説明

シグナル伝達解析方法およびシグナル伝達解析システム

【課題】細胞内シグナル伝達の研究において、タンパク質の動態変化と遺伝子の発現変動とを連続した1つの実験系で確認することができ、その結果、実験の再現性を良くすることができるシグナル伝達解析方法およびシステムを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の方法は、蛍光標識された所定のタンパク質および発光標識された所定の遺伝子を含む細胞を作製し、作製した細胞に当該細胞外から所定の刺激を与え、所定の刺激が与えられた後の細胞の蛍光画像および発光画像をそれぞれ複数撮像し、撮像した複数の蛍光画像に基づいて、所定の刺激による所定のタンパク質の細胞内での動態の変化を解析すると共に、撮像した複数の発光画像に基づいて、所定の刺激による所定の遺伝子の発現状態の変動を解析する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞内のシグナル伝達を解析するシグナル伝達解析方法およびシグナル伝達解析システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
細胞内シグナル伝達に関するこれまでの研究では、細胞外からの刺激によってタンパク質の動態がどのように変化しているかと、その刺激によって下流の特定遺伝子の転写がどのように調節されているかとを、別々の実験手法で確認していた。また、遺伝子発現抑制について調べる際に、目的遺伝子の発現を抑制することで他の遺伝子の発現にどのように影響を与えるのかを検出する実験が行われている。例えば、細胞内シグナル伝達の解析を行う際には、シグナル伝達カスケード上流の遺伝子が下流の遺伝子の発現にどのように影響を与えているかを調べている。さらには、当該シグナル伝達の解析において、ある遺伝子の機能の一部をRNAiやドミナントネガティブ変異体を用いて抑制すれば、下流の遺伝子の発現に与える影響を調べることができる。
【0003】
なお、非特許文献1には、生きた細胞内のミトコンドリアにおけるATP量の経時的測定に関する方法が開示されている。
【0004】
【非特許文献1】H.J.Kennedy, A.E.Pouli, E.K.Ainscow, L.S.Jouaville, R.Rizzuto, G.A.Rutter, “Glucose generates sub−plasma membrane ATP microdomains in single islet β−cells.”, Journal of Biological Chemistry, vol.274, pp.13281−13291, 1999
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、タンパク質の動態変化と遺伝子の発現変動とを別々の実験手法で確認していたので、実験の再現性が必ずしも良くないという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、タンパク質の動態変化と遺伝子の発現変動とを連続した1つの実験系で確認することができ、その結果、実験の再現性を良くすることができるシグナル伝達解析方法およびシグナル伝達解析システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかるシグナル伝達解析方法は、細胞内のシグナル伝達を解析するシグナル伝達解析方法であって、蛍光標識された所定のタンパク質および発光標識された所定の遺伝子を含む前記細胞を作製する作製工程と、前記作製工程で作製した前記細胞に当該細胞外から所定の刺激を与える刺激工程と、前記刺激工程で前記所定の刺激が与えられた後の前記細胞の蛍光画像および発光画像をそれぞれ複数撮像する撮像工程と、前記撮像工程で撮像した複数の前記蛍光画像に基づいて、前記所定の刺激による前記所定のタンパク質の前記細胞内での動態の変化を解析すると共に、前記撮像工程で撮像した複数の前記発光画像に基づいて、前記所定の刺激による前記所定の遺伝子の発現状態の変動を解析する解析工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかるシグナル伝達解析方法は、前記に記載のシグナル伝達解析方法において、前記作製工程において、前記所定のタンパク質における特定の遺伝子に対し、該遺伝子の上流側を蛍光タンパク質で標識するとともに、該遺伝子の下流側を発光関連遺伝子で標識することを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかるシグナル伝達解析方法は、前記に記載のシグナル伝達解析方法において、前記所定のタンパク質は、プロテインキナーゼCまたは低分子量Gタンパク質Rasであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかるシグナル伝達解析方法は、前記に記載のシグナル伝達解析方法において、前記所定のタンパク質は、ドミナントネガティブ変異体を含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明はシグナル伝達解析システム(シグナル伝達解析用システム、シグナル伝達解析装置)に関するものであり、本発明にかかるシグナル伝達解析システムは、細胞内のシグナル伝達を解析するシグナル伝達解析システムであって、蛍光標識された所定のタンパク質および発光標識された所定の遺伝子を含むように作製された細胞を含み、且つ該細胞に対し所定の刺激を与える前後または両方において対象を保持するステージ(蛍光標識された所定のタンパク質および発光標識された所定の遺伝子を含むように作製された細胞を含む対象を、当該細胞に対し所定の刺激を与える前後または両方において保持するステージ)と、前記ステージに保持された前記対象に関するビデオレートの蛍光画像およびタイムラプスの発光画像をそれぞれ複数撮像する撮像装置と、前記撮像装置により撮像された複数の前記蛍光画像に基づいて、前記所定の刺激による前記所定のタンパク質の前記細胞内での動態の変化を解析すると共に、前記撮像装置で撮像した複数の前記発光画像に基づいて、前記所定の刺激による前記所定の遺伝子の発現状態の変動を解析する画像解析装置と、を含む(備えた)ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかるシグナル伝達解析システムは、前記に記載のシグナル伝達解析システムにおいて、前記撮像装置が、蛍光撮像ユニットと発光撮像ユニットが同一の光軸上における画像取得を行う(前記撮像装置を構成する蛍光撮像ユニットと発光撮像ユニットが、同一の光軸上における画像取得を行う)ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかるシグナル伝達解析システムは、前記に記載のシグナル伝達解析システムにおいて、前記画像解析装置が、撮像した蛍光画像および/または発光画像における細胞の領域または部位を指定するための入力装置をさらに具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、蛍光標識された所定のタンパク質および発光標識された所定の遺伝子を含む細胞を作製し、作製した細胞に当該細胞外から所定の刺激を与え、所定の刺激が与えられた後の細胞の蛍光画像および発光画像をそれぞれ複数撮像し、撮像した複数の蛍光画像に基づいて、所定の刺激による所定のタンパク質の細胞内での動態の変化を解析すると共に、撮像した複数の発光画像に基づいて、所定の刺激による所定の遺伝子の発現状態の変動を解析する。具体的には、蛍光画像に基づいて、短時間で変化する分子動態を決定した上で、発光画像に基づいて、所望の分子動態に関連する発現変化を解析する。これにより、細胞内シグナル伝達の研究において、タンパク質の動態変化と遺伝子の発現変動とを連続した1つの実験系で確認することができ、その結果、実験の再現性を良くすることができるという効果を奏する。
【0015】
また、本発明によれば、所定のタンパク質における特定の遺伝子に対し、該遺伝子の上流側を蛍光タンパク質で標識するとともに、該遺伝子の下流側を発光関連遺伝子で標識するものである。これにより、刺激に対し応答する特定の遺伝子の動態の変化が蛍光観察され、その動態の変化に連動した下流側の遺伝子発現の変動が発光観察されるので、特定の遺伝子の動態と発現変動を同時または連続的に確認することが可能となる。
【0016】
また、本発明によれば、所定のタンパク質は、プロテインキナーゼCまたは低分子量Gタンパク質Rasである。これにより、プロテインキナーゼCまたは低分子量Gタンパク質Rasの動態変化の観察と、刺激に応答した細胞内におけるシグナル伝達の上流から下流までの連続的な観察とを、同一の実験系で行うことができるという効果を奏する。
【0017】
また、本発明によれば、所定のタンパク質は、ドミナントネガティブ変異体を含む。ここで、従来技術によれば、シグナル伝達の下流の特定遺伝子がどのように転写調節されているかについての実験結果は、一細胞レベルでの解析ではなく、細胞群の遺伝子発現量の総和として得ていた。そのため、シグナル伝達の解析において、一般的な手法である一過性遺伝子導入を行った場合には、遺伝子発現の阻害が行われた細胞とルシフェラーゼのレポーターベクターとが同一ではないことが考えられる。それゆえに、精度の高い実験結果が必ずしも得られないという問題があった。そこで、本発明では、遺伝子発現阻害を行うためのドミナントネガティブ変異体の遺伝子配列を、蛍光標識された所定のタンパク質に入れることで、遺伝子発現抑制を組み合わせた細胞内シグナル伝達解析を行う。これにより、細胞内シグナル伝達経路の上流遺伝子の発現抑制と下流遺伝子の発現変動とを連続した1つの実験系で確認することができ、その結果、精度の高い結果が得られる実験を行うことができるという効果を奏する。具体的には、細胞内シグナル伝達の研究において、遺伝子発現抑制が行われたことを蛍光検出で確認した後に定量的なレポータアッセイを発光で行うことで、細胞外からの刺激を受けたときの遺伝子発現の阻害と下流遺伝子発現への影響との両方に関する実験結果を同じ細胞におけるものとして且つ連続した1つの実験系に因るものとして捉えることができ、その結果、精度の高い結果が得られる実験を行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明にかかるシグナル伝達解析方法および解析用システムの実施の形態を、顕微鏡ベースのシステムに応じた図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではなく、発明の主旨に基づき種々の変更が可能である。
【0019】
まず、本発明にかかるシグナル伝達解析方法(具体的には撮像工程および解析工程)を実行する解析用システムである蛍光・発光観察システム100の構成について、図1および図2を参照して説明する。なお、下記構成についての詳細は、本出願人による国際公開特許WO2006/106882(所定部位発光量測定方法、所定部位発光量測定装置、発現量測定方法、および測定装置)を参照することでより理解されるであろう。この国際公開特許は、同一細胞における2種類の医学的情報を蛍光画像と発光画像の両方を用いて解析する方法が開示されるが、各々の情報は関連する一連の刺激応答に関するものではないので本発明を示唆するものではなく、単に操作方法等の参照として引用するものである。図1は、蛍光・発光観察システム100の全体構成の一例を示す図である。
【0020】
図1に示すように、蛍光・発光観察システム100は、解析対象としての細胞102を収納した容器103(具体的にはシャーレ、スライドガラス、マイクロプレート、ゲル支持体、微粒子担体など)と、容器103を配置するステージ104と、発光画像撮像ユニット106と、蛍光画像撮像ユニット108と、画像解析装置110と、で構成されている。また、蛍光・発光観察システム100において、発光画像撮像ユニット106に含まれる対物レンズ106aと蛍光画像撮像ユニット108に含まれる対物レンズ108aとは、図示の如く、容器103およびステージ104を挟んで上下の対向する位置に略同一の光軸上に配置される。本発明の方法は、所定の刺激を与える前後または両方において作製された細胞を含む対象を保持するステージと、撮像装置と、撮像された蛍光画像および発光画像に基づき解析を行う画像解析装置とを有するシステムにより実行される。ここで、解析対象としては、細胞を含む生体組織、該生体組織を含む各種臓器または器官であってもよく、それら生体組織、臓器または器官を含むような胚ないし生物個体であってもよい。また、解析対象を保持するためのステージ104は、解析対象の種類、大きさ、個数等に応じて、所望の解析期間内に対象を蛍光および発光両方の観察視野(好ましくは光軸上)から解析すべき特定の細胞(1以上)が外れないような設計(例えば対象用の固定器具、ステージの追従機構)を設けるようにしてもよい。
【0021】
発光画像撮像ユニット106および蛍光画像撮像ユニット108の上下方向の配置を入れ替えてもよい。蛍光よりも微弱な発光を測定するための発光画像撮像ユニット106を下側に配置することにより、カバー開閉によるサンプル上方からの外乱光を完全に遮断できて発光画像のS/N比を増すことができる。発光画像撮像ユニット106と別体の蛍光画像撮像ユニット108は、レーザー走査式の光学系であってもよい。
【0022】
細胞102は、例えば、蛍光タンパク質(例えばGFP、CFP、YFPなど)で蛍光標識された所定のタンパク質(例えばプロテインキナーゼCや低分子量Gタンパク質Ras、ドミナントネガティブ変異体を含むものなど)および発光関連遺伝子(例えばルシフェラーゼ遺伝子など)で発光標識された所定の遺伝子(例えば転写因子NFκB1の遺伝子など)を含む生きた細胞である。細胞102には、当該細胞の撮像直前に、当該細胞外から所定の刺激(例えば薬物等の化学物質の添加や服用、電気・光・磁気・超音波等の物理エネルギーの付与など)が与えられる。
【0023】
発光画像撮像ユニット106は、具体的には正立型の発光顕微鏡であり、細胞102の発光画像を撮像する。発光画像撮像ユニット106は、図示の如く、対物レンズ106aと、ダイクロイックミラー106bと、CCDカメラ106cと、結像レンズ106fと、で構成されている。対物レンズ106aは、具体的には、使用する結像レンズを加味した光学条件として、(開口数/倍率)の値が0.01以上を満足するのが好ましい。ダイクロイックミラー106bは、細胞102から発せられた発光を色別に分離し、2色の発光を用いて発光量を色別に測定する場合に用いる。CCDカメラ106cは、対物レンズ106a、ダイクロイックミラー106bおよび結像レンズ106fを介して当該CCDカメラ106cのチップ面に投影された細胞102の発光画像および明視野画像を撮る。また、CCDカメラ106cは、画像解析装置110と有線または無線で通信可能に接続される。結像レンズ106fは、対物レンズ106aおよびダイクロイックミラー106bを介して当該結像レンズ106fに入射した像(具体的には細胞102を含む像)を結像する。なお、図1では、ダイクロイックミラー106bで分離した2つの発光に対応する発光画像を2台のCCDカメラ106cで別々に撮像する場合の一例を示しており、1つの発光を用いる場合には、発光画像撮像ユニット106は、対物レンズ106a、1台のCCDカメラ106cおよび結像レンズ106fで構成されてもよい。
【0024】
蛍光画像撮像ユニット108は、具体的には倒立型の蛍光顕微鏡であり、細胞102の蛍光画像を撮像する。蛍光画像撮像ユニット108は、図示の如く、対物レンズ108aと、ダイクロイックミラー108bと、光源108cと、CCDカメラ108dと、結像レンズ108eと、シャッター108fと、で構成されている。対物レンズ108aは、撮像しようとする対象に応じて任意の倍率のものを使用できるが、この実施形態においては、発光用の対物レンズ106aと同一性能、すなわち、使用する結像レンズを加味した光学条件として、(開口数/倍率)の値が0.01以上を満足するものとする。ダイクロイックミラー108bは、細胞102からの蛍光を透過するとともに、光源108cから照射された励起光が細胞102へ照射されるように励起光の方向を変える。光源108cは、励起光を照射するためのものであり、具体的には、キセノンランプ、ハロゲン等のランプ、レーザー、LEDなどである。CCDカメラ108dは、対物レンズ108a、ダイクロイックミラー108bおよび結像レンズ108eを介して当該CCDカメラ108dのチップ面に投影された細胞102の蛍光画像および明視野画像を撮る。また、CCDカメラ108dは、画像解析装置110と有線または無線で通信可能に接続される。結像レンズ108eは、対物レンズ108aおよびダイクロイックミラー108bを介して当該結像レンズ108eに入射した像(具体的には細胞102を含む像)を結像する。シャッター108fは、光源108cから照射された励起光を切り替える。換言すると、シャッター108fは、光源108cから照射された励起光を透過したり遮断したりすることで、細胞102への励起光の照射を切り替える。なお、各対物レンズ106a、108aを同一の光軸上に配置したので、ユニット間の画像の位置合わせが容易である。また、この例では発光画像撮像ユニット106と蛍光画像撮像ユニット108の光学条件(例えば対物レンズ106a、108a)の光学条件を同一としたので、両対物レンズ106a、108aとステージ104の配置等を変えずに、それ以外の各ユニットの配置を上下交換したり回転可能に構成することで、各種画像を上下逆の方向または上下両方の方向から撮像することも可能となって多くの画像情報が得られるメリットも有る。また、一部の構成(例えば、対物レンズ、結像レンズ、CCDカメラ等)を共有化して蛍光と発光の各ユニットを上方(倒立型)または下方(正立型)のみに配置することにより、蛍光画像と発光画像を切り替えて取得するようにすれば撮像を行う方向を同一とすることが可能である。
【0025】
画像解析装置110は、具体的にはパーソナルコンピュータである。そして、画像解析装置110は、図2に示すように、大別して、制御部112と、システムの時刻を計時するクロック発生部114と、記憶部116と、通信インターフェース部118と、入出力インターフェース部120と、入力装置122と、出力装置124と、で構成されており、これら各部はバスを介して接続されている。
【0026】
記憶部116は、ストレージ手段であり、具体的には、RAMやROM等のメモリ装置、ハードディスクのような固定ディスク装置、フレキシブルディスク、光ディスク等を用いることができる。そして、記憶部116は制御部112の各部の処理により得られたデータなどを記憶する。通信インターフェース部118は、画像解析装置110と、CCDカメラ106cおよびCCDカメラ108dと、の間における通信を媒介する。すなわち、通信インターフェース部118は他の端末と有線または無線の通信回線を介してデータを通信する機能を有する。入出力インターフェース部120は、入力装置122や出力装置124に接続する。ここで、出力装置124には、モニタ(家庭用テレビを含む)の他、スピーカやプリンタを用いることができる(なお、以下で、出力装置124をモニターとして記載する場合がある。)。また、入力装置122には、キーボードやマウスやマイクの他、マウスと協働してポインティングデバイス機能を実現するモニターを用いることができる。ここにおいて、使用者が、出力装置124としてのモニターに表示された蛍光画像および/または発光画像に基づいて、所望の解析期間内に解析すべき1以上の特定の細胞(または細胞群)を含む関心領域または細胞内の関心部位を入力装置122介して指定することにより、指定領域(または部位)の各観察視野内に指定された領域(または部位)の位置情報(アドレス)を記憶部116に記憶させる。この記憶情報は、複数の領域(または部位)または時系列の時間ごとに特定の細胞(または細胞群)を照合するような画像解析を可能にする。なお、この例では、明視野画像も取得して発光画像と重ね合わせることにより、発光画像としての細胞ごとの識別を可能にするようになっている。この場合、CCDカメラまたは発光試薬(ルシフェラーゼ、ルシフェリン、その他添加物)が高感度であったり、蛍光画像により細胞全体の画像も同時に取得できるならば、明視野画像の重ね合わせは必須ではない。
【0027】
制御部112は、OS(Operating System)等の制御プログラムや各種の処理手順等を規定したプログラムや所要データを格納するための内部メモリを有し、これらのプログラムに基づいて種々の処理を実行する。そして、制御部112は、大別して、蛍光画像撮像指示部112aと、蛍光画像取得部112bと、発光画像撮像指示部112cと、発光画像取得部112dと、画像解析部112eと、解析結果出力部112fと、で構成されている。
【0028】
蛍光画像撮像指示部112aは、通信インターフェース部118を介して、CCDカメラ108dへ蛍光画像および明視野画像の撮像を指示する。蛍光画像取得部112bは、CCDカメラ108dで撮像した蛍光画像および明視野画像を、通信インターフェース部118を介して取得する。発光画像撮像指示部112cは、通信インターフェース部118を介して、CCDカメラ106cへ発光画像および明視野画像の撮像を指示する。発光画像取得部112dは、CCDカメラ106cで撮像した発光画像および明視野画像を、通信インターフェース部118を介して取得する。
【0029】
画像解析部112eは、蛍光画像取得部112bで取得した複数の蛍光画像に基づいて、所定の刺激による所定のタンパク質の細胞102内での動態の変化を解析する。換言すると、画像解析部112eは、複数の蛍光画像に基づいて、所定の刺激により所定のタンパク質が細胞102内でどのように移動していくのかを解析する。また、画像解析部112eは、発光画像取得部112dで取得した複数の発光画像に基づいて、所定の刺激による所定の遺伝子の発現状態の変動を解析する。具体的には、画像解析部112eは、取得した蛍光画像、明視野画像および発光画像を重ね合わせて細胞ごとの蛍光および発光データを対応付けて解析するものであり、複数の発光画像に基づいて、所定の刺激により所定の遺伝子の発現がどのように変化していくのかを数値化して解析する。解析結果出力部112fは、画像解析部112eでの解析結果を出力装置124に出力する。具体的には、解析結果出力部112fは、画像解析部112eで得られた所定の遺伝子の発現状態の変動についての時系列の数値データを、グラフ化して出力装置124に表示する。なお、出力装置124は、数値データのグラフ以外にも、時系列の数値データの少なくとも一部に対応する複数の蛍光および/または発光画像を動画または並列表示の形式でモニターに出力してもよい。このように、本発明によれば、タンパク質の動態がどのように変化しているかと、その刺激によって下流の特定遺伝子の転写がどのように調節されているかを同じ細胞(または細胞群)について迅速ないしリアルタイムに解析することが可能になるので、医学的研究ならびに臨床上の用途において迅速且つ正確な情報を提供する。なお、本発明の方法を実行する解析システムとしては、蛍光撮像ユニットと発光画像ユニットとが同一のステージに対して互いに異なる光軸上に配置されていたり、互いに異なるステージ上に配置された別体の装置(例えば蛍光顕微鏡と発光顕微鏡)であったりしてもよく、同一または異なるステージ上に対して解析したい複数の対象を順次移動させながら撮像および解析を行うようにしてもよい。また、解析システムとしては、少なくとも図2に示されるような画像解析装置を具備していれば、上述した顕微鏡ベースのシステム以外の画像化システム(例えば内視鏡ないしファイバスコープ)への適用も可能である。また、対象が生体から単離され培養または人為加工された生体試料(細胞、生体組織、臓器(または器官)等)である場合には、所望の解析期間中、生体活性が維持されるように適宜の培養装置と組み合わせたシステムとするのが好ましいが、個体である場合には培養装置の代わりに酸素および栄養等を適宜供給したり摂食させながら断続的に撮像することで同様の解析が可能である。
【実施例1】
【0030】
[PKC(Protein Kinase C:プロテインキナーゼC)θ分子の膜移行とNF(Nuclear Factor)κB1プロモーターの活性変化の観察]
PKCは、細胞の増殖・分化・アポトーシス等の様々な細胞応答に関与するセリン/スレオニンリン酸化酵素である。PKCは、受容体刺激により細胞膜から産生されるジアシルグリセロール(DAG)と、同時に産生されるイノシトール三リン酸により誘導されるカルシウムイオンにより、協調的に活性化される。PKCは活性化に伴って細胞質から細胞膜に移動(トランスロケーション)して細胞膜上でキナーゼ活性を発揮することが知られている。
【0031】
しかし、これまでの細胞内シグナル伝達の研究においては、細胞外からの刺激によるPKCの動態変化とその刺激による下流の特定遺伝子の転写調節とは別々の実験手法で確認するしかなく、実験の再現性の点で問題があった。
【0032】
そこで、PKC活性化シグナル伝達において、PMA(Phorbol Myristate Acetate)による刺激後、GFP(Green Fluorescent Protein:緑色蛍光タンパク質)標識を行ったPKCθの挙動を観察し、下流の転写因子の遺伝子発現変動をルシフェラーゼ遺伝子によりモニターした。すなわち、細胞内シグナル伝達系のモデルとしてRasシグナル系を用い、増殖因子による刺激後、Rasの挙動をGFPにより観察し、その後、下流の遺伝子発現変動をルシフェラーゼ遺伝子によりモニターした。
【0033】
本実施例1における実験の流れ(手順)について、以下に説明する。
[手順1(本発明の作製工程に相当)]HeLa細胞を35mmガラスボトムディッシュ内で一晩培養した。培地には、DMEM(フェノールレッド、10%FCS入り)を用いた。
[手順2(本発明の作製工程に相当)]一晩培養後、pPKCq−EGFPおよびpGL4−NFκB1発現ベクターをHeLa細胞にトランスフェクションし、それをさらに一晩培養した。トランスフェクション試薬にはPolyFect((株)QIAGEN製)を用いた。培地を、HEPES入りDMEM(1%FCS、フェノールレッド抜き)に置き換え、6時間培養した。
[手順3(本発明の刺激工程および撮像工程に相当)]PMA(最終濃度5ng/ml)およびA2318(最終濃度100ng/ml)による刺激後、蛍光透過画像と発光(化学発光および/または生物発光)画像と透過明視野画像の3種類の撮像・観察が可能な発光イメージングシステム“LV200(オリンパス(株)製)”を使って、HeLa細胞を観察した。この発光イメージングシステムは、細胞を含む試料の培養が可能な構成を具備し、さらに、共通の撮像部分(対物レンズ、結像レンズおよびCCDカメラ)と、蛍光を励起するための照射と明視野照明を行う照明系とを具備し、使用者の指示に応じて上記3種類の画像を選択的に取得したり、各種画像を個別に表示したり、画像解析することが可能な構成を有している。したがって、使用者は、システムのインターフェースを通じて適宜指示を与えることにより、上述したような画像解析結果を出力させることが可能となるものである。ここにおいて、HeLa細胞を1分間隔で25分間ビデオレートで撮影することにより、PKCθの膜移行の動態を観察した(図3参照)。分光フィルターには、励起BP470−490および分光BP535−555を用いた。蛍光観察条件として、対物レンズは×40、露出時間は200ミリ秒、binningは1×1、CCDカメラはImagEM(浜松ホトニクス(株)製)である。観察する細胞ごとの指定は、システムのインターフェースにより、モニターに表示された刺激前後の蛍光画像において表示された複数の細胞のうち細胞内の輝度分布が変化したと見られる1個の細胞全体を、入力用マウスにより画面上でドラッグ指定した。
[手順4(本発明の撮像工程に相当)]発光観察のためD−ルシフェリン(プロメガ社製:最終濃度100mM)を加え、15分間隔、10時間撮影した(図4参照)。発光観察条件として、対物レンズは×40、露出時間は10分、binningは1×1、CCDカメラはImagEM(浜松ホトニクス(株)製)である。
[手順5(本発明の解析工程に相当)]タイムラプス観察後、手順3および手順4で撮像した観察画像を保存し、画像解析システム“AQUACOSMOS(浜松ホトニクス(株)製)”を用いてその観察画像から細胞内の部位ごとの発光強度に対応する数値データを時系列で解析すると共に、解析した数値データのグラフ化を行った(図5参照)。観察する細胞内部位の指定は、タイムラプスにより撮像された発光画像の保存後の画像をモニターに読み出して表示するとともに、モニターに表示された発光画像において表示された細胞内の発光強度に対応する明るさの異なる複数部位(図では4個の部位)を入力用マウスにより画面上でポイント指定(図では四角で囲まれた一定面積のブロック内の部位)した。指定されたポイントについては、図3に示されるように各々のポイント(図の1〜4)について一定面積のブロックを割り当てるとともに、ポイント(1〜4)ごとにブロック内の全画素の強度値(任意の単位)を合計することにより、各時点での発光強度データとした。
【0034】
以上の実験の結果、GFP標識を行ったPKCθの膜移行の観察と、刺激に応答した細胞内におけるシグナル伝達の上流から下流までの連続的な観察とが同一の実験系で可能となり、分子動態と遺伝子発現の変動といった異なる応答速度の解析を細胞ごとに取り違いなく追跡しながら実行できることが明らかとなった。なお、観察または入力による指定の際、細胞内の部位指定を、モニターに表示された蛍光画像のみから指定しその直後から発光画像の撮像を開始するようにすることで、上流遺伝子の変化が確認された細胞についてリアルタイムに下流遺伝子の発現変動を観察および/または解析することもできる。また、蛍光画像と発光画像の両方の撮像が終了した後に、保存された蛍光画像および発光画像をモニターに表示させることにより、異なる時刻に観察される上流遺伝子の動態と下流遺伝子の発現変動とを比較観察することができ、観察視野内の細胞集団に関する包括的な刺激応答の相関を解析することも可能となる。また、ビデオレートおよび/またはタイムラプスの時間間隔を増減することにより、蛍光画像および/または発光画像の撮像速度を観察および/または解析し易いように変更してもよく、解析結果としての蛍光輝度および/または発光強度と並列してこれら蛍光画像によるビデオ映像および/または発光画像による動画(またはコマ送りの並列表示)を同時にモニター等に出力してもよい。
【実施例2】
【0035】
[Ras分子遺伝子発現阻害とAP1遺伝子プロモーターの活性変化の観察]
Ras/Rafシグナルは、細胞外刺激に応じて細胞の増殖や分化を調節する細胞内シグナル伝達経路として広く知られている。不活性型のRasは細胞膜上で速い拡散運動を行っているが、活性化に伴い細胞膜上の活性型のRasは細胞膜上に留まることが知られている。さらに、Rasは、MAPキナーゼカスケードを活性化し、下流の転写因子活性の上昇を引き起こし、最終的に細胞の分化や増殖を制御している。
【0036】
しかし、これまでの細胞内シグナル伝達の研究においては、細胞外からの刺激によるRasの動態変化とその刺激による下流の特定遺伝子の転写調節とは別々の実験手法で確認するしかなく、実験の再現性の点で問題があった。
【0037】
そこで、Rasシグナル伝達において、GFP(Green Fluorescent Protein:緑色蛍光タンパク質)標識を行ったRasのドミナントネガティブであるN17変異体を細胞に導入して、GFPによる遺伝子発現阻害の確認、およびルシフェラーゼを指標とすることによる当該シグナル伝達下流の転写因子の遺伝子発現の観察を行った。すなわち、細胞内シグナル伝達系のモデルとしてRasシグナル系を用い、増殖因子による刺激後、Rasの挙動をGFPにより観察し、その後、下流の遺伝子発現の変動をルシフェラーゼ遺伝子によりモニターした。
【0038】
本実施例2における実験の流れ(手順)について、以下に説明する。
[手順1(本発明の作製工程に相当)]PC12細胞を35mmガラスボトムディッシュ内で一晩培養した。培地には、RPMI(フェノールレッド、10%FCS入り)を用いた。
[手順2(本発明の作製工程に相当)]一晩培養後、pPCI−EGFP−RBD(Wild type)およびpGL4−AP1発現ベクターまたはpPCI−EGFP−RBD+N17(ドミナントネガティブtype)およびpGL4−AP1発現ベクターをPC12細胞にトランスフェクションし、それをさらに一晩培養した(図6参照)。トランスフェクション試薬にはLipofectamine2000((株)Invitrogen製)を用いた。培地を、HEPES入りRPMI(1%FCS、フェノールレッド抜き)に置き換え、6時間培養した。
[手順3(本発明の刺激工程および撮像工程に相当)]NGF(最終濃度5ng/ml)による刺激後、蛍光透過画像と発光(化学発光および/または生物発光)画像と透過明視野画像の3種類の撮像・観察が可能な発光イメージングシステム“LV200(オリンパス(株)製)”を使って、PC12細胞を蛍光観察した。PC12細胞を1分間隔で25分間撮影することにより、Rafの膜移行を観察した(図7、図8および図9参照)。分光フィルターには、励起BP470−490および分光BP535−555を用いた。蛍光観察条件として、対物レンズは×40、露出時間は200ミリ秒、binningは1×1、CCDカメラはImagEM(浜松ホトニクス(株)製)である。撮像された二次元の蛍光画像について、図7の写真に記したA−B断線上の蛍光量をグラフ化した(図7参照)。観察する細胞ごとの指定は、実施例1と同様であるが、この実施例ではさらに指定した細胞画像において所望の断面を直線形状でドラッグ指定した。指定された直線上に沿った個々の画素において、各画素の輝度値(複数列の場合は列数分の合計値)を各位置ごとの蛍光量とした。
[手順4(本発明の撮像工程に相当)]発光観察のためD−ルシフェリン(プロメガ社製:最終濃度100μM)を加え、15分間隔で14時間のタイムラプス観察により、発光画像を撮影した。発光観察条件として、対物レンズは×40、露出時間は10分、binningは1×1、CCDカメラはImagEM(浜松ホトニクス(株)製)である。
[手順5(本発明の解析工程に相当)]タイムラプス観察後、手順3および4で撮像した観察画像を保存し、市販の画像解析システム“AQUACOSMOS(浜松ホトニクス(株)製)”を用いて画像内の複数の細胞(9個)を画面上で選択し、その観察画像から選択した個々の細胞に関する刺激後の発光強度の数値データを当該システムで解析すると共に、解析した数値データを時系列的にグラフ化した(図10参照)。観察する細胞内部位の指定および指定後の各ポイントごとの発光量に関する発光強度データについては実施例1と同様に行った。なお、各ポイントについては細胞内においてランダムに多数のポイント(この例では9個)を指定した。
【0039】
以上の実験の結果、pPCI−EGFP−RBD+N17およびpGL4−AP1発現ベクターを導入したPC12細胞において、高い発現量の部位は刺激前には細胞の中央部(すなわち細胞膜内の領域)に集中していたが、その高発現部位は刺激後には細胞の両端(すなわち細胞膜付近)へと移行していた(図7参照)。このことから、EGFP標識Raf−1分子の膜移行が起こり、下流にシグナルが伝達されていることが分かる。一方、pPCI−EGFP−RBD+N17およびpGL4−AP1発現ベクターを導入したPC12細胞を1分間隔で25分間撮影した際には、Rafの膜移行が起こらないことを確認した(図8および図9参照)。
【0040】
また、ドミナントネガティブN17の導入が確認された細胞において、シグナル伝達下流の遺伝子であるAP1遺伝子の発現量をモニターしたところ、N17を導入しないWild typeと比較して発現抑制が起こっていることが確認された(図10参照)。しかし、N17を導入しても発現量が完全に失われる訳ではなく、わずかにAP1遺伝子の発現上昇が見られている(図10参照)。可能性として、細胞内シグナル伝達経路の重複により、Ras以外のカスケードからAP1にシグナルが伝わったことも考えられる。
【0041】
以上より、GFP標識を行ったRaf−N17の観察と、刺激に応答した細胞内におけるシグナル伝達の上流から下流までの連続的な観察が、同一の実験系で可能となった。このような複雑な細胞内シグナル伝達経路の解明をするにあたり、ドミナントネガティブ変異体やRNAiなどの手法を用いて特定のシグナル伝達経路を抑制することで、その経路が下流遺伝子にどの程度影響を与えているかを調べることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上のように、本発明にかかるシグナル伝達解析方法は、バイオ、製薬、医療など様々な分野で好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】蛍光・発光観察システム100の全体構成の一例を示す図である。
【図2】蛍光・発光観察システム100の画像解析装置110の構成の一例を示すブロック図である。
【図3】PKCθの膜移行を捉えた蛍光画像を示す図である。
【図4】NFκB1遺伝子の発現変化を捉えた発光画像を示す図である。
【図5】PMA刺激後のNFκB1遺伝子の発現量の変化を表すグラフを示す図である。
【図6】細胞に導入されるベクターを模式的に示す図である。
【図7】刺激前後における細胞内での発現量および高発現部位を示す図である。
【図8】ドミナントネガティブN17が導入された細胞内での刺激前における発現量およびRafの膜移行の状態を示す図である。
【図9】ドミナントネガティブN17が導入された細胞内での刺激後における発現量およびRafの膜移行の状態を示す図である。
【図10】ドミナントネガティブN17導入後の個々の細胞におけるAP1プロモーター活性の経時的変化を表すグラフを示す図である。
【符号の説明】
【0044】
100 蛍光・発光観察システム
103 容器(シャーレ)
104 ステージ
106 発光画像撮像ユニット
106a 対物レンズ(発光観察用)
106b ダイクロイックミラー
106c CCDカメラ
106f 結像レンズ
108 蛍光画像撮像ユニット
108a 対物レンズ(蛍光観察用)
108b ダイクロイックミラー
108c 光源
108d CCDカメラ
108e 結像レンズ
108f シャッター
110 画像解析装置
112 制御部
112a 蛍光画像撮像指示部
112b 蛍光画像取得部
112c 発光画像撮像指示部
112d 発光画像取得部
112e 画像解析部
112f 解析結果出力部
114 クロック発生部
116 記憶部
118 通信インターフェース部
120 入出力インターフェース部
122 入力装置
124 出力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞内のシグナル伝達を解析するシグナル伝達解析方法であって、
蛍光標識された所定のタンパク質および発光標識された所定の遺伝子を含む前記細胞を作製する作製工程と、
前記作製工程で作製した前記細胞に当該細胞外から所定の刺激を与える刺激工程と、
前記刺激工程で前記所定の刺激が与えられた後の前記細胞の蛍光画像および発光画像をそれぞれ複数撮像する撮像工程と、
前記撮像工程で撮像した複数の前記蛍光画像に基づいて、前記所定の刺激による前記所定のタンパク質の前記細胞内での動態の変化を解析すると共に、前記撮像工程で撮像した複数の前記発光画像に基づいて、前記所定の刺激による前記所定の遺伝子の発現状態の変動を解析する解析工程と、
を含むことを特徴とするシグナル伝達解析方法。
【請求項2】
前記作製工程において、前記所定のタンパク質における特定の遺伝子に対し、該遺伝子の上流側を蛍光タンパク質で標識するとともに、該遺伝子の下流側を発光関連遺伝子で標識すること
を特徴とする請求項1に記載のシグナル伝達解析方法。
【請求項3】
前記所定のタンパク質は、プロテインキナーゼCまたは低分子量Gタンパク質Rasであること
を特徴とする請求項1または2に記載のシグナル伝達解析方法。
【請求項4】
前記所定のタンパク質は、ドミナントネガティブ変異体を含むこと
を特徴とする請求項1または2に記載のシグナル伝達解析方法。
【請求項5】
細胞内のシグナル伝達を解析するシグナル伝達解析システムであって、
蛍光標識された所定のタンパク質および発光標識された所定の遺伝子を含むように作製された細胞を含み、且つ該細胞に対し所定の刺激を与える前後または両方において対象を保持するステージと、
前記ステージに保持された前記対象に関するビデオレートの蛍光画像およびタイムラプスの発光画像をそれぞれ複数撮像する撮像装置と、
前記撮像装置により撮像された複数の前記蛍光画像に基づいて、前記所定の刺激による前記所定のタンパク質の前記細胞内での動態の変化を解析すると共に、前記撮像装置で撮像した複数の前記発光画像に基づいて、前記所定の刺激による前記所定の遺伝子の発現状態の変動を解析する画像解析装置と、
を含むことを特徴とするシグナル伝達解析システム。
【請求項6】
前記撮像装置が、蛍光撮像ユニットと発光撮像ユニットが同一の光軸上における画像取得を行うこと
を特徴とする請求項5に記載のシグナル伝達解析システム。
【請求項7】
前記画像解析装置が、撮像した蛍光画像および/または発光画像における細胞の領域または部位を指定するための入力装置をさらに具備すること
を特徴とする請求項5または6に記載のシグナル伝達解析システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−148255(P2009−148255A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−305620(P2008−305620)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】