説明

シグナル伝達ペプチド

本発明は、特定の配列の新規なペプチドおよびシグナルペプチドまたは膜固定ペプチドとしてのそれらの使用を提供する。本発明はまた、1以上のこのようなペプチドと目的のポリペプチドを含むキメラポリペプチド、ならびにこのようなペプチドおよびキメラポリペプチドをコードする核酸分子、ベクター、感染性ウイルス粒子および宿主細胞に関する。本発明はまた、このような要素と薬学上許容されるビヒクルを含む医薬組成物に関する。本発明はまた、特に細胞外で、または原形質膜の表面に固定された目的のポリペプチドを発現させるために、このようなペプチドを用いてポリペプチドを組換え的に生産する方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、シグナルペプチドおよび膜固定(membrane-anchoring)ペプチドとして用いるための新規なペプチドに関する。これらのペプチドは種々のウイルス株の狂犬病糖タンパク質に由来する。本発明はまた、このようなペプチドをコードする核酸分子およびベクター、ならびに宿主細胞から分泌されるよう、または細胞膜に固定されるように予定された目的のポリペプチドを発現させるために、このような核酸分子およびベクターを使用する方法も提供する。本発明は特に、種々の原核生物ならびに真核生物in vitro系、または治療もしくは予防目的での動物もしくはヒト生物におけるタンパク質発現の分野に関連する。
【0002】
組換えポリペプチドの作製は、ここ20年の間、バイオテクノロジー業界の主要な挑戦の1つであった。ワクチン接種、遺伝子療法、免疫療法および培養細胞での組換えポリペプチドの生産を含む種々の目的で培養宿主細胞または生体生物でヌクレオチド配列を発現させるために、いくつかのプラスミドDNAおよびウイルスベクターが作製および使用されてきた。
【0003】
精製工程は、組換えポリペプチドが、細胞を破砕して細胞内タンパク質を放出させる場合に得られる複雑なタンパク質混合物からではなく、培養上清から回収できる場合に容易になるので、組換え的に形質転換された宿主細胞からのポリペプチドの分泌が一般に有利である。さらに、分泌は、細胞内発現が宿主細胞または宿主生物上に保持され得るという有害(例えば、毒性)作用も軽減する。最後に、分泌経路を介した輸送はまた、特定のポリペプチドの安定性、折りたたみ、免疫認識および生物活性に役割を持つ翻訳後修飾およびタンパク質分解切断を受けるためにも必要とされる。
【0004】
一般的指針としては、分泌ポリペプチドは、それらのN末端にシグナルペプチドを含む前駆体として発現される。シグナルペプチドは通常、N末端および正電荷領域と、中央疎水性コア領域と、シグナルペプチダーゼにより認識されるC末端切断部位の3つの異なる領域からなっている。シグナルペプチドは、ポリペプチド前駆体の、小胞体(ER)の膜を通過する効率的輸送を確保する。その後、シグナルペプチドは、輸送中にシグナルペプチダーゼによって切断され、成熟ポリペプチド(シグナルペプチドを含まないポリペプチド)となる。ひと度ERへ入ると、ポリペプチドがゴルジ体へ輸送され、その後、ポリペプチドの性質およびシグナル伝達ペプチドの存在に応じて、分泌経路のいくつかのルートの1つをたどる。例えば、ポリペプチドは外部媒体中に分泌されるか、エンドソームおよびリソソームコンパートメントなどの細胞コンパートメントへのルートを採るか、あるいは細胞膜に固定され得る。グリコシル化、ジスルフィド結合の形成およびポリペプチドのタンパク質分解切断などのいくつかの翻訳後修飾がERおよびゴルジ体で起こるということは当技術分野で周知である。不適切な翻訳後修飾は一般に、異種ポリペプチド産物の生産において不活性のポリペプチドおよび不十分なシグナルペプチダーゼ切断をもたらし、特にヒト用途には使用できない。
【0005】
他方、これまでに、免疫原性ポリペプチドの免疫原性は種々の細胞下コンパートメントまたは細胞表面の細胞膜に固定される形態で提示されることにより増強され得ることが示されており(Andrew et al, 1990, J. Virol. 64, 4776-4783)、おそらくはMHCクラスIおよび/またはMHCクラスIIにより媒介される、宿主の免疫系への提示が高まるためと思われる。例えば、Ji et al. (1999, Human Gene Ther. 10:2727-2740)は、エンドソーム/リソソームコンパートメントへのヒト乳頭腫(パピローマ)ウイルス(HPV)−16のターゲッティングは、その抗腫瘍活性を増強し、発現宿主生物において腫瘍細胞特異的CD4+ヘルパーT細胞およびCD8+細胞傷害性Tリンパ球の生成を増加させることを報告している。WO99/03885は、原形質膜におけるHPV−16 E6およびE7ポリペプチドのターゲッティングは、それらの免疫原性能を高め、従って、宿主生物におけるそれらの治療効力を高める。輸送および細胞表面における膜結合タンパク質の固定には、シグナルペプチドおよび膜固定ペプチドが関与する。
【0006】
当技術分野ではこのようなシグナル伝達ペプチドのいくつかが利用できるが、狂犬病糖タンパク質から得られたものは、特にワクシニアウイルスにより媒介される発現に関しては有効であることが分かっている。従って、多様な宿主細胞および生物において、細胞分泌経路を介した有効な輸送、および/またはシグナルペプチダーゼ切断、および/または細胞膜への輸送および固定を保証する付加的なシグナル伝達配列を提供することが有利である。
【0007】
さらに、本発明の対象である狂犬病糖タンパク質由来シグナル伝達ペプチドをコードするヌクレオチド配列は、互いの間の相同性パーセンテージを75%未満まで低下させるように操作されており、従って、多重遺伝子発現ベクターでのそれらの使用が可能となり、発現されたタンパク質は宿主細胞から分泌されるか、または細胞膜、例えば原形質膜に固定されて細胞表面に存在するようになる。しかしながら、有効なシグナル伝達ペプチド、特に、シグナルおよび膜固定ペプチドの数が極めて限定されているために、単一のベクターから発現させ得るヌクレオチド配列の数が限定されている。実際、当業者に公知のように、多重遺伝子発現ベクターによりコードされている各ポリペプチドの輸送および膜固定を命令するために同じシグナル伝達ペプチドを用いると、このような相同配列間で組換え事象が起こり、それらの間に含まれるヌクレオチド配列の欠失がもたらされることがある(Matzke, M., Matzke, A. J. M., Scheid, O. M. In Homologous Recombination and Gene Silencing in Plants; Paszkowski, J. Ed. Kluwer Academic Publishers, Netherlands, 1994; pp 271-300)。この不安定性の問題は、ベクター原株を特にヒト臨床試験に使用不能とし得る。
【0008】
上記に詳説したように、当技術分野では、特に真核宿主細胞および生物において、分泌型および膜固定型ポリペプチドを組換え的に生産するための選択的シグナル伝達ペプチドの必要がある。本発明は、シグナルおよび膜固定ペプチドとして種々の狂犬病ウイルス株の糖タンパク質から得られた新規なペプチドを提供することでこの必要に取り組むものである。このようなペプチドは、ワクシニアウイルスベクターから、真核細胞で発現された目的ポリペプチドの分泌および膜固定を命令するのに極めて有効であることが分かった。さらに、本発明はまた、配列が互いの間の相同性パーセンテージが75%未満を示すように操作されているこのようなペプチドをコードする核酸分子も提供する。単一のベクターから発現された複数の目的ポリペプチドの分泌および膜固定を提供するために、このような操作された核酸分子を用いると、このようなベクター構築物に相同配列が存在する場合に自然に起こる相同組換え事象の可能性を減らす。よって、本発明は、特に真核宿主細胞において種々のポリペプチドの分泌および膜局在を果たすための、特に多重遺伝子発現ベクターに関して、組換え技術において重要なツールとなる。
【0009】
この技術的問題は、特許請求の範囲で定義された実施形態の提供により解決される。
【0010】
本発明のその他の、またさらなる態様、特徴および利点は、以下の本発明の、現在のところ好ましい実施形態の記載から明らかになろう。これらの実施形態は開示を目的に示されるものである。
【0011】
よって、第一の態様において、本発明は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4および配列番号5で示されるアミノ酸配列から本質的になる、またはそれからなるペプチドからなる群から選択されるペプチドを提供する。
【0012】
本明細書において全出願を通じ「a」および「an」は、特に断りのない限り、示されている化合物または工程の「少なくとも1つ」、「少なくとも第一」、「1以上」または「複数」を意味するという意味において用いられる。
本明細書において「および/または」とは、「および」、「または」および「この用語によって接続された要素の全て、または他のいずれかの組合せ」の意味を含む。
【0013】
本明細書において「約」または「およそ」とは、示された値または範囲の20%以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内を意味する。
【0014】
本明細書において、定義された生成物、組成物および方法に対して用いる場合、「含んでなる」とは、それらの生成物、組成物および方法は示されている成分または工程を含むが、他を排除しないことを意味するものとする。「〜から本質的になる」とは、本質的意味の他の成分または工程を排除することを意味する。従って、示された成分から本質的になる組成物は微量の夾雑物および薬学上許容される担体を排除しない。「〜からなる」とは、微量要素を超える他の成分または工程を排除することを意味する。例えば、ペプチドが示されたアミノ酸配列以外のアミノ酸を含まない場合、そのペプチドはそのアミノ酸配列「からなる」。アミノ酸配列がわずかな付加的アミノ酸残基、一般には約1から約10などの付加的残基のみを伴って存在する場合、そのペプチドはそのアミノ酸配列から「本質的になる」。アミノ酸配列がペプチドの最後のアミノ酸配列の少なくとも一部である場合、そのペプチドはそのアミノ酸を「含んでなる」。このようなペプチドは数個から数百までの付加的アミノ酸残基を持ち得る。このような付加的アミノ酸残基はとりわけ、ペプチド輸送に役割を果たしたり、ポリペプチド生産や精製を助けたり、あるいは半減期を延長したりすることができる。同じことがヌクレオチド配列についても当てはまる。
【0015】
本明細書において「アミノ酸」とは、天然L−アミノ酸、すなわち、20種の遺伝子コードされているアミノ酸、アラニン(AlaまたはA)、バリン(ValまたはV)、ロイシン(LeuまたはL)、イソロイシン(IleまたはI)、プロリン(ProまたはP)、メチオニン(MetまたはM)、フェニルアラニン(PheまたはF)、トリプトファン(TrpまたはW)、グリシン(GlyまたはG)、セリン(SerまたはS)、トレオニン(ThrまたはT)、システイン(CysまたはC)、チロシン(TyrまたはY)、アスパラギン(AsnまたはN)、グルタミン(GlnまたはQ)、アスパラギン酸(AspまたはD)、グルタミン酸(GluまたはE)、リシン(LysまたはK)、アルギニン(ArgまたはR)およびヒスチジン(HisまたはH)、ならびにβ−アラニン、オルニチンもしくはメチオニンスルホキシドなどのその天然誘導体、または1以上のα−アミノ、α−カルボキシルまたは側鎖で、例えばメチル、ホルミル、アセチル、グリコシルおよびホスホリルなどの付加によって修飾されたアミノ酸を指す。
【0016】
本明細書において「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、ペプチド結合を介して結合した9以上のアミノ酸を含んでなるアミノ酸残基のポリマーを表し、互換的に用いられる。ポリマーは直鎖であっても分枝型であっても環状であってもよい。一般的な指標として、アミノ酸ポリマーが長い場合(例えば、80を超えるアミノ酸残基)、好ましくはポリペプチドまたはタンパク質と呼ばれる。結局、「ペプチド」とは、アミノ酸約9〜約80個、有利にはアミノ酸約10〜約75個、好ましくはアミノ酸約20〜約70個、より好ましくはアミノ酸約23〜約66個の長さのフラグメントを指す。ペプチドは、ポリペプチド局在(例えば、ポリペプチドを特定の細胞コンパートメントまたは膜に向けること)に関与するものなどの天然タンパク質の選択された領域を含み得る。「ポリペプチド/ペプチド」の定義には、天然型ならびに改変型ポリペプチド/ペプチドを包含する。
【0017】
本明細書において「天然」とは、天然源から得られた(例えば、単離、精製された)材料を指し、実験室でヒトによって人工的に改変または変更された材料とは異なる。例えば、天然ポリペプチド/ペプチドは、野生型生物または細胞のゲノムに存在している遺伝子によりコードされている。これに対し、改変ポリペプチド/ペプチドは、例えば、1以上のアミノ酸の挿入、欠失もしくは置換、またはこれらの可能性の任意の組合せによって天然ポリペプチド/ペプチドとは異なるように実験室で改変された核酸分子によりコードされている。いくつかの改変が意図される場合、それらは連続残基に関するものであっても、かつ/または非連続残基に関するものであってもよい。
【0018】
「シグナル伝達ペプチド(signaling peptide)」は、ある宿主細胞または生物においてそのペプチドを含んでなるポリペプチドの特定の局在を可能とするペプチドである。シグナル伝達ペプチドの例としては、シグナルペプチドおよび膜固定ペプチドが挙げられる。
【0019】
本明細書において「シグナルペプチド」または「シグナル配列」とは、宿主細胞の小胞(ER)に作動可能なように連結されたポリペプチドの経路を誘発し得るアミノ酸配列を指す。シグナルペプチドは一般にエンドペプチダーゼ(例えば、特異的ER局在シグナルペプチダーゼ)により切断されて(成熟)ポリペプチドを放出する。シグナルペプチドの長さは一般に、アミノ酸約10〜約40個、有利にはアミノ酸約15〜約30個、好ましくはアミノ酸約18〜約25個、特に好ましくはMetイニシエーター残基を含むアミノ酸約23個である。
【0020】
本明細書において「膜固定ペプチド」とは、細胞膜、特に原形質膜に作動可能なように連結されたポリペプチドを固定することができる疎水性のアミノ酸配列を指す。膜固定ペプチドの長さは一般に、アミノ酸約20〜約85個、有利にはアミノ酸約25〜約75、好ましくはアミノ酸約30〜約70個、特に好ましくはアミノ酸約66の範囲である。好ましくは、それは、細胞膜の脂質二重層を1回以上貫通し得るか、または膜の外表と相互作用し得る疎水性の高い中央ドメインを含む。
【0021】
本明細書において「キメラ」ポリペプチドとは、配列中に本来見られるものとは異なる位置にポリペプチド/ペプチドを含んでなる単一のポリペプチド鎖を指す。キメラポリペプチドを構成する種々のポリペプチド/ペプチドは通常、本来別個のタンパク質に存在し、キメラポリペプチド中で連結されているか、あるいはそれらは本来同じタンパク質に存在し得るが、キメラポリペプチドとは異なる配置で存在する。例えば、キメラポリペプチドは、異なる供給源から得られたシグナルペプチドおよび目的のポリペプチドから構成される。別のキメラポリペプチドは、シグナルペプチド、目的ポリペプチドおよび膜固定ペプチドから構成されてもよく、この目的ポリペプチドはシグナルペプチドおよび/または膜固定ペプチドとは異なる供給源から得られる。
【0022】
「作動可能なように連結される」とは、少なくとも2つの成分が並列されたものであり、このように記載される成分は、それらを予測された方式で機能させる関係にある。例えば、プロモーターが宿主細胞または生物において発現を可能とする転写を誘発および可能とする場合に、そのヌクレオチドと作動可能なように連結されている。シグナルペプチドが、ERを介したその輸送を誘発および可能とし、その後、切断されてポリペプチドを放出する場合に、そのポリペプチドと作動可能なように連結されている。膜固定ペプチドがポリペプチドの細胞膜、特に原形質膜への固定を可能とする場合に、そのポリペプチドと作動可能なように連結されている。
【0023】
本明細書において「ベクター」とは、宿主細胞または生物において核酸分子を送達および発現し得る因子である。ベクターは染色体外型(例えば、エピソーム)であっても組込み型(宿主染色体に組み込むためのもの)であっても、自律複製型であってもなくても、多重コピーであっても低コピーであっても、二本鎖であっても一本鎖であっても、裸(naked)であっても他の分子との複合体(例えば、脂質またはポリマーと複合化して、リポソーム、リポプレックスまたはナノ粒子などの粒状構造を形成したベクター、ウイルスキャプシッドにパッケージングされたベクター、および固相粒子上に固定されたベクターなど)であってもよい。
【0024】
「核酸」、「核酸分子」、「ポリヌクレオチド」および「ヌクレオチド配列」は本発明では互換的に用いられ、長さによらず、ポリデオキシリボヌクレオチド(DNA)またはポリリボヌクレオチド(RNA)分子のいずれかの、またはそれらの組合せのポリマーを定義する。この定義には、一本鎖または二本鎖、直鎖または環状、天然または合成ポリヌクレオチドを包含する。さらに、このようなポリヌクレオチドは非天然ヌクレオチド(例えば、米国特許第5,525,711号、同第4,711,955号またはEPA302175に記載されているものなどのメチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体)ならびに核酸のin vivo安定性を高めるため、その送達を高めるため、または宿主対象からのクリアランス速度を低減するための化学修飾(例えば、WO92/03568、米国特許第5,118,672号参照)を含み得る。存在する場合、修飾は重合前に行っても重合後に行ってもよい。
【0025】
本発明において「配列相同性」(または配列同一性)とは、一般にパーセンテージとして表され、互いに所定の同一性を保持するヌクレオチド配列を表す。2つのヌクレオチド配列間の相同性%は、それらの配列に共通する同一の位置の数の関数であり、最適なアライメントのために導入する必要のあるギャップの数と各ギャップの長さが考慮されている。当技術分野では、ヌクレオチド配列間の相同性パーセンテージを求めるために、GCGウィスコンシンパッケージおよびNational Center for Biotechnology Information (NCBI)で公的に利用可能であり、印刷刊行物(例えば、Altschul et al, 1990, J. Mol. Biol. 215, 403-410)に記載されているthe Basic Local aliment Search Tool (BLAST)プログラムなどの種々のコンピュータープログラムおよび数学的アルゴリズムが利用可能である。
【0026】
本明細書において「宿主細胞」とは、本発明のベクターのレシピエントとなり得る、またはレシピエントとなった任意の細胞およびそのような細胞の後代を定義する。この用語は広く、単離された細胞、細胞群、ならびに細胞の特定の構成物、例えば組織または器官を包含するものと理解すべきである。このような細胞は一次型、形質転換型または培養細胞であり得る。
【0027】
本明細書において「生物」とは、脊椎動物、特に哺乳類種のメンバー、特には家庭動物、農場動物、競技動物、およびヒトを含む霊長類を指す。
【0028】
一実施形態では、本発明は、配列番号1
【化1】

または配列番号2
【化2】

で示されるアミノ酸配列から本質的になる、またはそれからなる、上記で定義されたシグナルペプチドの機能特性を示す新規な単離されたペプチドを提供する。
【0029】
より具体的には、配列番号1で示されるシグナルペプチドは、受託番号M38452としてUniProtデータベースに開示されている狂犬病ウイルスERA株の糖タンパク質前駆体のN末端に存在するシグナルペプチドに由来する。概略の情報としては、天然ERA株シグナルペプチドは、配列番号6
【化3】

のアミノ酸配列からなり、配列番号1のシグナルペプチドとは、それぞれ、天然ペプチドではAla残基が存在するのに対して本発明のシグナルペプチドではVaL残基である5番の位置と、天然ペプチドではVal残基が存在するのに対して本発明のシグナルペプチドではグリシンである13番の位置の2箇所で異なる。
【0030】
配列番号2で示されるシグナルペプチドは、受託番号ay009097としてUniProtデータベースに開示されている狂犬病ウイルスPG株の糖タンパク質前駆体のN末端に存在するシグナルペプチドに由来する。概略の情報としては、天然PG株シグナルペプチドは配列番号7
【化4】

のアミノ酸配列からなり、配列番号2のシグナルペプチドとは、天然ペプチドではLeu残基が存在するのに対して本発明のシグナルペプチドではGln残基である4番の位置で異なる。
【0031】
本発明のペプチドは、必要であれば、改変がシグナルペプチドの活性を変化させない限り改変可能である。例えば、イニシエーターMet残基(発現されるポリペプチドがそれを含む場合)を欠失させてもよい。
【0032】
本発明はまた、配列番号1または配列番号2で示されるアミノ酸配列から本質的になる、またはそれからなるペプチドの、シグナルペプチドとしての使用も提供する。本発明のペプチドは独立に、付加的なシグナル伝達ペプチド、特に本明細書に記載されるような膜固定ペプチドと組み合わせて用いて、細胞膜への目的ポリペプチドの適切な輸送および固定を誘発する、または可能にする。
【0033】
本発明はまた、配列番号3、配列番号4または配列番号5:
【化5】

で示されるアミノ酸配列から本質的になる、またはそれからなる、上記で定義された膜固定ペプチドの機能特性を示す新規な単離されたペプチドを提供する。
【0034】
より具体的には、配列番号3で示される膜固定ペプチドは、受託番号ay009097としてUniProtデータベースに開示されているPG株の狂犬病糖タンパク質のC末端に存在する膜固定ペプチドに由来する。概略の情報としては、この天然PG株膜固定ペプチドは、配列番号8
【化6】

のアミノ酸配列からなり、配列番号3の膜固定ペプチドとは3箇所で異なる。
【0035】
配列番号4で示される膜固定ペプチドは、受託番号S72465としてUniProtデータベースに開示されているNishigahara株の狂犬病糖タンパク質のC末端に存在する膜固定ペプチドに由来する。概略の情報としては、この天然Nishigahara株膜固定ペプチドは、配列番号9
【化7】

のアミノ酸配列からなり、配列番号4の膜固定ペプチドとは3箇所で異なる。
【0036】
配列番号5で示される膜固定ペプチドは、受託番号u11751としてUniProtデータベースに開示されているartic fox株の狂犬病糖タンパク質のC末端に存在する膜固定ペプチドに由来する。概略の情報としては、この天然artic fox株膜固定ペプチドは配列番号10
【化8】

のアミノ酸配列からなり、配列番号5の膜固定ペプチドとは、天然ペプチドではTyr残基が存在するのに対して本発明の膜固定ペプチドではHis残基である58番の位置で異なる。
【0037】
本発明のペプチドは、必要であれば、膜固定ペプチドの活性を変化させない限り改変可能である。
【0038】
本発明はまた、配列番号3、配列番号4または配列番号5で示されるアミノ酸配列から本質的になる、またはそれらからなるペプチドの、膜固定ペプチドとしての使用も提供する。本発明のペプチドは独立に、1以上の付加的なシグナル伝達ペプチド、特に本明細書に記載されるようなシグナルペプチドと組み合わせて用いて、細胞膜への目的ポリペプチドの固定を可能にする。好ましくは、本発明のペプチドは、原形質膜への目的ポリペプチドの固定を可能とし、他の細胞表面または細胞外培地中に存在する他の分子との相互作用を可能とする。
【0039】
本発明はまた、目的のポリペプチドと、(i)配列番号1もしくは配列番号2で示されるアミノ酸配列から本質的になる、もしくはそれからなる本発明のペプチド、または(ii)配列番号3、配列番号4もしくは配列番号5で示されるアミノ酸配列から本質的になる、もしくはそれからなる本発明のペプチドのいずれか、あるいは(iii)配列番号1もしくは配列番号2で示されるアミノ酸配列から本質的になる、もしくはそれからなる本発明のペプチドからと、配列番号3、配列番号4もしくは配列番号5で示されるアミノ酸配列から本質的になる、もしくはそれからなる本発明のペプチドの双方を含んでなるキメラポリペプチドも提供する。
【0040】
キメラポリペプチドは、化学合成により、または遺伝的手段、すなわち、キメラポリペプチドを構成する種々の各ポリペプチド/ペプチドをコードするヌクレオチド配列をフレーム内で融合させることによって作製することができる。「フレーム内で融合」とは、融合されたヌクレオチド配列の発現が、間に転写ターミネーターを含まない単一のポリペプチド鎖を生じることを意味する。融合は直接的なものであってもよいし(すなわち、各ポリペプチド/ペプチドをコードするコドンが間に外部コドンを含まずに連続している)、あるいはリンカーを介するものであってもよい(このキメラポリペプチドを構成する2つのポリペプチド/ペプチド結合部における)。このリンカーの存在は、キメラポリペプチドの適切な形成、折りたたみおよび/または機能を助けるか、または1以上の適当な制限部位を導入することによってクローニング工程を容易にすることができる。一般的指針としては、リンカーは通常、アミノ酸2〜30個の長さであり、グリシン、セリン、トレオニン、アスパラギン、アラニンおよび/またはプロリンなどのアミノ酸残基からなる。好適なペプチドリンカーの代表例としては、「Ser−Gly−Ser」、「Gly−Ser−Gly」、「Ser−Gly」、「Gly−Ser」およびそのヌクレオチド配列がポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を挿入するのに特に好適な1以上の制限部位をコードしているリンカー(例えば、ヌクレオチド配列「GGATCC」がBamHI制限部位をコードしている「Gly−Ser」リンカー)が挙げられる。
【0041】
好ましい実施形態では、配列番号1または配列番号2で示されるアミノ酸配列から本質的になる、またはそれからなる本発明のペプチド(シグナルペプチド)はキメラポリペプチドのアミノ末端、すなわち、目的ポリペプチドの最初の残基の前の位置で連結されている(イニシエーターMet残基は本発明のシグナルペプチドに含まれる)。
【0042】
本実施形態の一態様において、本発明のキメラポリペプチドは、宿主細胞から外部媒体(例えば、培養培地)中への目的ポリペプチドの分泌をもたらすために、他のシグナル伝達ペプチドを含まない。
【0043】
本実施形態の別の好ましい態様において、本発明のキメラポリペプチドは、細胞膜、特に原形質膜へ目的ポリペプチドを固定して、その細胞表面における提示をもたらすために、少なくとも1つの付加的なシグナル伝達ペプチド、特に膜固定ペプチドを含む。膜固定ペプチドは好ましくは、目的ポリペプチドのカルボキシ末端で、またはC末端部分内で連結されている。このカルボキシ末端はポリペプチドの最後のアミノ酸残基(停止コドンの前のコドンによリコードされている残基)を指すが、C末端部分はポリペプチドの最後から3番に含まれる部分を指す(ポリペプチドは、N末端部分と中央部分とC末端部分の3つの部分に分かれ、それぞれはポリペプチド全体の3分の1に相当すると仮定する)。好ましくは、C末端部分は、あるポリペプチドのカルボキシ末端の直前の100残基、より好ましくは50残基内に含まれる。本発明で用いるのに好適な膜固定ペプチドは、細胞タンパク質もしくはウイルスタンパク質、または細胞膜に自然状態で結合されているポリペプチドから取得または単離することができる。このような膜結合タンパク質は当業者に公的に入手可能な文献に十分に記載されている(例えば、Branden and Tooze, 1991, Introduction to Protein Structure p. 202-214, NY Garland参照)。より詳しくは、狂犬病糖タンパク質、HIVウイルスエンベロープ糖タンパク質および麻疹ウイルスFタンパク質が挙げられる。
【0044】
好ましくは、本発明のキメラポリペプチドに含まれる膜固定ペプチドは、配列番号3、4または5のいずれかで示されるアミノ酸配列から本質的になる、またはそれからなる本発明の膜固定ペプチドである。より好ましくは、本発明のキメラポリペプチドは、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるシグナルペプチドと、配列番号3で示されるアミノ酸配列からなる膜固定ペプチドを含んでなる。あるいは、本発明のキメラポリペプチドは、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるシグナルペプチドと、配列番号5で示されるアミノ酸配列からなる膜固定ペプチドを含んでなる。
【0045】
本明細書に記載されるシグナルペプチドおよび膜固定ペプチドは狂犬病糖タンパク質に由来するので、本発明のキメラポリペプチドに含まれる目的ポリペプチドは好ましくは狂犬病ウイルスとは異種である。本明細書において「狂犬病ウイルスとは異種の」ポリペプチドとは、野生型狂犬病ウイルスとは自然状態で会合していないか、または野生型狂犬病ウイルスのゲノムによってはコードされていないポリペプチドを指す。
【0046】
好適な目的ポリペプチドとしては、例えば、商業的価値または研究的価値を有するポリペプチドならびに疾病または障害を示している、または示す疑いのある宿主生物において治療活性または予防活性をもたらしうるポリペプチドを含む。例えば、目的ポリペプチドは、ホルモン、サイトカイン、免疫原、受容体、シャペロン、免疫グロブリン、酵素、増殖因子、GFPなどの蛍光タンパク質、輸送体タンパク質(フラボドキシン、グロビンおよびメタロチオネインなど)、毒素、自殺遺伝子産物、構造タンパク質、およびプロテアーゼ阻害剤などの阻害剤からなる群から選択される。本発明に関して、目的ポリペプチドは、好ましくは、免疫原性ポリペプチドおよび抗腫瘍ポリペプチドからなる群から選択される。
【0047】
「免疫原性」ポリペプチドとは、それが発現される宿主生物において免疫系を誘導、刺激、発達または追加免疫し得るポリペプチドを指す。このような免疫応答は体液性または細胞性または体液性と細胞性の双方であり得る。体液性応答は対象ポリペプチドに対する抗体生産を惹起し、細胞性応答はTヘルパー細胞および/またはCTL応答および/またはサイトカイン生産の刺激を惹起する。一般に、ポリペプチドの免疫原性は、当技術分野で標準的な種々のアッセイによって、in vitroまたはin vivoのいずれかで評価することができる(免疫応答の誘発および活性化を評価するために利用可能な技術の概説としては、例えば、Coligan et al, Current Protocols in Immunology; ed J Wiley & Sons Inc, National Institute of Healthの最新版を参照)。例えば、検出は比色定量、蛍光測定または放射性であってよく、好適な技術としては、ELISA、ウエスタンブロット、ラジオイムノアッセイおよび免疫沈降アッセイが挙げられる。細胞性免疫の測定は、CD4+およびCD8+T細胞から誘導されたものを含む、活性化されたエフェクター細胞によって分泌されたサイトカインプロフィールの測定(例えば、ELIspotによるIFNg産生細胞の定量)により、免疫エフェクター細胞の活性化状態の判定(例えば、従来の[H]チミジン取り込みによるT細胞増殖アッセイ)により、増感被験体における抗原特異的Tリンパ球のアッセイ(例えば、細胞傷害性アッセイにおけるペプチド特異的溶解)により、行うことができる。ポリペプチドの免疫原性はまた、ELIspot、四量体に基づく分析技術またはT細胞性免疫の分析のための他の標準的な技術により、好適な動物モデルにおいて評価することもできる。好適な免疫原性ポリペプチドはB型肝炎ウイルス(HBV)から得られるもの(例えば、EP414374;EP304578またはEP198474に記載されているようなS、preS2またはpreS1−ポリペプチド);C型肝炎ウイルス(HCV)から得られるもの(例えば、Core(C)、エンベロープ糖タンパク質E1、E2、非構造ポリペプチドNS2、NS3、NS4もしくはNS5またはその任意の組合せ);ヒト免疫不全ウイルス(HIV)から得られるもの(例えば、gp120またはgp160)および乳頭腫ウイルスから得られるものである。
【0048】
本発明のキメラポリペプチドに含まれる乳頭腫ウイルス免疫原性ポリペプチドは初期、後期またはそのいずれかの組合せであり得る。初期乳頭腫ウイルスポリペプチドとしては、E1、E2、E4、E5、E6およびE7が含まれ、後期ポリペプチドはL1またはL2である。好ましくはHPV−16、HPV−18、HPV−30、HPV−31、HPV−33、HPV−35、HPV−39、HPV−45、HPV−51、HPV−52、HPV−56、HPV−58、HPV−59、HPV−66、HPV−68、HPV−70およびHPV−85からなる群から選択される乳頭腫ウイルスから得られる。いくつかの乳頭腫ウイルスゲノムのヌクレオチド配列およびコードされているポリペプチドのアミノ酸配列は専門のデータバンクで入手可能である。概略の情報としては、HPV−16ゲノムは受託番号NC_01526およびK02718として;HPV−18はNC_001357およびX05015;HPV−31はJ04353として;HPV−33はM12732として;HPV−35はNC_001529として;HPV−39はNC_001535として;HPV−45はX74479として;HPV−51はNC_001533として;HPV−52はNC_001592として;HPV−56はX74483として;HPV−58はD90400として;HPV−59はNC_001635として;HPV−68はX67160およびM73258として;HPV−70はU21941として;また、HPV−85はAF131950としてGenbankに記載されている。しかしながら、本発明はこれらの例示的配列に限定されない。実際に、異なる乳頭腫ウイルス単離物間に見られる自然の遺伝子変動、ならびに当業者に入手可能な文献に記載されているもの(例えば、改変E1ポリペプチドを記載しているYasugi et al. 1997, J. Virol 71, 5942-51;改変E2ポリペプチドを記載しているSakai et al., 1996, J. Virol. 70, 1602-1611および本発明での使用に好適な改変E6およびE7ポリペプチドを記載しているWO99/03885を参照)などの非天然改変も本発明の範囲内に含まれる。
【0049】
「抗腫瘍」ポリペプチドとは、腫瘍細胞の拡大に抑制または正味の減少を提供できるポリペプチドを指す。ポリペプチドの抗腫瘍特性は、適当な動物モデルで、または処置された被験体において、一定期間にわたる実際の腫瘍サイズの低下によって測定することができる。腫瘍サイズを評価するには、放射線学的方法(例えば、単光子および陽電子放射型コンピューター断層撮影法;一般に、"Nuclear Medicine in Clinical Oncology," Winkler, C. (ed.) Springer-Verlag, New York, 1986参照)、従来の画像試薬(例えば、クエン酸ガリウム−67)を用いる方法、免疫学的方法(例えば、特異的腫瘍マーカーに向けられた放射性標識モノクローナル抗体)ならびに超音波法("Ultrasonic Differential Diagnosis of Tumors", Kossoff and Fukuda, (eds.), Igaku-Shoin, New York, 1984参照)を含む種々の方法が使用可能である。あるいは、ポリペプチドの抗腫瘍特性は、腫瘍マーカーの存在の低下に基づいて測定することができる。例としては、前立腺癌の検出のためのPSA、ならびに結腸直腸癌およびある種の乳癌の検出のためのCEAが挙げられる。さらに、ポリペプチドの抗腫瘍特性は、例えば代表的なヒト癌細胞系統を注射したマウスを使用するなど、好適な動物モデルで測定することもできる。触知可能な腫瘍が発達した後、マウスに本発明のベクターを注射し、その後、腫瘍増殖速度の低下および生存率の増加をモニタリングする。さらに、種々のin vitro法を用いて、in vivoにおける腫瘍阻害を推定することができる。好適な抗腫瘍ポリペプチドとしては、MUC−I(WO92/07000;Acres et al, 2005, Exp. Rev. Vaccines 4(4))、BRCA−I、BRCA−2(Palma et al., 2006, Critical Reviews in Oncology/haematology 27, 1-23)、癌胎児性抗原CEA(Conroy et al., 1995, Gene Ther; 2, 59-65)、MAGE(WO99/40188;De Plaen et al., 1994, Immunogenetics 40, 360-369)、MART−1、gp 100(Bakker et al., 1994, J. Exp. Med. 179, 1005-9)、PRAME、BAGE、Lage(NY Eos 1としても知られる)SAGE、HAGE(WO99/53061)、GAGE(Robbins and Kawakami, 1996. Current Opinions in Immunol. 8, 628-36)および前立腺特異的抗原(PSA)(Ferguson, et al., 1999, Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 96, 3114-9;WO98/12302、WO98/20117およびWO00/04149)ならびに腫瘍誘発能を有するウイルス由来のウイルスポリペプチドなどの腫瘍関連抗原(TAA)が挙げられる。
【0050】
本発明はまた、少なくとも本発明のペプチドをコードするヌクレオチド配列または本発明のキメラポリペプチドを含む、またはそれから本質的になる、またはそれらからなる単離された核酸分子も提供する。
【0051】
好ましい実施形態では、本発明は、配列番号11〜28のいずれかで示されるヌクレオチド配列の少なくとも1つを含む単離された核酸分子を提供する。
【0052】
より具体的には、配列番号11、配列番号14および配列番号15のヌクレオチド配列は、配列番号1のアミノ酸配列を有するシグナルペプチドをコードし;配列番号12のヌクレオチド配列は、配列番号2のアミノ酸配列を有するシグナルペプチドをコードし;配列番号13のヌクレオチド配列は、Nishigahara株(受託番号S72465としてUniProtに開示されている)の狂犬病糖タンパク質中に存在するシグナルペプチドをコードし;配列番号16のヌクレオチド配列は、ERA株(受託番号M38452としてUniProtに開示されている)の狂犬病糖タンパク質中に存在するシグナルペプチドをコードしている。
【0053】
配列番号17および配列番号22で示されるヌクレオチド配列は、PG株(受託番号ay009097としてUniProtに開示されている)の狂犬病糖タンパク質中に存在する天然膜固定ペプチドをコードし;配列番号18で示されるヌクレオチド配列は、配列番号3のアミノ酸配列を有する膜固定ペプチドをコードし;配列番号19で示されるヌクレオチド配列は、配列番号4のアミノ酸配列を有する膜固定ペプチドをコードし;配列番号20および21で示されるヌクレオチド配列は、配列番号5のアミノ酸配列を有する膜固定ペプチドをコードしている。
【0054】
配列番号23(M38452、v1)のヌクレオチド配列は、BamHIリンカーを介して配列番号17のヌクレオチド配列と連結されている配列番号11に開示されているヌクレオチド配列を含んでなり;配列番号24のヌクレオチド配列は、BamHIリンカーを介して配列番号18のヌクレオチド配列と連結されている配列番号12に開示されているヌクレオチド配列を含んでなり;配列番号25のヌクレオチド配列は、BamHIリンカーを介して配列番号19のヌクレオチド配列と連結されている配列番号13に開示されているヌクレオチド配列を含んでなり;配列番号26のヌクレオチド配列は、BamHIリンカーを介して配列番号20のヌクレオチド配列と連結されている配列番号14に開示されているヌクレオチド配列を含んでなり;配列番号27のヌクレオチド配列は、BamHIリンカーを介して配列番号21のヌクレオチド配列と連結されている配列番号15に開示されているヌクレオチド配列を含んでなり;また、配列番号28のヌクレオチド配列は、BamHIリンカーを介して配列番号22のヌクレオチド配列と連結されている配列番号16に開示されているヌクレオチド配列を含んでなる。
【0055】
さらに、配列番号23〜28のヌクレオチド配列は、付属の実施例の節に示されているように互いの相同性パーセンテージを75%未満まで低下させ、従って、複数の目的ポリペプチドの分泌および/または膜固定を可能とするための多重遺伝子発現ベクターにおいてそれらの少なくとも2つの併用を可能とするように操作されている。本発明のヌクレオチド配列の併用は、複数のポリペプチドを単一のベクターから発現させ、分泌および/または細胞膜へ輸送される必要がある場合に有利である。本発明のヌクレオチド配列の使用により、同じベクター中に相同配列が存在する場合に起こる可能性のある相同組換え事象のリスクを軽減することができる。当技術分野では、天然狂犬病シグナル伝達配列がそれらの間で高い相同性を示し、このような相同性がそれらの併用を妨げ、ベクターの安定性に悪影響を及ぼし、ヒト用途には不適切なベクター原株をもたらす可能性がある。
【0056】
本発明の2つの核酸分子間の相同性パーセンテージの低減は一般に、コドン使用パターンを改変することにより行われる。最初の時点で、改変前の核酸分子間の配列アラインメントを用いて、その相同部分を明らかにすることができる。次に、遺伝コードの縮重を用いて、このような相同部分の相同性パーセンテージを75%未満まで低下させる。メチオニン残基およびトリプトファン残基はそれぞれ独自の核酸トリプレット(すなわち、コドン)によりコードされているが、他の18のアミノ酸をコードするには種々のコドンが使用可能である(遺伝コードの縮重)。コドン使用パターンの改変は、一般に、1以上の「天然」コドンを別のコドンに置き換えることで行われる。例えば、ArgをコードするAGAコドンをArgをコードするCGCコドンで置き換えると、コドンの3つの位置のうち2つの相同性が無くなる。相同性は部分的置換で十分低下するので、全ての天然コドンを変更する(degenerate)必要はない。
【0057】
さらに、開示されているヌクレオチド配列は、当業者ならば、さらに改変することができる。例えば、シグナルペプチドのN末端に存在するイニシエーターMet残基をコードする最初のコドンおよび/または膜固定ペプチドのC末端に存在するTGA停止コドンをコードする最後のコドンは、目的ポリペプチドがこのような調節コドンを有している限り、欠失させてもよい。さらに、シグナル配列と膜固定配列の連結部に存在するBamHIリンカーを、そのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列をクローニングするのにさらに適当な制限部位を含む別のリンカーで置換することもできる。
【0058】
好ましい実施形態では、目的のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、本発明の核酸分子中の、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列(配列番号11〜16で定義)と膜固定ペプチドをコードするヌクレオチド配列(配列番号17〜22で定義)の間の連結部に含まれる。より好ましくは、それは、配列番号23〜28のおよそ70番とおよそ76番の間のBamHIリンカー内に挿入される。
【0059】
別の好ましい実施形態では、本発明の核酸分子は、所定の宿主細胞または生物でのその発現を保証するために、適当な調節エレメントの制御下に置かれる。本明細書において「調節配列」とは、複製、倍加、転写、スプライシング、翻訳、安定性および/または宿主細胞への核酸またはその誘導体の1つ(すなわち、mRNA)の輸送を含む、所定の宿主細胞における核酸分子の発現を可能とする、またはそれに寄与する、またはそれを調節するいずれの配列も指す。このような調節配列は当技術分野でよく知られている(例えば、Goeddel, 1990, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego参照)。当業者ならば、ベクターのタイプ、宿主細胞、所望の発現レベルなどの要因に基づいて調節配列を選択することができる。
【0060】
プロモーターは特に重要であり、本発明は、多くのタイプの宿主細胞において核酸分子を発現させる構成的プロモーター、およびある種の宿主細胞でのみ(例えば、組織特異的調節配列)または特定の事象もしくは外因性の因子に応答して(例えば、温度、栄養添加物、ホルモンまたは他のリガンドによる)発現させるものの使用を包含する。真核生物系での構成的発現に好適なプロモーターとしては、SV40プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーターまたはエンハンサー(Boshart et al, 1985, Cell 41, 521-530)、アデノウイルス初期および後期プロモーター、単純ヘルペスウイルス(HSV)−1のチミジンキナーゼ(TK)プロモーターおよびレトロウイルスの長い末端反復配列(例えば、MoMuLVおよびラウス肉腫ウイルス(RSV)LTR)などのウイルスプロモーター、ならびにホスホグリセロキナーゼ(PGK)プロモーター(Hitzeman et al., 1983, Science 219, 620-625; Adra et al., 1987, Gene 60, 65-74)などの細胞プロモーターが挙げられる。ポックスウイルスベクターにおいて核酸分子の発現を駆動するのに有用な好適なプロモーターとしては、ワクシニアウイルスの7.5K、H5R、TK、p28、p11またはK1Lプロモーターが挙げられる。あるいは、Chakrabarti et al. (1997, Biotechniques 23, 1094-1097)、Hammond et al. (1997, J. Virological Methods 66, 135-138)およびKumar and Boyle (1990, Virology 179, 151-158)に記載されているものなどの合成プロモーター、ならびに初期および後期ポックスウイルスプロモーターの間のキメラプロモーターが挙げられる。
【0061】
誘導プロモーターは外因的に供給される化合物によって調節され、限定されるものではないが、亜鉛誘導メタロチオネイン(MT)プロモーター(Mc Ivor et al., 1987, Mol. Cell Biol. 7, 838-848)、デキサメタゾン(Dex)誘導マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、T7ポリメラーゼプロモーター系(WO98/10088)、エクジソン昆虫プロモーター(No et al., 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93, 3346-3351)、テトラサイクリン抑制プロモーター(Gossen et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89, 5547-5551)、テトラサイクリン誘導プロモーター(Kim et al., 1995, J. Virol. 69, 2565-2573)、RU486誘導プロモーター(Wang et al., 1997, Nat. Biotech. 15, 239-243およびWang et al., 1997, Gene Ther. 4, 432-441)、ラパマイシン誘導プロモーター(Magari et al., 1997, J. Clin. Invest. 100, 2865-2872)ならびに大腸菌のlac、TRPおよびTACプロモーターが含まれる。
【0062】
本発明に関する使用において調節配列は、治療利益が望まれる特定の組織において核酸分子の発現を駆動するように組織特異的とすることもできる。好適なプロモーターは腫瘍細胞で優先的に発現される遺伝子から取ってもよい。このような遺伝子は、例えばディスプレーおよび比較ゲノムハイブリダイゼーション(例えば、米国特許第5,759,776号および同第5,776,683号参照)によって同定することができる。
【0063】
当業者ならば、核酸分子の発現を制御する調節エレメントはさらに、転写の誘導、調節および/または終結(例えば、ポリA転写終結配列)、mRNA輸送(例えば、核局在シグナル配列)、プロセシング(例えば、スプライシングシグナル)、安定性(例えば、イントロンおよび非コード5’および3’配列)および翻訳(例えば、三分割リーダー配列、リボソーム結合部位、Shine-Dalgamo配列など)に好適な付加的エレメントを宿主細胞または生物に含んでもよいことが分かる。
【0064】
本発明はまた、本発明の1以上のキメラポリペプチドを発現させるためのベクターも提供する。有利には、本発明のベクターは本明細書に記載されるような1以上の核酸分子、特に好ましくは2、3またはさらには4つの核酸分子を含んでなる。望ましくは、本発明のベクターに挿入される各核酸分子は、それがコードする、少なくともシグナルペプチド、膜固定ペプチドおよび/または目的ポリペプチドで異なる。好ましくは、本発明のベクターは、互いの相同性パーセンテージが75%未満を示す、2、3、4またはさらにはそれを超える、シグナルおよび膜固定ペプチドコードヌクレオチド配列(例えば、配列番号23〜28からなる群から選択される)を含んでなる。より好ましくは、本発明のベクターは、細胞膜に対して第一の目的ポリペプチドの発現を可能とするための配列番号24のヌクレオチド配列と、細胞膜に対して第二の目的ポリペプチドの発現を可能とするための配列番号28のヌクレオチド配列を含んでなる。
【0065】
本発明のキメラポリペプチドを発現させるために種々のベクター系が使用可能であり、原核細胞(例えば、大腸菌(E. coli)または枯草菌(Bacillus subtilis))に好適なバクテリオファージ、プラスミドまたはコスミドベクター;酵母宿主細胞(例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・ポンベ(Saccharomyces pombe)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris))に好適な酵母発現ベクター;昆虫宿主細胞(例えば、Sf9細胞)に好適なウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス);ウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルスCaMV;タバコモザイクウイルスTMV)または植物細胞に好適なプラスミドベクター(例えば、Tiプラスミド);または高等真核宿主細胞または生物に好適なプラスミドまたはウイルスベクターが含まれる。
【0066】
原核生物系に用いるのに好適なベクターとしては、限定されるものではないが、pBR322(Gibco BRL)、pUC(Gibco BRL)、pBluescript(Stratagene)、p Poly(Lathe et al, 1987, Gene 57, 193-201)、pTrc(Amann et al., 1988, Gene 69, 301-315); pET 11d(Studier et al., 1990, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, 60-89);pIN(Inouye et al., 1985, Nucleic Acids Res. 13, 3101-3109; Van Heeke et al., 1989, J. Biol. Chem. 264, 5503-5509);および本発明の核酸分子をグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合状態で発現させることができるpGEXベクターが挙げられる。
【0067】
酵母での発現に好適なベクター(例えば、S.セレビシエ)としては、限定されるものではないが、pYepSec1(Baldari et al., 1987, EMBO J. 6, 229-234)、pMFa(Kujan et al., 1982, Cell 30, 933-943)、pJRY88(Schultz et al., 1987, Gene 54, 113-123)、pYES2(Invitrogen Corporation, San Diego, Calif.)およびpTEF−MF(Dualsystems Biotech Product code: P03303)が挙げられる。
【0068】
真核宿主細胞または生物での発現に好適なベクターはウイルス性または非ウイルス性のもの(例えば、プラスミドDNA)である。好適なプラスミドベクターとしては、限定されるものではないが、pREP4、pCEP4(Invitrogene)、pCI(Promega)、pCDM8(Seed, 1987, Nature 329, 840)、pMT2PC(Kaufman et al., 1987, EMBO J. 6, 187-195)、pVAXおよびpgWiz(Gene Therapy System Inc; Himoudi et al, 2002, J. Virol. 76, 12735-12746)が挙げられる。本明細書において「ウイルスベクター」は、その分野で認識されている意味に従って用いられる。ウイルスベクターは、完全なウイルスゲノム、その一部、または下記のような改変ウイルスゲノムならびに生産されたそのウイルス粒子(例えば、感染性ウイルス粒子を生産するためにウイルスキャプシッドにパッケージングされたウイルスベクター)を含む、ウイルス起源の少なくとも1つの要素を含むいずれのベクターも指す。本発明のウイルスベクターは複製能があってもよく、あるいは遺伝的に不能にし、複製欠陥型または複製障害型とすることもできる。本明細書において「複製能」とは、特定の宿主細胞(例えば、腫瘍細胞)において良好または選択的に複製するように操作された複製選択および条件的複製ウイルスベクターを包含する。ウイルスベクターは種々の異なるウイルスから、特には、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、麻疹ウイルスおよび泡沫状ウイルスからなる群から選択されるウイルスから得ることができる。
【0069】
一実施形態では、本発明のベクターはアデノウイルスベクターである(総説としては、"Adenoviral vectors for gene therapy", 2002, Ed D. Curiel and J. Douglas, Academic Press参照)。ヒトまたは動物アデノウイルスのいずれから誘導することもできる。本発明において、いずれの血清型およびサブグループも使用可能である。より詳しくは、サブグループA(例えば、血清型12、18および31)、サブグループB(例えば、血清型3、7、11、14、16、21、34および35)、サブグループC(例えば、血清型1、2、5および6)、サブグループD(例えば、血清型8、9、10、13、15、17、19、20、22〜30、32、33、36〜39および42〜47)、サブグループE(血清型4)およびサブグループF(血清型40および41)が挙げられる。特に好ましいのはヒトアデノウイルス2(Ad2)、5(Ad5)、6(Ad6)、11(Ad11)、24(Ad24)および35(Ad35)である。このようなアデノウイルスは、the American Type Culture Collection (ATCC, Rockville, Md.)から入手可能であり、それらの配列、構成および生産方法を記載した多くの刊行物の対象となっており、当業者ならばそれらを適用することができる(例えば、米国特許第6,133,028号、同第6,110,735号、WO02/40665、WO00/50573、EP1016711、Vogels et al, 2003, J. Virol. 77, 8263-8271参照)。
【0070】
本発明のアデノウイルスベクターは複製能を持つことができる。当業者ならば、複製能があるアデノウイルスベクターの多くの例を容易に入手することができる(例えば、Hernandez-Alcoceba et al., 2000, Human Gene Ther. 11, 2009-2024; Nemunaitis et al., 2001, Gene Ther. 8, 746-759; Alemany et al., 2000, Nature Biotechnology 18, 723-727;WO00/24408;米国特許第5,998,205号、WO99/25860、米国特許第5,698,443号、WO00/46355、WO00/15820およびWO01/36650参照)。
【0071】
あるいは、本発明のアデノウイルスベクターは、複製欠陥型であってもよい(例えば、WO94/28152参照)。好ましい複製欠陥型アデノウイルスベクターはE1欠陥型(例えば、米国特許第6,136,594号および同第6,013,638号)であり、E1の欠失はおよそ459番〜3328番またはおよそ459番〜3510番に及ぶ(受託番号M73260としてGeneBankに、また、Chroboczek et al, 1992, Virol. 186, 280-285に開示されているヒト5型アデノウイルスの配列を参照)。クローニング能および安全性は、(例えば、Lusky et al., 1998, J. Virol 72, 2022-2032に記載されているような非必須E3領域または他の必須E2、E4領域において)アデノウイルスゲノムのさらなる部分を欠失させることにより、さらに改良することができる。
【0072】
本発明の核酸分子は、Chartier et al. (1996, J. Virol. 70, 4805-4810)に記載されているように、アデノウイルスベクターのいずれの位置にでも挿入することができ、挿入領域の本来の転写方向に対してセンス配向および/またはアンチセンス配向に配置することができる。例えば、それはE1領域の代わりに、またはE3領域の代わりに挿入することができる。
【0073】
別の実施形態では、本発明のベクターはポックスウイルスベクターである(例えば、Cox et al. in "Viruses in Human Gene Therapy" Ed J. M. Hos, Carolina Academic Press参照)。それはポックスウイルス科のいずれのメンバーから得られるものでもよく、特に、カナリヤ痘ウイルス(例えば、WO95/27780に記載されているようなALVAC)、鶏痘ウイルス(例えば、Paoletti et al., 1995, Dev. Biol. Stand. 84, 159-163に記載されているようなTROVAC)またはワクシニアウイルスから得られるものであり、好ましくはワクシニアウイルスである。好適なワクシニアウイルスは、コペンハーゲン株(Goebel et al., 1990, Virol. 179, 247-266および517-563; Johnson et al., 1993, Virol. 196, 381-401)、ワイス株、NYVAC(WO92/15672およびTartaglia et al., 1992, Virology 188, 217-232参照)および高弱毒改変アンカラ(MVA)株(Mayr et al., 1975, Infection 3, 6-16)からなる群から選択することができる。このようなベクターおよび作製方法は当業者に入手可能な多くの文献に記載されている(例えば、Paul et al., 2002, Cancer gene Ther. 9, 470-477; Piccini et al., 1987, Methods of Enzymology 153, 545-563;米国特許第4,769,330号;同第4,772,848号;同第4,603,112号;同第5,100,587号および同第5,179,993号)。本発明の核酸分子は好ましくは、その組換えポックスウイルスが生存および感染性を維持するように、ポックスウイルスゲノムの非必須遺伝子座に挿入される。非必須領域は非コード遺伝子間領域またはその不活性化または欠失がウイルスの増殖、複製または感染を有意に損なわないいずれかの遺伝子である。例えば、そのポックスウイルスゲノムで欠失しているものに相当する相補配列を有するヘルパー細胞株を用いることにより、ウイルス粒子の生産の際に欠損している機能がトランスで供給される限り、必須ウイルス遺伝子座における挿入も考えられる。
【0074】
コペンハーゲンワクシニアウイルスを用いる場合、該核酸分子は好ましくはチミジンキナーゼ遺伝子(tk)に挿入される(Hruby et al, 1983, Proc. Natl. Acad. Sci USA 80, 3411-3415; Weir et al., 1983, J. Virol. 46, 530-537)。しかしながら、例えば、血球凝集素遺伝子(Guo et al., 1989, J. Virol. 63, 4189-4198)、K1L遺伝子座、u遺伝子(Zhou et al., 1990, J. Gen. Virol. 71, 2185-2190)または種々の自然欠失または操作欠失が文献(Altenburger et al., 1989, Archives Virol. 105, 15-27; Moss et al. 1981, J. Virol. 40, 387-395; Panicali et al., 1981, J. Virol. 37, 1000-1010; Perkus et al, 1989, J. Virol. 63, 3829-3836; Perkus et al, 1990, Virol. 179, 276-286; Perkus et al, 1991, Virol. 180, 406-410)に報告されているワクシニアウイルスゲノムの左末端などの他の挿入部位も適当である。
【0075】
MVAを用いる場合、該核酸分子は、MVAゲノム(Antoine et al., 1998, Virology 244, 365-396)ならびにD4R遺伝子座に存在する、同定された欠失I〜VIIのいずれに挿入してもよいが、欠失IIおよび/またはIIIにおける挿入が好ましい(Meyer et al., 1991, J. Gen. Virol. 72, 1031-1038; Sutter et al., 1994, Vaccine 12, 1032-1040)。
【0076】
鶏痘ウイルスを用いる場合、チミジンキナーゼ遺伝子内への挿入が考えられるが、該核酸分子は好ましくはORF7と9の間に位置する遺伝子間領域に導入される(例えば、EP314569および米国特許第5,180,675号参照)。
【0077】
さらに、本発明のベクターは、所定の宿主細胞または生物での核酸分子の維持、増幅または発現を可能とする1以上の付加的要素を含んでもよい。このような付加的要素としては、限定されるものではないが、組換え宿主細胞の同定および単離を容易にするためのマーカー遺伝子(例えば、細胞の栄養要求性の補足によるか、または抗生物質耐性による)、安定化要素(例えば、Summers and Sherrat, 1984, Cell 36, 1097-1103に記載されているcer配列および米国特許第5,198,343号に記載されているDAP)および組み込み要素(例えば、LTRウイルス配列およびトランスポゾン)が挙げられる。
【0078】
本発明はまた、上記の核酸分子またはベクターを含む感染性ウイルス粒子も提供する。ここでは、感染性ウイルス粒子の生産に関して知られている種々の方法を詳しくは記載することはしない。一般に、このようなウイルス粒子は、(a)適当な細胞系統にウイルスベクターを導入する工程、(b)該細胞系統を該感染性ウイルス粒子の生産を可能とするのに好適な条件下で培養し、生産された感染性ウイルス粒子を該細胞系統の培養物から回収し、所望により、回収された感染性ウイルス粒子を精製する工程を含んでなる方法によって生産される。
【0079】
ウイルスベクターが欠陥型である場合、感染性粒子は通常、非機能的ウイルス遺伝子をトランスで供給する補足的細胞系統で生産される。例えば、E1欠損アデノウイルスベクターを補足するのに好適な細胞系統としては、293細胞(Graham et al, 1997, J. Gen. Virol. 36, 59-72)、PER−C6細胞(Fallaux et al., 1998, Human Gene Ther. 9, 1909-1917)およびHER96細胞が挙げられる。ポックスウイルスベクターを増幅させるのに適当な細胞は鳥類細胞であり、最も好ましくは、受精卵から得られたニワトリ胚から調製された一次ニワトリ胚繊維芽細胞(CEF)である。これらの生産細胞は、適当な温度、pHおよび酸素含量条件下で従来の発酵反応槽、フラスコおよびペトリプレートで培養することができる。感染性ウイルス粒子は培養上清または溶解後の細胞から回収することができる。それらは、標準的な技術(例えば、WO96/27677、WO98/00524、WO98/22588、WO98/26048、WO00/40702、EP1016700およびWO00/50573に記載されているようなクロマトグラフィー、超遠心分離)に従ってさらに精製することができる。
【0080】
本発明はまた、特定の宿主細胞を優先的に標的とすることができるように改変されたウイルスベクターも包含する。標的化ベクターの特徴は、それらの表面に、細胞特異的マーカー(例えば、HPV感染細胞)、組織特異的マーカーまたは腫瘍特異的マーカーなどの細胞および表面露出成分を認識し、それと結合し得るリガンドが存在することである。このリガンドは一般に、ベクターの表面に存在するポリペプチド(例えば、アデノウイルス繊維、ペントン、WO94/10323およびWO02/96939に記載のpIXまたはEP1146125に記載のワクシニアp14遺伝子産物)に挿入することができる。
【0081】
本発明はまた、上記の核酸分子、ベクターまたは感染性ウイルス粒子を含んでなる宿主細胞に関する。
【0082】
本発明に関して宿主細胞としては、原核細胞(例えば、大腸菌(Escherichia coli)、バチルス属、リステリア属)、酵母(例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・ポンベ(Saccharomyces pombe)またはピキア・パストリス(Pichia pastoris))などの下等真核細胞、ならびに昆虫細胞、植物細胞および高等真核細胞などの他の真核細胞が挙げられ、哺乳類細胞(例えば、ヒトまたは非ヒト細胞)が特に好ましい。好適な宿主細胞の代表例としては、限定されるものではないが、BHK(ベビーハムスター腎臓)細胞、MDCK細胞(Madin-Darbyイヌ腎臓細胞系統)、CRFK細胞(Crandellネコ腎臓細胞系統)、CV−1細胞(アフリカサル腎臓細胞系統)、COS(例えば、COS−7)細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、マウスNIH/3T3細胞、HeLa細胞およびVero細胞が挙げられる。「宿主細胞」という用語はまた、上記に引用されているものなどの本発明の複製欠陥ベクター(例えば、アデノウイルスベクター)の少なくとも1つの欠損機能を補足することができる補足細胞も包含する。
【0083】
単離された宿主細胞に核酸分子、ベクターまたは感染性粒子を導入するための方法は当技術分野の慣例であり、例えば、マイクロインジェクション(Capechi et al., 1980, Cell 22, 479-488)、CaPO媒介トランスフェクション(Chen and Okayama, 1987, Mo Cell Biol. 7, 2745-2752)、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション(Chu et al, 1987, Nucleic Acid Res. 15, 1311-1326)、リポフェクション/リポソーム融合(Feigner et al., 1987, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84, 7413-7417)、粒子衝撃(Yang et al., 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, 9568-9572)、遺伝子銃、形質導入、ウイルス感染ならびに種々の手段による宿主生物への直接投与が含まれる。
【0084】
宿主細胞は、本発明の核酸分子、ベクターまたは感染性粒子によりコードされている目的ポリペプチドを組換え的手段によって生産するために使用可能である。このような技術は当技術分野でよく知られている(例えば、Ausubel, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley, 1987-2002;およびSambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Pressの最新刊を参照)。
【0085】
本発明の別の態様において、上記のキメラポリペプチド、ベクター、感染性ウイルス粒子または宿主細胞(本発明では「有効剤」とも呼ばれる)またはそのいずれかの組合せが組成物中に含まれる。有利には、該組成物は、治療上有効な量の有効剤と薬学上許容されるビヒクルとを含んでなる医薬組成物である。本明細書において「治療上有効な量」とは、宿主生物において治療または予防されることが望まれる疾病または症状と通常関連する1以上の症候の緩和に十分な用量である。予防的使用に関しては、この用語は宿主生物における疾病または症状の確立を回避する、または遅延させるのに十分な用量を意味する。例えば、治療上有効な量は、処置された生物において免疫応答を誘導または増強するのに十分な量、または疾病を軽減、改善、安定化、逆転、進行を緩慢化または遅延する(例えば、病巣または腫瘍の大きさの減少または退縮、ウイルス感染の復帰)のに十分な量であり得る。
【0086】
本明細書において「薬学上許容されるビヒクル」とは、医薬投与に適合した担体、溶媒、希釈剤、賦形剤、アジュバント、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤および吸収遅延剤などのいずれか、また総てを含むものとする。望ましくは、本発明の組成物は、用いる用量および濃度では無毒な1以上の担体および/または希釈剤を含む。このような担体および/または希釈剤は好ましくは、全身投与または粘膜投与用の単位投与形または多用量形のいずれかに組成物を処方するために通常用いられるものから選択される。好適な担体は、溶媒、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)を含有する分散媒、植物油またはそれらの好適な混合物であり得る。希釈剤は好ましくは、等張性、低張性または弱高張性であり、比較的低いイオン強度を有する。好適な希釈剤の代表例としては、無菌水、生理食塩水(例えば、塩化ナトリウム)、リンゲル溶液、グルコース、トレハロースまたはサッカロース溶液、ハンクス溶液および他の生理学的平衡塩溶液(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, A. Gennaro, Lippincott, Williams&Wilkinsの最新刊を参照)が挙げられる。本発明の組成物のpHは適宜調整し、ヒトまたは動物での使用に適切となるように、好ましくは、生理学的pHまたはやや塩基性のpH(pH約7.5〜pH約9の間、pH8〜8.5が特に好ましい)に緩衝させる。好適なバッファーとしては、リン酸バッファー(例えば、PBS)、重炭酸バッファーおよび/またはTrisバッファーが挙げられる。特に好ましい組成物(特に、有効剤がアデノウイルスベクターである場合)は、1Mサッカロース、150mM NaCl、1mM MgCl、54mg/l Tween 80、10mM Tris pH8.5中に処方される。別の好ましい組成物は、10mg/mlマンニトール、1mg/ml HSA、20mM Tris、pH7.2および150mM NaCl中に処方される。このような処方物は、冷凍温度(例えば、−70℃、−40℃、−20℃)または冷蔵温度(例えば、4℃)のいずれかで少なくとも2か月間、本発明の組成物の安定性を保つのに特に好適である。
【0087】
該組成物はまた、例えば、pH、浸透圧、粘度、明澄度、色、無菌性、安定性、処方物の溶解速度、ヒトまたは動物被験体中への放出または吸収の改変または維持を含む、所望の薬学的または薬物動態的特性を提供するために1以上の薬学上許容される賦形剤を含むことできる。
【0088】
さらに、本発明の組成物は、ヒトにおける全身投与または粘膜投与に好適な1以上のアジュバントを含むことできる。「アジュバント」とは、特定の抗原に対する免疫応答を増強する能力を有する化合物を意味する。アジュバントは、抗原部位付近に送達することができる。体液性免疫の増強は一般に、その抗原に対して生成した抗体の力価の有意な増加(通常は10倍を超える)によって現れる。細胞性免疫の増強は、例えば、陽性皮膚試験、細胞傷害性T細胞アッセイ、IFNgまたはIL−2に関するELIspotアッセイによって測定することができる。好ましくは、本発明での使用におけるアジュバントは、TLR−7、TLR−8およびTLR−9などの、特にトル様受容体(TLR)を介して有効剤に対する免疫を刺激することができる。有用なアジュバントの代表例としては、限定されるものではないが、ミョウバン、フロイントの完全および不完全アジュバント(IFA)などの鉱油エマルション、リポ多糖類またはその誘導体(Ribi et al., 1986, Immunology and Immunopharmacology of Bacterial Endotoxins, Plenum Publ. Corp., NY, p407-19);QS21(Sumino et al., 1998, J.Virol. 72, 4931-9;WO98/56415)などのサポニン;イミキモド(Suader, 2000, J. Am Acad Dermatol. 43, S6-S11)、1H−イミダゾ(4,5−c)キノロン−4−アミン誘導体(Aldara(商標))および関連化合物(Smorlesi, 2005, Gene Ther. 12, 1324-32)などのイミダゾキノリン化合物;CpG(Chu et al., 1997, J. Exp. Med. 186: 1623; Tritel et al., 2003, J. Immunol. 171: 2358-2547)などのシトシンリン酸グアノシンオリゴデオキシヌクレオチド;およびIC−31(Kritsch et al., 2005, J. Chromatogr Anal. Technol Biomed Life Sci 822, 263-70)などの陽イオンペプチドが挙げられる。
【0089】
本発明の組成物は、例えば、固体(例えば、乾燥粉末形態または凍結乾燥形態)、または液体(例えば、水溶液)など、種々の形態であり得る。有効剤と任意の付加的な所望の成分の固体組成物は、予め濾過除菌したその溶液から、真空乾燥および凍結乾燥させて得ることができる。それを所望により、使用前に好適なビヒクルを加えることで再構成するだけの無菌アンプルで保存することができる。
【0090】
本発明のキメラポリペプチド、核酸分子、ベクター、感染性粒子または組成物は、全身投与、局所投与および粘膜投与を含む種々の投与様式によって投与することができる。全身投与は、例えば、皮下、皮内、筋肉内、静脈内、腹腔内、血管内、動脈内注射など、いずれの手段によって行ってもよい。注射は通常のシリンジと針、または当技術分野で利用可能な他のいずれかの適当なデバイスで行うことができる。粘膜投与は、経口、鼻腔、気管内、肺内、腟内または直腸内経路によって行うことができる。局所投与は、経皮的手段(例えば、パッチなど)を用いて行うことができる。筋肉内または皮下投与は、有効剤としてウイルスベクターおよび感染性粒子を用いる場合に特に好ましい。
【0091】
適当な用量は、特定の有効剤の薬物動態特性、被験体の齢、健康状態および体重、処置する症状、症候の性質および程度、同時処置の種類、処置の頻度、予防または治療の必要性および/または望まれる効果などの既知の因子によって異なり得る。用量はまた、選択された特定の経路に応じて算出することができる。処置に適当な用量を決定するために必要な計算のさらなる精密化は、通常、医師が関連の状況に照らして行う。一般的な指針としては、アデノウイルス粒子の好適な用量は、約10〜約1013iu(感染単位)、望ましくは約10〜約1012iu、好ましくは約10〜約1011iuと様々である。ワクシニアウイルス粒子の好適な用量は、約10〜約1010pfu(プラーク形成粒子)、望ましくは約10〜約10pfu、好ましくは約10〜約5×10pfuと様々である。ベクタープラスミドは、10μg〜20mgの間、好ましくは100μg〜2mgの間の用量で、また、キメラポリペプチドは05μg〜5g、好ましくは5μg〜500mgの間で投与することができる。
【0092】
さらに、投与は、単回投与、あるいはまた標準的プロトコール、投与法および数時間、数日および/または数週間にわたる投与計画に従って複数用量で行うことができる。また、投与は、ボーラス注射または連続注入によって行うこともできる。例えば、1週間おきに3回連続投与した後に、最初のシリーズの後、4〜6か月以内に少なくとも1回さらなる投与を行うことができる。一般的な指針としては、治療薬としてMVAベクターを用いる場合、好ましい投与経路は、10〜5×10pfuの間で含まれる1用量のMVA粒子による皮下投与である。
【0093】
本発明のキメラポリペプチド、核酸分子、ベクター、感染性粒子、宿主細胞または組成物は、遺伝病、先天性疾患および後天性疾患を含む種々の疾病および病状を治療または予防する方法で使用可能である。本発明はまた、このような疾病を治療または予防することを意図した薬剤の製造のための本発明のキメラポリペプチド、ベクター、感染性粒子、宿主細胞または組成物の使用に関する。それは感染性疾患(例えば、ウイルスおよび/または細菌感染)、癌および免疫不全疾患を治療または予防するのに特に適切である。「癌」とは、び慢性または局在性腫瘍、転移、癌性ポリープおよび前腫瘍性病変(例えば、新生物)を含む、望まれない細胞増殖によって起こるいずれの癌症状も包含する。本発明に関して意図される癌としては、限定されるものではないが、膠芽腫、肉腫、黒色腫、肥満細胞腫、癌腫ならびに乳癌、前立腺癌、精巣癌、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸癌(特に、乳頭腫ウイルス感染に関するもの)、肺癌(例えば、大細胞癌、小細胞癌、扁平上皮癌および腺癌)、腎臓癌、膀胱癌、肝臓癌、結腸癌、肛門癌、膵臓癌、胃癌、胃腸癌、口腔癌、喉頭癌、脳およびCNS癌、皮膚癌(例えば、黒色腫および非黒色腫)、血液癌(特にそれらが充実塊で発達した場合は、リンパ腫、白血病)、骨癌、網膜芽細胞腫および甲状腺癌が挙げられる。感染性疾患は、ウイルスなどの任意の病原性微生物によって引き起こされるものを包含する。本発明により意図される感染性疾患としては、肝炎ウイルス(例えば、A型、B型またはC型肝炎ウイルス)による感染に関連するものが挙げられる。本発明により意図される感染性疾患としては、乳頭腫ウイルス(例えば、HPV−16、HPV−18、HPV−31、HPV−33、HPV−45、HPV−52)に関連するものが挙げられ、このような疾病には持続的感染、前悪性病変(例えば、低悪性度、中悪性度または高悪性度の子宮頸上皮内新生物)および悪性病変(例えば、子宮頸癌)が含まれる。
【0094】
本発明はまた、a)宿主細胞に、本発明のベクターまたは感染性ウイルス粒子を導入する工程、b)該形質転換宿主細胞を目的ポリペプチドの発現を可能とする条件下で培養する工程、およびc)培養物からポリペプチドを回収し、所望により精製する工程を含む、ポリペプチドの組換え生産方法を提供する。
【0095】
一実施形態では、該ポリペプチドは、本発明の方法に従って細胞外媒体に分泌されるように生産する。このポリペプチドは好ましくは、本明細書に記載のシグナルペプチドを備えたキメラポリペプチド中に含まれ、それにより、シグナルペプチドはキメラポリペプチドから切断され、そのポリペプチドが培養培地から回収される。
【0096】
別の実施形態では、該ポリペプチドは、本発明の方法に従って細胞膜に固定されるように生産され、原形質膜の外表への付着が特に好ましい。好ましくは、該ポリペプチドは他の細胞表面または細胞外媒体中に存在する他の分子と相互作用可能なように固定される。該ポリペプチドは好ましくは本明細書に記載のシグナルペプチドおよび膜ペプチドを備えたキメラポリペプチド中に含まれ、それにより、キメラポリペプチドからシグナルペプチドが切断され、培養細胞からポリペプチドが回収される。
【0097】
本発明はまた、(a)配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15および配列番号16からなる群から選択される第一のヌクレオチド配列と該ポリペプチドをコードする第二のヌクレオチド配列を連結することにより核酸分子を作製する工程(該核酸分子は、該第一のヌクレオチド配列によりコードされるシグナルペプチドと目的ポリペプチドをN末端からC末端方向に含んでなるキメラポリペプチドをコードする);(b)得られた核酸分子を発現ベクターに挿入する工程、および(c)該発現ベクターを宿主細胞または生物に導入する工程を含んでなる、細胞外で目的ポリペプチドを発現させる方法を提供する。先に述べたように、シグナルペプチドは分泌の際にキメラポリペプチドから切断され、その後、目的ポリペプチドが細胞外に放出される。それを培養培地から回収し、所望により、当技術分野の常法を用いて精製することができる。
【0098】
本発明はまた、(a)配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27および配列番号28からなる群から選択される第一のヌクレオチド配列に、目的ポリペプチドをコードする第二のヌクレオチド配列を、該第一のヌクレオチド配列の70番の位置のヌクレオチドから76番の位置のヌクレオチドまでのいずれかの位置に挿入することにより核酸分子を作製する工程(該核酸分子は、該第一のヌクレオチド配列によりコードされるシグナルペプチド、該第二の核酸によりコードされる目的ポリペプチドおよび該第一のヌクレオチド配列によりコードされる膜固定ペプチドをN末端からC末端方向に含んでなるキメラポリペプチドをコードする);(b)得られた核酸分子を発現ベクターに挿入する工程、および(c)該発現ベクターを宿主細胞または生物に導入する工程を含んでなる、原形質膜の表面に固定されたポリペプチドを発現させる方法を提供する。上述のように、シグナルペプチドはキメラポリペプチドから切断され、膜固定ペプチドを備えたポリペプチドが、他の細胞表面または細胞外媒体中に存在する他の分子と相互作用可能となるように、発現宿主細胞の表面に提示される。
【0099】
本明細書に記載される本発明の核酸、ベクターおよびポリペプチドは、例えば、Sambrook et al. (2001, Molecular Cloning, a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Y)、Ausubel et al. (1994, Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates and John Wiley & Sons, New York, N.Y.)およびHerdewijn (2004, Oligonucleotide Synthesis: Methods and Applications (Methods in Molecular Biology), Humana Press, Totowa, New Jersey)に記載されているものなど、当技術分野で公知の常法を用いて調製(例えば、単離、精製または合成)することができる。
【0100】
本発明を例示として記載してきたが、用いられている用語は限定ではなく、本質的に記載の言葉の範疇に入るということを意図するものであると理解される。上記の教示に照らして本発明の多くの改変および変形が可能であることは明らかである。従って、添付の特許請求の範囲内で、本発明を本明細書に明示されているものとは異なる方法で実施可能であると理解される。
【0101】
上記に引用されている特許、刊行物およびデータベース登録の開示は総て、このような個々の特許、刊行物および登録がそれぞれ引用することにより本明細書の一部とされることが具体的かつ個々に示されている場合と同程度に、その全開示内容が具体的に引用することにより本明細書の一部とされる。
【0102】
以下の実施例は本発明を例示するものである。
【実施例】
【0103】
下記の構築を、Sambrook et al. (A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor NY)に詳しく述べられている一般的な遺伝子操作技術および分子クローニング技術に従い、または市販のキットを用いる場合には、製造者の推奨に従って行う。PCR増幅技術は当業者に公知である(例えば、Innis, Gelfand, Sninsky and White, Academic Pressにより発行されているPCR protocols -A guide to methods and applications, 1990参照)。アンピシリン耐性遺伝子を有する組換えプラスミドを、100μg/mlの抗生物質を添加した寒天または液体培地で、大腸菌C600(Stratagene)、BJ5183(Hanahan, 1983, J. Mol. Biol. 166, 557-580)およびNM522内で複製させる。組換えワクシニアウイルスの構築は、上に引用した文献、また、Mackett et al. (1982, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79, 7415-7419)およびMackett et al. (1984, J. Virol. 49, 857-864)中の当技術分野における常法に従って行う。この組換えワクシニアウイルスの選択を容易にするため、大腸菌の選択遺伝子gpt(キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ)(Falkner and Moss, 1988, J. Virol. 62, 1849-1854)を用いる。
【0104】
実施例1:新規なシグナル伝達配列の同定と評価
組換えMVAにより発現された抗体の提示は、組換えタンパク質を原形質膜表面へ向け直すことにより向上したことが示された。原形質膜での提示には、目的遺伝子がシグナルペプチドをコードする配列と膜固定ペプチドをコードする配列の間にクローニングされることが必要である。このようなシグナル伝達ペプチドは一般に、種々のウイルス株の狂犬病糖タンパク質などの膜結合タンパク質中に存在し、細胞表面で目的ポリペプチドを発現させるために広く用いられている(WO99/03885参照)。より具体的には、例えば、NCBIで利用可能なUniprotなどの専門データバンクで、それぞれ受託番号M38452(ERA株)、ay009097(PG株)、S72465(Nishigahara株)およびu11751(artic fox株)として入手できる4つの異なる狂犬病ウイルス株およびコードされている糖タンパク質のアミノ酸配列が記載されている。しかしながら、これらの利用可能な狂犬病株の糖タンパク質から得られるシグナル伝達ペプチドの併用は、2つを超える組換えポリペプチドを原形質膜表面に向ける必要がある場合の多重遺伝子発現ベクターには適切でない。それらのヌクレオチドレベルでの高い相同性のため、相同組換え事象が起こる可能性があり、ベクターの安定性に悪影響を及ぼし、ヒト用途には不適切なベクター原株をもたらす可能性がある。
【0105】
本発明は、この潜在的な相同組換えの問題を解決することを可能とし、狂犬病糖タンパク質に由来する新規なシグナル伝達ペプチド、および互いに75%未満の相同性を示すように操作されたこのようなペプチドをコードする「変更された(degenerated)」ヌクレオチド配列を提供する。これらの配列は、DNAの相同性を低減し、従って、ベクター生産工程中に組換えのリスクを制限するようにコドン使用パターンを改変することにより変更された。
【0106】
シグナルおよび膜固定ペプチドをコードする6つの新規なヌクレオチド配列が操作され、それぞれM38452,v1(配列番号23)、ay009097,v1(配列番号24)、S72465,v1(配列番号25)、u11751,v1(配列番号26)、u11751,v2(配列番号27)およびM38452,v2−ay009097v2(配列番号28)と呼称する。表1は、シグナルペプチドをコードする本発明のヌクレオチド配列により示される相同性パーセンテージを示し、表2は、膜固定ペプチドをコードする本発明のヌクレオチド配列により示される相同性パーセンテージを示す。
【0107】
a)これらの新規なシグナル伝達配列をコードするヌクレオチド配列の作製
これらのヌクレオチド配列は、オーバーラッピングオリゴヌクレオチドを組み立てることにより作製した。より具体的には、各場合において、シグナルペプチドをコードする配列を作製するために2つのオリゴヌクレオチドを、そして、膜固定配列に関しては4つのオリゴヌクレオチドを用いた。その後、各合成配列対をPBS由来ベクターに挿入し、pTG15833(S72465、v1)、pTG15834(u11751,v1)、pTG15835(M38452,v1)、pTG15943(ay009097,v1)、pTG15944(M38452,v2−ay009097,v2)およびpTG15945(u11751,v2)を得た。
【0108】
b)新規なシグナル伝達配列の評価
非発癌性HPV−16 E7タンパク質(アミノ酸残基21〜26の欠失(ΔDLYCYE)、WO99/03885に記載)をモデルタンパク質として用い、6つの各配列対によりコードされているシグナルペプチドと膜固定ペプチドの、原形質膜へ固定された所定のポリペプチドを発現する能力を評価した。HPV−16 E7変異体をコードするヌクレオチド配列を上記の各プラスミドの、シグナルペプチドコード配列と膜固定ペプチド配列の間のBamHI部位にクローニングした。各場合において、発現はワクシニアp7.5Kプロモーター(Cochran et al, 1985 . J. Virol. 54, 30-37)の制御下に置いた。次に、E7の発現と局在を、一次ニワトリ胚繊維芽細胞(CEF)の一時的感染の後に評価した。予めMVATGN33.1にMOI 1pfu/細胞で感染させた10個の細胞を、リポフェクチン(Invitrogen)を用い、1μgのプラスミドDNAでトランスフェクトした。トランスフェクション24時間後に、E7の発現レベルをウエスタンブロット分析により評価した。
【0109】
結果として、E7は、より低い発現レベルを示すpTG15833(配列番号25に相当する配列S72465v1)を除いて、各供試プラスミドから同等のレベルで発現された。この発現レベルは、参照狂犬病株ERA(M38452)の糖タンパク質から得られたシグナルおよび膜固定ペプチドの制御下でE7を発現する対照プラスミドで見られたものと同じ桁であった。
【0110】
細胞局在は免疫蛍光により評価した。7.5 10個のBHK21細胞をMVATG33.1にMOI 1pfu/細胞で感染させた後、リポフェクチン(Invitrogen)を用い、0.125μgのプラスミドDNAでトランスフェクトした。24時間後、ウサギポリクローナル抗E7抗体を用い、免疫蛍光法を行った。E7タンパク質は、予測されたように、総てのシグナル伝達配列に関して原形質膜表面で検出された。
【0111】
結論として、これらの新規なシグナル伝達配列を用い、宿主細胞の表面で原形質膜に固定された1以上の目的ポリペプチドを発現させることができた。
【0112】
表1:本明細書に開示されているシグナルペプチドをコードする配列間のDNA相同性のパーセンテージ
【表1】

【0113】
表2:本明細書に開示されている膜固定ペプチドをコードする配列間のDNA相同性のパーセンテージ
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4および配列番号5で示されるアミノ酸配列から本質的になる、またはそれからなるペプチドからなる群から選択される、ペプチド。
【請求項2】
目的のポリペプチドと、(i)配列番号1もしくは配列番号2で示されるアミノ酸配列から本質的になる、もしくはそれからなるペプチド、または(ii)配列番号3、配列番号4もしくは配列番号5で示されるアミノ酸配列から本質的になる、もしくはそれからなるペプチドのいずれか、あるいは(iii)配列番号1もしくは配列番号2で示されるアミノ酸配列から本質的になる、もしくはそれからなるペプチドと、配列番号3、配列番号4もしくは配列番号5で示されるアミノ酸配列から本質的になる、もしくはそれからなるペプチドの双方とを含んでなる、キメラポリペプチド。
【請求項3】
配列番号1もしくは配列番号2で示されるアミノ酸配列から本質的になる、もしくはそれからなるペプチドが、キメラポリペプチドのアミノ末端で連結されている、請求項2に記載のキメラポリペプチド。
【請求項4】
他のシグナル伝達ペプチドを含まない、請求項2(i)または3に記載のキメラポリペプチド。
【請求項5】
少なくとも1つの膜固定ペプチドを含んでなる、請求項2または3に記載のキメラポリペプチド。
【請求項6】
前記膜固定ペプチドが、目的ポリペプチドのカルボキシ末端で、またはC末端部分内で連結されている、請求項5に記載のキメラポリペプチド。
【請求項7】
前記シグナルペプチドが配列番号2で示されるアミノ酸配列からなり、前記膜固定ペプチドが配列番号3で示されるアミノ酸配列からなる、請求項2、3、5および6のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項8】
前記シグナルペプチドが配列番号1で示されるアミノ酸配列からなり、前記膜固定ペプチドが配列番号5で示されるアミノ酸配列からなる、請求項2、3、5および6のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項9】
目的ポリペプチドが狂犬病ウイルスとは異種である、請求項2〜8のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項10】
前記目的ポリペプチドが、免疫原性ポリペプチドおよび抗腫瘍ポリペプチドからなる群から選択される、請求項9に記載のキメラポリペプチド。
【請求項11】
前記免疫原性ポリペプチドが、乳頭腫ウイルスポリペプチドである、請求項10に記載のキメラポリペプチド。
【請求項12】
請求項1に記載のペプチドをコードするヌクレオチド配列または請求項2〜11のいずれか一項に記載のキメラポリペプチドを少なくとも含んでなる、単離された核酸分子。
【請求項13】
配列番号11〜28のいずれかで示されるヌクレオチド配列の少なくとも1つを含んでなる、単離された核酸分子。
【請求項14】
目的ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が配列番号23〜28のおよそ70番〜およそ76番の間に挿入される、請求項13に記載の核酸分子。
【請求項15】
所定の宿主細胞または生物でのその発現を確実にするために、適当な調節エレメントの制御下に置かれる、請求項12〜14のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項16】
請求項2〜11のいずれか一項に記載の1以上のキメラポリペプチドを発現させるためのベクター。
【請求項17】
請求項12〜15のいずれか一項に記載の1以上の核酸分子を含んでなる、請求項16に記載のベクター。
【請求項18】
請求項12〜15のいずれか一項に記載の2、3または4つの核酸分子を含んでなる、請求項17に記載のベクター。
【請求項19】
前記2、3または4つの核酸分子が、互いの間で75%未満の相同性パーセンテージを示す、請求項18に記載のベクター。
【請求項20】
細胞膜に対して第一の目的ポリペプチドの発現を可能とするための配列番号24のヌクレオチド配列と、細胞膜に対して第二の目的ポリペプチドの発現を可能とするための配列番号28のヌクレオチド配列とを含んでなる、請求項19に記載のベクター。
【請求項21】
ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターである、請求項16〜20のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項22】
アデノウイルスベクターである、請求項21に記載のベクター。
【請求項23】
前記アデノウイルスベクターが複製欠陥型である、請求項22に記載のベクター。
【請求項24】
ポックスウイルスベクターである、請求項21に記載のベクター。
【請求項25】
前記ポックスウイルスベクターが、コペンハーゲン株、ワイス株、NYVACおよび高弱毒改変アンカラ(MVA)株からなる群から選択されるワクシニアウイルスから得られる、請求項24に記載のベクター。
【請求項26】
請求項12〜15のいずれか一項に記載の核酸分子または請求項16〜25のいずれか一項に記載のベクターを含む、感染性ウイルス粒子。
【請求項27】
請求項12〜15のいずれか一項に記載の核酸分子、請求項16〜25のいずれか一項に記載ベクターまたは請求項26に記載感染性ウイルス粒子を含んでなる、宿主細胞。
【請求項28】
治療上有効な量の、請求項2〜11のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド、請求項12〜15のいずれか一項に記載の核酸分子、または請求項16〜25のいずれか一項に記載のベクター、または請求項26に記載の感染性ウイルス粒子、または請求項27に記載の宿主細胞、またはそれらのいずれかの組合せと薬学上許容されるビヒクルとを含んでなる、医薬組成物。
【請求項29】
疾病または病状の治療または予防を意図した薬剤の製造のための、請求項2〜11のいずれか一項に記載のキメラポリペプチド、請求項12〜15のいずれか一項に記載の核酸分子、または請求項16〜25のいずれか一項に記載のベクター、または請求項26に記載の感染性ウイルス粒子、または請求項27に記載の宿主細胞、またはそれらのいずれかの組合せの使用。
【請求項30】
前記疾病または病状が感染性疾患である、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
配列番号1または配列番号2で示されるアミノ酸配列から本質的になるペプチドの、シグナルペプチドとしての使用。
【請求項32】
配列番号3、配列番号4または配列番号5で示されるアミノ酸配列から本質的になる、またはそれからなるペプチドの、膜固定ペプチドとしての使用。
【請求項33】
ポリペプチドの組換え生産方法であって、a)宿主細胞に、請求項16〜25のいずれか一項に記載のベクターまたは請求項26に記載の感染性ウイルス粒子を導入する工程、b)該形質転換宿主細胞を目的ポリペプチドの発現を可能とする条件下で培養する工程、およびc)培養物からポリペプチドを回収し、所望により精製する工程、を含んでなる、方法。
【請求項34】
細胞外で目的ポリペプチドを発現させる方法であって、(a)配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15および配列番号16からなる群から選択される第一のヌクレオチド配列と該ポリペプチドをコードする第二のヌクレオチド配列を連結することにより核酸分子を作製する工程(該核酸分子は、該第一のヌクレオチド配列によりコードされるシグナルペプチドと目的ポリペプチドをN末端からC末端に含んでなるキメラポリペプチドをコードする);(b)得られた核酸分子を発現ベクターに挿入する工程、および(c)該発現ベクターを宿主細胞または生物に導入する工程、を含んでなる、方法。
【請求項35】
原形質膜の表面に固定されたポリペプチドを発現させる方法であって、(a)配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27および配列番号28からなる群から選択される第一のヌクレオチド配列に、目的ポリペプチドをコードする第二のヌクレオチド配列を、該第一のヌクレオチド配列の70番の位置のヌクレオチドから76番の位置のヌクレオチドまでのいずれかの位置に挿入することにより核酸分子を作製する工程(該核酸分子は、該第一のヌクレオチド配列によりコードされるシグナルペプチド、該第二の核酸によりコードされる目的ポリペプチドおよび該第一のヌクレオチド配列によりコードされる膜固定ペプチドをN末端からC末端に含んでなるキメラポリペプチドをコードする);(b)得られた核酸分子を発現ベクターに挿入する工程、および(c)該発現ベクターを宿主細胞または生物に導入する工程を含んでなる、方法。

【公表番号】特表2010−526548(P2010−526548A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507859(P2010−507859)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【国際出願番号】PCT/EP2008/051035
【国際公開番号】WO2008/138649
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(599082883)トランジェーヌ、ソシエテ、アノニム (32)
【氏名又は名称原語表記】TRANSGENE S.A.
【Fターム(参考)】