説明

シクロヘキサン誘導体およびその製造方法

【課題】乾燥後の嵩密度が高く、粉立ちがしにくい、取り扱い容易な(1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサンの結晶及びその製造方法を提供する。
【解決手段】粉末X線回折図において、12.2°±0.2°、17.9°±0.2°、21.0°±0.2°、19.8°±0.2°にピークを有し、21.0°±0.2°のピーク強度が最も高いX線回折図を与えることを特徴とする式(1)


で表される化合物又はその対掌体を含む粗生成物を、エステル溶媒及びケトン溶媒から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒に溶解し、結晶化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医農薬中間体として有用な(1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサン又はその対掌体の結晶、および、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
式(1)

で表される(1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサン又はその対掌体(以下、化合物(1)と称する場合がある)は、例えば、特許文献1に記載の向精神性物質とし有用なイミド誘導体の中間体等、医農薬中間体として有用な化合物である。
化合物(1)の製造方法としては、例えば、式(2)

で表される(1R,2R)−1,2−シクロヘキサンジメタノール又はその対掌体(以下、化合物(2)と称する場合がある)にメタンスルホン化試剤を反応させて、化合物(1)を含む粗生成物を得たのち、粗生成物のメタノール溶液から結晶化することにより結晶として得る方法(例えば、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)、粗生成物、トルエン及びイソプロピルエーテルの混合溶液から結晶化することにより結晶として得る方法(例えば、特許文献2)などが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−17440号公報
【特許文献2】特開2004−224764号公報[0025](実施例7)
【非特許文献1】ケミストリー オブ マテリアル (Chemistry of Material)、 vol. 13、1665-1673頁、2001年
【非特許文献2】ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー (Journal of Organic Chemistry)、 vol 61、700-709頁、1996年
【非特許文献3】ジャーナル オブ ケミカル ソサイエティー (J. Chem. Soc.)、 389-398頁、1953年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしこれらの方法で得られた化合物(1)の結晶は針状晶であり、これを乾燥した結晶は嵩密度0.2g/ml程度のため、嵩密度が低く、粉立ちしやすく、さらに取り扱いが容易な化合物(1)の結晶が望まれていた。
本発明の目的は、乾燥後の嵩密度が高く、粉立ちがしにくい、取り扱い容易な化合物(1)の結晶及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、粉末X線回折図において、12.2°±0.2°、17.9°±0.2°、21.0°±0.2°、19.8°±0.2°にピークを有し、21.0°±0.2°のピーク強度が最も高いX線回折図を与えることを特徴とする式(1)

で表される(1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサン又はその対掌体の結晶、
【0006】
嵩密度が0.6〜0.8g/mlである前記式(1)で表される(1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサン又はその対掌体、並びに
【0007】
前記式(1)で表される(1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサン又はその対掌体を含む粗生成物を、エステル溶媒及びケトン溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒に溶解し、結晶化させることを特徴とする(1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサン又はその対掌体の結晶を製造する方法である。
【0008】
本発明の製造方法の中でも、粗生成物を前記有機溶媒で溶解させたのち、さらに炭化水素溶媒を混合させて結晶化させる方法が、結晶が析出する際の温度を低下させることができる傾向があることから好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の(1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサン又はその対掌体の結晶は、乾燥後の嵩密度が高く、粉立ちがしにくい、取り扱い容易な結晶である。その製造方法は収率に優れ、簡便に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
式(1)で表される(1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサン又はその対掌体の結晶、すなわち、化合物(1)の結晶は、化合物(1)を含む粗生成物及び有機溶媒の混合溶液から結晶化させて得ることができる。
化合物(1)を含む粗生成物は、例えば、非特許文献1〜3に記載の方法の他、テトラへドロン アシンメトリー (Tetrahedron: Asymmetry、vol. 8、 987-990頁、1997年)に記載の方法、リービッヒス アナーレン デア ヘミー (Liebigs Annalen der Chemie、 1540-1548頁、1980年)に記載の方法、オーガニック シンセシス コレクティブ ボリューム (Org. Synth. Collective Volume、 第6巻 482頁)に記載の方法などの方法により得ることができる。
【0011】
具体的には、式(2)で表される(1R,2R)−1,2−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン又はその対掌体、すなわち化合物(2)をメタンスルホン化試剤と反応させる方法などが例示される。以下に、化合物(2)とメタンスルホン化試剤との反応について説明する。

【0012】
メタンスルホン化試剤としては、例えば、塩化メタンスルホン酸、フッ化メタンスルホン酸、臭化メタンスルホン酸等のハロゲン化メタンスルホン酸、例えば、メタンスルホン酸無水物などが挙げられる。好ましくは、塩化メタンスルホン酸である。
メタンスルホン化試剤の使用量としては、化合物(2)1モルに対して、1〜5モル程度、好ましくは2〜3モル程度である。
【0013】
メタンスルホン化試剤との反応は、好ましくは塩基の存在下で行う。この反応に使用される塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等のトリアルキルアミン、例えば、ピリジン、ルチジン、ピコリン等のピリジン化合物、例えば、キノリン、イミダゾール、N−メチルピロリジン、1,5−ジアザビシクロ〔4.3.0〕ノン−5−エン、1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデシ−7−エン等を挙げることができる。好ましくは、トリエチルアミン等のトリアルキルアミンである。
塩基の使用量としては、化合物(2)1モルに対して1〜5モル程度、好ましくは2〜4モル程度である。
【0014】
メタンスルホン化試剤との反応に用いられる溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸エチルなどのような炭素数が8以下のエステル溶媒、例えば、4−メチル−2−ペンタノン、アセトン、メチルエチルケトンなどのような炭素数が8以下のケトン溶媒;ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒、例えば、ベンゼン、トルエン、モノクロロベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒などが挙げられる。
エステル溶媒としては酢酸エチルが好適に用いられ、ケトン溶媒としては4−メチル−2−ペンタノンが好適に用いられる。
溶媒の使用量としては、化合物(2)に対し、1〜50重量倍程度であり、好ましくは、1〜20重量倍程度である。
【0015】
メタンスルホン化試剤との反応は、通常、化合物(2)とメタンスルホン化試剤と、好ましくは塩基とを冷却下または加温下、好ましくは−10〜50℃程度で攪拌する方法である。
かくして得られた反応溶液は化合物(1)を含む溶液であり、そのまま粗生成物としてもよいが、好ましくは、水洗してメタンスルホン化試剤との反応で生じる塩などを除去して、脱水などの操作を実施した溶液を粗生成物とする。さらに、溶媒を留去した化合物(1)の結晶を主成分とするものを粗生成物として用いてもよい。粗生成物には、針状晶の化合物(1)が含まれていてもよい。
後述する有機溶媒と、メタンスルホン化試剤との反応に用いた溶媒とが同じであれば、溶媒を留去することなく、反応溶液をそのまま粗生成物として用いればよい。
【0016】
次に、式(1)で表される(1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサン又はその対掌体、即ち化合物(1)の結晶を製造する方法について説明する。
化合物(1)の結晶の製造方法は、前記の粗生成物にエステル溶媒及びケトン溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒に溶解し、結晶化させる方法である。
【0017】
化合物(1)の結晶の製造方法において用いられる有機溶媒は、前記メタンスルホン化試剤との反応で例示された炭素数が8以下のエステル溶媒、炭素数が8以下のケトン溶媒が挙げられ、エステル溶媒としては酢酸エチルが好適に用いられ、ケトン溶媒としては4−メチル−2−ペンタノンが好適に用いられる。
有機溶媒の使用量としては、有機溶媒の種類により異なるが、化合物(1)に対し0.3〜50重量倍程度であり、好ましくは0.3〜20重量倍程度である。
【0018】
化合物(1)の結晶を得る具体的な方法としては、例えば(I)粗生成物に有機溶媒を混合させて希釈、溶解したのち、30℃以上、好ましくは、50℃以上、とりわけ好ましくは50〜70℃程度にて、該溶媒を留去しながら化合物(1)の結晶を析出させる方法;(II)粗生成物に有機溶媒を混合させて希釈、溶解したのち、30℃以上、好ましくは、50℃以上、とりわけ好ましくは50〜70℃程度にて、炭化水素溶媒などの溶解度の低い溶媒を加えて化合物(1)の結晶を析出させる方法;(III)粗生成物に有機溶媒を混合させて希釈、溶解し、さらに炭化水素溶媒を加えて加熱、溶解したのち、30℃以上、好ましくは、50℃以上、とりわけ好ましくは50〜70℃程度にて、できるだけ少ない炭化水素溶媒量を加えて結晶を析出させた後、冷却して化合物(1)の得られる結晶量を増加させる方法などが挙げられる。また、粗生成物に有機溶媒を混合させて希釈、溶解したのちの後工程は、(I)〜(III)の後工程の例示を組み合わせて実施してもよい。すなわち、30℃以上、好ましくは、50℃以上、とりわけ好ましくは50〜70℃程度にて、結晶を析出させた後は、溶媒を留去したり、冷却するなどを組み合わせて、結晶量を増加させてもよい。
中でも、50℃以上、好ましくは50〜70℃程度にて、結晶を析出させた後、さらに冷却することが好ましく、とりわけ、冷却を−10〜10℃程度にて実施する方法が、得られる結晶の量が増加する傾向があることから好ましい。
【0019】
中でも(III)が好ましく、とりわけ、50℃以上にて、炭化水素溶媒を加えて結晶を析出させた後、冷却して結晶量を増加させる方法は、本発明の化合物(1)の結晶を得る温度範囲が広くできる傾向があることから好ましい。
具体的には、炭化水素溶媒を、有機溶媒の25重量%程度混合させて結晶を析出させた場合には、冷却前の結晶化温度が40〜70℃の範囲で結晶化させたのち冷却させることになり、炭化水素溶媒を有機溶媒の50重量%程度混合させて結晶を析出させた場合には、冷却前の結晶化温度が20〜70℃の範囲の範囲で結晶化させたのち冷却させることになり、炭化水素溶媒を有機溶媒の75重量%程度混合させて結晶を析出させた場合には、冷却前の結晶化温度が10〜70℃の範囲で結晶化させたのち冷却させることになる。
【0020】
ここで、炭化水素溶媒としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンなどのような炭素数が8以下の直鎖状飽和炭化水素、例えば、2−メチルペンタン、2−メチルブタンなどのようなアルキル基で置換された炭素数が8以下の直鎖状飽和炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、オルソ−キシレン、メタ−キシレン、パラ−キシレンなどのような芳香族炭化水素が挙げられる。中でも、アルキル基で置換されていてもよい直鎖状飽和炭化水素が好ましく、とりわけ、n−ヘプタンが好ましい。
炭化水素溶媒の使用量としては、炭化水素溶媒の種類や、有機溶媒の種類により異なるが、通常、化合物(1)に対し1〜50重量倍程度であり、好ましくは1〜20重量倍程度である。
【0021】
上記の方法によって得られた化合物(1)の結晶を含む溶液は、濾過、遠心分離などの固液分離手段によって分離され、さらに必要に応じて、減圧乾燥、通風乾燥、凍結乾燥などの方法により乾燥して、本発明の化合物(1)の結晶を得ることができる。
【0022】
本発明の化合物(1)の結晶は、粉末X線回折図において、12.2°±0.2°、17.9°±0.2°、21.0°±0.2°、19.8°±0.2°にピークを有し、21.0°±0.2°のピーク強度が最も高いX線回折図を与えることを特徴とする式(1)

で表される(1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサン又はその対掌体の結晶である。
【0023】
本発明の化合物(1)の結晶は、通常、粉末X線回折図において表1に記載の回折角(2θ)、相対強度を示す。
【0024】
本発明の化合物(1)の結晶は、通常、嵩密度 0.6〜0.8g/ml程度の柱状晶であり、従来の針状晶と比べて、嵩密度が高く、粉立ちが少なく、運搬時の取り扱いに優れる。
嵩密度の測定は以下の要領で実施する。
(ア)結晶を正確に秤量し、メスシリンダーの口が閉塞しないように徐々に入れる。メスシリンダーに仕込んだ結晶重量Wを測定する。
(イ)全ての結晶を仕込んだ後に刷毛を用いてロートに付着した結晶をメスシリンダーに落とす。
(ウ)メスシリンダー内の試料の表面をスパチュラで結晶層を圧縮しないように平らにし、容量V1を測定する。
(エ)嵩密度は次式により求められる。
嵩密度(g/ml)=結晶重量W(g)/容量V1(ml)
【0025】
本発明の化合物(1)の融点は、通常、84〜87℃である。
【実施例】
【0026】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
(比較例1)
(1R,2R)−1,2−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン(2.63g)の4−メチル−2−ペンタノン(154g)溶液に塩化メタンスルホニル(5.75g)を加え、20℃でトリエチルアミン(5.31g)を加え、20℃で2時間、保温した。続いて、水洗及び食塩水で洗浄したのち、得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥の後、有機層を減圧濃縮し、(1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサンを含む 残さ約73gを得た。この残さ(73g)に25℃でジイソプロピルエーテル(32g)を滴下した。同温度で1時間保温した後、3℃まで冷却し、同温度で1時間、保温した。スラリーを濾過し、得られた結晶をジイソプロピルエーテル(32g)で洗浄し、減圧乾燥により、((1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサンの結晶 4.8g(収率87%)を得た。
得られた結晶は、嵩密度0.20g/mlの針状晶であった。得られた結晶をCu−Kα波長のX線(測定装置:(株)理学電気製RINT2500V、X線:Cu−Kα)を用いたX線回折測定すると、図2の粉末X線回折図が得られた。
また、得られた結晶の赤外線吸収スペクトル(IR)は図4に示した。
【0027】
(比較例2)
比較例1と同様の方法により作成された((1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサンの針状晶 8gにメタノール(40g)を加えて還流し、結晶を溶解させ溶液とした。約3時間かけて0〜5℃まで冷却し、同温度で1時間撹拌した。スラリーを濾過し、得られた結晶を0〜5℃に冷却したメタノール(20g)で洗浄し、減圧乾燥により、((1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサンの結晶 6.27g(収率78%)を得た。
得られた結晶は、嵩密度0.20g/mlの針状晶であった。得られた結晶の粉末X線回折図は図2と同様であった。
また、得られた結晶の赤外線吸収スペクトル(IR)は図4と同様であった。
【0028】
(比較例3)
比較例1と同様の方法により作成された((1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサンの針状晶 4gにメタノール(100g)溶液を、室温(約20〜25℃)で、3週間、開放系にて放置し、溶液量が約62gになった。スラリーを濾過し、得られた結晶をメタノール(10g)で洗浄し、減圧乾燥により、((1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサンの結晶 1.58g(収率40%)を得た。
得られた結晶は、嵩密度0.18g/mlの針状晶であった。得られた結晶の粉末X線回折図は図2と同様であった。
また、得られた結晶の赤外線吸収スペクトル(IR)は図4と同様であった。
【0029】
(実施例1)
比較例1と同様の方法により作成された((1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサンの針状晶 10gを粗生成物とし、粗生成物を酢酸エチル(8g)に加え70℃に加熱し溶液とした。1.5時間かけて20℃まで冷却した。スラリーを濾過し、減圧乾燥により、(1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサンの結晶 9.5g((1R,2R)−1,2−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンからの収率95%)を得た。
得られた結晶は、嵩密度0.64g/mlの柱状晶であった。得られた結晶をCu−Kα波長のX線を用いたX線回折測定すると、図1の粉末X線回折図が得られ、表1を充足していることがわかる。
また、得られた結晶の赤外線吸収スペクトル(IR)は図3に示した。
融点は、84〜87℃であった。
【0030】
(1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサンの結晶
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ: 1.28- 1.40 (4H, m), 1.65 1.89 (6H, m), 3.04 (6H, s), 4.18 (2H, m), 4.29 (2H, m)
【0031】
(実施例2)
比較例1と同様の方法により作成された((1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサンの針状晶 10gを粗生成物とし、粗生成物に酢酸エチル(40g)を加え、55℃に加熱し溶液とした。同温度で、n−ヘプタン(40g)を、約50分で滴下して加えた。1時間、55℃で撹拌ののち、0〜5℃まで約2時間をかけて冷却した。0〜5℃で1.5時間、撹拌ののち、スラリーを濾過し、得られた結晶を、重量比1:1の酢酸エチル/n−ヘプタン混液(10g)で洗浄し、減圧乾燥により、(1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサンの結晶 9.2g(収率92%)を得た。
得られた結晶は、嵩密度0.65g/mlの柱状晶であった。得られた結晶の粉末X線回折図は図1と同様であり、表1を充足していた。
また、得られた結晶の赤外線吸収スペクトル(IR)は図3と同様であった。
【0032】
(実施例3)
(1R,2R)−1,2−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン(10g)の酢酸エチル(90g)溶液に塩化メタンスルホニル(17.2g)を加え、20℃でトリエチルアミン(16.0g)を1時間で滴下した後、20℃で3時間、保温した。続いて、水洗及び食塩水で洗浄したのち、得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥の後、有機層を減圧濃縮し、(1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサンを含む粗生成物 約66gを得た。
得られた粗生成物を55℃でn−ヘプタン(40g)を1時間かけて滴下した。同温度で1時間保温した後、約3時間で3℃まで冷却し、同温度で1時間、保温した。スラリーを濾過し、得られた結晶を、n−ヘプタン(40g)で洗浄し、減圧乾燥により、(1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサンの結晶 19.1g(収率95%)を得た。
得られた結晶は、嵩密度0.68g/mlの柱状晶であった。得られた結晶の粉末X線回折図は図1と同様であり、表1を充足していた。
また、得られた結晶の赤外線吸収スペクトル(IR)は図3と同様であった。
【0033】
(実施例4)
比較例1と同様の方法により作成された((1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサンの針状晶 17.5gを粗生成物とし、粗生成物に4−メチル−2−ペンタノン(10g)に加え70℃に加熱し溶液とした。2時間かけて25℃まで冷却した。スラリーを濾過し、得られた結晶を4−メチル−2−ペンタノン(5g)で洗浄の後、減圧乾燥により、(1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサンの結晶 14.3g(収率82%)を得た。
得られた結晶は、嵩密度0.72g/mlの柱状晶であった。得られた結晶の粉末X線回折図は図1と同様であり、表1を充足していた。
また、得られた結晶の赤外線吸収スペクトル(IR)は図3と同様であった。
【0034】
(実施例5)
比較例1と同様の方法により作成された((1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサンの針状晶 10gを粗生成物とし、粗生成物に4−メチル−2−ペンタノン(20g)溶液に50〜55℃で、n−ヘプタン(20g)を加えた。1時間、50〜55℃で撹拌ののち、5℃まで約4時間をかけて冷却した。スラリーを濾過し、得られた結晶をn−ヘプタン(20g)で洗浄し、減圧乾燥により、(1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサンの結晶 9.5g(収率95%)を得た。
得られた結晶は、嵩密度0.70g/mlの柱状晶であった。得られた結晶の粉末X線回折図は図1と同様であり、表1を充足していた。
また、得られた結晶の赤外線吸収スペクトル(IR)は図3と同様であった。
【0035】
(実施例6)
(1R,2R)−1,2−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン(54.6g)の4−メチル−2−ペンタノン(510g)溶液にトリエチルアミン(88.2g)を加え、20℃で塩化メタンスルホニル(95.5g)を加え、20℃で2時間、保温した。続いて、5重量%重炭酸カリウム及び水で順次、洗浄したのち、得られた有機層を減圧濃縮し、(1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサンを含む粗生成物 約262gを得た。
得られた粗生成物を50〜55℃でn−ヘプタン(219g)を滴下した。同温度で1時間保温した後、約4時間で5℃まで冷却し、同温度で1時間、保温した。スラリーを濾過し、得られた結晶を、n−ヘプタン(219g)で洗浄し、減圧乾燥により、(1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサンの結晶 100g(収率87%)を得た。
得られた結晶は、嵩密度0.74g/mlの柱状晶であった。得られた結晶の粉末X線回折図は図1と同様であり、表1を充足していた。
また、得られた結晶の赤外線吸収スペクトル(IR)は図3と同様であった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の(1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサン又はその対掌体は、向精神性物質とし有用なイミド誘導体の中間体等、医農薬中間体として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施例1で得られた(1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサンの粉末X線回折図である。
【図2】比較例1で得られた(1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサンの粉末X線回折図である。
【図3】実施例1で得られた(1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサンの赤外線吸収スペクトルである。
【図4】比較例1で得られた(1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサンの赤外線吸収スペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末X線回折図において、12.2°±0.2°、17.9°±0.2°、21.0°±0.2°、19.8°±0.2°にピークを有し、21.0°±0.2°のピーク強度が最も高いX線回折図を与えることを特徴とする式(1)

で表される(1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサン又はその対掌体の結晶。
【請求項2】
粉末X線回折図において表1
【表1】

に記載の回折角(2θ)、相対強度を示すことを特徴とする請求項1に記載の結晶。
【請求項3】
嵩密度が0.6〜0.8g/mlである前記式(1)で表される(1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサン又はその対掌体。
【請求項4】
前記式(1)で表される(1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサン又はその対掌体を含む粗生成物を、エステル溶媒及びケトン溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒に溶解し、結晶化させることを特徴とする(1R,2R)−1,2−ビス(メタンスルホニルオキシメチル)シクロヘキサン又はその対掌体の結晶を製造する方法。
【請求項5】
粗生成物を有機溶媒で溶解させたのち、さらに炭化水素溶媒を混合させ、結晶を析出させ始めることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
粗生成物及び有機溶媒を含む溶解液から50℃以上で結晶化させることを特徴とする請求項4又は5に記載の製造方法。
【請求項7】
粗生成物として、(1R,2R)−1,2−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン又はその対掌体にメタンスルホン化試剤を反応させて得られるものを用いる請求項4〜6のいずれかに記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−282527(P2006−282527A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−101692(P2005−101692)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】