説明

シクロブタン酸二無水物化合物及びその製造法

【課題】 紫外光照射に対して極めて高感度を有するポリイミドの原料モノマーの一つであるテトラカルボン酸二無水物として、立体構造上歪み度合いの高い1,2−ジフェニル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物化合物(DPCBDA化合物と略称する。)及びその製造方法の提供。
【解決手段】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
高分子材料用のモノマーとなり得るシクロブタン酸二無水物化合物及びその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
シクロブタン環骨格を含有するポリイミドは、ある特定波長域の紫外光に対して感度を有することが知られており、レジスト材料等への応用が検討されている。近年、シクロブタン環を含有するポリイミドの光感度特性を利用し、ポジ型の感光性ポリイミド樹脂としての適用例がある。
この様な感度特性を有する構造的要因は、シクロブタン環の構造的歪みにあると推察される。更に光照射に対して高感度なポリイミドを得るためには、より構造的に歪んだシクロブタンテトラカルボン酸およびその二無水物誘導体の入手が必要不可欠となる。
我々は、ポリマー構造の更なる構造的歪みを誘起するため、シクロブタン環に芳香族置換基を導入することを考えた。置換型シクロブタン環構造のうち、1,3−位へ芳香族基を導入したものではなく、なかでもより構造的に歪むと推定される1,2−位へ芳香族基を導入したポリイミドが重要であると考えた。
よって、そのモノマーである1,2−ジフェニル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物化合物の合成、単離が必要となった。
【0003】
シクロブタン環の1,3−位へ芳香族基を導入した酸二無水物である1,3−ジフェニル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物化合物は、公知化合物である。(例えば、特許文献1)
特許文献1では、フェニル無水マレイン酸を酢酸エチルを溶媒として、高圧水銀灯照射により得られた結晶を酢酸エチルで再結晶し、収率62%で1,3−ジフェニル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物化合物を得ている。この結晶の融点は、226.4℃と記載されている。また、単結晶X線による絶対構造決定はなされていない。
【0004】
【特許文献1】特許第3424491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、紫外光照射に対して極めて高感度を有するポリイミドの原料モノマーの一つであるテトラカルボン酸二無水物として、立体構造上歪み度合いの高い1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物(CBDAと略称する。)の1位と2位の炭素に置換フェニル基が置換した1,2−ジフェニル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物化合物(DPCBDA化合物と略称する。)及びその製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、簡便にDPCBDA化合物を製造できる方法を見い出した。
【0007】
即ち、本発明は、
(1) 式[1]
【化1】


(式中、Rは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、フェニル基又はシアノ基を表す。)
で表される1,2−ジフェニル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物化合物。
(2) 式[2]
【化2】


で表される(1)に記載の1,2−ジフェニル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物化合物。
(3) 式[3]
【化3】


(式中、Rは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、フェニル基又はシアノ基を表す。)
で表されるフェニル無水マレイン酸化合物の光二量化反応に於いて、反応溶媒が炭素数2〜10の脂肪酸エステル化合物及び炭素数2〜10のハロゲン炭化水素化合物を用いて、波長が300〜600nmの光源を用いて行うことを特徴とする式[1]
【化4】


(式中、Rは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、フェニル基又はシアノ基を表す。)
で表される1,2−ジフェニル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物化合物の製造法。
(4)光反応後、反応液を濃縮し、得られた粗物結晶に芳香族炭化水素を添加し40〜100℃で攪拌後、0〜30℃まで冷却し、析出した結晶を濾過した後、この結晶に脂肪酸エステル化合物と脂肪族炭化水素化合物の混合物を加えて50〜120℃で攪拌してから0〜30℃まで冷却し、続いて濾過後乾燥することを特徴とする(3)に記載の1,2−ジフェニル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物化合物の製造法。
(5)波長が300〜600nmの光源を高圧水銀灯を用いて、光源冷却管がパイレックス(登録商標)ガラス製である(3)に記載の1,2−ジフェニル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物化合物の製造法。
(6)波長300〜600nmの光源を得るための光照射器が内部照射型であることを特徴とする(3)に記載の1,2−ジフェニル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物化合物の製造法。
(7)反応温度が−10〜50℃である(3)に記載の1,2−ジフェニル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物化合物の製造法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の立体構造上歪み度合いの高いDPCBDA化合物は、紫外光照射に対して極めて高感度を有するポリイミドの原料モノマーとして有用である。
また、本発明の製造法は、DPCBDA化合物の実用的製造法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係るDPCBDA化合物は、上記式[1]及び[2]で表されることを特徴とするものである。
式[1]のRの具体例としては、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及び沃素原子等のハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基、オクチル基及びデシル基等の炭素数1〜10のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、オクチルオキシ基及びデシルオキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、ヘプタフルオロプロポキシ基、ペルフルオロオクチルオキシ基及びペルフルオロデシルオキシ基等の炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びシクロオクチル基等の炭素数3〜8のシクロアルキル基、フェニル基又はシアノ基等が挙げられる。
【0010】
本発明のDPCBDA化合物の製造法は、下記の反応式で表される。
【化5】


(式中、Rは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、フェニル基又はシアノ基を表す。)
出発原料の置換フェニル無水マレイン酸の置換基としては、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及び沃素原子等のハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基、オクチル基及びデシル基等の炭素数1〜10のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、オクチルオキシ基及びデシルオキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、ヘプタフルオロプロポキシ基、ペルフルオロオクチルオキシ基及びペルフルオロデシルオキシ基等の炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びシクロオクチル基等の炭素数3〜8のシクロアルキル基、フェニル基又はシアノ基等が挙げられる。
【0011】
本反応は、溶媒を使用することが好ましい。例えば、炭素数2〜10の脂肪族エステル類が好ましく、その具体例を挙げると、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸n−プロピル、ギ酸i−プロピル、ギ酸i−ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸i−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−プロピル、プロピオン酸i−プロピル、エチレングリコールジホルメート、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジプロピオネート等を列記することができる。
なお、nはノルマルを、iはイソをそれぞれ表す。
これらの中でより好ましい溶媒は、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸i−プロピル、酢酸i−ブチル、エチレングリコールジホルメート、エチレングリコールジアセテート等であり、最も好ましい溶媒は、酢酸エチルである。
溶媒の使用量は、フェニル無水マレイン酸化合物に対し3〜50質量倍、より好ましくは5〜20質量倍である。
【0012】
本反応では、光の波長が重要である。低圧水銀灯(内部照射)、高圧水銀灯(内部照射)、超高圧水銀灯(外部照射)、キセノンランプ(外部照射)の中で高圧水銀灯が、特異的に高収率でDPCBDA化合物を与える。
内部照射とは、反応容器の内部に上記発光灯を設けて照射する方法であり、外部照射とは、反応容器の外部に上記発光灯を設けて照射する方法である。
更に、光源冷却管を石英ガラスからパイレックス(登録商標)ガラスに変えることにより、光源冷却管への着色ポリマー付着が減少し、DPCBDA化合物の収率改善が見られる。
光源冷却管とは、内部照射光反応装置に於いて、光源の発熱を除去するための光源と反応液間のジャケットである。
即ち、高圧水銀灯の300nm未満の領域の波長が、ポリマー生成や置換フェニル無水マレイン酸化合物への逆反応に関与し、300〜600nmの波長が好ましい。更に、光効率上、内部照射型光源が、DPCBDA化合物生成に好ましい結果を与える。
反応温度は、高温になると重合物が副生し、又低温になるとフェニル無水マレイン酸化合物の溶解度が低下し生産効率が減少するところから、−20〜80℃で行うことが好ましい。更に好ましくは−10〜50℃であり、特に0〜20℃間では、副生物の生成が大幅に抑制され、高い選択率及び収率でDPCBDA化合物を与える。
反応時間は、1〜50時間で行うことができ、通常5〜20時間で行うのが実用的である。
反応は、バッチ式又は流通式で行うことが出来、又常圧でも加圧でも行うことができる。
【0013】
本発明では、DPCBDA化合物の他に副生成物が生成するので、反応後の生成したDPCBDA化合物の単離精製法が重要である。
光反応後、反応液を濃縮し、得られた粗物結晶に芳香族炭化水素を添加し40〜100℃で10〜120分間攪拌する。好ましくは、55〜80℃で20〜40分間攪拌する。
その後、0〜30℃まで冷却し、結晶を析出させる。好ましくは、20〜25℃まで冷却する。
次に、析出した結晶をろ過する。ろ過後、好ましくは、脂肪酸エステル化合物と脂肪族炭化水素化合物の混合物で洗浄した後乾燥させる。
次に、好ましくは、結晶の脱色のため活性炭処理を行う。詳述すると、得られた結晶に脂肪族エステル化合物と活性炭を加え、40〜150℃で10〜180分間攪拌する。好ましくは、50〜100℃で20〜90分間攪拌する。その後、0〜30℃まで冷却する。好ましくは、5〜30℃まで冷却する。活性炭をろ過し、溶媒留去、乾固する。
次に、この結晶に脂肪酸エステル化合物と脂肪族炭化水素化合物の混合物を加えて50〜120℃で10〜120分間攪拌する。好ましくは、50〜100℃で30〜60分間攪拌する。
その後、0〜30℃まで冷却し、結晶を析出させる。好ましくは、5〜30℃まで冷却する。
次に、析出した結晶をろ過する。ろ過後、好ましくは、脂肪酸エステル化合物と脂肪族炭化水素化合物の混合物で洗浄した後乾燥させる。
最後に、結晶を乾燥させる。
【0014】
以下、無置換のフェニル無水マレイン酸を原料に光反応させた場合の後処理について述べる。反応の進行は、反応液の一部をサンプリングし、ジアゾメタンでメチル化して液体クロマトグラフィー(HPLC)のRI検出法で測定し、原料が消失するまで反応を行う。ここで光照射と攪拌を停止し、反応液を濃縮すると粗物結晶1が得られる。この粗物結晶1をジアゾメタンでメチル化してHPLCで測定すると、原料が消失し、ほぼ同面積比の3つの新たなピークが出現する。
次に、この粗物にトルエンを添加し60℃で30分攪拌後、25℃まで冷却した。
続いて濾過し、酢酸エチル/n−ヘプタン=3/2で洗浄した後減圧乾燥することにより、一つのピークが消失し、メインピークが約65%の結晶2(得率約50%)が得られる。
この結晶2に酢酸エチル(40質量倍)と活性炭(10質量%)を加え、40〜70℃で10〜120分間攪拌してから、0〜30℃まで冷却し、メンブランフィルターでろ過し、溶媒留去、乾固することにより、結晶3が得られる。
更に、結晶3に約20質量倍の酢酸エチルと同重量のn−ヘプタンを加えて60℃で1時間攪拌してから25℃まで冷却する。続いて濾過し、酢酸エチル/n−ヘプタン=3/2で洗浄した後減圧乾燥することにより、メインピークのみの白色結晶4(融点148℃;収率約20%)が得られる。
本反応は、連続法で行うこともできる。
【実施例】
【0015】
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
尚、実施例で用いた分析法は以下の通りである。ガスクロマトグラフィーでの分析条件は、以下の通りである。
[1] [H NMR]
機種: ECP500 (JEOL), 測定溶媒: DMSO−d
[2] [13C NMR]
機種: ECP500 (JEOL), 測定溶媒: DMSO−d
[3][融点(mp.)]
測定機器: 自動融点測定装置、FP62 (METTLER TOLEDO)
[4] [液体クロマトグラフィー (LC)]
機種: Shimadzu LC−10A,Column:Inertsil ODS−3(5μm,250mm×4.6mmφ),カラム温度:40℃,検出器:RI,溶離液:HO/CHCN=4/6,流速:1ml/min.
[5] [X線結晶解析 ]
装置: DIP2030K(マックサイエンス製)
X線:MoKα(45kV, 200mA)
測定温度:室温
結晶:板状結晶(0.2×0.1×0.1mm)
[6] [IR]
装置:FTS−40(BIO−RAD)
測定法:KBr錠剤法
【0016】
(実施例1)
【化6】

【0017】
内容積300ml内部照射型パイレックス(登録商標)ガラス製四つ口反応フラスコにフェニル無水マレイン酸20gと酢酸エチル240gを仕込み、反応器外壁をアルミ箔で被いながら室温で攪拌溶解させた。続いて攪拌しながら5℃に冷却したところでフラスコ中央部のパイレックスガラス製光源冷却管中の100W高圧水銀灯の照射を開始し8時間照射を続けた。この反応液の一部をサンプリングし、ジアゾメタンでメチル化して液体クロマトグラフィー(HPLC)のRI検出法で測定し、原料が消失し、ほぼ同面積比の3つの新たなピークが出現した。そこで反応を終了させ、濃縮すると粗物31.1gが得られる。次に、この粗物にトルエン60gを添加し60℃で30分攪拌後、25℃まで冷却した。続いてスラリー状の混合物を濾過し、酢酸エチル/n−ヘプタン=3/2で洗浄した後50℃で1時間減圧乾燥することにより、一つのピークが消失し、メインピークが約62.1%の淡黄色結晶9.13g(得率約45.6%)が得られた。
更に、この淡黄色結晶8.6gに酢酸エチル198gを滴下し、続いてn−ヘプタン198gを滴下し加えて60℃で1時間攪拌してから25℃まで冷却した。続いて濾過し、酢酸エチル/n−ヘプタン=3/2で洗浄した後35℃で1時間攪拌後減圧乾燥することにより、HPLCのRI検出法測定でメインピークのみの白色結晶3.66g(融点148℃;収率19.2%)が得られた。
この結晶は以下の単結晶X線解析によって1,2−ジフェニル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物(DPCBDA)であることを確認した。また、IR、H NMR 及び13C NMRからもこの構造を支持した。
H NMR(DMSO−d,δppm)(酸二無水物のチャート):4.82(s,2H), 7.2−7.8(m,10H)
13C NMR(DMSO−d,δppm)(テトラカルボン酸のチャート):46.5, 62.3, 127.4, 128.3, 140.9, 172.4, 173.6
IR(KBr、cm−1):2991, 1835, 1794, 1450, 1287, 1219, 1162, 1149, 1081, 998, 957, 921, 780, 741, 695, 616, 548, 490, 422
mp.146〜7 ℃
【0018】
DPCBDA単結晶X線測定結果(テトラカルボン酸・2(1,4−ジオキサン)・水付加体)
(DPCBDAを、1,4−ジオキサンに溶解させ、貧溶媒にn−ペンタンを用いた蒸気拡散法により単結晶を作成した。)(DPCBDAは、溶媒中の水により水和しテトラカルボン酸となり、更に1,4−ジオキサン2分子と水1分子が水和した付加体として観測された。)
分子式 C2016・2C・H
分子量 384・184・18
色相、形状 colorless, plate
晶系 triclinic
空間群 P−1
結晶系 prism
格子定数 a=10.556(2)Å,b=11.153(2)Å,c=14.648(2)Å
α=79.453(10)°,β=72.571(10)°,γ=75.552(8)°
V=1582.3(5)Å
Z値=2
Dx =1.214Mg/m
Mo K<α> radiation
λ(MoKa)=0.70926Å, μ(MoKa)=0.1mm−1
No.of measured reflections =4768
No.of observed reflections =3939
R(gt)=0.23
wR(gt)=0.31
Temp.=298K
以上の結果から、本結晶物質は、上記スキームに記載した構造の1,2−ジフェニル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物(DPCBDA)であることを確認した。
得られたDPCBDAの単結晶X線のチャートを図1に、IRチャートを図2に、NMRチャートを図3に示す。
【0019】
(実施例2)
【化7】

【0020】
実施例1に於いて反応溶媒を1,2−ジクロロエタンに代えた他は同様に反応した後、同様に後処理精製した。HPLCのRI検出法測定でメインピークのみの白色結晶3.11g(収率15.5%)が得られた。この結晶はH NMR 及び13C NMR解析によってDPCBDAであることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、実施例1で得た1,2−ジフェニル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物(DPCBDA)についての単結晶X線のチャート。
【図2】図2は、実施例1で得た1,2−ジフェニル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物(DPCBDA)についてのIRのチャート。
【図3】図3は、実施例1で得た1,2−ジフェニル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物(DPCBDA)についてのNMRのチャート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式[1]
【化1】


(式中、Rは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、フェニル基又はシアノ基を表す。)
で表される1,2−ジフェニル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物化合物。
【請求項2】
式[2]
【化2】


で表される請求項1に記載の1,2−ジフェニル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物化合物。
【請求項3】
式[3]
【化3】


(式中、Rは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、フェニル基又はシアノ基を表す。)
で表されるフェニル無水マレイン酸化合物の光二量化反応に於いて、反応溶媒が炭素数2〜10の脂肪酸エステル化合物及び炭素数2〜10のハロゲン炭化水素化合物を用いて、波長が300〜600nmの光源を用いて行うことを特徴とする式[1]
【化4】


(式中、Rは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、フェニル基又はシアノ基を表す。)
で表される1,2−ジフェニル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物化合物の製造法。
【請求項4】
光反応後、反応液を濃縮し、得られた粗物結晶に芳香族炭化水素を添加し40〜100℃で攪拌後、0〜30℃まで冷却し、析出した結晶を濾過した後、この結晶に脂肪酸エステル化合物と脂肪族炭化水素化合物の混合物を加えて50〜120℃で攪拌してから0〜30℃まで冷却し、続いて濾過後乾燥することを特徴とする請求項3に記載の1,2−ジフェニル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物化合物の製造法。
【請求項5】
波長が300〜600nmの光源を高圧水銀灯を用いて、光源冷却管がパイレックス(登録商標)ガラス製である請求項3に記載の1,2−ジフェニル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物化合物の製造法。
【請求項6】
波長300〜600nmの光源を得るための光照射器が内部照射型であることを特徴とする請求項3に記載の1,2−ジフェニル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物化合物の製造法。
【請求項7】
反応温度が−10〜50℃である請求項3に記載の1,2−ジフェニル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸−1,2:3,4−二無水物化合物の製造法。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−131510(P2006−131510A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−319681(P2004−319681)
【出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】