説明

シクロプロピルβ−アミノ酸誘導体

本発明は、式(I)(式中、R1〜R4は本明細書に定義されている通りである)で表される新規なシクロプロピルβ-アミノ酸誘導体、それら化合物を含有する医薬組成物及び各種中枢神経系などの障害を治療するためのそれら化合物の使用に関する。本発明のシクロプロピルβ-アミノ酸誘導体は、アルファ2デルタ リガンド(α2δリガンド)としての活性を示す。これら化合物は、カルシウムチャンネルのα2δサブユニットに対するアフィニティーを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のシクロプロピルβ-アミノ酸誘導体、その誘導体を含有する医薬組成物及び各種中枢神経系などの障害を治療するためのこれら誘導体の使用に関する。本発明のシクロプロピルβ-アミノ酸誘導体は、アルファ2デルタリガンド(α2δリガンド)としての活性を示す。このような化合物はカルシウムチャンネルのα2δサブユニットに対する親和力を有している。これらの化合物は、文献に、γ-アミノ酪酸(GABA)類似体としても引用されている。
【背景技術】
【0002】
いくつかのα2δリガンドは公知である。シクロα2δリガンドのギャバペンチン(Gabapentin)は、現在市販されており(Neurontin(登録商標)、Warner-Lambert Company)、てんかん及び神経障害性の痛みを治療するため臨床で広く使用されている。このような環式α2δリガンドは、1977年5月17日付けで発行された米国特許第4,024,175号及び1978年5月2日付けで発行された米国特許第4,087,544号に記載されている。他のシリーズのα2δリガンドは、1996年10月8日付けで発行された米国特許第5,563,175号;2001年11月13日付けで発行された米国特許第6,316,638号;2002年1月31日付けで出願された米国仮特許願第60/353,632号;2001年7月4日付けで公開された欧州特許願第EP1112253号;1999年2月25日付けで公開されたPCT特許願第WO99/ 08671号;及び1999年12月2日付けで公開されたPCT特許願第WO99/61424号に記載されている。これらの特許及び出願は、全体を本願に援用するものである。
【発明の開示】
【0003】
本発明は、下記式I:
【化1】

{式中、R1とR2は水素、直鎖もしくは分枝鎖の(C1-C10)アルキル、直鎖もしくは分枝鎖の(C1-C10)アルコキシアルキル、フェニル-直鎖もしくは分枝鎖-(C1-C3)アルキル及びフェニル-直鎖もしくは分枝鎖-(C1-C3)アルコキシアルキルから独立して選択され、前記フェニル部分はハロもしくは(C1-C3)アルキルから独立して選択される一つもしくは二つの置換基で任意に置換されてもよく、又は
R1とR2は、それらが結合している炭素とともにシクロペンチル、シクロヘキシルもしくはシクロヘプチルのリングを形成し、これらリングは、上記R1とR2の定義で列挙された置換基の群から独立して選択された一つもしくは二つの置換基で任意に置換されてもよく、そして
R3とR4は水素及びメチルから独立して選択される。}で表されるシクロプロピルβ-アミノ酸誘導体並びにこれら化合物の医薬として許容される塩に関する。
【0004】
本発明の好ましい実施態様は下記の化合物及びその医薬として許容される塩を含んでいる。
1-アミノメチル-スピロ[2.4]ヘプタン-1-カルボン酸;
1-アミノメチル-スピロ[2.5]オクタン-1-カルボン酸;
1-アミノメチル-スピロ[2.6]ノナン-1-カルボン酸;
1-アミノメチル-5-メチル-スピロ[2.4]ヘプタン-1-カルボン酸;
1-アミノメチル-2-メチル-スピロ[2.6]ノナン-1-カルボン酸;
1-アミノメチル-2,2-ジメチル-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2,2-ジ-n-プロピル-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-イソプロピル-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-シクロプロピル-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-イソブチル-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(1-エチル-プロピル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-シクロヘキシル-シクロプロパンカルボン酸;及び
1-アミノメチル-2-(2-フェネチル)-シクロプロパンカルボン酸。
【0005】
本発明の具体的実施態様の実施例は下記化合物とその医薬として許容できる塩である。
1-アミノメチル-スピロ[2.3]ヘキサン-カルボン酸;
1-アミノメチル-スピロ[2.7]デカン-1-カルボン酸;
1-アミノメチル-5,6-ジメチル-スピロ[2.4]ヘプタン-1-カルボン酸;
1-アミノメチル-5-メチル-スピロ[2.5]オクタン-1-カルボン酸;
1-アミノメチル-5,7-ジメチル-スピロ[2.5]オクタン-1-カルボン酸;
1-アミノメチル-2,2-ジメチル-スピロ[2.6]ノナン-1-カルボン酸;
1-アミノメチル-2,2-ジエチル-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2,2-ジ-n-ブチル-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2,2-ジイソブチル-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-n-プロピル-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(2-メチル-ブチル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(2,2-ジメチル-ブチル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(2-メチル-ペンチル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(2,2-ジメチル-ペンチル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(3-エチル-ペンチル)-シクロプロパンカルボン酸;
【0006】
1-アミノメチル-2-(4-エチル-ヘキシル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(1-メチル-シクロプロピルメチル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(1-エチル-シクロプロピルメチル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(1-プロピル-シクロプロピルメチル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(2-メチル-ヘキシル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(2,2-ジメチル-ヘキシル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(2,6-ジメチル-ヘプチル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(3,7-ジメチル-オクチル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-n-ブチル-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-シクロブチル-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-シクロペンチル-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-シクロヘプチル-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-シクロプロピルメチル-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-シクロヘキシルメチル-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(2-シクロヘキシル-エチル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-フェニル-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-ベンジル-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(2-フルオロ-フェニル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(3-フルオロ-フェニル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(4-フルオロ-フェニル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(2,3-ジフルオロ-フェニル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(2,5-ジフルオロ-フェニル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(2,6-ジフルオロ-フェニル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(3,5-ジフルオロ-フェニル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(2-フルオロ-ベンジル)-シクロプロパンカルボン酸;
【0007】
1-アミノメチル-2-(3-フルオロ-ベンジル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(4-フルオロ-ベンジル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(2,3-ジフルオロ-ベンジル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(2,4-ジフルオロ-ベンジル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(2,5-ジフルオロ-ベンジル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(2,6-ジフルオロ-ベンジル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(3,5-ジフルオロ-ベンジル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-[2-(2-フルオロ-フェニル)-エチル]-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-[2-(3-フルオロ-フェニル)-エチル]-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-[2-(4-フルオロ-フェニル)-エチル]-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-[2-(2,3-ジフルオロ-フェニル)-エチル]-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-[2-(2,4-ジフルオロ-フェニル)-エチル]-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-[2-(2,5-ジフルオロ-フェニル)-エチル]-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-[2-(2,6-ジフルオロ-フェニル)-エチル]-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-[2-(3,5-ジフルオロ-フェニル)-エチル]-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-メトキシメチル-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-フェノキシメチル-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-ベンジルオキシメチル-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(2-メトキシ-エチル)-シクロプロパンカルボン酸;
【0008】
1-アミノメチル-2-(2-フェノキシ-エチル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(2-ベンジルオキシ-エチル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(3-メトキシ-プロピル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(3-フェノキシ-プロピル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(3-ベンジルオキシ-プロピル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2,2-ビス-メトキシメチル-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2,2-ビス-フェノキシメチル-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2,2-ビス-ベンジルオキシメチル-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2,2-ビス-(2-メトキシ-エチル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2,2-ビス-(2-フェノキシ-エチル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2,2-ビス-(2-ベンジルオキシ-エチル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2,2-ビス-(3-メトキシ-プロピル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2,2-ビス-(3-フェノキシ-プロピル)-シクロプロパンカルボン酸;及び
1-アミノメチル-2,2-ビス-(3-ベンジルオキシ-プロピル)-シクロプロパンカルボン酸。
【0009】
用語「低級アルキル」は、本願で使用する場合は、特に断らない限り、1-6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル基又はアルキルラジカルを意味し、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシルなどを含んでいる。
【0010】
用語「アルキル」は、本願で使用する場合は、特に断らない限り、直鎖、分枝鎖もしくは環式の部分又はその組合わせを有する一価の飽和炭化水素ラジカル含んでいる。「アルキル」基の例としては、限定されないが、メチル;エチル;、プロピル;イソプロピル;ブチル;iso-、sec-及びtert-ブチル;ペンチル;ヘキシル;ヘプチル;3-エチルブチル;シクロプロピル;シクロブチル;シクロペンチル;シクロヘキシル;シクロヘプチル;ノルボルニルなどがある。
【0011】
用語「シクロアルキル」は、特に断らない限り、3-8個の炭素を含有する一価の飽和炭素環基を意味し、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチルから選択される。
【0012】
用語「アルコキシ」は、本願で使用する場合、特に断らない限り、「アルキル-O-」を意味し、またその「アルキル」は前記定義と同じである。「アルコキシ」基の例としては、限定されないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ及びペントキシがある。
【0013】
用語「一つ以上の置換基」は、本願で使う場合、利用用可能な結合部位の数に基づいて可能な置換基の1から最大の数に等しい置換基の数を意味する。
【0014】
用語「ハロ」と「ハロゲン」は、本願で使用する場合、特に断らない限り、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードが含まれている。
【0015】
式Iで表される化合物は、キラル中心を有していることがあるので、異なるエナンチオマーとジアステレオマーの形態で存在することがある。個々の異性体は、最終生成物又はその中間体を製造する際に、光学分割、光学的選択反応又はクロマトグラフィーによって分離する公知の方法で得ることができる。本発明は、式Iで表される化合物の、ラセミ混合物及び個々のエナンチオマーとジアステレオマーとしてのすべての光学異性体とすべての立体異性体;すべての医薬組成物;並びにこれら化合物をそれぞれ含むか又は利用する上記治療法に関する。式Iで表される化合物の個々のエナンチオマーは、各種障害又は症状を治療するとき、これら化合物のラセミ混合物と比較して利点がある。
【0016】
本発明の式Iで表される化合物は、塩基性化合物である限り、各種の無機酸及び有機酸で多種類の塩を形成することができる。かような塩は、動物に医薬として投与するには医薬として許容できなければならないが、実際には、最初に、塩基化合物を、反応混合物から医薬として許容できない塩として単離し次いでアルカリ性試薬で処理することによって簡単に遊離塩基の化合物に変換し、その後、その遊離塩基を医薬として許容できる酸付加塩に変換することが望ましいことが多い。その遊離塩基型の化合物は、先に述べたようにして形成された酸付加塩を塩基と接触させ次いで遊離塩基型の化合物を通常の方法で単離することによって再生することができる。本発明の方法で製造された遊離塩基型の化合物は、それら化合物それぞれの酸付加塩型とは、溶解性、結晶構造、吸湿性などの特定の物理特性が幾分異なっているが、その他の点では、遊離塩基型の化合物とそれら化合物それぞれの酸付加塩型は、本発明の目的を達成するためには同等である。
【0017】
本発明の方法で有用な塩基性化合物の医薬として許容できる酸付加塩としては、無機酸例えば塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素酸、亜リン酸などから誘導される非毒性塩があり、及び有機酸例えば脂肪族のモノカルボン酸とジカルボン酸、フェニルで置換されたアルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、アルカン二酸、芳香族酸、脂肪族と芳香族のスルホン酸などから誘導される非毒性塩もある。したがって、このような塩としては、硫酸塩、ピロ硫酸塩、酸性硫酸塩、亜硫酸塩、酸性亜硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、カプリル酸塩、イソ酪酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、フタル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩などがある。またアルギン酸塩などのアミノ酸の塩及びグルコン酸塩やガラクツロン酸塩も考えられる(例えば、Berge S.M. et al.,「Pharmaceutical Salts」J.of Pharma.Sci.,1977;66:1参照)。
【0018】
本発明の式Iで表される化合物は、酸性化合物である限り、すべて、各種の無機及び有機の塩基と多種類の塩を形成できる。本発明の方法で有用な酸性化合物の医薬として許容できる塩基付加塩は、遊離酸型の化合物を、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のカチオンなどの非毒性金属カチオン又はアミン特に有機アミンと接触させることによって製造できる。適切な金属カチオンの例としては、ナトリウムカチオン(Na+)、カリウムカチオン(K+)、マグネシウムカチオン(Mg2+)、カルシウムカチオン(Ca2+)などがある。適切なアミンの例はN,N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン及びプロカインがある(前掲Berge,1977の文献参照)。本発明の方法で有用な酸性化合物の塩基付加塩は、遊離酸型の化合物を、通常の方法で、充分な量の望ましい塩基と接触させて塩を生成させることによって製造できる。遊離酸型の化合物は、上記のようにして製造した塩型を酸と接触させ次いで通常の方法で遊離酸型の化合物を単離することによって再生できる。本発明の方法において有用な遊離酸型の化合物は、それら化合物それぞれの塩型とは、溶解性、結晶構造、吸湿性などの特定の物理特性が幾分異なっているが、その他の点では、それら塩型は、本発明の目的を達成するためにはそれらそれぞれの遊離酸型と同等である。
【0019】
本発明には、式Iで表される化合物と同一であるが、一つ以上の原子が、天然に通常見られる原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子で置換されている、同位元素で標識を付けた化合物が含まれている。本発明の化合物に取り入れることができる同位元素の例は、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素及び塩素それぞれの同位元素、例えば2H、3H、13C、11C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F及び36Clである。上記同位元素及び/又は他の原子の他の同位元素を含有する本発明の化合物、そのプロドラッグ、及び前記化合物もしくは前記プロドラッグの医薬として許容できる塩は、本発明の範囲内に含まれている。同位元素で標識を付けた本発明の特定の化合物、例えば3H及び14Cなどの放射性同位元素が取り入れられている化合物は、医薬及び/又は基質の組織内分布を検定するのに有用である。同位元素のトリチウムすなわち3H及び炭素-14すなわち14Cは、その製造と検出が容易であるため特に好ましい。さらに、より重量が大きい同位元素例えばジュウテリウムすなわち2Hで置換すると、例えば、生体内での半減期が長くなるとか又は必要投与量が低下するという優れた代謝の安定性から特定の治療面の利点を得ることができるので、いくつかの状況では好ましい。
【0020】
本発明の方法で有用な化合物のいくつかは、水和された形態を含む溶媒和された形態のみならず非溶媒和形態でも存在できる。一般に水和された形態を含む溶媒和された形態は、非溶媒和形態と均等であり、本発明の範囲内に含まれるものである。
【0021】
経口投与される薬物の効果は、その薬物の粘膜上皮(mucosal epitherium)を通過する効率的な輸送と腸肝循環における安定性によって決まる。非経口投与すると有効であるが経口投与すると効果が低いか又は血漿内での半減期が非常に短いと考えられる薬物は、化学的に修飾してプロドラッグ型にすることができる。
【0022】
プロドラッグは、化学的に修飾されていてその作用部位では生物学的に不活性であるが、一つ以上の触媒的プロセスなどの生体内プロセスによって分解又は修飾されて親の生理活性型になることができる薬物である。
【0023】
この化学的に修飾された薬物すなわちプロドラッグは、粘膜上皮を通過して容易に吸収されうること、優れた塩の製剤及び/又は可溶性、改良された全身での安定性(例えば血漿内安定性の向上)という、親薬物とは異なる薬理的側面を持っていなければならない。これら化学的修飾物としては例えば下記のものがある。
【0024】
1) 例えば、エステラーゼ又はリパーゼで切断できるエステル又はアミドの誘導体。エステル誘導体の場合、そのエステルはその薬物分子のカルボン酸の部分から公知の方法で誘導される。アミド誘導体の場合、そのアミドはその薬物分子のカルボン酸部分又はアミン部分から公知の方法で誘導できる。
2) 特異的な又は非特異的なプロテイナーゼが認識できるペプチド(このペプチドは、公知の方法で、薬物分子のアミン部分又はカルボン酸部分とアミド結合を形成することによってその薬物分子に結合できる)。
3) プロドラッグ型もしくは修飾されたプロドラッグ型を膜で選択することによって作用部位に蓄積する誘導体、又は
4) 上記1-3の混合物である。
【0025】
動物実験で現在行われている研究は、特定の薬物の経口吸収性を、「ソフト」第四級塩を製造することによって増大させることができることを示している。その第四級塩は、通常の第四級塩例えばR-N+(CH3)3と異なり加水分解反応によって活性薬物を放出できるので、「ソフト」第四級塩と命名される。
【0026】
「ソフト」第四級塩は、塩基性薬物又はその塩と比べて有用な物理特性を有している。塩酸塩などの他の塩と比べて水溶性を増大させることができるが、より重要なことは、その薬物の腸からの吸収性を増大させうることである。その吸収性が増大するのは、恐らく、「ソフト」第四級塩が界面活性剤の特性を有し、かつ胆汁酸などとミセル及びイオン化しないイオン対を形成することができそれらが腸の上皮をより効率的に貫通できるためであろう。そのプロドラッグは、吸収された後、迅速に加水分解されて活性の親薬物を放出する。
【0027】
式Iで表される化合物のプロドラッグは、本発明の範囲内に含まれる。プロドラッグとソフト薬物は当該技術分野で公知である(Palomino E.,Drugs of the Future,1990;15(4):361-368)。上記二つの引用文献は本願に援用するものである。
【0028】
本発明の化合物のいくつかは、水和された形態を含む溶媒和型のみならず非溶媒和型で存在できる。一般に、水和された形態を含む溶媒和型は非溶媒和型と均等であり、本発明の範囲内に含まれるものである。
【0029】
また本発明は、治療するために有効な量の式Iで表される化合物又はその医薬として許容できる塩、及び医薬として許容できる担体を含有する医薬組成物に関する。
【0030】
また本発明は、治療するために有効な量の式Iで表される化合物又はその医薬として許容できる塩を、治療を必要とする哺乳類に投与することを含んでなる、哺乳類の以下の障害又は症状:失神発作、てんかん、窒息、全無酸素症、低酸素症、脊髄の外傷、脳の外傷損傷、頭部外傷、脳虚血、卒中発作(例えば頚動脈内膜切除術などの一般的な血管手術法又は血管造影法などの血管外科診断法を受けている患者などの脳虚血に付随して起こる血栓塞栓卒中、病巣虚血、全虚血、一過性脳虚血卒中などの脳血管の問題を含む)、チオセミカルバジドによって起こるけいれん、カルジアゾールけいれん、及び脳梗塞、くも膜下出血もしくは脳水腫などの急性もしくは慢性の脳血管の損傷が原因の脳血管の障害から選択される障害又は症状を治療する方法に関する。
【0031】
また本発明は、治療するために有効な量の式Iで表される化合物又はその医薬として許容できる塩を、治療を必要とする哺乳類に投与することを含んでなる、哺乳類の以下の障害又は症状:心臓神経障害、例えば、心臓神経失神、神経原性失神、頚動脈洞過敏症、神経血管症候群及び胃腸障害に派生する不整脈を含む不整脈からなる群から選択される障害又は症状を治療する方法に関する。
【0032】
また本発明は、治療するために有効な量の式Iで表される化合物又はその医薬として許容できる塩を、治療を必要とする哺乳類に投与することを含んでなる、哺乳類の以下の障害又は症状:急性の痛み、慢性の痛み、急性の外傷などの軟組織と周辺の損傷が原因の痛み;疱疹後神経痛、後頭部神経痛、三叉神経痛、脊髄節もしくは肋間の神経痛などの神経痛;骨関節症及びリウマチ様関節炎に伴う痛み;歪、捻挫及び骨折などの外傷に付随する痛みなどの筋肉-骨格痛;脊髄もしくは脳幹の損傷による痛みなどの脊髄痛、中枢神経系の痛み;下背部痛、坐骨神経痛、歯痛、筋膜痛症候群、会陰切開痛、痛風痛及び熱傷による痛み;心臓痛などの深部痛と内臓痛;筋肉痛、眼痛、炎症痛、口顔痛例えば歯痛;腹痛と婦人科痛、例えば月経困難症、分娩陣痛及び子宮内膜症に伴う痛み;体因性痛み;末梢神経の障害例えば神経絞扼と腕神経叢の裂離に伴う痛みなどの神経と根の損傷に伴う痛み;四肢切断、三叉神経痛、神経腫もしくは脈管炎に伴う痛み;糖尿病性神経痛、化学療法が誘発する神経痛、急性のヘルペス性及びヘルペス後の神経痛;非定型顔面痛、神経障害性下背部痛及びくも膜炎、三叉神経性神経痛、後頭部神経痛、脊髄節神経痛もしくは肋間神経痛、HIV関連神経痛とAIDS関連神経痛などの神経痛;胃痛症、痛覚過敏、熱傷痛、突発性痛、化学療法によって起こる痛み;後頭部神経痛、ヒステリー痛、腕神経叢裂離、脚不穏症候群に伴う痛み;胆石に伴う痛み;慢性アルコール症もしくは甲状腺機能不全症もしくは尿毒症もしくはビタミン欠乏症によって起こる痛み;癌に伴う神経障害性及び非神経障害性の痛み(癌痛と呼称されることが多い)、幻想肢痛、機能性腹痛;前兆ありの片頭痛、前兆なしの片頭痛などの血管性頭痛、急性もしくは慢性の緊張性頭痛、洞性頭痛及びクラスター頭痛を含む頭痛;テンペロマンディビュラーペイン(temperomandibular pain)と上顎洞痛;強直性脊椎炎から起こる痛み;膀胱収縮増大によって起こる痛み;術後の痛み、瘢痕の痛み、並びにHIV、アンスラルギア(anthralgia)、脈管炎及び線維筋肉痛に伴う痛みなどの慢性の非神経障害性痛みから選択される障害又は症状を治療する方法に関する。
【0033】
また本発明は、治療するために有効な量の式Iで表される化合物又はその医薬として許容できる塩を、治療を必要とする哺乳類に投与することを含んでなる、哺乳類の以下の障害又は症状:うつ病などの気分障害又はより詳しくは抑うつ性障害、例えば大うつ病障害、重篤な一極性反復性の大うつ病エピソード、胸腺不全障害、抑うつ神経症と神経性うつ病、メランコリーうつ病(無食症、体重減少、不眠、早朝覚醒もしくは精神性運動遅滞を含む)、非定型うつ病すなわち反応性うつ病(食欲増大、不眠症、精神運動性激越もしくは精神運動過敏を含む);治療抵抗性うつ病;季節的情動障害と小児うつ病;月経前症候群、月経前神経不安障害、上半身熱感、二極性障害すなわち躁うつ病、例えば二極性I障害、二極性II障害及び循環性障害;季節的情動障害、行為障害と分断行動障害;ストレス関連の身体障害と不安障害、例えば小児期不安障害、広場恐怖病ありもしくはなしの恐慌性障害、恐慌性障害の病歴なしの広場恐怖症、特定の恐怖症(例えば、特定動物恐怖症)、社会不安障害、社会恐怖症、強迫性障害、外傷後ストレス障害と急性ストレス障害を含むストレス障害及び全身性不安障害から選択される障害又は症状を治療する方法に関する。
【0034】
また本発明は、治療するために有効な量の式Iで表される化合物又はその医薬として許容できる塩を、治療を必要とする哺乳類に投与することを含んでなる、哺乳類の以下の障害又は症状:境界性人格障害;精神分裂病などの精神病性障害、例えば分裂病型障害、分裂情動障害、妄想性障害、短期精神病障害、共有精神病障害、一般的医学症状による精神病障害、妄想もしくは幻覚を伴う精神病障害、物質が誘発する精神病障害、不安の精神病エピソード、精神病に付随する不安、重篤な大うつ病などの精神病性気分障害;急性そう病などの精神病障害に伴う気分障害と二極性障害に伴ううつ病、精神分裂病に伴う気分障害;及び知能遅延に伴う行動障害からなる群から選択される障害又は症状を治療する方法に関する。
【0035】
また本発明は、治療するために有効な量の式Iで表される化合物又はその医薬として許容できる塩を、治療を必要とする哺乳類に投与することを含んでなる、哺乳類の以下の障害又は症状:睡眠障害、例えば不眠(例えば精神生理学的不眠と突発性不眠を含む一次不眠、脚不穏症候群に続く不眠を含む二次不眠、パーキンソン病などの慢性障害及び一過性の不眠)、夢遊病、断眠、REM睡眠障害、睡眠時無呼吸症、睡眠過剰、錯眠、睡眠-覚醒サイクルの障害、時差ぼけ、睡眠発作、交代制作業又は不規則な作業スケジュールに伴う睡眠障害、投薬又は他の原因によって起こる徐波睡眠の減少による不十分な睡眠の質からなる群から選択される障害又は症状を治療する方法に関する。
【0036】
また本発明は、治療するために有効な量の式Iで表される化合物又はその医薬として許容できる塩を、治療を必要とするヒトの被験者に投与することを含んでなる、ヒト被験者の徐波睡眠を増大しかつ成長ホルモンの分泌を増大する方法に関する。
【0037】
また本発明は、治療するために有効な量の式Iで表される化合物又はその医薬として許容できる塩を、治療を必要とする哺乳類に投与することを含んでなる、哺乳類の以下の障害又は症状:呼吸器疾患、特に過剰粘液分泌に関連する呼吸器疾患、例えば慢性閉塞性気道疾患、気管支肺炎、慢性気管支炎、のう胞性線維症成人呼吸困難症候群及び気管支痙攣;咳、百日咳、アンギオテンシン変換酵素(ACE)が誘発する咳、肺結核、湿疹と鼻炎などのアレルギー;接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、じんま疹などの湿疹様発疹皮膚炎;かゆみ、血液透析に伴うかゆみ;炎症性疾患、例えば炎症性腸疾患、乾癬、骨関節症、軟骨損傷(例えば、身体活動又は骨関節症から起こる軟骨損傷)、リウマチ様関節炎、乾癬性関節炎、喘息、かゆみ及び日焼け;並びに毒つたなどの過敏症疾患からなる群から選択される障害又は症状を治療する方法に関する。
【0038】
また本発明は、治療するために有効な量の式Iで表される化合物又はその医薬として許容できる塩を、治療を必要とする哺乳類に投与することを含んでなる、哺乳類の以下の障害又は症状:神経変性障害例えばパーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)及びアルツハイマー病(AD);せん妄、痴呆(例えば、アルツハイマー病型の老年性痴呆、老人性痴呆、血管性痴呆、HIV-1関連痴呆、AIDS痴呆関連症候群(ADC)、及び頭部外傷による痴呆、パーキンソン病、ハンチントン病、ピック病、クロイツフェルト・ヤコブ病もしくは複数発症因子による痴呆)、健忘性障害、他の認知障害もしくは記憶障害、並びに痴呆の行動症状からなる群から選択される障害又は症状を治療する方法に関する。
【0039】
また本発明は、治療するために有効な量の式Iで表される化合物又はその医薬として許容できる塩を、治療を必要とする哺乳類に投与することを含んでなる、哺乳類の以下の障害又は症状:ダウン症候群;シェーグレン症候群、高血圧、造血、術後神経腫、良性前立腺肥大症、歯周病、痔疾と肛門裂傷、不妊症、反射性交感神経性ジストロフィー、肝炎、高脂質血症に付随する腱痛、血管拡張、強皮症などの線維性疾患とコラーゲン疾患及び好酸球性肝蛭症;並びにアンギナ、片頭痛及びレイノー病などの血管れん縮病からなる群から選択される障害又は症状を治療する方法に関する。
【0040】
また本発明は、治療するために有効な量の式Iで表される化合物又はその医薬として許容できる塩を、治療を必要とする哺乳類に投与することを含んでなる、哺乳類の以下の障害又は症状:乾燥眼症候群、結膜炎、春季結膜炎などの眼疾患及び増殖性硝子体網膜症などの細胞増殖に伴う眼の症状からなる群から選択される障害又は症状を治療する方法に関する。
【0041】
また本発明は、治療するために有効な量の式Iで表される化合物又はその医薬として許容できる塩を、治療を必要とする哺乳類に投与することを含んでなる、哺乳類の以下の障害又は症状:自閉症、注意欠失多動障害(ADHD)、脈管形成(すなわち脈管形成を阻害するために利用する)、ライター症候群及びアンスロパシー(anthropathy) からなる群から選択される障害又は症状を治療する方法に関する。
【0042】
また本発明は、治療するために有効な量の式Iで表される化合物又はその医薬として許容できる塩を、治療を必要とする哺乳類に投与することを含んでなる、哺乳類の以下の障害又は症状:アルコール、アンフェタミン類(又はアンフェタミン様物質)、カフェイン、大麻、コカイン、幻覚薬、吸入剤とエアゾール噴射剤、ニコチン、オピオイド類、フェニルグリシジン誘導体、鎮静薬、催眠薬及び抗不安薬を使用することから起こる物質関連障害(依存症と乱用、中毒、断薬、中毒せん妄及び断薬せん妄を含む);並びに行動に対する依存症(例えば賭博などの依存性行動に対する依存症) を含む依存障害からなる群から選択される障害又は症状を治療する方法に関する。
【0043】
また本発明は、治療するために有効な量の式Iで表される化合物又はその医薬として許容できる塩を、治療を必要とする哺乳類に投与することを含んでなる、哺乳類の以下の障害又は症状:ダウン症候群;多発性硬化症(MS)とアミロラテラル(amylolateral)硬化症(ALS)などの脱髄疾患からなる群から選択される障害又は症状を治療する方法に関する。
【0044】
また本発明は、治療するために有効な量の式Iで表される化合物又はその医薬として許容できる塩を、治療を必要とする哺乳類に投与することを含んでなる、哺乳類の以下の障害又は症状:広汎性発達障害、線維筋痛症、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症;HIV脳障害;身体異型障害などの解離性障害;無食欲と多食症などの摂食障害;潰瘍性大腸炎;クローン病;過敏腸管症候群;慢性膵臓炎、慢性疲労症候群;乳児突然死症候群(SIDS);過活動膀胱;過活動膀胱の下部尿路症状;慢性膀胱炎;化学療法が誘発する膀胱炎;咳、アンギオテンシン変換酵素(ACE)が誘発する咳、かゆみ、しゃっくり、月経前症候群、月経前神経不安障害、デスメノリア(desmenorrhea)などの無月経障害;肩/手症候群などの反射性交感神経性ジストロフィー;サイトカインによる化学療法で起こる血漿の血管外遊出;慢性膀胱炎、膀胱の排尿反射亢進、尿路の炎症、並びに切迫尿失禁、過活動膀胱、ストレス尿失禁及び混合尿失禁を含む尿失禁などの膀胱機能障害;強皮症と好酸球性肝蛭症などの線維性疾患とコラーゲン疾患;血管拡張及び扁桃炎とレイノー病などの血管れん縮病で起こる血流の障害;早期射精と男性勃起機能不全を含む性機能不全からなる群から選択される障害又は症状を治療する方法に関する。
【0045】
また本発明は、治療するために有効な量の式Iで表される化合物又はその医薬として許容できる塩を、治療を必要とする哺乳類に投与することを含んでなる、哺乳類の以下の障害又は症状:運動障害例えば、原発性運動障害、運動不能症、運動機能異常(例えば家族性発作性運動機能異常、遅発性運動機能異常、振戦、舞踏病、ミオクローヌス、チックなどの運動機能異常)、けい性、ツレット症候群、スコット症候群、麻痺(例えば、ベル麻痺、脳性麻痺、出生麻痺、上腕麻痺、消耗麻痺、虚血性麻痺、進行性球麻痺などの麻痺)、無動硬直症候群;投薬が誘発する運動障害などの錐体外路の運動障害例えば、神経遮断薬が誘発するパーキンソン病、神経遮断薬による悪性症候群、神経遮断薬誘発急性筋緊張異常、神経遮断薬誘発急性坐位不能症、神経遮断薬誘発遅発性運動機能異常及び投薬が誘発する姿勢振戦;脚不穏症候群及びパーキンソン病もしくはハンチントン病に伴う運動障害からなる群から選択される障害又は症状を治療する方法に関する。
【0046】
また本発明は、治療するために有効な量の式Iで表される化合物又はその医薬として許容できる塩を、治療を必要とする哺乳類に投与することを含んでなる、哺乳類の以下の障害又は症状:乳房痛症候群、乗物酔い、全身性エリテマトーデス並びに免疫機能不全(例えば、ストレスが誘発する免疫機能不全例えば突発性免疫機能不全、感染後免疫機能不全、腫瘍切除後免疫機能不全、ぶたストレス症候群、うし輸送熱、うま発作性細動、にわとりのコンファインメント(confinement)機能不全、ひつじのシャーリングストレス(sheering stress)及びいぬのヒト-動物相互作用ストレス) からなる群から選択される障害又は症状を治療する方法に関する。
【0047】
また本発明は、治療するために有効な量の式Iで表される化合物又はその医薬として許容できる塩を、治療を必要とする哺乳類に投与することを含んでなる、哺乳類の以下の障害又は症状:胃腸(GI)障害(炎症性腸疾患などの炎症性胃腸障害、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)が起こす障害及び胃炎、直腸炎、胃十二指腸潰瘍、消化性潰瘍、消化不良などの胃腸管の疾患、内臓のニューロンによる制御に関連する障害、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏腸管症候群を含む)、並びに術後の悪心と術後の嘔吐及び急性、遅延性もしくは先行性の嘔吐[化学療法、放射線、毒素、ウイルスもしくは細菌の感染症、妊娠、前庭の障害(例えば乗物酔い、めまい、めまい感及びメニエール病)、外科手術、片頭痛、頭蓋内圧力の変動、胃-食道逆流病、胃酸過多、食物もしくは飲み物に対する過剰耽溺、酸性胃(acid stomach)、ウオーターブラッシュ(waterbrash)もしくは吐戻し、胸焼け例えば偶発性、夜間のもしくは食物が誘発する胸焼けと消化不良が誘発する嘔吐を含む] からなる群から選択される障害又は症状を治療する方法に関する。
【0048】
また本発明は、治療するために有効な量の式Iで表される化合物又はその医薬として許容できる塩を、治療を必要とする哺乳類に投与することを含んでなる、哺乳類の以下の障害又は症状:乳房腫瘍、胃癌、胃リンパ腫、神経節芽腫瘍、及び小細胞肺癌などの小細胞癌を含む新生物からなる群から選択される障害又は症状を治療する方法に関する。
【0049】
また先に述べた諸方法は、本願ではまとめて「本発明の方法」と呼称する。
【0050】
用語「治療する」は、本願で使用するときは、この用語が適用される障害又は症状の進行を逆転し、改善し、阻害するか又はその障害又は症状を防止するか又はその障害又は症状の一つ以上の兆候を防止することを意味する。用語「治療」は本願で使用するときは、用語「治療する」が上記のように定義されるときの治療する行動を意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
本発明の化合物は、下記の反応式と考察に記載されているようにして製造できる。下記の反応式と考察において、R1−R4は特に断らない限り上記定義の通りである。
【化2】

反応式1にしたがって、アセトニトリル溶媒中1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-オン(DBU)の存在下又はエタノール溶媒中炭酸カリウムの存在下、式1の化合物を式 R4R3NO2の化合物と反応させて、対応する式2の化合物が得られる。R4R3NO2 5当量当たりDBUを1当量使用することが好ましい。この反応は、一般に約60℃~約80℃の温度で行われ、約60℃が好ましい。生成した式2の化合物とエタノール溶媒中のトリエチルアミンとの反応を、水素ガス圧力が約1気圧~約5気圧好ましくは約1気圧において、ラネーニッケルの存在下、約20℃〜約60℃の温度、好ましくはほぼ室温で実施して、対応する式3の化合物が得られる。
【0052】
生成した式3の化合物は、約80℃〜反応混合物のほぼ還流温度の温度、好ましくはほぼその還流温度で、塩酸(HCl)好ましくは3N HClと反応させることによって、式Iで表される所望の化合物に変換できる。
【0053】
反応式2は、式I(式中、R1とR2は、それらが結合している炭素原子とともにシクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチルのリングを形成する)で表される化合物を合成する好ましい方法を示す。
【化3】

反応式2に示す式2、3、4及び5の化合物において、nは1、2又は3であり、そして(CH2)nを含むリングは、上記R1とR2の定義で述べられている置換基の群から選択される一つ又は二つの置換基で任意に置換してもよい。式2の化合物は、式2の化合物(反応式1)を式1の化合物(反応式1)から製造するため上記反応式1に示した手順を使って、対応する式3の化合物に変換できる。約0℃〜約40℃の温度にて、エタノール中又は低級アルコールと水の混合物中で式3の化合物と塩化コバルト六水和物とを反応させることによって対応する式4の化合物が得られる。好ましくは、2当量の塩化コバルト六水和物と10当量のホウ水素化ナトリウムを使用して、反応はメタノール中ほぼ室温にて行われる。
【0054】
対応する式4の化合物と水酸化リチウムを、メタノール又は他の低級アルコール例えばエタノールもしくはn-ブタノール中で約50℃〜約70℃の温度好ましくは還流温度にて反応させて対応するカルボン酸リチウム塩を製造し次いでその生成したカルボン酸塩を強鉱酸と反応させることによって、所望の式1Aで表される化合物を製造できる。前記カルボン酸塩は、好ましくは、前記反応混合物を約0℃〜約25℃の温度まで冷まし次にその混合物のpHが約5.5になるのに充分な塩酸を添加することによって、その場で、対応する酸に変換される。
【化4】

反応式3にしたがって、約40℃~ほぼ還流温度好ましくはほぼ還流温度にて、式1のアルデヒドを、ベンゼン中の式NCCH2CO2CH3の化合物、酢酸アンモニウム及び氷酢酸と反応させることによって式1のアルデヒドを式2のエステルに変換する。式2の化合物と式R3R4NO2の化合物を、アセトニトリル溶媒中、フッ化カリウム又はアルミナ触媒の存在下、約40度〜ほぼ還流温度の温度好ましくはほぼ還流温度にて反応させて、対応する式3の化合物が得られる。
【0055】
次に、式3のエステルを、下記二つのステップの行程で、式4で表される対応するアミノ基を保護されたエステルに変換できる。まず、エタノール又は低級アルコールと水の混合物中、約0℃〜約40℃の温度で、式3の化合物を、塩化コバルト六水和物及びホウ水素化アンモニウムと反応させて、シアノ基をメチルアミノ基に変換する。この反応は、2当量の塩化コバルトと10当量のホウ水素化ナトリウムを使って、メタノール中、ほぼ室温で行うことが好ましい。生成した化合物のアミノ基を次に、ジクロロメタン中で、その生成化合物をジ炭酸ジ-tert-ブチルと反応させることによって保護する。あとのほうの反応は、一般に約0℃〜約40℃の温度で行われ、ほぼ室温で実施することが好ましい。
【0056】
次に、式Iで表される所望の化合物を、当業者にとって周知の方法を使って、式5の対応する化合物から製造できる。例えば、式5の化合物を、ヂオキサン、エチルエーテルもしくは低級アルコールの溶媒中、塩酸などの適当な酸と反応させるか又はトリフルオロ酢酸と反応させて、式Iで表される化合物の対応する酸付加塩が得られる。式Iで表される化合物は、「発明の概要」で先に述べたようにして、これら酸付加塩から製造できる。
【化5】

反応式4にしたがって、酢酸溶媒中、ピペリジン、ピロリジン又は酢酸アンムニウムの存在下、好ましくはピペリジンの存在下、約0℃〜ほぼ室温の温度にて好ましくは室温にて、式1で表される対応するケトンを式CNCH3CO2Bn(式中、Bnはベンジルである)の化合物(シアノ酢酸ベンジル)と反応させて、そのケトンから式2の化合物を製造できる。式2の化合物と式R3R4NO2の化合物を、アセトニトリル溶媒中1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-オン(DBU)の存在下、又はエタノール溶媒中炭酸カリウムの存在下で反応させて式3の対応する化合物が得られる。1当量のDBUを、5当量のR4R3NO2に対して使うことが好ましい。この反応は一般に、約60℃~約80℃の温度で、好ましくは約60℃で行われる。
【0057】
式Iで表される所望の酸は、当業者にとって周知の標準方法を使って、式4で表される対応するベンジルエステルから製造できる。例えば、メタノール又はエタノールの溶媒中、約0℃〜ほぼ室温の温度で好ましくはほぼ室温にて、1〜5気圧好ましくは約1気圧の水素ガス圧力とパラジウム-炭触媒などの適切な水素化触媒を使って、式4の化合物と水素ガスを反応させることによって水素化反応で製造される。
【0058】
本発明の方法を実施するために要求されることは、先に挙げた障害又は症状のうち一つ以上を治療するために有効な量の式Iで表される化合物又はその医薬として許容できる塩を投与することである。このような治療するために有効な量は、一般に、1日当たり約1〜約300 mg/kg被験者体重である。典型的な投与量は、正常体重の成人被験者に対し約10〜約5000mg/日である。例えば米国における食品医薬品庁(「FDA」)のような規制当局は、臨床条件に、特定の治療のために有効な量を要求する。
【0059】
先に挙げた障害又は症状のうちの一つ以上を本発明の方法によって治療するための、式Iで表される化合物もしくはその医薬として許容できる塩の有効量又は治療のために有効な量を構成するものを決定するとき、開業医又は獣医は彼等の経験から見て、下記の多数の要因、すなわち刊行された臨床試験の結果、治療される障害又は症状のタイプと程度のみならず被験者の年齢、性別、体重及び全身状態並びにもしあれば被験者の他の薬物の使用を考慮する。したがって、上記投与量は先に述べた範囲又は濃度内に入れるか、又は個々の被験者の必要量、治療されている症状の重篤度及び利用されている特定の治療製剤によってその範囲を超えてすなわち上下に変えることができる。特定の状態に対する適正な投与量の決定は、ヒトの医療又は獣医療の技術の技量の範囲内である。一般に、治療は、特定の被験者に対する最適量より少ない小投与量のα2δリガンドを使って開始される。その後、その投与量は、その環境下での最適効果に到達するまで少量ずつ増やすことができる。便宜上、必要に応じて、毎日の全投与量を分割してその日中に少しずつ投与してもよい。
【0060】
式Iで表される化合物又はその医薬として許容できる塩の医薬組成物は、活性化合物を、医薬担体で単位剤形に製剤することによって製造される。単位剤形のいくつかの例は、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、経口の水性もしくは非水性の水剤と懸濁剤及び一つもしくは複数の投与単位が入っている容器に充填されて個々の投与量に分割できる非経口の水剤である。
【0061】
医薬賦形剤を含む適切な医薬担体のいくつかの例は、ゼラチンカプセル;乳糖やスクロースなどの糖類;トウモロコシデンプンやバレイショデンプンなどのデンプン類;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、メチルセルロース及び酢酸フタル酸セルロースなどのセルロース誘導体;ゼラチン;タルク;ステアリン酸;ステアリン酸マグネシウム;ラッカセイ油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及びカカオ脂などの植物油;プロピレングリコール;グリセリン;ソルビトール;ポリエチレングリコール;水;カンテン;アルギン酸;生理食塩液及びリン酸塩緩衝溶液;並びに医薬製剤に通常使用されるその外の互換性がある物質である。
【0062】
本発明で使われる組成物は、着色剤、着香剤及び/又は保存剤などの他の成分を含有していてもよい。これら物質は、存在している場合、通常、比較的少量で使用される。本発明の組成物は、必要に応じて、治療されている障害又は症状を治療するため通常使われている他の治療剤を含有していてもよい。
【0063】
上記組成物中の有効成分の百分率は、広範囲にわたって変えることができるが、固体組成物では少なくとも10%の濃度でそして一次液体組成物では少なくとも2%存在していることが実用上好ましい。最も満足すべき組成物は、有効成分を非常に高い比率で例えば約95%まで含有している組成物である。
【0064】
錠剤の場合、活性成分を、適正な比率で必要な結合特性を有する担体と混合し次いで所望の形態と大きさに締め固める。
【0065】
散剤と錠剤は、活性成分を、5又は10〜約70%含有していることが好ましい。適切な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、乳糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオバターなどである。用語「製剤」は、活性化合物を、カプセルを提供する担体としてのカプセル化剤で製剤することを含むものであり、そのカプセル中の、他の担体を含有又は含有しない活性成分が担体で囲まれその担体は活性成分と結合している。同様に、カシェ剤とトローチ剤も含まれている。錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤及びトローチ剤は、経口投与に適した固体剤形として使用できる。
【0066】
坐剤を製剤する場合、まず、脂肪酸グリセリド類の混合物又はカカオ脂などの低融点ワックスを溶融させ、次に例えば攪拌することによってその中に活性成分を均質に分散させる。次に、その溶融した均質混合物を便利な大きさの型に注入し冷まして固化させる。
【0067】
液体型製剤としては、水剤、懸濁剤及び乳剤があり、例えば、水又は水とプロピレングリコールによる水剤がある。非経口投与用の注射液製剤は、ポリエチレングリコール水溶液中に、溶液で製剤できる。
【0068】
経口投与用に適した水溶液は、活性成分を水に溶解し次いで適切な着色剤、着香料、安定剤及び粘稠化剤を添加することによって製剤できる。
【0069】
経口投与用に適切な水性懸濁剤は、微粉砕された活性成分を、水に、粘質物質例えば天然又は合成のガム類、樹脂類、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび他の周知の懸濁化剤とともに分散させることによって製造できる。
【0070】
使用する直前に、経口投与用の液体型製剤に変換することを目的としている固体型製剤も含まれている。かような液体型製剤としては、水剤、懸濁剤及び乳剤がある。これらの製剤は、活性成分に加えて、着色剤、着香剤、安定剤、緩衝剤、人工及び天然の甘味料、分散剤、粘稠化剤、可溶化剤などを含有していてもよい。
【0071】
医薬製剤は単位剤形が好ましい。このような形態の製剤は、適量の活性成分を含む単位投与量にさらに分割される。この単位剤形は、パッケージされた製剤すなわち個別の量の製剤を含むパッケージであり、例えばパケットされた錠剤、カプセル剤及びバイアルびん又はアンプル中の散剤がある。また、単位剤形は、カプセル剤、錠剤、カシェ剤もしくはトローチ剤自体であってもよく、又は適当な数のこれら製剤のパッケージされた形態のものでもよい。
【0072】
α2δサブユニットに対する結合度は、N.S,Gee et al., J.Biol. Chem., 1996, 271:5879-5776に記載されているように、[3H]ギャバペンチンとブタ脳組織由来α2δサブユニットを使う放射性リガンド結合検定法を利用して測定できる。
【0073】
本発明の化合物は、α2δサブユニットに対して優れた結合アフィニティーを示す。ギャバペンチン(Neurontin(登録商標))は、この検定法では、約0.10〜0.12μMである。本発明の化合物は前記サブユニットにも結合するので、例えば全身性痙攣、不安および痛みに対する薬剤としてギャバペンチンに匹敵する薬理学的特性を示すと予想される。
【0074】
[3H]ギャバペンチンとブタ脳組織由来α2δサブユニットを使う放射性リガンド結合検定法を使って、本発明の化合物のα2δサブユニットに対する結合アフィニティーを測定できる(Gee,Nicolas S. et al. 「The novel anti-convulsant drug,gabapentin(Neurontin),binds to the α2δsubunit of a calcium channel」,J.Biol.Chem.(1996),271(10),5768-76参照)。実施例1の標題化合物は0.037μMというIC50を示し、実施例3の標題化合物は0.34μMというIC50を示し、そして実施例6の標題化合物は0.89μMというIC50を示した。
【0075】
本発明の化合物の生体内活性は、痛覚過敏の動物モデルで測定できる(Sulka,K et al.,2001,「Unilateral Intramuscular Injections Of Acidic Saline Produce A Bilateral,Long-Lasting Hyperalgesia ,Muscle Nerve 24:37-46;Dixon,W.,1980,「Efficient analysis of experimental observation」,Ann Rev Pharmacol Toxicol 20:441-462;Randall L.O. and Selitto J.J. 「A Method For Measurement Of Analgesic Activity On Inflamed Tissue」Arch. Int. Pharmacodyn.,1957;4:409-419;Hargreaves K., Dubner R., Brown F., Flores C., and Joris J.「A New And Sensitive Method For Measuring Thermal Nociception In Cutaneous Hyperalgesia」,Pain.32:77-88参照)不安(Vogel JR,Beer B. and Clody DE,「A Simple And Reliable Conflict Procedure For Testing Anti-Anxiety Agents」,Psychopharmacologia 21:1-7 1971)。
【0076】
以下の諸実施例は本発明の化合物の製造について例示する。融点は補正していない。NMRはppmで報告され、試料溶媒からのジュウテリウムのロック信号を参照している。
【実施例】
【0077】
実施例1
1-アミノメチル-スピロ[2.5]オクタン-1-カルボン酸塩酸
A. 1-シアノ-スピロ[2.5]オクタン-1-カルボン酸エチルエステル
アセトニトリル30mLにシアノ-シクロヘキシリデン-酢酸エチルエステル(1.37g,7.09mmol)を溶解した溶液に、ニトロメタン(1.92mL,35.5mmol)を添加し、続いて1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU) (1.06mL,7.09mmol)を添加してオレンジ色の溶液を得た。その反応混合物を2.5時間攪拌し次にエチルエーテル(Et2O)と1N 塩酸(HCl)(aq)に分配した。生成した相を分離し、その有機相をブラインで洗浄し硫酸マグネシウム(MgSO4)で乾燥し次に濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(5%酢酸エチル(EtOAc)/ヘキサン)に付して、1.1g(75%)の1-シアノ-スピロ[2.5]オクタン-1-カルボン酸エチルエステルを無色油状物として得た。
【化6】

元素分析結果:C12H17NO2としての計算値:C,69.54;H,8.27;N,6.76/実測値:C,69.41;H,8.33;N,6.75。
【0078】
B. 1-アミノメチル-スピロ[2.5]オクタン-1-カルボン酸エチルエステル
エタノール(EtOH)95mLに1-シアノ-スピロ[2.5]オクタン-1-カルボン酸エチルエステル(7.1g,34.2mmol)を溶解した溶液に、トリエチルアミン(5.0mL)とラネーニッケル(4.0g)を添加した。その混合物を、Parrシェーカー内で、48psiにて48時間水素化した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(5→10→15%MeOH/塩化メチレン(CH2Cl2))に付して5.0g(69%)の1-アミノメチル-スピロ[2.5]オクタン-1-カルボン酸エチルエステルを無色油状物として得た。
【化7】

【0079】
C. 1-アミノメチル-スピロ[2.5]オクタン-1-カルボン酸塩酸
1-アミノメチル-スピロ[2.5]オクタン-1-カルボン酸エチルエステル(5.0g,23.7mmol)に50mLの3N HCl(aq)を添加し次いでその混合物を72時間還流した。1H NMRの粗データは、加水分解反応が50%まで完了したことを示した。その溶液を濃縮し次いでその残留物をEt2Oで徹底的に洗浄して出発物質を除き微粉末の白色固体を得た。これら固体を合して再びEt2O(3X15mL)で洗浄してチョーク状固体を得た。そのバッチの小部分を、MeOH/EtOAcから再結晶させて、0.17g(3.3%)の1-アミノメチル-スピロ[2.5]オクタン-1-カルボン酸(mp>250℃(分解))を得た。
【化8】

元素分析結果:C10H17NO2・HClとしての計算値:C,54.67;H,8.26,N,6.37/実測値:C,54.77;H,8.41,N,6.3。第二のクロップも得た(0.34g,6.6%)。元素分析結果:C10H17NO2HClとしての計算値:C,54.67;H,8.26,N,6.37/実測値:C, 54.71;H,8.42,N,6.22。前記のEt2O洗浄液を濃縮して、1-アミノメチル-スピロ[2.5]オクタン-1-カルボン酸エチルエステル塩酸を無色固体(mp 118-120℃)として得た。
【化9】

元素分析結果:C12H21NO2・HClとしての計算値:C,58.17;H,8.95,N,5.65/実測値:C, 58.31;H,8.87;N,5.51。
【0080】
以下の化合物は、実施例1に記載した手順に従って製造した。
【0081】
実施例2
1-アミノメチル-スピロ[2.4]ヘプタン-1-カルボン酸塩酸
【化10】

【0082】
実施例3
1-アミノメチル-スピロ[2.6]ノナン-1-カルボン酸塩酸
【化11】

【0083】
実施例4
1-アミノメチル-2-メチル-スピロ[2.6]ノナン-1-カルボン酸
(ニトロエタンでシクロプロパン化することによって製造):
【化12】

元素分析結果:C12H21NO2としての計算値:C,68.21; H,10.02; N,6.63/実測値:C, 67.65;H,10.31;N,6.57。
【0084】
実施例5
1- アミノメチル-スピロ[2.4]ヘプタン-1-カルボン酸
A. シアノ-シクロペンチリデン-酢酸メチルエステル
乾燥ベンゼン(100ml)にシクロペンタノン(84.1g,1mol)を溶解した溶液に、シアノ酢酸メチル(99.1g,1mol)、酢酸アンモニウム(10g)及び氷酢酸(20mL)を添加した。その反応混合物を、Dean-Stark装置を使って、12時間加熱還流し次いで室温まで冷やした。過剰の溶媒を減圧で除き残留物をEtOAc (400mL)に溶解した。有機層を水で洗浄し、乾燥し(NA2SO4)、次に蒸発させて生成物を淡黄色の油状物として得た。その淡黄色油状物を蒸留(10mmHg,140-145℃)によってさらに精製してシアノ-シクロペンチリデン-酢酸メチルエステル(130g,79%)を無色油状物として得た。
【化13】

【0085】
B. 1-シアノ-スピロ[2.4]ヘプタン-1-カルボン酸メチルエステル
アセトニトリル(500mL)にシアノ-シクロペンチリデン-酢酸メチルエステル(20.8g,126mmol)を溶解した溶液に、ニトロメタン(34mL,630mmol,5eq)を添加し続いて1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU) (18.8mL, 126mmol)を滴下して添加した。その反応混合物は、DBUを添加したとき、オレンジ色に変化した。その反応混合物を室温で16時間攪拌した。さらに別のDBU(1mL)を添加して1時間攪拌した。その反応混合物を、エーテル(1L)と1N HCl(400mL)に分配してそれらの層を分離した。その有機層を、1N HCl(2X300mL)、ブライン(2X200mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し次いで蒸発させた。残留物を、4-6%酢酸エチル/ヘキサンで溶離するウエットパックドシリカゲルのクロマトグラフィーに付した。適正な画分を合し蒸発させて、14.0g(63%)の1-シアノ-スピロ[2.4]ヘプタン-1-カルボン酸メチルエステルを透明な油状物として得た。
【化14】

【0086】
C. 1-アミノメチル-スピロ[2.4]ヘプタン-1-カルボン酸メチルエステル
メタノール(240mL)に1-シアノ-スピロ[2.4]ヘプタン-1-カルボン酸メチルエステル(3.45g,19.3mmol)を溶解した溶液に、塩化コバルト六水和物(CoCl2-6H2O)(9.16g,38.5mmol)を添加して濃赤紫色の溶液を得た。水素の放出と黒色溶液を生ずる発熱反応とを注意深く制御しながら、ホウ水素化ナトリウム(7.30g,193mmol)を少しずつ10分間かけて添加した。その反応混合物を、前記添加を完了した後、30分間、窒素雰囲気下で攪拌した。その反応混合物を、0.5N HCl(1.3L)を注意深く添加してクエンチした。その溶液に濃水酸化アンモニウムを添加することによってアルカリ性(pH約9)にした。生成した混合物を酢酸エチル(4X400mL)で抽出した。有機層を合して硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し次いで蒸発させて、3.07g(87%)の1-アミノメチル-スピロ[2.4]ヘプタン-1-カルボン酸メチルエステルを黄色油状物として得た。
【化15】

【0087】
D. 1-アミノメチル-スピロ[2.4]ヘプタン-1-カルボン酸
1-アミノメチル-スピロ[2.4]ヘプタン-1-カルボン酸メチルエステル(3.40g,18.6mmol)の溶液に、メタノール(75mL)と水酸化リチウム-水(LiOH-H2O)(1.55g,37.1mmol)を添加した。その混合物を、窒素雰囲気下、48時間加熱還流した。溶媒を減圧下蒸発させて除去し、残留物を水(50mL)に溶解した。氷浴で冷却しながら、pHが6に調整されるまで濃塩酸(約2.5mL)を添加した。白色沈澱を濾過で分離し次に減圧乾燥して、1.22g(39%)の1-アミノメチル-スピロ[2.4]ヘプタン-1-カルボン酸を、灰白色の固体(mp 231-235℃(分解))として得た。
【化16】

元素分析結果:C9H15NO2-1.1H2Oとしての計算値C,57.18;H,9.17;N,7.41/ 実測値C,57.38;H,8.82;N,7.09。
【0088】
実施例8
1-アミノメチル-2-イソブチル-シクロプロパンカルボン酸塩酸
A. 1-シアノ-2-イソブチル-シクロプロパンカルボン酸エチルエステル
16mLのアセトニトリルに2-シアノ-5-メチル-ヘキサ-2-エン酸エチルエステル(0.74g,4.08mmol)を溶解した溶液に、ニトロメタン(1.11mL,20.4mmol)を添加し、続いてDBU(0.61mL,4.08mmol)を添加してオレンジ色の溶液を得た。その反応混合物を16時間60℃で加熱し次に冷やしてEt2Oと1N HCl(aq)に分配した。これらの相を分離し、その有機相をブラインで洗浄し、乾燥し(Mg SO4)、次に濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(5→10%EtOAc/ヘキサン)に付して、0.56g(70%)の1-シアノ-2-イソブチル-シクロプロパンカルボン酸エチルエステルを淡黄色の油状物として得た。
【化17】

元素分析結果:C11H17NO2としての計算値C,67.66;H,8.78;N,7.17/実測値C,67.32;H,8.74;N,7.32。
【0089】
B. 1-アミノメチル-2-イソブチル-シクロプロパンカルボン酸エチルエステル
45mLのEtOHに1-シアノ-2-イソブチル-シクロプロパンカルボン酸エチルエステル(0.41g,2.10mmol)を溶解した溶液に、トリエチルアミン(5.0mL)とラネーニッケル(1.0g)を添加した。その混合物を、Parrシェーカー内で48psiにて18時間水素化し、濾過し、次いで濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(5→10%MeOH/CH2Cl2)に付して、0.11g(26%)の1-アミノメチル-2-イソブチル-シクロプロパンカルボン酸エチルエステルを無色油状物として得た。
【化18】

【0090】
C. 1-アミノメチル-2-イソブチル-シクロプロパンカルボン酸塩酸
1-アミノメチル-2-イソブチル-シクロプロパンカルボン酸エチルエステル(0.10g,0.50mmol)に、10mLの3N HCl(aq)を添加し、その混合物を60時間還流させた。1H NMRの大まかな測定結果は、加水分解反応が100%完了したことを示した。その溶液を、温度が高いままガラスウールで濾過し次いで濃縮した。固体の残留物をEt2O(2X3mL)で洗浄して、86mg(100%)の1-アミノメチル-2-イソブチル-シクロプロパンカルボン酸塩酸を、無色の固体(mp> 220℃(分解))として得た。
【化19】

元素分析結果:C9H17NO2・HClとしての計算値 C,52.05;H,8.74;N,6.74/実測値 C,50.32;H,8.15;N,6.53。
【0091】
実施例7
1-アミノメチル-2-イソプロピル-シクロプロパンカルボン酸塩酸
A. 2-シアノ-4-メチル-ペンタ-2-エン酸メチルエステル
乾燥ベンゼン(20mL)にイソブチルアルデヒド1(18.2mL,200mmol)を溶解した溶液に、シアノ酢酸メチル(18mL,200mmol)、酢酸アンモニウム(2g)及び氷酢酸(4mL)を添加した。その反応混合物を60℃で30分間攪拌し次に室温まで冷ました。過剰の溶媒を減圧で除き次に残留物をEtOAc(200mL)に溶解した。その有機層を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、次に蒸発させて2-シアノ-4-メチル-ペンタ-2-エン酸メチルエステルを淡黄色油状物として得た。その淡黄色油状物を、蒸留(7mmHg)でさらに精製して生成物2(27.4g,56%)を無色油状物として得た。
【化20】

【0092】
B. 1-シアノ-2-イソプロピル-シクロプロパンカルボン酸メチルエステル
乾燥アセトニトリル(60mL)に2-シアノ-4-メチル-ペンタ-2-エン酸メチルエステル(10.5g,68.3mmol)を溶解した溶液に、ニトロメタン(5.5mL,103mmol)を添加し次にアルミナ保持フッ化カリウム(40重量%,22g)を少しずつ添加した。その反応混合物を還流しながら2時間攪拌し次いで室温まで冷ました。固体を、セライトの短いパッドで濾過して取り出し、アセトニトリルで洗浄した。過剰の溶媒を減圧で除き、残留物をエーテルに再溶解した。そのエーテル層を水、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム(Na2SO4)で乾燥し次に減圧で濃縮した。その粗生成物を、溶離液としてヘキサン/EtOAc(8:2)を使うフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製して、1-シアノ-2-イソプロピル-シクロプロパンカルボン酸メチルエステル(7.7g,68%)を無色油状物として得た。
【化21】

【0093】
C. 1-(tert-ブトキシカルボニルアミノ-メチル)-2-イソプロピル-シクロプロパンカルボン酸メチルエステル
MeOH(560mL)に1-シアノ-2-イソプロピル-シクロプロパンカルボン酸メチルエステル(7.7g,46.1mmol)と塩化コバルト(II)六水和物(21.9g,92.2mmol)を溶解した溶液に、ホウ水素化ナトリウム(NaBH4)(17.4g, 461mmol)を少しずつ添加した。生成した黒色沈澱を室温で1時間攪拌し次に0.5N HCl(200mL)でクエンチした。黒色沈澱が溶解した後、過剰の溶媒を除き次いで水性層に2N 水酸化ナトリウム(NaOH)を添加してアルカリ性にした。そのアルカリ性溶液を、ジクロロメタン(400mL)にジ炭酸ジ-tert-ブチル(20.1g,92.2mmol)を溶解した溶液にゆっくり添加した。その反応混合物を室温で一夜攪拌し、次に有機層を分離してブラインで洗浄し次いで乾燥した(Na2SO4)。過剰の溶媒を蒸発させ、続いて残留物を、溶離液としてヘキサン/EtOAc(9:1)を使うカラムクロマトグラフィーで精製して、1-(tert-ブトキシカルボニルアミノ-メチル)-2-イソプロピル-シクロプロパンカルボン酸メチルエステル(10.9g,88%)を無色油状物として得た。
【化22】

【0094】
D. 1-(tert-ブトキシカルボニルアミノ-メチル)-2-イソプロピル-シクロプロパンカルボン酸
MeOH(320mL)に1-(tert-ブトキシカルボニルアミノ-メチル)-2-イソプロピル-シクロプロパンカルボン酸メチルエステル(10.9g,40/2 mmol)を溶解した溶液に、水(98mL)に水酸化リチウム(LiOH)(4.2g,100mmol)を溶解した溶液を添加した。その反応混合物を3時間加熱還流し次いで室温まで冷ました。過剰の溶媒を除いて、残留物を水(100mL)に溶解した。その水溶液をエーテルで洗浄し、2N HClでpH=3に酸性にし次いでEtOAc(2X150mL)で抽出した。有機相を合してブラインで洗浄し、乾燥し(Na2SO4)次いで溶媒を蒸発させて、1-(tert-ブトキシカルボニルアミノ-メチル)-2-イソプロピル-シクロプロパンカルボン酸(9.0g,87%)を無色油状物として得た。
【化23】

【0095】
E. 1-アミノメチル-2-イソプロピル-シクロプロパンカルボン酸塩酸
乾燥1,4-ヂオキサン(40mL)に1-(tert-ブトキシカルボニルアミノ-メチル)-2-イソプロピル-シクロプロパンカルボン酸(2.05g,8.0mmol)を溶解した溶液に、4N HCl(1,4-ヂオキサン中40mL)を添加した。その反応混合物を室温で一夜攪拌し次にエーテル(100mL)を添加した。生成した白色固体を集めて乾燥し、1-アミノメチル-2-イソプロピル-シクロプロパンカルボン酸塩酸(1.35g,88%)(mp:245-246℃)を得た。
【化24】

元素分析結果:C8H15NO2・HClとしての計算値 C,49.61;H,8.33; N,7.23;Cl,18.31/実測値 C,49.76; H, 8.44 ; N,7.11;Cl,18.48。
【0096】
実施例8
1-アミノメチル-2,2-ジプロピル-シクロプロパンカルボン酸
A. 2-シアノ-3-プロピル-ヘキサ-2-エン酸ベンジルエステル
4-ヘプタノン(2.0mL,14.3mmol)とシアノ酢酸ベンジル(2.51g,14.3mmol)の0℃の混合物に、酢酸(0.08mL1.43mmol)を添加し、次にピペリジン(0.14mL,1.43mmol)を滴下して添加した。氷浴を取り外して、攪拌を10分間続けた。追加の酢酸(0.08mL)とピペリジン(0.14mL)を添加し、次に攪拌が阻害されないように、オーブンで乾燥した4A 分子ふるいを添加した。その混合物を1時時間攪拌し次にEtOAcと飽和重炭酸ナトリウム溶液(NaHCO3)(aq)に分配した。それらの相を分離して、有機相をブラインで洗浄し乾燥し(MgSO4)、次に濃縮して、1.03g(27%)の2-シアノ-3-プロピル-ヘキサ-2-エン酸ベンジルエステルを無色油状物として得た。
【化25】

元素分析結果:C17H21NO2としての計算値 C,75.25;H,7.80;N,5.16/実測値 C,75.44; H, 7.80 ; N,5.22。
【0097】
B. 1-シアノ-2,2-ジプロピル-シクロプロパンカルボン酸ベンジルエステル
50mLのアセトニトリルに2-シアノ-3-プロピル-ヘキサ-2-エン酸ベンジルエステル(0.91g,3.35mmol)を溶解した溶液に、ニトロメタン(0.91mL,16.77mmol)を添加し、続いてDBU(0.50mL,3.35mmol)を添加してオレンジ色の溶液を得た。その反応混合物を室温で16時間攪拌し次いでEt2Oと1N HCl(aq)に分配した。それらの相を分離して、有機相をブラインで洗浄し乾燥し(MgSO4)次に濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(5→10%EtOAc/ヘキサン)に付して,0.71g(81%)の1-シアノ-2,2-ジプロピル-シクロプロパンカルボン酸ベンジルエステルを淡黄色の油状物として得た。
【化26】

元素分析結果:C18H23NO2としての計算値 C,75.76;H,8.12;N,4.91/実測値 C,75.38; H, 8.02 ; N,4.97。
【0098】
C. 1-アミノメチル-2,2-ジプロピル-シクロプロパンカルボン酸
16mLのMeOH-HClに1-シアノ-2,2-ジプロピル-シクロプロパンカルボン酸ベンジルエステル(0.35g,1.79mmol)を溶解した溶液に、二酸化白金(PtO2)(0.035g)を添加した。その混合物を、Parrシェーカー内で48psiにて21時間水素化した。その混合物を濾過し濃縮した。残留物を、シリカゲル(0.25:1.25:3.5の濃度の水酸化アンモニウム(NH4OH)(aq): MeOH:CH2Cl2)のフラッシュクロマトグラフィーに付し、続いてDOWEX-50W8-100樹脂のイオン交換クロマトグラフィーに付して、0.09g(18%)の1-アミノメチル-2,2-ジプロピル-シクロプロパンカルボン酸を無色の固体(mp 255-257℃)として得た。
【化27】

元素分析結果:C11H21NO2としての計算値 C,66.29;H,10.62;N,7.03/実測値 C,66.39; H, 10.79 ; N,7.05。
【0099】
下記化合物は上記実施例8に記載した手順で製造した。
【0100】
実施例9
1-アミノメチル-5-メチル-スピロ[2.4]ヘプタン-1-カルボン酸
(ジアステレオマーの混合物)
mp 249℃(分解)、LRMS:m/z 182.1(M-1)
【0101】
実施例10
1-アミノメチル-2,2-ジメチル-シクロプロパンカルボン酸
【化28】

【0102】
実施例11
1-アミノメチル-2-(1-エチル-プロピル)-シクロプロパンカルボン酸
A. 2-シアノ-4-エチル-ヘキサ-2-エン酸ベンジルエステル
0℃の2-エチルブチルアルデヒド(2.0mL,16.2mmol)とシアノ酢酸ベンジル(2.85g,16.2mmol)の混合物に、酢酸(0.1mL,1.62mmol)を添加し次いでピペリジン(0.16mL,1.62mmol)を滴下して加えた。氷浴を取り除いて攪拌を10分間続けた。追加の酢酸(0.1mL)とピペリジン(0.16mL)を添加し、次に攪拌を妨げないように、オーブンで乾燥した4A 分子ふるいを添加した。その混合物を1.5時間攪拌し次いでEtOAcと飽和NaHCO3(aq)に分配した。これらの相を分離し、有機相をブラインで洗浄し乾燥し(MgSO4)次いで濃縮して、3.96g(95%)の2-シアノ-4-エチル-ヘキサ-2-エン酸ベンジルエステルを、無色油状物として得た。
【化29】

元素分析結果:C16H19NO2としての計算値 C,74.68; H,7.44; N, 5.44/実測値 C,74.75; H, 7.52 ; N,5.50。
【0103】
B. 1-シアノ-2-(1-エチル-プロピル)-シクロプロパンカルボン酸ベンジルエステル
80mLのアセトニトリルに2-シアノ-4-エチル-ヘキサ-2-エン酸ベンジルエステル(3.76g,14.6mmol)を溶解した溶液に、ニトロメタン(3.95mL,73mmol)を添加し、次にDBU(2.18mL,14.6mmol)を添加してオレンジ色の溶液を得た。その反応混合物を60℃で16時間加熱し、冷ましてEt2Oと1N HCl(aq)に分配した。その相を分離し、有機相をブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO4)次いで濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(5→10% EtOAc/ヘキサン)に付して、2.63g(66%)の1-シアノ-2-(1-エチル-プロピル)-シクロプロパンカルボン酸ベンジルエステルを淡黄色油状物として得た。
【化30】

元素分析結果:C17H21NO2としての計算値 C,75.25; H,7.80; N, 5.16/実測値 C,75.44; H, 7.83 ; N,5.22。
【0104】
C. 1-アミノメチル-2-(1-エチル-プロピル)-シクロプロパンカルボン酸
25mLのTHFに1-シアノ-2-(1-エチル-プロピル)-シクロプロパンカルボン酸ベンジルエステル(1.76g,6.5mmol)を溶解した溶液に、20%のPd/C(0.2g)を添加した。その混合物をParrシェーカー内で48psiにて3時間水素化した。1H NMRの分析結果は、上記ベンジルエステルが完全に開裂されたことを示した。その混合物を濾過し濃縮し次に塩酸(2g)をPtO2(0.42g)とともに添加して、その混合物を前記ニトリルが還元されるまでさらに16時間水素化した。その混合物を濾過し次に濃縮した。残留物を、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(0.25:1.25:3.5の濃度,NH4OH(aq):MeOH:CH2Cl2)に付し、続いてDOWEX-50WX8-100樹脂のイオン交換クロマトグラフィーに付して0.13g(11%)の1-アミノメチル-2-(1-エチル-プロピル)-シクロプロパンカルボン酸を無色の固体(mp 255-257℃)として得た。
【化31】

元素分析結果:C10H19NO2としての計算値 C,64.83; H,10.34; N, 7.56/実測値 C,64.84; H, 10.69; N,7.44。
【0105】
実施例12と13の標題化合物は上記実施例11に記載した手順で製造した。
【0106】
実施例12
1-アミノメチル-2-イソプロピル-シクロプロパンカルボン酸
【化32】

【0107】
実施例13
1-アミノメチル-2-シクロヘキシル-シクロプロパンカルボン酸
【化33】

実施例14
1-アミノメチル-スピロ[2.5]オクタン-1-カルボン酸塩酸
A. シアノ-シクロペンチリデン-酢酸メチルエステル
乾燥ベンゼン(100mL)にシクロペンタノン(84.1g,1mol)を溶解した溶液に、シアノ酢酸メチル(99.1g,1mol)、酢酸アンモニウム(10g)及び氷酢酸(20mL)を添加した。その反応混合物を、Dean-Starkの装置を使って12時間加熱還流し次に室温まで冷ました。過剰の溶媒を減圧で除いて、残留物をEtOAc(400mL)に溶解した。有機層を水で洗浄し乾燥し(Na2SO4)、次に蒸発させて生成物を淡黄色油状物として得た。その淡黄色油状物を蒸留(10mmHg,140-145℃)でさらに精製して、シアノ-シクロペンチリデン-酢酸メチルエステル(130g,79%)を無色油状物として得た。
【化34】

【0108】
B. 1-シアノ-スピロ[2.4]ヘプタン-1-カルボン酸メチルエステル
アセトニトリル(500mL)にシアノ-シクロペンチリデン-酢酸メチルエステル(20.8g,126mmol)を溶解した溶液に、ニトロメタン(34mL,630mmol,5 eq)を添加し、続いて1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)(18.8mL,126mmol)を滴下して加えた。その反応混合物は、DBUを添加したときオレンジ色に変色した。その反応混合物を室温で16時間攪拌した。別のDBU(1mL)を添加して1時間攪拌した。その反応混合物をエーテル(1mL)と1N HCl(400mL)に分配し、それらの層を分離した。有機層を1N HCl(2X300mL)、ブライン(2X200mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し次に蒸発させた。残留物を、4-6%酢酸エチル/ヘキサンで溶離するウエットパックドシリカゲルのクロマトグラフィーに付した。適正な画分を合して蒸発させて14.0g(62%)の1-シアノ-スピロ[2.4]ヘプタン-1-カルボン酸メチルエステルを透明油状物として得た。
【化35】

【0109】
C. 1-アミノメチル-スピロ[2.4]ヘプタン-1-カルボン酸メチルエステル
メタノール(240mL)に1-シアノ-スピロ[2.4]ヘプタン-1-カルボン酸メチルエステル(3.45g,19.3mmol)を溶解した溶液に、CoCl2-6H2O(9.16g, 38.5mmol)を添加して濃赤紫色の溶液を得た。水素の放出及び黒色溶液を生成する発熱反応を注意深く制御しながら、ホウ水素化ナトリウム(7.30g,193mmol)を少しずつ10分間かけて添加した。その反応混合物は、前記添加を完了した後、窒素雰囲気下で30分間攪拌した。その反応混合物に0.5N HCl(1.3L)を注意深く添加することによってクエンチした。その溶液に濃水酸化アンモニウム溶液を添加してアルカリ性(pH約9)にした。その混合物を酢酸エチル(4X400mL)で抽出した。有機層を合して、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し次いで蒸発させて、3.07g(87%)の1-アミノメチル-スピロ[2.4]ヘプタン-1-カルボン酸メチルエステルを黄色油状物として得た。
【化36】

【0110】
D. 1-アミノメチル-スピロ[2.4]ヘプタン-1-カルボン酸
1-アミノメチル-スピロ[2.4]ヘプタン-1-カルボン酸メチルエステル(3.40g,18.6mmol)の溶液に、メタノール(75mL)とLiOH-H2O(1.55g,37.1mmol)を添加した。その混合物を、窒素雰囲気下48時間加熱還流した。溶媒を減圧蒸発で除き、残留物を水(50mL)に溶解した。氷浴冷却を行いながら、濃塩酸(約2.5mL)を添加してpHを6に調節した。白色沈澱を濾過で分離し、減圧乾燥して、1.22g(39%)の1-アミノメチル-スピロ[2.4]ヘプタン-1-カルボン酸を灰白色の固体(mp 231-235℃(分解))として得た。
【化37】

元素分析結果:C9H15NO2-1.1H2Oとしての計算値 C,57.18; H,9.17; N, 7.41/実測値 C,57.38; H, 8.82; N,7.09。
【0111】
E. シアノ-シクロヘキシリデン-酢酸メチルエステル
乾燥ベンジン(100mL)にシクロヘキサノン(84.1g,1mol)を溶解した溶液に、シアノ酢酸メチル(99.1g,1mol)、酢酸アンモニウム(10g)及び氷酢酸(20mL)を添加した。Dean-Stark装置を使って、その反応混合物を12時間加熱還流し次に室温まで冷ました。過剰の溶媒を減圧で除き、残留物をEtOAc(400mL)に溶解した。有機層を水で洗浄し硫酸ナトリウムで乾燥し次に蒸発させて、シアノ-シクロヘキシリデン-酢酸メチルエステルを淡黄色油状物として得た。その淡黄色油状物を蒸留(10mmHg,150-155℃)してさらに精製し、標題の化合物(110g,61%)を無色油状物として得た。
【化38】

【0112】
F. 1-シアノ-スピロ[2,5]オクタン-1-カルボン酸メチルエステル
アセトニトリル(400mL)にシアノ-シクロヘキシリデン-酢酸メチルエステル(20.0g,112mmol)を溶解した溶液に、ニトロメタン(30mL,558mmol)を添加し、続いてDBU(16.9mL,113mmol)を10分間かけて滴下して添加した。その溶液は透明からオレンジ色になり、室温で5.5時間攪拌した。その溶液をエーテル(1L)で希釈し、1N HCl(2X250mL)で洗浄し次にブライン(2X250mL)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し次いで蒸発させた。残留物を、95:5 ヘキサン/酢酸エチルで溶離するウエットパックドシリカゲルカラム(6.5x40cm)のクロマトグラフィーに付した。適正な画分を合して蒸発させて18.6g(86%)の1-シアノ-スピロ[2,5]オクタン-1-カルボン酸メチルエステルを透明油状物として得た。
【化39】

【0113】
G. 1-(tert-ブトキシカルボニルアミノ-メチル)-スピロ[2.5]オクタン-1-カルボン酸メチルエステル
メタノール(480mL)に1-シアノ-スピロ[2,5]オクタン-1-カルボン酸メチルエステル(18.6g,96.2mmol)を溶解した溶液に、CoCl2-H2O (22,8g, 96.2mmol)を添加して濃赤紫色の溶液を得た。氷浴冷却を行いながら、ホウ水素化ナトリウム(14.5g,385mmol)を少しずつ10分間かけて添加して黒色溶液を得た。40分後、反応混合物を、2N HClで注意深くクエンチした。2N NaOHでpHを9に調整し次にその溶液をCH2Cl2(4回)で抽出した。有機層を合して、これに飽和炭酸カリウム溶液とジ炭酸ジ-tert-ブチル(26.2g,120mmol)を添加した。1時間後に層を分離した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し次に蒸発させて、35.7g(>100%)の1-(tert-ブトキシカルボニルアミノ-メチル)-スピロ[2.5]オクタン-1-カルボン酸メチルエステルを灰白色の固体として得た。この物質はこれ以上精製することなく次のステップに使用した。
【0114】
H. 1-(tert-ブトキシカルボニルアミノ-メチル)-スピロ[2.5]オクタン-1-カルボン酸
粗製1-(tert-ブトキシカルボニルアミノ-メチル)-スピロ[2.5]オクタン-1-カルボン酸メチルエステル(35.0g,約96.2mmol)の溶液に、LiOH-H2O(12.3g,294mmol)を添加し、続いて水(75mL)を添加した。その混合物を加熱還流した。48時間後に、追加のLiOH-H2O (6.15g,146mmol)を添加しそしてさらに24時間還流した。溶媒を減圧で除去した。残留物を水とエーテルに分配した。水性層を、存在するCH2Cl2の層とともに氷浴で冷却しながら、HCl水溶液でpH2-3まで酸性にした。これらの層を分離し、水性層をCH2Cl2(3回)で抽出した。合した有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し次いで蒸発させて、17.0g(63%,2ステップ)の1-(tert-ブトキシカルボニルアミノ-メチル)-スピロ[2.5]オクタン-1-カルボン酸を灰白色の固体として得た。
【0115】
I. 1-アミノメチル-スピロ[2.5]オクタン-カルボン酸塩酸
1,4-ジオキサン(3mL)に1-(tert-ブトキシカルボニルアミノ-メチル)-スピロ[2.5]オクタン-1-カルボン酸(200mg,0.706mmol)を溶解した溶液に、1,4-ジオキサン中4N HCl(3mL)を添加した。その反応混合物を室温で18時間攪拌した。エーテル(20mL)を添加し、沈澱を減圧濾過で単離した。その固体を、48℃にて減圧オーブンで乾燥して、133mg(86%)の1-アミノメチル-スピロ[2.5]オクタン-カルボン酸塩酸を白色固体(mp 240-242℃)として得た。
【化40】

元素分析結果:C10H17NO2-HClとしての計算値 C,56.67; H,8.26; N,6.38;Cl,16.14/実測値 C,54.91; H, 8.36; N,6.25;Cl,15.99。
【0116】
実施例15
1-アミノメチル-2-イソブチル-シクロプロパンカルボン酸塩酸
A. 2-シアノ-4-メチル-ペンタ-2-エン酸メチルエステル
乾燥ベンゼン(20mL)にイソブチルアルデヒド(18.2mL,200mmol)を溶解した溶液に、シアノ酢酸メチル(18mL,200mmol)、酢酸アンモニウム(2g)及び氷酢酸(4mL)を添加した。その反応混合物を、60℃で30分間攪拌し次に室温まで冷ました。過剰の溶媒を減圧で除き次いで残留物をEtOAc (200mL)に溶解した。その有機層を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し次に蒸発させて、2-シアノ-4-メチル-ペンタ-2-エン酸メチルエステルを淡黄色油状物として得た。その淡黄色油状物を蒸留(7mmHg)によってさらに精製して生成物2(27.4g,56%)を無色油状物として得た。
【化41】

【0117】
B. 1-シアノ-2-イソプロピル-シクロプロパンカルボン酸メチルエステル
乾燥アセトニトリル(60mL)に2-シアノ-4-メチル-ペンタ-2-エン酸メチルエステル(10.5g,68.3mmol)を溶解した溶液に、ニトロメタン(5.5mL,103mmol)を添加し、次にアルミナが保持しているフッ化カリウム(40重量%,22g)を少しずつ添加した。その反応混合物を、還流しながら2時間攪拌し、次いで室温まで冷ました。固体を、ショートパッドのセライトで濾過して取り出しアセトニトリルで洗浄した。過剰の溶媒を減圧で除き、残留物をエーテルに再溶解した。そのエーテル層を、水、ブラインで洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、次に減圧で濃縮した。その粗生成物を、溶離液としてヘキサン/EtOAc(8:2)を使うフラッシュカラムクロマトグラフィーに付して、1-シアノ-2-イソプロピル-シクロプロパンカルボン酸メチルエステル(7.7g,68%)を無色油状物として得た。
【化42】

【0118】
C. 1-(tert-ブトキシカルボニルアミノ-メチル)-2-イソプロピル-シクロプロパンカルボン酸メチルエステル
MeOH(560mL)に1-シアノ-2-イソプロピル-シクロプロパンカルボン酸メチルエステル(7.7g,46.1mmol)と塩化コバルト(II)六水和物(21.9g,92.2mmol)を溶解した溶液に、NaBH4(17.4g,461mmol)を少しずつ添加した。生成した黒色沈澱を、室温で1時間攪拌し次に0.5N HCl (200mL)でクエンチした。その黒色沈澱が溶解した後、過剰の溶媒を除き次いで水性層に2N NaOHを添加してアルカリ性にした。そのアルカリ性溶液を、ジクロロメタン(400mL)にジ炭酸ジ-tert-ブチル(20.1g,92.2mmol)を溶解した溶液にゆっくり添加した。その反応混合物を室温で一夜攪拌し、次いで有機層を分離しブラインで洗浄し次に乾燥した(Na2SO4)。過剰の溶媒を蒸発させ、続いて残留物を、溶離液としてヘキサン/EtOAc(9:1)を使うカラムクロマトグラフィーに付して、1-(tert-ブトキシカルボニルアミノ-メチル)-2-イソプロピル-シクロプロパンカルボン酸メチルエステル(10.9g,88%)を無色油状物として得た。
【化43】

【0119】
D. 1-(tert-ブトキシカルボニルアミノ-メチル)-2-イソプロピル-シクロプロパンカルボン酸
MeOH(320mL)に1-(tert-ブトキシカルボニルアミノ-メチル)-2-イソプロピル-シクロプロパンカルボン酸メチルエステル(10.9g,40.2mmol)を溶解した溶液に、LiOH(4.2g,100mmol)の水(98mL)溶液を添加した。その反応混合物を3時間加熱還流し次いで室温まで冷ました。過剰の溶媒を除き、残留物を水(100mL)に溶解した。その水溶液をエーテルで洗浄し、2N HClで酸性(pH=3)にし、次にEtOAc(2X150mL)で抽出した。有機相を合して、ブラインで洗浄し、乾燥し(Na2SO4)次に溶媒を蒸発させて、1-(tert-ブトキシカルボニルアミノ-メチル)-2-イソプロピル-シクロプロパンカルボン酸(9.0g,87%)を無色油状物として得た。
【化44】

【0120】
E. 1-アミノメチル-2-イソプロピル-シクロプロパンカルボン酸塩酸
乾燥1,4-ジオキサン(40mL)に1-(tert-ブトキシカルボニルアミノ-メチル)-2-イソプロピル-シクロプロパンカルボン酸(2.05g,8.0mmol)を溶解した溶液に、4N HCl(40mL,1,4-ジオキサン中)を添加した。その反応混合物を室温で一夜攪拌し次いでエーテル(100mL)を添加した。白色固体を集めて乾燥し、1-アミノメチル-2-イソプロピル-シクロプロパンカルボン酸塩酸(1.35g,88%)(mp:245-246℃)を得た。
【化45】

元素分析結果:C8H15NO2-HClとしての計算値 C,49.61; H,8.33; N,7.23;Cl,18.31/実測値 C,49.76; H, 8.44; N,7.11;Cl,18.48。
【0121】
F. 2-シアノ-5-メチル-ヘキサ-2-エン酸メチルエステル
乾燥ベンゼン(100mL)にイソバレルアルデヒド(86.1g,1mol)を溶解した溶液に、シアノ酢酸メチル2(99.1g,1mol)、酢酸アンモニウム(10g)及び氷酢酸(20mL)を添加した。その反応混合物を0℃で1時間攪拌し次いで室温まで冷ました。過剰の溶媒を減圧で除き、残留物をEtOAc(400mL)に溶解した。有機層を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、次いで蒸発させて、淡黄色油状物の生成物を得た。その淡黄色油状物を蒸留(10mmHg)でさらに精製して、100g(60%)の2-シアノ-5-メチル-ヘキサ-2-エン酸メチルエステルを無色油状物として得た。
【化46】

【0122】
G. 1-シアノ-2-イソブチル-シクロプロパンカルボン酸メチルエステル
乾燥アセトニトリル(110mL)に2-シアノ-5-メチル-ヘキサ-2-エン酸メチルエステル(20.2g,121mmol)を溶解した溶液に、ニトロメタン(9.8mL, 181mmol)を添加し、次いでアルミナで保持されたフッ化カリウム(40重量%,39.3g)を少しずつ添加した。その反応混合物を、2時間、還流しながら攪拌し、次に室温まで冷ました。その固体をショートパッドのセライトで濾過して取り出し、アセトニトリルで洗浄した。過剰の溶媒を減圧で除き、残留物をエーテルに再溶解した。そのエーテル層を水、ブラインで洗浄し、乾燥し(Na2SO4)次に減圧で濃縮した。その粗生成物を、溶離液としてヘキサン/EtOAc(8:2)を使うフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製して、15g(69%)の1-シアノ-2-イソブチル-シクロプロパンカルボン酸メチルエステルを無色油状物として得た。
【化47】

【0123】
H. 1-(tert-ブトキシカルボニルアミノ-メチル)-2-イソブチル-シクロプロパンカルボン酸メチルエステル
MeOH(800mL)に1-シアノ-2-イソブチル-シクロプロパンカルボン酸メチルエステル(13.0g,71.8mmol)と塩化コバルト(II)六水和物(34.2g,144mmol)を溶解した溶液に、NaBH4(27.2g,718mmol)を少しずつ添加した。生成した黒色沈澱を、室温で1時間攪拌し次いで0.5N HCl (400mL)でクエンチした。黒色沈澱が溶解した後、過剰の溶媒を除き、水性層に2N HClを添加することによってアルカリ性にした。そのアルカリ性溶液を、ジクロロメタン(600mL)にジ炭酸ジ-tert-ブチル(31.4g,144mmol)を溶解した溶液にゆっくり添加した。その反応混合物を室温で一夜攪拌し、次に有機層を分離してブラインで洗浄し乾燥(Na2SO4)した。過剰の溶媒を蒸発させ、続いて残留物ヲ、ヘキサン/EtOAc(9:1)を溶離液として使うカラムクロマトグラフィーで精製して16g(78%)の1-(tert-ブトキシカルボニルアミノ-メチル)-2-イソブチル-シクロプロパンカルボン酸メチルエステルを無色油状物として得た。
【化48】

【0124】
I. 1-(tert-ブトキシカルボニルアミノ-メチル)-2-イソブチル-シクロプロパンカルボン酸
MeOH(260mL)に1-(tert-ブトキシカルボニルアミノ-メチル)-2-イソブチル-シクロプロパンカルボン酸メチルエステル(9.1g,31.9mmol)を溶解した溶液に、LiOH(3.34g,79.7mmol)の水(80mL)溶液を添加した。その反応混合物を3時間加熱還流し次いで室温まで冷ました。過剰の溶媒を除き、残留物を水(100mL)に溶解した。その水溶液をエーテルで洗浄し、2N HClで酸性(pH=3)にしてEtOAc(2X150mL)で抽出した。有機相を合してブラインで洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、溶媒を蒸発させて8.4g(97%)の1-(tert-ブトキシカルボニルアミノ-メチル)-2-イソブチル-シクロプロパンカルボン酸を無色油状物として得た。
【化49】

【0125】
J. 1-アミノメチル-2-イソブチル-シクロプロパンカルボン酸塩酸
乾燥1,4-ジオキサン(60mL)に1-(tert-ブトキシカルボニルアミノ-メチル)-2-イソブチル-シクロプロパンカルボン酸(2.8g,10.3mmol)を溶解した溶液に、4N HCl(40mL,1,4-ジオキサン中)を添加した。その反応混合物を室温で一夜攪拌し次いでエーテル(100mL)を添加した。白色固体を集めて乾燥し、1.6g(76%)の1-アミノメチル-2-イソブチル-シクロプロパンカルボン酸塩酸(mp:254-255℃)を得た。
【化50】

元素分析結果:C9H17NO2-HClとしての計算値 C,52.05; H,8.74; N,6.74;/実測値 C,52.10; H, 8.73; N,6.67。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式I:
【化1】

{式中、R1とR2は水素、直鎖もしくは分枝鎖の(C1-C10)アルキル、直鎖もしくは分枝鎖の(C1-C10)アルコキシアルキル、フェニル-直鎖もしくは分枝鎖-(C1-C3)アルキル及びフェニル-直鎖もしくは分枝鎖-(C1-C3)アルコキシアルキルから独立して選択され、前記フェニル部分はハロもしくは(C1-C3)アルキルから独立して選択される一つもしくは二つの置換基で任意に置換されてもよく、又は
R1とR2は、それらが結合している炭素とともにシクロペンチル、シクロヘキシルもしくはシクロヘプチルのリングを形成し、これらリングは、上記R1とR2の定義で列挙された置換基の群から独立して選択された一つもしくは二つの置換基で任意に置換されてもよく、そして
R3とR4は水素及びメチルから独立して選択される。}で表される化合物又はこれら化合物の医薬として許容される塩。
【請求項2】
下記化合物及びそれらの医薬として許容できる塩:
1-アミノメチル-スピロ[2.4]ヘプタン-1-カルボン酸;
1-アミノメチル-スピロ[2.5]オクタン-1-カルボン酸;
1-アミノメチル-スピロ[2.6]ノナン-1-カルボン酸;
1-アミノメチル-5-メチル-スピロ[2.4]ヘプタン-1-カルボン酸;
1-アミノメチル-2-メチル-スピロ[2.6]ノナン-1-カルボン酸;
1-アミノメチル-2,2-ジメチル-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2,2-ジ-n-プロピル-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-イソプロピル-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-シクロプロピル-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-イソブチル-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(1-エチル-プロピル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-シクロヘキシル-シクロプロパンカルボン酸;及び
1-アミノメチル-2-(2-フェネチル)-シクロプロパンカルボン酸。
1-アミノメチル-スピロ[2.3]ヘキサン-1-カルボン酸;
1-アミノメチル-スピロ[2.7]デカン-1-カルボン酸;
1-アミノメチル-5,6-ジメチル-スピロ[2.4]ヘプタン-1-カルボン酸;
1-アミノメチル-5-メチル-スピロ[2.5]オクタン-1-カルボン酸;
1-アミノメチル-5,7-ジメチル-スピロ[2.5]オクタン-1-カルボン酸;
1-アミノメチル-2,2-ジメチル-スピロ[2.6]ノナン-1-カルボン酸;
1-アミノメチル-2,2-ジエチル-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2,2-ジ-n-ブチル-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2,2-ジイソブチル-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-n-プロピル-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(2-メチル-ブチル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(2,2-ジメチル-ブチル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(2-メチル-ペンチル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(2,2-ジメチル-ペンチル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(3-エチル-ペンチル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(4-エチル-ヘキシル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(1-メチル-シクロプロピルメチル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(1-エチル-シクロプロピルメチル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(1-プロピル-シクロプロピルメチル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(2-メチル-ヘキシル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(2,2-ジメチル-ヘキシル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(2,6-ジメチル-ヘプチル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(3,7-ジメチル-オクチル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-n-ブチル-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-シクロブチル-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-シクロペンチル-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-シクロヘプチル-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-シクロプロピルメチル-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-シクロヘキシルメチル-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-(2-シクロヘキシル-エチル)-シクロプロパンカルボン酸;
1-アミノメチル-2-フェニル-シクロプロパンカルボン酸;及び
1-アミノメチル-2-ベンジル-シクロプロパンカルボン酸
から選択される、請求項1に記載の化合物又は塩。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物もしくは塩及び医薬として許容できる担体を含有する医薬組成物。
【請求項4】
治療するために有効な量の請求項1に記載の化合物又は塩を、治療を必要とする哺乳類に投与することを含む、哺乳類の以下の障害又は症状:失神発作、てんかん、窒息、全無酸素症、低酸素症、脊髄の外傷、脳の外傷損傷、頭部外傷、脳虚血、卒中発作(例えば頚動脈内膜切除術などの一般的な血管手術法又は血管造影法などの血管外科診断法を受けている患者などの脳虚血に付随して起こる血栓塞栓卒中、病巣虚血、全虚血、一過性脳虚血卒中などの脳血管の問題を含む)、チオセミカルバジドによって起こるけいれん、カルジアゾールけいれん、及び脳梗塞、くも膜下出血もしくは脳水腫などの急性もしくは慢性の脳血管の損傷が原因の脳血管の障害から選択される障害又は症状を治療する方法。
【請求項5】
治療するために有効な量の請求項1に記載の化合物又は塩を、治療を必要とする哺乳類に投与することを含む、哺乳類の以下の障害又は症状:心臓神経障害、例えば、心臓神経失神、神経原性失神、頚動脈洞過敏症、神経血管症候群及び胃腸障害に派生する不整脈;ダウン症候群;シェーグレン症候群、高血圧、造血、術後神経腫、良性前立腺肥大症、歯周病、痔疾と肛門裂傷、不妊症、反射性交感神経性ジストロフィー、肝炎、高脂質血症に付随する腱痛、血管拡張、強皮症などの線維性疾患とコラーゲン疾患及び好酸球性肝蛭症;並びにアンギナ、片頭痛及びレイノー病などの血管れん縮病からなる群から選択される障害又は症状を治療する方法。
【請求項6】
治療するために有効な量の請求項1に記載の化合物又はその医薬として許容できる塩を、治療を必要とする哺乳類に投与することを含む、哺乳類の以下の障害又は症状:急性の痛み、慢性の痛み、急性の外傷などの軟組織と周辺の損傷が原因の痛み;疱疹後神経痛、後頭部神経痛、三叉神経痛、脊髄節もしくは肋間の神経痛などの神経痛;骨関節症及びリウマチ様関節炎に伴う痛み;歪、捻挫及び骨折などの外傷に付随する痛みなどの筋肉-骨格痛;脊髄もしくは脳幹の損傷による痛みなどの脊髄痛、中枢神経系の痛み;下背部痛、坐骨神経痛、歯痛、筋膜痛症候群、会陰切開痛、痛風痛及び熱傷による痛み;心臓痛などの深部痛と内臓痛;筋肉痛、眼痛、炎症痛、口顔痛例えば歯痛;腹痛と婦人科痛、例えば月経困難症、分娩陣痛及び子宮内膜症に伴う痛み;体因性痛み;末梢神経の障害例えば神経絞扼と腕神経叢の裂離に伴う痛みなどの神経と根の損傷に伴う痛み;四肢切断、三叉神経痛、神経腫もしくは脈管炎に伴う痛み;糖尿病性神経痛、化学療法が誘発する神経痛、急性のヘルペス性及びヘルペス後の神経痛;非定型顔面痛、神経障害性下背部痛及びくも膜炎、三叉神経性神経痛、後頭部神経痛、脊髄節神経痛もしくは肋間神経痛、HIV関連神経痛とAIDS関連神経痛などの神経痛;胃痛症、痛覚過敏、熱傷痛、突発性痛、化学療法によって起こる痛み;後頭部神経痛、ヒステリー痛、腕神経叢裂離、脚不穏症候群に伴う痛み;胆石に伴う痛み;慢性アルコール症もしくは甲状腺機能不全症もしくは尿毒症もしくはビタミン欠乏症によって起こる痛み;癌に伴う神経障害性及び非神経障害性の痛み(癌痛と呼称されることが多い)、幻想肢痛、機能性腹痛;前兆ありの片頭痛、前兆なしの片頭痛などの血管性頭痛、急性もしくは慢性の緊張性頭痛、洞性頭痛及びクラスター頭痛を含む頭痛;テンペロマンディビュラーペインと上顎洞痛;強直性脊椎炎から起こる痛み;膀胱収縮増大によって起こる痛み;術後の痛み、瘢痕の痛み、並びにHIV、アンスラルギア、脈管炎及び線維筋肉痛に伴う痛みなどの慢性の非神経障害性痛みから選択される障害又は症状を治療する方法。
【請求項7】
治療するために有効な量の請求項1に記載の化合物又は塩を、治療を必要とする哺乳類に投与することを含む、哺乳類の以下の障害又は症状:うつ病などの気分障害又はより詳しくは抑うつ性障害、例えば大うつ病障害、重篤な一極性反復性の大うつ病エピソード、胸腺不全障害、抑うつ神経症と神経性うつ病、メランコリーうつ病(無食症、体重減少、不眠、早朝覚醒もしくは精神性運動遅滞を含む)、非定型うつ病すなわち反応性うつ病(食欲増大、不眠症、精神運動性激越もしくは精神運動過敏を含む);治療抵抗性うつ病;季節的情動障害と小児うつ病;月経前症候群、月経前神経不安障害、上半身熱感、二極性障害すなわち躁うつ病、例えば二極性I障害、二極性II障害及び循環性障害;季節的情動障害、行為障害と分断行動障害;ストレス関連の身体障害と不安障害、例えば小児期不安障害、広場恐怖病ありもしくはなしの恐慌性障害、恐慌性障害の病歴なしの広場恐怖症、特定の恐怖症(例えば、特定動物恐怖症)、社会不安障害、社会恐怖症、強迫性障害、外傷後ストレス障害と急性ストレス障害を含むストレス障害及び全身性不安障害から選択される障害又は症状を治療する方法。
【請求項8】
治療するために有効な量の請求項1に記載の化合物又は塩を、治療を必要とする哺乳類に投与することを含む、哺乳類の以下の障害又は症状:境界性人格障害;精神分裂病などの精神病性障害、例えば分裂病型障害、分裂情動障害、妄想性障害、短期精神病障害、共有精神病障害、一般的医学症状による精神病障害、妄想もしくは幻覚を伴う精神病障害、物質が誘発する精神病障害、不安の精神病エピソード、精神病に付随する不安、重篤な大うつ病などの精神病性気分障害;急性そう病などの精神病障害に伴う気分障害と二極性障害に伴ううつ病、精神分裂病に伴う気分障害;及び知能遅延に伴う行動障害からなる群から選択される障害又は症状を治療する方法。
【請求項9】
治療するために有効な量の請求項1に記載の化合物又は塩を、治療を必要とする哺乳類に投与することを含む、哺乳類の以下の障害又は症状:睡眠障害、例えば不眠(例えば精神生理学的不眠と突発性不眠を含む一次不眠、脚不穏症候群に続く不眠を含む二次不眠、パーキンソン病などの慢性障害及び一過性の不眠)、夢遊病、断眠、REM睡眠障害、睡眠時無呼吸症、睡眠過剰、錯眠、睡眠-覚醒サイクルの障害、時差ぼけ、睡眠発作、交代制作業又は不規則な作業スケジュールに伴う睡眠障害、投薬又は他の原因によって起こる徐波睡眠の減少による不十分な睡眠の質からなる群から選択される障害又は症状を治療する方法。
【請求項10】
治療するために有効な量の請求項1に記載の化合物又は塩を、治療を必要とするヒトの被験者に投与することを含む、ヒト被験者の徐波睡眠を増大しかつ成長ホルモンの分泌を増大する方法。
【請求項11】
治療するために有効な量の請求項1に記載の化合物又は塩を、治療を必要とする哺乳類に投与することを含む、哺乳類の以下の障害又は症状:呼吸器疾患、特に過剰粘液分泌に関連する呼吸器疾患、例えば慢性閉塞性気道疾患、気管支肺炎、慢性気管支炎、のう胞性線維症成人呼吸困難症候群及び気管支痙攣;咳、百日咳、アンギオテンシン変換酵素(ACE)が誘発する咳、肺結核、湿疹と鼻炎などのアレルギー;接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、じんま疹などの湿疹様発疹皮膚炎;かゆみ、血液透析に伴うかゆみ;炎症性疾患、例えば炎症性腸疾患、乾癬、骨関節症、軟骨損傷(例えば、身体活動又は骨関節症から起こる軟骨損傷)、リウマチ様関節炎、乾癬性関節炎、喘息、かゆみ及び日焼け;並びに毒つたなどの過敏症疾患からなる群から選択される障害又は症状を治療する方法。
【請求項12】
治療するために有効な量の請求項1に記載の化合物又は塩を、治療を必要とする哺乳類に投与することを含む、哺乳類の以下の障害又は症状:神経変性障害例えばパーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)及びアルツハイマー病(AD);せん妄、痴呆(例えば、アルツハイマー病型の老年性痴呆、老人性痴呆、血管性痴呆、HIV-1関連痴呆、AIDS痴呆関連症候群(ADC)、及び頭部外傷による痴呆、パーキンソン病、ハンチントン病、ピック病、クロイツフェルト・ヤコブ病もしくは複数発症因子による痴呆)、健忘性障害、他の認知障害もしくは記憶障害、並びに痴呆の行動症状からなる群から選択される障害又は症状を治療する方法。
【請求項13】
治療するために有効な量の請求項1に記載の化合物又は塩を、治療を必要とする哺乳類に投与することを含む、哺乳類の以下の障害又は症状:乾燥眼症候群、結膜炎、春季結膜炎などの眼疾患及び増殖性硝子体網膜症などの細胞増殖に伴う眼の症状; 自閉症、注意欠失多動障害(ADHD)、脈管形成(すなわち脈管形成を阻害するために利用する)、ライター症候群及びアンスロパシー;アルコール、アンフェタミン類(又はアンフェタミン様物質)、カフェイン、大麻、コカイン、幻覚薬、吸入剤、エアゾール噴射剤、ニコチン、オピオイド類、フェニルグリシジン誘導体、鎮静薬、催眠薬及び抗不安薬を使用することから起こる物質関連障害(依存症と乱用、中毒、断薬、中毒せん妄及び断薬せん妄を含む);並びに行動に対する依存症を含む依存障害からなる群から選択される障害又は症状を治療する方法。
【請求項14】
治療するために有効な量の請求項1に記載の化合物又は塩を、治療を必要とする哺乳類に投与することを含む、哺乳類の以下の障害又は症状:ダウン症候群;多発性硬化症(MS)とアミロラテラル硬化症(ALS)などの脱髄疾患;広汎性発達障害、線維筋痛症、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症;HIV脳障害;身体異型障害などの解離性障害;無食欲と多食症などの摂食障害;潰瘍性大腸炎;クローン病;過敏腸管症候群;慢性疲労症候群;乳児突然死症候群(SIDS);過活動膀胱;過活動膀胱の下部尿路症状;慢性膀胱炎;化学療法が誘発する膀胱炎;咳、アンギオテンシン変換酵素(ACE)が誘発する咳、かゆみ、しゃっくり、月経前症候群、月経前神経不安障害、デスメノリアなどの無月経障害;肩/手症候群などの反射性交感神経性ジストロフィー;サイトカインによる化学療法で起こる血漿の血管外遊出;慢性膀胱炎、膀胱の排尿反射亢進、尿路の炎症、並びに切迫尿失禁、過活動膀胱、ストレス尿失禁及び混合尿失禁を含む尿失禁などの膀胱機能障害;強皮症と好酸球性肝蛭症などの線維性疾患とコラーゲン疾患;血管拡張及び扁桃炎とレイノー病などの血管れん縮病で起こる血流の障害;早期射精と男性勃起機能不全を含む性機能不全からなる群から選択される障害又は症状を治療する方法。
【請求項15】
治療するために有効な量の請求項1に記載の化合物又は塩を、治療を必要とする哺乳類に投与することを含む、哺乳類の以下の障害又は症状:運動障害例えば、原発性運動障害、運動不能症、運動機能異常(例えば家族性発作性運動機能異常、遅発性運動機能異常、振戦、舞踏病、ミオクローヌス、チックなどの運動機能異常)、けい性、ツレット症候群、スコット症候群、麻痺(例えば、ベル麻痺、脳性麻痺、出生麻痺、上腕麻痺、消耗麻痺、虚血性麻痺、進行性球麻痺などの麻痺)、無動硬直症候群;投薬が誘発する運動障害などの錐体外路の運動障害例えば、神経遮断薬が誘発するパーキンソン病、神経遮断薬による悪性症候群、神経遮断薬誘発急性筋緊張異常、神経遮断薬誘発急性坐位不能症、神経遮断薬誘発遅発性運動機能異常及び投薬が誘発する姿勢振戦;脚不穏症候群及びパーキンソン病もしくはハンチントン病に伴う運動障害;胃腸(GI)障害(炎症性腸疾患などの炎症性胃腸障害、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)が起こす障害及び胃炎、直腸炎、胃十二指腸潰瘍、消化性潰瘍、消化不良などの胃腸管の疾患、内臓のニューロンによる制御に関連する障害、潰瘍性大腸炎、慢性膵臓炎、クローン病、過敏腸管症候群を含む)、並びに嘔吐(術後の悪心と術後の嘔吐及び急性、遅延性もしくは先行性の嘔吐を含む);乳房痛症候群;乗物酔い;乳房腫瘍、胃癌、胃リンパ腫、神経節芽腫瘍、及び小細胞肺癌などの小細胞癌を含む新生物;全身性エリテマトーデス;及び免疫機能不全からなる群から選択される障害又は症状を治療する方法。

【公表番号】特表2006−516275(P2006−516275A)
【公表日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500289(P2006−500289)
【出願日】平成16年1月9日(2004.1.9)
【国際出願番号】PCT/IB2004/000058
【国際公開番号】WO2004/065361
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(503181266)ワーナー−ランバート カンパニー リミティド ライアビリティー カンパニー (167)
【Fターム(参考)】