説明

シクロペンタベンゾフラン誘導体の製造方法及びその製造原料となる新規化合物

【課題】ベラプロストナトリウムの合成に必要なシクロペンタベンゾフラン誘導体(α、β―不飽和ケトン体)の製造方法において、ワーズワース反応に替わる、穏和な条件で安全に反応させることができ、収率の高い製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】3−メチル−2−オキソ−5−ヘプチニルクロリドを用いて3−メチル−2−オキソ−5−ヘプチニリデン−トリアルキル(あるいはトリアリール)ホスホランを製造し、このホスホラン化合物を用いてシクロペンタベンゾフラン誘導体を製造する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ベラプロストナトリウムの合成における中間体であるシクロペンタベンゾフラン誘導体の新規な製造方法及びこの製造に使用される新規クロル化合物並びに新規ホスホラン化合物に関する。
【0002】
【従来の技術】ベラプロストナトリウムは、経口投与可能な安定なプロスタグランジンI2(PGI)誘導体として知られ、慢性動脈閉塞症など難治性動脈血流障害の治療薬として有用な化合物である。ベラプロストナトリウムの製造方法についてはスキーム1に示す方法が特公平1−53672号及び特公平3−69909号に具体例として記載されている。
【0003】
【化6】


すなわち、ジオール体から合成されるアルデヒド体をワーズワース反応によってα、β―不飽和ケトン体(シクロペンタベンゾヘラン誘導体)とし、次いで還元体、さらに加水分解によりベラプロストナトリウムとする方法である。この方法においてα、β―不飽和ケトン体の製造工程はベラプロストナトリウムに特有なアセチレン結合を有するω鎖が形成される重要な工程であるが、この工程にはワーズワース試薬を水素化ナトリウム、アルキルリチウム、アリールリチウム、水素化カリウム等の強塩基を用いて活性なアニオンとし、このアニオンとアルデヒド体とを反応させる方法が用いられている。しかし、使用される強塩基試薬は反応性が非常に高く吸湿によって容易に失活してしまうばかりでなく、水素ガスや引火性のガスを発生し危険である。また、皮膚などへの刺激性を有するため取扱いには充分注意する必要がある。更に、反応溶液中で発生するワーズワース試薬のアニオンも同様に反応性が高いため湿気が反応収率の低下の原因となるので、本反応はアルゴン等の不活性ガス中で行わなければならない。また、この反応に必要なワーズワース試薬は市場から容易に入手できるものではなく、特公平1−53672号に具体例として記載されている下記スキーム2に示す方法、すなわちメタンホスホン酸ジメチルエステルに強塩基であるn−ブチルリチウムを−78℃で反応させてリチウム塩とした後、同温度で2−メチル−4−ヘキシン酸メチルエステルを反応させて別途製造する必要がある。
【0004】
【化7】


上述の如く、ワーズワース反応を用いる上記の方法では取扱いにくい水素化ナトリウム及びn-ブチルリチウムなどの強塩基を何度も使用することや、−78℃の超低温での反応が必要なことなど難点が多い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、ベラプロストナトリウムの合成に必要なシクロペンタベンゾフラン誘導体(α、β―不飽和ケトン体)の製造方法において、ワーズワース反応に替わる、穏和な条件で安全に反応させることができ、収率の高い製造方法の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記従来の製造方法のこれらの難点を解決する為、簡便で優れた製造方法を開発すべく鋭意検討した。その結果、以下に示す新規ウイティッヒ試薬であるホスホラン化合物(3)を新規クロル化合物(4)から合成する方法を開発し、この化合物を用いたウイティッヒ反応(Wittig reaction)により目的とするシクロペンタベンゾフラン誘導体(α、β―不飽和ケトン体)(1)を製造することに成功し、本発明を完成するに至った。ホスホラン化合物(3)は非常に安定な試薬で取扱いも容易であり、反応に際しては従来法におけるワーズワース試薬の様に高度な管理が求められるアニオンへの変換を必要とせず、アルデヒド化合物(2)と単に混合するだけで極めて容易に、高収率で目的物へ変換できるという非常に優れた利点を有する。
【0007】すなわち、本発明は、式(2)
【化8】


(式中、Rは水素あるいは水酸基の保護基を示す)で表されるアルデヒド化合物と、式(3)
【化9】


(式中、R2はアルキル基、アリール基を示す)で表されるホスホラン化合物と反応させることを特徴とする、式(1)
【化10】


で表されるシクロペンタベンゾフラン誘導体の製造方法。(式中、Rは前記定義に同じ)及びこの反応の原料となる式(3)
【化11】


(式中、R2はアルキル基、アリール基を示す)で表されるホスホラン化合物の合成に成功し、また、このホスホラン化合物の原料となる
【化12】式(4)


で表されるクロル化合物の合成に成功したものである。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態において、シクロペンタベンゾフラン誘導体(1)及びアルデヒド化合物(2)のR1における水酸基の保護基としてはアセチル基、プロピオニル基などのアシル基、ベンゾイル基などのアロイル基、t-ブチル基、テトラヒドロピラニル基、トリ置換シリル基などが挙げられる。ホスホラン化合物(3)のR2におけるアルキル基としては直鎖状、分岐鎖状、または環状であるアルキルが挙げられ、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基などが挙げられ、好ましくはブチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。アリール基としてはフェニル基、置換フェニル基などが挙げられ、フェニル基の置換基としてはメチル基、クロル、ブロム、ニトロ、メトキシ基などが挙げられ、好ましいアリール基としてはフェニル基が挙げられる。以下、本発明を具体的に説明する。
【0009】シクロペンタベンゾフラン誘導体(1)の新規な製造方法本発明の原料化合物であるアルデヒド化合物(2)は公知化合物であり、例えば特公平1−53672号あるいは特公平3−69909号に記載された方法で製造することができる。本発明に係るシクロペンタベンゾフラン誘導体(1)の製造は、上記アルデヒド化合物(2)と本発明の新規化合物である式(3)で示すホスホラン化合物とのウイティッヒ反応により行うことができる。ホスホラン化合物(3)の使用量はアルデヒド化合物(2)に対して1〜3倍当量、好ましくは1〜1.5倍当量である。反応に使用する溶媒としては特に限定はされないが、例えば塩化メチレン、クロロホルム、エーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジオキサン、酢酸エチル、ヘキサン、ベンゼン、ジメチルホルムアミドが挙げられるが、好ましくはエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフランが挙げられ2種以上を併用して使用することもできる。該溶媒の使用量はアルデヒド化合物(2)に対して5〜100倍容、好ましくは10〜20倍容である。ウイティッヒ反応は、ホスホラン化合物(3)における置換基R2の種類によって反応速度が異なる。反応温度は−10〜100℃、好ましくは水冷下若しくは室温で行われ、反応時間は1時間〜5日間、好ましくは2時間〜4日間である。目的物の単離は、反応液を減圧濃縮し得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することにより、目的物の化合物シクロペンタベンゾフラン誘導体(1)を得ることができる。
【0010】新規ホスホラン化合物(3)の製造方法本発明の新規ホスホラン化合物(3)は3−メチル−2−オキソ−5−ヘプチン[化合物(b)]から製造される新規クロル化合物(4)を中間化合物としてスキーム3に示すルートで製造される。
【化13】


【0011】3−メチル−2−オキソ−5−ヘプチン[化合物(b)]の製造方法化合物(b)はスキーム3中に記載した反応式1)に示すように2−メチルアセト酢酸エチルエステルにエタノール中、ナトリウムエチラートを用いて1−ブロモ−2−ブチン化合物(a)を反応させ、次いで反応式2)に示す希苛性ソーダ水溶液により加水分解後、脱炭酸することにより得られる。目的物は反応液を濃縮し、抽出、乾燥、濃縮し得られた残渣を減圧蒸留して精製することができる。
【0012】3−メチル−2−オキソ−5−ヘプチニルクロリド〔クロル化合物(4)〕の製造方法まず、反応式3)に示すように化合物(b)にアミノエタノールをその1〜20倍当量、好ましくは5〜10倍当量加える。反応には生成する水分を除去するため水と共沸する溶媒、例えばベンゼン、トルエン、キシレンなどが用いられるが、好ましくはトルエンが挙げられる。該溶媒の使用量は化合物(b)に対して5〜200倍容、好ましくは10〜50倍容を使用する。反応温度は還流温度が好ましく、水分分離器を付け生成する水分を分離しながら反応を行う。反応時間は1〜48時間、好ましくは8〜24時間である。また、反応には脱水反応を促進する為、適当な触媒を用いるが、例えば陽イオン交換樹脂(カルボン酸型、スルホン酸)、好ましくはスルホン酸型のイオン交換樹脂を用いる。その使用量は、化合物(b)に対して0.01〜1倍量(w/w)、好ましくは0.1〜0.5倍量が挙げられる。このようにして得られたイミン体(c)の生成はほぼ定量的であり、触媒を濾別除去し溶媒と過剰のアミノエタノールを留去後、精製することなく次工程の反応に用いられる。
【0013】次に上記イミン体(c)を反応式4)に示すようにジクロル化する。クロル化は適当な溶媒中、塩化スルフリル、N-クロルスクシンイミドなどのクロル化剤を用いて行うことができる。クロル化剤はイミン体(c)に対して1.5〜5倍当量、好ましくは2〜3倍当量を用いる。溶媒は特に限定はされないが、例えばエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、塩化メチレン、クロロホルムが挙げられ、好ましくはエーテル、ジメトキシエタン及びテトラヒドロフランあるいは混合溶媒を用いることができる。該溶媒の使用量はイミン体(c)に対して5〜100倍容、好ましくは10〜50倍容である。反応温度は−10〜100℃、好ましくは0℃〜50℃であり、反応時間は1〜48時間、好ましくは5〜18時間である。ハロゲン化反応終了後に加水分解を行うが、通常はハロゲン化反応終了後、反応液に適当な酸を加えて行うことができる。使用する酸は、例えば塩酸、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸などが挙げられ、好ましくは塩酸、硫酸が挙げられる。これらの酸を0.05〜5規定、好ましくは0.1〜1規定水溶液として用いる。反応温度は−10〜50℃、好ましくは0℃〜室温であり、反応時間は30分〜24時間、好ましくは1〜5時間である。生成するジクロル体(d)は、反応液を抽出、乾燥、濃縮し得られた残渣を精製することなく次工程の反応に用いる。
【0014】次にジクロル体(d)からモノクロル体であるクロル化合物(4)に還元する。ジクロル体(d)からモノクロル体への還元は、反応式5)に示すように適当な溶媒中で亜鉛/酢酸を用いて行う。反応に使用する溶媒は特に限定はされないが、例えば塩化メチレン、クロロホルム、エーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、ヘキサン、ベンゼン、ジメチルホルムアミドが挙げられ、好ましくはエーテルが挙げられる。該溶媒の使用量はジクロル体(d)の粗重量に対して5〜100倍容、好ましくは10〜50倍容を用いる。亜鉛は通常は粉末状のものを用いるが、その使用量はジクロル体(d)の粗重量に対し0.5〜20倍量好ましくは1〜10倍量(w/w)を用いる。酢酸の使用量はジクロル体(d)の粗重量に対し1〜20倍容好ましくは5〜10倍容を用いる。反応温度は−30〜50℃、好ましくは−20℃〜室温であり、反応時間は2〜36時間、好ましくは4〜24時間である。目的物は、反応終了後に酢酸を中和し、不溶物を濾別後に抽出し、乾燥、減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製するか、あるいは減圧蒸留することにより、クロル化合物(4)を得ることができる。
【0015】3−メチル−2−オキソ−5−ヘプチニル−トリアルキル(あるいはトリアリール)ホスホニウムクロリド[化合物(e)]の製造ホスホニウム化合物(e)は、反応式6)に示すように適当な溶媒中、クロル化合物(4)とトリアルキルホスフィンあるいはトリアリールホスフィンを反応させて得られる。ホスフィン化合物の使用量は、クロル化合物(4)に対して1〜10倍当量、好ましくは1〜2倍当量である。溶媒はクロル化合物(4)と反応しないものであれば特に限定はされないが、テトラヒドロフラン、エーテル、ジオキサン、塩化メチレン、クロロホルムなどが挙げられ、好ましくはエーテル、クロロホルムが挙げられる。溶媒の使用量はクロル化合物(4)に対して5〜100倍容、好ましくは5〜20倍容である。反応温度は0℃〜100℃、好ましくは室温〜60℃である。反応時間は30分〜48時間、好ましくは1〜20時間である。目的化合物が結晶の場合は析出する結晶を濾取し再結晶することにより精製できるが、生成するホスホニウム化合物(e)をそのまま次の工程に用いることもできる。
【0016】3−メチル−2−オキソ−5−ヘプチニリデン−トリアルキル(あるいはトリアリール)ホスホラン〔ホスホラン化合物(3)〕の製造ホスホニウム化合物(e)からホスホラン化合物(3)への変換は、反応式7)に示すようにホスホニウム化合物(e)を塩基で処理することにより行うことができる。反応には溶媒を用いるが、反応の妨げにならないものであれば特に限定はなく、例えば、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メタノール、エタノールなどが挙げられ、好ましくは塩化メチレン、クロロホルムが挙げられる。該溶媒の使用量はホスホニウム化合物(e)に対して5〜100倍容、好ましくは10〜20倍容である。使用される塩基としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、苛性ソーダ、苛性カリ、トリエチルアミン、ピリジンなどが挙げられるが、好ましくは炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが挙げられる。該塩基は通常水溶液として用いられるが、その濃度は1〜50%(w/v)が挙げられ、好ましくは5〜10%を用いる。反応温度は0℃〜50℃、好ましくは0℃〜室温で行い、反応時間は15分〜24時間、好ましくは30分〜5時間である。目的物は反応後、抽出、乾燥、濃縮し得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーなどにより精製することができるが、生成するホスホラン化合物(3)をそのまま次の工程に用いることができる。
【0017】
【実施例】以下、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0018】実施例13−メチル−2−オキソ−5−ヘプチンの製造方法ナトリウムエトキシド5.2gを無水エタノール100mlに溶解し、室温下に2‐メチルアセト酢酸エチル9.6gを加え同温度で1時間攪拌した。次に、水冷下に同溶液に1−ブロモ−2−ブチン8.5gを加えた後、室温下に3時間攪拌した。反応液を50℃に加温し、2規定の水酸化ナトリウム水溶液48mlを加えて3時間加熱還流した。冷却後、冷水250ml中に注ぎ込みエチルエーテル100mlで3回抽出し、有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄後、乾燥、濃縮して得た油状物を減圧蒸留し、無色油状の標題化合物5.2g(収率65%)を得た。
【0019】bp30 80 〜 89℃IR(ν、neat、cm−1) 2974 , 2923 , 1714 , 1459 , 1431 , 1326 , 117090MHz NMR(CDCl3,δppm) 1.18(3H, d, J = 6.9Hz), 1.76(3H, t, J =2.5Hz), 2.19(3H, s ), 2.13〜2.42(2H, m ), 2.67(1H, 6重線, J = 6.9Hz)
【0020】実施例23−メチル−2−オキソ−5−ヘプチニルクロリドの製造方法3−メチル−2−オキソ−5−ヘプチン2.48gをトルエン100mlに溶解し、スルホン酸型イオン交換樹脂(Dowex 50W)0.6g、エタノールアミン12.2gを加え、生成してくる水を共沸除去しながら8時間加熱還流した。固形物を濾別後、反応液を減圧濃縮して黄色油状のイミン体を得た。これをテトラヒドロフラン80mlに溶解し、N‐クロロスクシンイミド5.3g を加えて室温下に2時間攪拌した。反応液を氷冷し、0.5規定の塩酸60mlを加えて1時間攪拌した後、冷水200ml中に注ぎ込んだ。エチルエーテル100mlで3回抽出し、有機層を合わせて、水、飽和食塩水で洗浄後、乾燥、濃縮してジクロル体を得た。このジクロル体をエチルエーテル100mlに溶解し、亜鉛3.0gを加えた後、−20℃に冷却した。同温度で攪拌下に酢酸7.5mlを滴下し、−10℃で3時間反応させた。次いで反応液に10%重曹水溶液120mlを注意深く加え、室温下に1時間攪拌後、固形物を濾別し、エチルエーテルで洗浄した。有機層を分取し、水層を更にエチルエーテル50mlで抽出し、有機層を合わせて、水、飽和食塩水で洗浄後、乾燥、濃縮して粗油状物3.0gを得た。これをシリカゲルカラムクロマト(ヘキサン:エーテル=20:1)で精製して、無色油状の標題化合物2.25g(収率71%)を得た。
【0021】IR (ν、neat、cm−1) 2976 , 2923 , 1734 , 1458 , 1033 , 77090MHz NMR(CDCl3,δppm) 1.21(3H, d, J = 6.9Hz), 1.76(3H, t, J =2.5 Hz), 2.22〜2.46(2H, m ), 2.98(1H, 6重線, J = 6.9 Hz), 4.23(2H, s )
【0022】実施例33−メチル−2−オキソ−5−ヘプチニル−トリフェニルホスホニウムクロリドの製造方法3−メチル−2−オキソ−5−ヘプチニルクロリド317mgをクロロホルム3.5mlに溶解し、トリフェニルホスフィン577mgを加えて攪拌下に18時間加熱還流した。冷却後、固化した反応物にエチルエーテル15mlを加えて30分攪拌し、結晶を濾取、エチルエーテルで洗浄後に真空乾燥したところ、白色結晶の標題化合物820mg(収率97%)を得た。
【0023】mp 196 〜 199℃IR(ν、KBr、cm−1) 2971 , 2918 , 2765 ,1700 , 1438 , 1361 , 1113 ,754 , 69390MHz NMR(CDCl3,δppm) 1.20 and 1.36(3H, d×2, J = 6.9Hz), 1.64(3H, t, J = 2.5Hz), 2.14〜2.86(2H, m ), 3.17〜3.60(1H, m ), 4.52〜6.95(2H, m ), 7.48〜8.10(15H, m ),
【0024】実施例43−メチル−2−オキソ−5−ヘプチニル−トリブチルホスホニウムクロリドの製造方法3−メチル−2−オキソ−5−ヘプチニルクロリド310mgをクロロホルム5mlに溶解し、トリn‐ブチルホスフィン395mgを加えて攪拌下に14時間加熱還流した。冷却後、反応液を減圧濃縮して、無色油状の標題化合物703mg(収率100%)を得た。
【0025】IR(ν、neat、cm−1) 3419 , 2962 , 2935 , 2875 , 1708 , 1628 , 1460, 102990MHz NMR(CDCl3,δppm) 0.77〜1.10(9H, m ), 1.26(3H, d, J = 6.9Hz), 1.31〜1.75(12H, m ), 1.74(3H, t, J = 2.5Hz), 2.19〜2.68(6H, m ), 3.04(1H, 6重線, J = 6.9Hz), 4.43 and 5.04(1H×2, dd, J = 18.2Hz, 12.8Hz)
【0026】実施例53−メチル−2−オキソ−5−ヘプチニリデン−トリブチルホスホランの製造方法3−メチル−2−オキソ−5−ヘプチニル−トリブチルホスホニウムクロリド703mgをクロロホルム10mlに溶解し、室温下に10%炭酸カリウム水溶液6mlを加えて1時間攪拌した。有機層を分取後、水層を更にクロロホルム5mlで抽出し、有機層を合わせて、水、飽和食塩水で洗浄した。乾燥、減圧濃縮して得られた油状物をシリカゲルカラムクロマト(クロロホルム:メタノール=20:1)で精製して、黄色油状の標題化合物620mg(収率98%)を得た。
【0027】MS(Fab、[M+H]+ m/z) 325IR(ν、neat、cm−1) 2960 , 2931 , 2875 ,1527 , 1459 , 1407 , 1096 ,91490MHz NMR(CDCl3,δppm) 0.93(9H, t, J = 6.0Hz), 1.15(3H, d, J =6.0Hz), 1.25〜2.95(22H, m ), 1.76(3H, t, J = 2.5Hz)
【0028】実施例63−メチル−2−オキソ−5−ヘプチニリデン−トリフェニルホスホランの製造方法3−メチル−2−オキソ−5−ヘプチニル−トリフェニルホスホニウムクロリド700mgをクロロホルム10mlに溶解し、室温下に10%炭酸カリウム水溶液6mlを加えて1時間攪拌した。有機層を分取後、水層を更にクロロホルム5mlで抽出し、有機層を合わせて、水、飽和食塩水で洗浄した。乾燥、減圧濃縮して得られた油状物をシリカゲルカラムクロマト(クロロホルム:メタノール=30:1)で精製して、燈色油状の標題化合物632mg(収率99%)を得た。
【0029】MS(Fab、[M+H]+ m/z) 385IR(ν、neat、cm−1) 3058 , 2963 , 2918 ,1538 , 1438 , 1397 , 1108 ,874 , 74890MHz NMR(CDCl3,δppm) 1.23(3H, d, J = 6.7Hz), 1.79(3H, t, J =2.5Hz), 1.98〜2.65(3H, m ), 2.95〜3.20(1H, br ), 7.32〜7.84(15H, m )
【0030】実施例711,15−ジデオキシ−11−アセトキシ−16−メチル−15−オキソ−18,19−テトラデヒドロ−5,6,7−トリノル−4,8−インタ−m−フェニレンPGI2メチルエステルの3−メチル−2−オキソ−5−ヘプチニリデン−トリブチルホスホランを使用した製造方法4−[2−エンドーアセトキシ−1−エキソ−ヒドロオキシメチル−3a,8b−シス−2,3,3a,8b−テトラヒドロ−1H−5−シクロペンタ[b]ベンゾフラニル]酪酸メチル669mgの無水ベンゼン7ml溶液にピリジン0.23ml及びトリフルオロ酢酸0.12mlの無水DMSO 7ml溶液を加え、次いで、ジシクロヘキシルカルボジイミド650mgを加えて室温下15時間攪拌した。析出した沈殿を濾別し、ベンゼンで洗浄した後、濾液を水洗し、得られた有機層を乾燥、減圧濃縮して粗アルデヒド体を得た。これをジメトキシエタン8mlに溶解し、3−メチル−2−オキソ−5−ヘプチニリデン−トリブチルホスホラン750mgのジメトキシエタン5ml溶液を加え、室温で3時間攪拌した。反応液を減圧濃縮した後、得られた油状物をシリカゲルカラムクロマト(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製して、黄色油状の標題化合物620mg(収率72%)を得た。
【0031】IR(ν、neat、cm−1) 2946 , 1733 , 1455 ,1373 , 1240 , 104890MHz NMR(CDCl3,δppm) 1.21(3H, d, J = 6.9Hz), 1.70〜1.84(6H,m ), 1.86〜3.16(12H, m ), 3.66(3H, s ), 3.58〜3.79(1H, m ), 5.01(1H, q, J = 5.9Hz), 5.13〜5.38(1H, m ), 6.28(1H, d, J = 15.9Hz), 6.65〜7.05(4H, m )
同様に4−[2−エンドーヒドロキシ−1−エキソ−ヒドロオキシメチル−3a,8b−シス−2,3,3a,8b−テトラヒドロ−1H−5−シクロペンタ[b]ベンゾフラニル]酪酸メチルと3−メチル−2−オキソ−5−ヘプチニリデン−トリブチルホスホランを用いれば、15−デオキシ−16−メチル−15−オキソ−18,19−テトラデヒドロ−5,6,7−トリノル−4,8−インタ−m−フェニレンPGI2メチルエステルを得ることができる。
【0032】IR(ν、neat、cm−1) 3457 , 2934 , 1737 ,1694 , 1625 , 1453 , 1257,119390MHz NMR(CDCl3,δppm) 1.21(3H, d, J = 6.9Hz), 1.6(3H, t, J =2.5Hz), 1.77〜3.09(13H, m ), 3.65(3H, s ), 3.44〜3.68(1H, m ),4.10(1H, brq, J = 6.7Hz), 5.02〜5.28(1H, m ), 6.32(1H, d, J = 15.6Hz), 6.65〜7.04(4H, m )
【0033】実施例811,15−ジデオキシ−11−アセトキシ−16−メチル−15−オキソ−18,19−テトラデヒドロ−5,6,7−トリノル−4,8−インタ−m−フェニレンPGI2メチルエステルの3−メチル−2−オキソ−5−ヘプチニリデン−トリフェニルホスホランを使用した製造方法4−[2−エンドーアセトキシ−1−エキソ−ヒドロオキシメチル−3a,8b−シス−2,3,3a,8b−テトラヒドロ−1H−5−シクロペンタ[b]ベンゾフラニル]酪酸メチル481mgの無水ベンゼン5ml溶液にピリジン0.10ml及びトリフルオロ酢酸0.05mlの無水DMSO 5ml溶液を加え、次いで、ジシクロヘキシルカルボジイミド470mgを加えて室温下16時間攪拌した。析出した沈殿を濾別し、ベンゼンで洗浄した後、濾液を水洗し、得られた有機層を乾燥、減圧濃縮して粗アルデヒド体を得た。これをジメトキシエタン6mlに溶解し、3−メチル−2−オキソ−5−ヘプチニリデン−トリフェニルホスホラン630mgのジメトキシエタン4ml溶液を加え、室温で50時間攪拌した。反応液を減圧濃縮した後、得られた油状物をシリカゲルカラムクロマト(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製して、黄色油状の標題化合物471mg(収率75%)を得た。
【0034】IR(ν、neat、cm−1) 2946 , 1733 , 1455 ,1373 , 1240 , 104890MHz NMR(CDCl3,δppm) 1.21(3H, d, J = 6.9Hz), 1.70〜1.84(6H,m ), 1.86〜3.16(12H, m ), 3.66(3H, s ), 3.58〜3.79(1H, m ), 5.01(1H, q, J = 5.9Hz), 5.13〜5.38(1H, m ), 6.28(1H, d, J = 15.9Hz), 6.65〜7.05(4H, m )

【特許請求の範囲】
【請求項1】次の式(2)
【化1】


(式中、Rは水素あるいは水酸基の保護基を示す)で表されるアルデヒド化合物と、次の式(3)
【化2】


(式中、R2はアルキル基、アリール基を示す)で表されるホスホラン化合物と反応させることを特徴とする、次の式(1)
【化3】


(式中、Rは水素あるいは水酸基の保護基を示す)で表されるシクロペンタベンゾフラン誘導体の製造方法。
【請求項2】次の式(3)
【化4】


(式中、R2はアルキル基、アリール基を示す)で表される請求項1記載の製造方法に使用するホスホラン化合物。
【請求項3】次の式(4)
【化5】


で表される請求項2記載の式(3)で示したホスホラン化合物を得るための原料となるクロル化合物。

【公開番号】特開2003−113189(P2003−113189A)
【公開日】平成15年4月18日(2003.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−309366(P2001−309366)
【出願日】平成13年10月5日(2001.10.5)
【出願人】(592073695)日本医薬品工業株式会社 (21)
【Fターム(参考)】