説明

シクロデキストリン縮合ポリマーの洗浄方法

【課題】
非水溶性のシクロデキストリン縮合ポリマーから、反応溶媒ならびに副生物を除去すること。
【解決手段】
(1)シクロデキストリン類と、有機二塩基酸または有機二塩基酸ハロゲン化物とを縮合させたポリマーの末端にアルコール類、アリールアルコール類またはフェノール類を反応させて得たシクロデキストリン縮合ポリマーを、吸引濾過用漏斗上に溜め、
(2)ここにアルコール類/水混合溶媒を添加して吸引し、
(3)該漏斗上にアセトンを添加して吸引し、
(4)上記(2)および(3)の工程を少なくとも2回以上繰り返す、
各工程を含む、シクロデキストリン縮合ポリマーの洗浄方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロデキストリンと有機二塩基酸とを縮合させたポリマーの末端にアルコール類としてメタノールを反応させて得られた縮合ポリマーの洗浄方法に係る。本発明に係る洗浄方法により、得られたコポリマー中に存在しうる反応溶媒や副生物を完全に除去することができる。また、従来の方法と比較して、洗浄溶剤の使用量を大幅に削減することが可能となる。
【背景技術】
【0002】
6個、7個、または8個のグルコースが環状に結合した環状オリゴ糖であるシクロデキストリン(α−、β−またはγ−シクロデキストリン、以下、「シクロデキストリン類」と総称する。)を水不溶性にする試みが種々行われている。
【0003】
本発明者らは、シクロデキストリン類と二塩化フタロイルとを縮合させたポリマーの末端にアルコール類、アリールアルコール類またはフェノール類を反応させた、ハロゲン化芳香族化合物と吸引的に相互作用する多孔質のシクロデキストリン縮合ポリマーを製造する方法を提案した(特許文献1)。この方法は、ピリジン溶媒に溶解させたシクロデキストリン類に、テトラヒドロフラン溶媒に溶解させた二塩化フタロイルを滴下して反応させ、次いでアルコール類、アリールアルコール類またはフェノール類を反応させることからなる。この後、得られた白色結晶を吸引濾過し、水およびアセトンで洗浄して目的物である、末端がアルコール類、アリールアルコール類またはフェノール類でエンドキャップされたシクロデキストリン縮合ポリマーを得る。この際に、溶媒として用いたピリジンや原料である二塩化フタロイルがメチル化したフタル酸ジメチル等の副生物がポリマー内に残存することがあった。ピリジンや副生物を完全に除去するためには洗浄溶剤を多量に使用する必要があり、操作が煩雑で効率が悪く、また環境に負荷を与えることにもなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2010−31565号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、水溶性であるシクロデキストリンと有機二塩基酸とを縮合させたポリマーの末端にアルコール類、アリールアルコール類またはフェノール類を反応させた水不溶性のシクロデキストリン縮合ポリマーから、少ない量の洗浄溶剤を用いて、反応溶媒と副生物とをほぼ完全に除去することを目的とする。本発明の方法により得られた純シクロデキストリン縮合ポリマーは、特有の球状多孔質形状を有するため、例えば有機媒体中の特定の化合物を選択的に分離することが可能である。この際、シクロデキストリン縮合ポリマー中に、選択的な分離を妨げうる反応溶媒や反応副生物が存在しないため、効果的な選択分離が可能となる。
【0006】
本発明の態様は、以下の通りである:
1.(1)シクロデキストリン類と、有機二塩基酸または有機二塩基酸ハロゲン化物とを縮合させたポリマーの末端にアルコール類、アリールアルコール類またはフェノール類を反応させて得たシクロデキストリン縮合ポリマーを、吸引濾過用漏斗上に溜め、
(2)ここにアルコール類/水混合溶媒を添加して吸引し、
(3)該漏斗上にアセトンを添加して吸引し、
(4)上記(2)および(3)の工程を少なくとも2回以上繰り返す、
各工程を含む、シクロデキストリン縮合ポリマーの洗浄方法。
2.上記(2)及び(3)の工程を5回繰り返す、上記1に記載の方法。
3.上記工程(1)に使用するアルコール類が炭素数1〜10のアルキル基から選択され、上記工程(1)に使用するアリールアルコール類がベンジルアルコール、またはアルキル、アリール、またはアシル基で置換されたベンジルアルコール類から選択され、上記工程(1)に使用するフェノール類がフェノール、またはアルキル、アリール、またはアシル基で置換されたフェノールから選択される、上記1または2に記載の方法。
4.上記工程(2)に使用するアルコール類が、炭素数1〜10を有する脂肪族アルコール類から選択される、上記1〜3のいずれかに記載の方法。
5.有機二塩基酸または有機二塩基酸ハロゲン化物が、テレフタル酸、イソフタル酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸またはこれらのハロゲン化物から選択される、上記1〜4のいずれかに記載の方法。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明を詳細に説明する。本発明の一の態様は、シクロデキストリン縮合ポリマーの洗浄方法に係る。本発明の方法により洗浄するシクロデキストリン縮合ポリマーは、特願2010−31565号(特許文献1)等に記載された方法に従って製造することができる。例えば、シクロデキストリン類を含有する有機溶媒に、有機二塩基酸または有機二塩基酸ハロゲン化物含有有機溶媒を滴下して撹拌し、シクロデキストリン類と有機二塩基酸とをエステル化し、次いでポリマーの末端にアルコール類、アリールアルコール類またはフェノール類を反応さることで得ることができる。
【0008】
ここでシクロデキストリン類とは、数分子のD-グルコースが α(1→4) グルコシド結合によって結合し、環状構造をとった環状オリゴ糖の一種であり、結合するD−グルコースの数に応じてα−(6個)、β−(7個)及びγ−シクロデキストリン(8個)が存在する。シクロデキストリン類は環状構造の外側にヒドロキシ基を有しているため水溶性が高いが、空孔内部には疎水性分子を包接することが可能になっている。
【0009】
シクロデキストリン類を溶解させる有機溶媒としては、例えばピリジン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、1−メチルイミダゾール等を好適に用いることができる。有機二塩基酸とは、例えば、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、脂肪酸等を意図しており、有機二塩基酸ハロゲン化物とは、これら酸のハロゲン化物である。これらの化合物は、シクロデキストリン分子中の水酸基と反応して逐次縮合し、ポリマーを形成しうる化合物である。このような有機二塩基酸および有機二塩基酸ハロゲン化物として、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸およびこれらの塩化物、臭化物ならびにヨウ化物等が挙げられ、特にテレフタル酸又はテレフタル酸ジクロライド(二塩化テレフタロイル)を用いることが好適である。本明細書では、有機二塩基酸と有機二塩基酸ハロゲン化物とをまとめて「有機二塩基酸類」と称することがある。有機二塩基酸類を溶解させる有機溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、ジクロロメタン、1,4−ジオキサン、キシレン、トルエン、ジメチルホルムアミド等を用いることができる。次いでポリマーの末端にはアルコール類、アリールアルコール類またはフェノール類を反応させる。末端にアルコール類、アリールアルコール類またはフェノール類を反応させる、とは、例えば炭素数1〜10のアルコールから選択されるアルコール類、ベンジルアルコールまたは置換ベンジルアルコールから選択されるアリールアルコール類、またはフェノールまたは置換フェノール類から選択されるフェノール類をカルボキシル末端基に反応させて、アルキルエステル、アリールエステルまたはフェニルエステルにすることを意味する。例えばポリマーをメタノールと反応させれば末端基はメチルエステル(−COOMe)となり、エタノールと反応させればエチルエステル(−COOEt)となり、ベンジルアルコールと反応させればベンジルエステル(−COOBz)タイプのシクロデキストリン縮合ポリマーが得られる。
上記の製造方法によりシクロデキストリン縮合ポリマーを製造すると、シクロデキストリン類を溶解させる有機溶媒(例えば、ピリジン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、1−メチルイミダゾール等)や、有機二塩基酸類がアルキル化した化合物(例えば、フタル酸ジメチル等)に代表される副生物が、シクロデキストリン縮合ポリマー中に残存することがある。シクロデキストリン縮合ポリマーは、各種有機化合物と接触してこれらを包接する性質を有しており、基本的には反応溶媒や副生物なども包接して取り込みやすい性質を有していると云える。そこで、従来は、シクロデキストリン縮合ポリマーと大量の洗浄溶剤とを複数回接触させて、反応溶媒や副生物を除去することを試みていた。この従来方法は、反応溶媒や副生物を除去することはできるが、一方で洗浄溶剤を大量に必要とするため、コストがかかり、操作も煩雑な方法である。しかしながら本発明の方法は、洗浄溶剤の必要量を著しく削減することが可能となる。
【0010】
大量の洗浄溶剤を用いることなく、これらの有機溶媒と副生物とを除去するための、本発明の方法を説明する。
上述の製造方法にて製造した粗シクロデキストリン縮合ポリマーを、まず、吸引濾過用漏斗上に溜める。ここで吸引濾過用漏斗とは、例えばブフナー漏斗(ヌッチェ)や桐山ろうと(登録商標)、グラスフィルター付き漏斗等、アスピレータ等の吸引器具を連結することにより吸引して濾過処理を行うことができる器具を指す。次いで漏斗上に溜められた粗シクロデキストリン縮合ポリマー上にアルコール類/水の混合溶媒を添加する。この洗浄工程において使用するアルコール類としては、炭素数1〜10を有する脂肪族アルコール類が好適であり、特にメタノール、エタノールおよびプロパノールを用いることが好ましい。アルコール類/水混合溶媒は、概ねアルコール類が主となるような割合で混合することが好ましく、例えば10/1〜5/5、さらに好ましくは9/1〜6/4とすることができる。アルコール類/水混合溶媒は、漏斗上に溜められた粗シクロデキストリン縮合ポリマー全体が混合溶媒に充分に浸る程度に加えることが好ましい。次いで吸引処理をして、シクロデキストリン縮合ポリマーから該混合溶媒を濾別する。漏斗上に残るシクロデキストリン縮合ポリマー上に、次いでアセトンを添加する。アセトンは、漏斗上に残るシクロデキストリン縮合ポリマー全体が充分浸る程度に加えることが好ましい。次いで吸引処理をして、シクロデキストリン縮合ポリマーからアセトンを濾別する。吸引濾過用漏斗上での混合溶媒ならびにアセトンによる洗浄および吸引操作を少なくとも2回、好ましくは3回、さらに好ましくは5回繰り返す。繰り返しが少ないと、有機溶媒および副生物の洗浄が不十分となり、繰り返しが多すぎるとむやみに多くの洗浄溶剤を用いることになり非効率である。こうして、有機溶媒や副生物の残存しない、純シクロデキストリン縮合ポリマーを得ることができる。
【0011】
このように本発明の方法は、吸引濾過用漏斗を用いて、ごく少量の洗浄溶剤を用いて洗浄を行うことに特徴がある。
本発明の方法で洗浄したシクロデキストリン縮合ポリマーは、球状多孔質形状を有しており、従来法で製造したポリマーに比べて、広い表面積を有する。したがって各種有機液体中に含有される化合物と効果的に接触し、これらを包接することができる。本発明のシクロデキストリン縮合ポリマーは、水不溶性であり、例えば、絶縁油、機械油、熱媒体、潤滑油、可塑剤、塗料及びインキ及びこれらの混合物等の有機媒体中で容易に分散し、これらの中に含有されるハロゲン化芳香族化合物を選択的に捕集することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の方法をさらに詳しく説明する。
本発明の方法で洗浄するシクロデキストリン縮合ポリマーは、市販のα−、β−及びγ−シクロデキストリンを使用して製造することができる。例えば、市販のγ−シクロデキストリン(以下、「γ−CD」と称する。)と二塩化テレフタロイルとを縮合させたポリマーの末端にアルコール類としてメタノールを反応させて得たポリマー(以下、「テレフタル酸γ−CD−メチル高分子」あるいは「TPGCDM高分子」と称する。)の合成方法は、特許文献1に記載された以下の方法により製造することができる:
まずγ−CDを有機溶媒(例えばピリジン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、1−メチルイミダゾール等)に溶解させる。γ−CDの有機溶媒中の濃度は5〜20重量%であることが好ましい。一方、用意したγ−CDの4〜12倍量(mol)の二塩化テレフタロイルを有機溶媒(例えばテトラヒドロフラン、ジクロロメタン、1,4−ジオキサン、キシレン、ジメチルホルムアミド、トルエン等)に、濃度10〜40重量%で溶解させ、これを先に用意したγ−CD溶液に滴下し、激しく撹拌する。撹拌は、磁気撹拌子や撹拌棒などを用いて行うが、特に撹拌羽根を備えた撹拌棒を用い、反応液の上部と下部とで撹拌速度に差が出ないよう、満遍なく撹拌することができる撹拌装置を用いて行うと好都合である。γ−CDと二塩化テレフタロイルとの縮合反応が進行するにつれ、熱が発生するので、γ−CD溶液を氷浴などで冷却しながら滴下を行うのが好ましい。好ましくは反応容器内の温度は約0〜20℃の範囲を維持するようにする。滴下後、反応容器内の温度を約40〜70℃の範囲まで上げて、攪拌する。反応終了後、反応容器内温を若干(およそ5〜10℃)下げ、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクタノール等の炭素数1〜10のアルコール類)、アリールアルコール類(ベンジルアルコールまたはアルキル、アリール、またはアシル基で置換されたベンジルアルコール)またはフェノール類(フェノール、アルキル、アリールまたはアシル基で置換されたフェノール類)を加え、さらに撹拌を続ける。こうして粗シクロデキストリン縮合ポリマーの結晶が析出するので、析出した結晶を吸引濾過用漏斗を用いて濾取する。
【0013】
次に、本発明の方法に従い粗シクロデキストリン縮合ポリマーを洗浄する。まず吸引濾過用漏斗上に溜めた粗シクロデキストリン縮合ポリマー上にアルコール類/水混合溶媒を添加する。添加する混合溶媒の量は粗シクロデキストリン縮合ポリマーに対して0.1〜5倍程度、より好ましくは0.2〜2倍程度とすることができ、漏斗上の粗シクロデキストリン縮合ポリマーが充分に混合溶媒に浸るようにする。ここで好ましくは漏斗上の混合溶媒を軽く攪拌し、粗シクロデキストリン縮合ポリマーと混合溶媒とが充分に接触するようにする。次いで吸引濾過用漏斗に吸引器具(アスピレータ等)を接続し、吸引操作を行って混合溶媒で洗浄したシクロデキストリン縮合ポリマーを得る。この縮合ポリマー上に、次いでアセトンを添加する。アセトンの量は縮合ポリマーに対して0.1〜5倍程度、より好ましくは0.1〜2倍程度とすることができ、漏斗上の縮合ポリマーが充分にアセトンに浸るようにする。ここで好ましくは漏斗上のアセトンを軽く攪拌し、縮合ポリマーとアセトンとが充分に接触するようにする。次いで吸引濾過用漏斗に吸引器具(アスピレータ等)を接続し、吸引操作を行ってアセトンで洗浄したシクロデキストリン縮合ポリマーを得る。混合溶媒による洗浄とアセトンによる洗浄操作を少なくとも2回、好ましくは3回、さらに好ましくは5回繰り返し、純シクロデキストリン縮合ポリマー(テレフタル酸γ−CD−メチル高分子)を得ることができる。得られるポリマーの同定は赤外吸収により行うことができ、形態の観察は電子顕微鏡で行うことができる。
【0014】
本発明の方法により洗浄した純シクロデキストリン縮合ポリマーは、細かい球状結晶が集合した形態をとっている。この縮合ポリマーは、表面積が広く、より多くの有機液体と接触させることができる。したがってこのようにして得た縮合ポリマーを有機液体中に含有される化合物の分離のために使用する場合は、該縮合ポリマーを例えばカラムなどに充填し、ここに有機液体を流通させることにより簡便に所望の化合物を分離することができる。
【実施例】
【0015】
[実施例1]γ−シクロデキストリンと二塩化テレフタロイルとを縮合させたポリマーの末端にアルコール類としてメタノールを反応させて得たポリマー(以下、「テレフタル酸γ−CD−メチル高分子」)の合成ならびに洗浄
滴下ロート、風船付き三方コック、活栓及び攪拌棒(攪拌機によって攪拌)の付いた1Lの4つ口セパラブルフラスコに、乾燥γ-シクロデキストリン(50 g, 0.039mol、含水量1%以下、純正化学工業)と特級ピリジン(660mL、和光純薬工業)とを入れて室温で1時間攪拌した。フラスコを氷浴につけた後、特級テトラヒドロフラン(220mL、和光純薬工業)に溶解した二塩化テレフタロイル(78.3g, 0.39mol、東京化成工業)を1時間かけて滴下した。滴下後、氷浴を外し、湯浴(70℃)により内温70℃で3時間攪拌した。反応終了後、内温を65℃まで下げて、1級メタノール(100mL、純正化学工業)を加え、2時間攪拌した。懸濁液を吸引濾過した後、濾物を反応釜に移し、1級メタノール(400mL)を入れ、 60℃で6時間攪拌した。室温まで冷却した後、水(40mL)を添加し、30分間攪拌した。懸濁液を吸引濾過した後、メタノールと水の混合溶媒(MeOH/H2O=9/1, 100mL)を桐山ロート上の濾物の上に溜め、再度、吸引濾過した (操作1) 。その後、アセトン(50mL)を桐山ロート上の濾物の上に溜め、吸引濾過した(操作2)。操作1と操作2を連続して合計5回繰り返した。最後に、アセトン(100mL×2)を桐山ロート上の濾物の上に溜め、吸引濾過した。得られた濾物を135℃で24時間真空乾燥した。96gの縮合ポリマーが得られた。縮合ポリマーからは、ピリジンとテレフタル酸メチルは検出されなかった。
【0016】
[比較実施例1]
滴下ロート、風船付き三方コック、活栓及び攪拌棒(攪拌機によって攪拌)の付いた1Lの4つ口セパラブルフラスコに、乾燥γ-シクロデキストリン(50 g, 0.039mol、含水量1%以下、純正化学工業)と特級ピリジン(660mL、和光純薬工業)を入れて室温で1時間攪拌した。フラスコを氷浴につけた後、特級テトラヒドロフラン(220mL、和光純薬工業)に溶解した二塩化テレフタロイル(78.3g, 0.39moL、東京化成工業)を1時間かけて滴下した。滴下後、氷浴を外し、湯浴(70℃)により内温70℃で3時間攪拌した。反応終了後、内温を65℃まで下げて、1級メタノール(100m L、純正化学工業)を加え、2時間攪拌した。懸濁液を吸引濾過した後、濾物を反応釜に移し、1級メタノール(400m L)を入れ、 60℃で6時間攪拌した。室温まで冷却した後、懸濁液を吸引濾過した。濾物と1級メタノール(400mL、純正化学工業)を1Lのビーカーに入れ手動で懸濁させた後、吸引濾過した(操作1)。操作1を3回繰り返した。次に、濾物と1級アセトン(400mL、純正化学工業)を1Lのビーカーに入れ手動で懸濁させた後、吸引濾過した(操作2)。操作2を22回繰り返した。得られた濾物を135℃で24時間真空乾燥した。97gの縮合ポリマーが得られた。縮合ポリマーからは、ピリジンとテレフタル酸メチルは検出されなかった。
【0017】
[比較実施例2]
滴下ロート、風船付き三方コック、活栓及び攪拌棒(攪拌機によって攪拌)の付いた1Lの4つ口セパラブルフラスコに、乾燥γ-シクロデキストリン(50 g, 0.039mol、含水量1%以下、純正化学工業)と特級ピリジン(660mL、和光純薬工業)を入れて室温で1時間攪拌した。フラスコを氷浴につけた後、特級テトラヒドロフラン(220mL、和光純薬工業)に溶解した二塩化テレフタロイル(78.3g, 0.39mol、東京化成工業)を1時間かけて滴下した。滴下後、氷浴を外し、湯浴(70℃)により内温70℃で3時間攪拌した。反応終了後、内温を65℃まで下げて、 1級メタノール(100mL、純正化学工業)を加え、2時間攪拌した。懸濁液を吸引濾過した後、濾物を反応釜に移し、1級メタノール(400mL)を入れ、 60℃で6時間攪拌した。室温まで冷却した後、水(40mL)を添加し、30分間攪拌した。懸濁液を吸引濾過した後、メタノールと水の混合溶媒(MeOH/H2O=9/1, 100mL×2)を桐山ロート上の濾物の上に溜め、再度、吸引濾過した。得られた濾物を5Lのステンレスカップに移し、メタノールと水の混合溶媒(MeOH/H2O=9/1, 1L)を加えた後、メカニカルスターラー(250rpm)を用いて室温下30分間攪拌した(操作1)。懸濁液を吸引濾過した後、アセトン(100mL×4)を桐山ロート上の濾物の上に溜め、吸引濾過した(操作2)。操作1と操作2を連続して合計2回繰り返した。得られた濾物を135℃で24時間真空乾燥した。96gの縮合ポリマーが得られた。縮合ポリマーからは、ピリジンとテレフタル酸メチルは検出されなかった。
【0018】
[比較実施例3]
滴下ロート、風船付き三方コック、活栓及び攪拌棒(攪拌機によって攪拌)の付いた1Lの4つ口セパラブルフラスコに、乾燥γ-シクロデキストリン(50 g, 0.039mol、含水量1%以下、純正化学工業)と特級ピリジン(660mL、和光純薬工業)を入れて室温で1時間攪拌した。フラスコを氷浴につけた後、特級テトラヒドロフラン(220mL、和光純薬工業)に溶解した二塩化テレフタロイル(78.3g, 0.39mol、東京化成工業)を1時間かけて滴下した。滴下後、氷浴を外し、湯浴(70℃)により内温70℃で3時間攪拌した。反応終了後、内温を65℃まで下げて、 1級メタノール(100mL 、純正化学工業)を加え、2時間攪拌した。懸濁液を吸引濾過した後、濾物を反応釜に移し、1級メタノール(400mL)を入れ、 60℃で6時間攪拌した。攪拌後、懸濁液を吸引濾過した。濾物と1級アセトン(400mL、純正化学工業)を1Lのビーカーに入れ手動で懸濁させた後、吸引濾過した。濾物と水(300mL)を1Lのビーカーに入れ手動で懸濁させた後、吸引濾過した(操作1)。濾物とアセトン(300mL)を1Lのビーカーに入れ手動で懸濁させた後、吸引濾過した(操作2)。操作1と操作2を合計6回繰り返した。得られた濾物を135℃で24時間真空乾燥した。100gの縮合ポリマーが得られた。縮合ポリマーからは、ピリジンとテレフタル酸メチルは検出されなかった。
【0019】
[比較実施例4]
滴下ロート、風船付き三方コック、活栓及び攪拌棒(攪拌機によって攪拌)の付いた1Lの4つ口セパラブルフラスコに、乾燥γ-シクロデキストリン(50 g, 0.039mol、含水量1%以下、純正化学工業)と特級ピリジン(660mL、和光純薬工業)を入れて室温で1時間攪拌した。フラスコを氷浴につけた後、特級テトラヒドロフラン(220mL、和光純薬工業)に溶解した二塩化テレフタロイル(78.3g, 0.39mol、東京化成工業)を1時間かけて滴下した。滴下後、氷浴を外し、湯浴(70℃)により内温70℃で3時間攪拌した。反応終了後、内温を65℃まで下げて、 1級メタノール(100mL、純正化学工業)を加え、2時間攪拌した。懸濁液を吸引濾過した後、濾物を反応釜に移し、1級メタノール(400mL)を入れ、 60℃で6時間攪拌した。攪拌後、懸濁液を吸引濾過した。濾物と水(400mL)を1Lのビーカーに入れ手動で懸濁させた後、吸引濾過した(操作1)。操作1を合計3回繰り返した。濾物とアセトン(400mL)を1Lのビーカーに入れ手動で懸濁させた後、吸引濾過した(操作2)。操作2を合計10回繰り返した。得られた濾物を135℃で24時間真空乾燥した。100gの縮合ポリマーが得られた。縮合ポリマーからは、ピリジンとテレフタル酸メチルは検出されなかった。
【0020】
上記の実施例ならびに比較実施例において、得られた縮合ポリマー中に含有されるピリジンの量は以下の方法により分析した:
NMRチューブに各実施例にて得られた縮合ポリマーを10mg〜20mgと、1NのNaOH DO溶液(0.9ml)を入れ、溶解させた後HNMR測定した。
【0021】
また、縮合ポリマー中に含有されるテレフタル酸メチルの量は以下の方法により分析した:
各実施例にて得られた縮合ポリマー20mgにアセトン1mLを加えた後、1分間超音波をかけた。その懸濁液の上澄み液内のテレフタル酸メチルを、QCMS-QP5050(SHIMADZU)を使用し、M/Z 163を用いてSIM(selective ion monitoring)法で測定を行った。
【0022】
各実施例で使用した洗浄溶剤の量を比較すると、以下の表1のようになった:
【0023】
【表1】

【0024】
本発明の方法により、洗浄溶剤の量を著しく削減することができることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)シクロデキストリン類と、有機二塩基酸または有機二塩基酸ハロゲン化物とを縮合させたポリマーの末端にアルコール類、アリールアルコール類またはフェノール類を反応させて得たシクロデキストリン縮合ポリマーを、吸引濾過用漏斗上に溜め、
(2)ここにアルコール類/水混合溶媒を添加して吸引し、
(3)該漏斗上にアセトンを添加して吸引し、
(4)上記(2)および(3)の工程を少なくとも2回以上繰り返す、
各工程を含む、シクロデキストリン縮合ポリマーの洗浄方法。
【請求項2】
上記(2)および(3)の工程を5回繰り返す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記工程(1)に使用するアルコール類が炭素数1〜10のアルキル基から選択され、上記工程(1)に使用するアリールアルコール類がベンジルアルコール、またはアルキル、アリール、またはアシル基で置換されたベンジルアルコール類から選択され、上記工程(1)に使用するフェノール類がフェノール、またはアルキル、アリール、またはアシル基で置換されたフェノールから選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
上記工程(2)に使用するアルコール類が、炭素数1〜10を有する脂肪族アルコール類から選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
有機二塩基酸または有機二塩基酸ハロゲン化物が、テレフタル酸、イソフタル酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸またはこれらのハロゲン化物から選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。

【公開番号】特開2012−77109(P2012−77109A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220767(P2010−220767)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000135265)株式会社ネオス (95)
【Fターム(参考)】