアセチルを含まないバター系において有用となり得る。
実施例5:オレンジ油香味料製品及びその形成方法
【0113】
オレンジ油(すなわち、オレンジブレジル(Orange Bresil);75g)を、635gの水、403.75gの麦芽デキストリン、及び21.25gのビートペクチン(デガッサ−フランスから入手可能、製品no.XPQ EMP 5)を含む水性相に加えた。オレンジ油を、穏やかに撹拌しながら水性相に加え、続いて10,000RPMで強く撹拌して、混合物を形成した。混合物を次に、ホモジナイザーを250barで通過させて、エマルションを形成した。エマルションを、入口温度約180℃及び出口温度約90℃を有するニロ−ブランド噴霧乾燥器(NIRO-brand spray drier)を使用して乾燥して、乾燥した生成物を形成した。パーセント香味料保持を次に、100gの乾燥した生成物中の油の量として(g単位で)定量化し、出発混合物中の油含量で割った。オレンジ油のパーセント保持は約91.5%だった。
実施例6:オレンジ油香味料製品及びその形成方法
【0114】
オレンジ油(75g)を、635gの水、297.50gの麦芽デキストリン、及び127.50gのアラビアゴム(コロイズ・ナチュレルス・インターナショナル(Colloids Naturels International)から入手可能)を含む水性相に加えた。オレンジ油を、実施例5において述べた方法に従って水性相に加え、乾燥した。パーセント香味料保持は約91.5%だった。
実施例7:オレンジ油香味料製品及びその形成方法
【0115】
オレンジ油(75g)を、635gの水、297.50gの麦芽デキストリン、123.25gのアラビアゴム(コロイズ・ナチュレルス・インターナショナルから入手可能)、及び4.25gの解重合した柑橘類ペクチンを含む水性相に加えた。オレンジ油を、実施例5において述べた方法に従って水性相に加え、乾燥した。パーセント香味料保持は約96.9%だった。
実施例8:オレンジ油香味料製品及びその形成方法
【0116】
オレンジ油(75g)を、635gの水、297.50gの麦芽デキストリン、123.25gのアラビアゴム(コロイズ・ナチュレルス・インターナショナルから入手可能)、及び4.25gのビートペクチン(デガッサ−フランスから入手可能、製品no.XPQ EMP 5)を含む水性相に加えた。オレンジ油を、実施例5において述べた方法に従って水性相に加え、乾燥した。パーセント香味料保持は約99.0%だった。
実施例9:オレンジ油香味料製品及びその形成方法
【0117】
オレンジ油(75g)を、635gの水、403.75gの麦芽デキストリン、及び21.25gの解重合した柑橘類ペクチンを含む水性相に加えた。オレンジ油を、実施例5において述べた方法に従って水性相に加え、乾燥した。パーセント香味料保持は約90.0%だった。
実施例10:オレンジ油香味料製品及びその形成方法
【0118】
オレンジ油(75g)を、635gの水、340.00gの麦芽デキストリン、及び85.00gのアラビアゴム(コロイズ・ナチュレルス・インターナショナルから入手可能)を含む水性相に加えた。オレンジ油を、実施例5において述べた方法に従って水性相に加え、乾燥した。パーセント香味料保持は約91.0%だった。
実施例11:オレンジ油香味料製品及びその形成方法
【0119】
オレンジ油(75g)を、635gの水及び425.00gの麦芽デキストリンを含む水性相に加えた。オレンジ油を、実施例5において述べた方法に従って水性相に加え、乾燥した。パーセント香味料保持は約61.0%だった。
実施例12:オレンジ油香味料製品及びその形成方法
【0120】
オレンジ油(75g)を、635gの水、420.75gの麦芽デキストリン、及び4.25gのペクチンを含む水性相に加えた。オレンジ油を、実施例5において述べた方法に従って水性相に加え、乾燥した。パーセント香味料保持は約61.9%だった。
実施例13:オレンジ油香味料製品及びその形成方法
【0121】
オレンジ油(75g)を、635gの水、403.75gの麦芽デキストリン、及び21.50gのペクチンを含む水性相に加えた。オレンジ油を、実施例5において述べた方法に従って水性相に加え、乾燥した。パーセント香味料保持は約71.5%だった。
実施例14:オレンジ油香味料製品及びその形成方法
【0122】
オレンジ油(75g)を、635gの水、420.75gの麦芽デキストリン、及び4.75gの解重合した柑橘類ペクチンを含む水性相に加えた。オレンジ油を、実施例5において述べた方法に従って水性相に加え、乾燥した。パーセント香味料保持は約72.5%だった。
実施例15:オレンジ油香味料製品及びその形成方法
【0123】
オレンジ油(75g)を、635gの水、420.75gの麦芽デキストリン、及び4.75gのビートペクチン(デガッサ−フランスから入手可能、製品no.XPQ EMP 5)を含む水性相に加えた。オレンジ油を、実施例5において述べた方法に従って水性相に加え、乾燥した。パーセント香味料保持は約78.0%だった。
実施例16:オレンジ油香味料製品及びその形成方法
【0124】
オレンジ油(75g)を、635gの水、414.40gの麦芽デキストリン、及び10.60gの解重合した柑橘類ペクチンを含む水性相に加えた。オレンジ油を、実施例5において述べた方法に従って水性相に加え、乾燥した。パーセント香味料保持は約85.0%だった。
実施例17:オレンジ油香味料製品及びその形成方法
【0125】
オレンジ油(75g)を、635gの水、414.40gの麦芽デキストリン、及び10.60gのビートペクチン(デガッサ−フランスから入手可能、製品no.XPQ EMP 5)を含む水性相に加えた。オレンジ油を、実施例5において述べた方法に従って水性相に加え、乾燥した。パーセント香味料保持は約87.0%だった。
実施例18:シクロデキストリン包接複合体と水とのスラリー/混合物中の相分離を防ぐための増粘剤としてのキサンタンガムの能力
【0126】
様々な量のキサンタンガムを、水と実施例1に従って形成されたジアセチル−シクロデキストリン複合体とのスラリーに加えた。特に、28.57重量%のジアセチル−シクロデキストリン複合体を71.43重量%の水と組み合わせた。この研究は、様々な量のキサンタンガムがジアセチル−シクロデキストリン複合体の溶解度に及ぼすであろう影響をシミュレートする。温水(約30〜35℃)をジアセチル−シクロデキストリン複合体と組み合わせ、一晩放置した。表1Bに示すように、キサンタンガム対全混合物の以下の重量%を研究した:0.00重量%、0.03重量%、0.06重量%、0.10重量%及び0.13重量%。各混合物を、中位の撹拌棒速度である3で、マグネティックスターラーホットプレート(コーニンング(Corning)から入手可能)上で1分間撹拌し、30分毎に、最高310分まで観察した。表1Bに示すように、各時間間隔での各混合物に関する相分離のレベルを、“無し”、“非常にわずか”、“わずか”、“わずかから中程度”、または“中程度”によって説明する。表1Bにさらに示すように、キサンタンガム対全混合物の重量%として少なくとも約0.10重量%は、全ての時間間隔で相分離を提供しなかった。
【表2】

実施例19:α−シクロデキストリン、ジアセチル及び増粘剤としてのキサンタンガムを有するシクロデキストリン包接複合体及びその形成方法
【0127】
大気圧で4L反応器中、2Lの脱イオン水を、600gのα−シクロデキストリン(W6α−シクロデキストリン、ワッカー、エードリアン、ミシガン(Wacker, Adrian, Michigan)から入手可能)に加えて、スラリーを形成した。4L反応器を、実験室規模の水浴の加熱及び冷却装置によって、加熱及び冷却のためにセットアップした。50gのジアセチルを、α−シクロデキストリンと水とのスラリーに加えた。得られた混合物を3日間(すなわち、週末にわたって)撹拌した。3日目に、午後12時30分に、50mLの5%キサンタンガム/プロピレングリコール(ケルトロール(KELTROL)キサンタンガム、CPケルコ(CP Kelco)から入手可能、SAPNo.15695)200gのプロピレングリコール中に溶かした(cut)を加えた(0.125重量%のキサンタンガム/プロピレングリコール混合物を加えた)。混合物を次に、入口温度約210℃及び出口温度約105℃を有するスピニングディスク噴霧乾燥器(ニロ(Niro)から入手可能)上で噴霧乾燥した。シクロデキストリン包接複合体中の約3.29重量%のジアセチルというパーセント保持を実現した。
実施例20:β−シクロデキストリン、ジアセチル及び増粘剤としてのキサンタンガムを有するシクロデキストリン包接複合体及びその形成方法
【0128】
実施例19のα−シクロデキストリンをβ−シクロデキストリン(W7β−シクロデキストリン、ワッカーから入手可能)で置き換えた。シクロデキストリン包接複合体中の約0.75重量%のジアセチルというパーセント保持を実現した。
実施例21:β−シクロデキストリン、ジアセチル、乳化剤としてのペクチン及び増粘剤としてのキサンタンガムを有するシクロデキストリン包接複合体及びその形成方法
【0129】
大気圧で2L反応器中、400gのβ−シクロデキストリン(W7β−シクロデキストリン、ワッカーから入手可能)、8gのビートペクチン(2重量%のペクチン:β−シクロデキストリン;デガッサ−フランスから入手可能なXPQ EMP 4ビートペクチン)、及び1.5gのキサンタンガム(例えば、ケルトロールキサンタンガム、CPケルコから入手可能、SAPNo.15695)を振とう機によって一緒に乾式混合して、乾式混合物を形成した。1Lの脱イオン水を乾式混合物に加えて、スラリーまたは混合物を形成した。2L反応器を、実験室規模の水浴の加熱及び冷却装置によって、加熱及び冷却のためにセットアップした。混合物を約55〜60℃に加熱し、約30分撹拌することによって撹拌した。91gのジアセチルを混合物に加えた。反応器を次に密閉し、得られた混合物を2時間、約55〜60℃で撹拌した。加熱及び冷却の実験室装置の冷却部分を次に作動させ、混合物を約36時間、約5〜10℃で撹拌した。混合物を次に、入口温度約210℃及び出口温度約105℃を有するブチ B−191(BUCHI B-191)実験室噴霧乾燥器(ブチ、スイス(BUCHI, Switzerland)から入手可能)上で噴霧乾燥した。シクロデキストリン包接複合体中の約8.70重量%のジアセチルというパーセント保持を実現した。
実施例22:β−シクロデキストリン、アセトアルデヒド、乳化剤としてのペクチン及び増粘剤としてのキサンタンガムを有するシクロデキストリン包接複合体及びその形成方法
【0130】
大気圧で5L反応器中、1200gのβ−シクロデキストリン(W7β−シクロデキストリン、ワッカーから入手可能)及び24gのビートペクチン(2重量%のペクチン:β−シクロデキストリン;デガッサ−フランスから入手可能なXPQ EMP 4ビートペクチン)を一緒に乾式混合した。4.27gのキサンタンガム(ケルトロールキサンタンガム、CPケルコから入手可能、SAPNo.15695)及び9gのクエン酸カリウムを、β−シクロデキストリン及びペクチン中に乾式混合して、乾式混合物を形成した。(アセトアルデヒドの使用が理由となって、クエン酸カリウムを緩衝剤として使用して、混合物のpHを制御した。)2.93Lの脱イオン水を乾式混合物に加えて、スラリーまたは混合物を形成した。5L反応器を、実験室規模の水浴の加熱及び冷却装置によって、加熱及び冷却のためにセットアップした。混合物を約5〜10℃に冷却し、約30分撹拌した(凝縮器を使用しなかった)。5〜10℃の温度を実現した後に、40%の水中に溶かした115.0gのアセトアルデヒド(アルフェブロ(Alfebro)、デガッサ.コーポレーション(Degussa Corporation)の1部門から入手可能)(46gのアセトアルデヒドと等しい)を加えた。反応器を密閉し、得られた混合物を一晩、5〜10℃で撹拌した。混合物を次に、入口温度約210℃及び出口温度約105℃を有するボーエン BE 1316(BOWEN BE 1316)少量生産噴霧乾燥器(ボーエン、サマービル、NJ(BOWEN, Somerville, NJ)から入手可能)上で噴霧乾燥した。シクロデキストリン包接複合体中の約2.20重量%のアセトアルデヒドというパーセント保持を実現した。乾燥粉末の収率1177g(90+%)を実現した。
実施例23:β−シクロデキストリン、ジアセチル、乳化剤としてのペクチン及び増粘剤としてのキサンタンガムを有するシクロデキストリン包接複合体及びその形成方法
【0131】
大気圧で5L反応器中、1200gのβ−シクロデキストリン(W7β−シクロデキストリン、ワッカーから入手可能)、24gのビートペクチン(2重量%のペクチン:β−シクロデキストリン;デガッサ−フランスから入手可能なXPQ EMP 4ビートペクチン)、及び4.5gのキサンタンガム(ケルトロールキサンタンガム、CPケルコから入手可能、SAPNo.15695)を一緒に乾式混合して、乾式混合物を形成した。3Lの脱イオン水を乾式混合物に加えて、スラリーまたは混合物を形成した。5L反応器を、実験室規模の水浴の加熱及び冷却装置によって、加熱及び冷却のためにセットアップした。混合物を約55〜60℃に加熱し、約30分撹拌することによって撹拌した。273gのジアセチルを加えた。反応器を密閉し、得られた混合物を4時間、約55〜60℃で撹拌した。加熱及び冷却の実験室装置の冷却部分を次に作動させ、混合物を一晩、約5〜10℃で撹拌した。混合物を次に、入口温度約210℃及び出口温度約105℃を有するボーエン BE 1316少量生産噴霧乾燥器(ボーエン、サマービル、NJから入手可能)上で噴霧乾燥した。シクロデキストリン包接複合体中の約7.36重量%のジアセチルというパーセント保持を実現した。乾燥粉末の90+%の収率を実現した。
実施例24:β−シクロデキストリン、ジアセチル、乳化剤としてのペクチン及び増粘剤としてのキサンタンガムを有するシクロデキストリン包接複合体及びその形成方法
【0132】
2L反応器中、400gのβ−シクロデキストリン(W7β−シクロデキストリン、ワッカーから入手可能)、8gのビートペクチン(2重量%のペクチン:β−シクロデキストリン;デガッサ−フランスから入手可能なXPQ EMP 4ビートペクチン)、及び1.5gのキサンタンガム(ケルトロールキサンタンガム、CPケルコから入手可能、SAPNo.15695)を一緒に乾式混合して、乾式混合物を形成した。1Lの脱イオン水を乾式混合物に加えて、スラリーまたは混合物を形成した。2L反応器を、実験室規模の水浴の加熱及び冷却装置によって、加熱及び冷却のためにセットアップした。混合物を約55〜60℃に加熱し、約30分撹拌することによって撹拌した。91gのジアセチルを加えた。反応器を密閉し、得られた混合物を4時間、約55〜60℃で撹拌した。加熱及び冷却の実験室装置の冷却部分を次に作動させ、混合物を一晩、約5〜10℃で撹拌した。混合物を次に、入口温度約210℃及び出口温度約105℃を有するブチ B−191実験室噴霧乾燥器(ブチ、スイスから入手可能)上で噴霧乾燥した。シクロデキストリン包接複合体中の約8.70重量%のジアセチルというパーセント保持を実現した。
実施例25:β−シクロデキストリン及びシトラール、乳化剤としてのペクチン及び増粘剤としてのキサンタンガムを有するシクロデキストリン包接複合体を含むエマルション、及びその形成方法
【0133】
大気圧で100ガロン反応器中、49895.1600g(110.02lb)のβ−シクロデキストリン、997.9g(2.20lb)のビートペクチン(2重量%のペクチン:β−シクロデキストリン;デガッサ−フランスから入手可能なXPQ EMP 5ビートペクチン)及び181.6g(0.4lb)のキサンタンガム(合計の0.1重量%;ケルトロールキサンタンガム、CPケルコから入手可能、SAPNo.15695)を一緒に乾式混合して、乾式混合物を形成した。100ガロン反応器は加熱及び冷却のためにジャケットを備え、パドル撹拌機を含み、凝縮器ユニットを含んだ。反応器に、プロピレングリコール冷却材を約40°F(4.5℃)で供給した。プロピレングリコール冷却材系を最初停止させ、ジャケットはある程度反応器のための絶縁体として働く。124737.9g(275.05lb)の高温の脱イオン水を、β−シクロデキストリン及びペクチンの乾式混合物に加えた。水は温度約118°F(48℃)を有した。反応器のパドル撹拌機を使用して、混合物を約30分間撹拌した。反応器を次に一時的に開け、1kg(2.2lb)のシトラール(天然シトラール、SAPNo.921565、ロットNo.10000223137、シトラス&アライド(Citrus & Allied)から入手可能)を加えた。反応器を再密閉し、得られた混合物を、熱を加えずに6時間撹拌した。次に、反応器ジャケットをプロピレングリコール冷却材系に接続した。冷却材を約40°F(4.5℃)に作動させ、混合物を約6時間撹拌した。混合物を次に、高剪断タンクミキサー(HP 5 1PQミキサー、シルバーストン・マシンズLtd.、チェシャム、イギリス(Silverston Machines Ltd., Chesham England)から入手可能)を使用して乳化して、安定なエマルションを形成した。得られたエマルションは、90日/月/年沈降も分離もすること無く安定であり、20〜30ppmのシトラール及び0.2重量%のβ−シクロデキストリンを、完成した飲料または食品製品に送達するために使用できた。シクロデキストリン包接複合体中の2.0重量%のシトラールというパーセント保持を実現した。
実施例26:アセトアルデヒド及びα/β−シクロデキストリンの50/50混合物、乳化剤としてのペクチン及び増粘剤としてのキサンタンガムを有するシクロデキストリン包接複合体及びその形成方法
【0134】
2L反応器中、200gのα−シクロデキストリン(W6α−シクロデキストリン、ワッカーから入手可能)、200gのβ−シクロデキストリン(W7β−シクロデキストリン、ワッカーから入手可能)、8gのビートペクチン(2重量%のペクチン:全シクロデキストリン;デガッサ−フランスから入手可能なXPQ EMP 4ビートペクチン)、1.46g(合計の0.1重量%)のキサンタンガム(ケルトロールキサンタンガム、CPケルコから入手可能、SAPNo.15695)、及び3gのクエン酸カリウムを一緒に乾式混合して、乾式混合物を形成した。(アセトアルデヒドの使用が理由となって、クエン酸カリウムを緩衝剤として使用して、混合物のpHを制御した。)800mLの脱イオン水を乾式混合物に加えて、スラリーまたは混合物を形成した。2L反応器を、実験室規模の水浴の加熱及び冷却装置によって、加熱及び冷却のためにセットアップした。冷却を作動させて、スラリーを温度約5〜10℃に冷却し、スラリーを撹拌した。50gのアセトアルデヒドを加えた(アセトアルデヒド対シクロデキストリンの3Xモル比)。反応器を密閉し、得られた混合物を一晩、約5〜10℃で撹拌した。混合物を次に、入口温度約210℃及び出口温度約105℃を有するブチ B−191実験室噴霧乾燥器(ブチ、スイスから入手可能)上で噴霧乾燥した。シクロデキストリン包接複合体中の約2.35重量%のアセトアルデヒドというパーセント保持を実現し、これは、実施例28において下記に説明するように、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して決定した。得られた粉末の%水分は6.57%だった。2つの重複したバッチを3日の期間にわたって作製して、再現性を確実にした。こうしたものにCDAB−158及びCDAB159とラベルを付けた。
実施例27:アセトアルデヒド及びα/β−シクロデキストリンの50/50混合物、乳化剤としてのペクチン及び増粘剤としてのキサンタンガムを有するシクロデキストリン包接複合体及びその形成方法
【0135】
2L反応器中、200gのα−シクロデキストリン(W6α−シクロデキストリン、ワッカーから入手可能)、200gのβ−シクロデキストリン(W7β−シクロデキストリン、ワッカーから入手可能)、8gのビートペクチン(2重量%のペクチン:全シクロデキストリン;デガッサ−フランスから入手可能なXPQ EMP 4ビートペクチン)、1.46gのキサンタンガム(ケルトロールキサンタンガム、CPケルコから入手可能、SAPNo.15695)、及び3gのクエン酸カリウムを一緒に乾式混合して、乾式混合物を形成した。(アセトアルデヒドの使用が理由となって、クエン酸カリウムを緩衝剤として使用して、混合物のpHを制御した。)800mLの脱イオン水を乾式混合物に加えて、スラリーまたは混合物を形成した。2L反応器を、実験室規模の水浴の加熱及び冷却装置によって、加熱及び冷却のためにセットアップした。冷却を作動させて、スラリーを温度約5〜10℃に冷却し、スラリーを撹拌した。25g(1.5Xモル比)のアセトアルデヒドを加えた。反応器を密閉し、得られた混合物を一晩、約5〜10℃で撹拌した。混合物を次に、入口温度約210℃及び出口温度約105℃を有するブチ B−191実験室噴霧乾燥器(ブチ、スイスから入手可能)上で噴霧乾燥した。シクロデキストリン包接複合体中の約2.45重量%のアセトアルデヒドというパーセント保持を実現し、これは、実施例28において下記に説明するように、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して決定した。再度、2つの重複したバッチを2〜4日の期間にわたって作製して、再現性を確実にした。こうしたものにCDAB−175及びCDAB−176とラベルを付けた。
実施例28:実施例26及び27からのセトアルデヒド−α/β−シクロデキストリン複合体の安定性の研究
【0136】
実施例26(“CDAB−158”と呼ぶ)及び実施例27(“CDAB−159”と呼ぶ)において説明したアセトアルデヒド−α/β−シクロデキストリン包接複合体の形成に続いて、様々な時点及び温度でHPLCを使用して、アセトアルデヒドの重量%保持を測定した。全ての時点での全ての測定のためのHPLCを、アジレント・テクノロジーズ、Inc.、パロアルト、CA(Agilent Technologies, Inc., Palo Alto, CA)から入手可能な、オートサンプラー及び可変波長検出器を有する1050HPLC系を使用して実行した。可変波長検出器を、UV:290nmで設定した。HLPC系と共に使用したカラムは、バイオ・ラッド・ラボラトリーズ、ハーキュリーズ、CA(BioRad Laboratories, Hercules, CA)から入手可能な、HPX−87Aイオンエクスクルージョンカラムフォーオーガニックアシズ(HPX-87A Ion Exclusion Column for Organic Acids)だった。カラムは0.005M(または0.01N)の硫酸を移動相として使用する。カラム及び移動相を選択し、というのは、移動相は、シクロデキストリンを完全に加水分解することができ、分析のためにゲスト分子を放出することができるからである。カラムは45℃で恒温に保たれた。
【0137】
まず、HPLC検量線をアセトアルデヒドに関して作成して、クロマトグラムにおける吸光度単位(AU)とアセトアルデヒドの量/質量(mg単位で)との相関を形成した。図8に示す、アセトアルデヒドに関する検量線を作成するために使用したデータポイントを、下記の表2に示す:
【表3】

【0138】
図8に示すように、アセトアルデヒドの質量(mg単位で)と吸光度単位との間の関係は、質量及び吸光度単位の示した範囲にわたって実質的に直線である。従って、試料からのアセトアルデヒドに関するクロマトグラムの面積計算(曲線の下の面積)が検量線における吸光度単位の範囲に入った場合、単比例を使用して、その試料中に存在したアセトアルデヒドの質量(mg単位で)を推定した。
【0139】
図9及び下記の表3〜8は、実施例26及び27(それぞれCDAB−158及びCDAB−159)において説明したアセトアルデヒド−α/β−シクロデキストリン包接複合体の安定性の結果を示す。各アセトアルデヒド−α/β−シクロデキストリン包接複合体の安定性を、様々な時点及び温度条件でのアセトアルデヒドの重量%保持を決定することによって測定した。各時点で、既知の重量のアセトアルデヒド標準を、HPLC系上を4または5回通し、得られた面積計算を平均して、図8に示す検量線の直線範囲に入る参照データポイントを実現した。各標準を、25μLのアセトアルデヒドの20%溶液(水中)を、移動相を含む10mLのメスフラスコに加えることによって作製した。mg単位で加えた重量を記録し、使用して、正確な重量%標準を計算した。
【0140】
下記の表3に示すように、時刻ゼロで、実施例26、CDAB−158からの約100mg(101.40mg)の得られた乾燥粉末を、10mLの0.005Mの硫酸中に溶解させ(10mLのメスフラスコを使用して)、HPLC系上を4回通した。CDAB−158の第2の試料の約100mg(105.10mg)を次に、10mLの0.005Mの硫酸中に溶解させ、HPLC系上を4回通して、CDAB−158に関して合計8つのデータポイントを実現した。各ランにつき、HPLC注入体積は50μLだった。標準から得た参照データポイント(5回通して平均した)を使用して、8つのHPLCランの各々に関するクロマトグラム上のアセトアルデヒドピークに対応する面積計算を、アセトアルデヒドの質量(mg単位で)に転換した(例えば、230*4.22/356=2.41、206*4.22/356=2.44等)。各HPLCランの場合の保持時間も記録して、分析したピークがアセトアルデヒドに対応することを検証した。次に、試験試料の全質量(すなわち、101.40mgまたは105.10mg)に基づいて、アセトアルデヒド対全試料の重量%を各HPLCランにつき計算し、表3の列の右端の方に入れた。最後に、全ての8つのHPLCランに関するアセトアルデヒドの重量%保持を平均して、CDAB−158の場合のアセトアルデヒドの重量%保持として2.35%を実現した。この“%保持”を、図9においてCDAB−158に関する“0日”データポイントとして記録した。
【0141】
重量%保持は実際に、乾燥粉末試料におけるアセトアルデヒドの重量%である。乾燥粉末はアセトアルデヒド−α/β−シクロデキストリン包接複合体を含むが、また遊離アセトアルデヒド、複合体になっていないα−シクロデキストリン、複合体になっていないβ−シクロデキストリン、クエン酸カリウム、キサンタンガム、ペクチン、及び水を含むことがある。しかしながら、乾燥粉末の他の成分は、アセトアルデヒド及びシクロデキストリンと比較して最小なので、及びアセトアルデヒドは比較的に揮発性のゲストであるので、乾燥粉末試料中のアセトアルデヒドの重量%は実質的にα/β−シクロデキストリン中のアセトアルデヒドの重量%保持に等しく、従ってこの代表と考えられている。
【0142】
加えて、乾燥試料の%水分を、デンバー・インスツルメンツ(アーバダ、CO)ロスオンドライングアパレータス)(Denver Instruments (Arvada, CO) Loss on Drying Apparatus))を使用して噴霧乾燥した後に評価した。CDAB−158の%水分は6.57%だった。
【0143】
表3にさらに示すように、アセトアルデヒド−α/β−シクロデキストリン包接複合体を含む実施例26からのスラリーの幾らかを噴霧乾燥器中で乾燥せず、このスラリーをまた4回HPLC系中に通した。乾燥粉末に関して上記に説明したのと同じ手順を使用して、重量%保持をスラリーの4つの試験試料の各々につき計算した。4つの試料の場合の重量%保持は、2.71%、2.70%、2.69%及び2.72%だった。アセトアルデヒドのこうした重量%保持は、乾燥粉末のものよりもわずかに高く、これは、遊離(すなわち、複合体になっていない)アセトアルデヒドがスラリー中に存在したが、噴霧乾燥工程の最中に失われたことを示唆する可能性がある。
【表4】

【0144】
下記の表4に示すように、時刻ゼロで、実施例27、CDAB−159からの約100mg(103.10mg)の得られた乾燥粉末を、10mLの0.005Mの硫酸中に溶解させ、HPLC系上を4回通した。CDAB−159の第2の試料の約100mg(115.30mg)を次に、10mLの0.005Mの硫酸中に溶解させ、HPLC系上を4回通して、CDAB−159に関して合計8つのデータポイントを実現した。各ランにつき、HPLC注入体積は50μLだった。標準から得た参照データポイント(4回通して平均した)を使用して、8つのHPLCランの各々に関するクロマトグラム上のアセトアルデヒドピークに対応する面積計算を、アセトアルデヒドの質量(mg単位で)に転換した。各HPLCランの場合の保持時間も記録して、分析したピークがアセトアルデヒドに対応することを検証した。次に、試験試料の全質量(すなわち、103.10mgまたは115.30mg)に基づいて、アセトアルデヒド対全試料の重量%を各HPLCランにつき計算し、表3の列の右端の方に入れた。最後に、全ての8つのHPLCランに関するアセトアルデヒドの重量%保持を平均して、CDAB−158の場合のアセトアルデヒドの重量%保持として2.45%を実現した。この“%保持”を、図9においてCDAB−159に関する“0日”データポイントとして記録した。CDAB−158の%水分は6.36%だった。加えて、乾燥の前に、実施例27からのスラリーを2回HPLC系中に通し、アセトアルデヒドの場合の重量%保持は3.51重量%のアセトアルデヒドだった。再度、これは、遊離(すなわち、複合体になっていない)アセトアルデヒドがスラリー中に存在したが、噴霧乾燥工程の最中に失われたことを示唆する可能性がある。
【表5】

【0145】
表5は、室温(約25℃)で2日間放置した後のCDAB−158の場合の同様のデータを示す。表5に示すように、CDAB−158の第1の試料は、質量101.40mgを有し、4回通した。第2の試料は、質量105.80mgを有し、3回通した。こうした7つの試料の場合のアセトアルデヒドの平均重量%保持は、約2.36重量%だった。従って、2日後の室温でのアセトアルデヒドの重量%保持は、時刻ゼロから全く大きく変化しなかった。表5にさらに示すように、廃棄物試料は3回HPLC系中に通され、アセトアルデヒドの重量%保持として1.40重量%を有した。廃棄物試料は、容易に噴霧乾燥器にポンプ送圧できない保持タンク中に残存している材料の最後の数%に相当する。アセトアルデヒド濃度を、安全監視及び物質収支のために測定する。
【表6】

【0146】
表6は、室温で10日後のCDAB−158及びCDAB−159の場合の重量%保持を示す。標準を3回通し、平均して、試験試料のための参照データポイントを得た。質量100.50mgを有するCDAB−158の試料を、3回HPLC系中を通し、質量104.90mgを有するCDAB−159の試料を、3回HPLC系中を通した。アセトアルデヒドの重量%保持を各試料ランにつき得、3つのランにわたって平均して、CDAB−158の場合のアセトアルデヒドの重量%保持として2.29重量%及びCDAB−159の場合の2、24重量%を得た。こうした2つのデータポイントを、図9において、CDAB−158及びCDAB−159の場合の“10日@RT”データポイントとして記録した。試験のためにセットアップした試料の限定された量が理由となって、残存しているもの(n/d)に関して水分を決定しなかった。
【表7】

【0147】
表7は、室温(約25℃)で10日、続いて110°F(約43℃)で10日、続いて室温で14日の後のCDAB−158及びCDAB−159の場合の重量%保持を示す。標準を4回通し、平均して、試験試料のための参照データポイントを得た。質量100.00mgを有するCDAB−158の試料を、2回HPLC系中を通し、質量100.10mgを有するCDAB−159の試料を、2回HPLC系中を通した。アセトアルデヒドの重量%保持を各試料ランにつき得、2つのランにわたって平均して、CDAB−158の場合のアセトアルデヒドの重量%保持として2.47重量%及びCDAB−159の場合の2.23重量%を得た。こうした2つのデータポイントを、図9において、CDAB−158及びCDAB−159の場合の“10日@RT/10日@110°F/14日@RT”データポイントとして記録した。
【表8】

【0148】
表8は、90°Fで貯蔵したCDAB−158及びCDAB176(1.5Xモル過剰)の場合の、35日の期間にわたる重量%保持を示す。最初の封じ込めにおいて及び貯蔵時のアセトアルデヒド濃度の低減は、製品または性能に目立った影響を及ぼさない。同じHPLC手順を使用した。
【表9】

【表10】

【0149】
図9に示すように、α/β−シクロデキストリン中のアセトアルデヒドの重量%保持は、試験した全ての時間及び温度にわたって実質的に安定だった。正式の統計解析を実行しなかったが、CDAB−158及びCDAB−159の両方の場合の様々な時間及び温度間隔での重量%保持の差は、統計的に有意であるようには見えない。CDAB−175及びCDAB−176は同様に振る舞う。時間と共に及びより高い温度にさらされた後に、わずかな増大がアセトアルデヒドの重量%保持において観察される。重量%保持のあるわずかな増大は、乾燥粉末試料中に存在する水分(すなわち、水)の幾らかは、より高い温度で移動するかもしれず、単一のジャーからのサンプリングの頻度と共に変化するかもしれないことを示唆する。本発明のシクロデキストリン包接複合体は、アセトアルデヒドを有効に保持するからである。こうした結果は、比較的に揮発性のゲスト(B.P.=21℃すなわち69.8°F)であり、保持し、封じ込めるのが困難であると通常みなされているアセトアルデヒドを保護し、保持する際のシクロデキストリン包接複合体の有効性を示唆する。
実施例29:β−シクロデキストリン、レモンライム油、乳化剤としてのペクチン及び増粘剤としてのキサンタンガムを有するシクロデキストリン包接複合体及びその形成方法
【0150】
1L反応器中、400gのβ−シクロデキストリン(W7β−シクロデキストリン、ワッカーから入手可能)、8gのビートペクチン(2重量%のペクチン:β−シクロデキストリン;デガッサ−フランスから入手可能なXPQ EMP 4ビートペクチン)、及び1.23gのキサンタンガム(ケルトロールキサンタンガム、CPケルコから入手可能、SAPNo.15695)を一緒に乾式混合して、乾式混合物を形成した。800mLの脱イオン水を乾式混合物に加えて、スラリーまたは混合物を形成した。1L反応器を、実験室規模の水浴の加熱及び冷却装置によって、加熱及び冷却のためにセットアップした。混合物を、約30分撹拌することによって撹拌した。21gのレモンライム油(香味料043−03000、SAPNo.1106890、デガッサ・フレーバーズ&フルート・システムズ(Degussa Flavors & Fruit Systems)から入手可能)を加えた。反応器を密閉し、得られた混合物を4時間、約55〜60℃で撹拌した。加熱及び冷却の実験室装置の冷却部分を次に作動させ、混合物を一晩、約5〜10℃で撹拌した。混合物を次に、入口温度約210℃及び出口温度約105℃を有するブチ B−191実験室噴霧乾燥器(ブチ、スイスから入手可能)上で噴霧乾燥した。シクロデキストリン包接複合体中の約4.99重量%のレモンライム油というパーセント保持を実現した。
実施例30:β−シクロデキストリン及びレモンライム油、乳化剤としてのペクチン及び増粘剤としてのキサンタンガムを有するシクロデキストリン包接複合体及びその形成方法
【0151】
1L反応器中、300gのβ−シクロデキストリン(W7β−シクロデキストリン、ワッカーから入手可能)、6gのビートペクチン(2重量%のペクチン:β−シクロデキストリン;デガッサ−フランスから入手可能なXPQ EMP 4ビートペクチン)、及び1.07gのキサンタンガム(ケルトロールキサンタンガム、CPケルコから入手可能、SAPNo.15695)を一緒に乾式混合して、乾式混合物を形成した。750mLの脱イオン水を乾式混合物に加えて、スラリーまたは混合物を形成した。1L反応器を、実験室規模の水浴の加熱及び冷却装置によって、加熱及び冷却のためにセットアップした。混合物を、約30分撹拌することによって撹拌した。16gのレモンライム油(香味料043−03000、SAPNo.1106890、デガッサ・フレーバーズ&フルート・システムズから入手可能)を加えた。反応器を密閉し、得られた混合物を4時間、約55〜60℃で撹拌した。加熱及び冷却の実験室装置の冷却部分を次に作動させ、混合物を一晩、約5〜10℃で撹拌した。混合物を次に、高剪断タンクミキサー(HP 5 1PQミキサー、シルバーストン・マシンズLtd.、チェシャム、イギリスから入手可能)を使用して乳化した。シクロデキストリン包接複合体中の約5.06重量%のレモンライム油というパーセント保持を実現した。
実施例31:β−シクロデキストリン及びシトラール、乳化剤としてのペクチン及び増粘剤としてのキサンタンガムを有するシクロデキストリン包接複合体及びその形成方法
【0152】
1L反応器中、300gのβ−シクロデキストリン(W7β−シクロデキストリン、ワッカーから入手可能)、6gのビートペクチン(2重量%のペクチン:β−シクロデキストリン;デガッサ−フランスから入手可能なXPQ EMP 4ビートペクチン)、及び0.90gのキサンタンガム(ケルトロールキサンタンガム、CPケルコから入手可能、SAPNo.15695)を一緒に乾式混合して、乾式混合物を形成した。575mLの脱イオン水を乾式混合物に加えて、スラリーまたは混合物を形成した。1L反応器を、実験室規模の水浴の加熱及び冷却装置によって、加熱及び冷却のためにセットアップした。混合物を、約30分撹拌することによって撹拌した。18gのシトラール(天然シトラール、SAPNo.921565、ロットNo.10000223137、シトラス&アライドから入手可能)を加えた。反応器を密閉し、得られた混合物を4時間、約55〜60℃で撹拌した。加熱及び冷却の実験室装置の冷却部分を次に作動させ、混合物を週末にわたって約5〜10℃で撹拌した。混合物を次に二等分した。半分を、高剪断タンクミキサー(HP 5 1PQミキサー、シルバーストン・マシンズLtd.、チェシャム、イギリスから入手可能)を使用して、ニートで乳化した。1重量%のガムアカシアを他の半分に加え、得られた混合物を、同じ高剪断タンクミキサーを使用して乳化した。シクロデキストリン包接複合体中の約2.00重量%のシトラールというパーセント保持を実現した。
実施例32:シクロデキストリン包接複合体を含む安定な飲料または食品製品
【0153】
実施例19〜27及び28〜31に従って形成された得られた乾燥粉末またはエマルションのいずれでも、直接に食品または飲料製品に加えて、適切な香味料プロフィルを有する安定な製品を得る。乾燥粉末を次に直接に食品または飲料製品に乾燥粉末として加えるか、或いは、乾燥粉末を溶媒中に懸濁して、直接に食品若しくは飲料製品に加えるか、または食品基体の上に噴霧するエマルション(追加の標準的な乳化材料、例えば、麦芽デキストリン等はあってもなくてもよい)を形成する。エマルションを直接に食品若しくは飲料製品に加えるか、または食品基体の上に噴霧する。
【表11】

本明細書において引用する全ての特許、刊行物及び参考文献を、本明細書において参考のために十分に引用する。本開示と引用した特許、刊行物及び参考文献との間に矛盾がある場合、本開示が支配するべきである。本発明の様々な特徴及び態様を請求の範囲において述べる。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】くぼみを有するシクロデキストリン分子、及びくぼみ内部に保持されたゲスト分子の略図である。
【図2】自己集合したシクロデキストリン分子及びゲスト分子によって形成されたナノ構造の略図である。
【図3】ジアセチル−シクロデキストリン包接複合体の形成の略図である。
【図4】自己集合したシクロデキストリン分子及びジアセチル分子によって形成されたナノ構造の略図である。
【図5】シトラール−シクロデキストリン包接複合体の形成の略図である。
【図6】自己集合したシクロデキストリン分子及びシトラール分子によって形成されたナノ構造の略図である。
【図7】ゲスト−シクロデキストリン−溶媒系を表すために使用される三相モデルの略図である。
【図8】アセトアルデヒドの吸光度単位と質量(mg単位で)との間の関係を示すための、HPLCを使用したアセトアルデヒドのための検量線である。検量線を、実施例28において略述する手順に従って得た。
【図9】実施例26及び27に従って形成されたアセトアルデヒド−α/β−シクロデキストリン包接複合体の安定性を示す棒グラフである。棒グラフのためのデータを、実施例28において略述する手順に従って得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロデキストリン包接複合体の製造方法であって:
シクロデキストリン、乳化剤及び増粘剤を乾式混合して、乾式混合物を形成することと;
溶媒及びゲストを前記乾式混合物と混合して、シクロデキストリン包接複合体を含む混合物を形成することと;を含む方法。
【請求項2】
前記混合物を乾燥して、前記シクロデキストリン包接複合体を含む乾燥粉末を形成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項2に従って形成された前記乾燥粉末を、飲料、食品製品、チューインガム、歯磨き剤、キャンディー、香味料、芳香物質、薬剤、機能性食品、化粧品、農産物、写真乳剤、廃棄物流れ系、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つに加えることを含む、最終製品の製造方法。
【請求項4】
乾燥することは、空気乾燥、真空乾燥、噴霧乾燥、オーブン乾燥、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記混合物を乳化して、前記シクロデキストリン包接複合体を含むエマルションを形成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
請求項5に従って形成された前記エマルションを、飲料に加えることを含む、飲料の製造方法。
【請求項7】
食品製品の製造方法であって:
請求項1に記載の混合物を乳化して、前記シクロデキストリン包接複合体を含むエマルションを形成することと;
前記エマルションを基体の上に噴霧して、食品製品を形成することと;を含む方法。
【請求項8】
前記乳化剤はヒドロコロイドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記乳化剤は、キサンタンガム、ペクチン、ガムアカシア、トラガカント、グアー、カラギーナン、イナゴマメ、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記乳化剤はペクチンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記溶媒は水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記シクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ゲストは、香味料、嗅覚作用物、薬剤、機能性食品、抗酸化剤、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ゲストは、ジアセチル、シトラール、ベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、精油、アスパルテーム、クレアチン、アルファ−トコフェロール、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記増粘剤は、ゲル化剤、多糖、ヒドロコロイド、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記増粘剤はキサンタンガムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
乳化剤対シクロデキストリンの重量%は少なくとも約0.5重量%であり、増粘剤対シクロデキストリンの重量%は少なくとも約0.07重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
乳化剤対シクロデキストリンの重量%は約10重量%未満であり、増粘剤対シクロデキストリンの重量%は約1.5重量%未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記ゲストは正のlog(P)値を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
シクロデキストリン包接複合体の製造方法であって:
シクロデキストリン、乳化剤及び増粘剤を混合して、第1の混合物を形成することと;
前記第1の混合物を溶媒と混合して、第2の混合物を形成することと;
ゲストを前記第2の混合物と混合して、シクロデキストリン包接複合体を含む第3の混合物を形成すること;を含む方法。
【請求項21】
前記乳化剤はペクチンを含み、前記増粘剤はキサンタンガムを含み、前記溶媒は水を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ゲストは、ジアセチル、シトラール、ベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、精油、アスパルテーム、クレアチン、アルファ−トコフェロール、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記第3の混合物を乾燥して、前記シクロデキストリン包接複合体を含む乾燥粉末を形成することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
請求項23に従って形成された前記乾燥粉末を、飲料、食品製品、チューインガム、歯磨き剤、キャンディー、香味料、芳香物質、薬剤、機能性食品、化粧品、農産物、写真乳剤、廃棄物流れ系、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つに加えることを含む、最終製品の製造方法。
【請求項25】
前記第3の混合物を乳化して、前記シクロデキストリン包接複合体を含むエマルションを形成することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
飲料の製造方法であって:
請求項20に記載の第3の混合物を乳化して、前記シクロデキストリン包接複合体を含むエマルションを形成することと;
前記エマルションを飲料に加えることと;を含む方法。
【請求項27】
食品製品の製造方法であって:
請求項20に記載の混合物を乳化して、前記シクロデキストリン包接複合体を含むエマルションを形成することと;
前記エマルションを基体の上に噴霧して、食品製品を形成することと;を含む方法。
【請求項28】
乳化剤対シクロデキストリンの重量%は約2重量%であり、増粘剤対シクロデキストリンの重量%は約0.375重量%である、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
前記ゲストは少なくとも約+1のlog(P)値を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項30】
シクロデキストリン包接複合体の製造方法であって:
シクロデキストリン、乳化剤及び増粘剤を乾式混合して、乾式混合物を形成し、該乾式混合物は、乳化剤対シクロデキストリンの重量%として少なくとも約0.5重量%及び増粘剤対シクロデキストリンの重量%として少なくとも約0.07重量%を有することと;
溶媒及びゲストを前記乾式混合物と混合して、シクロデキストリン包接複合体を含む混合物を形成することと;を含む方法。
【請求項31】
前記乳化剤はペクチンを含み、前記増粘剤はキサンタンガムを含み、前記溶媒は水を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記混合物を乾燥して、前記シクロデキストリン包接複合体を含む乾燥粉末を形成することをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
請求項32に従って形成された前記乾燥粉末を、飲料、食品製品、チューインガム、歯磨き剤、キャンディー、香味料、芳香物質、薬剤、機能性食品、化粧品、農産物、写真乳剤、廃棄物流れ系、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つに加えることを含む、最終製品の形成方法。
【請求項34】
前記混合物を乳化して、前記シクロデキストリン包接複合体を含むエマルションを形成することをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
請求項34に従って形成された前記エマルションを、飲料、食品製品、チューインガム、歯磨き剤、キャンディー、香味料、芳香物質、薬剤、機能性食品、化粧品、農産物、写真乳剤、廃棄物流れ系、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つに加えることを含む、最終製品の形成方法。
【請求項36】
前記ゲストは、香味料、嗅覚作用物、薬剤、機能性食品、抗酸化剤、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項37】
前記ゲストは、ジアセチル、シトラール、ベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、精油、アスパルテーム、クレアチン、アルファ−トコフェロール、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項38】
乾式混合物は、乳化剤対シクロデキストリンの重量%として約2重量%及び増粘剤対シクロデキストリンの重量%として約0.375重量%を含む、請求項30に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2008−546386(P2008−546386A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516862(P2008−516862)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【国際出願番号】PCT/US2006/012528
【国際公開番号】WO2006/137958
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(397058666)カーギル インコーポレイテッド (60)
【Fターム(参考)】