説明

シグナル産生成分として使用する組成物及びこれを用いる方法

イムノアッセイのシグナル産生成分としての使用に好適な組成物及びそれを使用する方法。本発明の一局面に従って、この組成物は、アミノデキストランのコーティングを有し、そして金属キレートを含むキャリアを含む。この金属キレートは、キャリア1ミリグラム当たり少なくとも0.065μMの量で存在し、そしてこのアミノデキストランコーティング密度は、平均してキャリア1ミリグラム当たり少なくともおよそ45μgである。本発明の別の局面において、キャリアは、以下の式:
M(L1)(L2)
を有する錯体で染色され、式中、Mは、ユーロピウム、テルビウム、ジスプロシウム、サマリウム、オスミウム及びルテニウムからなる群より選択される金属であり;L1は、DPP、TOPO、TPPOからなる群より選択されるリガンドであり;L2は、式(1)を有するリガンドを含み、式中Rは、1つ又はそれ以上の置換基であり、各々の置換基は電子供与基を含み;n=2〜10であり;x=1〜2であり;そしてy=2〜4である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、イムノアッセイのシグナル産生成分として有用な組成物に関する。特に本発明は、目的の分析物に対する強力なシグナル及び高度な特異性を同時に提供する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
イムノアッセイ試薬は、大まかに2つの構成要素、即ち、シグナル産生(増幅としても知られている)機能性及びリガンド結合機能性に分類できる機能性を有する。このシグナル産生機能性は、分析物とのリガンド結合の検出に必要であり、そしてこのリガンド結合機能性は、分析物に対する試薬の特異性である。このリガンド結合活性は、リガンドが粒子表面に共有結合することによって果たされる。生物学的意味での抗体及び小さなハプテン、例えばチロキシンは、一般的なリガンドの例である。
【0003】
蛍光性組成物及び化学ルミネセンス組成物は、イムノアッセイのシグナル産生成分において広く使用されている。典型的なシグナル産生成分は、蛍光性組成物又は化学ルミネセンス組成物で染色されたキャリア、例えばラテックス粒子を含む。特に金属キレートは、ストークスシフトが一般的に広く、発光ピークが鋭く、そして発光波長が長いので、蛍光染料及び化学ルミネセンス染料として広く使用されている。典型的には金属キレートは、金属、例えばユーロピウム、サマリウム又はテルビウム、及びリガンド、例えばチオフェントリフルオロブタンジオン(TTA)、ナフチルトリフルオロブタンジオン(NTA)及び4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DPP)、トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)、トリフェニルホスフィンオキシド(TPPO)から形成される錯体である。いくつかの一般的に使用される金属キレートとしては、Eu(TTA)3DPP及びEu(NTA)3DPPが挙げられる。
【0004】
アッセイ試薬の作製に使用される染色されたキャリアは、シグナル産生を与える能力及びリガンドの共有結合のための化学的機能性の両方を有さなければならない。リガンドの結合に使用されるプロセスは、リガンド結合機能性の特異性の質に重大であり得る。このリガンドの特異性は、結合化学の不適当な選択によっていくつかの点で損なわれる可能性がある。例えば、リガンドの受動的吸着が共有結合と同時に生じる場合、この受動的に吸着されたリガンドは、アッセイの間にキャリアから離れ得る。その結果生じる遊離リガンドは、アッセイの妨げとなり、そしてその感受性を減少させる。生じ得る別の問題は、他のキャリアへの試薬の非特異的結合であり、これは、分析物の非存在下でのイムノアッセイシグナルの上昇を導く。
【0005】
リガンドはしばしば、ポリスチレン粒子の表面に直接結合するカルボキシ基を通じて、この粒子に結合する。このアプローチは、上記の問題の両方を有し得る。この受動的吸着の問題及び非特異的結合の問題は、ポリスチレン粒子とリガンドとの間に1つ又はそれ以上の固定されたヒドロゲルポリマー層、例えばアミノデキストランを導入することによって避けられ得る。吸着及び非特異的結合を排除するために、これらのヒドロゲルポリマーの連続層を有することが重要である。
【0006】
しかし、従来の染料、例えばEu(TTA)3DPP又はEu(NTA)3DPPで染色される粒子のコーティングは典型的に、非特異的結合を妨げるのに最適なコーティング密度をはるかに下回るアミノデキストランのコーティング密度しかもたらさない。このアミノデキストランのカップリング密度は典型的に、これらの染料が、試薬の化学ルミネセンス応答に関して最適レベルで添加されるときに、その最大密度から40〜50%減少する。より低いレベルの染料は、アミノデキストランコーティングプロセスをあまり干渉しない組成物を与えるが、染料の含有量を減少させると、強力なシグナルに不可欠な化学ルミネセンスもまた減少する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、特異的な結合アッセイにおいて、応答シグナルの増幅とシグナル産生成分の特異性との間により最適なバランスを提供する必要性が当該分野に残っている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の組成物は、非特異的結合の減少と応答シグナルの改善との間に最適なバランスを有するシグナル産生成分を提供する。
【0009】
本発明の一局面に従って、イムノアッセイのシグナル産生成分としての使用に好適な組成物が提供される。この組成物は、アミノデキストランのコーティングを有し、そして金属キレートで染色されるキャリアを含む。この金属キレートは、キャリア1ミリグラム当たり少なくとも0.065μMの量で存在し、そして平均のアミノデキストランコーティング密度は、キャリア1ミリグラム当たり少なくともおよそ45μgである。
【0010】
本発明の別の局面に従った組成物は、アミノデキストランでコーティングされ、そして、以下の式:
M(L1)(L2)
を有する錯体を包含したキャリアを含み、
式中、Mは、ユーロピウム、テルビウム、ジスプロシウム、サマリウム、オスミウム及びルテニウムからなる群より選択される金属であり;
L1は、DPP、TOPO及びTPPOからなる群より選択されるリガンドであり;
【0011】
L2は、以下の式:
【化1】

を有するリガンドを包含し、
式中Rは、1つ又はそれ以上の置換基であり、各々の置換基は、電子供与基を包含し;そしてn=2〜10であり、x=1〜2であり、そしてy=2〜4である。
【0012】
本発明の別の局面に従って、分析物を含むと推測される試験サンプル中でこの分析物の存在又は量を検出する方法が提供される。この方法は、本発明の組成物をシグナル産生成分として用いてイムノアッセイを行うことを包含する。
【0013】
上述の段落は、一般的な導入部分として与えられており、そして添付の特許請求の範囲を限定することは意図されない。本発明の好ましい実施態様は、本発明の他の局面と一緒になって、添付の図面とともに取り上げられる以下の詳細な説明を参照することによって最も良く理解される。
【0014】
本発明の組成物は、イムノアッセイのシグナル産生成分として有用である。この組成物は一般的に、アミノデキストランでコーティングされるキャリアを含み、そしてその中に含まれる金属キレートを有する。この組成物は、非特異的結合によって引き起こされるエラーを減少させながら、目的の分析物の定量測定を可能にする強力な応答シグナルを提供する。
【0015】
本発明に好適なキャリアとしては、固相材料、典型的には支持体又は表面が挙げられ、これは、多くの形状、例とえば細片、シート、棒、プレート、ウェル、チューブ、粒子又はビーズのうちのどれでもとり得る。この材料は通常、有機又は無機、膨潤性又は非膨潤性、多孔性又は非多孔性、磁性又は非磁性の水不溶性材料である。この表面は、親水性であり得るか、又は親水性を与え得る。この固体支持体としては、無機粉末、例えばシリカ、硫酸マグネシウム及びアルミナ;天然のポリマー材料、特にセルロース系材料及びセルロース由来の材料、例えば紙を含む繊維、例えばろ紙、クロマトグラフィー紙など;合成又は修飾された天然に存在するポリマー、例えばニトロセルロース、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリルアミド、架橋デキストラン、アガロース、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルブテン)、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリビニルブチレートなどが含まれ;それら自身で又は他の材料とともに使用され;バイオガラスとして入手可能なガラス、セラミックス、磁性材料、金属などが挙げられる。天然又は合成の集合体、例えばリポソーム、リン脂質ベシクル及び細胞がまた利用され得る。
【0016】
本発明の一実施態様において、このキャリアは粒子である。本明細書中で使用される「粒子」は、球体、球状体、ビーズ及びまた他の形状も同様に包含する。好適な粒子は、典型的には少なくとも20nm及びおよそ20μm以下、通常少なくともおよそ40nm及び10μm未満、好ましくは0.1μm〜10μm、より好ましくは0.1μm〜5μm、並びになおより好ましくは0.15μm〜3μmである。この粒子は、有機又は無機、膨潤性又は非膨潤性、多孔性又は非多孔性であり得、任意の密度、しかし好ましくは水に近い密度、一般的にはおよそ0.7g/ml〜およそ1.5g/ml、好ましくは水に懸濁可能な密度を有し、そして透明であり得るか、部分的に透明であり得るか又は不透明であり得る物質から構成される。この粒子は、コア−シェル粒子、例えば磁性のコア及び重合したモノマーの硬いシェルコーティングを有する粒子であり得る。この粒子は、好ましくは負電荷である。この粒子は、好ましくは固体、例えばポリマー粒子、金属ゾル(重金属、例えば金又は銀から構成される粒子)、ガラス粒子、ケイ素粒子、磁性粒子、染料クリスタリットである。
【0017】
特に好ましい粒子の一つは、ラテックス粒子である。本明細書中で使用される「ラテックス」は、微粒子で水に懸濁可能な水不溶性のポリマー材料を意味する。このラテックスはしばしば、ポリエチレン、例えばポリスチレン−ブタジエン、ポリアクリルアミドポリスチレン、ポリスチレンを、アミノ基、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリロニトリル−ブタジエン、スチレンコポリマー、ポリ酢酸ビニル−アクリレート、ポリビニルピリジン、塩化ビニルアクリレートコポリマーなどで置換される。非架橋性のスチレンポリマー及びカルボキシル化スチレン又は他の活性基、例えばアミノ、ヒドロキシル、ハロなどで官能基化されるスチレンが好ましい。多くの場合、ジエン、例えばブタジエンで置換されるスチレンのコポリマーが使用されるだろう。
【0018】
本発明のキャリアは、1つ又はそれ以上のアミノデキストランの層でコーティングされる。アミノデキストランは、アミノ基で誘導体化されたグルコースポリマーで、およそ10,000〜およそ2,000,000、好ましくはおよそ500,000の分子量を有する。アミノデキストランの調製方法及びキャリアのコーティング方法は、当該分野で公知である。好適な方法は、US 5,707,877の18〜20欄並びにUS 5,639,620の21欄及び22欄に記載されている。
【0019】
一つの好ましい方法において、アミノデキストランは、キャリアの表面のカルボキシル基又は他のアミン反応性官能基にアミノデキストランのアミノ基を共有結合させることによって、キャリア上にコーティングされる。このような方法は、「Carriers Coated with Polysaccharides,Their Preparation and Use」という表題で2000年3月6日に出願され、同一人に譲渡されそして同時係属中のUS出願番号10/220,623に記載及び提供されており、これらの開示の全体は、本明細書に参照によって組み込まれる。
【0020】
このアミノデキストランコーティングは、特異的な結合アッセイにおいてキャリアの特異性を改善し、従ってイムノアッセイの感度を改善する。本発明の金属キレートが、少なくとも0.065μMの高濃度で染料が存在するとき、予想外に、キャリア1ミリグラム当たり少なくともおよそ45μgの量のアミノデキストランによるキャリアのコーティングを可能とすることが発見されている。本発明の一つの好ましい実施態様に従って、このアミノデキストランコーティングは、キャリア1ミリグラム当たり少なくともおよそ49μgで存在する。
【0021】
本発明の一つの好ましい実施態様において、このキャリアは、US出願番号10/220,623に記載されるように、多糖を含む第二の層でコーティングされ得る。この多糖は、アミン反応性官能基によってアミノデキストラン層に共有結合され得る。一つの好ましい実施態様において、この第二の層は、デキストランアルデヒドを含む。
【0022】
金属キレートは、公知の方法、例えば染色を通じてキャリアに包含される。この金属キレートは、蛍光シグナル又は化学ルミネセンスシグナルの検出を可能にする。この金属キレートは、比較的高い濃度の金属キレートが、キャリアへのアミノデキストランコーティングの結合を妨げないように選択される。本発明の一実施態様に従って、この金属キレートは、キャリア1ミリグラム当たり少なくとも0.065μMの量で存在し、一方アミノデキストランの平均コーティング密度は、キャリア1ミリグラム当たり少なくともおよそ45μgである。本発明の別の実施態様において、この金属キレートは、キャリア1ミリグラム当たり少なくとも0.065μM及びおよそ0.150μM未満、より好ましくはキャリア1ミリグラム当たりおよそ0.079μM〜およそ0.150μM、そしてより好ましくはキャリア1ミリグラム当たりおよそ0.087μMの量で存在する。本発明の別の実施態様において、この金属キレートは、およそ0.110μM〜およそ135μMの量で存在する。金属キレート及びアミノデキストランのこれらの濃度は、目的の分析物に対する応答シグナル及び成分特異性との適切なバランスを提供することが見出されている。
【0023】
本発明の一実施態様に従って、この金属キレートは、以下の一般式:
M(L1)(L2)
を有し、
式中、Mは、ユーロピウム、テルビウム、ジスプロシウム、サマリウム、オスミウム及びルテニウムからなる群より選択される金属であり;
L1は、DPP、TOPO及びTPPOからなる群より選択されるリガンドであり;
L2は、以下の式:
【化2】

を有するリガンドを包含し、
式中Rは、1つ又はそれ以上の置換基であり、各々の置換基は、電子供与基を包含し;
n=2〜10であり;
x=1〜2であり;そして
y=2〜4である。
【0024】
好適な電子供与基は、ペルフルオロアルキル基に対して過剰な負電荷を付与可能にするものである。一実施態様において、この電子供与基Rは、C1〜C6アルキル基、ジアルキルアミン基、エーテル基、チオエーテル基及びアリール基からなる群より選択される。
【0025】
理論に束縛されることを望まずに、本発明の金属キレートは、キャリアをコーティングするアミノデキストランの量の最適化に有効であると考えられており、この理由は、この金属キレートは、既知の金属キレート染料と比較して予想外に安定な錯体を提供するからである。この錯体の安定性は、アミノデキストランのキャリアへの結合を阻害すると考えられている遊離金属量を減少させる。電子供与基Rが、リガンドのペルフルオロアルキル基に対してさらなる負電荷を付与可能にし、それによってペルフルオロアルキル基が錯体中の金属に結合する能力を改善することよって、錯体の安定性をさらに増大するとも考えられている。
【0026】
本発明の一つの特定の実施態様によれば、Mはユーロピウムであり、そしてキャリアはラテックス粒子である。本発明の好ましい実施態様によれば、n=3又は7であり、そしてx=1及びy=3である。
【0027】
本発明の特定の実施態様によれば、L2は、以下の式:
【化3】

の中から選択される。
【0028】
上記のリガンドの好ましい実施態様において、n=3又はn=7である。本発明の好ましい実施態様において、このリガンドL2は、2−(1',1',1',2',2',3',3'−ヘプタフルオロ−4',6'−ヘキサンジオン−6'−イル)−ナフチレン(NHA)、及び4,4'−ビス(1'',1'',1'',2'',2'',3'',3''−ヘプタフルオロ−4'',6''−ヘキサンジオン−6''−イル)−o−テルフェニル(BHHT)である。
【0029】
本発明の特に好ましい実施態様において、この金属キレートは、Eu(NHA)3DPP及びEu(BHHT)2DPPを含む。一般的にこの金属キレートは、有機溶媒中の所望の割合の金属リガンド分子及び遊離した塩酸を捕捉するに十分な塩基と金属塩化物とを混合することによって調製され得る。好適な合成は、それぞれ図1〜2に例示される。
【0030】
本発明の金属キレート染料は、以下の比較実施例で証明されるように、従来の染料と比較して、比較的高い濃度の金属キレート染料で、より高い密度のアミノデキストランコーティングを可能にすることが見出された。一定量の最適化された染料濃度で、本発明の金属キレートは一般的に、従来の染料がビーズ1mg当たりおよそ23μg〜およそ35μgであるのと比較して、ビーズ1mg当たりおよそ45μg〜およそ55μgでのアミノデキストランコーティングを可能にする。従って、本発明の染料は、キャリアが非特異的結合量を減少させるに十分な量のアミノデキストランでコーティングされることを可能にしながら、特異的な結合アッセイのシグナル産生成分の一部として強力な応答シグナルを与えるに十分な量で存在し得る。
【0031】
本発明の組成物は、特異的な結合アッセイのシグナル産生成分としての使用に好適である。この組成物は、シグナルが分析物へのリガンド結合に応答して測定される任意のイムノアッセイに好適である。当業者は、この組成物が多くのアッセイフォーマットにおいて広範な有用性を有することを容易に認識するだろう。
【0032】
本発明の特異的結合アッセイの一実施態様において、シグナル産生成分を用いて、EP−A2−0 515 194に記載されるルミネセンス酸素チャネリングイムノアッセイ(LOCITM)を行う。分析物の定性測定又は定量測定のためのこの方法において、少なくとも1つの特異的結合パートナーが、本発明のキャリアに結合する。分析物を含むと推測される媒体を、この分析物が、励起状態で一重項酸素を産生し得る増感剤の量、及び近接し得る化学ルミネセンス化合物の量に影響を及ぼすような条件下で処理し、その結果この光増感剤によって産生される一重項酸素が、この化学ルミネセンス化合物を活性化し得、これは引き続いて光を産生し、そしてこの光、すなわちこの媒体中の分析物の量に関連している量を測定する。
【0033】
別の実施態様において、このLOCITM方法は、以下の工程を含む:(A)同時又は完全若しくは部分的に連続してのいずれかで、(i)分析物を含むと推測される媒体;(ii)励起状態で一重項酸素を産生し得る増感剤に結合した第一の特異的結合パートナー;及び(iii)一重項酸素とともに化学反応を受けて、同時又は引き続く光の放射により分解し得る得る準安定な中間体種を形成する物質である化学ルミネセンス化合物を含む組成物に結合した第二の特異的結合パートナーを混合する工程;(B)第一及び第二の特異的結合パートナーを含む錯体を形成する工程であって、この錯体形成は、増感剤を化学ルミネセンス化合物に近接させる工程、(C)この増感剤を活性化させて、一重項酸素を産生する工程;及び、この化学ルミネセンス化合物によって放射される光の量を測定する工程であって、この光は、媒体中の分析物の量に正比例又は反比例する。この化学ルミネセンス化合物を含む組成物はまた、活性化された化学ルミネセンス化合物によって励起される1つ又はそれ以上の蛍光分子を含み得る。この蛍光分子によって放射される光を測定して、媒体中の分析物の量を測定し得る。
【0034】
このLOCI方法を用いる本発明の一実施態様において、キャリアは、金属キレート及び酸素受容体の両方で染色され得る。酸素受容体は、一重項酸素と反応して、励起状態に急速に分解する極めて不安定な生成物を形成する成分である。この励起状態の過剰エネルギーは、数ナノ秒で起こるフォースターエネルギー転移によって染料に転移される。次いでこの金属キレート染料が、光子計数器で検出され得る光の光子を放射する。好適な酸素受容体は、US出願番号5,578,498及び5,811,311に開示されている。一つの特に好ましい酸素受容体は、以下の式:
【化4】

を有するC−28チオキセンである。
【実施例】
【0035】
実施例:単一の産生成分の調製
カルボキシル化ラテックスビーズ(Seradynより入手)の10%溶液100mL、1−メトキシ−2−プロパノール138ml、D.I.水280mL及び0.1M NaOH10mLの混合物を、機械的撹拌機及び温度計を備えた三つ口フラスコ中に配置した。この混合物を、撹拌しながら80℃にした。次いで別個の溶液を、1−メトキシ−2−プロパノール220mL中のC−28チオキセン2g及びEu(NHA)3DPP2.7gを用いて調製し、そしてこの溶液を、溶解するまで撹拌しながら80℃に加熱した。次いでこの染料溶液をビーズ溶液に注ぎ、そして80℃で30分間撹拌し、次いで徐々に40℃まで冷却した。次いでこのビーズを、NaOHでpH10に調整した水中の10%v/vエタノールでのダイアフィルトレーションにより洗浄した。次いでこのビーズを、洗浄の間におよそ20mg/mlに濃縮し、次いで4℃で遮光して保管した。
【0036】
次いでこのアミノデキストランコーティングを、以下の通りに適用した。染色されたビーズ(およそ20mg/ml)1mLを、3.8mg/mlのEDACの存在下、0.05MのMES/pH6.0中のヒドロキシプロピルアミノデキストラン(MW 500K)20mg/mlと混合した。この混合物を室温で16時間(暗所で)インキュベートした後、このビーズを、0.05MのMES/pH6.0の2mlで1回洗浄し、次いで0.05MのMES、1.0MのNaCl/pH6.0の6mlで洗浄した。最後にこのビーズを、0.05MのMES/pH6.0の1mlに再懸濁して、コーティングされたビーズを得た。遠心分離法(Sorval RC−5B Plus遠心分離機又はEpendorf遠心分離機−5415 Cを使用)によって洗浄を行い、そしてペレットを、音波処理(Branson Sonifer−450を使用)によって再懸濁した。
【0037】
次いで、デキストランアルデヒド層を、以下の通りに添加し得た。0.05MのMES中の20mg/mlデキストランアルデヒド1mlを、2mg/mlのNaBH3CNの存在下、アミノデキストランでコーティングされた化学ルミネセンスビーズ1mlと混合した。37℃で20時間(暗所)のインキュベーション後、このビーズを、MES緩衝液4mlで1回洗浄し、次いで新たなMES緩衝液5mlで洗浄した。このビーズを、0.05MのMES、0.4%Tween−20/pH6.0の0.5ml中に再懸濁して、およそ40mg/mlのコーティングビーズを得た。
【0038】
比較実施例1
第一のセットのラテックス粒子を、Eu(NTA)3DPP及びチオキセンで染色し、そして本明細書中に記載される方法に従ってアミノデキストランでコーティングした。同様に、第二のセットのラテックス粒子を、Eu(NHA)3DPP及びチオキセンで染色し、そしてアミノデキストランでコーティングした。
各組成物に関して、アミノデキストランコーティング密度及び化学ルミネセンスを、種々の濃度の金属キレートで同時に測定した。このアミノデキストランコーティング密度を、アントロン及び80%硫酸で処理した後に比色試験によって測定した。この化学ルミネセンスを、Perkin−Elmerから販売されるEnvision−AlphaリーダーによりLOCIカウントとして測定した。Eu(NTA)3DPPのデータ点を表1にまとめ、そして曲線の当てはめにより図3に図式的に示した。Eu(NHA)3DPPのデータ点を表2にまとめ、そして0.094までの濃度に関しては、曲線の当てはめにより図4に図式的に示した。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
図3に見られ得るように、従来技術の組成物において、アミノデキストランローディング及びLOCIシグナルは、組成物に対する応答として同時にプラトー状態に保つことはできなかった。この応答シグナルは、およそ0.085ミリモルEu/ビーズgまでプラトーになり始めなかった。より高濃度で、このアミノデキストランコーティング濃度は、わずか36μg/ビーズmgであり、そしてユーロピウム濃度が増大するにつれて減少し続けていた。
【0042】
対照的に、図4に示されるように、本発明の化合物は、わずか0.065μm Eu/ビーズgで、アミノデキストラン濃度及びLOCIシグナルに関して両方プラトーになり始めた。この濃度で、平均のアミノデキストランコーティング濃度は、49μg/ビーズmgであった。さらに、このアミノデキストラン濃度は一般的に、ユーロピウム濃度が増大するにつれて安定を保った。
【0043】
比較実施例2
Seradynのラテックスビーズを、2つの従来の染料、Eu(TTA)3DPP及びEu(NTA)3DPP、並びに本発明の2つの染料、Eu(BHHT)2DPP及びEu(NHA)3DPPの各々に関して、ビーズ1グラム当たりユーロピウム染料0.171mmol及びC−28チオキセン0.303mmolで染色した。次いでこのビーズを、本明細書中に記載されるようにアミノデキストランでコーティングした。次いで、このアミノデキストラン密度を測定し、同様にその応答シグナルの増幅を測定した。このデータを、表3にまとめた。
【0044】
すべてのシグナル産生成分は、LOCIカウントによって測定されるような十分なシグナルを提供した。しかし、本発明の染料は、著しくより高い範囲のアミノデキストランコーティング密度をもたらした。
【0045】
【表3】

【0046】
本発明が広範な有用性及び適用を許容することが、当業者によって容易に理解されるはずである。本明細書中に記載されるもの以外の本発明の多くの実施態様及び適用、並びに多くの変異、改変及び等価な処理は、本発明の実体又は範囲を逸脱することなく、本発明及び上述の説明から明らかであるか、又はこれらによって正当に示唆される。
【0047】
従って、本発明が特定の実施態様に関して本明細書中で詳細に記載されているが、この開示は、本発明の説明及び例示のためだけのものであり、そして単に本発明の完全かつ可能な開示を提供する目的のために行われることが理解されるべきである。上述の開示は、本発明を限定することも意図されず、本発明を限定すると解釈もされず、又はそうでなければ任意のこのような他の実施態様、適用、変異、改変及び等価な処理を排除することも意図されず、これらを排除すると解釈もされず、本発明は、添付の特許請求の範囲及びその等価物によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の金属キレートの一実施態様の合成を例示する図解である。
【図2】本発明の金属キレートの別の実施態様の合成を例示する図解である。
【図3】従来技術の組成物に関するアミノデキストラン濃度及び金属濃度の関数としての応答シグナルのグラフ表示である。
【図4】本発明の組成物に関するアミノデキストラン濃度及び金属濃度の関数としての応答シグナルのグラフ表示である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノデキストランのコーティングを有し、そしてその中に包含される金属キレートを有するキャリアであって、この金属キレートが、キャリア1ミリグラム当たり少なくとも0.065μMの量で存在し、このアミノデキストランコーティング密度が、平均してキャリア1ミリグラム当たり少なくともおよそ45μgであるキャリアを含む、イムノアッセイのシグナル産生成分としての使用に好適な組成物。
【請求項2】
金属キレートが、キャリア1ミリグラム当たりおよそ0.065μM〜およそ0.150μMの量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
金属キレートが、ユーロピウム錯体を包含する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
キャリアが、ラテックス粒子を包含する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
イムノアッセイのシグナル産生成分としての使用に好適な組成物であって、この組成物が、
アミノデキストランでコーティングされ、そして以下の式:
M(L1)(L2)
を有する錯体をその中に包含したキャリア
を含み、ここで
Mは、ユーロピウム、テルビウム、ジスプロシウム、サマリウム、オスミウム及びルテニウムからなる群より選択される金属であり;
L1は、DPP、TOPO、TPPOからなる群より選択されるリガンドであり;
L2は、以下の式:
【化1】

[Rは、1つ又はそれ以上の置換基であり、各々の置換基は、電子供与基を包含し;
n=2〜10である]を有するリガンドを包含し、
x=1〜2であり;そして
y=2〜4である、
上記組成物。
【請求項6】
各々のRが、C1〜C6アルキル、ジアルキルアミン、エーテル、チオエーテル及びアリールからなる群より独立して選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
Mが、ユーロピウムを包含する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
キャリアが、ラテックス粒子を包含する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
n=3である、請求項5に記載の組成物。
【請求項10】
x=1であり、そしてy=3である、請求項6に記載の組成物。
【請求項11】
n=7である、請求項5に記載の組成物。
【請求項12】
L2が、以下:
【化2】

を包含する、請求項5に記載の組成物。
【請求項13】
L2が、以下:
【化3】

を包含する、請求項5に記載の組成物。
【請求項14】
L2が、以下:
【化4】

を包含する、請求項5に記載の組成物。
【請求項15】
L2が、以下:
【化5】

を包含する、請求項5に記載の組成物。
【請求項16】
L2が、以下:
【化6】

を包含する、請求項5に記載の組成物。
【請求項17】
コーティングが、デキストランアルデヒドを含む第二の層をさらに含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項18】
キャリアが、酸素受容体をさらに含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項19】
請求項1に記載の組成物をシグナル産生成分として用いてイムノアッセイを行うことを含む、分析物を含むと推測される試験サンプル中でこの分析物の存在又は量を検出する方法。
【請求項20】
イムノアッセイが、ルミネセンス酸素チャネリングイムノアッセイを包含する、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−528969(P2008−528969A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552204(P2007−552204)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/001529
【国際公開番号】WO2006/078618
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(500029718)デイド・ベーリング・インコーポレイテッド (20)
【氏名又は名称原語表記】DADE BEHRING INC.