説明

シクロブタンアミド化合物、その製造方法及びキレート剤

【課題】優れたキレート能力を発揮することができるシクロブタンアミド化合物、その製造方法及びキレート剤を提供する。
【解決手段】シクロブタンアミド化合物は、下記の化学式(1)で表されるものであり、キレート剤として好適に利用される。


(式中、R、R、R及びRは水素原子又はメチル基を表し、Xはアルカリ金属又は水素原子を表す。) 係るシクロブタンアミド化合物は、シクロブタン無水化合物1モル当たり、ビス(カルボキシメチル)アミン化合物誘導体1.8〜2.5モルを溶媒中で反応させることにより製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れたキレート能力を示すシクロブタンアミド化合物、その製造方法及びキレート剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キレート剤として工業的に最も使用されている化合物は、エチレンジアミン−N,N,N’,N’−テトラアセチックアシッド(エチレンジアミン四酢酸、以下EDTAと略称する)であり、配位性が高く、どの金属又は金属イオン(以下、金属等という)に対しても高い捕捉能(キレート能力)を有している。
【0003】
しかしながら、EDTAは生分解性に乏しい上に、工場や上下水道関連施設で使用される排水処理設備において重要な機能である、活性汚泥中の微生物が有する有機物分解作用を抑制するという欠点が見られる。そのため、キレート剤としてN,N−ビス(カルボキシメチル)―α―アラニンナトリウム塩が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。この化合物は、キレート能力を示すと同時に、生分解性をも示すとされている。
【特許文献1】特開昭55−157695号公報(第4頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載のN,N−ビス(カルボキシメチル)―α―アラニンナトリウム塩は、カルボキシル基について3官能であり、金属等に対する配位性が弱い。そのため、金属等に対するキレート能力が低く、実用性が十分ではないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明の目的とするところは、優れたキレート能力を発揮することができるシクロブタンアミド化合物、その製造方法及びキレート剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における第1の発明のシクロブタンアミド化合物は、下記の化学式(1)で表されることを特徴とするものである。
【0007】
【化1】

(式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、Xはアルカリ金属又は水素原子を表し、同一又は異なっていてもよい。)
第2の発明のシクロブタンアミド化合物の製造方法は、下記の化学式(2)で表されるシクロブタン無水化合物1モル当たり、ビス(カルボキシメチル)アミン化合物誘導体1.8〜2.5モルを溶媒中で反応させることを特徴とするものである。
【0008】
【化2】

(式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表す。)
第3の発明のキレート剤は、第1の発明のシクロブタンアミド化合物からなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
第1の発明のシクロブタンアミド化合物は前記化学式(1)で表され、6個のカルボキシル基又はそのアルカリ金属塩を有している。このため、シクロブタンアミド化合物は金属等に対する配位性が高く、優れたキレート能力を発揮することができる。
【0010】
第2の発明のシクロブタンアミド化合物の製造方法は、前記の化学式(2)で表されるシクロブタン無水化合物1モル当たり、ビス(カルボキシメチル)アミン化合物誘導体1.8〜2.5モルを溶媒中で反応させるものである。この反応は定量的に進むため、第1の発明のシクロブタンアミド化合物を容易に製造することができるとともに、反応収率が高い利点がある。
【0011】
第3の発明のキレート剤は、第1の発明のシクロブタンアミド化合物からなり、金属等に対する優れたキレート能力を有している。従って、このキレート剤を種々の工業的用途、例えば軟水化水処理剤、石鹸・洗剤、紙パルプ処理剤、繊維加工助剤、写真増光剤、金属表面処理剤、ラテックス処理剤、栄養微量元素供給剤(農業水産業分野で)、皮革処理剤、染色助剤等に好適に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の最良と思われる実施形態について詳細に説明する。
本実施形態のシクロブタンアミド化合物は、下記の化学式(1)で表されるものである。
【0013】
【化3】

(式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、Xはアルカリ金属又は水素原子を表し、同一又は異なっていてもよい。)
なお、化学式(1)において、左側のビス(カルボキシメチル)アミン化合物が付加されている部位と、カルボキシル基よりなる部位とは上下逆の炭素(Rが結合されている炭素又はRが結合されている炭素)に結合されていてもよい。それら2種の化合物は通常混合物として得られ、その混合割合はほぼ1:1である。
【0014】
次に、前記化学式(1)で表されるシクロブタンアミド化合物の製造方法について説明する。
係るシクロブタンアミド化合物は、類似の化合物を製造する方法によって製造されるが、下記の化学式(2)で表されるシクロブタン無水化合物1モル当たり、ビス(カルボキシメチル)アミン化合物誘導体1.8〜2.5モルを溶媒中で反応させることによって製造されることが好ましい。
【0015】
【化4】

(式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表す。)
前記シクロブタン無水化合物として具体的には、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物、シクロブタン−1,3−ジメチル−1,2,3,4−テトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物、シクロブタン−1,4−ジメチル−1,2,3,4−テトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物等が挙げられる。これらの中で工業生産がなされ、調達が容易であり、無水マレイン酸の光環化二量化反応で得られるシクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物が好ましい。
【0016】
前記ビス(カルボキシメチル)アミン化合物誘導体は、ビス(カルボキシメチル)アミン化合物とその誘導体を包含している。具体的にはビス(カルボキシメチル)アミン、ビス(カルボキシメチル)アミン二ナトリウム塩、ビス(カルボキシメチル)アミン二カリウム塩、ビス(メトキシカルボニルメチル)アミン、ビス(エトキシカルボニルメチル)アミン、ビス(ブトキシカルボニルメチル)アミン等が挙げられる。
【0017】
これらの中で調達が容易であるビス(カルボキシメチル)アミン、ビス(カルボキシメチル)アミン二ナトリウム塩、ビス(エトキシカルボニルメチル)アミンが好ましい。なお、ビス(アルコキシカルボニルメチル)アミンのエステル体を用いた場合には該シクロブタン無水化合物との縮合反応で得られるエステル生成物を、アルカリ金属水酸物の水溶液等で加水分解処理することが好ましい。
【0018】
前記シクロブタン無水化合物と、ビス(カルボキシメチル)アミン化合物誘導体との使用割合は、シクロブタン無水化合物1モル当たりビス(カルボキシメチル)アミン化合物誘導体を1.8〜2.5モルであり、好ましくは1.9〜2.2モルである。このモル比が1.8モル未満の場合には、未反応のシクロブタン無水化合物の水付加体が過剰に残存するためにキレート能力が低下する。一方、2.5モルを越える場合には、同様にビス(カルボキシメチル)アミン化合物誘導体が残存することとなり、キレート能力が低下する。
【0019】
前記溶媒としては、水、アセトニトリル、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォキシド、ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、トルエン等が挙げられる。これらの溶媒の中で水、アセトニトリル及びメタノールが好ましい。
【0020】
反応温度は通常−20〜150℃、好ましくは−10〜100℃であることが収率向上のために良い。反応温度が−20℃未満の場合には、縮合反応速度が遅くなり、生産効率が低くなる。一方、150℃を越える場合には、副生成物の生成量が多くなり、収率が低下し易くなる。
【0021】
前記多価カルボキシル基を有するシクロブタンアミド化合物としては、具体的には1,2−ビス(ビス(カルボキシメチル)アミノカルボニル)−3,4−ジカルボキシシクロブタン、1,2−ビス(ビス(カルボキシメチル)アミノカルボニル)−3,4−ジカルボキシシクロブタン六ナトリウム塩、1,2−ビス(ビス(カルボキシメチル)アミノカルボニル)−3,4−ジカルボキシシクロブタン六カリウム塩、1,3−ビス(ビス(カルボキシメチル)アミノカルボニル)−2,4−ジカルボキシシクロブタン、1,3−ビス(ビス(カルボキシメチル)アミノカルボニル)−2,4−ジカルボキシシクロブタン六ナトリウム塩、1,3−ビス(ビス(カルボキシメチル)アミノカルボニル)−2,4−ジカルボキシシクロブタン六カリウム塩、1,2−ビス(ビス(カルボキシメチル)アミノカルボニル)−3,4−ジカルボキシ−1,2−ジメチルシクロブタン、1,2−ビス(ビス(カルボキシメチル)アミノカルボニル)−3,4−ジカルボキシ−1,2−ジメチルシクロブタン六ナトリウム塩、1,2−ビス(ビス(カルボキシメチル)アミノカルボニル)−3,4−ジカルボキシ−1,2−ジメチルシクロブタン六カリウム塩等が挙げられる。
【0022】
これらの中で反応原料調達が容易である1,2−ビス(ビス(カルボキシメチル)アミノカルボニル)−3,4−ジカルボキシシクロブタン六ナトリウム塩、1,3−ビス(ビス(カルボキシメチル)アミノカルボニル)−2,4−ジカルボキシシクロブタン六ナトリウム塩、1,2−ビス(ビス(カルボキシメチル)アミノカルボニル)−3,4−ジカルボキシシクロブタン、1,3−ビス(ビス(カルボキシメチル)アミノカルボニル)−2,4−ジカルボキシシクロブタンが好ましい。
【0023】
次に、キレート剤は、前記化学式(1)で表されるシクロブタンアミド化合物によって構成されている。このキレート剤は、6個のカルボキシル基又はそのアルカリ金属塩が配位子(多座配位子)となり、金属等に配位結合してキレート化合物を形成するものである。
【0024】
以上の実施形態によって発揮される効果について、以下にまとめて記載する。
・ 本実施形態のシクロブタンアミド化合物は前記化学式(1)で表され、母核がシクロブタン構造であり、6個のカルボキシル基又はそのアルカリ金属塩を有している。このため、シクロブタンアミド化合物は金属等に対する配位性が良く、優れたキレート能力を発揮することができる。この効果は、化学式(1)におけるXが全てアルカリ金属である場合に一層優れている。
【0025】
・ 係るシクロブタンアミド化合物は、前述の化学式(2)で表されるシクロブタン無水化合物1モル当たり、ビス(カルボキシメチル)アミン化合物誘導体1.8〜2.5モルを溶媒中で反応させることで製造される。この反応は定量的に進むため、シクロブタンアミド化合物を容易に製造することができるとともに、反応収率が高い。
【0026】
・ 従って、上記のシクロブタンアミド化合物をキレート剤として好適に使用することができる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
ビス(エトキシカルボニルメチル)アミン96.48g(509.9ミリモル)のアセトニトリル200ml溶液に、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物50.00g(255.0ミリモル)を加え、0℃で1時間攪拌反応させた後、さらに60℃で7時間反応させた。続いて、反応液中から溶媒を除去し、アセトニトリル20mlで洗浄した後、脱溶媒及び乾燥することによりエステル体142.6g(248.2ミリモル)を得た。
【0028】
得られたエステル体の構造について、H−核磁気共鳴スペクトル、13C−核磁気共鳴スペクトル及び赤外線吸収スペクトルにより確認した。その結果を下記に示す。
H−核磁気共鳴スペクトル(CDCl、δppm、括弧内の数値は積分水素数):1.25−1.37(12)、3.82−3.87(1)、3.98(2)、4.01−4.02(1)、4.06−4.07(1)、4.11−4.38(15)、7.44−8.23(2)。
13C−核磁気共鳴スペクトル(DO、δppm):14.42、14.47、39.05、39.43、40.67、41.22、48.87、48.98、50.73、50.79、61.81、61.86、62.48、62.66、169.13、169.16、169.54、169.73、171.77、173.44、173.87。
【0029】
赤外線吸収スペクトル(CHCl、cm−1):3020、2985、1745、1657、1458、1408、1375、1352、1300。
それらの分析結果から、エステル体が下記化学式(3)の構造を有することが判明した。
【0030】
【化5】

次に、該エステル体140.0g(243.7ミリモル)に水酸化ナトリウム(58.48g、1462ミリモル)の水400g溶液を加えた後、0℃にて1時間攪拌反応させた。さらに、室温にて22時間攪拌反応した後、脱水乾燥することによりシクロブタンアミド化合物144.1g(242.5ミリモル)を得た。得られたシクロブタンアミド化合物の構造を確認するために、H−核磁気共鳴スペクトル、13C−核磁気共鳴スペクトル及び赤外線吸収スペクトルの分析を行った。その結果を下記に示す。
【0031】
H−核磁気共鳴スペクトル(DO、δppm、括弧内の数値は積分水素数):3.23−3.25(1)、3.31−3.35(1)、3.59−3.64(1)、3.74−3.76(1)、3.78−3.82(3)、3.85−3.89(5)。
【0032】
13C−核磁気共鳴スペクトル(DO、δppm):40.22、41.20、43.51、46.31、51.29、51.38、52.45、52.63、174.37、174.55、176.52、176.65、177.05、177.15、179.82、179.89。
【0033】
赤外線吸収スペクトル(KBr、cm−1):1606、1479、1398、1317、1227。
これらの分析結果から、シクロブタンアミド化合物は下記化学式(4)で表される化合物であることが判明した。但し、化学式(4)の化合物は、左側のビス(カルボキシメチル)アミン化合物が付加されている部位と、カルボキシル基よりなる部位とが上下逆の炭素に結合された化合物との混合物であり、その混合割合はほぼ1:1であった。
【0034】
【化6】

次に、カルシウムイオンに対するキレート能力を調べる試験を実施した。濃度3.30ミリモル/リットルの塩化カルシウム水溶液200ミリリットルにシクロブタンアミド化合物250.0mg(0.4207ミリモル)とイオン強度調整液(塩化カリウム4モル/リットル水溶液、オリオン社製932011)4ミリリットルを加えた。その溶液について測定(分析機器:イオンメーターがオリオン社製モデル720A、カルシウムイオン電極:オリオン社製9720BN、測定温度:25℃)した結果、該シクロブタンアミドにキレート化されなかった遊離カルシウムイオン濃度の測定値は1.13ミリモル/リットルであった。
【0035】
カルシウムイオンの捕捉率を式(100×((評価サンプル添加前のカルシウムイオンモル数)−(評価サンプル添加後の遊離カルシウムイオンモル数))/評価サンプルのモル数)により求めると約100%であった。
(実施例2)
実施例1のキレート剤(カルボキシル基の六ナトリウム塩)50.00g(84.14ミリモル)の100ml水溶液に4重量%塩酸水溶液480gを加えて0℃にて1時間攪拌した。その後に反応液の脱塩処理と脱溶媒操作をして反応生成物38.87g(84.08ミリモル)を得た。得られた化合物の構造を確認するために、H−核磁気共鳴スペクトル、13C−核磁気共鳴スペクトル及び赤外線吸収スペクトルにより分析を行った。それらの結果を下記に示す。
【0036】
H−核磁気共鳴スペクトル(DO、δppm、括弧内の数値は積分水素数):3.64−3.69(1)、3.78−3.80(1)、3.87−3.89(1)、3.97−4.01(2)、4.04−4.08(2)、4.12−4.18(3)、4.23−4.32(2)、4.70(6+HO)。
【0037】
13C−核磁気共鳴スペクトル(DO、δppm):39.24、39.50、40.82、41.12、50.80、51.95、173.35、173.48、173.57、173.72、173.89、174.07、174.62、174.80。
【0038】
赤外線吸収スペクトル(KBr、cm−1):2999、1730、1643、1471、1406。
それらの分析結果から、前記の化合物が下記化学式(5)で表される化合物であることが判明した。
【0039】
【化7】

(実施例3)
ビス(カルボキシメチル)アミン二ナトリウム塩・一水和物99.49g(510.0ミリモル)の200ml水溶液に1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物50.00g(255.0ミリモル)を加え、室温で24時間攪拌して反応させた。次に、水酸化ナトリウムを20.40g(510.0ミリモル)を加え0℃で30分間攪拌反応させた後、さらに室温にて1時間攪拌反応させた。この反応液から溶媒を除去することにより反応生成物151.1g(254.3ミリモル)を得た。
【0040】
この反応生成物は、H−核磁気共鳴スペクトル、13C−核磁気共鳴スペクトル及び赤外線吸収スペクトルの分析結果から、前記実施例1における化学式(4)と同じ構造を有するシクロブタンアミド化合物であった。
(比較例1)
市販のEDTA四ナトリウム塩のキレート能力を実施例1と同様にして評価した。EDTA水溶液の調製は、EDTA・四ナトリウム塩・四水和物190.3ミリグラム(0.4208ミリモル)とイオン強度調整液(塩化カリウム4モル/リットル水溶液、オリオン社製932011)4ミリリットルを濃度3.30ミリモル/リットルの塩化カルシウム水溶液200ミリリットルに加えて行った。EDTA四ナトリウム塩の測定値は1.16ミリモル/リットルであり、EDTA四ナトリウム塩のカルシウムイオンの捕捉率は約100%となった。
(比較例2)
N,N−ビス(カルボキシメチル)―α―アラニン三ナトリウム塩のキレート能力を実施例1と同様に評価した。N,N−ビス(カルボキシメチル)―α―アラニン三ナトリウム塩114.1ミリグラム(0.4209ミリモル)とイオン強度調整液(塩化カリウム4モル/リットル水溶液、オリオン社製932011)4ミリリットルを濃度3.30ミリモル/リットルの塩化カルシウム水溶液200ミリリットルに加えて行った。N,N−ビス(カルボキシメチル)―α―アラニン三ナトリウム塩の測定値は2.14ミリモル/リットルであり、N,N−ビス(カルボキシメチル)―α―アラニン三ナトリウム塩の捕捉率は53%となった。
【0041】
以上のように、キレート能力に関する試験結果から、実施例1のシクロブタンアミド化合物はキレート能力がEDTAとは同等であるが、N,N−ビス(カルボキシメチル)―α―アラニン三ナトリウム塩に比べて約2倍高く、キレート能力に優れていることが明らかとなった。
【0042】
なお、本実施形態は、次のように変更して実施することも可能である。
・ 本発明のシクロブタンアミド化合物を、カルボキシル基(又はその塩)が多官能であることに基づき反応原料等として利用することもできる。
【0043】
さらに、前記実施形態より把握される技術的思想について以下に記載する。
・ 前記化学式(1)におけるXは、全てアルカリ金属であることを特徴とする請求項1に記載のシクロブタンアミド化合物。このように構成した場合、請求項1に係る発明の効果を向上させることができる。
【0044】
・ 前記反応によって得られる反応生成物をアルカリ金属の水酸化物の水溶液と反応させることを特徴とする請求項2に記載のシクロブタンアミド化合物の製造方法。この製造方法によれば、請求項2に係る発明の効果に加え、シクロブタンアミド化合物のカルボキシル基をアルカリ金属塩に容易に置換することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式(1)で表されることを特徴とするシクロブタンアミド化合物。
【化1】

(式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、Xはアルカリ金属又は水素原子を表し、同一又は異なっていてもよい。)
【請求項2】
下記の化学式(2)で表されるシクロブタン無水化合物1モル当たり、ビス(カルボキシメチル)アミン化合物誘導体1.8〜2.5モルを溶媒中で反応させることを特徴とする請求項1に記載のシクロブタンアミド化合物の製造方法。
【化2】

(式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表す。)
【請求項3】
請求項1に記載のシクロブタンアミド化合物からなることを特徴とするキレート剤。

【公開番号】特開2007−84516(P2007−84516A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−278491(P2005−278491)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000004341)日本油脂株式会社 (896)
【Fターム(参考)】