説明

シクロペンタジエニル−フルオレニル配位子をベースにした第III族の架橋メタロセン

本発明は式(Flu−R”−Cp)M(η−CR’)(エーテル)(I)を有するメタロセン触媒成分に関する。但し上式中Cpは置換基をもったまたはもたないシクロペンタジエニル、Fluは置換基をもったまたはもたないフルオレニル、R”は成分に立体的な剛性を与えるためのCpとFluとの間の構造的な架橋、Mは周期律表の第III族の金属であり、各R’は同一または相異なり水素、または炭素数1〜20のヒドロカルビルであり、nは0、1または2である。さらに該触媒成分の製造法、並びに極性または非極性の単量体の制御された重合に対する該触媒成分の使用が開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は周期律表の第III族の金属を含むシクロペンタジエニル−フルオレニル成分をベースにしたメタロセン触媒系の分野に関する.また本発明はこのような触媒系をベースにした制御された重合法に関する.
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、式
CMe(Cp−Flu)MQ
の第IV族のメタロセンはプロピレンの立体特異性および立体選択性の重合に効果的な前駆体であることが記載されている。但しここでCp−Fluは置換基をもちまたはもたないシクロペンタジエニル−フルオレニル配位子であり、CMeはシクロペンタジエニルとフルオレニルとの間の架橋であり、Qは炭素原子数1〜20の炭化水素またはハロゲンである。アルモキサンで活性化するとこれらの化合物は非常に高い活性をもって高分子量のシンジオタクティック・ポリプロピレンを生じる。
【0003】
他方、シクロペンタジエニル部分で安定化された或る種のランタニドのアルキルおよび水素化物錯体は、α−オレフィン(エチレン)を重合させることができる単一成分触媒として作用し、或いはまた(メタ)アクリレートのような極性をもった単量体に対する立体特異性をもった重合を開始させることができることが約20年に亙って知られている。しかし或る種のランタニド錯体は活性をもっているのに他のものは完全に反応性をもっていないので、系統的な挙動は分かっていない。これらのことは例えば非特許文献2〜6に記載されている。
【0004】
非特許文献7にはイソプロピリデン架橋CpH−CMe−FluH配位子を用いるホモレプティック(homoleptic)なアミドであるLn[N(SiMeのアミン脱離反応の研究が記載されている。但し上記式でLnはイットリウム、ランタンまたはネオジムである。得られる錯体は、マグネシウムまたはアルミニウムのアルキル化合物で賦活しても、エチレンの重合には不活性であることが示されている。
【0005】
非特許文献8および9には、ジフェニル−炭素架橋をもつCp−CPh−Flu配位子の二リチウム塩(dilithiate)にした化学種を用いてLnCl(THF)の塩の複分解反応を行なうと、構造的に特徴をもったイオン錯体[(η,η−Cp−CPh−Flu)LnCl[Li(THF)が好収率で得られることが示されている。
【0006】
同じグループによる他の非特許文献10には、[(η,η−Cp−CPh−Flu)LuCI[Li(THF)をLiN(SiMeで処理すると、約13%の低収率で中性の錯体(η,η−Cp−CPh−Flu)LuN(SiMeが得られ、これはカプロラクタムおよびメタクリル酸メチル(MMA)の重合を開始させることが見出だされたと記載されている。ポリメタクリル酸メチル(PMMA)は室温において低い活性で生成し、約60%のrrダイアッドを含んでいた。
【0007】
同じグループによる他の試み(非特許文献11および12)、即ちこのような化学反応を拡張し、例えばLaまたはNdのようなランタニド金属を「燃やす(light、活性化させる)」試みは失敗に終わっている。構造的な特徴をもった或る種の誘導体[(Cp−CPh−Flu)Ln((μ−H)BH)[Li(THF)(ここでLnはLaまたはNd)の合成が成功したのは、三座配位のBH陰イオンをランタニド原子でT字架橋結合させて立体的に安定化させたことによるものである。
【0008】
特許文献1には、YCI(THF)とLi[Cp−CMe−(2,7−tBu−Flu)]との間で塩の複分解を行なった後LiCH(SiMeを用いて金属交換を行なう工程を含む二段階、一ポット法により中性のカルビル錯体{η,η−CpCMe−(2,7−tBu−Flu)}LnCH(SiMeを製造する方法が記載されている。この錯体はH NMRによって同定されているだけであるが、0℃においてMMAのリビング重合を開始させ、重量平均分子量分布Mが512,000、多分散性指数Dが1.66で、78%のrrダイアッドを含む重合体を与えると主張されている。多分散性指数Dは重量平均分子量対数平均分子量の比M/Mで定義される。
【0009】
従って、シクロペンタジエニル−フルオレニル配位子と第III族の金属とをベースにした架橋メタロセン成分を好収率で製造し、またそれから良好な重合能力をもった触媒系を製造する統合された方法は存在していない。
【0010】
これに加えて、周期律表の第IV族の金属をベースにした全ての公知メタロセン触媒はコストが高く危険な活性化剤を必要とし、極性をもった単量体の重合には適していない。
【特許文献1】JP−A−07258319。
【非特許文献1】A.Razavi,J.Ferrara,J.Organomet.Chem.435,299,1992。
【非特許文献2】D.G.H.Ballard,A.Courtis,J.Holton,J.McMeeking,R.Pearce,Chem.Commun.1978,994。
【非特許文献3】P.L.Watson,G.W.Parshall,Ace.Chem.Res.1985,18,51。
【非特許文献4】G.Jeske,H.Lauke,H.Mauermann,P.N.Swepston,H.Schumann,T.J.Marks,J.Am.Chem.Soc.1985,107,809。
【非特許文献5】B.J.Burger,M.E.Thompson,D.W.Cotter,J.E.Bercaw,J.Am.Chem.Soc.1990,112,1566。
【非特許文献6】H.Yasuda,Prog.Polym.Sci.2000,25,573。
【非特許文献7】A.K.Dash,A.Razavi,A.Mortreux,C.W.Lehmann,J.−F.Carpentier,Organometallics,2002,21,3238。
【非特許文献8】C.Qian,W.Nie,J.Sun,J.Chem.Soc,DaltonTrans.,1999,3283。
【非特許文献9】C.Qian,W.Nie,J.SunJ.Organomet Chem.,2001,626,171。
【非特許文献10】C.Qian,W.Nie,Y.Chen and J.Sun,in J.Organomet.Chem.645,82,2002。
【非特許文献11】C.Qian,W.Nie,Y.Chen,S.Jie,J.Organomet.Chem.,2002,645,82。
【非特許文献12】W.Nie,C.Qian,Y.Chen,S.Jie,J.Organomet.Chem.,2002,647,114。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、シクロペンタジエニル−フルオレニル配位子、および第III族の金属をベースにした架橋メタロセン成分を好収率で製造することである。
【0012】
本発明の他の目的は、スチレンの制御された重合に効率的な触媒成分を製造することである。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、シンジオタクティックなポリメタクリル酸メチルを製造し得る触媒成分を製造することである。
【0014】
さらに一般的に言えば、本発明の目的は極性または非極性の単量体の制御された重合に効率的な触媒系を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従って本発明によれば、一般式
(Flu−R”−Cp)M(η−CR’)(エーテル) (I)
で示されるメタロセン触媒成分が提供される。ここでCpは置換基をもったまたはもたないシクロペンタジエニル、Fluは置換基をもったまたはもたないフルオレニル、Mは周期律表の第III族の金属、R”は成分に立体的な剛性を与えるためのCpとFluとの間(9−位)の構造的な架橋であり、各R’は同一または相異なり水素、または炭素数1〜20のヒドロカルビルであり、nは0、1または2である。
【0016】
シクロペンタジエニル上の置換基には特に制限はなく、同一または相異なり、炭素数1〜20のヒドロカルビルを含んでいることができる。
【0017】
フルオレニル上の置換基にも特に制限はなく、同一または相異なり、炭素数1〜20のヒドロカルビルを含んでいることができる。
【0018】
アリル基CR’において、R’は水素または炭素数1〜20のヒドロカルビルを含んでいる。これはまたシリル基、またはポリブタジエニル鎖を含んでいることもできる。
【0019】
上記触媒のシクロペンタジエニルとフルオレニルとの間に存在する架橋のタイプにはそれ自身特に制限はない、典型的にはR”は炭素数1〜20のアルキリデン基、ゲルマニウム基(例えばジアルキルゲルマニウム基)、珪素基(例えばジアルキル珪素基)、シロキサン基(例えばジアルキルシロキサン基)、アルキルフォスフィン基、またはアミン基を含んで成っている。好ましくは、該置換基は架橋を形成するためにシリル基、または少なくとも1個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であるか、置換基をもったまたはもたないエチレニル基(例えば−CHCH−)である。さらに好ましくはR”はイソプロピリデン(MeC)、PhC、エチレニル、またはMeSiであり、最も好ましくはR”は(MeC)である。
【0020】
Mは好ましくはイットリウム、ランタン、またはランタニド系列の一員である。本明細書の説明を通じて、「ランタニド系列」と言う言葉は希土類で原子番号58〜71の一連の元素を意味するものとする。ランタニド系列において、Mは好ましくはネオジム、サマリウム、さらに好ましくはイットリウムである。
【0021】
また本発明によれば、
(a)MCl(THF)をエーテルに懸濁させ、
(b)(Cp−R”−Flu)の二リチウム塩をエーテル中に懸濁させ、
(c)−80〜60℃の温度において懸濁液(a)および(b)について塩の複分解反応を行なわせ、この際懸濁液(a)に対する(b)のモル比を2より少なくし、
(d)(c)において得られた生成物をエーテルから晶出させ、
(e)結晶の粉末を回収し、
(f)−80〜60℃の温度で溶媒中において段階(e)から得られた結晶粉末を式
CIMg(CR’)またはLiCR’
但し式中R’は水素もしくは炭素数1〜20のヒドロカルビル基、
のアリル化剤または任意の同等なアリル化剤でアリル化し、
(g)式
(Flu−R”−Cp)M(η−CR’)(エーテル) (I)
の中性の錯体を回収する
段階を含んで成る触媒成分(I)の製造法が提供される。
【0022】
MCl(THF)配位子および二リチウム塩のモル比は好ましくは1:1である。
【0023】
エーテルは例えばテトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチルオキシド、またはジイソプロピルオキシドから選ぶことができる。好ましくはエーテルはTHFまたはジエチルオキシド(EtO)である。
【0024】
溶媒は脂肪族または芳香族のヒドロカルビル、例えばトルエン、キシレン、ペンタン、シクロヘキサン、ヘプタンから選ぶことができる。
【0025】
段階(e)で得られる結晶性の粉末は極めて空気に対して敏感である。この粉末はペンタンに溶解せず、トルエンには難熔性であり、テトラヒドロフラン(THF)またはジエチルオキシドには容易に溶解する。
【0026】
段階(e)の生成物から分離されるいくつかの適当な結晶のX線回折による研究、およびNMRによる研究により、次の二つの化合物が平衡状態にあることが示唆された:
式[(Flu−R”−Cp)MCI[Li(エーテル)の化合物(II)、および
式[(Flu−R”−Cp)M][Li(エーテル)の化合物(III)。
【0027】
この平衡は図1に模式的に表されており、この図はこの平衡がアリル化によってどのように変わるかを示している。図2には化合物(II)および(III)の混合物のH NMRスペクトルが温度の関数として示されている。
【0028】
イオン化した式(III)の陰イオンは図3に示されている。
【0029】
他の態様においては、本発明は活性化剤または移動剤を用い、或いは用いないで極性をもったまたはもたない単量体の制御された重合に対するメタロセン成分(I)の使用を包含している。
【0030】
さらに本発明は
− 式(I)のメタロセン成分を用意し、
− 随時活性化剤または移動剤(transfer agent)を加え、
− 単量体および随時共重合単量体を加え、
− 該システムを重合条件下に保ち、
− 所望の重合体を回収する
段階を含んで成る極性または非極性の単量体を単独重合させる方法、または極性または非極性の単量体を共重合単量体と共重合させる方法が提供される。
【0031】
随時使用される活性化剤には、イオン化作用をもち配位能力が低いかまたはそれをもたないルイス酸が含まれる。典型的には周期律表の第IV族の金属と共に使用されるすべての活性化剤を本発明において使用することができる。適切なアルミニウム含有活性化剤はアルモキサンまたはアルミニウムアルキルを含んで成っている。
【0032】
本発明に使用できるアルモキサンは公知であり、好ましくは直鎖アルモキサン・オリゴマーに対しては式(I)
【0033】
【化1】

【0034】
環式アルモキサン・オリゴマーに対しては式(II)
【0035】
【化2】

【0036】
で表される直鎖および/または環式のアルキルアルモキサンオリゴマーを含んで成っている。ここでnは1〜40、好ましくは10〜20であり、mは3〜40、好ましくは3〜20であり、RはC〜Cのアルキル基、好ましくはメチルである。一般に、例えばアルミニウムトリメチルと水からアルモキサンをつくる場合、直鎖および環式の化合物の混合物が得られる。
【0037】
適当な硼素含有活性化剤は硼酸トリフェニルカルベニウム、例えばヨーロッパ特許−A−0427696号明細書記載のテトラキス−ペンタフルオロフェニル−ボラート−トリフェニルカルベニウム、
【0038】
【化3】

【0039】
或いはヨーロッパ特許−A−0277004号明細書(6頁30行〜7頁7行)記載の下記一般式
【0040】
【化4】

【0041】
の化合物を含んで成っていることができる。他の好適な活性化剤には、ヒドロキシイソブチルアルミニウムおよび金属アルミノキシネートが含まれる。メタロセンに対する一般式中の少なくとも一つのQがアルキル基を含んで成る場合、これらは特に好適である。MgR’のタイプのアルキル化剤も使用することができる。ここでR’は同一または相異なり、炭素数1〜20のヒドロカルビルである。
【0042】
移動剤は例えばH2および式HSiR'''のヒドロシランを含んで成っている。ここでR'''はそれぞれ同一または相異なり、水素または炭素数1〜20のヒドロカルビルである。これは重合させるべき単量体に従って選ばれる。
【0043】
本発明に使用できる単量体には、非極性の単量体、例えばエチレン、α−オレフィン、スチレン、および極性の単量体、例えばアクリレートまたはジエンが含まれる。好ましくはスチレン、およびメタクリル酸メチルが使用されてきた。
【0044】
本発明の触媒系は、必要とされる触媒活性が損なわれない限り、任意のタイプの単独重合または共重合に使用することができる。本発明の好適な一具体化例においては、この触媒系は塊状重合法または均一な溶液重合法、或いは不均一なスラリ重合法に使用される。溶液重合法では、典型的な溶媒はTHFまたは炭素数4〜7の炭化水素、例えばヘプタン、トルエンまたはシクロヘキサンを含んでいる。スラリ法においては、不活性担体、特に多孔性の固体の担体、例えばタルク、無機酸化物、および樹脂状の担体材料、例えばポリオレフィンの上に触媒系を固定する必要がある。好ましくは、担体材料は微粉末の形の無機酸化物である。
【0045】
本発明に従って使用することが望ましい適当な無機酸化物材料は、第IIA、IIIA、IVA、またはIVB族の金属酸化物、例えばシリカ、アルミナまたはそれらの混合物を含んでいる。単独でまたはシリカまたはアルミナと組み合わせて使用できる他の無機酸化物はマグネシア、チタニア、ジルコニア等である。しかし他の適当な担体材料、例えば官能化された微粉末のポリオレフィン、例えば微粉末のポリエチレンを使用することができる。
【0046】
好適な担体は表面積が200〜700m/gで細孔容積が0.5〜3ml/gのシリカ担体である。
【0047】
重合温度は20℃から最高100℃の範囲である。
【0048】
また本発明は上記の触媒成分の存在下において重合させることによって得られた重合体を包含している。
【実施例】
【0049】
(η,η−Cp−CMe−Flu)Y(C)THF)の合成
YClから(η,η−Cp−CMe−Flu)Y(C)THF)を一ポット法で合成した。
【0050】
13H−CMe−CH(1.0g、3.67ミリモル)をジエチルエーテル(50mL)の中に含む溶液に−10℃において激しく撹拌しながら2当量のn−BuLi(1.6Mのヘキサン溶液4.6mL、7.34ミリモル)を加えた。この反応混合物を室温に温めた。溶液は暗黄色に変わり、3時間後黄色の結晶粉末が沈澱した。エーテル中に二リチウム塩を含むこの懸濁液を−20℃に冷却し、EtO(50mL)中にYCl(THF)(0.72gの無水のYCl、3.68ミリモルから製造)を含む懸濁液を加えた。激しく撹拌しながら室温に温めると、反応混合物は濃い赤色に変わった。この赤色溶液を沈澱からデカンテーションし、真空中で蒸発させて0.8gの濃い赤色の粉末を得た。この赤色の粉末[(Cp−CMe−Flu)YCl[Li(EtO)(THF)0.390gを20mLのトルエン中に含む懸濁液に、塩化アリルマグネシウム(THF中に2Mを含む溶液0.27mL、0.54ミリモル)を加えた。この反応混合物を8時間室温で撹拌した。得られた黄褐色の溶液を濾過し、真空中で揮発分を除去した。残留物をペンタン(15mLで2回)で洗滌し、真空中で乾燥して(Cp−CMe−Flu)Y(C)(THF)の黄色の粉末(0.16g,65%)を得た。H NMR(トルエン−d,200MHz,50℃)の結果は次の通りである。:δ=7.90(d,4H,JHH=7.0Hz,Flu),7.0〜6.8(m,4H,Flu),5.82(t,1H,JHH=2.6Hz,Cp),5.59(t,1H,JHH=2.6Hz,Cp),3.13(br m,4H,α−CH,THF),2.45(br m,2H,α−CH,THF),2.24(s,6H,CH),1.93(br m,4H,CHCHCH),1.21(br m,4H,β−CH,THF)。H NMR(THF−d,300MHz,−70℃):δ7.93(d,2H,JHH=7.7Hz,Flu),7.63(d,2H,JHH=7.7Hz,Flu),7.05(t,2H,Flu),6.49(t,2H,Flu),6.23(s,2H,Cp),5.57(s,2H,Cp),4.66(m,1H,JHH=13.0Hz,CHCHCH),1.86(s,6H,CH),1.52(d,4H,JHH=13.0Hz,CHCHCH)。13C NMR(THF−d,75MHz,−70℃)の結果は次の通りである:δ=143.2(CHCHCH),132.8,130.8,125.6,120.8,120.3,110.3,110.1,107.1,106.8,103.7,103.5,98.6(FluおよびCp),57.7(CHCHCH),38.5(CCH)。
【0051】
メタクリル酸メチル(MMA)の重合
予め秤量した約10mgの(Cp−CMe−Flu)Y(C)(THF)をトルエン中に含む溶液に、メタクリル酸メチル(3.0 mL,27.7ミリモル)を注射器で加え、−15℃の温度で直ちに激しく撹拌を開始した。1時間後、Schlenk管を空気に対して開放し、アセトン(30mL)を加えて反応を停止させ、生成した重合体を溶解した。メタノール(約200mL)を加えて重合体を沈澱させ、濾過し、メタノール(30mL)で2回洗滌し、真空中で乾燥した。[MMA]/[Y]の比は約300であった。数平均分子量Mおよび重量平均分子量Mは、GPCによりTHF中でポリスチレン標準に対する普遍的な較正値を用いて決定した。分子量分布は、数平均分子量に対する重量平均分子量の比Mn/Mwとして定義された多分散性指数Dにより記述される。重合体の微細構造はCDCl中においてH NMRにより決定した。得られた重合体は数平均分子量Mが424,000、多分散性指数Dは1.41であり、次のようなタクチシティーをもっていた。rr=67%、mr=27%、およびmm=6%。収率は29%であった。
【0052】
スチレンの重合
(Cp−CMe−Flu)Y(C)(THF)の粗製の試料および再結晶した試料を用いてスチレンの塊状重合および溶液重合の両方を行なった。条件および結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】化合物(I)、(II)および(III)の生成機構を示す図。この図においてRは本文に定義されたCR”を表す。
【図2】陰イオン[(η,η−Flu−CR−Cp)(η,η−Flu−CR−Cp)Y][Li(エーテル)の結晶構造を示す図。楕円面は50%の確率に対応している。
【図3】段階(e)で得られた混合物のTHF−d溶液中におけるH NMRスペクトルの温度依存性を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

(Flu−R”−Cp)M(η−CR’)(エーテル) (I)、
但し式中Cpは置換基をもったまたはもたないシクロペンタジエニル、Fluは置換基をもったまたはもたないフルオレニル、R”は成分に立体的な剛性を与えるためのCpとFluとの間の構造的な架橋、Mは周期律表の第III族の金属であり、各R’は同一または相異なり水素、または炭素数1〜20のヒドロカルビルであり、nは0、1または2である、
を有するメタロセン触媒成分。
【請求項2】
Mがイットリウム、ランタン、ネオジムまたはサマリウムであることを特徴とする請求項1記載のメタロセン触媒成分。
【請求項3】
R”がCMeであることを特徴とする請求項1または2記載のメタロセン触媒成分。
【請求項4】
R’がCH−CH=CHであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載されたメタロセン触媒成分。
【請求項5】
(a)MCl(THF)をエーテルに懸濁させ、
(b)(Cp−R”−Flu)の二リチウム塩をエーテル中に懸濁させ、
(c)−80〜60℃の温度において懸濁液(a)および(b)について塩の複分解反応を行なわせ、この際懸濁液(a)に対する懸濁液(b)のモル比を2より少なくし、
(d)(c)において得られた生成物をエーテルから晶出させ、
(e)結晶の粉末を回収し、
(f)−80〜60℃の温度で溶媒中において段階(e)から得られた結晶粉末を式
CIMg(CR’)またはLiC
但し式中R’は水素もしくは炭素数1〜20のヒドロカルビル基、
のアリル化剤または任意の同等なアリル化剤でアリル化し、
(g)式
(Flu−R”−Cp)M(η−CR’)(エーテル) (I)
の中性の錯体を回収する
段階を含んで成ることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載された触媒成分(I)の製造法。
【請求項6】
懸濁液(a)に対する懸濁液(b)のモル比は約1であることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
塩の複分解反応は約20℃の温度で行なわれることを特徴とする請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
エーテルはTHFまたはジエチルエーテルであることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一つに記載された方法。
【請求項9】
溶媒はトルエンであることを特徴とする請求項5〜8のいずれか一つに記載された方法。
【請求項10】
活性化剤または移動剤を用いまたは用いないで極性または非極性の単量体を重合させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載された触媒成分の使用方法。
【請求項11】
− 請求項1〜4のいずれか一つに記載されたメタロセン成分を用意し、
− 随時活性化剤および/または移動剤を加え、
− 極性または非極性の単量体および随時共重合単量体を加え、
− この系を重合条件下に保持し、
− 所望の重合体を回収する
段階を含んで成ることを特徴とする重合体の製造法。
【請求項12】
非極性の単量体はα−オレフィン、エチレンまたはスチレンであることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
極性の単量体はメタクリレートまたはジエンであることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか一つに記載された方法で得られる重合体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2006−516997(P2006−516997A)
【公表日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500547(P2006−500547)
【出願日】平成16年1月6日(2004.1.6)
【国際出願番号】PCT/EP2004/000142
【国際公開番号】WO2004/060942
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(504469606)トータル・ペトロケミカルズ・リサーチ・フエリユイ (180)
【出願人】(505252333)サントル・ナシヨナル・ド・ラ・ルシエルシユ・シヤンテイフイク (24)
【Fターム(参考)】