説明

シグナル伝達性転写因子(STAT)の増殖及び活性化の新規の抑制剤

癌、炎症、及び増殖性皮膚障害を含む、増殖性の疾患並びに症状の予防及び治療に有用である、STAT3及び/又はSTAT5の活性化の調節に有効なピリジン化合物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年7月8日に出願された米国特許仮出願第60/079,002号明細書に対する優先権を主張する。前記仮出願は、全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
連邦支援研究又は開発に関する陳述
なし
【0003】
共同研究契約の当事者名
なし
【0004】
配列表の参照
なし
【0005】
ピリジン化合物及び組成物、並びに疾患の治療のための医薬品としてのそれらの適用が、本明細書に提供される。ヒト又は動物の対象におけるSTAT3及び/又はSTAT5の活性化の抑制の方法もまた、癌などの疾患の治療のために提供される。
【背景技術】
【0006】
JAK/STATシグナル伝達経路は、いくつかの癌及び炎症性疾患において活性化されることが知られている。STAT3は、単一のチロシン残基のリン酸化を通じて活性化されると、二量体となり、核に移動し、サバイビン、VEGF、Bcl−2、及びBcl−xLを含むいくつかの増殖性並びに生存促進性の遺伝子の上方制御を推進する転写因子として機能する。これらの遺伝子産物は、20種を超える腫瘍の増殖及び転移を促進することが知られており、また、乾癬、T細胞リンパ腫、及びアトピー性皮膚炎を含むいくつかの増殖性皮膚障害の促進に関連する。
【0007】
STAT3のリン酸化の抑制は、担腫瘍動物においてアポトーシス細胞死の誘発を、及びいくつかの疾患の前臨床同所モデルにおける腫瘍サイズの顕著な縮小を引き起こす。炎症性皮膚疾患の場合と同様に、STAT3のリン酸化の抑制は、斑、鱗屑、及びその他の関連する病変の回復を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この経路の抑制剤の開発が現在望まれている一方で、(小分子、アンチセンス、iRNAなどの)様々な抑制方法が試され、不満足な結果となっている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
癌を抑制する新規のピリジン化合物及び医薬組成物が、化合物を合成する方法及び化合物を投与することにより患者のSTAT3仲介疾患及び症状を治療する方法を含む化合物を使用する方法と共に発見された。化合物はまた、STAT5仲介疾患及び症状の治療においても有用であり得る。このクラスの化合物は、以下の構造式Iによって定義される。すなわち、
【化1】


又は、その薬学的に許容される塩、若しくは溶媒和化合物であり、式中、
nは、1、2、又は3から選択される整数であり、
は、Rであるか、又はRは、R−Z−であり、式中、Zはアルキルであり、特に、m=0、1、2、3、又は4である、−(CHm3−などの低級アルキルであってよく、
は、
【化2】


であり、
式中、X、X、X、及びXは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、OH、トリハロメチル、又はNOであり、Yは、OH、特にBr及びClを含むハロゲン、又はONであり、
は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルアリール、ハロゲン、水素、OH、NO、チオエーテル、アミン、SH、又はNHであり、
は、
【化3】


であり、
式中、mは、1、2、3、又は4から選択される整数であり、
及びXは、それぞれ独立して、水素、アルキル、高級アルキル、低級アルキル、アリール、アルコキシル、アリールオキシル、環式アルキル、シクロアルキル、シクロアリールアルキル、アラルキル、アルキルエステル、アルキルエステルアルキル、アルキルアセトキシル、ヒドロキシル、ヒドロキシルアルキル、シクロプロピル、シクロブチル、−CH、−CHOH、シクロペンチル、−CHOAc、−CHOC(O)C(CH、−CH、又はシクロヘキシルであり、
Zは、NH、S、又はOであり、
は、アルキル又は低級アルキルであり、
は、CN、置換アミン、CHS−アルキル、アルキル、又はCHであり、
及びRは、それぞれ独立して、
【化4】


単糖(例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース等)、多糖、単糖誘導体(例えば、アセチル化ガラクトースなどのアセチル化単糖、1,2,3,4−ジイソプロピリデノ−D−ガラクトース)置換及び非置換アリール、並びに置換及び非置換アルキルアリール
からなる群から選択される。
【0010】
本明細書に記載される化合物は、有用なSTAT3抑制活性を有し、STAT3が、積極的な役割を果たす疾患若しくは症状の治療又は予防において使用し得る。したがって、広範な態様において、薬学的に許容される担体と一緒に、本発明の1つ又は複数種の化合物を含む医薬組成物並びに化合物及び組成物を作製及び使用する方法が記載される。
【0011】
STAT3又はSTAT5の活性化を抑制する方法もまた、本明細書で提供される。化合物又は組成物の治療有効量を、かかる治療を必要とする患者に投与することを含む、前記患者のSTAT3仲介又はSTAT5仲介障害を治療する方法が、本明細書に記載される。さらに、本明細書に提示されるこれらの化合物は、STAT3若しくはSTAT5の活性化を調節することによって改善する疾患又は症状の治療のための薬剤の製造に使用できる。
【0012】
前述の概要及び本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面を参照して読むと、より良く理解されるであろう。しかし、本発明は、本明細書に示した正確な準備及び手段に限定されないことを理解されたい。
【0013】
本発明及びその利点のより完全なる理解のために、添付の図面と併せて以下の説明についてここに述べる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】Colo357FG腫瘍細胞系における例1の化合物によるSTAT3のリン酸化の抑制を示す実験からのデータの図である。
【図2】例2及び例4の化合物の投与後、U87脳腫瘍の細胞生存がなくなることを示すデータの図である。
【図3】例2及び例4の化合物の投与後、SCOVE3卵巣腫瘍の細胞増殖の抑制を表わすデータを示す図である。
【図4】D54脳腫瘍細胞系におけるSTAT3のIL−2リン酸化を恒常的に抑制する例9の化合物からのデータの図である。
【図5】STATの活性化及びSTAT仲介遺伝子発現を引き起こすシグナル伝達経路の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書に提示される化合物は、一般式I
【化5】


又はその薬学的に許容される塩、若しくは溶媒和化合物を有し、式中
nは、1、2、又は3から選択される整数であり、
は、Rであるか、又はRは、R−Z−であり、式中、Zは、アルキルであり、特に、m=0、1、2、3、又は4である−(CHm3−などの低級アルキルであってよく、
は、
【化6】


であり、
式中、X、X、X、及びXは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、OH、トリハロメチル、又はNOであり、Yは、OH、特にBr及びClを含むハロゲン、又はONであり、
は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルアリール、ハロゲン、水素、OH、NO、チオエーテル、アミン、SH、又はNHであり、
は、
【化7】


であり、
式中、mは、1、2、3、又は4から選択される整数であり、
及びXは、それぞれ独立して、水素、アルキル、高級アルキル、低級アルキル、アリール、アルコキシル、アリールオキシル、環式アルキル、シクロアルキル、シクロアリールアルキル、アラルキル、アルキルエステル、アルキルエステルアルキル、アルキルアセトキシル、ヒドロキシル、ヒドロキシルアルキル、シクロプロピル、シクロブチル、−CH、−CHOH、シクロペンチル、−CHOAc、−CHOC(O)C(CH、−CH、又はシクロヘキシルであり、
Zは、NH、S、又はOであり、
は、アルキル又は低級アルキルであり、
は、CN、置換アミン、CHS−アルキル、アルキル、又はCHであり、
及びRは、それぞれ独立して、
【化8】


単糖(例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース等)、多糖、単糖誘導体(例えば、アセチル化ガラクトースなどのアセチル化単糖、1,2,3,4−ジイソプロピリデノ−D−ガラクトース)、置換及び非置換アリール、並びに置換及び非置換アルキルアリールからなる群から選択される。
【0016】
より具体的には、Rは、
【化9】


の構造を有するアルキルアリールであってよく、
式中、mは、0、1、2、3、4、5、6、又は7から選択される整数であり、
及びXは、それぞれ独立して、水素、アルキル、高級アルキル、低級アルキル、アリール、アルコキシル、アリールオキシル、環式アルキル、シクロアルキル、シクロアリールアルキル、アラルキル、アルキルエステル、アルキルエステルアルキル、アルキルアセトキシル、ヒドロキシル、ヒドロキシルアルキル、シクロプロピル、シクロブチル、−CH、−CHOH、シクロペンチル、−CHOAc、−CHOC(O)C(CH、−CH、又はシクロヘキシルであり、
、R、R、R10、及びR11は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、OH、トリハロメチル、及びNOからなる群から選択される。
【0017】
さらにより具体的には、Rは、
【化10】


のいずれか1つであり得る。
【0018】
さらに、式Iにおいて、Rは、特に、
【化11】


であってよく、
式中、Xは、Br又はClなどのハロゲンであってよく、
、X、及びXは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、OH、トリハロメチル、又はNOである。
【0019】
本明細書に使用の以下の用語は、指示された意味を有する。
【0020】
本明細書に使用の用語「アミノ」は、−NHを意味し、用語「ニトロ」は−NOを意味し、用語「ハロ」は、−F、−Cl、−Br、又は−Iを指定し、用語「メルカプト」は、−SHを意味し、用語「シアノ」は、−CNを意味し、用語「シリル」は、−SiHを意味し、用語「ヒドロキシ」は、−OHを意味する。
【0021】
「アミド」は、−C(O)−NH−Rのことであり、Rは、アルキル、アリール、アルキルアリール、又は水素のいずれかである。
【0022】
「チオアミド」は、−C(S)−NH−Rのことであり、Rは、アルキル、アリール、アルキルアリール、又は水素のいずれかである。
【0023】
「エステル」は、−C(O)−OR’のことであり、R’は、アルキル、アリール、又はアルキルアリールのいずれかである。
【0024】
「アミン」は、−N(R’’)R’’’のことであり、R’’及びR’’’の両方がともに水素ではないという条件で、それぞれ独立して、水素、アルキル、アリール、又はアルキルアリールのいずれかである。
【0025】
「チオエーテル」は、−S−Rのことであり、Rは、アルキル、アリール、又はアルキルアリールのいずれかである。
【0026】
「スルホニル」は、−S(O)−Rのことであり、Rは、アリール、C(CN)=C−アリール、CH−CN、アルキルアリール、NH−アルキル、NH−アルキルアリール、又はNH−アリールである。
【0027】
「アルカン」は、非環式の、分岐又は非分岐炭化水素のことであり、多くの場合、一般式C2n+2を有する。
【0028】
「アルキル」は、任意の炭素原子から水素原子を除去することによってアルカンから誘導される一価の基のことであり、したがって多くの場合、式−C2n+1を有する。アルキル基は、直鎖状若しくは分岐鎖状の基のいずれか、及び/又は、追加的な非環式アルキル、シクロアルキル、若しくは環式アルキル基によって置換されてよい基を含む。アルキル基は、ヘテロ原子置換、又はヘテロ原子非置換であってよい、下記参照。好ましくは、アルキル基は1から12個の炭素を有し、1から7個の炭素を有する場合は低級アルキル、及び/又は、8個以上の炭素原子を有する場合は高級アルキルと呼ぶこともある。さらに、アルキルは、同一の炭素原子(例えば、メチレン、エチリデン、プロピリデン)又は異なる炭素原子(例えば、−C−)のいずれかから、2個の水素原子を除去することによってアルカンから誘導される二価の基のことである「二価アルキル」のことであり、含む。
【0029】
「シクロアルカン」は、側鎖を有する又は側鎖のない、単環式飽和炭化水素のことである。
【0030】
「シクロアルキル」は、特に、環炭素原子から水素原子を除去することによってシクロアルカンから誘導される一価の基のことである。
【0031】
環式アルキル及び/若しくはアルキル環式、又は、脂環式の化合物は、飽和又は不飽和であってよい炭素環構造を有する脂肪族の化合物のことであるが、ベンゼンゾイド又はその他の芳香族系でなく、その一価の基はアルカン鎖の任意の炭素から水素原子を除去することによって誘導される。
【0032】
用語「ヘテロ原子置換」は、有機ラジカル(例えば、アルキル、アリール、アシル等)のクラスを変更するために使用される場合、そのラジカルの1個又は複数個の水素原子が、ヘテロ原子又はヘテロ原子を含む基によって置換されたことを意味する。ヘテロ原子及びヘテロ原子を含む基の例としては、ヒドロキシ、シアノ、アルコキシ、=O、=S、−NO、−N(CH、アミノ、又は−SHが挙げられる。具体的なヘテロ原子置換有機ラジカルを下に、より十分に定義する。
【0033】
用語「ヘテロ原子非置換」は、有機ラジカル(例えば、アルキル、アリール、アシル等)のクラスを改変するために使用される場合、そのラジカルの水素原子が1個もヘテロ原子又はヘテロ原子を含む基によって置換されなかったことを意味する。炭素原子、又は炭素及び水素原子のみからなる基による水素原子の置換は、基をヘテロ原子置換とするには十分でない。例えば、−CC≡CH基は、ヘテロ原子非置換アリール基の例であり、一方、−CFは、ヘテロ原子置換アリール基の例である。具体的なヘテロ原子非置換有機ラジカルを以下に、より十分に定義する。
【0034】
用語「ヘテロ原子非置換Cアルキル」は、さらに全てが非芳香族である全部でn個の炭素原子、3個以上の水素原子を有し、ヘテロ原子を有さないアルキルのことである。例えば、ヘテロ原子非置換C〜C10アルキルは、1から10個の炭素原子を有する。基、−CH、シクロプロピルメチル、−CHCH、−CHCHCH、−CH(CH、−CHCHCHCH、−CH(CH)CHCH、−CHCH(CH、−C(CH、及び−CHC(CHは、全てヘテロ原子非置換アルキル基の例である。
【0035】
用語「ヘテロ原子置換Cアルキル」は、さらに全てが非芳香族である全部でn個の炭素原子、0、1、又は複数個の水素原子、少なくとも1個のヘテロ原子を有し、その各ヘテロ原子は独立して、N、O、F、Cl、Br、I、Si、P、及びSからなる群から選択されるアルキルのことである。例えば、ヘテロ原子置換C〜C10アルキルは、1から10個の炭素原子を有する。以下の基は全て、ヘテロ原子置換アルキル基の例である:トリフルオロメチル、−CHF、−CHCl、−CHBr、−CHOH、−CHOCH、−CHOCHCH、−CHOCHCHCH、−CHOCH(CH、−CHOCHCF、−CHOCOCH、−CHNH、−CHNHCH、−CHN(CH、−CHNHCHCH、−CHN(CH)CHCH、CHNHCHCHCH、−CHNHCH(CH、−CHOCH(CH、−CHNHCH(CH、−CHCHNHCH(CH、−CHN(CHCH、−CHCHF、−CHCHCl、−CHCHBr、−CHCHI、−CHCHOH、−CHCHOCOCH、−CHCHNH、−CHCHN(CH、−CHCHNHCHCH、−CHCHN(CH)CHCH、−CHCHNHCHCHCH、−CHCHNHCH(CH、−CHCHN(CHCH、−CHCHNHCOC(CH、及び−CHSi(CH
【0036】
用語「ヘテロ原子非置換Cシクロアルキル」は、さらに全てが非芳香族である全部でn個の炭素原子、3個以上の水素原子を有し、ヘテロ原子を有さないシクロアルキルのことである。例えば、ヘテロ原子非置換C〜C10シクロアルキルは、1から10個の炭素原子を有する。基、−CH(CH(シクロプロピル)、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルは全て、ヘテロ原子非置換シクロアルキル基の例である。
【0037】
用語「ヘテロ原子置換Cシクロアルキル」は、さらに全てが非芳香族である全部でn個の炭素原子、0、1、又は複数個の水素原子、少なくとも1個のヘテロ原子を有し、その各ヘテロ原子は独立して、N、O、F、Cl、Br、I、Si、P、及びSからなる群から選択されるシクロアルキルのことである。例えば、ヘテロ原子置換C〜C10シクロアルキルは、1から10個の炭素原子を有する。
【0038】
「アルケニル」基は、直鎖、分岐鎖、及び環式基を含む、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を有する不飽和炭化水素基のことである。好ましくは、アルケニル基は、1から12個の炭素を有する。より好ましくは、アルケニル基は、1から7個の炭素、より好ましくは1から4個の炭素の低級アルケニルである。アルケニル基は、置換又は非置換であってよい。置換の場合、置換基(単数又は複数)は、好ましくはヒドロキシル、シアノ、アルコキシ、=O、=S、NO、N(CH、ハロゲン、アミノ、又はSHである。
【0039】
用語「ヘテロ原子非置換Cアルケニル」は、直鎖状又は分岐状、環式又は非環式の構造を有するラジカルのことであり、さらに、少なくとも1個の非芳香族の炭素−炭素二重結合を有するが、炭素−炭素三重結合を有さず、全部でn個の炭素原子、3個以上の水素原子を有し、ヘテロ原子を有さない。例えば、ヘテロ原子非置換C〜C10アルケニルは、2から10個の炭素原子を有する。ヘテロ原子非置換アルケニル基としては、−CH=CH、CH=CHCH、−CH=CHCHCH、−CH=CHCHCHCH、−CH=CHCH(CH、−CH=CHCH(CH、−CHCH=CH、−CHCH=CHCH、−CHCH=CHCHCH、−CHCH=CHCHCHCH、−CHCH=CHCH(CH、−CHCH=CHCH(CH、及び−CH=CH−Cが挙げられる。
【0040】
用語「ヘテロ原子置換Cアルケニル」は、付着点として単一の非芳香族炭素原子、少なくとも1個の非芳香族の炭素−炭素二重結合を有するが、炭素−炭素三重結合を有さないラジカルのことであり、さらに直鎖状又は分岐状、環式又は非環式の構造を有し、さらに全部でn個の炭素原子、0、1、又は複数個の水素原子、及び少なくとも1個のヘテロ原子を有し、その各ヘテロ原子は独立して、N、O、F、Cl、Br、I、Si、P、及びSからなる群から選択される。例えば、ヘテロ原子置換C〜C10アルケニルは、2から10個の炭素原子を有する。基、−CH=CHF、−CH=CHCl、及び−CH=CHBrは、ヘテロ原子置換アルケニル基の例である。
【0041】
「アルキニル」基は、直鎖、分岐鎖、及び環式基を含む、少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を有する不飽和炭化水素基のことである。好ましくは、アルキニル基は、1から12個の炭素を有する。より好ましくは、アルキニル基は、1から7個の炭素、より好ましくは1から4個の炭素の低級アルキニルである。アルキニル基は、置換又は非置換であってよい。置換の場合、置換基(単数又は複数)は、好ましくはヒドロキシル、シアノ、アルコキシ、=O、=S、NO、N(CH、アミノ、又はSHである。
【0042】
用語「ヘテロ原子非置換Cアルキニル」は、直鎖状又は分岐状、環式又は非環式の構造を有するラジカルのことであり、さらに、少なくとも1個の炭素−炭素三重結合、全部でn個の炭素原子、少なくとも1個の水素原子を有し、ヘテロ原子を有さない。例えば、ヘテロ原子非置換C〜C10アルキニルは、2から10個の炭素原子を有する。基、−CH≡CH、−CH≡CCH、及び−C≡CCは、ヘテロ原子非置換アルキニル基の例である。
【0043】
用語「ヘテロ原子置換Cアルキニル」は、付着点として単一の非芳香族炭素原子、及び少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を有するラジカルのことであり、さらに直鎖状又は分岐状、環式又は非環式の構造を有し、全部でn個の炭素原子、0、1、又は複数個の水素原子、及び少なくとも1個のヘテロ原子を有し、その各ヘテロ原子は独立して、N、O、F、Cl、Br、I、Si、P、及びSからなる群から選択される。例えば、ヘテロ原子置換C〜C10アルキニルは、2から10個の炭素原子を有する。−C≡CSi(CH基は、ヘテロ原子置換アルキニル基の例である。
【0044】
「アリール」基は、π共役電子系を有する少なくとも1個の環を有する芳香族基のことであり、炭素環式アリール、複素環式アリール、及びビアリール基を含み、それらの全ては、場合によって置換されてよい。好ましくは、アリールは、置換又は非置換のフェニル若しくはピリジルである。好ましいアリール置換基(単数又は複数)は、ハロゲン、トリハロメチル、ヒドロキシル、SH、OH、NO、アミン、チオエーテル、シアノ、アルコキシ、アルキル、及びアミノ基である。
【0045】
「アルキルアリール」基は、(上記の通りの)アリール基に共有結合で結合した(上記の通りの)アルキルのことである。好ましくは、アルキルは低級アルキルである。
【0046】
「炭素環式アリール」基は、芳香環上の環原子が、全て炭素原子である基である。炭素原子は、場合によって、アリール基として上に記載した通りの好ましい基により置換される。
【0047】
「複素環式アリール」基は、芳香環中の環原子として1から3個のヘテロ原子を有する基であり、残りの環原子は炭素原子である。適切なヘテロ原子は、酸素、硫黄、及び窒素を含み、並びに、フラニル、チエニル、ピリジル、ピロリル、N−低級アルキルピロロ、ピリミジル、ピラジニル、イミダゾイル等を含んで、全て場合によって置換される。
【0048】
用語「ヘテロ原子非置換Cアリール」は、付着点として単一の炭素原子を有し、その炭素原子が、炭素原子のみを有する芳香環構造の部分であるラジカルのことであり、さらに全部でn個の炭素原子、5個以上の水素原子を有し、ヘテロ原子を有さない。例えば、ヘテロ原子非置換C〜C10アリールは、6から10個の炭素原子を有する。ヘテロ原子非置換アリール基の例としては、フェニル、メチルフェニル、(ジメチル)フェニル、−CCHCH、−CCHCHCH、−CCH(CH、−CCH(CH、−C(CH)CHCH、−CCH=CH、−CCH=CHCH、−CC≡CH、−CC≡CCH、ナフチル、キノリル、インドリル、及び、ビフェニルから誘導されるラジカルが挙げられる。用語「ヘテロ原子非置換アリール」としては、炭素環式アリール基、ビアリール基、及び、多環式融合炭化水素(PAH)から誘導されるラジカルが挙げられる。
【0049】
用語「ヘテロ原子置換Cアリール」は、付着点として単一の芳香族炭素原子又は単一の芳香族ヘテロ原子のいずれかを有するラジカルのことであり、さらに全部でn個の炭素原子、少なくとも1個の水素原子、及び少なくとも1個のヘテロ原子を有し、さらに、その各ヘテロ原子は独立して、N、O、F、Cl、Br、I、Si、P、及びSからなる群から選択される。例えば、ヘテロ原子非置換C〜C10ヘテロアリールは、1から10個の炭素原子を有する。用語「ヘテロ原子置換アリール」は、ヘテロアリール及び複素環式アリール基を含む。「ヘテロ原子置換アリール」はまた、化合物、すなわちピロル、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、イソキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン等から誘導される基を含む。ヘテロ原子置換アリール基のさらなる例としては、基、−CF、−CCl、−CBr、−CI、−COH、−COCH−COCHCH、−COCOCH、−COC、−CNH、−CNHCH、−CNHCHCH、−CCHCl、−CCHBr、−CCHOH、−CCHOCOCH、−CCHNH、−CN(CH、−CCHCHCl、−CCHCHOH、−CCHCHOCOCH、−CCHCHNH、−CCHCH=CH、−CCF、−CCN、−CC−CSi(CH、−CCOH、−CCOCH、−CCOCHCH、−CCOCHCF、−CCOC、−CCOH、−CCOCH、−CCONH、−CCONHCH、−CCON(CH、フラニル、チエニル、ピリジル、ピロリル、ピリミジル、ピラジニル、及びイミダゾイルが、挙げられる。
【0050】
用語「ヘテロ原子非置換Cアラルキル」は、付着点として単一の飽和炭素原子を有するラジカルのことであり、さらに、少なくとも6個の炭素原子が炭素のみを有する芳香環構造を形成する、全部でn個の炭素原子、7個以上の水素原子を有し、ヘテロ原子を有さない。例えば、ヘテロ原子非置換C〜C10アラルキルは、7から10個の炭素原子を有する。「アラルキル」は、アリール基によってヘテロ原子置換されたアルキルを含む。ヘテロ原子非置換アラルキルの例としては、フェニルメチル(ベンジル)及びフェニルエチルが挙げられる。
【0051】
用語「ヘテロ原子置換Cアラルキル」は、付着点として単一の飽和炭素原子を有するラジカルのことであり、さらに全部でn個の炭素原子、0、1、又は複数個の水素原子、及び少なくとも1個のヘテロ原子を有し、その少なくとも1個の炭素原子が芳香環構造に組み込まれていて、さらに、その各ヘテロ原子は独立して、N、O、F、Cl、Br、I、Si、P、及びSからなる群から選択される。例えば、ヘテロ原子置換C〜C10ヘテロアラルキルは、2から10個の炭素原子を有する。
【0052】
用語「ヘテロ原子非置換Cアシル」は、付着点としてカルボニル基の単一の炭素原子を有するラジカルのことであり、さらに直鎖状又は分岐状、環式又は非環式の構造を有し、さらに全部でn個の炭素原子、複数個の水素原子、全部で1個の酸素原子を有し、追加的なヘテロ原子を有さない。例えば、ヘテロ原子非置換C〜C10アシルは、1から10個の炭素原子を有する。基、−COH、−COCH、−COCHCH、−COCHCHCH、−COCH(CH、−COCH(CH、−COC、−COCCH、−COCCHCH、−COCCHCHCH、−COCCH(CH、−COCCH(CH、及び−COC(CHは、ヘテロ原子非置換アシル基の例である。
【0053】
用語「ヘテロ原子置換Cアシル」は、付着点として単一の炭素原子を有し、その炭素原子がカルボニル基の部分であるラジカルのことであり、さらに直鎖状又は分岐状、環式又は非環式の構造を有し、さらに全部でn個の炭素原子、0、1、及び複数個の水素原子、カルボニル基の酸素に加えて少なくとも1個の追加的なヘテロ原子を有し、その各追加的なヘテロ原子は独立して、N、O、F、Cl、Br、I、Si、P、及びSからなる群から選択される。例えば、ヘテロ原子置換C〜C10アシルは、1から10個の炭素原子を有する。用語のヘテロ原子置換アシルとしては、カルバモイル、チオカルボキシレート、及びチオカルボン酸基が挙げられる。基、−COCHCF、−COH、−COCH、−COCHCH、−COCHCHCH、−COCH(CH、−COCH(CH、−CONH、−CONHCH、−CONHCHCH、−CONHCHCHCH、−CONHCH(CH、−CONHCH(CH、−CON(CH、−CON(CHCH)CH、−CON(CHCH、及び−CONHCHCFは、ヘテロ原子置換アシル基の例である。
【0054】
「アルコキシ」基は、「−O−アルキル」基のことであり、この「アルキル」は、上に定義されている。
【0055】
「アリール」基は、π共役電子系を有する少なくとも1個の環を有する芳香族基のことであり、炭素環式アリール、複素環式アリール、及びビアリール基を含み、それらの全ては、場合によって置換されてよい。好ましくは、アリールは、置換又は非置換のフェニル若しくはピリジルである。好ましいアリール置換基(単数又は複数)は、ハロゲン、トリハロメチル、ヒドロキシル、SH、OH、NO、アミン、チオエーテル、シアノ、アルコキシ、アルキル、及びアミノ基である。
【0056】
用語「ヘテロ原子非置換Cアルコキシ」は、−OR構造を有する基のことであり、Rは、上に定義されている通りのヘテロ原子非置換Cアルキルである。ヘテロ原子非置換アルコキシ基としては、−OCH、−OCHCH、−OCHCHCH、−OCH(CH、及び−OCH(CHが挙げられる。
【0057】
用語「ヘテロ原子置換Cアルコキシ」は、−OR構造を有する基のことであり、Rは、上に定義されている通りのヘテロ原子置換Cアルキルである。例えば、−OCHCFは、ヘテロ原子置換アルコキシ基である。
【0058】
用語「ヘテロ原子非置換Cアルケニルオキシ」は、−OR構造を有する基のことであり、Rは、上に定義されている通りのヘテロ原子非置換Cアルケニルである。
【0059】
用語「ヘテロ原子置換Cアルケニルオキシ」は、−OR構造を有する基のことであり、Rは、上に定義されている通りのヘテロ原子置換Cアルケニルである。
【0060】
用語「ヘテロ原子非置換Cアルキニルオキシ」は、−OR構造を有する基のことであり、Rは、上に定義されている通りのヘテロ原子非置換Cアルキニルである。
【0061】
用語「ヘテロ原子置換Cアルキニルオキシ」は、−OR構造を有する基のことであり、Rは、上に定義されている通りのヘテロ原子置換Cアルキニルである。
【0062】
用語「ヘテロ原子非置換Cアリールオキシ」は、−OAr構造を有する基のことであり、Arは、上に定義されている通りのヘテロ原子非置換Cアリールである。ヘテロ原子非置換アリールオキシ基の例は、−OCである。
【0063】
用語「ヘテロ原子置換Cアリールオキシ」は、−OAr構造を有する基のことであり、Arは、上に定義されている通りのヘテロ原子置換Cアリールである。
【0064】
用語「ヘテロ原子非置換Cアラルキルオキシ」は、−OAr構造を有する基のことであり、Arは、上に定義されている通りのヘテロ原子非置換Cアラルキルである。
【0065】
用語「ヘテロ原子置換Cアラルキルオキシ」は、−OAr構造を有する基のことであり、Arは、上に定義されている通りのヘテロ原子置換Cアラルキルである。
【0066】
用語「ヘテロ原子非置換Cアシルオキシ」は、−OAc構造を有する基のことであり、Acは、上に定義されている通りのヘテロ原子非置換Cアシルである。ヘテロ原子非置換アシルオキシ基としては、アルキルカルボニルオキシ及びアリールカルボニルオキシ基が挙げられる。例えば、−OCOCHは、ヘテロ原子非置換アシルオキシ基の例である。
【0067】
用語「ヘテロ原子置換Cアシルオキシ」は、−OAc構造を有する基のことであり、Acは、上に定義されている通りのヘテロ原子置換Cアシルである。ヘテロ原子置換アシルオキシ基としては、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、及びアルキルチオカルボニル基が挙げられる。
【0068】
用語「ヘテロ原子非置換Cアルキルアミノ」は、付着点として単一の窒素原子を有するラジカルのことであり、さらに、窒素原子に付いた1又は2個の飽和炭素原子を有し、さらに直鎖状又は分岐状、環式又は非環式の構造を有し、全てが非芳香族である全部でn個の炭素原子、4個以上の水素原子、全部で1個の窒素原子を有し、追加的なヘテロ原子を有さない。例えば、ヘテロ原子非置換C〜C10アルキルアミノは、1から10個の炭素原子を有する。用語「ヘテロ原子非置換Cアルキルアミノ」は、−NHR構造を有する基を含み、Rは、上に定義されている通りのヘテロ原子非置換Cアルキルである。ヘテロ原子非置換アルキルアミノ基としては、−NHCH、−NHCHCH、−NHCHCHCH、−NHCH(CH、−NHCH(CH、−NHCHCHCHCH、−NHCH(CH)CHCH、−NHCHCH(CH、−NHC(CH、−N(CH、−N(CH)CHCH、−N(CHCH、N−ピロリジニル、及びN−ピペリジニルが挙げられる。
【0069】
用語「ヘテロ原子置換Cアルキルアミノ」は、付着点として単一の窒素原子を有するラジカルのことであり、さらに、窒素原子に付いた1又は2個の飽和炭素原子を有し、炭素−炭素の二重又は三重結合を有さず、さらに直鎖状又は分岐状、環式又は非環式の構造を有し、さらに全てが非芳香族である全部でn個の炭素原子、0、1、又は複数個の水素原子、及び少なくとも1個の追加的なヘテロ原子を、すなわち、付着点の窒素原子に加えて有し、その各追加的なヘテロ原子は独立して、N、O、F、Cl、Br、I、Si、P、及びSからなる群から選択される。例えば、ヘテロ原子置換C〜C10アルキルアミノは、1から10個の炭素原子を有する。用語「ヘテロ原子置換Cアルキルアミノ」は、−NHR構造を有する基を含み、Rは、上に定義されている通りのヘテロ原子置換Cアルキルである。
【0070】
用語「ヘテロ原子非置換Cアルケニルアミノ」は、付着点として単一の窒素原子を有するラジカルのことであり、さらに、窒素原子に付いた1又は2個の炭素原子を有し、さらに直鎖状又は分岐状、環式又は非環式の構造を有し、少なくとも1個の非芳香族の炭素−炭素二重結合、全部でn個の炭素原子、4個以上の水素原子、全部で1個の窒素原子を有し、追加的なヘテロ原子を有さない。例えば、ヘテロ原子非置換C〜C10アルケニルアミノは、2から10個の炭素原子を有する。用語「ヘテロ原子非置換Cアルケニルアミノ」は、−NHR構造を有する基を含み、Rは、上に定義されている通りのヘテロ原子非置換Cアルケニルである。ヘテロ原子非置換Cアルケニルアミノ基の例としてはまた、ジアルケニルアミノ及びアルキル(アルケニル)アミノ基が挙げられる。
【0071】
用語「ヘテロ原子置換Cアルケニルアミノ」は、付着点として単一の窒素原子、及び少なくとも1個の非芳香族の炭素−炭素二重結合を有するが炭素−炭素三重結合を有さないラジカルのことであり、さらに、窒素原子に付いた1又は2個の炭素原子を有し、さらに直鎖状又は分岐状、環式又は非環式の構造を有し、さらに全部でn個の炭素原子、0、1、又は複数個の水素原子、及び少なくとも1個の追加的なヘテロ原子を、すなわち、付着点の窒素原子に加えて有し、その各追加的なヘテロ原子は独立して、N、O、F、Cl、Br、I、Si、P、及びSからなる群から選択される。例えば、ヘテロ原子置換C〜C10アルケニルアミノは、2から10個の炭素原子を有する。用語「ヘテロ原子置換Cアルケニルアミノ」は、−NHR構造を有する基を含み、Rは、上に定義されている通りのヘテロ原子置換C−アルケニルである。
【0072】
用語「ヘテロ原子非置換Cアルキニルアミノ」は、付着点として単一の窒素原子を有するラジカルのことであり、さらに、窒素原子に付いた1又は2個の炭素原子を有し、さらに直鎖状又は分岐状、環式又は非環式の構造を有し、少なくとも1個の炭素−炭素三重結合、全部でn個の炭素原子、少なくとも1個の水素原子、全部で1個の窒素原子を有し、追加的なヘテロ原子を有さない。例えば、ヘテロ原子非置換C〜C10アルキニルアミノは、2から10個の炭素原子を有する。用語「ヘテロ原子非置換Cアルキニルアミノ」は、−NHR構造を有する基を含み、Rは、上に定義されている通りのヘテロ原子非置換C−アルキニルである。アルキニルアミノ基としては、ジアルキニルアミノ及びアルキル(アルキニル)アミノ基が挙げられる。
【0073】
用語「ヘテロ原子置換Cアルキニルアミノ」は、付着点として単一の窒素原子を有するラジカルのことであり、さらに、窒素原子に付いた1又は2個の炭素原子を有し、さらに、少なくとも1個の非芳香族の炭素−炭素三重結合を有し、さらに直鎖状又は分岐状、環式又は非環式構造を有し、さらに全部でn個の炭素原子、0、1、又は複数個の水素原子、及び少なくとも1個の追加的なヘテロ原子を、すなわち、付着点の窒素原子に加えて有し、その各追加的なヘテロ原子は独立して、N、O、F、Cl、Br、I、Si、P、及びSからなる群から選択される。例えば、ヘテロ原子置換C〜C10アルキニルアミノは、2から10個の炭素原子を有する。用語「ヘテロ原子置換Cアルキニルアミノ」は、−NHR構造を有する基を含み、Rは、上に定義されている通りのヘテロ原子置換Cアルキニルである。
【0074】
用語「ヘテロ原子非置換Cアリールアミノ」は、付着点として単一の窒素原子を有するラジカルのことであり、さらに、窒素原子に付いた少なくとも1個の芳香環構造を有し、その芳香環構造は炭素原子のみを含み、さらに全部でn個の炭素原子、6個以上の水素原子、全部で1個の窒素原子を有し、追加的なヘテロ原子を有さない。例えば、ヘテロ原子非置換C〜C10アリールアミノは、6から10個の炭素原子を有する。用語「ヘテロ原子非置換Cアリールアミノ」は、−NHR構造を有する基を含み、Rは、上に定義されている通りのヘテロ原子非置換Cアリールである。ヘテロ原子非置換アリールアミノ基としては、ジアリールアミノ及びアルキル(アリール)アミノ基が挙げられる。
【0075】
用語「ヘテロ原子置換Cアリールアミノ」は、付着点として単一の窒素原子を有するラジカルのことであり、さらに全部でn個の炭素原子、少なくとも1個の水素原子、少なくとも1個の追加的なヘテロ原子を、すなわち、付着点の窒素原子に加えて有し、その少なくとも1個の炭素原子が、1個又は複数個の芳香環構造中に組み込まれていて、さらに、その各追加的なヘテロ原子は独立して、N、O、F、Cl、Br、I、Si、P、及びSからなる群から選択される。例えば、ヘテロ原子置換C〜C10アリールアミノは、6から10個の炭素原子を有する。用語「ヘテロ原子置換Cアリールアミノ」は、−NHR構造を有する基を含み、Rは、上に定義されている通りのヘテロ原子置換Cアリールである。ヘテロ原子置換アリールアミノ基は、ヘテロアリールアミノ基を含む。
【0076】
用語「ヘテロ原子非置換Cアラルキルアミノ」は、付着点として単一の窒素原子を有するラジカルのことであり、さらに、窒素原子に付いた1又は2個の飽和炭素原子を有し、さらに、少なくとも6個の炭素原子が炭素原子のみを有する芳香環構造を形成する、全部でn個の炭素原子、8個以上の水素原子、全部で1個の窒素原子を有し、追加的なヘテロ原子を有さない。例えば、ヘテロ原子非置換C〜C10アラルキルアミノは、7から10個の炭素原子を有する。用語「ヘテロ原子非置換Cアラルキルアミノ」は、−NHR構造を有する基を含み、Rは、上に定義されている通りのヘテロ原子非置換Cアラルキルである。アラルキルアミノ基は、ジアラルキルアミノ基を含む。
【0077】
用語「ヘテロ原子置換Cアラルキルアミノ」は、付着点として単一の窒素原子を有するラジカルのことであり、さらに、窒素原子に付いた少なくとも1又は2個の飽和炭素原子を有し、さらに全部でn個の炭素原子、0、1、又は複数個の水素原子、少なくとも1個の追加的なヘテロ原子を、すなわち、付着点の窒素原子に加えて有し、その少なくとも1個の炭素原子が芳香環中に組み込まれていて、さらに、その各追加的なヘテロ原子は独立して、N、O、F、Cl、Br、I、Si、P、及びSからなる群から選択される。例えば、ヘテロ原子置換C〜C10アラルキルアミノは、7から10個の炭素原子を有する。用語「ヘテロ原子置換Cアラルキルアミノ」は、−NHR構造を有する基を含み、Rは、上に定義されている通りのヘテロ原子置換Cアラルキルである。用語「ヘテロ原子置換アラルキルアミノ」は、用語「ヘテロアラルキルアミノ」を含む。
【0078】
用語「ヘテロ原子非置換Cアミド」は、付着点として単一の窒素原子を有するラジカルのことであり、さらに、炭素原子を介して窒素原子に付いたカルボニル基を有し、さらに直鎖状又は分岐状、環式又は非環式の構造を有し、さらに全部でn個の炭素原子、1個又は複数個の水素原子、全部で1個の酸素原子、全部で1個の窒素原子を有し、追加的なヘテロ原子を有さない。例えば、ヘテロ原子非置換C〜C10アミドは、1から10個の炭素原子を有する。用語「ヘテロ原子非置換Cアミド」は、−NHR構造を有する基を含み、Rは、上に定義されている通りのヘテロ原子非置換Cアシルである。用語アミドは、N−アルキル−アミド、N−アリール−アミド、N−アラルキル−アミド、アシルアミノ、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、及びウレイド基を含む。−NHCOCH基は、ヘテロ原子非置換アミド基の例である。
【0079】
用語「ヘテロ原子置換Cアミド」は、付着点として単一の窒素原子を有するラジカルのことであり、さらに、炭素原子を介して窒素原子に付いたカルボニル基を有し、さらに直鎖状又は分岐状、環式又は非環式の構造を有し、さらに全部でn個の芳香族又は非芳香族の炭素原子、0、1、又は複数個の水素原子、カルボニル基の酸素に加えて少なくとも1個の追加的なヘテロ原子を有し、その各追加的なヘテロ原子は独立して、N、O、F、Cl、Br、I、Si、P、及びSからなる群から選択される。例えば、ヘテロ原子置換C〜C10アミドは、1から10個の炭素原子を有する。用語「ヘテロ原子置換Cアミド」は、−NHR構造を有する基を含み、Rは、上に定義されている通りのヘテロ原子非置換Cアシルである。−NHCOCH基は、ヘテロ原子置換アミド基の例である。
【0080】
用語「ヘテロ原子非置換Cスルホンアミド」は、付着点として単一の窒素原子を有するラジカルのことであり、さらに、硫黄原子を介して窒素原子に付いたスルホニル基を有し、さらに直鎖状又は分岐状、環式又は非環式の構造を有し、さらに全部でn個の炭素原子、1個又は複数個の水素原子は、全部で1個の酸素原子を有し、全部で1個の窒素原子を有し、追加的なヘテロ原子を有さない。例えば、ヘテロ原子非置換C〜C10アミドは、1から10個の炭素原子を有する。用語アミドは、N−アルキル−スルホンアミド、N−アリール−スルホンアミド、N−アラルキル−スルホンアミド、スルホニルアミノ、アルキルスルホンアミノ、及びアリールスルホンアミノ基を含む。−NHS(O)CH基は、ヘテロ原子非置換スルホンアミド基の例である。
【0081】
用語「ヘテロ原子置換Cスルホンアミド」は、付着点として単一の窒素原子を有するラジカルのことであり、さらに、硫黄原子を介して窒素原子に付いたスルホニル基を有し、さらに直鎖状又は分岐状、環式又は非環式の構造を有し、さらに全部でn個の芳香族又は非芳香族の炭素原子、0、1、又は複数個の水素原子、スルホニル基の硫黄及び酸素原子に加えて少なくとも1個の追加的なヘテロ原子を有し、その各追加的なヘテロ原子は独立して、N、O、F、Cl、Br、I、Si、P、及びSからなる群から選択される。例えば、ヘテロ原子置換C〜C10スルホンアミドは、1から10個の炭素原子を有する。−NHS(O)OCH基は、ヘテロ原子置換スルホンアミド基の例である。
【0082】
用語「ヘテロ原子非置換Cアルキルチオ」は、−SR構造を有する基のことであり、Rは、上に定義されている通りのヘテロ原子非置換Cアルキルである。−SCH基は、ヘテロ原子非置換アルキルチオ基の例である。
【0083】
用語「ヘテロ原子置換Cアルキルチオ」は、−SR構造を有する基のことであり、Rは、上に定義されている通りのヘテロ原子置換Cアルキルである。
【0084】
用語「ヘテロ原子非置換Cアルケニルチオ」は、−SR構造を有する基のことであり、Rは、上に定義されている通りのヘテロ原子非置換Cアルケニルである。
【0085】
用語「ヘテロ原子置換Cアルケニルチオ」は、−SR構造を有する基のことであり、Rは、上に定義されている通りのヘテロ原子置換Cアルケニルである。
【0086】
用語「ヘテロ原子非置換Cアルキニルチオ」は、−SR構造を有する基のことであり、Rは、上に定義されている通りのヘテロ原子非置換Cアルキニルである。
【0087】
用語「ヘテロ原子置換Cアルキニルチオ」は、−SR構造を有する基のことであり、Rは、上に定義されている通りのヘテロ原子置換Cアルキニルである。
【0088】
用語「ヘテロ原子非置換Cアリールチオ」は、−SAr構造を有する基のことであり、Arは、上に定義されている通りのヘテロ原子非置換Cアリールである。−SC基は、ヘテロ原子非置換アリールチオ基の例である。
【0089】
用語「ヘテロ原子置換Cアリールチオ」は、−SAr構造を有する基のことであり、Arは、上に定義されている通りのヘテロ原子置換Cアリールである。
【0090】
用語「ヘテロ原子非置換Cアラルキルチオ」は、−SAr構造を有する基のことであり、Arは、上に定義されている通りのヘテロ原子非置換Cアラルキルである。−SCH基は、ヘテロ原子非置換アラルキル基の例である。
【0091】
用語「ヘテロ原子置換Cアラルキルチオ」は、−SAr構造を有する基のことであり、Arは、上に定義されている通りのヘテロ原子置換Cアラルキルである。
【0092】
用語「ヘテロ原子非置換Cアシルチオ」は、−SAc構造を有する基のことであり、Acは、上に定義されている通りのヘテロ原子非置換Cアシルである。−SCOCH基は、ヘテロ原子非置換アシルチオ基の例である。
【0093】
用語「ヘテロ原子置換Cアシルチオ」は、−SAc構造を有する基のことであり、Acは、上に定義されている通りのヘテロ原子置換Cアシルである。
【0094】
用語「ヘテロ原子非置換Cアルキルシリル」は、付着点として単一のシリコン原子を有するラジカルのことであり、さらに、シリコン原子に付いた1、2、又は3個の飽和炭素原子を有し、さらに直鎖状又は分岐状、環式又は非環式構造を有し、全てが非芳香族である全部でn個の炭素原子、5個以上の水素原子、全部で1個のシリコン原子を含み、追加的なヘテロ原子を含まない。例えば、ヘテロ原子非置換C〜C10アルキルシリルは、1から10個の炭素原子を有する。アルキルシリル基は、ジアルキルアミノ基を含む。−Si(CH基、及び−Si(CHC(CH基は、ヘテロ原子非置換アルキルシリル基の例である。
【0095】
用語「ヘテロ原子置換Cアルキルシリル」は、付着点として単一のシリコン原子を有するラジカルのことであり、さらに、シリコン原子に付いた少なくとも1、2、又は3個の飽和炭素原子を有し、炭素−炭素の二重又は三重結合を有さず、さらに直鎖状又は分岐状、環式又は非環式構造を有し、さらに全てが非芳香族である全部でn個の炭素原子、0、1、又は複数個の水素原子、少なくとも1個の追加的なヘテロ原子を、すなわち、付着点のシリコン原子に加えて有し、その各追加的なヘテロ原子は独立して、N、O、F、Cl、Br、I、Si、P、及びSからなる群から選択される。例えば、ヘテロ原子置換C〜C10アルキルシリルは、1から10個の炭素原子を有する。
【0096】
本明細書に使用の用語「薬学的に許容される塩」は、生体に対して実質的に非毒性である本発明の化合物の塩のことである。典型的な薬学的に許容される塩は、本発明の化合物に存在する置換基に応じて、無機若しくは有機酸、又は有機塩基との、本発明の化合物の反応によって調製される塩を含む。
【0097】
薬学的に許容される塩を調製するために使用してよい無機酸の例としては、塩酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸等が挙げられる。薬学的に許容される塩を調製するために使用してよい有機酸の例としては、脂肪族のモノカルボン酸及びシュウ酸などのジカルボン酸、炭酸、クエン酸、コハク酸、フェニル−ヘテロ原子置換アルカン酸、脂肪族及び芳香族の硫酸等が挙げられる。したがって、無機又は有機酸から調製される薬学的に許容される塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ピロ硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、ヨウ化水素酸塩、フッ化水素酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、マレイン酸塩等が挙げられる。その他の適切な塩は、当業者にとって既知である。
【0098】
適切な薬学的に許容される塩はまた、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、リシン、オルニチン等などの有機塩基と、本発明の薬剤との反応によって形成することもできる。その他の適切な塩は、当業者にとって既知である。
【0099】
薬学的に許容される塩は、本発明のいくつかの化合物に見出されるカルボキシレート若しくはスルホネート基と、ナトリウム、カリウム、アンモニウム若しくはカルシウムなどの無機カチオン、又はイソプロピルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム及びイミダゾリウムなどの有機カチオンとの間に形成される塩を含む。
【0100】
本発明の任意の塩の一部を形成する特定のアニオン又はカチオンは、塩が全体として薬理学的に許容される限り、及び、アニオン又はカチオンが望ましくない質又は効果に寄与しない限り、重要ではないことを認識されたい。さらに、追加的な薬学的に許容される塩は、当業者にとって既知であり、本発明の範囲内で使用されてよい。薬学的に許容される塩の追加的な例、並びにそれらの調製の方法及び使用は、参照により本明細書に組み込まれる、Pharmaceutical Salts:Properties,Selection and Use−A Handbook、(2002年)に提示されている。
【0101】
本明細書に使用の用語「患者」は、本明細書に記載されている特定の症状が起こり得る生体を含むことが意図される。例としては、ヒト、サル、ウシ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、マウス、及びそれらの遺伝子導入種が挙げられる。好ましい実施形態において、患者は霊長類である。さらにより好ましい実施形態において、霊長類はヒトである。対象のその他の例としては、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、及びウシなどの実験動物が挙げられる。実験動物は、障害のための動物モデル、例えばアルツハイマー型の神経病理を有する遺伝子導入マウスであり得る。患者は、アルツハイマー病又はパーキンソン病などの神経変性疾患を患うヒトであり得る。
【0102】
本明細書に使用の用語「IC50」は、得られる最大反応の50%である抑制量のことである。
【0103】
本明細書に使用の用語「水溶性」は、化合物が少なくとも0.010モル/リットルの程度まで水中に溶解するか、又は先行文献によって可溶性であると分類されていることを意味する。
【0104】
本明細書に使用する「主に1個のエナンチオマー」とは、化合物が、1個のエナンチオマーの少なくとも85%、又はより好ましくは1個のエナンチオマーの少なくとも90%、又はさらにより好ましくは1個のエナンチオマーの少なくとも95%、又は最も好ましくは1個のエナンチオマーの99%を含むことを意味する。同様に、句「その他の光学異性体を実質的に含まない」は、組成物が、別のエナンチオマー又はジアステレオマーを多くて5%、より好ましくは別のエナンチオマー又はジアステレオマーを2%、及び最も好ましくは別のエナンチオマー又はジアステレオマーを1%含むことを意味する。
【0105】
本明細書に使用の「a」又は[an]は、1つ又は複数を意味し得る。特許請求項(単数又は複数)に使用の用語「comprising(含む)」又は「having(有する)」に関連して使用される場合、用語「a」又は[an]は、1つ又は複数を意味する。本明細書に使用の「別の」は、少なくとも第2又は第3以降を意味し得る。
【0106】
本明細書に使用されているその他の略語は、以下の通りである、DMSO(ジメチルスルホキシド)、iNOS(誘導性一酸化窒素シンターゼ)、COX−2(シクロオキシゲナーゼ−2)、NGF(神経増殖因子)、IBMX(イソブチルメチルキサンチン)、FBS(ウシ胎児血清)、GPDH(グリセロール−3−リン酸デヒドロゲナーゼ)、RXR(レチノイドX受容体)、TGF−β(トランスフォーミング増殖因子−β)、IFN−γ(インターフェロン−γ)、LPS(細菌性内毒素リポ多糖)、TNF−α(腫瘍壊死因子−α)、IL−1β(インターロイキン−1β)、GAPDH(グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ)、MTT(3−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)、TCA(トリクロロ酢酸)、HO−1(誘導性ヘムオキシゲナーゼ)。
【0107】
用語「併用療法」は、本開示に記載される治療症状又は障害を治療するための2種以上の治療薬の投与を意味する。かかる投与は、一定比率の有効成分を有する単一のカプセルにおいて、又は各有効成分のための複数の、別々のカプセルにおいてなどの、実質的に同時的な方法での、これらの治療薬の同時投与を包含する。さらに、かかる投与はまた、経時的な方法での、各種類の治療薬の使用を包含する。いずれの場合においても、治療計画は、本明細書に記載される症状又は障害の治療において、薬剤の組合せの有益な効果を提供する。
【0108】
用語「治療上有効な」は、疾患又は障害の治療に使用される有効成分の量を認定することを意図する。この量は、前記疾患又は障害を軽減又は除去するという目的を達成する。
【0109】
用語「治療上許容される」は、過度の毒性、刺激、及びアレルギー反応なく、患者の組織と接触して使用するのに適切であり、妥当な効果/リスク比率で釣り合っており、意図された使用に有効である化合物(又は塩、プロドラッグ、互変異性体、双性イオンフォーム等)のことである。
【0110】
本明細書に使用の、患者の「治療」への言及は、予防を含むことが意図される。用語「患者」は、ヒトを含む全ての哺乳類を意味する。患者の例としては、ヒト、ウシ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、及びウサギが挙げられる。好ましくは、患者はヒトである。
【0111】
用語「プロドラッグ」は、生体内でより活性になる化合物のことである。本明細書に与えられる特定の化合物はまた、「Hydrolysis in Drug and Prodrug Metabolism:Chemistry,Biochemistry,and Enzymology」(Testa、Bernard、及びMayer,Joachim M.、Wiley−VHCA、Zurich、Switzerland、2003年)に記載されている通りのプロドラッグとして存在し得る。本明細書に記載される化合物のプロドラッグは、化合物を提供する生理的条件下で容易に化学的な変化を受ける化合物の、構造的に改変された形態である。さらに、プロドラッグは、生体外環境において、化学的又は生化学的方法によって化合物へ変換できる。例えば、プロドラッグは、適切な酵素又は化学的な試薬とともにリザーバ型経皮パッチに入れる場合、化合物へ徐々に変換し得る。プロドラッグは、いくつかの状況において化合物又は親薬剤より投与するのが容易なので、しばしば有用である。プロドラッグは、例えば、経口投与によって体内に吸収されて利用可能であり得るが、一方、親薬剤はそうではない。プロドラッグはまた、親薬剤よりも、医薬組成物における向上した溶解性を有する可能性がある。
【0112】
さらに、プロドラッグの加水切断又は酸化的活性化に依るプロドラッグ誘導体など、広範なプロドラッグ誘導体が、当技術分野において既知である。限定するものではないが、プロドラッグの一例は、エステル(「プロドラッグ」)として投与されるが、次に活性実体であるカルボン酸へ代謝的に加水分解する化合物であり得る。さらなる例は、化合物のペプチジル誘導体を含む。
【0113】
本主題の発明の化合物は、そのままの化学物質として投与されることも可能であり得る一方で、医薬配合物として提示することもまた可能である。したがって、本主題の発明は、1種以上の薬学的に許容される担体、及び場合によって1つ又は複数種のその他の治療成分と一緒に、化合物又はその薬学的に許容される塩、エステル、プロドラッグ、若しくは溶媒和化合物を含む医薬配合物を提供する。担体(単数又は複数)は、配合物のその他の成分と両立し、そのレシピエントにとって有害ではないという意味において、「許容され」なければならない。適切な配合は、選択される投与の経路に依る。任意のよく知られた技術、担体、及び賦形剤が、適切に、及び当技術分野、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciencesにおいて理解されている通りに、使用されてよい。本発明の医薬組成物は、それ自体知られている方法で、例えば、従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠作製、粉末化、乳化、カプセル化、封入、又は圧縮の方法によって、製造してよい。
【0114】
最も適切な経路は、例えば、レシピエントの症状及び障害に依り得るが、配合物は、経口、非経口(皮下、皮内、筋肉内、静脈内、関節内、及び髄内を含む)、腹腔内、経粘膜、経皮、直腸、並びに局所的(皮膚、頬側、舌下、及び眼球内を含む)投与に適切な配合物を含む。配合物が、単位剤形で提示されるのは好都合であり得るし、薬学分野でよく知られている任意の方法によって調製されてよい。全ての方法は、本主題の発明の化合物、又はその薬学的に許容される塩、エステル、プロドラッグ、若しくは溶媒和化合物(「有効成分」)を、1つ又は複数種の補助成分を構成する担体と会合させるステップを含む。一般に、配合物は、均一及び密接に、有効成分を液体担体、又は微細に分かれた固体担体、又はその両方と会合させるステップ、次に、必要であれば、望ましい配合物に生成物を成形するステップによって調製する。
【0115】
経口投与に適切な配合物は、それぞれが有効成分の予定された量を含むカプセル、カシェ剤、若しくは錠剤などの別々の単位として、粉末若しくは顆粒として、水性液体若しくは非水性液体の溶液若しくは懸濁液として、又は水中油型液体乳剤若しくは油中水型液体乳剤として、提示されてよい。有効成分はまた、ボーラス、舐剤、又は糊状剤として提示されてよい。
【0116】
経口で使用できる医薬製剤としては、ゼラチン及びグリセロール又はソルビトールなどの可塑剤から作製される軟質の密封カプセルばかりでなく、錠剤、ゼラチンから作製される押し込み式カプセルが挙げられる。錠剤は、場合によって1つ又は複数種の補助成分とともに、圧縮又は型成形により作製されてよい。圧縮錠剤は、場合によって結合剤、不活性希釈剤、又は潤滑性、界面活性、若しくは分散性の薬剤と混合して、粉末又は顆粒などの自由流動形の有効成分を、適切な機械で圧縮することによって調製してよい。湿製錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末状化合物の混合物を、適切な機械で型成形することによって作製してよい。錠剤は、場合によってコーティング又は割り線入りであってよく、有効成分の持続又は制御放出を提供するために配合されてよい。経口投与のための全ての配合物は、かかる投与に適切な投薬量であるべきである。押し込み式カプセルは、ラクトースなどの注入剤、デンプンなどの結合剤、及び/又は滑石若しくはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、並びに場合によって安定剤と混合して、有効成分を有することができる。軟質カプセルにおいて、活性化合物は、脂肪油、流動パラフィン、若しくは液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体中に溶解又は懸濁してよい。さらに、安定剤を加えてもよい。糖衣錠の中心部に、適切なコーティングが提供される。この目的のために、濃縮砂糖溶液が使用されてよく、場合によって、アラビアゴム、滑石、ポリビニルピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、並びに適切な有機溶媒若しくは溶媒混合物を含んでよい。染料又は顔料を、識別のため、すなわち活性化合物用量の異なる組合せを特徴付けるために、錠剤又は糖衣錠のコーティングに加えてもよい。
【0117】
化合物は、注入、例えばボーラス注入又は持続点滴による、非経口投与のために配合されてよい。注入のための配合物は、追加的な保存剤とともに、単位剤形、例えばアンプル又は複数回用量容器で提供されてよい。組成物は、油性又は水性媒体において、懸濁液、溶液、又は乳剤などの形態をとってよく、懸濁、安定、及び/又は分散剤などの配合剤を含んでよい。配合物は、単位用量又は複数回用量の容器、例えば、密封アンプル及びバイアルで提示されてよく、使用直前に無菌の液体担体、例えば生理食塩水又は無菌の発熱性物質の含まれていない水の付加のみを必要とする、粉末形態又はフリーズドライ(凍結乾燥)状態で貯蔵されてよい。即時注入溶液及び懸濁液は、前記の種類の無菌の粉末、顆粒、及び錠剤から調製されてよい。
【0118】
非経口投与のための配合物は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び、意図されるレシピエントの血液と配合物を等張にする溶質を含み得る、活性化合物の水性及び非水性(油性)無菌注入溶液、並びに懸濁剤及び増粘剤を含み得る、水性及び非水性の無菌懸濁液を含む。適切な脂溶性溶媒又は媒体としては、ゴマ油などの脂肪油、又はオレイン酸エチル若しくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、又はリポゾームが挙げられる。水性注入懸濁液は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、又はデキストランなどの懸濁液の粘度を高める物質を含んでよい。場合によって、懸濁液はまた、適切な安定剤、又は化合物の溶解性を増して、高濃度溶液の調製を可能にする薬剤を含んでもよい。
【0119】
好ましい単位投与配合物は、有効成分の、本明細書の下に述べられる通りの有効な一回用量、又はその適切な画分を含む配合物である。
【0120】
特に上に述べられた成分に加えて、配合物は、当該の配合物の種類を考慮して、当技術分野における従来のその他の成分を含んでよいこと、例えば経口投与に適切な配合物は、香味料を含んでよいことが理解されるべきである。
【0121】
本明細書に与えられる化合物は、様々な様式、例えば経口で、局所的に、又は注入によって投与できる。患者に投与される化合物の的確な量は、主治医の責任である。任意の特定の患者にとっての具体的なの用量レベルは、使用される具体的な化合物の活性、年齢、体重、全身的な健康状態、性別、食事、投与の時間、投与の経路、排泄率、合剤、治療される的確な障害、及び治療される兆候若しくは症状の重症度を含む様々な要因に依る。また、投与の経路は、症状及びその重症度によって、様々であり得る。
【0122】
要するに、本発明の化合物は、経口で、局所的に、又は注入によって、1日につき0.1から500mg/kgの用量で投与されてよい。錠剤又は別々の単位で提供される体裁のその他の形態が、かかる用量で、又は複数の同一用量、例えば、5mgから500mgを含む単位で、有効である本発明の化合物の量を含むことは好都合であり得る。
【0123】
担体物質と組み合わせて、単一の剤形を生成し得る有効成分の量は、治療される患者及び投与の特定の様式に応じて様々であり得る。
【0124】
場合によっては、別の治療薬と併用して、少なくとも1種の本明細書に記載される化合物(又はその薬学的に許容される塩、エステル、若しくはプロドラッグ)を投与することは、適切であり得る。ほんの一例として、本明細書中の化合物の1つを投与される際、患者が経験する副作用の1つが血圧上昇である場合、そのときは最初期の治療薬と併用して降圧剤を投与することが適切であり得る。又は、ほんの一例として、本明細書に記載される化合物の1つの治療有効性は、アジュバントの投与によって増強され得る(すなわち、アジュバントそれ自体は、最小限の治療効果のみを有し得るが、別の治療薬と併用して、患者に対する全体的な治療効果が増強される)。又は、ほんの一例として、患者が経験する効果が、治療効果もまた有する別の治療薬(治療計画もまた含む)とともに、本明細書に記載される化合物の1つを投与することによって、向上し得る。ほんの一例として、本明細書に記載される化合物の1つの投与を含む癌治療において、向上した治療効果は、癌のための別の治療薬を患者に与えることによってもまた、起こり得る。いずれにせよ、治療される疾患、障害、又は症状に関らず、患者が経験する全体的な効果は、2種の治療薬の単なる相加であり得るか、又は、患者は相乗効果を経験し得る。
【0125】
いずれにせよ、複数の治療薬(そのうちの少なくとも1種は、本明細書に与えられる化合物である)は、任意の順番で、またさらには同時に投与されてよい。同時に投与される場合、複数の治療薬は、単一の統合形態で又は複数形態で(ほんの一例として、単一の丸剤又は2個の別々の丸剤のいずれかとして)提供されてよい。治療薬の1つは、複数回用量で与えられてよく、又は治療薬の両方とも、複数回用量として与えられてよい。同時でない場合は、複数回用量間のタイミングは、数分から4週間の範囲の任意の期間であってよい。
【0126】
したがって、かかる治療を必要とするヒト又は動物対象における(STAT5仲介障害又は症状ばかりでなく)STAT3仲介障害又は症状を治療する方法は、当技術分野において既知の前記障害の治療のための少なくとも1種の追加的な薬剤を併用して、対象における前記障害を軽減又は予防するのに有効な、本明細書に提示される化合物の量を、対象に投与することを含む。関連する態様において、治療組成物は、STAT3及びSTAT5仲介障害の治療のための1つ又は複数種の追加的な薬剤と併用して、少なくとも1種のこれらの化合物を含む。
【0127】
本明細書に記載される化合物は、STAT3経路の抑制又は調節が必要とされる広範な障害又は症状の治療に有用であり得る。化合物は、増殖性の疾患の症状を緩和し、治療することができる。これらの化合物のための使用は、STAT3活性、STAT3のリン酸化、及び、活性化STAT3による転写活性化によって制御されるタンパク質の発現を、減少させるための薬剤としての化合物を含む。この線にそって、化合物は、VEGF、MMP9、MMP2、サバイビン、c−Myc、MMP−1、MEK−5、c−FOS、1、COX−2、Bcl−xI、MMP−10、HSP−27、及びJMJD1Aを減少させるための薬剤として特に使用できる。
【0128】
本明細書に記載される化合物及び方法によって、予防又は治療できる障害又は症状は、皮膚T細胞白血病、頭頸部腫瘍、膵臓癌、膀胱癌、高度の神経膠腫、脳転移、黒色腫、皮膚癌、肺癌、乳癌、前立腺癌、結腸癌、白血病、骨髄異形成症候群(前白血病症状)、及び多発性骨髄腫などの癌の予防又は治療を含む。一般に、任意の癌の転移を、本明細書に記載される化合物及び方法で予防又は治療できる。化合物はまた、毛細血管拡張症、静脈性血管腫、血管芽細胞腫を含む、増殖性の血管新生症状を予防又は治療するために使用できる。
【0129】
これらの化合物及び方法はまた、局所的な皮膚炎、乾癬、及び酒さを含む、皮膚の増殖性の疾患又は障害を予防又は治療するために使用できる。
【0130】
さらに、本明細書に記載される化合物及び方法は、中枢神経系(「CNS」)炎症及び症状、例えば多発性硬化症及び進行性多巣性白質脳症などのCNSの疾患並びに症状を予防又は治療するために使用できる。
【0131】
さらに、本明細書に記載される化合物及び方法は、変形性関節症、関節リウマチ、クローン病、潰瘍性大腸炎、並びに、ループス及び混合性自己免疫疾患などの自己免疫疾患などの炎症性疾患及び症状を予防し、治療するために使用できる。
【0132】
毛細血管拡張症、静脈性血管腫、血管芽細胞腫、真性赤血球増加症などの疾患及び症状はまた、本明細書に記載される化合物及び方法によって予防又は治療され得ることは、有利であり得る。
【0133】
これらの化合物及び方法は、幹細胞の幹細胞性を維持すること、例えば幹細胞の分化を妨げることによって、幹細胞の生存及び分化に影響を与えることができる。
【0134】
本明細書に教示される化合物はまた、特に、免疫応答の増大が、周辺のマクロファージ及び腫瘍浸潤ミクログリア上で副刺激分子の発現を引き起こす場合、免疫応答の増大のために使用されてもよい。これらの化合物はまた、免疫応答がエフェクターT細胞の増殖、及び/又は、T細胞及び単球の活性化を決定的に制御するいくつかの重要な細胞内シグナル分子の上方制御を引き起こす場合、有用である。化合物は、免疫応答がT細胞及び単球の活性化、特に単球におけるSyk(Tyr(352))及びT細胞におけるZAP−70(Tyr(319))のリン酸化を決定的に制御するいくつかの重要な細胞内シグナル分子の上方制御を引き起こす場合、有用である。
【0135】
直下に示された表1は、本明細書に記載される化合物を使用して治療され得る特定の疾患及び症状を記載している。
【表1】

【0136】
STAT(「シグナル伝達性転写因子」)タンパク質ファミリーは、細胞がサイトカイン及び増殖因子と遭遇する場合、特に活性化されて、遺伝子転写を制御する転写因子を含む。哺乳類において、7種の既知のSTATタンパク質ファミリーのメンバー、STAT1、STAT2、STAT3、STAT4、STAT5a、STAT5b、及びSTAT6がある。Yu,H.、Jove,R.、「The STATS of Cancer−New Molecular Targets Come of Age」、Nature Reviews、4号、97〜105頁、(2004年)。これらの7種のタンパク質は、大きさが750から850アミノ酸の範囲である。本明細書中でまとめて「STAT5」と呼ばれるSTAT5a及びSTAT5bタンパク質は、密接に関連しているが、異なる遺伝子によってコードされている。Yu,H.、Jove,R.、The STATS of Cancer−New Molecular Targets Come of Age、Nature Reviews、4号、97〜105頁、(2004年)。
【0137】
STATタンパク質は、細胞質においてシグナルトランスデューサー、及び核において転写活性化因子として作用する。Kisseleva T.、Bhattacharya S.、Braunstein J.、Schindler C.W.、「Signaling Through the JAK/STAT Pathway,Recent Advances and Future Challenges」、Gene、285号、1〜24頁、(2002年)。例えば、STATタンパク質は、サイトカイン受容体、増殖因子受容体、並びにSrc及びAblなどの非受容体型細胞質チロシンキナーゼからのシグナルを、細胞の核へ伝達し、その核内で、STATタンパク質はDNAを結合し、1分類の遺伝子イディオタイプの転写を制御する。結果として、STATタンパク質は、免疫応答、炎症、増殖、分化、生存、転移、アポトーシス、及び免疫寛容(例えば、腫瘍の免疫回避)などの生理的機能を制御する。Xie,T.ら、「Stat3 Activation Regulates the Expression of Matrix Metalloproteinase−2 and Tumor Invasion and Metastasis」、Oncogene、23号、3550〜3560頁、(2004年)、Levy,D.E.、Inghirami,G.、「STAT3:A Multifaceted Oncogene」、PNAS、103号、10151〜52頁、(2006年)。
【0138】
STATは、隣接するDNA結合部位上のSTAT二量体間の相互作用を強化するN末端ドメイン、タンパク質−タンパク質の相互作用に関るコイルドコイルSTATドメイン、p53腫瘍抑制タンパク質に似た免疫グロブリン様フォールドを有するDNA結合ドメイン、DNA結合及びSH2ドメインを連結するEFハンド様リンカードメイン、受容体認識及びDNA結合を制御するためのリン酸化依存性スイッチとして作用するSH2ドメイン、並びにC末端トランス活性化ドメインを含む、構造的及び機能的保存ドメインを共有する。Chen X.、Vinkemeier U.、Zhao Y.、Jeruzalmi D.、Darnell J.E.、Kuriyan J.、「Crystal Structure of a Tyrosine Phosphorylated STAT−1 Dimer Bound to DNA」、Cell、93号、827〜839頁、(1998年)。DNAを結合するために、STATタンパク質は二量体化されなければならない。Yu,H.、Jove,R.、「The STATS of Cancer−New Molecular Targets Come of Age」、Nature Reviews、4号、97〜105頁、(2004年)、Darnell,J.Jr.、「Validating Stat3 in Cancer Therapy」、Nature Medicine、11号、595〜96頁、(2005年)。二量体形成は、1個のSTAT分子のSRCホモロジー2(SH2)ドメインと第2のSTAT分子のリン酸化チロシン残基との間の相反性の相互作用を伴う。
【0139】
STATタンパク質は、固形腫瘍及び血液の悪性腫瘍を含む癌細胞、皮膚の増殖性疾患、並びに炎症性疾患において、過剰活性であり、及び/又は持続的に活性化することがわかった。Yu,H.、Jove,R.、「The STATS of Cancer−New Molecular Targets Come of Age」、Nature Reviews、4号、97〜105頁、(2004年)。例えば、STATシグナルは、様々な癌に関った。Song,J.I.及びGrandis,J.R.、「STAT Signaling in Head and Neck Cancer」、Oncogene、19号、2489〜2495頁、2000年、Nikitakis,N.G.ら、「Targeting the STAT Pathway in Head and Neck Cancer:Recent Advances and Future Prospects」、Current Cancer Drug Targets、4号、639〜651頁。核内の活性化STAT3及び/又はSTAT5の存在の増加は、遺伝子転写の調節異常に関連する。Yu,H.,Jove,R.、「The STATS of Cancer−New Molecular Targets Come of Age」、Nature Reviews、4号、97〜105頁。さらに、活性化STAT3及び/又はSTAT5の存在の増加は、細胞増殖、生存、血管新生、及び腫瘍誘発免疫寛容に貢献する遺伝子の転写の増加に関連する。Yu,H.、Jove,R.、「The STATS of Cancer−New Molecular Targets Come of Age」、Nature Reviews、4号、97〜105頁。例えば、STAT5は、特定の白血病、乳癌、及び頭頸部癌において活性化される。Yu,H.、Jove,R.、「The STATS of Cancer−New Molecular Targets Come of Age」、Nature Reviews、4号、97〜105頁。同様に、STAT3の活性化は、特定の癌腫瘍増殖に貢献する、増殖因子依存性を抑止することが知られている。Kijima,T.、Niwa,H.、Steinman,R.A.、Drenning,S.D.、Gooding,W.E.、 Wentzel,A.L.、Xi,S.、及びGrandis,J.R.、「STAT3 Activation Abrogates Growth Factor Dependence And Contributes To Head And Neck Squamous Cell Carcinoma Tumor Growth In Vivo」、Cell Growth Differ、13号、355〜362頁、2002年。STAT3の活性化はまた、ヒト非小細胞癌細胞における生存を制御することが報告されている。Song,L.、Turkson,J.、Karras,J.G.、Jove,R.、及びHaura,E.B.、「Activation Of Stat3 By Receptor Tyrosine Kinases And Cytokines Regulates Survival In Human Non−Small Cell Carcinoma Cells」、Oncogene、22号、4150〜4165頁、2003年。したがって、STAT3及びSTAT5は、STAT3及びSTAT5仲介疾患を治療するのに有用な標的である。
【0140】
STAT3及びSTAT5のシグナル伝達経路は両方とも、細胞表面受容体へのサイトカイン又は増殖因子の結合を伴い、JAKファミリーなどの細胞質チロシンキナーゼの活性化を引き起こし、続いて、STAT単量体のリン酸化を引き起こす。Gadina,M.、Hilton,D.、Johnston,J.A.、Morinobu,A.、Lighvani,A.、Zhou,Y.J.、Visconti,R.、O’Shea,J.J.「Signaling by Type I and Type II Cytokine Receptors:Ten Years After」、Curr.Opin.Immunol.、2001年、13号、363頁。STATタンパク質は、二量体化して核へ転位置することを引き起こすリン酸化によって、活性化され、その核内で、STATタンパク質は、標的遺伝子内の特定のプロモーター配列に結合する。Horvath,C.M.、「The JAK−STAT Pathway Stimulated by Interferon Gamma」,Science,STKE、2004年、260号、表列8。
【0141】
図5に概略的に示す通り、増殖因子受容体、サイトカイン受容体、及び非受容体型チロシンキナーゼは、STAT3及びSTAT5上で収束するシグナル伝達経路を有する。STAT3について、これらの受容体及びキナーゼとしては、IL−2、IL−6、IL−7、IL−9、IL−10、IL−11、IL−15、IL−21、EGF、OSM、G−CSF、TPO、LIF、及びGHが挙げられる。STAT5について、受容体及びキナーゼとしては、IL−2、IL−3、IL−5、IL−7、IL−9、IL−15、G−CSF、GM−CSF、EPO、TPO、GH、及びPRLが挙げられる。
【0142】
より具体的には、STAT3の活性化は、c−Src又はJAK2を通じて、EGFR、EPO−R、及びIL−6Rによって仲介されることが知られている。参照、例えばLai,S.Y.、Childs,E.E.、Xi,S.、Coppelli,F.M.、Gooding,W.E.、Wells,A.、Ferris,R.L.、及びGrandis,J.R.、「Erythropoietin−Mediated Activation of JAK−STAT Signaling Contributes to Cellular Invasion in Head and Neck Squamous Cell Carcinoma」、Oncogene、24号、4442〜4449頁、2005年、Siavash,H.、Nikitakis,N.G.、及びSauk,J.J.、「Abrogation of IL−6−Mediated JAK Signalling by the Cyclopentenone Prostaglandin 15d−PGJ(2) in Oral Squamous Carcinoma Cells」、Br J Cancer、91号、1074〜1080頁、2004年、並びにQuadros,M.R.、Peruzzi,F.、Kari,C.、及びRodeck,U.、「Complex Regulation of Signal Transducers and Activators of Transcription 3 Activation in Normal and Malignant Keratinocytes」、Cancer Res、64号、3934〜3939頁、2004年。MAPKの活性化は、STAT3のリン酸化の減少を引き起こすことができる。固形腫瘍において、PDGFR及びc−Metはまた、c−Srcを通じて、STAT3を活性化することができる。IGFR1及びEGFRは、JAK非依存性様式で、STAT3を活性化することができる。STAT3の活性化は、Bcl−XL、サイクリンD1、及びVEGFを含む、いくつかの下流の標的遺伝子の活性化を引き起こすことができる。
【0143】
細胞表面サイトカイン受容体へのリガンド結合は、JAKの活性化の引き金となる。キナーゼ活性の上昇と、JAKは、受容体上のチロシン残基をリン酸化し、リン酸化チロシン結合SH2ドメインを含むタンパク質との相互作用のための部位を創り出す。これらのリン酸化チロシン残基を結合することが可能なSH2ドメインを有するSTATは、受容体に動員され、JAKによってチロシンリン酸化される。次に、リン酸化チロシンは、その他のSTATのSH2ドメインのためのドッキング部位として作用し、二量体化を仲介する。異なるSTATは、ホモ二量体ばかりでなくヘテロ二量体も形成する。活性化STAT二量体は、細胞核内に蓄積し、標的遺伝子の転写を活性化させる。Hebenstreit D.ら、(2005年)、Drug News Perspect、18巻、4号、243〜249頁。STATは、上皮増殖因子受容体などの受容体型チロシンキナーゼばかりでなく、c−srcなどのその他の非受容体型チロシンキナーゼによっても、チロシンリン酸化することができる。
【0144】
同様に、gp130受容体へのIL−6ファミリーのサイトカイン(IL−6、オンコスタチンM、及び白血病抑制因子を含む)の結合は、JAK2によるSTAT3のリン酸化の引き金となる。Boulton,TG、Zhong,Z、Wen,Z、Darnell,Jr,JE、Stahl,N、及びYancopoulos,GD、「STAT3 Activation by Cytokines Utilizing gp130 and Related Transducers Involves a Secondary Modification Requiring an H7−Sensitive Kinase」、Proc Natl Acad Sci USA、92巻、15号、6915〜6919頁。EGF−R、及びc−METなどの特定のその他の受容体型チロシンキナーゼは、リガンドに応答してSTAT3をリン酸化する。Yuan ZLら、(2004年)、Mol.Cell Biol.、24巻、21号、9390〜9400頁。STAT3はまた、c−src非受容体型チロシンキナーゼの標的でもある。Silva C.M.、(2004年)、Oncogene、23巻、48号、8017〜8023頁。IL−6結合を通じてのSTAT3の活性化に加えて、STAT3はさらに、適切な受容体へのIL−2、IL−7、IL−9、IL−10、IL−11、IL−15、IL−21、EGF、OSM、G−CSF、TPO、LIF、又はGHの結合によって、活性化される。同様に、STAT5は、適切な受容体へのIL−2、IL−3、IL−5、IL−7、IL−9、IL−15、G−CSF、GM−CSF、EPO、TPO、GH、又はPRLの結合によって、活性化される。
【0145】
実際に、ヤヌスキナーゼ(「JAK」)は、サイトカイン受容体シグナル伝達の初期段階において重要な役割を果たす。異なるサイトカイン受容体に対するJAKファミリーの4つのメンバー(Jak1、Jak2、Jak3、及びTyk2)の特異性が、完全には理解されていない一方で、研究は、特定の特異なサイトカイン受容体が、1つ又は複数のJAKを活性化できることを報告している。O’shea,J.J.、Pesu,M.、Borie,D.C.、Changelian,P.S.、「A New Modality for Immunosuppression: Targeting the JAK/STAT Pathway」、Nature Rev.Drug Disc.、2004年、3号、555〜564頁。例えば、成長ホルモン受容体(GHR)は、主にJak2と相互作用し得て、Jak1及びJak3のリン酸化を誘発する受容体であると示された。Hellgren,G.、Jansson,J.O.、Carlsson,L.M.、Carlsson,B.、「The Growth Hormone Receptor Associates with Jakl,Jak2 and Tyk2 in Human Liver」,Growth Horm.IGF Res.、1999年、9巻、3号、212〜8頁。
【0146】
JAK−STAT経路は、複数のレベルで負の制御を受けることができる。タンパク質チロシンホスファターゼは、活性化STATばかりでなくサイトカイン受容体から、ホスフェートを除去する。Hebenstreit D.ら、(2005年)、Drug News Perspect.、18巻、(4号)、243〜249頁。さらに最近、確認されたサイトカインシグナル抑制因子(SOCS)は、サイトカイン受容体上のリン酸チロシン結合部位のために、JAKを結合及び抑制するか又はSTATと競合することによって、STATリン酸化を抑制する。Krebs,L.ら、(2001年)、Stem Cells、19巻、378〜387頁。STATはまた、いくつかのメカニズムを通じて核内で作用する活性化STATのタンパク質抑制因子(PIAS)によって、負の制御を受ける。Shuai,K.、(2006年)、16巻、(2号)、196〜202頁。例えば、PIAS1は結合することによって、及びPIAS3は認識したDNA配列へのアクセスを阻止することによって、STAT1及びSTAT3による転写活性化を抑制する。
【0147】
JAK−STATシグナル伝達経路は、サイトカイン及び増殖因子への細胞応答の制御に参加する。ヤヌスキナーゼ(JAK)及びシグナル伝達性転写因子(STAT)を使用して、経路は、これらの細胞外ポリペプチドによって運ばれたシグナルを細胞核へ伝達し、その細胞核内で、活性化STATタンパク質は遺伝子発現を改変する。STATは、ヤヌスキナーゼの標的として本来発見されたが、特定の刺激はJAKから独立して、STATを活性化することができる。D W Leaman、S Pisharody、T W Flickinger、M A Commane、J Schlessinger、I M Kerr、D E Levy、及びG R Stark、「Roles of JAKs in Activation of STATs and Stimulation of c−fos Gene Expression by Epidermal Growth Factor」、Mol Cell Biol.、1996年、16巻、1号、369〜375頁。この経路は、主細胞の運命決定に中心的な役割を果たし、細胞の増殖、分化、及びアポトーシスの過程を制御する。STAT活性化因子のリン酸化は、リン酸化するために、JAKのリン酸化を必要とする。言い換えれば、JAKが最初にリン酸化され、STATに結合しなければならない。次に、STATがリン酸化し、別のSTATと二量体化することができる。
【0148】
本明細書に記載される化合物は、STAT調節を通じて、細胞増殖及び生存を制御することができる。細胞活性は、「シグナル」によって制御される。シグナルは、受容体を通じて細胞壁に入る。シグナルは、STATによって伝達される。STATは、DNAへの経路を完成する。シグナルは、DNA転写を活性化する(別名、遺伝子活性化と呼ばれる)。BCL−Xl、MCL1、サバイビン、及びp53は、細胞の生存に関与する。MYC、サイクリンD1/D2、及びp53は、細胞増殖に関与する。STAT3のリン酸化の下流で、シグナル伝達経路は、VEGF、H1F1及びp53の制御の結果としての血管新生を引き起こし、免疫抑制因子、炎症誘発性サイトカイン、及び炎症誘発性ケモカインによって制御される免疫回避を引き起こす。
【0149】
本明細書に記載される化合物及び方法は、STAT3及び/又はSTAT5の活性化を直接又は間接的に調節できる。例えば、化合物及び方法は、(1)STAT3又はSTAT5の下流での活性化を妨げ、また低減させるために、STAT3又はSTAT5の活性化を引き起こすシグナル伝達経路に影響を及ぼすこと、(2)例えば、STAT3又はSTAT5のリン酸化を妨げることによって、STAT3又はSTAT5の活性化を直接妨げる又は低減させること、並びに(3)複合体がSTAT3又はSTAT5のシグナルの制御に関与する、任意の数のコファクター及び/又は高分子とのSTAT3又はSTAT5の複合体形成を混乱させることによって、STAT3の活性化を抑制することができ、STAT5の活性化も同様に抑制できる。
【0150】
STAT3及び/又はSTAT5の活性化の抑制は、当技術分野において現在既知の任意のSTAT標的方法を通じて、直接的又は間接的に達成できる。ほんの一例として、STAT3活性は、(1)補充のためのSTAT3若しくはSTAT5の利用能を低減させること、(2)受容体へのSTAT3若しくはSTAT5の補充を阻止すること、(3)STAT3若しくはSTAT5分子のリン酸化を阻止すること、(4)STAT3若しくはSTAT5の二量体の形成に干渉すること、(5)STAT3若しくはSTAT5の二量体の核内への転位置への干渉、(6)STAT3若しくはSTAT5のDNAへの結合への干渉、(7)STAT3若しくはSTAT5の転写活性化因子との相互作用への干渉、及び/又は(8)STAT仲介転写活性化を妨げるその他の方法によって、低下し得る。参照、例えば、N.G.Nikitakisら、「Targeting the STAT Pathway in Head and Neck Caner:Recent Advances and Future Prospects」、Current Cancer Drug Targets、4巻、637〜651頁、(2004年)。
【0151】
本明細書に提示される化合物によるSTAT3又はSTAT5活性の直接的又は間接的な調節は、増殖、生存、転移、血管新生、免疫応答、及び腫瘍免疫回避に関与する遺伝子のSTAT3及び/又はSTAT5依存性の活性化を妨げる、低減させる、又は除去することができる。図5及び図6に概略的に示す通り、STAT3及び/又はSTAT5の活性化は、VEGF、MMP9、MMP2、サバイビン、c−Myc、MMP−1、MEK−5、c−FOS、COX−2、Bcl−xL、MMP−10、HSP27、JMJD1A、PGE−2を含むが、しかしこれに限定されない、多くの遺伝子の転写に効果を及ぼす。
【0152】
特定の遺伝子の転写に対するこれらの活性化STATの効果は、同様に、生理学的な効果に関連している。例えば、本明細書に参照により組み込まれるYu及びJoveによって、99〜101頁に報告されている通り、活性化STATは、Bcl−xL、MCL1、及びサバイビンを上方制御すること、並びにp53を下方制御することによって、細胞生存を促進する。Yu,H.ら、「The STATS of Cancer−New Molecular Targets Come of Age」、Nature Reviews、4号、97〜105頁、(2004年)。活性化STATはまた、MYC及びサイクリンD1/D2を上方制御し、p53を下方制御することによって、増殖を支持する。さらに、活性化STATは、VEGF及びHIF1の上方制御、並びにp53の下方制御を通じて、血管新生を支持する。さらに、活性化STATはまた、免疫抑制因子を上方制御し、炎症誘発性サイトカイン及びケモカインを下方制御することによって、腫瘍免疫回避を助ける。
【0153】
ヒトの治療に有用である以外に、本発明の化合物及び配合物はまた、哺乳類、げっ歯類等を含む、ペット、珍しい動物、及び家畜の獣医治療にも有用である。さらに好ましい動物としては、ウマ、イヌ、及びネコが挙げられる。
【実施例】
【0154】
化合物を調製するための一般的な合成方法
以下の方法は、本発明を実施するために使用できる。
【0155】
合成及び特性評価
(E)−3−(6−ブロモピリジン−2−イル)アクリルアルデヒドの合成
6−ブロモ−2−カルボキシピリジン溶液(3g、16.1ミリモル)を、ジクロロメタン(100mL)中に溶解した。(トリフェニルホスホラニリデン)アセトアルデヒド(4.9g、16.1ミリモル)を加え、得られた混合物を室温で5時間攪拌した。ジクロロメタンを、(体積約50mLまで)部分的に蒸発させ、反応混合物をクロマトグラフィーカラム(シリカゲル60)にかけた。生成物をジクロロメタンで溶出した。生成物を含む画分を合せ、蒸発させて白色粉末2.3gを得た(収率67%)。
HNMR(CDCl3、δ)ppm:9.81(d,1H,J=7.6Hz,CHO),7.63(dd,1H,J=J=7.7Hz,H4),7.51(dd,2H,J=J=7.7Hz,H−3,5),7.45(d,1H,J=15,8Hz,Ar−CH=CH−CHO),7.12(dd,1H,1H,J=15.8Hz,J=7.6Hz,Ar−CH=CH−CHO)
【0156】
一般的な手順:(2E,4E)−5−(6−ブロモピリジン−2−イル)−2−シアノ−N−置換−2,4−ジエンアミドの合成
無水エタノール中の(1)(2.1g、9.9ミリモル)及びピペリジン(0.2mL)の溶液を調製した。アルデヒド(10.6ミリモル)を加え、反応混合物を室温で攪拌した。3時間後に得られた固体を濾過し、エタノールで洗浄し、乾燥させた。以下の例において説明される化合物を作製した。
【0157】
(例1)
(2E,4E)−5−(6−ブロモピリジン−2−イル)−2−シアノ−N−[(1S)−1−フェニルエチル]ペンタ−2,4−ジエンアミド
【化12】


収率67%(2E,4E)−5−(6−ブロモピリジン−2−イル)−2−シアノ−N−((S)−1−フェニルエチル)ペンタ−2,4−ジエンアミド
【化13】

【0158】
(例2)
(2E,4E)−5−(6−クロロピリジン−2−イル)−2−シアノ−N−[(1S)−1−フェニルエチル]ペンタ−2,4−ジエンアミド
【化14】


【化15】

【0159】
(例3)
(2E,4E)−5−(6−クロロピリジン−2−イル)−2−シアノ−N−[(1R)−1−フェニルエチル]ペンタ−2,4−ジエンアミド
【化16】


【化17】

【0160】
(例4)
(2E,4E)−N−ベンジル−5−(6−ブロモピリジン−2−イル)−2−シアノペンタ−2,4−ジエンアミド
【化18】


【化19】

【0161】
(例5)
(2E,4E)−5−(6−クロロピリジン−2−イル)−2−シアノ−N−[(1R)−1−フェニルエチル]ペンタ−2,4−ジエンアミド
【化20】


【化21】

【0162】
(例6)
(2E,4E)−N−ベンジル−5−(6−クロロピリジン−2−イル)−2−シアノペンタ−2,4−ジエンアミド
【化22】


【化23】

【0163】
(例7)
(2E,4E)−5−(6−ブロモピリジン−2−イル)−2−シアノ−N−[(S)−シクロプロピル(フェニル)メチル]ペンタ−2,4−ジエンアミド
【化24】


【化25】

【0164】
(例8)
(2E,4E)−5−(6−ブロモピリジン−2−イル)−2−シアノ−N−[(1S)−1−フェニルプロピル]ペンタ−2,4−ジエンアミド
【化26】


【化27】

【0165】
(例9)
(2E,4E)−5−(6−ブロモピリジン−2−イル)−2−シアノ−N−[(1S)−1−フェニルブチル]ペンタ−2,4−ジエンアミド
【化28】


【化29】

【0166】
例1及び例7の化合物の抗増殖性活性は、以下の通り、Colo357FG膵臓癌細胞系において示された。
【表2】

【0167】
例1、2、4、及び9におけるSTAT抑制因子としての化合物の活性は、少なくとも1つの以下のアッセイによって示された。得られた関連活性のデータは、図1から4に示されている。上に記載されているが、まだ作製されていないその他の化合物は、同様にこれらのアッセイにおいて活性を有することが予測される。
【0168】
生物活性アッセイ
細胞生存率及び薬剤用量反応の測定のためのMTT法
様々な細胞型を96ウェルプレート上に1ウェルにつき50,000セル/100μlの濃度で播種し、密集状態に到達するまでDMEM培地で24〜48時間培養した。密集状態に、様々な濃度(0から100μM)で、WP1220を含む新鮮な培地25μlをウェルに加え、37℃で72時間インキュベートした。複合体を除去し、新鮮な培地100μを加え、細胞を一晩インキュベートした。培地を除去し、37℃でさらに4時間、細胞をインキュベートする前に、(20μlの)MTT溶液(PBS中に5mg/ml)と一緒に、各ウェルへ新鮮な培地(100μl)を加えた。590nmでマイクロプレートリーダーを使用し、対照細胞と比較して、生成物を定量する前に、一晩、0.01N HCl中のドデシル硫酸ナトリウム(100μl、10%w/v)によって、反応生成物を可溶化した。実験を3通り(n=3)で実行した。
【0169】
生物活性アッセイ
タンパク質及びリン酸化タンパク質含有量を測定するためのウエスタンブロット法
リン酸化チロシンSTAT3(Y705)、リン酸化チロシンJak2(Y1007/1008)、全てのSTAT3、全てのJak2、BcI−xL、アクチン(Cell Signaling Technology、Danvers、MA)、及びサバイビン(R&D Systems、Minneapolis、MN)抗体を使用して、以下の方法を使用しウエスタンブロット法を実施した。手短に述べると、(1)対象のタンパク質を分解から保護する緩衝液中でホモジナイズした細胞から、試料を調製し、(2)次に、SDS−PAGE(10〜15μgタンパク質/ウェル)を使用して、試料を分離し、次に検出のための膜へ移動し、(3)膜を、一般的なタンパク質(乳タンパク質)によってインキュベートして、任意の残りの部位へ結合させた。次に、一次抗体を、その抗体の特異なタンパク質へ結合させることができる溶液へ加え、(4)次に、一次抗体を認識する、二次抗体−酵素複合体を加えて、一次抗体が結合した位置を発見した。
【0170】
前述の記載から、当業者は、本発明の本質的な特性を容易に確認することができ、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明の様々な変更及び改変を行って、様々な使用及び状態に本発明を適応させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式I
【化1】


の化合物、又はその薬学的に許容される塩、若しくは溶媒和化合物[式中、
nは、1、2、又は3から選択される整数であり、
は、Rであるか、又はRは、R−Z−であり、式中、Zは、アルキルであり、特に、m=0、1、2、3、又は4である−(CHm3−などの低級アルキルであってよく、
は、
【化2】


であり、
式中、X、X、X、及びXは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、OH、トリハロメチル、又はNOであり、Yは、OH、特にBr及びClを含むハロゲン、又はONであり、
は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルアリール、ハロゲン、水素、OH、NO、チオエーテル、アミン、SH、又はNHであり、
は、
【化3】


であり、
式中、mは、1、2、3、又は4から選択される整数であり、
及びXは、それぞれ独立して、水素、アルキル、高級アルキル、低級アルキル、アリール、アルコキシル、アリールオキシル、環式アルキル、シクロアルキル、シクロアリールアルキル、アラルキル、アルキルエステル、アルキルエステルアルキル、アルキルアセトキシル、ヒドロキシル、ヒドロキシルアルキル、シクロプロピル、シクロブチル、−CH、−CHOH、シクロペンチル、−CHOAc、−CHOC(O)C(CH、−CH、又はシクロへキシルであり、
Zは、NH、S、又はOであり、
は、アルキル又は低級アルキルであり、
は、CN、置換アミン、CHS−アルキル、アルキル、又はCHであり、
及びRは、それぞれ独立して、
【化4】


単糖(例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース等)、多糖、単糖誘導体(例えば、アセチル化ガラクトースなどのアセチル化単糖、1,2,3,4−ジイソプロピリデノ−D−ガラクトース)、置換及び非置換アリール、並びに置換及び非置換アルキルアリール
からなる群から選択される]。
【請求項2】
請求項1に記載の(又は式I及び定義の)化合物と癌細胞を接触させるステップを含む、STAT3の活性化を抑制する方法。
【請求項3】
それを必要とする患者への、請求項1に記載の(又は式I及び定義の)化合物の治療有効量の投与を含む、STAT3仲介疾患の治療の方法。
【請求項4】
請求項1に記載の(又は式I及び定義の)化合物と癌細胞を接触させるステップを含む、STAT5の活性化を抑制する方法。
【請求項5】
それを必要とする患者への、請求項1に記載の(又は式I及び定義の)化合物の治療有効量の投与を含む、STAT5仲介疾患の治療の方法。

【図2】
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【図5】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−527679(P2011−527679A)
【公表日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517468(P2011−517468)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/048782
【国際公開番号】WO2010/005807
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(500039463)ボード・オブ・リージエンツ,ザ・ユニバーシテイ・オブ・テキサス・システム (115)
【Fターム(参考)】