説明

シクロヘキセン1,4−カルボキシレート

本発明は、1位および4位、場合により2位にカルボキシレート誘導体を有するシクロヘキセンに関する。本発明は、利用する出発原料の一部が再生可能資源に由来する、そのような化合物を調製するプロセスにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれている2009年6月16日出願の「NOVEL TEREPHTHALIC AND TRIMELLITIC BASED ACIDS AND CARBOXYLATE DERIVATIVES THEREOF」という表題の米国仮出願第61/187,444号からの優先権を主張する。
【0002】
本発明は、新規なベンゼン1,4−ジカルボキシレート化合物(テレフタル酸およびそのカルボキシレート誘導体)およびそれから調製される重要な再生可能な含有物を有する生成物に関する。本発明は、利用する出発原料の一部が再生可能資源に由来する、ベンゼン1,4−ジカルボキシレート化合物(テレフタル酸およびそのカルボキシレート誘導体)を調製するプロセスにも関する。本発明は、これらのプロセスで調製される新規なシクロヘキセン1,4−ジカルボキシレート系の中間体ならびにこれらの中間体の置換および非置換シクロヘキサン1,4−ジカルボキシレートおよびそれらの誘導体への転換にも関する。本発明は、それら自体が再生可能資源に由来する出発原料に由来するそのような化合物から調製される生成物にも関する。
【背景技術】
【0003】
テレフタル酸およびトリメリット酸は、それぞれ、1位および4位、ならびに1位、2位および4位にカルボキシレート基を有するベンゼン環を含む。これらの酸およびそれらのカルボキシレート誘導体は、ポリエステルおよび可塑剤などの様々な市販の製品において有用である。現在のところ、これらの酸およびそれらのカルボキシレート誘導体は、p−キシレンなどの石油系の出発原料から商業的に合成されている。炭化水素市場における不安定性および今後使用することができる炭化水素の量が限られていることが原因で、そのような重要な化合物を再生可能資源から調製する方法が開発されることが望ましい。
【0004】
トウモロコシおよびサトウキビなどの一部の大規模農作物(large agricultural crops)、ならびに食物源として使用することができないそれらの収穫および加工に付随する副産物は、デンプンまたはセルロース系物質を含有し、それらは分解して単純な糖質にすることができ、次いで、有用な生成物に転換することができる。例えば、参照により本明細書に組み込まれているFrostらのUS 5,629,181;FrostのUS 5,168,056;FrostらのUS 5,272,073;Frostの米国特許公開第2007/0178571号、およびFrostらのUS 5,616,496を参照されたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
置換および非置換ベンゼン1,4−ジカルボキシレート化合物(テレフタル酸およびそのカルボキシレート誘導体)、ならびに、例えば、バイオマスまたはバイオマスから得ることができる単純な糖質などの再生可能資源から作製するまたは得ることができる出発原料からそのような化合物を調製するプロセスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明は、少なくとも1つのベンゼン環ならびにベンゼン環の1位および4位に、場合によりベンゼン環の2位にカルボキシレート誘導体を含有する化合物の調製方法を提供する。そのような化合物としては、置換および非置換テレフタル酸ならびにそのカルボキシレート誘導体が挙げられる。置換テレフタレートとしては、1位および4位にカルボン酸基またはそのカルボキシレート誘導体を有するベンゼン環(ベンゼン環は他の炭素で置換されていてもよい)を有する化合物が挙げられる。1つの好ましい実施形態において、ベンゼン環は2位で置換されている。1つの好ましい2位の置換基はカルボン酸またはそのカルボキシレート誘導体である。置換基の別の好ましい基は、フェニル、アルキルまたはハロゲン基を包含する。より好ましい置換テレフタレートとしては、トリメリット酸およびフェニルテレフタル酸が挙げられる。本明細書において使用する場合、カルボキシレートという用語は、カルボニル基(C=O)を含有し、カルボニル基が塩を形成するようにアニオンに、酸素、窒素、硫黄または1もしくは複数のハロゲンなどのヘテロ原子に結合している任意の基を指す。ヘテロ原子は、水素または1もしくは複数のヘテロ原子を場合により含有し得るヒドロカルビル基などの1もしくは複数の他の基に共有結合によりさらに結合することができるか、またはカチオンに電子結合して塩を形成し得る。あるいは、カルボキシレート誘導体は、ニトリルとすることができる。カルボキシレートは、ハロゲン化アシル、カルボン酸、アミド、エステル、チオールエステル、メルカプトカルボニル、無水物、ニトリル、アニオンとの塩またはカチオンとの塩であることが好ましい。好ましいカチオンとしては、アルカリ金属ならびに非置換およびヒドロカルビル置換アンモニウムイオンが挙げられる。カルボキシレートという用語は、本明細書において使用する場合、カルボン酸の形態のカルボキシレート誘導体を包含する。カルボン酸または酸という用語は、本明細書において、酸の形態を他のカルボキシレートの形態と区別する文脈で使用する。これ以降での具体的な使用は、文脈から明らかである。該方法は、1もしくは複数のムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体および1または複数のジエノフィルが1または複数のシクロヘキセン環含有化合物を形成するような条件下で、1もしくは複数のムコン酸ジエンまたはそのカルボキシレート誘導体を1または複数のジエノフィルと接触させるステップと、1位および4位に、場合により2位にカルボキシレート誘導体を有する芳香族環を含有する化合物が調製されるような条件下、場合により1または複数の酸化剤の存在下で、シクロヘキセン環含有化合物を1または複数の脱水素触媒と接触させるステップとを含む。カルボキシレート誘導体が1位および4位に存在する場合、該化合物は、本明細書においてテレフタル酸またはそのカルボキシレート誘導体と呼ぶ。最終化合物が芳香族環の1位および4位のカルボキシレート誘導体に加えて2位にカルボキシレートをさらに含有する場合、該化合物は、本明細書においてトリメリット酸またはそのカルボキシレート誘導体と呼ぶ。好ましい実施形態において、カルボキシレート誘導体は、カルボン酸のエステル、好ましくはカルボン酸ヒドロカルビルである。1もしくは複数のムコン酸、またはそのカルボキシレート誘導体、および1または複数のジエノフィルは、ニートで、または溶媒の存在下で接触させることができる。別の好ましい実施形態において、1もしくは複数のムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体は、約130℃〜約170℃の温度で、1または複数のジエノフィルと接触させる。さらに別の実施形態において、不飽和基を含有する化合物の重合を阻害する1または複数の化合物の存在下で、1もしくは複数のムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体および1または複数のジエノフィルを接触させる。さらに別の実施形態において、ディールス・アルダー環化付加触媒(cycloaddition catalyst)(ルイス酸)の存在下で、1もしくは複数のムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体および1または複数のジエノフィルを接触させる。さらに別の実施形態において、様々なムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体をtrans,trans(トランス,トランス)異性体に相互転換する異性化触媒の存在下で、1もしくは複数のムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体および1または複数のジエノフィルを接触させる。
【0007】
ジエノフィルと反応させる1もしくは複数のムコン酸、またはそのカルボキシレート誘導体は、trans,trans異性体配置(isomeric arrangement)であることが好ましい。好ましい実施形態において、出発ムコン酸は、微生物合成により調製されたcis,cis(シス,シス)ムコン酸である。知られている微生物合成の生成物は、cis,cisムコン酸異性体である。1もしくは複数のムコン酸またはそのカルボン酸エステルを1または複数のジエノフィルと反応させるプロセスで使用するムコン酸またはカルボキシレート誘導体は、cis,cisムコン酸またはcis,trans(シス,トランス)ムコン酸の異性化により調製することが好ましい。好ましい実施形態において、1もしくは複数のムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体は、cis,cisおよび/またはcis,transムコン酸あるいはそのカルボキシレート誘導体がtrans,transムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体に異性化するような条件下で、溶媒中で、1または複数のcis,cisおよびcis,transムコン酸あるいはそのカルボキシレート誘導体を1または複数の異性化触媒、紫外線放射源あるいはそれらの両方と接触させることにより、1または複数のcis,transおよびcis,cisムコン酸あるいはそのカルボキシレート誘導体から調製される。別の好ましい実施形態において、cis,cisムコン酸は、a)水中のcis,cisムコン酸を室温より高い高温(約23℃)に曝露してcis,transムコン酸を形成するステップと、b)水中のムコン酸をcis,trans異性体が水から沈殿する温度まで冷却するステップと、c)cis,transムコン酸を回収するステップと、d)cis,transムコン酸がtrans,transムコン酸に異性化するような条件下で、cis,transムコン酸および1もしくは複数の異性化触媒、紫外線放射源またはそれらの両方を接触させるステップとを含むプロセスによりtrans,transムコン酸に転換する。
【0008】
1つの好ましい実施形態において、エステル形態のムコン酸を1または複数のジエノフィルと反応させる。該エステルは、trans,trans異性体の形態であることが好ましい。ムコン酸の異性化およびエステル化の手順は重要なものではない。したがって、ムコン酸のエステル化形態は、エステル化後に異性化を施してもよい。ムコン酸は、エステル化の前にtrans,trans異性体に異性化することが好ましい。エステル化ステップは、1または複数のムコン酸ジヒドロカルビルが形成する条件下で、1または複数のムコン酸を1または複数のエステル化剤と接触させることにより実施することができる。1または複数のエステル化剤は、適切な反応条件下で、1または複数のムコン酸上にあるカルボン酸の水素をヒドロカルビル基で置換することができる任意の化合物とすることができ、得られるエステルは、前述の通りにジエノフィルと反応させることができる。好ましいエステル化剤は、ヒドロキシル基を含有する炭化水素系化合物である。より好ましいエステル化剤としては、アルカノール、ベンジルアルコールまたはフェノールが挙げられる。1つの好ましい実施形態において、ムコン酸のtrans,transエステルは、a)cis,cisムコン酸がtrans,transムコン酸に異性化するような条件下で、溶媒中で、cis,cisムコン酸および1もしくは複数の異性化触媒、紫外線放射源、またはそれらの両方を接触させるステップと、b)trans,transムコン酸を回収するステップと、c)trans,transムコン酸ジヒドロカルビルが形成する条件下でtrans,transムコン酸をエステル化剤と接触させるステップとにより調製する。別の実施形態において、ジエノフィルと接触させる1または複数のムコン酸のエステルは、a)cis,cisムコン酸を水中で高温に曝露するステップと、b)水中のムコン酸をcis,trans異性体が水から沈殿する温度まで冷却するステップと、c)cis,transムコン酸を回収するステップと、d)cis,transムコン酸がtrans,transムコン酸に異性化するような条件下で、溶媒中で、cis,transムコン酸および1もしくは複数の異性化触媒、紫外線放射源またはそれらの両方を接触させるステップと、e)trans,transムコン酸を回収するステップと、f)trans,transムコン酸ジヒドロカルビルが形成する条件下、1または複数の酸の存在下で、trans,transムコン酸をエステル化剤と接触させるステップとにより調製する。別の実施形態において、本発明は、a)1または複数のcis,cisおよびcis,transムコン酸ジヒドロカルビルが形成する条件下、酸の存在下で、cis,cisムコン酸をエステル化剤と接触させるステップと、b)1または複数のcis,cisおよびcis,transムコン酸ジヒドロカルビルを回収するステップと、c)cis,cisおよびcis,transムコン酸ジヒドロカルビルがtrans,transムコン酸ジヒドロカルビルに異性化するような期間、溶媒中で、1または複数のcis,cisおよびcis,transムコン酸ジヒドロカルビルならびに1もしくは複数の異性化触媒、紫外線放射源またはそれらの両方を接触させるステップとを含むtrans,transムコン酸ジヒドロカルビルの調製方法である。
【0009】
1つの好ましい実施形態において、本発明は、a)cis,cisムコン酸がtrans,transムコン酸に異性化するような期間、プロトン性または非プロトン性溶媒中、ある温度で、紫外線の存在下、cis,cisムコン酸およびヨウ素を接触させるステップと、b)trans,transムコン酸を回収するステップと、c)1または複数のtrans,transムコン酸ジアルキルが形成する条件下、1または複数の強酸の存在下で、trans,transムコン酸を1または複数のアルカノールと接触させるステップと、d)ムコン酸ジアルキルおよびジエノフィルが1または複数のシクロヘキセン環含有化合物を形成するような条件下、約130℃〜約170℃の温度で、1または複数のムコン酸ジアルキルを1または複数のジエノフィルと接触させるステップと、1位および4位にカルボン酸ヒドロカルビルエステルまたはカルボン酸基を有するベンゼン環を含有する1または複数の化合物が調製されるような条件下、場合により1または複数の酸化剤の存在下で、1または複数のシクロヘキセン環含有化合物を1または複数の脱水素触媒と接触させるステップとを含む置換または非置換ベンゼン1,4ジカルボキシレート(テレフタル酸またはテレフタレートカルボキシレートエステル系化合物)の調製方法である。
【0010】
一実施形態において、ムコン酸の1または複数のジヒドロカルビルエステルのtrans,trans異性体への異性化は、該エステルとジエノフィルとの反応と同じ反応混合物においてin situで実施することができる。この実施形態において、1位および4位にカルボン酸ヒドロカルビルエステルを有するベンゼン環を含有する1または複数の化合物(1または複数のテレフタル酸エステル系化合物)は、1または複数のムコン酸エステルおよび1または複数のジエノフィルが1位および4位にカルボン酸エステル基を有するシクロヘキセン環を有する1または複数の化合物を形成するような条件下、高温で、1または複数のcis,cisまたはcis,transムコン酸エステルを1または複数のジエノフィルと接触させるステップと、1位および4位にカルボン酸ヒドロカルビルエステルを有するベンゼン環を含有する1または複数の化合物が調製されるような条件下、場合により1または複数の酸化剤の存在下で、1または複数のシクロヘキセン環含有化合物を1または複数の脱水素触媒と接触させるステップとを含むプロセスにより調製する。このプロセスは、溶媒、好ましくは非極性の非プロトン性溶媒中で実施することが好ましい。この反応は、約130℃〜約170℃の温度で実施することが好ましい。一実施形態において、ムコン酸の1または複数の異性体のtrans,trans異性体への異性化は、ムコン酸とジエノフィルとの反応と同じ反応混合物においてin situで実施することができる。この実施形態において、1位および4位にカルボン酸ヒドロカルビルエステルを有するベンゼン環を含有する1または複数の化合物(1または複数のテレフタル酸エステル系化合物)は、1または複数のムコン酸異性体および1または複数のジエノフィルが1位および4位にカルボン酸基を有するシクロヘキセン環を有する1または複数の化合物を形成するような条件下、高温で、1または複数のcis,cisまたはcis,transムコン酸を1または複数のジエノフィルと接触させるステップと、1位および4位にカルボン酸基を有するベンゼン環を含有する1または複数の化合物が調製される、および/またはカルボン酸基がカルボン酸ヒドロカルビル基に転換されるような条件下でエステル化剤と反応するような条件下、場合により1または複数の酸化剤の存在下で、1または複数のシクロヘキセン環含有化合物を1または複数の脱水素触媒と接触させるステップとを含むプロセスにより調製する。水素化およびエステル化ステップは、いずれの順序で実施してもよい。
【0011】
一実施形態において、1または複数の出発ジエノフィルは、1または複数のアルケン系化合物である。この実施形態において、1もしくは複数のムコン酸、またはそのカルボキシレート誘導体と1または複数のアルケン系化合物との反応は、1もしくは複数のムコン酸、またはそのカルボキシレート誘導体、および1または複数のアルケン化合物が1位および4位にカルボキシレート基を有するシクロヘキセン環を含有する1または複数の化合物を形成するような条件下で、1もしくは複数のムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体を1または複数のアルケン系化合物と接触させるステップを含む。
【0012】
別の実施形態において、本発明は、1もしくは複数のムコン酸、またはそのカルボキシレート誘導体、および1または複数のアルキンが1または複数のトリメリテート系の酸、またはそのカルボキシレート誘導体を形成するような条件下で、1もしくは複数のムコン酸、またはそのカルボキシレート誘導体を、三重結合の1つの炭素に結合しているカルボン酸エステルを有する1または複数のアルキンと接触させるステップを含む1または複数のトリメリテート系化合物の調製方法である。この実施形態において、反応混合物中に存在している酸素などの酸化剤が芳香族化合物への酸化に影響を及ぼすため、別個の脱水素化ステップは必要ではない。
【0013】
別の実施形態において、本発明は、本明細書に記載のプロセスにより調製される生成物に関する。出発ムコン酸をバイオマスから調製する実施形態において、該プロセスから得られる生成物は、かなりのパーセンテージの再生可能資源に由来する炭素を含有する。AS(商標)D6866−08に従って求めたところ、検出可能な微量または量、好ましくは最大で約1兆分の1の割合の炭素14を含有するため、そのような生成物は珍しい。得られる生成物は、バイオマスなどの再生可能資源に由来する、好ましくは微生物合成による、好ましくは6個以上の炭素、より好ましくは8個以上の炭素を含有する。得られる生成物は、微生物合成により調製される再生可能資源から調製する。ポリマーを調製するのに該生成物を利用する実施形態において、モノマー単位は、バイオマスなどの再生可能資源に由来する、好ましくは6個以上の炭素、より好ましくは8個以上の炭素を含有する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の議論は、総じて本教示に適用する。別段の指定のない限り、全ての範囲は両方の端点および端点の間の全ての数を包含する。範囲に関連して使用する「約」または「およそ」は、その範囲の両端にも適用する。したがって、「約20〜30」は、少なくとも指定した端点を含めて、「約20〜約30」を包含することを意図している。
【0015】
特許出願および刊行物を含めた全ての論文ならびに参考文献の開示内容は、本明細書において参照により組み込む。組合せを説明するための「から本質的になる」という用語への言及は、同定されている要素、成分、構成要素またはステップ、ならびにその組合せの基本的な特性および新規な特性に実質的に影響を及ぼさないような他の要素成分、構成要素またはステップを包含すべきである。本明細書における要素、成分、構成要素またはステップの組合せを説明するための「含む(comprising)」または「含む(including)」という用語の使用は、その要素、成分、構成要素またはステップから本質的になる実施形態も意図している。
【0016】
複数の要素、成分、構成要素またはステップは、単一の総合的な要素、成分、構成要素またはステップにより提供することができる。あるいは、単一の総合的な要素、成分、構成要素またはステップは、別個の複数の要素、成分、構成要素またはステップに分割してもよい。要素、成分、構成要素またはステップを説明するための「1つ(a)」または「1つ(one)」の開示は、追加の要素、成分、構成要素またはステップを除外することを意図したものではない。同様に、「第1」または「第2」の項目へのいかなる言及も、追加の項目(例えば、第3、第4、またはそれ以上の項目)を除外することを意図したものではなく、別段の指定のない限りそのような追加の項目も意図したものである。本明細書における特定の族に属する元素または金属への全ての言及は、1989年にCRC Press、Inc.が出版し版権を有しているPeriodic Table of the Elementsを参照するものである。族(複数可)へのいかなる言及も、族の番号付けにIUPAC法を使用してPeriodic Table of the Elementsに表されている族(複数可)への言及とすべきである。モノマー単位は、本明細書において使用する場合、ポリマー構造の反復単位を指す。準備をされたか、使用して準備された手段に由来した(Derived from means prepared from or prepared using.)。ヒドロカルビルは、本明細書において使用する場合、場合により1または複数のヘテロ原子を含有し得る、1または複数の炭素原子骨格および水素原子を含有する基を指す。ヒドロカルビル基がヘテロ原子を含有する場合、ヘテロ原子は、当業者によく知られている1または複数の官能基を形成し得る。ヒドロカルビル基は、脂環式、脂肪族、芳香族またはそのようなセグメントの任意の組合せを包含し得る。脂肪族セグメントは線状または分枝状とすることができる。脂肪族および脂環式セグメントは、1または複数の二重および/または三重結合を含み得る。ヒドロカルビル基としては、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルカリールおよびアラルキル基が挙げられる。脂環式基は、環状部分および非環状部分の両方を含有し得る。
【0017】
本発明は、一般に、モノマー物質、ポリマー物質またはそれらの両方の合成に関する。一態様において、本発明は、少なくとも1つの出発原料の源としてバイオマス由来の生成物を使用する合成を対象にしている。例えば、本明細書において取り組む1つの好ましいアプローチは、微生物合成に由来する少なくとも1つのジカルボン酸(例えば、ムコン酸)またはそのカルボキシレート誘導体の使用に関する。当技術分野において教示されている微生物合成プロセスの例としては、参照により本明細書に組み込まれているFrostら、米国特許第5,616,496号が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
本発明の別の態様は、少なくとも1つのジカルボン酸(例えば、ムコン酸)またはそのカルボキシレート誘導体の異性化に関する。より具体的には、この態様において、cis,cisムコン酸またはそのエステルをtrans,trans立体配置に異性化する。異性化は、cis,cisムコン酸をエステル化し、次いで、得られたエステルを異性化するステップ、cis,cisムコン酸を異性化し、次いで、得られた異性体をエステル化するステップ、またはin situ異性化ステップ(それに従ってtrans,transムコン酸を1または複数のジエノフィルの存在下で反応させる)の1または複数を含むアプローチの下で遂行することができる。
【0019】
本発明の別の態様は、1もしくは複数のムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体からの1または複数のシクロヘキセンの形成に関する。例えば、この態様において、trans,transムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体(例えば、上記の、場合によりバイオマスに由来するtrans,transムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体)を反応させて、シクロヘキセン環の1位および4位などの少なくとも2つの位置にカルボキシレート誘導体を有するシクロヘキセンを形成することができる。
【0020】
本発明のさらに別の態様は、上記の1または複数のシクロヘキセン環含有化合物の1または複数のカルボキシレート誘導体の形成に関する。特に、本明細書における教示は、(例えば、1もしくは複数のムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体に由来する)1または複数のシクロヘキセン含有化合物を水素化または脱水素化して、それらのシクロヘキセン水素化生成物(例えば置換シクロヘキサン生成物)またはシクロヘキセン脱水素化生成物(例えば置換ベンゼン生成物)を形成するための反応について記載している。この脱水素化生成物は、置換もしくは非置換テレフタル酸またはそのカルボキシレート誘導体から選択される1または複数の生成物である。
【0021】
本発明のさらに別の態様は、前述の反応から実現される特性を有する珍しい生成物、およびその後の適用におけるこれらの生成物の使用に関する。
【0022】
本発明のプロセスは、少なくとも1つのベンゼン環ならびにベンゼン環の1位および4位に、場合によりベンゼン環の2位にカルボキシレートを有する化合物の調製を含む。好ましい実施形態において、これらの生成物は、置換もしくは非置換テレフタル酸またはそのカルボキシレート誘導体と呼ぶことができる。本発明のプロセスは、1もしくは複数のムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体と1または複数のジエノフィルとの反応を必要とする。複数の他のプロセスステップをこのステップと共に含むことができる。所望の生成物の調製に以下のステップを含むことができる。バイオマス中に含有されている糖質、炭水化物またはセルロース系物質のムコン酸、一般にムコン酸のcis,cis異性体への転換;cis,cisおよび/またはcis,transムコン酸、あるいはそのエステルのtrans,trans異性体への異性化;ムコン酸の1または複数のジヒドロカルビルエステルを形成するための1または複数のムコン酸のエステル化;1もしくは複数のカルボン酸またはそのカルボン酸エステルの別のカルボキシレート誘導体形態への転換;各環の1および4、場合により2位にカルボキシレートを有する1または複数のシクロヘキセンまたはベンゼン環含有化合物の形成;ベンゼン環含有化合物を形成するための1もしくは複数のシクロヘキセン化合物の脱水素化またはシクロヘキサン環含有化合物を形成するための1もしくは複数のシクロヘキセン化合物の水素化;ならびに1位、4位、場合により2位にカルボキシレート基を有する1または複数のベンゼン、シクロヘキセン、シクロヘキサンのエステル化。
【0023】
ムコン酸は、参照により本明細書に組み込まれているFrostら、米国特許第5,616,496号に記載のプロセスを含めた、当技術分野において知られている任意の手段によりバイオマスから調製することができる。得られる生成物は、一般に、ムコン酸のcis,cis異性体の形態で濾過技術により回収する。ムコン酸の、cis,cisおよびcis,trans異性体はジエノフィルと反応せず、したがって、本明細書に記載のジエノフィルとの反応で使用するために異性化する必要がある。ムコン酸を調製する他の方法が知られており、これらのプロセスにより調製されるムコン酸は、本発明のプロセスで出発原料として使用することができる。本明細書に記載のプロセスステップにおいて使用するムコン酸は、好ましくはバイオマスから、より好ましくはバイオマスまたはバイオマスに由来する化合物、例えば炭水化物などを利用する微生物合成そのものにより調製する。
【0024】
出発原料としてcis,cisおよび/またはcis,transムコン酸を使用する実施形態において、それらは、粗製形態または精製形態で使用することができる。粗製形態で使用する場合、ムコン酸の調製において宿主細胞として使用した微生物を糖質、デンプン、セルロース系物質等から除去することが好ましい。該微生物は、該プロセスで実施する様々な合成ステップへのそれらの干渉を防止するために除去する。該微生物は、濾過などの当技術分野においてよく知られている手段により除去することができる。粗製ムコン酸は、タンパク質、無機塩等を含有し得る。以下に記載の特定の加工手順においては、ムコン酸を精製することが好ましい。精製cis,cisおよび/またはcis,transムコン酸を、これらのプロセス;trans,trans異性体の形態への異性化の前にcis,cisまたはcis,transをエステル化するムコン酸のin situ異性化および同じ反応器におけるその後のジエノフィルとの反応に使用することが好ましい。
【0025】
粗製cis,cisおよび/またはcis,transムコン酸は、水または有機溶媒中での溶解およびその後の溶液からの再結晶により精製することができる。一般に、粗製ムコン酸および水または有機溶媒は、ムコン酸を溶解するために加熱する必要がある。周囲温度、約23℃への冷却により、一般に、精製ムコン酸の沈殿が生じる。周囲温度より低く、約0℃まで冷却することにより、精製ムコン酸の回収率または収率の上昇が容易になる。粗製ムコン酸および水または有機溶媒の混合物は、ムコン酸を溶解するために約50℃以上まで加熱することが好ましい。混合物の加熱の上限は、ムコン酸の分解および実用性により制限される。このプロセスステップに好ましい有機溶媒は極性の非プロトン性溶媒であり、アルカノールがより好ましい。溶媒として有用なアルカノールは、1または複数の、好ましくは1つのヒドロキシル基をさらに含有する、線状および分枝状炭化水素鎖を含有する化合物を包含する。好ましいアルカノールは、C1〜6線状および分枝状鎖アルカノールであり、メタノール、エタノール、およびイソプロパノールが最も好ましい。精製ムコン酸の沈殿後、溶媒をデカントして取り除き、固体のムコン酸をさらに乾燥し、すなわち、残留する溶媒を減圧下で蒸発により除去する。このプロセスの供給原料は粗製cis,cisムコン酸であることが好ましい。
【0026】
cis,cisムコン酸は、trans,transムコン酸に直接異性化するか、またはcis,transムコン酸に異性化することができ、次いで、cis,transムコン酸をtrans,transムコン酸に異性化することができる。cis,cisおよびcis,transムコン酸の混合物は、trans,transムコン酸に異性化することができる。ムコン酸、またはそのカルボン酸エステルのいずれかをジエノフィルと反応させて、所望の化合物を調製することができる。エステルを使用する場合、ムコン酸は、異性化するか、または最初にエステル化し、次いで、他のプロセスステップを実施することができる。したがって、cis,cisムコネート(muconate)をtrans,transムコネート(muconate)に変換するために実施する異性化ステップ(複数可)において、出発原料は酸またはカルボン酸エステル形態とすることができる。
【0027】
一実施形態において、cis,cisムコン酸、またはそのエステルは、別個のステップでcis,trans異性体に転換することができる。そのような別個のステップにおいて、cis,cisムコン酸またはそのエステルを水に溶解または分散し、高温に曝露してcis,cisムコン酸、またはそのエステルをcis,trans異性体に転換する。反応混合物のpHが好ましくは約4以上、より好ましくは約4.5以上となるように十分な量の塩基を添加する。反応混合物のpHが好ましくは約6以下、より好ましくは約5.5以下となるように十分な量の塩基を添加する。このプロセスステップに使用することができる温度としては、異性化が進行する任意の温度が挙げられる。一実施形態において、該プロセスは、還流条件下で実施する。このプロセスステップは、所望の量のcis,cisムコン酸またはそのエステルをcis,trans異性体に転換する必要がある限り実施する。このプロセスステップは、約10分以上実施することが好ましい。このプロセスステップは、好ましくは約60分以下、より好ましくは約30分以下実施する。反応混合物のpH、反応温度および反応時間は相互依存的である。列挙した好ましい範囲内でpHおよび温度が増大すると、必要な反応時間は減少する。温度、pHおよび反応時間は、不要な反応または非実用的な操作を回避しながら異性化を実施するのに必要な時間を最小化するように選択することが好ましい。
【0028】
一実施形態において、溶媒中で、出発ムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体を1もしくは複数の異性化触媒、紫外線放射源またはそれらの両方と接触させてtrans,transムコン酸を形成する。出発ムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体は、cis,cis、cis,transまたは両方の異性体の形態の任意の組合せとすることができる。該プロセスの条件下でラジカルを発生する任意の紫外線源を使用することができる。好ましい紫外線放射源には、白熱電球、キセノンランプ、中圧水銀ランプまたは無電極ランプ、自然光等がある。ラジカル生成を強化するために、ラジカル生成体(radical former)が紫外線放射である場合、光開始剤を紫外線放射源と組み合わせて使用することができる。オレフィン性不飽和化合物に有用な任意の一般に知られている光開始剤を本明細書に記載のプロセスで使用することができる。このプロセスで有用である光開始剤としては、参照により本明細書に組み込まれているBaikerikarら、米国特許公開第2007/0151178号の段落0029、0030および0032に開示のものが挙げられる。好ましい光開始剤には、アルファアミノケトン、アルファヒドロキシケトン、酸化ホスフィン、フェニルグリオキシレート、チオアントン、ベンゾフェノン、ベンゾインエーテル、オキシムエステル、アミン相乗剤(amine synergist)、マレイミド、それらの混合物等がある。異性化触媒としては、反応条件に、好ましくは熱条件下で曝露されると不飽和化合物においてラジカルを生成する任意の化合物が挙げられる。このプロセスステップの反応温度で好適な半減期を有する任意の異性化触媒を使用することができる。好ましい異性化触媒には、以下のクラスに包含される化合物がある。元素のハロゲン;ジ−第三級−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−第三級−ブチル−ペルオキシヘキサン、ジ−クミルペルオキシドなどのジアルキルペルオキシド;第三級−ブチルヒドロペルオキシド、第三級−オクチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどのアルキルペルオキシド;ベンゾイルペルオキシドなどのアロイルペルオキシド;ペルオキシピバル酸第三級−ブチル、過安息香酸第三級−ブチルなどのペルオキシエステル;およびアゾ−ビス−イソブチロニトリルなどのアゾ化合物等。異性化触媒として有用なより好ましい化合物は、元素のハロゲンであり、臭素、塩素およびヨウ素がさらにより好ましく、ヨウ素が最も好ましい。あるいは、異性化触媒は、以下に記載の水素化触媒とすることができる。異性化触媒として有用な好ましい水素化触媒には、均一および不均一形態のニッケル、白金およびパラジウムがある。より好ましいのは不均一系触媒であり、炭素が最も好ましい担体である。この目的のために最も好ましい触媒は炭素上のパラジウムである。使用する異性化触媒の量は、ムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体の異性化を触媒する量である。使用量が少なすぎると、反応は実用的な速度で進行しない。使用量が多すぎると、異性化触媒は、ムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体の二重結合の1つに付加し得る。異性化触媒は、ムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体の当量に対して、好ましくは約0.0001当量以上、より好ましくは約0.001当量以上、最も好ましくは約0.005当量以上の量で反応混合物中に存在している。異性化触媒は、ムコン酸またはそのカルボン酸エステルの当量に対して、好ましくは約1.0当量以下、より好ましくは約0.1当量以下および約0.01当量以下の量で反応混合物中に存在している。ムコン酸またはそのエステルのtrans,trans異性体の形態への異性化が発生する任意の温度を使用することができる。温度は、好ましくは約23℃以上、最も好ましくは約60℃以上である。温度は、好ましくは約150℃以下、より好ましくは約120℃以下、最も好ましくは約100℃以下である。このプロセスステップは、周囲温度または高温で実施することが好ましい。制限因子は、出発ムコン酸またはカルボン酸エステルの溶媒中の溶解度である。溶媒は、ムコン酸または1もしくは複数のそのカルボキシレート誘導体で飽和していることが好ましい。高温を使用すると、より多量の出発ムコン酸またはそのカルボン酸エステルを異性化触媒と接触させることにより該プロセスがより効率的となる。このプロセスステップは、溶媒中で実施することが好ましい。反応物を溶解または分散し、所望の反応に干渉しない任意の溶媒をこのステップに使用することができる。溶媒は極性であることが好ましく、プロトン性または非プロトン性とすることができる。溶媒のプロトン性は、溶媒が、活性水素のような容易に解離するプロトンを有することを意味する。溶媒の非プロトン性は、溶媒が容易に解離するプロトンを有していないことを意味する。好ましい溶媒には、環状エーテル、非環状エーテル、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ケトン、酢酸アルキル、アルカノールまたはジメチルホルムアミド等がある。より好ましい溶媒としては、C1〜4アルカノール、環状エーテル、非環状エーテル、酢酸エチル、アセトンおよびアセトニトリルが挙げられる。このプロセスステップは、所望の量のcis,cisおよび/またはcis,transムコン酸またはそのエステルをtrans,trans異性体に転換する必要がある限り実施する。cis,transムコン酸が出発原料である1つの好ましい実施形態において、使用する溶媒は非プロトン性であり、より好ましくは、trans,transムコン酸がそこから周囲温度で沈殿する非プロトン性溶媒である。この実施形態において、好ましい溶媒は、環状エーテル、酢酸アルキル、およびニトリルであり、テトラヒドロフラン、アルキル置換テトラヒドロフラン、ジオキサン、およびアセトニトリルがより好ましく、テトラヒドロフランおよびメチルテトラヒドロフランが最も好ましい。好ましい実施形態において、高温で出発ムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体を異性化触媒および紫外線源と接触させる。trans,transムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体は、好ましい溶媒に不溶であり、反応混合物から沈殿する。それは、溶媒の単純な除去、例えばデカンテーションにより反応混合物から回収することができる。trans,transムコン酸またはそのエステルの収率は、出発ムコン酸またはそのエステルの重量に対して、好ましくは約80重量パーセント以上、より好ましくは約90重量パーセント以上、最も好ましくは約99重量パーセント以上である。回収するtrans,transムコン酸は、約99重量パーセント以上の純度を示すことが好ましい。trans,transムコン酸は、好ましくは検出可能な微量の炭素14の数、より好ましくは最大で約1兆分の1の割合の炭素14を示す。好ましい実施形態において、回収するtrans,transムコン酸またはそのエステルは、バイオマスなどの再生可能資源に由来する炭素原子を約6個以上有する。
【0029】
ムコン酸、またはそのエステルがcis,trans異性体配置である実施形態において、cis,transムコン酸、またはそのエステルをtrans,transムコン酸またはそのエステルに転換する好ましい手段は、有機溶媒中で、cis,transムコン酸、またはそのエステルを異性化触媒と接触させるステップを含む。これは、cis,transムコン酸またはそのエステルが、有機溶媒中で、cis,cisおよびtrans,trans異性体より高い溶解度を示すためである。
【0030】
ムコン酸およびムコン酸のエステルは、以下の式:
【0031】
【化1】

により表すことができ、
式中、Rは、独立して、各出現において、水素、ヘテロ原子含有官能基を場合により含有するヒドロカルビル基(ヒドロカルビル基はシクロヘキセン化合物の形成に干渉しない)である。
【0032】
ムコン酸は、ヒドロカルビル基がカルボン酸の酸素上の水素を置換する条件下で、エステル化剤との接触によりエステル化する。エステル化剤は、反応条件下でムコン酸のカルボキシオキシ基(C(O))上でエステルを形成する任意の化合物とすることができる。エステル化剤は、反応条件下で反応してエステルを形成する任意のヒドロキシル含有化合物とすることができる。好ましいエステル化剤としては、そこにヒドロキシル基が結合している炭化水素化合物が挙げられる。より好ましいエステル化剤としては、式ROHに相当する化合物が挙げられ、式中、Rは、場合によりヘテロ原子含有官能基を含有するヒドロカルビル基(ヒドロカルビル基はシクロヘキセン化合物の形成に干渉しない)である。好ましいクラスのエステル化剤としては、アルカノール、アリールアルコールおよびアリール置換アルカノールが挙げられる。好ましいエステル化剤としてはアルカノールが挙げられ、C1〜10アルカノールがより好ましく、メタノールが最も好ましい。好ましいアリール置換アルカノールには、ベンジルアルコールがある。好ましいアリールアルコールには、フェノールおよびジヒドロキシベンゼンの様々な異性体がある。別の実施形態において、エステル化剤は、1または複数のヒドロキシル基および1または複数のエーテル基を有するポリグリコールとすることができる。
【0033】
1または複数のその異性体の形態のムコン酸を、1または複数の酸の存在下で1または複数のエステル化剤と接触させる。利用する酸は、カルボン酸上のヒドロキシル基のヒドロカルビルオキシ基での置換を促進する任意の酸とすることができる。好ましい酸はブレンステッド酸である。ブレンステッド酸は、溶液中で解離するプロトン性水素を含有する酸である。酸は、好ましくは強酸である。強酸は、本明細書において使用する場合、約0より低いpKaを有する酸を意味する。より好ましい実施形態において、酸は強鉱酸である。好ましい強鉱酸としては、硫酸、硝酸酸、リン酸および塩酸が挙げられ、硫酸が最も好ましい。酸は、エステル化反応を促進するのに十分な量で存在している。エステル化剤が液体状態である場合、溶媒は必要ではない。エステル化剤が固体であるか、または溶媒として機能することができない場合、溶媒を利用することができる。好ましい溶媒は、ムコン酸を可溶化する前述の極性の非プロトン性溶媒である。より好ましい溶媒は環状および非環状エーテルであり、テトラヒドロフランなどの環状エーテルがより好ましい。エステル化剤は、ムコン酸の実質的に全てをカルボン酸エステル形態に転換するのに十分な量で存在していることが好ましい。より好ましい実施形態において、エステル化剤は、ムコン酸の当量に対する当量比より多く存在している。エステル化剤は、ムコン酸と比較して2対1以上のモル比で存在していることが好ましい。エステル化剤も溶媒である場合、当量およびモル比はずっと大きくなる。反応は、エステル化反応が適切な速度で進行する任意の温度で行うことができる。温度を上昇させることが好ましい。温度の上昇により、溶解し、エステル化剤と接触させることができるムコン酸の量が増大する。反応の温度は、好ましくは約23℃以上、より好ましくは約50℃以上、最も好ましくは約120℃以上である。反応の温度は、好ましくは約200℃以下、最も好ましくは約150℃以下である。利用する反応時間は、生成物の所望の収率をもたらすように選択する。回収する生成物は、ムコン酸モノヒドロカルビル、ムコン酸ジヒドロカルビルまたはそれらの混合物とすることができ、より好ましい実施形態において、生成物は、実質的にムコン酸ジヒドロカルビルである。より好ましいムコン酸ジヒドロカルビルとしては、ムコン酸ジアルキルが挙げられ、より好ましくはC1〜10ムコン酸ジアルキル、最も好ましくはムコン酸ジメチルである。ヒドロカルビル基は、ムコン酸ジヒドロカルビルと1以上のジエノフィルとの反応に干渉しない置換基で置換することができる。trans,transムコン酸エステルは、冷却時に溶液から沈殿する。反応混合物を、約40℃未満、好ましくは周囲温度(23℃)以下まで冷却して沈殿を促進することが好ましい。ムコン酸ジヒドロカルビルは、デカンテーションなどの単純な溶媒または過剰量のエステル化剤の除去により回収することができる。ムコン酸ジヒドロカルビルの収率は、出発ムコン酸の重量に対して約70重量パーセント以上であることが好ましい。回収するムコン酸ジヒドロカルビルは、好ましくは約99重量パーセント以上、最も好ましくは約99.5重量パーセント以上の純度を示す。ムコン酸ジヒドロカルビルは、検出可能な量、好ましくは最大で約1兆分の1の割合の炭素14の数を示すことが好ましい。好ましい実施形態において、回収するムコン酸ジヒドロカルビルは、バイオマスなどの再生可能資源に由来する炭素原子を約6個以上有する。
【0034】
別の実施形態において、塩基水溶液中で、ムコン酸をエステル化剤と接触させてムコン酸ジヒドロカルビルを形成することができる。この反応は、周囲温度(約23℃)〜約40℃の温度で実施することが好ましい。塩基は、ムコン酸のカルボキシル基のプロトンを結合する任意の塩基とすることができる。エステル化剤は、約2:1以上の当量比で存在していることが好ましい。当量の上限は実用性である。ムコン酸ジヒドロカルビルは、有機溶媒への抽出および抽出した有機溶媒のその後の蒸発により回収する。
【0035】
1または複数のムコン酸は、当業者に知られている反応手順を使用してカルボキシレート誘導体基の他の形態に転換することができる。本明細書において使用する場合、カルボキシレート誘導体という用語は、カルボニル基(C=O)またはニトリル基(−C≡N)を含有する任意の基を指し、カルボニル基は、塩を形成するようにアニオンに、あるいは酸素、窒素、硫黄または1もしくは複数のハロゲンなどのヘテロ原子に結合している。ヘテロ原子は、1もしくは複数のヘテロ原子を場合により含有し得るヒドロカルビル基などの1もしくは複数の他の基に共有結合によりさらに結合することができるか、または電子的に(静電気的に)カチオンに結合して塩を形成し得る。カルボキシレート誘導体は、ハロゲン化アシル、カルボン酸、アミド、エステル、チオールエステル、メルカプトカルボニル、無水物、ニトリル、アニオンとの塩またはカチオンとの塩であることが好ましい。好ましいカチオンとしては、アルカリ金属イオンならびに非置換およびヒドロカルビル置換アンモニウムイオンが挙げられる。好ましいカルボキシレート誘導体は、カルボン酸、ハロゲン化アシル、アミド、無水物およびエステルを包含する。より好ましいカルボキシレート誘導体としては、カルボン酸およびエステルが挙げられ、エステルが最も好ましい。好ましいカルボキシレート誘導体基は、式:
【0036】
【化2】

に相当し、
式中、Rは、独立して、各出現において、水素、1もしくは複数のヘテロ原子を場合により含有するヒドロカルビル基またはカチオンであり、
Zは、独立して、各出現において、アニオン、酸素、窒素、硫黄、ニトリル、またはハロゲンであり、
bは、独立して、各出現において、0、1または2であり、ただし、bは、Zがアニオン、ハロゲンまたはニトリルである場合は0であり、Zが酸素または硫黄である場合は1であり、Zが窒素である場合は2である。Rは、好ましくは水素または1もしくは複数のヘテロ原子を含有し得るC1〜12ヒドロカルビル基、より好ましくは水素または1もしくは複数のヘテロ原子を含有し得るC1〜10アルキル基、より好ましくは水素またはC1〜3アルキル基、最も好ましくは水素またはメチルである。
【0037】
ハロゲン化アシルは、式:
【0038】
【化3】

に相当することが好ましく、式中、Xはハロゲンである。Xは、好ましくは塩素または臭素であり、塩素が最も好ましい。
【0039】
アミドは、式:
【0040】
【化4】

に相当することが好ましく、式中、cは個々に、各出現において、0、1または2であり、0または1が好ましい。
【0041】
エステルは、式:
【0042】
【化5】

に相当することが好ましい。
【0043】
メルカプトカルボニルは、式:
【0044】
【化6】

に相当することが好ましい。
【0045】
チオールエステルは、式:
【0046】
【化7】

に相当することが好ましい。
【0047】
無水物は、式:
【0048】
【化8】

に相当することが好ましい。
【0049】
ニトリルは、式:−C≡N
に相当することが好ましい。
【0050】
ムコン酸のカルボキシレート誘導体は、以下の式:
【0051】
【化9】

により表すことができ、
式中、Rは、既に定義したとおりである。代替実施形態において、特にtrans,trans異性体型のムコン酸ジヒドロカルビルは、ムコン酸から任意の知られている合成手順により調製することができる。例えば、ムコン酸ジヒドロカルビルは、参照により本明細書に組み込まれているJerry March、Advanced Organic Chemistry、第2版、Wiley、1977、361〜367頁の以下のセクションに開示のプロセスにより調製することができる。セクション0−22のハロゲン化アシルのアルコール分解、セクション0−23の無水物のアルコール分解、およびセクション0−24の酸のエステル化。アミド系カルボキシレート誘導体は、参照により本明細書に組み込まれているMarch、同書、381〜384頁のセクション0−52のアルカンのアミノ化、0−53のニトリルの形成、0−54のハロゲン化アシルによるアミンのアシル化、および0−55の無水物によるアミンのアシル化に開示のものを含めた当業者に知られているプロセスにより調製することができる。ハロゲン化アシルは、参照により本明細書に組み込まれているMarch、同書、398頁のセクション0−75酸からのハロゲン化アシルの形成に開示のものを含めた当業者に知られているプロセスにより調製することができる。ムコン酸のチオールエステルは、参照により本明細書に組み込まれているMarch、同書の375および376頁に開示のものを含めた当業者に知られているプロセスにより調製することができ、ムコン酸が上記の通りにハロゲン化アシルに転換され、次いで、セクション0−40に開示のプロセスによりチオールまたはチオールエステルに転換される。ムコン酸は、参照により本明細書に組み込まれているMarch、同書、369および370頁のセクション0−29のハロゲン化アシルによる酸のアシル化およびセクション0−30の酸による酸のアシル化に開示のものなどの当業者に知られているプロセスにより二無水物類似体に転換することができる。ムコン酸は、March、第2版、883および884頁のセクション6−63の酸性塩のニトリルへの転換に開示のものなどの当業者に知られているプロセスによりニトリルに転換することができる。
【0052】
1もしくは複数のムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体を1または複数のジエノフィルと反応させて、カルボキシレート基
【0053】
【化10】

を1位および4位、場合により2位に有するシクロヘキセン化合物を調製する。1または複数のムコン酸とは、異性体の混合物を使用することができることを意味する。1つの好ましい実施形態において、出発ムコン酸またはそのカルボキシレートは、trans−trans異性体の形態である。そのようなカルボキシレートは、trans,trans異性体配置であることが好ましい。一実施形態において、出発原料としてcis,cisおよび/またはcis,trans異性体ムコン酸あるいはそのカルボキシレート誘導体を利用することができる。この実施形態において、ムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体が、ジエノフィルとの反応の前にin situで異性化すると考えられている。この反応では、出発原料としてカルボン酸エステルが好ましい。ジエノフィルは、ムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体と反応してシクロヘキセン化合物を形成する不飽和を有する任意の化合物とすることができる。好ましいジエノフィルは、以下の式:
【0054】
【化11】

に相当し、
式中、
は、独立して、各出現において、水素、ハロゲン、場合により1もしくは複数のヘテロ原子またはヘテロ原子含有官能基を含有するヒドロカルビル基(ヒドロカルビル基はシクロヘキセン化合物の形成に干渉しない)であり、
は、独立して、各出現において、水素、ハロゲンあるいは場合により1もしくは複数のヘテロ原子またはヘテロ原子含有官能基を含有するヒドロカルビル基(ヒドロカルビル基はシクロヘキセン化合物の形成に干渉しない)であり、
ただし、RおよびRを組み合わせてヘテロ原子を含有し得る環状環(cyclic ring)を形成することができる。好ましいクラスのジエノフィルとしては、アルケン、不飽和環状化合物、アルキン、不飽和置換基を有する芳香族化合物等が挙げられる。ジエノフィルとして有用な好ましいアルケンとしては、少なくとも1つの二重結合を含有する任意の線状または分枝状脂肪族化合物が挙げられ、そのような化合物は、6員環状環を有する化合物の形成に干渉しないヘテロ原子またはヘテロ原子含有官能基を含有し得る。そのようなヘテロ原子としては、酸素、窒素、リン、硫黄およびハロゲンが挙げられる。好ましいハロゲンとしては、塩素および臭素が挙げられ、塩素が好ましい。好ましいアルケンとしては、不飽和酸、不飽和を含有するカーボネート、不飽和エステル、不飽和ニトリル、塩化ビニル、酢酸ビニル、(エチレン、プロピレン、全てのブテン、ペンテン、ヘキサン、ヘプテン、オクテンの異性体を含めた)1または複数の二重結合を有する不飽和脂肪族炭化水素等が挙げられる。本明細書において有用なアルケンは、炭素鎖の任意の点に不飽和を有することができる。好ましいアルケンは、炭素原子1と2の間の鎖の末端に不飽和を有するものである。好ましい不飽和カーボネートにはビニリデンカーボネートがある。不飽和酸には、メタクリルおよびアクリル酸を含めた、炭素鎖の骨格中に不飽和を有する任意のカルボン酸がある。エチレンおよびプロピレンがより好ましい不飽和脂肪族炭化水素であり、エチレンが最も好ましい。好ましい不飽和環状化合物としては、前述の通り場合によりヘテロ原子を含有し得るまたはヘテロ原子を含有する置換基で置換し得るシクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンが挙げられる。ムコン酸、またはそのカルボキシレート誘導体と反応する任意の不飽和エステルを、このプロセスでジエノフィルとして使用することができる。好ましい不飽和酸またはエステルは、式:
【0055】
【化12】

に相当し、
式中、Rは、前述の通りであり、
は、独立して、各出現において、水素、ヘテロ原子含有官能基を場合により含有するヒドロカルビル基である。好ましい不飽和エステルとしては、アクリル酸ヒドロカルビル、アルキルアクリル酸ヒドロカルビル等が挙げられる。二重結合は末端炭素に位置することが好ましい。より好ましい不飽和エステルとしては、アクリル酸ヒドロカルビルおよびメタクリル酸メチルなどのアルキルアクリル酸ヒドロカルビルが挙げられ、アクリル酸ヒドロカルビルがより好ましい。不飽和エステルは、前述の6員環状環を有する化合物の形成に干渉しないヘテロ原子またはヘテロ原子含有官能基を含有し得る。好ましいアクリル酸ヒドロカルビルとしては、C1〜10アルキルアクリレートが挙げられ、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチルおよびアクリル酸2−エチルヘキシルがより好ましい。ジエノフィルとして有用な不飽和置換基を有する芳香族化合物としては、本明細書に定義の反応条件下でムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体と反応する任意の不飽和置換基を有する任意の芳香族化合物が挙げられる。不飽和置換基を含有する好ましい芳香族化合物には、スチレン、アルファ−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ar−エチルスチレン、ar−ビニルスチレン、ar−クロロスチレンまたはar−ブロモスチレン等がある。不飽和芳香族化合物は、式:
【0056】
【化13】

に相当することが好ましく、
式中、
は、独立して、各出現において、ヘテロ原子含有官能基を場合により含有するヒドロカルビル基またはハロゲンであり、
は、ヘテロ原子含有官能基を場合により含有するアルケニル基である。別の好ましいクラスの環状不飽和化合物は環状不飽和無水物である。好ましい環状無水物には、無水マレイン酸等があり、無水マレイン酸が好ましい。ジエノフィルとして有用なアルキン含有化合物としては、反応条件下でムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体と反応する、三重結合
【0057】
【化14】

を含有する任意の化合物が挙げられる。三重結合は、アルキンの炭素鎖の任意の位置に位置することができ、好ましくは2つの末端炭素原子の間に位置する。好ましくは、アルキン含有化合物としては、全てのC2〜nアルキンの異性体、アセチレンカルボン酸およびそのカルボキシレート誘導体ならびにアセチレンジカルボン酸およびそのカルボキシレート誘導体が挙げられる。より好ましいアルキンとしては、アセチレン、アセチレンエステル、プロピン、ブチン等が挙げられ、アセチレンエステルが最も好ましい。好ましいアルキンは、式:
【0058】
【化15】

に相当し、式中、RおよびRは、前述の通りである。好ましいアセチレンエステルは、式:
【0059】
【化16】

の1つ、より好ましくは
【0060】
【化17】

に相当し、式中、R、R、R、Zおよびbは、前述の通りである。好ましいアセチレンエステルは、三重結合の炭素に直接結合している1または複数のカルボン酸エステルを含む。
【0061】
反応物は、密接に混合するためにそれらが液体形態である温度で接触させるか、または出発原料を溶解する溶媒中にあることが好ましい。反応は、ニートで、すなわち、溶媒の不存在下で実施することが好ましい。1もしくは複数のムコン酸、またはそのカルボキシレート誘導体、および1または複数のジエノフィルは、高温で接触させる。1もしくは複数のムコン酸、またはそのカルボキシレート誘導体、およびジエノフィルは同じ相にあり、適切な速度で反応する任意の温度を使用することができる。温度は、好ましくは約100℃以上、より好ましくは約130℃以上、より好ましくは約140℃以上である。温度は、好ましくは約180℃以下、より好ましくは約170℃以下、さらにより好ましくは約160℃以下、最も好ましくは約150℃以下である。反応は、ニートで、すなわち、溶媒の不存在下で、または溶媒の存在下で行うことができる。溶媒を使用する実施形態において、反応を促進し、反応に干渉しない任意の溶媒を使用することができる。好ましい溶媒は非プロトン性溶媒である。好ましい溶媒は非極性である。より好ましい溶媒は、反応の温度で使用することができ、反応温度で液体である、すなわち、反応温度より高い沸点を有する、炭化水素、非環状エーテル、アルキルポリエーテル、および環状エーテルである。好ましい溶媒には、キシレン、デカリン、トルエン、環状エーテル、グリコールエーテルおよびポリグリコールエーテル等がある。出発原料としてtrans,transムコン酸を使用する実施形態において、ムコン酸の酸性基をエステル交換せず副反応を回避し、ムコン酸が可溶性である水または溶媒中で反応を実施することが好ましい。生成物の所望の収率をもたらすまで反応を進行させる。反応時間は約24時間以上であることが好ましい。反応時間は約48時間以下であることが好ましい。場合により、反応物は、ルイス酸の存在下で反応させる。ルイス酸は、触媒量で、好ましくは反応混合物の約0.01重量パーセント以上、より好ましくは反応混合物の約0.1重量パーセント以上、好ましくは反応混合物の約10.0重量パーセント以下、より好ましくは反応混合物の約1.0重量パーセント以下存在し得る。ルイス酸は均一でも不均一でもよく、不均一であることが好ましい。好ましい実施形態において、反応は、不飽和化合物の重合を阻害する1または複数の化合物の存在下で実施する。不飽和化合物の重合を防止する任意の化合物を反応で使用することができる。不飽和化合物の重合を防止する好ましいクラスの化合物には、ヒドロキノン、ベンゾキノン、フェノチアジンおよびアニソール、それらの混合物等がある。不飽和化合物の重合を防止する好ましい化合物には、ベンゾキノン、ヒドロキノン、t−ブチルベンゾキノン、ヒドロキノンのメチルエーテル、カテコール、アルキル化カテコール、ブチル化ヒドロキシアニソール等があり、ヒドロキノンがより好ましい。不飽和化合物の重合を阻害する化合物は、重合を防止するのに十分な量で反応混合物中に存在している。不飽和化合物の重合を阻害する化合物は、ムコン酸、またはそのカルボキシレート誘導体の重量に対して、好ましくは約0.05重量パーセント以上、最も好ましくは約0.01重量パーセント以上の量で存在している。不飽和化合物の重合を阻害する化合物は、1もしくは複数のムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体の重量に対して、好ましくは約10.0重量パーセント以下、より好ましくは約2.0重量パーセント以下、最も好ましくは約1.0重量パーセント以下の量で存在している。1もしくは複数のムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体と1または複数のジエノフィルとの比は、所望の生成物の収率を最大化するように選択する。ジエノフィルとムコン酸およびそのカルボキシレート誘導体とのモル比は、好ましくは約1.7:1.0以上、より好ましくは約2.0:1.0以上、最も好ましくは約3.0:1.0以上である。ジエノフィルとムコン酸およびそのカルボキシレート誘導体とのモル比の上限は、実用性に基づいており、約10.0:1.0以下であることが好ましい。溶媒を利用する実施形態において、溶媒中の1もしくは複数のムコン酸、またはそのカルボキシレート誘導体の濃度は、好ましくは約0.2モル(M)以上、最も好ましくは約0.5M以上である。溶媒を利用する実施形態において、溶媒中の1もしくは複数のムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体の濃度は、溶媒中のムコン酸の溶解度により決定され、好ましくは約4.0モル(M)以下、最も好ましくは約3.0M以下である。溶媒中のジエノフィルの濃度は、前述の溶媒中の1もしくは複数のムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体の濃度および所望のジエノフィルとムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体とのモル比に応じて選択する。溶媒中のジエノフィルの濃度は、好ましくは約0.5M以上、最も好ましくは約1.0M以上である。溶媒中のジエノフィルの濃度の上限は実用性である。ジエノフィルも溶媒として使用することが好ましい。ジエノフィルが溶媒ではない場合、実際の上限は約2.4M以下である。
【0062】
シクロヘキセン化合物は、シシクロヘキセン化合物の単離を可能にする任意の手段により、クロヘキセン化合物を所望の純度および収率で回収する様式で回収することができる。反応をニートで実施する場合、シクロヘキセン化合物は、蒸留により、または混合物をエーテルなどの低極性溶媒と接触させることにより、シクロヘキセン化合物が溶解し、溶解しない未反応の物質を濾過して取り除き、蒸発により溶媒を濃縮して比較的純粋なシクロヘキセン化合物を得るような様式で回収することができる。溶媒を使用する場合、回収は、反応混合物の蒸留により、またはクロマトグラフィー分離により実施する。シクロヘキセン化合物の収率は、出発ムコン酸の重量に対して約70重量パーセント以上であることが好ましい。回収するシクロヘキセン化合物は、好ましくは約90重量パーセント以上、最も好ましくは約99重量パーセント以上の純度を示す。シクロヘキセン化合物は、検出可能な量、好ましくは最大で約1兆分の1の割合の炭素14を示すことが好ましい。好ましい実施形態において、回収するシクロヘキセン化合物は、バイオマスなどの再生可能資源に由来するその炭素原子を約6個以上、好ましくは約8個以上有する。
【0063】
ムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体がcis,cisまたはcis,trans異性体の形態である実施形態において、ジエノフィルとの反応は、溶媒中で実施することが好ましい。この実施形態において、ムコン酸のカルボン酸エステルをジエノフィルと反応させることが好ましい。この実施形態において、該プロセスは、本明細書に記載の異性化触媒の存在および/またはルイス酸触媒の存在下で実施することができる。
【0064】
出発ジエノフィルが大気圧および周囲温度でガス状の形態のアルケンである実施形態において、1もしくは複数のムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体は、前述の通り溶媒に溶解していることが好ましく、その溶液をアルケンガスと接触させる。アルケンが液体である場合、1もしくは複数のムコン酸またはそのカルボキシレートは、可能な限り高い濃度で溶媒またはアルケンに溶解していることが好ましく、その濃度は、1もしくは複数のムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体の溶解度により制限される。1もしくは複数のムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体は、好ましくは約0.01M以上、より好ましくは約0.12M以上のモル濃度で溶媒またはアルケンに溶解している。1もしくは複数のムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体は、好ましくは約4.0M以下、より好ましくは約3.0M以下のモル濃度で溶媒またはアルケンに溶解している。該プロセスは、大気圧または高圧で実施する。著しい過剰量のアルケンの使用が可能となるため、高圧が好ましい。高圧を利用する場合、閉鎖系を利用し、選択した反応圧力までアルケンを添加することにより圧力を上昇させることが好ましい。選択した溶媒中に、場合により触媒の存在下で1または複数のムコン酸および/またはそのカルボキシレート誘導体を含有する反応系を閉鎖した後、それを常圧で排気して空気を除去し、ガス状のアルケンを補充することが好ましい。この排気/補充サイクルは、複数回繰り返すことが好ましい。次いで、選択したガス状のアルケンの圧力となるまで反応系を充填し、溶媒をガス状のアルケンで飽和させるために最大で30分撹拌する。次いで、反応系を閉鎖し、所望の反応温度まで加熱する。空気または不活性ガスも該系に存在し得るが、反応速度が低下するため、これは望ましくない。選択する圧力は、反応で使用する装置、ならびにアルケンおよび存在している任意の他のガスを供給するのに使用する装置により制限される。圧力は、好ましくは約14.7psi(0.101MPa)以上、より好ましくは100psi(0.689MPa)以上、最も好ましくは約250psi(1.72MPa)以上である。圧力は、好ましくは約50000psi(345MPa)以下、より好ましくは15000psi(103MPa)以下、さらにより好ましくは約10000psi(68.9MPa)、最も好ましくは約270psi(1.86MPa)以下である。アルケンがガスである場合、アルケンは、著しい過剰量で導入することが好ましく、使用する所望の圧力により、利用する過剰分の量が決定される。アルケンが液体である場合、アルケンを溶媒として使用することが好ましいが、ただし、ムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体は反応温度でアルケンに可溶性である。得られる生成物は、溶媒として使用する液体アルケンに可溶であることが好ましい。反応速度は、アルケンがガスである場合、反応温度および存在しているアルケンの圧力により著しく影響を受ける。したがって、反応温度は、反応速度が適切であるように選択する。反応温度は、好ましくは約100℃以上、より好ましくは約120℃以上、最も好ましくは約150℃以上である。反応温度は、生成物がこの温度付近で分解するため、好ましくは約170℃未満であり、該温度は、より好ましくは約160℃以下である。反応時間は、所望の収率でのシクロヘキセン化合物の調製を可能にするように選択する。反応時間は、好ましくは約1時間以上、最も好ましくは約6時間以上である。反応時間は、好ましくは約24時間以下、より好ましくは約12時間以下、最も好ましくは約9時間以下である。シクロヘキセン化合物は、蒸発により溶媒を除去することにより回収することができる。反応をニートで実施する場合、得られる生成物は、蒸留により回収する。シクロヘキセン化合物の収率は、出発ムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体の重量に対して、好ましくは約90重量パーセント以上、より好ましくは約95重量パーセント以上である。回収するシクロヘキセン化合物は、好ましくは約95重量パーセント以上、最も好ましくは約99重量パーセント以上の純度を示す。シクロヘキセン化合物は、検出可能な量、好ましくは最大で約1兆分の1の割合の炭素14の数を示すことが好ましい。好ましい実施形態において、回収するシクロヘキセン化合物は、バイオマスなどの再生可能資源に由来するその炭素原子を約6個以上、好ましくは約8個以上有する。1つの好ましい実施形態において、アルケンは再生可能資源に由来し、エタノールに由来するエチレンなどである。再生可能資源からのアルケンの調製プロセスは当技術分野においてよく知られている。そのような実施形態において、最終生成物中の再生可能な炭素原子の数は約8個以上である。
【0065】
アルケンジエノフィルを溶媒としての水中でムコン酸と反応させる実施形態において、生成物を部分的に互変異性化する。得られる生成物ミックスは、シクロヘキセン環の炭素1と2の間に二重結合を有する生成物およびシクロヘキセン環の炭素2と3の間に二重結合を有する生成物を含む。ムコン酸が出発原料であり溶媒がアルカノールなどのエステル化剤である実施形態において、得られるシクロヘキセン生成物をエステル化する。
【0066】
1または複数のジエノフィルがアセチレンなどのガス状の形態の1または複数のアルキンを含む実施形態において、1または複数のジエノフィルは、ジエノフィルとアルケンとの反応に使用するものなどの1または複数の溶媒に分散または溶解している。反応は、反応混合物を加圧するのに十分な量でアルキンを提供することにより大気圧または高圧で実施することができる。あるいは、アルキンは、不活性ガスと混ぜ合わせて導入することができる。不活性であり、ジエノフィルを担持することができる任意のガスを使用することができる。好ましいガスには、空気、窒素、アルゴン等がある。アルキンが液体である場合、アルキンを溶媒として使用してもよく、または1もしくは複数のアルキンおよびジエノフィルを、1または複数の溶媒中で接触させてもよい。好ましい溶媒は、反応条件下で液体である非極性溶媒である。好ましい溶媒は、環状および非環状エーテルならびにキシレンまたはデカリンなどの炭化水素溶媒である。反応は、過剰量のアルキンを反応媒体として用いて実施することが好ましい。反応は、加圧下の閉鎖された反応器において実施することが好ましい。圧力は、高温などの反応条件下で過剰量のアルキンをもたらし、液体アルキンを液体状態に維持するように選択する。アルキンは、モル過剰量で存在していることが好ましい。アルキンは、モル過剰量または約3.0:1.0以上、より好ましくは約5.0:1.0以上で存在していることがより好ましい。過剰量のアルキンに対する上限は実用性であり、その比は約6.0:1.0以下であることが好ましい。反応の温度は、反応速度が適切となるように、ならびに反応物および生成物の分解温度未満であるように選択する。温度は、好ましくは約130℃以上、より好ましくは約140℃以上、最も好ましくは約150℃以上である。温度は、約160℃以下であることが好ましい。反応時間は、好ましくは約1時間以上、より好ましくは約2時間以上、最も好ましくは約4時間以上である。反応時間は、好ましくは約24時間以下、最も好ましくは約16時間以下である。得られる生成物は、所望の生成物中に6員芳香族環を有する。5員環を有する芳香族化合物も副産物として調製される。生成物をカラムクロマトグラフィーにより分離する。所望の生成物の収率は、出発ムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体の重量に対して、好ましくは約80重量パーセント以上、より好ましくは約90重量パーセント以上である。回収する所望の化合物は、好ましくは約90重量パーセント以上、最も好ましくは99重量パーセント以上の純度を示す。所望の生成物は、検出可能な量、好ましくは最大で約1兆分の1の割合の炭素14を示すことが好ましい。好ましい実施形態において、回収する化合物は、バイオマスなどの再生可能資源に由来するその炭素原子を約6個以上、好ましくは約8個以上有する。
【0067】
好ましい実施形態において、調製するシクロヘキセン化合物は、式:
【0068】
【化18】

の1つに相当し、
式中、R、R2、、Zおよびbは、前述の通りである。
【0069】
より好ましい実施形態において、調製するシクロヘキセン化合物は、式:
【0070】
【化19】

の1つに相当し、
式中、R、RおよびRは、前述の通りである。ジエノフィルが不飽和エステルである実施形態において、シクロヘキセン化合物は、式:
【0071】
【化20】

の1つに相当することが好ましく、
式中、R、RおよびRは、前述の通りである。出発ジエノフィルが無水マレイン酸またはその類似体を包含する実施形態において、形成するシクロヘキセンは、式:
【0072】
【化21】

の1つに相当することが好ましく、
式中、Rは、前述の通りである。出発ジエノフィルが不飽和置換基を有する芳香族化合物である実施形態において、形成するシクロヘキセンは、式:
【0073】
【化22】

の1つに相当することが好ましく、
式中、R、RおよびRは、前述の通りである。出発ジエノフィルがアセチレンエステルである実施形態において、生成物は、式:
【0074】
【化23】

に相当するトリメリテートまたはその誘導体であり、
式中、R、R、R、Zおよびbは、前述の通りである。
【0075】
は、独立して、各出現において、水素、またはアルキル、ハロアルキル、アリール、ハロアリール、アルキルアリール、アルキルオキシ、または10個未満の炭素原子を含有するカルボキシル基であることが好ましい。さらにより好ましくは、Rは、独立して、各出現において、C1〜10アルキル基であり、最も好ましくは、Rはメチルである。RおよびRは、独立して、各出現において、水素、ハロゲン、アルキル、アルカリール、アリール、カルボキシオキシアルキルであるか、または組み合わせて1もしくは複数のヘテロ原子を含有し得る環状環を形成できることが好ましい。Rおよび/またはRは、独立して、各出現において、水素、ハロゲン、またはアルキル、ハロアルキル、アリール、ハロアリール、アルキルアリール、アルキルオキシ、または10個未満の炭素原子を含有するカルボキシル基であることがより好ましい。RおよびRは、独立して、各出現において、水素、クロロ、ブロモ、C1〜8アルキル、フェニル、もしくはカルボキシオキシC1〜8アルキルであるか、または組み合わせて環状無水物を形成できることがさらにより好ましい。Rは、水素、クロロ、メチル、エチルまたはフェニルであることがさらにより好ましい。Rは、独立して、各出現において、C1〜10アルキル基であることが好ましい。Rは、独立して、各出現において、C1〜8アルキル基であることがより好ましい。Rは、独立して、各出現において、メチル、ブチルまたはエチルヘキシルであることが最も好ましい。Rは、独立して、各出現において、ヘテロ原子含有官能基を場合により含有するヒドロカルビル基であることが好ましい。Rは、独立して、各出現において、C1〜10アルキル基であることがより好ましい。好ましくは、aは、独立して、各出現において、0または1であり、最も好ましくは、aは0である。一実施形態において、Rは、独立して、各出現において、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アリール、ハロアリール、アルキルアリール、アルキルオキシ、または10個未満の炭素原子を含有するカルボキシル基であり、Rは水素であり、さらにより好ましくは、Rは、独立して、各出現において、水素、クロロ、ブロモ、C1〜8アルキル、フェニル、またはカルボキシオキシC1〜8アルキルであり、Rは水素であり、Rは、さらにより好ましくは水素、クロロ、メチル、エチルまたはフェニルであり、一方、Rは水素である。
【0076】
本明細書に記載のムコン酸および/またはそのカルボキシレート誘導体とジエノフィルとの反応により調製されるシクロヘキセン化合物から、(トリメリット酸またはそのカルボキシレート誘導体を含めた)置換もしくは非置換テレフタル酸またはそのカルボキシレート誘導体などの、1位および4位、場合により2位にカルボキシレート基を有する少なくとも1つのベンゼン環を有する化合物を調製するために、シクロヘキセン化合物に、酸化または芳香族化と呼ぶこともできる脱水素化を施す。脱水素化ステップにおいて、シクロヘキセン化合物を1または複数の脱水素触媒と接触させる。一実施形態において、高温で、シクロヘキセン化合物を酸化剤および1または複数の脱水素触媒と接触させる。1つの好ましい実施形態において、酸化剤の不存在下で、シクロヘキセン化合物を脱水素触媒と接触させる。不活性ガスを反応器に通して、脱水素化プロセスで発生した水素ガスを取り除くことが好ましい。酸化剤は、本明細書において使用する場合、環状環の酸化を促進して水素原子を除去し、環に不飽和結合を形成する任意の化合物の要素を指す。環状環の酸化により、芳香族環の形成が生じることが好ましい。好ましい酸化剤には、酸素、単斜晶系硫黄、硝酸、ペルオキシド、ヒポクロライトおよび過硫酸塩、クロラニルおよびジシアノジクロロベンゾキノンがある。空気の形態の酸素が好ましい酸化剤である。酸化剤は、計算量以上の量で、好ましくは計算量より多く存在している。過剰分は、反応の速度を促進するように選択する。1つの好ましい実施形態において、反応は、該プロセスで発生する水素と反応する酸化剤の存在下で実施する。水素と反応する酸化剤としては酸素が挙げられる。反応物は、ニートで、または溶媒中で接触させることができる。好ましい溶媒は、炭化水素、エーテル(テトラヒドロフランなど)およびピロリドン(N−メチルピロリドンなど)を有する非プロトン性溶媒である。溶媒は、反応条件下で液体であることが好ましい。シクロヘキセン環含有化合物の溶媒中の濃度は、不均化が発生する濃度未満の濃度である。シクロヘキセン環含有化合物の溶媒中の濃度は、好ましくは約3.0M以下、最も好ましくは約2.0M以下である。シクロヘキセン環含有化合物の溶媒中の濃度は、好ましくは約0.05M以上、最も好ましくは約0.10M以上である。一実施形態において、反応は、大気圧(14.7psi、0.101MPa)で実施する。反応は、大気圧で、溶媒を還流させながら実施することができるが、ただし、溶媒は適当な温度で沸騰する。あるいは、反応は、高圧で実施することができる。酸化剤は、約2.0:1.0より多いモル過剰量で存在していることが好ましい。酸化剤は、約8.0:1.0以下のモル過剰量で存在していることが好ましい。好適な温度は、水素がシクロヘキセン化合物から除去されてシクロヘキセン含有化合物の環に二重結合を形成する温度である。温度は、好ましくは約120℃以上、より好ましくは約130℃以上である。温度は、好ましくは約400℃以下、より好ましくは約350℃以下、最も好ましくは約325℃以下である。反応を高圧で実施する場合、圧力は、好ましくは約14.7psi(0.101MPa)以上、より好ましくは約100psi(0.689MPa)以上である。反応を高圧で実施する場合、圧力は、好ましくは約1000psi(6.89MPa)以下、より好ましくは約600psi(4.14MPa)以下、最も好ましくは約500psi(3.45MPa)以下である。反応時間は、所望の化合物の所望の収率での調製を促進するように選択する。反応時間は、好ましくは約12時間以上、さらにより好ましくは約18時間以上、最も好ましくは約24時間以上である。反応時間は、好ましくは約48時間以下、さらにより好ましくは約36時間以下、最も好ましくは約24時間以下である。触媒は、反応条件下で水素をシクロヘキセン環から除去して芳香族環を形成する任意の脱水素触媒とすることができる。好ましい脱水素触媒は、金属、より好ましくはVIII族の金属をベースにしている。金属は、純粋な形態で、合金として、金属酸化物またはそれらの混合物の形態で存在することができる。触媒は、触媒効果または触媒の選択性に影響を与えるまたはそれらを強化するための変性剤(modifier)も含有することができる。そのような変性剤は当技術分野においてよく知られている。好ましい反応調節剤(reaction modifier)は、遷移金属および遷移金属を含有する化合物である。触媒のベースとなっている金属は、好ましくは白金、パラジウムおよびニッケルであり、パラジウムが最も好ましい。触媒は均一となるように使用することができるが、担体上の不均一系触媒であることが好ましい。触媒は、当業者に知られているスポンジ金属の形態とすることもできる。担体は、不均一系触媒に有用な任意の担体とすることができる。好ましい担体には、酸化アルミニウム、スピネル、ゼオライトおよび炭素がある。最も好ましい担体は炭素担体である。脱水素化反応は溶媒中で実施することができる。反応は、還流溶媒中で実施することが好ましい。溶媒は、前述の反応の温度で沸点を有することが好ましい。反応を還流溶媒中で実施する場合、好ましくは空気の形態の酸素を還流溶媒に吹き込むことができる。触媒は、反応が適度に効率的に進行して所望の収率で所望の生成物を生じるほど十分な量で存在している。触媒は、シクロヘキセン含有化合物の量に対して、好ましくは約0.01モルパーセント以上、より好ましくは約0.03モルパーセント以上、最も好ましくは約1モルパーセント以上の量で存在している。触媒は、シクロヘキセン環含有化合物に対して、好ましくは約10モルパーセント以下、より好ましくは約5モルパーセント以下、最も好ましくは約3モルパーセント以下の量で存在している。生成物は、所望の収率および純度での所望の生成物の単離を可能にする、当技術分野において知られている任意の手段により回収する。所望の生成物を回収する好ましい手段としては、反応媒体を濾過して触媒を除去すること、蒸発により生成物を濃縮すること、ならびに回収した生成物を好適な溶媒からクロマトグラフィー分離、蒸留、および/または再結晶により分離することが挙げられる。生成物の収率は、出発シクロヘキセン化合物の重量に対して、好ましくは約60重量パーセント以上、より好ましくは約65重量パーセント以上である。回収する生成物は、好ましくは約90重量パーセント以上、最も好ましくは約99重量パーセント以上の純度を示す。生成物は、検出可能な量、好ましくは最大で約1兆分の1の割合の炭素14を示すことが好ましい。好ましい実施形態において、回収する生成物は、バイオマスなどの再生可能資源に由来する炭素原子を約6個より多く、より好ましくはバイオマスなどの再生可能資源に由来する炭素原子を約8個より多く有する。
【0077】
1または複数のムコン酸およびそのカルボキシレート誘導体と1または複数のジエノフィルとの反応ならびに脱水素化反応ステップは、第1の反応ステップ後に溶媒からシクロヘキセンを回収することなく実施することができる。いずれの反応も前述の通り実施することができる。1または複数のムコン酸およびそのカルボキシレート誘導体と1または複数のジエノフィルとの反応をルイス酸の存在下で実施する実施形態において、ルイス酸は、脱水素化の前に除去することが好ましい。脱水素化ステップを開始する前に、シクロヘキセン化合物を含有する反応混合物に脱水素触媒を添加する。この実施形態において、溶媒は、グリコールエーテル、ポリグリコールエーテル、キシレンなどの芳香族炭化水素等である。より好ましい溶媒は、ジメチルグリコールエーテルおよびキシレンである。所望の反応温度までの任意の温度で脱水素触媒を反応に添加することができる。
【0078】
好ましい実施形態において、回収する生成物は、式:
【0079】
【化24】

に相当し、
式中、R、R、Zおよびbは、前述の通りである。
【0080】
より好ましい実施形態において、回収する生成物は、式:
【0081】
【化25】

に相当し、
式中、RおよびRは、前述の通りである。出発ジエノフィルが不飽和エステルである実施形態において、生成物は、式:
【0082】
【化26】

に相当するトリメリテートであることが好ましく、
式中、R、RおよびRは、前述の通りである。出発ジエノフィルが無水マレイン酸である実施形態において、得られる生成物は、式:
【0083】
【化27】

に相当することが好ましく、
式中、R、RおよびRは、前述の通りである。シクロヘキセンを作製するのに使用する出発ジエノフィルは、不飽和置換基を有する芳香族化合物であり、生成物は、式:
【0084】
【化28】

に相当することが好ましく、
式中、R、RおよびRは、前述の通りである。
【0085】
本明細書に記載のムコン酸および/またはそのカルボキシレート誘導体とジエノフィルとの反応により調製されるシクロヘキセン化合物からシクロヘキサン系化合物を調製するために、シクロヘキセン化合物に水素化を施す。水素化ステップにおいて、1または複数の水素化触媒の存在下で、シクロヘキセン化合物を水素と接触させる。好適な温度は、水素が適切な速度でシクロヘキセン化合物に挿入されて環の二重結合を除去する温度である。周囲温度で、シルコヘキセン化合物を水素および1または複数の水素化触媒と接触させることが好ましい。反応は、大気圧および高圧で実施することができる。高圧に対する上限は、反応装置の耐圧性(capability of the reaction equipment to handle the pressures)である。圧力は約200psi(1.38MPa)未満であることが好ましい。水素ガスを添加することにより圧力を加えて所望の圧力を達成することが好ましい。大気圧で水素を反応媒体に吹き込むおよび/または反応混合物を大気圧下で撹拌する。反応時間は、所望の化合物の所望の収率での調製を促進するように選択する。反応時間は、好ましくは約0.5時間以上、より好ましくは約1.0時間以上、最も好ましくは約2.0時間以上である。反応時間は、好ましくは約24時間以下、より好ましくは約16時間以下、最も好ましくは約8時間以下、最も好ましくは約3時間以下である。触媒は、反応条件下で水素をシクロヘキセン環に挿入してシクロヘキサン環を形成する任意の水素化触媒とすることができる。好ましい水素化触媒は、金属、好ましくはVIII族の金属をベースにしている。金属は、純粋な形態で、合金として、金属酸化物またはそれらの混合物の形態で存在することができる。触媒は、触媒効果または触媒の選択性に影響を与えるまたはそれらを強化するために変性剤も含有することができる。そのような変性は当技術分野においてよく知られている。触媒がベースにしている金属は、好ましくは白金、パラジウムおよびニッケルであり、パラジウムが最も好ましい。触媒は均一に使用することができるが、担体上の不均一系触媒であることが好ましい。触媒は、当業者に知られているスポンジ金属触媒とすることもできる。担体は、不均一系触媒に有用な任意の担体とすることができる。好ましい担体には、酸化アルミニウム、スピネル、ゼオライトおよび炭素がある。最も好ましい担体は炭素である。水素化反応は溶媒中で実施することができる。好ましい溶媒には、塩化炭化水素、非環状エーテル、環状エーテルおよびアルコール(アルカノールおよびアセチルアルコールなど)等がある。シクロヘキセン化合物は、溶媒に対して、好ましくは約5重量パーセント以上、最も好ましくは約8重量パーセント以上の量で存在している。シクロヘキセン化合物は、溶媒に対して、好ましくは約15重量パーセント以下、最も好ましくは約12重量パーセント以下の量で存在している。触媒は、反応が適度に効率的に進行して所望の収率で所望の生成物を生じるほど十分な量で存在している。触媒は、シクロヘキセン含有化合物の量に対して、好ましくは約0.01モルパーセント以上、より好ましくは約0.03モルパーセント以上、最も好ましくは約1.0モルパーセント以上の量で存在している。触媒は、シクロヘキセン環含有化合物に対して、好ましくは約10.0モルパーセント以下、より好ましくは約5.0モルパーセント以下、最も好ましくは約3.0モルパーセント以下の量で存在している。生成物は、所望の収率および純度での所望の生成物の単離を可能にする、当技術分野において知られている任意の手段により回収する。所望の収率で所望の生成物(本明細書においてはシクロヘキサン環含有化合物)を回収する好ましい手段としては、反応媒体を濾過して触媒を除去すること、蒸発により生成物を濃縮すること、ならびに回収した生成物を好適な溶媒からクロマトグラフィー分離、蒸留、および/または再結晶により分離することが挙げられる。シクロヘキサン環含有化合物の収率は、出発シクロヘキセン化合物の重量に対して、好ましくは約90重量パーセント以上、より好ましくは約99重量パーセント以上である。回収するシクロヘキサン環含有化合物は、好ましくは約90重量パーセント以上、最も好ましくは約99重量パーセント以上の純度を示す。シクロヘキサン環含有化合物は、検出可能な量、好ましくは最大で約1兆分の1の割合の炭素14を示すことが好ましい。好ましい実施形態において、回収するシクロヘキサン環含有化合物は、バイオマスなどの再生可能資源に由来する炭素原子を約6個以上、より好ましくはバイオマスなどの再生可能資源に由来する炭素原子を約8個以上有する。
【0086】
好ましい実施形態において、回収する水素化生成物は、式:
【0087】
【化29】

に相当し、
式中、R、R、Zおよびbは、前述の通りである。
【0088】
より好ましい実施形態において、回収する水素化生成物は、式:
【0089】
【化30】

に相当し、
式中、RおよびRは、前述の通りである。出発ジエノフィルが不飽和エステルである実施形態において、生成物は、式:
【0090】
【化31】

に相当するシクロヘキサンであることが好ましく、
式中、R、RおよびRは、前述の通りである。出発ジエノフィルが無水マレイン酸である実施形態において、得られる生成物は、式:
【0091】
【化32】

に相当することが好ましく、
式中、R、RおよびRは、前述の通りである。シクロヘキセンを作製するのに使用する出発ジエノフィルは、不飽和置換基を有する芳香族化合物であり、生成物は、式:
【0092】
【化33】

に相当することが好ましく、
式中、R、RおよびRは、前述の通りである。
【0093】
1位および4位、場合により2位ににカルボキシレート基を有するシクロヘキサン化合物は、カルボキシレート基をメチロール基に転換する条件で処理してもよい。そのような条件は当技術分野においてよく知られている。一実施形態において、参照により本明細書に組み込まれているOrganic Chemistry、第4版、MorrsionおよびBoyd、AllynおよびBacon、New York、1983のセクション20.22に開示のカルボキシレート基がメチロール基に転換されるような条件下で、1位および4位、場合により2位にカルボキシレート基を有するシクロヘキサン化合物に触媒水素化を施してもよい。一般に、カルボキシレート基の水素化により高い圧力および温度を利用する。あるいは、カルボキシレート基は、上記のMorrsionおよびBoydに開示の化学的還元によりメチロール基に転換することができる。一般に、1位および4位、場合により2位にカルボキシレート基を有するシクロヘキサン化合物は、ナトリウム金属およびアルコールと、または水素化アルミニウムリチウムと接触させる。さらに別の実施形態において、Advance Organic Chemistry、第2版、March、McGraw Hill、New York 1977に従って、高温で、1位および4位、場合により2位にカルボキシレート基を有するシクロヘキサン化合物を酸と接触させることにより転換を達成する。別の実施形態において、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第4,302,595号のプロセスを利用することができる。1位および4位、場合により2位にカルボキシレート基を有するシクロヘキサン化合物は、式:
【0094】
【化34】

に相当することが好ましく、
式中、Rは、出発化合物が2位にカルボキシレートを有していた場合、メチロール基を含み得る。
【0095】
1および4、場合により2位にカルボン酸基を有するベンゼン、シクロヘキセンおよびシクロヘキサン化合物をエステル化してヒドロカルビル基を1位および4位、場合により2位に付加して、これらの位置にカルボキシレート基を形成することができる。エステル化反応は、March、同書、363〜365頁に開示のプロセスおよびこれまでに開示したプロセスを含めた当業者に知られている任意のエステル化プロセスにより実施することができる。一実施形態において、強酸の存在下で、水および形成するエステルまたは著しい過剰量のアルコールを除去しながら、エステル化剤、前述のアルコールを、1位および4位、場合により2位にカルボン酸基を有するベンゼン、シクロヘキセンおよびシクロヘキサン化合物と接触させる。酸性触媒は、前述の通りである。
【0096】
本発明において調製する化合物は、様々な知られているポリマーを調製するためのモノマーとして使用することができる。該化合物の一部は、様々なポリマー系の可塑剤として使用することができる。フェニル置換テレフタレートは、参照により本明細書に組み込まれている関係する開示の米国特許第4,391,966号に記載の液晶ポリマーを調製するのに使用することができる。1位および4位、場合により2位にカルボン酸基を有するベンゼン、シクロヘキセンおよびシクロヘキサン化合物、好ましくはテレフタル酸またはテレフタル酸ジメチルを、エチレングリコールまたは1,4−ブタンジオールなどのアルキレングリコールと反応させて、ポリエステルを調製することができる。そのようなポリエステルを調製するプロセスは当技術分野においてよく知られている。例えば、テレフタル酸をエチレングリコールと反応させて、参照により本明細書に組み込まれている「Contemporary Polymer Chemistry」第2版、Harry R.Alcock、Frederick W.Lampe、1990、Prentice−Hallの27および28頁に記載のポリエチレンテレフタレートを調製することができる。一実施形態において、本発明は、a)cis−cisムコン酸がtrans−transムコン酸に異性化するような期間、高温の溶媒中で、cis−cisムコン酸および1もしくは複数の異性化触媒、紫外線放射源、またはそれらの両方を接触させるステップと、b)trans−transムコン酸を回収するステップと、c)1または複数のtrans−transムコン酸ジヒドロカルビルが形成するような条件下、1または複数の強酸の存在下で、場合により、trans−transムコン酸を1または複数のエステル化剤と接触させるステップと、d)1または複数のムコン酸、ムコン酸ジヒドロカルビルおよびジエノフィルが1または複数のシクロヘキセン環含有化合物を形成するような条件下、高温で、1または複数のtrans−transムコン酸またはムコン酸ジヒドロカルビルを1または複数のジエノフィルと接触させるステップと、e)1または複数のポリアルキレンポリエステルが調製されるような条件下で、シクロヘキセン環含有化合物を1または複数のアルキレングリコールと接触させるステップとを含むポリアルキレンポリエステルの調製方法に関する。別の実施形態において、本発明は、a)cis−cisムコン酸がtrans−transムコン酸に異性化するような期間、高温の溶媒中で、cis−cisムコン酸および1もしくは複数の異性化触媒、紫外線放射源、またはそれらの両方を接触させるステップと、b)trans−transムコン酸を回収するステップと、c)1または複数のtrans−transムコン酸ジヒドロカルビルが形成するような条件下、1または複数の強酸の存在下で、場合により、trans−transムコン酸を1または複数のエステル化剤と接触させるステップと、d)1もしくは複数のムコン酸またはムコン酸ジヒドロカルビルおよびジエノフィルが1または複数のシクロヘキセン環含有化合物を形成するような条件下、高温で、1または複数のtrans−transムコン酸またはムコン酸ジヒドロカルビルを1または複数のジエノフィルと接触させるステップと、e)1位および4位、場合により2位にカルボン酸基を有する1または複数のシクロヘキサン化合物が調製されるような条件下で、シクロヘキセン環含有化合物を水素化触媒と接触させるステップと、f)1または複数のポリアルキレンポリエステルが調製されるような条件下で、1位および4位、場合により2位にカルボン酸基を有する1または複数のシクロヘキサン化合物を1または複数のアルキレングリコールと接触させるステップとを含むポリアルキレンポリエステルの調製方法に関する。一実施形態において、本発明は、a)cis−cisムコン酸がtrans−transムコン酸に異性化するような期間、高温の溶媒中で、cis−cisムコン酸および1もしくは複数の異性化触媒、紫外線放射源、またはそれらの両方を接触させるステップと、b)trans−transムコン酸を回収するステップと、c)1または複数のtrans−transムコン酸ジヒドロカルビルが形成するような条件下、1または複数の強酸の存在下で、場合により、trans−transムコン酸を1または複数のエステル化剤と接触させるステップと、d)1もしくは複数のムコン酸またはムコン酸ジヒドロカルビルおよびジエノフィルが1または複数のシクロヘキセン環含有化合物を形成するような条件下、高温で、1または複数のtrans−transムコン酸またはムコン酸ジヒドロカルビルを1または複数のジエノフィルと接触させるステップと、e)1または複数のテレフタル酸またはテレフタル酸ジヒドロカルビルが調製されるような条件下、場合により酸化剤の存在下で、シクロヘキセン環含有化合物を脱水素触媒と接触させるステップと、f)1または複数のテレフタル酸ポリアルキレンが調製されるような条件下で、1または複数のテレフタル酸またはテレフタル酸ジヒドロカルビルを1または複数のアルキレングリコールと接触させるステップとを含むテレフタル酸ポリアルキレンの調製方法に関する。別の実施形態において、本発明は、a)cis−cisムコン酸がtrans−transムコン酸に異性化するような期間、高温の溶媒中で、cis−cisムコン酸およびヨウ素、紫外線源またはそれらの両方を接触させるステップと、b)trans−transムコン酸を回収するステップと、c)trans,transムコン酸ジメチルが形成するような条件下、1または複数の強酸の存在下で、trans−transムコン酸をメタノールと接触させるステップと、d)ジメチルシクロヘキサ−2−エン−1,4−ジカルボキシレート、および/またはその1−エン−互変異性体が調製されるような条件下、高温で、trans−transムコン酸ジメチルをエチレンと接触させるステップと、e)テレフタル酸ジメチルが調製されるような条件下、場合により酸化剤の存在下で、ジメチルシクロヘキサ−2−エン−1,4−ジカルボキシレートを脱水素触媒と接触させるステップと、f)テレフタル酸ジメチルを加水分解してテレフタル酸を形成するステップと、g)テレフタル酸ポリエチレンが調製されるような条件下でテレフタル酸をエチレングリコールと接触させるステップとを含むテレフタル酸ポリエチレンの調製方法である。さらに別の実施形態において、本発明は、a)cis−cisムコン酸がtrans−transムコン酸に異性化するような期間、高温の溶媒中で、cis−cisムコン酸およびヨウ素、紫外線源またはそれらの両方を接触させるステップと、b)trans−transムコン酸を回収するステップと、c)シクロヘキサ−2−エン−1,4−ジカルボン酸、および/またはその1−エン互変異性体が調製されるような条件下、高温で、trans−transムコン酸をエチレンと接触させるステップと、d)テレフタル酸が調製されるような条件下、場合により酸化剤の存在下で、シクロヘキサ−2−エン−1,4−ジカルボン酸を脱水素触媒と接触させるステップと、e)テレフタル酸ポリエチレンが調製されるような条件下でテレフタル酸をエチレングリコールと接触させるステップとを含むテレフタル酸ポリエチレンの調製方法である。本発明は、a)cis−cisムコン酸がtrans−transムコン酸に異性化するような期間、高温の溶媒中で、cis−cisムコン酸およびヨウ素、紫外線源またはそれらの両方を接触させるステップと、b)trans−transムコン酸を回収するステップと、c)trans,transムコン酸ジメチルが形成するような条件下、1または複数の強酸の存在下で、trans−transムコン酸をメタノールと接触させるステップと、d)ジメチルシクロヘキサ−2−エン−1,4−ジカルボキシレート、および/またはその1−エン互変異性体が調製されるような条件下、高温で、trans−transムコン酸ジメチルをエチレンと接触させるステップと、e)テレフタル酸ジメチルが調製されるような条件下、場合により酸化剤の存在下で、ジメチルシクロヘキサ−2−エン−1,4−ジカルボキシレートを脱水素触媒と接触させるステップと、f)テレフタル酸ポリブチレンが調製されるような条件下でテレフタル酸ジメチルを1,4−ブタンジオールと接触させるステップとを含むテレフタル酸ポリブチレンの調製方法も含む。得られるポリエステルは、モノマー単位あたり、ムコン酸またはムコン酸およびエチレン前駆体に由来する、再生可能資源に由来する炭素原子を少なくとも約6個、好ましくは少なくとも約8個含有する。好ましい実施形態において、得られるポリエステルは、検出可能な量、好ましくは最大で約1兆分の1の割合の炭素14を含有する。本発明は、ポリエステルに関し、ポリエステルを調製するのに使用する、1位および4位、場合により2位にカルボン酸基を有するベンゼン、シクロヘキセンおよびシクロヘキサン化合物の一部分または全部は、バイオマスに由来する1もしくは複数のムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体から合成する。ムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体は、微生物合成によりバイオマスから得ることができる。ポリエステルを調製するのに使用する、1位および4位、場合により2位にカルボン酸基を有するベンゼン、シクロヘキセンおよびシクロヘキサン化合物は、再生可能な資源に由来するエチレンから合成することができる。ポリエステルを調製するのに使用する、1位および4位、場合により2位にカルボン酸基を有するベンゼン、シクロヘキセンおよびシクロヘキサン化合物は、バイオマスに由来する1もしくは複数のムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体から、および再生可能な資源に由来するエチレンから合成することができる。別の実施形態において、1位および4位、場合により2位にカルボン酸基を有するベンゼン、シクロヘキセンおよびシクロヘキサン化合物と反応させるエチレングリコールおよびブタンジオールなどのジオールは、当技術分野において知られている通り、バイオマスなどの再生可能資源、またはそれらの誘導体に由来することができる。この実施形態において、再生可能資源に由来する各モノマー単位の炭素原子の数は、約10以上または約12以上とすることができる。
【0097】
本発明の新規な化合物および本発明の新規なプロセスにより調製するものは、再生可能資源に由来することが好ましい。再生可能資源から調製する化合物は、参照により本明細書に組み込まれているUS 7,531,593のコラム6の60行からコラム8の42行に記載の特徴的な13C/12C比を示す。
【0098】
上記の記述が例示的なものであり、限定的なものではないことが理解されよう。上記の記述を読めば、当業者には、提示している実施例以外の多くの実施形態ならびに多くの応用例が明らかとなろう。本発明の様々な態様または実施形態の特色の任意の組合せを併用してもよいことをさらに意図したものである。本明細書において提示している説明および例示は、本発明の当業者にその原理、およびその実際の応用例を知らせることを意図したものである。当業者は、特定の用途の要件を満たすように、本発明をその多くの形態で応用および適用することができる。したがって、前述の本発明の特定の実施形態は、本発明を網羅または限定することを意図したものではない。したがって、本発明の範囲は、上記の記述を参照して決定するのではなく、その代わりに、添付の特許請求の範囲、ならびにそのような請求の範囲が享受する均等物を参照して決定するべきである。参照により本明細書にやはり組み込まれる以下の請求項から分かるように、他の組合せも可能である。以下の請求項における本明細書に開示の主題の任意の態様の省略は、主題の放棄ではなく、本発明者らが、そのような主題を、開示している本発明の主題の一部と見なしていないと見なすべきではない。

【実施例】
【0099】
別段の指定のない限り、全ての部およびパーセントは重量基準である。
cis,cisムコン酸の精製
[実施例1]
【0100】
粗製cis,cisムコン酸の精製
【0101】
【化35】

【0102】
2つの別個の125mlのエルレンマイヤーフラスコにおいて、それぞれの粗製cis,cisムコン酸(各10.0gで合計20.0g)のメタノール(50ml)懸濁液をヒートガンで加熱還流する。熱い懸濁液を濾過する。追加のメタノール(30ml)を残渣に添加する。それを再び加熱還流し、同じ濾紙を介して同じ丸底フラスコに濾過する。次に、濾紙上に存在する全ての固形物をエルレンマイヤーフラスコに戻し、追加のメタノール(30ml)を添加し、加熱還流およびその後の濾過手順を繰り返す。合わせたメタノール溶液(110ml)を室温まで冷却させ、次いで、氷浴に入れる。室温まで一夜加温した後、母液(mother liquid)をデカントすると微結晶性のベージュ色の固形物が現れ、その重量は、乾燥後、高真空下で4.84gであった。次に、cis,cis−ムコン酸の第2の10gバッチでこの正確な手順を繰り返して、4.23gを得る。次いで、両方の再結晶からの母液を合わせ、蒸発乾固させる。メタノール(75ml)からの残りの残渣の一回の再結晶により、追加の2.82gを得る。合計で、11.89g(回収率59質量パーセント)の純粋なcis,cisムコン酸。
[実施例2]
【0103】
粗製ムコン酸の精製
乾燥した(水が5重量パーセント未満)粗製cis,cisまたはcis,transムコン酸(200g)のテトラヒドロフラン(THF)(1.8リットル(l))撹拌懸濁液を50℃まで加熱する。50℃で45分以内に固形物の大部分が溶解する。活性炭(35g)を添加する。1時間後、熱い懸濁液を、Celite(商標)の珪藻土のベッドを介した濾過により清澄化する。濾液を蒸発乾固させ、残渣を高真空下で乾燥させて、純粋なcis,cisまたはcis,transムコン酸(166g、回収率83質量パーセント)を得る。cis,cisムコン酸の場合、還流している酢酸エチル中で固形物を2回再懸濁することにより、いかなる微量のcis,transムコン酸も除去することができ、冷却溶液から毎回デカンテーションにより除去する。酢酸エチル中、室温でのおよその溶解度は、cis,cisムコン酸については1mg/ml、cis,transムコン酸については5mg/ml、trans,transムコン酸については0.1mg/mlである。
cis,transおよびtrans,transムコン酸への異性化
[実施例3]
【0104】
粗製cis,cisムコン酸からのcis,transムコン酸の合成
【0105】
【化36】

【0106】
水(250ml)に懸濁した粗製cis,cisムコン酸(15.0g)を、ヒートガンを使用して10分間加熱還流する。還流では全てが溶解している。熱い溶液を室温まで冷却させ、次いで、氷浴に入れる。室温まで一夜加温した後、母液をデカントすると微結晶性のベージュ色の固形物としての純粋なcis,transムコン酸が現れ、その重量は、乾燥後、高真空下で9.0gであり、回収率60質量パーセントをもたらす。
[実施例4]
【0107】
純粋なcis,cisムコン酸からのcis,transムコン酸の合成
精製cis,cisムコン酸(15.0g)の水性(150ml)懸濁液を、ヒートガンを使用して15分間加熱還流する。室温まで一夜冷却した後、沈殿した固形物、純粋なcis,transムコン酸を濾過により採取し、少量の水で洗浄し、高真空下で乾燥させる(10.4g、69パーセント)。母液の試料を濃縮し、H NMR分析のために残りの残渣全体をDMSO−dに溶解する。母液のバルクを蒸発乾固させる(4.2g)。母液試料の蒸発残渣のH NMRスペクトルの積分によると、ムコン酸全体の3パーセントが溶液中にcis,trans異性体として残り、25パーセントがその内部ラクトンに転換され、残りの3パーセントは、ラクトン加水分解およびその後の脱カルボキシル化を受けてレブリン酸を形成する。
[実施例5]
【0108】
純粋なcis,cisまたはcis,transムコン酸からのtrans,transムコン酸の合成
精製cis,cisまたはcis,transムコン酸(12.5g、88mmol)、I(110mg、0.5molパーセント)、およびTHF(110ml、0.8M)からなる混合物を4時間還流する。室温まで冷却した後、沈殿した固形物、純粋なtrans,transムコン酸を濾過により採取する。Iを完全に除去するために、室温のTHF中で固形物をフリット上で再懸濁し、吸引減圧濾過(aspirator vacuum filtration)を介して再び除去する。その物質を高真空下で乾燥させる(11.3g、90パーセント)。
[実施例6〜13]
【0109】
粗製cis,cisまたはcis,transムコン酸からのtrans,transムコン酸の合成
乾燥した精製cis,cisムコン酸(5.0g、35.2mmol)をTHF(44ml、0.8M)に懸濁する。純水(1、5、10、または20重量パーセント)または(NHSO(1、5、10、または20重量パーセント)のいずれかを添加する。I(45mg、0.5molパーセント)を添加し、混合物を4時間加熱還流する。室温まで冷却した後、沈殿したtrans,transムコン酸を濾過により採取し、乾燥した。(NHSO実験の場合、採取したtrans,transムコン酸の塊を(NHSOの有無により補正する(corrected for the presence of (NH4)2S04)。母液の試料を濃縮し、H NMR分析のために全ての残渣をDMSO−dに溶解する。積分により、母液の組成の推定が可能となった。結果を表1および2にまとめている。
【0110】
表1および2:
【0111】
【表1】

【表2】

[実施例14]
【0112】
粗製cis,cis−ムコン酸からのcis,trans−ムコン酸の合成
【0113】
【化37】

【0114】
cis,cis−ムコン酸(100g)を水(1L、次いで、塩基、水酸化ナトリウムを添加することによりpH6に調整する)に溶解し、混合物を90℃で3.5時間加熱する。試料を30分毎に採取し、HPLCにより分析する。これらの試料のHPLC分析により、異性化プロセスが90℃での加熱の1時間後にほとんど完了していることが示される。90℃での加熱の3.5時間後に、混合物を木炭(10g)で30分間処理し、Whatman濾紙(#2)を介して濾過する。塩基、水酸化ナトリウムを添加することにより溶液のpHを3.5に調整する。濾過により沈殿物を得て、氷冷水(200mL)で洗浄し、減圧下で乾燥して64.5g(収率65パーセント)の淡黄色のcis,trans−ムコン酸を得る。
[実施例15]
【0115】
cis,cisムコン酸からのtrans,transムコン酸の合成
【0116】
【化38】

【0117】
精製cis,cisムコン酸(0.50g)、触媒量のヨウ素(25mg)、およびアセトニトリル(35ml)を含有する混合物を36時間加熱還流する。この反応は、実験室において環境光の存在下で実施する。沈殿した固形物を依然として熱い溶液から濾過して取り除き、冷たいアセトニトリルで洗浄する。高真空下での乾燥後、0.40g(収率80パーセント)の純粋なtrans,transムコン酸が黄褐色の粉末として存在している。
[実施例16]
【0118】
cis,transムコン酸からのtrans,transムコン酸の合成
【0119】
【化39】

【0120】
cis,transムコン酸(1.00g)、触媒量のヨウ素(53mg、3.0モルパーセント)、およびアセトニトリル(35ml)を含有する混合物を11時間加熱還流する。この反応は、実験室において環境光の存在下で実施する。室温まで冷却した後、沈殿した固形物を濾過して取り除き、アセトニトリルで洗浄する。高真空下での乾燥後、0.80g(収率80パーセント)の純粋なtrans,transムコン酸が黄褐色の粉末として存在している。cis,transムコン酸からこの手順により得た物質は、前記の手順によりcis,cisムコン酸から得た物質と同一である。
[実施例17]
【0121】
cis,trans−ムコン酸からのtrans,trans−ムコン酸の合成
【0122】
【化40】

【0123】
cis,transムコン酸(10g、70.4mmol)を200mgのヨウ素(1.1モルパーセント)と共にTHF(200mL)に溶解する。この反応は、実験室において環境光の存在下で実施する。次いで、混合物を還流させ、HPLCにより分析するために試料を30分毎に採取する。2時間の還流後に、沈殿物を濾過し、過剰量のTHFで洗浄し、乾燥して6.2gの淡黄色の固形物を得る。単離した固形物のHPLC分析により、それが純粋なtrans,trans−ムコン酸であり、異性化が1時間の還流後に完了していることが示された。
[実施例18]
【0124】
cis,trans−ムコン酸からのtrans,trans−ムコン酸の合成
【0125】
【化41】

【0126】
cis,trans−ムコン酸(19g、133.8mmol)を室温でTHF(250mL)に溶解し、ヨウ素の結晶(160mg、0.63mmol、0.5モルパーセント)を添加する。この反応は、実験室において環境光の存在下で実施する。反応混合物を室温で5時間撹拌させ、沈殿物を濾過し、アセトニトリルで洗浄し、減圧下で乾燥して16gのtrans,trans−ムコン酸、収率84パーセントを得る。
ムコン酸のエステル化
[実施例19]
【0127】
cis,cisムコン酸からのcis,cisムコン酸ジメチルの合成
【0128】
【化42】

【0129】
精製cis,cisムコン酸(10.0g、70.4mmol)を水酸化ナトリウム水溶液(NaOH、42.2ml、5.0M、211mmol、3.0当量)に懸濁する。室温で、硫酸ジメチル(18.4ml、194mmol、2.75当量)を15min後に添加し、混合物を急速に6時間撹拌する。混合物を酢酸エチルに溶解し、全ての固形物が溶解するまで振盪する。有機相を1M(モル)NaOH水溶液で3回、および飽和水性塩化ナトリウム(NaCl)で1回再抽出する。全ての溶媒の硫酸マグネシウム(MgSO)での乾燥、濾過、および蒸発により、オフホワイトの結晶性固形物(6.2g、36.4mmol、収率52パーセント)が生じ、硫酸ジメチルを全く含まない純粋なcis,cisムコン酸ジメチルとして同定される。
[実施例20]
【0130】
cis,transムコン酸からのcis,transムコン酸ジメチルの合成
【0131】
【化43】

【0132】
精製cis,transムコン酸(10.0g、70.4mmol)をNaOH水溶液(42.2ml、5.0M、211mmol、3.0当量)に懸濁する。室温で、硫酸ジメチル(18.4ml、194mmol、2.75当量)を15分後に添加し、混合物を急速に5時間撹拌する。混合物を酢酸エチルに溶解し、全ての固形物が溶解するまで振盪する。有機相を、1M NaOH水溶液で3回、および飽和NaCl水溶液で1回再抽出する。全ての溶媒の硫酸マグネシウム(MgSO)での乾燥、濾過、および蒸発により、オフホワイトの結晶性固形物(6.0g、35.3mmol、収率50パーセント)が生じ、硫酸ジメチルを全く含まない純粋なcis,transムコン酸ジメチルとして同定される。
[実施例21]
【0133】
cis,cisムコン酸からのムコン酸ジメチル異性体の合成
【0134】
【化44】

【0135】
cis,cisムコン酸(10.0g、70.4mmol)をメタノール(250ml)に懸濁する。触媒量のHSO(0.6ml)を添加し、反応混合物を18時間還流する。濃縮後、残りの茶色の残渣を酢酸エチルに溶解し、飽和KCO水溶液で3回抽出する。全ての溶媒の乾燥(NaSO)、濾過、および蒸発により、淡褐色の固形物(10.8g、63.5mmol、収率90パーセント)が生じ、それは、主に、さらに精製することなく以下に記載の通りに使用するcis,cisおよびcis,transムコン酸ジメチルからなる。
[実施例22]
【0136】
trans,transムコン酸からのtrans,transムコン酸ジメチルの合成
【0137】
【化45】

【0138】
trans,transムコン酸(4.6g、32.4mmol)をメタノール(125ml)に懸濁する。触媒量の硫酸、HSO(0.3ml)を添加し、反応混合物を18時間還流する。濃縮後、残りの茶色の残渣を酢酸エチルに溶解し、飽和炭酸カリウム水溶液、KCO水溶液で3回抽出する。全ての溶媒の硫酸ナトリウム(NaSO)上での乾燥、濾過、および蒸発により、オフホワイトの固形物(5.2g、30.6mmol、収率94パーセント)が生じ、純粋なtrans,transムコン酸ジメチルとして同定される。
[実施例23]
【0139】
trans,transムコン酸からのtrans,transムコン酸ジメチルの合成
【0140】
濃HSO(0.52ml、0.1容量パーセント)をtrans,transムコン酸(60g、0.42mol)のメタノール(0.52l、0.8M)撹拌懸濁液に添加する。反応混合物を還流下で16時間撹拌する。この反応により、低溶解度の固形物が別の低溶解度の固形物に変換される。結晶性trans,transムコン酸ジメチルの密度は、結晶性trans,transムコン酸の密度より高い。trans,transムコン酸はメタノール反応混合物の撹拌の間に全て懸濁するが、trans,transムコン酸ジメチルは調査した全ての撹拌速度でフラスコの底部に堆積したままである。室温まで冷却した後、母液をデカントし、沈殿物をメタノールで洗浄する。HSOを完全に除去するために、新たなメタノール(200ml)を導入し、混合物を10分間加熱還流する。室温まで冷却した後、母液を再びデカントし、沈殿物をメタノールで洗浄する。高真空下での乾燥により、清浄なtrans,transムコン酸ジメチル(68g、0.40mol、95パーセント)が生じる。
[実施例24]
【0141】
trans,transムコン酸からのtrans,transムコン酸ジ−n−ブチルの合成
【0142】
【化46】

【0143】
trans,transムコン酸(5.0g、35.2mmol)を規定のブタノール(40ml)に懸濁する。触媒量のHSO(0.45ml)を添加し、反応混合物を16時間還流する。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、飽和KCO水溶液で3回抽出する。全ての溶媒の乾燥(NaSO)、濾過、および蒸発により、淡黄色のゲル(8.3g、32.7mmol、収率93パーセント)が生じ、純粋なtrans,transムコン酸ジ−n−ブチルとして同定される。
[実施例25]
【0144】
trans,transムコン酸からのtrans,transムコン酸ジ−(2−エチル−ヘキシル)の合成
【0145】
【化47】

【0146】
trans,transムコン酸(5.0g、35.2mmol)を2−エチル−ヘキサノール(50ml)に懸濁する。触媒量のHSO(0.45ml)を添加し、反応混合物を18時間還流する。溶媒の大部分を蒸発させ、短いクロマトグラフィー分離(溶離液としてSiO、ヘキサン)を介して淡黄色の油(11.2g、30.6mmol、収率87パーセント)を得て、それは純粋なtrans,transムコン酸ジ−(2−エチル−ヘキシル)として同定される。
cis,cisおよびcis,transムコン酸ジメチルのtrans,transムコン酸ジメチルへの異性化
[実施例26]
【0147】
cis,cisムコン酸ジメチルからのtrans,transムコン酸ジメチルの合成
【0148】
【化48】

【0149】
cis,cisムコン酸ジメチル(0.60g、3.43mmol)および触媒量のヨウ素(30mg、3.3モルパーセント)のアセトニトリル(10ml)溶液を15時間加熱還流する。この反応は、実験室において環境光の存在下で実施する。回転蒸発器での全ての溶媒の除去の後に、高真空の適用、全てのヨウ素を除去するための容量比3/2の15mlのジエチルエーテルおよびヘキサンによる洗浄、ならびに高真空下での乾燥を実施し、それにより、オフホワイトの結晶性固形物(0.58g、3.41mmol、収率97パーセント)が生じ、純粋なtrans,transムコン酸ジメチルとして同定される。
[実施例27]
【0150】
cis,transムコン酸ジメチルからのtrans,transムコン酸ジメチルの合成
【0151】
【化49】

【0152】
cis,transムコン酸ジメチル(0.60g、3.53mmol)および触媒量のヨウ素(43mg、4.8モルパーセント)のアセトニトリル(10ml)溶液を25時間加熱還流する。この反応は、実験室において環境光の存在下で実施する。回転蒸発器での全ての溶媒の除去の後に、高真空の適用、全てのヨウ素を除去するための容量比3/2の15mlのジエチルエーテルおよびヘキサンによる洗浄、ならびに高真空下での乾燥を実施し、それにより、オフホワイトの結晶性固形物(0.60g、3.53mmol、収率100パーセント)が生じ、純粋なtrans,transムコン酸ジメチルとして同定される。
[実施例28]
【0153】
ムコン酸ジメチル異性体からのtrans,transムコン酸ジメチルの合成
【0154】
【化50】

【0155】
実施例21で得たcis,cisおよびcis,transムコン酸ジメチルの混合物(10.8g、63.5mmol)ならびに触媒量のI(300mg、1.9molパーセント)のメタノール(250ml)溶液を60時間加熱還流し、その時点で、TLCおよびGC−MSにより、完全な転換が確認される。0℃まで冷却すると、trans,transムコン酸ジメチルが沈殿する。それを濾過により採取し、氷冷メタノールで洗浄し、高真空下で乾燥させる(8.2g、48.2mmol、収率76パーセント)。この手順により得た物質は、前記の2つの手順により得た物質と同一である。
trans,transムコン酸およびtrans,transムコン酸ジメチルの反応
[実施例29]
【0156】
trans,transムコン酸ジメチルおよび無水マレイン酸の反応
【0157】
【化51】

【0158】
5mlの圧力管において、trans,transムコン酸ジメチル(1.0g、5.9mmol)および無水マレイン酸(1.7g、17.6mmol、3当量)を150℃まで1時間加熱する。冷却した反応混合物のH NMR分析により、約79パーセントの所望の付加物の存在が明らかとなる。
[実施例30]
【0159】
cis,cisムコン酸ジメチルと無水マレイン酸との間の反応
【0160】
【化52】

【0161】
cis,cisムコン酸ジメチル(0.1g、0.6mmol)および無水マレイン酸(173mg、1.8mmol、3当量)のデカヒドロナフタレン(2ml)溶液を150℃まで24時間加熱する。H NMR分析のために冷却した反応混合物を全てDMSO−dに溶解すると、約60パーセントの未反応のcis,cisムコン酸ジメチル、20パーセントの異性化trans,transムコン酸ジメチル、および20パーセントのtrans,transムコン酸ジメチルと無水マレイン酸との間のディールス・アルダー付加物の存在が示される。
[実施例31]
【0162】
cis,transムコン酸ジメチルと無水マレイン酸との間の反応
【0163】
【化53】

【0164】
cis,transムコン酸ジメチル(0.1g、0.6mmol)および無水マレイン酸(173mg、1.8mmol、3当量)のデカヒドロナフタレン(2ml)溶液を150℃まで24時間加熱する。H NMR分析のために冷却した反応混合物を全てDMSO−dに溶解すると、約69パーセントの未反応のcis,transムコン酸ジメチル、9パーセントの異性化trans,transムコン酸ジメチル、および22パーセントのtrans,transムコン酸ジメチルと無水マレイン酸との間の付加物の存在が示される。
[実施例32]
【0165】
trans,transムコン酸ジメチルとプロピオール酸メチルとの間の反応を介したトリメリット酸トリメチルの調製
【0166】
【化54】

【0167】
5mlの圧力管において、trans,transムコン酸ジメチル(1.0g、5.9mmol)のプロピオール酸メチル(2.5ml、29.4mmol、5当量)溶液を160℃まで19時間加熱する。冷却した反応溶液のH NMR分析により、未反応のtrans,transムコン酸ジメチルが残っていないことが明らかとなる。3つの物質がほぼ等しい量で存在していることが分かる。粗製反応混合物の反復カラムクロマトグラフィー(Si35、SF25〜40g、AnaLogixカラムおよび13パーセント酢酸エチル/ヘキサン定組成溶離液(isocratic eluent))、および単一の画分の分析により、3つの異なる反応生成物の同定が可能となる。最初に形成するジエン生成物の酸化により生じるトリメリット酸トリメチル(23パーセント)、アルキンのジエンへのキレトロピー付加(エンドオン)およびその後の酸化から生じるジメチル2−(2−メトキシ−2−オキソエチリデン)シクロペンタ−3,5−ジエン−1,3−ジカルボキシレート(29パーセント)、ならびにアルキンのエンのβ−炭素への作用、およびその後の、COの排除により再配置されるクムレンを形成するためのメタノール脱離から生じるメチル3−(2−メトキシ−2−オキソエチリデン)シクロペンタ−1,4−ジエンカルボキシレートのE/Z混合物(27パーセント)。cis,cisおよびcis,transムコン酸ジメチルによる同様の実験では、最初のtrans,transムコン酸ジメチルへの異性化およびその後の付加が原因で、trans,transムコン酸ジメチルに由来する生成物しか生じない。
[実施例33]
【0168】
trans,transムコン酸とアクリル酸との間のディールス・アルダー反応
【0169】
【化55】

【0170】
還流冷却器を備えた5ml丸底フラスコ中のtrans,transムコン酸(1.0g、7.0mmol)およびアクリル酸(0.96ml、14.0mmol、2.0当量)の撹拌混合物を140℃まで3時間加熱する。より多量の転換を達成するために、反応の間により多くのアクリル酸を添加する(2時間で1.0当量)。生成物の特徴付けを容易にするために、反応混合物をメタノール中で一夜エステル化する。粗製エステル化物のGC−MS分析により、トリメチルシクロヘキサ−5−エン−1,2,4−トリカルボキシレートの存在が示され、したがって、trans,transムコン酸とアクリル酸との間の反応を介したシクロヘキサ−5−エン−1,2,4−トリカルボン酸の形成が確認される。
[実施例34]
【0171】
トリメチルシクロ−5−エン−1,2,4−トリカルボキシレートの調製
【0172】
【化56】

【0173】
trans,transムコン酸ジメチル(1g、5.9mmol)、アクリル酸メチル(1.6ml、17.6mmol、3当量)およびヒドロキノン(65mg、0.59mmol、0.1当量)をm−キシレン(30ml)中で混合する。反応混合物を窒素下で72時間還流する。次いで、反応混合物を透明な無色のゲルになるまで濃縮し、AnaLogix BSR SimpliFlashシステム(ヘキサン/酢酸エチル、8:2)を使用して、それをカラムクロマトグラフィーにより精製する。所望の生成物の2つのジアステレオマーの混合物を透明で無色および無色の油としてとして収率61パーセント、0.9g、3.6mmolで単離する。
[実施例35]
【0174】
2−ブチル−1,4−ジメチルシクロ−5−エン−1,2,4−トリカルボキシレートの調製
【0175】
【化57】

【0176】
trans,transムコン酸ジメチル(1g、5.9mmol)をアクリル酸ブチル(0.85ml、5.9mmol、1.0当量)およびヒドロキノン(65mg、0.59mmol、0.1当量)と混合する。反応混合物を140℃まで1時間加熱する。1時間後、0.5当量のアクリル酸ブチル(0.42ml、2.9mmol)を混合物に添加し、それをさらに1時間加熱する。次いで、0.2当量のアクリル酸ブチル(0.17ml、1.2mmol)を反応混合物に添加し、それをもう1時間加熱する。合計で3時間後、反応混合物を室温まで冷却させる。過剰量のアクリル酸ブチルを蒸発させ、AnaLogix BSR SimpliFlashシステム(ヘキサン/酢酸エチル、8:2)を使用して、得られた残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製する。所望の生成物を、予期していたディールス・アルダー付加物の2つのジアステレオマーの混合物として収率81パーセントで得る(1.4g、4.8mmol、透明なゲル)。
[実施例36]
【0177】
トリブチルシクロ−5−エン−1,2,4−トリカルボキシレートの調製
【0178】
【化58】

【0179】
還流冷却器を備えた5ml丸底フラスコ中のtrans,transムコン酸ジ−n−ブチル(1.0g、3.9mmol)およびn−アクリル酸ブチル(0.85ml、5.9mmol、1.5当量)とヒドロキノン(0.1当量)との撹拌混合物を140℃まで4時間加熱する。より多量の転換を達成するために、反応の間により多くのn−アクリル酸ブチルを添加する(3時間で1.0当量)。冷却した反応混合物をカラムクロマトグラフィー(Si35、SF25〜40g、AnaLogixカラムおよび10パーセント酢酸エチル/ヘキサン定組成溶離液)により精製して、透明な淡黄色の油として、予期していた付加物の2つのジアステレオマーを得る(1.1g、3.0mmol、収率78パーセント)。
[実施例37]
【0180】
トリ−(2−エチル−ヘキシル)シクロヘキサ−5−エン−1,2,4−トリカルボキシレートの調製
【0181】
【化59】

【0182】
還流冷却器を備えた5ml丸底フラスコ中のtrans,transムコン酸ジ−(2−エチル−ヘキシル)(1.0g、2.7mmol)、2−エチル−ヘキシルアクリレート(1.1ml、5.4mmol、2.0当量)、およびヒドロキノン(30mg、0.27mmol、0.1当量)の撹拌混合物を140℃まで4時間加熱する。より多量の転換を達成するために、反応の間により多くの2−エチル−ヘキシルアクリレートを添加する(1hで2.0当量、3時間で1.0当量)。冷却した反応混合物をカラムクロマトグラフィー(Si35、SF25〜40g、AnaLogixカラム、勾配:100パーセントヘキサン〜20パーセント酢酸エチル/ヘキサン)により精製して、透明な淡黄色の油の形態の、付加物の2つのジアステレオマーを得る(0.72g、1.3mmol、収率49パーセント)。この反応をヒドロキノンの不存在下で実施すると、付加物の同じ2つのジアステレオマーが形成する。
[実施例38〜40]
【0183】
ジメチルシクロヘキサ−2−エン−1,4−ジカルボキシレートの調製
【0184】
【化60】

【0185】
Parr圧力反応器において、急速に撹拌したtrans,transムコン酸ジメチル(2.58g、15.2mmol)のm−キシレン(120ml)溶液を、エチレン雰囲気下(溶液をエチレンで飽和した後に23℃で260psi)、設定値温度150℃で(151〜168℃が観察された)24時間加熱する。ほぼ無色の冷却した反応溶液のH NMR分析により、ジメチルシクロヘキサ−2−エン−1,4−ジカルボキシレートへの約96パーセントの転換が明らかとなった。溶媒の除去により、白色の濁った油が生じた。その油をtert−ブチル−メチル−エーテルに溶解し、それを濾過することにより、沈殿した微量のtrans,transムコン酸ジメチルを分離して、溶媒の除去後に、98パーセント超の純粋な生成物(ほぼ無色の油)を得る。別のバッチをカラムクロマトグラフィー(Si35、SF25〜40g、AnaLogixカラムおよび13パーセント酢酸エチル/ヘキサン定組成溶離液)により精製して、分析試料を得る。ジメチルシクロヘキサ−2−エン−1,4−ジカルボキシレートのジアステレオマーをGCにより検出する。以下の表に示しているように、この反応は、より大きい規模で、さらには遊離trans,transムコン酸により(実施例41〜42)首尾よく実施することもできる。表3は、ムコン酸ジメチルの量、圧力(psi)、c(M)、溶媒、設定および反応温度、時間単位での反応時間および反応の結果を示している。実施例41および42では、trans,transムコン酸ジメチルの代わりにtrans,transムコン酸が出発原料である。
[実施例41および42]
【0186】
遊離trans,transムコン酸とエチレンとの間の反応
【0187】
【化61】

【0188】
Parr圧力反応器において、急速に撹拌した(155rpm)trans,transムコン酸(2.10g、14.7mmol)および水(120ml)の混合物を、エチレン雰囲気下(溶液をエチレンで飽和した後に23℃で270psi)、設定値温度150℃で3日間加熱する。冷却したParr反応器の開放後、橙色の固形物が黄色の溶液の底に存在している。黄色の溶液をデカントし、橙色の固形物を乾燥して(ペーパータオル)、0.85g(5.0mmol、収率34パーセント)を得る。H NMR分析により、それが互変異性化エチレン−ディールス・アルダー付加物であると同定される。黄色の溶液中にさらなる量の互変異性化物が存在していた。さらに、黄色の溶液は、少量の互変異性化されていない最初のディールス・アルダー付加物および分解された物質も含有していた。125℃で1日のその後の反応(実施例42)により、そのような低温では、反応が完成した時点でより多く(44パーセント)の互変異性化されていない最初のディールス・アルダー付加物が存在しており、さらに、13パーセントの互変異性化物が存在しており、41パーセントの未反応の出発原料が回収され、たった2パーセントの分解された物質が存在していることが示される。実施例38〜42の結果を表3に示している。
【0189】
【表3】

[実施例43〜47]
【0190】
ワンポット異性化およびディールス・アルダーおよびその後のエステル化
【0191】
【化62】

【0192】
Parr圧力反応器において、cis,cisムコン酸(8.6g、60.6mmol)およびI(114mg、0.7molパーセント)のジグリム(ジグリコールメチルエーテル、120ml、0.5M)撹拌懸濁液を、エチレン圧力下(23℃で270psi(1.86MPa))で200℃まで48時間加熱する。全ての溶媒を除去し、メタノール(200ml)および触媒量の濃HSO(0.2ml)を添加する。14時間の還流後、この溶液をGCにより分析して、存在しているジメチルシクロヘキサ−2−エン−1,4−ジカルボキシレート(13〜19パーセント)およびジメチルシクロヘキサ−1−エン−1,4−ジカルボキシレート(74〜76パーセント)の量を定量化する。溶媒の除去および蒸留により、清浄な生成物が生じる。結果を表4に示している。
【0193】
【表4】

[実施例48]
【0194】
より大規模での、trans,transムコン酸ジメチルからのジメチルシクロヘキサ−2−エン−1,4−ジカルボキシレートの合成
Parr圧力反応器において、trans,transムコン酸ジメチル(40.8g、240mmol)のジグリム(120ml、2.0M)撹拌懸濁液を、エチレン圧力下(23℃で270psi(1.86MPa))で165℃まで24時間加熱する。GCによる反応混合物の分析により、生成物(ジメチルシクロヘキサ−2−エン−1,4−ジカルボキシレート(75パーセント)およびジメチルシクロヘキサ−1−エン−1,4−ジカルボキシレート(1パーセント)が存在している)の定量化が可能となる。溶媒の除去および蒸留により、清浄な生成物が生じる。
[実施例49]
【0195】
trans,transムコン酸ジメチルへのワンステップcis,transムコン酸ジメチル異性化およびエチレンとの反応
【0196】
【化63】

【0197】
Parr反応器において、cis,transムコン酸ジメチル(9.80g、57.6mmol)、ヨウ素(73mg、0.29mmol、0.5molパーセント)、およびジオキサン(120ml、0.48M)の混合物を、エチレン圧力下で(pRT=270psi(1.86MPa))160℃まで24時間加熱する。室温まで冷却した後、薄黄色の濁った懸濁液が存在している。この懸濁液の試料から全ての溶媒を回転蒸発器で蒸発させると、黄色の固形物が懸濁した無色の油が現れる。この物質を全てジメチルスルホキシド(DMSO−d)に溶解し、H NMR分光法により分析すると、86パーセントのジメチルシクロヘキサ−2−エン−1,4−ジカルボキシレートが存在していることが分かる。
[実施例50]
【0198】
trans,transムコン酸へのワンステップのcis,transムコン酸異性化およびエチレンとの反応
【0199】
【化64】

【0200】
Parr反応器において、cis,transムコン酸(8.18g、57.6mmol)、I(293mg、1.15mmol、2.0モルパーセント)、およびTHF(120ml、0.48M)の混合物を、エチレン圧力下で(pRT=252psi(1.74MPa))160℃まで25時間加熱する。室温まで冷却した後、白色の固形物が薄黄色の溶液に懸濁していることが分かる。この溶液を濾過して沈殿したtrans,transムコン酸を除去し、全ての溶媒を回転蒸発器で蒸発させる。残渣を熱い酢酸エチル/ジオキサンに懸濁し、室温まで冷却した後、沈殿した固形物を濾過により除去し、濾液を蒸発乾固させて、シクロヘキサ−2−エン−1,4−ジカルボン酸(7.22g、42.4mmol、75パーセント)を得る。
テレフタル酸およびそのエステルへの酸化
[実施例51]
【0201】
trans,transムコン酸とエチレンとの間の反応生成物の酸化によるテレフタル酸の調製
【0202】
【化65】

【0203】
Parr圧力反応器において、実施例50の生成物(0.85g、5.0mmol)をHO(120ml、0.04M)に懸濁し、Pt/C(390mg、5パーセントPt/C、2モルパーセントPt)粉末を添加する。反応器を空気(液相の飽和後に23℃で240psi)で加圧し、その内容物を急速に撹拌しながら(155rpm)設定値温度150℃まで3日間加熱する。冷却したParr反応器の開放後、水性Pt/C懸濁液に部分的に没している白色の固形物がガラス反応器の表面に存在している。合わせた物質を濾過し、多量の熱いメタノールを使用して繰り返し洗浄して、濃縮乾固後、ほぼ白色の固形物(0.43g)を得る。H NMR分析により、55パーセントのテレフタル酸、40パーセントのtrans−、および5パーセントのcis−シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸の存在が示される。
[実施例52]
【0204】
テレフタル酸ジメチルの調製−常圧の空気による酸化
【0205】
【化66】

【0206】
触媒量の炭素上の白金粉末(200mg、5パーセントPt/C、10mg Pt、4モルパーセント)を含有する、ジメチルシクロヘキサ−2−エン−1,4−ジカルボキシレート(0.25g、1.26mmol)の酢酸(20ml)還流溶液に空気を87時間吹き込む。冷却した反応懸濁液のH NMR分析により、所望の酸化生成物への約69パーセントの転換が明らかとなる。溶媒の濾過および除去により、ほぼ白色の固形物(0.24g)を得る。カラムクロマトグラフィー(Si35、SF40〜80g、AnaLogixカラムおよび13パーセント酢酸エチル/ヘキサン定組成溶離液)による精製により、テレフタル酸ジメチルの分析試料を得る。
[実施例53]
【0207】
テレフタル酸ジメチルの調製−Parr反応器における空気による酸化
【0208】
【化67】

【0209】
Parr圧力反応器において、ジメチルシクロヘキサ−2−エン−1,4−ジカルボキシレート(2.42g、12.2mmol)をシクロヘキサン(120ml、0.10M)に溶解し、触媒量の炭素上の白金(476mg、5パーセントPt/C、1モルパーセント白金)粉末を添加する。反応器を空気で加圧し(溶液の飽和後に23℃で240psi(1.65MPa))、その内容物を急速に撹拌しながら(160rpm)設定値温度150℃で3日間加熱する。冷却したParr反応器の開放後、炭素上の白金黒(Pt/C)のほぼ無色の溶液中の懸濁液が存在している。全ての溶媒を懸濁液の試料から除去し、H NMR分析のために全残渣をCDClに溶解する。それぞれの共鳴の積分により、約23パーセントの未反応のジメチルシクロヘキサ−2−エン−1,4−ジカルボキシレート出発原料、約59パーセントのテレフタル酸ジメチル酸化生成物、および約18パーセントのジメチルシクロヘキサン−1,4−ジカルボキシレート不均化副産物(disproportionation byproduct)の存在が示される。カラムクロマトグラフィー(Si35、SF40〜150g、AnaLogixカラムおよび10パーセント酢酸エチル/ヘキサン定組成溶離液)により、純粋なテレフタル酸ジメチルを得る。
[実施例54]
【0210】
trans,transムコン酸ジメチルとエチレンとの反応および同じ溶媒中での脱水素化
【0211】
【化68】

【0212】
Parr反応器において、trans,transムコン酸ジメチル(6.13g、36.0mmol)およびジグリム(120ml、0.30M)の混合物を、エチレン圧力下で(pRT=259psi(1.79MPa))165℃まで24時間加熱する。室温まで冷却した後、メスフラスコ中でジグリムを使用して薄黄色の透明な溶液を200mlまで希釈し、磁気撹拌子を備えた丸底フラスコに移し、室温で炭素上のパラジウム(Pd/C)触媒を添加する(356mgのJohnson−Mattheyの5パーセントPd/C #6、0.2モルパーセント)。該フラスコは、還流冷却器、フリット付ガス拡散管(fritted gas dispersion tube)、および内部温度プローブを備えている。N流量(190ml/min)および撹拌(190rpm)下で混合物を加熱還流する(T観察されたmax=169℃)一方、適切な間隔(t=0.0、0.25、0.5、1.0、2.0、4.0、8.0h)で試料を採取して、生じる反応の進行をモニターした。いくらかの物質がその熱力学的により安定な異性体(ジメチルシクロヘキサ−1−エン−1,4−ジカルボキシレート,□,1−エン)に互変異性化されると同時に、ジメチルシクロヘキサ−2−エン−1,4−ジカルボキシレート,□,2−エンの急速な(t≦1h)消失が観察され、一方、所望の酸化/脱水素化/芳香族化生成物ジメチルテレフタレート(DMT)およびいくらかの還元物質(ジメチルシクロヘキサン−1,4−ジカルボキシレートCHa)も形成する。8時間の反応時間後、77パーセントのDMT、17パーセントのシクロヘキサン、および5パーセントの互変異性体が存在している。以下の図は、様々な時間間隔での物質の濃度を示している。
【0213】


[実施例55〜63]
【0214】
テレフタル酸ジメチル(DMT)の合成−バッチ反応
【0215】
【化69】

【0216】
還流冷却器、フリット付ガス拡散管、および内部Tプローブを備えたフラスコにおいて、2−エンおよび1−エン互変異性体の両方の溶液が出発原料であり、不均一系触媒、担体上のパラジウムを含有するジメチルシクロヘキセン−1,4−カルボキシレートの溶液を、N流量(190ml/min)および撹拌(190rpm)下で加熱還流する。適切な間隔(t=0.0、0.25、0.5、1.0、2.0、4.0、8.0時間)で試料を採取して、生じる反応の進行をモニターする。触媒を除去するための濾過、その後の溶媒蒸発、およびメタノールからの残りの残渣の再結晶により、清浄なテレフタル酸ジメチルが生じる。結果を表5に示している。
【0217】
【表5】

【0218】
Davisilはマグネシウムシリカゲルである。Etジグリムはジエチルジグリコールエーテルである。ミクロンは平均粒径を指す。
[実施例64]
【0219】
テレフタル酸ジメチルのテレフタル酸への加水分解。参照により本明細書に組み込まれているUS-4,302,595に従って、Parr圧力反応器においてテレフタル酸ジメチルのHO懸濁液を250℃まで4時間加熱すると、テレフタル酸への加水分解が生じる。
[実施例66および67]
【0220】
ジメチルシクロヘキサン−1,4−ジカルボキシレートの高収率合成
【0221】
【化70】

【0222】
ジメチルシクロヘキサ−2−エン−1,4−ジカルボキシレートおよびジメチルシクロヘキサ−1−エン−1,4−ジカルボキシレートの溶液を、室温で、バルーン圧力下でPd/C触媒上で水素化する。溶媒として塩化メチレンを使用する場合、主に2−エン互変異性体が還元され、一方、1−エン互変異性体の大部分は未反応のままである。溶媒としてエタノールを使用する場合、両方の互変異性体が還元される。
置換ディールス・アルダー生成物およびテレフタレート
[実施例68]
【0223】
ジメチル2−クロロ−シクロヘキセン−1,4−ジカルボキシレート、ジメチルクロロ−テレフタレート、およびジメチル2−クロロ−シクロヘキサン−1,4−ジカルボキシレート
【0224】
【化71】

【0225】
Parr圧力反応器において、trans,transムコン酸ジメチル(6.1g、36mmol)のジメチルジプロピレングリコール(120ml、0.3M)撹拌懸濁液を、塩化ビニル圧力下(23℃で18psi(0.124MPa))で165℃まで48時間加熱する。室温まで冷却した後、メスフラスコにおいて同じ溶媒を使用して反応混合物を200mlまで希釈し、磁気撹拌子を備えた丸底フラスコに移し、室温でPd/C触媒を添加する(360mgのJohnson−Mattheyの5パーセントPd/C #6、0.2molパーセント)。該フラスコは、還流冷却器、フリット付ガス拡散管、および内部Tプローブを備えている。N流量(190ml/min)および撹拌(190rpm)下で混合物を加熱還流する一方、試料を適切な間隔(t=0.0、0.25、0.5、1.0、2.0、4.0、8.0h)で採取して、生じる反応の進行をモニターする。8時間の反応時間後、ジメチルクロロ−テレフタレートが存在している。いくらかの物質はC−Cl結合の切断も受け、ジメチル2−クロロ−シクロヘキサン−1,4−ジカルボキシレートも形成する。
[実施例69]
【0226】
ジメチル2−メチル−シクロヘキセン−1,4−ジカルボキシレート、ジメチルメチル−テレフタレート、およびジメチル2−メチル−シクロヘキサン−1,4−ジカルボキシレート
【0227】
【化72】

【0228】
Parr圧力反応器において、trans,transムコン酸ジメチル(6.1g、36mmol)のジグリム(120ml、0.3M)撹拌懸濁液を、プロピレン圧力下(23℃で119psi(.0820MPa))で165℃まで48時間加熱する。室温まで冷却した後、反応混合物をフラスコに移し、濃縮する(0.5M)。室温でPd/C触媒を添加する(0.3molパーセントのJohnson−Mattheyの5パーセントPd/C #6)。該フラスコは、還流冷却器、フリット付ガス拡散管、および内部温度プローブを備えている。N流量(190ml/min)および撹拌(190rpm)下で混合物を27時間加熱還流し、それによりジメチルメチル−テレフタレートが形成する。いくらかのジメチル2−メチル−シクロヘキサン−1,4−ジカルボキシレートも生じる。
[実施例70]
【0229】
トリメチルシクロヘキセン−1,2,4−トリカルボキシレート、トリメリット酸トリメチル、およびトリメチルシクロヘキサン−1,2,4−トリカルボキシレート
【0230】
【化73】

【0231】
75mlの封管において、trans,transムコン酸ジメチル(10.0g、58.8mmol)、2当量のアクリル酸メチル(10.6ml、117.6mmol)、中性のAl(300mgのAldrich 199974、3質量パーセント)、およびtert−ブチルカテコール(25mg、0.2molパーセント)のジグリム(20ml、2.9M)撹拌懸濁液を150℃まで24時間加熱する。室温まで冷却した後、反応混合物を濾過し、フラスコに移し、濃縮する(0.5M)。室温でPd/C触媒を添加する(856mg(0.3molパーセント)のJohnson−Mattheyの5パーセントPd/C #6)。該フラスコは、還流冷却器、フリット付ガス拡散管、および内部Tプローブを備えている。N流量(190ml/min)および撹拌(190rpm)下で混合物を27時間加熱還流し、それによりトリメリット酸トリメチル(2ステップにわたって46パーセント)が形成する。いくらかのトリメチルシクロヘキサン−1,2,4−トリカルボキシレートも生じる。
[実施例71]
【0232】
ジメチル2−フェニル−シクロヘキセン−1,4−ジカルボキシレート、ジメチルフェニル−テレフタレート、およびジメチル2−フェニル−シクロヘキサン−1,4−ジカルボキシレート
【0233】
【化74】

【0234】
75mlの封管において、trans,transムコン酸ジメチル(10.0g、58.8mmol)、2当量のスチレン(13.5ml、117.6mmol)、中性のAl(300mgのAldrich 199974、3質量パーセント)、およびtert−ブチルカテコール(25mg、0.2molパーセント)のジグリム(20ml、2.9M)撹拌懸濁液を150℃まで24時間加熱する。室温まで冷却した後、反応混合物を濾過し、フラスコに移し、濃縮する。残渣をトリグリム(0.5M)に再溶解する。室温でPd/Al触媒を添加する(636mg(0.5molパーセント)のJohnson−Mattheyの5パーセントPd/Al #12)。該フラスコは、還流冷却器、フリット付ガス拡散管、および内部温度プローブを備えている。N流量(190ml/min)および撹拌(190rpm)下で混合物を63時間加熱還流し、それによりジメチルフェニル−テレフタレートが形成する。いくらかのジメチル2−フェニル−シクロヘキサン−1,4−ジカルボキシレートも生じる。
[実施例72]
【0235】
cis,transムコン酸のtrans,transムコン酸への熱異性化
【0236】
【化75】

【0237】
cis,transムコン酸(5.11g、36.0mmol)およびメタノール(200ml、0.18M)の混合物を加熱還流する。適切な間隔(t=0、2、4、24、48、72、96、168時間)で試料をHPLCにより分析して、存在しているcis,transムコン酸およびtrans,transムコン酸の量を求める。168時間の反応時間後、5.1パーセントのtrans,transムコン酸が存在し、残りの物質が未反応のcis,transムコン酸であることが分かる。
[実施例73]
【0238】
cis,transムコン酸のtrans,transムコン酸へのPd/C触媒異性化
【0239】
【化76】

【0240】
cis,transムコン酸(5.11g、36.0mmol)、Pd/C(511mgの5パーセントPd/C、10質量パーセント)、およびメタノール(200ml、0.18M)の混合物を加熱還流する。適切な間隔(t=0、2、4、24、48、72、96、168時間)で試料をHPLCにより分析して、存在しているcis,transムコン酸およびtrans,transムコン酸の量を求める。168時間の反応時間後、22.7パーセントのtrans,transムコン酸が存在し、残りの物質が未反応のcis,transムコン酸であることが分かる。
トリメリット酸のエステルへの酸化
[実施例74]
【0241】
トリメリット酸トリメチルの調製
【0242】
【化77】

【0243】
トリメチルシクロヘキサ−5−エン−1,2,4−トリカルボキシレート(200mg、0.78mmol)を、m−キシレン(30ml)中で305mgの5重量パーセントの炭素担体上の白金と混合する。還流装置を4日間空気に曝しながら反応混合物を還流する。次いで、残留する炭素上の白金を濾過して取り除き、濾液を透明な無色のゲルになるまで濃縮する。所望の生成物を収率65パーセントで得る。収率は、内部標準としてドデカンを使用してGC/MSにより求める。
[実施例75]
【0244】
2−ブチル−1,4−ジメチルベンゼン−1,2,4−トリカルボキシレートの調製
【0245】
トリ−n−ブチルシクロヘキサ−5−エン−1,2,4−トリカルボキシレート(500mg、1.7mmol)を、m−キシレン(30ml)中で5重量パーセントの炭素担体上の白金(663mg)と混合する。還流装置を4日間空気に曝しながら反応混合物を還流する。次いで、残留する炭素担体上の白金を濾過して取り除き、濾液を透明な無色のゲルになるまで濃縮する。AnaLogix BSR SimpliFlashシステム(ヘキサン/酢酸エチル、9:1)を使用して、得られた残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製する。出発原料と所望の生成物との間の極性が非常に類似しているため、それらを完全に分離することはできない。収率を求めるために、2−ブチル−1,4−ジメチルベンゼン−1,2,4−トリカルボキシレートをエステル交換してトリメリット酸トリメチルを形成する。エステル交換は完結せず、GCにより求めた収率は48パーセントである。
シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸のエステルへの還元
[実施例76]
【0246】
トリメチルシクロヘキサン−1,2,4−トリカルボキシレートの調製
【0247】
【化78】

【0248】
触媒量の炭素上のパラジウム(150mg、5パーセントPd/C、7.5mg Pd、4モルパーセント)を含有するトリメチルシクロヘキサ−5−エン−1,2,4−トリカルボキシレート(0.50g、1.9mmol)の塩化メチレン(15ml)溶液を、室温で、水素ガスのバルーン圧力下で2時間撹拌し、その時点で、GC−MS分析により、完全な転換が示される。溶媒の濾過および除去により、透明な無色のゲルとしてトリメチルシクロヘキサン−1,2,4−トリカルボキシレートが生じる(0.42g、1.6mmol、収率85パーセント)。
[実施例77]
【0249】
水中でのcis,cis−ムコン酸のcis,trans−ムコン酸への異性化
【0250】
【化79】

【0251】
cis,cis−ムコン酸(265g)を水(2L)に懸濁し、この溶液のpHを10M NaOH(250ml)で5.1に調整する。混合物を90℃で2時間加熱する。異性化の進行をHPLCによりモニターする。90℃での加熱の2時間後、混合物を木炭(20g)で30分間処理し、熱い溶液をCeliteの薄いベッドを介して濾過する。この溶液を濃硫酸(50ml)でpH2に調整し、氷浴中で0℃まで冷却させる。沈殿物を濾過により回収し、減圧下で一夜乾燥して、淡黄色の固形物として71gのcis,trans−ムコン酸を得る。濾液を600mlまで濃縮し、0℃で一夜インキュベートさせる。より多くの沈殿物が観察され、それを濾過し、乾燥して、追加の152gのcis,trans−ムコン酸を得て、84パーセントという全収率が達成される。
[実施例78]
【0252】
メタノール中でのcis,trans−ムコン酸のtrans,trans−ムコン酸への異性化
【0253】
【化80】

【0254】
cis,trans−ムコン酸(105mg、0.739mmol)を室温でメタノール(10mL)に溶解し、ヨウ素の結晶(26mg、0.102mmol)を添加する。反応混合物を室温で24時間撹拌させる。沈殿物を濾過し、氷冷アセトニトリルで洗浄し、減圧下で乾燥して65mgのtrans,trans−ムコン酸、収率62パーセントを得る。
[実施例79]
【0255】
エタノール中でのcis,trans−ムコン酸のtrans,trans−ムコン酸への異性化
【0256】
【化81】

【0257】
cis,trans−ムコン酸(105mg、0.739mmol)を室温でエタノール(10mL)に溶解し、ヨウ素の結晶(13mg、0.05mmol)を添加する。反応混合物を室温で24時間撹拌させる。沈殿物を濾過し、アセトニトリルで洗浄し、減圧下で乾燥して70mgのtrans,trans−ムコン酸、収率67パーセントを得る。
[実施例80]
【0258】
n−プロパノール中でのcis,trans−ムコン酸のtrans,trans−ムコン酸への異性化
【0259】
【化82】

【0260】
cis,trans−ムコン酸(103mg、0.725mmol)を室温でn−プロパノール(10mL)に溶解し、ヨウ素の結晶(10mg、0.04mmol)を添加する。反応混合物を室温で24時間撹拌させる。沈殿物を濾過し、アセトニトリルで洗浄し、減圧下で乾燥して75mgのtrans,trans−ムコン酸、収率73パーセントを得る。
[実施例81]
【0261】
n−ブタノール中でのcis,trans−ムコン酸のtrans,trans−ムコン酸への異性化
【0262】
【化83】

【0263】
cis,trans−ムコン酸(105mg、0.739mmol)を室温でn−ブタノール(10mL)に溶解し、ヨウ素の結晶(17mg、0.067mmol)を添加する。反応混合物を室温で24時間撹拌させる。沈殿物を濾過し、氷冷アセトニトリルで洗浄し、減圧下で乾燥して80mgのtrans,trans−ムコン酸、収率76パーセントを得る。
[実施例82]
【0264】
アセトン中でのcis,trans−ムコン酸のtrans,trans−ムコン酸への異性化
【0265】
【化84】

【0266】
cis,trans−ムコン酸(109mg、0.767mmol)を室温でアセトン(10mL)に溶解し、ヨウ素の結晶(13mg、0.05mmol)を添加した。反応混合物を室温で24時間撹拌させる。沈殿物を濾過し、氷冷アセトニトリルで洗浄し、減圧下で乾燥して15mgのtrans,trans−ムコン酸、収率13パーセントを得る。
[実施例83]
【0267】
酢酸エチル中でのcis,trans−ムコン酸のtrans,trans−ムコン酸への異性化
【0268】
【化85】

【0269】
cis,trans−ムコン酸(103mg、0.767mmol)を室温で酢酸エチル(10ml)に溶解し、ヨウ素の結晶(27mg、0.106mmol)を添加する。反応混合物を室温で24時間撹拌させる。沈殿物を濾過し、氷冷アセトニトリルで洗浄し、減圧下で乾燥して60mgのtrans,trans−ムコン酸、収率58パーセントを得る。
[実施例84]
【0270】
エチルエーテル中でのcis,trans−ムコン酸のtrans,trans−ムコン酸への異性化
【0271】
【化86】

【0272】
cis,trans−ムコン酸(119mg、0.838mmol)を室温でエチルエーテル(10ml)に溶解し、ヨウ素の結晶(7.2mg、0.028mmol)を添加する。反応混合物を室温で24時間撹拌させる。沈殿物を濾過し、氷冷アセトニトリルで洗浄し、減圧下で乾燥して100mgのtrans,trans−ムコン酸、収率84パーセントを得る。
[実施例85]
【0273】
テトラヒドロフラン中でのcis,trans−ムコン酸のtrans,trans−ムコン酸への異性化
【0274】
【化87】

【0275】
cis,trans−ムコン酸(38.3g、269.7mmol)を室温でTHF(400ml)に溶解し、ヨウ素の結晶(247mg、0.972mmol)を添加する。反応混合物を室温で24時間撹拌させる。濾過により沈殿物を得て、氷冷テトラヒドロフラン(2×)で洗浄し、減圧下で乾燥して33.2g(収率86パーセント)のtrans,trans−ムコン酸を得る。
[実施例86〜90]
【0276】
cis,trans−ムコン酸ジメチルのtrans,trans−ムコン酸ジメチルへの異性化
【0277】
【化88】

【0278】
cis,trans−ムコン酸ジメチルのtrans,trans−ムコン酸ジメチルへの異性化に関する複数の実験を以下の手順に従って実施する。cis,trans−ムコン酸ジメチルをテトラヒドロフラン(50ml)に溶解し、撹拌する。次いで、ヨウ素を添加し、異性化の進行をHPLCによりモニターする。沈殿物、trans,trans−ムコン酸ジメチルを濾過により得て、氷冷テトラヒドロフランで洗浄する。濾液をHPLCにより分析して転換の合計収率を求める。表6は、この反応に関して得た結果をまとめたものである。
【0279】
【表6】

[実施例91]
【0280】
cis,trans−ムコン酸ジメチルの合成
【0281】
【化89】

【0282】
cis,trans−ムコン酸(42.6g、0.30mol)をメタノール(1500ml)に溶解し、そこに濃硫酸(2ml、0.037mol)を添加する。得られた溶液を24時間還流し、反応の進行をHPLCによりモニターする。cis,trans−ムコン酸ジメチルの転換が完了していることをHPLCにより検出すると、反応を室温まで冷却し、白色の固形物が析出(crash out)し始めるまで濃縮し、次いで、反応混合物を0℃まで一夜冷却する。cis,trans−ムコン酸ジメチルを濾過により得て、冷たいテトラヒドロフランで洗浄し、減圧下で乾燥して95パーセントという合計収率をもたらす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化90】

[式中、
は、独立して、各出現において、水素、1もしくは複数のヘテロ原子を場合により含有するヒドロカルビル基またはカチオン(ヒドロカルビル基またはカチオンはシクロヘキセン化合物の形成に干渉しない)であり、
は、独立して、各出現において、水素またはヘテロ原子含有官能基を場合により含有するヒドロカルビル基(ヒドロカルビル基はシクロヘキセン化合物の形成に干渉しない)であり、
は、独立して、各出現において、水素またはヘテロ原子含有官能基を場合により含有するヒドロカルビル基(ヒドロカルビル基はシクロヘキセン化合物の形成に干渉しない)であり、
ただし、RおよびRを組み合わせてヘテロ原子を含有し得る環状環を形成することができ、
Zは、独立して、各出現において、アニオン、酸素、窒素、硫黄、ニトリルまたはハロゲンであり、
bは、独立して、各出現において、0、1または2であり、ただし、bは、Zがアニオン、ハロゲンまたはニトリルである場合は0であり、Zが酸素または硫黄である場合は1であり、Zが窒素である場合は2である。]
のうちの1つの化合物を含む組成物であって、
前記化合物が検出可能な微量の炭素14を含有し、6個以上の炭素原子が再生可能資源に由来する、組成物。
【請求項2】
前記化合物が最大で約1兆分の1の割合の量で炭素14を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
式:
【化91】

[式中、
は、独立して、各出現において、水素、ヘテロ原子含有官能基を場合により含有するヒドロカルビル基(ヒドロカルビル基はシクロヘキセン化合物の形成に干渉しない)であり、
およびRは、独立して、各出現において、水素、ハロゲン、ヘテロ原子含有官能基を場合により含有するアルキル基(アルキル基はシクロヘキセン化合物の形成に干渉しない)である。]
のうちの1つに相当する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
が、独立して、各出現において、C1〜10アルキル基であり、
およびRが、独立して、各出現において、水素、ハロゲンまたは1もしくは複数のヘテロ原子を含有し得るC1〜8アルキルであり、RおよびRの少なくとも一方は水素である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
が、独立して、各出現において、クロロ、ブロモ、C1〜8アルキル、フェニル、またはカルボキシオキシC1〜8アルキルであり、Rが水素である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
が、独立して、各出現において、クロロ、メチル、エチルまたはフェニルであり、Rが水素である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
式:
【化92】

[式中、
は、独立して、各出現において、水素、ヘテロ原子含有官能基を場合により含有するヒドロカルビル基であり、
は、独立して、各出現において、水素、1または複数のヘテロ原子を含有し得るアルキル、アルカリール、アリール、カルボキシオキシアルキルであり、
は、独立して、各出現において、水素、ヘテロ原子含有官能基を場合により含有するヒドロカルビル基であり、
は、独立して、各出現において、ヘテロ原子含有官能基を場合により含有するヒドロカルビル基であり、
aは、独立して、各出現において、0〜5の整数である。]
のうちの1つに相当する、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
1もしくは複数のムコン酸ジエンまたはそのカルボキシレート誘導体および1または複数のジエノフィルが1位および4位にカルボキシレート誘導体を有するシクロヘキセン環を含有する1または複数の化合物を形成するような条件下で、1もしくは複数のムコン酸ジエンまたはそのカルボキシレート誘導体を1または複数のジエノフィルと接触させるステップを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物の調製方法。
【請求項9】
1もしくは複数のムコン酸またはカルボキシレート誘導体を1または複数のジエノフィルと接触させる温度が約130℃〜約170℃である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
1もしくは複数のムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体がtrans、trans異性体配置である、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
ムコン酸の1または複数のカルボン酸エステルを1または複数のジエノフィルと接触させる、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
1または複数のジエノフィルが、1もしくは複数の不飽和環状化合物、1もしくは複数の不飽和エステルまたは少なくとも1つの不飽和置換基を有する芳香族化合物を含む、請求項8から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
1または複数のジエノフィルを1もしくは複数のtrans,transムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体と反応させ、1もしくは複数のムコン酸またはそのカルボキシレー誘導体が、1もしくは複数のcis,cisムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体ならびにcis,transムコン酸およびそのカルボキシレート誘導体のtrans,transムコン酸およびそのカルボキシレート誘導体への異性化ステップを含むプロセスにより調製される、請求項8から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
1もしくは複数のムコン酸、またはそのカルボン酸エステルが、1または複数のcis,transおよびcis,cisムコン酸から調製され、そのプロセスが、1もしくは複数のcis,cisおよびcis,transムコン酸またはそのカルボン酸エステルを、cis,cisおよび/またはcis,transムコン酸、あるいはそのカルボン酸エステルが、trans,transムコン酸またはそのカルボン酸エステルに異性化するような期間、溶媒中で、1もしくは複数の異性化触媒、紫外線源またはそれらの両方と接触させるステップを含む、請求項8から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ムコン酸の1または複数のtrans,transカルボン酸エステルを1または複数のジエノフィルと反応させ、ムコン酸のtrans,transエステルが、
a)cis,cisムコン酸がtrans,transムコン酸に異性化するような期間、溶媒中で、cis,cisムコン酸および1もしくは複数の異性化触媒、紫外線源またはそれらの両方を接触させるステップと、
b)trans,transムコン酸を回収するステップと、
c)1または複数のtrans,transムコン酸ジアルキルが形成する条件下、1または複数の強酸の存在下で、trans,transムコン酸を1または複数のエステル化剤と接触させるステップと
により調製される、請求項8から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体が、式:
【化93】

のうちの1つに相当し、
ジエノフィルが、式:
【化94】

に相当し、
シルコヘキセン化合物が、式:
【化95】

のうちの1つに相当する、請求項8から13のいずれか一項に記載の方法
[式中、
ジエノフィルは、1または複数の二重または三重結合を含有し、
は、独立して、各出現において、水素またはヘテロ原子含有官能基を場合により含有するヒドロカルビル基(ヒドロカルビル基はシクロヘキセン化合物の形成に干渉しない)であり、
は、独立して、各出現において、水素、ハロゲンまたはヘテロ原子含有官能基を場合により含有するヒドロカルビル基(ヒドロカルビル基はシクロヘキセン化合物の形成に干渉しない)であり、
は、独立して、各出現において、水素、ハロゲンまたはヘテロ原子含有官能基を場合により含有するヒドロカルビル基(ヒドロカルビル基はシクロヘキセン化合物の形成に干渉しない)であり、
ただし、RおよびRを組み合わせてヘテロ原子を含有し得る環状環を形成することができ、
Zは、独立して、各出現において、アニオン、酸素、窒素、硫黄、ハロゲンまたはニトリルであり、
bは、独立して、各出現において、0、1または2であり、ただし、bは、Zがアニオン、ニトリルまたはハロゲンである場合は0であり、Zが酸素または硫黄である場合は1であり、Zが窒素である場合は2である。]。
【請求項17】
1もしくは複数のムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体およびアルケンが1位および4位にカルボキシレート誘導体を有するシクロヘキセン環を含有する1または複数の化合物を形成するような条件下、高温で、1もしくは複数のムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体を1または複数のアルケンと接触させるステップを含む、請求項8から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
1または複数のアルケンが、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、またはそれらの組合せを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
1もしくは複数のムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体およびアクリル酸またはそれらのエステルが、1位、2位および4位でカルボキシレートが置換しているシクロヘキセン環を含有する1または複数の化合物を形成するような条件下、高温で、1もしくは複数のムコン酸またはそのカルボキシレート誘導体を1もしくは複数のアクリル酸またはそれらのエステルを含む1または複数のジエノフィルと接触させるステップを含む、請求項8から16のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−530144(P2012−530144A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516231(P2012−516231)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/038783
【国際公開番号】WO2010/148063
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(511289736)アミリス, インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】