説明

シグマレセプターリガンドを含む医薬組成物

本発明は、活性医薬成分として式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、異性体、プロドラッグ若しくは溶媒和物と、少なくとも1つの薬学的に許容される添加剤とを含み、活性医薬成分が組成物の総乾燥重量の少なくとも80%の量で存在する医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い装填量のシグマ(σ)レセプターに対して薬理学的活性を有する化合物を含む医薬組成物、これらの調製方法及びこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新たな治療剤の探求は、標的疾患に関連するタンパク質及び他の生体分子の構造の理解が進むことによって大きく促進されている。1つの重要な部類のタンパク質は、オピオイドの不快性、幻覚誘発性及び心臓刺激性の効果に関連しうる中枢神経系(CNS)の細胞表面レセプターである、シグマ(σ)レセプターである。シグマレセプターの生物学及び機能の研究によって、シグマレセプターリガンドが、ジストニア及び遅発性ジスキネジアなどの精神病及び運動障害、ハンチントン舞踏病又はトゥーレット症候群に関連する運動障害、並びにパーキンソン病の治療に有用でありうるという証拠が提示されている(Walker、J.、et al、Pharmacol. Rev. 1990年; 42:355)。既知のシグマレセプターリガンドであるリムカゾールは、精神病の治療において効果を臨床的に示したことが報告されている(Snyder、S.、Largent、B.、J. Neuropsychiatry 1989年; 1:7)。シグマ結合部位は、(+)SKF 10047、(+)シクラゾシン及び(+)ペンタゾシンなどの特定のアヘン薬ベンゾモルファンの右旋性異性体に対して、またハロペリドールなどの幾つかの催眠剤に対しても優先的な親和性を有する。幾つかのシグマレセプターリガンドは、従来技術において開示されている。
【0003】
特許出願WO 2006/021462は、シグマレセプターの阻害剤として特に選択的であるピラゾール誘導体のファミリーを開示している。前記誘導体は、窒素原子に結合しているアルコキシ基により3位で置換されていることによって特徴付けられるピラゾール基を示す。これらの化合物は、慢性及び急性疼痛、特に神経因性疼痛の治療及び予防において強い鎮痛活性を示している。
【0004】
しかし、WO 2006/021462に開示されている化合物は、不十分なレオロジー特性及び不十分な圧縮特性を示している。このためにこれらの配合は困難になる。それは、活性成分を含む組成物に対して通常、機械的操作が適用され、良好な圧縮特性及びレオロジー特性は製剤の取扱い及び製造を容易にするからである。
【0005】
加えて、高装填量の活性成分を有する製剤の調製には、問題がないわけではない。製剤は、典型的には、製剤全体の重量の20%を超える添加剤を含有する。このことは、幾つかの機械的工程を伴い、場合により結合剤の使用を伴うペレット剤などの形態を成功裏に製造するために必要である(Hileman、G.、et al、Int. J. Pharma. 1993年; 100(1〜3):71〜79; Jover、I.、et al、J. Pharma. Sci. 1996年; 85:700〜705)。特に、賦形剤、結合剤及び可塑剤は、粒子が望ましい形状、均一な大きさ、並びに良好な取扱い及び溶解特性を得るために必要な固形製剤の可塑特性などの最終生成物の特性において重要な役割を果たす。
【0006】
例えば、通常の賦形剤である微晶質セルロース(MCC)は、湿式塊化(wet massing)工程の際に適用された水を、保持された水を粒子表面に発現させる圧力が(押出又は球形化(spheronization)力により)適用されるまで保持することにより、分子スポンジとして作用すると考えられる。粒子の表面に存在する水は潤滑剤として作用し、押出の剪断力を低減し、それによって湿塊からの円筒状押出物の形成を助ける。押出物の内部に残存する水は、球形化の際にMCCがあまり構造的に剛性にならないことを可能にする点において可塑剤として作用する。
【0007】
残念なことに、特定量の賦形剤などの添加剤の使用の必要性は、最終製剤における活性剤の装填量を制限する。
【0008】
一般に、疼痛の予防及び治療には、鎮痛剤の患者への素早い送達を可能にする製剤を必要とする。加えて、疼痛の発生では、多くの場合に、疼痛発症の直前又は直後に高用量の鎮痛剤を投与することが求められる。大部分の患者は、通常、この時点で強い疼痛の症状を経験する。したがって、活性成分のより高い装填量も可能にする、WO 2006/021462に記載された化合物のより優れた製剤が当該技術において必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO 2006/021462
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Walker、J.、et al、Pharmacol. Rev. 1990年; 42:355
【非特許文献2】Snyder、S.、Largent, B.、J. Neuropsychiatry 1989年; 1:7
【非特許文献3】Hileman、G.、et al、Int. J. Pharma. 1993年; 100(1〜3):71〜79
【非特許文献4】Jover、I.、et al、J. Pharma. Sci. 1996年; 85:700〜705
【非特許文献5】「Remington, the Science and practice of pharmacy」、第21版、2005年、Lippincott Williams & Wilkins編
【非特許文献6】Pharmaceutical Pelletization Technology、Isaac Ghebre-Sellassie編、Marcel Dekker, Inc.、1989年
【非特許文献7】Burger「Medicinal Chemistry and Drug Discovery」第6版(Donald J. Abraham編、2001年、Wiley)
【非特許文献8】「Design and Applications of Prodrugs」(H. Bundgaard編、1985年、Harwood Academic Publishers)
【非特許文献9】Krogsgaard-Larsen et al.「Textbook of Drug design and Discovery」Taylor & Francis (2002年4月)
【非特許文献10】Duckic et al.「Production of pellets via extrusion-spheronisation without the incorporation of microcrystalline cellulose: A critical review」European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics、第71巻、第1号、2009年
【非特許文献11】Kranz et al.「Drug release from MCC- and carrageenan-based pellets: Experimental and theory」European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics、第73巻、第2号、2009年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、驚くべきことに、式(I)の化合物が、不十分なレオロジー特性及び圧縮特性にもかかわらず、製剤の総乾燥重量の80%超という高い装填量の活性成分を可能にし、依然として、例えば放出速度、粒径、丸み又は篩がけ後の収率などの良好な薬学的特性を示す医薬製剤を提供できることを見出した。このことは予想外であり、それは、式(I)の化合物の物理的特性は他の方法、すなわち、そのような特性を補うために及び適切な特性の製剤を得ることを可能にするために通常の量より多量の賦形剤又は結合剤などの添加剤を使用することを示すであろうからである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、第1態様において、本発明は(i)活性医薬成分として式(I):
【0013】
【化1】

【0014】
[式中、
R1は、水素、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換シクロアルキル、置換又は非置換アルケニル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換アリールアルキル、置換又は非置換非芳香族ヘテロシクリル、置換又は非置換芳香族ヘテロシクリル、置換又は非置換ヘテロシクリルアルキル、-COR8、-C(O)OR8、-C(O)NR8R9、-CH=NR8、-CN、-OR8、-OC(O)R8、-S(O)t-R8、-NR8R9、-NR8C(O)R9、-NO2、-N=CR8R9及びハロゲンからなる群より選択され;
R2は、水素、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換シクロアルキル、置換又は非置換アルケニル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換アリールアルキル、置換又は非置換ヘテロシクリル、置換又は非置換ヘテロシクリルアルキル、-COR8、-C(O)OR8、-C(O)NR8R9、-CH=NR8、-CN、-OR8、-OC(O)R8、-S(O)t-R8、-NR8R9、-NR8C(O)R9、-NO2、-N=CR8R9及びハロゲンからなる群より選択され;
R3及びR4は、水素、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換シクロアルキル、置換又は非置換アルケニル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換アリールアルキル、置換又は非置換ヘテロシクリル、置換又は非置換ヘテロシクリルアルキル、-COR8、-C(O)OR8、-C(O)NR8R9、-CH=NR8、-CN、-OR8、-OC(O)R8、-S(O)t-R8、-NR8R9、-NR8C(O)R9、-NO2、-N=CR8R9及びハロゲンからなる群より独立して選択されるか、或いはこれらが結合しているフェニル基と一緒になって、縮合置換若しくは非置換アリール基又は縮合置換若しくは非置換ヘテロシクリル基を形成し;
R5及びR6は、水素、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換シクロアルキル、置換又は非置換アルケニル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換アリールアルキル、置換又は非置換ヘテロシクリル、置換又は非置換ヘテロシクリルアルキル、-COR8、-C(O)OR8、-C(O)NR8R9、-CH=NR8、-CN、-OR8、-OC(O)R8、-S(O)t-R8、-NR8R9、-NR8C(O)R9、-NO2、-N=CR8R9及びハロゲンからなる群より独立して選択されるか;或いは
これらが結合している窒素原子と一緒になって、置換又は非置換ヘテロシクリル基を形成し;
nは、1、2、3、4、5、6、7又は8であり;
tは、1、2又は3であり;
R8及びR9は、水素、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換シクロアルキル、置換又は非置換アルケニル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換ヘテロシクリル、置換又は非置換アルコキシ、置換又は非置換アリールオキシ及びハロゲンからなる群より互いに独立して選択される]の化合物;
又はその薬学的に許容される塩、異性体、プロドラッグ若しくは溶媒和物と;
(ii)少なくとも1種の薬学的に許容される添加剤と
を含み、
活性医薬成分が組成物の総乾燥重量の少なくとも80%の量で存在する
医薬組成物を対象とする。
【0015】
第2態様によると、本発明は、押出/球形化又は溶融造粒法(melt granule process)を含む、本発明の医薬組成物の調製方法を対象とする。
【0016】
第3態様は、薬剤としての使用のために本発明により調製される組成物である。
【0017】
第4態様は、シグマレセプター媒介疾患又は状態の治療又は予防に使用される本発明の組成物である。特定の実施態様において、疾患は、下痢;リポタンパク質障害;片頭痛;肥満症;関節炎;高血圧症;不整脈;潰瘍;学習障害、記憶障害及び注意欠陥;認知障害;神経変性疾患;脱髄性疾患;コカイン、アンフェタミン、エタノール及びニコチンを含む薬物及び化学物質への嗜癖;遅発性ジスキネジー(tardive diskinesia);虚血性発作;てんかん;発作;ストレス;癌;精神病的な状態、特にうつ病、不安又は統合失調症;炎症;及び自己免疫性疾患からなる群より選択される。別の特定の実施態様において、疾患は、疼痛、好ましくは神経因性疼痛、炎症性疼痛又は異痛及び/若しくは痛覚過敏を伴う他の疼痛状態である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実験ブロック番号1、2、3及び4の代表的配合の即時放出ペレット剤の以下の条件下での溶出プロフィールを示す:酸性媒質HCl 0.1N、pH1.2、緩衝溶液pH5.5及び6.8、パドル速度50rpm及び容量900ml。シンク条件を、酸性媒質のHCl 0.1N、pH1.2及び緩衝溶液のpH5.5に維持し、非シンク条件を、媒質をpH6.8に変えたときに実施した。記号の最後の3つの数字は、対応する例の番号を意味する。
【図2】API-001のpH溶解度プロフィールを示す。
【図3】API-001の押出-球形化ペレット剤のインビトロ放出プロフィールにおける薬剤溶解度の影響を表す(シンク条件を全ての試験の際に維持した)。
【図4】API-001の押出-球形化ペレット剤の以下の条件での比較インビトロ放出プロフィールを表す:パドル速度50rpm、媒質HCl 0.1N、pH1.2、容量900ml(全ての試験の際、シンク条件を維持した)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の医薬組成物は、式(I)の化合物を重量で少なくとも80%を含むが、予想外なことに、標準的な製薬プロセスにより製造することができ、良好な薬学的特性を示すことができる。
【0020】
特定の実施態様によると、活性医薬成分(「API」)は、組成物の総乾燥重量の少なくとも85%の量で存在する
【0021】
別の実施態様において、薬学的に許容される添加剤、好ましくは賦形剤又は結合剤は、組成物の総乾燥重量の15%未満、より好ましくは10%未満の量で存在する。
【0022】
更なる実施態様において、APIと薬学的に許容される添加剤の重量比は、4:1〜40:1、好ましくは5:1〜40:1、より好ましくは8:1〜30:1である。
【0023】
本発明の組成物における薬学的に許容される添加剤は、有効成分の密度を高くして所望の質量を得ることができる1つ又は複数の化合物である賦形剤でありうる。好ましい賦形剤は:
- リン酸カルシウム及びリン酸ナトリウムなどの無機リン酸塩;
- 水和又は無水デキストロース、スクロース、ガラクトース、マルトース、ラクトースなどの糖;
- ソルビトール、キシリトール、マンニトールなどのポリオール;
- 以下を含む天然ポリマー:
- デキストラン、マルトデキストラン、ペクチン、カラギーナン、キトサンなどの多糖;
- シクロデキストリン;
- 微晶質セルロース(例えば、Avicel(登録商標)PH101、Avicel(登録商標)PH102若しくはAvicel(登録商標)PH105などのAvicel(登録商標)、Emcocel(登録商標)、Vivacel(登録商標)、Ming Tai(登録商標)又はSalka-Floc(登録商標))、微細セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース又はセルロース誘導体;
- α化デンプン(Starch 1500又はNational 1551)、デンプングリコール酸ナトリウム、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、コメデンプン、コムギデンプンを含むデンプン又はデンプン誘導体
である。
本発明の組成物における薬学的に許容される添加剤は、材料に凝集特性を付与することができる1つ又は複数の化合物である結合剤でありうる。好ましい結合剤は:
- カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロースなどのセルロース又はセルロース誘導体;
- ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールグリセリド、ポリエチレンオキシドなどの合成ポリマー;
- ペクチニン酸、クエン酸、フマル酸、酒石酸などの酸;
- 水素化ヒマシ油、グリセロールパルミトステアレート(Precirol AT05)、飽和脂肪エステルのグリセロールエステル(Gelucire)、グリセリルベヘネート(Compritol)、グリセリルモノステアレートなどのロウ状又は脂質添加剤;
- グアーガム、キサンタンガム、コロイド状二酸化ケイ素
である。
【0024】
特定の実施態様において、本発明の組成物は、
- リン酸カルシウム及びリン酸ナトリウムなどの無機リン酸塩;
- 水和又は無水デキストロース、スクロース、ガラクトース、マルトース、ラクトースなどの糖;
- ソルビトール、キシリトール、マンニトールなどのポリオール;
- 以下を含む天然ポリマー:
- デキストラン、マルトデキストラン、ペクチン、カラギーナン、キトサンなどの多糖;
- シクロデキストリン;
- 微晶質セルロース(例えば、Avicel(登録商標)PH101、Avicel(登録商標)PH102若しくはAvicel(登録商標)PH105などのAvicel(登録商標)、Emcocel(登録商標)、Vivacel(登録商標)、Ming Tai(登録商標)又はSalka-Floc(登録商標))、微細セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース又はセルロース誘導体;
- α化デンプン(Starch 1500又はNational 1551)、デンプングリコール酸ナトリウム、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、コメデンプン、コムギデンプンを含むデンプン又はデンプン誘導体;
- ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールグリセリド、ポリエチレンオキシドなどの合成ポリマー;
- ペクチニン酸、クエン酸、フマル酸、酒石酸などの酸;
- 水素化ヒマシ油、グリセロールパルミトステアレート(Precirol AT05)、飽和脂肪エステルのグリセロールエステル(Gelucire)、グリセリルベヘネート(Compritol)、グリセリルモノステアレートなどのロウ状又は脂質添加剤;
- グアーガム、キサンタンガム、コロイド状二酸化ケイ素;
或いはこれらの混合物
から選択される賦形剤又は結合剤を含む。
【0025】
更なる実施態様において、本発明の組成物は、
- デキストロース、スクロース、ガラクトース、マルトース、ラクトースなどの糖;及び
- 微晶質セルロース(例えば、Avicel(登録商標)PH101、Avicel(登録商標)PH102若しくはAvicel(登録商標)PH105などのAvicel(登録商標)、Emcocel(登録商標)、Vivacel(登録商標)、Ming Tai(登録商標)又はSalka-Floc(登録商標))、微細セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース又はセルロース誘導体;α化デンプン(Starch 1500又はNational 1551)、デンプングリコール酸ナトリウム、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、コメデンプン、コムギデンプンなどのデンプン又はデンプン誘導体;ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールグリセリド;又はこれらの混合物を含むポリマー材料
から選択される賦形剤又は結合剤を含む。
【0026】
特定の実施態様において、ポリエチレングリコールが本発明の製剤に使用されるとき、3000〜9000、好ましくは5000〜9000、より好ましくは7000〜9000の平均重量を好ましく有する。
【0027】
別の特定の実施態様において、ポリエチレングリコールグリセリドは、好ましくはラウロイルポリオキシルグリセリドである。
【0028】
特定の実施態様によると、賦形剤又は結合剤は、ラクトース、好ましくはラクトース水和物;セルロース、好ましくは微晶質セルロース;デンプン;ポリエチレングリコール、好ましくは7000〜9000の平均重量を有するもの;及びポリエチレングリコールグリセリド、好ましくはラウロイルポリオキシルグリセリド;又はこれらの混合物から選択される。
【0029】
実施態様において、結合剤は、水、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、カルメロースナトリウム(例えば、Ac-Di-Sol(登録商標))、アルファデンプン、ポリビニルピロリドン(例えば、Polyvidon(登録商標)CL、Polyvidon(登録商標)CL-M、Kollidon(登録商標)CL、Polyplasdone(登録商標)XL又はPolyplasdone(登録商標)XL-10)、アラビアゴム、ゼラチン、プルランなどから選択される。
【0030】
好ましい実施態様において、製剤の結合剤は、水、エタノール溶液などのアルコール溶液又は自己乳化系により形成される群から好ましく選択される。より好ましくは、結合剤は水である。
【0031】
更なる実施態様において、本発明の組成物は、薬学的に許容される添加剤として賦形剤及び結合剤の両方を含む。
【0032】
本発明の組成物及び投与形態は、1つ又は複数の追加的な添加剤を更に含むことができる。
【0033】
用語「添加剤」は、US Pharmacopoeia and National Formularyに提示されたものと同じ意味を有し、すなわち投与形態の製剤に意識的に添加された活性物質以外の任意の成分と同じ意味を有する。例示的な添加剤は、膨張及び/又は吸上により作用する崩壊剤、潤滑剤、可塑剤、結合剤、充填剤、着色剤、風味隠蔽剤、風味剤、安定剤、起泡剤、甘味料、細孔形成剤、酸(例えば、クエン酸又は酒石酸)、塩化ナトリウム、重炭酸塩(例えば、ナトリウム又はカリウム)、糖及びアルコールである。使用することができる添加剤の量は、組成物の総乾燥重量の少なくとも80%が活性成分により構成されているので制限される。幾つかの添加剤は、複数の目的で機能することができ、例えば同時に充填剤及び崩壊剤でありうる。
【0034】
風味隠蔽剤の例としては、エチルセルロースなどの水不溶性ポリマー、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート及びジエチルアミノエチルメタクリレートのコポリマーなどの唾液に不溶性であり、胃液に可溶性であるポリマーなどを使用することができる。
【0035】
用語「崩壊剤」とは、固形調製物に添加されると、投与後にその分解又は崩壊を促進し、活性成分の放出を可能な限り効率的に許容してその急速な溶解を可能にする物質であることが理解される。崩壊剤の例としては、トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプン、部分アルファデンプン、デンプンカルボキシメチルナトリウム、ヒドロキシプロピルデンプンなどのデンプン;カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム(例えば、Ac-Di-Sol(登録商標))、ポリビニルアルコール、クロスポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶質セルロース(例えば、Avicel(登録商標)PH101、Avicel(登録商標)PH102若しくはAvicel(登録商標)PH105などのAvicel(登録商標)、Emcocel(登録商標)、Vivacel(登録商標)、Ming Tai(登録商標)又はSalka-Floc(登録商標))などを提示することができる。また、アルギン酸又はアルギン酸塩及びポリビニルピロリドン(例えば、Polyvidon(登録商標)CL、Polyvidon(登録商標)CL-M、Kollidon(登録商標)CL、Polyplasdone(登録商標)XL又はPolyplasdone(登録商標)XL-10)などを崩壊剤として使用することができる。
【0036】
風味剤の例として、香料、レモン、レモン-ライム、オレンジ、メントール、ペパーミント油、バニリン又はデキストリン若しくはシクロデキストリンが吸収されている粉末などを使用することができる。
【0037】
潤滑剤又は可塑剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセリル、グリセリルパルミトステアレート、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸又はステアリン酸亜鉛などの脂肪酸又は脂肪酸誘導体;水素化ヒマシ油などの水素化植物油;ポリエチレングリコール又はポリエチレングリコールグリセリド(例えば、Gelucire(登録商標)44/14などのラウロイルポリオキシルグリセリド)などのポリアルキレングリコール;安息香酸ナトリウム;タルク;コロイド状二酸化ケイ素(Aerosil 200(登録商標))などを提示することができる。
【0038】
着色剤の例としては、食用黄色5号、食用赤色3号、食用青色2号、食用レーキ色素、赤色酸化鉄などの食用色素などを提示することができる。
【0039】
安定剤又は可溶化剤の例としては、アスコルビン酸及びトコフェロールなどの酸化防止剤、ポリソルベート80などの界面活性剤などを、使用される生理学的に活性な成分に応じて提示することができる。
【0040】
充填剤の例としては、スクロース、グルコース、ラクトース(例えば、噴霧乾燥ラクトース、α-ラクトース、β-ラクトース、一水化ラクトース、Tablet-tose(登録商標)、Pharmatose(登録商標)又はFast-Floc(登録商標))、マンニトール、キシリトール、デキストロース、微晶質セルロース(例えば、Avicel(登録商標)PH101、Avicel(登録商標)PH102若しくはAvicel(登録商標)PH105などのAvicel(登録商標)、Emcocel(登録商標)、Vivacel(登録商標)、Ming Tai(登録商標)又はSalka-Floc(登録商標))、マルトース、ソルビトール、デンプン(トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン及びα化デンプンを含む)、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウムなどを提示することができる。
【0041】
起泡剤の例としては、重炭酸ナトリウムを使用することができる。
【0042】
甘味料の例としては、ナトリウムサッカリン、ジカリウムグリチルリチン、アスパルテーム、ステビア、タウマチンなどを提示することができる。
【0043】
別の特定の実施態様において、本発明の組成物は潤滑剤又は可塑剤を更に含む。好ましい実施態様において、潤滑剤又は可塑剤は、ポリエチレングリコール、好ましくは7000〜9000の平均重量を有するポリエチレングリコール;ポリエチレングリコールグリセリド(例えば、Gelucire(登録商標)44/14などのラウロイルポリオキシルグリセリド);又はこれらの混合物から選択される。
【0044】
別の実施態様によると、賦形剤又は結合剤は、微晶質セルロース(例えば、Avicel(登録商標)PH101、Avicel(登録商標)PH102若しくはAvicel(登録商標)PH105などのAvicel(登録商標)、Emcocel(登録商標)、Vivacel(登録商標)、Ming Tai(登録商標)又はSalka-Floc(登録商標))又はラウロイルポリオキシルグリセリドである。微晶質セルロース又はラウロイルポリオキシルグリセリドを含む前記医薬製剤は、水;水和又は無水デキストロース、スクロース、ガラクトース、マルトース及びラクトースなどの糖;α化デンプン(Starch 1500又はNational 1551)、デンプングリコール酸ナトリウム、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、コメデンプン及びコムギデンプンを含むデンプン又はデンプン誘導体;エチルセルロース;又はポリビニルピロリドン(例えば、Polyvidon(登録商標)CL、Polyvidon(登録商標)CL-M、Kollidon(登録商標)CL、Polyplasdone(登録商標)XL若しくはPolyplasdone(登録商標)XL-10)及びポリエチレングリコールなどの合成ポリマーから好ましく選択される添加剤を更に含むことができる。好ましくは、これらは、水、ラクトース一水和物、α化デンプン、7000〜9000の平均重量を有するポリエチレングリコール又はこれらの混合物を更に含むことができる。
【0045】
本発明の製剤は、放出制御剤を更に含むことができる。適切な制御剤には、エチルセルロース、好ましくは水性分散体の形態のもの(例えば、Surelease(登録商標))、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマーなどのセルロース誘導体などが含まれる。
【0046】
特定の実施態様において、本発明の製剤は、経口、局所又は非経口投与用であり、好ましくは経口医薬製剤である。
【0047】
一実施態様において、本発明の製剤は、顆粒剤、ペレット剤又はビーズ剤の形態である。好ましい実施態様において、本発明の製剤はペレット剤である。
【0048】
別の実施態様において、本発明の製剤は、カプセル剤、腔坐剤、坐剤、ウエファー剤(wafer)、ミニ錠剤(mini-tablet)、咀嚼錠を含む錠剤、口腔錠、舌下錠、急速溶解錠、発泡錠、丸剤、サシェ剤、スプリンクル剤(sprinkle)、膜剤、乾燥シロップ剤、再構成可能な固形剤(reconstitutable solid)、微小球剤(microsphere)、マトリックス剤(matrix)、ゲル剤、分散剤、液剤、懸濁剤、ロゼンジ剤、トローチ剤、移植片、粉末剤、倍散剤(triturate)、板状剤(platelet)又はストリップ状剤(strip)などの医薬投与形態内に含まれる。
【0049】
特定の実施態様において、本発明の製剤は、カプセルに含まれているペレット剤の形態である。別の実施態様において、錠剤に圧縮されたペレット剤の形態である。
【0050】
特定の実施態様において、本発明の製剤は即時放出用であり、これは、例えば疼痛の治療において有利である。
【0051】
本発明の製剤は、当該技術で以下の既知の方法(「Remington, the Science and practice of pharmacy」、第21版、2005年、Lippincott Williams & Wilkins編)に従って製造することができる。例えば、薬学的な目的でペレット剤を得る種々の方法の概説は、文献Pharmaceutical Pelletization Technology、Isaac Ghebre-Sellassie編、Marcel Dekker, Inc.、1989年において見出すことができる。
【0052】
更なる態様によると、本発明の製剤は、直接圧縮法、造粒、押出/球形化又は層形成法により、好ましくは押出/球形化又は溶融造粒法により調製することができる。
【0053】
押出/球形化法によるペレット製剤の製造は、一般に以下の工程を伴う:
1.造粒工程:湿潤配合塊を調製する工程。
2.押出工程:湿潤配合塊を円筒形に成形する工程。
3.球形化工程:押出物を分解し、得られた粒子を丸めて、球状ペレットにする工程。
球形化法を、押出物の形状の変更に従って多様な段階に分けることができる。以下の形態がこの方法により製造される:円筒形/縄形/ダンベル形/空洞を有する球形/球形。
4.乾燥工程:ペレットを乾燥する工程。
5.篩がけ工程:乾燥ペレットを篩分けする工程。
【0054】
溶融造粒法によるペレット製剤の製造は、一般に以下の工程を伴う:
1.配合混合物を加熱することによる造粒工程。
2.顆粒を冷却することによるペレット化工程。
3.乾燥ペレットを篩がけする工程。
【0055】
活性医薬成分
本発明の組成物の活性医薬成分は、上記に定義された式(I)の化合物である。
【0056】
特定の実施態様において、活性医薬成分は、WO 2006/021462に定義されている式(IA)若しくは(IB)の化合物又はその薬学的に許容される塩、異性体、プロドラッグ若しくは溶媒和物である。これらの化合物を開示しているWO 2006/021462は、その全体が参照として本明細書に組み込まれる。
【0057】
したがって、第1実施態様において、本発明は、式(IA):
【0058】
【化2】

【0059】
[式中、
R1は、水素、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換シクロアルキル、置換又は非置換アルケニル、置換又は非置換アリールアルキル、置換又は非置換非芳香族ヘテロシクリル、置換又は非置換ヘテロシクリルアルキル、-COR8、-C(O)OR8、-C(O)NR8R9、-CH=NR8、-CN、-OR8、-OC(O)R8、-S(O)t-R8、-NR8R9、-NR8C(O)R9、-NO2、-N=CR8R9及びハロゲンからなる群より選択され;
R2は、水素、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換シクロアルキル、置換又は非置換アルケニル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換アリールアルキル、置換又は非置換ヘテロシクリル、置換又は非置換ヘテロシクリルアルキル、-COR8、-C(O)OR8、-C(O)NR8R9、-CH=NR8、-CN、-OR8、-OC(O)R8、-S(O)t-R8、-NR8R9、-NR8C(O)R9、-NO2、-N=CR8R9及びハロゲンからなる群より選択され;
R3及びR4は、水素、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換シクロアルキル、置換又は非置換アルケニル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換アリールアルキル、置換又は非置換ヘテロシクリル、置換又は非置換ヘテロシクリルアルキル、-COR8、-C(O)OR8、-C(O)NR8R9、-CH=NR8、-CN、-OR8、-OC(O)R8、-S(O)t-R8、-NR8R9、-NR8C(O)R9、-NO2、-N=CR8R9及びハロゲンからなる群より独立して選択されるか、或いは一緒になって縮合環系を形成し;
R5及びR6は、水素、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換シクロアルキル、置換又は非置換アルケニル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換アリールアルキル、置換又は非置換ヘテロシクリル、置換又は非置換ヘテロシクリルアルキル、-COR8、-C(O)OR8、-C(O)NR8R9、-CH=NR8、-CN、-OR8、-OC(O)R8、-S(O)t-R8、-NR8R9、-NR8C(O)R9、-NO2、-N=CR8R9及びハロゲンからなる群より独立して選択されるか;或いは
これらが結合している窒素原子と一緒になって、置換又は非置換ヘテロシクリル基を形成し;
nは、1、2、3、4、5、6、7又は8であり;
tは、1、2又は3であり;
R8及びR9は、水素、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換シクロアルキル、置換又は非置換アルケニル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換ヘテロシクリル、置換又は非置換アルコキシ、置換又は非置換アリールオキシ及びハロゲンからなる群より互いに独立して選択される]の化合物;
又はその薬学的に許容される塩、異性体、プロドラッグ若しくは溶媒和物
を含む医薬組成物を対象とする。
【0060】
第2実施態様において、本発明は、式(IB):
【0061】
【化3】

【0062】
[式中、
R1は、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換シクロアルキル、置換又は非置換アルケニル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換アリールアルキル、置換又は非置換芳香族ヘテロシクリル、置換又は非置換非芳香族ヘテロシクリル、置換又は非置換ヘテロシクリルアルキル、-COR8、-C(O)OR8、-C(O)NR8R9、-CH=NR8、-CN、-OR8、-OC(O)R8、-NR8R9、-NR8C(O)R9、-NO2、-N=CR8R9及びハロゲンからなる群より選択され;
R2は、水素、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換シクロアルキル、置換又は非置換アルケニル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換アリールアルキル、置換又は非置換ヘテロシクリル、置換又は非置換ヘテロシクリルアルキル、-COR8、-C(O)OR8、-C(O)NR8R9、-CH=NR8、-CN、-OR8、-OC(O)R8、-S(O)t-R8、-NR8R9、-NR8C(O)R9、-NO2、-N=CR8R9及びハロゲンからなる群より選択され;
R3及びR4は、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換シクロアルキル、置換又は非置換アルケニル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換アリールアルキル、置換又は非置換ヘテロシクリル、置換又は非置換ヘテロシクリルアルキル、-COR8、-C(O)OR8、-C(O)NR8R9、-CH=NR8、-CN、-OR8、-OC(O)R8、-S(O)t-R8、-NR8R9、-NR8C(O)R9、-NO2、-N=CR8R9及びハロゲンからなる群より独立して選択されるか、或いは一緒になって縮合環系を形成し;
R5及びR6は、水素、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換シクロアルキル、置換又は非置換アルケニル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換アリールアルキル、置換又は非置換ヘテロシクリル、置換又は非置換ヘテロシクリルアルキル、-COR8、-C(O)OR8、-C(O)NR8R9、-CH=NR8、-CN、-OR8、-OC(O)R8、-S(O)t-R8、-NR8R9、-NR8C(O)R9、-NO2、-N=CR8R9及びハロゲンからなる群より独立して選択されるか;或いは
これらが結合している窒素原子と一緒になって、置換又は非置換ヘテロシクリル基を形成し;
nは、1、2、3、4、5、6、7又は8であり;
tは、1、2又は3であり;
R8及びR9は、水素、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換シクロアルキル、置換又は非置換アルケニル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換ヘテロシクリル、置換又は非置換アルコキシ、置換又は非置換アリールオキシ及びハロゲンからなる群より互いに独立して選択される]の化合物;
又はその薬学的に許容される塩、異性体、プロドラッグ若しくは溶媒和物
を含む医薬組成物を対象とする。
【0063】
本発明の記載において、以下の用語は示されている意味を有する。
【0064】
「アルキル」は、炭素及び水素原子からなり、不飽和を含有せず、1〜8個の炭素原子を有し、分子の残りの部分に単結合で結合している直鎖又は分岐鎖の炭化水素鎖ラジカルを意味し、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、t-ブチル、n-ペンチルなどである。アルキルラジカルは、例えば、アリール、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、シアノ、カルボニル、アシル、アルコキシカルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプト、アルキルチオなどの1つ又は複数の置換基で場合により置換されていてもよい。アリールで置換されている場合、ベンジル及びフェネチルなどの「アラルキル」ラジカルを有する。
【0065】
「アルケニル」は、少なくとも2個のC原子を有し、1つ又は複数の不飽和結合を有するアルキルラジカルを意味する。
【0066】
「シクロアルキル」は、飽和又は部分的に飽和しており、炭素及び水素原子のみからなる安定した3員〜10員単環式又は二環式ラジカルを意味し、例えば、シクロヘキシル又はアダマンチルである。明細書に特に記述のない限り、用語「シクロアルキル」は、例えばアルキル、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、アルコキシ、カルボキシ、アルコキシカルボニルなどの1つ又は複数の置換基で場合により置換されているシクロアルキルラジカルを含むことが意図される。
【0067】
「アリール」は単環及び多環ラジカルを意味し、分離及び/又は縮合アリール基を含有する多環ラジカルが含まれる。典型的なアリール基は、1〜3個の分離又は縮合環及び6〜約18個の炭素環原子を含有し、例えば、フェニル、ナフチル、インデニル、フェナントリル又はアントラシルラジカルである。アリールラジカルは、例えば、ヒドロキシ、メルカプト、ハロ、アルキル、フェニル、アルコキシ、ハロアルキル、ニトロ、シアノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキル、アシル、アルコキシカルボニルなどの1つ又は複数の置換基で場合により置換されていてもよい。
【0068】
「ヘテロシクリル」は、炭素原子、並びに窒素、酸素及び硫黄からなる群より選択される1〜5個のヘテロ原子からなる安定した3員〜15員環ラジカル、好ましくは1個又は複数のヘテロ原子を有する4員〜8員環、より好ましくは1個又は複数のヘテロ原子を有する5員〜6員環を意味する。これは芳香族又は非芳香族でありうる。本発明の目的において、複素環は、単環式、二環式又は三環式の環系であることができ、縮合環系を含むことができ、ヘテロシクリルラジカルの窒素、炭素又は硫黄原子は、場合により酸化されていてもよく、窒素原子は、場合により四級化されていてもよく、ヘテロシクリルラジカルは、部分的又は完全に飽和されているか又は芳香族でありうる。そのような複素環の例には、アゼピン、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、フラン、イソチアゾール、イミダゾール、インドール、ピペリジン、ピペラジン、プリン、キノリン、チアジアゾール、テトラヒドロフラン、クマリン、モルホリン、ピロール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、トリアゾール、イミダゾールなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0069】
「アルコキシ」は、Raが上記に定義されたアルキルラジカルである式:-ORaのラジカルを意味し、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシなどである。
【0070】
「アミノ」は、場合により四級化されている、式:-NH2、-NHRa又は-NRaRbのラジカルを意味する。
【0071】
「ハロ」又は「hal」は、ブロモ、クロロ、ヨード又はフルオロを意味する。
【0072】
本発明の化合物において置換された基に対する本明細書の参照は、1つ又は複数の適切な基により1つ又は複数の利用可能な位置で置換されていてもよい特定の部位を意味し、例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードなどのハロゲン;シアノ;ヒドロキシル;ニトロ;アジド;例えばアシルなどのC1〜6アルカノイル基などのアルカノイル;カルボキサミド;1〜約12個の炭素原子又は1〜約6個の炭素原子、より好ましくは1〜3個の炭素原子を有する基を含むアルキル基;1つ又は複数の不飽和結合及び2〜約12個の炭素原子又は2〜約6個の炭素原子を有する基を含むアルケニル及びアルキニル基;1つ又は複数の酸素結合及び1〜約12個の炭素原子又は1〜約6個の炭素原子を有するアルコキシ基;フェノキシなどのアリールオキシ;1つ又は複数のチオエーテル結合及び1〜約12個の炭素原子又は1〜約6個の炭素原子を有する部分を含むアルキルチオ基;1つ又は複数のスルフィニル結合及び1〜約12個の炭素原子又は1〜約6個の炭素原子を有する部分を含むアルキルスルフィニル基;1つ又は複数のスルホニル結合及び1〜約12個の炭素原子又は1〜約6個の炭素原子を有する部分を含むアルキルスルホニル基;1個又は複数のN原子及び1〜約12個の炭素原子又は1〜約6個の炭素原子を有する基などのアミノアルキル基;6個以上の炭素を有する炭素環式アリール、特に、フェニル又はナフチル及びベンジルのようなアラルキルである。特に指示のない限り、場合により置換されている基は、基のそれぞれの置換位置に置換基を有することができ、それぞれの置換は、互いに独立している。
【0073】
特に記述のない限り、本発明の組成物に活性成分として使用される化合物は、1個又は複数の同位体濃縮原子の存在によってのみ異なる化合物を含むことも意図される。例えば、水素をジュウテリウム若しくはトリチウムに代えた、或いは炭素を13C-若しくは14C-濃縮炭素又は15N-濃縮窒素に代えた以外は本発明の構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。
【0074】
用語「塩」は、本発明により使用される活性化合物の任意の形態であり、前記化合物は、イオン形態であるか又は荷電され、対イオン(カチオン若しくはアニオン)に結合しているか又は溶液であることが理解されなければならない。この定義には、第四級アンモニウム塩、並びに活性分子と他の分子及びイオンとの錯体、特にイオン交換により形成される錯体も含まれる。定義には、特に生理学的に許容される塩が含まれ、この用語は、「薬理学的に許容される塩」と同意義であることが理解されなければならない。
【0075】
本発明の文脈における用語「薬学的に許容される塩」は、特にヒト及び/又は哺乳動物への治療、適用及び使用において適切な方法で使用されるとき、生理学的に許容される(特に対イオンのために非毒性であることを通常意味する)任意の塩を意味する。
【0076】
例えば、本明細書において提供される化合物の薬学的に許容される塩は、塩基性又は酸性部分を含有する親化合物から、従来の化学方法によって合成される。一般に、そのような塩は、例えば、これらの化合物の遊離酸又は塩基形態を、水中又は有機溶媒中又は2つの混合物中の適切な塩基又は酸の理論量と反応させることにより調製される。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール又はアセトニトリルのような非水性媒質が好ましい。酸付加塩の例には、例えば塩酸塩、臭化水素酸、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などの鉱酸付加塩、並びに、例えば酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩及びp-トルエンスルホン酸塩などの有機酸付加塩が含まれる。アルカリ付加塩の例には、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、マグネシウム、アルミニウム及びリチウム塩などの無機塩、並びに、例えばエチレンジアミン、エタノールアミン、N,N-ジアルキレンエタノールアミン、トリエタノールアミン、グルカミン及び塩基性アミノ酸塩などの有機アルカリ塩が含まれる。
【0077】
用語「溶媒和物」は、本発明によると、本発明の活性化合物の任意の形態を意味し、前記化合物は非共有結合により別の分子(通常は極性溶媒)に結合していることが理解されるべきであり、特に水和物及び例えばメタノレートのようなアルコラートが含まれる。好ましい溶媒和物は水和物である。
【0078】
本発明の化合物は遊離化合物又は溶媒和物のいずれかの結晶形態であることができ、両方の形態は本発明の範囲内であることが意図される。溶媒和の方法は、当該技術において一般に知られている。適切な溶媒和物は、薬学的に許容される溶媒和物である。特定の実施態様において、溶媒和物は水和物である。
【0079】
また、式(I)、(IA)又は(IB)の化合物のプロドラッグであるあらゆる化合物が、本発明の範囲内である。用語「プロドラッグ」は、最も広範囲な意味において使用され、インビボで本発明の化合物に変換される誘導体を包含する。プロドラッグの例には、生加水分解性アミド、生加水分解性エステル、生加水分解性カルバメート、生加水分解性カーボネート、生加水分解性ウレイド及び生加水分解性ホスフェート類似体などの生加水分解性部分を含む式(I)の化合物の誘導体及び代謝産物が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、カルボキシル官能基を有する化合物のプロドラッグは、カルボン酸の低級アルキルエステルである。カルボン酸エステルは、分子に存在する任意のカルボン酸部分をエステル化することにより都合良く形成される。プロドラッグは、典型的には、Burger「Medicinal Chemistry and Drug Discovery」第6版(Donald J. Abraham編、2001年、Wiley)、「Design and Applications of Prodrugs」(H. Bundgaard編、1985年、Harwood Academic Publishers)及びKrogsgaard-Larsen et al.「Textbook of Drug design and Discovery」Taylor & Francis (2002年4月)に記載されているものなどの周知の方法を使用して調製することができる。
【0080】
用語「薬学的に許容される塩、溶媒和物、プロドラッグ」は、レシピエントに投与されると、本明細書に記載されている化合物を(直接的に又は間接的に)提供することができるあらゆる薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物又は任意のその他の化合物を意味する。しかし、薬学的に許容される塩ではないものも、薬学的に許容される塩の調製に有用でありうるので、本発明の範囲内であることが理解される。塩、プロドラッグ及び誘導体の調製は、当該技術において既知の方法により実施することができる。
【0081】
上記に記述された式(I)、(IA)又は(IB)により表される本発明の化合物は、キラル中心の存在によって鏡像異性体又は複数の結合の存在によって異性体(例えば、Z、E)を含むことができる。単一の異性体、鏡像異性体又はジアステレオ異性体及びこれらの混合物は、本発明の範囲内である。
【0082】
式(I)、(IA)若しくは(IB)の化合物又はこれらの塩若しくは溶媒和物は、好ましくは薬学的に許容される又は実質的に純粋な形態である。薬学的に許容される形態とは、とりわけ、賦形剤及び担体などの通常の医薬添加物を除いた、通常の投与レベルで毒性であると考慮される物質を何も含まない薬学的に許容されるレベルの純度を有することを意味する。原薬の純度レベルは、好ましくは50%超、より好ましくは70%超、最も好ましくは90%超である。好ましい実施態様において、これは、式(I)、(IA)若しくは(IB)の化合物又はその塩、溶媒和物若しくはプロドラッグの95%を超える。
【0083】
特定の実施態様において、R1は、H、-COR8又は置換若しくは非置換アルキルから選択され、好ましくはH、メチル又はアセチルから選択される。
【0084】
別の実施態様において、R2は、H又はアルキルであり、好ましくはH又はメチルである。
【0085】
別の実施態様において、R3及びR4は、ハロゲン又はアルキル、好ましくはハロゲン又はハロアルキルから独立して選択されるか、或いはそれらが結合しているフェニル基と一緒になって縮合環系、好ましくはナフチル基を形成する。
【0086】
アリール置換基R3及びR4は、フェニル基のメタ及び/又はパラ位置に位置していることが好ましい。
【0087】
更に、好ましい実施態様において、nは、好ましくは2、3、4、5又は6であり、最も好ましくは、nは2、3又は4である。最も好ましいnの値は2である。
【0088】
別の好ましい実施態様において、R5及びR6は、アルキル基、好ましくはエチルであるか又はそれらが結合している窒素原子と一緒になって、置換若しくは非置換の5員若しくは6員ヘテロシクリル基、好ましくは置換若しくは非置換ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン-4-イル若しくはモルホリン-4-イル基を形成する。
【0089】
特定の実施態様において、活性医薬成分は、1-(3,4-ジクロロフェニル)-5-メチル-3-[2-(ピロリジン-1-イル)エトキシ]-1H-ピラゾール、1-{2-[1-(3,4-ジクロロフェニル)-5-メチル-1H-ピラゾール-3-イルオキシ]エチル}-4-メチルピペラジン、1-(4-(2-(1-(3,4-ジクロロフェニル)-1H-ピラゾール-3-イルオキシ)エチル)ピペリジン-1-イル)エタノン、2-[1-(2,4-ジクロロフェニル)-1H-ピラゾール-3-イルオキシ]N,N-ジエチルエタンアミン、2-[1-(3,4-ジクロロフェニル)-4,5-ジメチル-1H-ピラゾール-3-イルオキシ]-N,N-ジエチルエタンアミン、4-[1-(3,4-ジクロロフェニル)-1H-ピラゾール-3-イルオキシ]-Ν,Ν-ジエチルブタン-1-アミン、1-{2-[5-メチル-1-(ナフタレン-2-イル)-1H-ピラゾール-3-イルオキシ]エチル}ピペリジン、1-(4-(2-(1-(ナフタレン-2-イル)-1H-ピラゾール-3-イルオキシ)ブチル)ピペラジン-1-イル)エタノン、及び4-{2-[5-メチル-1-(ナフタレン-2-イル)-1H-ピラゾール-3-イルオキシ]エチル}モルホリン、これらの塩、プロドラッグ又は溶媒和物から選択される。好ましくは、これらの遊離形態又は塩酸塩若しくはシュウ酸塩である。
【0090】
好ましい実施態様において、活性医薬成分は、4-{2-[5-メチル-1-(ナフタレン-2-イル)-1H-ピラゾール-3-イルオキシ]エチル}モルホリン塩酸塩であり、以降、API-001と呼ぶ。
【0091】
追加的な好ましい実施態様において、異なる置換基について上記に記載された選択肢は、組み合わされる。本発明は、上記の一般式(I)、(IA)及び(IB)の好ましい置換のそのような組み合わせも対象とする。
【0092】
本発明の別の態様は、薬剤として使用される本発明の医薬組成物について言及する。
【0093】
別の態様は、シグマレセプター媒介疾患又は状態の治療又は予防に使用される本発明の医薬組成物に関する。特定の実施態様において、疾患は、下痢;リポタンパク質障害;片頭痛;肥満症;関節炎;高血圧症;不整脈;潰瘍;学習障害、記憶障害及び注意欠陥;認知障害;神経変性疾患;脱髄性疾患;コカイン、アンフェタミン、エタノール及びニコチンを含む薬物及び化学物質への嗜癖;遅発性ジスキネジー;虚血性発作;てんかん;発作;ストレス;癌;精神病的な状態、特にうつ病、不安又は統合失調症;炎症;及び自己免疫性疾患からなる群より選択される。別の特定の実施態様において、疾患は、疼痛、好ましくは神経因性疼痛、炎症性疼痛又は異痛及び/若しくは痛覚過敏を伴う他の疼痛状態である。
【0094】
本発明の別の態様は、シグマレセプター媒介疾患を治療又は予防する方法であって、本発明の医薬組成物の治療有効量を、そのような治療の必要な患者に投与することを含む方法に関する。これらのうち、治療することができるシグマ媒介疾患は、下痢;リポタンパク質障害;片頭痛;肥満症;関節炎;高血圧症;不整脈;潰瘍;認知障害;コカイン依存症などの化学物質への嗜癖;遅発性ジスキネジー;虚血性発作;てんかん;発作;うつ病;ストレス;疼痛、特に神経因性疼痛若しくは異痛;精神病的な状態;又は癌である。本発明の化合物を、薬理学的ツールとして又は抗不安薬若しくは免疫抑制薬として用いることもできる。
【0095】
以下の実施例は、本発明を更に例示するためのみに提示されており、本発明の限界を定義するものとして考慮されるべきではない。
【0096】
(実施例)
以下の略語が使用されている:
API-001 - 4-{2-[5-メチル-1-(ナフタレン-2-イル)-1H-ピラゾール-3-イルオキシ]エチル}モルホリン塩酸塩
PEG8000 - 8000の分子量を有するポリエチレングリコール
Starch 1500 - 部分的にα化されたトウモロコシデンプン
Avicel(登録商標)PH-101 - 粒径が50μmの高純度微晶質セルロース(FMC Corp, Delaware, US)
Avicel(登録商標)PH-102 - 粒径が100μmの高純度微晶質セルロース(FMC Corp, Delaware, US)
Surelease(登録商標) - 水性エチルセルロース分散体(Colorcon, BPSI Holdings LLC, Pennsylvania, US)
Gelucire(登録商標)44/14/PEG - モノ-、ジ-及びトリグリセリドと、ポリエチレングリコールのモノ-及びジエステルから構成されるポリエチレングリコールグリセリド
【0097】
1.ペレット剤の一般的な性質
4-{2-[5-メチル-1-(ナフタレン-2-イル)-1H-ピラゾール-3-イルオキシ]エチル}モルホリン塩酸塩及び種々の添加剤(実験ブロック)を含有する4つのペレット製剤を調製した。それぞれの実験ブロックにおいて、多様な割合の同じ添加剤を含有する4つの特定の製剤(例)を作製した。実験ブロック番号1、2及び3のペレット剤を、押出/球形化法により作り出した。実験ブロック番号4のペレット剤を、溶融造粒法により作り出した。
【0098】
以下の表は、それぞれの例の製剤組成の割合を記載する。
【0099】
【表1】

【0100】
【表2】

【0101】
【表3】

【0102】
ペレットコアを、25%乾燥Surelease(登録商標)エチルセルロース水性分散体の添加により改質して、コア放出制御を可能にした。
【0103】
【表4】

【0104】
2.一般的方法の記載
a)押出/球形化法
実験ブロック番号1、2及び3のペレット剤を以下のプロトコールに従って調製した。
【0105】
1)ブレンド/造粒
900ml容量の容器を使用した。150gのサイズのバッチ混合物を調製した。バッチ混合物を、高剪断混合機を利用して以下のパラメーターによりブレンド及び造粒した。
【0106】
【表5】

【0107】
2)押出
前述の工程から得られた顆粒を成形して、長いロッド又は押出物にした。押出機を装填量50〜70g、軸速度50rpmに設定した。1.0mmのダイを使用した。
【0108】
3)球形化
前述の工程の押出物を、球形機により成形して球状ペレットにした。押出機を装填量50〜70g、プレート速度2000rpm、4分間に設定した。3.25mmのプレートを利用した。2.0mmのプレートを代替的に利用して、生産性を増加することができた。球形化段階で潤滑剤としてMCCを添加することは、任意であった。
【0109】
4)乾燥
球形化法により得られたペレットを流動層乾燥機で乾燥した。乾燥機を温度55℃、15分間に設定した。
【0110】
5)篩がけ
乾燥した後、ペレットを0.5〜1.4mmの篩で篩い分けした。
【0111】
b)溶融造粒法
実験ブロック番号4を以下のプロトコールに従って調製した。
【0112】
1)ブレンド/造粒
900ml容量の容器を使用した。144〜159.0gのサイズのバッチ混合物を調製した。バッチ混合物を、高剪断混合機を利用して以下のパラメーターにより造粒した。
【0113】
【表6】

【0114】
次に混合物をボウルジャケットにおいて55℃でおよそ10〜15分間加熱した。混合物が45〜55℃の温度に達したときに、結合剤が溶融した。
【0115】
2)ペレット化
前述の工程で得られた顆粒をボウルジャケットにおいて5℃でおよそ10〜15分間冷却した。顆粒が25℃の温度に達したときに、ペレットが形成された。
【0116】
3)篩がけ
冷却した後、ペレットを0.5〜1.4mmの篩で篩い分けした。
【0117】
A.実験ブロック番号1のペレット剤の調製
配合混合物は、PEG8000を16.6%の精製水(25ml)に溶解して結合溶液を得ることにより調製した。この結合溶液を、造粒機中のAPI-001とAvicel(登録商標)PH-102微晶質セルロースの混合物に加え、混合物を造粒終点まで混練した。顆粒を、押出/球形化法の一般的プロトコールに従って、押出、球形化及び乾燥した。得られたペレットを、0.5〜1.4mmの篩で篩い分けして、以下の含有仕様を有する配合混合物を得た。
【0118】
【表7】

【0119】
B.実験ブロック番号2のペレット剤の調製
10.6%の精製水(16ml)を結合溶液として使用した。API-001、Starch 1500、Avicel(登録商標)PH-101微晶質セルロース及びラクトース一水和物を造粒機でブレンドし、混合物を造粒終点まで混練した。顆粒を、押出/球形化法の一般的プロトコールに従って、押出、球形化及び乾燥した。得られたペレットを、0.5〜1.4mmの篩で篩い分けして、以下の含有仕様を有する配合混合物を得た。
【0120】
【表8】

【0121】
C.実験ブロック番号3のペレット剤の調製
25%の乾燥エチルセルロース含有量のSurelease(登録商標)水性分散体(34ml、22.64%)を結合溶液として使用した。API-001、PEG8000及びAvicel(登録商標)PH-102微晶質セルロースを造粒機でブレンドし、混合物を造粒終点まで混練した。顆粒を、押出/球形化法の一般的プロトコールに従って、押出、球形化及び乾燥した。得られたペレットを、0.5〜1.4mmの篩で篩い分けして、以下の含有仕様を有する配合混合物を得た。
【0122】
【表9】

【0123】
D.実験ブロック番号4のペレット剤の調製
API-001、ラクトース一水和物及びGelucire(登録商標)44/14/PEGを合わせた。得られた混合物をボウルジャケットにおいて55℃でおよそ10〜15分間加熱した。混合物の温度が約45〜50℃になったときに、結合剤が溶融した。得られた顆粒をボウルジャケットにおいて5℃でおよそ10〜15分間冷却した。顆粒が25℃に達したときに、ペレットが形成された。ペレットを、0.5〜1.4mmの篩で篩い分けして、以下の含有仕様を有する配合混合物を得た。
【0124】
【表10】

【0125】
E.API-001の即時放出ペレット剤により実施されたアッセイ
それぞれの実験ブロックの代表的なメンバーを多様なパラメーターによりアッセイした。幾つかの場合では、それぞれの実験ブロックの全てのメンバーを試験した。第1の試験では、ペレットの外観、不純物の%、pH5.5及びpH6.8、15分間での溶出プロフィールをアッセイした。Table 5(表11)を参照すること。第2の分析は、これらの粒径、丸みの%、KF%及び500〜1400μmでの篩がけ方法後の収率を評価した。Table 6(表12)を参照すること。第3のアッセイは、多様なpH条件下でのペレットの溶出プロフィールを検査した。図1を参照すること。
【0126】
【表11】

【0127】
【表12】

【0128】
F.配合パラメーターを変えることによるAPI-001放出の最適化
完全要因配置(2x2x2x2)試験を、例番号001、002及び004の組成百分率で配合混合物において実施した。試験の目的は、選択された特定の変数を変えることによる、ペレット剤の放出速度に対する効果を決定することであった。アッセイした変数は下記であった:
a)レシピエントの比率、
b)結合溶液の%、
c)球形化速度及び
d)球形化時間。
【0129】
試験変数の範囲を以下のように定義した:
【0130】
【表13】

【0131】
比較及び分析の目的において、例番号001、002及び004に従って調製した配合混合物に、それぞれ要因コード1、-1及び0を付けた。
【0132】
例番号001、002及び004の配合混合物を、上記の押出/球形化プロトコールに従って加工した。以下のプロトコール改質を実施した。
【0133】
ブレンド造粒工程の際に、150gのバッチ混合物を調製した。バッチ混合物を、高剪断混合機を利用して以下のパラメーターによりブレンド及び造粒した。
【0134】
【表14】

【0135】
その後、前述の工程から得られた顆粒を実験室用押出機により成形して、長いロッド又は押出物にした。押出機を装填量150g、軸速度50rpmに設定した。1.0mmのダイを利用した。得られた押出物を実験室用球形機で成形して、球状ペレットにした。この工程では、押出機を装填量150g、可変速のプレート速度及び可変時間の球形化時間に設定した。2.0mmのプレートを利用した。次に、球形化法により得られたペレットを5リットルの流動層乾燥機で乾燥した。乾燥機を温度55℃、15分間に設定した。
【0136】
完全要因配置(2x2x2x2)試験により調製された多様なペレット製剤のAPI-001放出プロフィールを、溶解の10分後及び15分後にアッセイした。Table 7(表15)は、適用されたパラメーター及び10分間の溶解で得られた結果を例示する。
【0137】
【表15】

【0138】
全ての場合において、85%を超えるAPI-001が15分後に放出された。
【0139】
3.インビトロ放出プロフィール
API-001は、6.8のpKaを有し、弱塩基性薬剤であり、媒質のpHに強く影響される溶解度を有する。図2に示されているpH溶解度プロフィールから分かるように、API-001の溶解度は、媒質のpHが増加すると減少する。
【0140】
押出によるペレット剤製造に微晶質セルロース(MCC)を使用することは、放出プロフィールを改質しうること、特に可溶性の乏しい化合物では薬剤の放出を遅らせうることが知られている(Duckic et al.「Production of pellets via extrusion-spheronisation without the incorporation of microcrystalline cellulose: A critical review」European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics、第71巻、第1号、2009年; Kranz et al.「Drug release from MCC- and carrageenan-based pellets: Experimental and theory」European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics、第73巻、第2号、2009年)。
【0141】
しかし、驚くべきことに、異なるpH(酸性HCl 0.1N、pH1.2、緩衝溶液pH5.5及び緩衝溶液pH6.8)で実施したインビトロ薬剤放出試験は、速い放出速度を示し、API-001の溶解度と無関係に80%を超える薬剤が最初の15分間に溶出する。ペレット組成物におけるMCCの存在は、API-001の溶解度が0.6mg/mlと極めて低い(可溶性が乏しい化合物)インビボ腸内pHと同等のpH6.8の媒質緩衝溶液において使用されたときでさえも、薬剤放出速度を遅延しない。したがって、本発明の押出-球形化ペレットは全腸管にわたって吸収されることが予測される。
【0142】
図3は、API-001の押出-球形化ペレット剤のインビトロ放出プロフィールにおける薬剤溶解度の影響を表す(シンク条件を全ての試験の際に維持した)。具体的には、試験製剤は、API-001を86.6%、結合剤としてPEG8000を2.9%及び充填剤又は押出法の助剤としてMCCを10.5%含有した。
【0143】
4.長期安定性
高い薬剤装填量の86.6%を有する押出球形化ペレットから構成されて作り出された製剤は、驚くべきことに、25℃/60%HRの周囲環境及び40℃/75%HRのストレス条件下での長期安定性試験において速い放出プロフィールを維持し、最初の15分間に85%超が送達される速い薬剤放出を示す。押出-球形化ペレットにおけるMCCの存在は、6か月間実施された長期安定性試験においてAPI-001の薬剤放出速度を遅延又は延滞しない。
【0144】
図4は、API-001の押出-球形化ペレット剤の以下の条件での比較インビトロ放出プロフィールを表す:パドル速度50rpm、媒質HCl 0.1N、pH1.2、容量900ml(シンク条件を全ての試験の際に維持した)。具体的には、試験製剤は、API-001を86.6%、結合剤としてPEG8000を2.9%及び充填剤又は押出法の助剤としてMCCを10.5%含有した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)活性医薬成分として、式(I):
【化1】

[式中、
R1は、水素、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換シクロアルキル、置換又は非置換アルケニル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換アリールアルキル、置換又は非置換非芳香族ヘテロシクリル、置換又は非置換芳香族ヘテロシクリル、置換又は非置換ヘテロシクリルアルキル、-COR8、-C(O)OR8、-C(O)NR8R9、-CH=NR8、-CN、-OR8、-OC(O)R8、-S(O)t-R8、-NR8R9、-NR8C(O)R9、-NO2、-N=CR8R9及びハロゲンからなる群より選択され;
R2は、水素、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換シクロアルキル、置換又は非置換アルケニル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換アリールアルキル、置換又は非置換ヘテロシクリル、置換又は非置換ヘテロシクリルアルキル、-COR8、-C(O)OR8、-C(O)NR8R9、-CH=NR8、-CN、-OR8、-OC(O)R8、-S(O)t-R8、-NR8R9、-NR8C(O)R9、-NO2、-N=CR8R9及びハロゲンからなる群より選択され;
R3及びR4は、水素、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換シクロアルキル、置換又は非置換アルケニル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換アリールアルキル、置換又は非置換ヘテロシクリル、置換又は非置換ヘテロシクリルアルキル、-COR8、-C(O)OR8、-C(O)NR8R9、-CH=NR8、-CN、-OR8、-OC(O)R8、-S(O)t-R8、-NR8R9、-NR8C(O)R9、-NO2、-N=CR8R9及びハロゲンからなる群より独立して選択されるか、或いはこれらが結合しているフェニル基と一緒になって、縮合置換若しくは非置換アリール基又は縮合置換若しくは非置換ヘテロシクリル基を形成し;
R5及びR6は、水素、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換シクロアルキル、置換又は非置換アルケニル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換アリールアルキル、置換又は非置換ヘテロシクリル、置換又は非置換ヘテロシクリルアルキル、-COR8、-C(O)OR8、-C(O)NR8R9、-CH=NR8、-CN、-OR8、-OC(O)R8、-S(O)t-R8、-NR8R9、-NR8C(O)R9、-NO2、-N=CR8R9及びハロゲンからなる群より独立して選択されるか;或いは
これらが結合している窒素原子と一緒になって、置換又は非置換ヘテロシクリル基を形成し;
nは、1、2、3、4、5、6、7又は8であり;
tは、1、2又は3であり;
R8及びR9は、水素、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換シクロアルキル、置換又は非置換アルケニル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換ヘテロシクリル、置換又は非置換アルコキシ、置換又は非置換アリールオキシ及びハロゲンからなる群より互いに独立して選択される]
の化合物;
又はその薬学的に許容される塩、異性体、プロドラッグ若しくは溶媒和物と;
(ii)少なくとも1種の薬学的に許容される添加剤と
を含み、
活性医薬成分が組成物の総乾燥重量の少なくとも80%の量で存在する
医薬組成物。
【請求項2】
薬学的に許容される添加剤が賦形剤又は結合剤、好ましくは、
- 好ましくはリン酸カルシウム及びリン酸ナトリウムから選択される無機リン酸塩;
- 好ましくは水和又は無水デキストロース、スクロース、ガラクトース、マルトース、ラクトースから選択される糖;
- 好ましくはソルビトール、キシリトール、マンニトールから選択されるポリオール;
- 好ましくは、
- デキストラン、マルトデキストラン、ペクチン、カラギーナン、キトサンなどの多糖;
- シクロデキストリン;
- 好ましくは微晶質セルロース、微細セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースから選択されるセルロース又はセルロース誘導体;
- 好ましくはα化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、コメデンプン、コムギデンプンから選択されるデンプン又はデンプン誘導体
から選択される天然ポリマー;
- 好ましくはポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールグリセリド、ポリエチレンオキシドから選択される合成ポリマー;
- 好ましくはペクチニン酸、クエン酸、フマル酸、酒石酸から選択される酸;
- 好ましくは水素化ヒマシ油、グリセロールパルミトステアレート、飽和脂肪エステルのグリセロールエステル、グリセリルベヘネート、グリセリルモノステアレートから選択されるロウ状又は脂質添加剤;
- グアーガム、キサンタンガム、コロイド状二酸化ケイ素;
或いはこれらの混合物
から選択される賦形剤又は結合剤である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
薬学的に許容される添加剤が、ラクトース、好ましくはラクトース水和物;セルロース、好ましくは微晶質セルロース;デンプン;ポリエチレングリコール、好ましくは7000〜9000の平均重量を有するもの;及びポリエチレングリコールグリセリド、好ましくはラウロイルポリオキシルグリセリド;又はこれらの混合物から選択される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
崩壊剤、潤滑剤、可塑剤及び充填剤からなる群より選択される添加剤を更に含む、請求項2又は3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
ペレット剤、顆粒剤、ビーズ剤、錠剤、ミニ錠剤、粉末剤、サシェ剤、カプセル剤、微小球剤又はマトリックス剤の形態である、請求項1から4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
即時放出用に配合される、請求項1から5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
R1が、H又は置換若しくは非置換アルキルから選択され、好ましくはH又はメチルから選択される、請求項1から6のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項8】
R2が、H又はアルキル、好ましくはH又はメチルである、請求項1から7のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項9】
R3及びR4が、ハロゲン若しくはハロアルキルから独立して選択されるか、或いはそれらが結合しているフェニル基と一緒になって、縮合置換若しくは非置換アリール基又は縮合置換若しくは非置換ヘテロシクリル基を形成する、請求項1から8のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項10】
R5及びR6が、アルキル基、好ましくはエチルであるか、又はそれらが結合している窒素原子と一緒になって、置換若しくは非置換の5員若しくは6員ヘテロシクリル基、好ましくは置換若しくは非置換ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン-4-イル若しくはモルホリン-4-イル基を形成する、請求項1から9のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項11】
活性医薬成分(i)が、4-{2-[5-メチル-1-(ナフタレン-2-イル)-1H-ピラゾール-3-イルオキシ]エチル}モルホリン又はその薬学的に許容される塩、好ましくは塩酸塩、若しくは溶媒和物若しくはプロドラッグである、請求項1から10のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項12】
薬剤として使用される、請求項1〜11のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項13】
シグマレセプター媒介疾患又は状態の治療又は予防に使用される、請求項1〜11のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項14】
疾患が、下痢;リポタンパク質障害;片頭痛;肥満症;関節炎;高血圧症;不整脈;潰瘍;学習障害、記憶障害及び注意欠陥;認知障害;神経変性疾患;脱髄性疾患;コカイン、アンフェタミン、エタノール及びニコチンを含む薬物及び化学物質への嗜癖;遅発性ジスキネジー;虚血性発作;てんかん;発作;ストレス;癌;精神病的な状態、好ましくはうつ病、不安又は統合失調症;炎症;又は自己免疫性疾患からなる群より選択される、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
疾患が、疼痛、好ましくは神経因性疼痛、炎症性疼痛又は異痛及び/若しくは痛覚過敏を伴う他の疼痛状態である、請求項13に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−512219(P2013−512219A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540427(P2012−540427)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068213
【国際公開番号】WO2011/064296
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(512036166)ラボラトリオス・デル・ドクター・エステベ・ソシエテ・アノニム (6)
【Fターム(参考)】