説明

シクロパミンの単離

Veratrum(シュロソウ)植物物質および/またはVeratrum植物物質の抽出物からのVeratrumアルカロイドの収量を最適化するように設計された脱グリコシル化方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、米国仮特許出願第61/077,703号(2008年7月2日出願)に対する優先権の利益を主張し、この内容は本明細書の一部を構成する。
【背景技術】
【0002】
1950年代中頃に、アイダホ州中部で重度奇形の単眼子ヒツジの誕生が報告された。米国農務省およびFDAは、11年間の試験の間に、野生のコーンリリーであるVeratrum californicumを妊娠第14日の妊娠母雌ヒツジが摂取すると、子ヒツジに単眼症型奇形を引き起こすことをみいだした。V. californicumは、西アメリカの解放山麓牧草地や高度5,000〜11,000フィートの山腹に生育する。その後、単眼症型奇形を引き起こすV. californicum中の主な催奇性化合物が単離され、「シクロパミン」と呼ばれる11-デオキシジェルビンとして同定された。シクロパミンは、ヘッジホッグ(Hh)経路阻害剤として作用し、胚発生に必須のソニックヘッジホッグ遺伝子の機能を阻害する(Cooper et al.、Science(1998)280:1603-1607;Chen et al.、Genes and Development(2002)16:2743-2748;Incardona et al.、Dev. Biol.(2000)224:440;およびChen et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA(2002)99:14071)。Veratrum californicum中に存在することがある他のVeratrumアルカロイドには、限定されるものではないが、シクロポシン、ベラトラミン、ベラトロシン、ジェルビン、およびムルダミンが含まれる。
【0003】
シクロパミンは、催奇性があるにも関わらず、強力な抗癌剤である。シクロパミンを用いる試験において、研究者らは、癌死の25%を占める種々の最も悪性のヒト腫瘍の増殖を止めた。シクロパミンおよびシクロパミン類似体は、現在、例えば、基底細胞癌、髄芽腫、横紋筋肉腫{おうもんきん にくしゅ}、肺ガン、膵臓癌、乳癌、グリア(膠)芽腫のような種々の癌の治療薬や多発性骨髄腫の治療薬として研究されている。
【0004】
V. californicumからのシクロパミンの単離方法は、Keelerと共同研究者により数年前に記載されているが(Keeler、Phytochemistry(1968)7:303-306)、該方法は、キログラムの量の乾燥植物物質からシクロパミンをミリグラムの量しか製造していない。すなわち、シクロパミンの新しい改良された単離方法が求められ続けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(要約)
かなりの量のVeratrum(シュロソウ)アルカロイドがVeratrum californicum中にグリコシル化誘導体として貯蔵される。Veratrum植物物質および/またはVeratrum植物物質の抽出物からの脱グリコシル化Veratrumアルカロイドの収量を最適化するよう設計された新規脱グリコシル化方法を提供する。
【0006】
例えば、以下の工程を含む、Veratrum植物物質から脱グリコシル化Veratrumアルカロイドを単離する方法を提供する:
(i)グリコシル化Veratrumアルカロイドを含むVeratrum植物物質を得;
(ii)該Veratrum植物物質を水性溶液と接触させ、
(iii)該Veratrum植物物質を溶媒で抽出して脱グリコシル化Veratrumアルカロイドを含む抽出物を得る。
【0007】
グリコシル化Veratrumアルカロイドを緩衝溶液中の酵素と接触させて脱グリコシル化Veratrumアルカロイドを得る脱グリコシル化方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】シクロポシン(CS)、シクロパミン(CA)、ベラトロシン(VS)、およびベラトラミン(VA)の化学構造を示す。
【図2】Veratrum californicumの種々のバイオマス試料中に存在するシクロパミンの量(g/kg)を示す。
【図3】Veratrum californicumの種々のバイオマス試料中に存在するシクロパミン(CA)およびシクロポシン(CS)の量(g/kg)を示す。
【図4】液体クロマトグラフィ質量分析法(LCMS)でモニターした酢酸緩衝液(pH 5.1)中のβ-グルクロニダーゼ(Helix pomatia)を用いた脱グリコシル化を介する精製シクロポシンのシクロパミンへの酵素的変換を示す。
【図5】酢酸緩衝液(pH5.1)およびTris緩衝液(pH7.2)中のβ-グルクロニダーゼ(Helix pomatia)を用いる精製シクロポシンのシクロパミンへの酵素的変換効率を比較したHPLCトレースを示す。
【図6】β-グルクロニダーゼ(Helix pomatia)で処理した粗Veratrum抽出物中のシクロポシン、ベルタトロシン、シクロパミン、およびベラトラミンに対応するピークを示すLCMSトレースを示す。
【図7】シクロポシンのシクロパミンへの変換に対する酵素濃度の効果を示す。
【図8】水、次いでMeOH抽出で処理した粗Veratrum抽出物中のグリコシル化アルカロイドの変換を示す。
【図9】種々のバイオマス試料由来のシクロポシンのシクロパミンへの変換を示す。
【図10】MeOHまたは水中の50%MeOHで処理および抽出した粗Veratrum抽出物中のグリコシル化アルカロイドの変換を示す。
【図11】以下の種々の条件下でバイオマスを処理した結果の比較である:(i) 図10に示すように水中の50%MeOHで処理し、次いで抽出;(ii) 図10に示すように100%MeOHで処理、次いで抽出;および(iii) 図8に示すように水で処理、次いで抽出。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(詳細な説明)
Veratrum植物物質および/またはVeratrum植物物質の抽出物からの脱グリコシル化Veratrumアルカロイドの収量を最適化するよう設計された革新的脱グリコシル化方法を提供する。
水性前処理法
【0010】
かなりの量のVeratrumアルカロイド、例えばシクロパミンおよびベラトラミンが、Veratrum californicum中にそれぞれグリコシル化誘導体(例えばシクロポシンおよびベラトロシンなど)として存在する。一般的には、Vertraum植物に存在する1またはそれ以上の内因性酵素は、これらVeratrumアルカロイドの、植物の必要性に応じたそのグリコシル化誘導体へのおよび該誘導体からの変換を促進すると考えられる。
【0011】
収穫し乾燥したVeratrum植物物質を抽出前に水性溶液で処理すると、グリコシル化Veratrumアルカロイドの量が減少し、抽出すると脱グリコシル化Veratrumアルカロイドの単離収量が増加することをみいだした。如何なる理論にも縛られることを望まないが、水性処理中に該Veratrum植物物質中に存在する1またはそれ以上の内因性酵素がグリコシル化Veratrumアルカロイドの脱グリコシル化を促進し、脱グリコシル化Veratrumアルカロイドの単離収量を増加させることを提唱する。
【0012】
すなわち、以下の工程を含む、Veratrum植物物質からの脱グリコシル化Veratrumアルカロイドの単離方法を提供する:
(i)グリコシル化Veratrumアルカロイドを含むVeratrum植物物質を得、
(ii)該Veratrum植物物質を水性溶液と接触させ、
(iii)該Veratrum植物物質を溶媒と接触させて、脱グリコシル化Veratrumアルカロイドを含む抽出物を得る。
【0013】
ある態様において、グリコシル化Veratrumアルカロイドはシクロポシンであり、脱グリコシル化Veratrumアルカロイドはシクロパミンである。
【0014】
ある態様において、該Veratrum植物物質は、シクロポシンとシクロパミンの混合物を含む。
【0015】
ある態様において、グリコシル化Veratrumアルカロイドはベラトロシンであり、脱グリコシル化Veratrumアルカロイドはベラトラミンである。
【0016】
ある態様において、該Veratrum植物物質はベラトロシンとベラトラミンの混合物を含む。
【0017】
ある態様において、該Veratrum植物物質はシクロポシンとベラトロシンの混合物を含む。
【0018】
ある態様において、該Veratrum植物物質はシクロポシン、シクロパミン、ベラトロシン、およびベラトラミンの混合物を含む。
【0019】
本明細書で用いている「Veratrum植物物質」は、Veratrum californicum、例えばVeratrum californicum var. californicumの収穫した植物を表し、所望により乾燥しても、粉砕して微粉末にしてもよい。Veratrum植物物質は、収穫した、1またはそれ以上のVeratrumアルカロイドを産生または含むように遺伝子操作された植物(例えば、高レベルの1またはそれ以上のVeratrumアルカロイド、例えば、シクロパミンおよび/またはシクロポシンを産生するよう遺伝子操作された植物)を含む。
【0020】
ある態様において、該水性溶液のpHが約9またはそれ以下である。ある態様において、該水性溶液のpHが約8またはそれ以下である。ある態様において、該水性溶液のpHが約7.5またはそれ以下である。ある態様において、該水性溶液のpHが約7またはそれ以下である。
【0021】
ある態様において、該水性溶液のpHが約4〜約9(包含する)である。ある態様において、該水性溶液のpHが約4〜約8(包含する)である。ある態様において、該水性溶液のpHが約5〜約8(包含する)である。ある態様において、該水性溶液のpHが約5〜約7.5(包含する)である。ある態様において、該水性溶液のpHが約5〜約7(包含する)である。ある態様において、該水性溶液のpHが約5〜約6(包含する)である。ある態様において、該水性溶液のpHが約6〜約7.5(包含する)である。
【0022】
ある態様において、該水性溶液は中性である(すなわち、pH約7)。
【0023】
ある態様において、該水性溶液は酸性である(すなわち、pH約7未満)。
【0024】
ある態様において、該水性溶液は塩基を含まない。
【0025】
ある態様において、該水性溶液は無機塩基を含まない。ある態様において、該水性溶液は有機塩基を含まない。
【0026】
ある態様において、該水性溶液は水酸化アンモニウムまたは炭酸ナトリウムを含まない。ある態様において、該水性溶液は水酸化アンモニウムを含まない。
【0027】
ある態様において、該水性溶液は緩衝されている。緩衝液の例には、限定されるものではないが、3-{[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}プロパンスルホン酸(TAPS)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン(ビシン)、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン(Tris(トリス))、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン(トリシン)、4-2-ヒドロキシエチル-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、2-{[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}エタンスルホン酸(TES)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、ピペラジン-N,N′-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)、ジメチルアルシン酸(カコジレート)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、炭酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、酢酸緩衝液、またはその塩が含まれる。ある態様において、該緩衝液は酢酸緩衝液である。ある態様において、該緩衝液はトリス緩衝液である。
【0028】
ある態様において、該水性溶液は、水を約1%以上、約5%以上、約10%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、約98%以上、または約99%以上含む。
【0029】
ある態様において、該水性溶液は、水を約5%〜約100%(包含する)含む。ある態様において、該水性溶液は水を約10%〜約100%(包含する)含む。ある態様において、該水性溶液は水を約20%〜約100%(包含する)含む。ある態様において、該水性溶液は水を約30%〜約100%(包含する)含む。ある態様において、該水性溶液は水を約40%〜約100%(包含する)含む。ある態様において、該水性溶液は水を約50%〜約100%(包含する)含む。ある態様において、該水性溶液は水を約60%〜約100%(包含する)含む。ある態様において、該水性溶液は水を約70%〜約100%(包含する)含む。ある態様において、該水性溶液は水を約80%〜約100%(包含する)含む。ある態様において、該水性溶液は水を約90%〜約100%(包含する)含む。
【0030】
ある態様において、該水性溶液は水と共溶媒の混合物を含む。共溶媒の例には、有機アルコール、例えば、メタノール、エタノール、およびイソプロパノールが含まれる。ある態様において、該水性溶液は水とメタノールの混合物を含む。
【0031】
ある態様において、該水性溶液は、水と共溶媒の、約1:1(v/v)、約1:2(v/v)、約1:3(v/v)、約1:4(v/v)、約1:5(v/v)、約1:6(v/v)、約1:7(v/v)、約1:8(v/v)、約1:9(v/v)、または約1:10(v/v)混合物を含む。
【0032】
ある態様において、該水性溶液は、共溶媒または水の約1:1(v/v)、約1:2(v/v)、約1:3(v/v)、約1:4(v/v)、約1:5(v/v)、約1:6(v/v)、約1:7(v/v)、約1:8(v/v)、約1:9(v/v)、または約1:10(v/v)混合物を含む。
【0033】
ある態様において、該水性溶液は100%水である。
【0034】
ある態様において、該水性溶液の総重量は、該Veratrum植物物質の重量の、少なくとも約1.5倍(w/w)、少なくとも約2倍(w/w)、少なくとも約3倍(w/w)、少なくとも約4倍(w/w)、または少なくとも約5倍(w/w)である。
【0035】
ある態様において、該水性溶液は、温度が約100℃、約90℃以下、約80℃以下、約70℃以下、約60℃以下、約50℃以下、約40℃以下、約30℃以下、約28℃以下、約25℃以下、約20℃以下、約15℃以下、約10℃以下、または約5℃以下である。
【0036】
ある態様において、該水性溶液は、温度が約0℃〜約100℃(包含する)である。ある態様において、該水性溶液は、温度が約0℃〜約90℃(包含する)である。ある態様において、該水性溶液は、温度が約0℃〜約80℃(包含する)である。ある態様において、該水性溶液は、温度が約0℃〜約70℃(包含する)である。ある態様において、該水性溶液は、温度が約0℃〜約60℃(包含する)である。ある態様において、該水性溶液は、温度が約0℃〜約50℃(包含する)である。ある態様において、該水性溶液は、温度が約0℃〜約40℃(包含する)である。ある態様において、該水性溶液は、温度が約0℃〜約30℃(包含する)である。ある態様において、該水性溶液は、温度が約0℃〜約25℃(包含する)である。ある態様において、該水性溶液は、温度が約25℃〜約75℃(包含する)である。ある態様において、該水性溶液は、温度が約30℃〜約60℃(包含する)である。
【0037】
ある態様において、該接触工程中にグリコシル化Veratrumアルカロイドの量が減少する。ある態様において、該接触工程中に脱グリコシル化Veratrumアルカロイドの量が増加する。ある態様において、該接触工程中にグリコシル化Veratrumアルカロイドの量は減少し、脱グリコシル化Veratrumアルカロイドの量は増加する。
【0038】
ある態様において、該接触工程中にグリコシル化Veratrumアルカロイドは、該植物物質中に存在する1またはそれ以上の内因性酵素により脱グリコシル化Veratrumアルカロイドに変換される。
【0039】
ある態様において、該接触工程は、該植物物質中に存在するグリコシル化Veratrumアルカロイドの約10%を脱グリコシル化Veratrumアルカロイドに変換するのに充分な時間、該Veratrum植物物質と水性溶液を接触させることを含む。ある態様において、該接触工程は、該植物物質中に存在するグリコシル化Veratrumアルカロイドの少なくとも約25%を脱グリコシル化Veratrumアルカロイドに変換するのに充分な時間、該Veratrum植物物質と水性溶液を接触させることを含む。ある態様において、該接触工程は、該植物物質中に存在するグリコシル化Veratrumアルカロイドの少なくとも約50%を脱グリコシル化Veratrumアルカロイドに変換するのに充分な時間、該Veratrum植物物質と水性溶液を接触させることを含む。ある態様において、該接触工程は、該植物物質中に存在するグリコシル化Veratrumアルカロイドの少なくとも約75%を脱グリコシル化Veratrumアルカロイドに変換するのに充分な時間、該Veratrum植物物質と水性溶液を接触させることを含む。ある態様において、該接触工程は、該植物物質中に存在するグリコシル化Veratrumアルカロイドの少なくとも約95%を脱グリコシル化Veratrumアルカロイドに変換するのに充分な時間、該Veratrum植物物質と水性溶液を接触させることを含む。
【0040】
ある態様において、該植物物質中に存在するすべてのグリコシル化Veratrumアルカロイドが脱グリコシル化Veratrumアルカロイドに変換される。
【0041】
ある態様において、該接触工程は、該Veratrum植物物質を水性溶液と少なくとも5分間接触させることを含む。ある態様において、該接触工程は、該Veratrum植物物質を水性溶液と少なくとも10分間接触させることを含む。ある態様において、該接触工程は、該Veratrum植物物質を水性溶液と少なくとも30分間接触させることを含む。ある態様において、該接触工程は、該Veratrum植物物質を水性溶液と少なくとも45分間接触させることを含む。ある態様において、該接触工程は、該Veratrum植物物質を水性溶液と少なくとも1時間接触させることを含む。ある態様において、該接触工程は、該Veratrum植物物質を水性溶液と少なくとも1.5時間接触させることを含む。ある態様において、該接触工程は、該Veratrum植物物質を水性溶液と少なくとも2時間接触させることを含む。
【0042】
ある態様において、該接触工程は、該Veratrum植物物質を水性溶液と約5分間〜約5時間(包含する)接触させることを含む。ある態様において、該接触工程は、該Veratrum植物物質を水性溶液と約5分間〜約2時間(包含する)接触させることを含む。ある態様において、該接触工程は、該Veratrum植物物質を水性溶液と約5分間〜約1時間(包含する)接触させることを含む。
【0043】
ある態様において、該接触工程は、水性溶液中で該Veratrum植物物質を撹拌することを含む。ある態様において、該撹拌(agitating)工程は、該水性溶液中で該植物物質を振盪または撹拌(stirring)することを含む。別の態様において、該接触工程は撹拌を含まない。
【0044】
ある態様において、該方法は、該Veratrum植物物質の抽出前に該水性溶液から該Veratrum植物物質を除去する工程を含む。ある態様において、該除去工程は濾過または遠心分離を含む。
【0045】
ある態様において、第1接触工程後で抽出工程前に、該方法はさらに該植物物質を塩基性水性溶液と接触させることを含む。
【0046】
ある態様において、該接触工程は、該Veratrum植物物質を溶媒で抽出して脱グリコシル化Veratrumアルカロイドを含む抽出物を得ることを含む(ここで、溶媒は、所望により水および/または塩基と混合された1またはそれ以上の有機溶媒を含む)。
【0047】
ある態様において、該有機溶媒には、有機アルコール、エステル、ケトン、エーテル、ハロゲン化炭化水素、炭化水素、芳香族化合物、または非芳香族化合物またはその2またはそれ以上の混合物が含まれる。
【0048】
典型的な有機アルコールには、限定されるものではないが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、2-ブタノール、およびn-ブタノールが含まれる。典型的なエステルには、限定されるものではないが、酢酸エチルおよびイソプロピルアセテートが含まれる。典型的なケトンには、限定されるものではないが、アセトンおよびメチルエチルケトン(MEK)が含まれる。典型的なエーテルには、限定されるものではないが、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、およびジエチルエーテルが含まれる。典型的なハロゲン化炭化水素には、限定されるものではないが、ジクロロメタン、ジクロロエタン、およびクロロホルムが含まれる。典型的な炭化水素には、限定されるものではないが、ヘキサン、ヘプタン、およびペンタンが含まれる。典型的な芳香族溶媒には、例えばベンゼン、アニソール、トルエン、およびキシレンが含まれる。
【0049】
ある態様において、該有機溶媒は有機アルコールである。ある態様において、該有機溶媒はメタノールである。
【0050】
ある態様において、該抽出工程に用いる溶媒には、有機溶媒と水の混合物が含まれる。ある態様において、該抽出工程に用いる溶媒には、メタノールと水の混合物が含まれる。
【0051】
ある態様において、該抽出工程に用いる溶媒には、水と有機溶媒の、約1:1(v/v)、約1:2(v/v)、約1:3(v/v)、約1:4(v/v)、約1:5(v/v)、約1:6(v/v)、約1:7(v/v)、約1:8(v/v)、約1:9(v/v)、または約1:10(v/v)混合物が含まれる。
【0052】
ある態様において、抽出工程に用いる溶媒には、有機溶媒と水の約1:1(v/v)、約1:2(v/v)、約1:3(v/v)、約1:4(v/v)、約1:5(v/v)、約1:6(v/v)、約1:7(v/v)、約1:8(v/v)、約1:9(v/v)、または約1:10(v/v)混合物が含まれる。
【0053】
ある態様において、抽出工程に用いる溶媒には、有機溶媒と塩基の混合物が含まれる。ある態様において、該塩基は水性塩基溶液である。他の態様において、該塩基は非水性である。
【0054】
ある態様において、該塩基は、有機溶媒中に約20%(v/v)以下、約15%(v/v)以下、約10%(v/v)以下、約5%(v/v)以下、または約1%(v/v)以下で存在する。ある態様において、該塩基は、有機溶媒中に約1%〜約20%(v/v)(包含する);約1%〜約10%(v/v)(包含する);約1%〜約10%(v/v)(包含する)、または約1%〜約5%(v/v)(包含する)存在する。
【0055】
典型的な塩基には有機塩基と無機塩基が含まれる。典型的な無機塩基には、限定されるものではないが、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、酒石酸カリウムナトリウム(ロッシェル塩としても知られる)、および水酸化リチウムの水性溶液が含まれる。典型的な有機塩基には、限定されるものではないが、トリエチルアミン、ジエチルイソプロピルアミン、およびピリジンが含まれる。ある態様において、該塩基は炭酸ナトリウムの水性溶液である。ある態様において、該塩基はトリエチルアミンである。ある態様において、該塩基は水酸化ナトリウムの水性溶液である。
【0056】
ある態様において、抽出工程に用いる溶媒には、メタノールと炭酸ナトリウムの水性溶液の混合物が含まれる。他の態様において、抽出工程に用いる溶媒には、メタノールとトリエチルアミンの混合物が含まれる。さらに他の態様において、抽出工程に用いる溶媒には、メタノールと水酸化ナトリウムの水性溶液の混合物が含まれる。ある態様において、該方法は、さらに抽出工程後に溶媒を濃縮し、脱グリコシル化Veratrumアルカロイドを含む抽出物を得る工程を含む。
【0057】
ある態様において、該方法は、さらに該抽出物から単離された脱グリコシル化Veratrumアルカロイドを精製することを含む。ある態様において、該精製工程は、純度約85%以上の脱グリコシル化Veratrumアルカロイドを得ることを含む。ある態様において、該精製工程は、純度約90%以上の脱グリコシル化Veratrumアルカロイドを得ることを含む。ある態様において、該精製工程は、純度約92%以上の脱グリコシル化Veratrumアルカロイドを得ることを含む。ある態様において、該精製工程は、純度約95%以上の脱グリコシル化Veratrumアルカロイドを得ることを含む。
【0058】
有機化合物の全体的純度は、当該分野で知られた種々の分析技術、例えば液体クロマトグラフィ質量分析法(LC-MS)および高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)を用いて決定することができる。有機化合物の特徴付けおよび精製に有用な他の方法には、融点、旋光度、および核磁気共鳴分光学(NMR)が含まれる。
【0059】
ある態様において、精製工程にはクロマトグラフィ精製が含まれる。ある態様において、クロマトグラフィ精製には、シリカゲルクロマトグラフィ精製が含まれる。
【0060】
ある態様において、該精製工程はトリチュレーションを含む。
【0061】
ある態様において、該精製工程は結晶化を含む。
【0062】
ある態様において、本発明は、以下の工程を含むVeratrum植物物質からのシクロパミンの単離方法を提供する:
(i)シクロポシンを含むVeratrum植物物質を得;
(ii)該Veratrum植物物質を水性溶液と接触させ;
(iii)該Veratrum植物物質を溶媒で抽出してシクロパミンを含む抽出物を得る。
【0063】
ある態様において、該接触工程中にシクロポシンの量は減少する。ある態様において、該接触工程中にシクロパミンの量は増加する。ある態様において、該接触工程中にシクロポシンの量は減少し、シクロパミンの量は増加する。
【0064】
ある態様において、接触工程中に、シクロポシンは、該植物物質中に存在する1またはそれ以上の内因性酵素によりシクロパミンに変換される。
【0065】
ある態様において、該水性溶液のpHが約8またはそれ以下である。ある態様において、該水性溶液のpHが約4〜約8(包含する)である。
【0066】
ある態様において、該水性溶液は塩基を含まない。ある態様において、該水性溶液は水酸化アンモニウムまたは炭酸ナトリウムを含まない。
【0067】
ある態様において、該水性溶液は水を約25%以上含む。ある態様において、該水性溶液は水を約30%〜約100%(包含する)含む。ある態様において、水性溶液は100%水である。
【0068】
ある態様において、該水性溶液は、水と共溶媒の混合物を含む。ある態様において、該共溶媒はメタノールである。
【0069】
ある態様において、該方法は、さらに該Veratrum植物物質の抽出前に水性溶液から該Veratrum植物物質を除去する工程を含む。
【0070】
ある態様において、抽出工程に用いる溶媒には、所望により水および/または塩基と混合した1またはそれ以上の有機溶媒が含まれる。ある態様において、該有機溶媒はメタノールである。ある態様において、抽出工程に用いる溶媒には、水と混合したメタノール混合物が含まれる。ある態様において、抽出工程に用いる溶媒には、水性塩基溶液(例えば、炭酸ナトリウムの水性溶液または水酸化ナトリウムの水性溶液)と混合したメタノールの混合物が含まれる。他の態様において、抽出工程に用いる溶媒には、有機塩基(例えば、トリエチルアミン)と混合したメタノールの混合物が含まれる。
(外因性酵素法)
【0071】
グリコシル化Veratrumアルカロイドを緩衝溶液中の酵素と接触させて脱グリコシル化Veratrumアルカロイドを得ることを含む脱グリコシル化方法も提供する。
【0072】
ある態様において、該グリコシル化Veratrumアルカロイドはシクロポシンであり、該脱グリコシル化Veratrumアルカロイドはシクロパミンである。
【0073】
ある態様において、該グリコシル化Veratrumアルカロイドはベラトロシンであり、該脱グリコシル化Veratrumアルカロイドはベラトラミンである。
【0074】
ある態様において、該酵素は、真核生物由来または該生物から単離した酵素(すなわち、真核生物由来酵素)である。他の態様において、該酵素は原核生物由来または該生物から単離した酵素(すなわち、原核生物由来酵素)である。
【0075】
ある態様において、該酵素はβ-グルクロニダーゼ酵素である。ある態様において、該β-グルクロニダーゼ酵素は、Helix pomatia β-グルクロニダーゼ酵素、Helix aspersa β-グルクロニダーゼ酵素、Patella vulgata β-グルクロニダーゼ酵素、ウシタイプ10肝臓β-グルクロニダーゼ酵素、またはアーモンド由来β-グルクロニダーゼ酵素から選ばれる。ある態様において、該β-グルクロニダーゼ酵素はHelix pomatia β-グルクロニダーゼ酵素である。
【0076】
ある態様において、該緩衝溶液のpHは、pH約9またはそれ以下である。ある態様において、該緩衝溶液のpHは、pH約8またはそれ以下である。ある態様において、該緩衝溶液のpHは、pH約7.5またはそれ以下である。ある態様において、該緩衝溶液のpHは、pH約7またはそれ以下である。ある態様において、該緩衝溶液のpHは、pH約6またはそれ以下である。ある態様において、該緩衝溶液のpHは、pH約5.5またはそれ以下である。
【0077】
ある態様において、該緩衝溶液のpHは、約4〜約9(包含する)である。ある態様において、該緩衝溶液のpHは、約5〜約8(包含する)である。ある態様において、該緩衝溶液のpHは、約5〜約7.5(包含する)である。ある態様において、該緩衝溶液のpHは、約5〜約5.5(包含する)である。ある態様において、該緩衝溶液のpHは、約7〜約7.5(包含する)である。
【0078】
典型的な緩衝液には、限定されるものではないが、3-{[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}プロパンスルホン酸(TAPS)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン(ビシン)、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン(Tris)、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン(トリシン)、4-2-ヒドロキシエチル-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、2-{[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}エタンスルホン酸(TES)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、ピペラジン-N,N′-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)、ジメチルアルシン酸(カコジレート)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、炭酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、酢酸緩衝液、およびその塩が含まれる。ある態様において、該緩衝液は酢酸緩衝液である。ある態様において、該緩衝液はTris緩衝液である。
【0079】
ある態様において、該緩衝溶液の温度は約100℃以下、約90℃以下、約80℃以下、約70℃以下、約60℃以下、約50℃以下、または約40℃以下である。
【0080】
ある態様において、該緩衝溶液の温度は、約25℃〜約75℃(包含する)である。ある態様において、該緩衝溶液の温度は、約25℃〜約50℃(包含する)である。ある態様において、該緩衝溶液の温度は、約25℃〜約40℃(包含する)である。ある態様において、該緩衝溶液の温度は、37℃または約37℃である。
【0081】
ある態様において、該接触工程は、グリコシル化Veratrumアルカロイドの約10%が脱グリコシル化Veratrumアルカロイドに変換されるのに充分な時間、グリコシル化Veratrumアルカロイドを該酵素と接触させることを含む。ある態様において、該接触工程は、グリコシル化Veratrumアルカロイドの少なくとも約25%が脱グリコシル化Veratrumアルカロイドに変換されるのに充分な時間、グリコシル化Veratrumアルカロイドを該酵素と接触させることを含む。ある態様において、該接触工程は、グリコシル化Veratrumアルカロイドの少なくとも約50%が脱グリコシル化Veratrumアルカロイドに変換されるのに充分な時間、グリコシル化Veratrumアルカロイドを該酵素と接触させることを含む。ある態様において、該接触工程は、グリコシル化Veratrumアルカロイドの少なくとも約75%が脱グリコシル化Veratrumアルカロイドに変換されるのに充分な時間、グリコシル化Veratrumアルカロイドを該酵素と接触させることを含む。ある態様において、該接触工程は、グリコシル化Veratrumアルカロイドの少なくとも約95%が脱グリコシル化Veratrumアルカロイドに変換されるのに充分な時間、グリコシル化Veratrumアルカロイドを該酵素と接触させることを含む。
【0082】
ある態様において、該接触工程は、グリコシル化Veratrumアルカロイドのすべてが脱グリコシル化Veratrumアルカロイドに変換されるのに充分な時間、グリコシル化Veratrumアルカロイドを該酵素と接触させることを含む。
【0083】
ある態様において、該接触工程は、グリコシル化Veratrumアルカロイドを該酵素と少なくとも30分間接触させることを含む。ある態様において、該接触工程は、グリコシル化Veratrumアルカロイドを該酵素と少なくとも1時間接触させることを含む。ある態様において、該接触工程は、グリコシル化Veratrumアルカロイドを該酵素と少なくとも2時間接触させることを含む。ある態様において、該接触工程は、グリコシル化Veratrumアルカロイドを該酵素と少なくとも5時間接触させることを含む。ある態様において、該接触工程は、グリコシル化Veratrumアルカロイドを該酵素と少なくとも10時間接触させることを含む。ある態様において、該接触工程は、グリコシル化Veratrumアルカロイドを該酵素と少なくとも15時間接触させることを含む。
【0084】
ある態様において、本発明は、シクロポシンと緩衝溶液中のβ-グルクロニダーゼ真核生物由来酵素を接触させてシクロパミンを得ることを含む脱グルコシル化方法を提供する。
【0085】
ある態様において、該酵素はHelix pomatia β-グルクロニダーゼ真核生物由来酵素である。
【実施例】
【0086】
一連の試験は、シクロポシンが酵素的脱グリコシル化によりシクロパミンに変換されるか否かを検討するために計画された。これらの試験は、シクロポシンが粗抽出混合物中、シクロパミンに酵素的に変換されるだけでなく、ベラトロシンもベラトラミンに変換されることを示した。該酵素的変換は、種々の供給源由来の種々の酵素を用いて証明された。
【0087】
シクロポシンのシクロパミンへの変換、およびベラトロシンのベラトラミンへの変換は、抽出前に収穫したVeratrum植物物質を水性溶液で処理することにより行うことができることもみいだした。以前の外因性酵素試験は、該Veratrum植物物質中に存在する1またはそれ以上の内因性酵素は、抽出前に水で処理すると、シクロポシンをシクロパミンに変換し、ベラトロシンをベラトラミンに変換しうるという仮説を裏付ける。本明細書に記載の温度およびpH試験はさらにこの仮説を裏付ける。
【0088】
以下の実施例は、単に本発明のある局面および態様の例示を含むものであって、本明細書の開示を限定するものではない。
A. バイオマスの収穫
【0089】
V. californicumは、典型的には毎年8月〜10月に収穫する。該植物物質は、手作業で、および/または利用できる場合は農機具を用いて地面から掘り出される。典型的には、球根、コーン(corn)、および地下茎を植物から分離し、手作業で切り刻んで小片とし、さらに2〜4週間乾燥させる。次に、乾燥物質を挽いて微粒子(すなわち、バイオマス)にする。微粒子の含水率は7%〜10%の範囲である。粗バイオマスのロットは、種々の量のシクロパミンおよびシクロポシンを含む(図2および3)。該バイオマスは、抽出前にポリプロピレンで裏打ちした密封不透明バッグ中に約2℃〜8℃で保存した。
B.分析方法
【0090】
一般的HPLC法:Waters Symmetry C18カラム、4.6 x 150 mm、5ミクロン(P/N WAT045905);移動相:20/80 MeCN/0.1%TFA(0分)〜12分で35/65 MeCN/0.1%TFA、次いで5分間再平衡化;流速:1.5mL/min;注射:10マイクロメートル;検出器:215nm;温度40℃。
C. 外因性酵素試験
【0091】
すべての酵素を精製単離物か粗抽出物のいずれかとして供給し、溶液または緩衝溶液で希釈した固体として供給した。酵素活性濃度は、供給業者が提供する包装の情報に基づいて計算した。適切な希釈により求める酵素濃度を得た。
【0092】
典型的には、反応は、約37℃で約22時間、緩衝溶液中の温度調節した加熱ブロック中でインキュベーションしたEppendorfチューブ中で行った。典型的な緩衝液を表1に示す。
表1.
【表1】

【0093】
純粋なシクロポシン(〜7mg)またはシクロポシン(〜16mg)含有粗Veratrum抽出物を、500uLのエタノール中10%DMSOに溶解した。50uLのシクロポシン(1当量)含有溶液、および50uLの酵素溶液(約2活性単位当量)を450uL緩衝液溶液(0.1Mトリス緩衝液、pH7.2;または0.1M酢酸緩衝液、pH5.1)に加えた。混合物を37℃で22時間加熱した。その時点で50uLの濁った反応懸濁液を50uL MeOHと混合した。酵素的変換をHPLCにより測定した。種々の典型的酵素の結果を表2にまとめる。
表2.
【表2】

【0094】
図4および5に示すように、精製したシクロポシンを、酢酸緩衝液またはトリス緩衝液中のH. pomatia β-グルクロニダーゼを用いてシクロパミンに変換する。図6および7は、粗Veratrum抽出物に関するものと同様の結果を示す。
【0095】
一般的には、この試験に用いた外因性酵素は、約37℃、約pH7.2および約pH5.1でシクロポシンをシクロパミンに変換するのに有効であったが、pH約5.1でより完全な変換が得られた(図5参照)。この試験に用いた真核生物由来酵素は、原核生物由来酵素より有効であることも観察された。粗アルカロイド抽出物を用いる反応において、ベラトロシンからベラトラミンへの変換が観察された(図6参照)。
D. 第1プロトコール
(i)バイオマスの抽出
【0096】
5%含水水酸化アンモニウムを添加した有機溶媒を用いる抽出は、有機溶媒単独や、有機溶媒と10%または20%含水水酸化アンモニウムを用いる場合よりシクロパミンの収率が良かった。比3:1の有機溶媒/5%含水水酸化アンモニウムは、ほぼ均一で容易に混合するバイオマス混合物をもたらす。一般的には、2回の抽出は、大部分のシクロパミンのバイオマスからの抽出をもたらし、それに続く抽出は、典型的にはシクロパミンが少ないより粗な抽出物をもたらした。シクロポシンは典型的には該抽出物中にも存在する。種々の抽出溶媒の結果を表3にまとめる。
【表3−1】

【表3−2】

【0097】
大規模抽出:約6kgのバイオマスを室温で16時間、5%含水水酸化アンモニウムを含むジクロロメタン(CH2Cl2)の混合物に懸濁させた。溶媒をデカントし、次いで濃縮してペーストを得、これをTHF/ヘキサン(1:3)の混合物にとった。2〜3日間放置後、溶媒をデカントし、次いで濃縮して粘性油状物を得た。粗油状物をシリカゲルカラムに流し、EtOAc/CH2Cl2/MeOH/Et3N(8:1:1:0.1)で溶出した。シクロパミンの豊富化分画を濃縮して容量を1/4にし、次いで沈殿したシクロパミンを濾過した。アセトンでさらに沈殿させてさらにシクロパミンを得た。混合シクロパミンを加熱MeOH中で再結晶させた。典型的には、このプロトコールは、シクロパミン1g/kg乾燥バイオマスを供給する。この方法により得られたシクロパミンの純度はHPLCで検査すると95%以上である。
(ii)抽出物の精製
【0098】
11gの粗抽出物(上記で得られた)を50mLのメタノール中で一夜撹拌し、次いで、濾過して粗濾液を得た。セライト(25g)を濾液に加え、回転蒸発により濃縮乾燥した。得られた乾燥粉末を酢酸エチルで溶出し、ベラトラミンとシクロパミンの混合物を含む第1粗分画を得、次いでメタノールで溶出して、シクロポシンを含む第2粗分画を得た。該第2分画を濃縮して4g(グラム)の粗物質を得た。
【0099】
第2分画から得られた粗物質をシリカゲルカラムに流し、1:2:4 MeOH:EtOAc:ヘキサン(添加物として0.5%トリエチルアミン)で溶出して、シクロポシンを得た(HPLCで測定した純度85%)。該粗シクロポシンをアセトンでトリチュレートし、次いでデカントし、さらにシリカゲルクロマトグラフィ(添加物として0.5%トリエチルアミンを含む1:2:4 MeOH:EtOAc:ヘキサン溶離剤)で精製して精製シクロポシンを得、これをメタノールから再結晶させて200mgのシクロポシンを得た(HPLCで測定した純度97%)。
B.第2プロトコール−水性前処理
【0100】
抽出前に該Veratrum植物物質を水性溶液で処理すると、該植物物質中に存在するシクロポシンおよびベラトロシンの量が減少し、単離されたシクロパミンおよびベラトラミンの収量が増加することがわかった。このプロトコールは、上記プロトコールに比べてシクロパミンの収量を2〜5倍増加することを示す。
(i)100%メタノールで抽出
【0101】
13.2gの乾燥バイオマスをメタノール(粉砕/乾燥Veratrum Californicumを8〜10容(重量)のMeOHと混合し、混合物を室温で24時間撹拌)で徹底的に抽出し、次いで濾過する。抽出工程を濾過したバイオマスに対してさらに2回繰り返し、合計3回抽出した。HPLC分析は、22mgのシクロパミン(CA)(バイオマス総重量の0.17%)および65mg(0.49%)のシクロポシン(CS)を示した(図8)。全てのシクロポシンがシクロパミンに変換されると理論合計は0.66%である(理論合計は、分子量差を補正したCA含量とCS含量の合計を得ることにより決定する(例えば、CA+CS*(mwCA/mwCS)=理論CA)。抽出可能な固体のパーセンテージは25.7%であった。
(ii)水処理、次いで100%メタノール抽出
【0102】
10.0gの乾燥バイオマスを50mLの水と室温で約1.5時間撹拌する。HPLCでモニターすると水性濾液中のシクロポシン(CS)は1時間以下で消失したことがわかった。次に、50mLのMeOHを加え、次いでスラリーを濾過して313mgのシクロパミンを含む濾液78mLを得た(理論最大値666mgの47%)。次に、バイオマスを65mLのMeOHで再抽出し、さらに18.2mgのシクロパミン(CA)を得た(合計331.2mg)。
【0103】
図8は、(a)100%MeOH抽出、および(b)水処理、次いで100%MeOH抽出から得た抽出物のHPLCトレース。クロマトグラムは、水処理した試料中のシクロポシン(CS)およびベラトロシン(VS)が減少し、シクロパミン(CA)およびベラトラミン(V)が増加したことを示す。
【0104】
図9は、種々のバイオマス試料由来のシクロポシンのシクロパミンへの変換を示す。それぞれの場合において、水処理、次いでMeOH抽出すると、バイオマス試料中に存在するシクロパミンの全濃度は増加した。
(iii)水中の50%メタノールによる抽出
【0105】
バイオマス100gの2ロットを1つは500mLのMeOH、他は500mLの1:1MeOH/水と共に室温で一夜撹拌した。スラリーを濾過し、バイオマスの各ロットを300mLの同じ溶媒で再抽出した。MeOH抽出は152mgシクロパミンをもたらし、一方、MeOH/水抽出物は349mgのシクロパミンを含んでいた。
【0106】
図10は、(a)100%MeOH抽出、および(b)水中50%MeOH処理、次いで水中50%MeOH抽出から得た抽出物のHPLCトレースを示す。クロマトグラムは、水中50%メタノール処理試料中のシクロポシン(CS)およびベラトロシン(VS)は減少し、シクロパミン(CA)およびベラトラミン(VA)は増加したことを示す。
(iv)水性溶液処理における温度の効果
【0107】
2つのバイオマス試料(MeOH抽出物のHPLC分析により測定し、0.17%CAおよび0.49%CS(CS/CA比=2.88)を含むバイオマス2.0g)を、それぞれ10mLの水中50%MeOHと共に50mL遠心チューブに入れた。該チューブを振盪させ、1つのチューブを40℃浴におき、他のチューブを室温に放置した。種々の時点で、1mLの試料を取り出し、濾過してHPLCバイアルに入れた。各試料中のシクロパミン(CA)およびシクロポシン(CS)の濃度をHPLCで測定した(表4参照)。
表4.
【表4】

【0108】
別の実験において、乾燥バイオマスを100℃に加熱し、次いで室温に冷却し、水で処理した。MeOH抽出物のHPLC分析では、感知されうるシクロポシンのシクロパミンへの変換はみられなかった(すなわち、CS/CA比は変化せず)。この結果は、水処理する前に最初に100℃に加熱すると、バイオマス中のシクロポシンのシクロパミンへの変換が停止または減少することを示す。
(v)水性溶液処理におけるpHの効果
【0109】
2つのバイオマス試料(MeOH抽出物のHPLC分析により測定した0.17%CAおよび0.49%CS、CS/CA比=2.88を含むバイオマス2.0g)を、それぞれ5mLのMeOHおよび5mLの0.5M炭酸ナトリウム溶液と共に50mL遠心チューブに入れた。チューブを振盪させ、1つのチューブを40℃浴に入れ、他のチューブを室温においた。種々の時点で、1mLの試料を取り出し、濾過してHPLCバイアルに入れた。45分間後、両試料のHPLC分析では、感知されうるシクロポシンのシクロパミンへの変換はみられなかった(すなわち、CS/CA比は変化せず)。この結果は、塩基処理するか、またはバイオマスと接触する水性溶液が塩基性溶液であるとバイオマス中のシクロポシンのシクロパミンへの変換が停止または減少することを示す。
(vi)水処理、次いで塩基性または中性メタノールで抽出:炭酸ナトリウムを用いる実験
【0110】
2つの100gのバイオマス試料をそれぞれ2つの750mLボトルに計り入れた。500mLの水をそれぞれに加え、試料を1.5時間にわたり時々振盪させた。次に2つの試料を別個に濾過し、14.5gの固体と微量のシクロパミン(CA)を含む水性濾液300mLを得た。シクロポシン(CS)は濾液中に認められず(HPLCで測定)、すべてシクロパミンに変換されたことを示唆する。
【0111】
第1試料(「中性」と記載)は、40℃でメタノール(3x150mL)で3回抽出した。混合中性抽出物は0.50gのシクロパミン(理論最大値0.66gの75%)を含んでいた。バイオマスを300mLの沸騰MeOHで4回抽出し、合計0.54g(82%理論値の)を得た。
【0112】
第2試料(「塩基性」と記載)は、25mLの1M炭酸ナトリウム溶液で塩基性化した。次に、この試料を40℃のメタノールで3回(3x150mL)抽出した。さらに25mLの1M炭酸ナトリウム溶液を2回目の塩基性抽出前に加えたが、3回目の抽出前には加えなかった。混合塩基性抽出物は、0.62gのシクロパミン(理論最大値0.66gの94%)。バイオマスを300mLの沸騰MeOHで4回抽出し、合計0.67g(理論値の100%)を得た。
【0113】
大規模試験:1000gのバイオマスおよび5.0Lの脱イオン水を10L丸底フラスコに加え、混合物を室温で1.5時間徐々に混合した。このスラリーを#417硬質紙で濾過し、セライト545ベッドに通した。水性濾液の分析は0.069gのシクロパミンの存在を示した(総量の1%)。
【0114】
湿バイオマスを丸底フラスコに戻し、125mLの2M炭酸ナトリウムおよび4LのMeOHで処理した。混合物を1.5時間40℃浴中で徐々に混合し、次いで#417紙を取り付けた24cm Buchnerロートを用いて濾過した。この場合の濾過はきわめて急速であった。抽出手順をMeOHでさらに2回繰り返した。250mEqの炭酸ナトリウムを2回目の抽出前に加えたが、3回目の抽出前には加えなかった。結果を下記表5にまとめる。
表5.
【表5】

【0115】
混合抽出物は、151gの固体およびバイオマス試料中の利用可能なシクロパミンの理論最大値の100%を含むことがわかった。抽出物中のシクロパミンは純度4.4%(HPLCで測定)であった。
(vii)水処理、次いで塩基性または中性メタノールで抽出:トリエチルアミンを用いる実験
【0116】
2つの15gのバイオマス試料を2つの250mL遠心ボトルにそれぞれ入れ、150mLの水で時々振盪させながら1時間処理した。この後、2つの試料を遠心し、次いで水をデカントした。100mLの水を回収し、2.6mgのシクロパミンが水性抽出物中にみいだされた。水性抽出物中には微量のシクロポシンしかみられなかったので、シクロポシンのシクロパミンへの変換は完全なようであった。
【0117】
一試料(「中性」と記載)を50mLのMeOHで4回抽出した。各抽出は、試料を溶媒と共に振盪させ、遠心し、上清を#1濾紙で真空濾過することを含んだ。濾紙に保持されているあらゆるバイオマスをボトルに戻し、該工程を繰り返した。混合中性MeOH抽出物は、61mgのシクロパミン(理論値の61%)を含んだ。
【0118】
第2試料(「塩基性」と記載)は、抽出溶媒がMeOHとトリエチルアミンの95:5混合物である以外は上記のごとく処理した。塩基性試料の濾過は中性試料よりゆっくりおこなった。しかし、塩基性抽出物中のシクロパミンの濃度はより高かった。混合塩基性MeOH抽出物は73mgのシクロパミン(理論値の73%)を含んでいた。
(viii)抽出工程の最適化
(a)EtOAc/ヘキサン/NaOHによる液体-液体抽出
【0119】
50%MeOH中約248mgのシクロパミンを含む抽出物を減圧下で蒸発させて大部分のメタノールを除去した。該溶液のpHをNaOHを加えて9.2に調整し、混合物をヘキサン中の50%酢酸エチル(200mL)で抽出した。有機相中に形成されたエマルジョン、および混合有機およびエマルジョン層をフィルター中の無水硫酸ナトリウムに通し、清浄丸底フラスコに入れた。抽出物を蒸発させると154mgのシクロパミン(純度29%、回収率62%)を含む淡黄色固体(0.5g)が得られた。水性層のHPLC分析はシクロパミンが存在しないことを示した。
(b)EtOAc/ヘキサン/炭酸ナトリウムによる液体-液体抽出
【0120】
約169mgのシクロパミンを含む555mLのメタノール/水抽出物を減圧下で濃縮し、275mLのスラリーを得た。スラリーのpHを、10mLの1M炭酸ナトリウム溶液を加えて9.5に調整した。次に、スラリーをヘキサン中の50%酢酸エチル(2x150mL)で抽出し、エマルジョン層を各抽出で有機層から分離した。2回の抽出から得られた混合エマルジョン層を、遠心して明確な有機層を得、これを丸底フラスコ中の残りの有機層と混合した。乾燥剤による乾燥は行わなかった。蒸発させて166mgのシクロパミンを含む0.88gの黄色固体(純度18.8%;98%回収)を得た。水性層のHPLC分析はシクロパミンが存在しないことを示した。
(c)1kg抽出物による液体-液体抽出
【0121】
12.9LのMeOH抽出物を55〜60℃浴を用いて10L回転蒸発フラスコ中、減圧下で濃縮した。1.55Lの黒色懸濁液を残存する黒色タール様物から分液漏斗にデカントし、1 x 1000mLおよび3 x 500mLの1:1 EtOAc/ヘキサンで抽出した(タールは室温でEtOAcに難溶性であった)。4回の抽出により、わずか32mgのシクロパミンが水相に存在した(総量の0.5%に相当)。合計1.8Lの抽出物が得られ、HPLC分析は、3.9gのシクロパミンが抽出物中に純度14.3%(理論値の59%)で存在することを示した。この結果は、残存するシクロパミン(2.7g)が黒色タール中に存在するはずであることを示唆した。したがって、フラスコ中に残存する黒色タールと水性層から液体をデカントした後に残ったさらなるタールをあわせて725mLのMeOHに溶解し、HPLCで分析した。シクロパミンはタール中に20gの固体中2.78g存在した(純度14%に相当)。
【0122】
該黒色タールのEtOAc/ヘキサンによる再抽出:50mLのメタノールタール溶液を水で250mLに希釈し、1:1 EtOAc/ヘキサンで再抽出した。硫酸ナトリウムを加えて水/有機層の分離を改善した。100mLの溶媒で単回抽出し、70%の有機層中のシクロパミンを得た。第2の実験において、100mLのメタノールタール溶液を蒸発させて50mLとし、400mLの水で希釈した。これを1:1 EtOAc/ヘキサンで2 x 100mL抽出すると、シクロパミンは水相にわずか2%であり、有機相に72%であった。残りの26%はタール中に残った。
【0123】
タールのシリカゲルによる乾燥:7.6mgのシクロパミンを含むメタノールタール溶液2gを2gのシリカゲルで乾燥した。0.5gの混合物を空の3mL固相抽出カートリッジに入れ、5mLのEtOAcで抽出した。大部分のシクロパミンはカラムに残った。第2実験は、EtOAc/トリエチルアミン(TEA)を溶離剤に用いて行い、約80%のシクロパミンがシリカから溶出された。第3実験は0.5%TEAを含む35%アセトンを用いて行い、約84%のシクロパミンがシリカから溶出された。
【0124】
タールのセライトによる乾燥:7.6mgのシクロパミンを含む2gのメタノールタール溶液を2gのセライトで乾燥した。TEAを含む35%EtOAcで溶出して純度約49%の生成物を得、13%のシクロパミンはセライトに残った。それぞれ100%EtOAc、ヘキサン中50%アセトン、および100%アセトンで溶出してセライトからシクロパミンをほぼ定量的に回収し、それぞれ純度28%、22%、および20%のシクロパミンが得られた。
【0125】
残りのメタノールタール溶液(525mL、14.2gの固体中シクロパミン2.0g)を蒸発させて約300mLとし、1L凍結乾燥ジャー中で180gのセライト503と混合した。さらに100mLのMeOHを減圧下で除去し、次いで混合物を大乾燥テーブル上におき、100℃のオーブン中で乾燥して一定重量とした。分析により、シクロパミン含有率はバルク粉末(194g)中1.01%であることが示された。
【0126】
17gのバルク粉末を60mLのガラス焼結漏斗中130mLのEtOAcで抽出した。得られた琥珀色の抽出物は、620mgの固体中に158mg(収率93%)のシクロパミン(純度25%)を含んでいた。セライト粉末のMeOH洗浄により586mgの固体中に13mgのシクロパミンを得た。
(ix)シクロパミン含有抽出物の精製
(a)工程1:シリカゲルクロマトグラフィ
【0127】
薄層クロマトグラフィ(TLC)実験は、溶離剤として5%トリエチルアミン(TEA)含有ヘキサン中の50%アセトンを用いてシクロパミンとベラトラミンの良好な分離を示した(シクロパミンのRf=0.4)。
【0128】
シリカゲルクロマトグラフィによる分離は、1.2 x 15cmシリカBiotage 12Mカラムにて5%トリエチルアミン含有ヘキサン中の40%アセトンを用いて行った。カラムをアセトンで洗浄し、次いでヘキサンで平衡化した。第1液体-液体抽出生成物を10mLの酢酸エチルに溶解し、カラムに流した。20mLの分画を回収した。ほとんどのベラトラミンは分画2に溶出し、シクロパミンは分画3および4に溶出した。分画3および4を混合した試料中のシクロパミンのHPLCで測定したアッセイ純度は73.1%であった(正規化収率=99%;出発物質中に理論的に存在する145mgのシクロパミンに基づいた収率=60%)。
【0129】
第2小規模シリカゲルクロマトグラフィ実験は、1.2 x 15cmシリカBiotage 12Mカラムにて5%トリエチルアミン含有ヘキサン中の35%アセトン移動相を用いて行った。カラムをヘキサンで平衡化し、150mgのシクロパミンを含む0.80gの液体-液体抽出生成物を5mLのEtOAcに溶解し、次いでカラムに流した。移動相を5mL/minで流し、20mL分画を回収した。ベラトラミンとシクロパミンはこの実験で良好に分離され、ベラトラミンを含む初期分画中、シクロパミンの損失はわずか5mgであった。シクロパミンプールは、141mgのシクロパミン(収率94%)を含み、純度は76%であり、ベラトラミンが存在する領域はわずか0.5%であった。正規化収率は97%であった。
(b)工程2:トリチュレーション
【0130】
シクロパミンプール(0.5%トリエチルアミン含有ヘキサン中の35%アセトン移動相を用いて行ったクロマトグラフィ実験から得た)の部分蒸発によりシクロパミンを得、凝結させた。
【0131】
プールを蒸発乾燥し、10mLのヘキサン中35%アセトンを加えて1分間ソニケーションした。不溶性生成物をガラス焼結フィルター上に回収し、次いで乾燥してアッセイ純度95%、クロマトグラフィ純度93%の白色固体(110mg)を得た。22.6mgのシクロパミンが濾液中に存在した(収率84%)。
(c)工程3:結晶化
【0132】
トリチュレーション生成物を用いた小規模実験は、シクロパミンが加熱エタノール、イソプロパノール、およびトルエンから結晶し、室温でヘキサンを加えることにより室温でTHFから強制的に再結晶させることができることを示した。エタノールおよびトルエンの両方を用い、水の共沸除去により水和反応の水を除去し、無水シクロパミンを得ることもできる。
【0133】
100mgのトリチュレーション生成物を5mLの加熱トルエンに溶解した。沸騰させて容量を約3mLに減少させ、次いで該溶液を一夜4℃に冷却した。結晶を小ガラス焼結フィルター上に回収し、必要最少量の冷トルエンおよび5mLの室温のヘキサンで洗浄した。結晶はアッセイ純度97.7%、クロマトグラフィ純度96.4%であった。
E. 製造プロトコール
【0134】
約200kgのバイオマスを1000Lの反応容器/抽出用タンクに加え、水約45L/18kgバイオマスバッグを加えた。混合物を撹拌せずに室温に2.5時間おいた(ローディングが完結した時に開始)。この時点で水を濾過して容器から除去した。
【0135】
MeOH 8L/kgバイオマスをバイオマスを含む容器に加え、混合物を最低4時間撹拌しながら40〜50℃に維持し、次いでMeOH抽出物を回収した。この抽出工程を2回繰り返して完全な収率を達成した。
【0136】
メタノール抽出物を固体が沈殿し始めるまで濃縮した。該固体を必要最少容量のMeOHに再溶解し、次いでセライトの小プラグで濾過してあらゆる不溶性物質を除去した。得られたMeOH溶液をセライトと混合し、次いで乾燥して粉末にした。豊富化シクロパミンを含む抽出物を、40〜50℃に加熱したEtOAcで該粉末を徹底的に溶出して得、EtOAc溶出液を濃縮して粗物質を得た。
【0137】
粗物質を、ヘプタン中35%アセトン(0.5%トリエチルアミンを添加物として含む)を溶離剤に用いるシリカゲルクロマトグラフィにより精製した。この精製工程から得たプール分画はHPLCで測定すると純度70〜80%のシクロパミンをもたらした。シクロパミン物質の純度は、EtOAcでトリチュレーションすると95%以上に増加した。
(等価物)
【0138】
当業者は、日常的実験により本明細書に記載の本発明の具体的態様の多くの等価物を認識し、または解明することができるであろう。そのような等価物は以下の特許請求の範囲に含まれることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含むVeratrum(シュロソウ)植物物質由来の脱グリコシル化Veratrumアルカロイドの単離方法:
(i)グリコシル化Veratrumアルカロイドを含むVeratrum植物物質を得、
(ii)該Veratrum植物物質と水性溶液を接触させ、
(iii)該Veratrum植物物質を溶媒で抽出して脱グリコシル化Veratrumアルカロイドを含む抽出物を得る。
【請求項2】
該水性溶液のpHが約8またはそれ以下である請求項1記載の方法。
【請求項3】
該水性溶液のpHが約4〜約8である請求項1記載の方法。
【請求項4】
該水性溶液が緩衝されている請求項1記載の方法。
【請求項5】
該水性溶液が中性である請求項1記載の方法。
【請求項6】
該水性溶液が酸性である請求項1記載の方法。
【請求項7】
該水性溶液が約25%以上の水を含む請求項1記載の方法。
【請求項8】
該水性溶液が100%水である請求項1記載の方法。
【請求項9】
該水性溶液の温度が約100℃以下である請求項1記載の方法。
【請求項10】
グリコシル化Veratrumアルカロイドがシクロポシンであり、脱グリコシル化Veratrumアルカロイドがシクロパミンである請求項1記載の方法。
【請求項11】
グリコシル化Veratrumアルカロイドがベラトロシンであり、脱グリコシル化Veratrumアルカロイドがベラトラミンである請求項1記載の方法。
【請求項12】
接触工程が、少なくとも約50%のグリコシル化Veratrumアルカロイドを脱グリコシル化Veratrumアルカロイドに変換するのに十分な時間、該植物物質を水性溶液と接触させることを含む請求項1記載の方法。
【請求項13】
該接触工程中に、該植物物質中に存在する1またはそれ以上の内因性酵素によりグリコシル化Veratrumアルカロイドを脱グリコシル化Veratrumアルカロイドに変換する請求項1記載の方法。
【請求項14】
接触工程が、該Veratrum植物物質を水性溶液と少なくとも約10分間接触させることを含む請求項1記載の方法。
【請求項15】
溶媒が1またはそれ以上の有機溶媒を含む請求項1記載の方法。
【請求項16】
該有機溶媒が、有機アルコール、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、炭化水素、芳香族化合物、およびヘテロ芳香族化合物、およびそれらの2またはそれ以上の混合物からなる群から選ばれる請求項15記載の方法。
【請求項17】
該有機溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2-ブタノール、n-ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、イソプロピルアセテート、ジクロロメタン、クロロホルム、アニソール、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、およびジエチルエーテル、およびそれらの2またはそれ以上の混合物からなる群から選ばれる請求項15記載の方法。
【請求項18】
該有機溶媒がメタノールである請求項17記載の方法。
【請求項19】
該溶媒が、1またはそれ以上の有機溶媒と水の混合物を含む請求項1記載の方法。
【請求項20】
該溶媒が、メタノールと水の混合物を含む請求項19記載の方法。
【請求項21】
該溶媒が、1またはそれ以上の有機溶媒と塩基の混合物を含む請求項1記載の方法。
【請求項22】
該塩基が水性塩基溶液である請求項21記載の方法。
【請求項23】
該水性塩基溶液が、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、酒石酸カリウムナトリウム、または水酸化リチウムの水性溶液を含む請求項22記載の方法。
【請求項24】
該水性塩基溶液が水酸化ナトリウムまたは炭酸ナトリウムの水性溶液を含む請求項22記載の方法。
【請求項25】
該有機溶媒がメタノールである請求項24記載の方法。
【請求項26】
該塩基が有機塩基である請求項21記載の方法。
【請求項27】
該有機塩基が、トリエチルアミン、ジエチルイソプロピルアミン、およびピリジンから選ばれる請求項25記載の方法。
【請求項28】
該有機溶媒がメタノールである請求項27記載の方法。
【請求項29】
グリコシル化Veratrumアルカロイドを緩衝溶液中の酵素と接触させて脱グリコシル化Veratrumアルカロイドを得ることを含む脱グリコシル化方法。
【請求項30】
グリコシル化Veratrumアルカロイドがシクロポシンであり、脱グリコシル化Veratrumアルカロイドがシクロパミンである請求項29記載の方法。
【請求項31】
酵素が真核生物由来酵素である請求項29記載の方法。
【請求項32】
酵素がβ-グルクロニダーゼ酵素である請求項29記載の方法。
【請求項33】
β-グルクロニダーゼ酵素がHelix pomatiaである請求項32記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【公表番号】特表2011−526921(P2011−526921A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516844(P2011−516844)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/049372
【国際公開番号】WO2010/002970
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(506418758)インフィニティ・ディスカバリー・インコーポレイテッド (13)
【氏名又は名称原語表記】INFINITY DISCOVERY, INC.
【Fターム(参考)】