説明

シクロペンチル誘導体

本発明は、ナトリウムおよび/またはカルシウムチャンネルモジュレーターとして活性であり、従って、上記の機作が病理学的役割を果たすと記載されている、神経疾患、精神疾患、心臓血管疾患、炎症性疾患、眼疾患、泌尿器疾患、代謝性疾患および胃腸管疾患を含むがそれらに限定されない広い範囲の病変の予防、緩和および治療に有用である、以下の一般式(I)(式中、Xは、メチレン、酸素、硫黄、またはNR7基であり;R1は、CF3、フェニル、フェノキシもしくはナフチルで場合により置換されている、直鎖もしくは分岐鎖のC1〜C8アルキルまたはC3〜C8アルケニレンもしくはC3〜C8アルキニレン鎖であり、その芳香環が1個以上のC1〜C4アルキル、ハロゲン、トリフルオロメチル、ヒドロキシもしくはC1〜C4アルコキシ基で場合により置換されており;R2、R3は、独立に、水素、C1〜C3アルキル鎖、ハロゲン、トリフルオロメチル、ヒドロキシまたはC1〜C4アルコキシ基であり;R4、R5、R6、R7は、独立に、水素またはC1〜C6アルキルである)の新規なシクロペンチル誘導体;ならびにそれらの薬学的に許容しうる塩に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウムおよび/またはカルシウムチャンネルモジュレーターとして活性であり、従って、上記の機作が病理学的役割を果たすと記載されている、神経疾患、精神疾患、心臓血管疾患、炎症性疾患、眼疾患、泌尿器疾患、代謝性疾患および胃腸管疾患を含むがそれらに限定されない広い範囲の病変の予防、緩和および治療に有用である、以下の一般式(I):
【0002】
【化7】

【0003】
(式中、
Xは、メチレン、酸素、硫黄またはNR7基であり;
1は、CF3、フェニル、フェノキシまたはナフチルで場合により置換されている直鎖もしくは分岐鎖のC1〜C8アルキルまたはC3〜C8アルケニレンまたはC3〜C8アルキニレン鎖であり、その芳香環が1個以上のC1〜C4アルキル、ハロゲン、トリフルオロメチル、ヒドロキシまたはC1〜C4アルコキシ基で場合により置換されており;
2、R3は、独立に、水素、C1〜C3アルキル鎖、ハロゲン、トリフルオロメチル、ヒドロキシまたはC1〜C4アルコキシ基であり;
4、R5、R6、R7は、独立に、水素またはC1〜C6アルキルである)
の新規なシクロペンチル誘導体およびそれらの薬学的に許容しうる塩に関する。
【0004】
発明の背景
化学的背景
DE2624290明細書には、一般式:
【0005】
【化8】

【0006】
(式中、R1はヒドロキシまたはNR45基であり、R2およびR3は、水素、アルキル、アラルキル、アリールまたはアシルであり、R4およびR5は、水素、C1〜C8アルキル、アラルキル、アリールまたはヘテロアリールである)
を有する2−アミノシクロアルカンカルボン酸およびそれらの誘導体ならびに、鎮痛剤、解熱剤、および麻酔剤としてのそれらの使用が記載されている。
【0007】
生物学的背景
ナトリウムチャンネルが、神経回路網において、電気インパルスを迅速に細胞中にまた細胞ネットワークに伝達し、それにより移動運動から認知までの範囲のより高次なプロセスを調整することによって、重要な役割を果たしていることは周知である。これらのチャンネルは、大きな膜貫通型タンパク質であり、それは、異なる状態の間をスイッチすることが可能で、ナトリウムイオンの選択的な透過を可能にする。このプロセスに対しては、膜を脱分極するために活動電位が必要であり、従って、これらのチャンネルは電位感受性である。過去数年間において、ナトリウムチャンネルがよりよく理解されてきて、それらと相互作用する薬物が開発されている。
【0008】
局所麻酔薬、クラスI抗不整脈薬および抗痙攣薬を含む、未知の作用機作を有する多数の薬物が、ナトリウムチャンネルの伝導性を調節することにより実際に作用することが明らかになっている。神経性ナトリウムチャンネル遮断薬は、癲癇(フェニトインおよびカルバマゼピン)、双極性障害(ラモトリギン)の処置、神経変性の予防、また神経因性疼痛の減少におけるそれらの使用に用途が見出されている。神経興奮性を安定化する種々の抗癲癇薬は、神経因性疼痛に有効である(ギャバペンチン)。
【0009】
さらに、ナトリウムチャンネル発現または活性の増加は、また、炎症性疼痛のいくつかのモデルにおいて観察され、炎症性疼痛におけるナトリウムチャンネルの役割を示唆している。
【0010】
カルシウムチャンネルは、カルシウムイオンの細胞外液から細胞への調節された流入を可能にする、膜スパン型、マルチサブユニットタンパク質である。一般に、カルシウムチャンネルは、電位依存性であり、電位感受性カルシウムチャンネル(VSCC)と称される。VSCCは、哺乳動物の神経系全体に見出され、それらは、細胞興奮性、トランスミッター放出、細胞内代謝、神経分泌活性および遺伝子発現のような多様な活動を調節する。動物中の全ての「興奮性」細胞、例えば、中枢神経系(CNS)のニューロン、末梢神経細胞、および骨格筋、心筋ならびに静脈および動脈平滑筋を含む筋肉細胞は、電位依存性カルシウムチャンネルを有している。カルシウムチャンネルは、細胞の生存性および機能に重要である細胞内カルシウムイオンレベルを調節する上で中心的な役割を有している。細胞内カルシウムイオン濃度は、動物中で多数の生命維持に必要なプロセス、例えば、神経伝達物質放出、筋肉収縮、ペースメーカー活性、およびホルモンの分泌に関与している。カルシウムチャンネルが、ある疾患状態に関係していると考えられている。ヒトを含む哺乳動物における種々の心臓血管疾患の処置に有用な多数の化合物は、心臓平滑筋および/または血管平滑筋に存在する電位依存性カルシウムチャンネルの機能を調節することにより、それらの有益な効果を発揮すると考えられる。カルシウムチャンネルに対して活性を有する化合物は、また、痛みの処置に対して関係している。特に、神経伝達物質の調節をつかさどるN型カルシウムチャンネル(Cav2.2)は、それらの組織分布により、ならびに、いくつかの薬理学的研究の結果からの双方で、痛みの伝達に重要な役割を果たすと考えられる。この仮説は、海カタツムリ(marine snail)、Conus Magusの毒液由来のペプチド、ジノコチド(Zinocotide)により臨床において正しいことが確認されている。このペプチドの治療上の使用における制限は、ヒトに対してくも膜下に投与する必要があることである(Boweresox S. S. および Luther R Toxicon, 1998, 36, 11, 1651-1658)。
【0011】
これらの知見の全ては、ナトリウムおよび/またはカルシウムチャンネル遮断性を有する化合物が、上記の機作が病理学的な役割を果たすと記載されている、神経疾患、精神疾患、心臓血管疾患、泌尿器疾患、代謝性疾患および胃腸管疾患を含む広い範囲の病変の予防、緩和および治療に、高い治療上の潜在能力を有することを示している。
【0012】
多くの疾患の処置または調節用のナトリウムおよび/またはカルシウムチャンネルモジュレーターまたはアンタゴニスト、例えば、局所麻酔薬、抗不整脈薬、制吐剤、抗躁病薬、単極性鬱病、心臓血管疾患、尿失禁、下痢、炎症、癲癇、神経変性状態、神経細胞死、抗痙攣薬、神経疼痛、片頭痛、急性痛覚過敏および炎症、腎疾患、アレルギー、喘息、気管支痙攣、月経困難症、食道痙攣、緑内障、尿路疾患、胃腸管運動性異常、早産、肥満用の薬剤としてのそれらの使用を記載している多数の論文および特許がある。
【0013】
広範囲で詳細な従来技術の概観が、WO03/057219明細書(およびその中の参考文献)に報告されており;従来技術のさらに選択されたものが以下の文献で報告されている:Alzheimer, C. Adv. Exp. Med. Biol. 2002, 513, 161-181; Vanegas, H.; Schaible, H. Pain 2000, 85, 9-18; U.S. Patent 5,051,403; U.S. Patent 5,587,454; U.S. Patent 5,863,952; U.S. Patent 6,011,035; U.S. Patent 6,117,841; U.S. Patent 6,362,174; U.S. Patent 6,380,198; U.S. Patent 6,420,383; U.S. Patent 6,458,781; U.S. Patent 6,472,530; U.S. Patent 6,518,288; U.S. Patent 6,521,647; WO97/10210; WO03/018561。
【0014】
発明の説明
本発明は、式I:
【0015】
【化9】

【0016】
(式中、
Xは、メチレン、酸素、硫黄またはNR7基であり;
1は、CF3、フェニル、フェノキシまたはナフチルで場合により置換されている、直鎖もしくは分岐鎖のC1〜C8アルキルまたはC3〜C8アルケニレンまたはC3〜C8アルキニレン鎖であり、その芳香環が1個以上のC1〜C4アルキル、ハロゲン、トリフルオロメチル、ヒドロキシまたはC1〜C4アルコキシ基で場合により置換されており;
2、R3は、独立に、水素、C1〜C3アルキル鎖、ハロゲン、トリフルオロメチル、ヒドロキシまたはC1〜C4アルコキシ基であり;
4、R5、R6、R7は、独立に、水素またはC1〜C6アルキルである)
の新規化合物およびそれらの薬学的に許容しうる塩を提供する。
【0017】
本発明の化合物は、ナトリウムおよび/またはカルシウムチャンネルモジュレーターとして有用である。
【0018】
フェニル環中の置換基R1−X、R2およびR3は、いずれの位置であってもよい。式Iの化合物の薬学的に許容しうる塩としては、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、およびリン酸または有機酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、サリチル酸、グリコール酸、乳酸、シュウ酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸等との酸付加塩が挙げられる。
【0019】
本発明の好ましい化合物は、Xが、酸素、メチレン、NHまたはNCH3であり、R1が、CF3、フェニルまたはフェノキシ基で場合により置換されているC1〜C8アルキル鎖(R1中の芳香環は、1個または2個のハロゲンまたはメトキシまたはトリフルオロメチル基で場合により置換されている)であり、R2およびR3が、水素、メチル、メトキシ、フッ素、塩素または臭素であり、R4、R5およびR6が、水素またはメチルである、式Iの化合物である。
【0020】
本発明の特定の化合物の例は:
2−(2−ベンジルオキシ−ベンジルアミノ)−シクロペンタンカルボン酸アミド;
2−(3−ベンジルオキシ−ベンジルアミノ)−シクロペンタンカルボン酸アミド;
2−(4−ベンジルオキシ−ベンジルアミノ)−シクロペンタンカルボン酸アミド;
2−[2−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−シクロペンタンカルボン酸アミド;
2−[3−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−シクロペンタンカルボン酸アミド;
cis−2−[3−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−シクロペンタンカルボン酸アミド;
2−[4−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−シクロペンタンカルボン酸アミド;
2−[4−(2−フルオロ−ベンジルチオ)−ベンジルアミノ]−シクロペンタンカルボン酸アミド;
2−[4−(2−フルオロ−ベンジルアミノ)−ベンジルアミノ]−シクロペンタンカルボン酸アミド;
2−[2−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)−3−フルオロ−ベンジルアミノ]−シクロペンタンカルボン酸アミド;
2−[4−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)−3−フルオロ−ベンジルアミノ]−シクロペンタンカルボン酸アミド;
2−[2−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)−3−クロロ−ベンジルアミノ]−シクロペンタンカルボン酸アミド;
(2−[4−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)−3−クロロ−ベンジルアミノ]−シクロペンタンカルボン酸アミド;
(2−[4−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)−3−ブロモ−ベンジルアミノ]−シクロペンタンカルボン酸アミド;
(2−[4−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)−2−メトキシ−ベンジルアミノ]−シクロペンタンカルボン酸アミド;
(2−[4−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)−3−メトキシ−ベンジルアミノ]−シクロペンタンカルボン酸アミド;
2−[4−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)−3,5−ジメチル−ベンジルアミノ]−シクロペンタンカルボン酸アミド;
cis−2−[4−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)−3,5−ジメチル−ベンジルアミノ]−シクロペンタンカルボン酸アミド;
ならびにその全ての立体異性体および/または薬学的に許容しうる塩である。
【0021】
本発明の化合物およびそれらの塩は、
a)式II:
【0022】
【化10】

【0023】
(式中、R1、R2、R3およびXは、上記のとおりである)
の化合物を、還元剤の存在下に、式III:
【0024】
【化11】

【0025】
(式中、R4、R5およびR6は、上記のとおりである)
の化合物と反応させて、式Iの化合物を得るか;または
b)式IV:
【0026】
【化12】

【0027】
〔式中、R1、R2、R3およびXは、上記のとおりであり、Yは、ハロゲン原子またはO−EWG基(ここで、EWGは、それらが結合している酸素を良好な脱離基に変換することができる、例えばメシル、トシルまたはトリフルオロアセチル基のような電子吸引性基を意味する)である〕
の化合物を、式IIIの化合物と反応させて、式Iの化合物を得るか;または
c)式Ia:
【0028】
【化13】

【0029】
(式中、R1、R2、R3、R5、R6およびXは、上記のとおりである)
の化合物を、式VもしくはVI:
【0030】
【化14】

【0031】
(式中、YおよびR4は、上記のとおりであり;R8は、水素またはC1〜C5アルキルである)
の化合物と反応させ、R4がC1〜C6アルキルである本発明の化合物を得;そして、
所望ならば、本発明の化合物を本発明の他の化合物に変換し、およびまたは、所望ならば、本発明の化合物を薬学的に許容しうる塩に変換し、および/または、所望ならば、塩を遊離化合物に変換し、および/または、所望ならば、本発明の化合物の異性体の混合物を単一異性体に分離することを含む方法により得ることができる。
【0032】
化合物II、III、IV、VおよびVIは市販の化合物であるか、あるいは周知の方法を用いて市販の化合物から調製される。
【0033】
式Iの化合物を与える、式IIの化合物の式IIIの化合物との反応および式Iaの化合物の式VIの化合物との反応は、公知の方法に従って行うことができる還元的アミノ化反応である。本発明の好ましい実施態様に従えば、窒素雰囲気下で、好適な有機溶媒、例えば、アルコール、例えば、低級アルカノール中、特に、メタノール中、またはアセトニトリル中、またはテトラヒドロフラン中で、約0℃〜約80℃の範囲の温度で、還元剤(最も適切なものは水素化ホウ素ナトリウムまたは水素化シアノホウ素ナトリウムである)の存在下に行われる。時には、反応を促進するために、チタニウムIVイソプロピラートおよびモレキュラーシーブを反応混合物に添加することができる。
【0034】
式IVおよびVの化合物において、ハロゲンは、好ましくは臭素またはヨウ素である。式IVの化合物の式IIIの化合物との、および式Iaの化合物の式Vの化合物とのアルキル化反応は、好適な有機溶媒、例えば、アルコール、例えば、メタノール、エタノールまたはイソプロパノール、特にエタノール中で、約0℃〜約50℃の範囲の温度で行うことができる。
【0035】
本発明の化合物においておよびそれらの中間体−生成物において、それらを上記の反応に付す前に保護する必要がある基が存在する場合、それらは、反応される前に保護され、次いで、周知の方法に従って脱保護される。
【0036】
薬理学
本発明の化合物は、インビトロでの結合研究において選択的な放射性リガンドを用いて示されるように、カルシウムおよび/またはナトリウムチャンネル結合部位に対する親和性を示す。
【0037】
本発明に係る化合物は、電位依存性ナトリウムチャンネルおよび/またはカルシウムチャンネルの遮断薬である。これらの化合物は、従って、低μMまたはサブμM範囲のIC50で、ナトリウムチャンネル上の結合部位から、高い親和性で、3H−バトラコトキシン(batrachotoxin, BTX)を置き換える。同様に、化合物は、細胞脱分極を介してカルシウムチャンネルを通して誘起されるカルシウム流入を阻害すると共に、低μMまたは最も通常的にはサブμM範囲のIC50で、カルシウムチャンネル中の結合部位から、高い親和性で、3H−ニトレンジピン(nitrendipine)を置き換える。
【0038】
そのような物質は、ナトリウムチャンネルが遮断されるときに、「使用依存性」を示す、すなわち、ナトリウムチャンネルの最大の遮断は、ナトリウムチャンネルが繰り返し刺激された後にのみ、達成される。したがって、物質は、好ましくは、多重に活性化されるナトリウムチャンネルに結合する。その結果、本発明に係る化合物が電気的に刺激されたナトリウムチャンネルを「使用依存」的に遮断することを示す、パッチ・クランプ実験(patch-clamp experiments;W.A. Catteral, Trends Pharmacol. Sci., 8, 57-65; 1987)により示されるように、物質は、病的に過刺激されている体のそれらの部分で優先的に活性化することができる。
【0039】
これらの機作の結果として、本発明の化合物は、広範囲の動物モデルにおいて、特に、電気的に誘起された痙攣のMES試験において、持続性疼痛のホルマリンモデルにおいて、および炎症のカラギーナンモデルにおいて、0.1〜100mg/kgの範囲で経口的に投与するときにインビボで活性である。
【0040】
本発明の化合物のカルシウムおよび/またはナトリウムチャンネルの電位依存性遮断は、蛍光カルシウム流入アッセイおよび電気生理学的研究により示されている。
【0041】
一般式Iのシクロペンチル誘導体のN型カルシウムチャンネル調節活性は、蛍光に基づくカルシウム流入アッセイにより測定された。
【0042】
一般式Iのシクロペンチル誘導体のナトリウムチャンネル調節活性は、NaチャンネルNav1.3を発現する単離されたアフリカツメガエル(Xenopus)の卵母細胞中で2電極式ボルテージクランプ(TEVC)法を用いる電気生理学的アッセイにより測定された。
【0043】
上記の作用機作を考慮すると、本発明の化合物は、神経因性疼痛の処置または予防に有用である。神経因性疼痛症候群として、糖尿病性神経障害;坐骨神経痛;非特異的腰痛;多発硬化性疼痛;線維筋痛;HIV−関連神経障害;神経痛、例えば疱疹後神経痛および三叉神経の神経痛;ならびに物理的外傷、切断、癌、毒素または慢性の炎症状態に起因する痛みが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
本発明の化合物は、また、慢性の痛みの処置に有用である。慢性の痛みは、炎症または炎症関連状態に起因する慢性の痛み、変形性関節炎、関節リウマチもしくは疾患の後遺症、急性損傷もしくは外傷、および(神経根障害のような全身性、局所的もしくは原発性脊椎疾患に起因する)上背痛もしくは腰痛、(変形性関節炎、骨粗鬆症、骨転移、または知られていない原因による)骨痛、骨盤痛、脊髄損傷に付随する痛み、心臓性胸痛、非心臓性胸痛、中枢性卒中後疼痛、筋筋膜疼痛、癌性疼痛、AIDS痛、鎌状血球痛、老人性疼痛、あるいは頭痛、顎関節症候群、痛風、線維症または胸郭出口症候群に起因する疼痛が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
本発明の化合物は、また、(急性損傷、病気、スポーツ−薬物損傷、手根管症候群、火傷、筋骨格捻挫および筋違い、筋腱筋違い、頸腕痛症候群、消化不良、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、月経困難症、子宮内膜症または手術(開胸またはバイパス手術等)に起因する)急性の痛み、術後疼痛、腎結石痛、胆嚢痛、胆石痛、出産痛または歯痛の処置に有用である。
【0046】
本発明の化合物は、また、片頭痛、例えば緊張型頭痛、変形型片頭痛または発展型頭痛、群発性頭痛、ならびに二次性頭痛障害、例えば感染、代謝障害または他の全身性病気に由来するものおよび上記の一次性または二次性頭痛の悪化からもたらされる、他の急性頭痛、発作性片頭痛等の処置に有用である。
【0047】
本発明の化合物は、また、神経学的状態および認知障害の処置に有用である。神経学的状態として、(単純部分発作、複雑部分発作、二次性全般化発作を含み、さらに、欠神発作、ミオクローヌス発作、間代発作、強直発作、強直間代発作および無緊張発作を含む)癲癇等の状態、(老人性痴呆、アルツハイマー病、ピック病、パーキンソン病および(多発脳梗塞性痴呆、卒中および脳虚血を含む)血管性痴呆を含む)退行性痴呆、ならびに頭蓋内占拠性病変、外傷、感染および(HIV感染を含む)関連状態、代謝、毒素、酸素欠乏症およびビタミン欠乏症に伴う痴呆;ならびに老化に伴う軽度の認知減退、特に老化に伴う記憶減退、運動障害(脳炎後パーキンソニズム、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症)、ナルコレプシー、注意欠陥多動障害(ADHD)、筋萎縮性側索硬化症、ダウン症候群が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
本発明の化合物は、また、精神障害の処置に有用である。精神障害として、双極性障害(例えば、I型双極性障害、II型双極性障害)として知られる躁鬱病、気分循環性障害、急速交代型、超急速交代型(Ultradian cycling)、双極性鬱病、急性躁病、躁病、混合躁病(mixed mania)、軽躁、または単極性鬱病、統合失調症、統合失調症様障害、失調感情障害、妄想性障害、一時的精神障害、二人組精神障害、一般的な病気状態による精神異常、物質誘起型精神異常またはその他特記されていない精神異常、不安障害ならびにまたタバコおよび薬物中毒におけるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
本発明の化合物は、また、耳鳴り、筋痙攣、筋硬化症、および、心臓血管疾患(例えば、心臓不整脈、心筋梗塞または狭心症、高血圧、低酸素症、心臓虚血)、内分泌障害(例えば、末端肥大症または尿崩症)、障害の病理生理学が過度のまたは分泌過多または他の不適切な内因性物質(例えば、カテコールアミン、ホルモンまたは成長因子)の細胞分泌を含む疾患を含むがそれらに限定されない他の障害等の末梢疾患の処置に有用である。
【0050】
本発明の化合物は、また、肝臓疾患、例えば炎症性肝臓疾患、例えば、慢性ウイルス性B型肝炎、慢性ウイルス性C型肝炎、アルコール性肝臓損傷、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫性肝炎、非アルコール性脂肪肝および肝移植拒絶の処置に有用である。
【0051】
本発明の化合物は、全ての身体系に影響を与える炎症性プロセスを阻害する。従って、以下に例をリストする、その筋骨格系の炎症性プロセスの処置に有用であるが、ただし、そのリストは全てのターゲットとなる障害を網羅するものではない:強直性脊椎炎、頚部関節炎、線維筋痛、腸、若年性関節リウマチ、腰仙関節炎、変形性関節炎、骨粗鬆症、乾癬関節炎、リウマチ疾患等の関節炎状態;皮膚および関連組織に影響を与える疾患:湿疹、乾癬、皮膚炎および日焼け等の炎症状態;呼吸系の疾患:喘息、アレルギー性鼻炎および呼吸障害症候群、喘息および気管支炎等の炎症を伴う肺疾患;慢性閉塞性肺疾患;免疫および内分泌系の疾患:結節性動脈周囲炎、甲状腺炎、再生不良性貧血、強皮症、重症筋無力症、多発性硬化症、サルコイドーシス、腎炎症候群、ベーチェット症候群、多発性筋炎、歯肉炎。
【0052】
本発明の化合物は、また、胃腸(GI)管障害、例えば潰瘍性大腸炎、クローン病、回腸炎、直腸炎、セリアック病、腸疾患、顕微鏡的(microscopic)もしくはコラーゲン蓄積大腸炎、好酸球性胃腸炎、または直腸結腸切除術後および回腸臀部吻合後の回腸嚢炎を含むがこれらに限定されない炎症性腸管疾患、ならびに、幽門痙攣、神経性消化不良、痙攣性結腸、痙攣性大腸炎、痙攣性腸管、腸神経症、機能性大腸炎、粘液性大腸炎、下剤性大腸炎および機能性消化不良等の腹痛および/または腹部不快感を伴う任意の疾患を含む過敏性腸症候群の処置に;しかしまた、萎縮性胃炎、変動型胃炎(gastritis varialoforme)、潰瘍性大腸炎、ペプシン性潰瘍、ピレシス(pyresis)、および他のGI管への損傷、例えば、ヘリコバクターピロリ、胃食道逆流症、胃不全麻痺、例えば糖尿病性胃不全麻痺によるもの;ならびに他の機能性腸管疾患、例えば非潰瘍性消化不良(NUD);嘔吐、下痢、および内臓炎症の処置に有用である。
【0053】
本発明の化合物は、また、尿生殖路疾患、例えば過活動膀胱、前立腺炎(慢性細菌性および慢性非細菌性前立腺炎)、プロスタディニア(prostadynia)、間質性膀胱炎、尿失禁および良性前立腺過形成、アネキシティ(annexities)、骨盤炎症、バルトリニティス(bartolinities)ならびに膣炎の処置に有用である。
【0054】
本発明の化合物は、また、網膜炎、網膜症、ブドウ膜炎および眼組織への急性損傷、黄斑変性症または緑内障、結膜炎の処置に有用である。
【0055】
本発明の化合物は、また、肥満の処置に有用である。
【0056】
本発明の化合物は、また、電位感受性ナトリウムチャンネルおよび/または電位感受性カルシウムチャンネルの阻害が仲介する全ての他の状態の処置に有用である。
【0057】
本発明の化合物は、有利には、1以上の他の治療剤と共に使用できることが理解されるであろう。補助療法用の好適な薬剤の例として、5HT1B/1Dアゴニスト、例えばトリプタン(例えば、スマトリプタンまたはナラトリプタン);アデノシンA1アゴニスト;EPリガンド;NMDAモジュレーター、例えばグリシンアンタゴニスト;サブスタンスPアンタゴニスト(例えば、NK1アンタゴニスト);カンナビノイド;アセトアミノフェンまたはフェナセチン;5−リポキシゲナーゼ阻害剤;ロイコトリエン受容体アンタゴニスト;DMARD(例えば、メトトレキセート);ギャバペンチンおよび関連化合物;三環性抗うつ薬(例えば、アミトリプチリン);ニューロン安定化抗癲癇作用薬;モノアミン取り込み阻害剤(例えば、ベンラファキシン);マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤;一酸化窒素シンターゼ(NOS)阻害剤、例えばiNOSまたはnNOS阻害剤;腫瘍壊死因子αの放出または作用の阻害剤;抗体治療、例えばモノクローナル抗体治療;抗ウイルス剤、例えばヌクレオシド阻害剤(例えば、ラミブジン)または免疫系モジュレーター(例えば、インターフェロン);鎮痛剤、例えばシクロオキシゲナーゼ−2阻害剤;局所麻酔薬;カフェインを含む興奮剤;H2−アンタゴニスト(例えば、ラニチジン);プロトンポンプ阻害剤(例えば、オメプラゾール);制酸剤(例えば、水酸化アルミニウムまたはマグネシウム);整腸剤(例えば、シメチコン);充血除去剤(例えば、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、プソイドエフェドリン、オキシメタゾリン、エピネフリン、ナファゾリン、キシロメタゾリン、プロピルヘキセドリン、またはレボ−デスオキシエフェドリン、ナファゾリン、キシロメタゾリン、プロピルヘキセドリン、もしくはレボ−デスオキシエフェドリン);鎮咳薬(例えば、コデイン、ヒドロコドン、カルミフェン、カルベタペンタン、またはデキストラメトルファン);利尿薬;あるいは鎮静性または非鎮静性抗ヒスタミンが挙げられる。本発明は、1以上の治療剤と組み合わせた、式(I)の化合物またはそれらの薬学的に許容しうる塩の使用を包含するものと理解されたい。
【0058】
本発明の化合物は、ヒト医薬および動物薬に有用である。処置への言及は、明示的に別に記載しない限り、確立された症状の処置および予防的処置の双方を包含すると理解されたい。
【0059】
上記のような式Iのシクロペンチル誘導体は、慣用の方法により、例えば、活性成分を薬学的に許容しうる、治療上不活性な有機および/または無機担体材料と混合することにより調製される薬学的に許容しうる組成物の「活性成分」として投与することができる。
【0060】
上記のシクロペンチル誘導体を含む組成物は、種々の剤形で、例えば経口的には、錠剤、トローチ、カプセル、糖衣錠もしくはフィルムコート錠、液状溶液剤、乳剤もしくは懸濁液剤の剤形で;経直腸的には、座薬の剤形で;非経口的には、例えば筋肉内もしくは静脈内注射または点滴により;および経皮的に投与することができる。
【0061】
そのような組成物の調製に有用な、好適な薬学的に許容しうる、治療上不活性な有機および/または無機担体材料として、例えば、水、ゼラチン、アラビアゴム、ラクトース、でんぷん、セルロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、植物油、ポリアルキレングリコール等が挙げられる。上記のような式Iのシクロペンチル誘導体を含む組成物は、滅菌され、また、さらに、周知の成分、例えば、保存料、安定剤、湿潤または乳化剤、例えば、パラフィンオイル、モノオレイン酸マンニド、浸透圧を調整する塩、緩衝剤等を含むことができる。
【0062】
例えば、固形経口の剤形は、活性成分と共に、希釈剤、例えばラクトース、デキストロース、サッカロース、セルロース、コーンスターチまたはポテトスターチ;滑沢剤、例えばシリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムもしくはカルシウム、および/またはポリエチレングリコール;結合剤、例えばでんぷん、アラビアゴム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルピロリドン;離解剤、例えばでんぷん、アルギン酸、アルギン酸塩、でんぷんグリコール酸ナトリウム;発泡混合物;色素;甘味料;湿潤剤、例えばレシチン、ポリソルベート、ラウリル硫酸塩;ならびに一般に、医薬処方物に用いられる無毒で薬理学的に不活性な物質を含むことができる。前記医薬製剤は、既知の方法で、例えば、混合、顆粒化、錠剤化、糖衣、またはフィルムコーティングの方法によって製造することができる。
【0063】
経口処方物は、慣用の方法、例えば、腸溶コーティングを錠剤および顆粒に付与することにより調製することができる持続性放出処方物を含む。
【0064】
経口投与用の液体分散剤は、例えばシロップ剤、乳剤、および懸濁液剤であることができる。
【0065】
シロップ剤は、担体として、例えばサッカロース、またはサッカロースとグリセリンおよび/またはマニトールおよび/またはソルビトールを含むことができる。
【0066】
懸濁液剤および乳剤は、担体として、例えば、天然ゴム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはポリビニルアルコールを含んでもよい。筋肉内注射用の懸濁液剤または溶液は、薬学的に許容できる担体、例えば、滅菌水、オリーブ油、オレイン酸エチル、グリコール、例えば、プロピレングリコール、および所望ならば、適量のリドカイン塩酸塩を含むことができる。静脈注射または輸液用の溶液剤は、担体として、例えば、滅菌水を含んでいてもよく、または、好ましくは、滅菌した、水性の、等張性の生理食塩溶液の剤形であることができる。
【0067】
坐薬は、活性成分と共に、薬学的に許容しうる担体、例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル界面活性剤またはレシチンを含んでもよい。
【0068】
好適な処置は、クリアランス率に応じて、1日あたり、1、2または3回与えられる。従って、所望の用量は、単回投与または、適切な間隔で、例えば、1日あたり2〜4以上のサブ用量で、分割投与として提供できる。
【0069】
上記のような式Iのシクロペンチル誘導体を含む医薬組成物は、例えば、カプセル剤、錠剤、粉末注射剤、茶さじ一杯、座薬等の投与単位あたり、約0.1〜約500mg、最も好適には1〜10mgの活性成分を含む。
【0070】
投与すべき最適な治療上有効な用量は、当業者が容易に決定することができ、基本的には、製剤の強さ、投与のモード、および処置される条件または疾患の進展度で、変化する。さらに、対象者の年齢、体重、食餌療法および投与時間を含む、処置される特定の対象者に付随する因子に応じて、用量を適切に治療上有効なレベルに調整する必要がある。
【0071】
以下の実施例が本発明をさらに説明する。
【0072】
実施例1
シス−2−[3−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−シクロペンタンカルボン酸アミド
乾燥THF中の2−アミノ−シクロペンタンカルボン酸アミド(0.75g、6.5mmol)の2M溶液を、実施例3に記載のようにして調製された3−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)−ベンズアルデヒド(1.64g、7.15mmol)の乾燥THF中の1M溶液に加えた。この混合物に、乾燥THF中のTi(O−iPr)4(2.77g、9.75mmol)の2M溶液を滴下し、反応混合物を窒素下に室温で12時間攪拌した。
【0073】
無水エタノール中の水素化ホウ素ナトリウム(0.69g,18.2mmol)の0.75M溶液を加え、得られた混合物を70℃で6時間加熱した。冷却後、水8mlを加えて反応をクエンチし、得られた白色析出物を濾去した。粗化合物をSCXカートリッジ(Strong Cation eXchange resin)を用いて精製した。純粋な生成物を、メタノール中の3%アンモニア溶液で溶離することにより回収した。真空下に溶媒をエバポレートした後、標題化合物(2.08g)を最終収率94%で得た。
【0074】
【表1】

【0075】
実施例2
シス−2−[4−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)−3,5−ジメチル−ベンジルアミノ]−シクロペンタンカルボン酸アミド
乾燥THF中の2−アミノ−シクロペンタンカルボン酸アミド(0.75g、6.5mmol)の2M溶液を、実施例4に記載のようにして調製された4−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)−3,5−ジメチル−ベンズアルデヒド(1.84g、7.15mmol)の乾燥THF中の1M溶液に加えた。この混合物に、乾燥THF中のTi(O−iPr)4(2.77g、9.75mmol)の2M溶液を滴下し、反応混合物を窒素下に室温で12時間攪拌した。
【0076】
無水エタノール中の水素化ホウ素ナトリウム(0.69g,18.2mmol)の0.75M溶液を加え、得られた混合物を70℃で6時間加熱した。冷却後、水8mlを加え、得られた白色析出物を濾去した。粗化合物をSCXカートリッジ(Strong Cation eXchange resin)を用いて精製した。純粋な生成物を、メタノール中の3%アンモニア溶液で溶離することにより回収した。真空下に溶媒をエバポレートした後、標題化合物(2.14g)を収率89%で得た。
【0077】
【表2】

【0078】
実施例3
3−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)−ベンズアルデヒド
DMF中の1−ブロモメチル−2−フルオロ−ベンゼン(1.50g、8.0mmol)の0.5M溶液を、DMF100ml中の3−ヒドロキシ−ベンズアルデヒド(0.89g、7.3mmol)、K2CO3(1.51g、11mmol)およびKI(0.12g,0.73mmol)の懸濁液に滴下した。反応混合物を90℃で一晩攪拌した。室温に冷却後、固体状残渣を濾去し、溶媒を真空下にエバポレートした。残渣を酢酸エチルに溶解し、有機層を2回、1M NaOHで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、乾固するまでエバポレートした。残渣をシリカゲルで精製し、標題化合物167mgを得た(定量的収率)。
【0079】
実施例4
4−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)−3,5−ジメチル−ベンズアルデヒド
DMF中の1−ブロモメチル−2−フルオロ−ベンゼン(1.50g、8.0mmol)の0.5M溶液を、DMF100ml中の4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル−ベンズアルデヒド1.09g(7.3mmol)、K2CO3 1.51g(11mmol)およびKI 120mg(0.73mmol)を含有する懸濁液に滴下した。反応は、実施例3に記載したと同じ方法に従った。残渣をシリカゲルで精製し、標題化合物(1.88g)を定量的回収率で得た。
【0080】
実施例5
ラット脳膜中の3H−バトラコトキシン(batrachotoxin)のインビトロ結合
膜調製物(P2画分)
雄性ウイスターラット(Harlan, Italy - 175〜200g)を軽い麻酔下に屠殺して、脳を速やかに取り出し、皮質を切り取って、氷冷0.25Mスクロース緩衝液(50mMトリスHCl、pH7.4)の10容中でホモジナイズした。粗ホモジナートを3250rpmで10分間遠心分離し、上清を回収した。ペレットをホモジナイズし、再度遠心分離し、二つの上清をプールし、+4℃で、14750rpmで10分間遠心分離した。得られたペレットを、使用まで、−20℃で保存した。
【0081】
結合アッセイ
ペレットを、ポリトロン(Polytron)PT10を用いて、0.8mM MgSO4、5.4mM KCl、5.5mMグルコースおよび130mMコリンを含有する50mMヘペス緩衝液、pH7.4中で再懸濁した。結合アッセイは、膜調製物50μl(タンパク質約200μg)、3H−バトラコトキシンリガンド(10nM)50μl、TTX(1μM)50μl、サソリ毒(37.5μg/ml)50μlおよび試験化合物もしくは緩衝液50μlまたは非特異的結合を測定するための 300μMのベラトリジン(veratridine)を含有する最終容積0.25ml中で行った。結合アッセイは、37℃で30分間行い、ワットマンGF/Bガラス繊維フィルターを通しての、真空下での急速濾過により停止した。フィルター(0.1%ポリエチレンイミンで予め浸漬)を3x5mlの氷冷緩衝液で洗浄し、シンチレーションカクテル(Filter Count, Packard)を含有するピコバイアル中に入れた。結合した放射能を、効率45%で液体シンチレーション分光分析法により測定した。
【0082】
データ解析
IC50は、コンピュータプログラムLIGAND(McPherson, J. Pharmacol. Methods, 14, 213. 1985)により、置換曲線から算出した。置換曲線は、少なくとも9種の濃度を用いて、それぞれ2回づつ、100,000倍の範囲をカバーして得られた。
【0083】
実施例6
ラット脳膜中の3H−ニトレンジピン(nitrendipine)のインビトロ結合
膜調製物
雄性ウイスターラット(Harlan, Italy - 175〜200g)を軽い麻酔下に屠殺して、脳を速やかに取り出し、皮質を切り取り、ポリトロンPT10を用いて、氷冷50mMトリスHCl、pH7.7の10容中でホモジナイズした。粗ホモジナートを50000xgで10分間遠心分離した。ペレットをホモジナイズし、新鮮な緩衝液中で2回、+4℃で、50000xgで10分間遠心分離した。得られたペレットを、使用まで、−20℃で保存した。
【0084】
結合アッセイ
ペレットを、ポリトロンPT10を用いて、50mMトリスHCl、pH7.7中で再懸濁した。結合アッセイは、膜調製物900μl(タンパク質約700μg)、3H−ニトレンジピン(0.15nM)50μl、および試験化合物もしくは緩衝液50μlまたは非特異的結合を測定するための1μMのニフェジピンを含有する最終容積1ml中で行った。結合アッセイは、25℃で45分間行い、ワットマンGF/Bガラス繊維フィルターを通しての、真空下の急速濾過により停止した。フィルターを3x5mlの氷冷緩衝液で洗浄し、シンチレーションカクテル(Filter Count, Packard)を含有するピコバイアル中に入れた。結合した放射能を、効率45%で液体シンチレーション分光分析法により測定した。
【0085】
データ解析
IC50は、コンピュータプログラムLIGAND(McPherson, J. Pharmacol. Methods, 14, 213. 1985)により、置換曲線から算出した。置換曲線は、少なくとも9つの濃度を用いて、それぞれ2回づつ、100,000倍の範囲をカバーして得られた。
【0086】
実施例7
カルシウム流入アッセイ
IMR32ヒト神経芽細胞腫細胞は、構成的に、LおよびN型チャンネルの双方を有している。分化条件下で、IMR32は、優先的に、N型カルシウムチャンネルを膜表面に発現する。残りのL型カルシウムチャンネルは、選択的L型遮断薬、ニフェジピンを用いて、遮断された。これらの実験条件において、N型チャンネルのみを検出できる。
【0087】
IMR32細胞を、1mMジブチリル−cAMPおよび2.5μMブロモデオキシウリジンを用いて、225cm2のフラスコ中で、8日間(4回)、分化させ、次いで、分離し、96ポリリシン−コートプレート上に、200,000細胞/穴で播種し、さらに、使用前に分化用緩衝液の存在下に18〜24時間インキュベートした。
【0088】
蛍光カルシウムインジケーター485〜535nm波長に基づく、Ca2+キットアッセイ(Molecular Devices)を使用した。
【0089】
分化細胞を、染料をローディングして、37℃で30分間インキュベートし、次いで、ニフェジピンを、それのみ(1μM)またはω−コノトキシン(conotoxin)もしくは試験化合物の存在下に、さらに15分間で加えた。
【0090】
蛍光(485〜535nm)を、Victor Plate reader(Perkin Elmer)を用いて、100mM KCl脱分極溶液の自動注入の前および後(30〜40秒)に測定した。
【0091】
阻害曲線を、それぞれ3回ずつ、5種の濃度から計算し、線形回帰分析法を用いて、IC50を決定した。
【0092】
一般式Iの好ましい化合物は、N型カルシウムチャンネルを、10μM未満のIC50値で阻害した。
【0093】
実施例8
電気生理学的アッセイ
緊張遮断(tonic block)を決定するための実験を、NaチャンネルNav1.3を発現する、単離したアフリカツメガエル(Xenopus)の卵母細胞で行った。電流は、2電極式ボルテージクランプ(TEVC)法を用いて記録した。
【0094】
卵母細胞の調製:
カエル(アフリカツメガエル、Xenopus Laevis)を、3−アミノ安息香酸エチルエステル(1g/l)を含む溶液中で麻酔し、25分後、それを「氷ベッド」上にあお向けに置いた。皮膚およびその他の組織を切断し、卵巣葉を引き出して、ND96FCa2+(NaCl 96mM,KCl 2mM,MgCl2 1mM,ヘペス10mM,NaOHでpH7.85)中に保持した。
【0095】
卵母細胞を除去した後、筋肉と皮膚を別々に縫い合わせた。
【0096】
卵巣葉は、10/20卵母細胞のクラスターに減少させ、コラゲナーゼ溶液(1mg/ml)を含む管の中に入れ、インキュベーター中で約1時間、動かし続けた。
【0097】
この工程の最後に、卵母細胞が十分に互いに分離されたとき、それらを、ND96FCa2+で3回、NDE(ND96FCa2+ +CaCl 0.9mM,MgCl2 0.9mM,ピルバート(piruvate)2.5mM,ゲンタマイシン 50mg/l)で3回リンスした。
【0098】
得られた卵母細胞は、発生の異なるステージにあった。ステージVまたはVIの細胞のみを、その後のRNA注入実験用に選択した。
【0099】
調製の翌日、卵母細胞に20ngNav1.3cRNAを注入し(Drummond Nanojet)、NDE中で保持した。
【0100】
mRNA注入の後48時間目から、全細胞電流を、2微小電極式ボルテージクランプ自動ワークステーションを用いて記録した。
【0101】
典型的な微小電極は、0.5〜1MΩの抵抗を有し、3M KClで満たされていた。
【0102】
対照浴溶液は、NaCl 98、MgCl2 1、CaCl2 1.8、ヘペス5(pH7.6)を含有していた(mM)。
【0103】
化合物を、原液(20mM)で調製し、外部浴溶液中で最終濃度に溶解した。
【0104】
電流記録:
最初に、最大活性化を誘起する膜電位を決定するために、卵母細胞で発現されるNav1.3電流に対する電流/電圧(I/V)の関係を検討した。Nav1.3は、緊張遮断研究に試験電位(Vtest)として使用した、0mVで最大活性化を示した。
【0105】
チャンネル利用可能性が最大である(Imax)、休息状態に対する膜電位(Vrest)および最大電流利用可能性の半分(I1/2)を生じる半最大不活性化に対する膜電位(V1/2)をそれぞれ決定するために、Nav1.3電流の定常状態不活性化特性を検討した。この2つの電圧条件は、次いで、緊張遮断の電位依存性を評価するために使用した。
【0106】
最後に、2段階プロトコルを、Nav1.3の遮断の電位依存性を決定するために使用した:卵母細胞を、−80mVでクランプし、電流を、100msステップパルスにより、それぞれ、−80mV(休息、Imax条件)および−40mV(脱分極、I1/2条件)で3000msプレコンディショニング電位から、0mV(Vtest)に、活性化した。
【0107】
濃度−阻害曲線および脱分極(半最大電流利用可能性)条件における緊張遮断に対するIC50値を決定するために、2種の条件における電流増幅を、様々な濃度の化合物の不存在下または存在下(その間に洗浄を行う)に、記録した。
【0108】
一般式Iの好ましい化合物は、対照のナトリウムチャンネル遮断薬、ラルフィナミド(ralfinamide)より低いIC50値で、Nav1.3ナトリウムチャンネルを阻害する。
【0109】
実施例9
ラットとマウスにおける最大電気ショック試験
ウイスターラットは、少なくとも97%の対照動物において、後肢強直性伸筋応答をもたらすのに十分な、耳内クリップ電極を通しての電気ショック(パルス継続期間0.4msを有するパルス列60Hzで、160mA、0.2s;7801型ECTユニットモデル、Ugo Basile, Comerio, Italy)を受けた。
【0110】
マウスは、パルス継続期間0.4msを有するパルス列80Hzで、0.7sの28mAショックを受けた。試験化合物および標準的AEDのいくつかの投与を、MES誘起前に、5ml/kg、経口的に60分または腹腔内に30分の容量で、投与あたり10〜20匹のマウスまたはラットの群に投与し、ED50を算出した。発作の後肢強直性伸筋成分の完全な抑制は、抗痙攣活性の証拠とした。
【0111】
実施例10
マウスホルマリン試験
Roslandら(1990)からの修正プロトコルに従って、マウスを、左後脚の脚裏の表面に、2.7%ホルマリン溶液20μlを用いて、皮下に(s.c.)注射し、直ちに、透明なPVC観察チャンバー(23x12x13cm)に入れた。痛み挙動を、注射した脚の累積舐め回数を計測することにより定量化した。測定は、ホルマリン注射後の初期段階(0〜5分)および後期段階(30〜40分)の間に行った(Tjolsenら、1992)。
【0112】
試験化合物を、ホルマリン注射の15分前に、経口で、投与あたり10マウスの群に、10ml/kg体重の容量で投与した。対照群は、ビヒクルで処理した。
【0113】
実施例11
炎症のカラギーナンモデル
175〜200gの雄性ウイスターラットを使用した。
【0114】
左後脚に、カラギーナン(生理食塩水中2%w/v)100μlを注射した。本発明の化合物(30mg/kg)、インドメタシン(5mg/kg)または対照ビヒクル(例えば、蒸留水)を経口で、カラギーナン注射の1時間前に投与した。脚の容積を、カラギーナン注射の直前(基本)ならびに注射の1、2、3、4および5時間後に、プレチスモメーター(plethysmometer、Ugo Basile)を用いて、測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】


(式中、
Xは、メチレン、酸素、硫黄またはNR7基であり;
1は、CF3、フェニル、フェノキシまたはナフチルで場合により置換されている、直鎖もしくは分岐鎖のC1〜C8アルキルまたはC3〜C8アルケニレンまたはC3〜C8アルキニレン鎖であり、その芳香環が1個以上のC1〜C4アルキル、ハロゲン、トリフルオロメチル、ヒドロキシまたはC1〜C4アルコキシ基で場合により置換されており;
2、R3は、独立に、水素、C1〜C3アルキル鎖、ハロゲン、トリフルオロメチル、ヒドロキシまたはC1〜C4アルコキシ基であり;
4、R5、R6、R7は、独立に、水素またはC1〜C6アルキルである)
の化合物またはそれらの薬学的に許容しうる塩。
【請求項2】
Xが、酸素、メチレン、NHまたはNCH3であり、R1が、CF3、フェニルまたはフェノキシ基で場合により置換されているC1〜C8アルキル鎖(R1中の芳香環は、1個または2個のハロゲンまたはメトキシまたはトリフルオロメチル基で場合により置換されている)であり、R2およびR3が、水素、メチル、メトキシ、フッ素、塩素または臭素であり、R4、R5およびR6が、水素またはメチルである、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項3】
2−(2−ベンジルオキシ−ベンジルアミノ)−シクロペンタンカルボン酸アミド;
2−(3−ベンジルオキシ−ベンジルアミノ)−シクロペンタンカルボン酸アミド;
2−(4−ベンジルオキシ−ベンジルアミノ)−シクロペンタンカルボン酸アミド;
2−[2−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−シクロペンタンカルボン酸アミド;
2−[3−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−シクロペンタンカルボン酸アミド;
cis−2−[3−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−シクロペンタンカルボン酸アミド;
2−[4−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−シクロペンタンカルボン酸アミド;
2−[4−(2−フルオロ−ベンジルチオ)−ベンジルアミノ]−シクロペンタンカルボン酸アミド;
2−[4−(2−フルオロ−ベンジルアミノ)−ベンジルアミノ]−シクロペンタンカルボン酸アミド;
2−[2−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)−3−フルオロ−ベンジルアミノ]−シクロペンタンカルボン酸アミド;
2−[4−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)−3−フルオロ−ベンジルアミノ]−シクロペンタンカルボン酸アミド;
2−[2−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)−3−クロロ−ベンジルアミノ]−シクロペンタンカルボン酸アミド;
(2−[4−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)−3−クロロ−ベンジルアミノ]−シクロペンタンカルボン酸アミド;
(2−[4−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)−3−ブロモ−ベンジルアミノ]−シクロペンタンカルボン酸アミド;
(2−[4−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)−2−メトキシ−ベンジルアミノ]−シクロペンタンカルボン酸アミド;
(2−[4−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)−3−メトキシ−ベンジルアミノ]−シクロペンタンカルボン酸アミド;
2−[4−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)−3,5−ジメチル−ベンジルアミノ]−シクロペンタンカルボン酸アミド;
cis−2−[4−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)−3,5−ジメチル−ベンジルアミノ]−シクロペンタンカルボン酸アミド;
ならびにその全ての立体異性体および/または薬学的に許容しうる塩よりなる群から選択される化合物。
【請求項4】
請求項1に記載の、式Iの化合物またはその薬学的に許容しうる塩の製造方法であって、
a)式II:
【化2】


(式中、R1、R2、R3およびXは、上記のとおりである)
の化合物を、還元剤の存在下に、式III:
【化3】


(式中、R4、R5およびR6は、上記のとおりである)
の化合物と反応させて、式Iの化合物を得るか;または
b)式IV:
【化4】


〔式中、X、R1、R2およびR3は、上記のとおりであり、Yは、ハロゲン原子またはO−EWG基(ここで、EWGは、それらが結合している酸素を良好な脱離基に変換することができる、例えばメシル、トシルまたはトリフルオロアセチル基のような電子吸引性基を意味する)である〕
の化合物を、式IIIの化合物と反応させて、式Iの化合物を得るか;または
c)式Ia:
【化5】


(式中、R1、R2、R3、R5、R6およびXは、上記のとおりである)
の化合物を、式VもしくはVI:
【化6】


(式中、YおよびR4は、上記のとおりであり;R8は、水素またはC1〜C5アルキルである)
の化合物と反応させ、R4がC1〜C6アルキルである本発明の化合物を得;そして、
所望ならば、本発明の化合物を本発明の他の化合物に変換し、および/または、所望ならば、本発明の化合物を薬学的に許容しうる塩に変換し、および/または、所望ならば、塩を遊離化合物に変換し、および/または、所望ならば、本発明の化合物の異性体の混合物を単一異性体に分離することを含む方法。
【請求項5】
請求項1に記載の式Iの化合物またはその薬学的に許容しうる塩を、好適な担体および/または希釈剤ならびに、場合により他の治療剤と混合して含む医薬組成物。
【請求項6】
ナトリウムおよび/またはカルシウムチャンネルが病理学的プロセスに含まれている、神経疾患、精神疾患、心臓血管疾患、炎症性疾患、眼疾患、泌尿器疾患、代謝性疾患および胃腸管疾患を予防、緩和および治療するためのナトリウムおよび/またはカルシウムチャンネルを調節する活性を有する医薬を製造するための、請求項1に記載の式Iの化合物またはその薬学的に許容しうる塩の使用。

【公表番号】特表2007−512272(P2007−512272A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540265(P2006−540265)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012835
【国際公開番号】WO2005/054178
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(505196819)ニューロン・ファーマシューティカルズ・ソチエタ・ペル・アチオニ (12)
【氏名又は名称原語表記】NEWRON PHARMACEUTICALS S.P.A.
【Fターム(参考)】