説明

シクロヘキシルベンゼンの製造方法

シクロヘキシルベンゼンの製造方法において、ベンゼン及び水素が触媒系(これはモレキュラーシーブ及び少なくとも一種の水素化金属を含む)を含む少なくとも一つの反応ゾーンに供給される。そのMCM-22ファミリーモレキュラーシーブは12.4±0.25Å、6.9±0.15Å、3.57±0.07Å及び3.42±0.07Åにおけるd-間隔最大を含むX線回折パターンを有し、かつその水素化金属はパラジウム、ルテニウム、ニッケル、亜鉛、スズ、コバルト、及びこれらのあらゆる2種以上の組み合わせからなる群から選ばれる。温度及び圧力のヒドロアルキル化条件は約15%から約75%までの範囲のヒドロアルキル化転化率を生じるように選ばれる。次いでベンゼン及び水素が前記選ばれたヒドロアルキル化条件下で少なくとも一つの反応ゾーン中で接触させられてシクロヘキシルベンゼンを含む流出物を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は2009年2月26日に出願された先の米国仮特許出願第61/155,733号(これが参考として本明細書にそのまま含まれる)の利益を主張する。
本発明は選ばれたヒドロアルキル化条件下でシクロヘキシルベンゼンを製造し、必要により得られるシクロヘキシルベンゼンをフェノール及びシクロヘキサノンに変換してもよい方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノールは化学工業における重要な製品であり、例えば、フェノール樹脂、ビスフェノールA、ε-カプロラクタム、アジピン酸、及び可塑剤の製造に有益である。
現在、フェノールの製造のための最も普通の経路はホック方法である。これは最初の工程がクメンを製造するためのプロピレンによるベンゼンのアルキル化を伴ない、続いて相当するヒドロペルオキシドへのクメンの酸化次いで等モル量のフェノール及びアセトンを製造するためのそのヒドロペルオキシドの開裂を伴なう3工程方法である。しかしながら、フェノールについての世界の需要はアセトンについての需要よりも迅速に増大しつつある。加えて、プロピレンのコストが、プロピレンの発展する不足のために、おそらく増大する。こうして、供給原料としてプロピレンに代えて高級アルケンを使用し、アセトンではなく、高級ケトンを同時製造する方法が、フェノールの製造の魅力的な別の経路であるかもしれない。
例えば、シクロヘキシルベンゼンの酸化(クメン酸化と同様)がアセトン同時製造の問題なしにフェノール製造の別の経路を与え得る。この別の経路は増大する市場を有し、工業用溶媒として、酸化反応における活性剤として、またアジピン酸、シクロヘキサノン樹脂、シクロヘキサノンオキシム、カプロラクタム及びナイロン6の製造に使用される、シクロヘキサノンを同時製造する。しかしながら、この別の経路はシクロヘキシルベンゼン前駆体を製造するのに商業上実行できる方法の開発を必要とする。
シクロヘキシルベンゼンがヒドロアルキル化又は還元アルキル化の方法によりベンゼンから製造し得ることが長年にわたって知られていた。この方法では、ベンゼンはベンゼンが部分水素化を受けてシクロヘキセン(これは次いでベンゼン出発物質をアルキル化する)を生成するような触媒の存在下で水素とともに加熱される。こうして、米国特許第4,094,918号及び同第4,177,165号はニッケル処理ゼオライト及び稀土類処理ゼオライト並びにパラジウム促進剤を含む触媒による芳香族炭化水素のヒドロアルキル化を開示している。同様に、米国特許第4,122,125号及び同第4,206,082号は芳香族ヒドロアルキル化触媒としての稀土類処理ゼオライトで担持されたルテニウム化合物及びニッケル化合物の使用を開示している。これらの従来技術の方法で使用されるゼオライトはゼオライトX及びYである。加えて、米国特許第5,053,571号は芳香族ヒドロアルキル化触媒としてのゼオライトベータで担持されたルテニウム及びニッケルの使用を提案している。しかしながら、ベンゼンのヒドロアルキル化のためのこれらの先の提案はシクロヘキシルベンゼンへの選択率が特に経済的に実行できるベンゼン転化率で低く、しかも多量の望ましくない副生物、特にシクロヘキサン及びメチルシクロペンタンが、生成されるという問題がある。
更に最近、米国特許第6,037,513号はベンゼンのヒドロアルキル化におけるシクロヘキシルベンゼン選択率がベンゼン及び水素を少なくとも一種の水素化金属とMCM-22ファミリーのモレキュラーシーブを含む2機能性触媒と接触させることにより改良し得ることを開示していた。その水素化金属はパラジウム、ルテニウム、ニッケル、コバルト及びこれらの混合物から選ばれることが好ましく、その接触工程は約50〜350℃の温度、約100〜7000kPaの圧力、約0.01〜100のベンゼン対水素モル比及び約0.01〜100のWHSVで行なわれる。その’513号特許は得られるシクロヘキシルベンゼンがその後に相当するヒドロペルオキシドに酸化でき、そのペルオキシドが所望のフェノール及びシクロヘキサノンに分解し得ることを開示している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明によれば、MCM-22ファミリーゼオライト及び水素化金属を含む二機能性触媒によるベンゼンのヒドロアルキル化において、シクロヘキシルベンゼン、及びそのジアルキル化相当物、ジシクロヘキシルベンゼンへの選択率が、ベンゼン供給原料の転化率に高度に依存することが今わかった。シクロヘキシルベンゼンの選択率はシクロヘキシルベンゼン収率により割られたヒドロアルキル化転化率(即ち、ベンゼンが制限反応体である場合のベンゼン転化率)の算術的商である。特に、シクロヘキシルベンゼンの選択率はヒドロアルキル化転化率が特に約15%から約75%までの範囲である場合に最適化されることがわかる。ヒドロアルキル転化率のこの範囲で、シクロヘキシルベンゼン選択率が最適化され、約45%から約85%までの範囲であるとともに、ジシクロヘキシルベンゼンへの選択率が約5%から約40%の範囲である。
一実施態様において、本発明はシクロヘキシルベンゼンの製造方法であり、その方法は
(a) ベンゼン及び水素を触媒系(前記触媒系はMCM-22ファミリーモレキュラーシーブ及び少なくとも一種の水素化金属を含み、前記MCM-22ファミリーモレキュラーシーブは12.4±0.25Å、6.9±0.15Å、3.57±0.07Å及び3.42±0.07Åにおけるd-間隔最大を含むX線回折パターンを有する)を含む少なくとも一つの反応ゾーンに供給し、
(b) 前記少なくとも一つの反応ゾーンが約15%から約75%までの範囲のヒドロアルキル化転化率を生じるためのヒドロアルキル化条件を選択し(前記ヒドロアルキル化条件は約125℃から約175℃までの範囲内のヒドロアルキル化温度及び約125psig(862kPag)から約175psig(1227kPag)までの範囲内のヒドロアルキル化圧力を含む)、そして
(c) 前記ベンゼン及び前記水素を前記反応ゾーン中で前記反応ゾーン中の前記選ばれたヒドロアルキル化条件下で接触させることを含み、少なくとも一つの反応ゾーンに供給される水素の合計モル数対少なくとも一つの反応ゾーンに供給されるベンゼンの合計モル数の比は約0.35から約1.35までである。前記ヒドロアルキル化転化率が約20%から約70%までの範囲であることが好ましく、前記ヒドロアルキル化転化率が約25%から約65%の範囲であることが更に好ましく、ヒドロアルキル化転化率が約30%から約60%までの範囲であることが最も好ましい。
【0004】
本ヒドロアルキル化方法において、シクロヘキシルベンゼンへの選択率が約45%から約85%までの範囲であることが有利である。
都合良くは、温度の前記選ばれたヒドロアルキル化条件が約135℃から約165℃までの範囲で選ばれる。
都合良くは、圧力の前記選ばれたヒドロアルキル化条件が約125psig(862kPag)から約175psig(1227kPag)までの範囲で選ばれる。
都合良くは、前記選ばれたヒドロアルキル化条件が約0.26hr-1から約1.35hr-1までの範囲のベンゼンの毎時の質量空間速度を含む。
都合良くは、MCM-22ファミリーモレキュラーシーブがMCM-22、PSH-3、SSZ-25、ERB-1、ITQ-1、ITQ-2、MCM-36、MCM-49、MCM-56、UZM-8及びこれらのあらゆる2種以上の混合物、好ましくはMCM-22、MCM-49、MCM-56、及びこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選ばれる。
都合良くは、前記少なくとも一種の水素化金属がパラジウム、ルテニウム、ニッケル、亜鉛、スズ、及びコバルトから選ばれる。
前記モレキュラーシーブがMCM-49であり、かつ前記少なくとも一種の水素化金属がパラジウムであることが好ましい。
別の実施態様において、その方法は約0.15から約15までの範囲の少なくとも一つの反応ゾーンに供給される水素の合計モル数対少なくとも一つの反応ゾーンに供給されるベンゼンの合計モル数の比を選んで、前記ヒドロアルキル化転化率を生じる工程を更に含む。
更に別の実施態様において、本発明はフェノール及びシクロヘキサノンの同時製造方法にあり、その方法はシクロヘキシルベンゼンを本明細書に記載された方法のいずれか一つにより生成し、シクロヘキシルベンゼンを酸化してシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドを生成し、シクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドを開裂してフェノール及びシクロヘキサノンを製造することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】実施例1のヒドロアルキル化方法についての油についての日数の関数としてのベンゼン転化率のグラフである。
【図2】実施例1のヒドロアルキル化方法についての油についての日数の関数としてのシクロヘキシルベンゼン選択率のグラフである。
【図3】実施例1のヒドロアルキル化方法についての油についての日数の関数としてのジシクロヘキシルベンゼン選択率のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
シクロヘキシルベンゼンを選ばれたヒドロアルキル化条件下で製造するためのベンゼンのヒドロアルキル化のための方法が本明細書に記載される。こうして製造されたシクロヘキシルベンゼンは2工程方法でシクロヘキサノン及びフェノールに変換されてもよい。ヒドロアルキル化工程は所望のシクロヘキシルベンゼン生成物に加えてジシクロヘキシルベンゼンを生成するので、その方法はジシクロヘキシルベンゼンを付加的なベンゼンでトランスアルキル化して付加的なシクロヘキシルベンゼン生成物を製造する更なる工程を含み得る。本明細書に使用される“シクロヘキシルベンゼン”はモノシクロヘキシルベンゼンを意味する。
【0007】
ヒドロアルキル化方法
本発明の本ヒドロアルキル化方法の一実施態様における第一の工程はベンゼン及び水素を触媒系を含む少なくとも一つの反応ゾーンに供給することを含む。触媒系(以下に更に詳しく記載される)はMCM-22ファミリーモレキュラーシーブ及び少なくとも一種の水素化金属を含む。
第二の工程において、ヒドロアルキル化条件は前記少なくとも一つの反応ゾーンが約15%から約75%以下までの範囲のベンゼン転化率を生じるように選ばれ、前記ヒドロアルキル化条件は前記少なくとも一つの反応ゾーンの少なくとも温度及び圧力を含む。
第三の工程において、ベンゼン及び水素が前記反応ゾーン中で前記選ばれたヒドロアルキル化条件下で接触させられてシクロヘキシルベンゼンを含む流出物を生成する。
好ましくは、前記ヒドロアルキル化転化率は約20%から約70%までの範囲であり、更に好ましくは、前記ヒドロアルキル化転化率は約25%から約65%までの範囲であり、最も好ましくは、ヒドロアルキル化転化率は約30%から約60%までの範囲である。
前記ヒドロアルキル化転化率を前記少なくとも一つの反応ゾーン中で生じるように選ばれるヒドロアルキル化条件は有利には約100℃から約400℃までの範囲で選ばれた温度、好ましくは、約125℃から約375℃までの範囲で選ばれた温度、更に好ましくは、約150℃から約325℃までの範囲で選ばれた温度、最も好ましくは、約125℃から約175℃までの範囲で選ばれた温度を含むことが発見された。別の実施態様において、前記ヒドロアルキル化温度は約135℃から約155℃まで、又は約145℃から約155℃までの範囲で選ばれる。
前記少なくとも一つの反応ゾーン中の選ばれたヒドロアルキル化条件は約125psig(862kPag)から約175psig(1227kPag)までの範囲で選ばれた圧力、好ましくは、約135psig(931kPag)から約165psig(1138kPag)までの範囲で選ばれた圧力、更に好ましくは、約145psig(1000kPag)から約155psig(1069kPag)までの範囲で選ばれた圧力を有利に含むことがまた発見された。
【0008】
本発明の本方法の一つ以上の実施態様において、前記選ばれたヒドロアルキル化条件は約0.1hr-1から約100hr-1までの範囲で選ばれ、好ましくは、約0.2hr-1から約50hr-1までの範囲で選ばれ、更に好ましくは約0.3hr-1から約25hr-1までの範囲で選ばれた前記少なくとも一つの反応ゾーンに供給される水素及びベンゼンの毎時の質量空間速度(WHSV)、最も好ましくは、約0.5hr-1の選ばれたWHSVを含む。別の実施態様において、前記毎時の質量空間速度が約0.35hr-1から約0.95hr-1まで、約0.45hr-1から約0.75hr-1まで、又は約0.45hr-1から約0.55hr-1までの範囲である。
本方法は約0.15から約15までの範囲の少なくとも一つの反応ゾーンに供給される水素の合計モル数対少なくとも一つの反応ゾーンに供給されるベンゼンの合計モル数の比(水素対ベンゼンモル比)を有利に選んで、前記ヒドロアルキル化条件下で約15%から約75%までの範囲の前記ヒドロアルキル化転化率を生じる工程を更に含むことがまた発見された。
好ましくは、水素対ベンゼンモル比が約0.20から約10までの範囲で選ばれ、更に好ましくは、水素対ベンゼンモル比が約0.25から約5までの範囲で選ばれ、最も好ましくは、水素対ベンゼンモル比が約0.30から約1.40までの範囲で選ばれる。別の実施態様において、前記水素対ベンゼンモル比が約0.26hr-1から約1.35hr-1までの範囲で、約0.35〜約1.35、約0.45〜約0.95、約0.55〜約0.75、及び約0.55〜約0.65で選ばれる。
有利には、シクロヘキシルベンゼンへの選択率は、ヒドロアルキル化転化率が約15%から約75%までの範囲である場合に、約45%から約85%までの範囲であることが発見された。好ましくは、シクロヘキシルベンゼンへの選択率が約45%から約85%までの範囲であり、更に好ましくは、シクロヘキシルベンゼンへの選択率が約50%から約80%までの範囲であり、最も好ましくは、シクロヘキシルベンゼンへの選択率が約55%から約75%までの範囲である。
有利には、ジシクロヘキシルベンゼンへの選択率は、ヒドロアルキル化転化率が約15%から約75%までの範囲である場合に、約5%から約40%までの範囲であることが発見された。好ましくは、ジシクロヘキシルベンゼンへの選択率が約10%から約35%までの範囲であり、更に好ましくは、ジシクロヘキシルベンゼンへの選択率が約15%から約30%までの範囲であり、最も好ましくは、ジシクロヘキシルベンゼンへの選択率が約20%である。
上記された、本方法において、ベンゼンが下記の反応を受けてシクロヘキシルベンゼンを生成する。
【0009】
【化1】

【0010】
競争反応はシクロヘキサンを生成するためのベンゼンの完全飽和、ジシクロヘキシルベンゼンを生成するためのジアルキル化及び不純物、例えば、メチルシクロペンチルベンゼン(MCPB)を生成するための再編成/アルキル化反応を含む。ジシクロヘキシルベンゼンは追加のシクロヘキシルベンゼン生成物を生成するためにトランスアルキル化し得るが、シクロヘキサンへの変換が貴重な供給原料の損失に相当し、不純物、例えば、MCPBが特に望ましくない。何とならば、MCPBの沸点がシクロヘキシルベンゼンのそれに非常に近く、その結果、MCPBをシクロヘキシルベンゼンから分離することが非常に困難であるからである。それ故、ヒドロアルキル化反応におけるMCPB不純物の生成を最小にすることが重要である。
あらゆる市販のベンゼン供給原料がヒドロアルキル化工程で使用し得るが、ベンゼンが少なくとも99質量%の純度レベルを有することが好ましい。同様に、水素の源が重要ではないが、水素が少なくとも99質量%の純度であることが一般に望ましい。
好ましくは、ヒドロアルキル化工程への全供給原料は1000ppm未満、例えば、500ppm未満、例えば、100ppm未満の水を含む。全供給原料は典型的には100ppm未満、例えば、30ppm未満、例えば、3ppm未満の硫黄を含む。好ましくは、全供給原料は10ppm未満、例えば、1ppm未満、例えば、0.1ppm未満の窒素を含む。特に好ましい実施態様において、水、硫黄及び窒素についての上記好ましいレベルの少なくとも二つ、好ましくは全ての三つが得られる。
【0011】
ヒドロアルキル化反応は固定床、スラリー反応器、及び/又は接触蒸留塔を含む広範囲の反応器配置で行ない得る。加えて、ヒドロアルキル化反応は単一反応ゾーン又は複数の反応ゾーン(この場合、少なくとも水素が諸段階における反応に導入される)中で行ない得る。
一つ以上の反応ゾーンは単一反応器中に配置されることが好ましいが、別々の容器(これはバイパス可能であってもよく、また反応性ガード床(以下に記載されるような)として運転してもよい)に配置された、アルキル化又はトランスアルキル化触媒床を含む別の反応ゾーンを含んでもよい。
反応性ガード床中で使用される触媒系は反応ゾーン中で使用される触媒系とは異なってもよい。反応性ガード床中に使用される触媒系は多重触媒組成を有してもよい。少なくとも一つの反応ゾーン、通常夫々の反応ゾーンは、ヒドロアルキル化触媒系の存在下のベンゼンのヒドロアルキル化及び/又はトランスアルキル化触媒系の存在下のジシクロヘキシルベンゼンのトランスアルキル化を生じるのに有効な条件下で維持される。
反応ゾーンに加えて、またそれらの上流に、バイパス可能な反応性又は非反応性ガード床が通常ヒドロアルキル化反応器とは別の反応器ゾーン中に配置されてもよい。このようなガード床はまたヒドロアルキル化又はトランスアルキル化触媒系を装填されてもよく、これらはその他の一つ以上の反応ゾーン中で使用される触媒系と同じであってもよく、又は異なっていてもよい。このようなガード床は周囲条件、又は好適なヒドロアルキル化条件もしくはトランスアルキル化条件に維持される。ベンゼンの少なくとも一部が反応ゾーンに入る前に非反応性又は反応性ガード床に通される。これらのガード床は所望のヒドロアルキル化反応を行なうのに利用できるだけでなく、ベンゼン供給原料中の反応性不純物、例えば、窒素化合物(これらはそうしないとアルキル化又はトランスアルキル化触媒系の残部を被毒し得る)の少なくとも一部を除去するのに使用される。それ故、反応性又は非反応性ガード床中の触媒系はヒドロアルキル化又はトランスアルキル化触媒系の残部よりも頻繁な再生及び/又は交換を受け、それ故、ガード床はガード床が使用されていない間にヒドロアルキル化供給原料がヒドロアルキル化反応器中の直列に連結された反応ゾーンに直接供給し得るようにバイパス回路を典型的に備えている。反応性又は非反応性ガード床は並流の上昇流又は下降流操作で操作されてもよい。
如何なる特別な理論により束縛されないが、温度、圧力、水素対ベンゼンモル比並びにベンゼン及び水素の毎時の質量空間速度を制御して、約15%から約75%までの範囲のヒドロアルキル化転化率を生じることにより、シクロヘキシルベンゼン選択率が許容し得るジシクロヘキシルベンゼン選択率で最適化されると考えられる。続く実施例からわかるように、ヒドロアルキル化転化率がMCM-49/Pdヒドロアルキル化触媒で15-75%である場合に、安定な性能がシクロヘキシルベンゼン及びジシクロヘキシルベンゼンへのベンゼンのヒドロアルキル化で得られた。転化率が好ましい範囲である場合に、触媒活性又は選択率の失活が2ヶ月以上の操作にわたって得られなかった。安定な性能は高度に予測されなかった。何とならば、反応からの主生成物がシクロヘキシルベンゼン及びジシクロヘキシルベンゼンであり、これらの両方が200℃を良く超える沸点を有するからである。
【0012】
ヒドロアルキル化触媒系
ヒドロアルキル化反応に使用される触媒はMCM-22ファミリーのモレキュラーシーブ及び水素化金属を含む2機能性触媒である。本明細書に使用される“MCM-22 ファミリーモレキュラーシーブ”(又は“MCM-22 ファミリーのモレキュラーシーブ”)という用語は、
・普通の第一級(first degree)結晶性ビルディングブロック単位セル(その単位セルはMWWフレームワークトポロジーを有する)からつくられたモレキュラーシーブ(単位セルは原子の空間配置であり、これは三次元空間中でタイルにされた場合に結晶構造を記載する。このような結晶構造が“ゼオライトフレームワーク型のアトラス”, 第五編, 2001(その全内容が参考として含まれる)に説明されている);
・一つの単位セル厚さ、好ましくは一つのc-単位セル厚さの単層を形成する、このようなMWWフレームワークトポロジー単位セルの2次元のタイリングである、普通の第二級(second degree)ビルディングブロックからつくられたモレキュラーシーブ;
・一つ以上の単位セル厚さの層である、普通の第二級ビルディングブロックからつくられたモレキュラーシーブ(一つより多い単位セル厚さの層が一単位セル厚さの少なくとも二つの単層を積み重ね、充填し、又は結合することからつくられる。このような第二級ビルディングブロックの積み重ねは規則的な様式、不規則な様式、ランダム様式、又はこれらのあらゆる組み合わせであってもよい);及び
・MWWフレームワークトポロジーを有する単位セルのあらゆる規則的又はランダムな2次元又は3次元の組み合わせによりつくられたモレキュラーシーブ
の一つ以上を含む。
【0013】
MCM-22ファミリーのモレキュラーシーブは一般に12.4±0.25、6.9±0.15、3.57±0.07及び3.42±0.07 Åにd-間隔最大を含むX線回折パターンを有する。その物質を特性決定するのに使用されるX線回折データは通常の技術により、例えば、入射放射線としての銅のK-α二重線並びに収集システムとしてのシンチレーションカウンター及び関連コンピュータを備えたディフラクトメーターを使用して得られる。MCM-22ファミリーのモレキュラーシーブとして、MCM-22 (米国特許第4,954,325号に記載されている)、PSH-3 (米国特許第4,439,409号に記載されている)、SSZ-25 (米国特許第4,826,667号に記載されている)、ERB-1 (欧州特許第0293032号に記載されている)、ITQ-1 (米国特許第6,077,498号に記載されている), ITQ-2 (国際特許公開WO97/17290に記載されている)、MCM-36 (米国特許第5,250,277号に記載されている)、MCM-49 (米国特許第5,236,575号に記載されている)、MCM-56 (米国特許第5,362,697号に記載されている)、UZM-8 (米国特許第6,756,030号に記載されている)、それらのイソタイプ、及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。モレキュラーシーブはMCM-22、MCM-49及びMCM-56、それらのイソタイプ、及びこれらの2種以上の混合物又は組み合わせからなる群から選ばれることが好ましい。
あらゆる既知の水素化金属が本ヒドロアルキル化触媒中に使用し得るが、好適な金属として、パラジウム、ルテニウム、ニッケル、亜鉛、スズ、及びコバルト、並びにこれらの組み合わせが挙げられ、パラジウムが特に有利である。一般に、触媒中に存在する水素化金属の量は触媒の約0.05質量%〜約10質量%、例えば、約0.1質量%〜約5質量%である。一実施態様において、MCM-22ファミリーモレキュラーシーブがアルミノシリケートである場合、存在する水素化金属の量はモレキュラーシーブ中のアルミニウム対水素化金属のモル比が約1.5から約1500まで、例えば、約75から約750まで、例えば、約100から約300までであるような量である。
【0014】
水素化金属は、例えば、初期湿潤、含浸、イオン交換又は押出技術によりMCM-22ファミリーモレキュラーシーブに直接担持されてもよい。しかしながら、更に好ましい実施態様において、水素化金属の少なくとも50質量%、例えば、少なくとも75質量%、一般に実質的に全てがモレキュラーシーブとは別だが、モレキュラーシーブと複合された無機酸化物で担持される。特に、水素化金属を無機酸化物で担持することにより、触媒の活性並びにシクロヘキシルベンゼンへのその選択率が均等触媒(この場合、水素化金属がモレキュラーシーブで担持される)と較べて増大されると考えられる。
このような複合ヒドロアルキル化触媒中に使用される無機酸化物は、それがヒドロアルキル化反応の条件下で安定かつ不活性であることを条件として狭く特定されない。好適な無機酸化物として、元素の周期律表の2族、4族、13族及び14族の酸化物、例えば、アルミナ及び/又はチタニア及び/又はジルコニアが挙げられる。本明細書に使用される周期律表グループについてのナンバリングスキームはChemical and Engineering News, 63(5), 27 (1985)に開示されているようなものである。触媒系がモレキュラーシーブ及びモレキュラーシーブとは異なる無機酸化物の複合材料を含む場合、これらの2種の成分は都合良くは90:10〜10:90、例えば、80:20〜20:80、例えば、70:30〜30:70又は60:40〜40:60の範囲の質量比で存在する。
上記好ましい実施態様において、水素化金属は都合良くは含浸により無機酸化物に付着され、その後に金属含有無機酸化物がモレキュラーシーブと複合される。典型的には、触媒複合材料は同時ペレット化により生成され、その場合、モレキュラーシーブ及び金属含有無機酸化物の混合物が高圧(一般に約350kPa〜約350,000kPa)で、又は同時押出(この場合、モレキュラーシーブ及び金属含有無機酸化物のスラリーが、必要により別のバインダーと一緒に、ダイに押しやられる)によりペレットに成形される。必要により、付加的な水素化金属がその後に得られる触媒複合材料に付着し得る。
好適なバインダー材料として、合成物質又は天然産物質だけでなく、無機物質、例えば、クレー、シリカ及び/又は金属酸化物が挙げられる。後者は天然産であってもよく、又はシリカ及び金属酸化物の混合物を含むゼラチン質の沈殿又はゲルの形態であってもよい。バインダーとして使用し得る天然産クレーとして、モンモリロナイトファミリー及びカオリンファミリーのクレー(これらのファミリーはサブベントナイトを含む)並びにディキシイクレー、マックナミイクレー、ジョージアクレー及びフロリダクレーとして普通知られているカオリン又はその他(その場合、主金属成分がハロイサイト、カオリナイト、ジッカイト、ナクライト又はアナウキサイトである)が挙げられる。このようなクレーは初期に微粉砕され、又は最初に焼成、酸処理もしくは化学変性にかけられた生の状態で使用し得る。好適な金属酸化物バインダーとして、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア、シリカ-ジルコニア、シリカ-トリア、シリカ-ベリリア、シリカ-チタニアだけでなく、3成分組成物、例えば、シリカ-アルミナ-トリア、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-マグネシア及びシリカ-マグネシア-ジルコニアが挙げられる。
【0015】
トランスアルキル化
ヒドロアルキル化工程はシクロヘキシルベンゼンについて高度に選択的であるが、ヒドロアルキル化反応からの流出物は通常若干のジアルキル化生成物だけでなく、未反応の芳香族供給原料及び所望のモノアルキル化種(例えば、シクロヘキシルベンゼン)を含むであろう。未反応の芳香族供給原料は通常蒸留により回収され、アルキル化反応器に循環される。ベンゼン蒸留からのボトムが更に蒸留されてモノシクロヘキシルベンゼン生成物をジシクロヘキシルベンゼン及びその他のヘビーから分離する。反応流出物中に存在するジシクロヘキシルベンゼンの量に応じて、ジシクロヘキシルベンゼンを追加のベンゼンでトランスアルキル化して所望のモノアルキル化種(例えば、シクロヘキシルベンゼン)の生成を最大にすることが望ましいかもしれない。
追加のベンゼンによるトランスアルキル化は典型的には好適なトランスアルキル化触媒、例えば、MCM-22ファミリーのモレキュラーシーブ、ゼオライトベータ、MCM-68(米国特許第6,014,018号を参照のこと)、ゼオライトY又はモルデナイトについて、ヒドロアルキル化反応器とは別の、トランスアルキル化反応器中で行なわれる。トランスアルキル化反応は典型的には少なくとも部分的液相条件下で行なわれ、これらの条件は好適には約100℃〜約300℃の温度及び/又は約800kPa〜約3500kPaの圧力及び/又は全供給原料についての約1hr-1〜約10hr-1の毎時の質量空間速度及び/又は約1:1〜約5:1のベンゼン/ジシクロヘキシルベンゼン質量比を含む。
【0016】
シクロヘキシルベンゼン酸化
シクロヘキシルベンゼンをフェノール及びシクロヘキサノンに変換するために、シクロヘキシルベンゼンが最初に相当するヒドロペルオキシドに酸化される。これは空気の如き酸素含有ガスをシクロヘキシルベンゼンを含む液相に導入することにより達成される。クメンと違って、触媒の不在下のシクロヘキシルベンゼンの大気の空気酸化は非常に遅く、それ故、その酸化は通常触媒の存在下で行なわれる。
シクロヘキシルベンゼン酸化工程に適した触媒は米国特許第6,720,462号(本明細書に参考として含まれる)に記載されたN-ヒドロキシ置換環状イミド、例えば、N-ヒドロキシフタルイミド、4-アミノ-N-ヒドロキシフタルイミド、3-アミノ-N-ヒドロキシフタルイミド、テトラブロモ-N-ヒドロキシフタルイミド、テトラクロロ-N-ヒドロキシフタルイミド、N-ヒドロキシヘトイミド、N-ヒドロキシヒムイミド、N-ヒドロキシトリメリットイミド、N-ヒドロキシベンゼン-1,2,4-トリカルボキシミド、N,N’-ジヒドロキシ(ピロメリットジイミド)、N,N’-ジヒドロキシ(ベンゾフェノン-3,3’,4,4’-テトラカルボキシルジイミド)、N-ヒドロキシマレイミド、ピリジン-2,3-ジカルボキシミド、N-ヒドロキシスクシンイミド、N-ヒドロキシ(酒石酸イミド)、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシミド、エキソ-N-ヒドロキシ-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシミド、N-ヒドロキシ-シス-シクロヘキサン-1,2-ジカルボキシミド、N-ヒドロキシ-シス-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシミド、N-ヒドロキシナフタルイミドナトリウム塩又はN-ヒドロキシ-o-ベンゼンジスルホンイミドである。触媒がN-ヒドロキシフタルイミドであることが好ましい。別の好適な触媒はN,N’,N”-トリヒドロキシイソシアヌル酸である。
これらの物質は単独で、又は遊離基開始剤の存在下で使用でき、液相、均一触媒として使用でき、又は不均一触媒を用意するために固体担体で担持し得る。典型的には、N-ヒドロキシ置換環状イミド又はN,N’,N”-トリヒドロキシイソシアヌル酸がシクロヘキシルベンゼンの0.0001モル%〜15質量%、例えば、0.001質量%〜5質量%の量で使用される。
酸化工程に適した条件として、約70℃〜約200℃、例えば、約90℃〜約130℃の温度及び/又は約50kPa〜10,000kPaの圧力が挙げられる。あらゆる酸素含有ガス、好ましくは空気が酸化媒体として使用し得る。その反応は回分式反応器又は連続流反応器中で行ない得る。塩基性緩衝剤が酸化中に生成し得る酸性副生物と反応するために添加されてもよい。加えて、水相が導入されてもよく、これが炭酸ナトリウムの如き塩基性化合物を溶解することを助け得る。
【0017】
ヒドロペルオキシド開裂
フェノール及びシクロヘキサノンへのシクロヘキシルベンゼンの変換における最後の反応工程はシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドの開裂を伴ない、これは都合良くはそのヒドロペルオキシドを液相中で触媒と接触させることにより行なわれる。これは都合良くは約20℃〜約150℃、例えば、約40℃〜約120℃の温度及び/又は約50kPa〜約2,500kPa、例えば、約100kPa〜約1000kPaの圧力で行なわれる。シクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドはその開裂反応に不活性な有機溶媒、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、フェノール又はシクロヘキシルベンゼン中で希釈されて、熱除去を助けることが好ましい。その開裂反応は都合良くは接触蒸留ユニット中で行なわれる。
開裂工程で使用される触媒は均一触媒又は不均一触媒であってもよい。
好適な均一開裂触媒として、硫酸、過塩素酸、リン酸、塩酸及びp-トルエンスルホン酸が挙げられる。塩化第二鉄、三フッ化ホウ素、二酸化硫黄及び三酸化硫黄がまた有効な均一開裂触媒である。好ましい均一開裂触媒は硫酸であり、その好ましい濃度は0.05質量%〜0.5質量%の範囲である。均一酸触媒について、中和工程がその開裂工程に続くことが好ましい。このような中和工程は典型的には塩基性成分との接触、その後の塩に富む水相のデカントを伴なう。
【0018】
シクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドの開裂における使用に適した不均一触媒として、スメクタイトクレー、例えば、米国特許第4,870,217号(その全開示が参考として本明細書に含まれる)に記載されたような、酸性モンモリロナイトシリカ-アルミナクレーが挙げられる。
開裂工程からの粗シクロヘキサノン及び粗フェノールは精製シクロヘキサノン及び精製フェノールを生成するために更なる精製にかけられてもよい。好適な精製プロセスとして、シクロヘキサノン及びフェノールをその他の種から分離するための一連の蒸留塔が挙げられるが、それに限定されない。
下記の実施例は説明目的のために示され、本発明の範囲を限定しない。
【実施例1】
【0019】
一連の実験を行ない、その実験ではベンゼン及び水素をPd/Al2O3触媒2gをMCM-49/Al2O3触媒6gと同時ペレット化することにより調製された触媒系と接触させた。Pd/Al2O3触媒のPd濃度は0.3質量%であった。MCM-49/Al2O3触媒のMCM-49の濃度は80%であった。
この研究では、ヒドロアルキル化転化率が15%〜75%の間で変化された。反応器温度を125℃〜175℃の間で変化させた。圧力を963kPa-a(125psig)〜1308kPa-a(175psig)の間で変化させた。水素対ベンゼンのモル比を0.35〜1.35の間で変化させた。ヒドロアルキル化方法の安定性を測定するために物質バランスを150℃、1135kPa-a(164.7psig)、0.64の水素/ベンゼンモル供給比、及び0.5hr-1の毎時の質量空間速度(WHSV)の“標準”条件で周期的に完結した。この研究に使用したベンゼン供給原料を13X、4A、クレー、セレックスソーブCD、及びMCM-49/Al2O3を含む一連のガード床で前処理し,その後にその供給原料を反応器に導入した。結果を図1〜3に示す。
図1-3からわかるように、転化率はプロセス変化の結果として15-75%の範囲であった。シクロヘキシルベンゼンへの転化率は45%から85%までの範囲であり、一方、ジシクロヘキシルベンゼンへの選択率は5%から40%までの範囲であった。その実験の平均転化率は38%であり、一方、シクロヘキシルベンゼン及びジシクロヘキシルベンゼンへの平均選択率は夫々68%及び19%である。
21-22日目、28-35日目、42-45日目、及び72-75日目に、そのユニットを150℃、1135kPa-a(150psig)、並びに0.64の水素/ベンゼンモル供給比及び0.5hr-1のWHSVで運転した。“標準”条件で、平均転化率は42%であり、シクロヘキシルベンゼン及びジシクロヘキシルベンゼンへの選択率は夫々72%及び18%である。安定な転化率並びにシクロヘキシルベンゼン及びジシクロヘキシルベンゼンへの高い選択率は高度に予測されなかった。何とならば、その反応の2種の主生成物は両方とも200℃を超える沸点を有して、非常にヘビーであるからである。安定な性能が予測されなかった別の理由は転化率が75%程度に高く、しかも触媒性能が絶えず優れていたことであった。
本発明が特別な実施態様を参照して記載され、説明されたが、当業者は本発明が本明細書に必ずしも説明されていない変化に適合することを認めるであろう。この理由のために、本発明の真の範囲を決める目的のために特許請求の範囲のみが参考にされるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロヘキシルベンゼンの製造方法であって、
(a) ベンゼン及び水素を触媒系を含む少なくとも一つの反応ゾーンに供給し、ここで、前記触媒系はMCM-22ファミリーモレキュラーシーブ及び少なくとも一種の水素化金属を含み、前記MCM-22ファミリーモレキュラーシーブは12.4±0.25Å、6.9±0.15Å、3.57±0.07Å及び3.42±0.07Åにおけるd-間隔最大を含むX線回折パターンを有し、
(b) 前記少なくとも一つの反応ゾーンが約15%から約75%までの範囲のヒドロアルキル化転化率を生じるためのヒドロアルキル化条件を選択し、ここで、前記ヒドロアルキル化条件は約125℃から約175℃までの範囲のヒドロアルキル化温度及び約125psig(862kPag)から約175psig(1227kPag)までの範囲のヒドロアルキル化圧力を含み、そして
(c) 前記ベンゼン及び前記水素を前記反応ゾーン中で接触させることを含み、少なくとも一つの反応ゾーンに供給される水素の合計モル数対少なくとも一つの反応ゾーンに供給されるベンゼンの合計モル数の比が約0.35から約1.35までであることを特徴とする、シクロヘキシルベンゼンの製造方法。
【請求項2】
シクロヘキシルベンゼンへの選択率が約45%から約85%までの範囲にある、請求項1記載の方法。
【請求項3】
温度の前記ヒドロアルキル化条件が約135℃から約165℃までの範囲にある、請求項1から2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
圧力の前記ヒドロアルキル化条件が約931kPagから約1138kPa-aまでの範囲にある、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記ヒドロアルキル化条件が約0.26hr-1から約1.35hr-1未満までの範囲の毎時の質量空間速度を含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記MCM-22ファミリーモレキュラーシーブがMCM-22、PSH-3、SSZ-25、ERB-1、ITQ-1、ITQ-2、MCM-36、MCM-49、MCM-56、UZM-8及びこれらのあらゆる2種以上の組み合わせからなる群から選ばれる、請求項1記載の方法。
【請求項7】
少なくとも一種の水素化金属がパラジウム、ルテニウム、ニッケル、亜鉛、スズ、コバルト、及びこれらのあらゆる2種以上の組み合わせからなる群から選ばれる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記モレキュラーシーブがMCM-49であり、かつ前記少なくとも一種の水素化金属がパラジウムである、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも一種の水素化金属が触媒系の約0.05質量%から約10質量%までの量で存在する、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記ベンゼンを反応性ガード床に通して反応性不純物の少なくとも一部を除去し、前記反応性不純物が窒素化合物を含む、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
水素化金属の前記部分がモレキュラーシーブとは異なる無機酸化物で担持されている、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記無機酸化物が元素の周期律表の2族、4族、13族及び14族の少なくとも一種の元素の酸化物を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記無機酸化物がアルミナ、チタニア、ジルコニア及びこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選ばれる、請求項11又は12記載の方法。
【請求項14】
前記流出物が更にジシクロヘキシルベンゼンを含み、そのジシクロヘキシルベンゼンの少なくとも一部をトランスアルキル化条件下で付加的なベンゼンと接触させて付加的なシクロヘキシルベンゼンを生成する、請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
ベンゼン転化率が約30%から約60%までの範囲である、請求項1から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
約0.55から約0.75までの範囲の少なくとも一つの反応ゾーンに供給される水素の合計モル数対少なくとも一つの反応ゾーンに供給されるベンゼンの合計モル数の比を選んで、前記ヒドロアルキル化転化率を生じる工程を更に含む、請求項1から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
温度の前記ヒドロアルキル化条件が約145℃から約155℃までの範囲であり、かつ圧力の前記ヒドロアルキル化条件が約931kPagから約1138kPagまでの範囲である、請求項1から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記MCM-22ファミリーモレキュラーシーブがMCM-22、PSH-3、SSZ-25、ERB-1、ITQ-1、ITQ-2、MCM-36、MCM-49、MCM-56、UZM-8及びこれらのあらゆる2種以上の組み合わせからなる群から選ばれ、かつ前記少なくとも一種の水素化金属がパラジウム、ルテニウム、ニッケル、亜鉛、スズ、コバルト、及びこれらのあらゆる2種以上の組み合わせからなる群から選ばれる、請求項1から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも一つの反応ゾーンが固定床反応器である、請求項1から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
フェノール及びシクロヘキサノンの同時製造方法であって、その方法がシクロヘキシルベンゼンを請求項1から19のいずれかに記載の方法により生成する工程、そのシクロヘキシルベンゼンを酸化してシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドを生成する工程及びそのシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドを開裂してフェノール及びシクロヘキサノンを製造する工程を含むことを特徴とする前記同時製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−517469(P2012−517469A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550112(P2011−550112)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/065692
【国際公開番号】WO2010/098798
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】