説明

シクロプロピルカルボン酸エステル及び誘導体の調製方法

【課題】医薬的に活性な存在体の合成に使用できる中間体の調製方法におけるシクロプロピルカルボン酸エステルの使用並びにこれらの方法による中間体を提供する。
【解決手段】以下の式(I)の化合物の調製方法であって、


(式中Rは3,4−ジフルオロフェニルであり、Yは、メントキシである)以下の式(II):


の化合物を、溶媒の存在下で−10℃〜90℃の温度で、ジメチルスルホキソニウムメチリドと接触させることを含んでなる方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、ある種のシクロプロピルカルボン酸エステル及び他のシクロプロピルカルボン酸誘導体の調製のための新規な方法;ジメチルスルホキソニウムメチリド及びジメチルスルホニウムメチリドの調製のための新規な方法;医薬的に活性な存在体の合成に使用できる中間体の調製方法における、ある種のシクロプロピルカルボン酸エステルの使用;並びにこれらの方法により提供されるある種の中間体に関する。
【0002】
発明の説明
従って、本発明は第1の側面において、以下の式(I):
【0003】
【化11】

【0004】
[式中:
Rは、一つ又はそれより多いハロゲンで置換されたフェニルであり;
Yは、OR1であり、ここでR1は、直鎖アルキル、分枝鎖アルキル、シクロアルキル、又はビシクロヘプチル基(例えばボルニル)である]
の化合物の調製方法を提供し、この方法は
以下の式(II):
【0005】
【化12】

【0006】
(ここで、R及びYは、上記で定義した通りである)
の化合物を、溶媒の存在下で、ジメチルスルホキソニウムメチリドと接触させることを含む。
【0007】
適当には、溶媒は、極性溶媒、好ましくはジメチルスルホキシドである。適当には、反応は−10℃〜90℃、好ましくは25℃で行われる。
ジメチルスルホキソニウムメチリドは、トリメチルスルホキソニウム塩を、固体の強塩基と、好ましくは固体の形態で、ジメチルスルホキシド中で周囲温度又は高められた温度で反応させることによって調製することができる。適当には、塩基は、金属水酸化物、例えばNaOH、LiOH、又はアルカリ金属水素化物、例えばNaHである。好ましくは塩基は、水酸化ナトリウムである。
【0008】
好ましくは、ヨウ化トリメチルスルホキソニウムを、ジメチルスルホキシド中で(相転移触媒の非存在下で)水酸化ナトリウム粉末と、所望により窒素下で、20〜25℃で90分間撹拌する。別の方法として、ジメチルスルホキシドメチリドは、トリメチルスルホキソニウム塩(好ましくはヨウ化物又は塩化物)から、ジメチルスルホキシド中の水酸化ナトリウムを使用して、ジメチルスルホキシド中に相転移触媒(例えば臭化テトラブチル−n−アンモニウム)を伴いまたは他の強塩基(例えばアルカリ金属水素化物)を伴い、調製することができる。
【0009】
式(II)の化合物は、以下の式(III):
【0010】
【化13】

【0011】
(ここで、Rは上記で定義された通りである)
の化合物を、適当な塩素化剤と、不活性溶媒及び所望による触媒の存在下で、0〜200℃の温度で反応させることによって調製することができる。好ましくは、YはOR1であり、塩素化剤は塩化チオニルであり、不活性溶媒はトルエンであり、そして触媒はピリジンである。適当には反応温度は70℃である。次いで得られた酸塩素化物は、Yが上記で定義された通りであるYH又はY-(ここでY-はYのアニオン種である)と、所望により高められた温度(例えば100℃のような)で反応させられる。
【0012】
式(III)の化合物は、標準的化学反応を使用して、以下の式(IV):
【0013】
【化14】

【0014】
(ここで、Rは上記において定義された通りである)
の化合物を、ピリジン及びピペリジンの存在下で、高められた温度、好ましくは50〜90℃で、マロン酸と接触させることによって調製することができる。
【0015】
式(I)の化合物を、塩基性加水分解を使用して加水分解して、以下の式(V):
【0016】
【化15】

【0017】
(ここで、Rは上記において定義された通りである)
の化合物を得ることができる。例えば、エステル基は、好ましくは、水酸化ナトリウム又は水酸化リチウムのようなアルカリ金属水酸化物、或いは水酸化第四アンモニウムを使用した、水、アルコール水溶液又はテトラヒドロフラン水溶液のような溶媒中の、10〜100℃の温度における塩基性加水分解によって除去される。最も好ましくは、塩基は水酸化ナトリウムであり、溶媒はエタノールであり、そして反応温度は50℃である。
【0018】
式(V)の化合物は、塩化チオニル又は他の適した塩素化剤との、トルエン或いは他の適した溶媒、及び所望による触媒(好ましくはピリジン)の存在下の0〜200℃の反応によって、以下の式(VI):
【0019】
【化16】

【0020】
(ここで、Rは上記において定義された通りである)
の化合物を生成するために使用することができる。好ましくは、温度は65〜70℃である。
【0021】
式(VI)の化合物は、アジ化アルカリ金属(好ましくはアジ化ナトリウム)との相転移触媒(好ましくは臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム)、炭酸カリウム水溶液及び不活性溶媒(好ましくはトルエン)の存在下の反応によって、以下の式(VII):
【0022】
【化17】

【0023】
(ここで、Rは上記において定義された通りである)
の化合物の合成に使用することができる。好ましくは、反応温度は0〜10℃である。
【0024】
式(VII)の化合物は、トルエン中の0℃ないし200℃間の温度、好ましくは90〜100℃の反応温度における転位反応(rearrangement)によって、以下の式(VIII):
【0025】
【化18】

【0026】
(ここで、Rは上記において定義された通りである)
の化合物の合成に使用することができ、その後イソシアネート中間体は、高められた温度、好ましくは85〜90℃で塩酸と反応させられる。
【0027】
以下の式(IX):
【0028】
【化19】

【0029】
(ここで、Rは上記において定義された通りである)
の非プロトン化母体アミン(遊離塩基)は、式(VIII)の化合物の塩の水溶液のpHを10又はそれより高く調節することによって、遊離させることができる。次いでこれは、他の有機酸又は無機酸、好ましくはマンデル酸の塩に転換することができる。式(IX)の化合物のR−(−)−マンデル酸塩は、R−(−)−マンデル酸を、周囲温度又は高められた温度で、溶媒(好ましくは酢酸エチル)中の式(IX)の化合物溶液に添加することによって、生成することができる。好ましくは、温度は20℃である。
【0030】
適当には、Rは、一つ又はそれより多いハロゲン原子によって置換されていてもよいフェニルである。好ましくは、Rは、一つ又はそれより多いフッ素原子によって置換されたフェニルである。更に好ましくはRは、4−フルオロフェニル又は3,4−ジフルオロフェニルである。
【0031】
好ましくはYは、D−メントキシ、又は更に好ましくはL−メントキシである。
式(I)ないし(IX)の化合物は、異なった異性体の形態(cis/trans、鏡像異性体、又はジアステレオ異性体のような)で存在することができる。本発明の方法は、全てのこのような異性体の形態及び全ての比率のその混合物を含む。
【0032】
Yがキラルである場合、式(I)の化合物は、ジアステレオ異性体の混合物であるだろう、そして分割によりジアステレオ異性体的に富化された、以下の式(Ia):
【0033】
【化20】

【0034】
(ここで、R及びYは上記で定義した通りである)
の化合物を、結晶化又はクロマトグラフィー的方法によって得ることができる。
好ましくは、結晶化は、式(I)の化合物の合成に続いて、先に記載したように、粗製反応混合物を、全体又は殆んど全体の溶解が達成されるまで加熱し、次いで所望する品質の充分な結晶が形成されるまで、適当な速度で冷却することによってin situで行われる。次いで結晶は濾過によって収集される。別の方法として、分割は、炭化水素(例えばヘプタン)のようないずれかの適した溶媒中で、式(I)の化合物を、適した量の溶媒中に抽出し、抽出物を全体の溶解が達成されるまで加熱し、次いで所望する品質の充分な結晶が形成されるまで適当な速度で冷却することによって行うことができる。所望により、有機抽出物は、先に記載した結晶化に先立って、水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、そして濾過することができる。
【0035】
式(Ia)の化合物を、式(I)の化合物を加水分解して式(V)の化合物を得る先に記載した方法を使用して加水分解して、以下の式(Va):
【0036】
【化21】

【0037】
(ここで、Rは上記において定義された通りである)
の化合物を得ることができる。
式(Va)の化合物を、式(V)の化合物を転換して式(VI)の化合物を得る先に記載した方法を使用して、以下の式(VIa):
【0038】
【化22】

【0039】
(ここで、Rは上記において定義された通りである)
の化合物を生成するために使用することができる。
式(VIa)の化合物は、式(VI)の化合物を転換して式(VII)の化合物を得る先に記載した方法を使用して、以下の式(VIIa):
【0040】
【化23】

【0041】
(ここで、Rは上記において定義された通りである)
の化合物の合成に使用することができる。
式(VIIa)の化合物は、式(VII)の化合物を転換して式(VIII)の化合物を得る先に記載した方法を使用して、以下の式(VIIIa):
【0042】
【化24】

【0043】
(ここで、Rは上記において定義された通りである)
の化合物の合成に使用することができる。
式(VIIIa)の化合物は、式(VIII)の化合物を転換して式(IX)の化合物を得る先に記載した方法を使用して、以下の式(IXa):
【0044】
【化25】

【0045】
(ここで、Rは上記において定義された通りである)
の化合物の合成に使用することができる。
式(IXa)の化合物のR−(−)−マンデル酸塩は、先に記載した式(IX)の化合物のマンデル酸塩を生成する方法を使用して、生成することができる。
【0046】
新規な化合物は、本発明の更なる側面を形成する。従って更なる側面において、本発明は、上記で定義した通りの式(I)、(Ia)、(II)、(III)、(V)、(Va)、(VI)、(VIa)、(VII)、(VIIa)、(VIII)、(VIIIa)、(IX)及び(IXa)の化合物を提供する。
【0047】
特に好ましい化合物は:
trans−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロパンカルボン酸(1R,2S,5R)−2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル;
trans(1R,2R)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロパンカルボン酸(1R,2S,5R)−2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル;
(E)−3−(3,4−ジフルオロフェニル)−2−プロパン酸(1R,2S,5R)−2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル:
(E)−3−(3,4−ジフルオロフェニル)−2−プロパン酸;
塩化(E)−3−(3,4−ジフルオロフェニル)−2−プロペノイル;
trans−(1R,2R)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロパンカルボン酸;
塩化trans−(1R,2R)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロパンカルボニル;
アジ化trans−(1R,2R)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロパンカルボニル;
trans−(1R,2S)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロピルアミン;
及び(2R)−2−ヒドロキシ−2−フェニルエタン酸trans−(1R,2S)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロパンアミニウム
を含む。
【0048】
実施例
本発明は、以下の非制約的実施例によって例示される。
【0049】
実施例1
この実施例は、(E)−3−(3,4−ジフルオロフェニル)−2−プロペン酸の調製を説明する。
【0050】
ピリジン(15.5kg)及びピペリジン(0.72kg)の撹拌混合物を、90℃に加熱した。マロン酸(17.6kg)を加え、続いて3,4−ジフルオロベンズアルデヒド(12.0kg)を50分かけてゆっくりと添加した。反応混合物を90℃で更に4時間36分撹拌した。水(58.5kg)、そして32リットルのピリジン/水混合物を加え、次いで減圧下で反応器から蒸留した。反応混合物を37%の塩酸(6.4kg)で、40分かけてpH1に酸性化し、次いで激しく撹拌しながら25℃に冷却した。固体を濾過により収集し、1%の塩酸で2回(洗浄当たり34.8L)、水で1回(61L)洗浄し、そして次いでフィルター中で徹底的に脱液した。次いで産物を真空下の40℃で24時間40分乾燥して、13.7kgの結晶質の産物を得た。
【0051】
実施例2
この実施例は、塩化(E)−3−(3,4−ジフルオロフェニル)−2−プロペニルの調製を説明する。
【0052】
(E)−3−(3,4−ジフルオロフェニル)−2−プロペン酸(8.2kg)、トルエン(7.4kg)及びピリジン(0.18kg)の撹拌混合物を、65℃に加熱し、そして次いで塩化チオニル(7.4kg)を30分かけて加えた。反応物を、添加が完了した後更に2時間15分撹拌し、次いでトルエン(8.7kg)で希釈した。次いで過剰の塩化チオニル、二酸化硫黄及び塩化水素を、トルエン(10L)といっしょに減圧下で蒸留し、塩化(E)−3−(3,4−ジフルオロフェニル)−2−プロペノイル(約9kg)のトルエン中の溶液を得た。
【0053】
実施例3
この実施例は、(E)−3−(3,4−ジフルオロフェニル)−2−プロペン酸(1R,2S,5R)−2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルの調製を説明する。
【0054】
トルエン(8.5kg)中のL−メントール(7.1kg)の溶液を、塩化(E)−3−(3,4−ジフルオロフェニル)−2−プロペノイル(実施例2で調製)及びピリジン(0.18kg、2.28mol)の65℃で撹拌される溶液に20分かけて加えた。添加が完了した後、反応混合物を65℃で更に4時間40分撹拌し、次いで25℃に冷却し、そして14時間撹拌した。溶液をトルエン(16kg)で希釈し、5%の塩化ナトリウム水溶液(6.4kg)、次いで6%の炭酸水素ナトリウム(6.47kg)、次いで水(6.1kg)で洗浄した。溶液を減圧下の溶媒(20L)の蒸留によって共沸的に乾燥した。ジメチルスルホキシド(33.9kg)を加え、そして残留したトルエンを減圧下で蒸留して除去し、47.3kgの(E)−3−(3,4−ジフルオロフェニル)−2−プロペン酸(1R,2S,5R)−2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル(約13.3kg)のジメチルスルホキシド中の溶液を得た。
【0055】
実施例4
この実施例は、ジメチルスルホキソニウムメチリド(ジメチル(メチレン)オキソ−λ6−スルファン)を調製する方法を説明する。
【0056】
水酸化ナトリウムペレットをロータリーミル中で微粉砕し1mmの金属篩を通すことによって調製した水酸化ナトリウム粉末(1.2kg)、及びヨウ化トリメチルスルホキソニウム(6.2kg)を、ジメチルスルホキシド(25.5kg)中で、窒素雰囲気下の25℃で90分間撹拌した。溶液を、trans−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロパンカルボン酸(1R,2S,5R)−2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルの調製に直接使用した。
【0057】
実施例5
この実施例は、ジメチルスルホキソニウムメチリド(ジメチル(メチレン)オキソ−λ4−スルファン)を調製する方法を説明する。
【0058】
水酸化ナトリウムペレットをロータリーミル中で微粉砕し1mmの金属篩を通すことによって調製した水酸化ナトリウム粉末(970mg)、及びヨウ化トリメチルスルホニウム(4.66g)を、ジメチルスルホキシド(17ml)中で、窒素雰囲気下の20〜25℃で10分間撹拌した。溶液を、trans−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロパンカルボン酸(1R,2S,5R)−2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルの調製に直接使用した。
【0059】
実施例6
この実施例は、trans−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロパンカルボン酸(1R,2S,5R)−2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルの調製を説明する。
【0060】
3,4−ジフルオロフェニル)−2−プロペン酸(1R,2S,5R)−2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル(約8.6kg)のジメチルスルホキシド(約27.9kg)中の溶液を、ジメチルスルホキソニウムメチリド(約2.6kg、先に記載したように調製)、ヨウ化ナトリウム((E)−3−(約4.2kg)、水(約500g)及び水酸化ナトリウム(約56g)のジメチルスルホキシド(27.7kg)中の25℃の混合物に、20分にわたって撹拌しながら加えた。反応混合物を25℃で更に2時間50分撹拌し、次いでtrans−(1R,2R)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロパンカルボン酸(1R,2S,5R)−2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルの調製に直接使用した。
【0061】
実施例7
この実施例は、trans−(1R,2R)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロパンカルボン酸(1R,2S,5R)−2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルの調製を説明する。
【0062】
実施例6に記載したように製造されたtrans−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロパンカルボン酸(1R,2S,5R)−2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルの粗製溶液を、撹拌しながら1時間かけて25℃から50℃に加熱し、そしてこの温度を更に1時間維持した。次いで混合物を撹拌しながら4時間かけて50℃から35℃に冷却し、35℃で1時間保ち、次いで4時間かけて26℃に冷却し、26℃で1時間保ち、次いで3時間かけて19℃に冷却し、そして19℃で5時間10分保った。産物を結晶化し、そして濾過により収集して、結晶質の固体(2.7kg)を得たが、これはtrans−(1R,2R)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロパンカルボン酸(1R,2S,5R)−2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル(1.99kg)及びtrans−(1S,2S)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロパンカルボン酸(1R,2S,5R)−2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル(85g)の混合物を含有することが示された。
【0063】
実施例8
この実施例は、trans−(1R,2R)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロパンカルボン酸(1R,2S,5R)−2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルを調製する別の方法を説明する。
【0064】
n−ヘプタン(82.5L)を、trans−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロパンカルボン酸(1R,2S,5R)−2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル(14.3kg、44.4mol)のヘプタン(128.6L)中の溶液から減圧下で蒸留した。次いで混合物を3時間20分かけて34℃から24℃に冷却した。次いでtrans−(1R,2R)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロパンカルボン酸(1R,2S,5R)−2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルの種結晶を加え、そして混合物を5時間50分かけて0℃に冷却した。濾過により産物を結晶質の溶媒で濡れた固体(7.05kg)として得て、これはtrans−(1R,2R)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロパンカルボン酸(1R,2S,5R)−2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル(4.7kg)及びtrans−(1S,2S)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロパンカルボン酸(1R,2S,5R)−2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル(1.1kg)の混合物を含有することが示された。
【0065】
実施例9
この実施例は、trans−(1R,2R)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロパンカルボン酸を調製する方法を説明する。
【0066】
trans−(1R,2R)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロパンカルボン酸(1R,2S,5R)−2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル(9.6kg、91.8%ジアステレオマー過剰)を、エタノール(13.8kg)中に溶解し、そして撹拌しながら46℃に加熱した。45%の水酸化ナトリウム水溶液(13.8kg)を20分かけて加え、そして混合物を更に2時間27分撹拌した。減圧下で混合物から溶媒(28L)を蒸発し、次いで混合物を24℃に冷却し、そして水(29.3kg)で希釈し、その後、遊離したメタノールをトルエン中に抽出した(それぞれ3.3kgの3回洗浄)。残留した水性物質を37%の塩酸(3.3L)でpH2に酸性化し、そして産物をトルエン(8.6kg、次いで更に4.2kg及び4.3kgの2回の洗浄)中に抽出した。混合したトルエン抽出物を1%の塩酸(4.9L)で洗浄し、次いで更なるトルエン(4.2kg)で希釈し、そして減圧下の溶媒(25L)の蒸留によって共沸的に乾燥した。トルエン(24.2kg)による最後の希釈後、減圧下で溶媒を蒸留(10L)し、塩化trans−(1R,2R)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロパンカルボニルの製造に適したtrans−(1R,2R)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロパンカルボン酸(約3.45kg)を含有する溶液を得た。
【0067】
実施例10
この実施例は、塩化trans−(1R,2R)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロパンカルボニルを調製する方法を説明する。
【0068】
ピリジン(70ml)を、先に記載したように調製したtrans−(1R,2R)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロパンカルボン酸(約3.45kg)のトルエン(約12〜15kg)中の溶液に加え、そして次いで混合物を65℃に加熱した。塩化チオニル(2.3kg)を1時間かけて加え、そして混合物を70℃で3時間撹拌した。塩化チオニル(0.5kg)を加え、そして混合物を更に2時間70℃で撹拌した。塩化チオニルの最後のアリコート(0.5kg)を加え、そして反応混合物を1時間70℃で撹拌し、次いで40℃に冷却した。減圧下の混合物からの溶媒(約60L)の蒸留中に、トルエンの定期的な添加(45kg、それぞれ15kgの3回添加)を行い、次いで塩化trans−(1R,2R)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロパンカルボニル(約3.8kg)のトルエン(約6〜9L)中の溶液を20℃に冷却した。
【0069】
実施例11
この実施例は、アジ化trans−(1R,2R)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロパンカルボニルを調製する方法を説明する。
【0070】
アジ化ナトリウム(1.24kg)、臭化テトラブチルアンモニウム(56g)及び炭酸ナトリウム(922g)の水(6.2kg)中の混合物を1.5℃で攪拌しながら、その中に、塩化trans−(1R,2R)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロパンカルボニル(約3.8kg)のトルエン(約6〜9L)中の1℃の溶液を、74分かけて加えた。混合物を0℃で1時間55分撹拌し、次いで水層を冷水(3.8kg)で希釈し、短時間撹拌し、次いで分離した。トルエン層を0℃で水(3.8kg)でもう1回、次いで20%の塩化ナトリウム水溶液(3.8L)で洗浄し、次いで更なる使用のために3℃で保存した。
【0071】
実施例12
この実施例は、trans−(1R,2R)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロピルアミンを調製する方法を説明する。
【0072】
トルエン(6.0kg)を100℃で撹拌しつつ、その中に、実施例11に記載されたように調製したアジ化trans−(1R,2R)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロパンカルボニルの冷溶液を、41分かけて加えた。混合物を更に55分間100℃で撹拌し、次いで20℃に冷却し、そして80℃で撹拌される塩酸(3M、18.2kg)中に、2時間15分かけて加えた。65分後、溶液を水(34kg)で希釈し、そして25℃に冷却した。トルエン層を除去し、そして水層を45%の水酸化ナトリウム(3.8kg)でpH12に塩基性化し、そして次いで産物を酢酸エチル(31kg)中に抽出し、そして水で2回(洗浄当たり13.7kg)洗浄し、trans−(1R,2R)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロピルアミン(2.6kg、91.8%鏡像体過剰)を含有する酢酸エチル(29.5L)中の溶液を得た。
【0073】
実施例13
この実施例は、(2R)−2−ヒドロキシ−2−フェニルエタン酸trans−(1R,2R)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロパンアミニウムを調製する方法を説明する。
【0074】
R−(−)−マンデル酸(2.26kg)を、trans−(1R,2R)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロピルアミン(2.6kg、91.8%鏡像体過剰)を含有する17℃で撹拌される酢酸エチル(45.3L)中の溶液に加えた。混合物を25℃で3時間8分撹拌し、次いで濾過し、そして酢酸エチル(合計13.8kg)で2回洗浄した。結晶性の産物を減圧下の40℃で23時間乾燥し、(2R)−2−ヒドロキシ−2−フェニルエタン酸trans−(1R,2R)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロパンアミニウム(4.45kg)を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I):
【化1】

(式中:
Rは、1又はそれより多いハロゲンで置換されたフェニルであり;
Yは、OR1であり、ここでR1は、直鎖アルキル、分枝鎖アルキル、シクロアルキル、又は置換されたビシクロヘプチル基である)
の化合物の調製方法であって;
以下の式(II):
【化2】

(ここで、R及びYは、上記で定義した通りである)
の化合物を、溶媒の存在下で−10℃〜90℃の温度で、ジメチルスルホキソニウムメチリドと接触させることを含んでなる方法。
【請求項2】
i)ジメチルスルホキソニウムメチリドを製造するために、トリメチルスルホキソニウム塩を、ジメチルスルホキシド中で周囲温度又は高められた温度で、固体金属水酸化物と反応させること;および
(ii)式(II)の化合物を、溶媒の存在下で−10℃〜90℃の温度で、ジメチルスルホキソニウムメチリドと接触させること;
を含んでなる、請求項1に記載の式(I)の化合物の調製方法。
【請求項3】
前記金属水酸化物が、水酸化ナトリウムである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記式(II)の化合物が、以下の式(III):
【化3】

(ここで、Rは請求項1において定義された通りである)
の化合物から、不活性溶媒及び触媒の存在下の0〜200℃の温度における塩素化剤との反応、そして得られた溶液を、高められた温度でYH又はY-(ここで、Yは請求項1で定義された通りである)と反応させること、によって調製される、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
式(III)の化合物が、不活性溶媒及びピリジンの存在下で0〜200℃の温度で塩化チオニルと反応させられ、そして得られた溶液が、高められた温度でYH又はY-(ここで、Yは請求項1で定義された通りである)と反応させられる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
YHがL−メントールを表す、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
式(III)の化合物が、以下の式(IV):
【化4】

(ここで、Rは請求項1で定義された通りである)
の化合物を、ピリジン及びピペリジンの存在下で高められた温度で、マロン酸と接触させることによって調製される、請求項4ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
式(I)の化合物の塩基加水分解を含む、以下の式(V):
【化5】

(ここで、Rは請求項1で定義された通りである)
の化合物の調製方法。
【請求項9】
塩基加水分解が、アルカリ金属水酸化物及び溶媒を使用して10〜100℃で達成される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
式(V)の化合物からの、溶媒及び触媒の存在下での0〜200℃における塩化チオニルとの反応による、以下の式(VI):
【化6】

(ここで、Rは請求項1で定義された通りである)
の化合物の調製方法。
【請求項11】
式(VI)の化合物からの、相転移触媒、炭酸カリウム水溶液及び不活性溶媒の存在下でアジ化アルカリ金属と反応させることによる、以下の式(VII):
【化7】

(ここで、Rは請求項1で定義した通りである)
の化合物の調製方法。
【請求項12】
式(VII)の化合物からの、高められた温度におけるトルエン中での転位反応、それに続く高められた温度における塩酸との反応による、以下の式(VIII):
【化8】

(ここで、Rは請求項1で定義した通りである)
の化合物の調製方法。
【請求項13】
式(VIII)の化合物の塩の水溶液を、pH10又はそれより高く調節することによる、以下の式(IX):
【化9】

(ここで、Rは請求項1で定義した通りである)
の化合物の調製方法。
【請求項14】
請求項13において調製された式(IX)の化合物へ、周囲温度又は高められた温度でR−(−)−マンデル酸を付加することによる、式(IX)の化合物のマンデル酸塩化合物の調製方法。
【請求項15】
Rが、1又はそれより多いフッ素原子によって置換されたフェニルである、請求項1ないし14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
Rが3,4−ジフルオロフェニルである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
Yがキラルである、請求項1ないし16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
YがL−メントキシである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
式(I)の化合物を、結晶化又はクロマトグラフィー的方法によって分割して、以下の式(Ia):
【化10】

(ここで、R及びYは請求項1で定義した通りである)
の化合物を得る、請求項1ないし18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記分割が、式(I)の化合物をヘプタン中に抽出し、次いでヘプタン抽出物から結晶化させることによって行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
上記の式(I)、(Ia)、(II)、(III)、(V)、(Va)、(VI)、(VIa)、(VII)、(VIIa)、(VIII)、(VIIIa)、(IX)及び(IXa)の中間体化合物。
【請求項22】
中間体化合物;
trans−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロパンカルボン酸(1R,2S,5R)−2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル;
trans(1R,2R)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロパンカルボン酸(1R,2S,5R)−2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル;
(E)−3−(3,4−ジフルオロフェニル)−2−プロパン酸(1R,2S,5R)−2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル:
(E)−3−(3,4−ジフルオロフェニル)−2−プロパン酸;
塩化(E)−3−(3,4−ジフルオロフェニル)−2−プロペノイル;
trans−(1R,2R)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロパンカルボン酸;
塩化trans−(1R,2R)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロパンカルボニル;
アジ化trans−(1R,2R)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロパンカルボニル;
trans−(1R,2S)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロピルアミン;
及び(2R)−2−ヒドロキシ−2−フェニルエタン酸trans−(1R,2S)−2−(3,4−ジフルオロフェニル)シクロプロパンアミニウム。

【公開番号】特開2011−236229(P2011−236229A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145213(P2011−145213)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【分割の表示】特願2002−500816(P2002−500816)の分割
【原出願日】平成13年5月31日(2001.5.31)
【出願人】(300022641)アストラゼネカ アクチボラグ (581)
【Fターム(参考)】